以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、導体及びその導体の周囲を被覆する絶縁被覆を有するフレキシブル導電部材と基板とを接続する電気コネクタとして、種々の用途に広く適用することができるものである。
[コネクタの概略]
図1(A)及び図1(B)は、本発明の一実施の形態に係る電気コネクタ1を示す斜視図である。図2は、電気コネクタ1を介して基板100とフレキシブル導電部材101とが接続された状態を示す図であって、図2(A)は斜視図であり、図2(B)は正面図である。尚、図1(A)及び図1(B)は、互いに異なる方向から見た電気コネクタ1の斜視図を示している。また、図2では、基板100については、電気コネクタ1が接続される部分とその近傍の部分とを切欠き状態で模式的に図示している。また、図2では、フレキシブル導電部材101については、フレキシブル導電部材101の先端部分を含む部分であって電気コネクタ1に接続される端部側の部分のみを切欠き状態で模式的に図示している。
電気コネクタ1は、基板100に対して機械的及び電気的に接続されるとともに、フレキシブル導電部材101に対しても機械的及び電気的に接続される電気コネクタとして構成されている。これにより、電気コネクタ1は、基板100とフレキシブル導電部材101とを電気的に接続する電気コネクタとして構成されている。
電気コネクタ1が接続される基板100は、導電回路パターンが表裏面のうちの少なくともいずれか一方に設けられた基板として構成されている。図2では、基板100における導電回路パターンの図示は省略されている。
電気コネクタ1に接続されるフレキシブル導電部材101は、複数の導体101aと、複数の導体101aの周囲を被覆する絶縁被覆101bとを有し、可撓性を有する導電部材として構成されている。複数の導体101aのそれぞれは、導電性を有する金属線材として構成されている。また、複数の導体101aの周囲を被覆する絶縁被覆101bは、絶縁性を有するゴム材料などで構成されている。複数の導体101aは、フレキシブル導電部材101において、長手方向が互いに平行に延びた状態で配列されている。また、平行に延びる複数の導体101aを被覆する絶縁被覆101bは、一体に設けられている。このため、フレキシブル導電部材101は、複数のケーブルが平行に並んだ状態で一体に設けられたリボンケーブル状の導電部材として構成されている。
尚、図8は、電気コネクタ1、基板100、及びフレキシブル導電部材101の斜視図であって、電気コネクタ1、基板100、及びフレキシブル導電部材101の断面を含む状態で示す図である。図8においては、電気コネクタ1を介して基板100とフレキシブル導電部材101とが接続された状態が図示されている。また、図8では、フレキシブル導電部材101については、フレキシブル導電部材101の先端部分101cを含む部分であって電気コネクタ1に接続される端部側の部分のみが切欠き状態で図示されている。
図8に示すように、フレキシブル導電部材101は、その先端部分101cにおいて、複数の導体101aのそれぞれの先端が外部に露出するように、絶縁被覆101bの一部が剥がされた状態で除去されている。
図3(A)は、電気コネクタ1の斜視図であって電気コネクタ1の断面を含む状態で示す図であり、図3(B)は、図3(A)の一部を拡大して示す図である。尚、図3(B)は、図3(A)において一点鎖線の枠線で囲んだ部分を拡大して示す図である。図4(A)は、電気コネクタ1の斜視図であって電気コネクタ1の断面を含む状態で示す図であり、図4(B)は、図4(A)の一部を拡大して示す図である。尚、図4(B)は、図4(A)において一点鎖線の枠線で囲んだ部分を拡大して示す図である。図5は、電気コネクタ1及び基板100の斜視図であって、電気コネクタ1及び基板100の断面を含む状態で示す図である。尚、図3(A)及び図4(A)に示す電気コネクタ1の断面と、図5に示す電気コネクタ1の断面とは、電気コネクタ1における異なる位置での断面を図示している。
図1乃至図5に示す電気コネクタ1は、フレキシブル導電部材101と基板100とを接続する電気コネクタとして構成されている。そして、電気コネクタ1は、ハウジング11と、複数のコンタクト12と、を備えて構成されている。
[ハウジング]
図1乃至図5に示すハウジング11は、絶縁性を有する樹脂材料で形成され、複数のコンタクト12を保持するように構成されている。また、ハウジング11は、複数のコンタクト12をハウジング11に対してハウジング11の高さ方向に沿ってスライド移動して相対変位可能な状態で保持している。また、ハウジング11は、複数のコンタクト12がハウジング11の幅方向に沿って並んだ状態で、複数のコンタクト12を保持している。
尚、図1(A)及び図3(A)において、ハウジング11の高さ方向は、両端矢印X1で図示されており、ハウジング11の前後方向は、両端矢印X2で図示されており、ハウジング11の幅方向は、両端矢印X3で図示されている。ハウジング11の高さ方向は、電気コネクタ1の高さ方向となり、ハウジング11の前後方向は、電気コネクタ1の前後方向となり、ハウジング11の幅方向は、電気コネクタ1の幅方向となる。
ハウジング11は、複数のコンタクト12が並ぶ方向である幅方向に沿って長く延びた直方体状の基本外形を有している。そして、ハウジング11は、複数のコンタクト保持孔21、導電部材挿入口22、複数の導体挟持用内壁部23、複数の位置決め部24、等を含んで構成されている。
複数のコンタクト保持孔21のそれぞれは、複数のコンタクト12のそれぞれを保持するための孔として設けられている。各コンタクト12は、ハウジング11に対して、各コンタクト保持孔21において挿入された状態で、各コンタクト保持孔21に保持されている。複数のコンタクト保持孔21は、ハウジング11において、ハウジング11の幅方向に沿って並んで設けられている。また、各コンタクト保持孔21は、ハウジング11の高さ方向に沿ってハウジング11を貫通するように設けられ、複数のコンタクト保持孔21は、互いに平行に延びるように設けられている。
導電部材挿入口22は、ハウジング11において、フレキシブル導電部材101の先端部分101cが挿入される開口として設けられている。導電部材挿入口22は、ハウジング11において、その高さ方向における一方の端部側において開口している。また、導電部材挿入口22は、ハウジング11において、その幅方向に沿って長方形状に延びるように開口している。フレキシブル導電部材101は、その先端部分101cが導電部材挿入口22から差し込まれ、ハウジング11に対して挿入される。フレキシブル導電部材101の先端部分101cがハウジング11に対して導電部材挿入口22から挿入されると、後述のように、フレキシブル導電部材101の複数の導体101aが複数のコンタクト12にそれぞれ接触する。これにより、フレキシブル導電部材101の各導体101aと各コンタクト12とが電気的に接続され、フレキシブル導電部材101と電気コネクタ1とが電気的に接続されることになる。
複数の導体挟持用内壁部23は、ハウジング11の内部に設けられている(図5を参照)。そして、複数の導体挟持用内壁部23のそれぞれは、ハウジング11の内部において、複数のコンタクト保持孔21のそれぞれに対応する位置に設けられている。また、複数の導体挟持用内壁部23のそれぞれは、ハウジング11の内部において、柱状に延びる壁部として設けられている。そして、各導体挟持用内壁部23は、ハウジング11に保持されたコンタクト12に対してハウジング11が所定の位置P1に位置した状態でハウジング11に挿入されたフレキシブル導電部材101の先端部分101cの導体101aを後述するコンタクト12のバネ接点部32との間で挟み込んで導体101aとバネ接点部32とを接触させる部分として設けられている。尚、図3(A)及び図5では、ハウジング11がコンタクト12に対して所定の位置P1に位置した状態が図示されている。
複数の位置決め部24は、ハウジング11の内部に設けられている(図3乃至5を参照)。そして、位置決め部24は、ハウジング11の内部において、コンタクト保持孔21に対して、一対で対応するように設けられている。即ち、ハウジング11の内部において、各コンタクト保持孔21に対応する位置に一対の位置決め部24が設けられている。尚、ハウジング11の内部における各コンタクト保持孔21に対応する位置においては、一対の位置決め部24の間において、導体挟持用内壁部23が配置されている。
位置決め部24は、ハウジング11において、電気コネクタ1が基板100に接続された状態でコンタクト12及び基板100に対するハウジング11の相対位置を第1位置と第2位置とにそれぞれ位置決めするための部分として設けられている。より具体的には、位置決め部24は、ハウジング11に保持されたコンタクト12が基板100に接続された状態で、コンタクト12に対してハウジング11が相対変位して係止することでコンタクト12及び基板100に対するハウジング11の相対位置を第1位置P1と第2位置P2とにそれぞれ位置決めするための部分として設けられている。
尚、図3(A)は、コンタクト12に対するハウジング11の相対位置が第1位置P1である状態を図示しており、図5は、コンタクト12及び基板100に対するハウジング11の相対位置が第1位置P1である状態を図示している。尚、第1位置P1は、前述の所定の位置P1として構成されている。また、図4(A)は、コンタクト12に対するハウジング11の相対位置が第2位置P2である状態を図示している。
第1位置P1は、ハウジング11にフレキシブル導電部材101の先端部分101cが挿入されるための位置として構成されている。そして、第2位置P2は、ハウジング11からフレキシブル導電部材101の先端部分101cが抜き出されるための位置として構成されている。また、第2位置P2は、第1位置P1に対して、ハウジング11が基板100から離間した位置として構成されているとともに、第1位置P1に対して、ハウジング11の導体挟持用内壁部23と後述するコンタクト12のバネ接点部32とが離間した位置として構成されている。
また、各位置決め部24は、ハウジング11の内部において、電気コネクタ1が基板100に対して接続された際に基板100に対して対向する側の端部側に設けられている。尚、電気コネクタ1が基板100に対して接続された際、ハウジング11は、基板100に対して、導電部材挿入口22が開口する端部側とは反対の端部側において、基板100に対して対向する。
また、各位置決め部24は、第1部分25と第2部分26とを有している。第1部分25と第2部分26とは、ハウジング11の高さ方向に沿って並んで設けられているとともに、一体に並んで設けられている。また、第2部分26が、ハウジング11の内部において、基板100に対向する端部側に設けられている。そして、第1部分25が、ハウジング11の内部において、第2部分26に対して、導電部材挿入口22側に設けられている。
第1部分25は、コンタクト12に当接して係止されることで、ハウジング11をコンタクト12及び基板100に対して第1位置P1に位置決めするための部分として設けられている。そして、電気コネクタ1は、第1部分25がコンタクト12に当接して係止した状態で、ハウジング11がコンタクト12及び基板100に対して第1位置P1に位置決めされるように構成されている。
第2部分26は、コンタクト12に当接して係止されることで、ハウジング11をコンタクト12及び基板100に対して第2位置P2に位置決めするための部分として設けられている。そして、電気コネクタ1は、基板100に接続された状態において、ハウジング11が第1位置P1の状態から基板100から離間する方向に向かってコンタクト12に対してスライド移動して相対変位し、導体挟持用内壁部23が後述するコンタクト12のバネ接点部32から離間した状態で、第2部分P2がコンタクト12に当接して係止し、ハウジング11がコンタクト12及び基板100に対して第2位置P2に位置決めされるように構成されている。
また、各位置決め部24は、第2部分26を構成するとともに頭頂面28が設けられた隆起部27と、斜面29と、を含んで構成されている。斜面29は、第1部分25におけるハウジング11の内部で露出した表層の面の一部として設けられており、第1部分25に含まれる面として構成されている。頭頂面28は、第2部分26である隆起部27におけるハウジング11の内部で露出した表層の面の一部として設けられており、第2部分26に含まれる面として構成されている。
隆起部27は、ハウジング11の内部に設けられていてコンタクト12側に向かって凸状に隆起する部分として設けられている。そして、隆起部27には、ハウジング11がコンタクト12に対して相対変位してスライド移動する方向であるスライド移動方向と平行に延びる面として構成された頭頂面28が設けられている。尚、上記のスライド移動方向は、電気コネクタ1の高さ方向と平行な方向となる。また、斜面29は、隆起部27の側方に配置されていて頭頂面28にかけて上記のスライド移動方向に対して斜めに延びる面として構成されている。また、斜面29と頭頂面28とは、上記のスライド移動方向に沿って並ぶように配置されている。そして、電気コネクタ1においては、電気コネクタ1が基板100に接続された状態において、斜面29が、頭頂面28に対して、基板100から離れた側に配置されているように、構成されている。
[コンタクト]
図6は、電気コネクタ1におけるコンタクト12を示す図であって、図6(A)は斜視図であり、図6(B)は平面図であり、図6(C)は正面図であり、図6(D)は側面図である。図1乃至図6に示すコンタクト12は、導電性を有する金属材料で形成されており、フレキシブル導電部材101の導体101aと基板100とを電気的に接続する要素として設けられている。
コンタクト12は、電気コネクタ1において複数備えられている。そして、複数のコンタクト12は、ハウジング11に対してハウジング11の高さ方向に沿ってスライド移動して相対変位可能な状態でハウジング11に保持されている。また、複数のコンタクト12のそれぞれは、例えばプレス打ち抜き加工により形成された板金が折り曲げられることにより形成されている。そして、複数のコンタクト12のそれぞれは、本体部30、基板接続部31、バネ接点部32、等を備えて構成されている。本体部30、基板接続部31、バネ接点部32は、一体に設けられている。
本体部30は、長手方向を有する板状の部分として設けられ、ハウジング11のコンタクト保持孔21に挿入されて嵌め込まれる部分として設けられている。コンタクト12は、ハウジング11のコンタクト保持孔21に対して、ハウジング11の高さ方向における基板100に対向する側の端部(即ち、導電部材挿入口22が設けられている端部と反対側の端部)から挿入され、コンタクト保持孔21においてハウジング11に保持される。尚、ハウジング11のコンタクト保持孔21は、ハウジング11における基板100に対向する側の端部において、開口21aにて開口している。コンタクト12は、開口21aからコンタクト保持孔21に挿入され、ハウジング11に保持される。
また、本体部30における長手方向に垂直な方向である幅方向の両側には、仮保持用突起30aが設けられている。コンタクト12がハウジング11に挿入される際には、本体部30がコンタクト保持孔21に対してスライド移動可能な状態で嵌め込まれる。そして、本体部30がコンタクト保持孔21にスライド移動自在に嵌め込まれた状態では、本体部30の幅方向の両側の突起30aが、コンタクト保持孔21に対して摺動可能な状態で係止される。これにより、コンタクト12は、ハウジング11に対して、スライド移動可能な状態で仮保持された状態となる。このように、電気コネクタ1は、コンタクト12が、突起30aによってハウジング11に仮保持されている。このため、電気コネクタ1が搬送される際において、コンタクト12が、ハウジング11に対して、搬送時に生じる振動によって過度に相対変位してしまうことが抑制される。これにより、電気コネクタ1の搬送時の破損等の発生を抑制することができる。尚、電気コネクタ1は、搬送される際には、例えば、図3(A)に示すように、コンタクト12に対するハウジング11の相対位置が第1位置P1である状態で搬送される。この場合、コンタクト12は、突起30aによってハウジング11に仮保持されていることに加え、後述のバネ接点部32の係止部32dが、位置決め部24の第1部分25の斜面29に対して当接し、ハウジング11と係止している。これにより、電気コネクタ1の搬送の際に、コンタクト12が、ハウジング11の高さ方向に沿ってハウジング11から飛び出してしまうことが防止される。
基板接続部31は、コンタクト12において、基板100に対して実装されて基板100に接続される部分として設けられている。基板接続部31は、本体部30の長手方向における一方の端部側において、本体部30と一体に設けられている。そして、基板接続部31は、基板100に設けられたスルーホール100aに対して圧入される(図5を参照)。そして、基板接続部31は、基板100のスルーホール100aに圧入された状態で、基板100に対してはんだ付けによって接続される。尚、図5では、基板接続部31を基板100に対してはんだ付けによって接続するはんだの図示は省略されている。基板接続部31が、基板100に対してスルーホール100aにてはんだ付けされることによって、コンタクト12が、基板100に対して、電気的及び機械的に接続される。
また、基板接続部31には、片持ち状に延びるバネ突起31aが設けられている。バネ突起31aは、本体部30の長手方向と同じ方向で略直線状に延びる基板接続部31において、斜めに片持ち状に突出した突起部分として設けられている。基板接続部31は、基板100のスルーホール100aに挿入されると、バネ突起31aが、スルーホール100aの内周と当接してスルーホール100aの内側に弾性変形して撓むように構成されている。そして、バネ突起31aが弾性変形して撓んだ状態で、基板接続部31のスルーホール100aの挿入動作が完了する。これにより、バネ突起31aによるバネ力によって基板接続部31がスルーホール100aに圧入された状態となる。これにより、はんだ付けが行われていない状態においても、基板接続部31が基板100に対して保持され、コンタクト12の基板100からの抜け止めが図られた状態となる。バネ突起31aによるバネ力によって基板接続部31がスルーホール100aに圧入された状態で、はんだ付けが行われることで、コンタクト12が基板100に対して最終的に接続された状態となる。
バネ接点部32は、コンタクト12において、フレキシブル導電部材101の先端部分101cで露出した導体101aに対して接触して電気的に接続される部分として設けられている。また、バネ接点部32は、ハウジング11に対して導電部材挿入口22から挿入されたフレキシブル導電部材101の先端部分101cの導体101aを、ハウジング11の導体挟持用内壁部23との間で挟み込んだ状態で、導体101aに接触するように構成されている。
また、バネ接点部32は、本体部30の長手方向における他方の端部側において、本体部30と一体に設けられている。即ち、バネ接点部32は、本体部30の長手方向における基板接続部31が設けられている端部側と反対の端部側において、本体部30と一体に設けられている。また、バネ接点部32は、屈曲部32a、板バネ部32b、接点部32c、係止部32d、を備えて構成されている。
屈曲部32aは、本体部30における他方の端部と一体に連続して設けられ、略180度に亘って半円弧状に屈曲した部分として設けられている。板バネ部32bは、屈曲部32aから連続して板状に延びるとともに屈曲部32aから片持ち状に延びる板バネ部分として設けられている。屈曲部32aから片持ち状に延びる板バネ部32bの先端側の部分は、本体部30の長手方向に対して斜めの方向に沿って延びるように設けられている。バネ接点部32は、上記の屈曲部32a及び板バネ部32bを有していることで、ハウジング11の導体挟持用内壁部23との間で導体101aを挟み込むバネ力を発揮するように構成されている。
接点部32cは、バネ接点部32において、フレキシブル導電部材101の先端部分101cで露出した導体101aに対して接触する部分として設けられている。そして、本実施形態では、接点部32cは、片持ち状に延びる板バネ部32bの先端側の縁部分(エッジ部分)の一部として構成されている。また、フレキシブル導電部材101の先端部分101cがハウジング11に挿入されて導体101aが導体挟持用内壁部23とバネ接点部32との間で挟み込まれる際には、屈曲部32a及び板バネ部32bによって発揮されるバネ力によって、接点部32cが、導体101aに対して押し付けられることになる。
尚、接点部32cは、上記のとおり、片持ち状に延びる板バネ部32bの先端側の縁部分として設けられている。このため、接点部32cは、フレキシブル導電部材101の導体101aに対して、十分な接触圧力が確保された状態で強固に接触することができる。これにより、接点部32cと導体101aとの間において、より安定した接続状態を維持することができる。
係止部32dは、ハウジング11がコンタクト12に対して第1位置P1及び第2位置P2の一方において係止される際にハウジング11の位置決め部24に当接してハウジング11を係止する部分として設けられている。そして、係止部32dは、ハウジング11がコンタクト12に対して第1位置P1にて係止される際には、位置決め部24の第1部分25の斜面29に対して当接してハウジング11を係止するように構成されている。また、係止部32dは、ハウジング11がコンタクト12に対して第2位置P2にて係止される際には、位置決め部24の第2部分26の頭頂面28に対して当接してハウジング11を係止するように構成されている。
また、係止部32dは、バネ接点部32において、一対で設けられており、片持ち状に延びる板バネ部32bの先端側の端部において、幅方向の両側にそれぞれ設けられている。尚、片持ち状に延びる板バネ部32bの先端側の端部においては、板バネ部32bが片持ち状に延びる方向に対して垂直な方向である板バネ部32bの幅方向の両側に向かってそれぞれ突出した部分が設けられている。そして、一対の係止部32dは、板バネ部32bの先端側における幅方向の両側に突出した部分にそれぞれ設けられている。また、片持ち状に延びる板バネ部32bの先端側の部分において、一対の係止部32dは、接点部32cの両側に配置されている。
また、電気コネクタ1は、板バネ部32bの先端側の端部に設けられた一対の係止部32dのそれぞれが、ハウジング11において各コンタクト保持孔21に対応する位置に設けられた一対の位置決め部24のそれぞれに対して当接するように、構成されている。そして、一対の係止部32dは、各コンタクト保持孔21に対応する位置に設けられた一対の位置決め部24に対して、第1部分25及び第2部分26のうちの同じ部分に対して同時に当接するように構成されている。即ち、電気コネクタ1は、一対の係止部32dにおける一方が、一対の位置決め部24のうちの一方の第1部分25に当接する際には、一対の係止部32dにおける他方も、一対の位置決め部24のうちの他方の第1部分25に当接するように、構成されている。そして、電気コネクタ1は、一対の係止部32dにおける一方が、一対の位置決め部24のうちの一方の第2部分26に当接する際には、一対の係止部32dにおける他方も、一対の位置決め部24のうちの他方の第2部分26に当接するように、構成されている。
[スライド範囲規制機構]
電気コネクタ1のハウジング11及びコンタクト12には、スライド範囲規制機構33が設けられている。電気コネクタ1においては、スライド範囲規制機構33は複数設けられており、電気コネクタ1に備えられる複数のコンタクト12に対応して設けられている。即ち、電気コネクタ1においては、コンタクト12の個数と同数のスライド範囲規制機構33が設けられている。
スライド範囲規制機構33は、ハウジング11及びコンタクト12の一方が他方に対して相対変位してスライド移動する範囲を規制する機構として設けられている。そして、スライド範囲規制機構33は、ハウジング11に設けられた第1係合部34と、コンタクト12に設けられた第2係合部35と、を含んで構成されている。
第1係合部34は、ハウジング11の内部において、コンタクト保持孔21に対応する位置に設けられている。このため、第1係合部34は、ハウジング11において、コンタクト保持孔21の個数と同数設けられている。そして、第1係合部34は、ハウジング11の内部において、コンタクト保持孔21の内側に向かって凸状に突出した部分として設けられている。また、第1係合部34は、コンタクト保持孔21に挿入されてハウジング11に保持されたコンタクト12の第2係合部35に対して当接して係合可能に設けられている。
第2係合部35は、コンタクト12における本体部30の中央部分の一部が本体部30の長手方向に沿って片持ち状に切り起こされて形成された部分として設けられている。尚、コンタクト12は、本体部30の長手方向が、ハウジング11の高さ方向に沿って延びた状態で、ハウジング11に保持されている。このため、コンタクト12がハウジング11に保持された状態では、第2係合部35は、本体部30において、ハウジング11の高さ方向に沿って片持ち状に切り起こされた状態で設けられている。また、第2係合部35は、本体部30の一部が切り起こされることで、本体部30の長手方向に対して斜めの方向に沿って片持ち状に延びるように設けられている。このため、第2係合部35は、本体部30に対して弾性変形して撓む板バネ状の部分として構成されている。また、本体部30から片持ち状に延びる第2係合部35は、本体部30の長手方向に対して斜めの方向であって基板接続部31側に向かって延びるように設けられている。
また、第2係合部35は、基板接続部31側に向かって片持ち状に延びる先端側の端部において、ハウジング11の第1係合部34に対して当接して係合可能に設けられている。そして、第2係合部35は、電気コネクタ1が基板100に接続された状態において、ハウジング11が基板100から離間する方向に向かってコンタクト12に対して第1位置P1の状態からスライド移動して相対変位して第2位置P2の状態に到達した際に第1係合部34に当接して係合するように構成されている。
尚、第2係合部35が設けられたコンタクト12は、ハウジング11に対して挿入されて保持されている。コンタクト12のハウジング11への挿入の際には、コンタクト12は、バネ接点部32側からハウジング11に挿入される。また、コンタクト12のハウジング11への挿入の際には、コンタクト12は、ハウジング11における基板100に対向する側の端部で開口した開口21aから、コンタクト保持孔21に挿入される。コンタクト12がコンタクト保持孔21に挿入されると、まず、片持ち状に延びる第2係合部35の根本側の部分が第1係合部34と当接し、第2係合部35は、一旦、本体部30側に向かって弾性変形して撓む。そして、第2係合部35が、コンタクト保持孔21における第1係合部34が突出している領域を通過すると、本体部30側に撓んでいた第2係合部35が、弾性回復し、本体部30に対して斜めに延びた状態に戻ることになる。この状態では、ハウジング11が、コンタクト12に対して、コンタクト12がコンタクト保持孔21に挿入された方向と反対方向に沿ってスライド移動すると、第2係合部35の先端側の端部が、第1係合部34に当接して係合する。このため、ハウジング11がコンタクト12に対して相対変位してスライド移動する範囲が、スライド範囲規制機構33の第1係合部34と第2係合部35との係合によって、規制されることになる。また、これにより、コンタクト12がハウジング11から抜けて外れてしまうことが防止されることになる。
[電気コネクタの作動]
次に、上述した電気コネクタ1を用いた基板100とフレキシブル導電部材101との接続操作及び接続解除操作が行われる際における電気コネクタ1の作動について説明する。電気コネクタ1を用いた基板100とフレキシブル導電部材101との接続操作が行われる際には、まず、電気コネクタ1が基板100に対して接続される。
電気コネクタ1の基板100への接続の際には、例えば、図3に示すようにハウジング11が複数のコンタクト12に対して第1位置P1に位置決めされた状態で、電気コネクタ1の基板100への接続が行われる。尚、ハウジング11が複数のコンタクト12に対して第2位置P2に位置決めされた状態で電気コネクタ1の基板100への接続が行われた場合には、電気コネクタ1へのフレキシブル導電部材101の接続の前に、ハウジング11を第1位置P1に移動させる操作が行われる。具体的には、電気コネクタ1の基板100への接続後であって電気コネクタ1へのフレキシブル導電部材101の接続の前に、ハウジング11が複数のコンタクト12に対して第1位置P1に位置決めされた状態となるように、ハウジング11を複数のコンタクト12に対してスライド移動させる操作が行われる。
電気コネクタ1の基板100への接続の際には、電気コネクタ1は、各コンタクト12が基板100の各スルーホール100aに接続されることで、基板100に対して接続される。そして、各コンタクト12が各スルーホール100aにて基板100に接続される際には、まず、各コンタクト12の基板接続部31が各スルーホール100aに挿入される。基板接続部31がスルーホール100aに挿入されると、基板接続部31のバネ突起31aがスルーホール31aの内周面に係合し、基板接続部31が基板100に圧入された状態となる(図5を参照)。尚、複数のコンタクト12の基板接続31の複数のスルーホール100aへの圧入は、同時タイミングで行われる。複数のコンタクト12の複数のスルーホール100aへの圧入が終了すると、複数のコンタクト12の基板接続部31と基板100とのはんだ付けが行われる。このはんだ付けが終了することで、電気コネクタ1の基板100への接続操作が終了することになる。尚、図5においては、基板接続部31を基板100に対してはんだ付けによって接続するはんだの図示は省略されている。また、後述する図7乃至図10においても、基板接続部31を基板100に対してはんだ付けによって接続するはんだの図示は省略されている。
尚、電気コネクタ1は、その高さ方向が基板100の表面に対して垂直に延びた状態で、基板100に対して接続される。そして、電気コネクタ1は、フレキシブル導電部材101が挿入される導電部材挿入口22が、電気コネクタ1の高さ方向における一方の端部に設けられている。このため、フレキシブル導電部材101は、基板100の表面に対して垂直な方向に沿って電気コネクタ1に挿入されて電気コネクタ1に接続される。
電気コネクタ1の基板100への接続が終了すると、次いで、基板100に接続された電気コネクタ1に対するフレキシブル導電部材101の接続が行われる。図7及び図8は、電気コネクタ1へのフレキシブル導電部材101の接続操作を説明するための図である。また、図7及び図8は、電気コネクタ1、基板100、及びフレキシブル導電部材101の斜視図であって、電気コネクタ1、基板100、及びフレキシブル導電部材101の断面を含む状態で示す図である。
基板100に接続された電気コネクタ1に対するフレキシブル導電部材101の接続操作は、図5に示すように、ハウジング11がコンタクト12及び基板100に対して第1位置P1に位置決めされた状態で行われる。ハウジング11が第1位置P1に位置決めされた状態では、ハウジング11は、基板100に対して接近した位置に位置しており、基板100の表面に対して当接した位置に位置している。より具体的には、ハウジング11が第1位置P1に位置決めされた状態では、ハウジング11は、ハウジング11の高さ方向における導電部材挿入口22が設けられた側と反対側の端部において基板100の表面に当接した位置に位置している。
フレキシブル導電部材101は、上記のように、ハウジング11が第1位置P1に位置決めされた状態で、電気コネクタ1に接続される。このとき、フレキシブル導電部材101は、その先端部分101cが、導電部材挿入口22からハウジング11の内部に挿入される。導電部材挿入口22から挿入されたフレキシブル導電部材101の先端部分101cは、図7に示すように、ハウジング11の内部において、導体挟持用内壁部23とコンタクト12のバネ接点部32との間に挿入される。フレキシブル導電部材101の先端部分101cが、導体挟持用内壁部23とバネ接点部32との間に挿入されると、先端部分101cで露出した導体101aとバネ接点部32とが当接し、バネ接点部32の板バネ部32bが撓むことになる。そして、フレキシブル導電部材101の先端部分101cの導体101aは、導体挟持用内壁部23とバネ接点部32との間で挟み込まれた状態となる。尚、フレキシブル導電部材101の導体101aとバネ接点部32とが当接し、バネ接点部32の板バネ部32bが撓むと、一対の位置決め部24の第1部分25に係止していたバネ接点部32の一対の係止部32dは、一対の位置決め部24から離間する。これにより、フレキシブル導電部材101の導体101aとバネ接点部32とが当接した状態では、ハウジング11の位置決め部24とコンタクト12との係止が解除された状態となる。
フレキシブル導電部材101の先端部分101cがハウジング11の内部の奥まで挿入されると、図8に示すように、フレキシブル導電部材101と電気コネクタ1との接続が完了した状態となる。この状態では、ハウジング11の内部において、フレキシブル導電部材101の先端部分101cの導体101aが、導体挟持用内壁部23とバネ接点部32との間で挟み込まれ、バネ接点部32の接点部32cが導体101aに接触している。そして、バネ接点部32の接点部32cは、板バネ部32bが弾性変形して撓むことで生じているバネ力によって、導体101aに対して押し付けられた状態で接触している。これにより、コンタクト12とフレキシブル導電部材101の導体101aとが電気的に接続されている。また、フレキシブル導電部材101の先端部分101cがハウジング11に挿入されてフレキシブル導電部材101と電気コネクタ1との接続が完了した状態では、電気コネクタ1の全てのコンタクト12とフレキシブル導電部材101の全ての導体101aとが、同様に、電気的に接続されている。
尚、ハウジング11には、内部において、フレキシブル導電部材101の先端部分101cにて露出した導体101aの先端部と当接するストッパ36が設けられている。ストッパ36は、ハウジング11へのフレキシブル導電部材101の先端部分101cの挿入量を規制し、ハウジング11におけるフレキシブル導電部材101の先端部分101cの端部の位置の位置決めを行う部分として設けられている。フレキシブル導電部材101と電気コネクタ1とを接続する作業の際には、フレキシブル導電部材101の先端部分101cの端部がストッパ36に当接する位置まで、フレキシブル導電部材101の先端部分101cのハウジング11への挿入動作が行われることになる。
上記のように、フレキシブル導電部材101の先端部分101cがハウジング11へ挿入され、複数のコンタクト12とフレキシブル導電部材101の複数の導体101aとが電気的に接続されることで、フレキシブル導電部材101と電気コネクタ1との接続が完了する。そして、電気コネクタ1を介した基板100とフレキシブル導電部材101との接続も完了する。
次に、基板100とフレキシブル導電部材101との接続を解除する接続解除操作の際における電気コネクタ1の作動について説明する。図9及び図10は、基板100とフレキシブル導電部材101との接続解除操作を説明するための図である。また、図9は、電気コネクタ1、基板100、及びフレキシブル導電部材101の斜視図であって、電気コネクタ1、基板100、及びフレキシブル導電部材101の断面を含む状態で示す図である。そして、図10は、電気コネクタ1及び基板100の斜視図であって、電気コネクタ1及び基板100の断面を含む状態で示す図である。
電気コネクタ1を介して基板100とフレキシブル導電部材101とが接続された図8に示す状態から、基板100とフレキシブル導電部材101との接続解除操作が行われる際には、まず、ハウジング11をコンタクト12に対してスライド移動させる操作が行われる。電気コネクタ1と基板100とが接続された状態では、電気コネクタ1における複数のコンタクト12は、基板100に対して相対変位することなく固定された状態で接続されている。この状態で、コンタクト12に対して相対変位してスライド移動可能なハウジング11をコンタクト12に対してスライド移動させる操作が行われる。
上記の操作が行われると、図9に示すように、基板100に固定されたコンタクト12に対してハウジング11がスライド移動し、ハウジング11が基板100及びコンタクト12に対して相対変位することになる。また、フレキシブル導電部材101の先端部分101cの導体101aは、ハウジング11の内部において、導体挟持用内壁部23に対して、導体101aの長手方向における十分な長さに亘って接触しており(即ち、ハウジング11の高さ方向における十分な長さに亘って接触しており)、十分な摩擦力が作用する状態で導体挟持用内壁部23によって支持されている。このため、ハウジング11が基板100及びコンタクト12に対して相対変位すると、フレキシブル導電部材101の先端部分101cも、ハウジング11とともに基板100及びコンタクト12に対して相対変位した状態となる。尚、電気コネクタ1では、フレキシブル導電部材101の先端部分101cの導体101aは、導体挟持用内壁部23に加え、ストッパ36によっても支持されている。このため、ハウジング11が基板100及びコンタクト12に対して相対変位すると、フレキシブル導電部材101の先端部分101cも、基板100及びコンタクト12に対してハウジング11とともにハウジング11とずれることなく相対変位した状態となる。
また、上記の通り、ハウジング11のスライド移動操作が行われてハウジング11が基板100及びコンタクト12に対して相対変位すると、フレキシブル導電部材101の先端部分101cもハウジング11とともに基板100及びコンタクト12に対して相対変位する。これにより、ハウジング11が基板100から離間するとともに、導体挟持用内壁部23とバネ接点部32とが離間し、導体挟持用内壁部23とバネ接点部32との間で導体101aが挟み込まれていた状態が解除される。更に、導体101aがバネ接点部32から外れる位置まで相対移動する。これにより、導体101aとバネ接点部32との接触が解除される。
また、ハウジング11のスライド移動操作が行われてハウジング11が基板100及びコンタクト12に対して相対変位すると、ハウジング11の位置決め部24の第2部分26が、コンタクト12のバネ接点部32に対して相対変位する。そして、ハウジング11の位置決め部24の第2部分26が、コンタクト12のバネ接点部32に対して相対変位するとともに、導体101aとバネ接点部32との接触が解除された状態では、位置決め部24の第2部分26とバネ接点部32の係止部32dとが係止する。これにより、ハウジング11が第2位置P2にて位置決めされ、導体101aとバネ接点部32との接触が解除された図9に示す状態となる。
図9に示すように、ハウジング11が第2位置P2にて位置決めされ、導体101aとバネ接点部32との接触が解除された状態となると、ハウジング11の内部において、フレキシブル導電部材101の先端部分101cの電気コネクタ1による拘束が解除された状態となる。このため、基板100とフレキシブル導電部材101との接続解除操作を行う作業者は、ハウジング11の導電部材挿入口22からフレキシブル導電部材101の先端部分101cを容易に抜き出すことができる。図10は、ハウジング11からフレキシブル導電部材101の先端部分101cが抜き出された状態を示している。ハウジング11からフレキシブル導電部材101の先端部分101cが抜き出されることで、電気コネクタ1とフレキシブル導電部材101との接続が解除され、電気コネクタ1を介した基板100とフレキシブル導電部材101との接続が解除されることになる。
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態によると、ハウジング11に対してスライド移動して相対変位可能に保持されたコンタクト12が、その基板接続部31にて基板100に接続されることにより、電気コネクタ1が基板100に接続される。これにより、電気コネクタ1は、コンタクト12が基板100に対して固定されるとともに、ハウジング11がコンタクト12及び基板100に対して相対変位可能な状態で、基板100に対して設置される。
次いで、上記のように基板100に接続された電気コネクタ1に対して、フレキシブル導電部材101が接続される。電気コネクタ1とフレキシブル導電部材101との接続操作は、コンタクト12及び基板100に対して相対変位可能なハウジング11をコンタクト12に対して所定の位置P1(第1位置P1)に位置させた状態で行われる。ハウジング11がコンタクト12に対して所定の位置P1に位置した状態で、フレキシブル導電部材101の先端部分101cが、ハウジング11に挿入される。ハウジング11に挿入されたフレキシブル導電部材101の先端部分101cの導体101aは、ハウジング11の導体挟持用内壁部23とコンタクト12のバネ接点部32との間に挿入される。このとき、バネ接点部32は、バネ性を有しており、フレキシブル導電部材101の導体101aとの接触に伴って弾性変形する。このため、導体挟持用内壁部23とバネ接点部32との間に挿入されたフレキシブル導電部材101の導体101aは、バネ接点部32のバネ力によって押圧され、導体挟持用内壁部23とバネ接点部32との間で挟み込まれて十分な接圧が確保された状態でバネ接点部32と接触し、コンタクト12と電気的に接続される。
上述のように、電気コネクタ1によると、ハウジング11とコンタクト12とが、互いにスライド移動して相対変位可能に設けられ、更に、コンタクト12にバネ接点部32が設けられている。そして、ハウジング11をコンタクト12に対して所定の位置P1に位置させ、導体挟持用内壁部23とバネ接点部32との間でフレキシブル導電部材101の先端部分101cの導体101aを挟み込んで保持することが可能な状態で、フレキシブル導電部材101の先端部分101cの導体101aがハウジング11に挿入される。この挿入に伴い、バネ接点部32が弾性変形し、十分な接圧が確保された状態で、フレキシブル導電部材101の導体101aとバネ接点部32とが接触し、フレキシブル導電部材101とコンタクト12とが電気的に接続される。これにより、容易に基板100とフレキシブル導電部材101とを接続することができる。
また、電気コネクタ1によると、ハウジング11とコンタクト12とが、互いにスライド移動して相対変位可能に設けられている。このため、電気コネクタ1にフレキシブル導電部材101が接続された状態で、ハウジング11をコンタクト12に対してスライド移動させて、ハウジング11をコンタクト12及び基板100に対して相対変位させることができる。よって、基板100とフレキシブル導電部材101との接続を解除する際には、ハウジング11がコンタクト12に対して所定の位置P1に対応する位置に位置して導体挟持用内壁部23とバネ接点部32との間でフレキシブル導電部材101の先端部分101cの導体101aが挟み込まれて保持された状態から、ハウジング11をコンタクト12に対してスライド移動させることができる。そして、ハウジング11を所定の位置P1に対応する位置から変位させ、ハウジング11の導体挟持用内壁部23をコンタクト12のバネ接点部32から離間させることができる。これにより、バネ接点部32を弾性回復させて導体挟持用内壁部23とバネ接点部32との間でフレキシブル導電部材101の先端部分101cの導体101aを挟み込んだ状態を解除し、フレキシブル導電部材101を電気コネクタ1から抜き出すことができる。これにより、容易に基板100とフレキシブル導電部材101との接続を解除することができる。
また、ハウジング11及びコンタクト12には、ハウジング11とコンタクト12とが相対変位してスライド移動する範囲を規制するスライド範囲規制機構33が設けられている。このため、基板100とフレキシブル導電部材101との接続を解除するために、ハウジング11をコンタクト12に対してスライド移動させて所定の位置P1に対応する位置から変位させる際に、スライド範囲規制機構33によって、ハウジング11がコンタクト12から抜けてしまうことを防止することができる。よって、基板100とフレキシブル導電部材101との接続解除操作の際に、ハウジング11とコンタクト12とが分離して操作性が阻害されてしまうことが無く、接続解除操作を容易に行うことができる。
また、上述のように、電気コネクタ1によると、ハウジング11とコンタクト12とが互いにスライド移動して相対変位可能に設けられ、コンタクト12にバネ接点部32が設けられ、ハウジング11及びコンタクト12にスライド範囲規制機構33が設けられている。このため、基板100とフレキシブル導電部材101との接続操作及び接続解除操作が容易な電気コネクタ1の構成を、ハウジング11とコンタクト12とを用いて実現でき、接続操作及び接続解除操作の容易化を図るための他の部品或いは部材を必要とせずに実現することができる。よって、本実施形態の電気コネクタ1は、特許文献1に開示された電気コネクタにおいて必要とされる部品或いは部材、即ち、コンタクトとは別体で設けられた板バネとハウジングとは別体で設けられたスライド部材とを必要とすることが無い。これにより、本実施形態の電気コネクタ1によると、部品点数を削減し、構造の簡素化を図ることができる。
従って、本実施形態によると、基板100とフレキシブル導電部材101との接続操作及び接続解除操作が容易であるとともに、部品点数の削減及び構造の簡素化を図ることができる、電気コネクタ1を提供することができる。
また、本実施形態によると、コンタクト12及び基板100に対して相対変位するハウジング11において、コンタクト12に対してハウジング11を第1位置P1及び第2位置P2の2つの位置で位置決めさせる位置決め部24が設けられる。そして、第1位置P1では、ハウジング11にフレキシブル導電部材101の先端部分101cが挿入されてフレキシブル導電部材101と電気コネクタ1とが接続され、第2位置P2では、ハウジング11からフレキシブル導電部材101の先端部分101cが抜き出されてフレキシブル導電部材101と電気コネクタ1との接続が解除される。このため、コンタクト12にスライド移動するハウジング11をコンタクト12に係止して位置決めさせた状態で、容易に、フレキシブル導電部材101と電気コネクタ1との接続操作及び接続解除操作を行うことができる。
また、本実施形態によると、位置決め部24に第1部分25と第2部分26との2つの部分が設けられる。そして、第1部分25がコンタクト12に当接して係止した状態では、ハウジング11が第1位置P1で位置決めされる。更に、第1位置P1の状態からハウジング11が基板100から離間する方向に向かってコンタクト12に対してスライド移動すると、第2部分26がコンタクト12に当接して係止する。第2部分P2がコンタクト12に当接して係止した状態では、導体挟持用内壁部23がバネ接点部32から離間し、ハウジング11が第2位置P2で位置決めされる。よって、ハウジング11がコンタクト12に対してスライド移動して基板100に対して相対変位する際にコンタクト12に対して異なる位置で当接して係止する2つの部分(第1部分25、第2部分26)を設けた簡素な位置決め部24の構成で、第1位置P1と第2位置P2との2つの位置でハウジング11をコンタクト12及び基板100に対して容易に位置決めすることができる。
また、本実施形態によると、ハウジング11において、コンタクト12側に向かって隆起するとともにスライド移動方向と平行に延びる頭頂面28を有する隆起部27と、隆起部27の側方でスライド移動方向に対して斜めに延びる斜面29とを設けることで、位置決め部24を構成することができる。よって、スライド移動方向に沿って並んで配置された第1部分25の斜面29と第2部分26の頭頂面28とを設けた簡素な構成で、第1位置P1と第2位置P2との2つの位置でハウジング11をコンタクト12及び基板100に対して容易に位置決めすることができる位置決め部24を構成することができる。
また、本実施形態によると、ハウジング11が基板100から離間する方向に向かってコンタクト12に対して第1位置P1の状態からスライド移動して相対変位して第2位置P2の状態に到達した際、ハウジング11の第1係合部34がコンタクト12の第2係合部35に当接して係合する。これにより、第1位置P1の状態と第2位置P2の状態との間におけるコンタクト12とハウジング11との相対的なスライド移動を許容しつつ、コンタクト12とハウジング11との相対的なスライド移動範囲を効率よく規制することができる。よって、ハウジング11とコンタクト12とが第1位置P1の状態と第2位置P2の状態との間で相対変位してスライド移動可能なようにそのスライド範囲を規制するスライド範囲規制機構33を、ハウジング11の第1係合部34とコンタクト12の第2係合部35とを含む簡素な構造により実現することができる。また、スライド範囲規制機構33が、ハウジング11の第1係合部34とコンタクト12の第2係合部35とを含む簡素な構造のため、コンパクトで省スペースなスライド範囲規制機構33を実現することができる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)前述の実施形態では、複数の導体を有するフレキシブル導電部材が接続される電気コネクタの形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。1つの導体を有するフレキシブル導電部材が接続される電気コネクタの形態が実施されてもよい。この場合、1つのコンタクトを有する電気コネクタの形態が実施されてもよく、また、複数のコンタクトを有し、1つの導体を有するフレキシブル導電部材が複数接続される電気コネクタの形態が実施されてもよい。
(2)前述の実施形態では、スルーホールに圧入されてはんだ付けされることで基板に接続される基板接続部をコンタクトが有する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、基板の表面に実装される基板接続部を有するコンタクトを備えた電気コネクタの形態が実施されてもよい。
(3)前述の実施形態では、電気コネクタが、その高さ方向が基板の表面に対して垂直に延びた状態で基板に対して接続され、フレキシブル導電部材が、基板の表面に対して垂直な方向に沿って電気コネクタに挿入されて電気コネクタに接続される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。電気コネクタが、その高さ方向が基板の表面に対して平行に延びた状態で基板に対して接続され、フレキシブル導電部材が、基板の表面に対して平行な方向に沿って電気コネクタに挿入されて電気コネクタに接続される形態が実施されてもよい。
(4)前述の実施形態では、位置決め部が、頭頂面が設けられた隆起部と、斜面と、を含み、斜面が第1部分に含まれ、頭頂面が第2部分に含まれ、斜面と頭頂面とがスライド移動方向に沿って並ぶように配置され、斜面が頭頂面に対して基板から離れた側に配置された形態の電気コネクタを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。
例えば、位置決め部が、ハウジングの内部に設けられているとともにコンタクト側に向かって隆起した頭頂部と、頭頂部の両側に配置された第1斜面及び第2斜面と、を含み、第1斜面が第1部分に含まれ、第2斜面が第2部分に含まれ、第1斜面と第2斜面とが、ハウジングがコンタクトに対して相対変位してスライド移動する方向に沿って並ぶように配置され、第1斜面が第2斜面に対して基板から離れた側に配置されて構成された形態の電気コネクタが実施されてもよい。
上記の構成によると、ハウジングにおいて、コンタクト側に向かって隆起した頭頂部と、頭頂部の両側でハウジングのコンタクトに対するスライド移動方向に沿って並んで配置された第1部分の第1斜面及び第2部分の第2斜面とを設けることで、位置決め部を構成することができる。よって、頭頂部を中心としてハウジングのコンタクトに対するスライド移動方向の両側に傾斜する2つの斜面を設けた簡素な構成で、第1位置と第2位置との2つの位置でハウジングをコンタクト及び基板に対して容易に位置決めすることができる位置決め部を構成することができる。
(5)前述の実施形態では、スライド範囲規制機構が、ハウジングに設けられた第1係合部と、コンタクトに設けられた第2係合部とを含み、第2係合部が、ハウジングが基板から離間する方向に向かってコンタクトに対して第1位置の状態からスライド移動して相対変位して第2位置の状態に到達した際に第1係合部に当接して係合するように構成されている形態の電気コネクタを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。
例えば、スライド範囲規制機構が、コンタクトに設けられた長孔と、ハウジングに設けられた係合部と、を備え、長孔が、ハウジングがコンタクトに対して相対変位してスライド移動する方向に沿って延びるように設けられ、係合部が、長孔に対して遊嵌状態で嵌まり込む凸部を有するとともに、凸部が長孔の縁部と当接して係合することで、ハウジングとコンタクトとが相対変位してスライド移動する範囲を規制するように構成された形態の電気コネクタが実施されてもよい。
上記の構成によると、ハウジングの係止部に設けられた凸部が、コンタクトに設けられてコンタクトとハウジングとの相対スライド方向に沿って延びる長孔に遊嵌状態で嵌まり込む。そして、凸部が長孔の縁部と当接することで、コンタクトとハウジングとの相対的なスライド移動範囲が規制される。よって、ハウジング及びコンタクトに設けられて、ハウジングとコンタクトとが相対変位してスライド移動する範囲を規制するスライド範囲規制機構を、ハウジングの凸部とコンタクトの長孔とを含む簡素な構造により実現することができる。また、スライド範囲規制機構が、ハウジングの凸部とコンタクトの長孔とを含む簡素な構造のため、コンパクトで省スペースなスライド範囲規制機構を実現することができる。