JP7076695B2 - D-プシコースを有効成分とする皮膚機能改善組成物 - Google Patents
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Description
ところで自然界にその存在量が少ない単糖およびその誘導体と定義されている希少糖は、食後血糖値上昇抑制作用、脂肪蓄積抑制作用、動脈硬化予防作用、血圧上昇抑制作用、抗酸化作用など数々の作用が報告されており、メタボリックシンドローム対策にも期待される新たな機能性素材として注目されている。希少糖のなかでもD-アロース、D-プシコースは大量生産が可能となり、その生理活性について様々な研究開発がなされてきている。
例えば、高齢者および認知症患者に伴う随伴諸症状に適合する改善、緩和、治療効果に優れた、認知症治療薬、飲食品および皮膚用薬剤であって、フェルラ酸、カカオ・カカオ油脂成分と希少糖(D-プシコース、D-アロース)より選択した1種類以上を配合する認知症治療薬、飲食品および皮膚用薬剤(特許文献1)や、5炭糖および6炭糖から選ばれる1種乃至は2種以上とトレハロースおよびその誘導体から選ばれる1種乃至は2種以上とからなる保湿用の組成物を化粧料などの皮膚外用の組成物に含有させる。この組成物によれば、トレハロース類の保湿機能を高める手段を提供することができる(特許文献2)。
このように、服用あるいは皮膚に塗布する薬剤あるいは化粧料などの有効成分の化学構造の一部としてあるいは助材として添加される物質にD-プシコースが使用されていることが知られている。しかしながら、これら文献には皮膚保湿効果、皮膚抗酸化効果および皮膚抗老化効果についての記載は見あたらない。
D-プシコースおよび/またはその誘導体を生体の皮膚に適用すると、IV型コラーゲンの増加およびオキシタラン線維とエラウニン線維の両方でエラスチンの増加が認められ、加齢や紫外線による皮膚の老化現象が緩和、防止されることが判明した。また、IV型コラーゲンやエラスチンの増加により皮膚の弾力性が向上する。
さらに、D-プシコースおよび/またはその誘導体を生体の皮膚に適用すると、フィラグリンの発現およびトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現が増加し、角質層の層状化の改善が認められた。この現象は生体皮膚の保湿性が向上したことを示している。
このように、D-プシコースおよび/またはその誘導体が、生体の皮膚に対して保湿性、耐老化性、抗酸化性の作用効果を発揮することが実験的に得られた結果が本発明の基礎となった。
(1)D-プシコースおよび/またはD-プシコースのケトン基がアルコール基となった糖アルコール、D-プシコースのアルコール基が酸化したウロン酸、D-プシコースのアルコール基がNH2基で置換されたアミノ糖から選ばれるD-プシコース誘導体を有効成分とする、フィラグリンおよび/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤であって
生体の皮膚に適用すると、フィラグリンの発現を増加させるフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現を増加させるトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
(2)前記フィラグリントおよび/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現の増加が、皮膚のバリア機能の向上作用を有する皮膚保湿機能を発揮させる、上記(1)に記載のフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
(3)前記フィラグリントおよび/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現の増加が、保湿機能の向上作用を有する皮膚保湿機能を発揮させる、上記(1)に記載のフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
(4)前記フィラグリントおよび/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現の増加に加え、生体の皮膚に適用すると、IV型コラーゲン、およびオキシタラン線維とエラウニン線維のいずれかまたは両方でのエラスチン、のいずれか1以上の発現を惹起させる、上記(1)、(2)または(3)に記載のフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
(5)前記フィラグリントおよび/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加が、皮膚粘弾性の向上作用を有する抗老化機能を発揮させる、上記(4)に記載のフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
(7)前記皮膚外用剤が、肌荒れ、乾燥肌改善及び予防用の皮膚外用剤であることを特徴とする、上記(6)に記載のフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
脊椎動物のコラーゲンは28分子種から成る大規模なスーパーファミリーを構成しているが、IV型コラーゲンは、その中でも独特であり、多くの他のコラーゲンとは異なり、基底膜(BMs)中にのみ存在し、遺伝子学的に異なるα1からα6の6種類のα鎖で構成される。IV型コラーゲンは、ラミニン、プロテオグリカンおよびナイドジェンとともに「金網状の」網目構造を形成する。皮膚の自然な加齢や、紫外線への暴露などの環境要因により、IV型コラーゲンの変性が生じる可能性がある。
エラスチンは、皮膚の弾性を司る結合組織の蛋白質であり、リジン残基の架橋で結合される可動性の疎水域を形成するグリシン、プロリンなどの疎水性アミノ酸に富んでいる。エラスチンの主な機能は、水和した際に弾力的に伸縮を繰り返す能力であり、また、エラスチンは皮膚の弾性繊維の主要成分(90%)である。メチルグリオキサールの生成や紫外線への暴露など複数の要因により、エラスチンなどの真皮の弾力網が損傷を受ける可能性があるため、皮膚化粧品研究では、エラスチンを真皮の細胞外基質の構造状態を示すバイオマーカーとして用いることが多い。
また、エラスチンは、コラーゲンと共に網目状にネットワークを形成し、コラーゲンの線維をつなぎ止めるようにして支えている弾力線維であり、弾性に富む組織に多く存在しているタンパク質の一種で、ゴムのように伸縮する性質があることで肌に柔軟性を与えるとともに、コラーゲンの網目状部分を結び付け、コラーゲンと一緒にエラスチンも肌のハリを維持し、シワやたるみを防いでいる。エラスチンが不足するとコラーゲンを支えることができなくなり、肌の弾力がなくなり、シワやたるみの原因に繋がってくる。紫外線やストレスなどで蓄積される活性酸素も、エラスチンやコラーゲンなど肌組織に悪影響を与え、長年にわたる強い紫外線の影響や、日々私たちの生活環境により、コラーゲンと密接に関係しているエラスチンとのネットワークが破壊され、肌のハリや弾力性がなくなってしまい、大きなシワができてしまうことになる。
フィラグリンとは、皮膚の角質層に存在するたんぱく質の1種であり、角質層のなかで水分を保つ働きをする天然保湿因子NMFは約半分をアミノ酸が占めているが、これらのアミノ酸はフィラグリンが分解されて生成されたものである。フィラグリンは、保湿作用はもちろん紫外線によるダメージを防ぐなど皮膚のバリア機能にもなっている。フィラグリンが生成され続け、正しく働けば、肌の透明感や張りは守られるが、フィラグリンの生成量は幼児期が一番多く、その後減少傾向を示し、ストレスや紫外線といった外的な刺激を受けるとさらに生成量が減少する。
表皮の角化細胞では、分化の最終段階でケラチン凝集、核変性、および形質膜と強靱で不溶性の蛋白質様エンベロープとの交換が起こる。この蛋白質様エンベロープは、コーニファイドエンベロープであり、細胞外脂質に架橋してバリア機能を発揮する。トランスグルタミナーゼ(TGM)は、カルシウムイオン(Ca2+)依存性の架橋酵素であり、蛋白結合グルタミンのカルボキサミド基と様々な一級アミン(多くはリジン残基のアミノ基)との間のアシル転移反応を触媒し、蛋白質間にイソペプチド結合を形成し、不溶性の高分子構造を形成する。ヒトの7つのトランスグルタミナーゼ(TGases)のうち4つ(1、2、3、5)は、皮膚を含む最終分化過程にある上皮に発現する。TGase1は、ロリクリン、トリコヒアリン、SPR1、2、3などの基質の架橋に必須である。トランスグルタミナーゼが蛋白質を架橋することで、蛋白質分解性の変性に対する抵抗性が高まる。
本発明の皮膚機能改善組成物、ならびに、これらの剤には、D-プシコースが0.1~40質量%含有されていることが好ましく、0.1質量%未満では所期の目的が達成され難いことがあり、40質量%を超えると多量のD-プシコースを剤中に必要とされる状態に保持することが困難となるばかりか、多量使用することによるコスト高および作用効果の頭打ちの両面からも好ましくはない。さらに好ましい範囲は0.2~30質量%、最も好ましくは0.5~20質量%の範囲を挙げることができる。
本発明の有効成分であるD-プシコースは希少糖の一種であり、自然界には微量にしか存在しない単糖である。糖の基本単位である単糖(炭素数が6つの単糖(ヘキソース)は全部で34種類あり、アルドースが16種類、ケトースが8種類、糖アルコールが10種類あるが、自然界に多量に存在するアルドースとしてはD-グルコース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-リボース、D-キシロース、L-アラビノースの6種類がある。ケトースとしては、自然界には、D-フラクトースが多量に存在しており、他のケトースは希少糖に包含され、そのなかにD-プシコースが含まれている。
D-プシコースは、自然界から抽出されたもの、化学的または生物学的な方法により合成されたものなどを含めてどのような手段により入手してもよい。D-プシコースは、果糖に特定の酵素を作用させることにより得られ、D-ケトヘキソース・3-エピメラーゼを作用させた場合には収率20~25%で生成し、D-プシコース・3-エピメラーゼを作用させた場合には30%程度の収率で生成する。さらにホウ酸を併用した場合には60%程度の収率で生成するとの報告がされている。
本発明で用いるD-プシコースの誘導体は、D-プシコースを出発化合物としてその分子の構造を化学反応により変換した化合物である。D-プシコースを含む六炭糖の誘導体には、糖アルコール(単糖類を還元すると、アルデヒド基およびケトン基はアルコール基となり、炭素原子と同数の多価アルコールとなる)や、ウロン酸(単糖類のアルコール基が酸化したもので、天然ではD-グルクロン酸、ガラクチュロン酸、マンヌロン酸が知られている)、アミノ糖(糖分子のOH基がNH2基で置換されたもの、グルコサミン、コンドロサミン、配糖体などがある)などが一般的であるが、それらに限定されるものではない。D-プシコースの誘導体としては、その糖アルコール、ウロン酸、アミノ糖などが好ましいものとして例示される。
人の生体皮膚外植片に対するD-プシコースのアンチエイジング作用の評価する試験を行ったところ以下の結果を得た。
10%濃度のD-プシコースでは、試験開始5日後にIV型コラーゲン発現がわずかながら増加、10日後にはオキシタラン線維とエラウニン繊維の両方でエラスチン発現が中程度に増加し、わずかなアンチエイジング作用が認められた。
また、20%濃度のD-プシコースでは、試験開始5日後にコラーゲン網の密度が中程度に増加し、IV型コラーゲンの発現が5日後にはわずかに、10日後には中程度に増加したことから、中程度のアンチエイジング作用が認められた。同時に、5日後および10日後にはオキシタラン線維とエラウニン繊維の両方でエラスチン発現がわずかに増加した。
したがって、D-プシコースによりIV型コラーゲン発現の増加、およびオキシタラン線維とエラウニン繊維の両方でエラスチン発現が増加することが見出された。これらの線維類が増加することは、加齢や、紫外線などの環境要因からの影響を軽減してアンチエイジング効果が示されていることとなる。また、コラーゲンやこれらの線維が増加することは皮膚の粘弾性が向上することに相当する。
人の生体皮膚外植片に対するD-プシコースの保湿効果を評価する試験を行ったところ以下の結果を得た。
10%濃度のD-プシコースでは、角質層の脱脂洗浄後に皮膚バリア機能に極めてわずかながら作用が認められた。脱脂洗浄から3および24時間後にフィラグリンの発現がわずかに増加した。解析した他の評価項目に対する影響は認められなかった。
また、20%濃度のD-プシコースでは、角質層の脱脂洗浄後に皮膚バリア機能にわずかな作用が認められた。脱脂洗浄から24時間後に角質層の層状化の改善が認められた。また、脱脂洗浄から3時間および24時間後にフィラグリンの発現がわずかに増加し、脱脂洗浄から24時間後にはTGM-1の発現がわずかに増加した。
人の生体皮膚外植片に対するD-プシコースによるフィラグリンおよびトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現量の増加することは保湿作用効果が向上することを意味するとともに、加齢や紫外線などの環境による皮膚の劣化を緩和あるいは防止することを示している、こうした作用効果はD-プシコースにより新たに見出されたものである。
本試験の目的は、異なる濃度の単糖がヒトの生体皮膚外植片の表皮および真皮構造に及ぼすアンチエイジング作用を評価することである。皮膚には表皮と真皮があり、皮膚のみずみずしさを保つには真皮に存在する蛋白質が重要である。このうちコラーゲンは線維を形成し、一番存在量が多く、真皮層の水分を除いた70%、線維質の90%はコラーゲンである。そしてこのコラーゲンに巻き付いて構造を強化しているのが、弾力性に富むエラスチンである。このコラーゲンとエラスチンによって形成されている網目状の構造内に、ヒアルロン酸やグリコサミノグリカンなどが水分を豊富に抱えてゼリー状になり満たされている。これらの蛋白質は線維芽細胞から分泌される。
コラーゲンには、10種類以上の種類があるが、皮膚の真皮にはI型コラーゲンが最も多く(90%)、その他にIII型コラーゲンも存在する。最近注目されているコラーゲンが、IV型コラーゲンであり、表皮と真皮の境界の基底層に存在する。基底膜は真皮の毛細血管から表皮へと栄養素や酸素を届けたり、逆に表皮の老廃物を回収するなど健康な表皮をつくる重要な役割を果たしているため、最近のアンチエイジング研究では基底層の主成分であるIV型コラーゲンを正常に保つことの重要性も指摘されている。
エラスチン線維の主成分はミクロフィブリル(フィブリリン)と無定型エラスチンであるが,そのほかにもいくつかの分子が結合している。2種類の主成分の比率は真皮内の位置によって異なり、線維の構造や機能にはその組成が反映されている。ミクロフィブリルが多いオキシタラン線維は、基底膜から垂直に伸び乳頭層を貫通して乳頭層と網状層の結合部に達し、水平に走行したより太いエラウニン線維に結合している。エラウニン線維は架橋されたエラスチンをオキシタラン線維よりも多く含む。
・ マッソン3色染色法による一般形態の観察
・IV型コラーゲンの免疫染色
・エラスチンの免疫染色
1.D-プシコース
試験に使用したD-プシコースを表1に示す。
試験は2種類の濃度のD-プシコース溶液を用いて行った。
・蒸留水で10%に希釈(P1)
・蒸留水で20%に希釈(P2)
3.皮膚外植片の作製
49歳の女性の腹壁形成術時に、21の皮膚外植片(径平均11mm)を作製した。この外植片を、BEM培地(BIO-ECの外植片培地)を用い、37℃、5%CO2の加湿条件下、生存状態で培養した。これらの外植片を表2に示すように6片からなる3バッチと3片からなる1バッチに分けた。
培養0日(D0)、培養3日(D3)、培養4日(D4)、培養6日(D6)および培養7日(D7)に、小さなスパーテルを用いてD-プシコース溶液を各外植片に2μLずつ局所塗布した。対照片に塗布は行わなかった。各外植片の培地はD3、D5およびD7に交換し、新たな培地と入れ替えた。
5.サンプリング
D0にバッチT0の外植片をすべて採取し、2つに切断した。一方を緩衝ホルマリン液で固定し、もう一方を-80℃で凍結した。D5及びD10に、指定したバッチから3片を採取し、同様に処理した。
緩衝ホルマリン液中で24時間固定後、Leica TP 1010自動脱水機を用いて試料を脱水し、パラフィンに含浸させた。その後、Leica EG 1160包埋ステーションを用いて試料を包埋した。Leica RM 2125 Minot型ミクロトームを用いて厚さ5μmの切片を作製し、これらの切片をSuperfrost(登録商標)シラン処理スライドガラス上に固定した。Leica DMLBまたはOlympus BX43顕微鏡を用いて顕微鏡検査を実施した。顕微鏡像は、DP72 OlympusカメラおよびCellD storingソフトウェアを用いてデジタル化した。
6.1.一般形態
マッソン3色染色ゴルドナー変法によりパラフィン切片を染色し、一般形態を観察した。
6.2.IV型コラーゲン免疫染色
IV型コラーゲン免疫染色では、Tween 20含有リン酸緩衝化生理食塩水ウシ血清アルブミンで100倍に希釈したウサギポリクローナル抗IV型コラーゲン抗体(SBA、参照番号1340-01)を凍結切片に添加し、ビオチン・ストレプトアビジン増強システム(PK-7200、Vector)を用いて室温で1時間放置した後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC、Invitrogen、参照番号Sa1001)で標識した。核はヨウ化プロピジウム(赤色)で後染色した。
6.3.エラスチン免疫染色
エラスチン免疫染色では、Tween 20含有リン酸緩衝化生理食塩水ウシ血清アルブミンで800倍に希釈したウサギポリクローナル抗エラスチン抗体(Novotec、参照番号25011)を凍結切片に添加し、ビオチン・ストレプトアビジン増強システム(PK-7200、Vector)を用いて室温で2時間放置した後、FITC(Invitrogen、参照番号Sa1001)で標識した。核はヨウ化プロピジウム(赤色)で後染色した。
1.一般形態
空試験バッチ、(塗布なし、培養0日)(D0(T0))
角質層はやや厚く、わずかに層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が4~5層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は極めて中程度である。
真皮乳頭層には中程度に密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
空試験バッチ、(塗布なし、培養5日)(D5(TJ5))
角質層は中程度に厚く、中程度に層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が4~5層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は明瞭である。
真皮乳頭層には低密度のコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
P1塗布バッチ、(10%D-プシコース塗布、培養5日)(D5(P1J5))
角質層はやや厚く、中程度に層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が4~5層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は極めて中程度である。
真皮乳頭層には低密度のコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
P2処理バッチ、(20%D-プシコース塗布、培養5日)(D5(P2J5))
角質層はやや厚く、中程度に層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が4~5層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は明瞭である。
真皮乳頭層にはやや密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である
空試験バッチ、(塗布なし、培養10日)(D10(TJ10))
角質層は厚く、中程度に層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が4~5層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層には低密度のコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
P1塗布バッチ、(10%D-プシコース塗布、培養10日)(D10(P1J10))
角質層は厚く、中程度に層状化している。
表皮には、細胞層上部の核濃縮を伴う多数の細胞を特徴とする形態変化を呈する細胞層が4~5層認められる。基底層には中程度の海面状態が観察される。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層にはやや密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
P2塗布バッチ、(20%D-プシコース塗布、培養10日)(D10(P2J10))
角質層は厚く、中程度に層状化している。
表皮は良好な形態を呈する細胞層が4~5層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層には低密度のコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
抗エラスチン抗体を用いて染色していない陰性対照に陽性所見は認められなかった。抗エラスチン抗体を用いた染色では、D0(T0)では、真皮乳頭層のオキシタラン線維(Fox)の染色はやや明瞭で、エラウニン繊維(Elau)の染色は明瞭であった。真皮網状層のエラスチン線維の染色は明瞭であった(図1参照)。
エラスチン免疫染色におけるバッチの染色状態のまとめを図2に示す。いずれの解析対象バッチでも、真皮網状層のエラスチン繊維の染色は明瞭であった。
抗IV型コラーゲン抗体を用いて染色していない陰性対照に染色は認められなかった。抗IV型コラーゲン抗体を用いた染色では、D0(T0)では、真皮表皮接合部(DEJ)に沿ってやや明瞭かつ均一な染色が認められた(図3参照)。
IV型コラーゲンの免疫染色におけるバッチの染色状態のまとめを図4に示す。
1.一般形態
[培養日数0(D0)]
角質層はやや厚く、わずかに層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が4~5層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は極めて中程度である。
真皮乳頭層には中程度に密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
[培養5日後(D5)]
一般形態はT0の観察結果に類似していた。
D5の空試験バッチ(TJ5)と比較したD-プシコース塗布が一般形態に及ぼす影響:
・10%D-プシコース(P1)では変化は認められなかった。
・20%D-プシコース(P2)ではコラーゲン網の密度に中程度の増加が認められた。
一般形態はD5で観察された形態と同等であった。
空試験バッチ(TJ10)と比較した製品塗布が一般形態に及ぼす影響:
・10%D-プシコース(P1)では細胞層上部の核濃縮を伴う多数の細胞を特徴とする中程度の形態変化が認められ、基底層には中程度の海面状態が認められた。この変化は、角化細胞の分化過程で異常が生じ、顆粒層に核濃縮を伴う細胞が発現したことによるものと考えられる。
・20%D-プシコースではまったく変化は認められなかった。
[培養0日(D0)]
真皮乳頭層のオキシタラン線維(Fox)の染色はやや明瞭で、エラウニン繊維(Elau)の染色は明瞭であった。
D5でのエラスチンの発現は、D0の空試験バッチ(T0)と類似していた。
D5の空試験バッチ(TJ5)と比較した製品塗布がエラスチン発現に及ぼす影響:
・10%D-プシコース(P1)ではオキシタラン線維でわずかに減少したが、エラウニン繊維では変化は認められなかった。
・20%D-プシコース(P21)ではオキシタラン線維でわずかに増加し、エラウニン繊維でもわずかに増加した。
D10でのエラスチンの発現は、D0の空試験バッチ(T0)と類似していた。
D10の空試験バッチ(TJ10)と比較した製品塗布がエラスチン発現に及ぼす影響:
・10%D-プシコース(P1)ではオキシタラン線維で中程度に増加し、エラウニン繊維でも中程度に増加した。
・20%D-プシコース(P2)ではオキシタラン繊維でわずかに増加し、エラウニン繊維でもわずかに増加した(図5参照)。
いずれの解析対象バッチでも、弾性繊維上のエラスチンの発現に差は認められなかった。
[培養0日(D0)]
真皮表皮接合部(DEJ)に沿ってやや明瞭かつ均一な染色が認められた。
D0の空試験バッチ(T0)と比較すると、IV型コラーゲンの発現はわずかに減少していた。
D5の空試験バッチ(TJ5)と比較した製品塗布がIV型コラーゲン発現に及ぼす影響:
・10%D-プシコース(P1)ではIV型コラーゲンの発現がわずかに増加した。
・20%D-プシコース(P2)ではIV型コラーゲンの発現が中程度に増加した。
D0の空試験バッチ(T0)と比較すると、IV型コラーゲンの発現はわずかに減少した。
D10の空試験バッチ(TJ10)と比較した製品塗布がIV型コラーゲン発現に及ぼす影響:
・10%D-プシコース(P1)ではIV型コラーゲンの発現がわずかに減少した。
・20%D-プシコース(P2)ではIV型コラーゲンの発現がわずかに増加した(図6参照)。
これらの試験結果を培養5日後(D5)または培養10日後(D10)の空試験バッチ(TJ5、TJ10)と比較した結果を以下の表3に示す。表3中のFoxはオキシタラン線維を示し、Elauはエラウニン線維を示す。
10%D-プシコース(P1)では、培養5日後(D5)にIV型コラーゲン発現がわずかに増加、培養10日後(D10)にオキシタラン線維とエラウニン繊維の両方でエラスチン発現が中程度に増加し、わずかなアンチエイジング作用が認められた。
20%D-プシコース(P2)では、培養5日後(D5)にコラーゲン網の密度が中程度に増加し、IV型コラーゲンの発現が培養5日後(D5)にはわずかに、培養10日後(D10)には中程度に増加したことから、中程度のアンチエイジング作用が認められた。同時に、培養5日後(D5)および培養10日後(D10)にオキシタラン線維とエラウニン繊維の両方でエラスチン発現がわずかに増加した。
フィラグリンとは、皮膚の角質層に存在する蛋白質の1種である。角質層のなかで水分を保つ働きをする天然保湿因子Natural Moisturizing Factor(NMF)は人間自身がもともと持っている肌中の保湿成分で、角層、角層細胞の中に10~30%あり、水を吸収し、保持する物質のこと。主な成分は、アミノ酸類、乳酸、尿素、クエン酸塩などで、いずれも水分をかかえこむ力がある。約半分を占めるアミノ酸はフィラグリンが分解されて生成されるものである。有棘層で前駆体(ぜんくたい)のプロフィラグリンとして産生され、分解を重ねることで顆粒層でNMFに変化する。フィラグリンは保湿作用はもちろん、紫外線によるダメージを防ぐなど皮膚のバリアー機能も司っている。
トランスグルタミナーゼ(TMG)は、カルシウムイオン(Ca2+)依存性の架橋酵素であり、蛋白結合グルタミンのカルボキサミド基と様々な一級アミン(多くはリジン残基のアミノ基)との間のアシル転移反応を触媒し、蛋白質間にイソペプチド結合を形成し、不溶性の高分子構造を形成する(図7)。この酵素のアイソタイプ(遺伝子異型)の一つであるトランスグルタミナーゼ1(TGM-1)は皮膚に多く存在する。表皮の角質層は、体内の水分の蒸散や外界からの刺激や異物侵入を防ぐバリア機能を担っている。角質層は角質細胞と細胞間脂質から構成され、角質細胞は コーニファイドエンベロープ(Cormified envelope)と呼ばれる細胞膜様構造体で包まれている。コーニファイドエンベロープは、安定な角質細胞構造の構築に寄与しており、皮膚のバリア機能維持にとって重要な構造である。コーニファイドエンベロープは、角層の基底層にあるケラチノサイト(角化細胞)が角化するとともに、角化に必要なタンパク質であるインボルクリンやロリクリン等の蛋白質が合成され、次いでそれらの蛋白質がトランスグルタミナーゼ1の活性化により架橋されることで形成される。トランスグルタミナーゼ1の活性は、コーニファイドエンベロープの正常な形成と表皮の正常な角化、ひいては皮膚の保湿機能の維持・改善にとって重要である。
・ 一般形態の観察
・ フィラグリン免疫染色
・ TGM-1免疫染色
1. D-プシコース
本試験では、実施例1と同様にD-プシコースを蒸留水で希釈し、濃度を10%(P1)および20%(P2)(m/v)とした。
2.外植片の作製の調製
47歳の白人女性(参照番号:P1238-AB47)の腹壁形成術時に、24の皮膚外植片(径平均11±1mm)を作製した。この外植片を、BEM培地(BIO-ECの外植片培地)を用いて、37°C、5%CO2の加湿条件下、生存状態で培養した。
3.脱脂洗浄
以下のプロトコールに従い、バリア機能に変化を加えた。
・ 100%エタノールで皮膚外植片表面を洗浄する
・皮膚外植片表面を脱脂液(エーテル:アセトン=1:1)で2回処理する
・ Kimtech(商標)ティッシュで皮膚外植片表面を拭く
これらの外植片を下記に示すように5バッチに分けた。
培養0日(Day0)に皮膚外植片表面を脱脂洗浄し、小さなスパーテルを用いてD-プシコースを濃度10%(DP1)および20%(DP2)の溶液を外植片に2μLずつ局所塗布した。対照片(バッチT0、D0およびD)に塗布は行わなかった。
5.サンプリング
D0にバッチD0から3つの外植片を採取し、2つに切断した。一方を緩衝ホルマリン液で固定し、もう一方を-80℃で凍結した。3時間後および24時間後に各バッチの外植片を採取し、同様に処理した。緩衝ホルマリン液中で24時間固定後、Leica TP 1020自動脱水機を用いて試料を脱水し、パラフィンに含浸させた。その後、Leica EG 1160包埋ステーションを用いて試料を包埋した。Leica RM 2125 Minot型ミクロトームを用いて厚さ5μmの切片を作製し、これらの切片をSuperfrost(登録商標)組織学検査用スライドガラス上に固定した。Leica CM 3050低温槽を用いて凍結試料から厚さ7μmの切片を作製し、Superfrost(商標)シラン処理スライドガラス上に固定した。Leica DMLBまたはOlympus BX43顕微鏡を用いて顕微鏡検査を実施した。顕微鏡像は、DP72 OlympusカメラおよびCellD storingソフトウェアを用いてデジタル化した。
マッソン3色染色ゴルドナー変法によりパラフィン切片を染色し、一般形態を観察した。
5.2.フィラグリン免疫染色
フィラグリン免疫染色では、Tween 20含有リン酸緩衝化生理食塩水ウシ血清アルブミンで3200倍に希釈したマウス抗ヒトフィラグリンモノクローナル抗体(Saint cruz、参照番号sc-66192、clone AKH1)を、ホルマリンで固定したパラフィン包埋切片に添加し、ビオチン・ストレプトアビジン増幅システム(Invitrogen、参照番号SA1001)を用いて室温で1時間放置した後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC、Invitrogen、参照番号SA1001)で標識した。核はヨウ化プロピジウムで後染色した。免疫染色は顕微鏡検査により評価した。
5.3.TGM-1免疫染色
TGM-1免疫染色では、Tween 20含有リン酸緩衝化生理食塩水ウシ血清アルブミンで100倍に希釈したマウスモノクローナル抗ヒトTGM-1抗体(Harbor BioProducts、clone B.C1)を凍結切片に添加し、ビオチン・ストレプトアビジン増幅システムを用いて室温で2時間放置した後、FITC(Invitrogen、参照番号SA1001)で標識した。核はヨウ化プロピジウムで後染色した。免疫染色は顕微鏡検査により評価した。
1.一般形態
空試験バッチ、(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄なし)(D0(T0))
角質層は中程度に厚く、中程度に層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が2~3層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層にはやや密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
脱脂洗浄バッチ、(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄あり)(D0(D0))
角質層はわずかに厚みがあり、わずかに層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が2~3層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層にはやや密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
脱脂洗浄バッチ、(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄あり、3時間後サンプリング)(D3h)
角質層は中程度に厚く、わずかに層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が3~4層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層にはやや密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
角質層は中程度に厚く、わずかに層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が3~4層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層にはやや密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
脱脂洗浄バッチ(20%D-プシコース塗布、脱脂洗浄あり、3時間後サンプリング)(DP2 3h)
角質層は中程度に厚く、わずかに層状化している。
表皮には良好な形態を呈している細胞層が3~4層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層にはやや密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
角質層は中程度に厚く、わずかに層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が3~4層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層には中程度に密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
脱脂洗浄バッチ(10%D-プシコース塗布、脱脂洗浄あり、24時間後サンプリング)(DP1 24h)
角質層は中程度に厚く、わずかに層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が3~4層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層には中程度に密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
脱脂洗浄バッチ(20%D-プシコース塗布、脱脂洗浄あり、24時間後サンプリング)(DP2 24h)
角質層は中程度に厚く、中程度に層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が3~4層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層には中程度に密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
抗フィラグリン抗体未処理の陰性対照に染色は認められなかった。
対照バッチ(T0)では、角質層底部の2~3細胞層で中程度からやや明瞭(強度)な染色が認められた(図8参照)。
フィラグリン免疫染色におけるバッチの染色状態のまとめを図9に示す。
抗TGM-1抗体未処理の陰性対照に染色は認められなかった。対照バッチ(T0)では、角質層底部で中等度からやや明瞭な染色が認められた(図10参照)。TGM-1免疫染色におけるバッチの染色状態のまとめを図11に示す。
1.一般形態
空試験バッチ(D-プシコース塗布なし)、D0(T0)
角質層は中程度に厚く、中程度に層状化している。
表皮には良好な形態を呈する細胞層が2~3層認められる。
表皮真皮接合部の緩衝は中程度である。
真皮乳頭層にはやや密なコラーゲン繊維網がみられる。
真皮細胞の形態は良好である。
脱脂洗浄バッチ(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄あり)はバッチT0よりも角質層がわずかに密であり、わずかに薄かった。解析した他の評価項目は、バッチT0で認められた結果と類似していた。
3時間後の脱脂洗浄バッチ(D3h)では、一般形態はバッチD0で認められた形態に類似しており、角質層がわずかに厚かった。
バッチD0と比較した製品塗布が一般形態に及ぼす影響:
・10%D-プシコース塗布(P1)では視認できる変化はまったく認められなかった。
・20%D-プシコース塗布(P2)では視認できる変化はまったく認められなかった。
24時間後の脱脂洗浄バッチ(D24h)では、一般形態はバッチD0で認められた形態に類似しており、角質層がわずかに厚かった。
バッチD0と比較した製品塗布が一般形態に及ぼす影響:
・10%D-プシコース(P1)塗布では視認できる変化はまったく認められなかった。
・20%D-プシコース(P2)塗布では角質層の層状化がわずかに進み、中程度に層化していた。
[培養時間なしの形態]
対照バッチ(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄なし)(T0)では、角質層底部の2~3細胞層で中程度からやや明瞭な染色が認められた。
脱脂バッチ(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄あり)(D0)はバッチT0よりもフィラグリンの発現がわずかに減少し、1~2細胞層にのみ発現していた。
[3時間後の形態]
3時間後の脱脂洗浄バッチ(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄あり、3時間培養)(D3h)はバッチD0よりもフィラグリンの発現がわずかに増加し、2~3細胞層に発現していた。
バッチD3hと比較したD-プシコース塗布がフィラグリンの発現に及ぼす影響:
・10%D-プシコース塗布(P1)では3~4細胞層でフィラグリンの発現がわずかに増加した。
・20%D-プシコース塗布(P2)では3~4細胞層でフィラグリンの発現がわずかに増加した。
[24時間後の形態]
24時間後の脱脂洗浄バッチ(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄あり、24時間培養)(D24h)はバッチD0よりもフィラグリンの発現がわずかに増加し、3~4細胞層で認められた。
バッチD24hと比較したD-プシコース塗布がフィラグリンの発現に及ぼす影響:
・10%D-プシコース塗布(P1)では4~5細胞層でフィラグリンの発現がわずかに増加した。
・20%D-プシコース塗布(P2)では4~5細胞層でフィラグリンの発現がわずかに増加した(図12参照)。
[培養時間なしの形態]
対照バッチ(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄なし)(T0)では、角質層底部の2~3細胞層で中程度からやや明瞭な染色が認められた。
脱脂洗浄バッチ(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄あり)(D0)はバッチT0よりもTGM-1の発現がやや明瞭に減少し、1~2細胞層で認められた。
[3時間後の形態]
3時間後の脱脂洗浄バッチ(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄あり、3時間培養)((D3h)はバッチD0よりもTGM-1の発現が中程度に増加し、2~3細胞層で認められた。
バッチD3hと比較したD-プシコースの塗布がTGM-1の発現に及ぼす影響:
・10%D-プシコース塗布(P1)では視認できる変化はまったく認められなかった。
・20%D-プシコース塗布(P2)では視認できる変化はまったく認められなかった。
[24時間後の形態]
24時間後の脱脂洗浄バッチ(D-プシコース塗布なし、脱脂洗浄あり、24時間培養)(D24h)はバッチD0よりもTGM-1の発現がやや明瞭に増加し、2~3細胞層で認められた。
バッチD24hと比較したD-プシコース塗布がTGM-1の発現に及ぼす影響:
・10%D-プシコース塗布(P1)では視認できる変化はまったく認められなかった。
・20%D-プシコース塗布(P2)では3~4細胞層でTGM-1の発現がわずかに増加した(図13参照)。
これらの試験結果を3時間後または24時間後の脱脂洗浄バッチ(D3h、D24h)と比較した結果を以下に示す。
20%D-プシコース(P2)では、角質層の脱脂洗浄後に皮膚バリア機能にわずかな作用が認められた。脱脂洗浄から24時間後に角質層の層状化の改善が認められた。また、脱脂洗浄から3および24時間後にフィラグリンの発現がわずかに増加し、脱脂洗浄から24時間後にはTGM-1の発現がわずかに増加した。
20%D-プシコースにはフィラグリンの発現を増加し、TGM-1の発現を増加することで、角質層の層化を促進して保湿効果を示すことが示唆された。今後はインボルクリンやロリクリンなどの蛋白質発現を確認すること、親水性のD-プシコースの皮膚への移行性を高めるための基剤との併用効果を検証すること、D-プシコースの誘導体の開発などが必要となる。
Claims (7)
- D-プシコースおよび/またはD-プシコースのケトン基がアルコール基となった糖アルコール、D-プシコースのアルコール基が酸化したウロン酸、D-プシコースのアルコール基がNH2基で置換されたアミノ糖から選ばれるD-プシコース誘導体を有効成分とする、フィラグリンおよび/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤であって
生体の皮膚に適用すると、フィラグリンの発現を増加させるフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現を増加させるトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。 - 前記フィラグリントおよび/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現の増加が、皮膚のバリア機能の向上作用を有する皮膚保湿機能を発揮させる、請求項1に記載のフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
- 前記フィラグリントおよび/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現の増加が、保湿機能の向上作用を有する皮膚保湿機能を発揮させる、請求項1に記載のフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
- 前記フィラグリントおよび/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現の増加に加え、生体の皮膚に適用すると、IV型コラーゲン、およびオキシタラン線維とエラウニン線維のいずれかまたは両方でのエラスチン、のいずれか1以上の発現を惹起させる、請求項1、2または3に記載のフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
- 前記フィラグリントおよび/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加が、皮膚粘弾性の向上作用を有する抗老化機能を発揮させる、請求項4に記載のフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
- 前記フィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤が、化粧料(但し医薬部外品を含む)、保湿用の化粧料(但し医薬部外品を含む)、またはスキンケア用剤である皮膚外用剤として使用される、請求項1ないし5いずれかのフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
- 前記皮膚外用剤が、肌荒れ、乾燥肌改善及び予防用の皮膚外用剤であることを特徴とする、請求項6に記載のフィラグリンの発現増加剤および/またはトランスグルタミナーゼ(TGM-1)の発現増加剤。
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