JP7072159B2 - 液晶高分子膜およびその製造方法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 公開日:平成29年9月21日 第66回高分子討論会のポスター 〔刊行物等〕公開日:平成29年9月6日 ウェブサイトのアドレス https://cloud.dynacom.co.jp/tohron2017/index.php?id=2Pa089&place_num=1
本発明は、耐光性に優れる液晶高分子膜、その製造方法およびそれに用いられる高分子膜材料、ならびに液晶高分子膜を用いた光学素子に関する。
本発明者らは、特許文献1(特開平11-181127号公報)において、感光性の側鎖型高分子膜に直線偏光性の紫外線を照射して任意の配向特性をもった配向膜を得ることを特徴とする配向膜の製造方法、特許文献2(特開2002-90750号公報)において、感光性の重合体膜に、直線偏光性または部分偏光性の光を照射することによって、液晶パネルに封入した液晶の配向を促進する膜を提案してきた。
また、特許文献3(特開2002-202409号公報)において、感光性の重合体と低分子化合物の混合体の膜に、紫外線を照射することによって分子配向させ、該高分子材料内に位相差と光軸方向を任意に発現させた位相差フィルムを提案してきた。
また、特許文献4(特開2008-276149号公報)において、光反応性を有する水素結合性側鎖と光反応性を有さない水素結合性側鎖により二量体を形成可能な感光性液晶高分子の膜に、紫外線を照射して加熱することによって分子配向させた高分子フィルムや液晶配向膜を提案してきた。
また、特許文献5(特開2016-60857号公報)において、縮合反応により感光性液晶高分子を形成可能な重合体の膜を縮合反応させて感光性液晶高分子膜を形成し、得られた感光性液晶高分子膜にメソゲン部分を異方的に配向可能な光を照射することによって作製した液晶配向膜や光学的異方性を有する液晶高分子膜を提案してきた。
また、特許文献6(特開2017-75983号公報)において、感光性液晶高分子の膜上に易除去性マスキング材を積層し、その積層体を加熱処理した後、偏光成分を含む光を照射することによって作製した面外配向と面内配向に配向分割された液晶高分子膜や液晶配向膜を提案してきた。
特許文献1から6に記載されている材料では、基材上に製膜した後、直線偏光性紫外線を照射すると、高分子側鎖に含まれる感光性基による軸選択的な光反応が生じる。更に、このような膜を加熱すると、材料自体の液晶性により、軸選択的に光反応した側鎖によって、直線偏光性紫外線の照射に未反応であった側鎖を配向させることができる。この結果、膜全体を分子配向させることもできる。この膜は、液晶分子の配向能を発現することから液晶配向膜として利用できる。更には、分子配向により複屈折性が発現することから位相差フィルムとして利用することができる。
特開平11-181127号公報 特開2002-90750号公報 特開2002-202409号公報 特開2008-276149号公報 特開2016-60857号公報 特開2017-75983号公報
しかしながら、特許文献1から6に記載されている材料は、配向後にも感光性基が材料中に存在しており、感光性基の吸収波長を含む紫外線や可視光線の暴露により感光性基が光架橋反応または光異性化反応することで配向が乱れるという課題があった。
さらに、このような材料では、紫外線や可視光線の暴露対策として紫外線や可視光線の吸収能を有するフィルムや粘着層などを用いる必要がありコストアップになるという課題もあった。
したがって、本発明では、耐光性の優れた液晶高分子膜の形成が可能な材料および製造方法を提案し、従来技術で問題となる前記課題を解決しようとするものである。
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、以下の発明を見出した。
すなわち、本発明は、以下の態様で構成されうる。
〔態様1〕
側鎖(1)と側鎖(2)とを備える共重合体、または側鎖(1)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とを含む高分子複合体を含む光配向性の高分子膜材料であって、
前記側鎖(1)および(2)は、それぞれ液晶構造を形成可能であり、
前記側鎖(1)は、加水分解反応により除去可能な感光性基を有するとともに、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有さず、
前記側鎖(2)は、前記感光性基を除去するための加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有する、高分子膜材料。
〔態様2〕
態様1に記載の高分子膜材料において、側鎖(1)が下記式(1)で表される側鎖構造を有する高分子膜材料。
Figure 0007072159000001
(式中、fは0または1の整数であり、gは0または1の整数(好ましくは、0)であり、hは0または1の整数(好ましくは、0)であり、pは0~12の整数であり、Xは単結合、-O-、-COO-、-OCO-またはアルキレン基を表し、Zは、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、-N=CH-またはアルキレン基を表し、Qは、-COO-、-OCO-、-COS-、-CONH-、-NHCO-、-HC=N-または-N=CH-(好ましくは、-HC=N-または-N=CH-)を表し、R10、R11、R12、R13およびR14は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基またはシアノ基を表す)
〔態様3〕
態様1または2に記載の高分子膜材料において、側鎖(2)が下記式(2)で表される側鎖構造を有する高分子膜材料。
Figure 0007072159000002
(式中、cは0または1の整数であり、dは0または1の整数であり、nは0~12の整数であり、Yは単結合、-O-、-COO-、-OCO-またはアルキレン基を表し、R4およびR5は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基またはシアノ基を表し、R6は、カルボキシ基またはスルホ基(好ましくは、カルボキシ基)を表す)
〔態様4〕
態様1~3のいずれか一態様に記載の高分子膜材料を得るために用いられる高分子膜形成材料であって、
側鎖(3)と側鎖(2)とを備える共重合体、または側鎖(3)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とを含む高分子複合体を含み、
前記側鎖(3)は、前記側鎖(1)の少なくとも一部を構成し、縮合反応により感光性基を形成可能であるとともに、加水分解反応により前記形成された感光性基を除去可能であり、
前記側鎖(2)は、前記感光性基を除去するための加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有する、高分子膜形成材料。
〔態様5〕
態様4に記載の高分子膜形成材料であって、側鎖(3)が下記式(3)で表される側鎖構造を有する高分子膜形成材料。
Figure 0007072159000003
(式中、aは0または1の整数であり、bは0または1の整数であり、mは0~12の整数であり、Xは単結合、-O-、-COO-、-OCO-またはアルキレン基を表し、R1およびR2は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基またはシアノ基を表し、Q1は、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケトン基、アミノ基またはカルボキシ基(好ましくは、アルデヒド基)を表す)
〔態様6〕
態様4または5に記載の高分子膜形成材料において、さらに前記側鎖(3)と縮合反応可能な縮合性基を有する低分子化合物を含む高分子膜形成材料。
〔態様7〕
態様6に記載の高分子膜形成材料において、前記低分子化合物が下記式(4)で表される高分子膜形成材料。
Figure 0007072159000004
(式中、eは0または1の整数であり、Zは、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、-N=CH-またはアルキレン基を表し、R7は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基、シアノ基またはアミノ基を表し、R8およびR9は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基またはシアノ基を表し、Q2は、ヒドロキシ基、アルデヒド基、アミノ基、メルカプト基またはカルボキシ基(好ましくは、アミノ基)を表す)
〔態様8〕
態様1~3のいずれか一態様に記載の高分子膜材料を含む高分子膜を形成する膜形成工程、
得られた高分子膜に前記液晶構造を異方的に配向可能な光を照射する照射工程、
光が照射された高分子膜を加熱し、未配向の液晶構造を配向させるための第1の加熱工程、および
前記感光性基を加水分解反応により除去するための第2の加熱工程、
を少なくとも備える、液晶高分子膜の製造方法。
〔態様9〕
態様1~3のいずれか一態様に記載の高分子膜材料を用いた液晶高分子膜であって、加水分解反応により前記感光性基が除去された共重合体または高分子複合体で構成され、液晶構造の分子配向により、光学的異方性を有するか、液晶配向能を有するか、または、液晶配向能および光学的異方性を有する液晶高分子膜。
〔態様10〕
態様9に記載の液晶高分子膜を再配向する方法であって、
前記液晶高分子膜をその等方相転移温度以上で加熱する第3の加熱工程、
第3の加熱工程の後の膜上に、共重合体または高分子複合体中の重合体が有する加水分解反応後の側鎖と縮合反応可能な縮合性基を有する低分子化合物を塗布する塗布工程、
縮合反応を行い、加水分解反応により除去可能な感光性基を形成する縮合反応工程、
縮合反応後の膜に液晶構造を異方的に配向可能な光を照射する照射工程、
光が照射された高分子膜を加熱し、未配向の液晶構造を配向させるための第1の加熱工程、および
前記感光性基を加水分解反応により除去するための第2の加熱工程、
を少なくとも備える、液晶高分子膜の再配向方法。
本発明では、感光性基の光反応を利用して一旦所望の液晶構造の分子配向処理を行った後、加水分解反応により感光性基を系内から除去することにより、紫外線または可視光線に暴露されたとしても所望の分子配向が乱されるのを防ぐことができる。作製した液晶高分子膜は耐光性に優れた光学素子、例えば、位相差フィルム、光学的異方性素子、液晶配向膜などとして有用に用いることができる。さらに、液晶配向膜として液晶層と組み合わせる場合、液晶表示素子を得ることができる。
さらに、本発明では、一旦所望の方向に分子配向させた後であっても、更に別の方向へ再配向させることにより、分子配向の変更が可能である。
実施例1において、縮合反応後の高分子膜(Initial)、偏光照射後の高分子膜(After exposure)、および第1の加熱工程後の高分子膜(Annealed)における、検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸収(⊥)および平行な時の吸収(||)の偏光UV-vis吸収スペクトルを示すグラフである。 実施例1において、偏光照射後の高分子膜(Exposed)、および第1の加熱工程後の高分子膜(Annealed)の偏光UV-vis吸収スペクトルから求めた262nmおよび335nmの吸収波長における二色比の変化を示すグラフである。 実施例1において、第2の加熱工程前の高分子膜(Reoriented)、および第2の加熱工程後の高分子膜(Reoriented + post annealed)における、検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸収(⊥)および平行な時の吸収(||)の偏光UV-vis吸収スペクトル、335nmの吸収波長における吸光度の変化を示すグラフおよび262nmの吸収波長における二色比の変化を示すグラフである。 実施例1において、第2の加熱工程後の高分子膜(Reoriented + post annealed)、およびその膜に紫外線を照射した後の高分子膜(+ NPUV 20Jcm-2)における、検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸収(⊥)および平行な時の吸収(||)の偏光UV-vis吸収スペクトルを示すグラフである。 実施例11において、塗布加熱後の高分子膜(Initial(sublimed + prebaked))、偏光照射後の高分子膜(After exposure)、第1の加熱工程後の高分子膜(Annealed)における、検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸収(⊥)および平行な時の吸収(||)の偏光UV-vis吸収スペクトルを示すグラフである。 実施例11でパターニングした基板を、偏光板クロスニコル下で観察した写真である。
(高分子膜材料)
本発明の第1の構成は、側鎖(1)と側鎖(2)とを備える共重合体、または側鎖(1)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とを含む高分子複合体を含む光配向性の高分子膜材料であって、前記側鎖(1)および(2)は、それぞれ液晶構造を形成可能であり、前記側鎖(1)は、加水分解反応により除去可能な感光性基を有するとともに、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有さず、前記側鎖(2)は、前記感光性基を除去するための加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有する、高分子膜材料である。
光配向性の高分子膜材料は、共重合体または高分子複合体中の重合体が有する感光性基の光反応により分子配向が誘起される性質を有している。光反応は、光二量化反応、光フリース転移反応、光異性化反応などが挙げられるが、好ましくは光異性化反応である。
ここで液晶構造を形成可能である場合、側鎖構造に液晶性を発揮する剛直な部位であるメソゲン基を有することにより液晶性を発現していてもよいし、または、他の共重合体または各重合体の側鎖等との水素結合による二量体を形成可能な構造を有しており、その二量化によりメソゲン構造を形成することにより、液晶性を発現していてもよい。
メソゲン基またはメソゲン構造は、2つ以上の芳香族環または脂肪族環とこれを結合する連結基とで構成され、連結基は共有結合でも水素結合でもよい。
芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられ、脂肪族環としては、シクロヘキサン環などが挙げられる。なお、これらの芳香族環または脂肪族環は、置換基を有していてもよい。
連結基としては、共有結合である場合、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-C=C-、-CO-C=C-、-CH=N-、-N=CH-、アルキレン基などが挙げられる。水素結合である場合、カルボキシ基同士の水素結合などが挙げられる。
メソゲン基またはメソゲン構造は、共重合体または各重合体の主鎖を形成していてもよいが、溶媒への溶解性を良好にする観点から、メソゲン基またはメソゲン構造形成部位が共重合体または各重合体の側鎖に含まれる、側鎖型液晶高分子であるのが好ましい。
側鎖型液晶高分子は、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマロネート系等の直鎖状または環状構造の骨格鎖を有する高分子を主鎖とし、側鎖としてメソゲン基またはメソゲン構造形成部位が結合した液晶高分子、またはこれらの組成物等であってもよい。
また、前記側鎖(1)は、加水分解反応により除去可能な感光性基を有している。
高分子膜材料における共重合体または高分子複合体は、感光性基を有するとともに、液晶構造を形成可能である構造を有する、感光性液晶高分子である。
加水分解反応により除去可能な感光性基を有する構造とは、加水分解反応により結合が切断して感光性基を有する分子を共重合体または各重合体から除去することが可能な構造、または感光性基自体が加水分解反応して消失することが可能な構造であってもよく、例えば、前記側鎖(1)は、(a)加水分解性基と独立に存在している感光性基を有していてもよいし、(b)加水分解性基の一部である感光性基を有していてもよい。
ここで、加水分解性基とは、加水分解反応が可能な官能基であり、例えば、エステル基、チオエステル基、アセタール基、ケタール基、アミド基、シッフ塩基などが挙げられ、好ましくは、エステル基、アセタール基、ケタール基、シッフ塩基であってもよい。
感光性基としては、カルコン基、クマリン基、シンナモイル基、シンナミリデン基、ビフェニルアクリロイル基、フリルアクリロイル基、ナフチルアクリロイル基、アゾベンゼン基、ベンジリデンアニリン基もしくはそれらの誘導体などが挙げられ、好ましくは、ベンジリデンアニリン基であってもよい。
また、感光性基は、メソゲン基またはメソゲン構造とは、独立に存在していてもよいし、それらの一部であってもよい。
好ましくは、感光性基は、加水分解性基で連結されたメソゲン基であってもよく、特にベンジリデンアニリン基であってもよい。ベンジリデンアニリン基は、その炭素-窒素二重結合が光異性化反応性を有している感光性基であるとともに、剛直な分子構造を有し、液晶性を発現するのに有効なメソゲン基であり、また、ベンジリデンアニリン基に含まれる-HC=N-が加水分解性基でもある。
加水分解反応により共重合体または高分子複合体中の重合体から切断された分子は、系内から蒸発、昇華、洗浄などにより容易に除外できることが好ましく、例えば、昇華性の低分子化合物が挙げられる。
側鎖(1)は、好ましくは下記式(1)で表される側鎖構造を有していてもよい。
Figure 0007072159000005
(式中、fは0または1の整数であり、gは0または1の整数であり、hは0または1の整数であり、pは0~12の整数であり、Xは単結合、-O-、-COO-、-OCO-またはアルキレン基を表し、Zは、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、-N=CH-またはアルキレン基を表し、Qは、-COO-、-OCO-、-COS-、-CONH-、-NHCO-、-HC=N-または-N=CH-を表し、R10、R11、R12、R13およびR14は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えばC1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えばC1-6アルキルオキシ基、好ましくはC1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン基またはシアノ基を表す。)
好ましくは、上記式(1)中、fは0または1の整数であり、gは0であり、hは0であり、pは0~12の整数であり、Qは-HC=N-または-N=CH-を表し、R11、R12およびR14は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基またはシアノ基を表してもよい。
前記側鎖(2)は、前記感光性基を除去するための加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有している。
例えば、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基は、酸性官能基であるカルボキシ基、スルホ基などが挙げられ、好ましくはカルボキシ基であってもよい。これらの酸性官能基は、公知または慣用の知識により組みあわせて、加水分解反応に対する触媒として用いることができるとともに、水素結合性を有しているため、水素結合による二量化によりメソゲン構造を形成することが可能である。
側鎖(2)に加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有していることにより、酸などの加水分解反応に対する触媒を別途加えることなく、側鎖(1)に対して加水分解反応を行うことができる。さらに、触媒の除去工程についても不要となり、液晶高分子膜の製造方法が簡便となる。さらに、液晶高分子膜の再配向方法においても触媒を別途加える必要がなくなる。
また、側鎖(2)は、耐光性の観点から、好ましくは感光性基を有していなくてもよい。
側鎖(2)は、好ましくは下記式(2)で表される側鎖構造を有していてもよい。
Figure 0007072159000006
(式中、cは0または1の整数であり、dは0または1の整数であり、nは0~12の整数であり、Yは単結合、-O-、-COO-、-OCO-、アルキレン基を表し、R4およびR5は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えばC1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えばC1-6アルキルオキシ基、好ましくはC1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン基、シアノ基を表し、R6は、カルボキシ基またはスルホ基(好ましくは、カルボキシ基)を表す。)
側鎖(1)と側鎖(2)とを備える共重合体は、液晶温度範囲の調整の観点から、側鎖(1)を有する単量体単位と側鎖(2)を有する単量体単位とのモル比は、1/99~50/50であってもよく、好ましくは2/98~40/60、より好ましくは5/95~30/70であってもよい。
側鎖(1)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とを含む高分子複合体は、液晶温度範囲の調整の観点から、側鎖(1)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とのモル比は、1/99~50/50であってもよく、好ましくは2/98~40/60、より好ましくは5/95~30/70であってもよい。
側鎖(1)と側鎖(2)とを備える共重合体や、高分子複合体中の側鎖(1)を備える重合体および側鎖(2)を備える重合体の製造方法は、特に制限はなく、前述のような側鎖構造を有する単量体を用いた公知の重合方法により任意に製造されてもよく、後述のような高分子膜形成材料中の共重合体または各重合体に規定する特定の側鎖構造を有する単量体を用いた公知の重合後に縮合反応させることにより任意に製造されてもよい。
(高分子膜形成材料)
本発明の第2の構成は、前記高分子膜材料を得るために用いられる高分子膜形成材料であって、側鎖(3)と側鎖(2)とを備える共重合体、または側鎖(3)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とを含む高分子複合体を含み、前記側鎖(3)は、前記側鎖(1)の少なくとも一部を構成する。
高分子膜形成材料における共重合体または高分子複合体中の各重合体における側鎖(3)および側鎖(2)は、後述する縮合反応後に得られる側鎖構造が、第1の構成の高分子膜材料の共重合体または高分子複合体中の重合体における側鎖(1)および側鎖(2)に対応する。すなわち、高分子膜形成材料における共重合体または高分子複合体は、縮合反応により感光性液晶高分子を形成できる。
また、前記側鎖(3)は、縮合反応により感光性基を形成可能であるとともに、加水分解反応により前記形成された感光性基を除去可能である。
例えば、側鎖(3)は、(i-a)加水分解性基を有しているか、または(i-b)縮合反応により加水分解性基を導入可能な縮合性基を有している。また、側鎖(3)は、(ii-a)前記加水分解性基の加水分解により除去可能な感光性基を有しているか、または(ii-b)縮合反応により前記感光性基を導入可能な縮合性基を有している。さらに、側鎖(3)は、(iii-a)液晶構造を形成可能である構造を有しているか、または(iii-b)縮合反応により液晶構造を形成可能である構造を導入可能な縮合性基を有している。
側鎖(3)は、液晶構造の再配向の観点からは、好ましくは、加水分解性基および感光性基を導入可能な縮合性基を有していてもよい。
縮合性基としては、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケトン基、アミノ基、カルボキシ基などが挙げられ、好ましくは、アルデヒド基、アミノ基であってもよい。
高分子膜形成材料は、さらに前記側鎖(3)と縮合反応可能な縮合性基を有する低分子化合物を含んでいてもよい。
前記側鎖(3)と前記低分子化合物は、互いに縮合反応可能な縮合性基を有している。これらの縮合性基は、公知または慣用の知識により組みあわせて、縮合反応に用いることができる。
これらの縮合性基の縮合反応により、側鎖(1)と側鎖(2)とを備える共重合体、または側鎖(1)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とを含む高分子複合体を形成することが可能である。
なお、ここで縮合反応とは、少なくとも2種の化合物の官能基間で反応し、水、アルコール類、アンモニア、アミン類、ハロゲン化水素などの分子の脱離を伴う化学反応である。
また、側鎖(3)は、好ましくは、感光性基および液晶構造を形成可能である構造を導入可能な縮合性基を有していてもよい。この場合、例えば、側鎖(3)および低分子化合物の縮合性基が、それぞれ芳香族アミン基と芳香族アルデヒド基であってもよく、芳香族アミン基と芳香族アルデヒド基は、下記反応式1に示すように脱水縮合によりベンジリデンアニリン基を形成する。
Figure 0007072159000007
このベンジリデンアニリン基は、剛直な分子構造を有し、液晶性を発現するのに有効なメソゲン基となる。また、ベンジリデンアニリン基に含まれる炭素-窒素二重結合は光異性化反応を有している感光性基である。
側鎖(3)は、好ましくは下記式(3)で表される側鎖構造を有していてもよい。
Figure 0007072159000008
(式中、aは0または1の整数であり、bは0または1の整数であり、mは0~12の整数であり、Xは単結合、-O-、-COO-、-OCO-またはアルキレン基を表し、R1およびR2は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えばC1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えばC1-6アルキルオキシ基、好ましくはC1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン基またはシアノ基を表し、Q1は、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケトン基、アミノ基またはカルボキシ基(好ましくは、アルデヒド基)を表す。)
前記側鎖(2)は、縮合反応後において、感光性基を除去するための加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有している。加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基は、酸性官能基であるカルボキシ基、スルホ基などが挙げられ、カルボキシ基が好ましい。これらの酸性官能基は、公知または慣用の知識により組みあわせて、加水分解反応に用いることができるとともに、水素結合性を有しているため、水素結合による二量化によりメソゲン基を形成することが可能である。
また、側鎖(2)は、側鎖(3)の縮合反応後であって、加水分解反応によりメソゲン基またはメソゲン構造が除去される場合であっても液晶性を発現させる観点から、好ましくは液晶構造を形成可能であってもよい。
また、側鎖(2)の加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基は、低分子化合物との縮合反応を選択的に行う観点から、側鎖(3)の縮合性基とは異なる。
側鎖(2)は、好ましくは上記式(2)で表される側鎖構造を有していてもよい。
側鎖(3)と側鎖(2)とを備える共重合体は、液晶温度範囲の調整の観点から、側鎖(3)を有する単量体単位と側鎖(2)を有する単量体単位とのモル比は、1/99~50/50であってもよく、好ましくは2/98~40/60、より好ましくは5/95~30/70であってもよい。
側鎖(3)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とを含む高分子複合体は、液晶温度範囲の調整の観点から、側鎖(3)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とのモル比は、1/99~50/50であってもよく、好ましくは2/98~40/60、より好ましくは5/95~30/70であってもよい。
感光性液晶高分子を形成可能である共重合体または高分子複合体中の各重合体は、例えば分子量が2,000~150,000であってもよく、好ましくは5,000~100,000であってもよく、より好ましくは10,000~50,000であってもよい。
縮合性基を有する低分子化合物は、縮合反応後に未反応物として残存した場合に、系内から蒸発、昇華、洗浄などにより容易に除外できることが好ましく、例えば、昇華性の低分子化合物が挙げられる。
縮合性基を有する低分子化合物は、好ましくは式(4)で表される化合物であってもよい。
Figure 0007072159000009
(式中、eは0または1の整数であり、Zは、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-CH=CH-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、-N=CH-またはアルキレン基を表し、R7は、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基、シアノ基またはアミノ基(好ましくは、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基またはシアノ基)を表し、R8およびR9は、同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えばC1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えばC1-6アルキルオキシ基、好ましくはC1-4アルキルオキシ基)、ハロゲン基またはシアノ基を表し、Q2は、ヒドロキシ基、アルデヒド基、アミノ基、メルカプト基またはカルボキシ基(好ましくは、アミノ基)を表す。)
縮合性基を有する低分子化合物は、例えば分子量が50~500であってもよく、好ましくは90~300であってもよく、より好ましくは110~200であってもよい。
縮合性基を有する低分子化合物は、昇華性化合物として、例えば、p-アニシジンが挙げられる。
高分子膜形成材料における、共重合体または高分子複合体と低分子化合物との混合比を変えることによって、縮合反応によって生じる感光性基の生成量を調節できる。高共重合体または高分子複合体中の重合体の縮合性基と低分子化合物の縮合性基とのモル比として、例えば70/30~5/95程度、好ましくは60/40~10/90程度、より好ましくは55/45~15/85程度であってもよい。感光性基の生成量を変化させることにより、作製した膜において、直線偏光紫外線の照射あるいは続く加熱によって生じる膜の異方性を調整することもできる。
側鎖(3)と側鎖(2)とを備える共重合体や、高分子複合体中の側鎖(3)を備える重合体および側鎖(2)を備える重合体の製造方法は、特に制限はなく、公知の重合方法により任意に製造される。
(液晶高分子膜の製造方法)
本発明の第3の構成は、第1の構成である高分子膜材料を含む高分子膜を形成する膜形成工程、
得られた高分子膜に前記液晶構造を異方的に配向可能な光を照射する照射工程、
光が照射された高分子膜を加熱し、未配向の液晶構造を配向させるための第1の加熱工程、および
前記感光性基を加水分解反応により除去するための第2の加熱工程、
を少なくとも備える、液晶高分子膜の製造方法である。
[膜形成工程]
膜形成工程では、第1の構成である高分子膜材料を有機溶媒に溶解した溶液を用いて支持体上に製膜を行ってもよく、第2の構成である高分子膜形成材料を有機溶媒に溶解した溶液を用いて支持体上に製膜を行った後に、縮合反応工程を行ってもよい。
第2の構成の高分子膜形成材料を用いる場合、製膜する際に用いられる溶液(塗布液)は、例えば、前記共重合体または高分子複合体(以下、高分子化合物と称する)と低分子化合物を、有機溶媒に対して溶解させた溶液(混合溶液)であってもよいし、高分子化合物と低分子化合物を個別に有機溶媒へ溶解させた溶液(単独溶液)であってもよい。単独溶液の場合、個別に製膜が行われるが、化合物間の縮合反応を行うため、各化合物は、少なくとも重複部が存在するよう製膜される。
有機溶媒は、非ハロゲン系溶媒であるのが好ましく、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート等のエステル系溶媒;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。
製膜の際、塗布液は、支持体に対して塗布してもよい。支持体としては、種々の高分子フィルムおよびガラス、石英基板などの無機物の中から適宜選択して用いられる。例えば、高分子フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸メチルフィルム、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマーフィルム、ビスフェノールA・炭酸共重合体などのポリカーボネート系ポリマーフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン・プロピレン共重合体、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどの直鎖、分枝鎖または環状ポリオレフィンフィルム、ポリアミド系フィルム、イミド系ポリマーフィルム、スルホン系ポリマーフィルムなどが挙げられる。なお、光学的異方性素子や液晶配向膜において液晶高分子膜を用いる場合、支持体のうち、透明なものを透明基材として用いてもよい。
製膜方法としては、例えば、グラビアコーティング、フレキソコーティング、ダイコーティング、バーコーティング、スリットコーター、スピンコーティングなどの方法、インクジェットプリンターを用いた直接描画を利用することができる。
また、高分子化合物と低分子化合物を個別に溶媒へ溶解させた溶液(単独溶液)を個別に製膜する場合、例えば、一方を全面に塗布して製膜しておき、他方を印刷法やプリンターを用いてパターニング塗布を行えば、他方を塗布した領域のみ液晶配向層や位相差を生じた層を形成することも可能である。
さらに、2種の化合物製膜溶液を個別に塗布する場合、先に高分子化合物(共重合体または高分子複合体)溶液を塗布し、次いで低分子化合物を、高分子化合物塗膜に対して塗布すると、低分子化合物を効率よく高分子化合物に付着することができるので好ましい。
〔縮合反応工程〕
第2の構成の高分子膜形成材料を用いる場合、製膜前に縮合反応を行い、第1の構成の高分子膜材料として製膜を行ってもよいし、製膜後の膜に縮合反応を行う縮合反応工程を行ってもよい。製膜後に縮合反応を行う場合、縮合反応工程において、第2の構成の高分子膜形成材料の製膜後に得られた膜において、高分子化合物と低分子化合物を縮合反応させて、第1の構成である高分子膜材料を含む高分子膜を形成する。
縮合反応の条件は、化合物の種類に応じて適宜設定することができる。また、縮合反応は、常温下で行われてもよいし、加熱下で行われてもよい。加熱する場合、縮合反応を促進することができる。加熱温度は、各化合物の沸点または昇華点以下に設定することが好ましい。
縮合反応工程の時間は、化合物の種類や、加熱などの反応条件に応じて適宜設定することができる。例えば、所定の温度で加熱した場合、縮合反応工程の時間は、例えば1分~60分の範囲で行ってもよく、好ましくは3分~40分程度、より好ましくは5分~20分程度であってもよい。
縮合反応により生成した感光性液晶高分子膜は、縮合反応前の化合物を溶解するための溶媒に対し不溶性を有しているのが好ましい。
[光照射工程]
光照射工程では、第1の構成である高分子膜材料中の感光性液晶高分子に、当該感光性液晶高分子中の液晶構造を異方的に配向可能な光を照射する。このような光は、直線偏光であっても、楕円偏光であってもよく、直線偏光が好ましい。光照射工程により、軸選択的な光反応による異方性を生じた膜となる。
この光反応を進めるには、感光性基の部分が反応し得る波長の光の照射を要する。感光性基の種類によって波長を適宜設定することができるが、一般に200-500nmであり、中でも250-400nmの有効性が高い場合が多い。光反応は、光二量化反応、光フリース転移反応、光異性化反応などが挙げられるが、好ましくは光異性化反応である。
例えば、ベンジリデンアニリン基は、直線偏光性を有する光の照射により、下記反応式2に示すように軸選択的に光異性化反応が生じる。ベンジリデンアニリン基を含有する感光性液晶高分子膜に偏光紫外線を照射すると、軸選択的な光異性化による異方性を生じた膜となる。
Figure 0007072159000010
[第1の加熱工程]
第1の加熱工程では、光照射後、光を照射した膜を加熱する加熱工程が行われる。軸選択的な光異性化による異方性を生じた膜を加熱すると、加熱により膜中の液晶高分子が分子運動を行うことが可能となり、材料自体が液晶性を有することから、光照射後の分子運動によって膜中において光異性化を起こした側鎖に沿って配向が誘起される。
その結果、膜全体において照射した偏光成分(例えば、直線偏光)の電界振動方向と垂直方向に側鎖が一様に配向した膜となり、膜自体の異方性が増幅される。この異方性の増幅により液晶配向能の増強や膜自体の光学的異方性(複屈折)を生じる。
加熱温度は、膜中の液晶高分子が分子運動によって膜中において光異性化を起こした側鎖に沿って配向が誘起される限り特に限定されないが、膜自体を形成する材料(感光性液晶高分子)の液晶相転移温度以上であり、等方相転移温度以下に設定することが好ましい。例えば、50~200℃であってもよく、好ましくは60~160℃、より好ましくは80~140℃であってもよい。
また、加熱時間は、膜中の液晶高分子が分子運動によって膜中において光異性化を起こした側鎖に沿って配向が誘起される限り特に限定されないが、液晶高分子の種類や、加熱温度などに応じて適宜設定することができ、例えば1分以上で行ってもよく、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であってもよい。上限は特に限定されないが、経済性の観点から、60分程度(好ましくは40分程度、より好ましくは20分程度)であってもよい。
[第2の加熱工程]
第2の加熱工程では、第1の構成である高分子膜材料の加水分解反応により除去可能な感光性基を有する側鎖を加水分解反応させることによって、共重合体または高分子複合体中の重合体から感光性基を除去する。
第2の加熱工程を行うことにより、加水分解反応で感光性基を除去することが可能であるだけでなく、分解により生じた低分子分解物および縮合反応に関与せず、残存していた低分子化合物を膜内から除去することが可能である。
加熱温度は、加水分解反応させることによって、共重合体または高分子複合体中の重合体から感光性基を除去することが可能な限り特に限定されないが、膜自体を形成する材料(液晶高分子)の等方相転移温度以下が好ましく、側鎖の加水分解反応が促進する温度が好ましく、高分子主鎖に連結していない低分子化合物が昇華、蒸発する温度に設定することが好ましい。例えば、80~180℃であってもよく、好ましくは100~150℃、より好ましくは110~130℃であってもよい。
第2の加熱工程は、加水分解反応の促進の観点から、大気雰囲気下または湿潤雰囲気下で行ってもよい。また、第2の加熱工程における湿度は、例えば、20%RH以上であってもよく、好ましくは30%RH以上であってもよい。上限は特に限定されないが、95%RH程度(好ましくは90%RH程度)であってもよい。
また、加熱時間は、加水分解反応させることによって、共重合体または高分子複合体中の重合体から感光性基を除去することが可能な限り特に限定されないが、加水分解性基の種類や、加熱温度などに応じて適宜設定することができ、例えば5分以上で行ってもよく、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上であってもよい。上限は特に限定されないが、経済性の観点から、180分程度(好ましくは120分程度、より好ましくは100分程度)であってもよい。
前記製造方法において、第1の加熱工程と第2の加熱工程とを同時に行ってもよい。第1の加熱工程と第2の加熱工程とを同時に行うことによって、効率的に分子配向および加水分解反応を行うことができる。
さらに、第1の加熱工程、第2の加熱工程の処理後、剛直部分を配向させた膜を材料の軟化点以下まで冷却すると分子が凍結されて、剛直部分が配向した膜が得られる。再配向性を高める観点から、冷却は通常の放置冷却で行うことが好ましい。
以上のようにして、該高分子膜材料を用いて該製造方法により製造することにより感光性基を膜内から除去した液晶高分子膜を形成できる。当該膜は、光学素子として機能する。光学素子としては、例えば、位相差フィルム、光学異方性素子、液晶配向膜などが挙げられる。よって、光照射により液晶配向能を付与させた位相差フィルム、光学的異方性素子や液晶配向膜において紫外線耐性が低いという従来技術の課題を解決することができる。
(液晶高分子膜)
本発明の第4の構成は、第1の構成である高分子膜材料を用いた液晶高分子膜であって、加水分解反応により感光性基が除去された共重合体または高分子複合体で構成され、光学的異方性を有するか、液晶配向能を有するか、または、液晶配向能および光学的異方性を有する液晶高分子膜である。該膜に、液晶分子が接触すると膜の異方性により、液晶分子の配向を誘起する液晶配向膜として機能する。
なお、本発明の第4の構成である液晶高分子膜は、前記製造方法により製造された液晶高分子膜であり、光学的異方性を有するか、液晶配向能を有するか、または、液晶配向能および光学的異方性を有する液晶高分子の膜であってもよい。
(液晶高分子膜の再配向方法)
本発明の第5の構成は、第4の構成である液晶高分子膜をその等方相転移温度以上で加熱する第3の加熱工程、
第3の加熱工程の後の膜上に、共重合体または高分子複合体中の重合体が有する加水分解反応後の側鎖と縮合反応可能な縮合性基を有する低分子化合物を塗布する塗布工程、
縮合反応を行い、加水分解反応により除去可能な感光性基を形成する縮合反応工程、
縮合反応後の膜に液晶構造を異方的に配向可能な光を照射する照射工程、
光が照射された高分子膜を加熱し、未配向の液晶構造を配向させるための第1の加熱工程、および
前記感光性基を加水分解反応により除去するための第2の加熱工程、
を少なくとも備える、液晶高分子膜の再配向方法である。
第4の構成である液晶高分子膜は、感光性基を除去したにもかかわらず、上記方法により再度所望の方向に液晶構造を再配向させることが可能である。
[第3の加熱工程]
第3の加熱工程では、光学的異方性を有するか、液晶配向能を有するか、または、液晶配向能および光学的異方性を有する液晶高分子膜に対して、この液晶高分子膜を構成する共重合体または高分子複合体の等方相転移温度以上に加熱する。この加熱により、異方的に配向していた液晶構造のランダム配向が誘起され、配向は等方的となる。
[塗布工程]
塗布工程では、共重合体または高分子複合体中の重合体が有する加水分解反応後の側鎖と縮合反応可能な縮合性基を有する低分子化合物を有機溶媒に溶解した溶液を用いて、第3の加熱工程後の高分子膜上に製膜を行う。低分子化合物の溶液を製膜する際に、印刷法やプリンターを用いてパターニング塗布を行えば、塗布した領域のみ液晶配向層や位相差を生じた層を形成することも可能である。
縮合性基を有する低分子化合物は、前記液晶高分子膜の製造方法に用いた低分子化合物を利用することができる。
[縮合反応工程]
縮合反応工程では、互いに縮合反応可能な縮合性基を有している、共重合体または高分子複合体中の重合体と低分子化合物との縮合反応により、再度感光性液晶高分子を形成することが可能である。縮合反応工程は、前記液晶高分子膜の製造方法における縮合反応工程と同様にして行ってもよい。
照射工程、第1の加熱工程および第2の加熱工程は、前記液晶高分子膜の製造方法における各工程と同様にして行ってもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例においては、下記の方法により各種物性を測定した。
(単量体1)
4-ヒドロキシベンズアルデヒドと6-クロロ-1-ヘキサノールを、アルカリ条件下で加熱することにより、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンズアルデヒドを合成した。この生成物にp-トルエンスルホン酸の存在下でメタクリル酸を大過剰加えてエステル化反応させ、化学式1-1に示される単量体1を合成した。
Figure 0007072159000011
(単量体2)
単量体1とp-アニシジンを脱水縮合させて化学式1-2に示される単量体2を合成した。
Figure 0007072159000012
(単量体3)
4-ヒドロキシ安息香酸と6-クロロ-1-ヘキサノールを、アルカリ条件下で加熱することにより、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)安息香酸を合成した。次いでこの生成物にp-トルエンスルホン酸の存在下でメタクリル酸を大過剰加えてエステル化反応させ、化学式1-3に示される単量体3を合成した。
Figure 0007072159000013
(共重合体1)PPA20
単量体1と単量体3のモル比が単量体1:単量体3=20:80となるように単量体1と単量体3をTHF(テトラヒドロフラン)中に溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して重合することにより共重合体1を得た。この共重合体1は50℃から132℃の温度範囲で液晶性を呈した。また、可視光域にほとんど吸収を示さなかった。
(共重合体2)PPA10
単量体1と単量体3のモル比が単量体1:単量体3=10:90となるように単量体1と単量体3をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより共重合体2を得た。この共重合体2は58℃から149℃の温度範囲で液晶性を呈した。また、可視光域にほとんど吸収を示さなかった。
(共重合体3)PPA30
単量体1と単量体3のモル比が単量体1:単量体3=30:70となるように単量体1と単量体3をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより共重合体3を得た。この共重合体3は45℃から103℃の温度範囲で液晶性を呈した。また、可視光域にほとんど吸収を示さなかった。
(共重合体4)PPA40
単量体1と単量体3のモル比が単量体1:単量体3=40:60となるように単量体1と単量体3をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより共重合体4を得た。この共重合体4は35℃から93℃の温度範囲で液晶性を呈した。また、400nm付近にわずかな吸収を示した。
(共重合体5)PPA50
単量体1と単量体3のモル比が単量体1:単量体3=50:50となるように単量体1と単量体3をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより共重合体5を得た。この共重合体5は液晶性を示さなかった。また、400nm付近に弱い吸収を示した。
(共重合体6)PNB20
単量体2と単量体3のモル比が単量体2:単量体3=20:80となるように単量体2と単量体3をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより共重合体6を得た。この共重合体6は70℃から143℃の温度範囲で液晶性を呈した。また、400nm付近に弱い吸収を示した。
(共重合体7)PNB30
単量体2と単量体3のモル比が単量体2:単量体3=30:70となるように単量体2と単量体3をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより共重合体7を得た。この共重合体7は45℃から139℃の温度範囲で液晶性を呈した。また、400nm付近に弱い吸収を示した。
(共重合体8)PNB40
単量体2と単量体3のモル比が単量体2:単量体3=40:60となるように単量体2と単量体3をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより共重合体8を得た。この共重合体8は31℃から126℃の温度範囲で液晶性を呈した。また、400nm付近に弱い吸収を示した。
(重合体9)PPA100
単量体1をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより重合体9を得た。この重合体9は液晶性を示さなかった。また、可視光域に全く吸収を示さなかった。
(重合体10)NBA100
単量体2をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより重合体10を得た。この重合体10は45℃から127℃の温度範囲で液晶性を呈した。また、400nm付近に弱い吸収を示した。
(重合体11)BA100
単量体3をTHF中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより重合体11を得た。この重合体11は143℃から177℃の温度範囲で液晶性を呈した。また、可視光域に全く吸収を示さなかった。
(化合物1)
化合物1として、市販のp-アニシジン(東京化成工業(株)製)をエタノールの再結晶法により精製したものを使用した。この化合物1は、エーテル類、アルコール類、アセトンなど一般的な溶媒に溶解性を有していた。
(実施例1)
共重合体1と化合物1とをモル比が共重合体1:化合物1=1:2となるようにTHFに溶解し、溶液を調整した。この溶液を石英基板上にスピンコーターを用いて約0.2μmの厚みとなるように塗布した。この基板を室温で乾燥した後、100℃で10分間加熱し、脱水縮合させることにより感光性の液晶高分子膜を形成した。続いて、この基板に超高圧水銀ランプからの紫外線を365nmのバンドパスフィルターと偏光子を通して直線偏光性の紫外線とし、20J/cm2照射した。照射後、130℃で10分間第1の加熱工程を行い、さらに125℃で100分間第2の加熱工程を行った。
この膜の偏光UV-vis吸収スペクトルの変化を図1に、二色比の変化を図2に示す。
ここでの二色比は下記式1で定義される。
DR=(A⊥-A||)/(A⊥+A||)・・・式1
(式1中、A⊥は照射した偏光紫外線と偏光UV-visスペクトル測定時の検出光の電界ベクトルの向きが垂直な時の吸収、A||は照射した偏光紫外線と偏光UV-visスペクトル測定時の検出光の電界ベクトルの向きが平行な時の吸収を表す。)
図1、図2より、膜形成後の照射により安息香酸基由来の262nmの吸収には二色比はほとんど生じず、ベンジリデンアニリン基由来の335nmには二色比が0.2程度生じていることからベンジリデンアニリン基が軸選択的な光反応をしていることがわかる。また、第1の加熱工程後協調的な再配向により安息香酸基由来の262nmの吸収において二色比が0.6と大きなフィルムが作製された。
次に、第2の加熱工程前後の偏光UV-vis吸収スペクトルと二色比の変化を図3に示す。安息香酸基由来の262nmの二色性はほぼ維持された状態でベンジリデンアニリン基由来の335nmの吸収はほとんど消失していることから、安息香酸基の配向を維持した状態で感光性基であるベンジリデンアニリン基が分解消失していることがわかる。この基板を、偏光板クロスニコル下で観察したところ、複屈折性を生じていることを確認した。
次に第2の加熱工程後の基板に紫外線を20J/cm2照射した際の偏光UV-vis吸収スペクトルの変化を図4に示す。紫外線を照射してもスペクトルに変化が見られないことからこのフィルムは紫外線に対して耐光性があることがわかる。
(実施例2)
共重合体2と化合物1を用い、偏光紫外線の照射量は20J/cm2、第1の加熱工程の加熱温度を150℃の条件で、その他の条件は実施例1と同様にして、表1に示す実施例2のフィルムを得た。
(実施例3)
共重合体3と化合物1を用い、偏光紫外線の照射量は4J/cm2、第1の加熱工程の加熱温度を120℃の条件で、その他の条件は実施例1と同様にして、表1に示す実施例3のフィルムを得た。
(実施例4)
共重合体4と化合物1を用い、偏光紫外線の照射量は3J/cm2、第1の加熱工程の加熱温度を113℃の条件で、その他の条件は実施例1と同様にして、表1に示す実施例4のフィルムを得た。
(実施例5)
共重合体5と化合物1を用い、偏光紫外線の照射量は4J/cm2、第1の加熱工程の加熱温度を107℃の条件で、その他の条件は実施例1と同様にして、表1に示す実施例5のフィルムを得た。
(実施例6)
共重合体6をTHFに溶解し、溶液を調整した。この溶液を石英基板上にスピンコーターを用いて約0.2μmの厚みとなるように塗布した。続いて、この基板に超高圧水銀ランプからの紫外線を365nmのバンドパスフィルターと偏光子を通して直線偏光性の紫外線とし、20J/cm2照射すると、安息香酸基由来の262nmの吸収には二色比はほとんど生じず、ベンジリデンアニリン基由来の335nmには二色性が生じた。
照射後、基板を130℃で10分間第1の加熱工程を行うと、協調的な再配向により安息香酸基由来の262nmの吸収において二色性が増幅したフィルムが作製された。
さらに基板を125℃で100分間第2の加熱工程を行うと、安息香酸基由来の262nmの二色性はほぼ維持された状態でベンジリデンアニリン基由来の335nmの吸収はほとんど消失した。この基板を、偏光板クロスニコル下で観察したところ、複屈折性を生じていることを確認した。
作製したフィルムに紫外線を20J/cm2照射したがスペクトルに変化はなかった。
(実施例7)
共重合体7を用い、偏光紫外線の照射量は4J/cm2、第1の加熱工程の加熱温度を120℃の条件で、その他の条件は実施例6と同様にして、表1に示す実施例7のフィルムを得た。
(実施例8)
共重合体8を用い、偏光紫外線の照射量は3J/cm2、第1の加熱工程の加熱温度を113℃の条件で、その他の条件は実施例6と同様にして、表1に示す実施例8のフィルムを得た。
(実施例9)
重合体9、重合体11および化合物1を、重合体9と重合体11のモル比が重合体9:重合体11=20:80、重合体9と化合物1のモル比が重合体9:化合物1=1:2となるように用い、偏光紫外線の照射量は20J/cm2、第1の加熱工程の加熱温度を130℃の条件で、その他の条件は実施例1と同様にして、表1に示す実施例9のフィルムを得た。
(実施例10)
重合体10と重合体11を、重合体10と重合体11のモル比が重合体10:重合体11=20:80となるように用い、偏光紫外線の照射量は20J/cm2、第1の加熱工程の加熱温度を130℃の条件で、その他の条件は実施例6と同様にして、表1に示す実施例10のフィルムを得た。
また、実施例1~10で作製した、このような膜を形成した2枚のガラス基板を対向させセルを作製し、基板間に液晶材料(「E7」、メルク(株)製)を充填し、100℃で加熱後、冷却した。このようにして作製した液晶セルでは、充填した液晶材料が配向していることを確認した。
(実施例11)
共重合体1をTHFに溶解し、溶液を調製した。この溶液を石英基板上にスピンコーターを用いて約0.2μmの厚みとなるよう塗布した。次いで、化合物1をメタノールに溶解して溶液とし、その溶液を共重合体1の膜上にインクジェットプリンターを用いてパターン塗布した。この基板を室温で乾燥した後、100℃で10分間加熱し、脱水縮合させることにより感光性液晶高分子を形成した。続いて、この基板に超高圧水銀ランプからの紫外線を365nmのバンドパスフィルターと偏光子を通して直線偏光性の紫外線とし、20J/cm2照射した。照射後、130℃で10分間第1の加熱工程を行い、さらに125℃で100分間第2の加熱工程を行った。
この膜の偏光UV-vis吸収スペクトルの変化を図5に示す。この図5より、塗布加熱後の照射により安息香酸基由来の262nmの吸収には二色比はほとんど生じず、ベンジリデンアニリン基由来の335nmには二色比が0.2程度生じていることからベンジリデンアニリン基が軸選択的な光反応をしていることがわかる。また、第1の加熱工程後、協調的な再配向により安息香酸基由来の262nmの吸収において二色比が0.6と大きなフィルムが作製された。
この基板を、偏光板クロスニコル下で観察した写真を図6に示す。この図より化合物1を塗布した領域のみ複屈折性を生じていること、および、化合物1をパターン塗布することにより複屈折率性のパターニングができることを確認した。
次に第2の加熱工程後の基板に紫外線を20J/cm2照射しても前記パターンを維持していたことから、このパターン化したフィルムは紫外線に対して耐光性があることがわかった。
また、このような膜を形成した2枚のガラス基板を対向させセルを作製し、基板間に液晶材料(「E7」、メルク製)を充填し、100℃で加熱後、冷却した。このようにして作製した液晶セルでは、充填した液晶材料が配向していることを確認した。
(比較例1)
重合体9と化合物1を、重合体9と化合物1のモル比が重合体9:化合物1=1:2となるように用い、その他の条件は実施例1と同様にして、表1に示す比較例1のフィルムを得た。
(比較例2)
重合体10と化合物1を、重合体10と化合物1のモル比が重合体10:化合物1=1:2となるように用い、その他の条件は実施例1と同様にして、表1に示す比較例2のフィルムを得た。
(比較例3)
重合体11と化合物1を、重合体11と化合物1のモル比が重合体11:化合物1=1:2となるように用い、その他の条件は実施例1と同様にして、表1に示す比較例3のフィルムを得た。
(比較例4)
重合体9を用い、その他の条件は実施例6と同様にして、表1に示す比較例4のフィルムを得た。
(比較例5)
重合体10を用い、その他の条件は実施例6と同様にして、表1に示す比較例5のフィルムを得た。
(比較例6)
重合体11を用い、その他の条件は実施例6と同様にして、表1に示す比較例6のフィルムを得た。
Figure 0007072159000014
実施例1~5および9では、共重合体または高分子複合体中の重合体に縮合反応により感光性基を導入することによって、光配向性を有する液晶高分子膜を形成できた。この高分子膜に対して光照射および第1の加熱工程を行った後、膜は二色性を示した。さらに、共重合体または高分子複合体の重合体には、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基が存在するため、第2の加熱工程で加水分解反応により感光性基を除去することができた。その結果、得られた膜は、紫外線を照射してもスペクトルが変化せず、耐光性を有していた。
実施例6~8および10では、共重合体または高分子複合体自体が光配向性を有しており、形成した液晶高分子膜に光照射および第1の加熱工程を行った後、膜は二色性を示した。さらに、共重合体または高分子複合体の重合体には、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基が存在するため、第2の加熱工程を行うことで加水分解反応により感光性基を除去することができた。その結果、得られた膜は耐光性を有していた。
実施例11では、共重合体の膜上にその共重合体と縮合反応が可能な低分子化合物を個別にパターニング塗布し、縮合反応することにより、パターニング塗布した部分のみに複屈折性を生じさせることができた。さらに、共重合体には、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基が存在するため、第2の加熱工程を行うことでパターニング塗布した部分について加水分解反応により感光性基を除去することができた。その結果、得られた膜は耐光性を有していた。
一方、比較例1、2および5では、縮合後の重合体または用いた重合体が光配向性を有しているため、光照射および第1の加熱工程を行った後、膜は二色性を示した。しかしながら、重合体には加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基が存在していなかったため、第2の加熱工程を行ったが、加水分解反応が生じず、感光性基を除去できなかった。その結果、得られた膜は残存している感光性基の存在により耐光性を有していなかった。
また、比較例3、4および6は、用いた重合体が感光性基を有していないため、光配向性を示さず、光照射や第1の加熱工程、第2の加熱工程を行ったが、得られた膜は二色性を示さなかった。
以上のように、本発明では、耐光性を向上した光学的異方性および/または液晶配向能を有する液晶高分子膜を効率的に製造することができる。そして、本発明の液晶高分子膜は、透明基材上に形成することにより、位相差フィルム、光学的異方性素子、光学補償フィルムなどとして好適に用いられるだけでなく、さらに液晶高分子の配向性を利用することにより、液晶配向膜としても好適に用いることができる。また、一対の液晶配向膜と、一対の光学素子間に配設される液晶層と、を備える液晶表示素子として用いることができる。
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。

Claims (10)

  1. 側鎖(1)と側鎖(2)とを備える共重合体、または側鎖(1)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とを含む高分子複合体を含む光配向性の高分子膜材料であって、
    前記側鎖(1)および(2)は、それぞれ、メソゲン基を有し、または二量化によりメソゲン構造を形成可能であり、
    前記側鎖(1)は、加水分解反応により除去可能な感光性基を有するとともに、加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基を有さず、下記式(1)で表される側鎖構造を有し、
    Figure 0007072159000015
    (式中、fは0または1の整数であり;gは0または1の整数であり;pは0~12の整数であり;Xは単結合、-O-、-COO-、-OCO-またはアルキレン基を表し;R10、R11、R12、R13およびR14は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基またはシアノ基を表し;Qが、-HC=N-または-N=CH-を表す場合、hは0または1の整数であり、Zは、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、-N=CH-またはアルキレン基を表し;Qが、-OCO-、-COS-、-CONH-、または-NHCO-を表す場合、hは1であり、Zは、-N=N-、-CH=CH-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、または-N=CH-を表す)
    前記側鎖(2)は、前記感光性基を除去するための加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基として、カルボキシ基およびスルホ基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基を有し、
    前記共重合体または重合体は、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、およびポリマロネート系からなる群から選択される主鎖を有する、高分子膜材料。
  2. 請求項1に記載の高分子膜材料であって、式(1)中、Qが-HC=N-または-N=CH-を表す、高分子膜材料。
  3. 請求項1または2に記載の高分子膜材料において、側鎖(2)が下記式(2)で表される側鎖構造を有する高分子膜材料。
    Figure 0007072159000016
    (式中、cは0または1の整数であり、dは0または1の整数であり、nは0~12の整数であり、Yは単結合、-O-、-COO-、-OCO-またはアルキレン基を表し、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基またはシアノ基を表し、Rは、カルボキシ基またはスルホ基を表す)
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の高分子膜材料を得るために用いられる高分子膜形成材料であって、
    側鎖(3)と側鎖(2)とを備える共重合体、または側鎖(3)を備える重合体と側鎖(2)を備える重合体とを含む高分子複合体を含み、
    前記側鎖(3)は、前記側鎖(1)の少なくとも一部を構成し、縮合反応により感光性基を形成可能であるとともに、加水分解反応により前記形成された感光性基を除去可能であり、
    前記側鎖(2)は、前記感光性基を除去するための加水分解反応に対して触媒作用を有する官能基として、カルボキシ基およびスルホ基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基を有する、高分子膜形成材料。
  5. 請求項4に記載の高分子膜形成材料であって、側鎖(3)が下記式(3)で表される側鎖構造を有する高分子膜形成材料。
    Figure 0007072159000017
    (式中、aは0または1の整数であり、bは0または1の整数であり、mは0~12の整数であり、Xは単結合、-O-、-COO-、-OCO-またはアルキレン基を表し、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基またはシアノ基を表し、Qは、ヒドロキシ基、アルデヒド基、アミノ基またはカルボキシ基を表す)
  6. 請求項4または5に記載の高分子膜形成材料において、さらに前記側鎖(3)と縮合反応可能な縮合性基を有する低分子化合物を含む高分子膜形成材料。
  7. 請求項6に記載の高分子膜形成材料において、前記低分子化合物が下記式(4)で表される高分子膜形成材料。
    Figure 0007072159000018
    (式中、eは0または1の整数であり、Zは、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-CO-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=N-、-N=CH-またはアルキレン基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基またはシアノ基を表し、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン基またはシアノ基を表し、Qは、アルデヒド基、アミノ基、メルカプト基またはカルボキシ基を表す)
  8. 請求項1~3のいずれか一項に記載の高分子膜材料を含む高分子膜を形成する膜形成工程、
    得られた高分子膜に前記メソゲン基および/またはメソゲン構造を異方的に配向可能な光を照射する照射工程、
    光が照射された高分子膜を加熱し、未配向のメソゲン基および/またはメソゲン構造を配向させるための第1の加熱工程、および
    前記感光性基を加水分解反応により除去するための第2の加熱工程、
    を少なくとも備える、液晶高分子膜の製造方法。
  9. 請求項1~3のいずれか一項に記載の高分子膜材料を用いた液晶高分子膜であって、加水分解反応により前記感光性基が除去された共重合体または高分子複合体で構成され、メソゲン基および/またはメソゲン構造の分子配向により、光学的異方性を有するか、液晶配向能を有するか、または、液晶配向能および光学的異方性を有する液晶高分子膜。
  10. 請求項9に記載の液晶高分子膜を再配向する方法であって、
    前記液晶高分子膜をその等方相転移温度以上で加熱する第3の加熱工程、
    第3の加熱工程の後の膜上に、共重合体または高分子複合体中の重合体が有する加水分解反応後の側鎖と縮合反応可能な縮合性基を有する低分子化合物を塗布する塗布工程、
    縮合反応を行い、加水分解反応により除去可能な感光性基を形成する縮合反応工程、
    縮合反応後の膜にメソゲン基および/またはメソゲン構造を異方的に配向可能な光を照射する照射工程、
    光が照射された高分子膜を加熱し、未配向のメソゲン基および/またはメソゲン構造を配向させるための第1の加熱工程、および
    前記感光性基を加水分解反応により除去するための第2の加熱工程、
    を少なくとも備える、液晶高分子膜の再配向方法。
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