以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、図面において、大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお、図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理により層やレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために省略して示すことがある。また、図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
また、特に上面図(「平面図」ともいう。)や斜視図などにおいて、発明の理解を容易とするため、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。また、一部の隠れ線などの記載を省略する場合がある。
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
また、本明細書等において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。したがって、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
例えば、本明細書等において、XとYとが直接的に接続されている場合と、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に記載されているものとする。
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができる場合がある。
なお、本明細書等において、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、「実効的なチャネル幅」ともいう。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、「見かけ上のチャネル幅」ともいう。)と、が異なる場合がある。例えば、ゲート電極が半導体の側面を覆う場合、実効的なチャネル幅が、見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつゲート電極が半導体の側面を覆うトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル形成領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、見かけ上のチャネル幅よりも、実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
このような場合、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅などは、断面TEM像などを解析することなどによって、値を決定することができる。
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物と言える。不純物が含まれることにより、例えば、半導体のDOS(Density of States)が高くなることや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、および酸化物半導体の主成分以外の遷移金属などがあり、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、水も不純物として機能する場合がある。また、酸化物半導体の場合、例えば不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコンである場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
なお、本明細書等において、酸化窒化シリコンとは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものである。また、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものである。
また、本明細書等において、「絶縁体」という用語を、絶縁膜または絶縁層と言い換えることができる。また、「導電体」という用語を、導電膜または導電層と言い換えることができる。また、「半導体」という用語を、半導体膜または半導体層と言い換えることができる。
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10度以上10度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5度以上5度以下の場合も含まれる。また、「概略平行」とは、二つの直線が-30度以上30度以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80度以上100度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85度以上95度以下の場合も含まれる。また、「概略垂直」とは、二つの直線が60度以上120度以下の角度で配置されている状態をいう。
なお、本明細書において、バリア膜とは、水、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する膜のことであり、当該バリア膜に導電性を有する場合は、導電性バリア膜と呼ぶことがある。
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い表現での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む。)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう。)などに分類される。例えば、トランジスタの半導体層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、OS FETあるいはOSトランジスタと記載する場合においては、酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
また、本明細書等において、ノーマリーオフとは、ゲートに電位を印加しない、またはゲートに接地電位を与えたときに、トランジスタに流れるチャネル幅1μmあたりの電流が、室温において1×10-20A以下、85℃において1×10-18A以下、または125℃において1×10-16A以下であることをいう。
(実施の形態1)
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の具体的な構成の一例について、図1乃至図19を用いて説明する。
<半導体装置の構成例>
図1(A)、図1(B)、図1(C)、および図1(D)は、本発明の一態様に係るトランジスタ200、およびトランジスタ200周辺の上面図および断面図である。
図1(A)は、トランジスタ200を有する半導体装置の上面図である。また、図1(B)、および図1(C)は、当該半導体装置の断面図である。ここで、図1(B)は、図1(A)にA1-A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、図1(C)は、図1(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。また、図1(D)は、図1(A)にA5-A6の一点鎖線で示す部位の断面図である。なお、図1(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。また、図2は、図1(B)における酸化物230bおよびその近傍の拡大図である。
[トランジスタ200]
図1に示すように、トランジスタ200は、基板(図示しない。)の上に配置された酸化物230aと、酸化物230aの上に配置された酸化物230bと、酸化物230a、および酸化物230bを覆う、酸化物230cと、酸化物230cを覆う、絶縁体250と、酸化物230bおよび酸化物230cに、互いに離隔して形成された層253a、および層253bと、層253aと層253bの間に、互いに離隔して形成された層252a、および層252bと、絶縁体250上に配置され、酸化物230a乃至酸化物230cと重畳する、導電体260と、絶縁体250の上面、および導電体260の側面と接する絶縁体266と、絶縁体266の上面、および導電体260の側面と接し、層253aと層253bの間に重畳して開口263が形成された絶縁体280と、を有する。ここで、図1(B)(C)に示すように、導電体260の上面は、絶縁体280の上面と略一致することが好ましい。
なお、以下において、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cをまとめて酸化物230という場合がある。また、層252aおよび層252bをまとめて層252という場合がある。また、層253aおよび層253bをまとめて層253という場合がある。
なお、トランジスタ200では、チャネルが形成される領域(以下、チャネル形成領域ともいう。)と、その近傍において、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物230bと酸化物230cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cのそれぞれが2層以上の積層構造を有していてもよい。また、トランジスタ200では、導電体260を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体260が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
例えば、酸化物230cが第1の酸化物と、第1の酸化物上の第2の酸化物からなる積層構造を有する場合、第1の酸化物は、酸化物230bと同様の組成を有し、第2の酸化物は、酸化物230aと同様の組成を有することが好ましい。
ここで、導電体260は、トランジスタのゲート電極として機能し、層252aおよび層253a、ならびに層252bおよび層253bは、それぞれソース領域またはドレイン領域として機能する。上記のように、導電体260は、絶縁体280、絶縁体266の開口263、および層253aと層253bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。ここで、導電体260、層252a、層252b、層253aおよび層253bの配置は、開口263に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ200において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体260を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ200の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
また、図1に示すように、導電体260は、開口263の内側に設けられた導電体260aと、導電体260aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体260bと、を有することが好ましい。
また、トランジスタ200は、基板(図示しない。)の上に配置された絶縁体214と、絶縁体214の上に配置された絶縁体216と、絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205と、絶縁体216と導電体205の上に配置された絶縁体222と、絶縁体222の上に配置された絶縁体224と、を有することが好ましい。絶縁体224の上に酸化物230aが配置されることが好ましい。
また、トランジスタ200の上に、層間膜として機能する絶縁体274、および絶縁体281が配置されることが好ましい。ここで、絶縁体274は、導電体260、および絶縁体280の上面に接して配置されることが好ましい。
絶縁体222、絶縁体266、および絶縁体274は、水素(例えば、水素原子、水素分子など)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体222、絶縁体266、および絶縁体274は、絶縁体224、絶縁体250、および絶縁体280より水素透過性が低いことが好ましい。また、絶縁体222、絶縁体266、および絶縁体274は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体222、絶縁体266、および絶縁体274は、絶縁体224、絶縁体250、および絶縁体280より酸素透過性が低いことが好ましい。
ここで、絶縁体224、酸化物230a、酸化物230b、および絶縁体250は、絶縁体280および絶縁体281から、絶縁体266、酸化物230c、および絶縁体274によって離隔されている。ゆえに、絶縁体280および絶縁体281に含まれる水素などの不純物や、過剰な酸素が、絶縁体224、酸化物230a、酸化物230b、および絶縁体250に、混入するのを抑制することができる。
また、図1(B)(D)に示すように、トランジスタ200と電気的に接続し、プラグとして機能する導電体240(導電体240a、および導電体240b)が設けられることが好ましい。なお、プラグとして機能する導電体240の側面に接して絶縁体241(絶縁体241a、および絶縁体241b)が設けられる。つまり、絶縁体266、絶縁体280、絶縁体274、および絶縁体281の開口の内壁に接して絶縁体241が設けられる。また、絶縁体241の側面に接して導電体240の第1の導電体が設けられ、さらに内側に導電体240の第2の導電体が設けられる構成にしてもよい。ここで、導電体240の上面の高さと、絶縁体281の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ200では、導電体240の第1の導電体および導電体240の第2の導電体を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体240を単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。構造体が積層構造を有する場合、形成順に序数を付与し、区別する場合がある。
また、トランジスタ200は、チャネル形成領域を含む酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230c)に、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)を用いることが好ましい。例えば、酸化物230のチャネル形成領域となる金属酸化物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタの非導通状態におけるリーク電流(オフ電流)を極めて小さくすることができる。このようなトランジスタを用いることで、低消費電力の半導体装置を提供できる。
例えば、酸化物230として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。また、酸化物230として、酸化インジウム、酸化亜鉛、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、または酸化ガリウムを用いてもよい。
ここで、酸化物230は、酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素を添加されることで、キャリア密度が増大し、低抵抗化する場合がある。このような元素としては、代表的にはホウ素やリンが挙げられる。また、ホウ素やリン以外にも、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いることができる。また、希ガス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。また、酸化物230は、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどの金属元素の中から選ばれるいずれか一つまたは複数の金属元素を添加してもよい。上述した中でも、添加される元素は、ホウ素、及びリンが好ましい。ホウ素およびリンの添加には、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、設備投資を抑制することができる。上記元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)などを用いて測定すればよい。
特に、酸化物230中に添加する元素として、酸化物を形成しやすい元素を用いることが好ましい。このような元素としては、代表的にはホウ素、リン、アルミニウム、マグネシウム等がある。酸化物230中に添加された当該元素は、酸化物230中の酸素を奪って酸化物を形成しうる。その結果、酸化物230中には多くの酸素欠損が生じる。当該酸素欠損と、酸化物230中の水素とが結合することでキャリアが生じ、極めて低抵抗な領域となる。さらに、酸化物230中に添加された元素は安定な酸化物の状態で酸化物230中に存在するため、その後の工程で高い温度を要する処理が行われたとしても、酸化物230から脱離しにくい。すなわち、酸化物230に添加する元素として、酸化物を形成しやすい元素を用いることで、酸化物230中に高温のプロセスを経ても高抵抗化しにくい領域を形成できる。
層252は、酸化物230に上記の元素が添加されて形成された層である。図1(B)および図2に示すように、層252aおよび層252bは、導電体260を挟んで対向して形成されており、上面が絶縁体250と接することが好ましい。上面視において、層252aおよび層252bの少なくとも一部が導電体260と重畳することが好ましい。ここで、層252の上記元素の濃度は、酸化物230の層252および層253が形成されていない部分よりも高いことが好ましい。また、層252に含まれる酸素欠損の量は、酸化物230の層252および層253が形成されていない部分の酸素欠損の量よりも高いことが好ましい。これにより、層252は、酸化物230の層252および層253が形成されていない部分と比較して、キャリア密度が大きく、抵抗が低くなる。
層253は、酸化物230に上記の元素が添加されて形成された層であり、層252より多くの上記の元素が添加されて形成されている。図1(B)および図2に示すように、層253aおよび層253bは、導電体260および層252を挟んで対向して形成されており、上面が絶縁体250と接することが好ましい。上面視において、層253aおよび層253bの導電体260側の側面は、導電体260の側面と一致する、または、層253aおよび層253bの一部が導電体260と重畳する、ことが好ましい。ここで、層253の上記元素の濃度は、層252の上記元素の濃度と、同等、またはそれよりも高いことが好ましい。また、層253に含まれる酸素欠損の量は、酸化物230の層252および層253が形成されていない部分の酸素欠損の量よりも高いことが好ましい。これにより、層253は、酸化物230の層252および層253が形成されていない部分と比較して、キャリア密度が大きく、抵抗が低くなる。
図2に示すように、酸化物230において、導電体260と重畳し、層252aおよび層252bに挟まれる領域を領域234とし、層253と重畳する領域を領域231(領域231a、および領域231b)とし、層252と重畳する領域を領域232(領域232a、および領域232b)とする。図2に示すように、領域234は、領域231aと領域231bの間に位置し、領域232aは領域231aと領域234の間に位置し、領域232bは領域231bと領域234の間に位置する。ここで、領域231は、領域234と比較して、キャリア密度が高く、低抵抗な領域である。また、領域232は、領域234と比較して、キャリア密度が高く、低抵抗な領域であり、領域231と比較して、キャリア密度が低く、高抵抗な領域である。または、領域232は、領域231と同等なキャリア密度を有し、同等な抵抗を有していてもよい。よって、領域234はトランジスタ200のチャネル形成領域として機能し、領域231はソース領域またはドレイン領域として機能し、領域232は接合領域として機能する。
以上のような構成にすることで、導電体260と重畳する層252が所謂オーバーラップ領域(Lov領域ともいう)として機能する。よって、酸化物230のチャネル形成領域とソース領域またはドレイン領域との間に、オフセット領域が形成されるのを防ぎ、実効的なチャネル長が導電体260の幅より大きくなるのを抑制することができる。これにより、トランジスタ200のオン電流を大きくし、S値を良好にし、周波数特性の向上を図ることができる。
酸化物230にソース領域またはドレイン領域として機能する領域231を形成することで、金属で形成されたソース電極およびドレイン電極を設けることなく、領域231にプラグとして機能する導電体240を接続することができる。酸化物230に接して金属で形成されたソース電極およびドレイン電極を設けると、トランジスタ200の作製工程または後工程において、高温の熱処理を行った場合、金属で形成されたソース電極およびドレイン電極が酸化し、トランジスタ200のオン電流、S値、および周波数特性が劣化する場合がある。しかしながら、本実施の形態に示す半導体装置では、金属で形成されたソース電極およびドレイン電極を設ける必要がない。よって、トランジスタ200の作製工程または後工程において、高温の熱処理を行っても、良好なオン電流、S値、および周波数特性を示す半導体装置を提供することができる。例えば、本実施の形態に示す半導体装置では、トランジスタ200の作製後に、450℃以上800℃以下、代表的には600℃以上750℃以下の高温がかかるプロセスを行うことができる。
また、上記のように、層252および層253に酸素欠損を形成する元素を添加して、熱処理を行うことで、チャネル形成領域として機能する領域234に含まれる水素を、層253に含まれる酸素欠損で捕獲できる場合がある。ここで、層253または層252に含まれる水素の濃度は、酸化物230の層252および層253が形成されていない部分の水素の濃度よりも高いことが好ましい。これにより、トランジスタ200に安定な電気特性を与え、信頼性の向上を図ることができる。
さらに、詳細は後述するが、本実施の形態に示す作製方法を用いてトランジスタ200を形成することで、導電体260を自己整合的に、層253aと層253bの間に配置させ、且つ層252aおよび層252bと重畳させることができる。よって、良好な電気特性を有する半導体装置を歩留まり良く製造することができる。また、チャネル長(領域234のA1-A2方向の長さ、または層252aと層252bの距離ということもできる。)を露光装置の解像限界以下にすることもできる。例えば、チャネル長を1nm以上60nm以下、より好ましくは15nm以上40nm以下にすることもできる。このように、チャネル長を短くすることにより、トランジスタ200のオン電流を大きくし、S値を良好にし、周波数特性の向上を図ることができる。
また、半導体装置の作製方法について、詳細は後述するが、層252および層253は、上記元素をドーパントとして、絶縁体250を介して酸化物230に添加することで形成されることが好ましい。このとき、ドーパントは酸化物230だけでなく、絶縁体250にも添加される場合がある。
酸化物230の領域231および領域232に添加されたドーパントは、酸化物230中の酸素と結合するため、領域231および領域232において、酸化物230には酸素欠損が生成される。ここで、酸化物230の領域234に含まれる水素は、領域231および領域232に拡散し、該酸素欠損に捕獲されるため、領域234の酸化物230は、成膜後の抵抗値と比較して高抵抗化すると考えられる。一方、領域231の酸化物230は、該酸素欠損が該水素を捕獲することで、成膜後の抵抗値と比較して低抵抗化すると考えられる。
また、領域231と重畳する絶縁体250が酸素(あるいは後述する過剰酸素)を含む場合、該酸素が酸化物230に拡散すると、領域231において酸化物230が高抵抗化し、ソース領域、およびドレイン領域として十分機能しないことが懸念される。しかし、絶縁体250に該ドーパントが添加されることで、絶縁体250に含まれる酸素は該ドーパントに捕獲され、固定化される。よって、絶縁体250からの酸素の放出が抑制され、領域231において酸化物230の抵抗値は、成膜後の抵抗値より低い状態を維持することができる。
以上のメカニズムにより、酸化物230において、領域234は、高い抵抗値を維持し、チャネル形成領域として機能し、領域231は、低い抵抗値を維持し、ソース領域、あるいはドレイン領域として機能することができると考えられる。また、酸化物230に添加されたドーパントは、後工程における加熱処理に対しても拡散などを起こさず、安定であるため、領域234、領域232および領域231は、該加熱処理が行われても、拡大や縮小を起こさず、安定である。すなわち、本発明によるトランジスタは、加熱処理によりチャネル長の増加や減少、ソース領域とドレイン領域の接続といった電気特性上、および信頼性上の不良を引き起こす恐れが低減される。
なお、図2では、層252および層253が、酸化物230bおよび酸化物230cの膜厚方向において、酸化物230bおよび酸化物230cと、絶縁体250の界面近傍に形成されているが、これに限られない。例えば、層252および層253は、酸化物230bの膜厚と概略同じ厚さを有していてもよいし、酸化物230aにも、形成されていてもよい。
また、酸化物230において、各領域の境界を明確に検出することが困難な場合がある。各領域内で検出される金属元素、ならびに水素、および窒素などの不純物元素の濃度は、領域ごとの段階的な変化に限らず、各領域内でも連続的に変化(グラデーションともいう。)していてもよい。つまり、チャネル形成領域に近い領域であるほど、金属元素、ならびに水素、および窒素などの不純物元素の濃度が減少していればよい。
なお、図2においては、導電体260が領域234および領域232(層252)と重畳する構成について示したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、図3に示すように、導電体260が領域234、領域232(層252)、および領域231(層253)の一部と重畳する構成にしてもよい。このような構成にすることで導電体260と重畳する層252に加えて、層253の一部もオーバーラップ領域として機能する。よって、酸化物230のチャネル形成領域とソース領域またはドレイン領域との間に、オフセット領域が形成されるのをより確実に防ぎ、実効的なチャネル長が導電体260の幅より大きくなるのを抑制することができる。これにより、トランジスタ200のオン電流を大きくし、S値を良好にし、周波数特性の向上を図ることができる。
以上より、オン電流が大きいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、高い周波数特性を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。または、オフ電流が小さいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の詳細な構成について説明する。
導電体205は、酸化物230、および導電体260と、重なるように配置する。また、導電体205は、絶縁体216に埋め込まれて設けることが好ましい。ここで、導電体205の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電体205上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電体205の上に形成される、絶縁体224の平坦性を良好にし、酸化物230a、酸化物230bおよび酸化物230cの結晶性の向上を図ることができる。
ここで、導電体260は、第1のゲート(トップゲートともいう。)電極として機能する場合がある。また、導電体205は、第2のゲート(ボトムゲートともいう。)電極として機能する場合がある。その場合、導電体205に印加する電位を、導電体260に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ200のVthを制御することができる。特に、導電体205に負の電位を印加することにより、トランジスタ200のVthを0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体205に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体260に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
また、導電体205は、酸化物230におけるチャネル形成領域よりも、大きく設けるとよい。特に、図1(C)に示すように、導電体205は、酸化物230のチャネル幅方向と交わる端部よりも外側の領域においても、延伸していることが好ましい。つまり、酸化物230のチャネル幅方向における側面において、導電体205と、導電体260とは、絶縁体を介して重畳していることが好ましい。
上記構成を有することで、第1のゲート電極としての機能を有する導電体260の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体205の電界によって、酸化物230のチャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。
また、図1(C)に示すように、導電体205は延伸させて、配線としても機能させている。ただし、これに限られることなく、導電体205の下に、配線として機能する導電体を設ける構成にしてもよい。また、導電体205は、必ずしも各トランジスタに一個ずつ設ける必要はない。例えば、導電体205を複数のトランジスタで共有する構成にしてもよい。
また、導電体205は、絶縁体216の開口の内壁に接して第1の導電体が形成され、さらに内側に第2の導電体が形成されている。ここで、導電体205の第1の導電体および第2の導電体の高さと、絶縁体216の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ200では、導電体205の第1の導電体と第2の導電体を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体205は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。構造体が積層構造を有する場合、形成順に序数を付与し、区別する場合がある。
また、導電体205の第1の導電体として、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電体を用いてもよい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電体を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一またはすべての拡散を抑制する機能とする。
導電体205の第1の導電体として、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電体を用いることにより、導電体205が酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電体としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。したがって、導電体205の第1の導電体としては、上記導電性材料を単層または積層とすればよい。
また、導電体205の第2の導電体として、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。
絶縁体214は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ200に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体214は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。
例えば、絶縁体214として、酸化アルミニウムまたは窒化シリコンなどを用いることが好ましい。これにより、水または水素などの不純物が絶縁体214よりも基板側からトランジスタ200側に拡散するのを抑制することができる。または、絶縁体224などに含まれる酸素が、絶縁体214よりも基板側に、拡散するのを抑制することができる。
また、層間膜として機能する絶縁体216、絶縁体280、および絶縁体281は、絶縁体214よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体216、絶縁体280、および絶縁体281として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどを適宜用いればよい。
また、絶縁体216を積層構造にしてもよい。例えば、絶縁体216において、少なくとも導電体205の側面と接する部分に、絶縁体214と同様の絶縁体を設ける構成にしてもよい。このような構成にすることで、絶縁体216に含まれる酸素によって、導電体205が酸化するのを抑制することができる。あるいは、導電体205により、絶縁体216に含まれる酸素が吸収されるのを抑制することができる。
絶縁体222および絶縁体224は、ゲート絶縁体としての機能を有する。
ここで、酸化物230と接する絶縁体224は、加熱により酸素を脱離することが好ましい。本明細書では、加熱により離脱する酸素を過剰酸素と呼ぶことがある。例えば、絶縁体224は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどを適宜用いればよい。酸素を含む絶縁体を酸化物230に接して設けることにより、酸化物230中の酸素欠損を低減し、トランジスタ200の信頼性を向上させることができる。
絶縁体224として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
また、図1(C)に示すように、絶縁体224は、酸化物230bと重ならない領域の膜厚が、それ以外の領域の膜厚より薄くなることが好ましい。また、絶縁体224は酸化物230bと重なる島状の形状としてもよい。このような構成にすることで、導電体260の下端部をより下側に位置させることができるので、第1のゲート電極としての機能する導電体260の電界を、酸化物230の側面に作用させやすくなる。よって、トランジスタ200のオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。また、絶縁体224を、酸化物230bおよび酸化物230aと重畳させて、島状に設ける構成にしてもよい。
絶縁体222は、絶縁体214などと同様に、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ200に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体222は、絶縁体224より水素透過性が低いことが好ましい。絶縁体222、絶縁体266、および絶縁体274によって、絶縁体224、酸化物230、および絶縁体250などを囲むことにより、外方から水または水素などの不純物がトランジスタ200に侵入することを抑制することができる。
さらに、絶縁体222は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)ことが好ましい。例えば、絶縁体222は、絶縁体224より酸素透過性が低いことが好ましい。絶縁体222が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物230が有する酸素が、基板側へ拡散することを低減できるので、好ましい。また、導電体205が、絶縁体224や、酸化物230が有する酸素と反応することを抑制することができる。
絶縁体222は、絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体222を形成した場合、絶縁体222は、酸化物230からの酸素の放出や、トランジスタ200の周辺部から酸化物230への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
また、絶縁体222は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いてもよい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
なお、絶縁体222、および絶縁体224が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。例えば、絶縁体222の下に絶縁体224と同様の絶縁体を設ける構成にしてもよい。
酸化物230は、酸化物230aと、酸化物230a上の酸化物230bと、酸化物230b上の酸化物230cと、を有する。酸化物230b下に酸化物230aを有することで、酸化物230aよりも下方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物230b上に酸化物230cを有することで、酸化物230cよりも上方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。
なお、酸化物230は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物230aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物230aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230cは、酸化物230aまたは酸化物230bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
酸化物230a、酸化物230bおよび酸化物230cは、結晶性を有することが好ましく、特に、CAAC-OSを用いることが好ましい。CAAC-OSなどの結晶性を有する酸化物は、不純物や欠陥(酸素欠損など)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。このような酸化物230を有することで、トランジスタ200は、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対して安定になる。
また、酸化物230aおよび酸化物230cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物230bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物230aおよび酸化物230cの電子親和力が、酸化物230bの電子親和力より小さいことが好ましい。この場合、酸化物230cは、酸化物230aに用いることができる金属酸化物を用いることが好ましい。具体的には、酸化物230cに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物230cに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230cに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
ここで、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物230aと酸化物230bとの界面、および酸化物230bと酸化物230cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
具体的には、酸化物230aと酸化物230b、酸化物230bと酸化物230cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする。)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物230bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物230aおよび酸化物230cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いてもよい。また、酸化物230cを積層構造としてもよい。例えば、In-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上のGa-Zn酸化物との積層構造、またはIn-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上の酸化ガリウムとの積層構造を用いることができる。別言すると、In-Ga-Zn酸化物と、Inを含まない酸化物との積層構造を、酸化物230cとして用いても良い。
具体的には、酸化物230aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、または1:1:0.5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物230bとして、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、または3:1:2[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物230cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物230cを積層構造とする場合の具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]とIn:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:1[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:5[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、酸化ガリウムとの積層構造などが挙げられる。
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物230b、およびその界面近傍となる。酸化物230a、酸化物230cを上述の構成とすることで、酸化物230aと酸化物230bとの界面、および酸化物230bと酸化物230cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ200は高いオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。なお、酸化物230cを積層構造とした場合、上述の酸化物230bと、酸化物230cとの界面における欠陥準位密度を低くする効果に加え、酸化物230cが有する構成元素が、絶縁体250側に拡散するのを抑制することが期待される。より具体的には、酸化物230cを積層構造とし、積層構造の上方にInを含まない酸化物を位置させるため、絶縁体250側に拡散しうるInを抑制することができる。絶縁体250は、ゲート絶縁体として機能するため、Inが拡散した場合、トランジスタの特性不良となる。したがって、酸化物230cを積層構造とすることで、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
絶縁体250は、ゲート絶縁体として機能する。絶縁体250は、酸化物230cの上面に接し、酸化物230cを覆って配置することが好ましい。絶縁体250は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
絶縁体250は、絶縁体224と同様に、絶縁体250中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体250の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
また、後述するが、絶縁体250は、層252および層253を形成する際の保護膜としての機能を有してもよい。層252および層253の形成にイオンインプランテーションやイオンドーピングを用いる場合、保護膜として絶縁体250を設けることで、酸化物230の表面がイオンやプラズマに直接曝されることが無く、層252および層253の形成における酸化物230のダメージを抑制できるため、好ましい。ここで、酸化物230のダメージとは、酸化物230中における、過度の酸素欠損の形成や、過度の酸化物230の結晶性の低下などをいう。このような保護膜として機能する絶縁体250の上に、さらに、上述のバリア絶縁膜を積層してもよい。
また、絶縁体250と導電体260との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体250から導電体260への酸素拡散を抑制することが好ましい。これにより、絶縁体250の酸素による導電体260の酸化を抑制することができる。例えば、上記の酸化物230cとして用いることができる金属酸化物を用いればよい。
また、当該金属酸化物は、ゲート絶縁体の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体250に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、当該金属酸化物は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。ゲート絶縁体を、絶縁体250と当該金属酸化物との積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、ゲート絶縁体の物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
具体的には、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。
導電体260は、図1では2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
導電体260aは、上述の、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電体を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
また、導電体260aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体250に含まれる酸素により、導電体260bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
また、導電体260bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体260は、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体260bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
また、絶縁体250と導電体260aの間に、酸化物230として用いることができる金属酸化物を設けてもよい。このとき、該金属酸化物は、導電体260と同様にゲート電極として機能する。金属酸化物を設けることにより、絶縁体250、および酸化物230の少なくとも一方に酸素を供給することができ、好ましい。また、該金属酸化物として、酸素の透過を抑制する機能を有する金属酸化物を用いることにより、絶縁体250、または絶縁体280に含まれる酸素によって、導電体260が酸化するのを抑制することができる。あるいは、絶縁体250に含まれる酸素が、導電体260に吸収されることを抑制できる。
また、図1(A)(C)に示すように、酸化物230bの層252および層253と重ならない領域、言い換えると、酸化物230のチャネル形成領域において、酸化物230の側面が導電体260で覆うように配置されている。これにより、第1のゲート電極としての機能する導電体260の電界を、酸化物230の側面に作用させやすくなる。よって、トランジスタ200のオン電流を大きくし、S値を良好にし、周波数特性の向上を図ることができる。
絶縁体266は、絶縁体214などと同様に、水または水素などの不純物が、絶縁体280側からトランジスタ200に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体266は、絶縁体224より水素透過性が低いことが好ましい。さらに、図1(B)(C)に示すように、絶縁体266は、導電体260の側面の一部、および絶縁体250の上面に接することが好ましい。このような構成にすることで、絶縁体280に含まれる水素が、酸化物230および絶縁体224に侵入するのを抑制することができる。
さらに、絶縁体266は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)ことが好ましい。例えば、絶縁体266は、絶縁体280または絶縁体224より酸素透過性が低いことが好ましい。
また、絶縁体266は、スパッタリング法を用いて成膜される構成にしてもよい。絶縁体266を、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて成膜することで、絶縁体250の絶縁体266と接する領域近傍に酸素を添加することができる。これにより、当該領域から、絶縁体250を介して酸化物230中に酸素を供給することができる。ここで、絶縁体266が、上方への酸素の拡散を抑制する機能を有することで、酸素が酸化物230から絶縁体280へ拡散することを防ぐことができる。また、絶縁体222が、下方への酸素の拡散を抑制する機能を有することで、酸素が酸化物230から基板側へ拡散することを防ぐことができる。このようにして、酸化物230のチャネル形成領域に酸素が供給される。これにより、酸化物230の酸素欠損を低減し、トランジスタのノーマリーオン化を抑制することができる。
絶縁体266としては、例えば、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を成膜するとよい。なお、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。
また、絶縁体266は、積層構造としてもよい。絶縁体266を積層構造とする場合、スパッタリング法を用いて形成された第1の絶縁体上にALD法を用いて第2の絶縁体を形成してもよい。このとき、第1の絶縁体と、第2の絶縁体は上述した材料から選ばれた、同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。例えば、第1の絶縁体として、スパッタリング法により形成された酸化アルミニウムを用い、第2の絶縁体として、ALD法により形成された酸化アルミニウムを用いてもよい。ALD法により形成される膜は被覆性が高く、酸化物230などの構造体による段差部にも高い均一性を有する膜を形成することができる。また、スパッタリング法により形成された第1の絶縁膜における成膜不良を補てんすることができ、好ましい。
また、絶縁体266としては、例えば、窒化アルミニウムを含む絶縁体を用いればよい。絶縁体266として、組成式がAlNx(xは0より大きく2以下の実数、好ましくは、xは0.5より大きく1.5以下の実数)を満たす窒化物絶縁体を用いることが好ましい。これにより、絶縁性に優れ、且つ熱伝導性に優れた膜とすることができるため、トランジスタ200を駆動したときに生じる熱の放熱性を高めることができる。また、絶縁体266として、窒化アルミニウムチタン、窒化チタンなどを用いることもできる。この場合、スパッタリング法を用いて成膜することで、成膜ガスに酸素またはオゾンなどの酸化性の強いガスを用いずに成膜することができるので、好ましい。また、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどを用いることもできる。
このように、水素に対してバリア性を有する絶縁体266によって、絶縁体250、および酸化物230を覆うことで、絶縁体280は、絶縁体250、および酸化物230と離隔されている。これにより、トランジスタ200の外方から水素などの不純物が浸入することを抑制できるので、トランジスタ200に良好な電気特性および信頼性を与えることができる。
また、絶縁体266としては、例えば、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を成膜するとよい。なお、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。この場合、絶縁体266は、ALD法を用いて成膜されることが好ましい。ALD法は、被覆性の良好な成膜法なので、被形成面の凹凸によって、段切れなどが形成されるのを防ぐことができる。
絶縁体280は、絶縁体266を介して、絶縁体224、酸化物230、および絶縁体250上に設けられる。例えば、絶縁体280として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどの材料は、加熱により脱離する酸素を含む領域を容易に形成することができるため好ましい。
絶縁体280中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。また、絶縁体280の上面は、平坦化されていてもよい。
絶縁体274は、絶縁体214などと同様に、水または水素などの不純物が、上方から絶縁体280に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体274は、絶縁体280より水素透過性が低いことが好ましい。
さらに、絶縁体274は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)ことが好ましい。例えば、絶縁体274は、絶縁体280より酸素透過性が低いことが好ましい。絶縁体274が、酸素の拡散を抑制する機能を有することで、絶縁体280に含まれる酸素が外方拡散するのを抑制することができる。
絶縁体274としては、例えば、絶縁体214、絶縁体222等に用いることができる絶縁体を用いればよい。また、水または水素などの不純物に対するバリア絶縁膜と、酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁膜を積層する構成にしてもよい。
また、絶縁体274の上に、層間膜として機能する絶縁体281を設けることが好ましい。絶縁体281は、絶縁体224などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
また、絶縁体281、絶縁体274、絶縁体280、および絶縁体266に形成された開口に、導電体240aおよび導電体240bを配置する。導電体240aおよび導電体240bは、導電体260を挟んで対向して設ける。なお、導電体240aおよび導電体240bの上面の高さは、絶縁体281の上面と、同一平面上としてもよい。
なお、絶縁体281、絶縁体274、絶縁体280、および絶縁体266の開口の内壁に接して、絶縁体241aが設けられ、その側面に接して導電体240aの第1の導電体が形成されている。当該開口の底部の少なくとも一部には層253aが位置しており、導電体240aが層253aと接する。ここで、図1(D)に示すように、導電体240aの第1の導電体は、層253aの上面および側面(酸化物230bの上面および側面といってもよい。)と接することが好ましい。このように導電体240aを設けることで、導電体240aと層253aの接触面積が増大するので、トランジスタ200のオン電流および移動度の向上、ならびにS値の低減を図ることができる。同様に、絶縁体281、絶縁体274、絶縁体280、および絶縁体266の開口の内壁に接して、絶縁体241bが設けられ、その側面に接して導電体240bの第1の導電体が形成されている。当該開口の底部の少なくとも一部には層253bが位置しており、導電体240bが層253bと接する。図示していないが、導電体240aと同様に、導電体240bの第1の導電体は、層253bの上面および側面(酸化物230bの上面および側面といってもよい。)と接することが好ましい。このように導電体240bを設けることで、導電体240bと層253bの接触面積が増大するので、トランジスタ200のオン電流および移動度の向上、ならびにS値の低減を図ることができる。
なお、図1(B)(D)等においては、導電体240が酸化物230cに形成された層253と接する構成について示しているが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、導電体240が酸化物230cを貫通し、酸化物230bに形成された層253に接する構成にしてもよい。
導電体240aおよび導電体240bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体240aおよび導電体240bは積層構造としてもよい。
また、導電体240を積層構造とする場合、酸化物230a、酸化物230b、絶縁体266、絶縁体280、絶縁体274、絶縁体281と接する導電体には、上述の、水または水素などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電体を用いることが好ましい。例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、水または水素などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料は、単層または積層で用いてもよい。当該導電性材料を用いることで、絶縁体280に添加された酸素が導電体240aおよび導電体240bに吸収されるのを防ぐことができる。また、絶縁体281より上層から水または水素などの不純物が、導電体240aおよび導電体240bを通じて酸化物230に混入するのを抑制することができる。
絶縁体241aおよび絶縁体241bとしては、絶縁体214等に用いることができる絶縁体、例えば、酸化アルミニウムまたは窒化シリコンなどを用いればよい。絶縁体241aおよび絶縁体241bは、絶縁体266に接して設けられるので、絶縁体280などから水または水素などの不純物が、導電体240aおよび導電体240bを通じて酸化物230に混入するのを抑制することができる。また、絶縁体280に含まれる酸素が導電体240aおよび導電体240bに吸収されるのを防ぐことができる。
絶縁体241aおよび絶縁体241bの形成には、ALD法やCVD法を用いることができる。
また、図示しないが、導電体240aの上面、および導電体240bの上面に接して配線として機能する導電体を配置してもよい。配線として機能する導電体は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、当該導電体は、積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。当該導電体は、絶縁体に設けられた開口に埋め込むように形成してもよい。
また、図示しないが、当該導電体を覆うように、抵抗率が1.0×1013Ωcm以上1.0×1015Ωcm以下、好ましくは5.0×1013Ωcm以上5.0×1014Ωcm以下の絶縁体を設けることが好ましい。当該導電体上に上記のような抵抗率を有する絶縁体を設けることで、当該絶縁体は、絶縁性を維持しつつ、トランジスタ200、当該導電体等の配線間に蓄積される電荷を分散し、該電荷によるトランジスタや、該トランジスタを有する電子機器の特性不良や静電破壊を抑制することができ、好ましい。
酸化物230c、および絶縁体274として、それぞれ積層絶縁膜を用い、さらに、絶縁体256aおよび絶縁体256b(以下、まとめて絶縁体256と表記する場合がある。)を設けたトランジスタ200について図4に示す。図1と同様に、図4(A)(B)(C)(D)は、トランジスタ200、およびトランジスタ200周辺の上面図および断面図である。図4(A)は、トランジスタ200を有する半導体装置の上面図である。また、図4(B)、および図4(C)は、当該半導体装置の断面図である。ここで、図4(B)は、図4(A)にA1-A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、図4(C)は、図4(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。また、図4(D)は、図4(A)にA5-A6の一点鎖線で示す部位の断面図である。なお、図4(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
図4に示すトランジスタ200では、酸化物230cとして、酸化物230c1とその上に積層された酸化物230c2を用い、絶縁体274として、絶縁体274aとその上に積層された絶縁体274bを用いている。
ここで、酸化物230c1として、酸化物230bとして用いることができる金属酸化物を、酸化物230c2として、酸化物230aとして用いることができる金属酸化物を、用いればよい。例えば、酸化物230c1として、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の金属酸化物を用い、酸化物230c2として、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]を用いればよい。
また、絶縁体274aとして、酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁体を、絶縁体274bとして、水または水素などの不純物が混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能する絶縁体を、用いればよい。例えば、絶縁体274aとして、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムなどを用いることができる。また、絶縁体274bとして、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウムなどを用いることができる。
さらに、図4に示すように、絶縁体250と絶縁体266の間に絶縁体256を設けることが好ましい。図4に示すように、絶縁体256は、絶縁体256aとその上の絶縁体256bの積層構造になっている。
絶縁体256aは、層252および層253を形成する際の保護膜としての機能を有してもよい。層252および層253の形成にイオンインプランテーションやイオンドーピングを用いる場合、保護膜として絶縁体256aを設けることで、酸化物230の表面がイオンやプラズマに直接曝されることが無く、層252および層253の形成における酸化物230のダメージを抑制できるため、好ましい。ここで、酸化物230のダメージとは、酸化物230中における、過度の酸素欠損の形成や、過度の酸化物230の結晶性の低下などをいう。
絶縁体256bは、絶縁体214などと同様に、水または水素などの不純物が、絶縁体280側からトランジスタ200に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体256bは、絶縁体250より水素透過性が低いことが好ましい。さらに、図4(B)(C)に示すように、絶縁体256bは、絶縁体250の上面、および導電体260の側面に接するように配置されることが好ましい。この様な構成とすることで、絶縁体280に含まれる水素が、酸化物230および絶縁体250に侵入するのを抑制することができる。
このように、水素に対してバリア性を有する絶縁体266および絶縁体256bによって、絶縁体224、絶縁体250、および酸化物230を覆うことで、絶縁体280は、絶縁体224、酸化物230、および絶縁体250と離隔されている。これにより、トランジスタ200の外方から水素などの不純物が浸入することを抑制できるので、トランジスタ200に良好な電気特性および信頼性を与えることができる。
さらに、絶縁体256bは、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)ことが好ましい。例えば、絶縁体256bは、絶縁体224より酸素透過性が低いことが好ましい。絶縁体256bが、酸素の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物230が、絶縁体280が有する過剰な酸素と反応することを抑制することができる。
絶縁体256bとしては、例えば、絶縁体266に用いることができるバリア絶縁膜を用いればよい。ただし、絶縁体266が十分に水素に対するバリア性を有する場合、絶縁体256bは必ずしも、バリア絶縁膜を用いなくてもよい。
例えば、絶縁体256aとして、酸化物230および絶縁体250を形成する際の保護膜としての機能する絶縁体を、絶縁体256bとして、水または水素などの不純物が混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能する絶縁体を、用いればよい。例えば、絶縁体256aとして、酸化窒化シリコンまたは酸化シリコンを用いることができる。また、絶縁体256bとして、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなどを用いることができる。
なお、図4では、絶縁体256が、絶縁体256aと絶縁体256bの積層構造になっているが、本実施の形態はこれに限られるものではない。絶縁体256を単層にしてもよいし、3層以上の積層構造にしてもよい。
<半導体装置の構成材料>
以下では、半導体装置に用いることができる構成材料について説明する。
<<基板>>
トランジスタ200を形成する基板としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板、または導電体基板を用いればよい。絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
<<絶縁体>>
絶縁体としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
例えば、トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体に、high-k材料を用いることで物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時の低電圧化が可能となる。一方、層間膜として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁体の機能に応じて、材料を選択するとよい。
また、比誘電率の高い絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物、またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
また、比誘電率が低い絶縁体としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などがある。
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体(絶縁体214、絶縁体222、絶縁体256、および絶縁体274など)で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウム、またはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、または酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどの金属窒化物を用いることができる。
また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体は、加熱により脱離する酸素を含む領域を有する絶縁体であることが好ましい。例えば、加熱により脱離する酸素を含む領域を有する酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを酸化物230と接する構造とすることで、酸化物230が有する酸素欠損を補償することができる。
<<導電体>>
導電体としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
なお、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物を用いる場合において、ゲート電極として機能する導電体には、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造を用いることが好ましい。この場合は、酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けることで、当該導電性材料から離脱した酸素がチャネル形成領域に供給されやすくなる。
特に、ゲート電極として機能する導電体として、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素および酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。また、前述した金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。このような材料を用いることで、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる水素を捕獲することができる場合がある。または、外方の絶縁体などから混入する水素を捕獲することができる場合がある。
<<金属酸化物>>
酸化物230として、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう)を用いることが好ましい。以下では、本発明に係る酸化物230に適用可能な金属酸化物について説明する。
酸化物半導体は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
ここでは、酸化物半導体が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物である場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、多結晶酸化物半導体、および非晶質酸化物半導体などが知られている。
トランジスタの半導体に用いる酸化物半導体として、結晶性の高い薄膜を用いることが好ましい。該薄膜を用いることで、トランジスタの安定性または信頼性を向上させることができる。該薄膜として、例えば、単結晶酸化物半導体の薄膜または多結晶酸化物半導体の薄膜が挙げられる。しかしながら、単結晶酸化物半導体の薄膜または多結晶酸化物半導体の薄膜を基板上に形成するには、高温またはレーザー加熱の工程が必要とされる。よって、製造工程のコストが増加し、さらに、スループットも低下してしまう。
2009年に、CAAC構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(CAAC-IGZOと呼ぶ。)が発見されたことが、非特許文献1および非特許文献2で報告されている。ここでは、CAAC-IGZOは、c軸配向性を有する、結晶粒界が明確に確認されない、低温で基板上に形成可能である、ことが報告されている。さらに、CAAC-IGZOを用いたトランジスタは、優れた電気特性および信頼性を有することが報告されている。
また、2013年には、nc構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(nc-IGZOと呼ぶ。)が発見された(非特許文献3参照。)。ここでは、nc-IGZOは、微小な領域(例えば、1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有し、異なる該領域間で結晶方位に規則性が見られないことが報告されている。
非特許文献4および非特許文献5では、上記のCAAC-IGZO、nc-IGZO、および結晶性の低いIGZOのそれぞれの薄膜に対する電子線の照射による平均結晶サイズの推移が示されている。結晶性の低いIGZOの薄膜において、電子線が照射される前でさえ、1nm程度の結晶性IGZOが観察されている。よって、ここでは、IGZOにおいて、完全な非晶質構造(completely amorphous structure)の存在を確認できなかった、と報告されている。さらに、結晶性の低いIGZOの薄膜と比べて、CAAC-IGZOの薄膜およびnc-IGZOの薄膜は電子線照射に対する安定性が高いことが示されている。よって、トランジスタの半導体として、CAAC-IGZOの薄膜またはnc-IGZOの薄膜を用いることが好ましい。
酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さい、具体的には、トランジスタのチャネル幅1μmあたりのオフ電流がyA/μm(10-24A/μm)オーダである、ことが非特許文献6に示されている。例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を応用した低消費電力のCPUなどが開示されている(非特許文献7参照。)。
また、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置への応用が報告されている(非特許文献8参照。)。表示装置では、表示される画像が1秒間に数十回切り換っている。1秒間あたりの画像の切り換え回数はリフレッシュレートと呼ばれている。また、リフレッシュレートを駆動周波数と呼ぶこともある。このような人の目で知覚が困難である高速の画面の切り換えが、目の疲労の原因として考えられている。そこで、表示装置のリフレッシュレートを低下させて、画像の書き換え回数を減らすことが提案されている。また、リフレッシュレートを低下させた駆動により、表示装置の消費電力を低減することが可能である。このような駆動方法を、アイドリング・ストップ(IDS)駆動と呼ぶ。
CAAC構造およびnc構造の発見は、CAAC構造またはnc構造を有する酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性および信頼性の向上、ならびに、製造工程のコスト低下およびスループットの向上に貢献している。また、該トランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置およびLSIへの応用研究が進められている。
[金属酸化物の構成]
以下では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができるCAC(Cloud-Aligned Composite)-OSの構成について説明する。
なお、本明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
[金属酸化物の構造]
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
[酸化物半導体を有するトランジスタ]
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
なお、上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。例えば、酸化物半導体は、キャリア密度が8×1011/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10-9/cm3以上とすればよい。
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
[不純物]
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
[真空ベークの効果]
ここでは、金属酸化物に含まれる、弱いZn-O結合について説明し、該結合を構成する酸素原子および亜鉛原子を低減する方法の一例について示す。
金属酸化物を用いたトランジスタにおいて、トランジスタの電気特性の不良に繋がる欠陥の一例として酸素欠損がある。例えば、膜中に酸素欠損が含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、閾値電圧がマイナス方向に変動しやすく、ノーマリーオン特性となりやすい。これは、金属酸化物に含まれる酸素欠損に起因したドナーが生成され、キャリア濃度が増加するためである。トランジスタがノーマリーオン特性を有すると、動作時に動作不良が発生しやすくなる、または非動作時の消費電力が高くなるなどの、様々な問題が生じる。
また、モジュールを作製するための接続配線を形成する工程における熱履歴(サーマルバジェット)により、閾値電圧の変動、寄生抵抗の増大、などのトランジスタの電気特性の劣化、該電気特性の劣化に伴う電気特性のばらつきの増大、などの問題がある。これらの問題は、製造歩留りの低下に直結するため、対策の検討は重要である。また、長期間の使用によって起こるトランジスタの特性変化(経年変化)を短時間で評価することができるストレス試験でも電気特性の劣化が生じる。該電気特性の劣化は、熱履歴の過程で行われる高温処理、またはストレス試験時に与えられる電気的なストレスによって金属酸化物中の酸素が欠損することに起因すると推測される。
金属酸化物中には、金属原子との結合が弱く、酸素欠損となりやすい酸素原子が存在する。特に、金属酸化物がIn-Ga-Zn酸化物である場合は、亜鉛原子と酸素原子とが弱い結合(弱いZn-O結合、ともいう)を形成しやすい。ここで、弱いZn-O結合とは、熱履歴の過程で行われる高温処理、またはストレス試験時に与えられる電気的なストレスによって切断される程度の強さで結合した、亜鉛原子と酸素原子の間に生じる結合である。弱いZn-O結合が金属酸化物中に存在すると、熱履歴または電流ストレスによって、該結合が切断され、酸素欠損が形成される。酸素欠損が形成されることにより、熱履歴に対する耐性、ストレス試験における耐性などといった、トランジスタの安定性が低下する。
亜鉛原子と多く結合している酸素原子と、該亜鉛原子との間に生じる結合は、弱いZn-O結合である場合がある。ガリウム原子と比べて、亜鉛原子は、酸素原子との結合が弱い。したがって、亜鉛原子と多く結合している酸素原子は欠損しやすい。すなわち、亜鉛原子と酸素原子との間に生じる結合は、その他の金属との結合よりも弱いと推測される。
また、金属酸化物中に不純物が存在する場合、弱いZn-O結合が形成されやすいと推測される。金属酸化物中の不純物としては、例えば、水分子や水素がある。金属酸化物中に水分子や水素が存在することで、水素原子が、金属酸化物を構成する酸素原子と結合する(OH結合ともいう。)場合がある。金属酸化物を構成する酸素原子は、In-Ga-Zn酸化物が単結晶である場合、金属酸化物を構成する金属原子4つと結合している。しかしながら、水素原子と結合した酸素原子は、2つまたは3つの金属原子と結合している場合がある。酸素原子に結合している金属原子の数が減少することで、該酸素原子は欠損しやすくなる。なお、OH結合を形成している酸素原子に亜鉛原子が結合している場合、該酸素原子と該亜鉛原子との結合は弱いと推測される。
また、弱いZn-O結合は、複数のナノ結晶が連結する領域に存在する歪みに形成される場合がある。ナノ結晶は六角形を基本とするが、該歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する。該歪みでは、原子間の結合距離が一様でないため、弱いZn-O結合が形成されていると推測される。
また、弱いZn-O結合は、金属酸化物の結晶性が低い場合に形成されやすいと推測される。金属酸化物の結晶性が高い場合、金属酸化物を構成する亜鉛原子は、酸素原子4つまたは5つと結合している。しかし、金属酸化物の結晶性が低くなると、亜鉛原子と結合する酸素原子の数が減少する傾向がある。亜鉛原子に結合する酸素原子の数が減少すると、該亜鉛原子は欠損しやすくなる。すなわち、亜鉛原子と酸素原子との間に生じる結合は、単結晶で生じる結合よりも弱いと推測される。
上記の弱いZn-O結合を構成する酸素原子および亜鉛原子を低減することで、熱履歴または電流ストレスによる酸素欠損の形成を抑制し、トランジスタの安定性を向上させることができる。なお、弱いZn-O結合を構成する酸素原子のみを低減し、弱いZn-O結合を構成する亜鉛原子が減少しない場合、該亜鉛原子近傍に酸素原子を供給すると、弱いZn-O結合が再形成される場合がある。したがって、弱いZn-O結合を構成する亜鉛原子および酸素原子を低減することが好ましい。
弱いZn-O結合を構成する酸素原子および亜鉛原子を低減する方法の一つとして、金属酸化物を成膜した後、真空ベークを実施する方法が挙げられる。真空ベークとは、真空雰囲気下で行う加熱処理のことである。真空雰囲気は、ターボ分子ポンプ等で排気を行うことで維持される。なお、処理室の圧力は、1×10-2Pa以下、好ましくは1×10-3Pa以下とすればよい。また、加熱処理時の基板の温度は、300℃以上、好ましくは400℃以上とすればよい。
真空ベークを実施することで、弱いZn-O結合を構成する酸素原子および亜鉛原子を低減することができる。また、真空ベークによって金属酸化物に熱が与えられるため、弱いZn-O結合を構成する酸素原子および亜鉛原子を低減した後、金属酸化物を構成する原子が再配列することで、4つの金属原子と結合している酸素原子が増える。したがって、弱いZn-O結合を構成する酸素原子および亜鉛原子を低減するとともに、弱いZn-O結合が再形成されるのを抑制することができる。
また、金属酸化物中に不純物が存在する場合、真空ベークを実施することで、金属酸化物中の水分子または水素を放出し、OH結合を低減することができる。金属酸化物中のOH結合が減少することで、4つの金属原子と結合している酸素原子の割合が増える。また、水分子または水素が放出される際、金属酸化物を構成する原子が再配列することで、4つの金属原子と結合している酸素原子が増える。したがって、弱いZn-O結合が再形成されるのを抑制することができる。
以上のように、金属酸化物を成膜した後、真空ベークを実施することで、弱いZn-O結合を構成する酸素原子および亜鉛原子を低減することができる。したがって、該工程により、トランジスタの安定性を向上することができる。また、トランジスタの安定性が向上することで、材料や形成方法の選択の自由度が高くなる。
<半導体装置の作製方法>
次に、図1に示す、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置について、作製方法を図5乃至図14を用いて説明する。また、図5乃至図14において、各図の(A)は上面図を示す。また、各図の(B)は、(A)に示すA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、各図の(C)は、(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。また、各図の(D)は、(A)にA5-A6の一点鎖線で示す部位に対応する断面図である。なお、各図の(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
まず、基板(図示しない。)を準備し、当該基板上に絶縁体214を成膜する。絶縁体214の成膜は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、パルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、またはALD(Atomic Layer Deposition)法などを用いて行うことができる。
なお、CVD法は、プラズマを利用するプラズマCVD(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法、光を利用する光CVD(Photo CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法に分けることができる。
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。また、熱CVD法は、プラズマを用いないため、被処理物へのプラズマダメージを小さくすることが可能な成膜方法である。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない熱CVD法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、熱CVD法では、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
また、ALD法は、原子の性質である自己制御性を利用し、一層ずつ原子を堆積することができるので、極薄の成膜が可能、アスペクト比の高い構造への成膜が可能、ピンホールなどの欠陥の少ない成膜が可能、被覆性に優れた成膜が可能、および低温での成膜が可能、などの効果がある。また、ALD法には、プラズマを利用した成膜方法PEALD(Plasma Enhanced ALD)法も含まれる。プラズマを利用することで、より低温での成膜が可能となり好ましい場合がある。なお、ALD法で用いるプリカーサには炭素などの不純物を含むものがある。このため、ALD法により設けられた膜は、他の成膜法により設けられた膜と比較して、炭素などの不純物を多く含む場合がある。なお、不純物の定量は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて行うことができる。
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間を要さない分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
本実施の形態では、絶縁体214として、スパッタリング法によって酸化アルミニウムを成膜する。また、絶縁体214は、多層構造としてもよい。例えば、スパッタリング法によって酸化アルミニウムを成膜し、当該酸化アルミニウム上に、ALD法によって酸化アルミニウムを成膜する構造としてもよい。または、ALD法によって酸化アルミニウムを成膜し、当該酸化アルミニウム上に、スパッタリング法によって酸化アルミニウムを成膜する構造としてもよい。
次に絶縁体214上に絶縁体216を成膜する。絶縁体216の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体216として、CVD法によって酸化シリコンを成膜する。
次に、リソグラフィー法を用いて、絶縁体216に、絶縁体214に達する開口を形成する。開口とは、例えば、溝やスリットなども含まれる。また、開口が形成された領域を指して開口部とする場合がある。開口の形成にはウエットエッチング法を用いてもよいが、ドライエッチング法を用いるほうが微細加工には好ましい。また、絶縁体214は、絶縁体216をエッチングして開口を形成する際のエッチングストッパとして機能する絶縁体を選択することが好ましい。例えば、開口を形成する絶縁体216に酸化シリコンを用いた場合は、絶縁体214は、エッチングストッパとして機能する絶縁体として、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムを用いるとよい。
なお、リソグラフィー法では、まず、マスクを介してレジストを露光する。次に、露光された領域を、現像液を用いて除去または残存させてレジストマスクを形成する。次に、当該レジストマスクを介してエッチング処理することで導電体、半導体または絶縁体などを所望の形状に加工することができる。例えば、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme Ultraviolet)光などを用いて、レジストを露光することでレジストマスクを形成すればよい。また、基板と投影レンズとの間に液体(例えば水)を満たして露光する、液浸技術を用いてもよい。また、前述した光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電子ビームやイオンビームを用いる場合には、マスクは不要となる。なお、レジストマスクの除去には、アッシングなどのドライエッチング処理を行う、ウェットエッチング処理を行う、ドライエッチング処理後にウェットエッチング処理を行う、またはウェットエッチング処理後にドライエッチング処理を行うことができる。
また、レジストマスクの代わりに絶縁体や導電体からなるハードマスクを用いてもよい。ハードマスクを用いる場合、絶縁体216となる絶縁膜上にハードマスク材料となる絶縁膜や導電膜を形成し、その上にレジストマスクを形成し、ハードマスク材料をエッチングすることで所望の形状のハードマスクを形成することができる。絶縁体216となる絶縁膜のエッチングは、レジストマスクを除去してから行っても良いし、レジストマスクを残したまま行っても良い。後者の場合、エッチング中にレジストマスクが消失することがある。絶縁体216となる絶縁膜のエッチング後にハードマスクをエッチングにより除去しても良い。一方、ハードマスクの材料が後工程に影響が無い、あるいは後工程で利用できる場合、必ずしもハードマスクを除去する必要は無い。
ドライエッチング装置としては、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。平行平板型電極を有する容量結合型プラズマエッチング装置は、平行平板型電極の一方の電極に高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極の一方の電極に複数の異なった高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに同じ周波数の高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに周波数の異なる高周波電源を印加する構成でもよい。または高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置などを用いることができる。
開口の形成後に、導電体205の第1の導電体となる導電膜を成膜する。当該導電膜は、不純物や酸素の透過を抑制する機能を有する導電性バリア膜を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化チタンなどを用いることができる。またはタンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、モリブデンタングステン合金との積層膜とすることができる。導電体205の第1の導電体となる導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
本実施の形態では、導電体205の第1の導電体となる導電膜として、窒化タンタル、または、窒化タンタルの上に窒化チタンを積層した膜を成膜する。導電体205の第1の導電体としてこのような金属窒化物を用いることにより、導電体205の第2の導電体で銅など拡散しやすい金属を用いても、当該金属が導電体205の第1の導電体から外に拡散するのを抑制することができる。
次に、導電体205の第1の導電体となる導電膜上に、導電体205の第2の導電体となる導電膜を成膜する。当該導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、導電体205の第2の導電体となる導電膜として、タングステン、銅、アルミニウムなどの低抵抗導電性材料を成膜する。
次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、導電体205の第1の導電体となる導電膜、および導電体205の第2の導電体となる導電膜の一部を研磨により除去し、絶縁体216を露出する。その結果、開口部のみに、導電体205の第1の導電体となる導電膜、および導電体205の第2の導電体となる導電膜が残存する。これにより、上面が平坦な、導電体205の第1の導電体、および導電体205の第2の導電体を含む導電体205を形成することができる(図5参照。)。なお、当該CMP処理により、絶縁体216の一部が除去される場合がある。
なお、絶縁体216および導電体205の作製方法は上記に限られるものではない。例えば、絶縁体214の上に導電体205となる導電膜を成膜し、リソグラフィー法を用いて当該導電膜加工することで導電体205を形成する。次に、導電体205を覆うように絶縁体216となる絶縁膜を設け、CMP処理により当該絶縁膜の一部を、導電体205の一部が露出するまで除去することで導電体205、および絶縁体216を形成してもよい。
上記のようにCMP処理を用いて導電体205、および絶縁体216を形成することで、導電体205と絶縁体216の上面の平坦性を向上させることができ、後工程にて酸化物230a、酸化物230bおよび酸化物230cを構成するCAAC-OSの結晶性を向上させることができる。
次に、絶縁体216、および導電体205上に絶縁体222を成膜する。絶縁体222として、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を成膜するとよい。なお、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する。絶縁体222が、水素および水に対するバリア性を有することで、トランジスタ200の周辺に設けられた構造体に含まれる水素、および水が、絶縁体222を通じてトランジスタ200の内側へ拡散することが抑制され、酸化物230中の酸素欠損の生成を抑制することができる。
絶縁体222の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
次に、絶縁体222上に絶縁体224を成膜する。絶縁体224の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
続いて、加熱処理を行うと好ましい。加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下、さらに好ましくは320℃以上450℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素または不活性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、加熱処理は、窒素または不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
本実施の形態では、加熱処理として、絶縁体224の成膜後に窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行う。当該加熱処理によって、絶縁体224に含まれる水、水素などの不純物を除去することなどができる。また、加熱処理は、絶縁体222の成膜後などのタイミングで行うこともできる。
ここで、絶縁体224に過剰酸素領域を形成するために、減圧状態で酸素を含むプラズマ処理を行ってもよい。酸素を含むプラズマ処理は、例えばマイクロ波を用いた高密度プラズマを発生させる電源を有する装置を用いることが好ましい。または、基板側にRF(Radio Frequency)を印加する電源を有してもよい。高密度プラズマを用いることより、高密度の酸素ラジカルを生成することができ、基板側にRFを印加することで、高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを効率よく絶縁体224内に導くことができる。または、この装置を用いて不活性ガスを含むプラズマ処理を行った後に、脱離した酸素を補うために酸素を含むプラズマ処理を行ってもよい。なお、当該プラズマ処理の条件を適宜選択することにより、絶縁体224に含まれる水、水素などの不純物を除去することができる。その場合、加熱処理は行わなくてもよい。
次に、絶縁体224上に、酸化膜230A、および酸化膜230Bを順に成膜する(図5参照。)。なお、上記酸化膜は、大気環境に曝さずに連続して成膜することが好ましい。大気開放せずに成膜することで、酸化膜230A、および酸化膜230B上に大気環境からの不純物または水分が付着することを防ぐことができ、酸化膜230Aと酸化膜230Bとの界面近傍を清浄に保つことができる。
酸化膜230A、および酸化膜230Bの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
例えば、酸化膜230A、および酸化膜230Bをスパッタリング法によって成膜する場合は、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いる。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を高めることで、成膜される酸化膜中の過剰酸素を増やすことができる。また、上記の酸化膜をスパッタリング法によって成膜する場合は、上記のIn-M-Zn酸化物ターゲットなどを用いることができる。また、ターゲットには、直流(DC)電源または、高周波(RF)電源などの交流(AC)電源が接続され、ターゲットの電気伝導度に応じて、必要な電力を印加することができる。
特に、酸化膜230Aの成膜時に、スパッタリングガスに含まれる酸素の一部が絶縁体224に供給される場合がある。したがって、酸化膜230Aのスパッタリングガスに含まれる酸素の割合は70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%とすればよい。
また、酸化膜230Bをスパッタリング法で形成する場合、スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を1%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下として成膜すると、酸素欠乏型の酸化物半導体が形成される。酸素欠乏型の酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られる。また、基板を加熱しながら成膜を行うことによって、当該酸化膜の結晶性を向上させることができる。ただし、本発明の一態様はこれに限定されない。酸化物230bとなる酸化膜をスパッタリング法で形成する場合、スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を、30%を超えて100%以下、好ましくは70%以上100%以下として成膜すると、酸素過剰型の酸化物半導体が形成される。酸素過剰型の酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、比較的高い信頼性が得られる。
本実施の形態では、酸化膜230Aとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:1:0.5[原子数比](2:2:1[原子数比])、あるいは1:3:4[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。また、酸化膜230Bとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。なお、各酸化膜は、成膜条件、および原子数比を適宜選択することで、酸化物230に求める特性に合わせて形成するとよい。
ここで、絶縁体222、絶縁体224、酸化膜230A、および酸化膜230Bを、大気に暴露することなく成膜することが好ましい。例えば、マルチチャンバー方式の成膜装置を用いればよい。
次に、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、上述した加熱処理条件を用いることができる。加熱処理によって、酸化膜230A、および酸化膜230B中の水、水素などの不純物を除去することなどができる。本実施の形態では、窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行った後に、連続して酸素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行う。
次に、酸化膜230A、および酸化膜230Bを島状に加工して、酸化物230a、および酸化物230bを形成する(図6参照。)。なお、当該工程において、絶縁体224の酸化物230aと重ならない領域の膜厚が薄くなることがある。また、当該工程において、絶縁体224を、酸化物230aと重畳する島状に加工し、絶縁体222の一部が露出される構成にしてもよい。
ここで、酸化物230a、および酸化物230bは、少なくとも一部が導電体205と重なるように形成する。また、酸化物230a、および酸化物230bの側面と絶縁体222の上面のなす角が低い角度になる構成にしてもよい。その場合、酸化物230a、および酸化物230bの側面と絶縁体222の上面のなす角は60°以上70°未満が好ましい。この様な形状とすることで、これより後の工程において、絶縁体266などの被覆性が向上し、鬆などの欠陥を低減することができる。または、酸化物230bの側面は、絶縁体222の上面に対し、概略垂直にしてもよい。酸化物230a、および酸化物230bの側面が、絶縁体222の上面に対し、概略垂直であることで、複数のトランジスタ200を設ける際に、小面積化、高密度化が可能となる。
また、酸化物230bの側面と酸化物230bの上面との間に、湾曲面を有する。つまり、側面の端部と上面の端部は、湾曲していることが好ましい(以下、ラウンド状ともいう)。湾曲面は、例えば、酸化物230b層の端部において、曲率半径が、3nm以上10nm以下、好ましくは、5nm以上6nm以下とする。端部に角を有さないことで、以降の成膜工程における膜の被覆性が向上する。
なお、酸化膜230A、および酸化膜230Bの加工はリソグラフィー法を用いて行えばよい。また、当該加工はドライエッチング法やウェットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法による加工は微細加工に適している。
また、ドライエッチングなどの処理を行うことによって、エッチングガスなどに起因した不純物が酸化物230a、および酸化物230bなどの表面または内部に付着または拡散することがある。不純物としては、例えば、フッ素または塩素などがある。
上記の不純物などを除去するために、洗浄を行う。洗浄方法としては、洗浄液など用いたウェット洗浄、プラズマを用いたプラズマ処理、または熱処理による洗浄などがあり、上記洗浄を適宜組み合わせて行ってもよい。
ウェット洗浄としては、シュウ酸、リン酸、またはフッ化水素酸などを炭酸水または純水で希釈した水溶液を用いて洗浄処理を行ってもよい。または、純水または炭酸水を用いた超音波洗浄を行ってもよい。本実施の形態では、純水または炭酸水を用いた超音波洗浄を行う。
次に、酸化物230cとなる酸化膜の成膜前に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、100℃以上400℃以下で行えばよく、例えば200℃で行えばよい。あるいは、酸化物230cとなる酸化膜の成膜温度と同じ温度で行うことが好ましい。ここで、成膜温度とは、成膜中の基板温度に限らず、成膜装置の設定温度の場合を含む。例えば、酸化物230cとなる酸化膜を300℃で成膜する場合、当該加熱処理は300℃とすることが好ましい。当該加熱処理は、減圧下で行うことが好ましく、例えば、真空雰囲気で行ってもよい。真空雰囲気は、ターボ分子ポンプ等で排気を行うことで維持される。真空雰囲気では、処理室の圧力は、1×10-2Pa以下、好ましくは1×10-3Pa以下とすればよい。
次に、酸化物230aおよび酸化物230bを覆って、酸化物230cとなる酸化膜を成膜する(図6参照。)。また、上記加熱処理後、大気に暴露することなく、連続して酸化物230cとなる酸化膜の成膜を行うことが好ましい。例えば、後述するマルチチャンバー方式の成膜装置などを用いて、加熱処理と成膜処理を異なるチャンバーで、連続して行うことが好ましい。このような処理を行うことによって、酸化物230aおよび酸化物230bの表面などに表面に吸着している水分、水素、炭素などの不純物を除去し、さらに酸化物230aおよび酸化物230b中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。当該加熱処理により除去される不純物には、水素と炭素の結合を有する不純物や、水素と酸素の結合を有する不純物なども含まれる。さらに、外気に曝さず連続で加熱処理と成膜を行うことで、水素などの不純物が酸化物230に再侵入することを防ぐことができる。
酸化物230cとなる酸化膜の成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。酸化物230cとなる酸化膜に求める特性に合わせて、酸化膜230A、または酸化膜230Bと同様の成膜方法を用いて、酸化物230cとなる酸化膜となる酸化膜を成膜すればよい。酸化物230cとなる酸化膜として、In-Ga-Zn酸化物や、Inを含まない酸化物を用いることができる。Inを含まない酸化物として、Ga-Zn酸化物や、酸化ガリウムなどを用いることができる。また、酸化物230cとなる酸化膜として、In-Ga-Zn酸化物とInを含まない酸化物の積層構造を用いてもよい。酸化物230cとなる酸化膜として、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、4:2:4.1[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、あるいはGa:Zn=2:5[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。本実施の形態では、酸化物230cとなる酸化膜は、スパッタリング法によって、1:3:4[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。
また、酸化物230cとなる酸化膜は、第1の酸化膜と、第1の酸化膜上の第2の酸化膜からなる積層構造を有していてもよく、酸化膜230Bの形成に用いたターゲットと同様のターゲットを用いて第1の酸化膜を形成し、酸化膜230Aの形成に用いたターゲットと同様のターゲットを用いて第2の酸化膜を形成してもよい。
酸化物230cとなる酸化膜の成膜は、基板を加熱しながら行うことが好ましい。このとき、基板温度を300℃以上にすることで、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cとなる酸化膜中の酸素欠損を低減することができる。また、例えば、後述する絶縁体250の成膜温度と同じ温度で成膜してもよい。また、このように基板を加熱しながら成膜することで、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cとなる酸化膜の結晶性の向上を図ることもできる。
特に、酸化物230cとなる酸化膜の成膜時に、スパッタリングガスに含まれる酸素の一部が酸化物230aおよび酸化物230bに供給される場合がある。したがって、酸化物230cとなる酸化膜のスパッタリングガスに含まれる酸素の割合は70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%とすればよい。また、基板を加熱しながら成膜を行うことによって、当該酸化膜の結晶性を向上させることができる。
次に、酸化物230cとなる酸化膜を島状に加工して、酸化物230cを形成する(図6参照。)。図6に示すように、酸化物230cは、酸化物230aおよび酸化物230bを覆うように加工する。なお、酸化物230cの形成はリソグラフィー法を用いて行えばよい。また、当該加工はドライエッチング法やウェットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法による加工は微細加工に適している。酸化物230cの形成の詳細は、酸化物230aおよび酸化物230bの形成方法を参照すればよい。
次に、絶縁体250の成膜前に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、100℃以上400℃以下で行えばよく、例えば200℃で行えばよい。あるいは、絶縁体250の成膜温度と同じ温度で行うことが好ましい。ここで、成膜温度とは、成膜中の基板温度に限らず、成膜装置の設定温度の場合を含む。例えば、絶縁体250を350℃で成膜する場合、当該加熱処理は350℃とすることが好ましい。当該加熱処理は、減圧下で行うことが好ましく、例えば、真空雰囲気で行ってもよい。真空雰囲気は、ターボ分子ポンプ等で排気を行うことで維持される。真空雰囲気では、処理室の圧力は、1×10-2Pa以下、好ましくは1×10-3Pa以下とすればよい。
次に、酸化物230cを覆って、絶縁体250を成膜する(図6参照。)。絶縁体250は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて成膜することができる。絶縁体250としては、ALD法を用いて、酸化シリコン、酸化ハフニウム、または酸化ガリウムなどを成膜することが好ましい。例えば、絶縁体250として、酸化シリコンと、酸化シリコン上の酸化ガリウムの積層膜を用いればよい。なお、絶縁体250を成膜する際の成膜温度は、300℃以上450℃未満、好ましくは300℃以上400℃未満、特に350℃前後とすることが好ましい。例えば、絶縁体250を、350℃で成膜することで、不純物が少ない絶縁体を成膜することができる。
なお、マイクロ波で酸素を励起し、高密度な酸素プラズマを発生させ、当該酸素プラズマに絶縁体250を曝すことで、絶縁体250へ酸素を導入することができる。
また、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、前述の加熱処理条件を用いることができる。当該加熱処理によって、絶縁体250の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。
次に、絶縁体250の上に、ダミーゲート262Aとなるダミーゲート膜を成膜する。
ダミーゲート262Aとなるダミーゲート膜は、加工してダミーゲートとして使用する。ダミーゲートとは、仮のゲート電極のことである。つまり、ダミーゲート262Aとなるダミーゲート膜を加工することで、仮のゲート電極を形成し、後の工程において該ダミーゲートを除去し、代わりに導電膜等によるゲート電極を形成する。従って、ダミーゲート262Aとなるダミーゲート膜は微細加工が容易であり、かつ、除去も容易な膜を用いることが好ましい。
ダミーゲート262Aとなるダミーゲート膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。例えば、絶縁体、半導体、または導電体を用いることができる。具体的には、ポリシリコン、微結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン、アルミニウム、チタン、タングステンなどの金属膜などを用いればよい。または、塗布法を用いて、炭素を含む膜、SOG(Spin On Glass)、樹脂膜などを形成しても良い。例えば、フォトレジスト、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。SOG、樹脂膜を塗布法によって形成することで、ダミーゲート膜の表面を平坦にすることができる。このように、ダミーゲート膜の表面を平坦にすることで、微細加工が容易となり、さらに、除去も容易である。
ダミーゲートは、後述するドーパントの添加において、酸化物230を当該ドーパントから保護する必要がある。このため、ダミーゲート262Aとなるダミーゲート膜は十分な硬度を持っていることが好ましい。このようなダミーゲート膜としては、例えば、炭素を含む膜が好適である。
また、ダミーゲート262Aとなるダミーゲート膜は、異なる膜種を用いて多層膜とすることもできる。例えば、ダミーゲート262Aとなるダミーゲート膜を導電膜と該導電膜上に樹脂膜を形成する2層構造の膜とすることができる。ダミーゲート膜をこのような構造とすることで、例えば、後のCMP工程において、該導電膜がCMP処理のストッパ膜として機能する場合がある。または、CMP処理の終点検出が可能となる場合があり、加工ばらつきの低減が可能となる場合がある。
次に、リソグラフィー法によって、ダミーゲート262Aとなるダミーゲート膜をエッチングし、ダミーゲート262Aを形成する(図7参照。)。ダミーゲート262Aは、少なくとも一部が、導電体205および酸化物230と重なるように形成する。
また、ダミーゲート262Aの形成後に熱処理を行って、ダミーゲート262Aを硬化させてもよい。特に、ダミーゲート262Aの形状をアスペクト比が高い形状にする場合、ダミーゲート262Aを硬化させておくことにより、ダミーゲート262Aの変形を防ぐことができる。
次に、ダミーゲート262Aをマスクとして、酸化物230bおよび酸化物230cにドーパント257を添加する(図7参照。)。これにより、酸化物230bのダミーゲート262Aと重畳していない領域に、ドーパント257を含む、層253aおよび層253bが形成される。このように、ダミーゲート262Aのチャネル長方向の長さによって、層253aと層253bの間の距離、つまりチャネル長を制御することができる。
ドーパント257の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。質量分離を行う場合、添加するイオン種およびその濃度を厳密に制御することができる。一方、質量分離を行わない場合、短時間で高濃度のイオンを添加することができる。また、原子または分子のクラスターを生成してイオン化するイオンドーピング法を用いてもよい。なお、ドーパントを、イオン、ドナー、アクセプター、不純物または元素などと言い換えてもよい。
ドーパント257としては、上述の酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素などを用いればよい。このような元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。また、希ガス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。また、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどの金属元素の中から選ばれるいずれか一つまたは複数の金属元素を添加してもよい。上述した中でもドーパント257としては、ホウ素、及びリンが好ましい。ホウ素、リンをドーパント257として用いる場合、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、設備投資を抑制することができる。
特に、ドーパント257として、酸化物を形成しやすい元素を用いることが好ましい。このような元素としては、代表的にはホウ素、リン、アルミニウム、マグネシウム等がある。
ドーパント257を添加する際に用いる原料ガスとしては、上記不純物元素を含むガスを用いることができる。ホウ素を供給する場合、代表的にはB2H6ガスやBF3ガスなどを用いることができる。またリンを供給する場合には、代表的にはPH3ガスを用いることができる。また、これらの原料ガスを希ガスで希釈した混合ガスを用いてもよい。
その他、原料ガスとして、CH4、N2、NH3、AlH3、AlCl3、SiH4、Si2H6、F2、HF、H2及び希ガス等を用いることができる。また、イオン源はガスに限られず、液体または固体を気化させたものをイオン源としてもよい。
ドーパント257の添加は、絶縁体250、および酸化物230bの組成や密度、厚さなどを考慮して、加速電圧やドーズ量などの条件を設定することで制御することができる。特に、ドーパント257が、絶縁体250のダミーゲート262Aと接していない部分を貫通できるように、十分なエネルギーを与えることが好ましい。
ドーパント257の添加量は、後述するドーパント258の添加量よりも多いことが好ましい。これにより、層252よりも高濃度に元素が注入された層253を形成することができる。また、ドーパント257の添加は、ドーパント258よりも高い加速電圧で行ってもよい。これにより、層252よりも深くまで元素が分布した層253を形成することができる。
また、図7では、ドーパント257を絶縁体214の上面に略垂直に添加しているが、これに限られず、ドーパント257の添加を絶縁体214の上面に対して傾斜させて行ってもよい。絶縁体214の上面に対して傾斜させてドーパントを添加させることにより、ダミーゲート262Aと重畳する領域の一部に層253aおよび層253bを形成することが容易になる。
また、本実施の形態の作成方法では、ドーパント257は、絶縁体250を介して酸化物230に添加される。当該作製方法とすることで、絶縁体250にもドーパント257が添加される。すなわち、酸化物230、及び絶縁体250の双方がドーパント257に含まれる元素を有する。また、絶縁体250が過剰酸素を有する場合、ドーパント257によって、外部への過剰酸素の拡散を抑制できる場合がある。また、酸化物230b、酸化物230cおよび絶縁体250の下に設けられている、酸化物230a、絶縁体224および絶縁体222にもドーパント257が添加される場合がある。よって、酸化物230a、絶縁体224および絶縁体222がドーパント257に含まれる元素を有する場合がある。
次に、ダミーゲート262Aの一部を除去して(以下において、スリミング処理という場合がある。)、ダミーゲート262Bを形成する(図8参照)。ダミーゲート262Bは、ダミーゲート262Bを縮小したような形状である。よって、図8(B)に示すように、酸化物230bおよび酸化物230cの層253が形成されていない領域の一部をダミーゲート262Bから露出させることができる。この酸化物230bの層253が形成されていない領域の一部は、後の工程でドーパント258を添加させて層252となる。言い換えると、酸化物230bのダミーゲート262Bが重畳している領域が、チャネル形成領域として機能する領域234になる。
スリミング処理としては、例えば、ラジカル状態の酸素(酸素ラジカル)を用いたアッシング処理を適用することができる。ただし、スリミング処理は、ダミーゲート262Aをより微細なパターンに加工できる処理であれば、上述のアッシング処理に限定する必要はない。例えば、酸素を含む雰囲気下でのプラズマ処理もしくは加熱処理、またはオゾン雰囲気下に曝した状態で紫外光を照射する処理、ドライエッチング処理またはウェットエッチング処理などを用いることができる。なお、ダミーゲート262Bによってトランジスタ200のチャネル長が決定されるので、当該スリミング処理としては、制御性の良い処理を適用することが望ましい。
スリミング処理によって、ダミーゲート262AのA1-A2方向の長さを、露光装置の解像限界以下、例えば、解像限界の1/2以下、好ましくは1/3以下の線幅まで微細化することが可能である。これにより、例えば、トランジスタ200のチャネル長を、1nm以上60nm以下、より好ましくは15nm以上40nm以下とすることができる。このように、チャネル長を短くすることにより、トランジスタ200のオン電流を大きくし、S値を良好にし、周波数特性の向上を図ることができる。
次に、ダミーゲート262Bをマスクとして、酸化物230bおよび酸化物230cにドーパント258を添加する(図9参照。)。これにより、酸化物230bおよび酸化物230cのダミーゲート262Bと重畳しておらず、且つ層253が形成されていない領域に、ドーパント258を含む、層252aおよび層252bが形成される。このように、ダミーゲート262BのA1-A2方向の幅によって、層252aと層252bの距離、すなわち、トランジスタ200のチャネル長を制御することができる。
ドーパント258の添加方法は、上記のドーパント257の添加方法と同様の方法を用いることができる。このとき、ドーパント258が、絶縁体250のダミーゲート262Bと接していない部分を貫通できるように、十分なエネルギーを与えることが好ましい。また、ドーパント258としては、ドーパント257と同様に、上述の酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素などを用いればよい。ただし、ドーパント258の添加量は、ドーパント257の添加量よりも少ないことが好ましい。
また、図9では、ドーパント258を絶縁体214の上面に略垂直に添加しているが、これに限られず、ドーパント258の添加を絶縁体214の上面に対して傾斜させて行ってもよい。絶縁体214の上面に対して傾斜させてドーパントを添加させることにより、ダミーゲート262Bと重畳する領域の一部にも層252aおよび層252bを形成することができる場合がある。
また、本実施の形態の作成方法では、ドーパント258は、絶縁体250を介して酸化物230に添加される。当該作製方法とすることで、絶縁体250にもドーパント258が添加される。すなわち、酸化物230b、及び絶縁体250の双方がドーパント258に含まれる元素を有する。また、絶縁体250が過剰酸素を有する場合、ドーパント258によって、外部への過剰酸素の拡散を抑制できる場合がある。また、ドーパント258は、層253にも添加されるので、層253がドーパント258に含まれる元素を有する場合がある。また、酸化物230b、酸化物230cおよび絶縁体250の下に設けられている、酸化物230a、絶縁体224および絶縁体222にもドーパント258が添加される場合がある。よって、酸化物230a、絶縁体224および絶縁体222がドーパント258に含まれる元素を有する場合がある。
以上のように、ダミーゲート262Aおよびダミーゲート262Bをマスクとして、層252および層253を形成することにより、後の工程で形成する導電体260を、層253aと層253bの間に自己整合的に配置させ、且つ層252aと層252bの上に自己整合的に重畳させることができる。
なお、ドーパント257の添加後、またはドーパント258の添加後に熱処理を行ってもよい。当該熱処理により、チャネル形成領域として機能する領域234に含まれる水素を、層253に含まれる酸素欠損で捕獲できる場合がある。これにより、トランジスタ200に安定な電気特性を与え、信頼性の向上を図ることができる。また、当該熱処理は、以降の工程で行ってもよい。
次に、絶縁体250、およびダミーゲート262Bを覆って、絶縁膜266Aを成膜する(図10参照。)。絶縁膜266Aの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて成膜することができる。
絶縁膜266Aは、水素などの不純物や、酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、スパッタリング法によって、酸化アルミニウム膜を成膜することが好ましい。スパッタリング法によって、酸素を含むガスを用いて酸化アルミニウム膜を成膜することによって、絶縁体250中へ酸素を注入することができる。つまり、絶縁体250は過剰酸素を有することができる。
また、絶縁膜266Aとして、高温で基板加熱を行いながら、酸化アルミニウムを成膜してもよい。絶縁膜266A成膜時の基板加熱温度は、200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは350℃以上にすればよい。このとき、絶縁膜266Aを成膜する前に、ALD法を用いて酸化アルミニウムを成膜しておくことにより、上記の温度で絶縁膜266Aを成膜したときに、ダミーゲート262Bが変形することを防ぐことができる。
後の工程において、ダミーゲート262Bと絶縁膜266Aのダミーゲート262Bに接している部分を除去して、開口263を形成する。つまり、絶縁膜266Aの膜厚によって、開口263の大きさを制御することができる。ここで、層252および層253は、ダミーゲート262Bの配置に対して自己整合的に形成されている。開口263は、ダミーゲート262Bの位置を中心として、大きさを制御することができる。よって、開口263を大きくすることで、導電体260を層252と重畳させることができる。さらに開口263を大きくすることで、導電体260を層253と重畳させることもできる。このように、酸化物230のチャネル形成領域とソース領域またはドレイン領域との間に、オフセット領域が形成されるのを防ぎ、実効的なチャネル長が導電体260の幅より大きくなるのを抑制することができる。これにより、トランジスタ200のオン電流を大きくし、S値を良好にし、周波数特性の向上を図ることができる。なお、開口263の大きさ、つまりトランジスタ200のオーバーラップ領域の大きさは、トランジスタ200に要求される電気特性に合わせて適宜設定することができる。
次に、絶縁体250、絶縁膜266A、およびダミーゲート262B上に、絶縁膜280Aを成膜する(図10参照。)。絶縁膜280Aの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
次に、絶縁膜280A、絶縁膜266A、およびダミーゲート262Bの一部を、ダミーゲート262Bの一部が露出するまで除去し、絶縁体280、絶縁体266B、およびダミーゲート262を形成する(図11参照。)。絶縁体280、絶縁体266B、およびダミーゲート262の形成にはCMP処理を用いることが好ましい。
また、上述のようにダミーゲート262Bを、例えば、導電膜と該導電膜上に樹脂膜を形成する2層構造の膜とすることで、CMP工程において、該導電膜がCMP処理のストッパ膜として機能する場合がある。または、該導電膜がCMP処理の終点検出が可能となる場合があり、ダミーゲート262の高さのばらつきの低減が可能となる場合がある。図11(B)に示すように、ダミーゲート262の上面と、絶縁体266Bおよび絶縁体280の上面が略一致する。
次に、ダミーゲート262と、絶縁膜266Aの絶縁体280から露出した部分を除去し、開口263を形成する(図12参照。)。ダミーゲート262、および絶縁膜266Aの除去は、絶縁体280をマスクとして、ウェットエッチング、ドライエッチング、またはアッシングなどを用いて行うことができる。または、適宜、上記の処理を複数組み合わせて行ってもよい。例えば、アッシング処理の後に、ウェットエッチング処理を行うなどがある。このとき、絶縁体250がエッチングストッパとして機能することが好ましい。絶縁膜266Aの一部を除去することにより、絶縁体266を形成する。ダミーゲート262、および絶縁膜266Aの一部を除去することにより、開口263から絶縁体250の表面の一部が露出する。
なお、絶縁体250は必ずしもエッチングストッパとして機能しなくてもよい。例えば、上記エッチング処理で絶縁体250の絶縁体280から露出した部分も除去し、その後、開口263に埋め込むように、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を成膜してもよい。
次に、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、上述した加熱処理条件を用いることができる。加熱処理によって、開口263を介して、絶縁体250、酸化物230a、および酸化物230b中の水、水素などの不純物を除去することなどができる。例えば、窒素雰囲気にて600℃の温度で熱処理を行えばよい。
また、導電膜260Aaおよび導電膜260Abの成膜前に、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマ処理法、およびプラズマイマージョンイオンインプランテーション法から選ばれた一、または複数の方法を用いて、酸化物230b、酸化物230cおよび絶縁体280に酸素を添加してもよい。このとき、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法を用いることで、酸化物230b、酸化物230cおよび絶縁体280に制御よく酸素を添加できるため、好ましい。
次に、開口263に埋め込むように、導電膜260Aaおよび導電膜260Abを成膜する(図13参照。)。導電膜260Aaおよび導電膜260Abの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。例えば、CVD法を用いることが好ましい。本実施の形態では、ALD法を用いて、導電膜260Aaを成膜し、CVD法を用いて導電膜260Abを成膜する。
次に、CMP処理によって、導電膜260Aaおよび導電膜260Abを絶縁体280が露出するまで研磨することによって、導電体260(導電体260aおよび導電体260b)を形成する(図14参照。)。
次に加熱処理を行っても良い。加熱処理は、前述の加熱処理条件を用いることができる。当該加熱処理によって、絶縁体280の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。または、絶縁体274となる絶縁膜の成膜前に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、100℃以上400℃以下で行えばよく、例えば200℃で行えばよい。あるいは、該絶縁膜の成膜温度と同じ温度で行うことが好ましい。ここで、成膜温度とは、成膜中の基板温度に限らず、成膜装置の設定温度の場合を含む。例えば、該絶縁膜を250℃で成膜する場合、当該加熱処理は250℃とすることが好ましい。当該加熱処理は、減圧下で行うことが好ましく、例えば、真空雰囲気で行ってもよい。真空雰囲気は、ターボ分子ポンプ等で排気を行うことで維持される。真空雰囲気では、処理室の圧力は、1×10-2Pa以下、好ましくは1×10-3Pa以下とすればよい。
次に、絶縁体280上に、絶縁体274となる絶縁膜を形成する(図14参照。)。絶縁体274となる絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。絶縁体274となる絶縁膜としては、例えば、スパッタリング法によって、酸化アルミニウム膜を成膜することが好ましい。スパッタリング法によって、酸化アルミニウム膜を成膜することによって、絶縁体280が有する水素を酸化物230へ拡散することを抑制することができる場合がある。
次に加熱処理を行っても良い。加熱処理は、前述の加熱処理条件を用いることができる。当該加熱処理によって、絶縁体280の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。
次に絶縁体274上に、絶縁体281となる絶縁体を成膜してもよい。絶縁体281となる絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる(図14参照。)。
次に、絶縁体266、絶縁体280、絶縁体274および絶縁体281に、層253aおよび層253bに達する開口を形成する。当該開口の形成は、リソグラフィー法を用いて行えばよい。
次に、絶縁体241となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜を異方性エッチングして絶縁体241を形成する。当該導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。絶縁体241となる絶縁膜としては、酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、ALD法によって、酸化アルミニウム膜を成膜することが好ましい。また、ALD法やCVD法を用いて、窒化シリコン膜を成膜してもよい。ALD法を用いて窒化シリコン膜を成膜する場合、シリコンおよびハロゲンを含むプリカーサや、アミノシラン類のプリカーサを用いることができる。シリコンおよびハロゲンを含むプリカーサとして、SiCl4、SiH2Cl2、Si2Cl6、Si3Cl8等を用いることができる。また、アミノシラン類のプリカーサとして、1価、2価、または3価のアミノシラン類を用いることができる。また、窒化ガスとしてアンモニアや、ヒドラジンを用いることができる。また、異方性エッチングは、例えばドライエッチング法などを行えばよい。開口の側壁部をこのような構成とすることで、外方からの酸素の透過を抑制し、次に形成する導電体240aおよび導電体240bの酸化を防止することができる。また、導電体240aおよび導電体240bから、水、水素などの不純物が外部に拡散することを防ぐことができる。
次に、導電体240aおよび導電体240bとなる導電膜を成膜する。導電体240aおよび導電体240bとなる導電膜は、水、水素など不純物の拡散を抑制する機能を有する導電体を含む積層構造とすることが望ましい。たとえば、窒化タンタル、窒化チタンなどと、タングステン、モリブデン、銅など、と、の積層とすることができる。導電体240となる導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
次に、CMP処理を行うことで、導電体240aおよび導電体240bとなる導電膜の一部を除去し、絶縁体281を露出する。その結果、上記開口のみに、当該導電膜が残存することで上面が平坦な導電体240aおよび導電体240bを形成することができる(図1参照。)。なお、当該CMP処理により、絶縁体281の一部が除去する場合がある。
以上により、図1に示すトランジスタ200を有する半導体装置を作製することができる。図5乃至図14に示すように、本実施の形態に示す半導体装置の作製方法を用いることで、トランジスタ200を作製することができる。
本発明の一態様により、オン電流の大きい半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、高い周波数特性を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、オフ電流の小さい半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、生産性の高い半導体装置を提供することができる。
<半導体装置の変形例>
以下では、図15乃至図19を用いて、先の<半導体装置の構成例>で示したものとは異なる、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置、および当該半導体装置の作製方法の一例について説明する。
また、図15乃至図19において、各図の(A)は上面図を示す。また、各図の(B)は、各図の(A)に示すA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、各図の(C)は、各図の(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。また、各図の(D)は、各図の(A)にA5-A6の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。各図の(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
なお、図15乃至図19に示す半導体装置において、<半導体装置の構成例>に示した半導体装置(図1参照。)を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。なお、本項目において、トランジスタ200の構成材料については<半導体装置の構成例>で詳細に説明した材料を用いることができる。
図15に示すトランジスタ200は、絶縁体266を有しておらず、絶縁体280と絶縁体250が接している点において、図1に示すトランジスタ200と異なる。
図15に示す半導体装置は、ダミーゲート262Bを形成し、ドーパント258を添加するまでは、図1に示す半導体装置の作製方法と同様である。よって、図5乃至9に係る半導体装置の作製方法を参酌することができる。
次に、絶縁体250、およびダミーゲート262Bを覆って、ダミー膜267Aとなる膜を成膜する。ダミー膜267Aとなる膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて成膜することができる。ここでダミー膜267Aとなる膜は、最終的には除去されるので、微細加工が容易であり、かつ、除去も容易な膜を用いることが好ましい。例えば、絶縁体266に用いることができる絶縁体を用いればよい。ただし、後の工程で除去する際に、絶縁体280および絶縁体250に対して、十分大きなエッチングレートをとることができるものが好ましい。
次に、ダミー膜267Aとなる膜に異方性エッチングを行い、ダミーゲート262Bの側壁に接する部分のみを残存させてダミー膜267Aを形成する。(図16参照。)。異方性エッチングは、例えばドライエッチング法などを行えばよい。
後の工程において、ダミーゲート262Bとダミー膜267Aを除去して、開口263を形成する。つまり、ダミー膜267Aの膜厚によって、開口263の大きさを制御することができる。ここで、層252および層253は、ダミーゲート262Bの配置に対して自己整合的に形成されている。開口263は、ダミーゲート262Bの位置を中心として、大きさを制御することができる。よって、開口263を大きくすることで、導電体260を層252と重畳させることができる。さらに開口263を大きくすることで、導電体260を層253と重畳させることもできる。このように、酸化物230のチャネル形成領域とソース領域またはドレイン領域との間に、オフセット領域が形成されるのを防ぎ、実効的なチャネル長が導電体260の幅より大きくなるのを抑制することができる。これにより、トランジスタ200のオン電流を大きくし、S値を良好にし、周波数特性の向上を図ることができる。なお、開口263の大きさ、つまりトランジスタ200のオーバーラップ領域の大きさは、トランジスタ200に要求される電気特性に合わせて適宜設定することができる。
次に、図10に係る処理と同様の処理を行い、絶縁体250、ダミー膜267A、およびダミーゲート262B上に、絶縁膜280Aを成膜する。
次に、図11に係る処理と同様の処理を行い、絶縁膜280A、ダミー膜267A、およびダミーゲート262Bの一部を、ダミーゲート262Bの一部が露出するまで除去し、絶縁体280、ダミー膜267、およびダミーゲート262を形成する(図17参照。)。絶縁体280、ダミー膜267、およびダミーゲート262の形成にはCMP処理を用いることが好ましい。
次に、ダミーゲート262およびダミー膜267を除去し、開口263を形成する(図18参照。)。ダミーゲート262およびダミー膜267の除去は、絶縁体280をマスクとして、ウェットエッチング、ドライエッチング、またはアッシングなどを用いて行うことができる。または、適宜、上記の処理を複数組み合わせて行ってもよい。例えば、アッシング処理の後に、ウェットエッチング処理を行うなどがある。ダミーゲート262およびダミー膜267を除去することにより、開口263から絶縁体250が露出する。
ここで、絶縁体280および絶縁体250をエッチングストッパとして、ダミーゲート262とダミー膜267を除去することが好ましい。このような工程でダミーゲート262およびダミー膜267を除去することにより、開口263の側壁を過剰にエッチングすることなく、開口263を形成することができる。
図15に示す半導体装置の作製方法の、以降の工程については、図1に示す半導体装置の作製方法と同様である。よって、図13および図14に係る半導体装置の作製方法を参酌することができる。
図19に示すトランジスタ200は、絶縁体266および絶縁体280の側面と酸化物230bの上面のなす角が90°より大きい点において、図1に示すトランジスタ200と異なる。
上記半導体装置の作製方法の図7に係る記載において、ダミーゲート262Aの側面は、酸化物230bの上面に対して概略垂直だった。これに対して、ダミーゲート262Aの側面と酸化物230bの上面のなす角が90°未満、言い換えるとダミーゲート262Aの断面形状が順テーパー形状を有している場合、絶縁体266および絶縁体280の断面形状は、図19に示すように逆テーパー形状になる。また、導電体260の断面形状が順テーパー形状になる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置の一形態を、図20および図21を用いて説明する。
[記憶装置1]
本発明の一態様である容量素子を使用した、半導体装置(記憶装置)の一例を図20に示す。本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ200はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子100はトランジスタ300、およびトランジスタ200の上方に設けられている。なお、トランジスタ200として、先の実施の形態で説明したトランジスタ200などを用いることができる。
トランジスタ200は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。トランジスタ200は、オフ電流が小さいため、これを記憶装置に用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、あるいは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ないため、記憶装置の消費電力を十分に低減することができる。
図20に示す半導体装置において、配線1001はトランジスタ300のソースと電気的に接続され、配線1002はトランジスタ300のドレインと電気的に接続されている。また、配線1003はトランジスタ200のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、配線1004はトランジスタ200の第1のゲートと電気的に接続され、配線1006はトランジスタ200の第2のゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ300のゲート、およびトランジスタ200のソースおよびドレインの他方は、容量素子100の電極の一方と電気的に接続され、配線1005は容量素子100の電極の他方と電気的に接続されている。
また、図20に示す記憶装置は、マトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。
<トランジスタ300>
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、ゲート電極として機能する導電体316、ゲート絶縁体として機能する絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、およびソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
ここで、図20に示すトランジスタ300はチャネルが形成される半導体領域313(基板311の一部)が凸形状を有する。また、半導体領域313の側面および上面を、絶縁体315を介して、導電体316が覆うように設けられている。なお、導電体316は仕事関数を調整する材料を用いてもよい。このようなトランジスタ300は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁体を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体膜を形成してもよい。
なお、図20に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
<容量素子100>
容量素子100は、トランジスタ200の上方に設けられる。容量素子100は、第1の電極として機能する導電体110と、第2の電極として機能する導電体120、および誘電体として機能する絶縁体130とを有する。
また、例えば、導電体240上に設けた導電体112と、導電体110は、同時に形成することができる。なお、導電体112は、容量素子100、トランジスタ200、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。
図20では、導電体112、および導電体110は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
また、絶縁体130は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウムなどを用いればよく、積層または単層で設けることができる。
例えば、絶縁体130には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料と、高誘電率(high-k)材料との積層構造を用いることが好ましい。当該構成により、容量素子100は、高誘電率(high-k)の絶縁体を有することで、十分な容量を確保でき、絶縁耐力が大きい絶縁体を有することで、絶縁耐力が向上し、容量素子100の静電破壊を抑制することができる。
なお、高誘電率(high-k)材料(高い比誘電率の材料)の絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
一方、絶縁耐力が大きい材料(低い比誘電率の材料)としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などがある。
<配線層>
各構造体の間には、層間膜、配線、およびプラグ等が設けられた配線層が設けられていてもよい。また、配線層は、設計に応じて複数層設けることができる。ここで、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と電気的に接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
例えば、トランジスタ300上には、層間膜として、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子100、またはトランジスタ200と電気的に接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330はプラグ、または配線として機能する。
また、層間膜として機能する絶縁体は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図20において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、プラグ、または配線として機能する。
同様に、絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216には、導電体218、及びトランジスタ200を構成する導電体(導電体205)等が埋め込まれている。なお、導電体218は、容量素子100、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。さらに、導電体120、および絶縁体130上には、絶縁体150が設けられている。
層間膜として用いることができる絶縁体としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
例えば、層間膜として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁体の機能に応じて、材料を選択するとよい。
例えば、絶縁体150、絶縁体212、絶縁体352、および絶縁体354等には、比誘電率の低い絶縁体を有することが好ましい。例えば、当該絶縁体は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などを有することが好ましい。または、当該絶縁体は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコンまたは空孔を有する酸化シリコンと、樹脂と、の積層構造を有することが好ましい。酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。
また、導電体112、または導電体120上に設けられる絶縁体130、および絶縁体150の一方、または両方を抵抗率が1.0×1012Ωcm以上1.0×1015Ωcm以下、好ましくは5.0×1012Ωcm以上1.0×1014Ωcm以下、より好ましくは1.0×1013Ωcm以上5.0×1013Ωcm以下の絶縁体とすることが好ましい。絶縁体130、および絶縁体150の一方、または両方を上記のような抵抗率を有する絶縁体とすることで、当該絶縁体は、絶縁性を維持しつつ、トランジスタ200、トランジスタ300、容量素子100、および導電体112や導電体120等の配線間に蓄積される電荷を分散し、該電荷によるトランジスタ、該トランジスタを有する記憶装置の特性不良や静電破壊を抑制することができ、好ましい。このような絶縁体として、窒化シリコン、または窒化酸化シリコンを用いることができる。
また、上記のような抵抗率を有する絶縁体として、絶縁体140を導電体112の下層に設けてもよい。この場合、絶縁体281上に絶縁体140を形成し、絶縁体140、絶縁体281、絶縁体274、絶縁体280、絶縁体244、絶縁体254などに開口部を形成し、当該開口部内に絶縁体241の形成や、トランジスタ200、導電体218などと電気的に接続する導電体240の形成を行えばよい。絶縁体140は、絶縁体130、または絶縁体150と同様の材料を用いることができる。
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。従って、絶縁体210、および絶縁体350等には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体を用いればよい。
水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
配線、プラグに用いることができる導電体としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
例えば、導電体328、導電体330、導電体356、導電体218、および導電体112等としては、上記の材料で形成される金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
<<酸化物半導体が設けられた層の配線、またはプラグ>>
なお、トランジスタ200に、酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体の近傍に過剰酸素領域を有する絶縁体が設けることがある。その場合、該過剰酸素領域を有する絶縁体と、該過剰酸素領域を有する絶縁体に設ける導電体との間に、バリア性を有する絶縁体を設けることが好ましい。
例えば、図20では、絶縁体224と、導電体240との間に、絶縁体241を設けるとよい。特に、絶縁体241は、過剰酸素領域を有する絶縁体224を挟む絶縁体222と、絶縁体266と、接して設けられることが好ましい。絶縁体241と、絶縁体222、および絶縁体266とが接して設けられることで、絶縁体224は、バリア性を有する絶縁体により、封止する構造とすることができる。さらに、絶縁体241は、絶縁体280、および絶縁体281の一部とも接することが好ましい。絶縁体241が、絶縁体280、および絶縁体281まで延在していることで、酸素や不純物の拡散を、より抑制することができる。
つまり、絶縁体241を設けることで、絶縁体224が有する過剰酸素が、導電体240に吸収されることを抑制することができる。また、絶縁体241を有することで、不純物である水素が、導電体240を介して、トランジスタ200へ拡散することを抑制することができる。
なお、絶縁体241としては、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
以上が構成例についての説明である。本構成を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。
[記憶装置2]
本発明の一態様である半導体装置を使用した、記憶装置の一例を図21に示す。図21に示す記憶装置は、図20で示したトランジスタ200、トランジスタ300、および容量素子100を有する半導体装置に加え、トランジスタ400を有している。
トランジスタ400は、トランジスタ200の第2のゲート電圧を制御することができる。例えば、トランジスタ400の第1のゲート及び第2のゲートをソースとダイオード接続し、トランジスタ400のソースと、トランジスタ200の第2のゲートを接続する構成とする。当該構成でトランジスタ200の第2のゲートの負電位を保持するとき、トランジスタ400の第1のゲートーソース間の電圧および、第2のゲートーソース間の電圧は、0Vになる。トランジスタ400において、第2のゲート電圧及び第1のゲート電圧が0Vのときのドレイン電流が非常に小さいため、トランジスタ200およびトランジスタ400に電源供給をしなくても、トランジスタ200の第2のゲートの負電位を長時間維持することができる。これにより、トランジスタ200、およびトランジスタ400を有する記憶装置は、長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。
従って、図21において、配線1001はトランジスタ300のソースと電気的に接続され、配線1002はトランジスタ300のドレインと電気的に接続されている。また、配線1003はトランジスタ200のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、配線1004はトランジスタ200のゲートと電気的に接続され、配線1006はトランジスタ200のバックゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ300のゲート、およびトランジスタ200のソースおよびドレインの他方は、容量素子100の電極の一方と電気的に接続され、配線1005は容量素子100の電極の他方と電気的に接続されている。配線1007はトランジスタ400のソースと電気的に接続され、配線1008はトランジスタ400のゲートと電気的に接続され、配線1009はトランジスタ400のバックゲートと電気的に接続され、配線1010はトランジスタ400のドレインと電気的に接続されている。ここで、配線1006、配線1007、配線1008、及び配線1009が電気的に接続されている。
また、図21に示す記憶装置は、図20に示す記憶装置と同様に、マトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。なお、1個のトランジスタ400は、複数のトランジスタ200の第2のゲート電圧を制御することができる。そのため、トランジスタ400は、トランジスタ200よりも、少ない個数を設けるとよい。
<トランジスタ400>
トランジスタ400は、トランジスタ200と、同じ層に形成されており、並行して作製することができるトランジスタである。トランジスタ400は、第1のゲート電極として機能する導電体460(導電体460a、および導電体460b)と、第2のゲート電極として機能する導電体405(導電体405a、および導電体405b)と、ゲート絶縁層として機能する絶縁体222、絶縁体224、および絶縁体450と、チャネルが形成される領域を有する酸化物430cと、ソースまたはドレインの一方として機能する層453a、酸化物431a、および酸化物431bと、ソースまたはドレインの他方として機能する層453b、酸化物432a、および酸化物432bと、導電体440(導電体440a、および導電体440b)と、を有する。
トランジスタ400において、導電体405は、導電体205と、同じ層である。酸化物431a、および酸化物432aと、酸化物230aと、同じ層であり、酸化物431b、および酸化物432bと、酸化物230bと、同じ層である。層453aおよび層453bは、層253aおよび層253bと同じ工程で形成される層である。酸化物430cは、酸化物230cは同じ層である。絶縁体450は、絶縁体250と、同じ層である。導電体460は、導電体260と、同じ層である。
なお、同じ層に形成された構造体は、同時に形成することができる。例えば、酸化物430cは、酸化物230cとなる酸化膜を加工することで、形成することができる。
トランジスタ400の活性層として機能する酸化物430cは、酸化物230などと同様に、酸素欠損が低減され、水素または水などの不純物が低減されている。これにより、トランジスタ400のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減し、第2のゲート電圧及び第1のゲート電圧が0Vのときのドレイン電流を非常に小さくすることができる。
<<ダイシングライン>>
以下では、大面積基板を半導体素子ごとに分断することによって、複数の半導体装置をチップ状で取り出す場合に設けられるダイシングライン(スクライブライン、分断ライン、又は切断ラインと呼ぶ場合がある)について説明する。分断方法としては、例えば、まず、基板に半導体素子を分断するための溝(ダイシングライン)を形成した後、ダイシングラインにおいて切断し、複数の半導体装置に分断(分割)する場合がある。
ここで、例えば、図21に示すように、絶縁体254と、絶縁体222とが接する領域をダイシングラインとなるように設計することが好ましい。つまり、複数のトランジスタ200を有するメモリセル、およびトランジスタ400の外縁に設けられるダイシングラインとなる領域近傍において、絶縁体224に開口を設ける。また、絶縁体224の側面を覆うように、絶縁体254、および絶縁体244を設ける。
つまり、上記絶縁体224に設けた開口において、絶縁体222と、絶縁体254とが接する。例えば、このとき、絶縁体222と、絶縁体254とを同材料及び同方法を用いて形成してもよい。絶縁体222、および絶縁体254を、同材料、および同方法で設けることで、密着性を高めることができる。例えば、酸化アルミニウムを用いることが好ましい。
当該構造により、絶縁体222、および絶縁体254で、絶縁体224、トランジスタ200、およびトランジスタ400を包み込むことができる。絶縁体222、および絶縁体254は、酸素、水素、及び水の拡散を抑制する機能を有しているため、本実施の形態に示す半導体素子が形成された回路領域ごとに、基板を分断することにより、複数のチップに加工しても、分断した基板の側面方向から、水素又は水などの不純物が混入し、トランジスタ200、およびトランジスタ400に拡散することを防ぐことができる。
また、当該構造により、絶縁体224の過剰酸素が絶縁体254、および絶縁体222の外部に拡散することを防ぐことができる。従って、絶縁体224の過剰酸素は、効率的にトランジスタ200、またはトランジスタ400におけるチャネルが形成される酸化物に供給される。当該酸素により、トランジスタ200、またはトランジスタ400におけるチャネルが形成される酸化物の酸素欠損を低減することができる。これにより、トランジスタ200、またはトランジスタ400におけるチャネルが形成される酸化物を欠陥準位密度が低い、安定な特性を有する酸化物半導体とすることができる。つまり、トランジスタ200、またはトランジスタ400の電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、図22および図23を用いて、本発明の一態様に係る、酸化物を半導体に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタと呼ぶ場合がある。)、および容量素子が適用されている記憶装置(以下、OSメモリ装置と呼ぶ場合がある。)について説明する。OSメモリ装置は、少なくとも容量素子と、容量素子の充放電を制御するOSトランジスタを有する記憶装置である。OSトランジスタのオフ電流は極めて小さいので、OSメモリ装置は優れた保持特性をもち、不揮発性メモリとして機能させることができる。
<記憶装置の構成例>
図22(A)にOSメモリ装置の構成の一例を示す。記憶装置1400は、周辺回路1411、およびメモリセルアレイ1470を有する。周辺回路1411は、行回路1420、列回路1430、出力回路1440、コントロールロジック回路1460を有する。
列回路1430は、例えば、列デコーダ、プリチャージ回路、センスアンプ、および書き込み回路等を有する。プリチャージ回路は、配線をプリチャージする機能を有する。センスアンプは、メモリセルから読み出されたデータ信号を増幅する機能を有する。なお、上記配線は、メモリセルアレイ1470が有するメモリセルに接続されている配線であり、詳しくは後述する。増幅されたデータ信号は、出力回路1440を介して、データ信号RDATAとして記憶装置1400の外部に出力される。また、行回路1420は、例えば、行デコーダ、ワード線ドライバ回路等を有し、アクセスする行を選択することができる。
記憶装置1400には、外部から電源電圧として低電源電圧(VSS)、周辺回路1411用の高電源電圧(VDD)、メモリセルアレイ1470用の高電源電圧(VIL)が供給される。また、記憶装置1400には、制御信号(CE、WE、RE)、アドレス信号ADDR、データ信号WDATAが外部から入力される。アドレス信号ADDRは、行デコーダおよび列デコーダに入力され、WDATAは書き込み回路に入力される。
コントロールロジック回路1460は、外部からの入力信号(CE、WE、RE)を処理して、行デコーダ、列デコーダの制御信号を生成する。CEは、チップイネーブル信号であり、WEは、書き込みイネーブル信号であり、REは、読み出しイネーブル信号である。コントロールロジック回路1460が処理する信号は、これに限定されるものではなく、必要に応じて、他の制御信号を入力すればよい。
メモリセルアレイ1470は、行列状に配置された、複数個のメモリセルMCと、複数の配線を有する。なお、メモリセルアレイ1470と行回路1420とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一列に有するメモリセルMCの数などによって決まる。また、メモリセルアレイ1470と列回路1430とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一行に有するメモリセルMCの数などによって決まる。
なお、図22(A)において、周辺回路1411とメモリセルアレイ1470を同一平面上に形成する例について示したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、図22(B)に示すように、周辺回路1411の一部の上に、メモリセルアレイ1470が重なるように設けられてもよい。例えば、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にしてもよい。
図23に上述のメモリセルMCに適用できるメモリセルの構成例について説明する。
[DOSRAM]
図23(A)乃至(C)に、DRAMのメモリセルの回路構成例を示す。本明細書等において、1OSトランジスタ1容量素子型のメモリセルを用いたDRAMを、DOSRAM(Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memory)と呼ぶ場合がある。図23(A)に示す、メモリセル1471は、トランジスタM1と、容量素子CAと、を有する。なお、トランジスタM1は、ゲート(フロントゲートと呼ぶ場合がある。)、及びバックゲートを有する。
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM1のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。
配線BILは、ビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CAの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、及び読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM1のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM1のしきい値電圧を増減することができる。
また、メモリセルMCは、メモリセル1471に限定されず、回路構成の変更を行うことができる。例えば、メモリセルMCは、図23(B)に示すメモリセル1472のように、トランジスタM1のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図23(C)に示すメモリセル1473ように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM1で構成されたメモリセルとしてもよい。
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1471等に用いる場合、トランジスタM1としてトランジスタ200を用い、容量素子CAとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM1のリーク電流を非常に低くすることができる。つまり、書き込んだデータをトランジスタM1によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル1471、メモリセル1472、メモリセル1473に対して多値データ、又はアナログデータを保持することができる。
また、DOSRAMにおいて、上記のように、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にすると、ビット線を短くすることができる。これにより、ビット線容量が小さくなり、メモリセルの保持容量を低減することができる。
[NOSRAM]
図23(D)乃至(H)に、2トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの回路構成例を示す。図23(D)に示す、メモリセル1474は、トランジスタM2と、トランジスタM3と、容量素子CBと、を有する。なお、トランジスタM2は、フロントゲート(単にゲートと呼ぶ場合がある。)、及びバックゲートを有する。本明細書等において、トランジスタM2にOSトランジスタを用いたゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置を、NOSRAM(Nonvolatile Oxide Semiconductor RAM)と呼ぶ場合がある。
トランジスタM2の第1端子は、容量素子CBの第1端子と接続され、トランジスタM2の第2端子は、配線WBLと接続され、トランジスタM2のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM2のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CBの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM3の第1端子は、配線RBLと接続され、トランジスタM3の第2端子は、配線SLと接続され、トランジスタM3のゲートは、容量素子CBの第1端子と接続されている。
配線WBLは、書き込みビット線として機能し、配線RBLは、読み出しビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CBの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、データ保持の最中、データの読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM2のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM2のしきい値電圧を増減することができる。
また、メモリセルMCは、メモリセル1474に限定されず、回路の構成を適宜変更することができる。例えば、メモリセルMCは、図23(E)に示すメモリセル1475のように、トランジスタM2のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図23(F)に示すメモリセル1476のように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM2で構成されたメモリセルとしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図23(G)に示すメモリセル1477のように、配線WBLと配線RBLを一本の配線BILとしてまとめた構成であってもよい。
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1474等に用いる場合、トランジスタM2としてトランジスタ200を用い、トランジスタM3としてトランジスタ300を用い、容量素子CBとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM2としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM2のリーク電流を非常に低くすることができる。これにより、書き込んだデータをトランジスタM2によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル1474に多値データ、又はアナログデータを保持することができる。メモリセル1475乃至1477も同様である。
なお、トランジスタM3は、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(以下、Siトランジスタと呼ぶ場合がある)であってもよい。Siトランジスタの導電型は、nチャネル型としてもよいし、pチャネル型としてもよい。Siトランジスタは、OSトランジスタよりも電界効果移動度が高くなる場合がある。よって、読み出しトランジスタとして機能するトランジスタM3として、Siトランジスタを用いてもよい。また、トランジスタM3にSiトランジスタを用いることで、トランジスタM3の上に積層してトランジスタM2を設けることができるので、メモリセルの占有面積を低減し、記憶装置の高集積化を図ることができる。
また、トランジスタM3はOSトランジスタであってもよい。トランジスタM2、M3にOSトランジスタを用いた場合、メモリセルアレイ1470をn型トランジスタのみを用いて回路を構成することができる。
また、図23(H)に3トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの一例を示す。図23(H)に示すメモリセル1478は、トランジスタM4乃至M6、および容量素子CCを有する。容量素子CCは適宜設けられる。メモリセル1478は、配線BIL、RWL、WWL、BGL、およびGNDLに電気的に接続されている。配線GNDLは低レベル電位を与える配線である。なお、メモリセル1478を、配線BILに代えて、配線RBL、WBLに電気的に接続してもよい。
トランジスタM4は、バックゲートを有するOSトランジスタであり、バックゲートは配線BGLに電気的に接続されている。なお、トランジスタM4のバックゲートとゲートとを互いに電気的に接続してもよい。あるいは、トランジスタM4はバックゲートを有さなくてもよい。
なお、トランジスタM5、M6はそれぞれ、nチャネル型Siトランジスタまたはpチャネル型Siトランジスタでもよい。或いは、トランジスタM4乃至M6がOSトランジスタでもよい、この場合、メモリセルアレイ1470をn型トランジスタのみを用いて回路を構成することができる。
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1478に用いる場合、トランジスタM4としてトランジスタ200を用い、トランジスタM5、M6としてトランジスタ300を用い、容量素子CCとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM4としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM4のリーク電流を非常に低くすることができる。
なお、本実施の形態に示す、周辺回路1411、およびメモリセルアレイ1470等の構成は、上記に限定されるものではない。これらの回路、および当該回路に接続される配線、回路素子等の、配置または機能は、必要に応じて、変更、削除、または追加してもよい。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態などに示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、図24を用いて、本発明の半導体装置が実装されたチップ1200の一例を示す。チップ1200には、複数の回路(システム)が実装されている。このように、複数の回路(システム)を一つのチップに集積する技術を、システムオンチップ(System on Chip:SoC)と呼ぶ場合がある。
図24(A)に示すように、チップ1200は、CPU(Central Processing Unit)1211、GPU(Graphics Processing Unit)1212、一または複数のアナログ演算部1213、一または複数のメモリコントローラ1214、一または複数のインターフェース1215、一または複数のネットワーク回路1216等を有する。
チップ1200には、バンプ(図示しない)が設けられ、図24(B)に示すように、プリント基板(Printed Circuit Board:PCB)1201の第1の面と接続する。また、PCB1201の第1の面の裏面には、複数のバンプ1202が設けられており、マザーボード1203と接続する。
マザーボード1203には、DRAM1221、フラッシュメモリ1222等の記憶装置が設けられていてもよい。例えば、DRAM1221に先の実施の形態に示すDOSRAMを用いることができる。また、例えば、フラッシュメモリ1222に先の実施の形態に示すNOSRAMを用いることができる。
CPU1211は、複数のCPUコアを有することが好ましい。また、GPU1212は、複数のGPUコアを有することが好ましい。また、CPU1211、およびGPU1212は、それぞれ一時的にデータを格納するメモリを有していてもよい。または、CPU1211、およびGPU1212に共通のメモリが、チップ1200に設けられていてもよい。該メモリには、前述したNOSRAMや、DOSRAMを用いることができる。また、GPU1212は、多数のデータの並列計算に適しており、画像処理や積和演算に用いることができる。GPU1212に、本発明の酸化物半導体を用いた画像処理回路や、積和演算回路を設けることで、画像処理、および積和演算を低消費電力で実行することが可能になる。
また、CPU1211、およびGPU1212が同一チップに設けられていることで、CPU1211およびGPU1212間の配線を短くすることができ、CPU1211からGPU1212へのデータ転送、CPU1211、およびGPU1212が有するメモリ間のデータ転送、およびGPU1212での演算後に、GPU1212からCPU1211への演算結果の転送を高速に行うことができる。
アナログ演算部1213はA/D(アナログ/デジタル)変換回路、およびD/A(デジタル/アナログ)変換回路の一、または両方を有する。また、アナログ演算部1213に上記積和演算回路を設けてもよい。
メモリコントローラ1214は、DRAM1221のコントローラとして機能する回路、およびフラッシュメモリ1222のインターフェースとして機能する回路を有する。
インターフェース1215は、表示装置、スピーカー、マイクロフォン、カメラ、コントローラなどの外部接続機器とのインターフェース回路を有する。コントローラとは、マウス、キーボード、ゲーム用コントローラなどを含む。このようなインターフェースとして、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)などを用いることができる。
ネットワーク回路1216は、LAN(Local Area Network)などのネットワーク回路を有する。また、ネットワークセキュリティー用の回路を有してもよい。
チップ1200には、上記回路(システム)を同一の製造プロセスで形成することが可能である。そのため、チップ1200に必要な回路の数が増えても、製造プロセスを増やす必要が無く、チップ1200を低コストで作製することができる。
GPU1212を有するチップ1200が設けられたPCB1201、DRAM1221、およびフラッシュメモリ1222が設けられたマザーボード1203は、GPUモジュール1204と呼ぶことができる。
GPUモジュール1204は、SoC技術を用いたチップ1200を有しているため、そのサイズを小さくすることができる。また、画像処理に優れていることから、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップPC、携帯型(持ち出し可能な)ゲーム機などの携帯型電子機器に用いることが好適である。また、GPU1212を用いた積和演算回路により、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、自己符号化器、深層ボルツマンマシン(DBM)、深層信念ネットワーク(DBN)などの演算を実行することができるため、チップ1200をAIチップ、またはGPUモジュール1204をAIシステムモジュールとして用いることができる。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態に示す半導体装置を用いた記憶装置の応用例について説明する。先の実施の形態に示す半導体装置は、例えば、各種電子機器(例えば、情報端末、コンピュータ、スマートフォン、電子書籍端末、デジタルカメラ(ビデオカメラも含む)、録画再生装置、ナビゲーションシステムなど)の記憶装置に適用できる。なお、ここで、コンピュータとは、タブレット型のコンピュータや、ノート型のコンピュータや、デスクトップ型のコンピュータの他、サーバシステムのような大型のコンピュータを含むものである。または、先の実施の形態に示す半導体装置は、メモリカード(例えば、SDカード)、USBメモリ、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)等の各種のリムーバブル記憶装置に適用される。図25にリムーバブル記憶装置の幾つかの構成例を模式的に示す。例えば、先の実施の形態に示す半導体装置は、パッケージングされたメモリチップに加工され、様々なストレージ装置、リムーバブルメモリに用いられる。
図25(A)はUSBメモリの模式図である。USBメモリ1100は、筐体1101、キャップ1102、USBコネクタ1103および基板1104を有する。基板1104は、筐体1101に収納されている。例えば、基板1104には、メモリチップ1105、コントローラチップ1106が取り付けられている。基板1104のメモリチップ1105などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
図25(B)はSDカードの外観の模式図であり、図25(C)は、SDカードの内部構造の模式図である。SDカード1110は、筐体1111、コネクタ1112および基板1113を有する。基板1113は筐体1111に収納されている。例えば、基板1113には、メモリチップ1114、コントローラチップ1115が取り付けられている。基板1113の裏面側にもメモリチップ1114を設けることで、SDカード1110の容量を増やすことができる。また、無線通信機能を備えた無線チップを基板1113に設けてもよい。これによって、ホスト装置とSDカード1110間の無線通信によって、メモリチップ1114のデータの読み出し、書き込みが可能となる。基板1113のメモリチップ1114などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
図25(D)はSSDの外観の模式図であり、図25(E)は、SSDの内部構造の模式図である。SSD1150は、筐体1151、コネクタ1152および基板1153を有する。基板1153は筐体1151に収納されている。例えば、基板1153には、メモリチップ1154、メモリチップ1155、コントローラチップ1156が取り付けられている。メモリチップ1155はコントローラチップ1156のワークメモリであり、例えばDOSRAMチップを用いればよい。基板1153の裏面側にもメモリチップ1154を設けることで、SSD1150の容量を増やすことができる。基板1153のメモリチップ1154などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
本発明の一態様に係る半導体装置は、CPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップに用いることができる。図26に、本発明の一態様に係るCPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップを備えた電子機器の具体例を示す。
<電子機器・システム>
本発明の一態様に係るGPU又はチップは、様々な電子機器に搭載することができる。電子機器の例としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルチップ、チップ用などのモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。また、本発明の一態様に係る集積回路又はチップを電子機器に設けることにより、電子機器に人工知能を搭載することができる。
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
本発明の一態様の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
本発明の一態様の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。図26に、電子機器の例を示す。
[携帯電話]
図26(A)には、情報端末の一種である携帯電話(スマートフォン)が図示されている。情報端末5500は、筐体5510と、表示部5511と、を有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5511に備えられ、ボタンが筐体5510に備えられている。
情報端末5500は、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、会話を認識してその会話内容を表示部5511に表示するアプリケーション、表示部5511に備えるタッチパネルに対してユーザが入力した文字、図形などを認識して、表示部5511に表示するアプリケーション、指紋や声紋などの生体認証を行うアプリケーションなどが挙げられる。
[情報端末1]
図26(B)には、デスクトップ型情報端末5300が図示されている。デスクトップ型情報端末5300は、情報端末の本体5301と、ディスプレイ5302と、キーボード5303と、を有する。
デスクトップ型情報端末5300は、先述した情報端末5500と同様に、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、設計支援ソフトウェア、文章添削ソフトウェア、献立自動生成ソフトウェアなどが挙げられる。また、デスクトップ型情報端末5300を用いることで、新規の人工知能の開発を行うことができる。
なお、上述では、電子機器としてスマートフォン、及びデスクトップ用情報端末を例として、それぞれ図26(A)、(B)に図示したが、スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末を適用することができる。スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末としては、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型情報端末、ワークステーションなどが挙げられる。
[電化製品]
図26(C)は、電化製品の一例である電気冷凍冷蔵庫5800を示している。電気冷凍冷蔵庫5800は、筐体5801、冷蔵室用扉5802、冷凍室用扉5803等を有する。
電気冷凍冷蔵庫5800に本発明の一態様のチップを適用することによって、人工知能を有する電気冷凍冷蔵庫5800を実現することができる。人工知能を利用することによって電気冷凍冷蔵庫5800は、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材、その食材の消費期限などを基に献立を自動生成する機能や、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材に合わせた温度に自動的に調節する機能などを有することができる。
本一例では、電化製品として電気冷凍冷蔵庫について説明したが、その他の電化製品としては、例えば、掃除機、電子レンジ、電子オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器などが挙げられる。
[ゲーム機]
図26(D)は、ゲーム機の一例である携帯ゲーム機5200を示している。携帯ゲーム機は、筐体5201、表示部5202、ボタン5203等を有する。
携帯ゲーム機5200に本発明の一態様のGPU又はチップを適用することによって、低消費電力の携帯ゲーム機5200を実現することができる。また、低消費電力により、回路からの発熱を低減することができるため、発熱によるその回路自体、周辺回路、及びモジュールへの影響を少なくすることができる。
更に、携帯ゲーム機5200に本発明の一態様のGPU又はチップを適用することによって、人工知能を有する携帯ゲーム機5200を実現することができる。
本来、ゲームの進行、ゲーム上に登場する生物の言動、ゲーム上で発生する現象などの表現は、そのゲームが有するプログラムによって定められているが、携帯ゲーム機5200に人工知能を適用することにより、ゲームのプログラムに限定されない表現が可能になる。例えば、プレイヤーが問いかける内容、ゲームの進行状況、時刻、ゲーム上に登場する人物の言動が変化するといった表現が可能となる。
また、携帯ゲーム機5200で複数のプレイヤーが必要なゲームを行う場合、人工知能によって擬人的にゲームプレイヤーを構成することができるため、対戦相手を人工知能によるゲームプレイヤーとすることによって、1人でもゲームを行うことができる。
図26(D)では、ゲーム機の一例として携帯ゲーム機を図示しているが、本発明の一態様のGPU又はチップを適用するゲーム機はこれに限定されない。本発明の一態様のGPU又はチップを適用するゲーム機としては、例えば、家庭用の据え置き型ゲーム機、娯楽施設(ゲームセンター、遊園地など)に設置されるアーケードゲーム機、スポーツ施設に設置されるバッティング練習用の投球マシンなどが挙げられる。
[移動体]
本発明の一態様のGPU又はチップは、移動体である自動車、及び自動車の運転席周辺に適用することができる。
図26(E1)は移動体の一例である自動車5700を示し、図26(E2)は、自動車の室内におけるフロントガラス周辺を示す図である。図26(E1)では、ダッシュボードに取り付けられた表示パネル5701、表示パネル5702、表示パネル5703の他、ピラーに取り付けられた表示パネル5704を図示している。
表示パネル5701乃至表示パネル5703は、スピードメーターやタコメーター、走行距離、給油量、ギア状態、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供することができる。また、表示パネルに表示される表示項目やレイアウトなどは、ユーザの好みに合わせて適宜変更することができ、デザイン性を高めることが可能である。表示パネル5701乃至表示パネル5703は、照明装置として用いることも可能である。
表示パネル5704には、自動車5700に設けられた撮像装置(図示しない。)からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界(死角)を補完することができる。すなわち、自動車5700の外側に設けられた撮像装置からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。表示パネル5704は、照明装置として用いることもできる。
本発明の一態様のGPU又はチップは人工知能の構成要素として適用できるため、例えば、当該チップを自動車5700の自動運転システムに用いることができる。また、当該チップを道路案内、危険予測などを行うシステムに用いることができる。表示パネル5701乃至表示パネル5704には、道路案内、危険予測などの情報を表示する構成としてもよい。
なお、上述では、移動体の一例として自動車について説明しているが、移動体は自動車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)なども挙げることができ、これらの移動体に本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用したシステムを付与することができる。
[放送システム]
本発明の一態様のGPU又はチップは、放送システムに適用することができる。
図26(F)は、放送システムにおけるデータ伝送を模式的に示している。具体的には、図26(F)は、放送局5680から送信された電波(放送信号)が、各家庭のテレビジョン受信装置(TV)5600に届くまでの経路を示している。TV5600は、受信装置を備え(図示しない。)、アンテナ5650で受信された放送信号は、当該受信装置を介して、TV5600に送信される。
図26(F)では、アンテナ5650は、UHF(Ultra High Frequency)アンテナを図示しているが、アンテナ5650としては、BS・110°CSアンテナ、CSアンテナなども適用できる。
電波5675A、電波5675Bは地上波放送用の放送信号であり、電波塔5670は受信した電波5675Aを増幅して、電波5675Bの送信を行う。各家庭では、アンテナ5650で電波5675Bを受信することで、TV5600で地上波TV放送を視聴することができる。なお、放送システムは、図26(F)に示す地上波放送に限定せず、人工衛星を用いた衛星放送、光回線によるデータ放送などとしてもよい。
上述した放送システムは、本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用した放送システムとしてもよい。放送局5680から各家庭のTV5600に放送データを送信するとき、エンコーダによって放送データの圧縮が行われ、アンテナ5650が当該放送データを受信したとき、TV5600に含まれる受信装置のデコーダによって当該放送データの復元が行われる。人工知能を利用することによって、例えば、エンコーダの圧縮方法の一である動き補償予測において、表示画像に含まれる表示パターンの認識を行うことができる。また、人工知能を利用したフレーム内予測などを行うこともできる。また、例えば、解像度の低い放送データを受信して、解像度の高いTV5600で当該放送データの表示を行うとき、デコーダによる放送データの復元において、アップコンバートなどの画像の補間処理を行うことができる。
上述した人工知能を利用した放送システムは、放送データの量が増大する超高精細度テレビジョン(UHDTV:4K、8K)放送に対して好適である。
また、TV5600側における人工知能の応用として、例えば、TV5600に人工知能を有する録画装置を設けてもよい。このような構成にすることによって、当該録画装置にユーザの好みを人工知能に学習させることで、ユーザの好みにあった番組を自動的に録画することができる。
本実施の形態で説明した電子機器、その電子機器の機能、人工知能の応用例、その効果などは、他の電子機器の記載と適宜組み合わせることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。