JP7069823B2 - スカンジウム化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、スカンジウム化合物に関するものであり、より詳しくは、ジルコニア化合物に固溶し易いスカンジウム化合物に関する。
ジルコニアに希土類を固溶させた安定化ジルコニアは、高い材料強度と、高い酸素イオン導電性を有することから、酸素センサーや固体酸化物形燃料電池の電解質として使用されている。一般には、イットリウムで安定化されたイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)が使用されるが、近年、YSZよりも導電率の高いスカンジア(酸化スカンジウム)で安定化したスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)が注目されている。
固体酸化物形燃料電池は、一般に、空気極、固体電解質、及び燃料極からなる単セルが順次積層された、いわゆるセルスタック構造を有している。これらのうち、燃料極の材料には、例えば特許文献1に記載されているように、酸化ニッケル等のニッケル化合物と、安定化ジルコニア等の固体電解質との混合粉末が通常用いられている。燃料極は、発電時に燃料ガスとしての水素や炭化水素により還元されてニッケルメタルとなり、ニッケルと固体電解質と空隙からなる三相界面が燃料ガスと酸素との反応場となる。
このような燃料極において、その材料として導電率の高いScSZを使うことで、燃料電池の発電温度を、従来の900℃程度から600℃程度まで低温化することができる。そして、これにより、ステンレス等の汎用部材を使用することができ、装置の低コスト化が可能となる。また、安定化ジルコニアにScSZを使用した場合、発電時には、燃料により還元されて生成したニッケルメタルと、ScSZと、空孔とからなる燃料極において、負荷変動や燃料供給異常によるニッケルの酸化や炭素析出による被毒を抑制する効果も確認されている。
ここで、安定化ジルコニアの製造方法としては、例えば特許文献2に開示されているように、所定量のジルコニウムとスカンジウムとの混合水溶液から、共沈法により、ジルコニウム化合物とスカンジウム化合物の混合物を得て、仮焼により安定化ジルコニアとする方法や、ジルコニア粉末とスカンジア粉末とをボールミル等で混合粉砕した後に仮焼する方法が用いられている。しかしながら、前者の方法では、ジルコニウムとスカンジウムとの溶解度差の違いから偏析が生じてしまい、また後者の方法では、結晶成長した粉末同士の反応となるため、これらの方法では安定化ジルコニアとするには高温での処理が必要であった。
特開2004-327278号公報 特開平07-6622号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、安定化ジルコニアを製造するにあたり高温での処理を要しないスカンジウム化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、シュウ酸化処理により得られたシュウ酸スカンジウムの結晶に対して、従来の酸化スカンジウムへの焙焼の温度に比べて、低温の温度領域で焼成処理を施すことで、ジルコニウム化合物への固溶温度が600℃未満となるスカンジウム化合物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、X線回折法を用いてCuのKα線により測定した、回折角2θが12.3°におけるピークの半価幅が0.2°以上又は検出されない、及び回折角2θが31.4°におけるピークの半価幅が0.2°以上又は検出されないものであり、ジルコニウム化合物への固溶温度が600℃未満である、スカンジウム化合物である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、BET比表面積が70m/g以上である、スカンジウム化合物である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、安定化ジルコニアの製造原料として用いられる、スカンジウム化合物である。
(4)本発明の第4の発明は、第1又は第2の発明に係るスカンジウム化合物と酸化ニッケル粉末とが混合されてなる、固体酸化物形燃料電池の燃料極用材料である。
本発明によれば、600℃未満の低温でジルコニアに固溶することができ、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)を製造するにあたって、高温での処理を必要としない。
焼成温度に対する、その焼成により得られるスカンジウム化合物の減量率の関係を示すグラフ図である。 焼成時間(保持時間)を1時間とし、焼成温度を350℃、400℃、600℃、700℃としたときのそれぞれで得られたスカンジウム化合物のX線回折(XRD)測定の結果を示す図である。 焼成温度に対する、その焼成により得られたスカンジウム化合物の半価幅の関係を示すグラフ図である。 焼成温度に対する、その焼成により得られたスカンジウム化合物の結晶子径の関係を示すグラフ図である。 焼成温度に対する、その焼成により得られたスカンジウム化合物のBET比表面積の測定結果を示すグラフ図である。 試験例2におけるX線回折測定の結果を示す図である。 試験例1におけるX線回折測定の結果を示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.スカンジウム化合物≫
本実施の形態に係るスカンジウム化合物は、スカンジア(酸化スカンジウム)で安定化したスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)の製造原料として好適なスカンジウム化合物である。具体的に、本実施の形態に係るスカンジウム化合物は、X線回折法を用いてCuのKα線により測定した、回折角2θが12.3°におけるピークの半価幅が0.2°以上又は検出されない、及び回折角2θが31.4°におけるピークの半価幅が0.2°以上又は検出されない、という性質を有するものである。また、他のピーク強度も低く、特定の化合物による結晶化度が低い状態である。
このようなスカンジウム化合物においては、ジルコニウム化合物への固溶温度が600℃未満であることを特徴としている。なお、「ジルコニウム化合物への固溶温度」とは、熱処理を施して固相反応を生じさせることによってジルコニウム化合物に固溶させたときにそのジルコニウム化合物に固溶する温度をいう。
また、このスカンジウム化合物は、BET比表面積についても70m/g以上と極めて大きい。
ここで、スカンジア安定化ジルコニウム(ScSZ)は、スカンジア粉末とジルコニア粉末とを混合して熱処理することで生じる固相反応により、スカンジアがジルコニアに固溶することによって形成される。このとき、本実施の形態に係るスカンジウム化合物を用いることにより、600℃未満の温度で熱処理によってもジルコニアに対して容易に固溶するため、従来よりも低い熱処理温度でScSZを得ることができる。このことは、スカンジウム化合物の結晶化度が低いことにより、反応性が高いためであると考えられる。
また、例えば固体酸化物形燃料電池の燃料極は、酸化ニッケル等のニッケル化合物と、YSZやScSZ等の安定化ジルコニアとを混合して構成されるが、その安定化ジルコニアの原料として、本実施の形態に係るスカンジウム化合物を有効に用いることができる。すなわち、本実施の形態に係るスカンジウム化合物を、酸化ニッケル粉末との混合物を形成するための燃料極用材料として有効に用いることができる。上述したように、本実施の形態に係るスカンジウム化合物を用いることにより、従来に比べて低い熱処理温度でジルコニアを添加して固溶させることできる。したがって、そのような高温での熱処理を要することなく得られるScSZと酸化ニッケルとの焼成粉を、固体酸化物形燃料電池の燃料極に用いることで、燃料極用材料の製造プロセスを簡略化することができ、製造コストを効果的に低減することができる。
なお、固体酸化物形燃料電池の燃料極用材料としてスカンジウム化合物を用いる場合、当該スカンジウム化合物と酸化ニッケル粉末との混合粉として用いることができる。燃料極を構成する際には、当該スカンジウム化合物と酸化ニッケル粉末との混合粉に、ジルコニウム化合物や安定化ジルコニアを混合し熱処理を施すことによって得ることができる。
スカンジウム化合物に混合される酸化ニッケル粉末としては、レーザー散乱法で測定したD50(粒度分布上における粒子量の体積積算50%での粒径)が0.5μm以下であり、BET比表面積が2m/g以上であるものが好ましい。また、酸化ニッケル粉末は、硫黄含有量が100質量ppm以下であることが好ましい。これらを満たす酸化ニッケル粉末であることにより、スカンジウム化合物との混合粉の形態として、固体酸化物形燃料電池の燃料極用材料により好適に用いることができる。
≪2.スカンジウム化合物の製造方法≫
次に、上述したスカンジウム化合物の製造方法について説明する。本実施の形態に係るスカンジウム化合物は、スカンジウムを含有する溶液にシュウ酸を用いてシュウ酸化処理を施し、得られたシュウ酸スカンジウムの結晶を焼成することで製造することができる。
(シュウ酸化処理)
シュウ酸化処理は、スカンジウム含有溶液に対してシュウ酸を用いてスカンジウムをシュウ酸塩(シュウ酸スカンジウム)とする反応を生じさせるものである。このようにスカンジウムをシュウ酸塩とすることによって、濾過性等のハンドリング性を向上させることができ、スカンジウムを効率的に回収することができる。
シュウ酸化処理の方法としては、スカンジウム含有溶液に対してシュウ酸を添加して、スカンジウム含有溶液中のスカンジウムに基づいてシュウ酸スカンジウムの固体結晶を析出生成させる方法を用いることができる。このとき、使用するシュウ酸としては、固体であっても溶液であってもよい。なお、このシュウ酸化処理の方法において、スカンジウム含有溶液中に不純物成分として2価鉄イオンが含まれる場合には、シュウ酸鉄(II)の沈殿生成を防止するために、シュウ酸化処理に先立ち、酸化剤を添加して酸化還元電位(ORP,参照電極:銀/塩化銀)を500mV~600mV程度の範囲に制御して酸化処理を施すことが好ましい。
あるいは、シュウ酸化処理の方法として、スカンジウム含有溶液を、反応容器に満たしたシュウ酸溶液の中に徐々に添加して、シュウ酸スカンジウムの固体結晶を析出生成させる方法を用いることができる。このとき、シュウ酸化処理に先立ち、スカンジウム含有溶液のpHを-0.5以上1以下の範囲に調整することが好ましい。このようなシュウ酸化処理方法によれば、シュウ酸鉄(II)等の沈澱生成を防止することができ、また高価な酸化剤等を用いることなく、より高純度のスカンジウムを回収することができる。
シュウ酸化処理に際しては、処理対象であるスカンジウム含有溶液の温度を、50℃以上80℃以下の範囲に調整することが好ましく、55℃以上70℃以下の範囲に調整することがより好ましい。
また、処理に用いるシュウ酸としては、スカンジウム含有溶液中のスカンジウムをシュウ酸塩として析出させるのに必要な当量の1.05倍~1.2倍の範囲の量を使用することが好ましい。使用量が必要な当量の1.05倍未満であると、スカンジウムを有効に全量回収できなくなる可能性がある。一方で、使用量が必要な当量の1.2倍を超えると、シュウ酸スカンジウムの溶解度が増加することでスカンジウムが再溶解して回収率が低下し、また過剰なシュウ酸を分解するために次亜塩素ソーダのような酸化剤の使用量が増加するため好ましくない。
このようなシュウ酸化処理により得られたシュウ酸スカンジウムの結晶は、濾過・洗浄処理を行うことによって回収することができる。
(焼成処理)
次に、焼成処理は、得られたシュウ酸スカンジウムの結晶に対して所定の温度で焼成するものである。詳しくは後述するが、本実施の形態では、この焼成処理において、焼成温度を400℃以上800℃以下の範囲として焼成を行うことを特徴としている。また、より好ましくは、焼成温度を400℃以上600以下の範囲として焼成を行う。これにより、ジルコニウム化合物に対して優れた固溶性を示すスカンジウム化合物を焼成物として得ることができる。また、このスカンジウム化合物は、酸等の水溶液に対して易溶性を示すという性質も有する。
具体的に、焼成処理では、シュウ酸化処理により得られたシュウ酸スカンジウムの結晶を水で洗浄し、乾燥させた後に、所定の炉を用いて焼成する。炉としては、特に限定されないが、管状炉等が挙げられ、また工業的には、ロータリーキルン等の連続炉を用いることで乾燥と焼成とを同じ装置で連続して行うことができるため好ましい。
また、400℃以上800℃以下の焼成温度で焼成するときの保持時間としては、特に限定されないが、0.5時間以上12時間以下であることが好ましく、1時間以上12時間以下であることがより好ましく、1時間以上6時間以下であることが特に好ましい。保持時間が0.5時間未満であると、十分に焼成が進行せず、シュウ酸スカンジウムの多くが残存してしまう可能性がある。一方で、保持時間が12時間を超えると、得られるスカンジウム化合物の固溶性の性質が、ほとんど変わらないか、むしろ徐々に低下することがあり、また熱エネルギーが増大するため処理コストが高くなる。
≪3.スカンジウム化合物の製造における焼成処理条件と化合物の特性について≫
従来、スカンジウムは、酸化スカンジウム(Sc)の形態で取り扱われることが多く、その酸化スカンジウムはスカンジウムを含有する固体を900℃以上、好ましくは1100℃程度の高温で焙焼することによって得られる。ところが、このように高温で焙焼して得られる酸化スカンジウムは、スカンジア安定化ジルコニウムを製造する製造原料として用いたとき、ジルコニウム化合物に固溶させる際には高温処理を要する。また、そのような酸化スカンジウムは、酸等の水溶液にも難溶性を示す。
本発明者の研究により、シュウ酸スカンジウムの結晶に対して、従来よりも低温領域である400℃以上800℃以下の範囲、より好ましくは400℃以上600℃以下の範囲の条件で焼成処理を施すことによって、ジルコニウム化合物に対して優れた固溶性を示すスカンジウム化合物が得られることが見出された。なお、「優れた固溶性」とは、高温処理を要することなく、比較的低い温度での熱処理により固溶することをいう。
しかも、このようにして得られる易溶性のスカンジウム化合物は、焼成処理前のシュウ酸スカンジウムの結晶の重量に対する減量率が、55%以上65%以下の範囲となる。なお、減量率とは、焼成による重量の減少割合をいい、焼成前後の重量際に基づいて下記式[1]で表すことができる。
減量率(%)=(1-焼成後物量/焼成前物量)×100 ・・・[1]
ここで、シュウ酸スカンジウム(Sc12;分子量353.92)を焼成することで酸化スカンジウム(Sc;分子量137.92)を得る場合、焼成前後の減量率としては、理論的には(1-137.92/353.92)×100=61%になる。しかしながら、本発明者は、400℃以上800℃以下の範囲の条件で焼成処理を施すことで得られるスカンジウム化合物においては、減量率が55%以上65%以下の範囲で幅があるものとなることから、シュウ酸スカンジウムを加熱して酸化スカンジウムに分解する際に、ジルコニウム化合物に対する固溶性の形態を呈する領域があることを見出した。
つまり、このような性質を示すスカンジウム化合物は、原料であるシュウ酸スカンジウムの結晶が、焼成により完全に分解してその全量が酸化スカンジウムになったものではなく、部分的にシュウ酸スカンジウムが残留したり、あるいは分解で生成したCOやCO等が残留した状態にある化合物であると考えられる。
このようなジルコニウム化合物に対する固溶性を示す領域にあるスカンジウム化合物は、後述するようにX線回折分析を行っても、とりわけこれらの特性をより発現させる下限の温度側では、特有の回折ピークを示さず、その化合物の形態を特定することが困難である。そのため、このような性質を示す領域にある化合物を、単に『スカンジウム化合物』と総称する。
そして、このように性質を示すスカンジウム化合物を生じさせるための条件が、400℃以上800℃以下の範囲の温度条件で焼成することであり、好ましくは400℃以上600℃以下の範囲、より好ましくは400℃以上500℃以下の範囲の温度条件で焼成することである。また、換言すると、このスカンジウム化合物は、焼成による減量率が55%以上65%以下の範囲、より好ましくは60%程度となるような条件で焼成することによって得られる。
なお、スカンジウム化合物において、その減量率は55%以上65%以下の範囲であり、シュウ酸スカンジウムから酸化スカンジウムへ焼成による理論減量率である61%より大きな減量率となる場合がある。このことは、原料のシュウ酸スカンジウムの結晶に含まれる不純物成分の影響である考えられる。
図1は、焼成温度に対する、その焼成により得られるスカンジウム化合物の減量率の関係を示すグラフ図である。この図1のグラフからもわかるように、焼成温度を400℃以上800℃以下の範囲とすることで、減量率が55%以上65%以下の範囲のスカンジウム化合物が生成する。
また、図2は、焼成時間(保持時間)を1時間とし、焼成温度を350℃、400℃、600℃、700℃としたときのそれぞれで得られたスカンジウム化合物のX線回折(XRD)測定の結果を示す図である。図3は、焼成なし(0℃)、焼成温度350℃、400℃、600℃、800℃、1100℃に対する、その焼成により得られたスカンジウム化合物の半価幅の関係を示す図である。図4は、焼成なし(0℃)、焼成温度350℃、400℃、600℃、800℃、1100℃に対する、その焼成により得られたスカンジウム化合物の結晶子径の関係を示す図である。なお、X線回折測定は、PANalytical製のX線回折装置(XPert PRO,出力:45kV 40mA,スリット:DS=1/2° SS=0.04rad)を用い、CuのKα線により行った。
図2に示すように、焼成温度400℃、600℃、700℃で焼成して得られたスカンジウム化合物の場合には、X線回折法を用いて測定した場合、純粋なシュウ酸スカンジウムのピークに相当するピーク強度が検出されなくなり、純粋な酸化スカンジウムのピークに相当するピーク強度が次第に大きくなっている。
具体的には、ジルコニウム化合物に対する固溶性を示すスカンジウム化合物は、純粋なシュウ酸スカンジウムで出現する回折角2θ=12.3°におけるピークの半価幅が0.2°以上又は検出されない、及び純粋な酸化スカンジウムで出現する回折角2θ=31.4°におけるピークの半価幅が0.2°以上又は検出されないという性質を有する。図2及び図3のグラフからわかるように、例えば、400℃で焼成して得られたスカンジウム化合物では、回折角2θが12.3°におけるピークの半価幅は0.2°以上であり、回折角2θが31.4°におけるピークは検出されない。また、600℃で焼成して得られたスカンジウム化合物では、回折角2θが12.3°におけるピークは検出されず、回折角2θが31.4°におけるピークは0.2°以上となる。このように、400℃~800℃で焼成して得られたスカンジウム化合物は、シュウ酸スカンジウムや酸化スカンジウムの結晶化度が低いことが分かり、これにより、ジルコニウム化合物に対する優れた固溶性を有するものとなる。
特に、400℃以上600℃以下の温度で焼成して得られるスカンジウム化合物では、結晶化度がより低くなり、より優れた性質を有するものとなる。図2に示すように、400℃以上600℃以下の温度で焼成して得られるスカンジウム化合物では、酸化スカンジウムのピーク強度が11000カウント以下であり、より好ましくは2000カウント以下である。
また、このような性質を示すスカンジウム化合物は、回折角2θ=12.3°、31.4°におけるピークの半価幅からシェラーの式に基づき算出される結晶子径が350Å以下という性質を有する。図4のグラフからわかるように、400℃以上800℃以下の温度条件で焼成して得られたスカンジウム化合物では、結晶子径が350Å以下である。このように、400℃~800℃で焼成して得られたスカンジウム化合物は、結晶子径が350Å以下となり、その結果として、ジルコニウム化合物に対して固溶させる際の接触面積が多くなり、優れた反応性を示すようになると考えられる。
これに対し、従来同様に高温(例えば1100℃)で焼成して得られたスカンジウム化合物では、図4にも示すように、結晶子径が極めて大きい。このような高温焼成により得られるスカンジウム化合物では、酸化物への形態に進行して結晶子径が大きくなり、ジルコニウム化合物との接触面積が少なくなるため、反応が有効に進行しないと推測される。
なお、ここでの結晶子径とは、X線回折測定装置での測定により得られる回折パターンに現れる回折ピークの半価幅から、一般に知られている下記のシェラー(Scherrer)の式に基づいて算出したものである。
D=K・λ/(βcosθ)
(但し、D:結晶子径、λ:測定X線波長(Cu=1.54056Å)、β:半価幅(rad)、θ:回折角(°)、K:シェラー定数(0.9)である。)
また、このような性質を示すスカンジウム化合物においては、上述したように、BET比表面積が70m/g以上であることが好ましい。図5は、焼成温度に対する、その焼成により得られたスカンジウム化合物のBET比表面積の測定結果を示すグラフである。図5のグラフからわかるように、400℃以上600℃以下の温度条件で焼成して得られたスカンジウム化合物では、BET比表面積が70m/g以上であり、焼成温度を400℃として得られたスカンジウム化合物では、BET比表面積が250m/g以上となった。
このように、400℃以上600℃以下の温度条件で焼成して得られたスカンジウム化合物では、比表面積が大きくなり、その結果として、上述したようにジルコニウム化合物に対して固溶させる際の接触面積が多くなり、優れた固溶性を示すようになると考えられる。スカンジウム化合物の比表面積としては、100m/g以上であることがより好ましく、200m/g以上であることがさらに好ましく、250m/g以上であることが特に好ましい。
なお、以上のようにしてシュウ酸スカンジウムの結晶を400℃以上800℃以下の温度で焼成して得られるスカンジウム化合物において、そのスカンジウム化合物に水を添加して60℃に昇温し、塩酸や硫酸等の酸を添加してpHを0から1の範囲に調整することによって、ジルコニウム化合物に対する固溶性の性質をより向上させることができる。
以下、本発明の実施例を示して、本発明についてより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
<スカンジウム化合物の製造方法及び評価>
(シュウ酸化処理)
硫酸スカンジウム溶液とシュウ酸溶液とを用いてシュウ酸化処理を施した。具体的には、反応容器に収容されたシュウ酸溶液を撹拌しながら、そのシュウ酸溶液の中に約0.5リットル/minの流量でシュウ酸化始液である硫酸スカンジウム溶液を添加して、シュウ酸スカンジウムの結晶を生成させた。なお、シュウ酸化始液を全量添加した後、10分間撹拌状態を継続し、その後、全量を濾過してシュウ酸スカンジウムの結晶を分離した。なお、得られたシュウ酸スカンジウム結晶のスカンジウム品位は23質量%であった。
(焼成処理)
次に、得られたシュウ酸スカンジウムの結晶を15gずつ分取してルツボに入れ、炉内にセットした。雰囲気の調整なしで、炉内温度を400℃に設定し、2時間程度をかけて昇温して、昇温後1時間~5時間保持した。
反応後、得られた焼成物(スカンジウム化合物)を取り出して、CuのKα線を用いてX線回折測定を行い、回折角2θ=12.3°、31.4°のそれぞれにおける半価幅を求めた。下記表1に測定結果を示す。また、スカンジウム化合物のBET比表面積を比表面積・細孔分布測定装置(カンタクローム社製,QUADRASORB SI)により測定したところ、260m/gであることを確認した。
Figure 0007069823000001
<ジルコニアに対する固溶性の評価>
次に、スカンジウム化合物についてのジルコニアに対する固溶性の評価を行った。
ここで、上述のX線回折測定からも分かるように、得られたスカンジウム化合物は結晶化度が低い。そのため、スカンジウムが熱処理によってジルコニアに固溶して消費されたことをX線回折法により直接確認するのは不可能であると推測される。そこで、得られたスカンジウム化合物を酸化ニッケル粉末と混合し、さらにジルコニア源としてYを8モル%含有するイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)粉末(東ソー株式会社製:TZ-8YS)を添加した場合(試験例1)と、添加しなかった場合(試験例2)とで、混合粉末の焼成後の試料についてX線回折測定を行うことで評価した。
[試験例1]
レーザー散乱法で測定したD50が0.48μmの酸化ニッケル粉末(住友金属鉱山株式会社製)と、YSZ粉末と、得られたスカンジウム化合物とを、質量比で65:31:4の割合で混合した。この混合粉末を、焼成温度として400℃~1500℃の100℃刻みの温度を設定し、保持時間を1時間とする条件で焼成した。各焼成温度で焼成した後の試料について、CuのKα線を用いたX線回折測定を行った。
[試験例2]
YSZ粉末を添加しない、つまり、酸化ニッケル粉末と、得られたスカンジウム化合物とを、質量比で65:4の割合で混合したこと以外は、試験例1と同じ条件で焼成し、評価を行った。
図6は、試験例2におけるX線回折測定の結果を示す図である。図6のグラフを見ると、600℃~1300℃の温度で焼成して得られた試料において10°から32°の間に不明ピークが確認された。これは、酸化ニッケルとスカンジウム化合物とが反応して生成した化合物によるピークであると考えられる。
一方で、図7は、試験例1のX線回折測定の結果を示す図である。図7のグラフを見ると、600℃~1300℃の温度で焼成して得られた試料において10°から32°の間にピークは確認されなかった。図6(試験例2)の結果との対比を踏まえると、図7の結果から、得られたスカンジウム化合物はYSZ中に固溶していると考えられる。

Claims (3)

  1. X線回折法を用いてCuのKα線により測定した場合以下の(A)~(C)のうちのいずれか1つの性質を有し、
    (A)回折角2θが12.3°におけるピークの半価幅が0.2°以上であって、回折角2θが31.4°におけるピークは検出されない
    (B)回折角2θが31.4°におけるピークは0.2°以上であって、回折角2θが12.3°におけるピークは検出されない
    (C)回折角2θが12.3°におけるピーク及び回折角2θが31.4°におけるピークのいずれも検出されない
    ジルコニウム化合物への固溶温度が600℃未満であり、
    BET比表面積が70m /g以上である
    スカンジウム化合物。
  2. 安定化ジルコニアの製造原料として用いられる
    請求項1に記載のスカンジウム化合物。
  3. 請求項1に記載のスカンジウム化合物と酸化ニッケル粉末とが混合されてなる
    固体酸化物形燃料電池の燃料極用材料。
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