以下、図面を参照して本発明の作業機の実施形態について説明する。但し、本発明の作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の記号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。例えば、本発明の作業機が中央作業体、左側作業体及び右側作業体の3つの作業体で構成される場合、それぞれの作業体が有する部分であることを示すために、数字の後に「C」、「L」及び「R」を付すことがある。
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「上」は圃場から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は圃場に向かって垂直に近づく方向を示す。また、「前」は作業機を基準として走行機体が位置する方向を示し、「後」は前とは180°反対の方向を示す。また、「左」は作業機を基準として走行機体が位置する方向に向かったときの左を示し、「右」は左とは180°反対の方向を示す。
〈第1実施形態〉
[作業機10の構成]
以下、第1実施形態による作業機10の構成について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態における作業機の構成を示す斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態における作業機が左側作業体を折り畳んだときの構成を示す斜視図である。なお、図2は、図1に対して左側作業体10Lの位置が変化しただけの図であるため、説明の便宜上、図1において既出の符号のいくつかは省略されている。
図1に示されるように、本実施形態による作業機10は、中央作業体10C、左側作業体10L及び右側作業体10Rを備え、3つに分割された構造となっている。中央作業体10Cは、作業機10の中央部に配置され、作業機本体として機能する。左側作業体10L及び右側作業体10Rは、中央作業体10Cの左右両端部に上下方向に回動可能に取り付けられている。作業機10は、これら左側作業体10L及び右側作業体10Rを斜め上方に回動させることにより中央作業体10Cに重ねて折り畳むことができ、斜め下方に回動させることにより図1に示すように展開することができる。
ここで、左側作業体10L及び右側作業体10Rを中央作業体10Cに重ねて折り畳んだ状態を収納状態と呼ぶ。収納状態とは、作業機10が走行機体の進行方向に対して直交する方向の幅を縮小された状態である。また、左側作業体10L、右側作業体10R及び中央作業体10Cが横に並んだ状態を展開状態と呼ぶ。展開状態とは、作業機10が走行機体の進行方向に対して直交する方向に延長された状態である。
次に、中央作業体10Cについて説明する。中央作業体10Cは、トラクタ等の走行機体との連結部として機能するトップマスト12及びロアーリンク連結部14、走行機体から動力が伝達される入力軸16、左右方向に延び中央作業体10Cを支持する支持フレーム18C、サイドプレート19C、中央チェーンケース20C、中央チェーンケース20Cに内蔵されたチェーンユニット(図示せず)、ギヤボックス22、中央シールドカバー24C、耕耘ロータ(図示せず)、第1中央整地体28C、第2中央整地体30C、エプロン制御機構31a及び31b、並びに中央レベラ制御機構32Cを備えている。
トップマスト12は、中央作業体10Cの前方中央部に設けられ、ロアーリンク連結部14は、中央作業体10Cの前方左右二箇所に設けられている。トップマスト12及び左右2箇所に設けられたロアーリンク連結部14は、図示しない走行機体のトップリンク及び左右二箇所に設けられたロアーリンク(3点リンクヒッチ機構)にそれぞれ連結され、作業機10は走行機体の後部に昇降可能に装着される。なお、作業機10と走行機体との連結は、走行機体の3点リンクヒッチ機構に装着されるオートヒッチフレームを介してもよい。
入力軸16は、中央作業体10Cの前方中央部に設けられたギヤボックス22に設けられ、走行機体から伝達された動力を作業機10に入力する。入力軸16は走行機体のPTO軸に連結され、PTO軸からユニバーサルジョイント等を介して動力が伝達される。
支持フレーム18Cは、中央作業体10Cの本体フレームを兼ねており、ギヤボックス22の左右両側に走行機体の進行方向に対して左右方向に延設されている。ここで、ギヤボックス22と中央チェーンケース20Cとの間に配置された支持フレーム18C内には、伝動シャフト(図示せず)が内装されている。この伝動シャフトにより、ギヤボックス22から中央チェーンケース20Cの内部のチェーンユニット(図示せず)に対して耕耘ロータを回転させるための動力が伝達される。
ここで、チェーンユニットとは、一対のスプロケットと、それらの間に架け渡されたローラーチェーンとで構成される機構であり、2つの軸間において動力を伝達する機能を有する。前述の耕耘ロータの回転軸と支持フレーム18Cの内部の伝動シャフトは、それぞれ支持フレーム18Cに接続されたサイドプレート19Cを用いて軸支されている。サイドプレート19Cは、チェーンケース20Cが取り付けられることから、チェーンケースプレートとも呼ばれる。
前述の伝動シャフト及び耕耘ロータの回転軸の2つの軸間における動力の伝達に、上記チェーンユニットが用いられる。なお、チェーンケース20Cは、チェーンユニットを保護するためのカバー部材である。
中央シールドカバー24Cは、支持フレーム18に沿って設けられ、耕耘ロータの上方を覆うように配置される。耕耘ロータで砕かれた土は、中央シールドカバー24Cの内壁に当たってさらに砕土されるとともに、落下して再び圃場に戻る。このように、中央シールドカバー24Cは、耕耘ロータによって巻き上げられた土の飛散防止機能と砕土機能とを兼ね備えている。
中央作業体10Cが有する耕耘ロータは、中央シールドカバー24Cの下方に回転自在に軸支された回転軸(図示せず)に対して、フランジ又はホルダを用いて複数の耕耘爪を取り付けた構成を有する。入力軸16から入力された動力は、ギヤボックス22内で変速され、支持フレーム18内の伝動シャフト、中央チェーンケース20C内のチェーンユニット等を経由して伝達され、耕耘ロータの回転運動へと変換される。
第1中央整地体28Cは、中央シールドカバー24Cに対し、回動可能に取り付けられており、通常、エプロンと呼ばれる。第2中央整地体30Cは、第1中央整地体28Cに対し、上下方向へ回動可能に取り付けられており、通常、レベラと呼ばれる。第1中央整地体28Cは、中央作業体10Cの耕耘ロータの回転によって飛散した泥や土を圃場に戻すカバーとしての役割と、第2中央整地体30Cを圃場に押し付けて整地作業を行う整地部材としての役割を担う。第2中央整地体30Cは、直接圃場に接することにより、圃場表面の整地を行う整地部材としての役割を担う。
エプロン制御機構31a及び31bは、中央シールドカバー24Cと第1中央整地体28Cとの間に架設され、第1中央整地体28Cの上下方向への回動を制御する手段として機能する。エプロン制御機構31a及び31bは、第1中央整地体28Cの上方向への回動を妨げる加圧モードと、第1中央整地体28Cの上方向への回動を妨げない非加圧モードとを切り替え可能であり、加圧モードでは、第1中央整地体28Cに対して上方向への回動を妨げる付勢力を働かせる。この付勢力は、エプロン制御機構31a及び31bを構成するリンクロッドに配置されたスプリングの反力によって実現される。エプロン制御機構31a及び31bを加圧モードとすることにより、第1中央整地体28Cによる砕土性能や整地性能を高めることができ、より効率良く圃場を仕上げることができる。
中央レベラ制御機構32Cは、中央シールドカバー24Cと第2中央整地体30Cとの間に架設され、第2中央整地体30Cの上下方向への回動を制御する手段として機能する。中央レベラ制御機構32Cは、第2中央整地体30Cを下方に向けた状態(土寄せ状態)に固定する土寄せモードと、第2中央整地体30Cの上下方向への回動を妨げない整地モードとを切り替え可能である。モードの切り替えは、中央レベラ制御機構32Cを構成するリンクロッドの動作の規制又は解除によって実現される。
次に、左側作業体10Lについて説明する。左側作業体10Lは、左側シールドカバー24L、左側シールドカバー24Lの下方に配置された耕耘ロータ26L(図2参照)、支持フレーム18L、サイドプレート19L、左側チェーンケース20Lの内部に配置されたチェーンユニット(図示せず)、第1左側整地体28L、第2左側整地体30L、左側レベラ制御機構32L、及び左側延長整地体回動機構34Lを備えている。左側シールドカバー24L、左側チェーンケース20L、第1左側整地体28L、第2左側整地体30L、及び左側レベラ制御機構32Lの担う役割については、それぞれ前述の中央作業体10Cにおける対応する各要素と同様であるため、ここでの説明は省略する。
ここで、図2に示されるように、耕耘ロータ26Lは、回転軸26La及びその回転軸26Laの周囲にホルダを介して配置された複数の耕耘爪26Lbを備える。左側チェーンケース20L内のチェーンユニットを介して伝達された動力により回転軸26Laが回転すると、その周囲に配置された耕耘爪26Lbが一斉に回転し、圃場の土を砕土及び攪拌する。なお、図示は省略しているが、中央作業体10C及び右側作業体10Rが有する耕耘ロータも耕耘ロータ26Lと同様の構成を有している。
図1に戻って、左側延長整地体回動機構34Lは、左側作業体10Lの第2左側整地体30Lに対し、回動可能に連結された左側延長整地体36Lを回動させるための機構である。左側延長整地体36Lは、左側作業体10Lの端部から作業機10の左方向に延長して設けられ、左側作業体10Lの外側の領域の整地作業を担う。第2左側整地体30Lと左側延長整地体36Lとは、延長整地体連結部38Lによって回動可能に連結されており、左側延長整地体36Lが第2左側整地体30Lに向かって折り畳まれるように回動可能となっている。
ここで、本実施形態において、左側延長整地体回動機構34Lは、駆動モータ部34La、回動アーム34Lb、及び連結ワイヤ34Lcを含む。回動アーム34Lbは、一端が駆動モータ部34Laに接続され、他端が連結ワイヤ34Lcに接続されている。また、連結ワイヤ34Lcは、一端が回動アーム34Lbに接続され、他端が左側延長整地体36Lに接続されている。
駆動モータ部34Laが動作すると、回転駆動力が発生して、回動アーム34Lbが略水平方向に回動する。この回動アーム34Lbの回動動作に連動して、連結ワイヤ34Lcに引っ張られた左側延長整地体36Lが延長整地体連結部38Lを介して回動する。これにより、左側延長整地体36Lの収納及び展開が可能となる。
なお、本実施形態では、左側延長整地体回動機構34Lを、駆動モータ部34La、回動アーム34Lb、及び連結ワイヤ34Lcで構成する例を示したが、延長整地体連結部38Lを介して左側延長整地体36Lを回動可能とする機構であれば、他の機構を用いてもよい。
次に、右側作業体10Rについて説明する。右側作業体10Rは、右側シールドカバー24R、右側シールドカバー24Rの下方に配置された耕耘ロータ(図示せず)、支持フレーム18R、サイドプレート19R、右側チェーンケース20R、第1右側整地体28R、第2右側整地体30R、右側レベラ制御機構32R、及び右側延長整地体回動機構34Rを備えている。ここで、右側シールドカバー24R、右側チェーンケース20Rの内部に配置されたチェーンユニット(図示せず)、第1右側整地体28R、第2右側整地体30R、右側レベラ制御機構32R、及び右側延長整地体回動機構34Rの担う役割については、それぞれ前述の左側作業体10Lにおける対応する各要素と同様であるため、ここでの説明は省略する。また、右側延長整地体36R及び延長整地体連結部38Rについても、前述の左側延長整地体36L及び延長整地体連結部38Lと同様である。
さらに、本実施形態による作業機10は、中央作業体10C、左側作業体10L、及び右側作業体10Rに、それぞれ中央土寄せ板40Ca及び40Cb、左側土寄せ板40L、並びに右側土寄せ板40Rを備えている。これらは、代掻き作業時に発生する水流(実際には、土を含む水の流れ)をコントロールするための板であり、これら土寄せ板を設けることにより、圃場表面の仕上がりを向上させることができる。
例えば、中央土寄せ板40Ca及び40Cbは、作業機10の前方を走行する走行機体のタイヤ等の轍に土を戻す位置に設けられ、轍によって生じた圃場の起伏の平坦化に寄与する。また、左側土寄せ板40L及び右側土寄せ板40Rは、土を内側に寄せるとともに、各土寄せ板の裏側にその周辺の水流を引き込む。その結果、左側作業体10L及び右側作業体10Rの端部よりも外側に藁などが浮遊していたとしても、水流によってそれぞれの耕耘ロータ内に引き込み、圃場表面の仕上がりの向上に寄与する。
また、本実施形態による作業機10は、左側作業体10L及び右側作業体10Rに、それぞれ左側レベラ制御機構32L、右側レベラ制御機構32Rを備えている。これら左側レベラ制御機構32L及び右側レベラ制御機構32Rは、中央レベラ制御機構32Cと同様に、それぞれ第2左側整地体30L、第2右側整地体30Rの上下方向への回動を規制又は解除する手段として機能する。
以上説明した左側作業体10L及び右側作業体10Rは、中央作業体10Cの両端部に設けられた作業体回動機構44a及び44bを介して回動用シリンダ46a及び46bの作用により回動し、前述の収納状態又は展開状態となる。その際、第1中央整地体28Cと第1左側整地体28L、及び、第1中央整地体28Cと第1右側整地体28Rとは、それぞれ第1連結部48a及び48bとによって連結される。また、第2中央整地体30Cと第2左側整地体30L、及び、第2中央整地体30Cと第2右側整地体30Rとは、それぞれ第2連結部50a及び50bとによって連結される。
なお、本明細書及び特許請求の範囲では、左側作業体10L及び右側作業体10Rを合わせた総称を「側方作業体」と呼ぶことがある。また、第1左側整地体28L及び第1右側整地体28Rを合わせた総称を「第1側方整地体」と呼んだり、第2左側整地体30L及び第2右側整地体30Rを合わせた総称を「第2側方整地体」と呼んだりすることがある。
[チェーンケースの構成]
図1に示すように、本実施形態による作業機10は、左右の側方作業体を展開して作業を行う場合、作業機10の右側の側端面に右側チェーンケース20Rが配置され、作業機10の左側の側端面に左側チェーンケース20Lが配置される。図1の状態の作業機10を、土やコンクリート等で形成された畦や壁等の障壁に囲まれた圃場において使用すると、障壁際で作業や移動を行う際に、意図せず障壁に接触するおそれのある部材は、作業機10の両側端面に配置された左右のチェーンケース20L、20Rである。
なお、図2に示すように、本実施形態による作業機10は、中央作業体10Cと左側作業体10Lとの間に、中央チェーンケース20Cを有している。図2に示すように、左側作業体10Lを折り畳んだ状態で障壁際での作業や移動を行う場合には、図2に示す作業機10の左側端面に配置される中央チェーンケース20Cも、意図せず障壁に接触するおそれがある。
しかし、通常は図1に示す展開状態で圃場内の作業や移動を行うことが多いため、以下では、展開状態で作業機10の両側端面に配置される左右のチェーンケース20L、20Rについて説明する。ただし、本発明の適用は、展開状態において作業機10の両側端面に配置される左右のチェーンケース20L、20Rに限定されるものではなく、中央チェーンケース20Cのように、意図せず障壁に接触するおそれのある位置に配置可能なチェーンケース一般について適用可能である。
図3は本発明の一実施形態における作業機に備わるチェーンケースの正面図である。本明細書において、チェーンケースの「正面」とは、チェーンケースの表面のうち、図3及び図6に示す面をいう。以下、同様である。図3に、展開状態において作業機10の両側端面に配置される左右のチェーンケース20L、20Rの構成を示す。左側チェーンケース20Lと右側チェーンケース20Rとは、互いに同じ構成を有するため、以下では特に言及しない限り左側チェーンケース20Lについて説明する。
図3に示すように、左側チェーンケース20Lは、チェーンケース本体60、保護部材70、及びキャップ90を有する。チェーンケース本体60は、耕耘ロータ等に動力を伝達するための動力伝達機構であるチェーンユニット(図示せず)を内蔵しており、チェーンケース本体60の内部にはオイルが充填されている。チェーンケース本体60は、正面のやや上方に丘状に突設された丘状部60aを有しており、丘状部60aの頂上に対応する位置にオイルを給油するための給油口(図示せず)が設けられている。また、給油口には着脱自在のキャップ90が嵌合されている。給油口のキャップ90は、オイル漏れを防ぎ、かつ、着脱自在とするために、ゴム等の弾性部材で形成されてもよい。また、給油口のキャップ90は、キャップの取り外しを容易に行うために取っ手90aを有していてもよい。
また、図3に示すように、チェーンケース本体60の下部は保護部材70で覆われている。保護部材70は、チェーンケースの長手方向における中央より下方を覆うものでもよい。保護部材70は、例えば、チェーンケース本体60の下部を外部からの衝撃から保護するためのチェーンケースシューズであってもよい。保護部材70は、作業時において、左側チェーンケース20Lが圃場に接する側の端部に設けられる。保護部材70により、チェーンケース本体60の下部が覆われるため、作業時に左側チェーンケース20Lの下部が圃場に当接する場合でも、保護部材70により土砂等による衝撃や摩耗からチェーンケース本体60が保護される。
本実施形態による作業機10の保護部材70は、ガード部材75を有している。ガード部材75は、図3に示すように、走行機体の進行方向に長手を有する平板形状で形成されてもよい。ガード部材75は、保護部材70と別個に製造された後で溶接や接着などの方法によって固定されてもよいが、これに限られるものではなく、ガード部材75を保護部材70と同じ工程により一体形成してもよい。
本実施形態による作業機10のチェーンケース本体60は、ボルト62などの締結手段によって作業機10に接続されている。また、本実施形態による作業機10の保護部材70は、チェーンケース本体60の下部に重畳するように配置され、チェーンケース本体60とともにボルト62などの締結手段によって作業機10に接続されている。また、保護部材70は、チェーンケース本体60の中央より上方に配置される給油口のキャップ90を露出する。
図4は本実施形態による作業機10の保護部材70を示す図である。図4において、(A)は保護部材70の上面図である。(B)は保護部材70の正面図である。(C)は保護部材70の側面図である。図4に示すように、保護部材70はチェーンケース本体60の外部形状に対応する形状を有している。図4の(A)に示すように、保護部材70に設けられるガード部材75の長手方向の長さは、保護部材70及びチェーンケース本体60の幅と同等か、わずかに短い長さである。また、図4の(A)に示すように、ガード部材75は、左側チェーンケース20Lの表面である作業体10の左側端面から突出する高さが、ガード部材75の長手方向において中央側が高く、両端側が次第にやや低くなるような湾曲面を有するように構成されてもよい。また、保護部材70の下側の周縁部には、チェーンケース20及び作業機10に取付ける際にボルトが挿入される複数の締結孔72が形成されている。
ガード部材75がこのような湾曲面を有する場合には、ガード部材75が障壁に接触する際の衝撃を緩和することができる。また、ガード部材75が障壁に接触する際にガード部材75自体が破損することも防止することができる。
ガード部材75の湾曲面に対向する面は、その全体が保護部材70に固定されていてもよいが、これに限定されるものではなく、図4の(A)に示すように、ガード部材75の湾曲面に対向する面は、障壁に当接する面と同様の曲率で湾曲した湾曲面でもよい。特に、ガード部材75を、略均等な幅を有する湾曲面を備える平板形状で形成する場合、製造ロスが減少し材料効率よくガード部材75を量産することができる。この場合、ガード部材75と保護部材70との固定方法は、接続強度が確保される限り、ガード部材75の長手方向の両端部を部分的に溶接するなどの方法で行われてもよい。
[ガード部材の作用]
図5に、本実施形態における作業機10のガード部材75が障壁(W)に当接する状態を示す。図5は、作業機10の左側作業体10Lを展開した状態において、左側作業体10Lの左側側端面に設けられた左側チェーンケース20Lが、障壁(W)に当接する状態を示す図である。
図5に示すとおり、左側チェーンケース20Lのうち、障壁(W)に当接する部材は、保護部材70に設けられたガード部材75のみである。すなわち、ガード部材75は、左側チェーンケース20Lを構成する部材のうち、左側方に最も突出する部材である。少なくとも、ガード部材75は、チェーンケース本体60に設けられた給油口のキャップ90よりも、作業体10の側方に突出している必要がある。図5に示す例では、ガード部材75は、チェーンケース本体60の丘状部60aに設けられた給油口のキャップ90の取っ手90aよりも作業体10の左側方に突出している。
チェーンケース本体60に設けられる給油口のキャップ90は、給油作業の便宜のため、チェーンケースの表面に設けられ、保護部材70から露出している。仮に、保護部材70にガード部材75が設けられていない場合、図5のような状況では、チェーンケースの表面に設けられた給油口のキャップ90が障壁(W)に接触し、ゴムなど弾性部材で形成されるキャップ90は接触による衝撃で給油口から外れて弾け飛ぶことがある。本実施形態は、このような不都合を防止するため、チェーンケース本体60に設けられた給油口のキャップ90よりも、作業体10の側方に突出する高さを有するガード部材75を設けている。
図5に示すように、圃場に対して略垂直な側面を有する障壁(W)の場合、ガード部材75の作業体10の側方に突出する高さが、チェーンケース本体60の丘状部60aに設けられた給油口のキャップ90よりも大きい場合には、ガード部材75が障壁(W)の側面に当接することにより、キャップ90は障壁(W)の側面に当接しないため、キャップ90を保護することができる。
また、図5と異なり、圃場表面から遠くなるほど圃場の外側に向かって傾斜する裾広がりの側面を有する畦形状の障壁も存在する。この場合、障壁の高さ方向において最も圃場内側に突出する部分は、障壁の下部である。本実施形態の作業機10は、キャップ90よりも下側(圃場側)に配置される保護部材70上にガード部材75が設けられているため、ガード部材75がキャップ90よりも作業体10の側方に突出している場合には、ガード部材75が障壁の下部側面に当接することにより、キャップ90は障壁(W)の側面に当接しないため、キャップ90を保護することができる。
また、本実施形態では、ガード部材75は、チェーンケース20の長手方向に直交する方向に略平行に設けられているが、本発明はこれに限られるものではない。ガード部材75が走行機体の進行方向に長手を有する限り、ガード部材75は、チェーンケース20の長手方向に直交する方向に対してやや傾斜して設けられてもよい。
また、本実施形態では、チェーンケース本体60の丘状部60aに給油口及びキャップ90が設けられているが、本発明はこれに限られるものではない。給油口及びキャップ90は、チェーンケース本体60の均一な高さの表面上に設けられていてもよい。
以上により、本実施形態の作業機10は、ガード部材75が障壁に接触することにより、作業機10の側端面に設けられるチェーンケース20のうち、特に給油口のキャップ90が圃場の障壁に接触して外れることを防ぐことができる。また、ガード部材75は、チェーンケース20の下部を保護する保護部材70に設けられるため、部品点数を増加させることなく、既存の部品を改良することにより容易に実施することができる。また、ガード部材75は、保護部材70及びチェーンケース本体60の幅以下の長手方向を有するため、作業機全体の大きさが不用意に大きくなるおそれがなく、コンパクトな設計が可能でなる。また、ガード部材75は、保護部材70の表面に固定された平板形状の部材であるため、不用意に障害物を巻き込んだり絡まったりするおそれがない。
〈第2実施形態〉
[チェーンケースの構成]
本実施形態にかかるチェーンケース20L´、20R´は、第1実施形態にかかるチェーンケース20L、20Rと異なり、保護部材80が、第1保護部材81と第2保護部材82とに分割されている。本実施形態において、ガード部材85は、給油口のキャップ90に対して相対的に近くに配置される第2保護部材82上に設けられる。その他の構成は第1実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
図6は、本発明の一実施形態における作業機に備わるチェーンケースの正面図である。図6に示すように、左側チェーンケース20L´は、チェーンケース本体60、保護部材80、及びキャップ90を有する。本実施形態における保護部材80は、チェーンケース本体60の最下部を覆う第1保護部材81と、第1保護部材81の上方に隣接して配置され、チェーンケース本体60の中央より下側を覆う第2保護部材82とに分割されている。第1保護部材81は、例えば、チェーンケース本体60の下部を外部からの衝撃や摩耗から保護するためのチェーンケースシューズであってもよい。第1保護部材81は、作業時において、左側チェーンケース20L´が圃場に接する側の端部に設けられる。第1保護部材81により、チェーンケース本体60の下部が覆われるため、作業時に左側チェーンケース20L´の下部が圃場に当接する場合でも、第1保護部材81により土砂等による衝撃や摩耗からチェーンケース本体60が保護される。また、保護部材80を構成する第1保護部材81及び第2保護部材82は、いずれも、チェーンケース本体60の中央より上方に配置される給油口のキャップ90を露出する。
また、チェーンケース本体60は、正面のやや上方に丘状に突設された丘状部60aを有しており、丘状部60aの頂上に対応する位置にオイルを給油するための給油口(図示せず)が設けられている。また、給油口には着脱自在のキャップ90が嵌合されており、給油口のキャップ90には、キャップの取り外しを容易に行うために取っ手90aが形成されていてもよい。
本実施形態における第2保護部材82は、ガード部材85を有している。本実施形態において、ガード部材85が設けられる位置は、チェーンケース20の長手方向において、給油口のキャップ90が設けられる位置より下方であり、かつ、チェーンケース20の中央より下方であることが望ましい。しかし、ガード部材85がチェーンケース20の長手方向の下側端部付近に配置されると、キャップ90が設けられる位置とガード部材85が設けられる位置との間の距離が大きくなるため、ガード部材85によりキャップ90を保護するという目的が十分に達成されない場合がある。そこで、本実施形態では、ガード部材85は、チェーンケース20の長手方向の下側端部付近に配置される第1保護部材81ではなく、チェーンケース本体60の中央より下方を覆う第2保護部材82上に設けられている。
このように、保護部材80が複数の部材に分割形成されている場合には、ガード部材85が、チェーンケース本体60の中央より下方の適切な位置に配置されるように、ガード部材85を適切な部材上に設けることで、ガード部材85を形成する位置を調整することができる。
図7は本実施形態における第2保護部材82を示す図である。図7において、(A)は第2保護部材82の上面図である。(B)は第2保護部材82の正面図である。(C)は第2保護部材82の側面図である。図7に示すように、第2保護部材82はチェーンケース本体60の外部形状に対応する形状を有している。図7の(A)に示すように、第2保護部材82に設けられるガード部材85の長手方向の長さは、第2保護部材82及びチェーンケース本体60の幅と同等か、わずかに短い長さである。また、図7の(A)に示すように、ガード部材85は、左側チェーンケース20L´の表面である作業体10の左側端面から突出する高さが、ガード部材85の長手方向において中央側が高く、両端側が次第にやや低くなるような湾曲面を有するように形成されてもよい。また、第2保護部材82の側方の縁部には、左側チェーンケース20L´及び作業機10に取付ける際にボルトが挿入される複数の締結孔84が形成されている。
ガード部材85がこのような湾曲面を有する場合には、ガード部材85が障壁に接触する際の衝撃を緩和することができる。また、ガード部材85が障壁に接触する際にガード部材85自体が破損することも防止することができる。
ガード部材85は、図7の(A)に示すように、障壁に当接する湾曲面に対向する面も、同様の曲率で湾曲した湾曲面を備える、略均等な幅を有する平板形状で形成されてもよい。このように、ガード部材85が、略均等な幅を有する平板形状で形成される場合、障壁に当接する面を湾曲面として形成する際に製造ロスが少なく材料効率よくガード部材85を量産することができる。この場合、ガード部材85と第2保護部材82との固定方法は、接続強度が確保される限り、ガード部材85の長手方向の両端部を部分的に溶接するなどの方法で行われてもよい。
[ガード部材の作用]
図8に、本実施形態におけるガード部材85が障壁(W)に当接する状態を示す。図8は、作業機10の左側作業体10Lを展開した状態において、左側作業体10Lの左側側端面に設けられた左側チェーンケース20L´が、障壁(W)に当接する状態を示す図である。
図8に示すとおり、左側チェーンケース20L´のうち、障壁(W)に当接する部材は、第2保護部材82に設けられたガード部材85のみである。すなわち、ガード部材85は、左側チェーンケース20L´を構成する部材のうち、左側方に最も突出する部材である。少なくとも、ガード部材85は、チェーンケース本体60に設けられた給油口のキャップ90よりも、作業体10の側方に突出している必要がある。図8に示す例では、ガード部材85は、チェーンケース本体60の丘状部60aに設けられた給油口のキャップ90の取っ手90aよりも作業体10の左側方に突出している。
仮に、第2保護部材82にガード部材85が設けられていない場合、図8のような状況では、チェーンケース正面に設けられ、保護部材80から露出する給油口のキャップ90が障壁(W)に接触し、ゴムなど弾性部材で形成されるキャップ90は接触による衝撃で給油口から外れて弾け飛ぶことがある。本実施形態は、このような不都合を防止するため、チェーンケース本体60に設けられた給油口のキャップ90よりも、作業体10の側方に突出する高さを有するガード部材85を設けている。
以上により、本実施形態の作業機10は、ガード部材85が障壁に接触することにより、作業機10の側端面に設けられるチェーンケース20のうち、特に給油口のキャップ90が圃場の障壁に接触して外れることを防ぐことができる。また、ガード部材85は、チェーンケース20の下部を保護する保護部材80を構成する部材の一つに設けられるため、部品点数を増加させることなく、既存の部品を改良することにより容易に実施することができる。また、ガード部材85は、第2保護部材82及びチェーンケース本体60の幅以下の長手方向を有するため、作業機全体の大きさが不用意に大きくなるおそれがなく、コンパクトな設計が可能となる。また、ガード部材85は、第2保護部材82の表面に固定された平板形状の部材であるため、不用意に障害物を巻き込んだり絡まったりするおそれがない。さらに、本実施形態の作業機10は、保護部材80を複数の部材により分割形成することにより、チェーンケース20の長手方向においてガード部材85が配置される相対的な位置を調整することができる。
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、各実施形態の耕耘爪及びその摩耗判定方法を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、上述した各実施形態は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態に含まれる。
また、上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。