[ダイシングテープ一体型封止用シート]
本発明のダイシングテープ一体型封止用シートは、基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープと、封止用樹脂層を含み、且つ上記ダイシングテープにおける上記粘着剤層に剥離可能に密着している封止用シートと、を備える。本発明のダイシングテープ一体型封止用シートは、このような構成を有することにより、ダイシングテープが裏面への反りを抑制するものと推測され、封止用樹脂の熱硬化時には反りが発生しにくい。
本発明のダイシングテープ一体型封止用シートは、複数の半導体チップを含む半導体ウエハの分割体における半導体チップ又は半導体ウエハであるワークの裏面及び少なくとも一部の側面の封止用途であることが好ましく、特に半導体チップの裏面及び少なくとも一部の側面の封止用途であることが好ましい。半導体チップの裏面及び少なくとも一部の側面の封止用途であると、封止後にワークが封止された封止体をダイシングする際に半導体チップにダメージを与えることなく個片化でき、また半導体チップの側面が樹脂で封止されているため半導体チップ同士が接触することを防止できる。なお、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートは、ワークのバンプが形成された表面の少なくとも一部を覆うように用いられてもよいが、バンプを露出させるように用いる。また、本明細書において、ワークの「表面」とはワークのフリップチップ実装するためのバンプが形成されている面をいい、「裏面」とは表面の反対側、すなわちバンプが形成されていない面をいうものとする。
本発明のダイシングテープ一体型封止用シートの一実施形態について、以下に説明する。図1は、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートの一実施形態を示す断面模式図である。図1に示すように、ダイシングテープ一体型封止用シート1は、ダイシングテープ10と、ダイシングテープ10における粘着剤層12上に積層された封止用シート20とを備える。図1に示すダイシングテープ一体型封止用シート1において、封止用シート20は封止用樹脂層21の単層構成である。ダイシングテープ一体型封止用シート1は、半導体装置の製造において封止樹脂付き半導体チップを得る過程でのダイシング工程において使用するものである。ダイシングテープ一体型封止用シート1におけるダイシングテープ10は、基材11と粘着剤層12とを含む積層構造を有する。
(基材)
ダイシングテープにおける基材は、ダイシングテープやダイシングテープ一体型封止用シートにおいて支持体として機能する要素である。基材としては、例えば、プラスチック基材(特にプラスチックフィルム)が挙げられる。上記基材は、単層であってもよいし、同種又は異種の基材の積層体であってもよい。
上記プラスチック基材を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルイミド;アラミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド;ポリフェニルスルフィド;フッ素樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;セルロース樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。基材において良好な熱収縮性を確保して、封止樹脂付き半導体間の離隔距離を広げるためのエキスパンド工程においてチップ離間距離をダイシングテープ又は基材の部分的熱収縮を利用して維持しやすい観点から、基材は、エチレン-酢酸ビニル共重合体を主成分として含むことが好ましい。なお、基材の主成分とは、構成成分中で最も大きな質量割合を占める成分とする。上記樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。粘着剤層が後述のように放射線硬化型粘着剤層である場合、基材は放射線透過性を有することが好ましい。
基材がプラスチックフィルムである場合、上記プラスチックフィルムは、無配向であってもよく、少なくとも一方向(一軸方向、二軸方向等)に配向していてもよい。少なくとも一方向に配向している場合、プラスチックフィルムは当該少なくとも一方向に熱収縮可能となる。熱収縮性を有していると、ダイシングテープの、半導体ウエハの外周部分をヒートシュリンクさせることが可能となり、これにより個片化された封止樹脂付きの半導体チップ同士の離間距離を広げた状態で固定できるため、半導体チップのピックアップを容易に行うことができる。基材及びダイシングテープが等方的な熱収縮性を有するためには、基材は二軸配向フィルムであることが好ましい。なお、上記少なくとも一方向に配向したプラスチックフィルムは、無延伸のプラスチックフィルムを当該少なくとも一方向に延伸(一軸延伸、二軸延伸等)することにより得ることができる。基材及びダイシングテープは、加熱温度100℃及び加熱時間処理60秒の条件で行われる加熱処理試験における熱収縮率が、1~30%であることが好ましく、より好ましくは2~25%、さらに好ましくは3~20%、特に好ましくは5~20%である。上記熱収縮率は、MD方向及びTD方向の少なくとも一方向の熱収縮率であることが好ましい。
基材の粘着剤層側表面は、粘着剤層との密着性、保持性等を高める目的で、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理等の物理的処理;クロム酸処理等の化学的処理;コーティング剤(下塗り剤)による易接着処理等の表面処理が施されていてもよい。また、帯電防止能を付与するため、金属、合金、これらの酸化物等を含む導電性の蒸着層を基材表面に設けてもよい。密着性を高めるための表面処理は、基材における粘着剤層側の表面全体に施されていることが好ましい。
基材の厚みは、ダイシングテープ及びダイシングテープ一体型封止用シートにおける支持体として基材が機能するための強度を確保するという観点からは、40μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは55μm以上、特に好ましくは60μm以上である。また、ダイシングテープ及びダイシングテープ一体型封止用シートにおいて適度な可撓性を実現するという観点からは、基材の厚みは、200μm以下が好ましく、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
(粘着剤層)
ダイシングテープ一体型封止用シートにおける粘着剤層は、ダイシングテープ一体型封止用シートの使用過程において外部からの作用によって意図的に粘着力を低減させることが可能な粘着剤層(粘着力低減可能型粘着剤層)であってもよいし、ダイシングテープ一体型封止用シートの使用過程において外部からの作用によっては粘着力がほとんど又は全く低減しない粘着剤層(粘着力非低減型粘着剤層)であってもよく、ダイシングテープ一体型封止用シートを使用して個片化される封止樹脂付き半導体ウエハ又は封止樹脂付き半導体チップの個片化の手法や条件等に応じて適宜に選択することができる。粘着剤層は、単層構造を有していてもよいし、多層構造を有していてもよい。
粘着剤層が粘着力低減可能型粘着剤層である場合、ダイシングテープ一体型封止用シートの製造過程や使用過程において、粘着剤層が相対的に高い粘着力を示す状態と相対的に低い粘着力を示す状態とを使い分けることが可能となる。例えば、ダイシングテープ一体型封止用シートの製造過程でダイシングテープの粘着剤層に封止用シートを貼り合わせる時や、ダイシングテープ一体型封止用シートがダイシング工程に使用される時には、粘着剤層が相対的に高い粘着力を示す状態を利用して粘着剤層から封止用シートの浮きを抑制・防止することが可能となる一方で、その後、ダイシングテープ一体型封止用シートのダイシングテープから封止樹脂付き半導体チップをピックアップするためのピックアップ工程では、粘着剤層の粘着力を低減させることで、ピックアップを容易に行うことができる。
このような粘着力低減可能型粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、放射線硬化性粘着剤、加熱発泡型粘着剤等が挙げられる。粘着力低減可能型粘着剤層を形成する粘着剤としては、一種の粘着剤を使用してもよいし、二種以上の粘着剤を使用してもよい。
上記放射線硬化性粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、又はX線の照射により硬化するタイプの粘着剤を用いることができ、紫外線照射によって硬化するタイプの粘着剤(紫外線硬化性粘着剤)を特に好ましく用いることができる。
上記放射線硬化性粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマー等のベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する添加型の放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
上記アクリル系ポリマーは、ポリマーの構成単位として、アクリル系モノマー(分子中に(メタ)アクリロイル基を有するモノマー成分)に由来する構成単位を含むポリマーである。上記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多く含むポリマーであることが好ましい。なお、アクリル系ポリマーは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち、いずれか一方又は両方)を表し、他も同様である。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル(ラウリルエステル)、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のフェニルエステル、ベンジルエステルが挙げられる。上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を粘着剤層において適切に発現させるためには、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上である。
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマー成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。上記他のモノマー成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、アクリロニトリル等の官能基含有モノマー等が挙げられる。上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。上記酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。上記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等が挙げられる。上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等が挙げられる。上記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等が挙げられる。上記他のモノマー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を粘着剤層において適切に発現させるためには、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における、上記他のモノマー成分の合計割合は、60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下である。
上記アクリル系ポリマーは、そのポリマー骨格中に架橋構造を形成するために、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分と共重合可能な多官能性モノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。上記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(例えば、ポリグリシジル(メタ)アクリレート)、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の分子内に(メタ)アクリロイル基と他の反応性官能基を有する単量体等が挙げられる。上記多官能性モノマーは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を粘着剤層において適切に発現させるためには、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における上記多官能性モノマーの割合は、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下である。
アクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーを含む一種以上のモノマー成分を重合に付すことにより得られる。重合方法としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等が挙げられる。
アクリル系ポリマーの質量平均分子量は、10万以上が好ましく、より好ましくは20万~300万である。質量平均分子量が10万以上であると、粘着剤層中の低分子量物質が少ない傾向にあり、封止用シートや半導体ウエハ等への汚染をより抑制することができる。
粘着剤層あるいは粘着剤層を形成する粘着剤は、架橋剤を含有していてもよい。例えば、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを用いる場合、アクリル系ポリマーを架橋させ、粘着剤層中の低分子量物質をより低減させることができる。また、アクリル系ポリマーの質量平均分子量を高めることができる。上記架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物(ポリフェノール系化合物等)、アジリジン化合物、メラミン化合物等が挙げられる。架橋剤を使用する場合、その使用量は、ベースポリマー100質量部に対して、5質量部程度以下が好ましく、より好ましくは0.1~5質量部である。
上記放射線重合性のモノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等挙げられる。上記放射線重合性のオリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等の種々のオリゴマーが挙げられ、分子量が100~30000程度のものが好ましい。粘着剤層を形成する放射線硬化性粘着剤中の上記放射線重合性のモノマー成分及びオリゴマー成分の含有量は、上記ベースポリマー100質量部に対して、例えば5~500質量部、好ましくは40~150質量部程度である。また、添加型の放射線硬化性粘着剤としては、例えば特開昭60-196956号公報に開示のものを用いてもよい。
上記放射線硬化性粘着剤としては、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化性粘着剤も挙げられる。このような内在型の放射線硬化性粘着剤を用いると、形成された粘着剤層内での低分子量成分の移動に起因する粘着特性の意図しない経時的変化を抑制することができる傾向がある。
上記内在型の放射線硬化性粘着剤に含有されるベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーが好ましい。アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素-炭素二重結合の導入方法としては、例えば、第1の官能基を有するモノマー成分を含む原料モノマーを重合(共重合)させてアクリル系ポリマーを得た後、上記第1の官能基と反応し得る第2の官能基及び放射線重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応又は付加反応させる方法が挙げられる。
上記第1の官能基と上記第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基等が挙げられる。これらの中でも、反応追跡の容易さの観点から、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせ、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが好ましい。中でも、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製することは技術的難易度が高く、一方でヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーの作製及び入手の容易性の観点から、上記第1の官能基がヒドロキシ基であり、上記第2の官能基がイソシアネート基である組み合わせが好ましい。イソシアネート基及び放射性重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物、すなわち、放射線重合性の不飽和官能基含有イソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、ヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーとしては、上述のヒドロキシ基含有モノマーや、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテル等のエーテル系化合物に由来する構成単位を含むものが挙げられる。
上記放射線硬化性粘着剤は、光重合開始剤を含有することが好ましい。上記光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート等が挙げられる。上記α-ケトール系化合物としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。上記アセトフェノン系化合物としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフエノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等が挙げられる。上記ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等が挙げられる。上記ケタール系化合物としては、例えば、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。上記芳香族スルホニルクロリド系化合物としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロリド等が挙げられる。上記光活性オキシム系化合物としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム等が挙げられる。上記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。放射線硬化性粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して、例えば0.05~20質量部である。
上記加熱発泡型粘着剤は、加熱によって発泡や膨張をする成分(発泡剤、熱膨張性微小球等)を含有する粘着剤である。上記発泡剤としては、種々の無機系発泡剤や有機系発泡剤が挙げられる。上記無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類等が挙げられる。上記有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系化合物等が挙げられる。上記熱膨張性微小球としては、例えば、加熱によって容易にガス化して膨張する物質が殻内に封入された構成の微小球が挙げられる。上記加熱によって容易にガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等が挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質をコアセルべーション法や界面重合法等によって殻形成物質内に封入することによって、熱膨張性微小球を作製することができる。上記殻形成物質としては、熱溶融性を示す物質や、封入物質の熱膨張の作用によって破裂し得る物質を用いることができる。そのような物質としては、例えば、塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。
上記粘着力非低減型粘着剤層としては、例えば、感圧型粘着剤層が挙げられる。なお、感圧型粘着剤層には、粘着力低減可能型粘着剤層に関して上述した放射線硬化性粘着剤から形成された粘着剤層を予め放射線照射によって硬化させつつも一定の粘着力を有する形態の粘着剤層が含まれる。粘着力非低減型粘着剤層を形成する粘着剤としては、一種の粘着剤を使用してもよいし、二種以上の粘着剤を使用してもよい。また、粘着剤層の全体が粘着力非低減型粘着剤層であってもよいし、一部が粘着力非低減型粘着剤層であってもよい。例えば、粘着剤層が単層構造を有する場合、粘着剤層の全体が粘着力非低減型粘着剤層であってもよいし、粘着剤層における特定の部位(例えば、リングフレームの貼着対象領域であって、中央領域の外側にある領域)が粘着力非低減型粘着剤層であり、他の部位(例えば、半導体ウエハの分割体あるいは半導体ウエハの貼着対象領域である中央領域)が粘着力低減可能型粘着剤層であってもよい。また、粘着剤層が積層構造を有する場合、積層構造における全ての粘着剤層が粘着力非低減型粘着剤層であってもよいし、積層構造中の一部の粘着剤層が粘着力非低減型粘着剤層であってもよい。
放射線硬化性粘着剤から形成された粘着剤層(放射線未照射放射線硬化型粘着剤層)を予め放射線照射によって硬化させた形態の粘着剤層(放射線照射済放射線硬化型粘着剤層)は、放射線照射によって粘着力が低減されているとしても、含有するポリマー成分に起因する粘着性を示し、ダイシング工程等においてダイシングテープの粘着剤層に最低限必要な粘着力を発揮することが可能である。放射線照射済放射線硬化型粘着剤層を用いる場合、粘着剤層の面広がり方向において、粘着剤層の全体が放射線照射済放射線硬化型粘着剤層であってもよく、粘着剤層の一部が放射線照射済放射線硬化型粘着剤層であり且つ他の部分が放射線未照射放射線硬化型粘着剤層であってもよい。なお、本明細書において、「放射線硬化型粘着剤層」とは、放射線硬化性粘着剤から形成された粘着剤層をいい、放射線硬化性を有する放射線未照射放射線硬化型粘着剤層及び当該粘着剤層が放射線照射により硬化した後の放射線硬化済放射線硬化型粘着剤層の両方を含む。
上記感圧型粘着剤層を形成する粘着剤としては、公知乃至慣用の感圧型の粘着剤を用いることができ、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤を好ましく用いることができる。粘着剤層が感圧型の粘着剤としてアクリル系ポリマーを含有する場合、当該アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多い構成単位として含むポリマーであることが好ましい。上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、上述の添加型の放射線硬化性粘着剤に含まれ得るアクリル系ポリマーとして説明されたものを採用することができる。
粘着剤層又は粘着剤層を形成する粘着剤は、上述の各成分以外に、架橋促進剤、粘着付与剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料等)等の公知乃至慣用の粘着剤層に用いられる添加剤が配合されていてもよい。上記着色剤としては、例えば、放射線照射により着色する化合物が挙げられる。放射線照射により着色する化合物を含有する場合、放射線照射された部分のみを着色することができる。上記放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色又は淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物であり、例えば、ロイコ染料等が挙げられる。上記放射線照射により着色する化合物の使用量は特に限定されず適宜選択することができる。
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、粘着剤層が放射線硬化性粘着剤から形成された粘着剤層である場合に当該粘着剤層の放射線硬化の前後における封止用シートに対する接着力のバランスをとる観点から、1~50μm程度が好ましく、より好ましくは2~30μm、さらに好ましくは5~25μmである。
(封止用シート)
封止用シートは封止用樹脂層を含む。封止用樹脂層は、ワークを埋め込んだ後熱硬化によりワークの封止が可能となるように、熱硬化性を有することが好ましい。また、封止用シートは、ワークの裏面及び少なくとも一部の側面を覆うように用いられることが好ましい。封止用シートは、ワークのバンプが形成された表面の少なくとも一部を覆うように用いられてもよいが、バンプを露出させるように用いる。封止用樹脂層は、単層構造を有していてもよいし、多層構造を有していてもよい。
封止用樹脂層の厚みは、50~300μmであり、好ましくは55~290μm、より好ましくは60~280μmである。上記厚みが50μm以上であることにより、半導体ウエハ又は半導体チップを埋め込んで裏面及び側面を保護することが可能である。また、上記厚みが300μm以下であることにより、封止用樹脂の熱硬化時には反りが発生しにくい。また、ロール状に巻き取ることが可能となる。
封止用樹脂層の、90℃における硬化前の弾性率(「弾性率A」と称する場合がある)は、特に限定されないが、0.1~10MPaであることが好ましく、より好ましくは0.15~9.5MPaである。上記弾性率Aが0.1MPa以上であると、埋め込み時に封止用樹脂のはみ出し(樹脂流れ)が起こりにくくなる。上記弾性率Aが10MPa以下であると、一体型構成であることによる反り抑制性を保持しつつ、半導体ウエハ又は半導体チップの埋め込み時に上記封止用樹脂層が比較的柔軟となるため、埋め込みがより容易となる。
封止用樹脂層の、25℃における硬化前の弾性率(「弾性率B」と称する場合がある)は、特に限定されないが、30~500MPaであることが好ましく、より好ましくは32~480MPaである。上記弾性率Bが上記範囲内であると、熱硬化前において常温でシート状の形態を維持し、半導体ウエハ又は半導体チップの埋め込み時には上記封止用樹脂層が比較的柔軟とすることが可能となる。
封止用樹脂層の、25℃における硬化前の弾性率(弾性率B)と90℃における硬化前の弾性率(弾性率A)との比[B/A]は、3~5000であることが好ましく、より好ましくは3.2~4800である。上記比[B/A]が上記範囲内であると、常温時で一体型構成としてのシート形状を維持できるとともに、半導体ウエハ又は半導体チップの埋め込み時に上記封止用樹脂層が比較的柔軟となるため、埋め込みがより容易となる。
封止用樹脂層及び封止用樹脂層を形成する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含んでいてもよいし、硬化剤と反応して結合を生じ得る熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。封止用樹脂層が、熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含む場合、当該樹脂組成物は熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)を含む必要はない。
封止用樹脂層が、熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂とともに含む場合、当該熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。半導体チップの腐食原因となり得るイオン性不純物等の含有量の少ない傾向にあるという理由から、上記熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、グリシジルアミン型、ジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂及びこれらの変性体等が挙げられる。上記エポキシ樹脂は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記エポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み且つ硬化後の靱性に優れることから、エポキシ当量が150~250であることが好ましい。また、同様の観点から、軟化点又は融点が50~130℃であることが好ましい。また、同様の観点から、常温で固形のものが好ましい。
上記エポキシ樹脂としては、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み且つ耐熱性に優れることから、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂の硬化剤として作用し得るフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等が挙げられる。上記フェノール樹脂は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂との反応性の観点から、水酸基当量が70~250であることが好ましい。また、同様の観点から、軟化点が50~110℃のものを用いることが好ましい。
上記フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる場合にエポキシ樹脂の硬化性に優れる観点から、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が好ましい。
封止用樹脂層において、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との硬化反応を充分に進行させるという観点からは、フェノール樹脂は、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たり、当該フェノール樹脂中の水酸基が好ましくは0.5~2.0当量、より好ましくは0.7~1.5当量となる量で含まれる。
封止用樹脂層が熱硬化性樹脂を含む場合、上記熱硬化性樹脂の含有割合は、封止用樹脂層の総質量に対して、2.5質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上である。上記含有割合が2.5質量%以上であると、封止用樹脂層において熱硬化性としての機能をより適切に発現させることができる。また、上記熱硬化性樹脂の含有割合は、封止用樹脂層の総質量に対して、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。上記含有割合が30質量%以下であると、吸湿性を低減させることができる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ナイロンや6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体等のポリスチレン系樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、封止時の樹脂流動性、塗膜時の作業性の観点からアクリル樹脂が好ましい。
封止用樹脂層が熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含む場合、当該熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂を用いることができる。この熱硬化性官能基含有アクリル樹脂におけるアクリル樹脂は、好ましくは、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多い構成単位として含む。当該炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、上述の粘着剤層に含まれ得るアクリル系ポリマーを形成する炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとして例示されたものが挙げられる。一方、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂における熱硬化性官能基としては、例えば、グリシジル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。中でも、グリシジル基、カルボキシ基が好ましい。すなわち、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂としては、グリシジル基含有アクリル樹脂、カルボキシ基含有アクリル樹脂が特に好ましい。また、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂とともに硬化剤を含むことが好ましく、当該硬化剤としては、例えば、上述の粘着剤層形成用の放射線硬化性粘着剤に含まれ得る架橋剤として例示されたものが挙げられる。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂における熱硬化性官能基がグリシジル基である場合には、硬化剤としてポリフェノール系化合物を用いることが好ましく、例えば上述の各種フェノール樹脂を用いることができる。
封止用樹脂層は、熱硬化触媒(熱硬化促進剤)を含有することが好ましい。熱硬化触媒を含むと、封止用樹脂層の硬化にあたって樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めることができる。上記熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルホスフィン系化合物、アミン系化合物、トリハロゲンボラン系化合物等が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。トリフェニルホスフィン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、ジフェニルトリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド等が挙げられる。トリフェニルホスフィン系化合物には、トリフェニルホスフィン構造とトリフェニルボラン構造とを併有する化合物も含まれるものとする。そのような化合物としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。アミン系化合物としては、例えば、モノエタノールアミントリフルオロボレート、ジシアンジアミド等が挙げられる。トリハロゲンボラン系化合物としては、例えばトリクロロボラン等が挙げられる。上記熱硬化性触媒は、一種のみを含有していてもよいし、二種以上を含有していてもよい。上記熱硬化触媒の含有量は、上記熱硬化性樹脂の総質量100質量部に対し、例えば0.1~5質量部である。
封止用樹脂層は、フィラーを含有していてもよい。フィラーを含むことにより、封止用樹脂層の弾性率や、降伏点強度、破断伸度等の物性を調整しやすい。フィラーとしては、無機フィラー、有機フィラーが挙げられる。無機フィラーの構成材料としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカ(溶融シリカ)、石英ガラス、タルク等が挙げられる。また、無機フィラーの構成材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の単体金属や、合金、アモルファスカーボン、グラファイト等も挙げられる。有機フィラーの構成材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミドが挙げられる。上記フィラーは、一種のみを含有していてもよいし、二種以上を含有していてもよい。
上記フィラーは、球状、針状、フレーク状等各種形状を有していてもよい。上記フィラーの平均粒径は、30~50000nmが好ましく、より好ましくは40~45000nm、より好ましくは50~40000nmである。すなわち、封止用樹脂層は、ナノフィラーを含有することが好ましい。フィラーとしてこのような粒径のナノフィラーを含有すると、小片化されることとなる封止用シートについて分断性及び割断性により優れる。フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(商品名「LA-910」、株式会社堀場製作所製)を使用して求めることができる。
上記フィラーとしては、線膨張係数を良好に低減できるという理由から、シリカ、アルミナが好ましく、より好ましくはシリカである。また、シリカとしては、シリカ粉末が好ましく、より好ましくは溶融シリカ粉末である。さらに、溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性の観点から、球状溶融シリカ粉末が好ましい。特に、平均粒径が0.4~30μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.45~25μmの範囲のものである。
封止用樹脂層がフィラーを含有する場合、上記フィラーの含有割合は、封止用樹脂層の総質量に対して、60~97質量%が好ましく、より好ましくは65~95質量%である。上記含有割合が60質量%以上であると、熱膨張率を低く抑えられることにより、熱硬化時の反りをより抑制し、また、熱衝撃による機械的な破壊を抑制することができる。上記含有割合が97質量%以下であると、柔軟性、流動性、接着性が良好となる。
封止用樹脂層は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤、着色剤(例えば、後述の硬質層が含有し得る着色剤)等が挙げられる。上記難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄、水酸化カルシウム、水酸化スズ、複合化金属水酸化物等の金属水酸化物、ホスファゼン系化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、例えば、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。上記イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン(例えば東亜合成株式会社製の「IXE?300」)、特定構造のリン酸ジルコニウム(例えば東亜合成株式会社製の「IXE?100」)、ケイ酸マグネシウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード600」)、ケイ酸アルミニウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード700」)等が挙げられる。金属イオンとの間で錯体を形成し得る化合物もイオントラップ剤として使用することができる。そのような化合物としては、例えば、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、ビピリジル系化合物が挙げられる。これらのうち、金属イオンとの間で形成される錯体の安定性の観点からはトリアゾール系化合物が好ましい。そのようなトリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-{N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル}ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-t-オクチル-6’-t-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、1-(2’,3’-ヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-(1,2-ジカルボキシジエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2-エチルヘキシルアミノメチル)ベンゾトリアゾール、2,4-ジ-t-ペンチル-6-{(H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル}フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ、オクチル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-ブチルフェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、メチル-3?[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート等が挙げられる。また、キノール化合物や、ヒドロキシアントラキノン化合物、ポリフェノール化合物等の所定の水酸基含有化合物も、イオントラップ剤として使用することができる。そのような水酸基含有化合物としては、具体的には、1,2-ベンゼンジオール、アリザリン、アントラルフィン、タンニン、没食子酸、没食子酸メチル、ピロガロール等が挙げられる。上記他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記封止用シートは、多層構造であってもよい。多層構造である上記封止用シートとしては、例えば、封止用樹脂層と硬質層とを有する封止用シートが挙げられる。上記硬質層を有する封止用シートでは、上記硬質層が上記ダイシングテープにおける上記粘着剤層に剥離可能に密着していることが好ましい。このような多層構造を有する封止用シートにおいて、上記封止用樹脂は、半導体ウエハ又は半導体チップを埋め込み封止するための機能を有する。また、上記硬質層としては、例えば、上記封止用樹脂層及び半導体ウエハ若しくは半導体チップの裏面の保護や平坦性を担保するための裏面保護層、レーザーマーキングにより刻印情報を付与することが可能なレーザーマーク層等が挙げられる。
本発明のダイシングテープ一体型封止用シートの他の一実施形態を図2に示す。図2は、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートの一実施形態を示す断面模式図である。図2に示すように、ダイシングテープ一体型封止用シート1は、ダイシングテープ10と、ダイシングテープ10における粘着剤層12上に積層された封止用シート20とを備える。なお、封止用シート20は、封止用樹脂層21と硬質層22を含む多層構造を有し、硬質層22が粘着剤層12に剥離可能に密着している。図2に示すダイシングテープ一体型封止用シート1における硬質層22以外の好ましい構成については、上述の図1に示すダイシングテープ一体型封止用シート1と同様である。
(硬質層)
上記封止用シートが封止用樹脂層と硬質層とを有する多層構造である場合、硬質層は、封止用シートにおいてダイシングテープ側に位置し、ダイシングテープ及びその粘着剤層に密着していることが好ましい。例えば、硬質層におけるダイシングテープ側の表面には、半導体装置の製造過程においてレーザーマーキングが施されることとなる。また、硬質層は、熱硬化性成分が熱硬化された熱硬化型層(熱硬化済み層)であることが好ましい。硬質層は、硬質層を形成する樹脂組成物から形成された熱硬化性の層を硬化させることにより形成される。一方、上記封止用シートが封止用樹脂層と硬質層とを有する場合、封止用樹脂層は、封止用シートにおいてワークである半導体ウエハ又は半導体チップが埋め込まれる側に位置し、熱硬化性を有し、且つ未硬化状態である熱硬化型層(熱硬化性層)であることが好ましい。
硬質層を形成する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含んでいてもよいし、硬化剤と反応して結合を生じ得る熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂とともに含む場合、当該熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。半導体チップの腐食原因となり得るイオン性不純物等の含有量の少ない傾向にあるという理由から、上記熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
上記エポキシ樹脂としては、上述の封止用樹脂層が含み得るエポキシ樹脂として例示されたものが挙げられる。上記エポキシ樹脂は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記エポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み且つ硬化後の靱性に優れることから、エポキシ当量が150~250であることが好ましい。また、同様の観点から、軟化点又は融点が50~130℃であることが好ましい。また、同様の観点から、常温で固形のものが好ましい。
上記エポキシ樹脂としては、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み且つ耐熱性に優れることから、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂の硬化剤として作用し得るフェノール樹脂としては、上述の封止用樹脂層が含み得るフェノール樹脂として例示されたものが挙げられる。上記フェノール樹脂は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂との反応性の観点から、水酸基当量が70~250であることが好ましい。また、同様の観点から、軟化点が50~110℃のものを用いることが好ましい。
上記フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる場合にエポキシ樹脂の硬化性に優れる観点から、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が好ましい。
硬質層を形成する樹脂組成物において、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との硬化反応を充分に進行させるという観点からは、フェノール樹脂は、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たり、当該フェノール樹脂中の水酸基が好ましくは0.5~2.0当量、より好ましくは0.7~1.5当量となる量で含まれる。
硬質層を形成する樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含む場合、上記熱硬化性樹脂の含有割合は、上記樹脂組成物の総質量に対して、2.5質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上である。上記含有割合が2.5質量%以上であると、硬化前の硬質層において熱硬化性としての機能をより適切に発現させることができる。また、上記熱硬化性樹脂の含有割合は、上記樹脂組成物の総質量に対して、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下である。上記含有割合が50質量%以下であると、吸湿性を低減させることができる。
上記熱可塑性樹脂としては、上述の封止用樹脂層が含み得る熱可塑性樹脂として例示されたものが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂が好ましい。
硬質層を形成する樹脂組成物が熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含む場合、当該熱可塑性樹脂としては、上述の封止用樹脂層が含み得る熱硬化性官能基含有アクリル樹脂として例示されたものが挙げられる。また、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂とともに硬化剤を含むことが好ましく、当該硬化剤としては、例えば、上述の粘着剤層形成用の放射線硬化性粘着剤が含み得る架橋剤として例示されたものが挙げられる。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂における熱硬化性官能基がグリシジル基である場合には、硬化剤としてポリフェノール系化合物を用いることが好ましく、例えば上述の各種フェノール樹脂を用いることができる。
硬質層を形成する樹脂組成物は、熱硬化触媒(熱硬化促進剤)を含有することが好ましい。熱硬化触媒を含むと、上記樹脂組成物の硬化にあたって樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めることができる。上記熱硬化触媒としては、上述の封止用樹脂層が含み得る熱硬化触媒として例示されたものが挙げられる。上記熱硬化性触媒は、一種のみを含有していてもよいし、二種以上を含有していてもよい。上記熱硬化触媒の含有量は、上記熱硬化性樹脂の総質量100質量部に対し、例えば0.1~20質量部である。
硬質層及び硬質層を形成する樹脂組成物は、フィラーを含有していてもよい。フィラーを含むことにより、硬質層の弾性率や、降伏点強度、破断伸度等の物性を調整しやすい。フィラーとしては、上述の封止用樹脂層が含み得るフィラーとして例示されたものが挙げられる。上記フィラーは、一種のみを含有していてもよいし、二種以上を含有していてもよい。
上記フィラーは、球状、針状、フレーク状等各種形状を有していてもよい。上記フィラーの平均粒径は、30~50000nmが好ましく、より好ましくは40~45000nm、より好ましくは50~40000nmである。すなわち、硬質層又は硬質層を形成する樹脂組成物は、ナノフィラーを含有することが好ましい。フィラーとしてこのような粒径のナノフィラーを含有すると、小片化されることとなる封止用シートについて分断性及び割断性により優れる。フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(商品名「LA-910」、株式会社堀場製作所製)を使用して求めることができる。
上記フィラーとしては、線膨張係数を良好に低減できるという理由から、シリカ、アルミナが好ましく、より好ましくはシリカである。また、シリカとしては、シリカ粉末が好ましく、より好ましくは溶融シリカ粉末である。さらに、溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性の観点から、球状溶融シリカ粉末が好ましい。特に、平均粒径が0.4~30μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.45~25μmの範囲のものである。
硬質層又は硬質層を形成する樹脂組成物がフィラーを含有する場合、上記フィラーの含有割合は、硬質層又は硬質層を形成する樹脂組成物の総質量に対して、10~60質量%が好ましく、より好ましくは25~45質量%である。上記含有割合が10質量%以上であると、熱膨張率を低く抑えられることにより、熱硬化時の反りをより抑制し、また、熱衝撃による機械的な破壊を抑制することができる。上記含有割合が60質量%以下であると、柔軟性、流動性、接着性が良好となる。
硬質層及び硬質層を形成する樹脂組成物は、着色剤を含有していてもよい。着色剤を含有する場合、優れたマーキング性及び外観性を発揮させることができ、硬質層にレーザーマーキングして、文字情報や図形情報などの各種情報を付与することが可能となる。また、着色剤の色を適宜選択することにより、マーキングにより付与された情報(文字情報、図形情報など)を、優れた視認性とすることが可能になる。さらに、着色剤の選択により、製品別に色分けをすることが可能となる。
上記着色剤は、顔料であってもよいし、染料であってもよい。着色剤としては、例えば、黒系着色剤、シアン系着色剤、マゼンダ系着色剤、イエロー系着色剤等が挙げられる。レーザーマーキングによって硬質層に情報を刻印し、当該情報について視認性により優れる観点から、黒系着色剤が好ましい。上記着色剤は、一種のみを含有していてもよいし、二種以上を含有していてもよい。
黒系着色剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト(黒鉛)、酸化銅、二酸化マンガン、アゾメチンアゾブラック等のアゾ系顔料、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色染料、アゾ系有機黒色染料等が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ソルベントブラック3、同7、同22、同27、同29、同34、同43、同70;C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71;C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同48、同52、同107、同109、同110、同119、同154;C.I.ディスパーズブラック1、同3、同10、同24;C.I.ピグメントブラック1、同7等も挙げられる。
シアン系着色剤としては、例えば、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95;C.I.アシッドブルー6、同45;C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同15:6、同16、同17、同17:1、同18、同22、同25、同56、同60、同63、同65、同66;C.I.バットブルー4;同60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
マゼンダ系着色剤としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同52、同58、同63、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同111、同121、同122;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、同13、同14、同21、同27;C.I.ディスパースバイオレット1;C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40;C.I.ベーシックバイオレット1、同3、同7、同10、同14、同15、同21、同25、同26、同27、28等が挙げられる。また、マゼンダ系着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同42、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49、同49:1、同50、同51、同52、同52:2、同53:1、同54、同55、同56、同57:1、同58、同60、同60:1、同63、同63:1、同63:2、同64、同64:1、同67、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同92、同101、同104、同105、同106、同108、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同146、同147、同149、同150、同151、同163、同166、同168、同170、同171、同172、同175、同176、同177、同178、同179、同184、同185、同187、同190、同193、同202、同206、同207、同209、同219、同222、同224、同238、同245;C.I.ピグメントバイオレット3、同9、同19、同23、同31、同32、同33、同36、同38、同43、同50;C.I.バットレッド1、同2、同10、同13、同15、同23、同29、同35等が挙げられる。
イエロー系着色剤としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162;C.I.ピグメントオレンジ31、同43;C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同23、同24、同34、同35、同37、同42、同53、同55、同65、同73、同74、同75、同81、同83、同93、同94、同95、同97、同98、同100、同101、同104、同108、同109、同110、同113、同114、同116、同117、同120、同128、同129、同133、同138、同139、同147、同150、同151、同153、同154、同155、同156、同167、同172、同173、同180、同185、同195;C.I.バットイエロー1、同3、同20等が挙げられる。
上記着色剤の含有割合は、硬質層又は硬質層を形成する樹脂組成物の総質量に対して、例えば0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。上記含有割合は、例えば10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
有色の硬質層とする場合(無色透明ではない場合)、硬質層は、黒色、青色、赤色等の濃色であることが好ましく、特に好ましくは黒色である。黒色の硬質層とする場合、黒系着色剤を用いてもよいし、シアン系着色剤、マゼンダ系着色剤、及びイエロー系着色剤、さらに必要に応じて黒系着色剤を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、濃色とは、L*a*b*表色系で規定されるL*が、60以下(例えば0~60)[好ましくは50以下、より好ましくは40以下]となる色をいうものとする。また、本明細書において、黒色とは、L*a*b*表色系で規定されるL*が、35以下(例えば0~35)[好ましくは30以下、より好ましくは25以下]となる色をいうものとする。なお、黒色において、L*a*b*表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、例えば、両方とも、-10~10であることが好ましく、より好ましくは-5~5、さらに好ましくは-3~3(特に0)である。L*a*b*表色系で規定されるL*、a*、及びb*は、例えば、色彩色差計(商品名「CR-200」、コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定して求められる。L*a*b*表色系は、JIS Z8729に規定されている。
硬質層及び硬質層を形成する樹脂組成物は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、上述の封止用樹脂層が含み得る他の成分として例示された、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤等が挙げられる。上記他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
硬質層の可視光(波長:380~800nm)による全光線透過率(可視光透過率)(硬質層の厚み:10μm)としては、20%以下(例えば0~20%)であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。硬質層の可視光透過率が20%以下であることにより、印字視認性を良好とすることができる。また光線通過による半導体チップへの悪影響を抑制することができる。
硬質層は、90℃における弾性率(「弾性率C」と称する場合がある)が500~10000MPaであることが好ましく、より好ましくは600~9000MPaである。上記弾性率Cが上記範囲内であると、硬質層は封止用樹脂層の表面を保護し、さらに印字を設ける等の他の機能性を有することが可能となる。
硬質層の厚みは、特に限定されないが、例えば20~1000μm、好ましくは30~900μm、より好ましくは40~800μmである。
上記封止用シートが封止用樹脂層と硬質層とを有する多層構造である場合、上記封止用シートの総厚みに対する上記硬質層の厚みの割合は、特に限定されないが、1~40%が好ましく、より好ましくは2~30%である。上記割合が上記範囲内であると、封止用樹脂層の厚みの割合を比較的大きくすることが可能でありワークを埋め込むことが容易となる。
上記多層構造は、例えば、熱硬化性を有する上記封止用樹脂層と熱硬化済みの硬質層とを含む構造が挙げられる。この場合、熱硬化前の封止用樹脂層はワークを埋め込み、その後熱硬化によりワークを封止することが容易であり、また、熱硬化済みの硬質層は上記封止用樹脂層の表面を保護し、さらに印字を設ける等の他の機能性を有することが可能となる。
また、上記多層構造は、例えば、90℃における弾性率Aが0.1~10MPaである上記封止用樹脂層と、90℃における弾性率Cが500~10000MPaである上記硬質層とを含む構造が挙げられる。この場合、封止用樹脂層はワークを埋め込むことが容易であり、また、硬質層は上記封止用樹脂層の表面を保護し、さらに印字を設ける等の他の機能性を有することが可能となる。なお、上記封止用樹脂層の90℃における弾性率の好ましい範囲は、上述の弾性率Aの好ましい範囲と同様である。また、上記硬質層の90℃における弾性率の好ましい範囲は、上述の弾性率Cの好ましい範囲と同様である。
本発明のダイシングテープ一体型封止用シートにおける封止用シートの厚みは、例えば50~2000μmである。
本発明のダイシングテープ一体型封止用シートは、半導体装置の製造過程における加工対象の半導体ウエハ又は半導体ウエハが個片化した半導体チップの集合体に対応するサイズの円盤形状を有することが好ましい。本発明のダイシングテープ一体型封止用シートにおけるダイシングテープの直径は、例えば、345~380mmの範囲内(12インチウエハ対応型)、245~280mmの範囲内(8インチウエハ対応型)、195~230mmの範囲内(6インチウエハ対応型)、又は、495~530mmの範囲内(18インチウエハ対応型)にある。本発明のダイシングテープ一体型封止用シートにおける封止用シートの直径は、ダイシングテープの直径以下であることが好ましい。ダイシングテープの直径と封止用シートの直径の差[ダイシングテープの直径-封止用シートの直径]は、70mm以上であることが好ましい。上記差が70mm以上であると、ワークの外周部において封止用樹脂がはみ出すことなくワークを封止でき、封止後にワークの表面保護フィルムの剥離が容易となる。
本発明のダイシングテープ一体型封止用シートは、封止用シート表面にセパレータを有していてもよい。具体的には、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートごとに、セパレータを有するシート状の形態であってもよいし、セパレータが長尺状であってその上に複数のダイシングテープ一体型封止用シートが配され且つ当該セパレータが巻き回されてロールの形態とされていてもよい。セパレータは、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートの封止用シート表面(図1及び2に示す態様では封止用樹脂層21表面)を被覆して保護するための要素であり、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートを使用する際には当該シートから剥がされる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙類等が挙げられる。セパレータの厚みは、例えば5~200μmである。
[ダイシングテープ一体型封止用シートの製造方法]
本発明のダイシングテープ一体型封止用シートの一実施形態であるダイシングテープ一体型封止用シート1は、例えば、次の通りにして製造される。
図1に示すダイシングテープ一体型封止用シート1における封止用シート20は、封止用樹脂層21形成用の樹脂組成物をセパレータ上に塗布して樹脂組成物層を形成した後、加熱により脱溶媒を行い、該樹脂組成物層を乾燥させることによって作製することができる。樹脂組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。加熱温度は例えば90~150℃であり、加熱時間は例えば1~2分間である。
図2に示すダイシングテープ一体型封止用シート1における封止用シート20の作製においては、まず、硬質層22と封止用樹脂層21とを個別に作製する。硬質層22は、硬質層22形成用の樹脂組成物をセパレータ上に塗布して樹脂組成物層を形成した後、加熱により脱溶媒や硬化を行い、該樹脂組成物層を固化させることによって作製することができる。硬質層22の作製において、加熱温度は例えば90~160℃であり、加熱時間は例えば2~4分間である。一方、封止用樹脂層21は、封止用樹脂層21形成用の樹脂組成物をセパレータ上に塗布して樹脂組成物層を形成した後、加熱により脱溶媒を行い、該樹脂組成物層を乾燥させることによって作製することができる。封止用樹脂層21の作製において、加熱温度は例えば90~150℃であり、加熱時間は例えば1~2分間である。樹脂組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。以上のようにして、それぞれがセパレータを伴う形態で硬質層22及び封止用樹脂層21を作製することができる。そして、これら硬質層22及び封止用樹脂層21の露出面同士を貼り合わせ、硬質層22と封止用樹脂層21との積層構造を有する封止用シート20が作製される。
ダイシングテープ一体型封止用シート1のダイシングテープ10については、用意した基材11上に粘着剤層12を設けることによって作製することができる。例えば樹脂製の基材11は、公知乃至慣用の製膜方法により製膜して得ることができる。上記製膜方法としては、例えば、カレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が挙げられる。基材11には、必要に応じて表面処理が施される。粘着剤層12の形成においては、例えば、粘着剤層形成用の粘着剤組成物(粘着剤)を調製した後、まず、当該組成物を基材11上またはセパレータ上に塗布して粘着剤組成物層を形成する。粘着剤組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。次に、この粘着剤組成物層において、加熱によって、必要に応じて脱溶媒させ、また、必要に応じて架橋反応を生じさせる。加熱温度は例えば80~150℃であり、加熱時間は例えば0.5~5分間である。粘着剤層12がセパレータ上に形成される場合には、当該セパレータを伴う粘着剤層12を基材11に貼り合わせ、その後、セパレータが剥離される。これにより、基材11と粘着剤層12との積層構造を有するダイシングテープ10が作製される。
次に、ダイシングテープ10の粘着剤層12側に封止用シート20(図2に示すダイシングテープ一体型封止用シート1の場合は硬質層22側)を貼り合わせる。貼り合わせ温度は例えば20~50℃であり、貼り合わせ圧力(線圧)は例えば0.1~20kgf/cmである。粘着剤層12が上記放射線硬化性粘着剤から形成される粘着剤層である場合、当該貼り合わせの前に粘着剤層12に対して紫外線等の放射線を照射してもよいし、当該貼り合わせの後に基材11の側から粘着剤層12に対して紫外線等の放射線を照射してもよい。或いは、ダイシングテープ一体型封止用シート1の製造過程では、そのような放射線照射を行わなくてもよい(この場合、ダイシングテープ一体型封止用シート1の使用過程で粘着剤層12を放射線硬化させることが可能である)。粘着剤層12が紫外線硬化型である場合、粘着剤層12を硬化させるための紫外線照射量は、例えば50~500mJ/cm2である。ダイシングテープ一体型封止用シート1において粘着剤層12の粘着力低減措置としての照射が行われる領域(照射領域R)は、例えば図1及び2に示すように、粘着剤層12における封止用シート貼り合わせ領域内のその周縁部を除く領域である。
以上のようにして、例えば図1及び2に示すダイシングテープ一体型封止用シート1を作製することができる。
[半導体装置の製造方法]
本発明のダイシングテープ一体型封止用シートを用いて、半導体装置を製造することができる。具体的には、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートを準備する工程(ダイシングテープ一体型封止用シート準備工程)と、複数の半導体チップを含む半導体ウエハの分割体又は半導体ウエハであるワークと、上記ワークのバンプ形成面に積層された表面保護フィルムと、を含む積層体を準備する工程(積層体準備工程)と、上記ダイシングテープ一体型封止用シートにおける上記封止用シート側の面と上記積層体における上記ワークの裏面とが対向するように、上記ダイシングテープ一体型封止用シート及び上記積層体を配置する工程と(配置工程)と、減圧下での熱プレスにより上記ワークを上記ダイシングテープ一体型封止用シートにおける上記封止用樹脂層に埋め込む工程(埋め込み工程)と、上記封止用樹脂層を熱硬化させる工程(熱硬化工程)と、を含む製造方法により、半導体装置を製造することができる。なお、図3~10は、図2に示すダイシングテープ一体型封止用シート1を用いた半導体装置の製造方法における工程を表すが、図2に示すダイシングテープ一体型封止用シート1に代えて、図1に示すダイシングテープ一体型封止用シート1等を用いてもよい。
(ダイシングテープ一体型封止用シート準備工程)
本発明のダイシングテープ一体型封止用シートは、例えば、上述のダイシングテープ一体型封止用シートの製造方法に記載した通りにして準備することができる。
(積層体準備工程)
上記積層体準備工程では、複数の半導体チップを含む半導体ウエハの分割体又は半導体ウエハであるワークと、上記ワークのバンプ形成面に積層された表面保護フィルムと、を含む積層体を準備する。上記積層体準備工程で用いる上記複数の半導体チップを含む半導体ウエハの分割体は、半導体ウエハの表面に溝を形成し、その後裏面研削を行うことにより、個々の半導体チップを得る方法(DBG)等、公知慣用の方法により得ることができる。
ワークのバンプ形成面に積層する表面保護フィルムとしては、基材と該基材上に積層された粘着剤層とを有する粘着テープが挙げられる。このような粘着テープとして、例えば、DBGにおいて裏面研削の際に半導体ウエハを固定しバンプが形成された表面を保護するためのテープ(バックグラインドテープ)を用いることが好ましい。表面保護フィルムがバックグラインドテープである積層体は、DBGにおいて裏面研削後に得られる積層体に相当する。従来の封止用樹脂を充填して圧縮成型により半導体チップを封止する方法では高い温度での加熱を必要とするためバックグラインドテープを使用することができなかったが、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートを用いる場合では封止の際に高温加熱が不要であるため、上記表面保護フィルムとしてバックグラインドテープを用いることが可能である。また、上述のように従来の方法ではバックグラインドテープを使用することができないため、バックグラインドテープを耐熱表面保護フィルムに貼り替える必要があったが、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートを用いる場合ではDBG後の貼り替えを行わなくてもよい。上記積層体は、DBGにより得る方法以外にも、公知慣用の方法で得ることができ、例えば、半導体ウエハ或いは半導体チップのバンプ形成面に表面保護フィルムを貼付することにより得られる。
図3に、ワークのバンプ形成面に表面保護フィルムとして粘着テープが積層された積層体の一実施形態の概略図(正面断面図)を示す。積層体3は、半導体ウエハの分割体における複数の半導体チップ31が、そのバンプ32が形成された表面31a側に表面保護フィルム33が貼り付けられている。表面保護フィルム33は、基材331と粘着剤層332の積層物であり、粘着剤層332の粘着面332aと個々の半導体チップ31の表面31aとが密着するように貼り付けられている。
(リングフレーム貼り合わせ工程)
上記配置工程の前に、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートにリングフレームを貼り合わせる工程(リングフレーム貼り合わせ工程)を有することが好ましい。本発明のダイシングテープ一体型封止用シートは、ダイシングテープと一体型であることによりリングフレームをダイシングテープにおける粘着剤層上に貼り付けることが可能である。そして、リングフレームでダイシングテープ一体型封止用シートを固定することにより、その後の熱硬化工程においてより一層反りが起こりにくくなる。
図4に、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートにリングフレームを貼り合わせた状態の一実施形態の概略図(正面断面図)を示す。図4では、ダイシングテープ一体型封止用シート1における粘着剤層12上にリングフレーム41が貼り合わせられている。
(配置工程)
上記配置工程では、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートにおける封止用シート側の面と上記積層体における上記ワークの裏面とが対向するように、本発明のダイシングテープ一体型封止用シート及び上記積層体を配置する。例えば図5(a)に示すように、ダイシングテープ一体型封止用シート1を、封止用シート20側の表面21aが上方となるように配置し、積層体3を、個々の半導体チップ31の裏面31bが下方となるように配置する。このように配置することで、ダイシングテープ一体型封止用シート1における封止用シート20側の表面21aと積層体3における半導体チップ31の裏面31bとが対向するように、ダイシングテープ一体型封止用シート1及び積層体3を配置することができる。なお、上記配置工程では、図5(b)に示すように、ダイシングテープ一体型封止用シート1と積層体3が接するようにして、表面21aと半導体チップ31の裏面31bとが対向するように配置してもよい。また、図5(a)及び(b)において、上方にある積層体3は表面保護フィルム33側から吸引等により、下方にあるダイシングテープ一体型封止用シート1は載置することにより、それぞれ、プレス機51a及び51b内に設置されている。なお、ダイシングテープ一体型封止用シート1と積層体3の位置関係が逆であってもよい。
(埋め込み工程)
上記埋め込み工程では、減圧下での熱プレス(いわゆる真空熱プレス)により上記ワークを本発明のダイシングテープ一体型封止用シートにおける封止用樹脂層に埋め込む。当該埋め込み工程では、ワークの裏面と側面の少なくとも一部とを封止用樹脂が覆うように、ワークを封止用樹脂層内に埋め込む。なお、ワークのバンプ形成面の少なくとも一部が封止用樹脂に覆われていてもよいが、バンプには封止用樹脂が付着しないようにする。埋め込みは、例えば、図6に示すように、プレス機51a及び51bを用いてダイシングテープ一体型封止用シート1と積層体3とを上下から加圧により挟み込み圧縮することにより行うことができる。圧縮時の圧力は例えば0.1~5MPa、温度は例えば70~130℃である。また、上記減圧下における圧力は、例えば90Pa以下である。
(熱硬化工程)
上記熱硬化工程では、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートにおける封止用樹脂層を熱硬化させる。具体的には、埋め込み工程後、例えば図7に示すように、半導体チップ31が封止用樹脂層21に埋め込まれた状態でダイシングテープ一体型封止用シート1及び積層体3をプレス機から取り出し(図7(a))、表面保護フィルム33を剥離する(図7(b))。そして、図7(b)に示す状態で熱硬化を行う。熱硬化工程を経ることにより、封止用樹脂層21(封止用樹脂)が硬化し、硬化済封止樹脂層21’を形成する(図7(c))。なお、硬質層22は既に熱硬化しているため、熱硬化工程では実質的に硬化しない。熱硬化工程において、加熱温度は例えば90~150℃であり、加熱時間は例えば1~8時間である。熱硬化工程において、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートは、基材と粘着剤層とを有するダイシングテープと封止用シートの一体型構成であることにより、比較的薄いワークを用いた場合であっても反りが起こりにくい。
(レーザーマーキング工程)
上記半導体装置の製造方法は、封止用シートに対し、ダイシングテープの基材の側からレーザーを照射してレーザーマーキングを行う工程(レーザーマーキング工程)を有していてもよい。レーザーマーキング工程は、上記熱硬化工程の後に行うことが好ましい。熱硬化工程後にレーザーマーキング工程を行う場合、熱硬化後の封止用シートに対しレーザー照射を行うこととなる。具体的には、レーザーマーキング工程では、例えば硬質層22に対し、ダイシングテープ10の基材11の側からレーザーを照射してレーザーマーキングを行う。なお、硬質層22を有しない場合は、硬化済封止樹脂層21’にレーザーマーキングを行ってもよい。このレーザーマーキングによって、後に封止樹脂付き半導体チップへと個片化される半導体素子ごとに、文字情報や図形情報等の各種情報が刻印される。上記レーザーマーキング工程では、一のレーザーマーキングプロセスにおいて、半導体ウエハ又は複数の半導体チップに対して一括的に効率よくレーザーマーキングを行うことが可能である。上記レーザーマーキング工程で用いられるレーザーとしては、例えば、気体レーザー、固体レーザーが挙げられる。気体レーザーとしては、例えば、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)、エキシマレーザーが挙げられる。固体レーザーとしては、例えばNd:YAGレーザーが挙げられる。なお、レーザーマーキング工程は、後述のダイシング工程の前もしくは後、ピックアップ工程の後等に、半導体チップごとに行ってもよい。
(ダイシング工程)
上記半導体装置の製造方法は、ワークが封止された硬化済封止樹脂層をダイシングして個片化し、少なくとも裏面が封止樹脂により覆われた封止樹脂付き半導体チップを得る工程(ダイシング工程)を有することが好ましい。上記ダイシング工程では、具体的に、熱硬化工程後(レーザーマーキング工程を有する場合はその後)、例えば、図8に示すように、ダイシング装置の備えるダイシングブレードによる切削加工を行う。図8では、切削箇所を模式的に太線で表す。上記ダイシング工程では、硬化済封止樹脂層21’及び硬質層22を、半導体チップ31単位に切断する。なお、ワークとして半導体ウエハを用いた場合、硬化済封止樹脂層21’及び硬質層22の切断とともに半導体ウエハを切断し、半導体ウエハを半導体チップ31へと個片化する。これにより、少なくとも裏面が封止樹脂により覆われた封止樹脂付き半導体チップ31’を得ることができる。
(放射線照射工程)
上記半導体装置の製造方法は、基材側から粘着剤層に対して放射線を照射する工程(放射線照射工程)を有していてもよい。ダイシングテープの粘着剤層が放射線硬化性粘着剤により形成された層である場合には、ダイシングテープ一体型封止用シートの製造過程での上述の放射線照射に代えて、上述のダイシング工程の後に、基材の側から粘着剤層に対して紫外線等の放射線を照射してもよい。照射量は、例えば50~500mJ/cm2である。ダイシングテープ一体型封止用シートにおいて粘着剤層の粘着力低減措置としての照射が行われる領域(図1及び2に示す照射領域R)は、例えば、粘着剤層における封止用シート貼り合わせ領域内のその周縁部を除く領域である。
(ピックアップ工程)
上記半導体装置の製造方法は、封止樹脂付き半導体チップをピックアップする工程(ピックアップ工程)を有することが好ましい。上記ピックアップ工程は、ワークの樹脂により封止されていない表面側を水等の洗浄液を使用して洗浄するクリーニング工程や、封止樹脂付き半導体間の離隔距離を広げるためのエキスパンド工程を、必要に応じて経た後に行ってもよい。例えば、図9に示すように、封止樹脂付き半導体チップ31’をダイシングテープ10からピックアップする。例えば、リングフレーム41付きのダイシングテープ10を装置の保持具42に保持させた状態で、ピックアップ対象の封止樹脂付き半導体チップ31’について、ダイシングテープ10の図中下側においてピックアップ機構のピン部材43を上昇させてダイシングテープ10を介して突き上げた後、吸着治具44によって吸着保持する。ピックアップ工程において、ピン部材43の突き上げ速度は例えば1~100mm/秒であり、ピン部材43の突き上げ量は例えば50~3000μmである。
(フリップチップ実装工程)
上記半導体装置の製造方法は、ピックアップ工程を経た後、封止樹脂層付き半導体チップをフリップチップ実装する工程(フリップチップ工程)を有することが好ましい。例えば、図10に示すように、封止樹脂付き半導体チップ31’が実装基板61に対してフリップチップ実装される。実装基板61としては、例えば、リードフレーム、TAB(Tape Automated Bonding)フィルム、配線基板が挙げられる。フリップチップ実装により、半導体チップ31は、実装基板61に対してバンプ32を介して電気的に接続される。具体的には、半導体チップ31がその回路形成面側に有する電極パッド(図示略)と実装基板61の有する端子部(図示略)とが、バンプ32を介して電気的に接続される。バンプ32は、例えばハンダバンプである。また、チップ31と実装基板61との間には、熱硬化性のアンダーフィル剤62が介在している。
以上のようにして、本発明のダイシングテープ一体型封止用シートを使用して半導体装置を製造することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない(実施例6、7は参考例1,2とする)。
実施例1
<封止用シートの作製>
(硬質層)
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-P3」、質量平均分子量:85万、ガラス転移温度Tg:12℃、ナガセケムテックス株式会社製)の固形分100質量部に対し、エポキシ樹脂(商品名「KI-3000-4」、東都化成株式会社製)80質量部と、エポキシ樹脂(商品名「JER YL980」、三菱ケミカル株式会社製)34質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」、明和化成株式会社製)119質量部と、フィラー(商品名「SO-25R」、シリカ、平均粒径:0.5μm、株式会社アドマテックス製)250質量部と、黒系染料(商品名「OIL BLACK BS」、オリエント化学工業株式会社製)33質量部と、熱硬化触媒(商品名「キュアゾール 2PZ」、四国化成工業株式会社製)29質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度35質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚み50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。この樹脂組成物層について130℃で2分間の脱溶媒及び硬化を行った。以上のようにして、実施例1における厚み50μm、縦350mm、横350mmの硬質層をPETセパレータ上に作製した。
(封止用樹脂層)
フェノール樹脂H1(商品名「LVR8210DL」、ノボラック型フェノール樹脂、水酸基当量104g/eq、軟化点60℃、群栄化学工業株式会社製)100質量部に対して、エポキシ樹脂E1(商品名「YSLV-80XY」、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量200g/eq、軟化点80℃、新日鉄住金化学株式会社製)184質量部と、アクリル樹脂A1(商品名「ME-2006M」、カルボキシル基含有アクリル酸エステル系ポリマーの20質量%メチルエチルケトン溶液、重量平均分子量:約60万、酸価:31mgKOH/g、ポリマー、根上工業株式会社製)を固形分として89質量部と、フィラーF1(商品名「FB-8SM」、シリカ、平均粒径:5μm、表面処理なし、粒径0.1μm以上50μm以下のもののみ含む、デンカ株式会社製)1891質量部と、フィラーF2(商品名「SC-220G-SMJ」、シリカ、平均粒径0.5μm、粒径50μmより大きいもの、及び、粒径0.001μm未満のものを含む、表面処理前のフィラー100質量部に対して1質量部の3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-503」、信越化学工業株式会社製)で表面処理されたもの、株式会社アドマテックス製)1018質量部と、カーボンブラック(商品名「三菱カーボンブラック #20」、三菱ケミカル株式会社製)13質量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製)44質量部と、熱硬化触媒Z1(商品名「HC-188W」、イミダゾール系触媒(商品名「キュアゾール 2P4MHZ」、四国化成工業株式会社製)が5-ヒドロキシ-イソフタル酸で包接された潜在性硬化触媒、イミダゾール系触媒の含有割合67質量%、株式会社日本触媒製)6質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度80質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚み50μm)のシリコーン離型処理面上に当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。この樹脂組成物層について120℃で2分間の脱溶媒を行った。以上のようにして、厚み50μm、縦350mm、横350mmの封止用樹脂層を作製した。さらに、同様にして作製した封止用樹脂層を用いて計3層重ね合わせ、実施例1における厚み150μm、縦350mm、横350mmの封止用樹脂層を作製した。
作製した硬質層と封止用樹脂層とをラミネーターにより温度90℃で貼り合わせ、実施例1の封止用シート(厚み200μm(硬質層50μm+封止用樹脂層150μm))を作製した。
<ダイシングテープの作製>
冷却管と、窒素導入管と、温度計と、撹拌装置とを備える反応容器内で、アクリル酸2-エチルヘキシル100質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル19質量部と、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.4質量部と、重合溶媒としてのトルエン80質量部とを含む混合物を、60℃で10時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、アクリル系ポリマーP1を含有するポリマー溶液を得た。次に、このアクリル系ポリマーP1を含有するポリマー溶液と、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)と、付加反応触媒としてのジブチル錫ジラウリレートとを含む混合物を、50℃で60時間、空気雰囲気下で撹拌した(付加反応)。当該反応溶液において、MOIの配合量は、上記アクリル系ポリマーP1100質量部に対して12質量部であり、ジブチル錫ジラウリレートの配合量は、アクリル系ポリマーP1100質量部に対して0.1質量部である。この付加反応により、側鎖にメタクリレート基を有するアクリル系ポリマーP2を含有するポリマー溶液を得た。次に、当該ポリマー溶液に、アクリル系ポリマーP2100質量部に対して0.75質量部のポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」,東ソー株式会社製)と、2質量部の光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」,BASF社製)と、トルエンとを加えて混合し、固形分濃度28質量%の粘着剤組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚み50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、この組成物層について120℃で2分間の脱溶媒を行い、PETセパレータ上に厚み5μmの粘着剤層を形成した。次に、ラミネーターを使用して、この粘着剤層の露出面にポリプロピレン25μm、ポリエチレン100μmの積層プラスチックフィルム(総厚み125μm)のポリプロピレン側を室温で貼り合わせた。この貼り合わせ体について、その後に23℃で72時間の保存を行った。以上のようにしてダイシングテープを作製した。
<ダイシングテープ一体型封止用シートの作製>
上記で得られた封止用シートを直径300mmの円形に打ち抜き加工した。次に、上記で得られた封止用シートから硬質層側のPETセパレータを剥離し且つ上記で得られたダイシングテープからPETセパレータを剥離した後、当該ダイシングテープにおいて露出した粘着剤層と、封止用シートにおいてPETセパレータの剥離によって露出した面とを、ハンドローラーを使用して貼り合わせた。次に、このようにして封止用シートと貼り合わせられたダイシングテープを、ダイシングテープの中心と封止用シートの中心とが一致するように、直径370mmの円形に打ち抜き加工した。以上のようにして、ダイシングテープと封止用シートとを含む積層構造を有するダイシングテープ一体型封止用シートを作製した。
実施例2
<ダイシングテープ一体型封止用シートの作製>
硬質層を用いず、封止用樹脂層を計6層重ね合わせて、封止用シートの厚みを300μm(封止用樹脂層300μm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、封止用シート及びダイシングテープ一体型封止用シートを作製した。
実施例3
<ダイシングテープ一体型封止用シートの作製>
封止用樹脂層を重ね合わせずに、封止用シートの厚みを50μm(封止用樹脂層50μm)としたこと以外は、実施例2と同様にして、封止用シート及びダイシングテープ一体型封止用シートを作製した。
実施例4
<封止用シートの作製>
(封止用樹脂層)
フェノール樹脂H1(商品名「LVR8210DL」、群栄化学工業株式会社製)100質量部に対して、エポキシ樹脂E1(商品名「YSLV-80XY」、新日鉄住金化学株式会社製)184質量部と、アクリル樹脂A1(商品名「ME-2006M」、根上工業株式会社製)を固形分として79質量部と、フィラーF1(商品名「FB-8SM」、デンカ株式会社製)1279質量部と、フィラーF2(商品名「SC-220G-SMJ」、株式会社アドマテックス製)688質量部と、カーボンブラック(商品名「三菱カーボンブラック #20」、三菱ケミカル株式会社製)8質量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」、信越化学工業株式会社製)30質量部と、熱硬化触媒Z2(商品名「キュアゾール 2PHZ-PW」)3質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度80質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚み50μm)のシリコーン離型処理面上に当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。この樹脂組成物層について120℃で2分間の脱溶媒を行った。以上のようにして、厚み50μm、縦350mm、横350mmの封止用樹脂層を作製した。さらに、同様にして作製した封止用樹脂層を用いて計3層重ね合わせ、実施例4における厚み150μm、縦350mm、横350mmの封止用樹脂層を作製した。
実施例1で作製した硬質層と、上記で作製した実施例4の封止用樹脂層とをラミネーターにより温度90℃で貼り合わせ、実施例4の封止用シート(厚み200μm(硬質層50μm+封止用樹脂層150μm))を作製した。
<ダイシングテープ一体型封止用シートの作製>
封止用シートとして実施例4の封止用シートを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ダイシングテープ一体型封止用シートを作製した。
実施例5
<封止用シートの作製>
(封止用樹脂層)
フェノール樹脂H2(商品名「TPM-100」、水酸基当量98g/eq、軟化点108℃、群栄化学工業株式会社製)100質量部に対して、エポキシ樹脂E2(商品名「JER 828」、三菱ケミカル株式会社製)129質量部と、エポキシ樹脂E3(商品名「EPPN-501HY」、日本化薬株式会社製)55質量部と、アクリル樹脂A1(商品名「ME-2006M」、根上工業株式会社製)を固形分として84質量部と、フィラーF1(商品名「FB-8SM」、デンカ株式会社製)2175質量部と、フィラーF2(商品名「SC-220G-SMJ」、株式会社アドマテックス製)1171質量部と、フィラーF3(商品名「EP-2601」、シリコーンゴムパウダー、東レ・ダウコーニング株式会社製)110質量部と、カーボンブラック(商品名「三菱カーボンブラック #20」、三菱ケミカル株式会社製)13質量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」、信越化学工業株式会社製)50質量部と、熱硬化触媒Z2(商品名「キュアゾール 2PHZ-PW」)3質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度80質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚み50μm)のシリコーン離型処理面上に当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。この樹脂組成物層について120℃で2分間の脱溶媒を行った。以上のようにして、厚み50μm、縦350mm、横350mmの封止用樹脂層を作製した。さらに、同様にして作製した封止用樹脂層を用いて計3層重ね合わせ、実施例5における厚み150μm、縦350mm、横350mmの封止用樹脂層を作製した。
実施例1で作製した硬質層と、上記で作製した実施例5の封止用樹脂層とをラミネーターにより温度90℃で貼り合わせ、実施例5の封止用シート(厚み200μm(硬質層50μm+封止用樹脂層150μm))を作製した。
<ダイシングテープ一体型封止用シートの作製>
封止用シートとして実施例5の封止用シートを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ダイシングテープ一体型封止用シートを作製した。
実施例6
<封止用シートの作製>
(封止用樹脂層)
フェノール樹脂H1(商品名「LVR8210DL」、群栄化学工業株式会社製)100質量部に対して、エポキシ樹脂E1(商品名「YSLV-80XY」、新日鉄住金化学株式会社製)183質量部と、アクリル樹脂A1(商品名「ME-2006M」、根上工業株式会社製)を固形分として55質量部と、フィラーF1(商品名「FB-8SM」、デンカ株式会社製)1194質量部と、フィラーF2(商品名「SC-220G-SMJ」、株式会社アドマテックス製)643質量部と、カーボンブラック(商品名「三菱カーボンブラック #20」、三菱ケミカル株式会社製)7質量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」、信越化学工業株式会社製)28質量部と、熱硬化触媒Z2(商品名「キュアゾール 2PHZ-PW」)3質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度80質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚み50μm)のシリコーン離型処理面上に当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。この樹脂組成物層について120℃で2分間の脱溶媒を行った。以上のようにして、厚み50μm、縦350mm、横350mmの封止用樹脂層を作製した。さらに、同様にして作製した封止用樹脂層を用いて計3層重ね合わせ、実施例6における厚み150μm、縦350mm、横350mmの封止用樹脂層を作製した。
実施例1で作製した硬質層と、上記で作製した実施例6の封止用樹脂層とをラミネーターにより温度90℃で貼り合わせ、実施例6の封止用シート(厚み200μm(硬質層50μm+封止用樹脂層150μm))を作製した。
実施例7
<封止用シートの作製>
(封止用樹脂層)
フェノール樹脂H2(商品名「TPM-100」、群栄化学工業株式会社製)100質量部に対して、エポキシ樹脂E2(商品名「JER 828」、三菱ケミカル株式会社製)129質量部と、エポキシ樹脂E3(商品名「EPPN-501HY」、日本化薬株式会社製)55質量部と、アクリル樹脂A1(商品名「ME-2006M」、根上工業株式会社製)を固形分として148質量部と、フィラーF1(商品名「FB-8SM」、デンカ株式会社製)2553質量部と、フィラーF2(商品名「SC-220G-SMJ」、株式会社アドマテックス製)1374質量部と、フィラーF3(商品名「EP-2601」、シリコーンゴムパウダー、東レ・ダウコーニング株式会社製)129質量部と、カーボンブラック(商品名「三菱カーボンブラック #20」、三菱ケミカル株式会社製)15質量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」、信越化学工業株式会社製)59質量部と、熱硬化触媒Z2(商品名「キュアゾール 2PHZ-PW」)3質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度80質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚み50μm)のシリコーン離型処理面上に当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。この樹脂組成物層について120℃で2分間の脱溶媒を行った。以上のようにして、厚み50μm、縦350mm、横350mmの封止用樹脂層を作製した。さらに、同様にして作製した封止用樹脂層を用いて計3層重ね合わせ、実施例7における厚み150μm、縦350mm、横350mmの封止用樹脂層を作製した。
実施例1で作製した硬質層と、上記で作製した実施例7の封止用樹脂層とをラミネーターにより温度90℃で貼り合わせ、実施例7の封止用シート(厚み200μm(硬質層50μm+封止用樹脂層150μm))を作製した。
比較例1
封止用樹脂層の厚みを40μmとしたこと以外は、実施例2と同様にして、封止用シート及びダイシングテープ一体型封止用シートを作製した。
比較例2
封止用樹脂層の厚みを350μmとしたこと以外は、実施例2と同様にして、封止用シート及びダイシングテープ一体型封止用シートを作製した。
比較例3
実施例2の封止用樹脂層を比較例3の封止用シートとした。
比較例4
実施例3の封止用樹脂層を比較例4の封止用シートとした。
(封止用樹脂層の25℃での弾性率Bの測定)
実施例及び比較例で作製した封止用樹脂層を、幅5mm、長さ30mmに切断して測定サンプルを作製した。次いで、粘弾性測定装置(商品名「RSAIII」、TAインスツルメンツ社製)を用いて、引張モード、チャック間距離20mm、周波数1Hz、昇温速度3℃/分、温度範囲-20~40℃で測定した時の25℃の貯蔵弾性率E’の値を25℃の弾性率値とした。結果を表1に示す。
(封止用樹脂層の90℃での弾性率Aの測定)
実施例及び比較例で作製した封止用樹脂層の90℃での弾性率G’を、レオメーター(商品名「MARS II」、HAAKE社製)を用いて、パラレルプレート法により測定した。より詳細には、以下の条件にて測定した。90℃測定時の最も低いG’の値を90℃の弾性率値とした。結果を表1に示す。
<測定条件>
測定モード:室温(25℃)~90℃まで昇温後、90℃で15分間等温維持
昇温速度:10℃/min
ひずみ量:0.05%
周波数:1Hz
サンプル直径:8mmφ
(硬質層の90℃での弾性率Cの測定)
実施例1で作製した硬質層について、上述の封止用樹脂層の25℃での弾性率Bと同じ方法で-20℃~150℃で測定を行い、90℃での貯蔵弾性率E’の値を90℃の弾性率値とした。結果を表1に示す。
(埋め込み性評価)
複数の半導体チップを含む半導体ウエハ(直径12インチ)の分割体(1つの半導体チップサイズ:7mm角、厚み100μm、半導体チップ同士の間隔:0.05mm)を、バンプ形成面(表面)から150μmの深さにダイシングして溝を形成し、バンプ形成表面(バンプ形成面)に一のバックグラインドテープが貼り合わせられた積層体を準備し、その後、バンプ形成面でない側のウエハ面(裏面)を研削することで作製した。次に、実施例及び比較例で得られたダイシングテープ一体型封止用シートからPETセパレータを剥離し、粘着剤層表面の封止用シートの周囲にリングフレームを貼り合わせた。次に、リングフレームが貼り合わせられたダイシングテープ一体型封止用シートが上側、半導体ウエハ分割体表面にバックグラインドテープが貼り合わされた積層体が下側となり、且つ上記積層体の半導体ウエハ分割体とダイシングテープ一体型封止用シートの封止用樹脂層とが対向するように、プレス機内に配置した。なお、比較例3及び4で得られた封止用シートについては、リングフレームを貼り合わせずに、封止用シートが上側となるように同様にプレス機内に配置した。
そして、真空プレス装置(商品名「MV-3000FF」、日東精機株式会社製)を用いて、真空度90Pa、プレス圧力0.18MPa、プレス温度90℃、プレス時間60秒の条件で熱プレスし、半導体ウエハに形成した溝及び半導体チップ裏面を封止用樹脂で埋め込んだ。その後、複数の半導体チップが封止用樹脂層中に埋め込まれたダイシングテープ一体型封止用シートをプレス機より取り出し、バックグラインドテープを剥離した。このようにして、実施例及び比較例における埋め込み体を得た際に、溝に封止用樹脂が完全に埋め込まれている場合を〇、完全に埋め込まれていない場合を×として、埋め込み性を評価した。なお、上記条件にて埋め込みができなかったが、プレス圧力0.2MPaの条件における熱プレスにより完全に埋め込まれた場合を△とした。結果を表1に示す。
(ロール巻き付け評価)
実施例及び比較例で作製したダイシングテープ一体型封止用シート(ダイシングテープ一体型封止用シートを作製していない場合は封止用シート)を3インチのプラステチック芯にダイシングテープ側が芯と接するように巻き付け、ダイシングテープや封止用シートにシワが発生、もしくはセパレータからダイシングテープ又は封止用シートが部分的に剥離、もしくは封止用シートに割れ・欠けが発生した場合を×、発生しなかった場合を〇とした。結果を表1に示す。
(樹脂流れ評価)
実施例及び比較例で作製したダイシングテープ一体型封止用シート(ダイシングテープ一体型封止用シートを作製していない場合は封止用シート)を、埋め込み性評価と同様の方法で熱プレスし、この際のウエハ外周端部から封止用樹脂がはみ出しがなかった場合を○、はみ出しがあったがバックグラインドテープを剥離できた場合を△、はみ出しがあり、バックグラインドテープと封止用樹脂が固着してバックグラインドテープを剥離できなかった場合を×とした。結果を表1に示す。
(反り評価)
実施例及び比較例で作製したダイシングテープ一体型封止用シート(ダイシングテープ一体型封止用シートを作製していない場合は封止用シート)に、上記埋め込み性評価と同様の方法でワークを埋め込み、恒温器にて120℃で3時間封止用樹脂層を熱硬化させた。その後、平滑なテーブルの上にワーク面を下側にして放置して常温(23℃)に冷却した。テーブル面とワーク面との間の距離のうち最も距離の広い部分の距離が5mm未満のものを○、5mm以上のものを×として評価した。結果を表1に示す。