以下、添付の図面を参照して本発明に係る検査チップ、検査装置、及び検査システムの実施の形態を説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
(実施形態1)
1.構成
1-1.システム構成
実施形態1に係る検査システムの全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施形態1に係る検査システムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る検査システムは、誘電泳動装置1と、制御装置20と、情報処理装置21と、廃液チャンバ22と、テスタ23とを備える。本検査システムは、誘電泳動装置1において、試料液(サンプル)中の細菌や細胞の誘電泳動を利用して、細菌等の検査を行うシステムである。本実施形態に係るシステムにおいて、誘電泳動装置1は制御装置20で制御され、誘電泳動装置1において細菌等の検査対象が捕集された状態は、情報処理装置21において表示される。
誘電泳動装置1は、ポンプ部10と、電源部11と、撮像部12と、検査チップ3とを備える。誘電泳動装置1は、本実施形態における検査装置の一例である。
ポンプ部10は、例えばシリンジポンプで構成され、駆動部10aと、サンプルシリンジ10bとを備える。駆動部10aは、モータなどを備えて構成され、制御装置20により駆動制御される。サンプルシリンジ10bは、試料液を保持するシリンジである。サンプルシリンジ10bにおける送液部分には、検査チップ3が接続される。ポンプ部10では、駆動部10aの駆動制御によってサンプルシリンジ10bから試料液が、流速や流量を適宜設定されて、検査チップ3に送液される。
検査チップ3は、試料液が流れる流路30と、例えばマイクロオーダで形成された電極群とを備える。ポンプ部10から送液された試料液は、検査チップ3内の流路30を貫流して、廃液チャンバ22に廃液される。上記の電極群は、流路30に重畳するように設けられる。検査チップ3では、流路30中の電極群上に試料液が流れている際に、電源部11から電極群に所定の交流電圧が印加される。これにより、試料液中における検査対象の細菌などが、誘電泳動を起こして電極群に捕集される。検査チップ3の構成の詳細については後述する。
電源部11は、例えばファンクションジェネレータで構成される。電源部11は、制御装置20の制御により、所望の周波数及び電圧振幅を有する交流電圧を発生して、検査チップ3に供給する。
撮像部12は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの撮像素子12aと、光学顕微鏡モジュール12bとを備える。光学顕微鏡モジュール12bは、位相差顕微鏡であってもよいし、落射顕微鏡であってもよい。また、光学顕微鏡モジュール12bは、例えばレンズ交換などにより、位相差顕微鏡と落射顕微鏡とに切替え可能に構成されてもよい。また、蛍光観察を行う場合、適宜、蛍光フィルタを用いる。撮像部12は、検査チップ3における電極群上の所定の領域(詳細は後述)を撮像し、撮像画像を情報処理装置21に出力する。撮像部12の撮像動作は、制御装置20によって制御されてもよいし、情報処理装置21によって制御されてもよい。
制御装置20は、例えばCPU、MPUを備える。制御装置20は、ポンプ部10による試料液の送液や電源部11による交流電圧の供給などの誘電泳動装置1の動作を制御する。制御装置20は、フラッシュメモリなどの内部メモリを備え、内部メモリに格納されたプログラムに基づいて種々のデータ等を利用して演算処理を行うことにより、各種の機能を実現する。制御装置20は、専用に設計された電子回路や再構成可能な電子回路などのハードウェア回路(ASIC,FPGA等)で構成されてもよい。制御装置20の機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
情報処理装置21は、例えばパーソナルコンピュータで構成される。情報処理装置21は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ(表示部)を備え、撮像部12の撮像画像を表示する。情報処理装置21は、フラッシュメモリなどの内部メモリを備え、内部メモリに格納されたプログラムに基づいて、各種の機能を実現する。例えば、情報処理装置21は、撮像部12の撮像画像の画像解析を行い、撮像画像中で所定の条件に該当する領域(スリット)の数を計数する。情報処理装置21は、撮像部12の撮像動作を制御してもよい。また、情報処理装置21と制御装置20とは、情報処理装置21において制御装置20の各種機能を実現することで、一体的に構成されてもよい。情報処理装置21は、本実施形態における表示部の一例であり、且つ撮像部12の撮像結果を解析する画像解析部の一例である。
廃液チャンバ22は、誘電泳動装置1の検査チップ3を貫流した試料液を溜めるチャンバである。廃液チャンバ22は、誘電泳動装置1の内部に組み込まれてもよい。
テスタ23は、例えばデジタルテスタ又はアナログテスタであり、検査チップ3の電極群に電気接続して、電圧、電流、抵抗値等を測定する。テスタ23は、該電極群におけるコンダクタンス、インピーダンス等を検出する検出部の一例である。テスタ23は、誘電泳動装置1の内部に組み込まれてもよい。
1-2.検査チップの構成
本実施形態に係る検査チップ3の構成について、以下、図2~4を参照して説明する。
図2(a)は、検査チップ3の平面図を示す。図2(b)は、図2(a)のA-A’線に沿った断面における検査チップ3の断面図を示す。検査チップ3は、図2(a)に示すように略矩形の平板形状を有する。以下、検査チップ3の長手方向をX方向とし、幅方向をY方向とし、厚さ方向をZ方向とする。
検査チップ3は、図2(a)に示すように、入口30a及び出口30bを有する流路30と、各種電極とを備える。各種電極は、第1及び第2の電極群CH1,CH2と、4つの電極パッド33aと、4つのテストポート33bとを含む。図2(b)に示すように、検査チップ3は、厚さ方向(Z方向)において、カバー板31と、スペーサ32と、電極フィルム33とを順次、重ね合わせた構造で構成される。
図3(a)は、検査チップ3におけるカバー板31の平面図を示す。図3(b)は、スペーサ32の平面図を示す。図3(c)は、電極フィルム33の平面図を示す。
カバー板31は、検査チップ3において流路30等を覆う板部材であり、例えば透明のアクリル板などである。図2(a),3(a)に示すように、流路30の入口30aと出口30bとは、それぞれカバー板31における挿通孔として設けられる。また、カバー板31には、電極パッド33aの位置を囲む切欠き部31aと、テストポート33bの位置を囲む切欠き部31bとが設けられる。
スペーサ32は、カバー板31と電極フィルム33との間で流路30となる空間を規定する。スペーサ32は、例えば透明のPET(ポリエステル)テープに、流路30の形状を規定する穴を設けて構成される(図3(b))。スペーサ32は、カバー板31と電極フィルム33とに接着し、両者の間隔(流路30の高さH1)をスペーサ32の厚さ(例えば0.1mm)で規定する(図2(b))。また、スペーサ32には、カバー板31の各々の切欠き部31a,31bと同じ形状の凹部32a,32bが設けられる。
電極フィルム33は、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムなどの透明のフィルム基材において流路30に面する側の主面上に、各種電極CH1,CH2,33a,33b及び電極間の配線が設けられた部材である。電極フィルム33における上記の電極等は、例えば蒸着法やスパッタリング法によってクロム等の金属材料で形成される。上記の各種電極は、単層構造で形成されてもよいし、多層構造(例えば2層)で形成されてもよい。以上の各種構成部材31~33の材質は、検査チップ3における寄生抵抗及び寄生容量等の観点から適宜、設定されてもよい。
本実施形態に係る検査チップ3において、流路30は上記の各構成部材31,32,33に囲まれて構成される。図2(a),3(a),(b)に示すように、スペーサ32において流路30の穴は、カバー板31における挿通孔の入口30aと出口30bとの間に対応する範囲に延在する。本実施形態において、流路30の長手方向はX方向であり、流路30の幅方向はY方向であり、流路30の高さ方向はZ方向である。
流路30の底面となる電極フィルム33上では、図3(c)に示すように、第1の電極群CH1と第2の電極群CH2とが、流路30の長手方向(X方向)に沿って並置される。本実施形態において、第1の電極群CH1は、検査対象の細菌等を捕捉するために用いられ、第2の電極群CH2よりも流路30の入口30a側(上流側)に位置する。第2の電極群CH2は、細菌等の量を計測するために用いられる。第2の電極群CH2近傍の電極フィルム33の拡大図を図4(a)に示す。
第2の電極群CH2は、櫛歯状のパターンをそれぞれ有する2つのパターン電極41,42を含む。各パターン電極41,42は、それぞれ上記のパターンにおける1本の櫛歯に対応するライン電極41a,42aを複数、含む。各ライン電極41a,42aは、流路30を幅方向(Y方向)に横断するように延在する。
図4(a)に示すように、第2の電極群CH2における2つのパターン電極41,42の各ライン電極41a,42aは、流路30の長手方向(X方向)において、互いに間隔をあけて交互に配置される。各ライン電極41a,42aの線幅Wa(X方向)は、例えば100μmであり、厚さ(Z方向)は例えば100nm程度である。ライン電極41a,42a間の間隔(スリット幅)Wsは、例えば1μm~50μmである。第2の電極群CH2におけるライン電極41a,42aの本数は、例えば10本である。
第1の電極群CH1は、例えば第2の電極群CH2と同様に、1組のライン電極43aで構成されるパターン電極43と、1組のライン電極44aで構成されるパターン電極44とを含む。本実施形態における第1の電極群CH1は、図3(c)に示すように、流路30の長手方向(X方向)において、第2の電極群CH2のサイズL2よりも大きいサイズL1を有する。例えば、第1の電極群CH1は、第2の電極群CH2のライン電極41a,42aと同じ寸法において、第2の電極群CH2よりも多い本数のライン電極43a,44aを含む(例えば300本)。
第1の電極群CH1の各パターン電極43,44と、第2の電極群CH2の各パターン電極41,42とは、それぞれ電極フィルム33上の配線により(図3(c))、別々の電極パッド33aに接続される。電極パッド33aは、検査チップ3の構成部材31~33を重ね合わせた状態において、切欠き部31a及び凹部32aにより、図2(a)に示すように露出する。電極パッド33aは、本検査システム(図1)の電源部11に対する接続点を構成する。
本実施形態に係る検査チップ3には、電源部11から電圧を印加するための電極パッド33aとは別に、テスタ23等により各電極群CH1,CH2におけるコンダクタンスを検出するためのテストポート33bが設けられる。テストポート33bの詳細については、後述する。
以上のような検査チップ3において、流路30はチューブ等を介して、入口30aにおいて本検査システム(図1)のポンプ部10に連結され、出口30bにおいて廃液チャンバ22に連結される。これにより、本検査システムでは、検査チップ3において入口30aから試料液を流路30に流入して、出口30bから流出させることができる。検査チップ3によると、電機接続や流路の接続が簡単に行え、誘電泳動装置1において細菌などの捕集後、使い捨てしたり、使い回ししたりすることが容易に行える。
1-2-1.狭窄部について
本実施形態に係る検査チップ3において、流路30は、長手方向(X方向)における途中の一部分において流路幅を狭める狭窄部30cを備える。流路30における狭窄部30cについて説明する。
狭窄部30cは、流路30において第2の電極群CH2が配置された範囲に重畳する。流路30は、流路幅として、狭窄部30cの範囲外では所定の第1の幅W1を有し、狭窄部30cの内部において第1の幅W1よりも小さい第2の幅W2を有する(例えばW1=5mm,W2=0.5mm)。狭窄部30c近傍の流路30の様子を、図4(b)に示す。
図4(b)に示すように、狭窄部30cは、流路30の幅方向(Y方向)における両側に対向して設けられている。流路30において、狭窄部30cによって流路幅が第2の幅W2に狭められた領域は、第2の電極群CH2が配置された範囲全体を含む。狭窄部30cは、Y方向における一方の側に設けられてもよい。
狭窄部30cは、第1の幅W1から第2の幅W2まで連続的に流路幅を狭めるように、X方向に対して所定の傾斜角度(例えば45度)を有する直線的な形状で形成されている。狭窄部30cの形状はこれに限らず、種々の傾斜角度を有してもよいし、湾曲した形状であってもよい。
第1の電極群CH1は、流路30における狭窄部30cよりも上流側(入口30a側)であって、流路幅が第1の幅W1の範囲に位置する。このため、第1の電極群CH1が配置された範囲の流路30において、隣り合うライン電極43a,44a間には、第1の幅W1と同じ長さを有するスリット状の領域(「スリット領域」ともいう)Rs1が形成される。
狭窄部30cによると、第2の電極群CH2が配置された範囲の流路30の流路幅は、第2の幅W2に狭められる。これに応じて、第2の電極群CH2の隣り合うライン電極41a,42a間には、Y方向における長さが第1の幅W1よりも短い第2の幅W2のスリット領域Rs2が形成される。スリット領域Rs2は、X方向に並んで配置される。
以上のように、狭窄部30cによって各電極群CH1,CH2に重畳する流路30の流路幅を変化させることにより、流路30の長手方向(X方向)に並ぶスリット領域Rs1、Rs2の長さを異ならせることができる(以下、「スリット領域」を「スリット」と略記する場合がある)。これにより、検査チップ3におけるスリットの計数による細菌等の定量評価のダイナミックレンジを適切に設定することができる。このように、狭窄部30cを備えた検査チップ3によると、細菌等の検査を行い易くすることができる。
また、本実施形態において、各電極群CH1,CH2のライン電極41a~44aは、例えば第1の幅W1よりも大きい長さを有し、各々の端部が流路30からはみ出すように設定されている。換言すると、電極フィルム33上で2つのパターン電極43,44(41,42)の間で複数のスリット領域Rs1(又はRs2)を連結する領域は、流路30の外部でスペーサ32に埋められている。これにより、流路30が延在する所定方向(液流方向)に並んだ複数のスリット領域Rs1,Rs2は、流路30中においては連結せずに、互いに分離する。例えば、流路30から第1の電極群CH1のライン電極43a,44aがはみ出す長さは、0.3mm等に設定される。
なお、各電極群CH1,CH2のライン電極41a~44aの寸法は、同じでなくてもよく、例えば、第2の電極群CH2のライン電極41a,42aの長さが、(第2の流路幅W2以上であって)第1の電極群CH1のライン電極43a,44aよりも小さくてもよい。また、例えば第1の電極群CH1等でスリット領域Rs1を形成する必要がない場合、ライン電極43a,44aの長さは第1の幅W1以下であってもよい。
1-2-2.テストポートについて
本実施形態に係る検査チップ3におけるテストポート33bの詳細について、以下説明する。
図3(c)に示すように、4つのテストポート33bは、それぞれ電極フィルム33上の配線により、第1の電極群CH1の各パターン電極43,44と、第2の電極群CH2の各パターン電極41,42とに別々に接続される。
図4(a)に示すように、第2の電極群CH2におけるパターン電極41,42は、それぞれ1組のライン電極41a,42aによる櫛歯形状で構成される。第2の電極群CH2に対するテストポート33bは、例えば電極フィルム33において、パターン電極41,42を2層配線で形成しておき、各組のライン電極41a,42aを全て通るように配線して、電極パッド33aの対向面に設けられる(図3(c))。第1の電極群CH1に対するテストポート33bも、上記と同様に構成できる。
検査チップ3において、テストポート33bは、切欠き部31b及び凹部32bにより、電極パッド33aと同様に露出する(図2(a))。テストポート33bは、本検査システム(図1)のテスタ23に対する接続点を構成する。
本検査システムにおいて、テスタ23は、検査チップ3のテストポート33bを介して各々のパターン電極41~44に電気接続することにより、第1及び第2の電極群CH1,CH2の各々におけるコンダクタンス(或いは等価的に抵抗値)を計測する。各電極群CH1,CH2においては、種々の寄生容量も想定される。テスタ23は、各電極群CH1,CH2におけるインピーダンスを計測してもよい。
例えば、ユーザは検査チップ3を用いた細菌等の検査前にテスタ23を用いて、電源部11から電極パッド33aに交流又は直流で通電しながら、テストポート33bを介してコンダクタンス等を計測する。これにより、誘電泳動装置1における検査チップ3の接点が正常に取れているのかを予め判別可能になる。何らかの要因で電極フィルム33上の配線が断線した等の異常が生じた場合、テストポート33bを用いて導通確認を行うことにより、このような異常を検知できる。
例えば、第2の電極群CH2においてライン電極41a,42aの1本あたりの寄生抵抗が10Ωであるとした場合、すべてのライン電極41a,42a(計10本とする)が正常であれば合計抵抗値はR=1/(1/10+1/10+…)=1Ωとなる。これに対して、1本のライン電極41a(42a)が欠損すると抵抗値が上がることから、テスタ23の計測結果に基づいて、検査チップ3の異常を検出することができる。このように、テストポート33bを備えた検査チップ3によると、細菌等の検査を行い易くすることができる。
2.動作及び検査方法
本システムの動作及び本システムにおける検査方法について、以下説明する。
2-1.検査方法の原理について
図5は、本実施形態に係る検査方法の原理を説明するための図である。
本実施形態に係る検査システム及び検査方法では、誘電泳動を利用して、試料液に含まれる検査対象の細菌等を捕集する。図5(a)に示すように、パターン電極41,42間に周波数ωの交流電圧を供給した場合に、流路30を流れる試料液中の生菌や死菌などの細菌に作用する誘電泳動力FDEPは、次式で表される。
FDEP=2πr3εmRe[K(ω)]∇E2 …(1)
上式(1)において、rは検査対象の生菌や死菌などの誘電体粒子の半径であり、εmは試料液の媒質の誘電率であり、Eは電場の強度である。また、Re[X]は複素数Xの実部を表す。K(ω)は、Clausius-Mossotti因子であり、次式で表される。
K(ω)=(εp
*-εm
*)/(εp
*+2εm
*) …(2)
上式(2)において、εp
*(=εp+ρp/(jω))は、誘電体粒子の複素誘電率である(εpは誘電体粒子の誘電率で、ρpはその導電率)。また、εm
*(=εm+ρm/(jω))は、媒質の複素誘電率である(ρmは媒質の導電率)。
上式(1)において、Re[K(ω)]>0であるとき、パターン電極41,42の設置方向に対して正の誘電泳動力FDEPが誘電体粒子に作用し、誘電体粒子はパターン電極41,42近傍に引きつけられてスリットRsに吸着される。一方、Re[K(ω)]<0であるとき、負の誘電泳動力FDEPが誘電体粒子に作用し、誘電体粒子はパターン電極41,42に対して反発する。このため、周波数ωを適宜、設定することにより、検査対象外の夾雑物等を排除しながら、検査対象を選択的にスリットRs2に吸着させることができる。
試料液中の細菌は、正の誘電泳動力FDEPを作用させることで、スリットRs2に捕集される。細菌は所定サイズを有するので、スリットRs2において一定量の細菌が捕集されると、スリットRs2が、細菌で埋め尽くされて飽和する。また、本システムでは、流路30中で複数のスリットRs2が液流方向に所定間隔を空けて配置されるように電極群を設定しているので、流路30中で上流のスリットRs2から順番に飽和することとなる。
そこで、本検査方法では、本システムのユーザにより、試料液中に含まれる細菌等の量を、以下のように計測する。
まず、1つのスリットRs2で飽和が生じた場合に捕集される細菌等の量(飽和量)をあらかじめ求めておく。
次に、誘電泳動装置1を制御装置20で制御して、ポンプ部10から試料液を検査チップ3の流路30に流しながら、電源部11から流路30中の電極群に所定周波数の交流電圧を供給し、検査対象に正の誘電泳動力を作用させる。
次に、電極群においてスリットRs2が並んだ領域Rc(図3参照)を撮像し、撮像画像において、飽和したスリットRs2の数を計数する。スリット数の計数は、情報処理装置21が撮像画像に対する画像解析によって行ってもよいし、情報処理装置21に表示された撮像画像に基づき、ユーザが行ってもよい。また、領域Rcを撮像せずに、ユーザが直接、光学顕微鏡を覗いて、飽和したスリットRs2の計数を行ってもよい。
試料液に含まれる検査対象の細菌等の量は、あらかじめ求めた飽和量と計数結果のスリット数との積で求められる。このため、細菌等が付着して飽和したスリットの数を測定することで、試料液に含まれる検査対象を簡単に定量評価することができる。
スリットRs2の飽和量は、検査対象の細菌等の種類やサイズに基づいて算出できる。また、検査対象に応じて、正の誘電泳動力が作用するように交流電圧の周波数ωを設定し、交流電圧の電圧振幅や流路30中の流速も適宜、制御する。これにより、種々の検査対象を選択的に捕集して、簡単に定量評価することができる(詳細は後述)。
例えば、周波数制御により、細菌における生菌(活性菌)と死菌(損傷菌)を区別するか否かを切り替えることができる。図5(a)は、生菌と死菌とを共に捕集する場合の例を示す。例えば周波数ω=100kHzでパターン電極41,42に交流電圧を供給することにより、生菌と死菌との双方に正の誘電泳動力を作用させて、生菌と死菌との双方を他のものと区別して捕集することができ、定量評価することができる。
図5(b)は、生菌を選択的に捕集する場合の例を示す。図5(b)に示す例では、図5(a)に示すように周波数ω=100kHzでの動作後、周波数ωを3MHzにまで上げている。すると、生菌には正の誘電泳動力が作用する一方、死菌には作用しなくなる。これにより、生菌のみをスリットRs2に吸着して、死菌を除いた生菌の量を簡単に定量評価することができる。
2-2.評価方法について
本システムでは、種々の観察法を用いて、電極群において細菌等で飽和したスリットを計数し、細菌等の定量評価をすることができる。以下、図6(a)~(e)を参照して、本システムにおける菌量の評価方法について説明する。
図6(a),(b)は、位相差観察法における誘電泳動を行う前後の状態の撮像例を示す。図6(c),(d)は、明視野観察法における誘電泳動を行う前後の状態の撮像例を示す。図6(e)は、蛍光観察法における誘電泳動を行った後の状態の撮像例を示す。
本実施形態において、位相差観察を行う場合、撮像部12(図1参照)において位相差顕微鏡を用いる。この場合に、誘電泳動を行う前の初期状態において、電極群の領域Rc(図4(b))を観察(撮像)すると、図6(a)に示すように、ライン電極41a,42aが暗く映る一方、スリットRs2は明るく映る。これは、電極41a,42aが不透明である一方、スリットRs2は透明であるためである。
これに対して、誘電泳動を行い、細菌がスリットRsに捕集されると、図6(b)に示すように、飽和したスリットRs2が暗くなる。これは、飽和したスリットRs2において細菌が集積することにより、スリットRs2が不透明化するためである。よって、誘電泳動を行う前後において明るく映し出されたままのスリット数を計数したり、暗くなったスリット数を計数したりすることで、細菌の量を定量評価することができる。
また、明視野観察を行う場合、撮像部12において落射顕微鏡を用いる。この場合に、誘電泳動を行う前の初期状態において、電極群の領域Rcを観察すると、落射顕微鏡から出射した光の反射光の調整により、図6(c)に示すように、電極41a,42aもスリットRs2も、暗く映る。
これに対して、誘電泳動を行い、細菌がスリットRs2に捕集されると、捕集された菌からの反射光により、図6(d)に示すように、飽和したスリットRs2が明るく映し出される。この場合、誘電泳動を行った後に明るく映し出されたスリット数を計数することで、細菌の量を定量評価することができる。
また、蛍光観察を行う場合、試料液中の検査対象に対して、蛍光標識を用いる。また、撮像部12において、例えば蛍光フィルタ等を適宜、設定した落射顕微鏡(蛍光顕微鏡)を用いる。この場合における誘電泳動を行う前の初期状態は、明視野観察の場合(図6(c))と同様である。これに対して、誘電泳動装置1において誘電泳動を行い、細菌がスリットRsに捕集されると、図6(e)に示すように、飽和したスリットRs2が蛍光発光する。このため、誘電泳動を行った後に飽和したスリットRs2がより明瞭に映し出され、スリット数を計数しやすくなる。
2-3.検査処理について
本実施形態では、検査チップ3を用いて、第1の電極群CH1で検査対象の細菌等を捕捉して、捕捉した誘電体粒子により飽和した第2の電極群CH2のスリットRs2を計数する検査処理を行うことができる。以下、本実施形態に係る検査処理について、図7を用いて説明する。
図7は、本実施形態に係る検査チップを用いた検査処理を説明するためのフローチャートである。図7のフローチャートの各処理は、本検査システムの制御装置20によって実行される。本フローチャートは、本検査システムにおいて、検査される試料液及び検査チップが準備された状態で開始される。
まず、制御装置20は、電源部11を制御して、第1の電極群CH1に、所定期間(例えば1~100分)、所定の周波数を有する交流電圧を印加する(S1)。当該周波数は、検査対象の細菌等に正の誘電泳動力を作用させるための周波数であり、例えば100kHz(生菌及び死菌を捕集)に設定される。
次に、制御装置20は、交流電圧の印加中(S1)にポンプ部10を制御して、ポンプ部10に所定の第1の送液速度で試料液を送液させる(S2)。送液速度は、ポンプ部10が単位時間あたりに送液する流量で規定される。第1の送液速度は、第1の幅W1の流路30における流速の検査対象を上記の誘電泳動力で効率良く捕捉する観点から適宜、設定される(例えば0.01~1ml/min)。
第1の送液速度による送液(S2)は、第1の電極群CH1に対する交流電圧の印加(S1)の期間中、ポンプ部10によって継続される。この際、第1の電極群CH1上を流れる細菌等に対して正の誘電泳動力が働き、第1の電極群CH1の各スリットRs1に、検査対象の細菌等が捕捉され続ける。なお、ステップS1,S2の処理の開始順は特に限定されず、ステップS2,S1の順番であってもよいし、同時であってもよい。
上記の所定期間の経過後、制御装置20は、第1の電極群CH1に対する交流電圧の印加を停止するように、電源部11を制御する(S3)。ステップS3によると、流路30(図4(b))において第1の電極群CH1に捕捉された細菌等が、第1の電極群CH1から解放される。解放された細菌等は、試料液の流れに応じて第2の電極群CH2側に移動する。この際、流路30の内部では、狭窄部30cにより流路幅が狭まるため、試料液の流速が、第1の電極群CH1近傍よりも第2の電極群CH2近傍において速くなることが想定される。
そこで、制御装置20は、試料液の送液を、第1の送液速度よりも小さい第2の送液速度に減速するように、ポンプ部10を制御する(S4)。第2の送液速度は、例えば第1の幅W1に対する第2の幅W2の比率W2/W1分(例えば1/10倍)、第1の送液速度よりも小さい値に設定される。これにより、第1の電極群CH1から解放された細菌等は、第1の電極群CH1に捕捉されたときと同等の流速において第2の電極群CH2上に流れ込むこととなる。
次に、制御装置20は、電源部11を制御して、例えば第1の電極群CH1に印加した交流電圧と同じ交流電圧を、第2の電極群CH2に印加する(S5)。これにより、第2の電極群CH2上に流れ込んだ細菌等に対して誘電泳動力が働き、第2の電極群CH2の上流側のスリットRs2から順に、検査対象の細菌等が捕捉される。
制御装置20は、第2の送液速度による送液(S4)及び第2の電極群CH2に対する交流電圧の印加(S5)を、所定期間(例えば1~10分)、継続する。なお、ステップS3~S5の処理の順番は特に限定されず、上記の説明とは異なる順番であってもよいし、一部又は全てが同時であってもよい。
次に、制御装置20は、撮像部12を制御して、第2の電極群CH2においてスリットRs2が並ぶ特定の領域を撮像する(S6)。当該領域は、例えば、第2の電極群CH2における最も上流のスリットを含む領域Rcである(図4(b)参照)。撮像部12は、当該領域の撮像画像を示すデータを生成し、生成したデータを情報処理装置21に送信する。なお、ステップS6の撮像部12の制御は、情報処理装置21から行ってもよい。
制御装置20は、上記の撮像画像が得られると(S6)、本フローチャートによる処理を終了する。
以上の処理によると、狭窄部30cによって第2の電極群CH2近傍の流路幅を第2の幅W2に狭めることで、試料液における検査対象の細菌等の量が少ない場合であっても、短尺なスリットRs2(長さ「W2」)を飽和させることができる(S4,5)。このような第2の電極群CH2の領域Rcの撮像画像に基づいて(S6)、飽和したスリットRs2を計数することにより、検査対象の細菌等の簡単な定量評価を精度良く行うことができる。
以上のステップS1,S2では、第1の電極群CH1における複数のスリットRs1にわたって、捕捉される細菌等がばらつくことを許容する流量(第1の送液速度)を設定して、細菌等の捕捉を行う。これにより、第2の電極群CH2におけるスリットRs2の計数前に、高流量で処理を行って試料液に含まれる細菌等を効率良く捕捉し、検査対象の細菌等を濃縮することができる。
また、ステップS3~S5では、第1の電極群CH1に捕捉された細菌等を解放して、第2の電極群CH2において再度、捕捉する。この際、第1の電極群CH1から解放された細菌等は、当初の試料液よりも濃縮された状態で、流路30の底面近傍を流れて第2の電極群CH2に到達する。このため、第2の電極群CH2においては、上流側のスリットRs2から順番に捕捉(飽和)させることを精度良く実現できる。
より具体的に、流路30においては、高さ(Z方向)を小さく設定していることから、試料液は層流となる。このため、Z方向において放物線上の速度勾配が生じ、流路30においてZ方向の中央の流速が最速となり、底面及び上面の近傍では壁面の効果で遅くなる。このため、流路30内で高さ方向に分散した細菌等を第1の電極群CH1で捕捉しておくことにより(S1,S2)、後段の第2の電極群CH2における捕捉の精度を良くすることができる。
また、上記のように第2の電極群CH2に到達する細菌等は底面近傍を流れることから、第1の電極群CH1による捕捉時より流速を大きくしても、充分に捕捉されることが考えられる。このことから、第2の送液速度は、検査効率と検査精度を考慮して適宜、設定されてもよい。
また、以上のような検査処理において、検査チップ3のテストポート33bを利用してもよい。検査チップ3では、菌が捕捉される際に、パターン電極43,44(41,42)間が菌により導通することとなり、このような変化はテストポート33bを介して計測することができる。具体的に、菌が捕捉される程、計測されるコンダクタンスは増加し、インピーダンスは低下する。この際、電圧値は低下することもある。以上のようなコンダクタンス変化と菌量との相関を検出する方法としては、誘電泳動インピーダンス計測法(DEPIM)という公知の方法を適用することができる(例えば特許文献2参照)。
上記のようなコンダクタンス検出を用いて、本実施形態に係る検査処理(図7)におけるステップS1,S2の継続期間を決定するようにしてもよい。検査チップ3においては、試料液として流入する菌の濃度は未知数である一方、菌を捕捉するとコンダクタンスが変化する。そこで、例えば第1の電極群CH1における菌の捕捉中(S1,S2)に、制御装置20(又はユーザ)はテスタ23により第1の電極群CH1におけるコンダクタンスをモニタして、検出されるコンダクタンスの変化が一定になったときに、菌の捕捉を停止して(S3)、菌数の計測動作に入る(S4,S5)。これにより、試料液中の菌数が極端に多い場合や少ない等の事情からステップS1,S2の適切な継続期間を予測しづらい場合であっても、テストポート33bで検出されるコンダクタンスを目安に利用することができる。
3.まとめ
以上のように、本実施形態に係る検査チップ3は、試料液中に含まれる細菌等の誘電体粒子の検査を行うための検査チップ3である。検査チップ3は、流路30と、第1の電極群CH1と、第2の電極群CH2とを備える。流路30には、試料液が流れる。第1の電極群CH1は、流路30において互いに間隔をあけて配置された複数のライン電極43a,44aを含む。第2の電極群CH2は、流路30の長手方向において第1の電極群CH1に並び、互いに間隔をあけて配置された複数のライン電極41a,42aを含む。流路30は、第1の電極群CH1が配置された範囲における流路幅(W1)よりも第2の電極群CH2が配置された範囲における流路幅(W2)を狭める狭窄部30cを備える。
以上の検査チップ3によると、流路幅が第1の幅W1の第1の電極群CH1と、流路幅が第2の幅W2に狭まった第2の電極群CH2とにおける誘電泳動によって、細菌等を効率良く捕捉したり、精度良く定量評価したりすることができる。
また、本実施形態に係る誘電泳動装置1(検査装置)は、検査チップ3と、電源部11と、ポンプ部10とを備える。電源部11は、流路30を流れる試料液中の誘電体粒子が誘電泳動を起こすように、所定周波数の交流電圧を各電極群CH1,CH2に印加する。ポンプ部10は、交流電圧の印加中に試料液を流路30に送液し、交流電圧が印加された電極群に応じて送液の速度を変化させる。
以上の誘電泳動装置1によると、検査チップ3において、流路幅が異なる各電極群CH1,CH2に適した送液速度において、細菌等の捕捉を行うことができる。
また、本実施形態に係る検査チップ3は、流路30と、第1及び第2の電極群CH1,CH2と、電極パッド33aと、テストポート33bとを備える。各電極群CH1,CH2は、流路30の長手方向に並んだ複数のライン電極41a~44aを含む。電極パッド33aは、第1の電極群CH1(及び第2の電極群CH2)に交流電圧が印加されるように、第1の電極群CH1(及び第2の電極群CH2)において交互に配置された2組のライン電極43a,44a(41a,42a)、即ち2つのパターン電極43,44(41,42)にそれぞれ配線される。テストポート33bは、各電極群の2組の電極に含まれる各々の電極に応じたコンダクタンスが検出されるように、各組の電極に配線される。
以上の検査チップ3によると、テストポート33bを介して、ライン電極41a~44aの断線等をコンダクタンスの変化により検出することができる。
また、本実施形態に係る検査システムは、試料液中に含まれる誘電体粒子の検査を行う。検査システムは、検査チップ3と、ポンプ部10と、電源部11と、検出部の一例であるテスタ23とを備える。検査チップ3は、流路30と、流路30の長手方向に並んだ複数の電極であって交互に配置された2組の電極を含む電極群とを備える。テスタ23は、電極群の2組の電極に含まれる各々の電極に応じたコンダクタンスを検出する。
以上の検査チップ3によると、テスタ23により、ライン電極41a~44aの断線等をコンダクタンスの変化により検出することができる。
(他の実施形態)
上記の実施形態1では、第1の電極群CH1が、スリットRs2の計数前に細菌等を捕捉(濃縮)するために用いられたが、これに限らず、第1の電極群CH1はスリットRs1の計数(菌量の計測)用に用いられてもよい。第1の電極群CH1と第1の電極群CH2とに、異なる流路幅W1,W2を設定することで、各々のスリットRs1,Rs2で定量評価される菌量のオーダを変化させることができる。
例えば、第1の電極群CH1のスリットRs1の本数が10本であり、1本のスリットRs1が飽和する菌量が105個オーダの場合、第1の電極群CH1では最大で106個オーダの菌量を計測可能になる。この場合において、W2/W1=1/10に設定すると、第2の電極群CH2におけるスリットRs2を用いて104個のオーダの菌量が計測できる。このように、第1及び第2の電極群CH1,CH2により、104~106のような二桁の菌量の定量評価を行うことができる。例えばこのような場合、第1の電極群CH1は、第2の電極群CH2よりも下流側(出口30b側)に設けられてもよい。これにより、上流側の電極群において低いオーダの菌量を計測し、それを超えると下流側でも捕捉するようにすることができる。
また、上記の場合において、第2の電極群CH2のスリットRs2の本数は、例えば10本に設定すると、全てのスリットRs2が飽和したときに第1の電極群CH1の1本のスリットRs1と同等の菌量を計測することができる。第2の電極群CH2のスリットRs2の本数は、第1の電極群CH1のスリットRs1の本数と同じに設定されてもよいし、流路幅の比W1,W2の比に合わせて設定されてもよい。各スリットRs1,Rs2の本数は、10本に限らず、適宜設定することができる。
また、上記の各実施形態では、第1及び第2の電極群CH1,CH2を検査チップ3に設けたが、検査チップには、1つ又は3つ以上の電極群が設けられてもよい。それぞれの電極群の寸法や流路幅は、各電極群の用途に応じて適宜、設定することができる。
また、上記の各実施形態では、検査チップ3におけるスリットRs1,Rs2の計数によって菌量の計測を行ったが、これに限らず、例えばテストポート33bを用いてDEPIMによって菌量の計測を行ってもよい。検査チップ3によると、図7の検査処理と同様の処理によって、第1の電極群CH1で菌等を効率的に捕捉し(S1,S2)、捕捉した菌等を後段に移動させることにより(S3~S5)、菌等は狭窄部30cにおける第2の電極群CH2に集中することとなる。これにより、効率的にコンダクタンス変化を計測でき、高感度に菌等の検出を行うことが可能となる。
また、上記の各実施形態では、検査チップ3におけるテストポート33bを用いてコンダクタンス計測やDEPIMを行ったが、これに限らず、例えば電極パッド33aにテスタ23等を接続して、上記と同様のコンダクタンス計測等を行ってもよい。この場合、検査チップ3においてテストポート33bは省略されてもよい。
また、上記の各実施形態において、図7のフローチャートにおける各ステップの処理は、制御装置20によって実行されたが、本システムのユーザによって行われてもよく、ユーザが制御装置20を操作することにより行われてもよい。
また、上記の各実施形態において、図7のステップS1において供給する交流電圧の第1の周波数として、1kHzを例示した。生菌のみを検査対象とする場合、例えば、ステップS1において供給する交流電圧の第1の周波数を、3MHzなどの生菌のみに誘電泳動力が作用する値に設定してもよい。これにより、図7のステップS6において、生菌のみが第2の電極群CH2において順番に充填されたスリットの撮像画像が得られる。
また、図7の検査処理では、1種類の周波数(第1の周波数)の交流電圧を用いたが、複数の周波数の交流電圧を用いてもよい。例えば、第1及び第2の電極群CH1,CH2間で、交流電圧の周波数を切り替えることで、生菌と死菌を分離して捕集してもよい。
また、上記の各実施形態において、検査チップ3のライン電極41a~44a、及び各スリットRs1,Rs2が、液流方向と直交する方向(Y方向)に延在する例を図示した。検査チップにおけるスリットは液流方向(流路30の長手方向)と直交しなくてもよく、例えば液流方向に対して所定角度(例えば45度以上)において交差してもよい。
また、上記の各実施形態において、スリットRs1,Rs2が、所定のスリット幅Wsで直線的に形成される例を図示したが、スリットの形状は、例えば湾曲したり、屈曲したりしていてもよいし、スリット毎の幅が異なっていてもよい。また、複数のスリットは、互いに平行でなくてもよく、例えば所定角度の範囲内において横並びに配置されてもよい。
また、上記の各実施形態では、1つの流路30を備えた検査チップ3について説明した。検査チップはこれに限らず、例えば、複数の流路や枝分かれした流路を設けてもよいし、各流路に対して1つ又は複数の電極群を設けてもよい。また、上記の各実施形態の流路30は直線状であったが、これに限らず、流路は曲線状に設けられてもよく、例えば螺旋状に設けられてもよい。
また、上記の各実施形態において、撮像部12を備える誘電泳動装置1(検査装置)について説明した。本発明に係る検査装置は、撮像部12を備えなくてもよく、例えば撮像部12に代えて(又はこれに加えて)、ユーザが直接、領域Rcを観察するための接眼レンズ等を有する顕微鏡を備えてもよい。
また、上記の各実施形態における検査システムによる画像解析は、例えば面積解析法によって行われてもよい。具体的に、画像解析部(情報処理装置21)は、観察対象の領域Rcにおいて飽和したスリットRs2の面積を計算し、計算した面積を、流路30内のスリットRs2が並ぶ領域全体中の領域Rcの有効面積の割合で除算する。これにより、飽和したスリットの計数、即ち菌量の計測を高精度に行うことができる。
また、上記の各実施形態において、情報処理装置21が表示部及び画像解析部を構成する検査システムの一例を説明したが、検査システムにおける表示部及び画像解析部は、別体で構成されてもよい。また、表示部又は画像解析部は、検査装置(誘電泳動装置1)と一体的に構成されてもよい。また、スリットの計数がユーザの目視によって行われる場合、検査システムにおいて画像解析部は省略されてもよい。
また、上記の各実施形態において、本システムの検査対象として細菌や細胞を例示した。本システムの検査対象は、細菌や細胞に限らず、誘電体粒子であればよく、例えば微生物や、真菌、芽胞、ウイルスであってもよい。