(第1実施形態)
以下、本発明に係る検出回路を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る検出回路は、回転電機の制御システムを構成する。
図1に示すように、制御システムは、直流電源としてのバッテリ10、電力変換器としてのインバータ20及び回転電機30を備えている。回転電機30は、インバータ20を介してバッテリ10に接続されている。なおバッテリ10及びインバータ20の間には、平滑コンデンサ11が設けられている。また回転電機30としては、例えば永久磁石界磁型の同期機が用いられればよい。
インバータ20は、3相分の上,下アームスイッチSWを備えている。各相の上,下アームスイッチSWの接続点には、回転電機30の巻線31の第1端が接続されている。各相の巻線31の第2端は、中性点で接続されている。本実施形態では、インバータ20のスイッチSWとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられ、より具体的にはNチャネルMOSFETが用いられている。このため、本実施形態において、スイッチSWのゲートが「開閉制御端子」に相当し、スイッチSWのドレインが「第1端子」に相当し、スイッチSWのソースが「第2端子」に相当する。スイッチSWには、ボディダイオードFDが逆並列に接続されている。なおスイッチSWに、外付けのフリーホイールダイオードFDが逆並列に接続されていてもよい。
インバータ20は、駆動回路Drを備えている。駆動回路Drは、各スイッチSWに対応して個別に設けられている。駆動回路Drによって各スイッチSWが駆動される。これにより、インバータ20の各相において、上アームスイッチSWと下アームスイッチSWとが所定のスイッチング周期毎に交互にオン状態とされる。
続いて図2を用いて、スイッチSWと駆動回路Drについて説明する。
スイッチSWは、メインスイッチング素子SW1と、センススイッチング素子SW2とを備えている。メインスイッチング素子SW1及びセンススイッチング素子SW2のそれぞれは、シリコンカーバイト(SiC)にて構成されたNチャネルMOSFETであり、ドレイン、ソース及びゲートの各端子を有する。
メインスイッチング素子SW1のドレインは、センススイッチング素子SW2のドレインに接続されている。また、メインスイッチング素子SW1のソースは、接地電圧に接続(以下、接地という)されている。なお、本実施形態において、接地電圧が「基準電圧」に相当する。
駆動回路Drは、回路部Krと駆動制御部70とを備えている。回路部Krは、第1電源40と、切替部42と、第2電源46と、電流源50と、電圧出力部60と、を備えている。なお、本実施形態において、駆動回路Drが「検出回路」に相当する。
第1電源40は、所定の出力電圧Vom(例えば15V)を有する電圧源である。切替部42は、2つの切替端子42a、42bと、これらの切替端子42a、42bの一方に選択的に接続される出力端子42cと、を有する。切替端子42aは第1電源40に接続されている。切替端子42bは接地されている。そのため、出力端子42cには、出力電圧Vomと接地電圧とが切り替えて出力されている。
出力端子42cは、ゲート抵抗体44を介してメインスイッチング素子SW1のゲートに接続されているとともに、センススイッチング素子SW2のゲートに接続されている。つまり、出力端子42cは、出力端子42cは、メインスイッチング素子SW1のゲートとセンススイッチング素子SW2のゲートとに共通接続されている。なお、本実施形態において、出力端子42cが「第1出力端子」に相当する。
第2電源46は、所定の出力電圧Vn(Vn<0)を有する電圧源である。電流源50は、センススイッチング素子SW2のソースと第2電源46との間に接続されており、センススイッチング素子SW2のソースから第2電源46に向かう向きに、所定の閾値電流(例えば1mA)を流通させる。そのため、センススイッチング素子SW2では、ゲートに接地電圧が印加される期間においても、ドレインとソースとの間に閾値電流が流通されている。なお、本実施形態において、出力電圧Vnが「低側電圧」に相当する。
具体的には、電流源50は、補償用スイッチング素子52と、オペアンプ54と、補償用抵抗体56と、を備えている。補償用スイッチング素子52の入力端子は、センススイッチング素子SW2のソースに接続されている。補償用スイッチング素子52の出力端子は、補償用抵抗体56を介して第2電源46に接続されている。オペアンプ54の非反転入力端子54aには、所定の目標電圧Vrefが入力されている。オペアンプ54の反転入力端子54bは、補償用スイッチング素子52の出力端子に接続されている。オペアンプ54の出力端子54cは、補償用スイッチング素子52の出力端子の開閉制御端子に接続されている。
電流源50では、目標電圧Vrefを基準として、補償用スイッチング素子52の一対の主端子間に流れる閾値電流が、センススイッチング素子SW2の温度によらず一定となるように、オペアンプ54が動作している。
電圧出力部60は、第3電源62と、オペアンプ64と、第1~第4調整用抵抗体66~69と、を備えている。第3電源62は、所定の出力電圧を有する電圧源である。オペアンプ64の非反転入力端子64aは、第1調整用抵抗体66を介して第3電源62に接続されている。また、オペアンプ64の非反転入力端子64aは、第2調整用抵抗体67を介してセンススイッチング素子SW2のゲートに接続されている。オペアンプ64の反転入力端子64bは、第3調整用抵抗体68を介してセンススイッチング素子SW2のソースに接続されている。オペアンプ64の反転入力端子64bと出力端子64cとの間には、第4調整用抵抗体69が接続されている。
電圧出力部60では、オペアンプ64の出力端子64cに、センススイッチング素子SW2のゲートとソースとの間の電圧差に相当する電圧が生成されるように、オペアンプ64が動作している。なお、本実施形態において、出力端子64cが「第2出力端子」に相当する。
駆動制御部70は、外部からの駆動信号に基づいてスイッチング素子SW1、SW2のオン状態とオフ状態とを切り替える切替処理を実行する集積回路である。駆動制御部70の第1端子T1は、切替部42に接続されており、出力端子42cが接続される切替端子42a、42bを切り替えるための信号を出力する。駆動制御部70の第2端子T2は、電圧出力部60の出力端子64cに接続されており、出力端子64cの電圧が入力されている。
ここで、各スイッチング素子SW1、SW2のオン状態とオフ状態とについて説明する。メインスイッチング素子SW1は、ソースに対するゲートの電圧差(以下、第1ゲート電圧Vg1という)が閾値電圧Vth以上になることにより、ドレインとソースとの間の電流の流通を許容するオン状態とされる。また、第1ゲート電圧Vg1が閾値電圧Vth未満になることにより、上記電流の流通を阻止するオフ状態とされる。なお、本実施形態において、第1ゲート電圧Vg1が「第1電圧差」に相当する。
センススイッチング素子SW2は、ソースに対するゲートの電圧差(以下、第2ゲート電圧Vg2という)が、閾値電圧Vth以上になることにより、ドレインとソースとの間の電流の流通を許容するオン状態とされる。また、第2ゲート電圧Vg2が閾値電圧Vth未満になることにより、上記電流の流通を阻止するオフ状態とされる。なお、本実施形態において、第2ゲート電圧Vg2が「第2電圧差」に相当する。
ここで、閾値電圧Vthとは、メインスイッチング素子SW1がオフ状態からオン状態に切り替わる電圧のことである。詳細には、メインスイッチング素子SW1のドレインとソースとの間に、閾値電流が流通される場合の第1ゲート電圧Vg1のことである。このため、閾値電流は、閾値電圧Vthを測定する場合において、メインスイッチング素子SW1が、オフ状態からオン状態に切り替わったことを判定するために定められた値である。センススイッチング素子SW2についても同様である。
図3を用いて切替処理について説明する。ここで、図3(a)は、駆動信号の推移を示す。図3(b)は、第1ゲート電圧Vg1の推移を示し、図3(c)は、第2ゲート電圧Vg2の推移を示す。
時刻t1において、駆動信号がオフ指令からオン指令に切り替わる。以下、駆動信号がオン指令である期間を、オン期間Tonという。このため駆動制御部70は、切替部42の出力端子42cを切替端子42aに接続させ、出力端子42cに出力される電圧を出力電圧Vomに切り替える。これにより、各スイッチング素子SW1、SW2のゲートに出力電圧Vomが印加され、メインスイッチング素子SW1の第1ゲート電圧Vg1が、閾値電圧Vth以上のVomとなる。また、センススイッチング素子SW2の第2ゲート電圧Vg2が、閾値電圧Vth以上のVsm(Vsm>Vom)となる。その結果、各スイッチング素子SW1、SW2がオン状態に切り替えられ、各スイッチング素子SW1、SW2のドレインからソースへの電流の流通が許容される。なお、本実施形態において、出力電圧Vomが「オン電圧」に相当する。
その後時刻t2において、駆動信号がオン指令からオフ指令に切り替わる。以下、駆動信号がオフ指令である期間を、オフ期間Toffという。このため駆動制御部70は、切替部42の出力端子42cを切替端子42bに接続させ、出力端子42cに出力される電圧を接地電圧に切り替える。これにより、各スイッチング素子SW1、SW2のゲートに接地電圧が印加され、第1ゲート電圧Vg1が閾値電圧Vth未満のゼロとなる。その結果、メインスイッチング素子SW1がオン状態からオフ状態に切り替えられ、メインスイッチング素子SW1のドレインからソースへの電流の流通が阻止される。なお、本実施形態において、接地電位が「オフ電圧」に相当し、オフ期間Toffが「オフ電圧の印加期間」に相当する。
一方、センススイッチング素子SW2では、オフ期間Toffにおいても、電流源50によりセンススイッチング素子SW2のドレインとソースとの間に閾値電流が流通される。その結果、第2ゲート電圧Vg2は閾値電圧Vthとなり、電圧出力部60の出力端子64cに閾値電圧Vthが出力される。なお、電流源50による閾値電流は、オン期間Tonにメインスイッチング素子SW1のドレインからソースへ流れる電流よりも小さい。
駆動制御部70は、電圧出力部60における出力端子64cの出力電圧に基づいて、センススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthを検出する。メインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthと、センススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthとは等しい。そのため、駆動制御部70にメインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthが検出される。なお、本実施形態において、駆動制御部70が「閾値電圧検出部」に相当する。
ここで、メインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthと、センススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthとが等しい理由について、以下に説明する。
メインスイッチング素子SW1とセンススイッチング素子SW2とは、同一チップ上に形成されたスイッチング素子から構成される。具体的には、同一チップ上に形成されたM個(例えば10000個)のスイッチング素子のうち、1個をセンススイッチング素子SW2とし、残りのスイッチング素子をメインスイッチング素子SW1としている。また、M個のスイッチング素子のドレインは、全て互いに接続されている。そのため、センススイッチング素子SW2は、メインスイッチング素子SW1に流れる電流と相関を有する微小電流が流れる素子である、ということができる。また、メインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthと、センススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthとは、スイッチング素子SW1、SW2の製造時において等しくなっている。
また、メインスイッチング素子SW1とセンススイッチング素子SW2とは、切替部42により同時にオン状態に切り替えられている。そのため、メインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthと、センススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthとは、経年劣化による変化が等しい。したがって、スイッチング素子SW1、SW2の駆動中、具体的には切替処理中において、メインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthと、センススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthとは、等しくなっている。この結果、センススイッチング素子SW2を用いて、メインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthを検出することができる。
なお、本実施形態において、メインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthと、センススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthとが「等しい」とは、メインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthと、センススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthとが完全に一致していることのみを意味するものではなく、製造誤差あるいは素子特性ばらつき等によってメインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthと、センススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthとが僅かに異なっている場合も含まれる意味である。
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
駆動回路Drは、電流源50と電圧出力部60とを備えている。そのため、オフ期間Toffに、センススイッチング素子SW2のドレインとソースとの間に閾値電流を流通させることができる。これにより、オフ期間Toffに、電圧出力部60の出力端子64cに閾値電圧Vthを出力させることができる。したがって、メインスイッチング素子SW1の駆動中に閾値電圧Vthを検出することができる。
閾値電圧Vthの検出は、メインスイッチング素子SW1がオフ状態とされているオフ期間Toffに行われる。そのため、閾値電圧Vthを検出するためにメインスイッチング素子SW1に電流は流れない。一方、センススイッチング素子SW2に電流は流れるが、センススイッチング素子SW2に流れる電流は、メインスイッチング素子SW1に流れる電流よりも小さい。そのため、メインスイッチング素子SW1を用いて閾値電圧Vthを検出する構成に比べて、閾値電圧Vthを検出するために発生する損失を低減することができる。
本実施形態では、閾値電流を流通させるための電流源50が、センススイッチング素子SW2のソースと第2電源46との間に接続されている。そのため、センススイッチング素子SW2のソースの電圧と出力電圧Vnとの電圧差を利用して、容易に閾値電流を流通させることができる。
本実施形態では、センススイッチング素子SW2のドレインとソースとの間に流通させる閾値電流が、センススイッチング素子SW2の温度によらず一定となるように制御されている。そのため、閾値電圧Vthを正確に取得することができる。
本実施形態では、閾値電流が、オン期間Tonにメインスイッチング素子SW1のドレインからソースへ流れる電流よりも小さくなるように制御されている。そのため、オフ期間Toffにおいて閾値電流を流すために発生する損失が増大するのを抑制することができる。また、オフ期間Toffにおいてセンススイッチング素子SW2のみが経年劣化し、メインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthと、センススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthとの間に、経年劣化による変化の差が生じるのを抑制することができる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、図4に示すように、切替部42が3つの切替端子42a、42b、42dを備えている点、及び、回路部Krに電圧保持部80を含む点で異なる。また、本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、第2電源46と駆動制御部70との構成が異なる。なお、図4は、本実施形態に係る駆動回路Drを示す図である。図4において、先の図2に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
切替部42の切替端子42dは、第2電源46に接続されている。そのため、出力端子42cには、出力電圧Vomと接地電圧と出力電圧Vnとが切り替えて出力されている。
電圧保持部80は、電圧出力部60の出力端子64cに接続されており、駆動制御部70から入力されるサンプリング信号Spに基づいて、出力端子64cから出力される電圧を保持する。ここで、サンプリング信号Spとは、電圧保持部80が出力端子64cから出力される電圧を保持するタイミングを決定する信号であり、オンとオフとの間で切り替わる。
具体的には、電圧保持部80は、オペアンプ82と、コンデンサ84と、サンプリングスイッチ86と、を備えている。オペアンプ82の非反転入力端子82aは、コンデンサ84の高電圧側端子に接続されている。コンデンサ84の低電圧側端子は接地されている。また、オペアンプ82の非反転入力端子82aは、サンプリングスイッチ86を介して電圧出力部60の出力端子64cに接続されている。オペアンプ82の反転入力端子82bは、オペアンプ82の出力端子82cに接続されている。
サンプリングスイッチ86にはサンプリング信号Spが入力されている。サンプリングスイッチ86は、サンプリング信号Spがオフの場合に、オペアンプ82の非反転入力端子82aと電圧出力部60の出力端子64cとの間を遮断する。一方、サンプリングスイッチ86は、サンプリング信号Spがオンの場合に、オペアンプ82の非反転入力端子82aと電圧出力部60の出力端子64cとの間を接続させる。これにより、オペアンプ82の非反転入力端子82aに、電圧出力部60の出力端子64cの電圧が入力される。
電圧保持部80では、サンプリング信号Spがオンの場合にオペアンプ82の非反転入力端子82aに入力された電圧が、オペアンプ82の出力端子82cに出力されるように、オペアンプ82が動作している。また、その状態が、コンデンサ84により、次にサンプリング信号Spがオンするまで保持される。
第2電源46は、電圧保持部80の出力端子82cに接続されており、出力端子82cから出力される電圧に基づいて出力電圧Vnを生成する。なお、本実施形態において、第2電源46が「電圧生成部」に相当する。
具体的には、図5に示すように、第2電源46は、第4電源92と、第1~第3分圧用抵抗体93~95と、第1、第2速度切替スイッチ96、98と、オペアンプ100と、第5電源102と、第5~第8調整用抵抗体104~107と、を備えている。
第4電源92は、所定の出力電圧を有する電圧源である。第1~第3分圧用抵抗体93~95は、第4電源92と接地電圧との間に、第1分圧用抵抗体93、第2分圧用抵抗体94及び第3分圧用抵抗体95の順に直列に接続されている。そのため、第1分圧用抵抗体93と第2分圧用抵抗体94との間の第1接点X1には、第4電源92の出力電圧を第1分圧用抵抗体93の抵抗値と、第2分圧用抵抗体94と第3分圧用抵抗体95との合計抵抗値と、の抵抗比により分圧した第1切替基準電圧Vnfが生成されている。また、第2分圧用抵抗体94と第3分圧用抵抗体95との間の第2接点X2には、第4電源92の出力電圧を第1分圧用抵抗体93と第2分圧用抵抗体94との合計抵抗値と、第3分圧用抵抗体95の抵抗値との抵抗比により分圧した第2切替基準電圧Vnsが生成されている。第1切替基準電圧Vnfは第2切替基準電圧Vnsよりも大きい。
第5電源102は、所定の出力電圧を有する電圧源である。オペアンプ100の非反転入力端子100aは、第5調整用抵抗体104を介して第5電源102に接続されている。また、オペアンプ100の非反転入力端子100aは、第6調整用抵抗体105の一方の端子に接続されている。第6調整用抵抗体105の他方の端子は、第1速度切替スイッチ96を介して第1接点X1に接続されているとともに、第2速度切替スイッチ98を介して第2接点X2に接続されている。
第1、第2速度切替スイッチ96、98には、駆動制御部70から切替速度信号Scが入力されている。ここで、切替速度信号Scとは、切替部42の出力端子42cに出力される電圧を切り替える切替速度を設定する信号であり、高速切替を示すオンと、低速切替を示すオフとの間で切り替わる。
切替速度信号Scがオフである場合、第1速度切替スイッチ96は、第6調整用抵抗体105の他方の端子と第1接点X1との間を遮断し、第2速度切替スイッチ98は、第6調整用抵抗体105の他方の端子と第2接点X2との間を接続する。これにより、オペアンプ100の非反転入力端子100aには、第6調整用抵抗体105を介して第2接点X2の第2切替基準電圧Vnsが入力される。
一方、切替速度信号Scがオンである場合、第1速度切替スイッチ96は、第6調整用抵抗体105の他方の端子と第1接点X1との間を接続し、第2速度切替スイッチ98は、第6調整用抵抗体105の他方の端子と第2接点X2との間を遮断する。これにより、オペアンプ100の非反転入力端子100aには、第6調整用抵抗体105を介して第1接点X1の第1切替基準電圧Vnfが印加される。なお、本実施形態において、切替速度信号Scが「切替速度に関する情報」に相当する。
オペアンプ100の反転入力端子100bは、第7調整用抵抗体106を介して電圧保持部80の出力端子82cに接続されている。オペアンプ100の反転入力端子100bと出力端子100cとの間には、第8調整用抵抗体107が接続されている。
第2電源46では、オペアンプ100が、オペアンプ100の非反転入力端子100aに入力された切替基準電圧Vnf、Vnsと、オペアンプ100の反転入力端子100bに入力される電圧保持部80の出力端子82cの電圧と、の電圧差に基づいて出力電圧Vnを生成している。具体的には、図6に示すように、出力電圧Vnの絶対値が、切替基準電圧Vnf、Vnsから電圧保持部80の出力端子82cの電圧を差し引いた値となるように、第2電源46が出力電圧Vnを生成している。なお、図6では、電圧保持部80の出力端子82cの電圧を閾値電圧Vthとして記載している。
図6において、グラフF1(実線)は、切替速度信号Scがオン、つまり高速切替である場合の閾値電圧Vthと出力電圧Vnの絶対値との関係を示すグラフである。また、グラフF2(破線)は、切替速度信号Scがオフ、つまり低速切替である場合の閾値電圧Vthと出力電圧Vnの絶対値との関係を示すグラフである。
図6に示すように、第2電源46は、出力電圧Vnの絶対値は、切替速度に対応するスイッチSWのスイッチング速度が低速切替よりも大きい高速切替である場合に、低速切替における電圧よりも大きい値に設定されている。なお、本実施形態において、低速切替におけるスイッチング速度が「第1速度」に相当し、高速切替におけるスイッチング速度が「第2速度」に相当する。また、グラフF2の出力電圧Vnの絶対値が示す出力電圧Vnが「第1低側電圧」に相当し、グラフF1の出力電圧Vnの絶対値が示す出力電圧Vnが「第2低側電圧」に相当する。
駆動制御部70の第2端子T2は、電圧保持部80の出力端子82cに接続されており、出力端子82cの電圧が入力されている。また、駆動制御部70は、第3端子T3と第4端子T4とを備えている。駆動制御部70の第3端子T3は、電圧保持部80のサンプリングスイッチ86に接続されており、サンプリング信号Spを出力する。駆動制御部70の第4端子T4は、切替部42と、第2電源46の第1、第2速度切替スイッチ96、98に接続されており、切替速度信号Scを出力する。なお、本実施形態の切替部42は、切替速度信号Scにより切替速度を変更する機能を有する。
図7を用いて本実施形態の切替処理について説明する。ここで、図7(a)は、駆動信号の推移を示す。図7(b)は、第1ゲート電圧Vg1の推移を示し、図7(c)は、第2ゲート電圧Vg2の推移を示す。図7(d)は、サンプリング信号Spの推移を示す。図7(e)は、閾値電圧Vthの推移を拡大して示し、図7(f)は、出力電圧Vnの推移を拡大して示す。
図7(f)において、グラフF1(実線)は、切替速度信号Scがオン、つまり高速切替である場合の出力電圧Vnの移行を示す。また、グラフF2(破線)は、切替速度信号Scがオフ、つまり低速切替である場合の出力電圧Vnの移行を示す。
時刻t1において、駆動信号がオフ指令からオン指令に切り替わる。なお、オン期間Tonにおける切替処理は、第1実施形態のオン期間Tonにおける切替処理と同一であるため、説明を省略する。
その後時刻t2において、駆動信号がオン指令からオフ指令に切り替わる。本実施形態の切替処理では、駆動制御部70は、駆動信号がオフ指令に切り替わってから所定期間Tnに亘って、切替部42の出力端子42cを切替端子42dに接続させ、出力端子42cに出力される電圧を出力電圧Vnに切り替える。これにより、メインスイッチング素子SW1に生じるセルフターンオン現象の発生が抑制される。
ここで、セルフターンオン現象について説明する。図4に示すように、上,下アームスイッチSWのメインスイッチング素子SW1は、ドレインとゲートとの間に帰還容量21を有しており、ゲートとソースとの間に帰還容量22を有している。そのため、例えば下アームスイッチSWを用いて説明すると、下アームスイッチSWがオフ状態とされている場合において、上アームスイッチSWがオン状態に切り替えられると、下アームスイッチSWのメインスイッチング素子SW1のゲートに帰還容量21を介して電荷が供給され得る。この場合、第1ゲート電圧Vg1が閾値電圧Vth以上になり、下アームスイッチSWのメインスイッチング素子SW1をオフ状態に維持したいにもかかわらず、下アームスイッチSWのメインスイッチング素子SW1が誤ってオン状態に切り替えられしまう現象が生じる。この現象をセルフターンオン現象という。なお、セルフターンオン現象は、上アームスイッチSWでも発生する。
本実施形態の切替処理では、例えば上アームスイッチSWがオン状態に切り替えられるタイミングを含む所定期間Tnに亘って、出力端子42cに出力される電圧を出力電圧Vnに切り替える。これにより、メインスイッチング素子SW1の第1ゲート電圧Vg1が閾値電圧Vth以上となることが抑制され、セルフターンオン現象の発生が抑制される。
所定期間Tn経過後の時刻t3において、駆動制御部70は、切替部42の出力端子42cを切替端子42bに接続させ、出力端子42cに出力される電圧を接地電圧に切り替える。以下、オフ期間Toffのうち、出力端子42cに接地電圧が出力されている期間を接地期間Tgという。
接地期間Tg中の時刻t4において、駆動制御部70はサンプリング信号Spをオンに切り替える。これにより、電圧保持部80は、電圧出力部60の出力端子64cから出力される閾値電圧Vth(b)を取得し、出力端子82cに出力する閾値電圧Vthを、閾値電圧Vth(a)から閾値電圧Vth(b)に更新する。
また、第2電源46は、閾値電圧Vthの更新に伴って、出力電圧Vnを、閾値電圧Vth(a)に基づく出力電圧Vn(a)から、閾値電圧Vth(b)に基づく出力電圧Vn(b)に更新する(図6参照)。なお、出力電圧Vnの更新は、高速切替である場合でも、低速切替である場合でも同様に行われる。
以上説明した本実施形態によれば、切替部42は出力端子42cに接地電圧よりも低い出力電圧Vnを出力する。そのため、メインスイッチング素子SW1に生じるセルフターンオン現象の発生を好適に抑制することができる。
特に本実施形態では、セルフターンオン現象の発生を抑制するための出力電圧Vnと、電流源50が接続される第2電源46の出力電圧Vnとが共通化されている。そのため、第2電源46を用いてセルフターンオン現象の発生を抑制することができ、これらの電圧が異なる場合に比べて、駆動回路Drの構成を簡略化することができる。
駆動回路Drは、電圧保持部80を備えている。そのため、オフ期間Toffにセンススイッチング素子SW2のゲートとソースとの間に発生した閾値電圧Vthを、オン期間Tonまで保持することができ、オン期間Tonにおいて閾値電圧Vthを利用することができる。
駆動回路Drは、第2電源46を備えている。そのため、取得された閾値電圧Vthを利用して、出力電圧Vnをセルフターンオン現象の発生を抑制するのに好適な電圧とすることができる。これにより、例えば、出力電圧Vnが、セルフターンオン現象の発生を抑制するのに必要な電圧よりも過小な電圧に設定されることが抑制され、出力電圧Vnを生成するために発生する損失が増大するのを抑制することができる。
また、第2電源46は、出力電圧Vnを生成する際に、切替部42の切替速度に基づいて出力電圧Vnを生成する。具体的には、切替速度に対応するスイッチSWのスイッチング速度が大きい場合に、出力電圧Vnを小さい電圧、つまり出力電圧Vnの絶対値を大きく設定する。セルフターンオン現象における第1ゲート電圧Vg1の上昇量は、スイッチング速度が大きいほど大きい。そのため、スイッチング速度が大きい場合に出力電圧Vnを小さくすることで、セルフターンオン現象の発生を好適に抑制することができる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、図8に示すように、回路部Krに電圧保持部80と異常出力部110とを含む点で異なる。また、本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、駆動制御部70の構成が異なる。なお、図8は、本実施形態に係る駆動回路Drを示す図である。図8において、先の図2、図5に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
異常出力部110は、電圧保持部80の出力端子82cに接続されており、出力端子82cに出力される電圧が正常、又は異常であるかを示す異常信号Sfを出力する。ここで、「正常」とは、出力端子82cに出力される電圧が、第1異常電圧Vl以上であり、かつ、第1異常電圧Vlよりも大きい第2異常電圧Vh以下である状態をいう。また、「異常」とは、出力端子82cに出力される電圧が、第1異常電圧Vlよりも小さいか、又は、第2異常電圧Vhよりも大きい状態をいう。異常信号Sfは、出力端子82cに出力される電圧が正常である場合にオンとなり、異常である場合にオフとなる。なお、本実施形態において、異常信号Sfのオフが「異常を示す信号」に相当する。
具体的には、異常出力部110は、オペアンプ112、114と、論理積回路(AND)116と、を備えている。オペアンプ112の非反転入力端子112aには、第2異常電圧Vhが入力されている。オペアンプ112の反転入力端子112bとオペアンプ114の非反転入力端子114aとは、電圧保持部80の出力端子82cに接続されている。オペアンプ114の反転入力端子114bには、第1異常電圧Vlが入力されている。オペアンプ112の出力端子112cは、論理積回路116の一方の入力端子116aに接続されている。オペアンプ114の出力端子114cは、論理積回路116の一方の入力端子116aに接続されている。
異常出力部110では、出力端子82cに出力される電圧が正常である場合に、論理積回路116の両方の入力端子116a、116bがオンとなり、出力端子82cに出力される電圧が異常である場合に、論理積回路116の一方の入力端子116a、116bがオフとなるように、オペアンプ112、114が動作している。そのため、論理積回路116の出力端子116cからは、出力端子82cに出力される電圧が正常である場合にオンとなり、異常である場合にオフとなる異常信号Sfが出力される。
駆動制御部70の第2端子T2は、電圧保持部80の出力端子82cに接続されており、閾値電圧Vthが入力されている。また、駆動制御部70は、第3端子T3と第5端子T5とを備えている。駆動制御部70の第5端子T5は、異常出力部110の出力端子116cに接続されており、異常信号Sfが入力されている。
本実施形態の駆動制御部70は、異常信号Sfに基づいてスイッチング素子SW1、SW2の異常を検出する異常検出処理を実行する。図9を用いて本実施形態の異常検出処理について説明する。ここで、図9(a)は、閾値電圧Vthの推移を示し、図9(b)は、異常信号Sfの推移を示す。
時刻t11において、異常検出処理が開始される。異常検出処理は、所定周期で繰り返し実行される。
その後時刻t12において、閾値電圧Vthが第1異常電圧Vlよりも小さくなると、異常信号Sfがオンからオフに切り替わる。これにより、駆動制御部70は、スイッチング素子SW1、SW2の異常を検出し、インバータ20の外部に異常を知らせる通知処理を実行する。
以上説明した本実施形態によれば、駆動回路Drは、異常出力部110を備えている。そのため、閾値電圧Vthが第1異常電圧Vlよりも小さくなり、セルフターンオン現象の発生しやすい状態となることや、閾値電圧Vthが第2異常電圧Vhよりも大きくなり、スイッチング素子SW1、SW2のオン抵抗が大きい状態となることを好適に抑制することができる。
特に本実施形態では、第1異常電圧Vlと第2異常電圧Vhとを予め設定しておき、閾値電圧Vthをこれらの異常電圧Vl、Vhと比較することにより異常を検出する。そのため、偶発的に、又は、スイッチング素子SW1、SW2の寿命により閾値電圧Vthが異常となったことを、確実に検出することができる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、先の第3実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、図10に示すように、回路部Krにスイッチング素子SW1、SW2の温度Tmpを検出する感温センサ130を備える点で異なる。また、本実施形態では、先の第3実施形態と比較して、異常出力部110の構成が異なる。なお、図10は、本実施形態に係る駆動回路Drを示す図である。図10において、先の図2、図5、図8に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。なお、本実施形態において、温度Tmpが「温度検出値」に相当し、感温センサ130が「温度検出部」に相当する。
異常出力部110は、オペアンプ112、114と、論理積回路116と、に加えて、第6電源118と、オペアンプ120と、第9~第12調整用抵抗体122~125と、補正電圧生成部126と、を備えている。第6電源118は、所定の出力電圧を有する電圧源である。オペアンプ120の非反転入力端子120aは、第9調整用抵抗体122を介して第6電源118に接続されている。また、オペアンプ120の非反転入力端子120aは、第10調整用抵抗体123を介して電圧保持部80の出力端子82cに接続されている。オペアンプ120の反転入力端子120bは、第11調整用抵抗体124を介して補正電圧生成部126に接続されている。オペアンプ120の反転入力端子120bと出力端子120cとの間には、第12調整用抵抗体125が接続されている。なお、本実施形態では、オペアンプ112の反転入力端子112bとオペアンプ114の非反転入力端子114aとは、オペアンプ120の出力端子120cに接続されている。
補正電圧生成部126は、感温センサ130に接続されており、感温センサ130から出力されるスイッチング素子SW1、SW2の温度Tmpが入力されている。
また、補正電圧生成部126は、記憶部128を有する。記憶部128は、不揮発性メモリであり、スイッチング素子SW1、SW2の温度Tmpと、閾値電圧Vthを補正する補正電圧Vrevと、の関係を示す相関データF(図11参照)が記憶されている。補正電圧生成部126は、相関データFから、感温センサ130から出力される温度Tmpに対応する補正電圧Vrevを選出し、かつ、その補正電圧Vrevを生成して、オペアンプ120の反転入力端子120bに出力する。
ここで、閾値電圧Vthを補正する理由について説明する。図11に相関データFとして示すように、閾値電圧Vth2は、温度Tmpが高いほど小さくなる温度特性を有する。そのため、閾値電圧Vth2を、電圧値が一定である異常電圧Vl、Vhと比較すると、温度Tmpが高いほど第1異常電圧Vlよりも小さくなりやすく、また、温度Tmpが低いほど第2異常電圧Vhよりも大きくなりやすい。したがって、スイッチング素子SW1、SW2の温度Tmpにより異常の検出精度が変化してしまう現象が生じる。この異常の検出精度の変化を抑制するために、閾値電圧Vthを補正する必要がある。
本実施形態では、相関データFを用いて、スイッチング素子SW1、SW2の温度Tmpの変化による閾値電圧Vthの変化を相殺するように、閾値電圧Vthを補正する。例えば、相関データFは、スイッチング素子SW1、SW2の駆動開始時に取得された、各温度Tmpにおけるセンススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthを示すデータである。そのため、相関データFには、スイッチング素子SW1、SW2の温度Tmpの変化による閾値電圧Vthの変化に関する情報が含まれている。
図11に示すように、異常出力部110では、電圧保持部80から取得される閾値電圧Vth2と補正電圧Vrevとの電圧差ΔVを生成するように、オペアンプ120が動作している。そして、この電圧差ΔVが正常であるか、又は、異常であるかを検出するように、オペアンプ112、114が動作している。なお、本実施形態において、「正常」とは、電圧差ΔVが、第1異常電圧dVl以上であり、かつ、第1異常電圧dVlよりも大きい第2異常電圧Vh以下である状態をいう。また、「異常」とは、電圧差ΔVが、第1異常電圧dVlよりも小さいか、又は、第2異常電圧dVhよりも大きい状態をいう。
そのため、スイッチング素子SW1、SW2の温度Tmpの変化による閾値電圧Vthの変化を、補正電圧Vrevにより相殺した状態で、閾値電圧Vthが異常であるか否かが検出される。なお、本実施形態において、電圧差ΔVの生成が「補正」に相当し、電圧差ΔVが「補正保持電圧」に相当する。
以上説明した本実施形態によれば、異常出力部110は、スイッチング素子SW1、SW2の温度Tmpの変化による閾値電圧Vthの変化を相殺するように、閾値電圧Vthを補正する。そのため、閾値電圧Vthの異常の検出精度を向上させることができる。
特に本実施形態では、閾値電圧Vthの補正に用いる相関データFとして、スイッチング素子SW1、SW2の駆動開始時に取得された、各温度Tmpにおけるセンススイッチング素子SW2の閾値電圧Vthを示すデータを用いる。そのため、スイッチング素子SW1、SW2の温度Tmpの変化による影響を取り除くことができるとともに、駆動開始時からの閾値電圧Vthの変化、つまり経年劣化による変化を好適に検出することができる。
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、図12に示すように、スイッチSWがスイッチング素子SW3を備えている点、及び、回路部Krに第2切替部48と電圧保持部80とを含む点で異なる。また、本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、第2電源46と駆動制御部70との構成が異なる。なお、図12は、本実施形態に係る駆動回路Drを示す図である。図12において、先の第1実施形態及び第2実施形態において説明した内容と同一の内容については説明を省略する。なお、本実施形態において、第1実施形態の切替部42は、第1切替部42であり、第1実施形態のゲート抵抗体44は第1ゲート抵抗体44である。
スイッチSWのスイッチング素子SW3は、スイッチング素子SW1、SW2とは種類や特性が異なる素子である。本実施形態において、スイッチング素子SW3は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)であり、コレクタ、エミッタ及びゲートの各端子を有する。スイッチング素子SW3は、スイッチング素子SW1、SW2に並列接続されており、具体的には、スイッチング素子SW3のコレクタは、スイッチング素子SW1、SW2のドレインに接続されている。また、スイッチング素子SW3のエミッタは、接地されている。なお、図12では、スイッチング素子SW3、メインスイッチング素子SW1及びセンススイッチング素子SW2がスイッチSWに含まれているように記載されているが、実際には、スイッチング素子SW3は、メインスイッチング素子SW1及びセンススイッチング素子SW2が形成されているチップとは別のチップ上に形成されている。
第2切替部48は、2つの切替端子48a、48bと、これらの切替端子48a、48bの一方に選択的に接続される出力端子48cと、を有する。切替端子48aは第1電源40に接続されている。切替端子48bは接地されている。そのため、出力端子48cには、出力電圧Vomと接地電圧とが切り替えて出力されている。出力端子48cは、第2ゲート抵抗体49を介してスイッチング素子SW3のゲートに接続されている。
駆動制御部70の第6端子T6は、第2切替部48に接続されており、出力端子48cが接続される切替端子48a、48bを切り替えるための信号を出力する。駆動制御部70は、外部からの第1駆動信号に基づいてスイッチング素子SW1、SW2のオン状態とオフ状態とを切り替え、外部からの第2駆動信号に基づいてスイッチング素子SW3のオン状態とオフ状態とを切り替える。
ここで、スイッチング素子SW3のオン状態とオフ状態とについて説明する。メインスイッチング素子SW1は、エミッタに対するゲートの電圧差(以下、第3ゲート電圧Vg3という)が閾値電圧Vth3以上になることにより、コレクタとエミッタとの間の電流の流通を許容するオン状態とされる。また、第3ゲート電圧Vg3が閾値電圧Vth3未満になることにより、上記電流の流通を阻止するオフ状態とされる。
図13を用いて本実施形態の切替処理について説明する。ここで、図13(a)は、第1駆動信号の推移を示す。図13(b)は、第2駆動信号の推移を示す。図13(c)は、第1ゲート電圧Vg1の推移を示し、図13(d)は、第2ゲート電圧Vg2の推移を示し、図13(e)は、第3ゲート電圧Vg3の推移を示す。図13(f)は、サンプリング信号Spの推移を示す。図13(g)は、閾値電圧Vthの推移を拡大して示し、図13(h)は、出力電圧Vnの推移を拡大して示す。
時刻t1において、第1駆動信号がオフ指令からオン指令に切り替わり、その後時刻t11において、第2駆動信号がオフ指令からオン指令に切り替わる。なお、本実施形態では、第1駆動信号と第2駆動信号との少なくとも一方がオン指令である期間を、オン期間Tonという。なお、オン期間Tonにおける切替処理は、第1実施形態のオン期間Tonにおける切替処理と同一であるため、説明を省略する。
オン期間Ton中の時刻t2において、駆動信号がオン指令からオフ指令に切り替わり、その後時刻t12において、第2駆動信号がオン指令からオフ指令に切り替わる。なお、本実施形態では、第1駆動信号と第2駆動信号との両方がオフ指令である期間を、オフ期間Toffという。
オフ期間Toff中の時刻t4において、駆動制御部70はサンプリング信号Spをオンに切り替える。これにより、電圧保持部80は、電圧出力部60の出力端子64cから出力される閾値電圧Vth(b)を取得し、出力端子82cに出力する閾値電圧Vthを、閾値電圧Vth(a)から閾値電圧Vth(b)に更新する。つまり、本実施形態では、メインスイッチング素子SW1とスイッチング素子SW3とがオフ状態となるオフ期間Toffに、閾値電圧Vthを更新する。
また、第2電源46は、閾値電圧Vthの更新に伴って、出力電圧Vnを、閾値電圧Vth(a)に基づく出力電圧Vn(a)から、閾値電圧Vth(b)に基づく出力電圧Vn(b)に更新する。
以上説明した本実施形態によれば、スイッチング素子SW1、SW2とは異なる素子であるスイッチング素子SW3がオフ状態とされている間に、閾値電圧Vthを更新する。そのため、スイッチング素子SW3の影響を抑制して、閾値電圧Vthを適正に更新することができる。
特に本実施形態では、MOSFETとIGBTという異なる種類のスイッチング素子SW1~SW3が並列接続されている場合に、MOSFETのメインスイッチング素子SW1の閾値電圧Vthを検出する。これにより、IGBTの閾値電圧Vthに比べて変化しやすいMOSFETの閾値電圧Vthを好適に検出することができる。
なお、IGBTであるスイッチング素子SW3もメインスイッチング素子とセンススイッチング素子とで構成されている場合には、スイッチング素子SW3におけるメインスイッチング素子の駆動中に閾値電圧Vth3が更新されてもよい。この場合、閾値電圧Vth3は、スイッチング素子SW3とは異なる素子であるメインスイッチング素子SW1がオフ状態とされている間に更新されることが好ましい。
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、図14に示すように、回路部Krに第3切替部58と電圧保持部80とを含む点で異なる。また、本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、第2電源46と駆動制御部70との構成が異なる。なお、図14は、本実施形態に係る駆動回路Drを示す図である。図14において、先の第1実施形態及び第2実施形態において説明した内容と同一の内容については説明を省略する。
第3切替部58は、2つの切替端子58a、58bと、これらの切替端子58a、58bの一方に選択的に接続される接続端子58cと、を有する。切替端子58aは電流源50に接続されている。切替端子58bは接地されている。そのため、接続端子58cには、電流源50と接地電圧との一方に接続される。接続端子58cは、センススイッチング素子SW2のソースに接続されている。
駆動制御部70の第7端子T7は、第3切替部58に接続されており、接続端子58cが接続される切替端子58a、58bを切り替えるための信号を出力する。
図15を用いて本実施形態の切替処理について説明する。ここで、図15(a)は、駆動信号の推移を示す。図7(b)は、第1ゲート電圧Vg1の推移を示し、図7(c)は、第2ゲート電圧Vg2の推移を示す。図7(d)は、サンプリング信号Spの推移を示す。図7(e)は、閾値電圧Vthの推移を拡大して示し、図7(f)は、出力電圧Vnの推移を拡大して示す。
時刻t1において、駆動信号がオフ指令からオン指令に切り替わる。なお、オン期間Tonにおける切替処理は、第1実施形態のオン期間Tonにおける切替処理と同一であるため、説明を省略する。
その後時刻t2において、駆動信号がオン指令からオフ指令に切り替わる。これにより、オフ期間Toffとなる。オフ期間Toff中の時刻t13において、駆動制御部70は、第3切替部58の接続端子58cを切替端子58aに接続させ、センススイッチング素子SW2のソースを電流源50に接続する。これにより、センススイッチング素子SW2のドレインとソースとの間に閾値電流が流通される。その結果、第2ゲート電圧Vg2は閾値電圧Vthとなり、電圧出力部60の出力端子64cに閾値電圧Vthが出力される。以下、オフ期間Toffのうち、第3切替部58の接続端子58cが切替端子58aに接続されている期間を検出期間Tdという。
検出期間Td中の時刻t4において、駆動制御部70はサンプリング信号Spをオンに切り替える。これにより、電圧保持部80は、電圧出力部60の出力端子64cから出力される閾値電圧Vth(b)を取得し、出力端子82cに出力する閾値電圧Vthを、閾値電圧Vth(a)から閾値電圧Vth(b)に更新する。
また、第2電源46は、閾値電圧Vthの更新に伴って、出力電圧Vnを、閾値電圧Vth(a)に基づく出力電圧Vn(a)から、閾値電圧Vth(b)に基づく出力電圧Vn(b)に更新する。
その後、検出期間Td中の時刻t14において、駆動制御部70は、サンプリング信号Spをオフに切り替える。その後時刻t15において、駆動制御部70は、第3切替部58の接続端子58cを切替端子58bに接続させ、センススイッチング素子SW2のソースを接地し、検出期間Tdを終了する。これにより、センススイッチング素子SW2のドレインとソースとの間に閾値電流が流通されることが禁止される。
以上説明した本実施形態によれば、検出期間Td以外のオフ期間Toffにおいて、センススイッチング素子SW2に閾値電流が流通されることが禁止される。そのため、オフ期間Toffに亘ってセンススイッチング素子SW2に閾値電流が流通され続ける場合に比べて、オフ期間Toffにおいて閾値電流を流すために発生する損失を抑制することができる。
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、電流源50が、センススイッチング素子SW2のソースと第2電源46との間に接続されている形態を例示したが、電流源50が接続される電源は、第2電源46に限られない。例えば、電流源50が、センススイッチング素子SW2のソースと接地電圧との間に接続されていてもよい。
センススイッチング素子SW2に閾値電流を流通させる形態として、センススイッチング素子SW2の温度によらず閾値電流が一定となる温度補償機能を備える形態を例示したが、これに限られない。温度補償機能を備えなくてもよい。
センススイッチング素子SW2のゲートとソースとの間の電圧差に相当する電圧を出力する形態として、オペアンプ64を用いた形態を例示したが、これに限られない。直流電圧計を用いてもよい。
第3電源62と第5電源102とを別々の電源として記載したが、これらは同一の電源であってもよい。
第2電源46の出力電圧Vnとしては、図5に示したように2段階に切り替えて設定されるものに限らず、3段階以上の値に切り替えて設定されるものであってもよい。また、出力電圧Vnとしては、その値が段階的に設定されるものに限らず、連続的に設定されるものであってもよい。
電圧出力部60の出力端子64cに出力される電圧を保持する形態として、コンデンサ84を用いた形態を例示したが、これに限られない。例えば、不揮発性メモリ等を有しており、そのメモリに記憶することで電圧を保持してもよい。
温度検出値として、スイッチング素子の温度Tmpを例示したが、これに限られない。例えば、スイッチング素子の温度Tmpを電熱変換素子等により電圧に変換し、その電圧を出力してもよい。この場合、変換された電圧は、スイッチング素子の温度の相関値に相当する。
インバータ20のスイッチSWとしては、NチャネルMOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。この場合、IGBTのコレクタが第1端子に相当し、IGBTのエミッタが第2端子に相当し、IGBTのゲートが開閉制御端子に相当する。また、スイッチSWを備える電力変換器としては、3相のものに限らない。