JP7058308B2 - 誤り率測定装置、及び誤り率測定方法 - Google Patents
誤り率測定装置、及び誤り率測定方法 Download PDFInfo
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Description
本発明は、被測定信号として入力されるデータとクロック信号の位相関係と、測定された誤り率との関係を示す、所謂、バスタブ特性を用いて被測定信号のジッタ測定を行う誤り率測定装置、及び誤り率測定方法に関する。
スマートフォンやモバイル端末によるデータ通信量の増加に伴い、通信システムは膨大なデータを扱うようになり、通信システムを構成する各種の通信機器のインタフェースは高速化とシリアル伝送化が進んでいる。このような通信機器で採用されているPCIe(登録商標)(Peripheral Component Interconnect Express)などのハイスピードシリアルバス(High Speed Serial Bus)の規格では、LTSSM(Link Training and Status State Machine:「リンク状態管理機構」)と呼ばれるステートマシンにより、デバイス間の通信の初期化やリンク速度の調整などが管理されている。
インタフェースの高速化が進む上記通信機器における信号の品質評価の指標の一つとして、受信データのうちビット誤りが発生した数と受信データの総数との比較として定義されるビット誤り率(Bit Error Rate:BER)が知られている。BER測定を行う誤り率測定装置の一般的な構成として、例えば、パルスパターン発生器(Pulse Pattern Generator:PPG)から規格が定める特定パターンを高速に切り替えて出力し、該特定パターンを受信した被試験対象(Device Under Test:DUT)が送出する被測定信号を誤り率測定器(ED)側で受信してビット誤り率を測定する構成が知られている。
一方で、擬似ランダム(Pseudo-random bit sequence:PRBS)パターン等の各種デジタルデータの通信試験の分野では、単位インターバルuiでの遅延時間とビット誤り率(BER値)との関係を示す特性、いわゆるバスタブ特性からジッタのヒストグラムを求め、そのジッタヒストグラムからランダムジッタの推定値を得る技術(BERテスタ)が知られている(例えば、特許文献1。段落0004、0012、0028~0035、図1、図2参照)。
今日、上述した誤り率測定装置においても、特許文献1に記載されたBERテスタのように、バスタブ特性からジッタを測定する機能を有するものが提案されている。
バスタブ特性からジッタを測定する機能を有する誤り率測定装置は、一般に、可変遅延器(図3参照)を有し、該可変遅延器によって、被測定信号として入力するデータと、該データの入力処理に用いるクロック信号の位相関係を操作しながらバスタブ特性を算出したうえで該バスタブ特性からジッタを測定するようになっている。
この種の誤り率測定装置において、バスタブ特性から得られるジッタの計算結果の信頼性は、誤り率の確率的な揺らぎと可変遅延器の揺らぎの2つの影響を受ける。誤り率の確率的な揺らぎについては、たくさんのデータセットを得ることで低減できる。誤り率の確率的な揺らぎは原理的には防ぐことができないため、このような測定については、測定時間が増大する傾向がある。
これに対し、可変遅延器の揺らぎはバスタブ特性における近似線の傾きに影響を与える。可変遅延器は、例えばメカニカルディレイ内部の歯車誤差や、IQ変調を用いた可変遅延器フィードバック系に依存する揺らぎといった、動かし方による誤差が存在する。このような誤差は正規分布に基づかないものである。したがって平均化処理によって影響を排除できない。
可変遅延器の揺らぎを排除する簡単な手法として、よりたくさんのデータセットを測定し、その傾向から可変遅延器の揺らぎを抽出し、その影響を大きく受けたデータセットを削除する方法がある。この方法によれば、揺らぎを抽出するまでに膨大な測定時間が必要になってしまうことがあった。
このため、短い測定時間で、可変遅延器の揺らぎを如何にして排除しつつ、誤り率の確率的な揺らぎの範囲でジッタの信頼性を得る手法が求められている。
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、1つのデータセットを用いて、可変遅延器の遅延揺らぎが軽減された高精度のジッタ測定を短時間で行うことが可能な誤り率測定装置及び誤り率測定方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る誤り率測定装置は、被測定信号として入力するデータの入力に合わせて該データの2値判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を可変遅延器(3a2)で順次変動させて前記データと前記クロック信号の位相関係を操作する位相操作を行う位相操作手段(7b)と、前記位相操作を伴う前記2値判定の判定結果を用いて前記データのパターンと既定のパターンを比較し、該比較結果に基づき前記データの誤り率を測定する誤り率測定手段(3b)と、前記誤り率の測定に合わせて、前記位相操作手段により操作された前記位相関係と、前記誤り率測定手段により測定された前記誤り率との関係を示すバスタブ特性の前記位相操作の1掃引に係るデータセットを算出するバスタブ特性算出手段(7d)と、前記データセットに基づき前記データのジッタを測定するジッタ測定手段(7e)と、前記ジッタの測定結果における特定のジッタの測定値と、測定に使用した前記データセットにおけるバスタブ曲線(80a、80b)に対応する前記位相操作に係る前記遅延量の幅とにより規定される判断指標を用いて前記測定結果の信頼性を判定する判定手段(7f)と、を具備することを特徴としている。
この構成により、本発明の請求項1に係る誤り率測定装置は、判断指標を設けてジッタ測定結果の信頼性を判定する機能を設けることで、信頼性ありと判定されたときのジッタ測定に使用された1つのデータセットから短時間で信頼性の高いジッタ測定を行うことができ、複数のデータセットを用いた統計処理を行う必要がなくなる。また、判断指標の選び方次第で可変遅延器の遅延揺らぎの影響を軽減することができ、1つのデータセットのみからジッタ測定を行うことと相まって、遅延揺らぎの影響を軽減しつつ短時間で高精度のジッタ測定を行うことが可能となる。
また、本発明の請求項2に係る誤り率測定装置は、前記判定手段により、前記測定結果が信頼性ありと判定された場合は測定に使用した前記データセットを取得し、前記測定結果が信頼性なしと判定された場合は、前記データセットを廃棄するデータ取捨選択手段(7g)をさらに有する構成であってもよい。
この構成により、本発明の請求項2に係る誤り率測定装置は、ジッタ測定結果の信頼性がないと判定された場合、すぐに次回のジッタ測定に移行することができ、信頼性のあるジッタ測定結果を得るまでの時間を短縮することができる。
また、本発明の請求項3に係る誤り率測定装置において、前記判定手段は、前記ジッタ測定手段により測定されたジッタ値(RJrms)と、測定に使用した前記データセットの2つのバスタブ曲線(80a、80b)のうちのいずれか一方に対応する前記位相操作に係る前記遅延量の幅(Xr)とを比較し、下式1の判断指標を満足する否かに応じて前記信頼性の有無を判定する構成であってもよい。
Xr>c×RJrms ・・・ 式1
但し、cは任意の係数
Xr>c×RJrms ・・・ 式1
但し、cは任意の係数
この構成により、本発明の請求項3に係る誤り率測定装置は、2つのバスタブ曲線のうちのいずれか一方を用いてジッタ測定を行う際に、予め設定した判断指標に基づいて位相操作手段の遅延揺らぎの影響が軽減された信頼性の高い1つのデータセットを確実に選び出すことができ、短時間で高精度のジッタ測定を行うことができる。
また、本発明の請求項4に係る誤り率測定装置において、前記判定手段は、前記ジッタ測定手段により測定されたジッタ値(RJrms)と、測定に使用した前記データセットの2つのバスタブ曲線(80a、80b)にそれぞれ対応する前記位相操作に係る前記遅延量の幅(Xr1、Xr2)のうちの小さい方の前記遅延量の幅(min(Xr1,Xr2))とを比較し、下式2の判断指標を満足する否かに応じて前記信頼性の有無を判定する構成であってもよい。
min(Xr1,Xr2)>c×RJrms ・・・ 式2
但し、cは任意の係数
min(Xr1,Xr2)>c×RJrms ・・・ 式2
但し、cは任意の係数
この構成により、本発明の請求項4に係る誤り率測定装置は、2つのバスタブ曲線の両方を用いてジッタ測定を行う際に、予め設定した判断指標に基づいて位相操作手段の遅延揺らぎの影響が軽減された信頼性の高い1つのデータセットを確実に選び出すことができ、短時間で高精度のジッタ測定を行うことができる。
また、本発明の請求項5に係る誤り率測定装置において、前記係数cは、前記信頼性の有無を判定する閾値を変更するパラメータであり、事前に実施する誤り率測定結果に基づき設定される当該誤り率測定装置固有の値である構成であってもよい。
この構成により、本発明の請求項5に係る誤り率測定装置は、自装置固有の係数cを設定しておくことで、自装置に最適な判断指標を用いて短時間かつ高精度のジッタ測定を行うことができる。
上記課題を解決するために、本発明の請求項6に係る誤り率測定方法は、被測定信号として入力するデータの入力に合わせて該データの2値判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を可変遅延器(3a2)で順次変動させて前記データと前記クロック信号の位相関係を操作する位相操作を行う位相操作ステップ(S5)と、前記位相操作を伴う前記2値判定の判定結果を用いて前記データのパターンと既定のパターンを比較し、該比較結果に基づき前記データの誤り率を測定する誤り率測定ステップ(S6)と、前記誤り率の測定に合わせて、前記位相操作ステップにより操作された前記位相関係と、前記誤り率測定ステップにより測定された前記誤り率との関係を示すバスタブ特性の前記位相操作の1掃引に係るデータセットを算出するバスタブ特性算出ステップ(S7)と、前記データセットに基づき前記データのジッタを測定するジッタ測定ステップ(S8)と、前記ジッタの測定結果における特定のジッタの測定値と、測定に使用した前記データセットにおけるバスタブ曲線(80a、80b)に対応する前記位相操作に係る前記遅延量の幅とにより規定される判断指標を用いて前記測定結果の信頼性を判定する判定ステップ(S9)と、を含むことを特徴とする。
この構成により、本発明の請求項6に係る誤り率測定方法は、判断指標を設けてジッタ測定結果の信頼性を判定する機能を設けることで、信頼性ありと判定されたときのジッタ測定に使用された1つのデータセットから短時間で信頼性の高いジッタ測定を行うことができ、複数のデータセットを用いた統計処理を行う必要がなくなる。また、判断指標の選び方次第で可変遅延器の遅延揺らぎの影響を軽減することができ、1つのデータセットのみからジッタ測定を行うことと相まって、遅延揺らぎの影響を軽減しつつ短時間で高精度のジッタ測定を行うことが可能となる。
本発明は、1つのデータセットを用いて、可変遅延器の遅延揺らぎが軽減された高精度のジッタ測定を短時間で行うことが可能な誤り率測定装置及び誤り率測定方法を提供することができる。
以下、本発明に係る誤り率測定装置、及び誤り率測定方法の実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、パルスパターン発生器(Pulse Pattern Generator:PPG)2、誤り率測定器(Error Detector:ED)3、記憶部4、表示部5、操作部6、制御部7を備えて構成される。
誤り率測定装置1は、操作部6による所定の測定開始操作に基づいてPPG2から任意のパルスパターンを有する試験信号を発生させ、該試験信号を受信したDUT10が送出する信号を被測定信号としてED3に入力して該被測定信号のビット誤り率を測定することでDUT10の性能評価を行う装置である。
本実施形態において、ED3は、被測定信号として入力するデータ(以下、入力データ)と、該入力データの2値判定(1か0かの判定)の処理に用いるクロック信号との位相関係をユーザ操作に応じて操作する位相操作制御機能を有している。また、ED3は、位相操作制御機能によって操作された入力データとクロック信号の位相関係(クロック遅延量)と、測定された誤り率との関係を示す特性、所謂、バスタブ特性を算出するとともに、算出したバスタブ特性に基づいて入力データのジッタを求めるジッタ算出処理機能をさらに有している。
(ジッタについて)
ジッタは、ディジタル信号の時間軸方向の揺らぎである。この揺らぎの周期が長周期である時、具体的には変調周波数が10Hz以上の変調周波数で揺らぎが発生する場合にジッタと定義される。ジッタは様々なジッタ成分から構成されている。上述したTJは広がりが有限なDJと、無限な広がりを持つRJで構成されている。
ジッタは、ディジタル信号の時間軸方向の揺らぎである。この揺らぎの周期が長周期である時、具体的には変調周波数が10Hz以上の変調周波数で揺らぎが発生する場合にジッタと定義される。ジッタは様々なジッタ成分から構成されている。上述したTJは広がりが有限なDJと、無限な広がりを持つRJで構成されている。
ジッタ量の単位には、ns(ナノ(10-9)秒)、ps(ピコ(10-12)秒)、fs(フェムト(10-15)秒)等の時間単位のほか、ユニットインターバル(Unit Interval:UI)が用いられる。UIとは、1bitあたりのジッタ量の比率で、Jitter量をTj[ps]、1bit の間隔を Tbit [ps]としたとき、下式(a)によって算出される。
Jitter[UI] = Tj /Tbit ・・・ (a)
Jitter[UI] = Tj /Tbit ・・・ (a)
これにより、例えば、10Gbit/sの信号であれば、1bitの間隔は100psとなる。この信号に10psのジッタが存在すれば、ジッタ量は0.1UIと算出されることとなる。なお、バスタブ特性、及びバスタブ特性に基づくジッタ算出処理については後で図4から図6、図10、図11を参照して詳述する。
性能評価の対象(被測定対象)であるDUT10は、背景技術の欄で挙げたインタフェースの高速化が進む通信機器等に用いられる、例えば、フリップフロップ(F/F)回路等の各種デバイスで構成されている。性能評価の種別は有線系に限られるものであり、DUT10は、PPG2及びED3と接続ケーブル等を用いて有線接続され、PPG2からの試験信号を受信し、その応答信号としての所定の規格の被測定信号をED3に送出する。DUT10が対応する規格の例としては、OIF CEI-56G-VSR-PAM4、IEEE802.3bs、PCI Express Gen6、CEI(Common Electrical Interface)、Ethernet(登録商標)などが挙げられる。DUT10は、ビット列からなるデータを表す信号を送信するものであれば、上述したF/F回路等以外のデバイスで構成されていてもよい。
図1に示す誤り率測定装置1の構成において、PPG2は集積回路などによって構成される信号送信部2a、RAMなどのメモリによって構成されるデータ記憶部2bを有している。
データ記憶部2bは、例えば128Mビットサイズからなる基準になるデータを予め記憶している。信号送信部2aは、データ記憶部2bから読み込んだデータを表す信号をDUT10に送信するようになっている。
ED3は、信号受信部3a、誤り率測定部3bを有している。信号受信部3aは、DUT10から送信された被測定信号を受信し、受信した信号の入力データを誤り率測定部3bに出力するものであり、例えば、図3に示すように、0/1判定器3a1、可変遅延器3a2を有している。
0/1判定器3a1は、DUT10からの入力データ(被測定信号)を可変遅延器3a2から与えられるクロック信号に基づいて1または0の2値判定を行う。可変遅延器3a2は、入力データの2値判定の処理に用いる上記クロック信号の遅延量を順次変動させることにより、所定の位相範囲を対象に入力データとクロック信号の位相関係を操作する位相操作機能を有している。具体的に、可変遅延器3a2は、上記クロック信号を入力し、位相操作制御部7b(図2参照)からの遅延量の操作に基づいてクロック信号を遅延させて0/1判定器3a1に出力する。可変遅延器3a2は、位相操作制御部7bとともに、本発明の位相操作手段を構成する。
かかる構成により、信号受信部3aでは、ユーザ操作に基づいてクロック遅延量(クロック信号とデータの位相関係)が操作され、そのときのクロック遅延量に応じて入力データの0/1判定器3a1による2値判定結果を誤り率測定部3bに出力する動作を行う。クロック遅延量の操作は、例えば、初期値から1周期の範囲で動かすように実施することができる。本実施形態に係る誤り率測定装置1では、クロック遅延量を初期値から1周期の範囲で動かして入力データの誤り率を測定することを1掃引と定義している。
ED3において、誤り率測定部3bは、本発明の誤り率測定手段を構成するものであり、同期検出部3b1、比較部3b2を有している。同期検出部3b1は、データ記憶部2bから読み込んだ基準となるデータ(参照信号)と、受信した入力データとの同期を取る処理を実施し、同期が取れた場合にはその旨を比較部3b2へ通知する。
比較部3b2は、例えば、排他的論理和回路(EX-OR)により構成され、同期検出部3b1から入力されるデータのパターン、すなわち、信号受信部3aによる被測定信号の2値判定信号のビットそれぞれと、上記参照信号(既定のパターン)とをシンボル(ビット)ごとに比較することにより、被測定信号のレベルと参照信号のレベルとが相違するビットエラーを測定する。2値信号と参照信号とのシンボルごとのビットの比較結果は、比較データとして記憶部4の所定の記憶領域に順次格納されるようになっている。ここで誤り率測定部3bは、上記比較データに基づき、全シンボル数に対するエラーとなったビットの割合を誤り率として算出し、算出した誤り率のデータを記憶部4にさらに記憶する構成であってもよい。
記憶部4はまた、制御部7を構成する後述のパラメータ設定部7a、位相操作制御部7b、測定制御部7c、バスタブ特性算出部7d、ジッタ測定制御部7e、信頼性判定部7f、取捨選択部7g、表示制御部7hを実現するためのプログラムや、上記各機能部がDUT10からの被測定信号の誤り率を測定するために必要な各種情報を記憶する。
表示部5は、例えば液晶表示器などで構成され、BER測定に関わる設定画面や測定結果(ジッタ測定画面等)などを表示する。
操作部6は、例えば操作ノブ、各種キー、スイッチ、ボタンや表示部5の表示画面上のソフトキーなどで構成される。操作部6は、ビット誤り率測定、ジッタ測定を行うための各種設定項目の設定、DUT10の測定開始や停止の指示、誤り率測定、ジッタ測定などの種々の動作制御を係る操作機能を有している。
制御部7は、上述した各種デバイスをDUT10としてビット誤り率(BER)を含む各種測定を行う際にPPG2、ED3、表示部5、操作部6を統括制御する。
制御部7は、例えば図2に示すように、パラメータ設定部7a、位相操作制御部7b、測定制御部7c、バスタブ特性算出部7d、ジッタ測定制御部7e、信頼性判定部7f、取捨選択部7g、表示制御部7hを有している。
パラメータ設定部7aは、バスタブ特性に基づくジッタ測定を行うための各種のパラメータを設定するものである。この種のパラメータとしては、測定対象の信号の規格、誤り率の測定範囲、位相操作パターン(クロック遅延量)、誤り率を算出するための位相操作の掃引回数(バスタブ特性の1データセットを得るために行う一連の位相操作を一掃引とする)、ジッタ測定結果の信頼性判定に用いる判断指標などが挙げられる。
位相操作制御部7bは、操作部6でのユーザ操作に基づいて信号受信部3aの可変遅延器3a2を制御し、入力データとクロック信号との位相関係を操作(変動)させる制御を行うようになっている。
測定制御部7cは、設定された測定パラメータに基づいてPPG2から指定された規格のパルスパターンを有する試験信号を発生させ、該試験信号を受信したDUT10が送出する信号を被測定信号としてED3に入力して該被測定信号のビット誤り率を測定する誤り率測定制御を実行するとともに、誤り率測定に合わせてジッタを測定するジッタ測定のためのバスタブ特性算出部7d、ジッタ測定制御部7e、信頼性判定部7f、取捨選択部7g、表示制御部7hの統括的な制御を行う。本実施形態において、測定制御部7cは、入力データとクロック信号の位相関係を操作させつつ被測定信号の誤り率を測定する測定動作、該誤り率測定に合わせて、入力データとクロック信号位相関係と、測定された誤り率との関係を示すバスタブ特性を算出し、該バスタブ特性に基づき被測定信号のジッタ値を測定するジッタ測定動作を行わせるように可変遅延器3a2、誤り率測定部3b、バスタブ特性算出部7d、ジッタ測定制御部7eを制御する。また、測定制御部7cは、測定されたジッタ値と、測定に使用したバスタブ特性における2つのバスタブ曲線に対応する位相操作に係る遅延量の幅とにより規定される判断指標を用いてジッタ測定結果の信頼性の有無を判定するとともに、該ジッタ測定結果の信頼性の有無の判定結果に応じて、次回のジッタ測定を非実行とするか実行させるように可変遅延器3a2、誤り率測定部3b、バスタブ特性算出部7d、ジッタ測定制御部7eを制御する。
バスタブ特性算出部7dは、位相操作制御部7bにより操作されるクロック遅延量と誤り率測定部3bでのビット誤り率測定結果との対応関係を示すバスタブ特性を算出するための演算機能部である。バスタブ特性算出部7dは、本発明のバスタブ特性算出手段を構成している。
ジッタ測定制御部7eは、バスタブ特性算出部7dにより算出されたバスタブ特性に基づき、該バスタブ特性におけるバスタブ曲線部分を近似する近似線を規定し、該近似線の傾きによって定義されるジッタを算出するジッタ算出処理機能を有する。ジッタ測定制御部7eは、本発明のジッタ測定手段を構成している。
信頼性判定部7fは、ジッタ測定制御部7eでのジッタ測定結果の信頼性の有無を判定する機能部である。ここで信頼性の有無の判定は、ジッタ測定制御部7eで測定されたジッタ値と、測定に使用したバスタブ特性における2つのバスタブ曲線に対応する位相操作に係る遅延量の幅とにより規定される判断指標(後述する式(b)、式(c)参照)を用いて行われるようになっている。信頼性判定部7fは、本発明の判定手段を構成する。
取捨選択部7gは、信頼性判定部7fによる上記信頼性の有無の判定結果に応じて、信頼性なしと判定されたときのバスタブ特性のデータセットを廃棄し、信頼性ありと判定されたときのバスタブ特性のデータセットを取得するデータ取捨選択機能を有している。取捨選択部7gは、本発明のデータ取捨選択手段を構成している。
表示制御部7hは、測定制御部7cの制御に基づく測定動作中のビット誤り率の測定結果、バスタブ特性、ジッタ測定結果、その他の各種情報を、表示部5に表示させる制御を行うものである。本実施形態において、表示制御部7hは、ジッタ測定制御部7eにより測定されたバスタブ特性を示すグラフ72aと、グラフ72aにおけるバスタブ曲線80a、80bと、バスタブ曲線80a、80bにそれぞれ対応する近似線81a、81bと、誤り率の測定範囲の上限値及び下限値を示す横線72c、72dと、を含むジッタ測定画面71(図13参照)を表示させるようになっている。
制御部7は、CPU(Central Processing Unit)、CPUを立ち上げるためのOS(Operating System)やその他のプログラム及び制御用のパラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、CPUが動作に用いるOSやアプリケーションの実行コードやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置などの不揮発性の記憶媒体などを有する。制御部7において、パラメータ設定部7a、位相操作制御部7b、測定制御部7c、バスタブ特性算出部7d、ジッタ測定制御部7e、信頼性判定部7f、取捨選択部7g、表示制御部7hは、CPUがRAMの作業領域でROMに格納された所定のプログラムを実行することにより実現される。
上記構成を有する誤り率測定装置1において、制御部7では、誤り率測定部3bでの被測定信号の誤り率の測定に合わせて、バスタブ特性算出部7dが被測定信号のバスタブ特性を算出し、ジッタ測定制御部7eがそのバスタブ特性からランダムジッタ(Random Jitter:RJ)と確定的ジッタ(Deterministic Jitter:DJ)とを分離して算出できるようになっている。
バスタブ特性算出部7dにより算出される被測定信号のバスタブ特性の一例を図4に示している。図4において、横軸はDelay、すなわち、クロック遅延量(クロック信号と入力データの位相関係)を示し、縦軸は誤り率(BER値)を例えば対数log10(BER)により示している。
図4におけるクロック遅延量の変動操作(同図の左端から右端に向けて動かす操作)は、位相操作制御部7bによる信号受信部3aの可変遅延器3a2に対する遅延操作(位相操作)制御により行われる。位相操作制御は、入力データとクロック信号の位相関係(クロック遅延量)を例えば1周期の間隔で細かく操作する(動かす)ことができるようになっている。これにより、クロック遅延量を例えば初期値から1周期の範囲で決められた値(クロック遅延量)で動かしつつ、誤り率測定部3bでは、個々のクロック位相に対応する誤り率を測定することが可能となる。
上述したクロック遅延量(Delay)の操作に対して、誤り率測定部3bで測定されるBER値を対応付けてグラフとして表すと、図4に示すように、クロック遅延量を初期値から次第に大きくしていく過程で、例えば黒丸で示される各測定ポイントでのBER値が次第に小さくなっていく区間(第1の区間)と、その後、クロック遅延量を最終周期(1周期に相当する)までさらに大きくしていく過程で各測定ポイントでのBER値が次第に大きくなっていく区間(第2の区間)が現れるようになっている。第1の区間における測定ポイントの集まりが描く曲線と、第2の区間における測定ポイントの集まりが描く曲線とは左右対称であり、両者を合わせるとバスタブ形状をなしている。このため、図4に示す一連のクロック遅延量対誤り率の特性は、一般にバスタブ特性と呼ばれている。本実施形態においても同様であり、以下、第1の区間における測定ポイントの集まりが描く曲線、第2の区間における測定ポイントの集まりが描く曲線を、それぞれ、第1のバスタブ曲線、第2のバスタブ曲線と呼称するものとする。
図4に示すバスタブ特性において、第1のバスタブ曲線、第2のバスタブ曲線に対しては、共に、それぞれの曲線を近似する近似線が引かれている。第1のバスタブ曲線の近似線は、例えば、log10(BER)=a1x+b1で表され、第2のバスタブ曲線の近似線は、例えば、log10(BER)=a2x+b2で表される。
また、このバスタブ特性においては、縦軸における任意のBER値が、それぞれ、BER0、BER1、BERU、BERLとして指定されている。ここで、BER0は、確定的ジッタDJの推定に使用する基準誤り率であり、BER1はトータルジッタTJの推定に使用する基準誤り率である。BER0、BER1は、事前に決められている。
BERUは、ジッタの計算に使用する誤り率の測定範囲の上限値であり、BERLは、ジッタの計算に使用する誤り率の測定範囲の下限値である。BERU、BERLは、ジッタ測定に際してユーザが設定するようになっている(図10のステップS1参照)。ジッタ測定に際して誤り率の測定範囲として設定可能な誤り率(BER)とQ(BER)値との関係を図6に示している。
ジッタ測定制御部7eは、ユーザによって設定された上限値BERUと下限値BERLとにより規定される誤り率の測定範囲としてジッタ算出処理を実施するようになっている。これにより、BER0からBER1までの範囲でBER測定を行う場合に比べて処理負荷及び処理時間を低減することができる。
式(1)において、NOM.INV(確率、平均、標準偏差)は、正規分布の累積分布関数の逆関数の値に対応するものである。TDは、Mark Ratioを表し、具体値としては例えば、1/2が設定されている。
図4に示すバスタブ特性において、BERU、及びBERLが設定されているときに、最小2乗法によって求められる上述した各近似線の係数a1、b1、a2、b2は、当該バスタブ特性について規定される図中のTL、TUを用いて以下の式(5)及び式(6)で表すことができる。
上記式(2)で表されるランダムジッタRJrmsは、上記式(5)、式(6)を代入することにより、下式(7)で表すことができる。式(7)によってランダムジッタRJrmsを算出可能であることは図5の模式図からも理解できる。
上記式(10)において、(1/a1-1/a2)という係数は、近似線の傾きを示している。以上の式変換から、ランダムジッタRJrmsは以下2点の特質を有することが分かる。1つ目の特質は、F(BERL,BERU)は測定条件から決まる固定の係数である点であり、2つ目の特質は、2本の近似線の傾きの逆数からランダムジッタRJrmsを算出することができる点である。したがって、バスタブ測定においては、近似線の傾きを求めることが重要であることを理解することができる。
(可変遅延器3a2の遅延揺らぎについて)
上述した構成を有する誤り率測定装置1において、可変遅延器3a2は、誤り率の測定に合わせて実施する位相操作に際し、誤り率の測定結果から得られるバスタブ特性における位相(Delay)方向の幅に変化を来す揺らぎが発生する。
上述した構成を有する誤り率測定装置1において、可変遅延器3a2は、誤り率の測定に合わせて実施する位相操作に際し、誤り率の測定結果から得られるバスタブ特性における位相(Delay)方向の幅に変化を来す揺らぎが発生する。
このような揺らぎに関しては、可変遅延器が例えばメカニカルディレイで構成されたものであれば、メカニカルディレイ内部の歯車誤差や、他の機械的要素の動きに起因する誤差が発生する事態が考えられる。また、例えばIQ変調回路による位相操作機能を有する可変遅延器においては、IQ変調を用いた可変遅延器フィードバック系に依存する揺らぎといった、動かし方による誤差が発生することとなる。
具体的な例を挙げると、誤り率測定装置1において、例えば50Gbit/sという高速な信号(入力データ)のBER測定を行うものとするとき、このときの1m(ミリ)UIが20fsという小さな変化幅となる。可変遅延器3a2は、このような小さな変化幅に対応し得る高精度のものであったとして、上述したメカニカルディレイ内部の歯車誤差や、IQ変調を用いた可変遅延器フィードバック系に依存する揺らぎといった、動かし方による誤差が発生することを免れない。これだけの小さい範囲の変化を揺らぎなく与える可変遅延手段はそもそも存在せず、誤り率測定装置1に実装することもできない。
発明が解決しようとする課題の欄でも述べたように、可変遅延器3a2の上述した揺らぎに起因する誤差は、正規分布に基づいていないため、バスタブ特性のデータセットを増やしてそれらを平均化する手法によって排除することができない。
(可変遅延器3a2の遅延揺らぎの影響を判断する判断指標)
そこで本実施形態では、可変遅延器3a2の揺らぎのジッタ測定に対する影響を受け難くするために、バスタブ特性における揺らぎの影響を判断する判断指標を設け、その判断指標を満たすデータセット、つまり揺らぎの影響の小さいデータセットだけをジッタ測定に用い得る信頼性の高いデータセットして取り出すことにより、1つのデータセットからでも精度の高いジッタ測定を行えるようにしている。本実施形態において、上記判断指標は、例えば、下式(b)、(c)に示すように、測定されたジッタ値と、測定に使用したバスタブ特性における2つのバスタブ曲線に対応する位相操作に係る遅延量の幅とにより規定されるようになっている。
そこで本実施形態では、可変遅延器3a2の揺らぎのジッタ測定に対する影響を受け難くするために、バスタブ特性における揺らぎの影響を判断する判断指標を設け、その判断指標を満たすデータセット、つまり揺らぎの影響の小さいデータセットだけをジッタ測定に用い得る信頼性の高いデータセットして取り出すことにより、1つのデータセットからでも精度の高いジッタ測定を行えるようにしている。本実施形態において、上記判断指標は、例えば、下式(b)、(c)に示すように、測定されたジッタ値と、測定に使用したバスタブ特性における2つのバスタブ曲線に対応する位相操作に係る遅延量の幅とにより規定されるようになっている。
上記のような判断指標を得るべく、本件発明者は、データセットのジッタ測定対象としての信頼性に影響を及ぼす要因として、誤り率測定段階で得られるバスタブ特性におけるバスタブ曲線の傾きとDelay方向の幅との関係に着目した。
A.片方のバスタブ曲線を使ってジッタ測定を行う場合
可変遅延器3a2の揺らぎに起因する誤り率の測定誤差とバスタブ曲線の傾きとの関係を説明するためのバスタブ特性のグラフを図7に示している。図7において、2点鎖線で示す直線81-1は、可変遅延器3a2の揺らぎないときの測定されるべきバスタブ曲線の傾きaを示し、実線で示す直線81-2は、誤り率の測定を経て実際に測定されたバスタブ曲線の傾きa´を示している。また、図7において、Xrは、直線81-1、81-2によって示される各バスタブ曲線に対応するDelay方向の幅に相当する。図7において、直線81-1、直線81-2は、図8に示すバスタブ特性のグラフにおける第1のバスタブ曲線80aに対応する近似線81aの、可変遅延器3a2の揺らぎがないときとあるときの傾き状態を呈している。
図7に示すバスタブ特性のグラフによれば、通信速度が50Gbit/sで1mUIが20fsという変化幅の上述した条件で入力データのBER測定を行う状況下において、バスタブ特性のデータセットの両側のデータポイントP1、P2が、可変遅延器3a2の揺らぎによって、得られた誤り率が揺らいでいる状況が現れている。
さらに言及すれば、図7に示すバスタブ特性のグラフの例では、可変遅延器3a2の揺らぎがないときのバスタブ曲線(直線81-1)の傾きaに対して実際に測定されたバスタブ曲線(直線81-2)の傾きa´がより鈍い(小さい)傾きとなって測定されている。この状況下では、バスタブ曲線の揺らぎがないときの傾きaよりも鈍い傾きa´が得られ、RJの測定精度を低下させるように悪く計算されてしまうことになる。言い換えれば、このような状況になったときに、ジッタ測定結果の信頼性がないとするNGの判定が可能な判断指標が必要とされることが理解できる(知見1)。
図7に示すバスタブ特性のグラフからは、さらに次のことを読み取ることもできる。バスタブ曲線の傾きaが傾きa´に向けて小さくなる(寝てくる)状態は、RJが大きくなりつつある状態である。このようにRJが大きい状態では、Delay方向の幅Xrが一定である前提の下で、バスタブ曲線が傾きa´まで寝た状態のままで狭い方向での測定が行われ、その結果、Delay方向の幅Xr内での測定ポイント(○印により示される)の数が傾きaのときに比べて減少し、かつ位置もズレることから、バスタブ特性の測定精度が低下し、ジッタ測定対象としての信頼性を低下させることとなる。逆の観点から、図7に示すバスタブ特性のグラフからは、バスタブ特性のジッタ測定対象としての信頼性を保つには、RJが大きい状態では、傾きが小さい状態で狭い方向で測定するのではなく、Delay方向の幅を広めに確保することが有効であることが理解できる(知見2)。
上述した知見1、知見2を踏まえ、本件発明者は、第1のバスタブ曲線80aと第2のバスタブ曲線80bのうちの片側を用いてジッタ測定を行うケースにおいては、第1のバスタブ曲線80aまたは第2のバスタブ曲線80bのDelay方向の幅をXrとするとき、ジッタ測定結果の信頼性の判断指標として、下式(b)が有効であることを見出すに至った。
Xr>c×RJrms ・・・ (b)
上記式(b)において、cは、ジッタ測定対象としての信頼性を有するか否か、すなわち信頼性OKかNGかを判定する閾値を変えるパラメータ(係数)である。本実施形態ではc=1を想定しているが、これよりも小さい数値、または大きい数値であってもよい。この係数cは、機器(誤り率測定装置1)ごとに当該機器が持つRJに応じて決定することが望ましい。
Xr>c×RJrms ・・・ (b)
上記式(b)において、cは、ジッタ測定対象としての信頼性を有するか否か、すなわち信頼性OKかNGかを判定する閾値を変えるパラメータ(係数)である。本実施形態ではc=1を想定しているが、これよりも小さい数値、または大きい数値であってもよい。この係数cは、機器(誤り率測定装置1)ごとに当該機器が持つRJに応じて決定することが望ましい。
上記式(b)が意味するところは、測りたいRJがあったら、そのRJの測定精度を保つためには、測定に使用する第1のバスタブ曲線80a、または第2のバスタブ曲線80bのDelay方向の幅Xrが測定されたジッタ値RJ以上であるという条件を満たすバスタブ特性を選出することが望ましい、という点にある。
B.両方のバスタブ曲線を使ってジッタ測定を行う場合
バスタブ特性は、例えば、図8に示すように、第1のバスタブ曲線80aと第2のバスタブ曲線80bを有し、本実施形態に係る誤り率測定装置1では、上述したように、そのうちのいずれか一方(片側)を用いてジッタ測定を行う他、両方を用いてジッタ測定を行うことも可能である。
図8に示すバスタブ特性のグラフは、同図に示すバスタブ特性(データセット)が得られたとき、BERU(上限値)とBERL(上限値)の測定範囲内を対象として、それぞれ、第1のバスタブ曲線80aと第2のバスタブ曲線80bに対応する近似線81aと、近似線81bを計算することを前提としている。また、左右それぞれの近似線81a、81bの計算に用いられたデータの存在する位相範囲(Delay範囲)を、それぞれ、Xr1、Xr2と定義している。
片側のバスタブ曲線80aまたは80bのいずれかを用いてジッタ測定を行う上述した方法に代えて、その両方を用いてジッタ測定を行う方法を選択可能である構成に配慮し、かつ、上述した知見1、知見2を踏まえて、本件発明者は、第1のバスタブ曲線80aと第2のバスタブ曲線80bの両方を用いてジッタ測定を行うケースにおいては、ジッタ測定結果の信頼性の判断指標として、下式(c)が有効であることを見出すに至った。
min(Xr1,Xr2)>c×RJrms ・・・ (c)
min(Xr1,Xr2)>c×RJrms ・・・ (c)
上記式(c)が意味するところは、測りたいRJがあったら、そのRJの測定精度を保つためには、バスタブ特性における第1のバスタブ曲線80a及び第2のバスタブ曲線80bのそれぞれのDelay方向の幅Xr1、Xr2のうちのいずれか小さい方がRJ以上であるという条件を満たすバスタブ特性を選出する必要がある、という点にある。
次に、本実施形態に係る誤り率測定装置1におけるジッタ測定の流れについて図9を参照して説明する。
図9に示すように、本実施形態に係る誤り率測定装置1では、1番目のバスタブ特性を得る手順として、位相量(Delay)を初期値から1周期の範囲で順次動かして誤り率を測定する。ここでDelayを初期値から1周期の範囲で動かして誤り率を測定することを1掃引と定義し、1掃引によって得られたクロック信号とデータの位相関係と誤り率の関係をデータセットと定義する。1番目のバスタブ特性を得るための1回目の掃引によって1番目(図中、No.1)のデータセットが得られる。
次に、ジッタ測定制御部7eで1番目のデータセットに基づくジッタ測定が行われる。そして、測定されたジッタ値RJの信頼性の有無が、信頼性判定部7fによって、予め設定された判断指標(上記式(b)、式(c)参照)を用いて判定される。ここでは1番目のデータセットについて、測定されたジッタ値RJの信頼性が信頼性なし(NG)と判定され、これにより1番目のデータセットは取捨選択部7gにより廃棄される。
次に、2番目のバスタブ特性を得るための掃引が行われ、該掃引により得られたバスタブ特性に対応する2番目(図中、No.2)のデータセットが得られる。ここでは2番目のデータセットについても測定されたジッタ値RJの信頼性が信頼性なし(NG)と判定され、該2番目のデータセットも取捨選択部7gによって廃棄される。
引き続き3番目のバスタブ特性を得るための掃引が行われ、該掃引により得られたバスタブ特性に対応する3番目(図中、No.3)のデータセットが得られる。3番目のデータセットについては、測定されたジッタ値RJの信頼性が信頼性あり(OK)と判定される。これにより、3番目のデータセットは取捨選択部7gにより有効なデータセットして取得される。以後、誤り率測定装置1では、取捨選択部7gにより取得された3番目のデータセットに基づいてランダムジッタRJ、確定的ジッタDJ、トータルジッタTJ等の各種ジッタを計算する。ここで、上記信頼性判定のために測定済のランダムジッタRJについては、測定値をそのまま有効な測定値として取得してよいし、再度測定し直すようにしてもよい。
このように、図9の例においては、3回の掃引を実施して得られた3つのデータセットのうちのジッタ測定結果が信頼性あり(OK)と判定された最後のデータセット1つだけを用いてジッタ算出処理を行う場合の処理イメージを示している。
次に、誤り率測定装置1におけるジッタ測定制御動作について図10に示すフローチャートを参照して説明する。図10においては、バスタブ特性のデータセットにおける両方のバスタブ曲線を使ってジッタ測定を行う場合を例に挙げて説明する。
誤り率測定装置1においてジッタ測定処理を行うにはまず、ユーザが操作部6を操作して所望の測定パラメータの値を入力し、パラメータ設定部7aがその入力された値を有する測定パラメータを設定する(ステップS1)。設定する測定パラメータとしては、試験信号の規格、誤り率の測定範囲、クロック信号の位相操作パターン、信頼性判断に用いる判断指標などが挙げられる。
試験信号の規格は、例えば、各種パターン長を有する擬似ランダム(Pseudo Random Binary Sequence:PRBS)パターンの中から所望する一つのパターンを選択的に指定することで設定する。誤り率の測定範囲は、上限値(BERU)と下限値(BERL)を指定することで設定する。クロック信号の位相操作パターンとしては、変動させる単位位相量、1掃引の周期等を設定する。
判断指標については、バスタブ特性における2つのバスタブ曲線80a、80bのうちの片側をジッタ測定対象として使用する場合には上記式(b)を、両方を使用する場合には上記式(c)をそれぞれ設定する。また、上記式(b)または式(c)の設定に際しては、判断指標の閾値を変えるパラメータである係数cをさらに設定する。具体例として、本実施形態に係る誤り率測定装置1では、上記式(c)を設定するとともに、上記係数cとして例えば1を設定する。
測定パラメータの設定完了後、測定制御部7cは、ジッタ測定を開始することを指示するジッタ測定開始操作が行われたか否かを監視する(ステップS2)。ここでジッタ測定開始操作が行われてないと判定された場合(ステップS2でNO)、測定制御部7cは上記監視を続行する(ステップS2)。
これに対し、ジッタ測定開始操作が行われたと判定された場合(ステップS2でYES)、測定制御部7cは、信号送信部2aからステップS1で設定された規格の試験信号を送信させるように制御する(ステップS3)。信号送信部2aから試験信号が送信された後、DUT10が該試験信号を受信すると、当該DUT10はその応答信号として被測定信号を送信する。
ステップS3で信号送信部2aから試験信号を送信させる制御を行った後、測定制御部7cは、その試験信号に受信によりDUT10が送出する被測定信号(データ)を信号受信部3aの0/1判定器3a1に順次入力させるように制御する(ステップS4)。
ステップS4でのデータの入力に合わせて、位相操作制御部7bは、信号受信部3aの可変遅延器3a2を、入力データに対してクロック信号をステップS1で設定された位相操作パターンで遅延させるように制御する。具体的に、位相操作制御部7bは、初期値から1周期の範囲内で順に動かすようにクロック遅延量(Delay)を操作するように制御する(ステップS5)。この位相操作制御により、信号受信部3aの0/1判定器3a1からは、該遅延操作を受けたクロック信号を用いてデータの2値判定結果「0」または「1」が出力され、信号受信部3aから誤り率測定部3bに対しては上記データとその2値判定結果が送出される。
引き続き、測定制御部7cは、誤り率測定部3bにおいて信号受信部3aから入力するデータとのその2値判定結果に基づいて誤り率測定処理を行うように制御する(ステップS6)。具体的に測定制御部7cでは、信号受信部3aから入力するデータとデータ記憶部2bから与えられる上記規格の試験信号の基準パターン(既定のパターン)とを同期させるように同期検出部3b1を制御する。次いで、測定制御部7cは、比較部3b2でデータの2値判定結果と上記基準パターンとを比較させ、その比較結果を記憶部4のBER測定結果記憶領域に記憶させるように制御する。これにより、ステップ6においては、初期値から1周期の範囲内のクロック遅延量の変動に対応する誤り率測定結果が得られる。
引き続き、測定制御部7cは、バスタブ特性算出部7dにバスタブ特性を演算させるように制御する(ステップS7)。この制御により、バスタブ特性算出部7dは、ステップS5でのクロック遅延量の操作制御とステップS6でのBER測定結果に基づき、クロック信号とデータの位相関係と、測定された誤り率との関係を示すバスタブ特性のデータセットを生成する演算処理を実行する(ステップS7)。
ステップS5、S6及びS7の処理は、図9を参照して説明した処理、つまり、クロック遅延量(Delay)を初期値から1周期の範囲で動かして誤り率を測定する測定処理を1回(1掃引)実施してバスタブ特性のデータセットを取得する処理に相当する。
ステップS7でバスタブ特性の1掃引に係る1つのデータセットを生成した後、ジッタ測定制御部7eは、該データセットに基づくジッタの演算処理を行う(ステップS8)。この演算処理において、ジッタ測定制御部7eは、上記データセットから上記式(10)、式(11)、式(12)に基づいてそれぞれランダムジッタRJ、確定的ジッタDJ、トータルジッタTJのジッタ値を算出する。なお、この演算処理においては、最低限、ランダムジッタRJを測定できればよい。
引き続き、信頼性判定部7fは、ステップS8で測定されたデータセットがジッタ測定対象として信頼性があるか否かを予め設定(ステップS1参照)した判断指標を用いて判定する(ステップS9)。
ここで信頼性がないと判定された場合(ステップS9でNO)、取捨選択部7gは、当該データセットを廃棄し(ステップS12)、その後、測定制御部7cは、ステップS3以降の処理を続行するように制御する。
これに対して信頼性があると判定された場合(ステップS9でYES)、信頼性判定部7fはその旨をジッタ測定制御部7eに通知するとともに、取捨選択部7gは信頼性があると判定された当該データセット(ステップS8でのジッタ測定に使用されたもの)を取得してその処理先へと渡す制御を行う(ステップS10)。ここで取捨選択部7gは、取得した上記データセットを処理先として、例えば、ジッタ測定制御部7e、及び表示制御部7hに対して上記データセットを入力する。
処理先では、入力するデータセットに基づく処理を実施する(ステップS11)。例えば、ジッタ測定制御部7eは、信頼性判定部7fから上記通知を受けた後、入力されるデータセットに基づいて、再度、ランダムジッタRJ、確定的ジッタDJ、トータルジッタTJ等を測定するジッタ測定を実施する。ここでジッタ測定制御部7eは、再度、ジッタ測定を行う代わりに、ステップS8でのジッタ測定結果を有効な測定結果として表示制御部7hに引き渡すようにしてもよい。
また、表示制御部7hは、取捨選択部7gの取捨選択処理により入力されるデータセットに基づきジッタ測定結果を示すジッタ測定画面71を表示し、その後、上述した一連の処理を終了する。
ジッタ測定画面71は、例えば、図13に示すように、バスタブ特性の測定結果を表示するバスタブ測定表示領域72と、ジッタ測定結果を表示するジッタ測定表示領域73と、測定の進捗状況を表示する測定状況表示領域74と、を有している。バスタブ測定表示領域72にはバスタブ特性を示すグラフ72aが表示される。また、グラフ72a上には、第1のバスタブ曲線80aと、第2のバスタブ曲線80bと、第1のバスタブ曲線80a、第2のバスタブ曲線80bのそれぞれに対応する近似線81a、81bが表示される。さらにグラフ72a上には、ユーザが設定した誤り率の測定範囲を示す横線72c、横線72dは表示される。横線72cは上限値(BERU)を示し、横線72dは下限値(BERL)を示している。
次に、図10のステップS9における信頼性判定処理の詳細について図11に示すフローチャートを参照して説明する。信頼性判定処理が開始されると、信頼性判定部7fは、ステップS7(図10参照)で生成された1掃引に係るデータセット(図8参照)を取得する(ステップS21)。
次いで、信頼性判定部7fは、取得したデータセットにおける第1のバスタブ曲線80aと第2のバスタブ曲線80bごとにそれぞれ近似線81a、81bを算出する処理を実行する(ステップS22)。
引き続き信頼性判定部7fは、近似線81a、81bが算出されたデータセットにおける当該近似線81a、81bにそれぞれ対応するDelayの範囲、すなわち位相範囲Xr1、Xr2(図8参照)、上記ステップS1(図10参照)で設定した係数c、及び上記ステップS8で測定したランダムジッタRJの測定値を読み取る(ステップS23)。
さらに信頼性判定部7fは、ステップS1(図10参照)で設定されている判断指標である、例えば、上記式(c)を読み取り、この式(c)にステップS23で読み取った位相範囲Xr1、Xr2、係数c、RJの測定値を当て嵌めることで、当該データセットがジッタ測定対象としての信頼性を有するか否かを判定する(ステップS24)。
ここで、位相範囲Xr1、Xr2のうちの小さい方の値が上記RJの測定値に上記係数cを乗じた値以下であって、該データセットが上記式(c)を満足しないと判定されたときに(ステップS24でNO)、信頼性判定部7fは、当該データセットが信頼性なし(NG)と判定し(ステップS26)、図10のステップS12の処理へと移行する。ステップS12において、取捨選択部7gは、当該データセットを廃棄する。
一方、位相範囲Xr1、Xr2のうちの小さい方の値が上記RJの測定値に上記係数cを乗じた値より大きく、該データセットが上記式(c)を満足すると判定されたときには(ステップS24でYES)、信頼性判定部7fは、当該データセットが信頼性あり(OK)と判定し(ステップS25)、図10のステップS10の処理へと移行する。ステップS10において、取捨選択部7gは、当該データセットを取得してジッタ測定制御部7e及び表示制御部7hへと渡す処理を実施する。
なお、図10においては、バスタブ特性のデータセットにおける両方のバスタブ曲線80a、80bを使用してジッタ測定を行う場合について述べたが、同様にして本発明では、バスタブ曲線80a、80bのうちのいずれか所望する側(片側)だけを使ってジッタ測定を行うこともできる。この場合は、図10に示す一連の処理中、ステップS1では使う側のバスタブ曲線80aまたは80bに対応して上記式(b)を設定し、ステップS9ではそれ以前に取得されたバスタブ特性の1掃引に係るデータセットが上記式(b)を満たすか否かを判定し、信頼性の有無を判定するように制御すればよい。
次に、本実施形態に係る誤り率測定装置1のジッタ測定に係るシミュレーション動作について説明する。本実施形態では、適宜な測定パラメータを設定(図10のステップS1参照)したうえで、誤り率測定装置1を図10のフローチャートに沿って動作させるシミュレーション動作を実施した。このシミュレーション動作によって得られるジッタ測定結果の表示例を図12に示している。図12(a)は信頼性あり(OK)と判定されたときの表示例を示し、図12(b)は信頼性なし(NG)と判定されたときの表示例を示している。
本実施形態においては、可変遅延器3a2が、例えば、最大10mUIpp(図12(a)参照)、または30mUIpp(図12(b)参照)で揺らぐことを想定した場合に得られるバスタブ特性の結果をシミュレーションした。いずれの場合も、誤り率1E-6~1E-10の範囲でバスタブ特性を描いたときの結果を例示している。そして、ここでは、得られたバスタブ特性の2つのバスタブ曲線80a、80bの両方を用いてジッタ測定を行うことを前提としている。
図12(a)の例においては、バスタブ曲線80aの位相範囲Xr1がバスタブ曲線80bの位相範囲Xr2よりも位相範囲が大きく、小さい方の位相範囲Xr2=36mUIという範囲で近似線をかけている。このとき、RJの測定値として、23.7mUIrmsを得ている。この場合、位相範囲Xr1とXr2のうちの小さい方の位相範囲Xr2=36mUIがRJの測定値である23.7mUIrmsよりも大きく、上記式(c)の判断指標を満たしており、ジッタ測定対象としての信頼性あり(OK)の判定結果が得られている。
図12(b)の例では、可変遅延器3a2の揺らぎによって誤り率1E-6~1E-10の範囲が得られたポイントでのBER測定がばらつき、信頼性あり(OK)の判定結果が得られた図12(a)に示す例に比べてバスタブ曲線80bの近似線の傾きが鈍くなっている。この状態では、鈍い傾きの割に狭い掃引の中でしかデータが得られていないため、RJの測定値は44.9mUIrmsとなっているが掃引範囲は信頼性あり(OK)(図12(b)参照)の場合と変わらない。
この場合、位相範囲Xr1とXr2のうちの小さい方の位相範囲Xr2=36mUIがRJの測定値である44.9mUIrmsよりも小さく、上記式(c)の判断指標を満たしておらず、これにより、ジッタ測定対象としての信頼性なし(NG)の判定結果が得られている。
なお、上記実施形態においては、NRZ信号を対象とするバスタブ特性の信頼性判定に基づくジッタ測定について述べたが、本発明におけるバスタブ特性の信頼性判定に基づくジッタ測定の制御は、パルス振幅変調(Pulse-Amplitude Modulation)方式による多値PAM信号(PAM4信号等)を対象とする誤り率測定にも適用可能である。
この場合、信号受信部3a(図3参照)は、0/1判定器3a1に代えてPAM4信号に対応する0/1判定器を用い、かつ、可変遅延器3a2としてはPAM4信号の3つのレベルにそれぞれ対応する位相操作機能を有する構成により実現することができる。
上述したように、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、被測定信号として入力するデータの入力に合わせて該データの2値判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を可変遅延器3a2で順次変動させてデータとクロック信号の位相関係を操作する位相操作を行う位相操作制御部7bと、位相操作を伴う2値判定の判定結果を用いてデータのパターンと既定のパターンを比較し、該比較結果に基づき誤り率を測定する誤り率測定部3bと、誤り率の測定に合わせて、可変遅延器3a2及び位相操作制御部7bにより操作された上記位相関係と、誤り率測定部3bにより測定された誤り率との関係を示すバスタブ特性の位相操作の1掃引に係るデータセットを算出するバスタブ特性算出部7dと、データセットに基づき上記データのジッタを測定するジッタ測定制御部7eと、ジッタの測定結果における特定のジッタの測定値RJrmsと、測定に使用したデータセットにおけるバスタブ曲線80a、80bに対応する位相操作に係る遅延量の幅とにより規定される判断指標を用いて上記測定結果の信頼性を判定する信頼性判定部7fと、を具備して構成されている。
この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、判断指標を設けてジッタ測定結果の信頼性を判定する機能を設けることで、信頼性ありと判定されたときのジッタ測定に使用された1つのデータセットから短時間で信頼性の高いジッタ測定を行うことができ、複数のデータセットを用いた統計処理を行う必要がなくなる。また、判断指標の選び方次第で可変遅延器3a2の遅延揺らぎの影響を軽減することができ、1つのデータ セットのみからジッタ測定を行うことと相まって、遅延揺らぎの影響を軽減しつつ短時間で高精度のジッタ測定を行うことが可能となる。
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、信頼性判定部7fによりジッタ測定結果が信頼性ありと判定された場合は測定に使用したデータセットを取得し、ジッタ測定結果が信頼性なしと判定された場合は、データセットを廃棄する取捨選択部7gをさらに有する構成である。
この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、ジッタ測定結果の信頼性がないと判定された場合、すぐに次回のジッタ測定に移行することができ、信頼性のあるジッタ測定結果を得るまでの時間を短縮することができる。
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1において、信頼性判定部7fは、ジッタ測定制御部7eにより測定されたジッタ値(RJrms)と、該測定に使用したバスタブ特性の2つのバスタブ曲線80a、80bのうちのいずれか一方に対応する上記位相操作に係る遅延量の幅(Xr)とを比較し、上記式(b)で示される判断指標を満足する否かに応じて上記信頼性の有無を判定するようになっている。
この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置は、2つのバスタブ曲線80a、80bのうちのいずれか一方を用いてジッタ測定を行う際に、予め設定した判断指標に基づいて可変遅延器3a2の遅延揺らぎの影響が軽減された信頼性の高い1つのデータセットを確実に選び出すことができ、短時間で高精度のジッタ測定を行うことができる。
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1において、信頼性判定部7fは、ジッタ測定制御部7eにより測定されたジッタ値(RJrms)と、該測定に使用したバスタブ特性の2つのバスタブ曲線80a、80bにそれぞれ対応する上記位相操作に係る遅延量の幅(Xr1、Xr2)のうちの小さい方の前記遅延量の幅(min(Xr1,Xr2))とを比較し、上記式(c)で示される判断指標を満足する否かに応じて上記信頼性の有無を判定する構成である。
この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、2つのバスタブ曲線80a、80bの両方を用いてジッタ測定を行う際に、予め設定した判断指標に基づいて可変遅延器3a2の遅延揺らぎの影響が軽減された信頼性の高い1つのデータセットを確実に選び出すことができ、短時間で高精度のジッタ測定を行うことができる。
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1において、係数cは、上記信頼性の有無を判定する閾値を変更するパラメータであり、事前に実施する誤り率測定結果に基づき設定される当該誤り率測定装置固有の値である構成を有している。
この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、自装置固有の係数cを設定しておくことで、自装置に最適な判断指標を用いて短時間かつ高精度のジッタ測定を行うことができる。
また、本実施形態に係る誤り率測定方法は、被測定信号として入力するデータの入力に合わせて該データの2値判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を可変遅延器3a2で順次変動させてデータとクロック信号の位相関係を操作する位相操作を行う位相操作ステップ(S5)と、位相操作を伴う2値判定の判定結果を用いてデータのパターンと既定のパターンを比較し、該比較結果に基づきデータの誤り率を測定する誤り率測定ステップ(S6)と、誤り率の測定に合わせて、位相操作ステップにより操作された位相関係と、誤り率測定ステップにより測定された誤り率との関係を示すバスタブ特性の位相操作の1掃引に係るデータセットを算出するバスタブ特性算出ステップ(S7)と、上記データセットに基づきデータのジッタを測定するジッタ測定ステップ(S8)と、ジッタの測定結果における特定のジッタ(RJrms)の測定値と、測定に使用したデータセットにおけるバスタブ曲線80a、80bに対応する位相操作に係る遅延量の幅とにより規定される判断指標を用いてジッタ測定結果の信頼性を判定する判定ステップ(S9)と、を含む構成である。
この構成により、本実施形態に係る誤り率測定方法は、判断指標を設けてジッタ測定結果の信頼性を判定する機能を設けることで、信頼性ありと判定されたときのジッタ測定に使用された1つのデータセットから短時間で信頼性の高いジッタ測定を行うことができ、複数のデータセットを用いた統計処理を行う必要がなくなる。また、判断指標の選び方次第で可変遅延器3a2の遅延揺らぎの影響を軽減することができ、1つのデータセットのみからジッタ測定を行うことと相まって、遅延揺らぎの影響を軽減しつつ短時間で高精度のジッタ測定を行うことが可能となる。
以上のように、本発明に係る誤り率測定装置、及び誤り率測定方法は、1つのデータセットを用いて、可変遅延器の遅延揺らぎが軽減された高精度のジッタ測定を短時間で行うことが可能であるという効果を奏し、バスタブ特性に基づきジッタ測定を行う誤り率測定装置、及び誤り率測定方法全般に有用である。
1 誤り率測定装置
2 パルスパターン発生器(PPG)
3 誤り率測定器(ED)
3a 信号受信部
3a2 可変遅延器(位相操作手段)
3b 誤り率測定部(誤り率測定手段)
7 制御部
7b 位相操作制御部(位相操作手段)
7c 測定制御部(測定制御手段)
7d バスタブ特性算出部(バスタブ特性算出手段)
7e ジッタ測定制御部(ジッタ測定手段)
7f 信頼性判定部(判定手段)
7g 取捨選択部(データ取捨選択手段)
10 DUT(被試験対象)
80a 第1のバスタブ曲線
80b 第2のバスタブ曲線
81a、81b 近似線
2 パルスパターン発生器(PPG)
3 誤り率測定器(ED)
3a 信号受信部
3a2 可変遅延器(位相操作手段)
3b 誤り率測定部(誤り率測定手段)
7 制御部
7b 位相操作制御部(位相操作手段)
7c 測定制御部(測定制御手段)
7d バスタブ特性算出部(バスタブ特性算出手段)
7e ジッタ測定制御部(ジッタ測定手段)
7f 信頼性判定部(判定手段)
7g 取捨選択部(データ取捨選択手段)
10 DUT(被試験対象)
80a 第1のバスタブ曲線
80b 第2のバスタブ曲線
81a、81b 近似線
Claims (6)
- 被測定信号として入力するデータの入力に合わせて該データの2値判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を可変遅延器(3a2)で順次変動させて前記データと前記クロック信号の位相関係を操作する位相操作を行う位相操作手段(7b)と、
前記位相操作を伴う前記2値判定の判定結果を用いて前記データのパターンと既定のパターンを比較し、該比較結果に基づき前記データの誤り率を測定する誤り率測定手段(3b)と、
前記誤り率の測定に合わせて、前記位相操作手段により操作された前記位相関係と、前記誤り率測定手段により測定された前記誤り率との関係を示すバスタブ特性の前記位相操作の1掃引に係るデータセットを算出するバスタブ特性算出手段(7d)と、
前記データセットに基づき前記データのジッタを測定するジッタ測定手段(7e)と、
前記ジッタの測定結果における特定のジッタの測定値と、測定に使用した前記データセットにおけるバスタブ曲線(80a、80b)に対応する前記位相操作に係る前記遅延量の幅とにより規定される判断指標を用いて前記測定結果の信頼性を判定する判定手段(7f)と、
を具備することを特徴とする誤り率測定装置。 - 前記判定手段により、前記測定結果が信頼性ありと判定された場合は測定に使用した前記データセットを取得し、前記測定結果が信頼性なしと判定された場合は、前記データセットを廃棄するデータ取捨選択手段(7g)をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の誤り率測定装置。
- 前記判定手段は、前記ジッタ測定手段により測定されたジッタ値(RJrms)と、測定に使用した前記データセットの2つのバスタブ曲線(80a、80b)のうちのいずれか一方に対応する前記位相操作に係る前記遅延量の幅(Xr)とを比較し、下式1の判断指標を満足する否かに応じて前記信頼性の有無を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の誤り率測定装置。
Xr>c×RJrms ・・・ 式1
但し、cは任意の係数 - 前記判定手段は、前記ジッタ測定手段により測定されたジッタ値(RJrms)と、測定に使用した前記データセットの2つのバスタブ曲線(80a、80b)にそれぞれ対応する前記位相操作に係る前記遅延量の幅(Xr1、Xr2)のうちの小さい方の前記遅延量の幅(min(Xr1,Xr2))とを比較し、下式2の判断指標を満足する否かに応じて前記信頼性の有無を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の誤り率測定装置。
min(Xr1,Xr2)>c×RJrms ・・・ 式2
但し、cは任意の係数 - 前記係数cは、前記信頼性の有無を判定する閾値を変更するパラメータであり、事前に実施した誤り率測定結果に基づき設定される当該誤り率測定装置固有の値であることを特徴とする請求項3または4に記載の誤り率測定装置。
- 被測定信号として入力するデータの入力に合わせて該データの2値判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を可変遅延器(3a2)で順次変動させて前記データと前記クロック信号の位相関係を操作する位相操作を行う位相操作ステップ(S5)と、
前記位相操作を伴う前記2値判定の判定結果を用いて前記データのパターンと既定のパターンを比較し、該比較結果に基づき前記データの誤り率を測定する誤り率測定ステップ(S6)と、
前記誤り率の測定に合わせて、前記位相操作ステップにより操作された前記位相関係と、前記誤り率測定ステップにより測定された前記誤り率との関係を示すバスタブ特性の前記位相操作の1掃引に係るデータセットを算出するバスタブ特性算出ステップ(S7)と、
前記データセットに基づき前記データのジッタを測定するジッタ測定ステップ(S8)と、
前記ジッタの測定結果における特定のジッタの測定値と、測定に使用した前記データセットにおけるバスタブ曲線(80a、80b)に対応する前記位相操作に係る前記遅延量の幅とにより規定される判断指標を用いて前記測定結果の信頼性を判定する判定ステップ(S9)と、
を含むことを特徴とする誤り率測定方法。
Priority Applications (1)
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JP2020148796A JP7058308B2 (ja) | 2020-09-04 | 2020-09-04 | 誤り率測定装置、及び誤り率測定方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (2)
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JP2022043496A JP2022043496A (ja) | 2022-03-16 |
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JP2020148796A Active JP7058308B2 (ja) | 2020-09-04 | 2020-09-04 | 誤り率測定装置、及び誤り率測定方法 |
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JP (1) | JP7058308B2 (ja) |
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2020
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