以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
(実施の形態1)
本実施の形態の超音波検査装置は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて製造された静電容量型超音波トランスデューサを備えた容量検出型の超音波送受信センサである。ここでは、静電容量型デバイスを備えた半導体チップを湾曲させることで、半導体チップから発振する超音波ビームを収束させることについて説明する。
<本実施の形態の超音波検査装置の構造>
以下に、図1~図3を用いて、本実施の形態の超音波検査装置の構成について説明する。図1は、本実施の形態の超音波検査装置を構成する半導体チップおよびチップホルダを示す平面図である。図2は、本実施の形態の超音波検査装置を示す断面図である。図3は、本実施の形態の超音波検査装置を示す拡大断面図である。
図1に示すように、本実施の形態の超音波検査装置は、半導体チップCHPおよびチップホルダCHを有している。半導体チップCHPは、厚さ方向において互いに反対側に位置する主面(上面、表面)および裏面(下面)を有しており、図1では、半導体チップCHPの主面側の平面図(上面図)を示している。
半導体チップCHPの平面形状は、例えば円形であり、チップホルダCHの平面形状は、例えば矩形である。半導体チップCHPは、チップホルダCH上に搭載されている。チップホルダCHは、上面に張り付いた半導体チップCHPを保持する基板であり、半導体チップCHPを裏側から保持することから、バッキング層とも呼ばれる。半導体チップCHPの主面には、平面視で互いに直交するX方向およびY方向のそれぞれに沿って並ぶ複数のセルCLから成るセルアレイCAと、ボンディングパッド(以下、パッドという)BPとが配置されている。
セルアレイCAは、平面視で円形に近い形状で形成されている。言い換えれば、複数のセルCLは、平面視で所定の円内に極力多く配置されている。パッドBPは、平面視において、半導体チップCHPの端部とセルアレイCAとの間において、半導体チップCHPの主面に形成されている。パッドBPは2以上形成されており、ここでは、セルアレイCAを挟んで1対形成されている。パッドBPは、半導体チップCHPの入出力用の端子であり、パッドBPには、ボンディングワイヤなどが電気的に接続される。
図2に示すように、チップホルダCHの上面には、曲面状の凹部40が形成されている。つまり、凹部40の表面は曲面から成り、凹部40の深さは、平面視での凹部40の中心で最も深く、平面視での凹部40の端部で最も浅くなっている。例えば、凹部40の表面は、球体の表面の一部と一致する曲面から成る。この場合、凹部40の表面は、平面視での凹部40の中心の直上の所定の一点から同じ距離に位置する。つまり、凹部40の表面は、断面において所定の円に沿っている。あるいは、凹部40はパラボラ状であってもよい。つまり、凹部40の表面は、断面において放物線の一部と一致する曲面により構成されていてもよい。
凹部40の表面には、熱応力膜6を介して半導体チップCHPが張り付いている。言い換えれば、凹部40上には半導体チップCHPが形成されており、半導体チップCHPは、凹部40の表面に沿って凹面状に湾曲している。すなわち、半導体チップCHPは、お椀状の形状を有している。ここでは、半導体チップCHPは、その全体が凹部40の直上に位置しており、チップホルダCHの平坦な上面に沿う方向(横方向)において、半導体チップCHPの端部は凹部40よりも外側に出ていない。つまり、セルアレイCAおよびパッドBP(図1参照)のいずれもが凹部40の直上に位置している。ただし、半導体チップCHPの端部が横方向において凹部40の外側に位置し、チップホルダCHの平坦な上面の直上に配置されていてもよい。
図3は、図2の破線で示す箇所を拡大して示す断面図である。図3に示すように、チップホルダCHの上面である凹部40の表面上には、接着層7を介して、半導体チップCHPが接着(固定)されている。半導体チップCHPは、例えば主にシリコン(Si、単結晶シリコン)から成る半導体基板1を有している。半導体基板1は、主面(上面)と、当該主面の反対側の裏面(下面)とを有しており、当該裏面は、熱応力膜6により覆われている。つまり、熱応力膜6とチップホルダCHの上面である凹部40の表面とは、接着層7により接着されている。
半導体基板1上には、層間絶縁膜4と、層間絶縁膜4内の下部電極2、空隙5および上部電極3とが形成されている。つまり、層間絶縁膜4内には、下部電極2と、下部電極2上に層間絶縁膜4を介して位置する空隙(空洞部)5と、空隙5上に層間絶縁膜4を介して位置する上部電極3とが形成されている。下部電極2、空隙5および上部電極3のそれぞれの下面、側面および上面は、層間絶縁膜4により覆われている。1つの下部電極2と、1つの空隙5と、1つの上部電極3とは、静電容量型超音波トランスデューサのセルCLを構成している。各セルCLを構成する下部電極2、空隙5および上部電極3は、平面視で重なっている。セルCLは半導体チップCHPの主面および半導体基板1の主面(上面)に沿って行列状に並んでいるため、空隙5も平面視で行列状に複数並んでいる。複数のセルCLのうち、隣り合うセルCL同士は、下部電極2または上部電極3のいずれか一方を共有していてもよい。
接着層7は、例えば、DAF(Die Attach Film)などから成る。また、接着層7の導電性は、あってもなくてもよい。熱応力膜6は、シリコンに対して熱膨張係数が大きい材料から成る。熱応力膜6は、例えば金属膜から成り、例えば、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Fe(鉄)若しくはCu(銅)またはそれらの合金から成ることが望ましい。熱応力膜6は、熱応力膜6上の半導体基板1を構成するシリコンに比べて熱膨張係数が大きいことで、超音波検査装置の製造工程での加熱時に半導体基板1よりも大きく膨張し、半導体チップCHPの中心部が下側に下がるように半導体チップCHPの全体を湾曲させる役割を有している。つまり、熱応力膜6は、特に加熱時において半導体基板1よりも圧縮応力が大きい膜である。
層間絶縁膜4は、例えば酸化シリコンまたは窒化シリコンから成る。図3では層間絶縁膜4を1つの層として示しているが、層間絶縁膜4は、実際には複数の絶縁膜から成る積層構造を有している。また、熱応力膜6は、層間絶縁膜4よりも熱膨張係数が大きく、圧縮応力が大きい。
セルCLは、可変容量であるコンデンサにより構成される静電容量型デバイスセルである。つまり、下部電極2、上部電極3およびそれらの間の空隙5は、コンデンサ(容量素子、静電容量素子)を構成している。本願では、複数のセルCLを備えた静電容量型デバイスを、静電容量型超音波トランスデューサ(CMUT:Capacitive Micro-machined Ultrasonic Transducer)と呼ぶ。なお、本願では、静電容量型超音波トランスデューサを、単に超音波トランスデューサと呼ぶ場合がある。各セルCLは1つの空隙5を有している。空隙5の平面視での形状は、例えば矩形である。複数のセルCLのそれぞれを構成する空隙5は、互いに離間している。空隙5は、例えば真空により構成されている。
各セルCLは、空隙5と平面視で重なる領域において、空隙5上にメンブレン(可撓性膜)を有している。メンブレン内には、上部電極3が形成されている。つまり、空隙5上の層間絶縁膜4および上部電極3はメンブレンを構成している。複数のセルCLのそれぞれは、超音波を発生(発振)させ、超音波を送信することが可能であり、かつ、超音波を受信することが可能な最小単位の振動子である。当該振動子は、静電型可変容量(可変容量センサ)を構成している。
メンブレンは、上方および下方に空間があるため、音波を受けた際に動き、上下に振動する。上部電極3および下部電極2は、例えばタングステン(W)膜または窒化チタン(TiN)膜などから成る。また、上部電極3および下部電極2のそれぞれは、タングステン膜または窒化チタン膜を含む複数の導電膜から成る積層構造を有していてもよい。
本実施の形態の超音波検査装置を構成する半導体チップCHPは、超音波トランスデューサを構成する複数の振動子(セルCL)を有している。超音波トランスデューサを用いて超音波を発生させる動作(送信動作)では、下部電極2および上部電極3に直流および交流の電圧を重畳印加することにより、下部電極2と上部電極3との間に静電気力が働き、各振動子のメンブレンが、メンブレンのばねの力との釣り合いにより、共振周波数付近で垂直方向に振動する。これにより、振動子から数MHzの超音波(超音波パルス)が発生する。なお、ここでいう垂直方向(縦方向)とは、半導体基板1の主面に対して垂直な方向である。
また、静電容量型超音波トランスデューサによる受信動作では、各振動子(セルCL)のメンブレンに到達した超音波の圧力によりメンブレンが振動し、下部電極2と上部電極3との間の静電容量が変化することで、超音波を検出することができる。すなわち、上記送信動作で発振した超音波を被検体(例えば生体)に当てて反射させ、反射波により起きる下部電極2と上部電極3との間隔の変位を、静電容量(各振動子の静電容量)の変化として検出する。このように静電容量型超音波トランスデューサを用いて超音波の送受信(送受波)を行うことにより、例えば生体組織の断層像を撮像することができる。
ここで、図2に示すチップホルダCHは、例えばカーボンファイバを含む絶縁材料、または、エポキシ樹脂などから成る。これは、半導体チップCHPにおいて発振した超音波の一部が半導体チップCHP側からチップホルダCH側へ進んだ場合、チップホルダCHの底面で反射し、再度チップホルダCH内を通って半導体チップCHPにおいて受信され、これによりノイズが発生することを防ぐためである。つまり、チップホルダCHを、カーボンファイバを含む絶縁材料またはエポキシ樹脂などのように、超音波が内部で減衰し易い材料で構成することで、チップホルダCH内に漏れた超音波が不要な応答(例えばノイズ)の発生の原因となることを防ぐことができる。
<本実施の形態の超音波検査装置の製造方法>
以下に、図4~図9を用いて、本実施の形態の超音波検査装置の製造方法について説明する。図4~図5および図7~図9は、本実施の形態1の超音波検査装置の製造工程中の断面図である。図6は、本実施の形態の超音波検査装置の製造工程中の平面図である。
まず、図4に示すように、半導体基板1を用意する。半導体基板1は、例えば単結晶シリコン(Si)から成る半導体基板(半導体ウェハ)である。
次に、図5に示すように、半導体基板1上に、層間絶縁膜4と、層間絶縁膜4内の下部電極2、空隙5および上部電極3とを形成する。具体的には、半導体基板1上に絶縁膜を介して導電膜(金属膜)を形成した後、当該導電膜をパターニングして下部電極2を形成する。続いて、下部電極2を覆うように半導体基板1上にさらに絶縁膜を形成した後、当該絶縁膜上に、犠牲膜から成るパターンを複数形成する。当該犠牲膜は、例えば金属膜から成る。犠牲膜は、後の工程で除去される膜である。
続いて、犠牲膜を覆うように、半導体基板1上にさらに絶縁膜を形成する。その後、当該絶縁膜上に導電膜(金属膜)を形成した後、当該導電膜をパターニングして上部電極3を形成する。続いて、上部電極3を覆うように、半導体基板1上にさらに絶縁膜を形成する。続いて、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、犠牲膜の直上の絶縁膜を貫通する貫通孔を形成し、当該貫通孔の底部において犠牲膜を露出させる。続いて、当該貫通孔内に薬液を流入させ、これにより犠牲膜を除去する。よって、犠牲膜除去された領域には空隙5が形成される。その後、半導体基板1上にさらに絶縁膜を形成することで、上記貫通孔内を絶縁膜で埋め込む。以上の工程により、上記各種の絶縁膜から成る層間絶縁膜4と、下部電極2、空隙5および上部電極3とを形成する。
下部電極2、空隙5および上部電極3のそれぞれは平面視で重なる位置に形成されており、1つのセルCLを構成している。半導体基板1上には、複数のセルCLが行列状に並んで配置されている。
次に、図6および図7に示すように、半導体基板1の裏面を研磨する。このようにバックグラインドを行うことで、半導体基板1を薄膜化する。このように半導体基板1を薄膜化することで、図9を用いて後述する工程において半導体チップCHPを湾曲させる際、チップホルダの上面の凹部に沿って半導体チップCHPを変形させ易くなる。続いて、エッチングまたはダイシングを行うことで、半導体基板1を含む半導体ウェハを個片化し、複数の半導体チップCHPを得る。ここでは、平面視で矩形ではなく円形である半導体チップCHPを形成する。これは、図9を用いて後述する工程において半導体チップCHPを湾曲させる際、チップホルダの上面の凹部に沿って半導体チップCHPを変形させ易くするためである。
半導体チップCHPの主面においては、セルCLが複数並ぶセルアレイCAの外側に、層間絶縁膜4から露出する電極パッドであるパッド(ボンディングパッド)BPが2つ形成されている。
次に、図8に示すように、半導体チップCHPを構成する半導体基板1の裏面を覆う熱応力膜6を形成する。熱応力膜6は、シリコンに対して熱膨張係数が大きい材料から成る。熱応力膜6は例えば金属膜から成り、例えば、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Fe(鉄)若しくはCu(銅)またはそれらの合金から成る。熱応力膜6は、例えば、半導体チップCHPの裏面に貼り付けることができる。
その後、熱応力膜6の裏面、つまり、熱応力膜6の面のうち、半導体基板1側とは反対側の面(下面)の下に接着層7を形成する。接着層7は、例えば、DAF(Die Attach Film)などから成る。また、接着層7は、ペーストでもよく、接着層7の導電性は、あってもなくてもよい。接着層7は、図9を用いて後述する熱処理工程の温度により十分な接着強度が得られる材料から成ることが望ましい。
次に、図9に示すように、チップホルダCHを用意する。チップホルダCHは、例えば平面視で矩形のレイアウトを有し、上面にお椀状(すり鉢状、凹面状)の凹部40を有している。凹部40の平面視の直径は、半導体チップCHPの平面視の直径と同等である。チップホルダCHは、例えばカーボンファイバを含む絶縁材料、または、エポキシ樹脂などから成る。
続いて、チップホルダCHの凹部40の直上に、半導体チップCHPを配置し、チップホルダCHを、ヒータ(加熱器)HTの上に配置する。続いて、ヒータHTを用いて、チップホルダCH、接着層7(図8参照)、熱応力膜6および半導体チップCHPを加熱する。ここで、熱応力膜6は、シリコンより熱膨張係数が大きく、加熱時にシリコンよりも圧縮応力が大きくなる膜である。また、熱応力膜6の熱膨張係数は、図8に示す半導体基板1、層間絶縁膜4のいずれよりも大きい。このため、熱処理により加熱された熱応力膜6が半導体チップCHPよりも横方向に大きく拡がろうとする結果、半導体チップCHPは下側に反り、半導体チップCHPの裏面は接着層7を介して凹部40の表面に接着される。接着層7によりチップホルダCHに接着された半導体チップCHPは、当該熱処理後、ヒータHTを含む熱処理装置から取り出され、常温に戻っても、凹部40に沿ってお椀状に変形したままとなる。
以上により、チップホルダCHおよび半導体チップCHPを含む本実施の形態の超音波検査装置が完成する。
ここでは、図6~図8を用いて説明したように、半導体チップCHPを個片化した後に半導体基板1の裏面に熱応力膜6を貼り付け、熱応力膜6の裏面(下面)の下に接着層7を形成することについて説明した。ただし、半導体ウェハをエッチングまたはダイシングにより個片化して複数の半導体チップCHPを得る前に、半導体基板1の裏面の下に熱応力膜6を形成してもよい。また、半導体ウェハをエッチングまたはダイシングにより個片化して複数の半導体チップCHPを得る前に、熱応力膜6の裏面の下に接着層7を形成してもよい。その場合、半導体基板1の裏面側の熱応力膜6は、スパッタリング法またはメッキ法などにより形成してもよい。
また、図9を用いて説明した熱処理工程では、半導体チップCHPを湾曲させる際、半導体チップCHPがチップホルダCHの凹部40の形状に沿って変形するように、半導体チップCHPに力を加えてもよい。その方法としては、ローラー若しくは押し子などの圧着装置または圧縮空気などを用いて、半導体チップCHPを上方から加圧する方法がある。または、半導体チップCHPの裏面と凹部40とにより囲まれた空間を減圧することで半導体チップCHPを下側に引っ張ってもよい。その場合、凹部40内を減圧するために、チップホルダCHを貫通する溝を形成するか(図17参照)、チップホルダCHを多孔質の材料により形成することが考えられる。
また、ここでは、熱処理工程において、チップホルダCHを乗せるヒータHTを用いたが、ヒータHTの変わりに、雰囲気全体を加熱する加熱炉などを用いてもよい。
<本実施の形態の効果>
以下に、本実施の形態の超音波検査装置およびその製造方法の効果について、図29を用いて説明する。図29は、比較例である超音波検査装置を構成する半導体チップを示す拡大断面図である。
超音波の送受信を行い、映像を取得する超音波検査装置では、CMUTである複数のセルのそれぞれが発する超音波ビームを一点に収束させることにより、CMUTの感度を向上させることができる。そのように超音波ビームを収束させるための構造として、図29の比較例に示すように、半導体チップCHP上に音響レンズALを形成することが考えられる。なお、この音響レンズALは凸型である場合または凹型である場合がある。音響レンズALは、例えば、内部での高周波の超音波の減衰率が低い材料である石英などから成る。ここでいう高周波とは、例えば周波数が20MHz以上の音波である。
CMUTの利点の1つとして、高周波を発生させることにより、撮像により得られる画像の分解能を高めることができる点がある。高周波の超音波は伝搬中の減衰量の増大が問題となるが、石英などから成る音響レンズAL内では、減衰を抑えることができる。また、CMUTの利点の1つとして、CMUTの材料の音響インピーダンスと、CMUTを搭載したプローブの外の環境(例えば水)の音響インピーダンスとを同等の値にすることができ、これにより、反射が起こることを防ぎ、高い感度で送受信を行うことができる点がある。CMUTの音響インピーダンスと、水の音響インピーダンスは、例えば1.5MRayls程度であり、互いに同等である。
しかし、石英などから成る音響レンズの音響インピーダンスは30~40MRaylsである。音波は音響インピーダンスの差が大きい界面で反射し易い性質がある。よって、CMUTのセルから発振された超音波が、半導体チップCHPと音響レンズALとの境界で反射し、プローブの外へ出て行き難くなる問題が生じる。また、水と音響レンズALとの音響インピーダンスの差に起因して、検査対象(例えば生体)から反射した超音波が、水と音響レンズALとの境界で反射し、半導体チップCHPに戻り難くなる問題がある。このように、音響レンズALの音響インピーダンスが半導体チップCHPの音響インピーダンスの10倍以上の大きさを有していることにより、超音波が反射して損失が生じるため、比較例の超音波検査装置では高感度な送受信ができない。
また、音響レンズの材料を変更したとしても、音響インピーダンスの低さと、高周波の超音波の減衰量の小ささとはトレードオフの関係にあり、それらを両立する材料を採用することは困難である。したがって、音響レンズの音響インピーダンスを低減しても、音響レンズ内での超音波の減衰量が大きくなるため、超音波検査装置の感度が低下する問題が生じる。
そこで、本実施の形態の超音波検査装置では、図1~図3に示すように、半導体チップCHPをチップホルダCHの上面の凹部40の表面に沿って変形させている。これにより、音響レンズを形成しなくても、半導体チップCHPの主面のセルアレイCAに並ぶ複数のセルCLを1点に集中するように向けて配置させることができるため、各セルCLから発振される超音波ビームを半導体チップCHPの上方で収束させることができる。すなわち、音響レンズなしで超音波ビームを収束させ、CMUTの感度を向上させることができる。なお、複数のセルCLを所定の1点または所定の方向に向けるということは、すなわち、各セルCLを構成する下部電極と上部電極とが対向する方向を所定の1点または所定の方向に向けるということを意味する。
ここでは、音響レンズがないため、音響レンズ内での超音波の減衰を防ぐことができる。また、音響レンズがないため、半導体チップCHPと音響レンズとの間での音響インピーダンスの差、および、プローブの外部の環境と音響レンズとの間での音響インピーダンスの差に起因して、超音波が反射することを防ぐことができる。よって、CMUTの感度を向上させることができる。以上により、本実施の形態では、超音波検査装置の性能を向上させることができる。
また、CMUTを搭載した半導体チップの平面形状が矩形である場合、チップホルダCHの上面の円形の凹部40の表面に沿って半導体チップCHPを変形させようとすると、半導体チップCHPが意図しない形状に変形する虞がある。これに対し、本実施の形態では半導体チップCHPを平面視で円形となるよう形成しているため、チップホルダCHの上面の円形の凹部40の表面に沿って半導体チップCHPを容易に変形させることができる。
また、本実施の形態では半導体チップCHPの裏面側に熱応力膜6を設けているため、図9を用いて説明した半導体チップCHPの変形工程において、半導体チップCHPの表面に対し、過度な圧力を加える必要はない。したがって、半導体チップCHPがダメージを受けることを防ぐことができる。
<変形例>
図10および図11に、本実施の形態の超音波検査装置の変形例を示す。図10は、本実施の形態の変形例である超音波検査装置を示す断面図である。また、図11に、本変形例である超音波検査装置を示す拡大断面図である。ここでは、半導体チップ上に熱応力膜を形成することについて説明する。
図10および図11に示すように、本変形例の超音波検査装置の構造は、チップホルダCHの上面の凹部40に沿って湾曲した半導体チップCHPが形成されている点で、図1~図3を用いて説明した構造と同様である。ただし、ここでは、熱応力膜8が半導体チップCHPの上面に接して形成されている点で、図1~図3を用いて説明した構造と異なる。すなわち、熱応力膜8は、上部電極3上の層間絶縁膜4の上面を覆うように形成されており、半導体基板1とチップホルダCHとの間には熱応力膜は形成されていない。つまり、半導体基板1の裏面は接着層7を介してチップホルダCHに接着されている。
ここで、熱応力膜8は、図3に示す熱応力膜6とは異なり、半導体基板1を構成するシリコンよりも熱膨張係数が小さい膜から成る。すなわち、熱応力膜8は、引張応力がシリコンよりも大きい膜である。
次に、本変形例の超音波検査装置の製造方法について、図12~図14を用いて説明する。図12~図14は、本実施の形態の変形例である超音波検査装置の製造工程中の断面図である。
まず、図4および図5を用いて説明した工程と同様の工程を行う。
次に、図12に示すように、上部電極3上の層間絶縁膜4の上面を覆うように、熱応力膜8を形成する。熱応力膜8は、例えばスパッタリング法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより形成することができる。続いて、半導体基板1の裏面を研磨することで、半導体基板1を薄膜化する。
次に、図13に示すように、半導体ウェハをエッチングまたはダイシングすることにより個片化する。これにより、半導体ウェハから複数の半導体チップを得る。続いて、各半導体チップの半導体基板1の裏面の下に接着層7を形成する。なお、当該個片化工程の前に半導体基板1の裏面の下に接着層7を形成してもよい。
次に、図14に示すように、図9を用いて説明した工程と同様にヒータHTを用いて熱処理を行うことで、半導体チップCHPを湾曲させ、チップホルダCHの上面の凹部40の表面に接着する。ここで、熱応力膜8はシリコンに比べて熱膨張率が低く、引張応力がシリコンよりも大きい膜である。したがって、半導体チップCHPの加熱時には、熱応力膜8に比べて半導体基板1が横方向に大きく膨張する。そのため、熱応力膜8および半導体基板1を含む半導体チップCHPは、上面の中心が凹むように反る。
なお、図12を用いて説明した工程で、層間絶縁膜4上に熱応力膜8を設けず、エッチングまたはダイシングによりを行って半導体ウェハを個片化した後で、半導体チップCHPの層間絶縁膜4上に熱応力膜8を形成してもよい。また、熱応力膜8を半導体チップCHP上に形成した後に、熱応力膜8を一部除去し、図1に示すパッドBPを露出させる必要がある。
以上の工程により、本変形例の超音波検査装置が完成する。
本変形例では、半導体チップCHPの上部に熱膨張係数がシリコンより小さい熱応力膜8を形成し、加熱を行うことで半導体チップCHPをお椀状に反らせ、これによりチップホルダCHの凹部40に沿う半導体チップCHPを固定している。これにより、図1~図9を用いて説明した超音波検査装置と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態2)
以下では、前記実施の形態1のように熱応力膜を用いず、加圧または減圧を行うことでチップホルダの凹部に半導体チップを固定することについて、図15および図16を用いて説明する。図15および図16は、本実施の形態2の超音波検査装置の製造工程中の断面図である。
まず、図15に示すように、図4~図7を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、半導体チップを形成する。続いて、半導体基板1の裏面の下に接着層7を形成する。つまり、CMUTを備えた円形の半導体チップを形成する。なお、エッチングまたはダイシングにより半導体ウェハを個片化する前に、例えばDAFを接着層7として半導体基板1の裏面の下に形成してもよい。
次に、図16に示すように、半導体チップCHPをチップホルダCHの凹部40上に配置した後、半導体チップCHPの上方から半導体チップCHPの上面に対し加圧することで、半導体チップCHPの中央部が凹むように半導体チップCHP全体を湾曲させる。これにより、半導体チップCHPは接着層7(図15参照)を介してチップホルダCHの凹部40の表面に接着され、固定される。
このとき、半導体チップCHPに対し加圧する方法としては、ローラーなどの押し子を用いて半導体チップCHPの上面を押す方法、または、圧縮空気を半導体チップCHPの上面に吹き付ける方法などがある。半導体チップCHPを加圧する前に、半導体チップCHPを保護する目的で、ポリイミドなどから成る保護膜により半導体チップCHPの表面を覆ってもよい。これにより、半導体チップCHPが加圧によりダメージを受けることを防ぐことができる。
以上の工程により、本変形例の超音波検査装置が完成する。
本実施の形態では、半導体チップCHPをチップホルダCHの上面の凹部40の表面に沿って変形させることで、音響レンズを形成しなくても、半導体チップCHPの主面のセルアレイに並ぶ複数のセルを1点に集中するように向けて配置させることができる。したがって、音響レンズなしで超音波ビームを収束させ、CMUTの感度を向上させることができる。
また、音響レンズがないため、音響レンズ内での超音波の減衰を防ぐことができる。また、音響レンズがないため、音響レンズの表面で超音波が反射することを防ぐことができる。よって、CMUTの感度を向上させることができる。以上により、本実施の形態では、超音波検査装置の性能を向上させることができる。
また、本実施の形態では半導体チップCHPを平面視で円形となるよう形成しているため、チップホルダCHの上面の円形の凹部40の表面に沿って半導体チップCHPを容易に変形させることができる。
<変形例1>
図16では、半導体チップの上方から加圧する場合について説明したが、半導体チップの下面とチップホルダの上面の凹部との間の空間(領域)を減圧することで、半導体チップを湾曲させてもよい。以下では、本変形例1の超音波検査装置の製造方法について、図17を用いて説明する。図17は、本変形例の超音波検査装置の製造工程中の断面図である。
ここでは、まず図15を用いて説明したように、裏面側に接着層7が形成された円形の半導体チップを形成する。
次に、図17に示すように、半導体チップCHPをチップホルダCHの凹部40上に配置した後、半導体チップCHPの下面とチップホルダCHの上面の凹部40との間の空間を減圧することで、半導体チップCHPを凹部40の表面に沿うように湾曲させる。これにより、半導体チップCHPは、お椀状に変形した状態でチップホルダCHに固定される。
上記のように減圧を行う方法としては、チップホルダCHの凹部40の表面に溝9を形成し、例えばチップホルダCHの裏側から溝9を介して空気を真空チャックにより排出する方法がある。または、チップホルダCHを多孔質な材料により構成し、例えばチップホルダCHの裏側から空気を真空チャックにより排出する方法がある。ここで、チップホルダCHは、超音波の反射による不要な応答を防ぐため、内部で超音波が減衰する材料により構成されていることが好ましい。
以上の工程により、本変形例の超音波検査装置が完成する。
本変形例の超音波検査装置では、図15および図16を用いて説明した超音波検査装置と同様の効果を得ることができる。さらに、上記のように、半導体チップCHPの裏面側の空間を減圧して半導体チップCHPを湾曲させることで、半導体チップCHPの上面のCMUTがダメージを受けることを防ぐことができる。
なお、図16を用いて説明したような、半導体チップCHPの上方からの加圧を、本変形例のような半導体チップCHPの下方からの減圧と同時に行ってもよい。
<変形例2>
凹部内に溜めた液体を用いて、半導体チップの下面とチップホルダの上面の凹部との間の空間(領域)を減圧して半導体チップを湾曲させ、接着層を用いずに半導体チップをチップホルダに固定する方法について、以下に図18~図20を用いて説明する。図18~図20は、本変形例2の超音波検査装置の製造工程中の断面図である。
ここではまず、図4~図7を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、円形の半導体チップを形成する。ここでは、半導体チップの裏面に接着層は設けない。
次に、図18に示すように、チップホルダCHを用意し、チップホルダCHの上面の凹部40内を液体10で満たす。続いて、チップホルダCHの凹部40上に、半導体チップCHPを配置する。このとき、半導体チップCHPの裏面と液体10の表面とを接触させる。
次に、図19に示すように、液体10をチップホルダCHの上面の凹部40内から取り除く。これにより、液体10が凹部40内から抜け出る際、半導体チップCHPは半導体チップCHPの上下の圧力差により凹面形状に変形する。つまり、液体10が凹部40内から排出される際には、半導体チップCHPの下側の領域が減圧され、半導体チップCHPは液体10の表面張力により下方に引っ張られるため、半導体チップCHPはお椀状に湾曲する。このとき、半導体チップCHPの裏面に接着層が形成されていなくても、半導体チップCHPとチップホルダCHの凹部40の表面との間ではスティクション(凝着)が起きるため、半導体チップCHPは凹部40の表面に接着され、固定される。すなわち、半導体チップCHPの裏面(例えば、半導体基板の裏面)は、凹部40の表面に凝着している。ここでは、加熱を行って液体10を除去し乾燥させ、半導体チップCHPが凹部40の表面に凝着するまでの時間を短縮してもよい。
上記のように液体10を除去する方法としては、図17を用いて説明したように、チップホルダCHに溝9を形成し、溝9から液体を引き抜く方法、チップホルダCHを多孔質の材料により構成し、液体10チップホルダCH側に引き抜く方法、または、液体10を乾燥させる方法がある。図17では凹部40の底面に溝9が形成された構造を示しているが、液体10を乾燥させるための溝は、例えばチップホルダCHの上面側に形成され、凹部40内から半導体チップCHPよりも外側に向かって横方向に延在する形状を有していてもよい。
また、図20に示すように、液体10を乾燥させるための孔部(貫通孔)11を、半導体チップCHPに形成してもよい。つまり、半導体チップCHPの上面から下面に貫通する孔部11を形成することで、液体10を孔部11から蒸発させることができる。このため、液体10が蒸発した後の孔部11の底部では、チップホルダCHの凹部40の表面の一部が半導体チップCHPから露出している。孔部11は、例えば、半導体基板上にセルアレイを含む素子形成層を形成した後であって、半導体チップCHPをチップホルダCHの凹部40上に配置する前のタイミング、つまり、半導体基板(半導体ウェハ)を個片化して半導体チップCHPを得る工程の直前または直後のタイミングに形成することができる。孔部11は、例えばフォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、1つまたは複数形成することができる。また、孔部11は、図1に示すセルアレイCAおよびパッドBPと平面視で重ならない位置に形成する。
以上の工程により、本変形例の超音波検査装置が完成する。
本変形例では、図15および図16を用いて説明した超音波検査装置と同様の効果を得ることができる。
また、本変形例のように、液体10の表面張力を利用して半導体チップCHPを変形させれば、圧着工具または圧縮空気などの加圧用工具、および、減圧のための真空チャックなどを用いずに半導体チップCHPを変形させることができる。また、接着層を用いなくても、半導体チップCHPをチップホルダCHの凹部40に凝着させることができる。よって、超音波検査装置の製造コストを低減することができる。
(実施の形態3)
以下に、セルアレイの下に応力膜を含む半導体チップにおいて、応力膜の直下で応力膜を支える基板の一部を除去し、これによりセルアレイを湾曲させることについて、図21および図22を用いて説明する。図21および図22は、本実施の形態3の超音波検査装置の製造工程中の断面図である。
ここでは、まず、図21に示すように、半導体基板(半導体ウェハ)1を用意する。続いて、半導体基板1上に、絶縁膜12を介して応力膜13を形成する。絶縁膜12は、例えばCVD法により形成することができ、応力膜13は、例えばスパッタリング法により形成することができる。絶縁膜12は例えば酸化シリコン膜から成る。応力膜13は、シリコンよりも圧縮応力が大きい膜である。応力膜13は、前記実施の形態1で説明した熱応力膜と同じ材料で形成されていてもよい。応力膜13は、例えば金属膜から成り、例えば、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Fe(鉄)若しくはCu(銅)またはそれらの合金から成る。
ここで、応力膜13は半導体基板1および絶縁膜12のそれぞれよりも圧縮応力が大きい膜であるが、半導体基板1が大きい膜厚を有しているため、応力膜13の圧縮応力では半導体基板1は曲がらない。このため、応力膜13および半導体基板1は平坦なままである。
続いて、図5を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、応力膜13上に層間絶縁膜4と、層間絶縁膜4内の下部電極2、上部電極3および空隙5を備えた複数のセルCLとを形成する。つまり、応力膜13上にセルアレイCAを形成する。ここで、セルアレイCAは、図1を用いて説明したように平面視で円形に形成されている。また、ここでは、セルアレイCAの横において層間絶縁膜4から露出するパッド(図示しない)を形成する。応力膜13上に形成された、層間絶縁膜4およびセルアレイCAを含む全ての構造体(以下では素子形成層と呼ぶ)の厚さは、半導体基板1の厚さよりも小さい。
次に、図22に示すように、例えばフォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、半導体基板1の裏面側から、半導体基板1および絶縁膜12を貫通して応力膜13の下面を露出する孔部17を形成する。孔部17は、セルアレイCAの直下において、平面視で円形に形成された円柱型の穴である。言い換えれば、孔部17は、セルアレイCAの全体と平面視で重なっている。
孔部17を形成することで、セルアレイCAの直下では、応力膜13を支える基板がなくなる。このため、素子形成層よりも大きい圧縮応力を有する応力膜13は、素子形成層との応力差によりお椀状に変形する。すなわち、セルアレイCAの平面視の中央部、セルアレイCAの周縁部に比べては下側に凹み、セルアレイCAの上面は凹面状となる。つまり、セルアレイCAを含む素子形成層は、孔部17側に向かって凹面状に湾曲する。セルアレイCAの凹面の曲率は、セルアレイCAの応力と応力膜13の応力とのバランスにより決まる。
続いて、エッチングまたはダイシングを行うことで、半導体ウェハを個片化し、複数の半導体チップを得る。半導体チップの平面形状は、円形でも矩形でもよい。各半導体チップにセルアレイCAおよび孔部17は1つずつ形成されている。これにより、本実施の形態の超音波検査装置が完成する。
本実施の形態では、半導体チップのセルアレイCAの下に応力膜13を形成し、応力膜13の下の半導体基板1を除去することで、セルアレイCAを凹面状に変形させている。これにより、音響レンズを形成しなくても、半導体チップの主面のセルアレイCAに並ぶ複数のセルCLを1点に集中するように向けて配置させることができる。したがって、音響レンズなしで超音波ビームを収束させ、CMUTの感度を向上させることができる。
また、音響レンズがないため、音響レンズ内での超音波の減衰を防ぐことができる。また、音響レンズがないため、音響レンズの表面で超音波が反射することを防ぐことができる。よって、CMUTの感度を向上させることができる。以上により、本実施の形態では、超音波検査装置の性能を向上させることができる。
また、本実施の形態の応力膜13は、加熱されていない状態でも素子形成層(セルアレイCA)より大きい圧縮応力を有する膜であるため、常温の環境下であっても、セルアレイCAを凹面状に変形させ、その形状を維持することができる。
また、ここではチップホルダを用意する必要がなく、音響レンズおよび接着層を形成する必要もないため、超音波検査装置の微細化、および、超音波検査装置の製造コストの低減を実現することができる。
<変形例1>
図21および図22では、応力膜を用いてセルアレイを湾曲させることについて説明したが、応力膜を用いず、以下に説明するように、ポンプを用いてセルアレイの下の密閉空間を減圧することでセルアレイを湾曲させてもよい。以下の説明で用いる図23は、本変形例1の超音波検査装置を示す断面図である。
図23に示すように、本変形例の超音波検査装置の構造は、応力膜が形成されていない点、および、半導体基板1の下に封止膜18、調圧弁14およびポンプ35が設けられている点で、図21および図22を用いて説明した超音波検査装置の構造と異なる。すなわち、本変形例の超音波検査装置は、孔部17が設けられた半導体基板1と、半導体基板1上に形成された層間絶縁膜4と、層間絶縁膜4内に形成された下部電極2、上部電極3および空隙5とを有している。下部電極2、上部電極3および空隙5はセルCLを構成しており、孔部17の直上には、複数のセルCLが並べられたセルアレイCAが形成されている。ここでは、図21に示す絶縁膜12が、層間絶縁膜4の一部となっているものとして説明を行う。
孔部17は、半導体基板1の裏面側から、層間絶縁膜4の途中深さまで亘って、半導体基板1を貫通して形成されている。孔部17は、下部電極2を露出しておらず、孔部17と下部電極2との間には層間絶縁膜4が介在している。このような構造を有する半導体チップは、図21および図22を用いて説明した製造工程を、応力膜13を形成する工程を省略して行うことで形成することができる。半導体チップの平面形状は、円形でも矩形でもよいが、セルアレイCAは平面視で円形のレイアウトを有している。
本変形例では、さらに、半導体基板1の底面を覆い、孔部17の下部を塞ぐ封止膜18が形成されている。つまり、孔部17内は、封止膜18により密閉されている。封止膜18には、ポンプ35と孔部17内とを繋ぐパイプが設けられており、当該パイプの途中には、調圧弁14が設けられている。ここでは、ポンプ(真空ポンプ)35を用いて孔部17内を大気圧よりも低く減圧することができ、これにより、セルアレイCAを含む素子形成層を湾曲させることができる。すなわち、孔部17内が真空状態となることで、セルアレイCAは、平面視における中心部が下方に凹み、全体がお椀状に変形する。セルアレイCAの曲率は、ポンプ35および調圧弁14により制御することができる。
本変形例では、図21および図22を用いて説明した超音波検査装置に比べ、応力膜を形成する必要がない。また、ポンプ35および調圧弁14を用いて、セルアレイCAの曲率を制御することができるため、各セルCLの向きを変更し、セルCLから発振される超音波ビームの収束する箇所を変更することができる。つまり、目的などに応じて超音波ビームを収束させる箇所を制御することが可能な超音波検査装置を提供することができる。
<変形例2>
図21および図22では、応力膜を用いてセルアレイを湾曲させることについて説明したが、応力膜を用いず、以下に説明するように、セルアレイの下の空間に固定材から成る固定層を埋め込むことで、セルアレイの変形を保持してもよい。以下の説明で用いる図24は、本変形例2の超音波検査装置を示す断面図である。
図24に示すように、本変形例の超音波検査装置の構造は、図23に示す本実施の形態の変形例1の孔部17が設けられた半導体基板1、層間絶縁膜4およびセルアレイCAを有している。ただし、封止膜、調圧弁およびポンプは有していない。ここで、図21~図23に示す構造と異なり、孔部17内には、固定層15が完全に埋め込まれている。固定層15は、セルアレイCAの凹面状の形状を保つために形成された樹脂などの固定材から成る層である。
このような構造は、半導体基板(半導体ウェハ)1上に層間絶縁膜4およびセルアレイCAを形成した後、半導体基板1の裏面に孔部17を形成し、続いて、セルアレイCA上から圧力を加えてセルアレイCAをお椀状に変形させた状態で、孔部17内に固定材を流し込み、固定材から成る固定層15を孔部17内に埋め込むことで形成することができる。その後、半導体ウェハをエッチングまたはダイシングすることで、複数の半導体チップを形成する。半導体チップの平面形状は、円形でも矩形でもよいが、セルアレイCAは平面視で円形のレイアウトを有している。セルアレイCA上から圧力を加える方法としては、前記実施の形態2で説明したように、押し子または圧縮空気などを用いることができる。
すなわち、本変形例では、音響レンズ、応力膜、接着層およびポンプを用いずに、凹面状のセルアレイCAを形成することができるため、超音波検査装置の製造コストを低減することができる。また、固定層15を、前記実施の形態1のチップホルダと同様に、超音波を内部で減衰させることができる材料で構成することが望ましい。これにより、セルアレイCA側から固定層15の底面側に向かう超音波が、固定層15の底面で反射してセルアレイCAで受信されることに起因して、不要な応答(例えばノイズ)が発生することを防ぐことができる。
(実施の形態4)
以下に、セルアレイの直下に、セルアレイと同様の面積を有する空隙を備えた静電容量素子を形成することで、セルアレイを凹面状に変形させることについて、図25および図26を用いて説明する。図25および図26は、本実施の形態4の超音波検査装置を示す断面図である。
図25に示すように、本実施の形態の超音波検査装置は、半導体基板1と、半導体基板1上に形成された層間絶縁膜16と、層間絶縁膜16内に形成され、半導体基板1上に順に設けられた下部電極22、空隙(空洞部)25および上部電極23と、層間絶縁膜16内に形成され、上部電極23上に順に設けられた下部電極2、空隙(空洞部)5および上部電極3とを有している。
空隙25を挟んで上下方向で対向する下部電極22および上部電極23は、コンデンサ(容量素子、静電容量素子)を構成している。空隙25は、平面視で円形のレイアウトを有している。平面視で重なる下部電極2、空隙5および上部電極3は、1つのセルCLを構成しており、上部電極23上には、複数のセルCLが横方向に並んでセルアレイCAを構成している。なお、ここでいう横方向とは、半導体基板1の上面に沿う方向である。セルアレイCAは平面視で空隙25の全体と重なる円形のレイアウトを有しており、複数のセルCLは、セルアレイCAの円形の範囲内において、平面視で行列状に並んで配置されている。すなわち、下部電極22および上部電極23から成る1つのコンデンサ上に、複数のセルCLが並んで形成されている。ここでは、全てのセルCLは空隙25の直上に位置している。図示していない領域では、セルアレイCAの横に、層間絶縁膜16から露出するパッド(ボンディングパッド)が複数形成されている。半導体チップの平面形状は、円形でも矩形でもよい。
空隙25上の層間絶縁膜16、上部電極23およびセルアレイCAは、メンブレン(可撓性膜)を構成している。つまり、下部電極22と上部電極23との間に電圧を印加することで下部電極22に上部電極23を含むメンブレンを引きつけることができる。これにより、メンブレンは凹面状に変形するため、複数のセルCLのそれぞれが所定の箇所に向かせることができる。すなわち、各セルCLから発振される超音波ビームを所望の箇所に収束させることができる。したがって、音響レンズなしで超音波ビームを収束させ、CMUTの感度を向上させることができる。
また、音響レンズがないため、音響レンズ内での超音波の減衰を防ぐことができる。また、音響レンズがないため、音響レンズの表面で超音波が反射することを防ぐことができる。よって、CMUTの感度を向上させることができる。以上により、本実施の形態では、超音波検査装置の性能を向上させることができる。
また、本実施の形態では、音響レンズ、チップホルダ、応力膜、接着層およびポンプを用いずに、凹面状のセルアレイCAを形成することができるため、超音波検査装置の製造コストを低減することができる。
また、セルアレイCAの曲率は、下部電極22および上部電極23との間に印加する電圧を変更することで制御することができる。つまり、目的などに応じて超音波ビームを収束させる箇所を制御することが可能な超音波検査装置を提供することができる。
図25では、空隙25を挟む上下の電極を備えたコンデンサを1つ形成することについて説明したが、図26に示すように、空隙25を挟む上下の電極から成るコンデンサを、横方向に並べて複数形成してもよい。すなわち、図26に示す構造は、空隙25の直下に、下部電極22に代わって、横方向に複数並ぶ下部電極32が形成されている点、および、空隙25の直上に、上部電極23に代わって、横方向に複数並ぶ上部電極33が形成されている点で、図25に示す構造と異なる。ここでいう横方向とは、例えば、半導体基板1の上面に沿う方向である。1つの下部電極32は1つの上部電極33と平面視で重なっており、平面視で重なる下部電極32と上部電極33とは、1つのコンデンサを構成している。
空隙25を挟むコンデンサが横方向に複数並んでいることで、各下部電極32と各上部電極33との間に電圧を印加してセルアレイCAを湾曲させる際、セルアレイCAの凹面形状を、より所望の形状に近い形状に変形させることが可能となる。つまり、セルアレイCAの凹面形状の自由度が向上する。つまり、様々な超音波ビーム形状を実現することができる。
(実施の形態5)
次に、前記実施の形態1~4のいずれかの超音検査装置を備えた超音波プローブ(超音波探触子)について、図27および図28を用いて説明する。図27は、本実施の形態5のプローブを含む超音波画像装置を示す斜視図である。図28は、本実施の形態5の超音波プローブを示す断面図である。
図27に示す超音波画像装置130は、音波の透過性を利用し、外から見ることのできない生体内部を、可聴音領域を超えた超音波を用いてリアルタイムで画像化して目視可能にした医療用診断装置である。超音波画像装置130は、本体132と、本体132の上部に設置された表示部133と、本体の前面部分に取り付けられた操作部136と、半導体チップ134を含む超音波プローブ(超音波探触子)135とを備えている。超音波プローブ135からはケーブル(コード)138が延びており、当該コードは接続部137において本体132に接続されている。操作部136は、例えば、トラックボール、キーボード若しくはマウスなどの入力機器またはそれらを組み合わせたものである。表示部133は、画像処理された診断画像を表示する表示装置である。
半導体チップ134は、例えば図1に示す半導体チップCHPに相当する。つまり、図1に示す半導体チップ134およびチップホルダCHは、超音波プローブ135に搭載されている。ただし、前記実施の形態3または4に記載の半導体チップを超音波プローブ135に搭載する場合は、チップホルダCHは超音波プローブに搭載されていない。
半導体チップ134には、本体132側の送信電源およびDCバイアス電源から、ケーブル138を介して交流電圧および直流電圧が供給される。超音波プローブ135は、超音波の送受信部である。超音波プローブ135を構成するプローブケースの先端面には、半導体チップ134が、その主面(複数の振動子の形成面)を外部に向けた状態で取り付けられている。
超音波診断に際しては、超音波プローブ135の先端を被検体(生体)の表面に当てた後、超音波プローブ135の先端が被検体の表面に当たる位置を徐々にずらしながら走査する。超音波プローブ135が血管カテーテルである場合は、超音波プローブ135を血管内に挿入して走査する。このとき、体表または血管の内壁に近接させた超音波プローブ135から被検体内に数MHzの超音波パルスを送波し、音響インピーダンスの異なる組織境界からの反射波(反響またはエコー)を受波する。これにより、表示部133に表示された生体組織の断層像を得て、診断対象に関する情報を知ることができる。超音波を送波してから受波するまでの時間間隔によって反射体の距離情報が得られる。また、反射波のレベルまたは外形から反射体の存在または質に関する情報が得られる。
図28に、図27の超音波プローブ135の断面図を示す。図28では、血管カテーテルに用いられる超音波プローブ135の構造を示す。なお、図28において、プローブアセンブリ203およびワイヤ202の詳細な断面構造の図示は省略している。図28では超音波プローブ135に搭載された半導体チップ134を示しており、チップホルダは示していないが、前記実施の形態1また2に記載の超音波検査装置を超音波プローブに搭載する場合は、図28に示す半導体チップ134は、チップホルダを含むものとする。
図28に示すように、本実施の形態の超音波プローブ135は、生体の血管内に挿入することが可能な容器であるカテーテルチューブ201を有している。カテーテルチューブ201内には、ワイヤ202と、ワイヤ202の先端に接続されたプローブアセンブリ203が配置されている。プローブアセンブリ203の表面の一部であって、カテーテルチューブ201の内壁と対向する面には、前記実施の形態1~4のいずれかで説明した半導体チップ134が固定されている。
図28に示すワイヤ202およびプローブアセンブリ203はカテーテルチューブ201に対し固定されておらず、カテーテルチューブ201内において、カテーテルチューブ201の延在方向(図16の横方向)において動くことができる。
このようなカテーテル状の超音波プローブ135は、例えば血管内に挿入してリニアスキャンまたはラジアルスキャンを行うことにより超音波断層画像を得ることができる。超音波プローブ135を用いてリニアスキャンを行う場合には、カテーテルチューブ201内においてプローブアセンブリ203を上記延在方向に走査させる。また、超音波プローブ135を用いてラジアルスキャンを行う場合には、カテーテルチューブ201内において、プローブアセンブリ203を、上記延在方向を軸として回転させる。
図29に示す比較例の半導体チップCHPを図16のプローブアセンブリ203に搭載する場合、カテーテルチューブ201内において、当該半導体チップCHPの上面には、音響レンズAL(図29参照)が形成される。この場合、前記実施の形態1において図29を用いて説明したように、音響レンズALの表面で超音波が反射し、超音波プローブの感度が低下する問題が生じる。
これに対し、本実施の形態では、半導体チップ134に、前記実施の形態1~4のいずれかに記載の半導体チップを適用している。これにより、音響レンズを形成しなくとも、半導体チップ134の表面の凹面状のセルアレイに並ぶ複数のセルを、1点に集中するように向けて配置させることができる。したがって、音響レンズなしで超音波ビームを収束させ、CMUTの感度を向上させることができる。
また、音響レンズがないため、音響レンズ内での超音波の減衰を防ぐことができる。また、音響レンズがないため、音響レンズの表面で超音波が反射することを防ぐことができる。よって、CMUTの感度を向上させることができる。以上により、本実施の形態では、超音波プローブの性能を向上させることができる。
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
その他、実施の形態に記載された内容の一部を以下に記載する。
(付記1)静電容量型超音波トランスデューサのセルを備えた超音波検査装置であって、
上面に曲面状の凹部を有するチップホルダと、
前記凹部の表面に沿って凹面状に湾曲し、裏面が前記凹部の前記表面に凝着している半導体チップと、
を有し、
前記半導体チップは、
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、前記半導体基板の上面に沿って並んだ複数の前記セルから成るセルアレイを含む第1層と、
前記半導体チップを貫通し、前記凹部の前記表面の一部を露出する貫通孔と、
を有し、
前記セルは、前記半導体基板上に順に形成された第1電極、空隙および第2電極を備えたコンデンサにより構成されている、超音波検査装置。
(付記2)静電容量型超音波トランスデューサのセルを備えた超音波検査装置であって、
半導体基板と、
前記半導体基板上に順に形成された第1電極、第1空隙および第2電極を備えた第1コンデンサと、
前記第1コンデンサの直上に形成され、前記半導体基板の上面に沿って並んだ複数の前記セルから成るセルアレイと、
を有し、
前記セルは、前記半導体基板上に順に形成された第3電極、第2空隙および第4電極を備えた第2コンデンサにより構成されており、
前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加することにより、前記第2電極および前記セルアレイを含む第1層は、凹面状に湾曲する、超音波検査装置。
(付記3)(付記2)の超音波検査装置において、
前記第1電極は、前記第1空隙の直下において前記半導体基板の前記上面に沿って並んで複数形成されており、前記第2電極は、前記第1空隙の直上において前記半導体基板の前記上面に沿って並んで複数形成されている、超音波検査装置。