JP7058138B2 - 液圧ポンプ - Google Patents

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本発明は、回転体を両方向へ回転可能にし、回転体の回転に応じて容積室の容積を増減して液体を吸入吐出する液圧ポンプに関するものである。
この種の液圧ポンプは、回転体としてのシリンダブロックの回転に伴いピストンを往復動し、ピストンの往動で容積室の容積が拡大して液体を一方の吸入吐出通路から容積室に吸入し、ピストンの復動で容積室の容積が縮小して液体を容積室から他方の吸入吐出通路に吐出している。そして、シリンダブロックの一方向の回転と逆方向の回転とにおいて、一方の吸入吐出通路と他方の吸入吐出通路との吸入と吐出がそれぞれ逆になるため、一方の吸入吐出通路と他方の吸入吐出通路とを中心を介して径方向の対称位置で同一形状に形成している。
特開2007-9858号公報
ところが、かかる従来のピストンポンプでは、ポンプ本体を構成するカバーに両吸入吐出通路を円弧状に開口して形成しているため、特に、吐出する液体が高圧だと、カバーの強度不足により液体を吐出する吸入吐出通路の開口が圧力の作用で拡がり液体が漏れる恐れがあった。
このため、出願人は、円弧の外周と内周との間を接続する梁を形成し、液体を吐出する吸入吐出通路の強度向上を図ることを考えた。
しかし、かかる構成では、一方向の回転で液体を吐出する吸入吐出通路としたものを、逆方向の回転で液体を吸入する吸入吐出通路として使用するため、液体を吸入する際に、梁の両側で液体が絞られてキャビテーションが発生してしまう問題点があった。
本発明の課題は、ポンプ本体に形成する吸入吐出通路の強度向上を図ると共に、吸入吐出通路におけるキャビテーションの発生を抑制し得る液圧ポンプを提供するものである。
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
液体を吸入吐出する二つの吸入吐出通路を形成するポンプ本体と、ポンプ本体の内部へ回転自在に軸支する回転体と、回転体の回転に伴い容積を拡大縮小して一方の吸入吐出通路と他方の吸入吐出通路へ交互に連通する複数個の容積室とを備え、両吸入吐出通路は、中心を介して径方向の対称位置で同一形状に形成し、円弧状に窪み形成した溝部と、溝部の底面に接続してポンプ本体の外面に開口する通路部とから構成し、溝部には円弧の外周と内周との間を接続する梁を周方向の略中央部に形成し、梁の周方向一方側において液体が流通する流通面積を最小とする第1流通部を形成すると共に、梁の周方向の一方側と反対側となる他方側において液体が流通する流通面積を最小とする第2流通部を形成し、通路部において液体が流通する流通面積を最小とする第3流通部を形成し、第1流通部の流通面積と第2流通部の流通面積との和を第3流通部の流通面積以上にし、第1流通部の流通面積と第2流通部の流通面積はそれぞれ第3流通部の流通面積の1/2以上にしたことを特徴とする液圧ポンプがそれである。
この場合、前記溝部は窪み深さを周方向の両端部で最も浅く形成すると共に、周方向の中央部で最も深く形成し、両端部から中央部に向けて窪み深さを漸増し、前記溝部の最深部の底面に前記通路部を接続してもよい。また、前記溝部は周方向の両端部から中央部に向けて窪み深さを順次深くした複数の段部で形成し、前記溝部の最深部の底面に前記通路部を接続してもよい。
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、両吸入吐出通路は、中心を介して径方向の対称位置で同一形状に形成し、円弧状に窪み形成した溝部と、溝部の底面に接続してポンプ本体の外面に開口する通路部とから構成し、溝部には円弧の外周と内周との間を接続する梁を周方向の略中央部に形成し、梁の周方向一方側において液体が流通する流通面積を最小とする第1流通部を形成すると共に、梁の周方向の一方側と反対側となる他方側において液体が流通する流通面積を最小とする第2流通部を形成し、通路部において液体が流通する流通面積を最小とする第3流通部を形成し、第1流通部の流通面積と第2流通部の流通面積との和を第3流通部の流通面積以上にし、第1流通部の流通面積と第2流通部の流通面積はそれぞれ第3流通部の流通面積の1/2以上にした。このため、梁で吸入吐出通路の強度を向上でき、かつ、梁の両側の第1流通部と第2流通部とを液体が流通する際に、液体が絞られないから、ポンプ本体に形成する吸入吐出通路の強度向上を図ると共に、吸入吐出通路におけるキャビテーションの発生を抑制することができる。
また、請求項2に記載の発明は、溝部は窪み深さを周方向の両端部で最も浅く形成すると共に、周方向の中央部で最も深く形成し、両端部から中央部に向けて窪み深さを漸増し、溝部の最深部の底面に通路部を接続した。このため、通路部から溝部に吸入する液体は、最深部から最浅部に向けて溝部を滑らかに移動して吸入されるから、吸入吐出通路におけるキャビテーションの発生をより一層抑制することができる。
また、請求項3に記載の発明は、溝部は周方向の両端部から中央部に向けて窪み深さを順次深くした複数の段部で形成し、溝部の最深部の底面に通路部を接続した。このため、通路部から溝部に吸入する液体は、最深の段部から最浅の段部に向けて溝部を滑らかに移動して吸入されるから、吸入吐出通路におけるキャビテーションの発生をより一層抑制することができ、かつ、溝部を構成する複数の段部は刃具により容易に加工できるから、溝部を容易に加工して形成することができる。
本発明の一実施形態を示した液圧ポンプの縦断面図である。 図1の線A-Aに沿った断面図である。 図2の線B-Bに沿った展開断面図である。 他の実施形態の展開断面図である。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1において、1はポンプ本体で、円筒状のハウジング2の一端開口を蓋部材3で閉塞すると共に、ハウジング2の他端開口をフランジ部材4で閉塞し、ハウジング2と蓋部材3およびハウジング2とフランジ部材4とをそれぞれ図示しないボルトで固定して構成している。5はポンプ本体1へ回転自在に軸支した駆動軸で、蓋部材3に軸受6を介して軸支すると共に、フランジ部材4に軸受7を介して軸支し、先端をフランジ部材4より突出している。8はポンプ本体1の内部に収装した回転体としてのシリンダブロックで、駆動軸5にスプライン9で結合し、駆動軸5とともにポンプ本体1へ回転自在に軸支している。
10はシリンダブロック8に備えた複数個のピストンで、シリンダブロック8の周方向へ等間隔に9個配置し、軸方向へ往復動自在に嵌合して、頭部をシリンダブロック8から突出している。11はシリンダブロック8へピストン10を嵌合して区画形成した9個の容積室で、シリンダブロック8の回転に伴うピストン10の往復動で容積を拡大縮小する。12は液体を吸入吐出する二つの吸入吐出ポート13、14を貫通形成する弁板で、ポンプ本体1を構成する蓋部材3の内面3Aに2個のピン12A(図2、図3に図示)で固定配置してシリンダブロック8と摺接し、シリンダブロック8の回転に応じて容積室11を一方の吸入吐出ポート13と他方の吸入吐出ポート14へ交互に連通する。
15は一方の吸入吐出ポート13に接続する一方の吸入吐出通路、16は他方の吸入吐出ポート14に接続する他方の吸入吐出通路で、それぞれ蓋部材3に形成している。図2に示す如く、両吸入吐出通路15、16は径方向の中心Mを介して対称位置に配置し、同一形状に形成している。両吸入吐出通路15、16は溝部15A、16Aと通路部15B、16Bとから構成している。溝部15A、16Aは蓋部材3の内面3Aへ円弧状に窪み形成し、弁板12の両吸入吐出ポート13、14へ開口している。通路部15B、16Bは溝部15A、16Aの底面に接続して蓋部材3の外面3Bに開口している。15C、16Cは梁で、溝部15A、16Aの周方向の中央部に、円弧の内周と外周との間を接続して設けている。
図3に示す如く、一方の吸入吐出通路15は、溝部15Aの窪み深さを周方向の両端部から中央部に向けて漸次深く形成している。詳述すると、一方の吸入吐出通路15は、円弧状の溝部15Aを、周方向の両端部に形成した最も浅い第1段部15Dと、第1段部15Dの周方向の内方で第1段部15Dより深く形成した第2段部15Eと、第2段部15Eの周方向の内方で第2段部15Eより深く形成した第3段部15Fと、第3段部15Fの周方向の内方で中央部に形成した最も深い第4段部15Gとの4つの段部を連設して構成している。通路部15Bは、最深の第4段部15Gの底面に接続している。15Hは第1流通部で、溝部15Aにおける梁15Cの周方向一方側に形成し、梁15Cの周方向一方側において液体が流通する流通面積S1を最小としている。15Iは第2流通部で、溝部15Aにおける梁15Cの周方向一方側と反対側となる周方向他方側に形成し、梁15Cの周方向他方側において液体が流通する流通面積S2を最小としている。第1流通部15Hの流通面積S1と第2流通部15Iの流通面積S2とは略同等にしている。15Jは第3流通部で、通路部15Bにおいて液体が流通する流通面積S3を最小としている。そして、流通面積S1と流通面積S2との和を、流通面積S3以上にしている。すなわち、S1+S2≧S3にしている。また、流通面積S1と流通面積S2は、それぞれ流通面積S3の1/2以上の面積を有している。
他方の吸入吐出通路16は、一方の吸入吐出通路15と同様に、溝部16Aを周方向の両端部から中央部に向けて漸次深く形成した4つの段部を連設して構成している。また、第1流通部の流通面積と第2流通部の流通面積との和を、第3流通部の流通面積以上にしている。そして、第1流通部の流通面積と第2流通部の流通面積は、それぞれ略同等で、かつ第3流通部の流通面積の1/2以上の面積を有している。また、流通面積S4と流通面積S5は、それぞれ流通面積S3の1/2以上の面積を有している。
17はフランジ部材4の内側面に一体形成して傾転角を一定にした斜板で、ピストン10の頭部に枢支したシュー18に当接し、ピストン10の往復動する移動量を一定に設定している。19はシュー18の背部に配置した押え板で、シュー18を斜板17に押しつけている。20はシリンダブロック8に隣接して駆動軸5にスプライン9で結合したリテーナで、ばね21力を押ピン22を介して付与され、このばね21力を押え板19へシュー18を斜板17に押しつける方向に付与している。23はポンプ本体1の内部に溜まったドレンを排出する排出口で、ハウジング2の径方向の対称位置に2個穿設し、着脱自在に螺合した栓24で閉塞している。
次に、かかる構成の作動を説明する。
図1において、駆動軸5でシリンダブロック8を一方向に回転駆動すると、シュー18が斜板17上を滑動し、ピストン10は左右方向へ往復動する。容積室11はピストン10の左方向への往動で容積を拡大し、他方の吸入吐出通路16から他方の吸入吐出ポート14を経て液体を吸入する。また、容積室11はピストン10の右方向への復動で容積を縮小し、室内の液体を一方の吸入吐出ポート13を経て一方の吸入吐出通路15に吐出する。このように、シリンダブロック8の回転駆動により、ピストン10を一定量往復動して液体を他方の吸入吐出通路16から吸入して一方の吸入吐出通路15に吐出する定容量のポンプ作動を行う。そして、駆動軸5によるシリンダブロック8の回転駆動を停止すると、液体を吸入吐出するポンプ作動を停止する。
また、シリンダブロック8を一方向と反対方向の他方向に回転駆動すると、容積室11は一方の吸入吐出通路15から一方の吸入吐出ポート13を経て液体を吸入し、この液体を他方の吸入吐出ポート14を経て他方の吸入吐出通路16に吐出するポンプ作動を行う。そして、シリンダブロック8の回転駆動の停止により、ポンプ作動を停止する。このように、シリンダブロック8の一方向と他方向の両方向への回転駆動で、ポンプ作動を可能にしている。
かかる作動において、両吸入吐出通路15、16は、中心Mを介して径方向の対称位置で同一形状に形成し、円弧状に窪み形成した溝部15A、16Aと、溝部15A、16Aの底面に接続してポンプ本体1を構成する蓋部材3の外面3Bに開口する通路部15B、16Bとから構成し、溝部15A、16Aには円弧の外周と内周との間を接続する梁15C、16Cを周方向の略中央部に形成し、梁15C、16Cの周方向一方側において液体が流通する流通面積S1を最小とする第1流通部15Hを形成すると共に、梁15C、16Cの周方向の一方側と反対側となる他方側において液体が流通する流通面積S2を最小とする第2流通部15Iを形成し、通路部15B、16Bにおいて液体が流通する流通面積S3を最小とする第3流通部15Jを形成し、第1流通部15Hの流通面積S1と第2流通部15Iの流通面積S2との和を第3流通部15Jの流通面積S3以上にした。このため、梁15C、16Cで吸入吐出通路15、16の強度を向上でき、かつ、梁15C、16Cの両側の第1流通部15Hと第2流通部15Iとを液体が流通する際に、液体が絞られないから、ポンプ本体1に形成する吸入吐出通路15、16の強度向上を図ると共に、吸入吐出通路15、16におけるキャビテーションの発生を抑制することができる。
また、溝部15A、16Aは周方向の両端部から中央部に向けて窪み深さを順次深くした複数の段部15D、15E、15F、15Gで形成し、溝部15A、16Aの最深部の底面に通路部15B、16Bを接続した。このため、通路部15B、16Bから溝部15A、16Aに吸入する液体は、最深の段部15Gから最浅の段部15Dに向けて溝部15A、16Aを滑らかに移動して吸入されるから、吸入吐出通路15、16におけるキャビテーションの発生をより一層抑制することができ、かつ、溝部15A、16Aを構成する複数の段部15D、15E、15F、15Gは刃具により容易に加工できるから、溝部15A、16Aを容易に加工して形成することができる。
図4は本発明の他の実施形態を示し、一実施形態と同一個所には同符号を付して説明を省略し、異なる個所についてのみ説明する。
吸入吐出通路15を構成する溝部25Aは、窪み深さを周方向の両端部で最も浅く形成すると共に、周方向の中央部で最も深く形成している。そして、溝部25Aは、両端部から中央部に向けて窪み深さを漸増して底面25Bを傾斜状に形成し、最深部に通路部15Bを接続している。溝部25Aにおける梁15Cの周方向一方側に形成した第1流通部25Cは、梁15Cの周方向一方側において液体が流通する流通面積S4を最小としている。溝部25Aにおける梁15Cの周方向他方側に形成した第2流通部25Dは、梁15Cの周方向他方側において液体が流通する流通面積S5を最小としている。第1流通部25Cの流通面積S4と第2流通部25Dの流通面積S5とは略同等にしている。そして、流通面積S4と流通面積S5との和を、第3流通部15Jの流通面積S3以上にしている。
作動は、一実施形態と同様で、梁15Cで吸入吐出通路15の強度を向上でき、かつ、梁15Cの両側の第1流通部25Cと第2流通部25Dとを液体が流通する際に、液体が絞られないから、ポンプ本体1に形成する吸入吐出通路15の強度向上を図ることができると共に、吸入吐出通路15におけるキャビテーションの発生を抑制することができる。また、溝部25Aは窪み深さを周方向の両端部で最も浅く形成すると共に、周方向の中央部で最も深く形成し、両端部から中央部に向けて窪み深さを漸増し、溝部25Aの最深部の底面25Bに通路部15Bを接続した。このため、通路部15Bから溝部25Aに吸入する液体は、最深部から最浅部に向けて溝部25Aを滑らかに移動して吸入されるから、吸入吐出通路15におけるキャビテーションの発生をより一層抑制することができる。
なお、前述の一実施形態では、回転体をシリンダブロック8としたピストンポンプとしたが、回転体をロータとして複数のベーンをロータの径方向へ出没自在に設けたベーンポンプとしたり、回転体をドライブギヤとしてドライブギヤをドリブンギヤと偏心して内接噛合いした内接歯車ポンプとしてもよい。さらに、斜板17の傾転角を一定にした定容量のピストンポンプとしたが、斜板をポンプ本体1内へ傾転自在に設けて可変容量のピストンポンプとしてもよいことは勿論である。
1:ポンプ本体
8:シリンダブロック(回転体)
11:容積室
15、16:吸入吐出通路
15A、16A、25A:溝部
15B、16B:通路部
15C、16C:梁
15H、25C:第1流通部
15I、25D:第2流通部
15J:第3流通部
S1、S2、S3、S4、S5:流通面積

Claims (3)

  1. 液体を吸入吐出する二つの吸入吐出通路を形成するポンプ本体と、ポンプ本体の内部へ回転自在に軸支する回転体と、回転体の回転に伴い容積を拡大縮小して一方の吸入吐出通路と他方の吸入吐出通路へ交互に連通する複数個の容積室とを備え、両吸入吐出通路は、中心を介して径方向の対称位置で同一形状に形成し、円弧状に窪み形成した溝部と、溝部の底面に接続してポンプ本体の外面に開口する通路部とから構成し、溝部には円弧の外周と内周との間を接続する梁を周方向の略中央部に形成し、梁の周方向一方側において液体が流通する流通面積を最小とする第1流通部を形成すると共に、梁の周方向の一方側と反対側となる他方側において液体が流通する流通面積を最小とする第2流通部を形成し、通路部において液体が流通する流通面積を最小とする第3流通部を形成し、第1流通部の流通面積と第2流通部の流通面積との和を第3流通部の流通面積以上にし、第1流通部の流通面積と第2流通部の流通面積はそれぞれ第3流通部の流通面積の1/2以上にしたことを特徴とする液圧ポンプ。
  2. 前記溝部は窪み深さを周方向の両端部で最も浅く形成すると共に、周方向の中央部で最も深く形成し、両端部から中央部に向けて窪み深さを漸増し、前記溝部の最深部の底面に前記通路部を接続したことを特徴とする請求項1に記載の液圧ポンプ。
  3. 前記溝部は周方向の両端部から中央部に向けて窪み深さを順次深くした複数の段部で形成し、前記溝部の最深部の底面に前記通路部を接続したことを特徴とする請求項1に記載の液圧ポンプ。
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