JP7057406B2 - 不織布 - Google Patents

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Description

本発明は、捲縮性を有しない第1の繊維と捲縮性を有する第2の繊維とを含む不織布の製造方法に関し、特に、これらの繊維が好適に特定方向に選択的に配向され、特定方向への液拡散性および強度に優れた不織布およびその製造方法に関する。なお、本発明に係る製造方法により製造された不織布は、それ単独で、または、他の不織布、フイルム、パルプ、高分子液吸収材等と併用して、特定用途に適したフィルター、土木関係の吸水材、芳香剤の吸い上げ棒材等へ好適に適用できる。
従来より連続長繊維不織布として、溶融紡糸された繊維を高速気流牽引型装置でネットコンベアー等の捕集装置に吹き付け、得られたウェブを熱エンボスロール等の装置で熱融着させる、いわゆるスパンボンド法不織布が知られている(特公昭43-026599号公報(特許文献1)、特公昭42-023998号公報(特許文献2))。また、熱可塑性繊維の短繊維をカード法やエアレイ法等でウェブとし、このウェブを熱スルーエアー法や、熱エンボスロール法等で熱融着するいわゆる短繊維熱融着法不織布も知られている。
上記したスパンボンド法不織布は、繊維の牽引手段として高速気流牽引装置を使用するので、繊維がランダムに配向されている。従って、この製法により製造された不織布は、長さ方向(すなわち不織布の機械方向(長手方向、MD方向))と幅方向(短手方向、TD方向またはCD方向)の強度のバランスがとれているという利点、大吐出量でかつ高速で紡糸できるので比較的安価に不織布が製造できるという利点、がある。その反面、繊維に捲縮を付与する手段がないので、不織布はフィルムまたは紙のような風合いの悪いものとなり、しかも嵩高性に劣るという課題がある。また、この不織布を吸液フィルター等として使用した場合、液体が不織布内を円状に拡散し、特定方向へ選択的に拡散させることができないという課題がある。
一方、短繊維熱融着法不織布では、たとえばカード法やエアレイ法等による不織布は目付けが比較的均一で、かつ、捲縮繊維を使用できるので風合いがよいという特徴がある。
特公昭43-026599号公報 特公昭42-023998号公報
しかしながら、この短繊維熱融着法不織布は、スパンボンド法不織布と同様に、繊維がランダムに配向されているので、特定方向への強度に劣り、吸液フィルター等として使用した場合には特定方向へ選択的に拡散させることに劣る(特定方向への選択的な拡散性に劣る)という課題がある。
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、特定方向への強度が大きく、かつ、特定方向への液拡散性に優れた不織布の製造方法を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明に係る不織布の製造方法は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係る不織布の製造方法は、捲縮性を有しない第1の繊維と捲縮性を有する第2の繊維とを含んで構成された不織布の製造方法であって、前記不織布を形成する繊維を前記不織布の機械方向に選択的に配向させることを特徴とする。
好ましくは、前記不織布は、前記第1の繊維と前記第2の繊維とが重量比2:1~5:1の混率で混合して形成される。第1の繊維と第2の繊維との組合せ方法としては、トウ状にして事前に組み合わせる方法や、直接クリールから引き揃えウェブを作製しニードルパンチする方法などがある。また、第1の繊維のみまたは第2の繊維のみから構成される各層を作製した後に積層しても良く、第2の繊維により繊維を絡ませるように混合が出来れば、特にその方法については限定されない。ここで、トウを作製する場合、前記第1の繊維と前記第2の繊維とを重量比2:1~5:1の混率で混合したトウまたはウェブを形成するステップと、前記形成された複数のトウを並べて、ニードルパンチ処理により前記繊維を交絡させることにより不織布化するステップとを含むように構成することができる。
さらに好ましくは、前記不織布化した後に、熱プレスするステップさらに含むように構成することができる。
さらに好ましくは、前記不織布は、空隙率が90%以下であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記不織布は、3分間の水吸い上げ性能が機械方向において高さ80mm以上であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記不織布化するステップは、前記トウを複数の層状に重ねて処理し、前記不織布は、複数の層状に形成され、前記第2の繊維が層間を跨いで構成されるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記不織布化するステップは、前記トウを3層に重ねて処理し、前記不織布は、中間層の第2の繊維が表面層側または裏面層側から視認できるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記不織布化するステップは、前記トウを3層に重ねて処理し、前記不織布は、裏面層の第2の繊維が表面層側から視認できるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記不織布化するステップは、前記トウを3層に重ねて処理し、前記不織布は、裏面層の第1の繊維が表面層側から視認できないように構成することができる。
さらに好ましくは、前記第1の繊維および前記第2の繊維は、ポリオレフィン系繊維およびポリエステル系繊維から選ばれた少なくとも一種の連続長繊維であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記不織布の強度についての機械方向/幅方向の比が10以上であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記不織布の水拡散係数の機械方向/幅方向の比が10以上であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記不織布上に水を1滴滴下した3分後の水拡散状態を機械方向および幅方向で測定して、水拡散状態の機械方向/幅方向の比が2.0以上であるように構成することができる。
本発明に係る製造方法によると、特定方向への強度が大きく、かつ、特定方向への液拡散性に優れた不織布を提供することができる。
本発明に係る不織布の製造方法により製造された不織布(目付300g/m2)の物性を示す図である。 図1に示した不織布についての針打込み本数と水吸い上げ性能(速度および高さ)との関係を示す図である。 図1に示した不織布についての空隙率と水吸い上げ性能(高さ)との関係を示す図である。 図1に示した不織布を含む目付の異なる不織布の水吸い上げ性能(速度および高さ)を示す図である。 図1に示した不織布の引張強度の試験結果を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る不織布の製造方法について説明する。なお、以下における実施の形態においては、この製造方法により製造された不織布、または、これ以外の製造方法により製造された不織布についても説明する。さらに、以下においては、この製造方法により製造された不織布、または、これ以外の製造方法により製造された不織布を、本発明に係る物または本実施の形態に係る物として記載する場合がある。
本実施の形態に係る不織布の製造方法は、大略的には、
(1)捲縮性を有しない第1の繊維と捲縮性を有する第2の繊維とを重量比3:1~5:1の混率で混合したトウ(繊維束)を形成するトウ形成ステップ(合糸工程)と、
(2)形成された複数のトウを並べて、ニードルパンチ処理により繊維を交絡させることにより不織布化するニードルパンチステップ(ニードルパンチ工程)と、
(3)必要に応じて、熱ロールで不織布をプレスする熱プレス工程と、
(4)必要に応じて、樹脂で不織布の表面(または裏面)をコーティングする樹脂コート工程とで構成される。
以下において、これらの工程について説明するが、まず、本実施の形態に係る不織布に使用される繊維について説明する。
[使用繊維]
本実施の形態に係る不織布の製造に使用される繊維は、限定されるものではないが、熱可塑性樹脂からなる連続長繊維であることが好ましい。熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンを主成分としプロピレンと他のαオレフインとの2~3元共重合体等のポリオレフイン、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸が併用されたポリエチレンテレフタレート・イソフタレート共重合ポリエステル等のポリエステルを例示できる。以下においては、捲縮性を有しない第1の繊維も、捲縮性を有する第2の繊維も、コスト面および後述する水吸い上げ性能を考慮して、ポリエステル繊維(連続長繊維)であるものとして説明する。
・捲縮性を有しない第1の繊維
捲縮性を有しない第1の繊維としては、仮撚り加工されていないポリエステルマルチフィラメント糸(生糸、ストレート糸)を採用した。たとえば、繊度およびフィラメント構成の一例として、84dTex/72fが挙げられる。この場合の単糸繊度は1.17dTexとなる。
・捲縮性を有する第2の繊維
捲縮性を有する第2の繊維としては、仮撚り加工されたポリエステルマルチフィラメント糸(ウーリー糸)を採用した。たとえば、繊度およびフィラメント構成の一例として、220dTex/72fが挙げられる。この場合の単糸繊度は3.06dTexとなる。
ここで、この仮撚り加工の条件としては、10~40回/cmの捲縮数、好ましくは20~40回/cmの捲縮数、かつ、50~200%の伸度、好ましくは100%以上の伸度であることが好ましく、たとえば35回/cmの捲縮数、かつ、150%伸度が挙げられる。なお、仮撚り加工(ウーリー加工)については、捲縮数が10回/cm未満では伸度が50%以下と小さく繊維どうしを絡める機能が不十分となるために後述するように横方向(CD方向)に裂け易くなる。このため、単位長さあたりの回数で規定される捲縮数はできるだけ多い方が好ましいが、仮撚り加工の安定性から40回/cmが限界であり、20~40回/cmの加工であれば、繊維どうしを十分に絡めることができて、後述するように横方向(CD方向)に裂けにくくなるという効果を発現する。
より具体的には、第2の繊維として、ここでは、195dTexのポリエステルPOY(未延伸糸)を仮撚り機に仕掛けて、220℃で1.65倍の延伸を行うと同時に、捲縮数3,500T/Mで仮撚り加工を行い、110dTexのウーリー糸を製造し、これを2本構成として220dTexとした。
・第1の繊維および第2の繊維についての改良
ストレート糸(第1の繊維)およびウーリー糸(第2の繊維)ともに、たとえば、さらに多フィラメント構成の220dTex/288fが挙げられる。この場合の単糸繊度は0.76dTexとなる。
このような観点から、本実施の形態に係る不織布の製造に使用される繊維の単糸繊度は、ストレート糸(第1の繊維)およびウーリー糸(第2の繊維)ともに、好ましくは10dTex以下、さらに好ましくは0.5~3.1dTexである。
[合糸工程]
次に、上述した2種類の捲縮性を有しない第1の繊維と捲縮性を有する第2の繊維とを用いてトウ(繊維束)を形成する合糸工程について説明する。ここでは、上述したように、第1の繊維としてポリエステルストレート糸84dTex/72f(以下において単にストレート糸と記載する場合がある)を、第2の繊維としてポリエステルウーリー糸220dTex/72f(以下において単に仮撚糸またはウーリー糸と記載する場合がある)を採用した。
・合糸1回目
ストレート糸6本を引き揃えて合わせることにより合糸して(以下において単に合糸してと記載する場合がある)504dTex/432f(504=84×6、432=72×6)のストレート糸(ストレート合糸)を製造するとともに、
ウーリー糸3本を合糸して660dTex/216f(660=110×3、216=72×3)のウーリー糸(ウーリー合糸)を製造した。
・合糸2回目
504dTex/432fのストレート糸5本と、660dTex/216fのウーリー糸1本を合糸して、3,180dTex/2,376f(3,180=504×5+660×1、2,376=432×5+216×1)の混合糸を製造した。
・合糸3回目
3,180dTex/2,376fの混合糸6本を合糸して、19,180dTex/14,256f(19,180=3,180×6、14,256=2,376×6)のトウ(繊維束)を製造した。
このように合糸されたトウ(繊維束)における第1の繊維と第2の繊維の混率(重量比率)は、単に混合糸6本を合糸する前の3,180dTex/2,376fの混合糸における混率と等しく、その混率は、(単位長さあたりの重量を示す)繊度比率に等しくなる。このため、ストレート糸:ウーリー糸=504×5:660×1(約3.8:1)となり、ストレート糸に対するウーリー糸の混率(=(ウーリー糸の総繊度)/(ストレート
糸の総繊度))は660/(504×5)の26.2重量%程度になる。なお、この混率は、84dTex/72fのストレート糸10本と、220dTex/72fのウーリー糸1本とを合糸したものと等しい(220/(84×10))。
ここで、捲縮性を有しない第1の繊維(ストレート糸)と捲縮性を有する第2の繊維(ウーリー糸)との重量比は、好ましくは、2:1~5:1である。
この場合において、トウ(繊維束)は、19,080dTex/14,256fで構成され、最終不織布状態で、目付200g/m2の場合2本/3cm、目付300g/m2の場合3本/3cm、目付400g/m2の場合4本/3cm、となるようにトウの打込み
を行った。ここで、最終不織布状態で規定している理由は、ニードルパンチ回数を増やすことにより徐々に幅が広がって行くためであって、初期のトウ幅18cmが最終的には30cmとなる。
トウの繊度については、特に限定されるものではなく、たとえば目付400g/m2
場合、38,160Tex/28,512fを2本/3cm、76,320Tex/57,024fを1本/3cm、となるようにトウの打込みを行っても良い。また、トウ以外の方法の場合は、トウの打込みと同じ重量を打込みを行うことにより同様の目付の不織布を得ることができる。なお、これらは一例として記載したものであり、打込み重量と目付との関係は、投入量のみならず送り量などによっても変化するため、本発明は、必ずしも上述した数値に限定されるものではない。
ここで、トウを用いた場合、
この19,080dTex/14,256fのトウを、30cm間隔に30本(1本/cm)並べて後述するニードルパンチ処理で目標目付300g/m2の不織布(572,
400dTex/427,680f:19,080dTex×30/14,256f×30)を形成したり、
この19,080dTex/14,256fのトウを、30cm間隔に40本(1.3本/cm)並べて後述するニードルパンチ処理で目標目付400g/m2の不織布(76
3,200dTex/570,240f:19,080dTex×40/14,256f×40)を形成したり、
この19,080dTex/14,256fのトウを、30cm間隔に20本(0.67本/cm)並べて後述するニードルパンチ処理で目標目付200g/m2の不織布(3
81,600dTex/285,120f:19,080dTex×20/14,256f×20)を形成したり、
この19,080dTex/14,256fのトウを、30cm間隔に15本(0.5本/cm)並べて後述するニードルパンチ処理で目標目付150g/m2の不織布(28
6,200dTex/213,830f:19,080dTex×15/14,256f×15)を形成したり、
このトウの半分の構成の9,540dTex/7,128fのトウを、30cm間隔に30本(1本/cm)並べて後述するニードルパンチ処理で目標目付150g/m2(2
86,200dTex/213,830f:19,080dTex×0.5×30/14,256f×0.5×30))の不織布を形成したり、
することになる。以下において、このニードルパンチ工程について説明する。
[ニードルパンチ工程]
次に、このようなトウ(繊維束)を、以下に示す4つのサブ工程に分けて、トウから不織布を形成する。なお、以下においては、まず目標目付300g/m2の不織布を作成す
るためのニードルパンチ工程について説明して、その後、目標目付200g/m2および
目標目付400g/m2の不織布を作製するためのニードルパンチ工程について説明する
。なお、以下においては、目標目付を単に目付と記載する場合がある。また、以下における目付300g/m2の不織布は、限定されるものではないは、3層積層構造であるとし
て説明する。
ここで、ニードルパンチ装置の諸元については、以下の通りである。
送り速度 : 20 cm/min
パンチ速度 : 214 回/min
針本数 : 2.3 本/cm2
打込み本数 : 24.5 本/cm2(1回通し)
・中間層作成工程(第1のサブ工程)
まず、上述したトウ(繊維束)を用いて、目付300g/m2の不織布を構成する(3
層構造の真ん中の層である)中間層を製造する。
19,080dTex/14,256fのトウ9本を、送り量140%(好ましくは110~200%)でニードルパンチ装置に送り込み、針打ち込み本数24.5本/cm2
で中間層を製造する。ここでは、後述する上層(第1表層)および下層(第2表層)とこの中間層との絡み、不織布における幅方向の絡みを高めるため、送り量を上げて繊維を緩めた状態でニードルパンチ処理している。このようにして、中間表層を製造する(ここまででトウは合計9本)。
・中間層に接する第1表層作成工程(第2のサブ工程)
次いで、上述したトウ(繊維束)を用いて、中間層に対して、中間層の一方の面に積層させて中間層に接する第1表層を製造する。
中間層の上部(下部でも構わない)に、19,080dTex/14,256fのトウ10本を、送り量100%(好ましくは100~130%)で中間層と積層しつつニードルパンチ装置に送り込み、針打ち込み本数24.5本/cm2で中間層および(この中間
層に積層された)第1表層を製造する(ここまででトウは合計19本)。
・中間層の逆面に接する第2表層作成工程(第3のサブ工程)
次いで、上述したトウ(繊維束)を用いて、中間層およびこの中間層に積層された第1表層に対して、中間層の他方の面に積層させて中間層に接する第2表層を製造する。すなわち、中間層において第1表層が積層されている面とは逆の中間層の面に積層して中間層に接する第2表層を製造する。
中間層の下部(第2のサブ工程と逆であれば構わず上部でも構わない)に、19,080dTex/14,256fのトウ11本を、送り量100%(好ましくは100~130%)で中間層と積層しつつニードルパンチ装置に送り込み、針打ち込み本数24.5本/cm2で中間層ならびに(この中間層に積層された)第1表層および第2表層を製造す
る(ここまででトウは合計30本)。
以上により、表裏が第1表層(トウ10本)および第2表層(トウ11本)に挟持されるように積層された中間層(トウ9本)と、第1表層および第2表層とが積層された3層構造の不織布(原反)が製造される。そして、トウは合計30本であるので、目標目付300g/m2の不織布を作成することになる。
・密度上昇工程(第4のサブ工程)
上述した3つのサブ工程により製造された3層構造の不織布(原反)を、通反毎に表裏を返しながらニードルパンチ装置に送り込む。この場合における、ニードルパンチ装置への送り込み回数は、13回である。また、このサブ工程における、針打ち込み本数は318本/cm2、厚みは2mmである。
ここで、本発明に係る不織布の製造方法は、上述したように3層を予め積層した原反を第4のサブ工程で所望の密度(目付)になるように密度上昇させるものに限定されない。たとえば、第1のサブ工程~第4のサブ工程を1つの工程にして、3層を構成するトウ(
中間9本、第1表層10本、第2表層11本)を一度ニードルパンチ装置へに送り込んで、ニードルパンチ処理を行うようにしても構わない。
また、ニードルパンチの針打ち込み本数については、ここでは318本/cm2と設定
しているが、さらに針打ち込み本数を上げることも好ましい。後述するように「ニードルパンチ回数と水吸い上げ性能との関係」より、針打ち込み本数98本/cm2から吸い上
げ性能が向上し始め、318本/cm2で最大となっていることがわかるが、上限として
は1200本/cm2程度までであっても好ましい。すなわち、この第4サブ工程におけ
る針打ち込み本数は、限定されるものではないが、98本/cm2以上、好ましくは22
0本/cm2以上、さらに好ましくは318本/cm2以上となる。
次いで、以下の任意的な工程について説明する。
[熱プレス工程]
上述したニードルパンチ工程で製造された不織布に対して、任意的な処理として熱プレス工程において熱プレス処理が行われる。
この熱プレス工程は、熱ロールで不織布をプレスして、不織布の密度を向上させることにより、吸い上げ性能を均一化するとともに、不織布に腰強さを付与する。さらに、不織布を使用しているときの熱収縮を抑制する。このような熱プレス処理における処理条件は、ロール温度については210℃(好ましくは180~220℃(180℃未満ではセット不十分)、さらに好ましくは200~215℃)、送り速度は7~25cm/min、線圧力は63N/cm(好ましくは25~88.2N/cm(25N/cm以下ではセット不十分)さらに好ましくは60~88.2N/cm)である。
[樹脂コート工程]
上述した熱プレス工程で処理された不織布に対して、任意的な処理として樹脂コート工程において樹脂コート処理が行われる。たとえば、この不織布の使用用途によっては、不織布に腰強さが欲しいという要望がある場合がある。このような要望に対しては、表面に樹脂コート処理して、腰強さを改良することが可能である。
この樹脂コート処理は、不織布の腰強さを付与するためのひとつの方法である。たとえば、コート樹脂として、日本合成化学製モビニール8020(コロイダルシリカ)を採用して、塗布方法として、スプレーコーティングまたはロールコーターを採用して、塗布量20g/m2(固形量)および塗布後120℃で2分乾燥させた。
以下において、目付200g/m2および目付400g/m2の不織布を作成するためのニードルパンチ工程について説明する。なお、以下の説明においては、目付300g/m2と異なる部分のみについて説明する。
目付200g/m2の不織布は、1層目は9本でニードルパンチを施し、その上に11
本を積層して作製した。また、400g/m2の不織布は、上記2層作製品を2枚重ねてニードルパンチを施して作製した。また、8,160Tex/28,512fのトウを用いた場合は、1層目は10本でニードルパンチを施し、その上に10本を積層して作製した。
次に、上述した本発明に係る製造方法により製造された不織布、または、これ以外の製造方法により製造された本発明に係る不織布の特性について説明する。
[不織布の特性・性能]
・目視観察
上述のようにして製造した3層積層(表裏が第1表層および第2表層に挟持されるように形成された中間層と第1表層および第2表層とで積層された3層)構造を備えた目付300g/m2の不織布について、目視観察(目視による直接観察のみならず拡大鏡(顕微
鏡を含む)を用いた目視による観察を含む)した。この場合において、第1の繊維(スト
レート糸)または第2の繊維(ウーリー糸)を着色しておいてからニードルパンチ処理を行い、その処理後の層間の繊維の移動の状態を目視にて確認した。その結果、以下のように観察できた。
<目視結果:その1>
中間層における第2の繊維(ウーリー糸)を黒く着色して不織布を形成したところ、第1表層または第2表層(中間層ではない表面層)への飛び出しが確認できた。これにより、表層側まで中間層の第2の繊維(ウーリー糸)が飛び出してきており、この第2の繊維が3層間を繋ぐように糸を絡め、不織布を形成する機能を発現しているものと考えられる。
<目視結果:その2>
第2表層(ここでは裏面側の表層とする)における第2の繊維(ウーリー糸)を緑に着色して不織布を形成したところ、第1表層(ここでは表面側の表層)まで第2表層(裏面側)の第2の繊維(ウーリー糸)が飛び出してきており、この第2の繊維が不織布の表裏を繋ぐように糸を絡め、不織布を形成する機能を発現しているものと考えられる。
<目視結果:その3>
第2表層(ここでは裏面側の表層とする)における第1の繊維(ストレート糸)を青に着色して不織布を形成したところ、第1表層(ここでは表面側の表層)まで第2表層(裏面側)の第1の繊維(ストレート糸)が飛び出してきていることを確認できなかった。すなわち、第1の繊維(ストレート糸)は、不織布を形成する層間に跨がって配置されるものではなく、不織布の糸を絡める構成を担っているものではない。
さらに、これらの目視結果を踏まえると、上述したニードルパンチ処理により、層間の絡み合いに主に寄与している糸は第2の繊維(ウーリー糸)であり、第1の繊維(ストレート糸)はその寄与が小さい、というモデルが想定できる。そして、ニードルパンチ処理により、第1の表層および/または第2の表層まで中間層の第2の繊維(ウーリー糸)が飛び出してきているので、第1の表層および/または第2の表層においては第2の繊維(ウーリー糸)の量が相対的に増加している、というモデル(中間層よりも表層のほうが捲縮が多く存在する)が想定できる。
このように、第2の繊維(ウーリー糸)の占有幅が第1の繊維(ストレート糸)よりも大きくなること、第2の繊維(ウーリー糸)のループ状捲縮により第2の繊維(ウーリー糸)自体の張力が比較的低いことから、ニードルパンチ処理によってニードルに捉えられる第2の繊維(ウーリー糸)の確率が高まっているものと推定できる。層間を行き来する第2の繊維(ウーリー糸)は層間の合着を強化するだけでなく、層厚みを小さくする(コンパクト化する)効果がある。
・物理的特性(空隙率等)
図1に、本発明に係る不織布(目付300g/m2)であって、上述した密度上昇工程
(ニードルパンチ工程の第4のサブ工程)におけるニードルパンチ回数を変化させた場合の不織布の物理的特性を示す。なお、空隙率とは、不織布において空間(総体積に対して(繊維ではなく)空気により占有されている体積)の比率を示し、(1-(重量/(1.39×幅×長さ×厚み))(1.39:繊維の比重)をパーセント表記した値である。
この図1に示すように、ニードルパンチ回数の上昇に伴いこの空隙率が減少して(負の相関関係が成立する)、第1の繊維(ストレート糸)と第2の繊維(ウーリー糸)とがよく絡んで空隙が少なくなっている。
・水吸い上げ性能(空隙率の影響)
上述した図1のニードルパンチ回数(空隙率との間に負の相関関係が成立)をパラメータとして、図2にこの不織布の水吸い上げ性能を、横軸を時間軸としてその時間軸に対して縦軸に水吸い上げ高さを示す。ここで、水吸い上げ方向は、不織布の機械方向(MD方向)である。
この図2から、空隙率の低い(ニードルパンチ回数が多い)ほど、吸い上げ速度が速く、かつ、最終的な水吸い上げ高さも高く、好ましいことがわかる。
さらに、図3として、空隙率の影響を理解しやすいように空隙率をパラメータとして横軸に、その空隙率に対して縦軸に水吸い上げ高さを示す。なお、図2における時間軸は、図3(A)に1分後、図3(B)に3分後、図3(C)に5分後、図3(D)に10分後をそれぞれ代表させて抽出した。この図3から、この不織布の使用用途にもよるが、好ましくは3分程度の経過時間で100mm程度の水吸い上げ高さに到達する水吸い上げ性能が必要であるために、空隙率は95%以下であることが好ましい。また、このようにこの不織布においては、3分間の水吸い上げ性能が機械方向において高さ80mm以上であることが好ましい。さらに、空隙率90%以下がより好ましく、機械方向の3分間の水吸い上げ性能が100mm以上がより好ましい。
・水吸い上げ性能(方向性の影響)
次に、上述した水吸い上げ性能の方向性について説明する。図4に不織布(目付200g/m2、300g/m2、400g/m2)の水吸い上げ性能を、横軸を時間軸としてそ
の時間軸に対して縦軸に水吸い上げ高さを示す。ここで、水吸い上げ方向は、不織布の機械方向(MD方向)および幅方向(TD方向)で区別した2方向である。
この図4に示すように、長時間水に浸漬し、拡散に十分な水が供給される状態では、TD方向でも吸い上げは認められるが、いずれの目付けにおいても、図4に示すように、繊維が配向しているMD方向の方がTD方向よりも吸水速度が速い結果となっている。
また、水滴下による水の拡散比MD/TD比を計測した。すなわち、不織布(目付400g/m2)上に水を1滴滴下して、3分後のMD方向の水拡散状態およびTD方向の水
拡散状態を測定して、その比率(MD値/TD値)を算出することにより、水拡散比を算出した。
その結果、水滴下による水の拡散比MD/TD比は4.5と機械方向に極めて優れた特性を示した。この水滴下による水の拡散比MD/TD比については、好ましくは2.0以上、さらに好ましくは4.0以上である。
・強度性能(方向性の影響)
引張強度
図5に、目付400g/m2品の引張強度の試験結果を示す。強度比はMD/TD比は
59.6とMD方向が極端に大きな値を示している。これは、繊維がMD方向に配向して
おり、繊維の破断強度を示し、TD方向は第2繊維の絡みの破壊によるものと考えられる。
MD方向の吸水拡散性を高めるためには、繊維配向を高める必要があり、MD/TD比は10以上(測定では強度比59.6)が好ましい。
以上のようにして、本実施の形態に係る不織布の製造方法またはその不織布によると、特定方向への強度が大きく、かつ、特定方向への液拡散性に優れた不織布を提供することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
たとえば、一例として、上述した不織布を土木用途に使用する場合には、裏面にポリエステルのスパンボンド不織布を貼り合せることも好ましい。ポリエステルのスパンボンド不織布は透水性が小さいため、裏面への水の浸透を低減して、MD方向への水の拡散性を高めることができる。なお、貼り合せ方法は、限定されるものではないが、上述した不織
布とポリエステルのスパンボンド不織布とを重ね合わせてニードルパンチ処理により、これらを貼り合せて一体化することができる。
本発明は、捲縮性を有しない第1の繊維と捲縮性を有する第2の繊維とを含む不織布に好ましく適用され、これらの繊維が好適に特定方向に選択的に配向され、特定方向への液拡散性および強度に優れた不織布に特に好ましく適用される。

Claims (6)

  1. 仮撚り加工されていないことにより捲縮性を有しない第1の繊維と仮撚り加工されていることにより捲縮性を有する第2の繊維とを含んで構成された不織布であって、
    前記不織布は、前記第1の繊維と前記第2の繊維とが重量比2:1~5:1の混率である混合糸を用いて形成され、
    前記不織布を形成する繊維が前記不織布の機械方向に選択的に配向していることにより、目付400g/m 2 前記不織布の引張強度についての機械方向/幅方向の比が10以上、かつ、目付400g/m 2 前記不織布上に水を1滴滴下した3分後の水拡散状態として吸水速度に時間である3分を乗算したことに対応する拡散距離を機械方向および幅方向で測定した水拡散状態の機械方向/幅方向の比が2.0以上を満足し、
    前記第1の繊維および前記第2の繊維は、ポリエステル繊維(連続長繊維)のみからなる不織布。
  2. 前記不織布における空隙率が90%以下である、請求項1に記載の不織布。
  3. 前記不織布は、複数の層状からなり、前記第2の繊維が層間を跨いで構成されている、請求項1または請求項2に記載の不織布。
  4. 前記不織布は、3層の層状からなり、中間層の第2の繊維が表面層側または裏面層側から視認できる、請求項に記載の不織布。
  5. 前記不織布は、3層の層状からなり、裏面層の第2の繊維が表面層側から視認できる、請求項に記載の不織布。
  6. 前記不織布は、3層の層状からなり、裏面層の第1の繊維が表面層側から視認できない、請求項に記載の不織布。
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