JP7055372B2 - 脱血圧推定方法、実血流量推定方法および血液浄化装置 - Google Patents
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循環回路に設けられた圧力測定部がローラーポンプの下流側圧力を測定し、
圧力測定部によって測定されたローラーポンプの下流側圧力と下記式1に基づいてローラーポンプの上流側圧力を圧力測定部に接続された制御部が推定する
ことを特徴とする脱血圧推定方法。
式1
PRem=(PCAmin×(Cin+Cout)-PCAmax×Cout)/Cin
PRem:ローラーポンプの上流側圧力(mmH)
PCA: ローラーポンプの下流側圧力(mmHg)
Cin:ポンプセグメント前キャパシタンス(mL/mmHg)
Cout:ポンプセグメント後キャパシタンス(mL/mmHg)
本実施形態の血液浄化装置1は、血液を浄化するために使用される装置であって、ローラーポンプの上流側圧力(以下脱血圧という場合がある)や装置を流れる液体の実際の流量(以下、実血流量という場合がある)を精度よく推定できることに特徴を有している。
以下では、代表として、本実施形態の血液浄化装置1を透析装置として使用する場合を説明する。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1(A)に示すように、本実施形態の血液浄化装置1は、人体から血液を採取する採血部2と、採血部2が採取した血液を透析する透析部10と、透析部10が透析した血液を人体に返血する返血部3と、を備えている。
図1(A)に示すように、採血部2は、人の血管やシャントに穿刺する針部2aと、この針部2aが先端に設けられたチューブ2bと、を備えている。このチューブ2bの基端は、透析部10のローラーポンプ15の吸引側にチューブや配管等を介して連通されている。
図1(A)に示すように、透析部10は、ローラーポンプ15と透析器20とがチューブや配管等(以下単にチューブ等という場合がある)によって直列に接続された循環回路11を備えている。具体的には、循環回路11では、ローラーポンプ15における吐出側と透析器20の流入側とがチューブ等によって連通されている。言い換えれば、循環回路11は、透析する血液が流れる上流側から下流側に向かって(図1(A)では左側から右側に向かって)、ローラーポンプ15、透析器20、の順で並ぶように、ローラーポンプ15と透析器20とがチューブ等で連通されている。
ローラーポンプ15は一般的なローラーポンプであり、ローラーポンプセグメント16sと、このローラーポンプセグメント16sのチューブが巻き掛けられるローラー部16と、このローラー部16との間にチューブを挟むケーシング17と、を有している(図2(A))。ローラー部16には、一対のローラー16r,16rが設けられている。この一対のローラー16r,16rは、回転軸16aに対して互いに回転対称かつ等角度間隔(つまり180度離れた状態)となるように設けられている。したがって、ローラーポンプ15を回転させると、回転軸16a周りにローラー部16が回転し、一対のローラー16r,16rが順次チューブをつぶして扱くことができる。
なお、ローラーポンプセグメント16sのチューブは循環回路11における血液が流れる流路の一部を構成することになる。
透析器20は、一般的な透析に使用されるものであり、透析膜によって分離された空間を有しており、一方の空間に血液を流し他方の空間に透析液を流せば血液を透析できるものである。透析器20の構造はとくに限定されず、透析液を使用して血液を透析する機能を有するものであればどのような構造のものでも使用できる。例えば、中空な空間を有する本体部と、本体部の中空な空間内に配設された透析膜として機能する中空糸膜と、を有する透析器を使用することができる。
循環回路11には、ローラーポンプ15と透析器20以外に、圧力測定部13が設けられている。具体的には、ローラーポンプ15と透析器20とを繋ぐチューブ等には、チューブ等内の圧力を測定する圧力測定部13の下流側圧力計13aが設けられている。下流側圧力計13aは、血液などに混在する気体を除去するエアトラップ機能を有するドリップチャンバを備えたものを採用している。
また、透析器20よりも下流側にも、チューブ等内の圧力を測定する圧力測定部13の返血側圧力計13bが設けられている。返血側圧力計13bは、血液などに混在する気体を除去するエアトラップ機能を有するドリップチャンバを備えたものを採用している。
循環回路11には分岐部18が設けられている。この分岐部18は、その一端が採血部2から供給される血液をローラーポンプ15に流すチューブ等(特許請求の範囲にいう血液流路に相当する)に連通された分岐流路18cを備えている。この分岐流路18cには、流動抵抗調整部18aと圧力計18bとが設けられている。
流動抵抗調整部18aは、分岐流路18cを流れる液体の流動抵抗を変化させることができるものである。具体的には、流動抵抗調整部18aは、ローラーポンプ15を作動させた際に、分岐流路18c内を液体が流れにくくしたり流れやすくしたりすることができる機能を有するものである。例えば、流動抵抗調整部18aによって分岐流路18c内を液体が流れにくくすると、透析作業において脱血不良が生じているような状態を生じさせることができる。流動抵抗調整部18aは上記機能を有するものであればよく、とくに限定されない。例えば、開度を調整できるバルブ等や分岐流路18cを狭窄できる器具等を流動抵抗調整部18aとして採用することができる。
圧力計18bは、分岐流路18cがチューブ等に接続されている部分と流動抵抗調整部18aとの間の圧力を測定するものである。具体的には、圧力計18bは、分岐流路18cにおいて分岐流路18cがチューブ等に接続されている部分と流動抵抗調整部18aとの間に設けられている。つまり、圧力計18bは、ローラーポンプ15の上流側圧力を測定できる位置に設けられている。したがって、流動抵抗調整部18aによって分岐流路18c内を液体が流れにくくしたり流れやすくしたりしたときに、圧力計18bによって分岐流路18cの圧力の変動を測定できる。この圧力計18bは、分岐流路18c内の圧力を測定できるものであればよく、公知の圧力計を採用することができる。上述した圧力測定部13の下流側圧力計13aおよび返血側圧力計13bに採用されているドリップチャンバを備えた圧力計を使用してもよい。
そして、透析部10は、ローラーポンプ15の作動を制御する制御部14を備えている。この制御部14は圧力測定部13の各圧力計13a,13bと電気的に接続されており、圧力測定部13の各圧力計13a,13bが測定した測定値に関する情報が制御部14に送信されるようになっている。同様に、制御部14には、分岐部18の圧力計18bが電気的に接続されており、圧力計18bが測定した測定値に関する情報が制御部14に送信されるようになっている。
図1(A)に示すように、返血部3も、人の血管やシャントに穿刺する針部3aと、この針部3aが先端に設けられたチューブ3bと、を備えている。このチューブ3bの基端は、透析部10の透析器20の返血側にチューブや配管等を介して連通されている。
本実施形態の血液浄化装置1が上記のごとき構成であるので、以下のように透析作業が実施される。
透析を実施している間に、採血部2の針部2aの位置がずれ穿刺針の先端が血管壁に接触した場合、ローラーポンプ15の上流側圧力(脱血圧)が低下する場合がある。また、穿刺針の誤った選択やシャント流量が低下をきたした場合にも脱血圧が好ましい脱血圧からズレてしまう場合がある。すると、患者の負担が大きくなったり、ローラーポンプ15が送液する実血流量が設定流量よりも低下してしまったりする可能性が有る。
以下、本実施形態の血液浄化装置1において脱血圧を推定する方法を説明する。
(式1)
PRem=(PCAmin×(Cin+Cout)-PCAmax×Cout)/Cin
PRem:ローラーポンプの上流側圧力(mmH)
PCA: ローラーポンプの下流側圧力(mmHg)
Cin:ポンプセグメント前キャパシタンス(mL/mmHg)
Cout:ポンプセグメント後キャパシタンス(mL/mmHg)
なお、式1において、PCAminはPCAの最小値であり、PCAmaxはPCAの最大値である。
(式2)
VR=PRem×Cin+PCAmax×Cout
(式3)
PCAmin=VR/C=(PRem×Cin+PCAmax×Cout)/(Cin+Cout)
上述した方法によってローラーポンプの上流側圧力PRem(脱血圧)が把握できれば、血流比によって実血流量を推定することができる。
上述した本実施形態の血液浄化装置1では、循環回路11内の流体の流量を測定する装置を設けていない。しかし、本実施形態の血液浄化装置1に、流量測定部12を設けてもよい。具体的には、ローラーポンプ15と透析器20とを繋ぐチューブ等にチューブ等内を流れる血液などの液体の流量を測定する流量測定部12の下流側流量計12aを設け、透析器20よりも下流側にチューブ等内を流れる血液などの液体の流量を測定する流量測定部12の返血側流量計12bを設けてもよい(図7参照)。この場合、圧力などから推定される流体の流量をチェックすることができるので、脱血圧や実血流量を検証することができる。
プライミング作業を実施する際に循環回路11がローラーポンプ15の下流側に透析器20を有している場合であれば、透析器20の流動抵抗値を推定することができる。かかる透析器20の流動抵抗値が推定できれば実血流量を推定できる。すると、透析器20の流動抵抗値から推定される実血流量と、上述した脱血圧に基づいて推定される実血流量とを比較して、実血流量の検証ができるので好ましい。
また、予備測定は、実際の血液ではなくプライミングに使用する液体等(以下予備測定液という)によって実施するが、通常、予備測定液と血液とは粘度が相違する。粘度が相違すると、予備測定液で得られたポンプセグメント前キャパシタンスCinやポンプセグメント後キャパシタンスCoutの値を使用した場合に、式1によって推定されるローラーポンプ15の上流側圧力(脱血圧)と実際の脱血圧との差が大きくなる可能性がある。すると、脱血圧から推定される実血流量の値も誤差が大きくなる可能性がある。
なお、透析を続けていると、ローラー16rによって扱かれるチューブは摩耗やチューブの温度上昇等により劣化して、その弾性特性等が変化してしまう。弾性特性等が変化すると、ポンプセグメント前キャパシタンスCinやポンプセグメント後キャパシタンスCoutの値が変化するので、予備測定で得られたポンプセグメント前キャパシタンスCinやポンプセグメント後キャパシタンスCoutの値を使用して得られた脱血圧や実血流量の算定値は、実際の脱血圧や実血流量から差異を生じる可能性がある。
本実施形態の血液浄化装置は、上述したような透析のように、人体から血液を採取して血液を浄化し人体に返血する場合でだけでなく、人体から既に採取または分離されている血液を浄化する装置として使用することも可能である。この場合、採血部は血液を吸引できるようになっていればよく、必ずしも針部を設けなくてもよい。同様に、返血部は血液を容器などに供給できるようになっていればよく、必ずしも針部を設けなくてもよい。
まず、各液体について、ポンプセグメント前キャパシタンスCinおよびポンプセグメント後キャパシタンスCout、血流比とローラーポンプ上流側圧力との関係式、をそれぞれを求めた。
予備測定では、100、200、300、400ml/minの各設定流量でローラーポンプを作動させた状態で、ローラーポンプ上流側圧力を変動させて、ローラーポンプ上流側圧力および下流側圧力を測定した。そして、測定されたローラーポンプ上流側圧力および下流側圧力を用いて、ポンプセグメント前キャパシタンスCinおよびポンプセグメント後キャパシタンスCoutを算出した。
また、超音波流量計によって測定される実血流量とローラーポンプの設定流量とから得られる血流比と、ローラーポンプ上流側圧力との関係式を求めた。
図5(A)および図6(A)に示すように、予備測定で得られたポンプセグメント前キャパシタンスCinおよびポンプセグメント後キャパシタンスCoutを使用して式1で脱血圧を推定したところ、純水、牛血液ともに、実測値(ローラーポンプ上流側圧力)と非常に良い相関がみられた。
また、図5(B)および図6(B)に示すように、得られた脱血圧と血流比を用いて実血流量を推定したところ、実測値と非常に良い相関がみられた。
また、本発明の脱血圧推定方法で推定された脱血圧の値を用いて本発明の実血流量推定方法によって実血流量を推定すれば、液体の種類に係らず、実血流量を高精度で推定できることが確認された。
2 採血部
3 返血部
10 透析部
11 循環回路
13 圧力測定部
14 制御部
15 ローラーポンプ
18 分岐部
18a 流動抵抗調整部
18b 圧力計
20 透析器
Claims (10)
- ローラーポンプを用いて人体との間で血液を循環させる循環回路において、該循環回路におけるローラーポンプの上流側圧力を推定する方法であって、
循環回路に設けられた圧力測定部がローラーポンプの下流側圧力を測定し、
圧力測定部によって測定されたローラーポンプの下流側圧力と下記式1に基づいてローラーポンプの上流側圧力を圧力測定部に接続された制御部が推定する
ことを特徴とする脱血圧推定方法。
式1
PRem=(PCAmin×(Cin+Cout)-PCAmax×Cout)/Cin
PRem:ローラーポンプの上流側圧力(mmH)
PCA: ローラーポンプの下流側圧力(mmHg)
Cin:ポンプセグメント前キャパシタンス(mL/mmHg)
Cout:ポンプセグメント後キャパシタンス(mL/mmHg)
- 循環回路におけるローラーポンプの上流側圧力を変動させながらローラーポンプの上流側圧力およびローラーポンプの下流側圧力を圧力測定部によって測定する予備測定を行い、
予備測定の結果に基づいて、ポンプセグメント前キャパシタンスCinおよびポンプセグメント後キャパシタンスCoutを制御部が算出する
ことを特徴とする請求項1記載の脱血圧推定方法。 - 制御部は予備測定をプライミング作業において実施する
ことを特徴とする請求項2記載の脱血圧推定方法。 - ポンプセグメント前キャパシタンスCinおよびポンプセグメント後キャパシタンスCoutを、予備測定を実施する液体と血液の粘度の差に基づいて制御部が補正する
ことを特徴とする請求項2または3記載の脱血圧推定方法。 - ポンプセグメント前キャパシタンスCinおよびポンプセグメント後キャパシタンスCoutを、圧力測定部によって測定されたローラーポンプの下流側圧力の波形パターンに基づいて制御部が補正する
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の脱血圧推定方法。 - 請求項2~4のいずれかに記載の予備測定において、
流量測定部によって測定されたローラーポンプの下流側流量とローラーポンプの設定流量との比である血流比を制御部が算出し、
算出された血流比と前記式1に基づいて得られるローラーポンプの上流側圧力とに基づいて実血流量を推定する実血流量推定式を制御部が算出し、
実血流量推定式とローラーポンプの上流側圧力とに基づいて制御部が実血流量を推定する
ことを特徴とする実血流量推定方法。 - 循環回路がローラーポンプの下流側に透析器を有している場合において、圧力測定部によって測定された透析器の上流側圧力と透析器の下流側圧力との差圧と透析器の流動抵抗値とに基づいてローラーポンプの下流側流量を制御部が推定する
ことを特徴とする請求項6記載の実血流量推定方法。 - 前記透析器の流動抵抗値を、実血流量として設定血流量を用いて制御部が算出する
ことを特徴とする請求項7記載の実血流量推定方法。 - 人体から血液を採血する採血部と、
該採血部が採血した血液を透析器によって透析する透析部と、
該透析部で透析された血液を人体に返血する返血部と、を備え、
前記透析部は、
前記透析器よりも上流側に設けられた血液を送液するローラーポンプと、
前記ローラーポンプと前記透析器との間におけるローラーポンプの下流側圧力を測定する圧力計を有する圧力測定部と、
該圧力測定部が測定した前記ローラーポンプの下流側圧力と下記式1に基づいて、前記ローラーポンプの上流側圧力を推定する機能を有する制御部と、を備えている
ことを特徴とする血液浄化装置。
式1
PRem=(PCAmin×(Cin+Cout)-PCAmax×Cout)/Cin
PRem:ローラーポンプの上流側圧力(mmH)
PCA: ローラーポンプの下流側圧力(mmHg)
Cin:ポンプセグメント前キャパシタンス(mL/mmHg)
Cout:ポンプセグメント後キャパシタンス(mL/mmHg)
- 前記ローラーポンプの上流側に位置する血液流路に接続された分岐流路を備えており、
該分岐流路には、
該分岐流路の流動抵抗を調整する流動抵抗調整部と、
前記流動抵抗調整部と前記血液流路との間の圧力を測定する圧力計と、が設けられている
ことを特徴とする請求項9記載の血液浄化装置。
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US20090024070A1 (en) | 2000-11-27 | 2009-01-22 | Chf Solutions, Inc. | Controller for ultrafiltration blood circuit which prevents hypotension by monitoring osmotic pressure in blood |
WO2016208705A1 (ja) | 2015-06-24 | 2016-12-29 | 日機装株式会社 | 血液浄化装置 |
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- 2018-09-13 JP JP2018171224A patent/JP7055372B2/ja active Active
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WO2016208705A1 (ja) | 2015-06-24 | 2016-12-29 | 日機装株式会社 | 血液浄化装置 |
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