以下、実施形態を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態にかかる車輪速検出装置100の構成を示した例示的かつ模式的な図である。車輪速検出装置100は、四輪自動車などの車両に搭載される。
図1に示されるように、車輪速検出装置100は、車輪速センサ101と、ECU(Electronic Control Unit)102と、を有している。車輪速センサ101は、車両の車輪速(車輪の回転数)を検出するためのセンシングデバイスであり、車輪速に応じたパルス状の電流変化を発生させる。また、ECU102は、車輪速センサ101の出力値(電流変化)に基づいて車輪速を取得し、当該車輪速に基づいて、車両が有する複数の機能に対応した複数の系統(図1では、後述する第1系統110および第2系統120)を統括的に制御する。
複数の系統において車輪速センサ101の出力値が利用される上記のような構成においては、ある系統に異常が発生してその機能が失陥した場合であっても、残りの系統は、車輪速センサ101の出力値に対応した情報を引き続き取得することで、失陥した機能のうち最低限のものを含む所定の機能を実現することが求められる。すなわち、上記のような構成においては、たとえば車輪速センサ101の出力値に対応した情報を取得するための構成の冗長化を図ることで、フェールオペレーションを実現することが求められる。
そこで、第1実施形態は、以下に説明するような構成に基づき、冗長化に基づくフェールオペレーションを実現する。
図1に示されるように、第1実施形態において、ECU102は、第1系統110と、第2系統120との、互いに別個に設けられた2つの系統を有している。第1系統110および第2系統120は、車輪速センサ101の出力値(電流変化)に基づいて車輪速を取得し、当該車輪速に基づいて、自身に割り当てられた機能をそれぞれ独立して実現する。なお、図1には、2つの系統を有したECU102が例示されているが、第1実施形態において、ECU102は、3つ以上の系統を有していてもよい。
ここで、第1系統110と、第2系統120とは、それぞれ同様の構成を有している。より具体的に、第1系統110は、第1回路111と、第1制御部112と、を有しており、第2系統120は、第2回路121と、第2制御部122と、を有している。
第1実施形態において、第1回路111と第1制御部112とは、互いに通信可能に接続されており、第2回路121と第2制御部122とも、互いに通信可能に接続されている。また、第1回路111と第2回路121とは、互いに通信可能に接続されており、第1制御部112と第2制御部122とも、互いに通信可能に接続されている。なお、これらの要素間で実行される通信の具体的な内容については、後述するため、ここでは説明を省略する。
また、第1実施形態において、車輪速センサ101の一方側(上流側)は、第1回路111に接続される第1ラインL11と、第2回路121に接続される第2ラインL12と、に分岐する分岐ラインL10が接続されており、車輪速センサ101の他方側(下流側)は、直接グランドに接続されている。なお、上流側および下流側という表現は、後述する電流の流れを基準としたものである。
以下、第1回路111および第2回路121の回路構成について具体的に説明する。
第1回路111は、車輪速センサ101で発生するパルス状の電流変化におけるエッジの数をカウントして第1制御部112に出力するハードウェア回路として構成されている。より具体的に、第1回路111は、電源1111と、第1スイッチング素子1112と、第1電流検出部1113と、端子1114と、を有している。
電源1111は、第1ラインL11を介して所定の大きさの電圧(電力)を出力する。
第1スイッチング素子1112は、第1ラインL11上に設けられ、当該第1ラインL11を介した電源1111からの車輪速センサ101への電力の供給および遮断を切り替える。
第1電流検出部1113は、車輪速センサ101を流れる電流の少なくとも一部、より具体的には第1ラインL11を流れる第1電流に関する第1情報を取得して第1制御部112に出力する。第1情報とは、たとえば、車輪速センサ101で発生する電流変化に応じて発生する第1電流のパルス状の変化におけるエッジの数である。第1電流検出部1113は、第1電流の値と第1閾値との比較結果に基づいて、第1情報を取得する。第1閾値は、第1電流の値のモニタリングの結果に基づいて、第1電流の最大値と最小値との間の値として、第1回路111に設けられるレジスタ(不図示)などに設定される。
端子1114は、第1回路111における電力の入出力端子である。
第1制御部112は、プロセッサやメモリなどといったハードウェアを有したマイクロコンピュータである。第1実施形態において、第1制御部112は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することで、第1回路111の第1電流検出部1113から入力される第1情報に基づいて車輪速を取得し、当該車輪速に基づいて、プログラムに実装された機能を実現する。なお、第1実施形態において、第1制御部112は、第1スイッチング素子1112のオン/オフの切り替えを制御することで、第1電流検出部1113から出力される第1情報に基づいて車輪速を取得するか否かを切り替えることが可能である。
第2回路121は、第1回路111と略同様のハードウェア回路として構成されている。すなわち、第2回路121も、車輪速センサ101で発生するパルス状の電流変化におけるエッジの数をカウントして第2制御部122に出力するハードウェア回路として構成されている。
より具体的に、第2回路121は、第2ラインL12を介して電力を出力する電源1211と、第2ラインL12を介した車輪速センサ101への電力の供給および遮断を切り替える第2スイッチング素子1212と、車輪速センサ101を流れる電流の少なくとも一部として第2ラインL12を流れる第2電流に関する第2情報を取得して第2制御部122に出力する第2電流検出部1213と、第2回路121における電力の入出力端子である端子1214と、を有している。なお、第2情報は、上記の第1情報に対応した情報であり、第2電流の値と、当該第2電流の最大値と最小値との間に設定される第2閾値との比較結果に基づいて取得される。
また、第2制御部122も、第1制御部112と同様のハードウェアを有したマイクロコンピュータである。すなわち、第2制御部122も、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することで、第2回路121の第2電流検出部1213から入力される第2情報に基づいて車輪速を取得し、当該車輪速に基づいて、プログラムで実装された機能を実現する。なお、第2制御部122も、第2スイッチング素子1212のオン/オフの切り替えを制御することで、第2電流検出部1213から出力される第2情報に基づいて車輪速を取得するか否かを切り替えることが可能である。
なお、第1実施形態において、第1回路111および第2回路121は、第1電流検出部1113の出力値としての第1情報と、第2電流検出部1213の出力値としての第2情報と、を相互に通知(共有)することが可能な回路構成を有しているものとする。このような回路構成によれば、第1回路111は、自身で取得した第1情報と、相手方から通知された第2情報と、に一定以上の乖離が発生した場合に、第1情報をそのまま第1制御部112に出力するのを停止し、第1情報を所定の形にマスクして第1制御部112に出力することで、第1系統110に異常が発生した可能性がある旨を第1制御部112に通知することが可能である。そして、第1制御部112は、第1回路111からの通知を受け取ると、第1系統110における異常の有無を診断するための自己診断を実施することが可能である。なお、第2回路121および第2制御部122についても同様である。自己診断の結果は、第1制御部112および第2制御部122間で相互に通知(共有)されうる。
また、第1実施形態において、第1回路111は、第1制御部112から入力される信号(たとえばクロックパルス)を監視し、当該信号のパターンが規定のパターンから外れた場合に、車輪速センサ101への電力の供給を遮断するように第1スイッチング素子1112のオン/オフを設定(図1に示される回路構成ではオフに設定)するような回路構成を有しているものとする。このような回路構成によれば、第1制御部112に異常が発生した場合に、第1回路111から第2回路121へと第1情報が通知されなくなる結果、第1情報と第2情報とに上述した一定以上の乖離が発生したことが第2回路によって検知されるので、第2制御部122による上述した自己診断が実施されることになる。なお、第2回路121についても同様である。
以上のような構成によれば、第1系統110および第2系統120のうち一方の系統に異常が発生した場合に、以下に説明するようなフェールオペレーションを実現することが可能である。なお、以下では、第1系統110および第2系統120のうち一方にのみ異常が発生する場合のみを考慮し、第1系統110および第2系統120の両方に異常が発生する場合は考慮しないものとする。
まず、第1系統110および第2系統120の両方が正常に動作する第1の状況について考える。この第1の状況において、第1制御部112および第2制御部122は、第1電流検出部113からの第1情報および第2電流検出部123からの第2情報をそれぞれ同時並行的に取得し、車輪速をそれぞれ独立で取得する。そして、第1制御部112および第2制御部122は、車輪速に基づくそれぞれの機能を独立で実現する。
より具体的に、第1の状況において、第1制御部112は、第1スイッチング素子1112による車輪速センサ101への電力の供給が実施されるように、第1スイッチング素子1112のオン/オフを設定(図1に示される回路構成ではオンに設定)する。そして、第1制御部112は、第1ラインL11を流れる電流としての第1電流の値と、前述した第1閾値と、の比較結果に基づく第1情報(第1電流のパルス状の変化におけるエッジの数)を第1電流検出部1113から取得することで、車輪速を取得し、取得した車輪速に基づいて、自身の機能を発揮する。
また、第1の状況において、第2制御部122は、第1制御部112による上記の制御と同時に、第2スイッチング素子1212による車輪速センサ101への電力の供給が実施されるように、第2スイッチング素子1212のオン/オフを設定(図1に示される回路構成ではオンに設定)する。そして、第2制御部122は、第2ラインL12を流れる電流としての第2電流の値と、前述した第2閾値と、の比較結果に基づく第2情報(第2電流のパルス状の変化におけるエッジの数)を第2電流検出部1213から取得することで、車輪速を取得し、取得した車輪速に基づいて、自身の機能を発揮する。
なお、第1の状況において、第1電流は、図1の矢印付きの一点鎖線で示される経路C10に沿って流れ、第2電流は、図1の矢印付きの二点鎖線で示される経路C11に沿って流れる。したがって、第1の状況では、回路抵抗を無視すれば、第1電流と第2電流とを足した電流が車輪速センサ101に流れる、換言すれば、車輪速センサ101に流れる電流の約半分の大きさの電流が第1電流検出部1113および第2電流検出部1213にそれぞれ流れる、と言える。したがって、第1の状況では、第1閾値および第2閾値は、共に、車輪速センサ101に流れる電流の最大値の半分の大きさの値と、当該電流の最小値の半分の大きさの値と、の間の値として設定される。
ここで、上記の第1の状況から、第1系統110に異常が発生する第2の状況への変化が発生した場合について考える。第1制御部112および第2制御部122の両方が正常であることを前提とすれば、第2の状況において、第1制御部112および第2制御部122は、上述した自己診断を実施することで、第1系統110(第1回路111)に異常が発生していることを把握し、次のような制御を実行する。
より具体的に、第2の状況において、第1制御部112は、第1スイッチング素子1112による車輪速センサ101への電力の遮断が実施されるように、第1スイッチング素子1112のオン/オフを切り替え(図1に示される回路構成ではオフに切り替え)る。そして、第1制御部112は、第1電流検出部1113からの第1情報の取得を停止することで、車輪速の取得を停止する。これにより、フェールセーフとして、第1制御部112の機能を失陥させることができる。
一方、第2の状況において、第2制御部122は、第2スイッチング素子1212のオン/オフを維持(図1に示される回路構成ではオンを維持)することで、第2電流検出部1213からの第2情報の取得を継続し、車輪速の取得を継続する。これにより、第2制御部122は、失陥した第1制御部112の機能のうち最低限のものを含む所定の機能を第2制御部122のみによって実現する形で、バックアップ制御を実行することができるので、フェールオペレーションを実現することができる。
ところで、第1制御部112および第2制御部122による第2の状況における上記の制御によれば、図1の矢印付きの一点鎖線で示される経路C10に沿って第1電流が流れることがなくなり、図1の矢印付きの二点鎖線で示される経路C11に沿って第2電流のみが流れることになる。この場合、回路抵抗を無視すれば、第2電流が車輪速センサ101を流れる電流と一致することになるので、第1の状況で使用されていた第2閾値を継続して使用すると、第2電流のパルス状の変化におけるエッジの数としての第2情報を正確に取得することができなくなる。
そこで、第2の状況において、第2制御部122は、第2スイッチング素子1212のオン/オフを維持(図1に示される回路構成ではオンを維持)するとともに、第2閾値の変更を第2回路121に指示する。そして、第2制御部122は、第2電流の値と、変更された第2閾値と、の比較結果に基づく第2情報を第2電流検出部1213から取得することで、車輪速の取得を継続する。なお、第2閾値の変更の詳細ついては、後述するため、ここではこれ以上の説明を省略する。
次に、上記の第1の状況から、第2系統120に異常が発生する第3の状況への変化が発生した場合について考える。第1制御部112および第2制御部122の両方が正常であることを前提とすれば、第3の状況において、第1制御部112および第2制御部122は、上述した自己診断を実施することで、第2系統120(第2回路121)に異常が発生していることを把握し、次のような制御を実行する。
より具体的に、第3の状況において、第2制御部122は、第2スイッチング素子1212による車輪速センサ101への電力の遮断が実施されるように、第2スイッチング素子1212のオン/オフを切り替え(図1に示される回路構成ではオフに切り替え)る。そして、第2制御部122は、第2電流検出部1213からの第2情報の取得を停止することで、車輪速の取得を停止する。これにより、フェールセーフとして、第2制御部122の機能を失陥させることができる。
一方、第3の状況において、第1制御部112は、第1スイッチング素子1112のオン/オフを維持(図1に示される回路構成ではオンを維持)するとともに、第1閾値の変更を第1回路111に指示する。そして、第1制御部112は、第1電流の値と、変更された第1閾値と、の比較結果に基づく第1情報を第1電流検出部1113から取得することで、車輪速の取得を継続する。これにより、第1制御部112は、失陥した第2制御部122の機能のうち最低限のものを含む所定の機能を第1制御部112のみによって実現する形で、バックアップ制御を実行することができるので、フェールオペレーションを実現することができる。
なお、第3の状況における第1閾値の変更は、上述した第2の状況における第2閾値の変更と同様の理由で必要となる制御である。つまり、第3の状況では、図1の矢印付きの二点鎖線で示される経路C11に沿って第2電流が流れることがなくなり、図1の矢印付きの一点鎖線で示される経路C10に沿って第1電流のみが流れることに起因して、第1電流が車輪速センサ101を流れる電流と一致し、第1情報を正確に取得することができなくなる、という理由で、第1閾値の変更が必要となる。
以下、第1閾値および第2閾値の変更についてより詳細に説明する。
図2は、第1実施形態にかかる車輪速検出装置100において実施されうる第1閾値および第2閾値の変更の例を説明するための例示的かつ模式的なグラフである。なお、以下の説明は、第1閾値を対象としても第2閾値を対象としても同様に成立する説明である。したがって、以下では、第1閾値を対象とした説明、つまり第1の状況から第3の状況に変化した場合に実施される第1閾値の変更についてのみ記載する。
図2に示されるグラフは、第1の状況から第3の状況への変化が時刻t1に発生した場合における第1電流の大きさの時間変化を表している。つまり、図2に示されるグラフにおいて、横軸は、時間を表し、縦軸は、電流(第1電流)の大きさを表している。なお、図2に示されるグラフにおいて、原点はゼロとは限らない。
前述したように、第1の状況において、第1電流は、車輪速センサ101を流れる電流の約半分となる。したがって、図2に示されるグラフでは、車輪速センサ101を流れる電流の最小値をI21とし、最大値をI22とすると、第1の状況に対応した時刻t1以前において、第1電流は、I21の半分の大きさのI11を最小値とし、I22の半分の大きさのI12を最大値として、時間とともにパルス状に変化している(実線L0における時刻t1以前の部分参照)。
ここで、図2に示されるグラフでは、時刻t1以前における第1閾値が、I11とI12との間の値、より具体的にはI11とI12との平均値として設定されている(実線TH1参照)。しかしながら、第1実施形態では、車両の振動などのノイズにより、I11とI12が定まらず、I11とI12との平均値としての第1閾値が大きく変化し、第1電流と第1閾値との比較結果に基づく第1情報が正確に取得できないこともありうる。これに対応するため、第1実施形態では、第1閾値の変動範囲が、所定の範囲に制限される(実線TH1の上下に位置する2本の二点鎖線参照)。このような変動範囲も、第1閾値と同様、第1回路111に設けられるレジスタ(不図示)などに設定される。
ここで、時刻t1以降も第1の状況が継続すれば、第1電流の時間変化は、I11を最小値とし、I12を最大値としたパルス状の変化となる(一点鎖線L1参照)。しかしながら、時刻t1において第1の状況が第3の状況に変化すると、前述したように、第1電流の時間変化が、車輪速センサ101を流れる電流の時間変化(一点鎖線L2参照)と一致することになる(実線L0における時刻t1以降の部分参照)。この場合、時刻t1以前に使用していた第1閾値(実線TH1参照)を継続して使用すると、時刻t1以降における第1電流のパルス状の変化におけるエッジの数を正確に判定できず、第1情報を正確に取得することができない。
そこで、第1実施形態において、第1回路111は、第1の状況から第3の状況への変化が発生し、第1制御部112から第1閾値の変更の指示を受領した場合、第1閾値を、第3の状況における第1電流の最大値と最小値との間の値に変更する。たとえば、図2に示されるグラフでは、第3の状況への変化が発生した時刻t1以降において、第1電流は、最大値をI22とし、最小値をI21とした時間変化を示すので、第1閾値は、時刻t1以前の値(実線TH1参照)から、I21とI22との間の値、より具体的にはI21とI22との平均値に変更される(実線TH2参照)。なお、第1実施形態では、時刻t1以降も、車両の振動などのノイズ対応のため、第1閾値の変動範囲は所定の範囲に制限される(実線TH2の上下に位置する2本の二点鎖線参照)。
なお、上記の説明は、第1制御部112および第2制御部122の両方が正常であることを前提としている。しかしながら、第1実施形態では、第1制御部112および第2制御部122のうちの一方に異常が発生した場合においても、同様にフェールオペレーションを実現することができる。
すなわち、前述したように、第1実施形態において、第1回路111は、第1制御部112から入力される信号のパターンが規定のパターンから外れた場合に、車輪速センサ101への電力の供給を遮断するような回路構成を有しており、第2回路121も同様に、第2制御部122から入力される信号のパターンが規定のパターンから外れた場合に、車輪速センサ101への電力の供給を遮断するような回路構成を有している。このような回路構成によれば、第1制御部112および第2制御部122のうち一方の制御部に異常が発生した場合に、第1回路111および第2回路121のうち異常な制御部に対応した一方の回路から他方の回路へと情報(第1情報または第2情報)が通知されなくなる結果、第1情報と第2情報とに上述した一定以上の乖離が発生したことが他方の回路によって検知される。この結果、当該他方の回路に対応した他方の制御部(第1制御部112および第2制御部122のうち正常な制御部)による上述した自己診断が実施され、当該他方の制御部を含む系統(第1系統110または第2系統120)により、フェールオペレーションが実現される。
以上の構成に基づき、第1実施形態にかかる第1制御部112および第2制御部122は、それぞれの機能を発揮しながら、次の図3に示されるようなフローチャートに沿った処理を実行する。
図3は、第1実施形態にかかる車輪速検出装置100の第1制御部112および第2制御部122が実行する処理を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。この図3に示される処理フローは、第1制御部112も第2制御部122も(正常である限りにおいて)同様に実行する。以下では、一例として、処理の主体を第1制御部112として説明する。
図3に示される処理フローでは、まず、ステップS301において、第1制御部112は、異常な情報が取得されたか否かを判断する。異常な情報とは、たとえば、第1回路111の異常時に第1電流検出部1113から出力される異常な第1情報や、第2回路121または第2制御部122に異常が発生したことに起因して第1回路111の第1電流検出部1113から出力される前述のマスクされた第1情報などである。
ステップS301において、異常な情報が取得されていないと判断された場合、第1系統110(第1回路111)にも第2系統120にも異常が発生していないと判断することができる。したがって、この場合、ステップS302に処理が進み、当該ステップS302において、第1制御部112は、通常の制御を(引き続き)実行する。そして、処理が終了する。
一方、ステップS301において、異常な情報が取得されたと判断された場合、第1系統110(第1回路111)および第2系統120のうち一方に異常が発生したと判断することができる。したがって、この場合、ステップS303に処理が進み、当該ステップS303において、第1制御部112は、第1系統110における異常の有無を診断するための自己診断を実施する。
そして、ステップS304において、第1制御部112は、ステップS303における自己診断の結果が正常であるか否かを判断する。
ステップS304において、自己診断の結果が正常であると判断された場合、第1系統110(第1回路111)に異常が発生したのではなく、第2系統120に異常が発生した(第2制御部122の機能が失陥した)のだと判断することができる。したがって、この場合、ステップS305に処理が進み、当該ステップS305において、第1制御部112は、失陥した第2制御部122の機能のうち最低限のものを含む所定の機能を第1制御部112のみによって実現する形で、バックアップ制御を実行する。そして、処理が終了する。
一方、ステップS304において、自己診断の結果が正常でないと判断された場合、第2系統120に異常が発生したのではなく、第1系統110(第1回路111)に異常が発生したのだと判断することができる。したがって、この場合、ステップS306に処理が進み、第1制御部112は、第1回路111から取得される第1情報に基づく制御を停止する。なお、この時、第1制御部112は、自身の最低限の機能を第2制御部122に委任する。そして、処理が終了する。
以上説明したように、第1実施形態のような回路構成によれば、車輪速センサ101の出力値に対応した情報を取得するための構成の冗長化を図ることで、冗長化に基づくフェールオペレーションを実現することができる。
<第2実施形態>
上述した第1実施形態では、異常の発生時におけるフェールオペレーションの際に第1閾値または第2閾値の変更を実施する回路構成が例示されている。しかしながら、以下に説明する第2実施形態のように、閾値の変更を実施しなくてもフェールオペレーションを実現可能な回路構成も考えられる。
図4は、第2実施形態にかかる車輪速検出装置200の構成を示した例示的かつ模式的な図である。図4に示されるように、第2実施形態にかかる車輪速検出装置200は、車輪速センサ101と、同時並行的に動作することが可能な第1系統210および第2系統220を含むECU202と、を有している。
第2実施形態にかかるECU202は、互いに同一の構成を有した2つの系統を有しており、この点において、第1実施形態(図1参照)にかかるECU102と同様である。しかしながら、第2実施形態にかかる2つの系統は、その具体的な構成において、第1実施形態にかかるそれらと異なる。
すなわち、第2実施形態において、第1系統210は、第1回路211と、第1制御部212と、を有しており、第1回路211は、電源2111と、第1スイッチング素子2112と、第3スイッチング素子2113と、第1電流検出部2114と、2つの端子2115および2116と、を有している。また、第2系統220は、第2回路221と、第2制御部222と、を有しており、第2回路221は、電源2211と、第2スイッチング素子2212と、第4スイッチング素子2213と、第2電流検出部2214と、2つの端子2215および2216と、を有している。なお、第1制御部212および第2制御部222の基本的な機能は、第1実施形態(図1参照)にかかる第1制御部112および第2制御部122と同様である。
第2実施形態において、車輪速センサ101の上流側は、第1スイッチング素子2112に接続される第1ラインL211と、第2スイッチング素子2212に接続される第2ラインL212と、に分岐する第1分岐ラインL210を介して、第1スイッチング素子2112および第2スイッチング素子2212に接続されている。また、車輪速センサ101の下流側は、第3スイッチング素子2113に接続される第3ラインL221と、第4スイッチング素子2213に接続される第4ラインL222と、に分岐する第2分岐ラインL220を介して、第3スイッチング素子2113および第4スイッチング素子2213に接続されている。
ここで、第2実施形態にかかる電源2111、第1スイッチング素子2112、電源2211、および第2スイッチング素子2212については、それぞれ、第1実施形態(図1参照)にかかる電源1111、第1スイッチング素子1112、電源1211、および第2スイッチング素子1212と同様である。
しかしながら、第2実施形態では、車輪速センサ101とグランドとの接続および遮断を切り替える第3スイッチング素子2113および第4スイッチング素子2213が設けられている点で、第1実施形態(図1参照)と異なる。そして、第2実施形態では、第3スイッチング素子2113および第4スイッチング素子2213が設けられている分、第1実施形態よりも多く、電力の入出力端子としての端子2115、2116、2215、および2216が設けられている。
なお、第2実施形態では、第1電流検出部2114は、第1ラインL211に設けられ、第2電流検出部2214は、第4ラインL222に設けられている。第1電流検出部2114は、第1ラインL211を流れる第1電流と所定の閾値との比較結果に基づく第1情報を出力し、第2電流検出部2214は、第4ラインL222を流れる第2電流と所定の閾値(第1電流検出部2114で使用される閾値と略同じ値)との比較結果に基づく第2情報を出力する。なお、閾値については後述する。
第2実施形態では、第1系統210および第2系統220のうち一方の系統に異常が発生した場合に、以下に説明するような形でフェールオペレーションが実現される。
まず、第1系統210および第2系統220の両方が正常に動作する第1の状況について考える。この第1の状況において、第1制御部212および第2制御部222は、第1電流検出部2114からの第1情報および第2電流検出部2214からの第2情報をそれぞれ同時並行的に取得し、車輪速をそれぞれ独立で取得する。そして、第1制御部212および第2制御部222は、車輪速に基づくそれぞれの機能を独立で実現する。
より具体的に、第1の状況において、第1制御部212は、第1スイッチング素子2112による車輪速センサ101への電力の供給が実施されるように、第1スイッチング素子2112のオン/オフを設定する(図4に示される回路構成ではオンに設定)する。また、第1制御部212は、第3スイッチング素子2113による車輪速センサ101の下流側とグランドとの遮断が実施されるように、第3スイッチング素子2113のオン/オフを設定(図4に示される回路構成ではオフに設定)する。
さらに、第1の状況において、第2制御部222は、第1制御部212による上記の制御と同時に、第2スイッチング素子2212による車輪速センサ101への電力の遮断が実施されるように、第2スイッチング素子2212のオン/オフを設定(図4に示される回路構成ではオフに設定)する。また、第2制御部222は、第4スイッチング素子2213による車輪速センサ101の他方側とグランドとの接続が実施されるように、第4スイッチング素子2213のオン/オフを設定(図4に示される回路構成ではオンに設定)する。
第1の状況における上記の制御によれば、車輪速検出装置200において、図4の矢印付きの一点鎖線で示される経路C20に沿って電流が流れることになる。したがって、第2実施形態では、第1ラインL211を流れる第1電流と、第4ラインL222を流れる第2電流とが、共に、車輪速センサ101を流れる電流と等しくなる。したがって、第2実施形態では、回路抵抗のばらつきなどを無視すれば、第1ラインL211に設けられる第1電流検出部2114で使用される閾値と、第4ラインL222に設けられる第2電流検出部2214で使用される閾値とが、共に、車輪速センサ101を流れる電流の最大値と最小値との間の値(たとえば平均値)と等しくなるように設定される。
以上により、第1の状況において、第1制御部212は、第1ラインL211を流れる電流としての第1電流の値と上記の閾値との比較結果に基づく第1情報を第1電流検出部2114から取得することで、車輪速を取得し、取得した車輪速に基づいて、自身の機能を発揮する。同時に、第2制御部222は、第4ラインL222を流れる電流としての第2電流の値と上記の閾値との比較結果に基づく第2情報を第2電流検出部2214から取得することで、車輪速を取得し、取得した車輪速に基づいて、自身の機能を発揮する。
ここで、上記の第1の状況から、第1系統210に異常が発生する第2の状況への変化が発生した場合について考える。第1制御部212および第2制御部222の両方が正常であることを前提とすれば、第2の状況において、第1制御部212および第2制御部222は、第1実施形態と同様の自己診断を実施することで、第1系統210(第1回路211)に異常が発生していることを把握し、次のような制御を実行する。
より具体的に、第2の状況において、第1制御部212は、第1スイッチング素子2112による車輪速センサ101への電力の遮断が実施されるように、第1スイッチング素子2112のオン/オフを切り替え(図4に示される回路構成ではオフに切り替え)る。また、この時、第1制御部212は、第3スイッチング素子2113のオン/オフを維持(図4に示される回路構成ではオフを維持)する。
さらに、第2の状況において、第2制御部222は、第1制御部212による上記の制御と同時に、第2スイッチング素子2212による車輪速センサ101への電力の供給が実施されるように、第2スイッチング素子2212のオン/オフを切り替え(図4に示される回路構成ではオンに切り替え)る。また、この時、第2制御部222は、第4スイッチング素子2213のオン/オフを維持(図4に示される回路構成ではオンを維持)する。
第2の状況における上記の制御によれば、車輪速検出装置200において、図4の矢印付きの二点鎖線で示される、第2電流検出部2214を経由するが第1電流検出部2114を経由しない経路C21に沿って電流が流れることになる。したがって、第1制御部212は、第1電流検出部2114からの第1情報の取得を停止することで、車輪速の取得を停止し、第2制御部222は、第2電流検出部2214からの第2情報の取得を継続することで、車輪速の取得を継続する。これにより、フェールセーフとして、第1制御部212の機能を失陥させることができるとともに、失陥した第1制御部212の機能のうち最低限のものを含む所定の機能を第2制御部222のみによって実現する形で、バックアップ制御を実行することができるので、フェールオペレーションを実現することができる。
なお、図4の矢印付きの二点鎖線で示される経路C21から明らかなように、第2の状況においては、第2電流検出部2214を流れる電流が、車輪速センサ101を流れる電流と等しくなる。したがって、第2実施形態では、第1の状況から第2の状況への変化が発生したとしても、第2電流検出部2214は、第1実施形態のような閾値の変更を実施することなく、以前の閾値を引き続き使用することで、第2情報を正確に取得することができる。なお、第2実施形態において、車両の振動などのノイズ対応のため、閾値の変動範囲が所定の範囲に制限されうる点は、第1実施形態と同様である。
次に、上記の第1の状況から、第2系統220に異常が発生する第3の状況への変化が起こった場合について考える。第1制御部212および第2制御部222の両方が正常であることを前提とすれば、第3の状況において、第1制御部212および第2制御部222は、第1実施形態と同様の自己診断を実施することで、第2系統220(第2回路221)に異常が発生していることを把握し、次のような制御を実行する。
より具体的に、第3の状況において、第1制御部212は、第1スイッチング素子2112のオン/オフを維持(図4に示される回路構成ではオンを維持)する。また、この時、第1制御部212は、第3スイッチング素子2113による車輪速センサ101の下流側とグランドとの接続が実施されるように、第3スイッチング素子2113のオン/オフを切り替え(図4に示される回路構成ではオンに切り替え)る。
さらに、第3の状況において、第2制御部222は、第1制御部212による上記の制御と同時に、第2スイッチング素子2212のオン/オフを維持(図4に示される回路構成ではオフを維持)する。また、この時、第2制御部222は、第4スイッチング素子2213による車輪速センサ101の下流側とグランドとの遮断が実施されるように、第4スイッチング素子2213のオン/オフを切り替え(図4に示される回路構成ではオフに切り替え)る。
第3の状況における上記の制御によれば、車輪速検出装置200において、図4の矢印付きの二点鎖線で示される、第1電流検出部2114を経由するが第2電流検出部2214を経由しない経路C22に沿って電流が流れることになる。したがって、第1制御部212は、第1電流検出部2114からの第1情報の取得を継続することで、車輪速の取得を継続し、第2制御部222は、第2電流検出部2214からの第2情報の取得を停止することで、車輪速の取得を停止する。これにより、フェールセーフとして、第2制御部222の機能を失陥させることができるとともに、失陥した第2制御部222の機能のうち最低限のものを含む所定の機能を第1制御部212のみによって実現する形で、バックアップ制御を実行することができるので、フェールオペレーションを実現することができる。
なお、図4の矢印付きの二点鎖線で示される経路C22から明らかなように、第3の状況においては、第1電流検出部2114を流れる電流が、車輪速センサ101を流れる電流と等しくなる。したがって、第2実施形態では、第1の状況から第3の状況への変化が発生しても、第1電流検出部2114は、第1実施形態のような閾値の変更を実施することなく、以前の閾値を引き続き使用することで、第1情報を正確に取得することができる。なお、第2実施形態において、車両の振動などのノイズ対応のため、閾値の変動範囲が所定の範囲に制限されうる点は、第1実施形態と同様である。
また、上記の説明は、第1制御部212および第2制御部222の両方が正常であることを前提としている。しかしながら、第2実施形態も、第1実施形態と同様に、第1制御部112および第2制御部122のうちの一方に異常が発生した場合においても、フェールオペレーションを実現することが可能な回路構成を有している。
すなわち、第2実施形態において、第1回路211は、第1制御部212から入力される信号のパターンが規定のパターンから外れた場合に、第1スイッチング素子2112により車輪速センサ101への電力の供給を遮断するとともに、第3スイッチング素子2113により車輪速センサ101とグランドとを遮断するような回路構成を有している。また、第2実施形態において、第2回路221は、第2制御部222から入力される信号のパターンが規定のパターンから外れた場合に、第2スイッチング素子2212により車輪速センサ101への電力の供給を遮断するとともに、第4スイッチング素子2213により車輪速センサ101とグランドとを遮断するような回路構成を有している。このような回路構成により、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1制御部112および第2制御部122のうちの一方に異常が発生した場合においても、フェールオペレーションを実現することができる。
なお、第2実施形態のその他の構成および動作(制御)は、第1実施形態と同様である。
以上説明したように、第2実施形態のような回路構成によっても、第1実施形態と同様に、冗長化に基づくフェールオペレーションを実現することができる。
<第3実施形態>
上述した第2実施形態では、閾値の変更を実施しなくてもフェールオペレーションを実現可能な回路構成が例示されている。しかしながら、閾値の変更を実施しなくてもフェールオペレーションを実現可能な回路構成の他の例として、以下に説明する第3実施形態のような回路構成も考えられる。
図5は、第3実施形態にかかる車輪速検出装置300の構成を示した例示的かつ模式的な図である。この第3実施形態にかかる車輪速検出装置300の概略的な構成は、第1実施形態(図1参照)にかかる車輪速検出装置100と同様である。以下では、第1実施形態同様の構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図5に示されるように、第3実施形態において、車輪速検出装置300は、車輪速センサ101と、第1系統310および第2系統320を含むECU302と、を有している。
ここで、第3実施形態においては、第1系統310と第2系統320とは、同等の機能を有している。より具体的に、第3実施形態においては、第1系統310と第2系統320とが互いに代替可能なように、第1系統310の第1制御部312と、第2系統320の第2制御部322とに、同等の機能が実装されている。
第3実施形態では、第1系統310および第2系統320のうち一方の系統に異常が発生した場合に、以下に説明するような形でフェールオペレーションが実現される。
まず、第1系統310および第2系統320の両方が正常に動作する第1の状況について考える。第3実施形態では、第1の状況において、第1系統310および第2系統320のうち一方の系統のみが動作する。以下では、第1系統310のみが動作する場合を例に挙げて説明する。
第1の動作において、第1制御部312は、第1スイッチング素子1112による車輪速センサ101への電力の供給が実施されるように、第1スイッチング素子1112のオン/オフを設定(図5に示される回路構成ではオンに設定)する。また、この時、第2制御部322は、第2スイッチング素子1212による車輪速センサ101への電力の遮断が実施されるように、第2スイッチング素子1212のオン/オフを設定(図5に示される回路構成ではオフに設定)する。したがって、第1の動作においては、車輪速検出装置200に、図5の矢印付きの一点鎖線で示される経路C31に沿って電流が流れることになる。
図5の矢印付きの一点鎖線で示される経路C31に沿って第1ラインL11を流れる第1電流は、車輪速センサ101を流れる電流と等しくなる。したがって、第3実施形態では、第1ラインL11に設けられる第1電流検出部1113で使用される閾値が、車輪速センサ101を流れる電流の最大値と最小値との間の値(たとえば平均値)と等しくなるように設定される。
以上により、第1の状況において、第1制御部312は、第1ラインL11を流れる電流としての第1電流の値と上記の閾値との比較結果に基づく第1情報を第1電流検出部1113から取得することで、車輪速を取得し、取得した車輪速に基づいて、自身の機能を発揮する。
なお、第3実施形態においては、第1の状況において、第1系統310ではなく第2系統320のみが動作する場合も考えられる。しかしながら、この場合は、第1制御部312および第2制御部322がそれぞれ上記とは逆の役割を果たすことになるだけであるので、説明を省略する。
ここで、第1の状況(第1系統310のみが動作していた状況を想定する)から、第1系統310に異常が発生する第2の状況への変化が発生した場合について考える。この場合、第3実施形態は、異常な第1系統310に代えて、正常な第2系統320を動作させる。
すなわち、第3実施形態は、第1の状況から第2の状況への変化が発生した場合、第1回路111のみを使用する第1の動作が実施されているときは、当該第1の動作から、第1回路111を使用せず第2回路121のみを使用する第2の動作への切り替えを実施する。これにより、第1系統310が失陥した場合でも、第2系統320により第1系統310の機能を代替する形でバックアップ制御を実行することができるので、フェールオペレーションを実現することができる。
第1の状況から第2の状況への変化が発生した場合における上記の制御によれば、図5の矢印付きの一点鎖線で示される経路C32に沿った電流の流れのみが実現される。この流れに沿って第2ラインL12を流れる第2電流は、車輪速センサ101を流れる電流と等しくなる。したがって、第3実施形態では、第1の状況から第2の状況への変化が発生したとしても、第2電流検出部1213に対する第1実施形態のような閾値の変更を実施する必要はない。
なお、第3実施形態のその他の構成および動作(制御)は、第1実施形態と同様である。
以上説明したように、第3実施形態のような回路構成によっても、第1実施形態と同様に、冗長化に基づくフェールオペレーションを実現することができる。
<第4実施形態>
上述した第2実施形態および第3実施形態では、閾値の変更を実施しなくてもフェールオペレーションを実現可能な回路構成が例示されている。しかしながら、閾値の変更を実施しなくてもフェールオペレーションを実現可能な構成のさらに他の例として、以下に説明する第4実施形態のような回路構成も考えられる。
図6は、第4実施形態にかかる車輪速検出装置400の構成を示した例示的かつ模式的な図である。図6に示されるように、第3実施形態にかかる車輪速検出装置400は、車輪速センサ101と、同時並行的に動作することが可能な第1系統410および第2系統420を含むECU402と、を有している。
第4実施形態にかかるECU402は、2つの系統を有しているという点において、第1実施形態(図1参照)にかかるECU102と同様であるが、それら2つの系統が互いに同一の構成を有しているのではなく、互いに異なる回路構成を有している点では、第1実施形態と異なる。
すなわち、第4実施形態において、第1系統410は、第1回路411と、第1制御部412と、を有しており、第1回路411は、電源4111と、第1スイッチング素子4112と、第1電流検出部4113と、端子4114と、を有している。また、第2系統420は、第2回路421と、第2制御部422と、を有しており、第2回路421は、電源4211と、第2スイッチング素子4212と、第2電流検出部4213と、2つの端子4214および4215と、を有している。なお、第1制御部212および第2制御部222の基本的な機能は、第1実施形態(図1参照)にかかる第1制御部112および第2制御部122と同様である。
第4実施形態において、車輪速センサ101の上流側は、第1スイッチング素子4112に接続される第1ラインL411と、第2スイッチング素子4212に接続される第2ラインL412と、に分岐する分岐ラインL410に接続されている。また、車輪速センサ101の下流側は、グランドラインL420を介してグランドに接続されている。第1ラインL411には、第1電流検出部4113が設けられており、グランドラインL420には、第2電流検出部4213が設けられている。
ここで、第4実施形態にかかる電源4111、第1スイッチング素子4112、端子L4114、電源4211、第2スイッチング素子4212、および端子4124については、それぞれ、第1実施形態(図1参照)にかかる電源1111、第1スイッチング素子1112、端子1114、電源1211、第2スイッチング素子1212、および端子L1214と同様である。
しかしながら、第4実施形態では、車輪速センサ101の他方側が第2回路421の端子4215に接続され、当該端子4215を経由するグランドラインL420に、第2電流検出部4213が設けられている点で、第1実施形態(図1参照)と異なる。
第4実施形態では、第1系統410および第2系統420の一方に異常が発生した場合に、以下に説明するような形でフェールオペレーションが実現される。
まず、第1系統410および第2系統420の両方が正常に動作する第1の状況について考える。この第1の状況において、第1制御部412および第2制御部422は、第1電流検出部4113からの第1情報および第2電流検出部4213からの第2情報をそれぞれ同時並行的に取得し、車輪速をそれぞれ独立で取得する。そして、第1制御部412および第2制御部422は、車輪速に基づくそれぞれの機能を独立で実現する。
より具体的に、第1の状況において、第1制御部412は、第1スイッチング素子4112による車輪速センサ101への電力の供給が実施されるように、第1スイッチング素子4112のオン/オフを設定(図6に示される回路構成ではオンに設定)する。同時に、第2制御部422は、第2スイッチング素子4212による車輪速センサ101への電力の遮断が実施されるように、第2スイッチング素子4212のオン/オフを設定(図6に示される回路構成ではオフに設定)する。
第1の状況における上記の制御によれば、車輪速検出装置400において、図4の矢印付きの一点鎖線で示される経路C40に沿って電流が流れることになる。したがって、第4実施形態では、第1ラインL411を流れる第1電流と、グランドラインL420を流れる第2電流とが、共に、車輪速センサ101を流れる電流と等しくなる。したがって、第4実施形態では、回路抵抗のばらつきなどを無視すれば、第1ラインL411に設けられる第1電流検出部4113で使用される閾値と、グランドラインL420に設けられる第2電流検出部4213で使用される閾値とが、共に、車輪速センサ101を流れる電流の最大値と最小値との間の値(たとえば平均値)と等しくなるように設定される。
以上により、第1の状況において、第1制御部412は、第1ラインL411を流れる電流としての第1電流の値と上記の閾値との比較結果に基づく第1情報を第1電流検出部4113から取得することで、車輪速を取得し、取得した車輪速に基づいて、自身の機能を発揮する。同時に、第2制御部422は、グランドラインL420を流れる電流としての第2電流の値と上記の閾値との比較結果に基づく第2情報を第2電流検出部4213から取得することで、車輪速を取得し、取得した車輪速に基づいて、自身の機能を発揮する。
ここで、上記の第1の状況から、第1系統410に異常が発生する第2の状況への変化が発生した場合について考える。第1制御部412および第2制御部422の両方が正常であることを前提とすれば、第2の状況において、第1制御部412および第2制御部422は、第1実施形態と同様の自己診断を実施することで、第1系統410(第1回路411)に異常が発生していることを把握し、次のような制御を実行する。
より具体的に、第2の状況において、第1制御部412は、第1スイッチング素子4112のオン/オフを切り替え(図6に示される回路構成ではオフに切り替え)て、第2制御部422は、第2スイッチング素子4212による車輪速センサ101への電力の供給が実施されるように、第2スイッチング素子4212のオン/オフを切り替え(図6に示される回路構成ではオンに切り替え)る。
第2の状況における上記の制御によれば、車輪速検出装置400において、図4の矢印付きの二点鎖線で示される、第2電流検出部4213を経由するが第1電流検出部4113を経由しない経路C41に沿って電流が流れることになる。したがって、第1制御部412は、第1電流検出部4113からの第1情報の取得を停止することで、車輪速の取得を停止し、第2制御部422は、第2電流検出部4213からの第2情報の取得を継続することで、車輪速の取得を継続する。これにより、フェールセーフとして、第1制御部412の機能を失陥させることができるとともに、失陥した第1制御部412の機能のうち最低限のものを含む所定の機能を第2制御部422のみによって実現する形で、バックアップ制御を実行することができるので、フェールオペレーションを実現することができる。
なお、図6の矢印付きの二点鎖線で示される経路C41から明らかなように、第2の状況においては、第2電流検出部4213を流れる電流が、車輪速センサ101を流れる電流と等しくなる。したがって、第4実施形態では、第1の状況から第2の状況への変化が発生したとしても、第2電流検出部4213に対する第1実施形態のような閾値の変更を実施する必要はない。
次に、上記の第1の状況から、第2系統420に異常が発生する第3の状況への変化が起こった場合について考える。第1制御部412および第2制御部422の両方が正常であることを前提とすれば、第3の状況において、第1制御部412および第2制御部422は、第1実施形態と同様の自己診断を実施することで、第2系統420(第2回路421)に異常が発生していることを把握し、次のような制御を実行する。
第3の状況において、第1制御部412は、第1スイッチング素子4112のオン/オフを維持(図6に示される回路構成ではオンを維持)する。同時に、第2制御部422は、第2スイッチング素子4212のオン/オフを維持(図6に示される回路構成ではオフを維持)する。
上記の制御によれば、車輪速検出装置400において、第1の状況と同様の、図6の矢印付きの一点鎖線で示される経路C40に沿って電流が流れることになる。したがって、第1制御部412は、第1電流検出部4113からの第1情報の取得を継続することで、車輪速の取得を継続し、第2制御部422も、第2電流検出部4213からの第2情報の取得を継続することで、車輪速の取得を継続する。これにより、第2制御部422自体に異常が発生しない限り、車輪速に基づく第2制御部422の制御を継続することができるので、フェールオペレーションを実現することができる。
ここで、第4実施形態では、上記のように、第3の状況における電流の流れと、第1の状況における電流の流れとは、同一となる。したがって、第4実施形態において、第1の状況から第2の状況への変化が発生したとしても、第1電流検出部4113および第2電流検出部4213に対する第1実施形態のような閾値の変更を実施する必要はないことは、言うまでもない。
上記の説明は、第1制御部412および第2制御部422の両方が正常であることを前提としている。しかしながら、第5実施形態も、第1実施形態と同様に、第1制御部412および第2制御部422のうちの一方に異常が発生した場合においても、フェールオペレーションを実現することが可能な回路構成を有している。
すなわち、第5実施形態において、第1回路411は、第1制御部412から入力される信号のパターンが規定のパターンから外れた場合に、車輪速センサ101への電力の供給を遮断するような回路構成を有している。また、第5実施形態において、第2回路421は、第2制御部422から入力される信号のパターンが規定のパターンから外れた場合に、車輪速センサ101への電力の供給を遮断するような回路構成を有している。このような回路構成により、第5実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1制御部412および第2制御部422のうちの一方に異常が発生した場合においても、フェールオペレーションを実現することができる。
なお、第4実施形態のその他の構成および動作(制御)は、第1実施形態と同様である。
以上説明したように、第4実施形態のような回路構成によっても、第1実施形態と同様に、冗長化に基づくフェールオペレーションを実現することができる。
<変形例>
上述した第1~第4実施形態では、第1制御部が第1回路の第1電流検出部の出力値(第1情報)のみを取得し、第2制御部が第2回路の第2電流検出部の出力値(第1情報)が第2制御部のみを取得する構成が例示されている。しかしながら、以下に説明する変形例のように、第1制御部および第2制御部のうち少なくとも一方は、第1電流検出部からの第1情報と、第2電流検出部からの第2情報と、の両方を取得してもよい。
図7は、変形例にかかる車輪速検出装置502の構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。この変形例にかかる車輪速検出装置500の概略的な構成は、第1実施形態(図1参照)にかかる車輪速検出装置100と同様である。以下では、第1実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図7に示されるように、変形例において、車輪速検出装置500は、車輪速センサ101と、同時並行的に動作することが可能な第1系統510および第2系統520を含むECU302と、を有している。第1系統510は、第1回路111と、第1制御部512と、を有しており、第2系統520は、第2回路121と、第2制御部522と、を有している。
ここで、変形例においては、第1回路111が、第1制御部512および第2制御部522の両方に接続されており、第2回路121も、第1制御部512および第2制御部522の両方に接続されている。これにより、第1制御部512は、第1回路111の第1電流検出部1113からの第1情報と、第2回路121の第2電流検出部1213からの第2情報と、の両方を取得することができ、第2制御部522も、第1情報と第2情報との両方を取得することができる。
変形例のような構成によれば、第1系統510および第2系統520のうち一方の系統(特に第1回路111または第2回路121)に異常が発生した場合に、フェールオペレーションを容易に実現することができる。たとえば、第1回路111および第2回路121のうち一方の回路に異常が発生した場合に、第1制御部512および第2制御部522は、正常な他方の回路から情報を取得することで、車輪速の取得を継続することができる。これにより、第1回路111および第2回路121のうち一方に異常が発生した場合でも、第1制御部512および第2制御部522の両方が制御を継続することができるので、フェールオペレーションを実現することができる。
なお、図7に示される変形例に対するさらなる変形例として、第1制御部および第2制御部のうちの一方のみが第1情報と第2情報との両方を取得する構成が考えられる。このようなさらなる変形例によっても、フェールオペレーションは実現することができる。たとえば、第1制御部のみが第1情報と第2情報との両方を取得可能な構成において、第1制御部は、第1回路に異常が発生した場合でも、第2回路から第2情報を取得することで、制御を継続することができる。
以上、本開示のいくつかの実施形態および変形例を説明したが、上述した実施形態および変形例はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。