JP7051553B2 - カーペットの製造方法及びカーペット - Google Patents

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本発明は、堅牢度に優れたカーペットの製造方法などに関する。
従来から、オフィスビル、商業施設、マンション、一般家庭などの床面に、カーペットが敷設されている。
カーペットのパイル層は、所望の色彩に着色されることにより、所望の柄が表出されている。
特許文献1には、染色性の異なる後染め糸を基布にタフトした後、それを染料で染色することによって得られるライン柄タフテッドカーペットの製法が開示されている。このような後染め糸を染色する後染め方法によれば、様々な色彩のカーペットを簡易に得ることができる。
特開2013-198640号公報
しかしながら、基布にタフトした後染め糸を染色する方法で得られたカーペットの堅牢度を、より高めたいという要望がある。
堅牢度に優れたカーペットを得るために、顔料等によって着色された原着糸からなるパイル糸を用い、このパイル糸を基布にタフトしてカーペットを製造する方法もある。しかし、この方法では、製造するカーペットの色柄が制限される。すなわち、この方法は、予め用意された幾つかの色彩や光沢度のパイル糸の中から任意のパイル糸を選択してカーペットを作製するものであるため、カーペットの色柄が制限される上、製造するカーペットの柄ごとに、複数の生機を製造する必要があり、在庫が増大する。
本発明の目的は、色柄が制限され難いようにするために後染めによって色柄を現しつつ、堅牢度に優れたカーペットの製造方法及びカーペットを提供することである。
本発明の第1のカーペットの製造方法は、着色顔料を含み且つ白色以外の色彩に着色されたフィラメントであって酸性染料に対する染着座席を有する原着フィラメントと、酸性染料に対する染着座席を有する後染めフィラメントと、を有するパイル糸が基布にタフトされた、生機を準備する工程、前記生機のパイル糸を酸性染料によって連続染色又はバッチ染色する工程、を有し、前記原着フィラメントの量が、前記原着フィラメントと前記後 染めフィラメントの合計量を100重量%とした場合に、20重量%~90重量%である
本発明の第2のカーペットの製造方法は、着色顔料を含み且つ白色以外の色彩に着色さ れたフィラメントであって酸性染料に対する染着座席を有する原着フィラメントと、酸性 染料に対する染着座席を有する後染めフィラメントと、を有するパイル糸が基布にタフト された、生機を準備する工程、前記生機のパイル糸を酸性染料によって連続染色又はバッ チ染色する工程、を有し、前記染色する工程において、前記酸性染料が、前記原着フィラ メントの着色顔料に起因する色彩と同系色を発現する染料を含む。
本発明の好ましいカーペットの製造方法は、前記原着フィラメントと後染めフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられている、又は、前記原着フィラメントと後染めフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられ且つ束ねた全体に撚りが掛けられている。
発明の好ましいカーペットの製造方法は、前記原着フィラメントの着色顔料に起因する色彩及び前記酸性染料の色彩が、青色系である。
本発明の好ましいカーペットの製造方法は、前記酸性染料が、金属錯塩酸性染料を含む。
本発明の別の局面によれば、カーペットを提供する。
本発明のカーペットは、パイル糸が基布にタフトされており、前記パイル糸が、着色顔料を含む原着フィラメントであって酸性染料に対する染着座席を有する原着フィラメントと、酸性染料に対する染着座席を有する後染めフィラメントと、を有し、前記原着フィラ メントの量が、前記原着フィラメントと前記後染めフィラメントの合計量を100重量% とした場合に、20重量%~90重量%であり、前記原着フィラメントと後染めフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられている、又は、前記原着フィラメントと後染めフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられ且つ束ねた全体に撚りが掛けられており、前記原着フィラメントと後染めフィラメントの各染着座席に、酸性染料が結合されている。
本発明の製造方法によれば、後染めを行うので、カーペットの色柄が制限され難く、また、堅牢度に優れたカーペットを得ることができる。
また、本発明のカーペットは、堅牢度に優れているので、色柄が褪せにくく長期間使用できる。
本発明のカーペットを表面側から見た平面図。ただし、パイル糸は図示していない。 図1のII-II線で切断した拡大端面図。ただし、パイル糸を、便宜上、1本のフィラメントで表している。 1つの実施形態のパイル糸の一部分を拡大した参考模式図。 他の実施形態のパイル糸の写真図。 パイル糸を基布にタフトした生機の一部省略斜視図。 図5のVI-VI線で切断した拡大端面図。ただし、ゲージ方向の中間部を省略している。 実施例及び比較例のカーペットの色差の結果をプロットしたグラフ図。
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、「~」で表される数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「~」で結んだ範囲とすることができるものとする。「複数」は、2以上を意味する。
[カーペットの概要]
図1及び図2において、本発明のカーペット1は、パイル層2と、前記パイル層2の裏面側に設けられたバッキング層3と、を有する。前記パイル層2は、基布4と、基布4にタフトされ且つ少なくとも酸性染料で染色されたパイル糸5と、を有する。
本発明のカーペット1は、パイル層2を有する床材であり、このカーペット1には、タイルカーペット及びロールカーペットなどのほか、ラグやマットなどと呼ばれているものも含まれる。
タイルカーペットやマットなどとして使用される場合、本発明のカーペット1は、通常、枚葉状に形成される。枚葉状のカーペット1は、例えば、図1に示すような、平面視略正方形状に形成される他、例えば、略長方形状、略三角形状や略六角形状などの平面視略多角形状、平面視略円形状、平面視略楕円形状などの任意の平面視形状に形成されていてもよい(図示せず)。本明細書において、形状を表す際の「略」は、本発明の属する技術分野において許容される形状を意味する。平面視略正方形状、略長方形状、略三角形状などの略多角形状の「略」は、例えば、角部が面取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。また、平面視略円形状及び略楕円形状の「略」は、例えば、周の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、周の一部が若干直線又は斜線とされた形状などが含まれる。
枚葉状のカーペット1の寸法は、特に限定されないが、例えば、平面視略正方形状又は略長方形状を基準にして、縦×横=200mm~1000mm×200mm~1000mmなどを例示できる。
また、ロールカーペットやラグなどとして使用される場合、本発明のカーペットは、平面視長尺帯状に形成される(図示せず)。長尺帯状は、長手方向の長さが短手方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいい、例えば、長手方向長さが短手方向の長さの3倍以上、好ましくは5倍以上である。
前記基布4にタフトされたパイル糸5は、パイルとも呼ばれるが、そのパイル形状は特に限定されず、ループパイルでもよいし、或いは、カットパイル(図示せず)でもよい。図示例では、ループパイルを表している。
前記パイル糸5は、基布4の所定方向にタフトされており、従って、タフト方向において1つのパイル糸5が連続して1つのパイル列を構成している。
また、パイル高も特に限定されず、例えば、2mm~10mmであり、好ましくは3mm~8mmである。
パイル高は、タフト方向及びゲージ方向において同じ高さでもよく、或いは、タフト方向及び/又はゲージ方向において異なっていてもよい(図示せず)。
なお、タフト方向は、パイル糸5がタフトされていく方向をいい、ゲージ方向は、タフト方向に対して直交する方向をいう。
パイル高がタフト方向において異なっている部分を有するパイル面(パイル面は、パイル層2の表面)は、タフト方向において凹凸を生じ、パイル高がゲージ方向において異なっている部分を有するパイル面は、ゲージ方向において凹凸を生じ、パイル高がタフト方向及びゲージ方向において異なっている部分を有するパイル面は、面方向において凹凸を生じる。図示例では、パイル高がタフト方向及びゲージ方向において同じであるパイル層2を表している。
前記基布4及びバッキング層3は、従来公知のものを用いることができる。
前記基布4は、特に限定されず、例えば、織布、不織布、編み布などのシート状のものが挙げられる。基布4を構成する繊維の素材としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドなどの合成繊維;セルロース、ウールなどの天然繊維;レーヨンなどの半合成繊維などが挙げられる。耐久性及び耐へたり性に優れていることから、基布4として、ポリエステル、ポリアミド及び/又はポリプロピレンの合成繊維を含む織布、不織布又は編み布を用いることが好ましい。
前記バッキング層3は、パイル層2に積層される層であり、カーペット1の接地面を構成する層である。
例えば、バッキング層3は、表面側から順に、接着層31と、補強シート32と、裏打ち層33と、を有する。接着層31は、パイル層2の裏面(パイル面とは反対側の面)に設けられる。接着層31は、パイル層2とバッキング層3を接合する機能のほか、パイル層2の裏面に出たパイル糸5を固定する機能も併有する。裏打ち層33は、接着層31の裏面に設けられ、裏打ち層33の裏面が床面に接する。補強シート32は、前記接着層31と裏打ち層33との中間に設けられる。また、必要に応じて、裏打ち層33の中間又は/及び裏面にさらに別の補強シート(図示せず)を積層してもよい。
接着層31及び裏打ち層33は、公知の合成樹脂によって形成される。例えば、接着層31及び裏打ち層33の合成樹脂としては、塩化ビニル系樹脂などのPVC系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などのEVA系樹脂、APP樹脂などのAPP系樹脂、ポリウレタンなどのPUR系樹脂などが挙げられる。加工性、耐久性、及びコスト面などから、ポリ塩化ビニル樹脂などのPVC系樹脂を用いることが好ましい。
補強シート32も特に限定されず、公知のシートを用いることができる。例えば、補強シート32としては、ガラス、ポリエステル、ポリアミドなどの無機繊維若しくは合成繊維の織布又は不織布などが挙げられる。特に、寸法安定性に優れていることから、補強シート32として、ガラス繊維製の織布又は不織布を用いることが好ましい。
[カーペットの製造方法]
本発明のカーペットの製造方法は、パイル糸が基布にタフトされた、生機を準備する工程、前記生機のパイル糸を、酸性染料によって連続染色又はバッチ染色する工程、を有し、必要に応じて、他の工程を有していてもよい。
これら各工程を1つの製造ラインで一連に行ってもよいし、或いは、前記各工程から選ばれる1つ又は2つ以上の工程を、1つのラインで行い、且つ残る工程を他の1つ又は2つ以上のラインで行ってもよい。また、前記各工程の全てを一人の実施者が行ってもよいし、或いは、前記各工程から選ばれる1つ又は2つ以上の工程を一人の実施者が行い、且つ残る工程を他の実施者が行ってもよい。
<生機の準備工程>
従来公知の方法に従い、パイル糸を基布にタフトしてパイル生機を得る。生機を染色することにより、上記パイル層が得られる。
なお、機械的製造においては、通常、長尺帯状の基布が用いられる。
例えば、タフト方向の長さ×ゲージ方向の長さ=500mm×500mmの平面視略正方形状のカーペットを製造する場合には、短手方向の長さが約2m、約4m、約6mなどの長尺帯状の基布が用いられ、好ましくは、短手方向の長さが約4mの長尺帯状の基布が用いられる。
パイル糸5は、図3に示すように、着色顔料を含む白色以外の色彩の原着フィラメント51と、後染めフィラメント52と、を有してなり、原着フィラメント51及び後染めフィラメント52は、いずれも酸性染料に対する染着座席を有する。酸性染料に対する染着座席は、酸性染料が結合する部位をいう。
原着フィラメント51は、着色顔料が含まれており、基布にタフトする前(以下、タフト前という)の時点で白色の時点以外の色彩に着色されているという点で、原着糸の範疇に属する。他方、原着フィラメント51は、酸性染料に対する染着座席を有するという点で、基布にパイル糸をタフト後に着色できる後染め糸の範疇に属する。つまり、原着フィラメント51は、原着糸でありながら後染め糸の機能を有するフィラメントである。
後染めフィラメント52は、タフト前に着色されておらず、酸性染料に対する染着座席を有するという点で、タフト後に白色以外の色彩に着色できる後染め糸である。
なお、原着フィラメント51及び後染めフィラメント52は、酸性染料に対する染着座席を有していることを条件として、酸性染料以外の染料に対する染着座席を有していてもよく、或いは、酸性染料以外の染料に対する染着座席を有していなくてもよい。前記酸性染料に対する染着座席は、酸性染料が結合する部位をいい、酸性染料以外の染料に対する染着座席は、酸性染料以外の染料が結合する部位をいう。染着座席を有するフィラメントは、染料にて後染め可能である。
染料で染色する前の前記パイル糸5を基布4にタフトすることによって、図5及び図6に示すような生機6が得られる。なお、本発明において、生機6は、前記原着フィラメント及び後染めフィラメントを有するパイル糸5が基布4にタフトされている部分を有していればよい。
例えば、生機6は、前記原着フィラメント51及び後染めフィラメント52を有するパイル糸5のみが基布4にタフトされているものでもよく、或いは、前記原着フィラメント51及び後染めフィラメント52を有するパイル糸5が基布4にタフトされているパイル列を1本又は複数本有し且つ前記パイル糸5とは異なるパイル糸が基布4にタフトされているパイル列を1本又は複数本有するものでもよい。前者の生機6は、前記原着フィラメント51及び後染めフィラメント52を有するパイル糸5のみからなり、後者の生機6は、前記原着フィラメント51及び後染めフィラメント52を有するパイル糸5からなる部分と、前記パイル糸5とは異なるパイル糸からなる部分と、からなる。
以下、前記原着フィラメント及び後染めフィラメントを有するパイル糸を「本発明のパイル糸」といい、本発明のパイル糸とは異なるパイル糸を「他のパイル糸」という場合がある。
具体的には、図5では、ゲージ方向にパイル列が並んでいる。例えば、全てのパイル列が、本発明のパイル糸5から構成されていてもよく、或いは、複数のパイル列のうち幾つかのパイル列が本発明のパイル糸5から構成され且つ幾つかのパイル列が他のパイル糸から構成されていてもよい。生産性の観点から、全てのパイル列が本発明のパイル糸5から構成されていることが好ましい。
本発明のパイル糸は、少なくとも2種類のフィラメントから構成されている。
1つのフィラメント(原着フィラメント)は、タフト前の時点で、着色顔料を含むフィラメントであって、酸性染料に対する染着座席を有する。なお、着色顔料は、白色以外の色彩に着色できる顔料をいう。
もう1つのフィラメント(後染めフィラメント)は、タフト前の時点で、未着色のフィラメントであって、酸性染料に対する染着座席を有する。なお、後染めフィラメントには、光沢抑制などを目的として、酸化チタンなどの白色顔料が含まれていてもよい。このような白色顔料を含む後染めフィラメントは、白色を呈するが、白色は、染料によって任意の色彩に着色できる。本発明においては、このような白色顔料を含む後染めフィラメントも、タフト前の時点で未着色のフィラメントとみなすものとする。
前記原着フィラメント及び後染めフィラメントは、基布にタフトした後に染色可能であるか否かの観点、つまり後染め可否の観点では、いずれも後染め可能な後染め糸に分類される。一方、基布にタフトする前の観点では、原着フィラメントは、着色顔料に起因して白色以外の色彩を呈しているフィラメントであり、後染めフィラメントは、未着色のフィラメントである。ただし、後染めフィラメントは、白色顔料を含む場合、白色を呈しているフィラメントも含むものである。
原着フィラメントは、樹脂成分、着色顔料、及び必要に応じて公知の添加剤を混合した材料を紡糸することによって得られた長繊維である。原着フィラメントは、捲縮加工が施されていてもよく、或いは、ストレートでもよいが、嵩高性に優れることから捲縮加工されていることが好ましい。
後染めフィラメントは、樹脂成分及び必要に応じて公知の添加剤を混合した材料、又は、樹脂成分、白色顔料及び必要に応じて公知の添加剤を混合した材料を紡糸することによって得られた長繊維である。後染めフィラメントは、捲縮加工が施されていてもよく、或いは、ストレートでもよい。
原着フィラメント及び後染めフィラメントを構成する樹脂成分は、酸性染料に対する染着座席を有するものであれば特に限定されず、例えば、酸性染料に対する染着座席を有するポリアミドなどの酸性染料に対する染着座席を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。酸性染料に対する染着座席としては、代表的には、カチオン性基が挙げられる。カチオン性基としては、NH基などの第1アミノ基などが挙げられる。
原着フィラメント及び後染めフィラメントの各樹脂成分は、いずれも同じ系統であってもよく、或いは、異なる系統であってもよい。また、原着フィラメント及び後染めフィラメントの各樹脂成分は、酸性染料に対する染着座席の数が同じであってもよく、或いは、前記染着座席の数が異なっていてもよい。
酸性染料に対する染色性が略均一となることから、原着フィラメント及び後染めフィラメントは、酸性染料に対する染着座席の数が同じ樹脂成分を含む材料から形成された繊維であることが好ましく、さらに、前記染着座席の数が同じで且つ系統が同じ樹脂成分を含む材料から形成された繊維であることがより好ましい。本実施形態では、原着フィラメント及び後染めフィラメントは、アミノ基の数(酸性染料に対する染着座席の数)が同じであるポリアミドを主成分とするポリアミド系樹脂を含んでいる。
原着フィラメント及び後染めフィラメントの酸性染料に対する染着座席の数は、特に限定されず、適宜設定できる。
原着フィラメントに含まれる着色顔料は、特に限定されず、最終的に得られるカーペットのパイル層の色彩を考慮して、従来公知のものから適宜選択できる。着色顔料は、例えば、灰色顔料、黄色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料などが挙げられる。ただし、前記着色顔料には、概念上、繊維を白色にする顔料が除かれる。
前記灰色顔料としては、カーボンブラック、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料と酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などの白色顔料との混合物などが挙げられる。なお、この例示の灰色顔料には白色顔料が含まれているが、かかる白色顔料は、灰色顔料の構成要素の1つであり、灰色顔料自体は、原着フィラメントを灰色に着色する顔料である。つまり、灰色顔料は、白色以外の色彩に着色する着色顔料である。
前記黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、クロム酸バリウム、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、チタン黄などの無機顔料;ハンザイエローなどのアゾ系顔料などの有機顔料;などが挙げられる。
前記赤色顔料としては、例えば、ベンガラ、鉛丹、銀朱、カドミウムレッドなどの無機顔料;パーマネントレッドなどのアゾ系顔料などの有機顔料;などが挙げられる。
前記紫色顔料としては、例えば、コバルト紫、マンガン紫などの無機顔料;メチルバイオレットレーキなどの有機顔料;などが挙げられる。
前記青色顔料としては、例えば、群青、紺青、コバルトブルーなどの無機顔料;フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン系顔料などの有機顔料;などが挙げられる。
前記緑色顔料としては、例えば、クロムグリーン、ジンクグリーン、エメラルドグリーン、コバルトグリーンなどの無機顔料;ピグメントグリーンBなどのニトロソ系顔料などの有機顔料;などが挙げられる。
着色顔料は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。例えば、黄色顔料と赤色顔料を混合した着色顔料を用いることにより、橙色に着色された原着フィラメントが得られる。
原着フィラメントの着色顔料の量は、特に限定されないが、例えば、フィラメント全体を100重量%とした場合に、0.1重量%~5重量%である。
後染めフィラメントが白色顔料を含む場合、その白色顔料は、特に限定されず、従来公知のものから適宜選択される。前記白色顔料としては、例えば、酸化チタン(二酸化チタン)、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛などが挙げられ、これらは、1種単独で又は2種以上を併用できる。白色による隠蔽力に優れ、光沢を効果的に抑制できることから、酸化チタンを含むことが好ましい。また、後染めフィラメントは、着色顔料を含んでいてもよいが、好ましくは、白色顔料以外の着色顔料を実質的に含まない。前記実質的に含まないとは、不可避的に含まれる程度の微量の着色顔料の混入は許容され、有意な量の混入は除外されるという意味である。
後染めフィラメントが白色顔料を含む場合、その白色顔料の量は、特に限定されないが、例えば、フィラメント全体を100重量%とした場合に、0を超え5重量%以下である。
原着フィラメント及び後染めフィラメントの太さは、特に限定されないが、余りに小さいと破断し易くなり、余りに大きいと、パイル層が硬くなり過ぎる。かかる観点から、原着フィラメント及び後染めフィラメントの太さは、それぞれ独立して、2dtex(デシテックス)~500dtexが好ましく、5dtex~30dtexがより好ましい。
原着フィラメント及び後染めフィラメントの断面構造は、特に限定されず、それぞれ独立して、断面視略円形状、略楕円形状のような定型的な形状のほか、断面視略Y字状、略L字状、略田の字状、略三角形状、略四角形状などの異形断面形状であってもよい。
本発明のパイル糸は、少なくとも1本の原着フィラメントと、少なくとも1本の後染めフィラメントと、を有する。本発明のパイル糸は、原着フィラメント及び後染めフィラメント以外の他のフィラメントを有していてもよい。他のフィラメントとしては、染着座席を有さないフィラメント(染料で後染めできないフィラメント)、酸性染料に対する染着座席を有さず且つ酸性染料以外の染料に対する染着座席を有するフィラメント(酸性染料以外の染料で後染めできるフィラメント)などが挙げられる。
特に堅牢度に優れたカーペットが得られることから、本発明のパイル糸は、原着フィラメント及び後染めフィラメントのみから構成されていることが好ましく、さらに、複数本の原着フィラメント及び複数本の後染めフィラメントのみから構成されていることがより好ましい。
本発明のパイル糸に含まれる原着フィラメント及び後染めフィラメントの比率は、特に限定されず、適宜設定できる。原着フィラメントを比較的多くすることによって堅牢度が向上し、後染めフィラメントを比較的多くすることによって後染め染色のメリットを比較的多く享受できるので、それらを考慮して適宜設定される。例えば、原着フィラメントの量は、原着フィラメントと後染めフィラメントの合計量を100重量%とした場合に、20重量%~90重量%であることが好ましく、さらに、50重量%を超え75重量%以下であることがより好ましく、55重量%~75重量%であることがさらに好ましい。
本発明のパイル糸は、図3に示すように、原着フィラメント及び後染めフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられている態様(A)、或いは、特に図示しないが、原着フィラメント及び後染めフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられ且つ束ねた全体に撚りが掛けられている態様(B)のいずれかの態様からなることが好ましい。
前記態様(A)には、束ねられた原着フィラメント及び後染めフィラメントが部分的に交絡されている場合も含まれる。
また、本発明のパイル糸が、原着フィラメントと、後染めフィラメントと、他のフィラメント(原着フィラメント及び後染めフィラメント以外のフィラメント)と、を有する場合にも、原着フィラメント、後染めフィラメント及び他のフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられている態様(A)、或いは、それらが撚りを掛けることなく束ねられ且つ束ねた全体に撚りが掛けられている態様(B)であることが好ましい。
各フィラメントは、捲縮されていてもよく、或いは、捲縮されていなくてもよい。嵩高いパイル層を構成できることから、捲縮されたフィラメントを用いることが好ましい。
図4の写真図は、態様(A)のパイル糸の一例を示し、捲縮された原着フィラメント及び後染めフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられ、且つ部分的に交絡されている。
本発明のパイル糸の太さは、特に限定されないが、余りに小さいと破断し易くなり、余りに大きいと、基布にタフトすることが困難となる。かかる観点から、本発明のパイル糸の太さは、500dtex~6000dtexが好ましい。なお、フィラメントの本数は、パイル糸の太さ/フィラメントの太さ、で求めることができる。
本発明のパイル糸を基布にタフトすることによって、染色前の生機を準備できる。本発明のパイル糸のタフト方法は、特に限定されず、例えば、基布及び/又はニードルをタフト方向に移動させながらパイル糸をタフトしてもよく、或いは、ニードルをゲージ方向に移動させながらタフト方向にタフトを行なう所謂ニードルシフトによってパイル糸をタフトしてもよい。タフトされるパイル糸のステッチ数、ゲージ数、タフト高などは、適宜設定される。
<染色工程>
染色工程は、前記生機のパイル糸を酸性染料によって連続染色又はバッチ染色する工程である。本明細書における後染めは、生機の状態でパイル糸(基布にタフトした後のパイル糸)を染色することをいう。
生機の染色方法は、連続染色法及びバッチ染色法の何れでもよい。
連続染色は、染料や必要に応じて染色助剤が投入されている染色浴中に、長尺帯状の生機を浸漬し、染色、洗浄、乾燥などの工程を一貫して行う染色方法である。
バッチ染色は、縦横が所定の大きさの生機を輪状などにし、その生機を染料が満たされた染槽に浸漬させて回転させながら染色する方法である。バッチ染色としては、代表的には、ウィンス染色法が挙げられる。
短時間で染色を完了でき、生産性に優れていることから、連続染色法によって、パイル糸を染色することが好ましい。
連続染色法による染色は、例えば、下記のような手順で行うことができる。
長尺帯状の生機を長手方向に送り、その途中で、生機の表面に、酸性染料を塗布する。
酸性染料は、従来公知のものを1種単独で又は2種以上用いることができるが、堅牢度に優れていることから、金属錯塩酸性染料を含む酸性染料を用いることが好ましい。金属錯塩酸性染料は、酸性染料に金属が錯塩化されている染料であり、従来公知のものを用いることができる。
金属錯塩酸性染料を含む酸性染料は、金属錯塩酸性染料のみから構成されていてもよく、金属錯塩酸性染料と金属錯塩酸性染料以外の酸性染料とから構成されていてもよい。金属錯塩酸性染料以外の酸性染料は、金属が錯塩化されていない酸性染料をいう。
また、色彩の観点では、前記酸性染料は、原着フィラメントの着色顔料に起因する色彩と異なる色彩を発現する染料(以下、原着異色酸性染料という場合がある)を用いてもよく、或いは、原着フィラメントの着色顔料に起因する色彩と同系色を発現する染料(以下、原着同色酸性染料という場合がある)を用いてもよく、或いは、原着異色酸性染料と原着同色酸性染料との混合染料を用いてよい。
原着異色酸性染料を用いる場合としては、例えば、原着フィラメントが灰色顔料を含む灰色系の色彩である場合(この場合、染色前の原着フィラメントは灰色系である)、原着フィラメント及び後染めフィラメントの染着座席に結合して赤色系を発現する酸性染料を用いる。
原着同色酸性染料を用いる場合としては、例えば、原着フィラメントが青色顔料を含む青色系である場合、原着フィラメント及び後染めフィラメントの染着座席に結合して青色系の色彩を発現する酸性染料を用いる。
原着異色酸性染料と原着同色酸性染料との混合染料を用いる場合としては、例えば、原着フィラメントが青色顔料を含む青色系である場合、原着フィラメント及び後染めフィラメントの染着座席に結合して青色系の色彩を発現する酸性染料と、それらの染着座席に結合して赤色系の色彩を発現する酸性染料を用いる。
前記原着異色酸性染料と原着同色酸性染料との混合染料を用いる場合において、原着異色酸性染料及び原着同色酸性染料が、いずれも金属錯塩酸性染料であってもよく、或いは、何れか一方が金属錯塩酸性染料で且つ他方が金属錯塩酸性染料以外の酸性染料であってもよく、或いは、いずれも金属錯塩酸性染料以外の酸性染料であってもよい。
好ましい態様では、原着フィラメントが青色顔料を含む青色系であり、それに対して、原着同色酸性染料と原着異色酸性染料とからなる酸性染料が用いられる。この場合、原着同色酸性染料(青色系の酸性染料)が、金属錯塩酸性染料以外の酸性染料であり、原着異色酸性染料(青色系以外の色彩の酸性染料)が、金属錯塩酸性染料であることがより好ましい。これによって、彩度が高く且つ堅牢度に優れる青色系のパイル糸を有するカーペットを得ることができる。
ここで、原着フィラメントの着色顔料に起因する色彩と同系色を発現する酸性染料(原着同色酸性染料)とは、染着座席に結合することによって着色顔料に起因する色彩と同系統の色彩をフィラメントに付与する染料をいう。同系色とは、光学的に波長が同じ光を反射するという厳密な意味ではなく、カーペット使用者などの一般人が2つの色を見分けることができない程度に同じ色であることをいう。なお、前記異なる色彩とは、同系色とは反対に、一般人が2つの色を見分けることができる程度に異なっていることをいう。
前記同系色の判断方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。着色顔料に起因してある色彩を呈している原着フィラメントを20本準備する。他方、染色前の後染めフィラメントを、対象となる酸性染料によって染色したものを20本準備する。前記原着フィラメントと、前記染色した後染めフィラメントを左右に並べ、30cm離れた箇所から20才代の一般男性が5秒間観察し、両者の色を区別できない場合には同系色である。
酸性染料の塗布方法は、特に限定されず、例えば、吐出ノズルから生機の表面に染料を噴射する方法、染料が満たされた染槽中に生機を通す方法、などが挙げられる。
通常、生機を送るラインの途中に、生機の短手方向及び長手方向に所定間隔を開けて複数の吐出ノズルが設けられ、そのノズルから搬送中の生機の表面に染料を塗布する。
酸性染料を塗布した後、生機を熱処理することにより、原着フィラメント及び後染めフィラメントに酸性染料を定着させる。
熱処理は、例えば、温風、スチームなどにより行うことができる。本発明のパイル糸が酸性染料で染まりやすくなることから、スチームを用いて熱処理することが好ましい。
なお、本発明のパイル糸が原着フィラメント及び後染めフィラメント以外に他のフィラメントを含んでいる場合、或いは、生機が他のパイル糸を含んでいる場合、必要に応じて、塩基性染料などの酸性染料以外の染料でさらに染色してもよい。
原着フィラメント及び後染めフィラメントを有するパイル糸を酸性染料で染色することにより、各染着座席に酸性染料が結合され、原着フィラメント及び後染めフィラメントに酸性染料に起因する色彩が付与される。
後染めフィラメントは、酸性染料が発現する所望の色彩に着色される。また、原着フィラメントは予め着色顔料で着色されており、酸性染料でさらに染色することにより、着色顔料の色彩と酸性染料の色彩の混色に着色される。
例えば、原着異色酸性染料を含む酸性染料を用いることにより、原着フィラメントが着色顔料と酸性染料の混色に着色され且つ後染めフィラメントが酸性染料の色彩に着色されたパイル糸が得られる。かかるパイル糸を有するカーペットは、杢調模様となる。
また、原着同色酸性染料を含む場合には、原着フィラメント及び後染めフィラメントが、同系色に着色される。この場合、同系色に着色された原着フィラメントと後染めフィラメントは、上述のように通常観察では色の区別ができないが、比較的長時間凝視し続けると、微妙な濃淡差を有している。これは、着色顔料を含む原着フィラメントは、その着色顔料に起因して、後染めフィラメントよりも僅かに色彩が濃くなっているからである。もっとも、原着同色酸性染料を使用すると、原着フィラメント及び後染めフィラメントが外見上区別できない程度に同じ色彩に着色されたパイル糸を有するカーペットが得られる。
本発明の製法によれば、酸性染料を用いてパイル糸を後染めするので、基布にタフトする前から着色されている先染め糸を用いたカーペットに比して、様々な色柄のカーペットを得ることができる。
<洗浄工程>
洗浄工程は、前記染色工程後に、染色済み生機に付着した染料などを除去する工程である。
染色後の生機には、染料が残存している。この残存染料を除去するため、必要に応じて、洗浄することが好ましい。洗浄工程の洗浄液は、残存染料を除去できるものであれば特に限定されないが、例えば、水、低濃度のアルコール水などが挙げられる。
洗浄液の温度は、通常、5℃~50℃程度である。
洗浄後の生機は、乾燥される。乾燥処理は、自然乾燥でもよいが、時間短縮のため、温風などを用いた強制的な乾燥が好ましい。
<バッキング層の形成工程>
バッキング層の形成工程は、前記染色後の生機の裏面にバッキング層を形成する工程である。
バッキング層は、カーペットの接地層を構成するものであり、従来公知の方法で形成できる。
例えば、図2に示すような、接着層31と補強シート32と裏打ち層33とを有するバッキング層3は、接着層/補強シート/裏打ち層からなる積層体を作製し、その接着層を生機の裏面に接着させることによって形成できる。
<裁断工程>
以上のようにして、長尺帯状のカーペットが得られる。かかる長尺帯状のカーペットは、保管・運搬に便利な長さに適宜裁断される。
また、タイルカーペットなどの枚葉状のカーペットを得ようとする場合には、前記長尺帯状のカーペットを、所定の平面視形状に裁断して、保管・運搬に供される。
[本発明のカーペット]
本発明のカーペット1は、図1乃至図3に示すように、着色顔料を含む原着フィラメントであって酸性染料に対する染着座席を有する原着フィラメント51と、後染めフィラメントであって酸性染料に対する染着座席を有する後染めフィラメント52と、を有するパイル糸5が、基布4にタフトされており、前記原着フィラメント51と後染めフィラメント52の各染着座席に、酸性染料が結合されている。
本発明のカーペットは、上記製造方法に記載のように、例えば、原着フィラメントの着色顔料とは異なる色彩を発現する酸性染料が結合されている場合には、杢調模様となる。
また、原着フィラメントの着色顔料に起因する色彩と同系色を発現する酸性染料が結合されている場合には、1つの色彩のカーペットとなる。
本発明のカーペットは、従来と同様に、床面に敷設して使用される。
カーペットを長期間使用していると退色或いは変色が生じ得るが、本発明のカーペットのパイル糸は着色顔料を含む原着フィラメントを有するので、堅牢度に優れている。
具体的には、原着フィラメントは、後染めの酸性染料の一部が経時時に脱落などしても、原着フィラメントには着色顔料が含まれているので、前記着色顔料に起因する色彩は退色或いは変色し難い。かかる原着フィラメントを有するパイル糸は、後染めフィラメントに結合した酸性染料の一部が経時的に脱落などしても、全体として見ると、退色或いは変色が目立たず、堅牢度に優れたパイル層を構成できる。特に、金属錯塩酸性染料は堅牢度に優れた染料であるので、これが結合された原着フィラメント及び後染めフィラメントは、金属錯塩酸性染料が脱落などし難く、より堅牢度に優れている。
さらに、原着フィラメントの着色顔料に起因する色彩と同系色を発現する酸性染料が結合されている場合には、原着フィラメント及び後染めフィラメントは同系色となるので、経時的に退色或いは変色した状態が殆ど目立たなくなる。
本発明は、後染めにてパイル糸を染色するので、カーペットの色柄の制限が小さく、比較的少ない種類の生機を準備し、それを後染めすることにより、色柄の異なる複数種のカーペットを製造できる。さらに、前記のように後染めできるパイル糸でありながら、そのパイル糸が原着フィラメントを有しているので、堅牢度に優れたカーペットを提供できる。
また、本発明者らの試験によれば、酸性染料、特に金属錯塩酸性染料によって後染めフィラメントを染色すると、彩度の低いフィラメントとなってしまうことが判っており、特に青色系の金属錯塩酸性染料ではその傾向が顕著である。
この点、着色顔料を含んでいる原着フィラメントを金属錯塩酸性染料などの酸性染料で染色しても、彩度の比較的高い原着フィラメントが得られる。従って、酸性染料が結合した原着フィラメント及び後染めフィラメントを有するパイル糸は、全体として見ると、彩度が比較的高く、着色顔料に起因して、鮮やかな感じのパイル層を有するカーペットを提供できる。
以下、実施例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)原着フィラメントセット
東レ株式会社製の品番「BL5」。繊度:1320dt/54f。この品番「BL5」は、54本のフィラメントを、撚りを掛けずに束ねたものである。なお、1本のフィラメントの太さは、約24.4dtex(1320÷54)である。この1本のフィラメントは、アミノ基を染着座席とするポリアミド系樹脂と、青色系の着色顔料と、を含み、タフト前から青色系に着色されているものである。
(2)後染めフィラメントセット
東レ株式会社製の品番「258」。繊度:1170dt/54f。この品番「258」は、54本のフィラメントを、撚りを掛けずに54本束ねたものである。なお、1本のフィラメントの太さは、約21.7dtex(1170÷54)である。この1本のフィラメントは、アミノ基を染着座席とするポリアミド系樹脂と、白色顔料と、を含み、タフト前から白色を呈するものである。
後染めフィラメントの染着座席の数と原着フィラメントの染着座席の数(両フィラメントの単位重量当たりの染着座席の数)は、概ね同じである。
(3)酸性染料
青色系酸性染料と黄色系酸性染料と赤色系酸性染料の混合染料。青色系酸性染料:黄色系酸性染料:赤色系酸性染料(重量比)=1:3:7。
青色系酸性染料は、HUNTSMAN社製の商品名「LANASET Blue PA-2R」を用いた。この青色系酸性染料は、金属錯塩酸性染料でない、非金属系の酸性染料である。
黄色系酸性染料は、HUNTSMAN社製の商品名「LANASET Yellow PA」を用いた。この黄色系酸性染料は、金属錯塩酸性染料である。
赤色系酸性染料は、HUNTSMAN社製の商品名「LANASET Red PA」を用いた。この赤色系酸性染料は、金属錯塩酸性染料である。
[実施例1]
上記原着フィラメントセットの1組と上記後染めフィラメントセットの2組とを、撚りを掛けることなく収束させつつ高圧空気を吹き付けることにより、1m当たり約42箇所を交絡させることにより、総繊度が3660dt/162fの1本のパイル糸を作製した。
このパイル糸の原着フィラメントの含有率は、パイル糸全体に対して、約36重量%である(1320/3660)。
前記パイル糸を、長手方向長さ×短手方向長さ=10m×4mの長尺帯状の基布(ポリエステル不織布)に、タフトすることによって、生機を作製した。
タフト条件は、1/10Gレベルループ×ST11.0で、パイル高さを3.5mmとした。
得られた生機を、東リ株式会社内で使用している連続染色機に充填し、上記酸性染料にて生機を連続的に染色し、洗浄し、乾燥することによって、カーペットを作製した。
[実施例2]
原着フィラメントセットの1組と後染めフィラメントセットの2組に代えて、上記原着フィラメントセットの2組と上記後染めフィラメントセットの1組を用いてパイル糸を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、カーペットを作製した。
[比較例1]
原着フィラメントセットの1組と後染めフィラメントセットの2組に代えて、上記後染めフィラメントセットの3組を用いてパイル糸を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、カーペットを作製した。
[比較例2]
原着フィラメントセットの1組と後染めフィラメントセットの2組に代えて、上記原着フィラメントセットの3組を用いてパイル糸を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、カーペットを作製した。
[堅牢度試験]
各実施例及び比較例について、それぞれのカーペットの任意の箇所を裁断して、縦×横=50mm×65mmのサンプル片を2つ作製した。
このサンプル片のそれぞれを、63℃、1気圧、50%RHの条件下で、150時間露光し、サンプル片の中央部付近のΔEを測定した。ΔEは、JIS Z8729に従ったL*a*b*表色系(L*:明度、a*b*:色度)による、露光前と露光後のサンプル片の色差(ΔE)であり、ΔE={(L-L0)+(a-a0)+(b-b0)1/2で求められる。
露光の光源:カーボンアーク灯(JIS L 0842に準じるもの)。
測色計:コニカミノルタ株式会社製の品番「CR-200」
Figure 0007051553000001
図7は、色差を縦軸に、原着フィラメントの含有率を横軸として、各実施例及び比較例のカーペットの測定結果をプロットしたグラフ図である。
比較例2のパイル糸は、後染めによって青色系以外に着色することは実質的にできないが、実施例1及び2のパイル糸は、後染めによって、青色系以外の色彩を含ませることが可能である。
また、原着フィラメントの含有率が増加するに従い色差が小さい(つまり、堅牢度に優れている)ことが判るが、含有率が概ね70重量%、特に75重量%を超えると色差の変化は殆どなく、色差が一定であった。このことから、原着フィラメントと後染めフィラメントの合計量を100重量%とした場合に、原着フィラメントの含有率は、20重量%~90重量%が好ましく、さらに、30重量%~80重量%がより好ましく、40重量%~80重量%がさらに好ましく、50重量%~80重量%がさらに好ましく、55重量%~75重量%が最も好ましい。このような含有率のパイル糸を用いることにより、堅牢度の高さと後染め染色のメリットを両立させたカーペットが得られる。
1 カーペット
2 パイル層
3 バッキング層
4 基布
5 パイル糸
51 原着フィラメント
52 後染めフィラメント
6 生機

Claims (6)

  1. 着色顔料を含み且つ白色以外の色彩に着色されたフィラメントであって酸性染料に対する染着座席を有する原着フィラメントと、酸性染料に対する染着座席を有する後染めフィラメントと、を有するパイル糸が基布にタフトされた、生機を準備する工程、
    前記生機のパイル糸を酸性染料によって連続染色又はバッチ染色する工程、を有し、
    前記原着フィラメントの量が、前記原着フィラメントと前記後染めフィラメントの合計 量を100重量%とした場合に、20重量%~90重量%である、カーペットの製造方法。
  2. 着色顔料を含み且つ白色以外の色彩に着色されたフィラメントであって酸性染料に対す る染着座席を有する原着フィラメントと、酸性染料に対する染着座席を有する後染めフィ ラメントと、を有するパイル糸が基布にタフトされた、生機を準備する工程、
    前記生機のパイル糸を酸性染料によって連続染色又はバッチ染色する工程、を有し、
    前記染色する工程において、前記酸性染料が、前記原着フィラメントの着色顔料に起因 する色彩と同系色を発現する染料を含む、カーペットの製造方法。
  3. 前記原着フィラメントと後染めフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられている、 又は、前記原着フィラメントと後染めフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられ且つ 束ねた全体に撚りが掛けられている、請求項1または2に記載のカーペットの製造方法。
  4. 前記原着フィラメントの着色顔料に起因する色彩及び前記酸性染料の色彩が、青色系である、請求項1乃至3の何れか一項に記載のカーペットの製造方法。
  5. 前記酸性染料が、金属錯塩酸性染料を含む、請求項1乃至4の何れか一項に記載のカーペットの製造方法。
  6. パイル糸が基布にタフトされているカーペットであって、
    前記パイル糸が、着色顔料を含む原着フィラメントであって酸性染料に対する染着座席を有する原着フィラメントと、酸性染料に対する染着座席を有する後染めフィラメントと、を有し、前記原着フィラメントの量が、前記原着フィラメントと前記後染めフィラメン トの合計量を100重量%とした場合に、20重量%~90重量%であり、
    前記原着フィラメントと後染めフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられている、又は、前記原着フィラメントと後染めフィラメントが撚りを掛けることなく束ねられ且つ束ねた全体に撚りが掛けられており、
    前記原着フィラメントと後染めフィラメントの各染着座席に、酸性染料が結合されている、カーペット。
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