JP5974336B2 - タイルカーペットの製造方法、及びタイルカーペット - Google Patents
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Description
タイルカーペットは、通常、所定の矩形状(例えば、500mm×500mmの正方形状など)に形成されている。
このタイルカーペットの敷設方式としては、隣接するタイルカーペットのパイル糸のタフト方向が直交するように複数枚のタイルカーペットを敷設していく方式、隣接するタイルカーペットのパイル糸のタフト方向が平行となるように複数枚のタイルカーペットを敷設していく方式、などが知られている。以下、前者の敷設方式を「市松貼り方式」といい、後者の敷設方式を「流し貼り方式」という。
前記市松貼り方式は、隣接するタイルカーペットのタフトの向きが直交するようにタイルカーペットを敷設するので、床面全体を見る者に対して、市松模様の仕上がり外観を与えることができる。
前記流し貼り方式は、隣接するタイルカーペットのタフトの向きが一方向に揃うようにタイルカーペットを敷設するので、床面全体を見る者に対して、あたかも1枚のカーペットの如き仕上がり外観を与えることができる。
一部のタイルカーペットが目立つと、見る者が、複数のタイルカーペットからなることを簡単に認識してしまう。このため、流し貼り方式の特徴である、1枚もののカーペットが敷設された如きの仕上がり外観を、見る者に対して与えることが難しい。
具体的には、タイルカーペットは、通常、染色性の異なる複数種の後染め糸を引き揃え、これを交絡又は撚ることによって複数のパイル糸を準備する準備工程と、前記複数種の後染め糸を含むパイル糸の複数本を、所望のパターン配列で、所定幅の長尺状の基布にタフトするタフト工程と、その各パイル糸の各後染め糸を、染料にて染色する染色工程と、染色後の基布にPVCなどの樹脂による裏打加工を行うバッキング工程と、裏打加工が施された基布を所定形状に裁断し、タイルカーペットを得る裁断工程と、を経て製造される。通常、前記基布は、その幅方向に複数枚のタイルカーペットを切り出すことができるように、タイルカーペットの一辺長さの数倍(例えば4倍など)の幅長さのものが用いられる。そして、前記パイル糸を、染色性の異なる複数種の後染め糸で構成することにより、杢調のタイルカーペットが得られる。
以下、前記タフト工程で得られる、後染め糸を含むパイル糸を基布にタフトした構造体を、「生機(きばた)」という場合がある。
ウィンス染色法は、バッチ式染色方法の代表的なものであり、所定幅の長尺状の生機を、所定長さに裁断し、その所定長さの生機を輪状にし、その輪状の生機を染料が満たされた染槽に浸漬させて回転させながら、後染め糸を染色する方法である。なお、ウィンス染色法は、染槽内に生機を浮遊させながら染色するものであるから、浴比の小さい染色には適さない。
しかしながら、前記連続染色法は、生機の幅方向における染料の濃度を均一に調整することが難しい。このため、染色後の生機を裁断して複数枚のタイルカーペットを得たとき、生機の幅方向において切り出された各タイルカーペットのパイル糸の色彩に差が生じ、いわゆる「染色斑」が生じ易い。
このように染色斑を生じた生機から切り出された複数枚のタイルカーペットは、相互に染色度合いが微妙に違うので、これを流し貼り方式にて敷設した際には、一部のタイルカーペットが目立ち易い。
かかる製法によれば、色調が複雑でコントラストがあり、高級感のある多杢調のカーペットが得られると、特許文献1には記載されている。
上述のように、連続染色法にてパイル糸を染色すると、生機の幅方向において染色斑が生じることがある。
これ以外にも、後染め糸の配列によって染色度合いに差が生じ得ると推定される。
すなわち、生機には、染色性の異なる複数種の後染め糸を含むパイル糸の複数本が所望のパターン配列でタフトされている。この複数種の後染め糸は、それぞれ染色性が異なっているので、例えば、ある1種の後染め糸は染料に比較的染まり易く、他の後染め糸は染料に比較的染まりにくい場合がある。つまり、染色前のパイル糸には、染料に染まり易い後染め糸(換言すると、本来的に濃く染まる後染め糸)と、染料に染まり難い後染め糸(換言すると、本来的に薄く染まる後染め糸)と、が混在している。
本発明者らは、このような推定の下、複数種の後染め糸からなるパイル糸がタフトされた領域において、複数種の後染め糸の量を均等にすることにより、流し貼り方式によって敷設した際に目立ち難いタイルカーペットを得ることができることを見出して、本発明を完成した。
このタイルカーペットは、染色性が異なる複数種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第1パイル糸と、前記第1パイル糸とは異なるパイル糸であって、染色性が異なる複数種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第2パイル糸と、前記第1パイル糸及び第2パイル糸を含むパイル糸がタフトされた基布であって、1つ又は2つ以上のパイル糸がゲージ方向に複数繰り返してタフトされ、且つパイル糸の配列が異なる2以上のリピート領域を有する基布と、を有し、前記各リピート領域において前記各後染め糸の重量比が均等となるように、前記第1パイル糸及び第2パイル糸を含むパイル糸が前記基布にタフトされており、前記各後染め糸がそれぞれ染色されている。
従って、本発明の製造方法によって得られるタイルカーペットは、特に、流し貼り方式の施工に好適である。
また、本発明の製造方法において、基布にタフトしたパイル糸を連続染色法にて染色することにより、染色斑が抑えられたタイルカーペットを安価に製造できる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本明細書において、「PPP〜QQQ」という表記は、「PPP以上QQQ以下」を意味する。また、「複数」という表記は、2つ以上を意味する。また、「複数」は、好ましくは、2つ以上6つ以下であり、より好ましくは、3つ以上5つ以下である。
パイル糸の準備工程は、染色性が異なる複数種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第1パイル糸と、染色性が異なる複数種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第2パイル糸と、の少なくとも2本の異なるパイル糸を準備する工程である。
各パイル糸は、互いに異なる3種類以上であってもよい。各パイル糸は、染色性の異なる3種以上の後染め糸から構成されていてもよい。
本明細書において、異なるパイル糸を用語上区別するために、「第1」、「第2」などの接頭語を付す場合があり、また、染色性の異なる後染め糸を用語上区別するために、「第1」、「第2」などの接頭語を付す場合がある。なお、これらの「第1」、「第2」などの接頭語は、用語を区別するために付されたものであり、用語の優劣や順序などの特別な意味を有さない。
好ましくは、第1パイル糸は、染色性が異なる第1後染め糸、第2後染め糸及び第3後染め糸の3種類の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸から構成され、第2パイル糸は、前記3種類の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸から構成され、第3パイル糸は、前記3種類の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸から構成されている。第1パイル糸、第2パイル糸、第3パイル糸は、互いに染色性が異なる後染め糸を含んでいる。
従って、上記第1乃至第3パイル糸は、同一ではなく、互いに異なっている。
この図示例のパイル糸1は、第1後染め糸11、第2後染め糸12及び第3後染め糸13(3本の後染め糸)を撚り合わすことによって構成されている。第1後染め糸11、第2後染め糸12及び第3後染め糸13は、それぞれ染色性が異なっている。或いは、第1後染め糸11、第2後染め糸12及び第3後染め糸13のうちから選ばれる2種の後染め糸は、染色性が異なっている。
なお、特に図示しないが、パイル糸は、3本の後染め糸から構成される場合に限られず、上述のように、2本又は4本以上の後染め色糸から構成されていてもよい。
前記染色性が異なる複数種の後染め糸は、全く同じ条件で染色したときに、同じに染まらない後染め糸を意味する。
例えば、染色性が異なる複数種の後染め糸としては、次のような場合が挙げられる。
(1)ある1種の後染め糸はある特定の染料で染色されるが、他の種類の後染め糸は前記染料で染色され難く、且つ、これと異なる他の染料で染色される場合。つまり、同一の染料で染色できない複数種の後染め糸は、染色性が異なる。
(2)ある1種の後染め糸と他の種類の後染め糸が同一の染料で染色され得るが、互いに染色濃さが異なる場合。つまり、染め上がり濃さが異なる複数種の後染め糸は、染色性が異なる。
(3)ある1種の後染め糸と他の種類の後染め糸が異なる染料で染色され且つ染色濃さも異なる場合。つまり、同一の染料で染色できず、且つ、染め上がり濃さが異なる複数種の後染め糸は、染色性が異なる。
なお、各後染め糸が複数本の単糸から構成される場合、各単糸を単に引き揃えて後染め糸を構成することもできる。
(a)酸性染料で染色され且つ比較的濃く染まる後染め糸(以下、酸性ディープ後染め糸という)。
(b)酸性染料で染色され且つ比較的薄く染まる後染め糸(以下、酸性ペール後染め糸という)。
(c)酸性染料で染色され且つ前記酸性ディープ後染め糸と酸性ペール後染め糸の中間に染まる後染め糸(以下、酸性レギュラー後染め糸という)。
(d)カチオン性染料で染色される後染め糸(以下、カチオン後染め糸という)。
カチオン後染め糸の染色度合いは特に限定されず、カチオン後染め糸は、酸性ディープ後染め糸と同等に濃く染まるものでもよいし、酸性ペール後染め糸と同等に薄く染まるものでもよい。
また、本実施形態では、酸性染色料で染まる後染め糸を、上記(a)〜(c)の3種のものを例示しているが、これに限定されず、染色の濃淡に応じて2種又は4種以上のものであってもよい。
前記パイル糸は、交絡糸又は撚糸からなることが好ましい。パイル糸として交絡糸を用いる場合の撚り回数は、好ましくは20回/m〜400回/mであり、より好ましくは50回/m〜250回/mである。前記撚り回数の範囲内であれば、ボリューム感に優れたパイル糸が得られる。かかるパイル糸を基布にタフトすることにより、パイル面に適度な膨らみを持たせることができ、且つ各後染め糸を良好に染色できる。
前記2本以上のパイル糸は、それらを構成する後染め糸のうち、少なくとも1種の後染め糸が異なっている。従って、前記2本以上のパイル糸は、同一ではなく、互いに異なっている。
例えば、第1パイル糸乃至第3パイル糸は、上記酸性ディープ後染め糸、酸性ペール後染め糸、酸性レギュラー後染め糸及びカチオン後染め糸からなる群から選ばれる少なくとも2種の後染め糸から構成される。
第2糸は、2重量部の酸性ディープ後染め糸及び1重量部のカチオン後染め糸を引き揃えて、1本のパイル糸とされていることを示している。
なお、前記重量部は、各後染め糸の単位長さ当たりの重量の比率を意味する。
例えば、表1の第1糸においては、酸性ディープ後染め糸:酸性ペール後染め糸:カチオン後染め糸(重量比)=1:1:1であり、表1の第3糸においては、酸性ペール後染め糸:カチオン後染め糸(重量比)=1:2である。
パイル糸のタフト工程は、前記準備工程で得られた第1パイル糸及び第2パイル糸を含む複数本のパイル糸を、各後染め糸の重量比が均等となるように、基布にタフトする工程である。
各後染め糸の重量比が均等になるようにすることを条件として、前記第1パイル糸及び第2パイル糸の2本のパイル糸を適宜基布にタフトしてもよいし、或いは、前記第1パイル糸、第2パイル糸及び第3パイル糸の3本のパイル糸を適宜基布にタフトしてもよいし、或いは、任意の4本以上のパイル糸を適宜基布にタフトしてもよい。
重量比が均等とは、各後染め糸間の重量比が1:1の関係を満たしていることである。
長尺状の基布は、例えば、長さ10m以上の基布であり、好ましくは長さ100m以上の基布である。
また、基布の幅は特に限定されないが、幅方向に複数枚のタイルカーペットを切り出して、機械的に大量にタイルカーペットを製造するために、タイルカーペットの一辺長さの整数倍(例えば、2倍〜12倍など)の幅の基布が用いられる。
基布にパイル糸をタフトすることにより、後染め糸を含むパイル糸を基布にタフトした構造体である、染色前の生機が得られる。
各後染め糸の重量比が均等となるように各パイル糸をタフトする領域は、基布全体に渡っていることが好ましい。
なお、この表2に示した配列例以外にも、各後染め糸が均等になるように配列できることは言うまでもない。
同様に、配列例BC・BC・・・は、第2糸と第3糸が交互にタフトされたリピート領域を示し、この領域におけるリピート単位は、BCであって、そのリピート単位BCがゲージ方向に複数繰り返されている。
同様に、配列例DAEA・DAEA・・・は、第4糸、第1糸、第5糸及び第1糸がこの順でタフトされたリピート領域を示し、この領域におけるリピート単位は、DAEAであって、そのリピート単位DAEAがゲージ方向に複数繰り返されている。
本発明におけるリピート単位は、任意に選ばれる1つ又は2つ以上のパイル糸をタフトする単位を言い、リピート領域は、そのリピート単位が繰り返された領域を言う。
前記の様々なリピート領域の配置は、特に限定されず、適宜設計すればよい。
特に、領域内の明度差が所要以上のリピート領域を独立して複数設け、隣接する2つのリピート領域間の明度差が大きくなるように前記各領域が配置された、タイルカーペットがより好ましい。このようなタイルカーペットは、リピート領域内の明度差だけでなく、隣接するリピート領域間の明度差を視認できるので、それを流し貼り方式で敷設したときに、隣接するタイルカーペットの継ぎ目が目立ち難くなる。
また、前記範囲の明度差を有するリピート領域は、1枚のタイルカーペット当たり、少なくとも1領域設けられていればよい。もっとも、前記範囲の明度差を有するリピート領域が余りに多く設けられていると、隣接するリピート領域間の明度差を後述する範囲に設定することが困難となる場合があるので、前記範囲の明度差を有するリピート領域は、1枚のタイルカーペット当たり、独立して2領域〜8領域設けられていることが好ましく、独立して3領域〜5領域設けられていることがより好ましい。
リピート領域内において、明度差が大きいパイル糸の組み合わせが少なくとも1組存在すればよい。
また、前記範囲の明度差を有する隣接するリピート領域間は、1枚のタイルカーペット当たり、少なくとも1箇所設けられていればよい。もっとも、前記範囲の明度差を有する隣接するリピート領域間が余りに多すぎると、継ぎ目を目立ち難くさせる効果が弱くなるので、前記範囲の明度差を有する隣接するリピート領域間は、1枚のタイルカーペット当たり、2箇所〜8箇所が好ましく、3箇所〜5箇所がより好ましい。
前記隣接するリピート領域間の明度差は、隣接する2つのリピート領域内の明度差を減算して求めることができる。
上述のように、染色性の異なる複数の後染め糸が混在したパイル糸を、染料で染色した際、比較的染まり易い後染め糸に染料が多く吸収されるので、その後染め糸が多くタフトされている領域の近傍に存在する後染め糸は染まり難くなる。従来のタイルカーペットの製造方法においては、各後染め糸の染色度合いを考慮せずに、単にデザインだけを考慮して、パイル糸を選択し、タフトしていた。本発明では、複数種の後染め糸の重量比が1:1となるように各パイルをタフトすることにより、染料を多く吸収する後染め糸及び染料を吸収し難い後染め糸の一方の量が偏よることを防止できる。このため、生機全体として見ると、各後染め糸に染色度合いの差が生じ難く、染色斑を抑制できると推定される。
染色工程は、前記タフト工程で基布にタフトされた各パイル糸の後染め糸を染色する工程である。
パイル糸の後染め糸の染色方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
前記染色方法としては、例えば、連続染色法、ウィンス染色法が挙げられる。
短時間で染色を完了でき、生産性に優れていることから、連続染色法によって、パイル糸の後染め糸を染色することが好ましい。
通常、連続染色法でパイル糸を染色すると、染色斑が生じ易いが、本発明によれば、複数の後染め糸の重量比が1:1:1となるように各パイルをタフトしているので、連続染色法で染色した場合でも、染色斑を抑制できる。
長尺状の生機を長手方向に送り、その途中で、生機のパイル面に、染料を塗布する。染料は、使用される後染め糸を染色できる染料であり、後染め糸の染色性に応じて適宜選択される。
表2に示すような、酸性ディープ後染め糸、酸性ペール後染め糸及びカチオン後染め糸を含む各パイル糸が用いられている場合には、それらを染める染料として、酸性染料とカチオン性染料が用いられる。
通常、生機を送るラインの途中に、生機の幅方向及び長手方向に所定間隔を開けて複数の吐出ノズルが設けられ、そのノズルから下流側に搬送中の生機のパイル面に染料を塗布する。
染料を吐出する際、前記酸性染料とカチオン性染料とを混合した染料を、各ノズルから吐出してもよいし、複数のノズルから酸性染料を噴射し、他の複数のノズルからカチオン性染料を噴出してもよい。
熱処理は、例えば、温風、スチームなどにより行うことができる。
パイル糸の後染め糸に略均一に熱が加わりやすいことから、スチームを用いて熱処理することが好ましい。
なお、本発明の染色工程における連続染色法として、特開昭58−018489号、特開昭59−135023号、特公平6−43668号、特許第3851592号などに記載された方法の中から適宜選択して使用することもできる。
洗浄工程は、前記染色工程後に、染色済み生機に付着した染料などを除去する工程である。
染色後の生機には、染料が残存している。
この残存染料を除去するため、必要に応じて、洗浄することが好ましい。
洗浄工程の洗浄液は、残存染料を除去できるものであれば特に限定されないが、例えば、水、低濃度のアルコール水などが挙げられる。
洗浄液の温度は、通常、5℃〜50℃程度である。
洗浄方法としては、特に限定されず、例えば、吐出ノズルから生機のパイル面に洗浄液を吹き付ける方法、洗浄液が満たされた浴中に生機を通す方法、などが挙げられる。
洗浄後の生機は、乾燥される。
乾燥処理は、自然乾燥でもよいが、時間短縮のため、温風などを用いた強制的な乾燥が好ましい。
バッキング層の形成工程は、前記染色後の生機の裏面にバッキング層を形成する工程できる。
バッキング層は、タイルカーペットの接地層を構成するものであり、従来公知のバッキング層を採用できる。
例えば、バッキング層は、裏面層と、裏打ち層と、補強シートと、を有する。裏面層は、生機の裏面(パイル面とは反対側の面)に設けられる。裏打ち層は、裏面層の裏面に設けられ、床面に接する。補強シートは、前記裏面層及び/又は裏打ち層中に設けられる。
補強シートも特に限定されず、公知のシートを用いることができる。例えば、補強シートとしては、ガラス、ポリエステル、ポリアミドなどの無機繊維若しくは合成繊維の織布又は不織布などが挙げられる。特に、寸法安定効果に優れていることから、補強シートとして、ガラス繊維製の不織布又は織布などを用いることが好ましい。
以上ようにして得られたバッキング層を有する生機を、所定の矩形状に裁断することにより、本発明のタイルカーペットが得られる。
本発明のタイルカーペットは、染色性が異なる複数の後染め糸から選ばれる少なくとも2つの後染め糸を引き揃えた第1パイル糸と、第1パイル糸とは異なるパイル糸であって、染色性が異なる複数の後染め糸から選ばれる少なくとも2つの後染め糸を引き揃えた第2パイル糸と、第1パイル糸及び第2パイル糸を含むパイル糸がタフトされた基布と、を有し、第1パイル糸及び第2パイル糸がタフトされた領域において各後染め糸の重量比が均等となるように、前記第1パイル糸及び第2パイル糸を含むパイル糸が基布にタフトされており、前記各後染め糸がそれぞれ染色されている。
本発明によって得られる複数のタイルカーペットは、相互に染色度合いの差が小さいので、流し貼り方式による敷設に特に適している。
このようなタイルカーペットは、流し貼りした際に、継ぎ目が目立ち難くなる。
酸性ディープ後染め糸:塩基性基を有するポリアミド繊維(ナイロン6,6)からなる太さ20.1dtexの単糸を46本撚り合わせたマルチフィラメント。INVISTA社製の商品名「427C」。
酸性ペール後染め糸:塩基性基を有するポリアミド繊維(ナイロン6,6)からなる太さ20.1dtexの単糸を46本撚り合わせたマルチフィラメント。INVISTA社製の商品名「425」。
カチオン後染め糸:酸性基を有するポリアミド繊維(ナイロン6,6)からなる太さ20.1dtexの単糸を46本撚り合わせたマルチフィラメント。INVISTA社製の商品名「423」。
酸性レギュラー後染め糸:塩基性基を有するポリアミド繊維(ナイロン6,6)からなる太さ20.1dtexの単糸を46本撚り合わせたマルチフィラメント。INVISTA社製の商品名「426」。
(パイル糸の準備)
前記酸性ディープ後染め糸、酸性ペール後染め糸及びカチオン後染め糸を、表1に示すような組み合わせで、第1糸乃至第7糸をそれぞれ作製した。
なお、これら7種のパイル糸は、3本の後染め糸を混繊して作製した。
前記第1糸乃至第7糸を、基布(幅4.2mの所定長さのポリエステルスパンボンド不織布。ユニチカ(株)製の商品名「マリックス」)の幅4mの範囲においてその長手方向にタフトすることにより、生機を作製した。ただし、第1糸乃至第7糸は、図3に示すパターン配列を幅方向に2回繰り返した。つまり、図3に示すパターン配列は、幅2m分であり、その配列を2回行うことで、前記幅4mの範囲にタフトした。
各パイル糸は、1/10ゲージタフティング機を用い、目付け800g/m2、パイル高さ2.5〜5.0mmのマルチレベルループにてタフトした。
例えば、リピート単位「DAEA」は、1本の第4糸、1本の第1糸、1本の第5糸及び1本の第1糸(4本のパイル糸)からなる。
表3に、幅2m分のリピート単位のリピート数及びパイル糸のタフト数を示す。
前記生機を連続染色機の長手方向に送りながら、その途中に幅方向に所定間隔を開けて配置された吐出ノズルを通じて、前記生機のパイル面に、グレーに染色できる酸性染料(HANTSMAN社製の商品名「Tectilon」)と淡グレーに染色できるカチオン染料(HANTSMAN社製の商品名「Maxilon」)を混合した混合染料を噴射した。その後、スチームにより前記生機を約4分間熱処理し、さらに、冷水で十分に濯いで染料を除去した。その後、十分に乾燥することによって、生機の染色を完了した。
コンベア上に、第1の補強シートとしてポリエステル樹脂製ネット(倉敷紡績株式会社製の商品名「クレネット」)が埋設された厚み約1.5mmのペースト状ポリ塩化ビニル樹脂からなる裏面層を形成し、さらに、その裏面層の上に第2の補強シートとしてガラスマット(目付量40g/m2)を積層し、そのマットの上に厚み約2.0mmのポリ塩化ビニル樹脂ペーストからなる裏打ち層を積層した。
前記裏打ち層の上に、前記染色済みの生機を載せた後、全体を加熱してポリ塩化ビニル樹脂を硬化させた。
このようにして得られたカーペットを、裁断機によってタフト方向及び幅方向に500mm角に裁断することにより、正方形状に形成することにより、実施例1のタイルカーペットを作製した。
このタイルカーペット2は、染色済みのパイル糸31と基布32とを有する生機3と、生機3の裏面に設けられたバッキング層4と、からなる。バッキング層4は、上から順に、第1の補強シート41を含む裏面層43と、第2の補強シート42を含む裏打ち層44と、からなる。
実施例1において、生機の染色が完了後、その一部を切り出し、表3の各リピート領域内の明度差ΔLを求めた。
具体的には、JIS Z8722に準じ、各リピート領域内の所定の5点を選び、その点について色彩色差計(コニカミノルタ社製の製品名「色彩測色システム(簡易型)CR−200」)を用いてL値をそれぞれ測定し、それらL値の平均値を明度差ΔLとした。その結果を表3に示す。
染色後の生機において、明度差が大きい領域ほど目立ち、その差が小さい領域ほど無地調の外観となっていた。
酸性ペール後染め糸に代えて、酸性レギュラー後染め糸を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るタイルカーペットを作製した。
上記実施例1の、第2糸、第3糸及び第4糸の3種のパイル糸を用いて、比較例に係るタイルカーペットを作製した。
具体的には、第2糸、第3糸及び第4糸を、特に決まりのないランダムな配列でタフトすることにより、生機を得た。そのランダムな配列の一部を示すと、BCBBDCBCBDBCDDBCCBDDBCBCBDBCBDBCBDDBBDCBBDCBCDBCBCBDCBCDDCBCDDBDBBCDBB…(B:C:D(質量比)=3:2:2)であった。ただし、前記Bは、第2糸を、Cは、第3糸を、Dは、第4糸を示す。
事後、実施例1と同様にして、この生機を染色し、バッキング層を形成することにより、比較例のタイルカーペットを作製した。
実施例1及び2並びに比較例で得られたタイルカーペットから任意に20枚それぞれ選択し、それらのパイル面をそれぞれ目視で観察した。その結果、実施例1及び2においては、いずれのタイルカーペットのパイル面にも、染色斑が見られなかったが、比較例においては、タイルカーペットのパイル面に、染色斑が見られた。
もっとも、ペール後染め糸に代えてレギュラー後染め糸を用いた実施例2のタイルカーペットは、色柄が若干不鮮明となっており、明度差が実施例1に比べてやや弱かった。
そして、床面全体を見渡したところ、実施例1及び2においては、1枚のタイルカーペット中に明度差が大きい箇所が存在するので、継ぎ目部分の明度差が相対的に目立たず、一部のタイルカーペットが目立つこともなく、全体としてあたかも1枚のカーペットの如き外観となっていた。一方、比較例においては、並べたタイルカーペット間の継ぎ目部分を容易に看取でき、一部のタイルカーペットが目立っていた。
11 第1後染め糸
12 第2後染め糸
13 第3後染め糸
2 タイルカーペット
3 生機
32 基布
4 バッキング層
41 第1の補強シート
42 第2の補強シート
43 裏面層
44 裏打ち層
Claims (6)
- 染色性が異なる複数種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第1パイル糸と、染色性が異なる複数種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第2パイル糸と、の少なくとも2本の異なるパイル糸を準備する準備工程と、
前記第1パイル糸及び第2パイル糸をタフトした領域において前記各後染め糸の重量比が均等となるように、前記第1パイル糸及び第2パイル糸を含むパイル糸を、基布にタフトする工程であって、1つ又は2つ以上のパイル糸を基布のゲージ方向に複数繰り返してタフトして、パイル糸の配列が異なる2以上のリピート領域を基布に形成するタフト工程と、
前記タフトされたパイル糸の後染め糸を染色する染色工程と、
を有するタイルカーペットの製造方法。 - 前記第1パイル糸が、第1後染め糸と、第1後染め糸とは染色性が異なる第2後染め糸と、を含み、
前記第2パイル糸が、前記第1後染め糸と、前記第1後染め糸及び第2後染め糸とは染色性が異なる第3後染め糸と、を含み、
前記タフト工程において、前記第1後染め糸と第2後染め糸と第3後染め糸の重量比が1:1:1となるように、前記第1パイル糸及び第2パイル糸を含むパイル糸を、基布にタフトする、請求項1に記載のタイルカーペットの製造方法。 - 染色性が異なる第1後染め糸、第2後染め糸及び第3後染め糸の3種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第1パイル糸と、前記3種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第2パイル糸と、前記3種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第3パイル糸と、の少なくとも3本の異なるパイル糸を準備する準備工程と、
前記第1パイル糸、第2パイル糸及び第3パイル糸をタフトした各領域において前記第1後染め糸と第2後染め糸と第3後染め糸の重量比が1:1:1となるように、前記第1パイル糸、第2パイル糸及び第3パイル糸を含むパイル糸を、基布にタフトする工程であって、1つ又は2つ以上のパイル糸を基布のゲージ方向に複数繰り返してタフトして、パイル糸の配列が異なる2以上のリピート領域を基布に形成するタフト工程と、
前記タフトされた各パイル糸の後染め糸を染色する染色工程と、
を有するタイルカーペットの製造方法。 - 前記タフト工程において使用される基布が、長尺状であり、
前記染色工程において、前記パイル糸がタフトされた長尺状の基布を、長手方向に連続的に送りながら、前記各パイル糸の後染め糸を染色する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイルカーペットの製造方法。 - 染色性が異なる複数種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第1パイル糸と、
前記第1パイル糸とは異なるパイル糸であって、染色性が異なる複数種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第2パイル糸と、
前記第1パイル糸及び第2パイル糸を含むパイル糸がタフトされた基布であって、1つ又は2つ以上のパイル糸がゲージ方向に複数繰り返してタフトされ、且つパイル糸の配列が異なる2以上のリピート領域を有する基布と、を有し、
前記各リピート領域において前記各後染め糸の重量比が均等となるように、前記第1パイル糸及び第2パイル糸を含むパイル糸が前記基布にタフトされており、
前記各後染め糸がそれぞれ染色されている、タイルカーペット。 - さらに、前記第1パイル糸及び第2パイル糸とは異なるパイル糸であって、染色性が異なる複数種の後染め糸から選ばれる少なくとも2種の後染め糸を引き揃えた第3パイル糸を有し、
前記基布には、前記第1パイル糸及び第2パイル糸を含むパイル糸が繰り返してタフトされたリピート領域と、前記第1パイル糸及び第3パイル糸を含むパイル糸が繰り返してタフトされたリピート領域と、が設けられており、
前記第1パイル糸及び第2パイル糸を含むリピート領域内の明度差及び前記第1パイル糸及び第3パイル糸を含むリピート領域内の明度差が、それぞれ2.0以上であり、
前記各リピート領域において前記各後染め糸の重量比が均等とされている、請求項5に記載のタイルカーペット。
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