本発明は、がん、例えば、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))及び頭頸部癌の診断、治療、及び予後判定提供のための組成物及び方法を提供する。
一態様では、本発明は、対象においてがんを診断する方法を特徴とし、方法は、(a)対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLからなる群から選択される少なくとも1つの(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の)遺伝子の発現レベルを決定することと、(b)少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルと比較することと、を含み、試料における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの、少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルに対する増加は、がんを有する対象を特定する。
別の態様では、本発明は、NRF2依存性癌であるがんを有する対象を特定する方法を特徴とし、方法は、(a)対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLからなる群から選択される少なくとも1つの(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の)遺伝子の発現レベルを決定することと、(b)少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルと比較することと、(c)対象のがんがNRF2依存性癌であるかを決定することと、を含み、試料における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの、少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルに対する増加は、NRF2依存性癌を有する対象を特定する。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLからなる群から選択される少なくとも2つの(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の)遺伝子の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLからなる群から選択される少なくとも3つの(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の)遺伝子の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLからなる群から選択される少なくとも4つの(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の)遺伝子の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLの発現レベルが決定される。
いくつかの実施形態では、AKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、またはNQO1のうちの1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21個の)発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、AKR1B10、AKR1C2、ME1、KYNU、CABYR、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、AKR1B15、NR0B1、及びAKR1C3のうちの1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の)発現レベルが決定される。
いくつかの実施形態では、(a)試料における少なくとも2つの遺伝子の発現レベルは、試料の少なくとも2つの遺伝子の平均(例えば、平均値または中央値)であり、(b)少なくとも2つの遺伝子の参照発現レベルは、参照の少なくとも2つの遺伝子の平均(例えば、平均値または中央値)であり、(c)試料の少なくとも2つの遺伝子の平均(例えば、平均値または中央値)は、参照の少なくとも2つの遺伝子の平均と比較される。
いくつかの実施形態では、参照発現レベルは、対象の集団における少なくとも1つの遺伝子の発現の平均レベルである。いくつかの実施形態では、対象の集団は、共通の民族性を共有する対象の集団である。
いくつかの実施形態では、参照発現レベルは、がん(例えば、肺癌、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、例えば、扁平上皮NSCLC)を有する対象の集団における少なくとも1つの遺伝子の発現の平均レベルである。
いくつかの実施形態では、発現レベルは、mRNA発現レベルである。いくつかの実施形態では、mRNA発現レベルは、PCR、RT-PCR、RNA-seq、遺伝子発現プロファイリング、遺伝子発現の連続分析、またはマイクロアレイ分析によって決定される。
他の実施形態では、発現レベルは、タンパク質発現レベルである。いくつかの実施形態では、タンパク質発現レベルは、ウェスタンブロット、免疫組織化学、または質量分析法によって決定される。
いくつかの実施形態では、前述の方法のいずれかは、NRF2のDNA配列を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、DNA配列は、PCR、エクソーム-seq、マイクロアレイ分析、または全ゲノム配列決定によって決定される。
別の態様では、本発明は、対象においてがんを診断する方法を特徴とし、方法は、対象から得られる試料におけるDNA配列を決定することを含み、そのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2DNAの存在は、対象をがんを有するとして特定する。いくつかの実施形態では、DNA配列は、PCR、エクソーム-seq、マイクロアレイ分析、または全ゲノム配列決定によって決定される。
別の態様では、本発明は、がんを有する対象を特定する方法を特徴とし、方法は、対象から得られる試料におけるそのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2のmRNA発現レベルを決定することを含み、そのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2の存在は、対象をがんを有するとして特定する。いくつかの実施形態では、mRNA発現レベルは、PCR、RT-PCR、RNA-seq、遺伝子発現プロファイリング、遺伝子発現の連続分析、またはマイクロアレイ分析によって決定される。いくつかの実施形態では、方法は、NRF2のDNA配列を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、DNA配列は、PCR、エクソーム-seq、マイクロアレイ分析、または全ゲノム配列決定によって決定される。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、NRF2は、そのエクソン3の全部または一部の欠失をさらに含む。
別の態様では、本発明は、対象においてがんを診断する方法を特徴とし、方法は、対象から得られる試料におけるそのNeh2ドメインの全部または一部の欠失を含むNRF2のタンパク質発現レベルを決定することを含み、そのNeh2ドメインの全部または一部の欠失を含むNRF2の存在は、対象をがんを有するとして特定する。
別の態様では、本発明は、がんを有する対象を特定する方法を特徴とし、方法は、対象から得られる試料におけるそのNeh2ドメインの全部または一部の欠失を含むNRF2のタンパク質発現レベルを決定することを含み、そのNeh2ドメインの全部または一部の欠失を含むNRF2の存在は、対象をがんを有するとして特定する。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、NRF2は、そのNeh4ドメインの全部または一部の欠失をさらに含む。いくつかの実施形態では、タンパク質発現は、ウェスタンブロット、免疫組織化学、または質量分析法によって決定される。
いくつかの実施形態では、方法は、対象に治療有効量のNRF2経路アンタゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象に治療有効量の抗がん剤を投与することをさらに含む。他の実施形態では、方法は、抗がん剤及びNRF2経路アンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗がん剤及びNRF2経路アンタゴニストは、同時投与される。他の実施形態では、抗がん剤及びNRF2経路アンタゴニストは、連続投与される。いくつかの実施形態では、抗がん剤は、抗血管新生剤、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害性剤、及び免疫療法からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗血管新生剤は、VEGFアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、NRF2経路アンタゴニストは、CREBアンタゴニスト、CREB結合タンパク質(CBP)アンタゴニスト、Mafアンタゴニスト、活性化転写因子4(ATF4)アンタゴニスト、タンパク質キナーゼC(PKC)アンタゴニスト、Junアンタゴニスト、グルココルチコイド受容体アンタゴニスト、UbcM2アンタゴニスト、HACE1アンタゴニスト、c-Mycアゴニスト、SUMOアゴニスト、KEAP1アゴニスト、CUL3アゴニスト、またはレチノイン酸受容体α(RARα)アゴニストからなる群から選択される。
別の態様では、本発明は、がんを有する対象を治療する方法を特徴とし、方法は、対象に治療有効量のNRF2経路アンタゴニストを投与することを含み、対象から得られる試料における下記の遺伝子AKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLのうちの少なくとも1つの(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の)発現レベルが、少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルに対して増加したと決定されている。他の実施形態では、対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLからなる群から選択される少なくとも2つの(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の)遺伝子の発現レベルが決定される。他の実施形態では、対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLからなる群から選択される少なくとも3つの(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の)遺伝子の発現レベルが決定される。他の実施形態では、対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLからなる群から選択される少なくとも4つの(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の)遺伝子の発現レベルが決定される。他の実施形態では、対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLの発現レベルが決定される。
いくつかの実施形態では、AKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、またはNQO1のうちの1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21個の)発現レベルが決定される。他の実施形態では、AKR1B10、AKR1C2、ME1、KYNU、CABYR、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、AKR1B15、NR0B1、及びAKR1C3のうちの1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の)発現レベルが決定される。
いくつかの実施形態では、(a)試料における少なくとも2つの遺伝子の発現レベルは、試料の少なくとも2つの遺伝子の平均であり、(b)少なくとも2つの遺伝子の参照発現レベルは、参照の少なくとも2つの遺伝子の平均であり、(c)試料の少なくとも2つの遺伝子の平均は、参照の少なくとも2つの遺伝子の平均と比較される。いくつかの実施形態では、参照発現レベルは、対象の集団における少なくとも1つの遺伝子の発現の平均レベルである。いくつかの実施形態では、対象の集団は、共通の民族性を共有する対象の集団である。いくつかの実施形態では、参照発現レベルは、がんを有する対象の集団における少なくとも1つの遺伝子の発現の平均レベルである。
いくつかの実施形態では、肺癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、例えば、扁平上皮NSCLCである。
いくつかの実施形態では、発現レベルは、mRNA発現レベルである。いくつかの実施形態では、mRNA発現レベルは、PCR、RT-PCR、RNA-seq、遺伝子発現プロファイリング、遺伝子発現の連続分析、またはマイクロアレイ分析によって決定される。いくつかの実施形態では、mRNA発現レベルは、RNA-seqによって決定される。
いくつかの実施形態では、方法は、NRF2のDNA配列を(例えば、PCR、エクソーム-seq、マイクロアレイ分析、または全ゲノム配列決定によって)決定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、発現レベルは、タンパク質発現レベルである。いくつかの実施形態では、タンパク質発現は、ウェスタンブロット、免疫組織化学、または質量分析法によって決定される。
別の態様では、本発明は、がんを有する対象を治療する方法を特徴とし、方法は、(a)対象から得られる試料におけるそのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2のmRNA発現レベルを決定することであって、そのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2mRNAの存在が、対象をがんを有するとして特定する、決定することと、(b)対象に治療有効量のNRF2経路アンタゴニストを投与することと、を含む。
いくつかの実施形態では、mRNA発現は、PCR、RT-PCR、RNA-seq、遺伝子発現プロファイリング、遺伝子発現の連続分析、またはマイクロアレイ分析によって決定される。いくつかの実施形態では、mRNA発現レベルは、RNA-seqによって決定される。いくつかの実施形態では、方法は、NRF2のDNA配列を(例えば、PCR、エクソーム-seq、マイクロアレイ分析、または全ゲノム配列決定によって)決定することをさらに含む。
別の態様では、本発明は、がんを有する対象を治療する方法を特徴とし、方法は、(a)対象から得られる試料におけるそのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2のDNA配列を決定することであって、そのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2DNAの存在が、対象をがんを有するとして特定する、決定することと、(b)対象に治療有効量のNRF2経路アンタゴニストを投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、DNA配列は、PCR、エクソーム-seq、マイクロアレイ分析、または全ゲノム配列決定によって決定される。いくつかの実施形態では、NRF2(例えば、mRNAまたはDNA)は、そのエクソン3の全部または一部の欠失をさらに含む。
別の態様では、本発明は、がんを有する対象を治療する方法を特徴とし、方法は、(a)対象から得られる試料におけるそのNeh2ドメインの全部または一部の欠失を含むNRF2のタンパク質発現レベルを決定することであって、そのNeh2の全部または一部の欠失を含むNRF2タンパク質の存在が、対象をがんを有するとして特定する、決定することと、(b)対象に治療有効量のNRF2経路アンタゴニストを投与することと、を含む。
いくつかの実施形態では、NRF2タンパク質は、そのNeh4ドメインの全部または一部の欠失をさらに含む。いくつかの実施形態では、タンパク質発現は、ウェスタンブロット、免疫組織化学、または質量分析法によって決定される。いくつかの実施形態では、方法は、NRF2のDNA配列を(例えば、PCR、エクソーム-seq、マイクロアレイ分析、または全ゲノム配列決定によって)決定することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、方法は、対象に治療有効量の抗がん剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗がん剤及びNRF2経路アンタゴニストは、同時投与される。他の実施形態では、抗がん剤及びNRF2経路アンタゴニストは、連続投与される。いくつかの実施形態では、抗がん剤は、抗血管新生剤、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害性剤、及び免疫療法からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗血管新生剤は、VEGFアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、NRF2経路アンタゴニストは、CREBアンタゴニスト、CREB結合タンパク質(CBP)アンタゴニスト、Mafアンタゴニスト、活性化転写因子4(ATF4)アンタゴニスト、タンパク質キナーゼC(PKC)アンタゴニスト、Junアンタゴニスト、グルココルチコイド受容体アンタゴニスト、UbcM2アンタゴニスト、HACE1アンタゴニスト、c-Mycアゴニスト、SUMOアゴニスト、KEAP1アゴニスト、CUL3アゴニスト、またはレチノイン酸受容体α(RARα)アゴニストからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、対象から得られる試料は、例えば、生検試料からの、腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、試料は、前治療を受けていない対象から得られる。いくつかの実施形態では、対象は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、例えば、扁平上皮NSCLC)または頭頸部癌(例えば、扁平上皮頭頸部癌)を有する。
I.導入
本発明は、肺癌(例えば、NSCLC)または頭頸部扁平上皮癌(例えば、HNSC)などの、がんのための診断方法及び付随する治療方法を提供する。本発明は、少なくとも部分的に、エクソン2またはエクソン2+3を除去するNRF2におけるスプライス変異体が、がんにおいてNRF2活性化を与える予想外のメカニズムをもたらすという発見に基づく。NRF2スプライス変異体は、KEAP1またはNRF2における変異からの相互排他的なメカニズムによってNRF2活性化をもたらし、また同様のNRF2標的遺伝子発現プロファイルをもたらす。これらのNRF2スプライス変異体をもたらす微小欠失を有する細胞株には、NRF2-KEAP1相互作用の喪失、増加したNRF2安定化、NRF2転写応答の誘発、及びNRF2経路依存性がある。これは扁平上皮NSCLCの3~6%及びHNSCの1~2%において発生し、KEAP1変異と同様のNRF2標的遺伝子の活性化及び経路への依存性をもたらす。
この発見は、(例えば、NRF2スプライス変異体を検出することによって、またはNRF2スプライス変異体の存在と一貫した遺伝子もしくはタンパク質発現プロファイルを検出することによって)がんに罹患している対象を診断すること、及び(治療有効量のNRF2経路アンタゴニスト、例えば、cAMP応答配列結合タンパク質(CREB)結合タンパク質(CBP)阻害剤を投与することによって)このような診断に従って対象を治療することに有用である。
II.定義
「診断する」、「診断すること」、または「診断」という用語は、本明細書では分子的または病理学的状態、疾患、または病態(例えば、がん)の特定または分類を指すために使用される。例えば、「診断」とは、特定のタイプのがんの特定を指し得る。「診断」はまた、例えば、組織病理学的基準による、または分子的特徴による、がんの特定のサブタイプ(例えば、1つのバイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせ(例えば、特定の遺伝子またはその遺伝子によってコードされたタンパク質)の発現を特徴とするサブタイプ)の分類を指し得る。
「がん」及び「がん性」という用語は、典型的には制御されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか、または説明する。この定義には、良性及び悪性がん、ならびに潜伏腫瘍または微小転移が含まれる。がんの例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、膠芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。がんとしては、例えば、乳癌、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌(例えば、扁平上皮NSCLC)を含む)、様々なタイプの頭頸部癌(例えば、HNSC)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)(消化管癌を含む)、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)または腎臓癌(renal cancer)、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、及び肝癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変性NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、及びメイグス症候群に関連する異常血管増殖を挙げることができる。
本明細書における「患者」または「対象」は、がんなどの疾患または障害の1つ以上の兆候、症状、または他の指標を経験しているまたは経験したことがある、治療に適格な、ヒトなどの任意の単一の動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの、哺乳動物を含む)を指す。患者として含まれることが意図されるのは、疾患のいかなる臨床的兆候も示さない臨床研究に関与する任意の患者、疫学的研究に関与する患者、または一度対照として用いられた患者である。患者は、NRF2経路アンタゴニストまたは別の薬物で以前に治療されていても、治療されてなくてもよい。患者は、本明細書における治療が開始されるときに使用される追加の薬物(複数可)に対してナイーブであってもよく、すなわち、患者は、「ベースライン」で(すなわち、治療が開始される前に対象をスクリーニングする日など、本明細書における治療方法におけるNRF2経路アンタゴニストの第1の用量の投与前の時点における設定点で)、例えば、NRF2経路アンタゴニスト(例えば、VEGFアンタゴニストまたはPD-1軸結合アンタゴニスト)以外の療法で以前に治療されていない場合がある。このような「ナイーブな」患者または対象は、一般に、このような追加の薬物(複数可)での治療の候補者とみなされる。
「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、一般に互換的に使用され、一般に生体試料におけるバイオマーカーの量を指す。「発現」は概して、これにより情報(例えば、遺伝子コード及び/またはエピジェネティック情報)が、細胞において存在し、機能する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、またはさらにポリヌクレオチド及び/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)を指し得る。転写ポリヌクレオチド、翻訳ポリペプチド、またはポリヌクレオチド及び/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)の断片はまた、それらが代替的スプライシングによって生成される転写物もしくは分解転写物に由来しようが、または例えば、タンパク質分解による、ポリペプチドの翻訳後プロセシングに由来しようが、発現したとみなされる。「発現した遺伝子」は、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、その後、ポリペプチドに翻訳されるもの、及びまたRNAに転写されるが、ポリペプチドに翻訳されないもの(例えば、転移及びリボソームRNA)を含む。
「バイオマーカー」及び「マーカー」という用語は、DNA、RNA、タンパク質、炭水化物、または糖脂質ベースの分子マーカーを指すために本明細書では互換的に使用され、対象または患者の試料におけるこの発現または存在は、標準的な方法(または本明細書に開示される方法)によって検出することができる。このようなバイオマーカーは、表1に記載されるmRNA配列、及びこれらのコードされたタンパク質を含むが、これらに限定されない。このようなバイオマーカーの発現は、参照レベル(例えば、患者、例えば、がんを有し、NRF2経路アンタゴニストへの応答性について試験されている患者の群/集団からの試料におけるバイオマーカーの平均(例えば、平均または中央)発現レベル、患者、例えば、がんを有し、NRF2経路アンタゴニストに応答しないとして特定された患者の群/集団からの試料におけるバイオマーカーの中央発現レベル、前回個体から予め入手していた試料におけるレベル、または原発腫瘍環境においてNRF2経路アンタゴニストでの前治療を受け、現在は転移を経験し得る患者からの試料におけるレベルを含む)よりも、NRF2経路アンタゴニストに感受性または応答性の患者から得られる試料においてより高いまたはより低いことが決定され得る。表1に記載されるものなどの、少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルよりも高いまたは低い発現レベルを有する個体は、NRF2経路アンタゴニストでの治療に応答する可能性がある対象/患者として特定することができる。例えば、参照レベル(平均レベルなど)に対して(すなわち、これよりも高い、または低い)最も極端に50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%の発現レベルを示すこのような対象/患者は、NRF2経路アンタゴニストでの治療に応答する可能性がある対象/患者(例えば、がんを有する患者)として特定することができる。
本明細書で使用される「ABCC2」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然ABCC2(ATP結合カセットサブファミリーC、メンバー2)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングABCC2、及び細胞内でのプロセシングから得られるABCC2の任意の形態を包含する。用語は、ABCC2の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトABCC2の核酸配列は、配列番号1に記載される。ヒトABCC2によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号33に示される。
本明細書で使用される「AKR1B10」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然AKR1B10(アルド-ケトレダクターゼファミリー1、メンバーB10)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングAKR1B10、及び細胞内でのプロセシングから得られるAKR1B10の任意の形態を包含する。用語は、AKR1B10の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトAKR1B10の核酸配列は、配列番号2に記載される。ヒトAKR1B10によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号34に示される。
本明細書で使用される「AKR1B15」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然AKR1B15(アルド-ケトレダクターゼファミリー1、メンバーB15)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングAKR1B15、及び細胞内でのプロセシングから得られるAKR1B15の任意の形態を包含する。用語は、AKR1B15の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトAKR1B15の核酸配列は、配列番号3に記載される。ヒトAKR1B15によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号35に示される。
本明細書で使用される「AKR1C2」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然AKR1C2(アルド-ケトレダクターゼファミリー1、メンバーC2)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングAKR1C2、及び細胞内でのプロセシングから得られるAKR1C2の任意の形態を包含する。用語は、AKR1C2の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトAKR1C2の核酸配列は、配列番号4に記載される。ヒトAKR1C2によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号36に示される。
本明細書で使用される「AKR1C3」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然AKR1C3(アルド-ケトレダクターゼファミリー1、メンバーC3)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングAKR1C3、及び細胞内でのプロセシングから得られるAKR1C3の任意の形態を包含する。用語は、AKR1C3の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトAKR1C3の核酸配列は、配列番号5に記載される。ヒトAKR1C3によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号37に示される。
本明細書で使用される「AKR1C4」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然AKR1C4(アルド-ケトレダクターゼファミリー1、メンバーC4)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングAKR1C4、及び細胞内でのプロセシングから得られるAKR1C4の任意の形態を包含する。用語は、AKR1C4の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトAKR1C4の核酸配列は、配列番号6に記載される。ヒトAKR1C4によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号38に示される。
本明細書で使用される「CABYR」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然CABYR(カルシウム結合チロシン-(Y)-リン酸化制御)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングCABYR、及び細胞内でのプロセシングから得られるCABYRの任意の形態を包含する。用語は、CABYRの天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトCABYRの核酸配列は、配列番号7に記載される。ヒトCABYRによってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号39に示される。
本明細書で使用される「CYP4F11」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然CYP4F11(染色体P450、ファミリー4、サブファミリーF、ポリペプチド11)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングCYP4F11、及び細胞内でのプロセシングから得られるCYP4F11の任意の形態を包含する。用語は、CYP4F11の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトCYP4F11の核酸配列は、配列番号8に記載される。ヒトCYP4F11によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号40に示される。
本明細書で使用される「FECH」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然FECH(フェロケラターゼ)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングFECH、及び細胞内でのプロセシングから得られるFECHの任意の形態を包含する。用語は、FECHの天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトFECHの核酸配列は、配列番号9に記載される。ヒトFECHによってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号41に示される。
本明細書で使用される「FTL」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然FTL(フェリチン、軽鎖ポリペプチド)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングFTL、及び細胞内でのプロセシングから得られるFTLの任意の形態を包含する。用語は、FTLの天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトFTLの核酸配列は、配列番号10に記載される。ヒトFTLによってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号42に示される。
本明細書で使用される「GCLM」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然GCLM(グルタミン酸システインリガーゼ、修飾因子サブユニット)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングGCLM、及び細胞内でのプロセシングから得られるGCLMの任意の形態を包含する。用語は、GCLMの天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトGCLMの核酸配列は、配列番号11に記載される。ヒトGCLMによってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号43に示される。
本明細書で使用される「GSR」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然GSR(グルタチオンレダクターゼ)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングGSR、及び細胞内でのプロセシングから得られるGSRの任意の形態を包含する。用語は、GSRの天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトGSRの核酸配列は、配列番号12に記載される。ヒトGSRによってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号44に示される。
本明細書で使用される「KYNU」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然KYNU(キヌレニナーゼ)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングKYNU、及び細胞内でのプロセシングから得られるKYNUの任意の形態を包含する。用語は、KYNUの天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトKYNUの核酸配列は、配列番号13に記載される。ヒトKYNUによってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号45に示される。
本明細書で使用される「ME1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然ME1(リンゴ酸酵素1、NADP(+)依存性、細胞質性)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングME1、及び細胞内でのプロセシングから得られるME1の任意の形態を包含する。用語は、ME1の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトME1の核酸配列は、配列番号14に記載される。ヒトME1によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号46に示される。
本明細書で使用される「NFE2L2」または「NRF2」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然NFE2L2またはNRF2(核内因子、赤血球系2様2)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングNFE2L2、及び細胞内でのプロセシングから得られるNFE2L2の任意の形態を包含する。用語は、NFE2L2の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトNFE2L2の核酸配列は、配列番号15に記載される。ヒトNFE2L2によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号47に示される。
本明細書で使用される「NQO1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然NQO1(NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ、キノン1)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングNQO1、及び細胞内でのプロセシングから得られるNQO1の任意の形態を包含する。用語は、NQO1の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトNQO1の核酸配列は、配列番号16に記載される。ヒトNQO1によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号48に示される。
本明細書で使用される「NR0B1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然NR0B1(核内受容体サブファミリー0、グループB、メンバー1)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングNR0B1、及び細胞内でのプロセシングから得られるNR0B1の任意の形態を包含する。用語は、NR0B1の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトNR0B1の核酸配列は、配列番号17に記載される。ヒトNR0B1によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号49に示される。
本明細書で使用される「OSGIN1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然OSGIN1(酸化ストレス誘発性成長阻害剤1)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングOSGIN1、及び細胞内でのプロセシングから得られるOSGIN1の任意の形態を包含する。用語は、OSGIN1の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトOSGIN1の核酸配列は、配列番号18に記載される。ヒトOSGIN1によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号50に示される。
本明細書で使用される「PGD」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然PGD(ホスホグルコネートデヒドロゲナーゼ)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングPGD、及び細胞内でのプロセシングから得られるPGDの任意の形態を包含する。用語は、PGDの天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトPGDの核酸配列は、配列番号19に記載される。ヒトPGDによってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号51に示される。
本明細書で使用される「RSPO3」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然RSPO3(R-スポンジン3)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングRSPO3、及び細胞内でのプロセシングから得られるRSPO3の任意の形態を包含する。用語は、RSPO3の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトRSPO3の核酸配列は、配列番号20に記載される。ヒトRSPO3によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号52に示される。
本明細書で使用される「SLC7A11」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然SLC7A11(溶質ファミリー7(アニオン性アミノ酸輸送体軽鎖、Xc-システム)、メンバー11)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングSLC7A11、及び細胞内でのプロセシングから得られるSLC7A11の任意の形態を包含する。用語は、SLC7A11の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトSLC7A11の核酸配列は、配列番号21に記載される。ヒトSLC7A11によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号53に示される。
本明細書で使用される「SRXN1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然SRXN1(スルフィレドキシン1)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングSRXN1、及び細胞内でのプロセシングから得られるSRXN1の任意の形態を包含する。用語は、SRXN1の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトSRXN1の核酸配列は、配列番号22に記載される。ヒトSRXN1によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号54に示される。
本明細書で使用される「TALDO1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然TALDO1(トランスアルドラーゼ1)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングTALDO1、及び細胞内でのプロセシングから得られるTALDO1の任意の形態を包含する。用語は、TALDO1の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトTALDO1の核酸配列は、配列番号23に記載される。ヒトTALDO1によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号55に示される。
本明細書で使用される「TRIM16」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然TRIM16(16含有トリパルタイトモチーフ)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングTRIM16、及び細胞内でのプロセシングから得られるTRIM16の任意の形態を包含する。用語は、TRIM16の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトTRIM16の核酸配列は、配列番号24に記載される。ヒトTRIM16によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号56に示される。
本明細書で使用される「TRIM16L」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然TRIM16L(トリパルタイトモチーフ含有16様)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングTRIM16L、及び細胞内でのプロセシングから得られるTRIM16Lの任意の形態を包含する。用語は、TRIM16Lの天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトTRIM16Lの核酸配列は、配列番号25に記載される。ヒトTRIM16Lによってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号57に示される。
本明細書で使用される「TXN」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然TXN(チオレドキシン)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングTXN、及び細胞内でのプロセシングから得られるTXNの任意の形態を包含する。用語は、TXNの天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトTXNの核酸配列は、配列番号26に記載される。ヒトTXNによってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号58に示される。
本明細書で使用される「TXNRD1」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然TXNRD1(チオレドキシンレダクターゼ1)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングTXNRD1、及び細胞内でのプロセシングから得られるTXNRD1の任意の形態を包含する。用語は、TXNRD1の天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトTXNRD1の核酸配列は、配列番号27に記載される。ヒトTXNRD1によってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号59に示される。
本明細書で使用される「UGDH」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然UGDH(ウリジンジホスホ(UDP)-グルコース6-デヒドロゲナーゼ)を指す。用語は、「全長」の非プロセシングUGDH、及び細胞内でのプロセシングから得られるUGDHの任意の形態を包含する。用語は、UGDHの天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。例示的ヒトUGDHの核酸配列は、配列番号28に記載される。ヒトUGDHによってコードされる例示的タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号60に示される。
「試料」及び「生体試料」という用語は、体液、体組織(例えば、腫瘍組織)、細胞、または他の源を含む個体から得られる任意の生体試料を指すために互換的に使用される。体液は、例えば、リンパ、血清、全生血、末梢血単核細胞、凍結全血、血漿(生または凍結を含む)、尿、唾液、精液、滑液、及び髄液である。試料には、乳房組織、腎組織、結腸組織、脳組織、筋組織、滑膜組織、皮膚、毛包、骨髄、及び腫瘍組織も含まれる。哺乳動物に由来する組織生検及び体液を得るための方法は当該技術分野で周知である。
「組織試料」または「細胞試料」とは、対象または個体の組織から得られる同様の細胞の集合を意味する。組織または細胞試料の供給源は、生、凍結、及び/または保存器官、組織試料、生検、及び/または吸引物からの固形組織;血液または血漿などの任意の血液成分;脳脊髄液、羊膜液、腹水、または間質液などの体液;対象の妊娠または発達中の任意の時点からの細胞であってもよい。組織試料はまた、初代または培養細胞または細胞株であってもよい。任意に、組織または細胞試料は、疾患組織/器官から得られる。組織試料は、防腐剤、抗凝血剤、緩衝剤、固定剤、栄養剤、抗生物質などの天然の組織と天然では混合しない化合物を含有し得る。
本明細書で使用される「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照試料」、「対照細胞」、または「対照組織」とは、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、標準物、またはレベルを指す。一実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体の身体の健常及び/または非罹患部分(例えば、組織または細胞)から得られる。例えば、罹患細胞または組織に隣接する健常及び/または非罹患細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)。別の実施形態では、参照試料は、同じ対象または個体の身体の未治療組織及び/または細胞から得られる。また別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の健常及び/または非罹患部分(例えば、組織または細胞)から得られる。さらに別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の未治療組織及び/または細胞から得られる。別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、1つ以上の細胞株(例えば、1つ以上の正常細胞株)から得られる。
本明細書で使用される「患者を特定すること」または「患者を特定する」という語句は、患者を、NRF2経路アンタゴニストを含む療法から利益を得る可能性が高い、または低いとして特定または選択するために、患者の試料における表1に記載される遺伝子のうちの少なくとも1つのレベル、そのエクソン2もしくはエクソン2+3の全部もしくは一部の欠失を有するNRF2mRNAの存在、またはそのNeh2もしくはNeh2+4の全部もしくは一部の欠失を有するNRF2タンパク質の存在に関して生成された情報またはデータを使用することを指す。使用または生成される情報またはデータは、任意の形態、文書、口頭、または電子であり得る。いくつかの実施形態では、生成された情報またはデータの使用は、通信、提示、報告、保存、送信、移行、供給、伝送、分配、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、通信、提示、報告、保存、送信、移行、供給、伝送、分配、またはこれらの組み合わせは、コンピュータデバイス、アナライザユニット、またはこれらの組み合わせによって行われる。いくつかのさらなる実施形態では、通信、提示、報告、保存、送信、移行、供給、伝送、分配、またはこれらの組み合わせは、実験または医療従事者によって行われる。いくつかの実施形態では、情報またはデータは、表1に記載される遺伝子のうちの少なくとも1つレベルの、参照レベルとの比較を含む。いくつかの実施形態では、情報またはデータは、表1に記載される遺伝子のうちの少なくとも1つが試料に存在する、または存在しない指標を含む。いくつかの実施形態では、情報またはデータは、NRF2mRNAがそのエクソン2またはエクソン2+3の全部または一部の欠失を有する指標を含む。いくつかの実施形態では、情報またはデータは、NRF2タンパク質がそのNeh2またはNeh2+4の全部または一部の欠失を有する指標を含む。いくつかの実施形態では、情報またはデータは、患者がNRF2経路アンタゴニストを含む療法に応答する可能性が高い、または低い指標を含む。
「プライマー」という用語は、一般に遊離3’-OH基を提供することによって、核酸にハイブリダイズし、相補的核酸の重合を可能にすることができる一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
本明細書で使用される場合、「治療」という用語(及び「治療する」または「治療すること」などの、その変形)は、治療されている個体の自然経過を変化させることを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理の経過中に実施され得る。治療の望ましい効果としては、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患の任意の直接的または間接的病理結果の低減、転移の防止、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、及び寛解または予後向上が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体を使用して、疾患の発達を遅延させるか、または疾患の進行を減速させる。
本明細書で使用される場合、「投与すること」は、ある投薬量の化合物(例えば、NRF2経路アンタゴニスト)を対象に与える方法を意味する。本明細書に記載される方法に用いられる組成物は、例えば、硝子体内(例えば、硝子体内注射により)、点眼により、筋肉内、静脈内、皮内、経皮、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、髄腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所、腫瘍内、腹膜内、皮下、結膜下、小胞内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼内、眼窩内、経口、局所、経皮、吸入により、注射により、移植により、注入により、持続注入により、標的細胞に直接的に浸す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリーム中で、または脂質組成物中で投与され得る。本明細書に記載の方法で利用される組成物はまた、全身または局所投与され得る。投与方法は、様々な因子(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて多様であり得る。
薬剤、例えば、医薬製剤の「有効量」とは、必要な投与量で必要な期間にわたって所望の治療または予防結果を達成するのに有効な量を指す。
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異的抗体)、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントを達成するように、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後に、かついかなる保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、参照ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一である候補配列内のアミノ酸残基の割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための整列は、当該技術分野の範囲内の様々な方法で、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較されている配列の完全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって記述され、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権庁(Washington D.C.,20559)に提出されており、米国著作権番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Calif.から公的に入手可能であるか、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムにより設定されており、変動しない。
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む、所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によってそのプログラムのAとBとの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解される。別途具体的に示されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
「抗腫瘍剤」という用語は、少なくとも1つの活性治療剤、例えば、「抗がん剤」を含むがん治療において有用な組成物を指す。治療剤(抗がん剤)の例としては、例えば、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害性剤、放射線療法で使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及びがんを治療するための他の薬剤、例えば、抗HER-2抗体、抗CD20抗体、上皮成長因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(TARCEVA(商標)、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、GLEEVEC(商標)(メシル酸イマチニブ))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA、またはVEGF受容体(複数可)、TRAIL/Apo2のうちの1つ以上に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)、ならびに他の生物活性及び有機化学剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの組み合わせもまた、本発明に含まれる。
本明細書で使用される「細胞傷害性剤」という用語は、細胞機能を阻害もしくは阻止する、及び/または細胞死もしくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害性剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);成長阻害剤;核酸分解酵素などの酵素及びそれらの断片、抗生物質、それらの断片及び/または変異体を含む、細菌、真菌、植物、または動物由来の小分子毒素または酵素活性毒素などの毒素、ならびに以下に開示される様々な抗腫瘍剤または抗がん剤が含まれるが、これらに限定されない。
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化学化合物である。「化学療法剤」の例は、がんの治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例としては、例えば、テモゾロミド(TMZ)、アルキル化剤ダカルバジンのイミダゾテトラジン誘導体などの、アルキル化剤が挙げられる。化学療法剤のさらなる例としては、例えば、パクリタキセルもしくはトポテカンまたはペグ化リポソームドキソルビシン(PLD)が挙げられる。化学療法剤の他の例としては、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、及びウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン;ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン(ranimnustine)などのニトロスレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンγ1I及びカリケアミシンωI1(例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)参照)などの抗生物質;ダイネミシンAを含む、ダイネミシン;クロドロネートなどの、ビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルチノスタチン発光団及び関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発光団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシン及びアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE(登録商標)パクリタキセルのクレモフォールフリーのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Ill.)、及びTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar、CPT-11)(イリノテカンと5-FU及びロイコボリンの治療レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;コムブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン治療レジメン(FOLFOX)を含む、オキサリプラチン;ラパチニブ(Tykerb.RTM.);細胞増殖を低減するPKC-α、Raf、H-Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(Tarceva.RTM.))、及びVEGFの阻害剤、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。
「プログラム死リガンド1」及び「PD-L1」という用語は、本明細書において、天然配列PD-L1ポリペプチド、ポリペプチド変異体、ならびに天然配列ポリペプチド及びポリペプチド変異体の断片を指す。本明細書に記載されるPD-L1ポリペプチドは、ヒト組織型から、もしくは別の源からなど、多様な源から単離されるか、または組換え法もしくは合成法によって調製されたものであり得る。
「PD-L1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するように、PD-L1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能が復元または増強される分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト及びPD-1結合アンタゴニスト、ならびにPD-L1とPD-1との間の相互作用を妨害する分子(例えば、PD-L2-Fc融合体)を含む。
本明細書で使用される場合、「PD-L1結合アンタゴニスト」は、PD-L1と、PD-1及び/またはB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子である。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及び/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体及びその抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD-L1と、PD-1及び/またはB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用に起因するシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1またはPD-1を介したシグナル伝達により媒介される、Tリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される、負のシグナルを低減し、これにより、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70である。別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、MDX-1105である。さらに別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ(MPDL3280A)である。さらに別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、MEDI4736(デュルバルマブ)である。さらに別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、MSB0010718C(アベルマブ)である。
本明細書で使用される場合、「PD-1結合アンタゴニスト」は、PD-1と、PD-L1及び/またはPD-L2などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及び/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体及びその抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD-1と、PD-L1及び/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1またはPD-L1を介したシグナル伝達により媒介される、Tリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される、負のシグナルを低減し、これにより、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、MK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、CT-011(ピジリズマブ)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、MEDI-0680(AMP-514)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるREGN2810である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるBGB-108である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。
「血管内皮成長因子」または「VEGF」という用語は、血管内皮成長因子を指す。「VEGF」という用語は、そのホモログ及びアイソフォームを包含する。「VEGF」という用語はまた、VEGFの、既知のアイソフォーム、例えば、スプライスアイソフォーム、例えば、VEGF111、VEGF121、VEGF145、VEGF165、VEGF189、及びVEGF206を、Ferrara Mol.Biol.Cell.21:687(2010)、Leung et al.,Science,246:1306(1989)、及びHouck et al.,Mol.Endocrin.,5:1806(1991)に記載されるVEGF165のプラスミン切断によって生成された110個のアミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子を含む、これらの天然に存在する対立遺伝子及びプロセシング形態と共に包含する。「VEGF」という用語はまた、マウス、ラット、または霊長類などの非ヒト種に由来するVEGFを指す。特定の種に由来するVEGFは、ヒトVEGFではhVEGF、マウスVEGFではmVEGFなどの用語によって示されることがある。「VEGF」という用語はまた、165個のアミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子のアミノ酸8~109または1~109を含む、ポリペプチドの切断形態を指して使用される。VEGFの任意のこのような形態への参照は、本出願では、例えば、「VEGF109」、「VEGF(8~109)」、「VEGF(1~109)」、または「VEGF165」によって特定することができる。「切断された」天然VEGFのアミノ酸位は、天然VEGF配列に示される通りに番号付けされる。例えば、切断された天然VEGFでのアミノ酸17位(メチオニン)は、天然VEGFでも17位(メチオニン)である。切断された天然VEGFは、KDR及びFlt-1受容体に対して、天然VEGFに匹敵する結合親和性を有する。本明細書で使用される「VEGF変異体」という用語は、天然VEGF配列に1つ以上のアミノ酸変異を含むVEGFポリペプチドを指す。任意で、1つ以上のアミノ酸変異には、アミノ酸置換(複数可)が含まれる。本明細書に記載されるVEGF変異体を簡潔に表記する目的で、数字は、(Leung et al.、上記及びHouck et al.、上記に提供される)推定上の天然VEGFのアミノ酸配列に沿ったアミノ酸残基の位置を指すことが知られている。
「VEGFアンタゴニスト」という用語は、本明細書で使用されるとき、VEGFに結合するか、VEGF発現レベルを低減するか、または1つ以上のVEGF受容体へのVEGF結合、VEGFシグナル伝達、ならびにVEGF媒介血管新生及び内皮細胞生存もしくは増殖を含むが、これらに限定されないVEGF生物学的活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減、もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、VEGFの生物学的活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減、または妨害することができる分子は、1つ以上のVEGF受容体(VEGFR)(例えば、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、膜結合VEGF受容体(mbVEGFR)、または可溶性VEGF受容体(sVEGFR))に結合することによって、その作用を発揮することができる。VEGFに特異的に結合するポリペプチド、抗VEGF抗体及びその抗原結合断片、VEGFに特異的に結合し、それにより1つ以上の受容体へのその結合を封鎖する受容体分子及び誘導体、融合タンパク質(例えば、VEGF-Trap(Regeneron))、及びVEGF121-ゲロニン(Peregrine)が、本発明の方法で有用なVEGFアンタゴニストとして含まれる。VEGFアンタゴニストには、VEGFポリペプチドのアンタゴニスト変異体、VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも1つの断片に相補的なアンチセンス核酸塩基オリゴマー、VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも1つの断片に相補的な小RNA、VEGFを標的とするリボザイム、VEGFに対するペプチボディ、及びVEGFアプタマーも含まれる。VEGFアンタゴニストにはまた、VEGFRに結合するポリペプチド、抗VEGFR抗体、及びその抗原結合断片、ならびにVEGFRに結合し、それによってVEGFの生物学的活性(例えば、VEGFのシグナル伝達)を遮断、阻害、抑止、低減、もしくは妨害する誘導体、または融合体タンパク質が含まれる。VEGFアンタゴニストには、VEGFまたはVEGFRに結合し、かつVEGFの生物学的活性を遮断、阻害、抑止、低減、または妨害することができる非ペプチド小分子も含まれる。したがって、「VEGF活性」という用語は、VEGFのVEGF媒介生物学的活性を具体的に含む。特定の実施形態では、VEGFアンタゴニストは、VEGFの発現レベルまたは生物学的活性を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。いくつかの実施形態では、VEGF特異的アンタゴニストによって阻害されるVEGFは、VEGF(8-109)、VEGF(1-109)、またはVEGF165である。
本明細書で使用されるとき、VEGFアンタゴニストとしては、抗VEGFR2抗体及び関連分子(例えば、ラムシルマブ、タニビルマブ、アフリベルセプト)、抗VEGFR1抗体及び関連分子(例えば、イクルクマブ、アフリベルセプト(VEGF Trap-Eye、EYLEA(登録商標))、及びジブ-アフリベルセプト(ziv-aflibercept)(VEGF Trap、ZALTRAP(登録商標)))、二重特異性VEGF抗体(例えば、MP-0250、バヌシズマブ(VEGF-ANG2)、及びUS2001/0236388に開示される二重特異性抗体)、抗VEGF、抗VEGFR1、及び抗VEGFR2アームのうちの2つの組み合わせを含む二重特異性抗体、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ、セバシズマブ、及びラニビズマブ)、ならびに非ペプチド小分子VEGFアンタゴニスト(例えば、パゾパニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、スチバーガ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、テラチニブ、ドビチニグ、セジラニブ、モテサニブ、スルファチニブ、アパチニブ、フォレチニブ、ファミチニブ、及びチボザニブ)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
「抗VEGF抗体」、「VEGFに結合する抗体」、及び「VEGFに特異的に結合する抗体」という用語は、抗体がVEGFを標的とする際に診断及び/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でVEGFに結合することができる抗体を指す。一実施形態では、無関係の非VEGFタンパク質への抗VEGF抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定される、VEGFへの抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、VEGFに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、抗VEGF抗体は、異なる種由来のVEGF間で保存されるVEGFのエピトープに結合する。
特定の実施形態では、抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患または状態を標的とし、かつそれを妨害する際に治療剤として使用され得る。また、抗体は、例えば、治療剤としてのその有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイに供され得る。このようなアッセイは、当該技術分野で既知であり、抗体の標的抗原及び意図される使用に依存する。例としては、HUVEC阻害アッセイ、腫瘍細胞成長阻害アッセイ(例えば、WO89/06692に記載のもの)、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)及び補体媒介細胞傷害性(CDC)アッセイ(米国特許第5,500,362号)、ならびにアゴニスト活性または造血アッセイ(WO95/27062を参照のこと)が挙げられる。抗VEGF抗体は、通常、VEGF-BまたはVEGF-Cなどの他のVEGF相同体にも、PIGF、PDGF、またはbFGFなどの他の成長因子にも結合しない。一実施形態では、抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB10709によって産生されたモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗VEGF抗体は、Presta et al.(1997)Cancer Res.57:4593-4599に従って生成される組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体であり、ベバシズマブ(BV、AVASTIN(登録商標))として知られる抗体が挙げられるが、これに限定されない。
「Lucentis(登録商標)」または「rhuFab V2」としても知られる抗VEGF抗体「ラニビズマブ」は、ヒト化親和性成熟抗ヒトVEGF Fab断片である。ラニビズマブは、Escherichia coli発現ベクターでの標準の組換え技術方法及び細菌発酵によって産生される。ラニビズマブは、グリコシル化されておらず、約48,000ダルトンの分子量を有する。WO98/45331及びUS2003/0190317を参照されたい。さらなる好ましい抗体としては、各々参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるPCT出願公開第WO2005/012359号及び同第WO2005/044853号に記載のG6またはB20シリーズ抗体(例えば、G6-31、B20-4.1)が挙げられる。さらなる好ましい抗体については、米国特許第7,060,269号、同第6,582,959号、同第6,703,020号、同第6,054,297号、WO98/45332、WO96/30046、WO94/10202、EP0666868B1、米国特許出願公開第2006/009360号、同第2005/0186208号、同第2003/0206899号、同第2003/0190317号、同第2003/0203409号、及び同第2005/0112126号、ならびにPopkov et al.,Journal of Immunological Methods288:149-164(2004)を参照されたい。他の好ましい抗体としては、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、191、K101、E103、及びC104を含むか、またはあるいは残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、183、及びQ89を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合するものが挙げられる。さらなる抗VEGF抗体としては、PCT出願公開第WO2009/155724号に記載の抗VEGF抗体が挙げられる。
「同時投与」という用語は、本明細書において投与の少なくとも一部が時間的に重なる2つ以上の治療剤の投与を指すために使用される。したがって、同時投与は、1つ以上の他の薬剤(複数可)の投与を中止した後に、1つ以上の薬剤(複数可)の投与が継続するときの投薬レジメンを含む。
「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、悪性か良性かを問わず、全ての腫瘍性細胞成長及び増殖、ならびに全ての前がん性及びがん性細胞及び組織を指す。「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」は、本明細書で言及されるように、相互排他的ではない。
III.方法
A.診断方法
本明細書では、対象においてがん(例えば、肺癌(例えば、扁平上皮NSCLCまたは非扁平上皮NSCLC)または頭頸部癌(例えば、HNSC))を診断するための方法が提供される。また本明細書では、NRF2依存性癌であるがん(例えば、肺癌、例えば、扁平上皮非小細胞肺癌もしくは非扁平上皮非小細胞肺癌、または頭頸部癌)を有する対象を特定するための方法が提供される。方法のいずれも、本明細書で提供されるバイオマーカー、例えば、NRF2のスプライス変異体(例えば、NRF2mRNAまたはNRF2タンパク質)の発現レベル、または1つ以上のNRF2標的遺伝子の増加した発現に基づき得る。方法のいずれも、対象にNRF2経路アンタゴニストを投与することをさらに含み得る。方法のいずれも、有効量の第2の治療剤(例えば、1つ以上の(例えば、1、2、3、または4つ以上の)追加のNRF2経路アンタゴニストまたは1つ以上の(例えば、1、2、3、または4つ以上の)抗がん剤)を対象に投与することをさらに含み得る。
本発明は、対象においてがんを診断する方法を提供し、方法は、対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の遺伝子)の発現レベルを決定することと、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルと比較することと、を含み、試料における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの、少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルに対する増加は、がんを有する対象を特定する。
本発明は、NRF2依存性癌であるがんを有する対象を特定する方法をさらに提供し、方法は、対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の遺伝子)の発現レベルを決定することと、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルと比較することと、対象のがんがNRF2依存性癌であるかを決定することと、を含み、試料における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの、少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルに対する増加は、NRF2依存性癌を有する対象を特定する。
前述の方法のいずれにおいても、AKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、またはNQO1のうちの1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21個の)発現レベルが決定される。
前述の方法のいずれにおいても、1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の)新たに特定されたNRF2標的遺伝子の発現レベルが決定される。新たに特定されたNRF2標的遺伝子としては、AKR1B10、AKR1C2、ME1、KYNU、CABYR、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、AKR1B15、NR0B1、及びAKR1C3が挙げられる。
本発明は、対象においてがんを診断する方法をさらに提供し、方法は、対象から得られる試料(例えば、腫瘍試料)におけるそのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2のmRNA発現レベルを決定することを含み、そのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2の存在は、対象をがんを有するとして特定する。いくつかの実施形態では、NRF2は、そのエクソン3の全部または一部の欠失をさらに含む。遺伝子(例えば、NRF2、KEAP1、AKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、またはFTL)の存在及び/または発現レベルは、これらに限定されないが、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質断片、及び/または遺伝子コピー数を含む、当該技術分野で知られている任意の適切な基準に基づいて定性的または定量的に決定され得る。
本発明は、対象においてがんを診断する方法をさらに提供し、方法は、対象から得られる試料におけるそのNeh2ドメインの全部または一部の欠失を含むNRF2のタンパク質発現レベルを決定することを含み、そのNeh2ドメインの全部または一部の欠失を含むNRF2の存在は、対象をがんを有するとして特定する。いくつかの実施形態では、NRF2は、そのNeh4ドメインの全部または一部の欠失をさらに含む。
本発明は、がんを有する対象を特定する方法をさらに提供し、方法は、対象から得られる試料(例えば、腫瘍試料)におけるそのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2のmRNA発現レベルを決定することを含み、そのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2の存在は、対象をがんを有するとして特定する。いくつかの実施形態では、NRF2は、そのエクソン3の全部または一部の欠失をさらに含む。遺伝子(例えば、NRF2、KEAP1、AKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、またはFTL)の存在及び/または発現レベルは、これらに限定されないが、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質断片、及び/または遺伝子コピー数を含む、当該技術分野で知られている任意の適切な基準に基づいて定性的または定量的に決定され得る。
本発明は、がんを有する対象を特定する方法をさらに提供し、方法は、対象から得られる試料におけるそのNeh2ドメインの全部または一部の欠失を含むNRF2のタンパク質発現レベルを決定することを含み、そのNeh2ドメインの全部または一部の欠失を含むNRF2の存在は、対象をがんを有するとして特定する。いくつかの実施形態では、NRF2は、そのNeh4ドメインの全部または一部の欠失をさらに含む。
試料における本明細書に記載の様々なバイオマーカーの存在及び/または発現レベル/量は、いくつかの方法論によって分析され得、これらの多くは、当該技術分野で知られ、当業者に理解されており、免疫組織化学(「IHC」)、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液ベースアッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、インサイチュハイブリダイゼーション、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、大規模並列DNA配列決定(例えば、次世代配列決定)、NANOSTRING(登録商標)、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMAなどの、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)及び他の増幅型検出方法を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RNA-Seq、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、及び/または遺伝子発現連続分析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、及び/または組織アレイ分析によって行われ得る多種多様なアッセイのうちのいずれか1つを含むが、これらに限定されない。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al.,eds.,1995,Current Protocols In Molecular Biology,Units2(ノーザンブロッティング)、4(サザンブロッティング)、15(イムノブロッティング)、及び18(PCR分析)において見出される。Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能なものなどの多重化イムノアッセイもまた、使用され得る。
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、臨床腫瘍試料からのDNAは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Frampton et al.(Nature Biotechnology.31(11):1023-1033,2013)に記載される標的化遺伝子プルダウン配列決定方法などの、次世代配列決定方法を使用して配列決定することができる。このような次世代配列決定方法は、小試料(例えば、小コア針生検、細針吸引、及び/またはセルブロック由来)または固定試料(例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料)の使用を可能にしながら、様々な変異(例えば、挿入、欠失、塩基置換、焦点遺伝子増幅、及び/またはホモ接合性遺伝子欠失)を検出する本明細書に開示される方法のいずれかと共に使用することができる。
前述の方法のいずれにおいても、バイオマーカー(例えば、NRF2、KEAP1、AKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、またはFTL)の存在及び/または発現レベル/量は、バイオマーカーのタンパク質発現レベルを決定することによって測定される。特定の実施形態では、方法は、バイオマーカーの結合を許容する条件下で、生体試料を、バイオマーカーに特異的に結合する抗体(例えば、抗NRF2抗体)と接触させることと、抗体とバイオマーカーとの間で複合体が形成されるかどうかを検出することとを含む。このような方法は、インビトロまたはインビボ方法であり得る。タンパク質発現レベルを測定する、当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載される任意の方法を使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、フローサイトメトリー(例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS(商標)))、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫沈降、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光、放射免疫測定、ドットブロッティング、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光、質量分析法、及びHPLCからなる群から選択される方法を使用して決定される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍細胞において決定される。
いくつかの実施形態では、バイオマーカー(例えば、NRF2、KEAP1、AKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、またはFTL)の存在及び/または発現レベル/量は、バイオマーカーのmRNA発現レベルを決定することによって測定される。特定の実施形態では、遺伝子の存在及び/または発現レベル/量は、(a)試料(対象がん試料など)について遺伝子発現プロファイリング、PCR(RT-PCRなど)、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、またはFISHを行うことと、b)試料におけるバイオマーカーの存在及び/または発現レベル/量を決定することと、を含む方法を使用して決定される。一実施形態では、PCR方法は、qRT-PCRである。一実施形態では、PCR方法は、多重PCRである。いくつかの実施形態では、遺伝子発現は、マイクロアレイによって測定される。いくつかの実施形態では、遺伝子発現は、qRT-PCRによって測定される。いくつかの実施形態では、発現は、多重PCRによって測定される。
細胞におけるmRNAの評価方法は周知であり、例えば、相補的DNAプローブを使用したハイブリダイゼーションアッセイ(1つ以上の遺伝子に特異的な標識リボプローブを使用したインサイチュハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、及び関連技法など)、及び様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な相補的プライマーを使用したRT-PCR、及び他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMAなど)を含む。哺乳動物由来の試料は、ノーザン、ドットブロット、またはPCR分析を使用してmRNAについて好都合にアッセイされ得る。加えて、このような方法は、(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に調査することによって)生体試料における標的mRNAのレベルを決定することを可能にする1つ以上のステップを含み得る。
方法のいずれかのいくつかの実施形態では、バイオマーカーは、NRF2(例えば、エクソン2欠失NRF2またはエクソン2+3欠失NRF2)である。一実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、試料(患者から得られる腫瘍試料など)についてのWGS分析を行うことと、試料におけるバイオマーカーの発現レベルを決定することと、を含む方法を用いて決定される。いくつかの実施形態では、エクソン2欠失NRF2またはエクソン2+3欠失NRF2は、参照に対して決定される。いくつかの実施形態では、参照は、参照値である。いくつかの実施形態では、参照は、参照試料(例えば、対照細胞株試料、非癌患者からの組織試料、または野生型NRF2組織試料)である。
mRNA発現分析に対して追加的または代替的に、タンパク質発現などの他のバイオマーカーは、上述の方法に従って定量化され得る。例えば、本発明の方法は、試料をゲノムバイオマーカー(例えば、エクソン2欠失NRF2もしくはエクソン2+3欠失NRF2の存在、または1つ以上のNRF2標的遺伝子、例えば、AKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、もしくはFTLの上方制御)について試験することと、追加で試料をタンパク質バイオマーカー(例えば、AKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、またはFTLのうちの1つ以上のタンパク質転写物)について試験することと、を含む。
方法のいずれかのいくつかの実施形態では、DNA配列は、バイオマーカーとしての役割を果たし得る。DNAは、これらに限定されないが、PCR、エクソーム-seq(例えば、全エクソーム配列決定)、DNAマイクロアレイ分析、NANOSTRING(登録商標)、または全ゲノム配列決定を含む、当該技術分野で知られる任意の方法に従って定量化することができる。
いくつかの事例では、試料における遺伝子の発現レベルは、遺伝子の平均(例えば、平均発現または中央発現)であり、遺伝子の参照発現レベルは、参照の遺伝子の平均(例えば、平均発現または中央発現)であり、試料の遺伝子の平均は、参照の遺伝子の平均と比較される。
特定の実施形態では、第1の試料におけるバイオマーカーの存在及び/または発現レベル/量は、第2の試料における存在/不在及び/または発現レベル/量と比較して増加または上昇する。特定の実施形態では、第1の試料におけるバイオマーカーの存在/不在及び/または発現レベル/量は、第2の試料における存在及び/または発現レベル/量と比較して減少または低減する。特定の実施形態では、第2の試料は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。遺伝子の存在/不在及び/または発現レベル/量を決定するためのさらなる開示が本明細書に記載されている。
特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られたときとは異なる1つ以上の時点で得られる同じ対象または個体由来の単一の試料または組み合わされた複数の試料である。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られたときよりも早い時点で同じ対象または個体から得られる。このような参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、参照試料ががんの初期診断中に得られ、かつ試験試料がその後がんが転移性となったときに得られる場合に有用であり得る。
特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者ではない1つ以上の健常な個体由来の組み合わされた複数の試料である。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない、疾患または障害(例えば、がん)を有する1つ以上の個体由来の組み合わされた複数の試料である。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、正常組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない1つ以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、腫瘍組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない、疾患もしくは障害(例えば、がん)を有する1つ以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。
方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、上昇または増加した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載されるものなどの標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子(DNAまたはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な増加を示す。特定の実施形態では、上昇した発現とは、試料におけるバイオマーカーの発現レベル/量の増加を指し、増加は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、25倍、50倍、75倍、または100倍のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、上昇した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較した、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、または約3.25倍を超える全体的な増加を指す。
方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、低減した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載されるものなどの標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子(DNAまたはmRNA)))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な低減を指す。特定の実施形態では、低減した発現とは、試料におけるバイオマーカーの発現レベル/量の減少を指し、減少は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織におけるそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである。
B.治療方法
本発明は、がん(例えば、肺癌(例えば、扁平上皮NSCLCまたは非扁平上皮NSCLC)または頭頸部癌(例えば、HNSC))に罹患している患者を治療するための方法を提供する。いくつかの事例では、本発明の方法は、有効量のNRF2経路アンタゴニストを患者に投与することを含む。本明細書に記載されているか、またはそうでなければ当該技術分野で知られているNRF2経路アンタゴニストのいずれかが方法において使用され得る。いくつかの事例では、方法は、患者から得られる試料におけるNRF2スプライス変異体(例えば、エクソン2欠失NRF2またはエクソン2+3欠失NRF2)またはNRF2標的遺伝子の存在及び/または発現レベルを決定することと、例えば、本明細書において以下の実施例に記載されているか、当該技術分野において知られている方法のいずれかを用い、NRF2スプライス変異体(例えば、エクソン2欠失NRF2またはエクソン2+3欠失NRF2)またはNRF2標的遺伝子の存在及び/または発現レベルに基づいてNRF2経路アンタゴニストを患者に投与することと、を含む。
本発明は、がん(例えば、肺癌(例えば、扁平上皮NSCLCまたは非扁平上皮NSCLC)または頭頸部癌(例えば、HNSC))に罹患している対象を治療する方法を提供し、方法は、対象から得られる試料におけるAKR1B10、AKR1C2、SRXN1、OSGIN1、FECH、GCLM、TRIM16、ME1、KYNU、CABYR、SLC7A11、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、ABCC2、AKR1B15、NR0B1、UGDH、TXNRD1、GSR、AKR1C3、TALDO1、PGD、TXN、NQO1、及びFTLからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27個の遺伝子)の発現レベルを決定することと、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルと比較することであって、試料における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの、少なくとも1つの遺伝子の参照発現レベルに対する増加が、がんを有する対象を特定する、比較することと、対象に治療有効量の1つ以上のNRF2経路アンタゴニストを投与することと、を含む。
本発明は、がん(例えば、肺癌(例えば、扁平上皮NSCLCまたは非扁平上皮癌NSCLC)または頭頸部癌)に罹患している対象を治療する方法をさらに提供し、1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の)新たに特定されたNRF2標的遺伝子の発現レベルが決定される。新たに特定されたNRF2標的遺伝子としては、AKR1B10、AKR1C2、ME1、KYNU、CABYR、TRIM16L、AKR1C4、CYP4F11、RSPO3、AKR1B15、NR0B1、及びAKR1C3が挙げられる。
いくつかの事例では、本発明は、がん(例えば、肺癌(例えば、扁平上皮NSCLCまたは非扁平上皮癌NSCLC)または頭頸部癌)に罹患している対象を治療する方法であって、NRF2のmRNA発現レベルが、対象から得られる試料におけるそのエクソン2の全部または一部の欠失を含み、そのエクソン2の全部または一部の欠失を含むNRF2の存在が、対象をがんを有するとして特定する、方法、及び対象に治療有効量の1つ以上のNRF2経路アンタゴニストを投与する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、NRF2は、そのエクソン3の全部または一部の欠失をさらに含む。
いくつかの事例では、本発明は、がん(例えば、肺癌(例えば、扁平上皮NSCLCまたは非扁平上皮癌NSCLC)または頭頸部癌(例えば、HNSC))に罹患している対象を治療する方法であって、NRF2タンパク質が、対象から得られる試料におけるそのNeh2ドメインの全部または一部の欠失を含み、そのNeh2ドメインの全部または一部の欠失を含むNRF2の存在が、対象をがんを有するとして特定する、方法、及び対象に治療有効量の1つ以上のNRF2経路アンタゴニストを投与する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、NRF2は、そのNeh4ドメインの全部または一部の欠失をさらに含む。
前述の方法のいずれにおいても、NRF2経路アンタゴニストは、当該技術分野で知られているか、または本明細書に記載されている任意のNRF2経路アンタゴニストであり得る。
いくつかの事例では、方法は、対象に有効量の第2の治療剤(例えば、1つ以上の抗がん剤)を投与することをさらに含む。いくつかの事例では、第2の治療剤は、血管新生阻害剤、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害性剤、免疫療法、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫療法は、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGFR2抗体及び関連分子(例えば、ラムシルマブ、タニビルマブ、アフリベルセプト)、抗VEGFR1抗体及び関連分子(例えば、イクルクマブ、アフリベルセプト(VEGF Trap-Eye、EYLEA(登録商標))、及びジブ-アフリベルセプト(ziv-aflibercept)(VEGF Trap、ZALTRAP(登録商標)))、二重特異性VEGF抗体(例えば、MP-0250、バヌシズマブ(VEGF-ANG2)、及びUS2001/0236388に開示される二重特異性抗体)、抗VEGF、抗VEGFR1、及び抗VEGFR2アームのうちの2つの組み合わせを含む二重特異性抗体、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ、セバシズマブ、及びラニビズマブ)、ならびに非ペプチド小分子VEGFアンタゴニスト(例えば、パゾパニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、スチバーガ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、テラチニブ、ドビチニグ、セジラニブ、モテサニブ、スルファチニブ、アパチニブ、フォレチニブ、ファミチニブ、及びチボザニブ)である。他の実施形態では、免疫療法は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、YW243.55.S70、MDX-1105、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MEDI4736(デュルバルマブ)、MSB0010718C(アベルマブ)、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピジリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、BGB-108、またはAMP-224)である。
本明細書に記載される方法に用いられる組成物(例えば、NRF2経路アンタゴニスト)は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、経皮、動脈内、腹腔内、病変内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、髄腔内、鼻腔内、腟内、直腸内、局所、腫瘍内、腹膜、結膜下、小胞内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼内、眼窩内、経口、局所、経皮、硝子体内(例えば、硝子体内注射による)、点眼による、吸入による、注射による、移植による、注入による、持続注入による、標的細胞を直接的に浸す局所灌流による、カテーテルによる、洗浄による、クリーム中、または脂質組成物中を含む、任意の適切な方法により投与され得る。本明細書に記載の方法で利用される組成物はまた、全身または局所投与され得る。投与方法は、様々な因子(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて多様であり得る。いくつかの実施形態では、NRF2経路アンタゴニストは、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、または鼻腔内投与される。投薬は、投与が短期であるかまたは長期であるかに部分的に応じて、任意の適切な経路により、例えば、静脈内または皮下注射などの注射により得る。単回または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが、本明細書では企図される。
本明細書に記載のNRF2経路アンタゴニスト(及び追加の抗がん剤)は、良好な医療行為と一致する様式で製剤化、投薬、及び投与され得る。この文脈において考慮すべき因子としては、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、個別の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に知られている他の因子が挙げられる。NRF2経路アンタゴニストは、その必要はないが、任意に、問題の障害を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤と共に製剤化及び/または投与される。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するNrd2経路阻害剤の量、障害または治療のタイプ、及び上で考察される他の因子に依存する。これらは一般に、本明細書に記載されるものと同じ投薬量及び投与経路で、または本明細書に記載される投薬量の約1~99%、または経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
いくつかの実施形態では、方法は、対象に有効量の第2の治療剤(例えば、1つ以上の抗がん剤)を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、抗血管新生剤、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害性剤、免疫療法、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
上記のこのような併用療法は、組み合わされた投与(2つ以上の治療剤(例えば、NRF2経路アンタゴニスト及び抗がん剤)が同じかまたは別々の製剤に含まれる)及びNRF2経路アンタゴニストの投与が、追加の抗がん剤(複数可)の投与の前、それと同時、及び/またはそれに続いて発生し得る、別々の投与を包含する。一実施形態では、NRF2経路アンタゴニストの投与及び追加の抗がん剤の投与は、互いの約1ヶ月以内、または約1、2、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に発生する。
C.本発明の方法での使用のためのNRF2経路アンタゴニスト
本明細書では、対象に治療有効量のNRF2経路アンタゴニストを投与することを含む、対象においてがん(例えば、肺癌(例えば、扁平上皮NSCLC)または頭頸部癌)の進行を治療または遅延するための方法が提供される。前述の方法のいずれも、本明細書で提供されるバイオマーカーの発現レベル、例えば、腫瘍試料、例えば、腫瘍細胞を含有する生検におけるNRF2発現またはNRF2経路に関与する任意のタンパク質もしくはmRNAの発現に基づき得る。
いくつかの実施形態では、NRF2経路アンタゴニストは、小分子、例えば、NRF2またはNRF2の発現、安定性、もしくは活性を制御するタンパク質もしくは遺伝子に結合することができる小分子である。
いくつかの実施形態では、NRF2経路アンタゴニストは、NRF2アゴニストのアンタゴニストである。NRF2アゴニストの例としては、これらに限定されないが、cAMP応答配列結合タンパク質(CREB)、CREB結合タンパク質(CBP)、Maf、活性化転写因子4(ATF4)、タンパク質キナーゼC(PKC)、Jun、グルココルチコイド受容体、UbcM2、ならびにE6-APカルボキシル末端ドメイン及びE3ユビキチンタンパク質リガーゼ1(HACE1)を含有するアンキリン反復に相同するものが挙げられる。したがって、NRF2経路アンタゴニストの例としては、これらに限定されないが、表2に記載されるものなどの、CREBアンタゴニスト、CBPアンタゴニスト、Mafアンタゴニスト、ATF4アンタゴニスト、PKCアンタゴニスト、Junアンタゴニスト、グルココルチコイド受容体アンタゴニスト、UbcM2アンタゴニスト、及びHACE1アンタゴニストが挙げられる。
いくつかの実施形態では、NRF2経路アンタゴニストは、NRF2アンタゴニストのアゴニストである。NRF2アンタゴニストの例としては、これらに限定されないが、c-Myc、SUMO、KEAP1、CUL3、レチノール酸受容体α(RARα)が挙げられる。したがって、NRF2経路アンタゴニストの例としては、これらに限定されないが、表3に記載されるものなどの、c-Mycアゴニスト、SUMO、KEAP1アゴニスト、CUL3アゴニスト、及びRARαアゴニストが挙げられる。
本発明のいくつかの実施形態では、表2または3に列挙される化合物の誘導体も、NRF2経路アンタゴニストとして投与され得る。表2または3に列挙される化合物の誘導体は、親化合物とは構造が異なるが、NRF2経路をアンタゴナイズする能力を保持する小分子である。化合物の誘導体は、親化合物に対する特定の他の分子またはタンパク質とのその相互作用を変化し得る。化合物の誘導体は、塩、付加物、または親化合物の他の変異体も含み得る。本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物(例えば、表2または3に列挙される化合物のうちのいずれか1つの化合物)のいずれかの誘導体は、親化合物の代わりに使用され得る。いくつかの実施形態では、表2または3に列挙される化合物のいずれの誘導体も、肺癌などの、がんを有する対象を治療する方法に使用され得る。
いくつかの実施形態では、NRF2経路アンタゴニストは、抗体(例えば、抗NRF2抗体またはNRF2発現、安定性、もしくは活性を制御するタンパク質もしくは遺伝子、例えば、表2もしくは3に列挙される標的に対する抗体)である。いくつかの実施形態では、抗NRF2抗体は、NRF2と抗酸化剤応答配列との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、抗NRF2抗体は、NRF2と補因子(例えば、Maf、PKC、Jun、ATF4、またはCBP)との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、上記の特性のいずれかを有する既知の抗体の誘導体である。抗体の誘導体は、その親抗体に対して約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、85%、80%以下の配列同一性を有する抗体変異体を含む。アミノ酸配列同一性パーセント(%)は、上述のように、ALIGN-2によるものを含む、当該技術分野で知られる方法に従って決定される。
いくつかの実施形態では、NRF2経路アンタゴニストは、任意の下流バイオマーカーの阻害剤(例えば、遺伝子もしくはタンパク質、例えば、鉄封鎖に関与する遺伝子もしくはタンパク質(例えば、フェリチン、軽鎖ポリペプチド(FTL)、フェリチン、重鎖ポリペプチド1(FTH)、またはヘムオキシゲナーゼ1(HMOX1))、GSH利用(例えば、グルタチオンペルオキシダーゼ2(GPX2)、グルタチオンS-トランスフェラーゼα1(GSTA1)、グルタチオンS-トランスフェラーゼα2(GSTA2)、グルタチオンS-トランスフェラーゼα3(GSTA3)、グルタチオンS-トランスフェラーゼα5(GSTA5)、グルタチオンS-トランスフェラーゼμ1(GSTM1)、グルタチオンS-トランスフェラーゼμ2(GSTM2)、グルタチオンS-トランスフェラーゼμ3(GSTM3)、またはグルタチオンS-トランスフェラーゼπ1(GSTP1))、キノン解毒(例えば、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ、キノン1(NQO1))、GSH産生及び再生(例えば、グルタミン酸-システインリガーゼ、修飾因子サブユニット(GCLM)、グルタミン酸-システインリガーゼ、触媒サブユニット(GCLC)、グルタチオンレダクターゼ(GSR)、または溶質輸送体ファミリー7(アニオン性アミノ酸輸送体軽鎖、Xc-システム)、メンバー11(SLC7A11、またはXCT))、チオレドキシン(TXN)産生、再生、及び利用(例えば、チオレドキシン1、(TXN1)、チオレドキシンレダクターゼ1(TXNRD1)、またはペルオキシレドキシン1(PRDX1))、NADPH産生(例えば、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(PGD)、リンゴ酸酵素1、NADP(+)依存性細胞質性(ME1)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(NADP+)、可溶性(IDH1))、または表1のこれらの遺伝子もしくはタンパク質のいずれか)を含む。
いくつかの実施形態では、NRF2経路アンタゴニストは、(例えば、NRF2上のARE結合部位に競合的に結合することによって、AREに競合的に結合することによって、またはそうでなければ転写補因子(例えば、小Mafタンパク質)を妨害することによって)NRF2が抗酸化剤応答配列(ARE)に結合するのを阻害する化合物を含む。
いくつかの実施形態では、NRF2経路アンタゴニストは、化合物の薬理学的効果がNRF2媒介転写の下流の1つ以上の経路の下方制御を含むように、NRF2関連遺伝子のアゴニストまたはアンタゴニストを含む。このようなNRF2関連遺伝子としては、例えば、Kelch様ECH結合タンパク質1(KEAP1)、(BTBドメインを含む)外胚葉-神経皮質1(ENC1)、タンパク質キナーゼCδ(PRKCD)、タンパク質キナーゼCβ(PRKCB)、ポリアミン調節因子1(PMF1)、カリン3(CUL3)、核内因子、赤血球2(NFE2)、活性化転写因子4(ATF4)、ヘムオキシゲナーゼ1(HMOX1)、ヘムオキシゲナーゼ2(HMOX2)、ユビキチンC(UBC)、V-Mafトリ筋腱膜線維肉腫がん遺伝子ホモログK(MAFK)、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ1ファミリー、ポリペプチドA6(UGT1A6)、V-Mafトリ筋腱膜線維肉腫がん遺伝子ホモログF(MAFF)、CREB結合タンパク質(CREBBP)、V-Mafトリ筋腱膜線維肉腫がん遺伝子ホモログG(MAFG)、CAMP応答配列結合タンパク質1(CREB1)、FXYDドメイン含有イオン輸送制御因子2(FXYD2)、Junがん原遺伝子(JUN)、小ユビキチン様修飾因子2(SUMO2)、小ユビキチン様修飾因子1(SUMO1)、V-Mycトリ骨髄細胞腫ウィルスがん遺伝子ホモログ(MYC)、ζクリスタリン(キノンレダクターゼ)(CRYZ)、アルド-ケトレダクターゼファミリー7、メンバーA2(アフラトキシンアルデヒドレダクターゼ)(AKR7A2)、及びグルタチオンS-トランスフェラーゼα2(GSTA2)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、細胞におけるNRF2のユビキチン化を増加する方法が提供され、方法は、細胞をNRF2経路の阻害剤に、細胞におけるNRF2経路の阻害を可能にする条件下で接触させることを含む。NRF2の増加したユビキチン化は、例えば、既知の方法に従った、トリプシン消化後のユビキチン化NRF2の免疫親和性の増強、その後の質量分析によって決定することができる。いくつかの実施形態では、ユビキチン化の増加は、NRF2経路アンタゴニストに接触させた細胞もしくは細胞集団における野生型NRF2のユビキチン化と、NRF2経路アンタゴニストに接触させた細胞もしくは細胞集団におけるエクソン2もしくはエクソン2+3欠失NRF2のユビキチン化及び/またはNRF2経路アンタゴニストに接触させた細胞もしく細胞集団におけるエクソン2もしくはエクソン2+3欠失NRF2のユビキチン化とを比較することによって決定され得る。
本発明のいくつかの実施形態では、NRF2経路アンタゴニストは、アスコルビン酸、ブルサトール、ルテオリン、またはオクラトキシンAである。
実施例1:材料及び実験方法
A.変異及びコピー数分析
99個のNSCLC細胞株について、KRas、LKB1、KEAP1、及びNRF2の非同義変異及びコピー数データをKlijn et al.(Nat Biotechnol.33(3):306-312,2015)から入手した。13個の追加のNSCLC細胞株をコピー数分析に供した。加えて、エクソーム配列決定を104個のNSCLC細胞株に適用した。がんゲノムアトラス(TCGA)について、腫瘍変異及びコピー数データを、RソフトウェアパッケージCGDS-Rを用いてcBioPortalから検索した(Cerami et al.Cancer Discovery.2:401-404,2012、Gao et al.Sci.Signal.6:11,2013)。
B.変異体KEAP1遺伝子発現シグネチャーのRNA-seq分析及び誘導
99個のNSCLC細胞株の生のRNA-seqデータを欧州ゲノムフェノムアーカイブから検索した(アクセッション番号EGAS00001000610)(PMID:25485619)。NSCLC細胞株の各々におけるKEAP1及びNRF2の変異を表4に提供する。生のRNA-seqデータをTCGAからダウンロードし、GSNAPバージョン2013-10-10(Wu and Nacu.Bioinformatics26:873-881,2010)を用い、最大2つの不一致を許容して、ヒト参照ゲノム(GRCh37/hgI9)に整列させた(パラメータ:「-M2-n10-B2-i1-N1-w200000-E1--pairmax-rna=200000」)。遺伝子発現レベルを、各RefSeq遺伝子にマッピングされたリード数から誘導されるRPKM(標的のキロベース及び配列決定された百万リード当たりのリード)値で定量化した。DESeq Rパッケージ(PMID:20979621)を用い、差次的遺伝子発現をKEAP1変異体及びKEAP1野生型細胞株の間で測定し、倍率変化及び関連する調節されたp値として報告した。分散における(ユークリッド距離を用いる)試料及び遺伝子のウォードクラスタリングについて、安定化カウントデータを使用した。「NMF」Rパッケージを使用して関連ヒートマップを作成した。
C.スプライス変異体分析
スプライス変異体の分析を、Bioconductorプロジェクトウェブサイトから入手可能なSGSeqソフトウェアパッケージを用いて行った(Gentleman et al.Genome Biol.5:R80,2004)。エクソン及びスプライスジャンクションを、パラメータα=2、psi=0、β=0.2、γ=0.2を用いて既知のがん遺伝子の54個のゲノム遺伝子座で7,384個のTCGA試料についてBAMファイルから予測した。予測された特徴を試料にわたって統合し、エクソンを分離したエクソンビンにプロセシングした。スプライスジャンクション及びエクソンビンをゲノムワイドスプライスグラフにまとめた。2つ以上の代替スプライス変異体からなるスプライス事象をグラフから特定した。スプライス変異体をFPKM及び相対使用量Ψに関して定量化した。簡潔に、変異体の開始及び終了での相対使用量の局所的推定は、変異体と互換性である断片の割合として得た。事象開始及び終了での推定は、加重平均を用いて組み合わされ、重量は境界にわたる断片の合計数に比例した。20未満の分母での相対使用量推定をNAに設定した。変異体開始及び終了での絶対発現の局所的推定を得るために、互換性カウントnをnI(NxL)x109としてFPKMに変換し、Nは整列した断片の合計数であり、Lは有効長(互換性断片の許容される位置の数)である。TCGA試料において検出されたスプライス変異体はまた、正常ヒト組織からの2,958個の遺伝子型組織発現プロジェクト(GTEx)試料において定量化した(Consortium.Science.348:648-660,2015)。
D.がん特異的スプライス変異体の特定
(代替転写物開始または終了を含まない)内部スプライス変異体のみを考慮し、各スプライス変異体の開始及び終了は、UCSC Genome Browserウェブサイトからダウンロードされたアノテーション参照遺伝子転写物に属するエクソンを重複または拡張するのに必要であった(Pruitt et al.Nucleic Acids Res.33:D501-504,2005、Rosenbloom et al.Nucleic Acids Res.43:D670-681,2015)。保持されたイントロンを除外した。19少なくとも100個のがん試料を含んだTCGA兆候(合計6,359個のがん試料)を考慮し、(i)少なくとも1つのがん試料におけるFPKM>2と相対使用量Ψ>0.2ならびに(ii)GTEx試料の>99.9%におけるFPKM<1、ならびに(iii)GTEx試料の>97.5%におけるFPKM約0を有するスプライス変異体を選択した。FPKMベースの基準は、スプライス変異体の開始及び終了の両方で満たす必要があった。Ψを推定することができないFPKMベースの基準を満たす変異体を手動検査後に含めた。
E.標的化ペアエンドエクソーム-seqデータの分析
FoundationCORE内の全ての試料を、以前に記載のものと同様にプロセシング及び配列決定した(Frampton et al.Nat.Biotechnol.31,1023-1031,2014)。NRF2エクソン2及びエクソン2+3欠失を、2つの異なるアプローチを用いてFoundationCOREデータセット(n=58,707)にわたりスクリーニングした。
まず、一致しないリードペア及び/またはスプリットリードに基づく再構成コールを、NRF2エクソン2またはエクソン2+3の喪失の直接的証拠について調査した。このアプローチは対象の欠失の直接的証拠を提供するが、NRF2のイントロン領域は捕捉されないので、欠失は切断点がベイト領域内にある場合のみこのアプローチで発見することができる。よって、このアプローチは、切断点がイントロン-エクソン境界近くまたはエクソン内で発生するNRF2エクソン2またはエクソン2+3欠失の限られたサブセットを特定する。
第2のアプローチは、個別のベイト領域からのコピー数log比データを利用する。コピー数log比値を、各試料の特異的な腫瘍細胞性に教育されたインハウスアルゴリズムで決定した。zスコアを、NRF2における各エクソンについてのlog比をNRF2にすぐ隣接する対照多型捕捉領域(n=15、NRF2の約3MB上流及び約12MB下流から約1MB毎に等間隔)と比較して計算した。同時発生するエクソン3欠失を伴う、及び伴わないエクソン2欠失を特に調査した。これらは本明細書において対象のエクソン(EOI)と称される。(1)NRF2における非EOIではなくEOIについてのzスコアが<-2であり、(2)NRF2における非EOIからの0.2のlog比低下が計算された場合、EOI欠失をコールした。NRF2エクソン2またはエクソン2+3欠失とNRF2またはKEAP1における短い変異体との間の相互排他性を、特に肺扁平上皮細胞癌(n=1,218)内で調査した。
F.細胞培養
KMS-27(RPMI-1640)、JHH-6(Williams Media E)、HuCCT1(RPMI-1640)、及びHUH-1(DMEM)細胞はJCRBからのものであり、293(EMEM)細胞はATCCからのものであった。細胞を指定された培地において2mMのグルタミン及び10%FBSの存在下で培養した。
G.ウェスタンブロッティング
細胞溶解物を、完全EDTAフリープロテアーゼ阻害剤(Roche)及びphoSTOP(Roche)、Phosphatase Inhibitor Cocktail2(Sigma)及びPhosphatase Inhibitor Cocktail3(Sigma)ホスファターゼ阻害剤が補足されたRIPAバッファー(Sigma)で調製した。溶解物にNovexトリス-グリシン4~12%勾配ゲル(ThermoFisher)上でのランを行い、iBlotニトロセルロース(Invitrogen)上に移した。ブロットをTBST(10mMのトリスpH8、150mMのNaCI、0.1%TWEEN-20)中の5%脱脂粉乳(Merck)でプレインキュベートし、続いて抗体を含有するTBST中の5%ウシ血清アルブミン(Sigma)でインキュベートした。使用された二次抗体は、(共にGE Heathcareからの)ECL Anti-Rabbit HRP及びECL Anti-Mouse HRPであった。ブロットをChemiluminescence Substrate Kit(Protein Simple)で展開し、FluorChem HD2イメージャー(Protein Simple)で可視化した。この研究で使用された抗体は、KEAP1(Cell Signaling G1010)、NRF2(Abcam ab62352)、HSP90(Cell Signaling4877)、HDAC2(Cell Signaling5113)、β-アクチン(Sigma A2228)、HA(Roche11815016001)、及びFLAG(Sigma F2426)に対するものである。λホスファターゼはNEBからのものであり(P0753L)、ホスファターゼ阻害剤はこれらの実験では溶解バッファーから省略した。
H.細胞生存率及びDNA断片化分析
siRNAを細胞にDharmafect2試薬(ThermoFisher)及びOptiMEM(Gibco)でリバーストランスフェクトした。トランスフェクションの4日後、細胞を生存率についてCellTiter-Glo試薬(Promega)を用いて測定し、発光をEnVision Multi-label Reader(Perkin Elmer)上で検出した。siRNAを細胞にDharmafect2試薬(ThermoFisher)及びOptiMEM(Gibco)でリバーストランスフェクトした。トランスフェクションの4日後、細胞をアポトーシスについてヨウ化プロピジウム(PI)(LifeTechnologies)染色及び公表されたプロトコル(Riccardi and Nicoletti Nat.Protoc.1:1458-1461,2006)に従ったフローサイトメトリーを用いて測定した。スタウロスポリン、1μM、(Enzo)を陽性対照に染色の24時間前に添加した。NRF2エクソン2を標的とするsiRNAは、配列:5’-TGGAGTAAGTCGAGAAGTA-3’(配列番号29)及び5’-ACAACTAGATGAAGAGACA-3’(配列番号30)を有した。NRF2エクソン5を標的とするsiRNAは、配列:5’-TGACAGAAGTTGACAATTA-3’(配列番号31)及び5’-GTAAGAAGCCAGATGTTAA-3’(配列番号32)を有し、対照siRNAである非標的siRNAと共に使用した。染色された細胞をBecton Dickinson FACS Caliber装置で分析した。KEAP1を標的とするsiRNAは、Dhamaconからのものであった(L012453-00)。
DNA断片をヨウ化プロピジウム(PI)染色によって定量化し、Riccardi et al.(Nature Protocols,1:1458-1461(2006))に従ったフローサイトメトリーによって測定した。
I.Taqman分析
RNeasy Kit(Qiagen)で総細胞RNAを抽出した。High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)を用いてRNAをcDNAに変換し、Taqman Gene Expression Master Mix試薬(Applied Biosystems)を用いるTaqman Gene Expressionプライマー-プローブセット(ThermoFisher)でcDNAを増幅した。QuantStudio7Flex Real-Time PCR System上でTaqman増幅/検出を行った。使用されたプライマー-プローブセットは、それぞれNRF2エクソン2及び5を検出するためのHs00232352_ml及びHs00975961_gl(ThermoFisher)であった。使用されたNRF2標的遺伝子Taqmanプライマー-プローブセットは、全てThermoFisherからのSLC7A11(Hs00921938_ml)、SGRN(Hs00921938_ml)、NR0B1(Hs03043658_ml)、GCLC(HsOOI55249_ml)、及びGPX2(Hs01591589_ml)であった。
J.293トランスフェクション
プラスミドDNAを、製造業者プロトコルによって推奨されるLipofectamine2000(ThermoFisher)及びOptiMEM(Gibco)を用いて細胞にトランスフェクトした。溶解物をトランスフェクションの2~3日後に調製した。使用された発現プラスミドは、pRK5.NRF2、pRK5.NRF2.delta.e2、pRK5.NRF2.delta.e2,3、pRK5.NRF2.FLAG、及びpRK5.KEAP1.HAであった。
K.腫瘍異種移植片モデル
11~12週齢雌C.B-17SCID.ベージュマウス(Charles River Laboratories)の右側横腹に、マウス当たり100μlのHBSS/MATRIGEL(登録商標)(BD Biosciences)中10x106個のA549shRNA細胞または100μlのHBSS中10x106個のH441shRNA細胞を接種した。腫瘍体積が約150~250mm3に到達したとき、マウスはランダム化され、(5%スクロース中の)1mg/mlのドキシサイクリンを含有するか、または(5%スクロース単独で)ドキシサイクリンを含有しない飲料水を自由摂取した。ドキシサイクリンを週に3回置き換え、スクロースを週に1回置き換えた。式(LxWxW)/2を用いるデジタルキャリパー(Fred V.Fowler Company,Inc.)を用いて腫瘍体積を決定し、平均腫瘍体積(mm3)+/-SEMとしてプロットした。腫瘍成長阻害(TGI%)を、TGI%=100x1-(AUC治療/日)/(AUCビヒクル/日)であるように、ビヒクルに対する1日当たりのそれぞれの用量群についてのあてはめ曲線下面積(AUC)の割合として計算した。別の研究において、150~250mm3の腫瘍を有するマウスに、腫瘍を切除する前の5日間1mg/mlのドキシサイクリンを投薬し、NRF2レベルについてウェスタンブロッティングによって分析した。
L.ErbB3抗体で処理されたA549異種移植片
1日目の皮下A549腫瘍(75~144mm3)を有する雌ヌードマウス(n=10)を、4週間にわたり各週1回(qwk x4)静脈内投与されるビヒクルまたは50mg/kgのYW57.88.5(100mg/kgの負荷用量)で処理した。腫瘍を各週2回測定し、各動物をエンドポイントについてその腫瘍が1000mm3の体積に到達するか、または治療レジメンの最終日のいずれか早い方で安楽死させた。
実施例2:KEAP1及びNRF2における変異を有するNSCLC細胞株の特定
NSCLCにおけるKEAP1及びNRF2の変異、コピー数、及びヘテロ接合性の喪失(LOH)を特定するために、RNA-seq、エクソーム-seq、またはSNPアレイによってプロファイリングされた113個のNSCLC細胞株のパネルを文書化した(図1A)。KEAP1変異は29/113個の細胞株(26%)において見られ、NRF2変異は4/113個の細胞株(4%)において検出された。NCI-H661細胞株を除き、全てのKEAP1変異細胞株は、変異対立遺伝子のホモ接合性発現を示し、これは一般的にはコピーニュートラルLOHと関連付けられた。対照的に、NRF2変異はヘテロ接合性であり、LOHと関連付けられなかった。さらなる2つの細胞株(HCC1534及びNCI-HI437)は、KEAP1DNAの二対立遺伝子喪失によって検出可能なKEAP1mRNAを示さなかった。NRF2変異は、KEAP1界面領域における以前に特定されたホットスポットにあり(図1B)(Shibata et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.105:13568-13573,2008)、点変異及びインフレーム3アミノ酸欠失を含んだ。KEAP1における変異は一次配列全体に散在し(図1C)、明らかなホットスポットはほとんどなかった。しかしながら、KEAP1/NRF2ペプチド結晶構造にマッピングされる場合(Fukutomi et al.Mol.Cell.Biol.34:832-846,2014)、変異はNRF2との相互作用部位の近くのKEAP1コアβプロペラから延在するループにクラスタリングする(図1D)。
実施例3:変異体KEAP1遺伝子シグネチャーの特定
NSCLC細胞株におけるKEAP1変異の転写結果を決定するために、野生型KEAP1細胞株と比較してKEAP1変異細胞株において有意に異なって発現した遺伝子(p<0.01、絶対平均倍率変化>2)を特定した。全体的に、27個の遺伝子はKEAP1変異体細胞株において有意に上方制御され(図2A~2B)、そのうち15個は以前にChIP-seqまたはRNA-seq研究からNRF2標的遺伝子として特定されている(Chorley et al.Nucleic Acids Res.4:7416-7429,2012、Hirotsu et al.Nucleic Acids Res.40:10228-10239,2012、Malhotra et al.Nucleic Acids Res.38:5718-5734,2010)。ただ1つの遺伝子、HSPB1を、これらのカットオフを用いて有意に下方制御されたものとして特定した。
これらの27個の遺伝子の発現に基づく230個のTCGA肺腺癌の教師なしクラスタリングは、2つの主要なグループの分割をもたらした(図3A)。1つのグループは主に27個のシグネチャー遺伝子の高発現を特徴とし、43個の腫瘍を含有し、そのうちの32個(74%)はKEAP1変異体であった。低発現を特徴とする他のグループは187個の腫瘍を含有し、そのうちの179個はKEAP1野生型であった。著しく、肺扁平上皮細胞癌をクラスタリングするのに同じ遺伝子を用い、NRF2及びKEAP1変異体腫瘍はNRF2/KEAP1野生型腫瘍から区別され(図3B)、NRF2がKEAP1喪失/変異の転写結果のほとんどを媒介することを示した。興味深いことに、KEAP1またはNRF2のいずれかにおける任意の既知の変異を有さないKEAP1変異体遺伝子の高発現を示したいくつかの扁平上皮NSCLC腫瘍があった。KEAP1変異体細胞株における上方制御された27個の遺伝子のうち、プロテオームデータは細胞株のより小さなサブセットにおける17個について入手可能であった(37個の野生型KEAP1、6個の変異体KEAP1)。変異体KEAP1細胞株におけるこれらの遺伝子のmRNAの増加したレベルと一貫して、これらの17個の遺伝子のうちの1つ(低いペプチドカバレッジを有する、SLC7A11)を除く全てのタンパク質標的も、野生型細胞株に対して変異体KEAP1細胞株における増加した発現を示した(図4)。
実施例4:腫瘍試料におけるNRF2の異常スプライシングの特定
27個の候補NRF2標的遺伝子の高発現を有する腫瘍の大部分について、上昇した遺伝子発現は、KEAP1またはNRF2における変異によって説明することができる。しかしながら、KEAP1またはNRF2のいずれかにおける特徴分析された変異の不在下で候補NRF2標的遺伝子の高発現を示したいくつかの腫瘍があった。がん関連転写物変化は、考えられる駆動因子事象としてますます認識される。したがって、これらの腫瘍におけるNRF2経路活性化は全エクソーム配列決定によって認識されないスプライス変化によって駆動され得るという仮説が立てられた。54個の既知のがん遺伝子を分析し、TCGAからのがん細胞では反復的に観察されるが、GTExからの正常試料ではめったに検出されないスプライス変異体を特定した(実施例1参照)。各々少なくとも100個のがん試料を含む、19個のがんタイプを選択した(合計6,359個の試料)。54個の考慮されたがん遺伝子において、9つの反復性候補がん特異的スプライス変異体を特定した(≧2個の試料及び所与のがんタイプの試料の>1%)。がん試料と同じ検出基準を用い、正常対照ではこれらの変異体のいずれも検出することができなかった(合計2,958個の試料)。共有スプライス部位を有する関連変異体のグループ分けは、4つのがん遺伝子における5つの独立した変化をもたらした(図5)。これらの変化には、脳癌におけるEGFRvIII、肺腺癌におけるMETエクソン14スキッピング、及び結腸直腸癌におけるCTNNB1エクソン3欠失を含む、いくつかの十分に文書化された発がん性スプライス変異体が含まれた(Cho et al.Cancer Res.71(24):7587-7596,2011、Kong-Beltran et al.Cancer Res.66(1):283-289,2006、Iwao et al.Cancer Res.58(5):1021-1026,1998)。興味深いことに、NRF2における以前に特徴分析されていないスプライス変異体は、扁平上皮NSCLCを有する患者(3.3%、16/481)において頻繁に、HNSCを有する患者(1.5%、6/403)においてより低い有病率で観察され、発生した(図5A)。肺扁平上皮癌におけるNRF2スプライス変異体のより詳細な分析は、同じ患者において同時発生する2つのスプライス変異体を明らかにし、2つの代替プロモーターのうちのいずれか1つから転写されたmRNAにおけるNRF2エクソン2のスキップに対応した(2.1%、10/481)(図6)。2つの追加のスプライス変異体は、異なるセットの患者において同時発生し(1.2%、6/481)、2つの代替転写物開始のうちのいずれか1つを有するmRNAにおけるNRF2エクソン2及び3の両方(エクソン2+3)のスキップに対応した(図6)。エクソン2またはエクソン2+3を欠くNRF2スプライス変異体を発現する全ての患者はまた、エクソン2の包含を支持するスプリットリードによって証明される正常NRF2転写物の発現を示した。エクソン2及び3の両方はNRF2コード配列の一部であり、エクソン2またはエクソン2+3のスキップはN末端切断またはインフレーム欠失のいずれかを有するタンパク質アイソフォームをもたらすことが予測される(図7)。エクソン2を欠くNRF2転写物の高い反復性及びコード能力の保存は、これらのスプライス変異体が選択的利点を与える機能獲得事象を表し得ることを示す。これは、エクソン2がNeh2ドメインをコードし、扁平上皮肺癌の15%では変異される、KEAP1との相互作用を可能にするという発見によって支持される(Itoh et al.Genes Dev.13(1):76-86,1999)。
観察されたNRF2スプライス変異体がKEAP1またはNRF2の変異を有さない患者におけるNRF2経路活性化を説明することができるかを評価するために、NRF2スプライス変異体及びNRF2経路変異の同時発生を観察した。TCGAコレクションにおいて、扁平上皮肺腫瘍のうちの178個をエクソーム-seqによってプロファイリングした。このサブセットでは、エクソン2またはエクソン2+3欠失を示す10個の腫瘍(6%)は、NRF2またはKEAP1いずれかの変異を示す48個の腫瘍(27%)と相互排他的であった(図8A)。また、全てのエクソン2欠失腫瘍は、27個の候補NRF2標的遺伝子の高発現を示した(図8B)。頭頸部癌について同様の観察が行われ、5つの腫瘍(2%)におけるNRF2エクソン欠失は、26個の腫瘍(9%)におけるNRF2またはKEAP1の変異と相互排他的であった(図9A~9B)。これらの結果は、エクソン2の欠失が扁平上皮NSCLC及び頭頸部腫瘍のサブセットにおけるNRF2の活性化のための代替メカニズムを表すことを示す。重要なことに、これらの結果は、エクソーム配列決定に加えて、スプライス変化の考慮が、推定NRF2経路活性化を有するとして特定された患者の割合を、肺扁平上皮癌では27%(48/178)~33%(58/178)まで、頭頸部扁平上皮癌では9%(26/275)~11%(31/275)まで増加させたことを示す。
実施例5:細胞株におけるNRF2スプライシング欠損の実証
さらなる研究のための細胞株モデルを特定するために、RNA-seqデータにおける特定されたスプライス変異体のリード証拠をヒトがん細胞株の大パネルから分析した(Klijn et al.Nat.Biotechnol.33(3):306-312,2014に記載)。611個の細胞株のうち、共にジャンクションリードによるNRF2エクソン2のヘテロ接合性スキップの証拠を示す、1つの多発性骨髄腫細胞株KMS-27及び1つの肝細胞癌細胞株JHH-6を特定した(図10)。JHH-6及びKMS-27mRNAにおけるRT-PCRによるNRF2エクソン2スキッピングが実証された。それぞれエクソン1及びエクソン3/4に由来する一連のフォワード及びリバースプライマーを用いて(図11A)、JHH-6及びKMS-27細胞から単離されたmRNAにおけるエクソン2欠失(Δe2NRF2)が確認された(図11B)。PCR産物の配列決定は、予想されたエクソン2の欠失を確認した(図12A~12C)。RNA-seqデータに基づき、点変異は、JHH-6またはKMS-27におけるNRF2またはKEAP1のコード配列では検出されなかった(Klijn et al.Nat.Biotechnol.33(3):306-312,2014)。
NRF2/KEAP1変化は、肝細胞癌(10%)ではかなり一般的であるが、多発性骨髄腫(0%)ではまれであるので、JHH-6細胞をさらに試験した。具体的には、NRF2タンパク質のエクソン2欠失形態の発現を試験した。JHH-6細胞、ならびにKEAP1変異体HUH-1株、及び代表的な野生型KEAP1肝癌細胞株としてのHuCCT1細胞からの全細胞溶解物のウェスタンブロッティングを行った。JHH-6細胞におけるNRF2のレベルは、HUH-1細胞において見られるものと同等であり、これらは野生型KEAP1HuCCT1細胞におけるものよりはるかに高かった(図13)。また、エクソン2の欠失と一貫した、より低分子量の種は、JHH-6において検出可能であり、NFE2L2siRNAトランスフェクション後に低減し、これが実際にNRF2の形態を表すことを確認した。変化したNRF2アイソフォームは目に見えたが、KEAP1相互作用モチーフの欠如を考慮すると、より豊富ではなかったことは驚きであった。エクソン2欠失NRF2のリン酸化形態は、使用された4~12%ゲルにおいて野生型NRF2の非リン酸化形態と共遊走し得るという仮説が立てられた。実際に、JHH-6溶解物の脱リン酸化は、NRF2のエクソン2欠失形態が野生型形態よりも有意に豊富であったことを示した(図14A、中央パネル)。同様に、KMS-27細胞は、NRF2のエクソン2欠失形態を発現し、これは脱リン酸化後に見られる主要な種であった(図15)。
3つの肝癌細胞株におけるNRF2の安定性を、総タンパク質合成を無効にするシクロヘキシミドを用いて試験した。総NRF2のより正確な定量化を可能にするために、脱リン酸化溶解物を使用した。実験は、HUH-1細胞におけるNRF2と同等な、JHH-6細胞におけるΔe2NRF2の増加した安定性を示し、これらは共にHuCCT1細胞におけるNRF2より安定であった(図14A~14B)。JHH-6細胞におけるNRF2のエクソン2欠失形態はまた、HUH-1細胞と比較される場合もまた、顕著な核局在化を示した。(図16)。
JHH-6細胞におけるエクソン2の欠失がNRF2をKEAP1による制御に対して抵抗性としたかを決定するために、KEAP1ノックダウンへの応答におけるNRF2の安定性を試験した。HuCCT1細胞におけるKEAP1のノックダウンは、増加した安定性によるNRF2の増加した定常状態レベルをもたらした(図14C)。しかしながら、JHH-6細胞におけるKEAP1のノックダウンは、エクソン2欠失NRF2のレベルまたは安定性に影響を及ぼさなかった。予想通り、KEAP1のノックダウンは、KEAP1変異体HUH-1細胞株において野生型NRF2の安定性を増加させなかった(図14D)。
実施例6:NRF2上のエクソン2及び/またはエクソン2+3欠失の評価
実施例3に記載のNRF2/KEAP1遺伝子シグネチャーを利用して、16個の肝細胞癌細胞株のうち、JHH-6細胞は、RNA-seqデータから、変異体KEAP1発現株において見られるものと同様の、NRF2標的遺伝子の最高発現の1つを示すことが決定された(図17A)。同様に、調査された18個の多発性骨髄腫細胞株のうち、KMS-27細胞は、これらの遺伝子の最高発現の1つを示す(図17B)。これらの遺伝子の発現は、調査された611個の細胞株にわたる個別の標的遺伝子のzスコアの平均として計算される「NRF2標的遺伝子スコア」によって要約することができる。これは、所与の株におけるシグネチャー遺伝子の過剰発現の程度を反映する細胞株毎の単一スコアをもたらす。NRF2標的スコアは、JHH-6細胞がKEAP1変異を発現する肝癌細胞株と同様のスコアを示し(図18A)、多発性骨髄腫が(負の値によって示される)低い全体的なNRF2標的遺伝子スコアを示すにもかかわらず、KMS-27細胞が多発性骨髄腫細胞株の中で最も高いスコアを示す(図18B)ことを確認する。
次に、NRF2タンパク質の発現に対するエクソン2欠失NRF2を発現するJHH-6細胞の依存性を、野生型NRF2発現HuCCT1細胞と比較した。JHH-6細胞におけるNRF2のノックダウンは、変異体KEAP1肝細胞癌細胞株HUH-1において見られるものと同様の、細胞生存率の顕著な低下を引き起こした。対照的に、NRF2ノックダウンは、HuCCT1細胞の生存率に対してはより控えめな効果を有した(図19)。NRF2ノックダウンは全ての3つの細胞株において同等に効率的であったので、これはHuCCT1細胞におけるNRF2ノックダウン不良によるものではなかった(図20)。NRF2のノックダウンは、4つの十分に特徴分析されたNRF2標的遺伝子の減少した発現ももたらしたが、これは野生型KEAP1HuCCT1細胞株ではわずかに低減した(図21)。低下した生存率は、少なくとも部分的に、断片化DNAの増加によって測定されるアポトーシスに起因する可能性が高かった(図22)。
NRF2エクソン2の喪失がKEAP1によって制御されるNRF2の能力にどのように影響を及ぼすかを説明するために、293個の細胞における一過性発現を使用した。KEAP1は全長NRF2の発現を減少させたが、エクソン2またはエクソン2+3を欠くNRF2の発現に対してより小さい効果を有した(図23、上パネル)。全長NRF2発現に対するKEAP1の阻害効果は、予想通り、プロテアソーム阻害剤MG132によってほとんど無効化された。全長NRF2及びKEAP1は互いに相互作用し、一方でエクソン2またはエクソン2+3の欠失はNRF2に結合するKEAP1の能力を完全に無効化した(図23、下パネル)。結果として、切断されたNRF2は、野生型NRF2とは対照的に、KEAP1発現後に安定なままであったが(図24A~24B)、NRF2の切断形態はわずかに低下した固有の安定性を有するようであった。しかしながら、変化したNRF2アイソフォームは、NRF2標的遺伝子発現を増加させるそれらの能力によって判断されるように、転写活性であった(図25)。ほとんどの遺伝子は、全長NRF2と比較して、エクソン2またはエクソン2+3欠失NRF2によって同様に増加し、KEAP1過剰発現の効果に対して耐性であった。興味深いことに、エクソン2+3欠失NRF2は、GPX2発現を増加させるには不良であり、この形態のNRF2の転写活性化に微妙な相違があり得ることを示した。この観察と一貫して、GPX2に加えて実施例3に記載の27個の標的遺伝子のうちの22個は、エクソン2欠失腫瘍と比較してエクソン2+3欠失扁平上皮肺腫瘍における発現のより低い中央値を示した(図26)。
実施例7:NRF2エクソン2スプライス変化の機構的分析
KMS-27及びJHH-6についてのエクソーム-seqデータの分析は、エクソン2にマッピングするリードの減少を示し、観察された転写物変異体がゲノム変化の結果であり得ることを示す(図27A)。JHH-6及びKMS-27の全ゲノム配列決定(WGS)は、これらの細胞株が、それぞれ4,685及び2,981ヌクレオチドに及ぶ、NRF2エクソン2を囲む微小欠失を持つことを示した(図27B)。患者において因果メカニズムを調査するために、高いリードカバレッジ(>300x)を有する臨床扁平上皮NSCLC腫瘍の大コホート(n=1,218)からの標的とされるペアエンドエクソーム-seqデータを分析した。このデータセットでは、11個の腫瘍が、近くの対照領域と比較して、エクソン2またはエクソン2+3についてコピー数の減少を示した(材料及び方法、図27B)。欠失の焦点となる性質は、配列決定について標的とされる定義されたゲノム領域からlog比を調査することによって理解することができる(図28B)。一致しないリードペアを有する7個の腫瘍は、数キロベースのDNAを包含し、エクソン2またはエクソン2+3に影響を及ぼす構造変異体と一貫していた(図28A)。合計で16人の患者がNRF2エクソン2またはエクソン2+3に影響を及ぼすゲノム変化の証拠を示し、特定された事象は、この経路を活性化することが知られる、NRF2及びKEAP1における点変異またはインデルと相互排他的であった。45個の扁平上皮NSCLC腫瘍の追加コホートが分析され、これにはRNA及びDNAの両方が利用可能であった。RT-PCR分析は、隣接する正常組織と比較して腫瘍において高度に富化された、エクソン2の喪失を有する単一の患者を特定した(図29)。RNA-seq分析は、転写物変異体が特定された腫瘍において発現したが、隣接する正常組織では不在であったことを確認した(図30)。NRF2標的遺伝子の発現はまた、この経路における既知の変異を有するTCGA腫瘍と同様の程度まで上昇し、一方で隣接する正常組織はこれらの遺伝子の低発現を示した(図31)。最後に、全ゲノム配列決定は、転写物変異体がエクソン2を囲む5,233ヌクレオチドの体細胞ゲノム微小欠失の結果であることを確認した(図28C)。これらのデータは、ゲノム微小欠失がNRF2経路活性化のための臨床的に関連するメカニズムであることを示す。
これらのデータは、NRF2によって制御される遺伝子のセットが異なる組織及び状態にわたって保存されることを示す。これは、NSCLC及びHNSCの両方におけるNRF2活性化を有する腫瘍を特定するための単一の遺伝子シグネチャーの使用において実用的価値を有する(図32)。興味深いことに、このNRF2/KEAP1シグネチャーは、腫瘍においてのみ活性化される。肺及び頭頸部腫瘍についての一致した正常試料は、低いNRF2標的遺伝子活性のみを示した(図33)。これは、NRF2経路の阻害が正常組織と比較して経路脱制御を示す腫瘍において選択的な利益を有し得ることを示す。
がん原遺伝子の活性化をもたらす遺伝子内ゲノム欠失は、EGFR及びCTNNB1を含む、多数の遺伝子について以前に報告されている。このような変異体は、部分的には現在のゲノム技術の限界によって、日常的にはアッセイされていない。特に、個別のエクソンに影響を及ぼす、小さなコピー数変更を含む小さな逸脱は、単独のエクソーム-seqによって検出するのが難しい。よって、遺伝子内欠失は比較的調査されないままであり、新たな変異体はいまだに発見されている。小細胞肺癌及び成人T細胞白血病/リンパ腫の最近の研究は、全ゲノム配列決定を用いてTP73、IKZF2、及びCARD11における反復性微小欠失を特定した(George et al.Nature524,47-53:2015、Kataoka et al.Nat.Genet.47:1304-1315,2015)。本研究では、TCGAプロジェクトの一部として生成された公表されているRNA-seqデータを使用し、既知のがん遺伝子における反復性転写変化を特定した。患者コホート間の相違によって、NRF2エクソン欠失の一般的な有病率を評価するのは難しい。例えば、入手可能なRNA-seqデータ(n=481)でTCGA肺扁平上皮癌を分析する場合、我々は、NRF2エクソン2またはエクソン2+3の欠失を有する患者の3%(16/481)を特定した。体細胞変異コーリングを行うことができる、入手可能なエクソーム-seqデータ(n=178)で患者のサブセットを分析する場合、NRF2エクソン欠失を有する患者の割合は6%(10/178)であった。NRF2エクソン欠失が、推定NRF2経路活性化を有する患者の割合を、エクソーム-seq単独によるNRF2またはKEAP1における変異の評価と比較して、肺扁平上皮癌において27%(48/178)~33%(58/178)まで、頭頸部扁平上皮癌において9%(26/275)~11%(31/275)まで増加させたことを説明する(図8A及び9A)。ゲノムプロファイリングが行われた患者からの実世界の臨床試料の分析は、肺扁平上皮癌の1~2%のNRF2エクソン欠失の有病率を示した。しかしながら、可変腫瘍含有量を有する試料における単一エクソン欠失を決定するための最適化基準がまだ確立されておらず、明らかな欠失のみが考慮されたので、後者の分析は感度が不足している。それにもかかわらず、本明細書に提示される結果は、この経路の調節が、扁平上皮NSCLC及び頭頸部癌などの、特定の腫瘍兆候において頻繁に変化するという概念と一貫している。イントロンを含む完全遺伝子座の配列決定を介した、またはエクソーム及びRNA配列決定実験からのデータを組み合わせることによる既知のがん遺伝子の追加スクリーニングも行われ得る。
WGSによって特定される3つの欠失の構造の分析は切断点が異なることを示したが、各事例では欠失に隣接するゲノム領域は配列相同性を有する2~6ヌクレオチドを示した(図34)。JHH-6細胞の3’末端、5’末端、及びジャンクションリードのDNA配列は、それぞれ、配列番号61~63によって提供される。KMS-27細胞の3’末端、5’末端、及びジャンクションリードのDNA配列は、それぞれ、配列番号64~66によって提供される。原発腫瘍細胞の3’末端、5’末端、及びジャンクションリードのDNA配列は、それぞれ、配列番号67~69によって提供される。
NRF2は、点変異に加えて、ゲノム増幅を示すことが多い。興味深いことに、RT-PCR分析によるKMS-27細胞におけるNRF2欠失産物の強度は、野生型NRF2と同様であり、JHH-6細胞においてより豊富であるようだった(図13)。これはWGSリードカウントにおいても反映され、野生型対立遺伝子と比較して欠失形態のより高い存在量を示した(図27B)。これらの結果は、JHH-6細胞がSNPアレイによるNRF2遺伝子座の5コピーを有する一方でKMS-27細胞が2コピーを有するという観察と一貫している。NRF2の増幅は、扁平上皮(4.5%)及び腺腫性(2.6%)NSCLC、HNSC(12.2%)、ならびに肝臓癌(3.6%)を含む、分析されたTCGA試料において合理的な頻度であり、NRF2転写出力を増加させるメカニズムを表す。JHH-6細胞の事例では、これらのデータは、欠失対立遺伝子が優先的に増幅されており、この細胞株においてNRF2シグナル伝達を強化するさらなるメカニズムを提供することを示す。しかしながら、切断/スプライスされた対立遺伝子の優先的な増幅は原発腫瘍では観察されず、エクソン2または2+3欠失単独でクローン選択に十分なNRF2活性を提供することができることを示す。
エクソン2の欠失は、DNA結合及び転写活性化機能について機能的にインタクトな遺伝子の残部を保持しながら、KEAP1との相互作用部位を除去することによってNRF2活性を増加させる優れたメカニズムを提供する。実際に、我々の生化学分析は、エクソン2が欠失した場合にKEAP1結合のほとんど完全な喪失及び得られるNRF2の安定化を確認した(図23及び24)。腫瘍において見られるNRF2点変異について考慮する場合、ETGE高親和性結合部位を囲む変異は、KEAP1相互作用の完全な喪失をもたらし、より低い親和性のDLGモチーフにおける変異は、NRF2/KEAP1複合体を破壊するそれらの能力において様々である(Fukutomi et al.Mol Cell Biol.34(5):832-846,2014、Shibata et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.105(36):13568-13573,2008)。しかしながら、複合体を破壊しない点変異でさえも、NRF2のKEAP1媒介ユビキチン化を防止するように相互作用の性質を変更する(Shibata et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.105(36):13568-13573,2008)。エクソン2及び3の両方の欠失の事例においてKEAP1との相互作用は同様に無効化されるが、エクソン3は、CREB(cAMP応答配列結合タンパク質)結合タンパク質(CBP)への結合を介したNRF2によって転写活性化において以前に関連付けられたNeh4ドメインを含有する(Katoh et al.Genes Cells.6(10):857-868,2001)。(エクソン3に含有される)Neh4及び(エクソン4に含有される)Neh5は、CBPのリクルートにおいて相乗的に作用することが示された。これと一貫して、いくつかのNRF2標的遺伝子を誘発するΔe2+3NRF2の、Δe2NRF2またはNRF2における腫瘍関連点変異と比較して低下した能力が観察された(図25及び26)。
E3リガーゼとの相互作用ドメインを除去するヒト腫瘍において見られる欠失は、他の遺伝子でも観察されている。例えば、222個中7個の結腸直腸腫瘍は、そのE3リガーゼβ-TRCP(Hart et al.Curr.Biol.9(4):207-210,1999)の相互作用部位を除去するβ-カテニン(Iwao et al.Cancer Res.58(5):1021-1026,1998)のエクソン3を囲む小さなゲノム欠失(234-677bp)を示した。同様に、前立腺癌において見られるTMPRSS-ERG融合タンパク質の大部分は、それらをSPOPによって媒介されるユビキチン化及び分解に対して耐性にするERGの切断バージョンをコードする(An et al.Mol.Cell.59(6):904-916,2015)。
加えて、METエクソン14スキッピングをもたらす変異は、アミノ酸残基Y1003を除去し、これはCbl要件ならびにその後のユビキチン化及び下方制御に必要である。したがって、小さな遺伝子内の欠失は、腫瘍発生及び進展中に発生期のがん遺伝子が正常な分解を免れる効果的なメカニズムを表す。
実施例8:変異体KEAP1細胞におけるNRF2ノックダウン
この実施例は、異なる成長環境下でのNRF2活性の要件に対するKEAP1変異の効果の特徴分析を提供し、NRF2活性が足場非依存性条件における成長に必須であることを示す。
野生型及び変異体KEAP1及びNRF2細胞株にわたるNRF2阻害の結果を調査した。ドキシサイクリンの制御下で3つの独立したNRF2shRNAを発現する安定な細胞株、及び3つの独立した非標的化対照(NTC)を構築した。これらのNRF2shRNAは、5つのKEAP1変異体細胞株、2つのNRF2変異体細胞株、及び5つの野生型NSCLC細胞株において、ならびに不死化されたが形質転換されていない肺上皮BEAS2B細胞において、NRF2タンパク質レベルを低減するのに効果的であった(図35)。ドキシサイクリン添加後、ほとんどの細胞株の生存率は様々な程度まで減少し、KEAP1変異体細胞株が一般的には有意により大きな減少を示した(図36及び37)。NSCLC細胞株のより大きなパネルにおけるsiRNAによるNRF2のノックダウンは、細胞生存率に対する遺伝子型依存性効果を確認した(図38)。
腫瘍異種移植片におけるNRF2ノックダウンの結果を特徴分析した。dox誘発性NRF2shRNAを発現するKEAP1変異体A549細胞株及びKEAP1野生型H441細胞株を、雌SCIDマウスの横腹に移植した。両方の腫瘍においてドキシサイクリンで処理されたマウスにおいてNRF2を効果的にノックダウンした(図39及び40)。KEAP1変異体A549細胞株におけるNRF2ノックダウンは、腫瘍成長に対して劇的な効果を有し、10個中5個の腫瘍において完全な腫瘍退縮をもたらした(図41A)。対照的に、KEAP1野生型H441成長に対する効果は、より控えめであり、腫瘍成長の37%低減をもたらし、全ての動物が維持された腫瘍負荷を示した(図41B)。
異種移植片における腫瘍増殖に対するNRF2ノックダウン対プラスチック上での2D成長の間の異なる効果を理解するために、いくつかの追加の細胞培養環境を試験した。低接着プレート及び/または低酸素(0.5%)で成長させた細胞におけるNRF2ノックダウンは、プラスチック上で成長させた細胞と同様の結果を示した(図42)。対照的に、KEAP1変異体細胞株の成長は、軟寒天中(図43及び44)、マイクロパターン化プラスチックフィルム上(図45及び46)、またはメチルセルロース中(図47)で培養された場合に、著しく損なわれた。軟寒天における成長を使用して、NRF2ノックダウンの結果をより詳細に特徴分析した。NRF2のノックダウンは3つのKEAP1変異体細胞株においてコロニー形成を完全に無効にしたが、H1048及びH441、2つの野生型KEAP1NSCLC細胞株においてほとんど効果を有さなかった(図43及び44)。この経路は高いNRF2活性によって促進される生存特性を媒介することが示されたので、NRF2ノックダウンへの応答におけるグルタチオン経路の役割を評価した。還元グルタチオンの追加は一般的に全ての試験された細胞株が軟寒天においてコロニーを形成する能力を増加したが、NRF2ノックダウンの結果をレスキューすることはできなかった(図43及び44)。同様の陰性結果は、N-アセチルシステインで見られた(NAC、図48)。外因性グルタチオンは、ジクロロフルオレセイン染色によって測定されるように、細胞に侵入し、活性酸素(ROS)レベルを低減することができた(図49)。よって、NRF2活性の要件は、驚くべきことにグルタチオン合成経路に非依存性である。
NRF2応答におけるグルタチオン経路の効果をさらに調査するために、xCTグルタミン酸/システインアンチポーターの発現及び活性、グルタチオン合成における律速段階のうちの1つを監視した。SLC7A11発現は、NRF2ノックダウン後に低減し(図50)、還元グルタチオン(図52)に関連したシスチン取り込みの減少(図51)を引き起こした。NRF2ノックダウンは、ROSレベルの大幅な増加も引き起こした(図53)。SLC7A11発現及びシスチン取り込みの阻害がNRF2ノックダウン後に減少した生存率の一因であったかを決定するために、xCT機能はエラスチンを用いて開始し、これはシスチン取り込みを阻害し(図51)、酸化ストレスを増加した(図53)。しかしながら、これは、KEAP1変異体細胞株A549(図54)またはほとんどの他のKEAP1変異体細胞株(図55)の生存率を減少するのに十分ではなかった。エラスチン及びNRF2ノックダウンの組み合わせは、しかしながら、生存率の劇的な減少をもたらした(図54)。同様に、グルタチオンシンターゼ阻害剤ブチオニンスルホキシミン(BSO)またはグルタミナーゼ阻害剤BPTESも、KEAP1変異体細胞株について優先的な毒性を示さなかった(図56及び57)。これらの結果は、グルタチオンの補充がNRF2ノックダウンによって誘発される致死性をレスキューするのに十分ではなく、グルタチオンの枯渇もKEAP1変異体細胞株を殺滅するのに十分ではなかったことを示す。
NRF2活性化またはKEAP1喪失の結果としてどの経路が活性化されたかを理解するために、CRISPRスクリーンは、A549細胞においてNRF2ノックダウン後に減少及び/またはKEAP1変異体NSCLC細胞株のパネルにおいて上昇した遺伝子のライブラリーを用いて行われた。2D、3D、及び異種移植条件においてNRF2ノックダウン後に異なる結果が観察されたので、スクリーンは、個別の依存性が特定され得るかを決定するために全ての3つの環境下で行われた。全ての3つの条件について15日時点で、全ての3つのスクリーンは同様に機能し、gRNAは有意なドロップアウトを示す少数の遺伝子のみを表した(図58~60)。NFE2L2及びその結合パートナー、MAFGは、最も有意な遺伝子の中にあり、スクリーンが予想通りに機能したことを示した。ペントースリン酸経路遺伝子PGD、G6PD、及びTKT、既知のNRF2標的遺伝子も、強いドロップアウトを示した。スクリーンにおける他の強いヒットは、2つの成長因子受容体遺伝子、IGF1R及びERBB3、ならびにレドックスシグナル伝達リレーの3つの成分をコードする遺伝子、PRDX1、TXN、及びTXNRD1であった。
ErbB3の発現は、A549細胞におけるNRF2ノックダウン後に減少した(図58~60)。腫瘍異種移植モデルにおけるYW57.88.5での処理は、A549増殖にはErbB3が必要であることを示した(図61)。
IGF1Rの発現は、KEAP1野生型NSCLC細胞株に対するKEAP1変異体NSCLC細胞においてより大きかった。KEAP1変異体及びKEAP1野生型細胞に対するIGF1R阻害の効果を試験するために、細胞株をリンシチニブ、有効な選択的IGF1R小分子阻害剤で処理した。リンシチニブは、3つの野生型及び3つの変異体KEAP1NSCLC細胞株において試験された場合、増殖に対する効果をほとんど示さなかった。しかしながら、この化合物は、軟寒天におけるA549細胞のコロニー成長を阻害するのに非常に有効であり、約20nMのIC50を有した。また、NSCLC細胞株の大パネルに対して試験された場合、KEAP1変異体細胞株ではこの化合物の軟寒天における選択的成長阻害があるようであった。足場非依存性条件下で成長させた場合のKEAP1変異体細胞株に対する同様の選択的効果は、独立したIGF1R阻害剤NVP-AEW541でも見られた(図62)。
よって、IGF1R及びErbB3を介してシグナル伝達する成長因子は、KEAP1変異体細胞の成長の有意なメディエーターである。
他の実施形態
前述の発明は、明確な理解のために例証及び実施例によっていくらか詳細に記載されているが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。