JP7050175B2 - 医療機器 - Google Patents
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Description
本発明の一形態は、中空コイルを備える医療機器であって、前記中空コイルは、前記医療機器の基端側から前記医療機器の先端側に向かってコイル外径が小さくなるテーパー部と、前記テーパー部と、前記中空コイルの前記先端側の端部との間に設けられ、コイル外径が一定の第1定径部と、を有しており、前記テーパー部は、隣接する素線が互いに接触する程度に密に巻かれた密巻となっており(隣接する素線が互いに接触しない程度に疎に巻かれた疎巻のテーパー部が圧縮されて、前記密巻となった場合を除く)、前記基端側から前記先端側に向かうにつれてコイル外径の減少度が小さくなるように形成されている。
このような形態であれば、テーパー部は、一方の端部側から他方の端部側に向かうにつれてコイル外径の減少度が小さくなるように形成されているため、テーパー部付近において曲げ剛性の剛性ギャップが生じにくい。よって、この中空コイルを用いた医療機器であれば、人体の血管や消化器官に挿入した際に、中空コイルのテーパー部付近に応力が集中しにくくなり、キンクの発生を抑制できる。
その他、本発明は、以下のような形態として実現することも可能である。
図1は、第1実施形態の中空コイル1の全体構成を例示した説明図である。図2は、中空コイル1における図1のA-A断面を例示した図である。中空コイル1は、例えば、ダイレータや、ガイドワイヤ、カテーテル、内視鏡などの医療機器の一部に用いられる螺旋構造体であり、中空で略円筒形状の外形を有している。以下では、図1の左側(先端側開口部17側)を中空コイル1の「先端側」と呼び、図1の右側(基端側開口部19側)を中空コイル1の「基端側」と呼ぶ。
中空コイルは複数の素線を束ねたものと考えることができる。従って、中空コイルの曲げ剛性EIは、中空コイルを構成する素線の条数N[本]と素線の断面二次モーメントIwに比例する。丸形断面を有する素線の断面二次モーメントIwは、下記の式(1)によって表すことができる。
ここで、dは素線径[mm]を表す。
ここで、αは係数を表し、dは素線径[mm]を表し、Nは素線の条数[本]を表し、Mはコイルの単位長さあたりの素線長さを表す。
ここで、βは係数を表し、dは素線径を表し、Nは条数を表し、Pはコイルピッチを表し、Rは1ピッチあたりの素線長さを表す。
コイルピッチPは、複数の素線から成る中空コイルにおいて、軸線方向における同一素線間の距離(1ピッチの大きさ)である。1ピッチあたりの素線長さRは、中空コイルを構成する1本の素線が中空コイルの周方向に沿って巻き回されて1ピッチを形成するのに必要な長さである。
図4~9を用いて、中空コイルのテーパー部の曲げ剛性について説明する。ここでは、テーパー部の形状が異なる2種類の中空コイルの曲げ剛性の違いからテーパー部の形状と曲げ剛性との関係について説明する。2種類の中空コイルのうちの一方は、本実施形態の中空コイルであり、他方は、比較例としての中空コイルである。
従って、上述したように、中空コイルの曲げ剛性EIは、コイルピッチPと1ピッチあたりの素線長さの逆数1/Rの積に比例することから、比較例の中空コイルでは、図6に示すように、細径部及び太径部の曲げ剛性EIは一定であり、細径部の曲げ剛性EIは、太径部の曲げ剛性EIよりも高くなる。また、テーパー部の曲げ剛性EIは、基端側(太径部側)から先端側(細径部側)に向かうに連れて、下に凸の曲線状に増加する、即ち、反比例の正側の曲線状(双曲線の正側の曲線状)となる。言い換えれば、テーパー部では、基端側から先端側に向かうに連れて、曲げ剛性EIの増加度が大きくなる。
従って、本実施形態の中空コイルでは、コイルピッチPと1ピッチあたりの素線長さの逆数1/Rの積は、細径部及び太径部では一定であり、細径部の方が太径部よりも大きくなる。テーパー部では、基端側(太径部側)から先端側(細径部側)に向かうに連れて、略直線状に増加すると考えられる。この結果、上述したように、中空コイルの曲げ剛性EIは、コイルピッチPと1ピッチあたりの素線長さの逆数1/Rの積に比例することから、図9に示すように、本実施形態の中空コイルでは、細径部及び太径部の曲げ剛性EIは一定となり、細径部の曲げ剛性EIは、太径部の曲げ剛性EIよりも高くなる。テーパー部の曲げ剛性EIは、基端側から先端側に向かうに連れて、略直線状に増加する。このように、本実施形態の中空コイルによれば、曲げ剛性を略線形形状にすることができる。なお、本実施形態のテーパー部の曲げ剛性は、概ね線形形状となっていればよく、図9のように、全体が線形形状となっている必要はない。また、例えば、本実施形態において、テーパー部の曲げ剛性が、テーパー部と細径部との境界付近を含む一部のみで線形形状になっている構成としてもよい。これらの場合であっても、テーパー部と細径部との境界付近における剛性ギャップの発生を抑制できる。
図10~13を用いて、上述の式(2)のように中空コイルの曲げ剛性EIがコイルの単位長さ辺りの素線長さMに反比例することについて説明する。ここでは、中空コイルの単位長さ辺りの素線長さMと中空コイルの曲げ剛性EIとの関係を明らかにするために、コイルピッチの異なる5つの中空コイルのサンプル1~5に対して曲げ試験をおこなった。
ここで、EIは、サンプルの中空コイルの曲げ剛性を表す。
以上説明した、本実施形態の中空コイル1によれば、テーパー部12は、コイル外径が相対的に大きい基端側からコイル外径が相対的に小さい先端側に向かうにつれてコイル外径の減少度が小さくなるように形成されている(図3)。これにより、テーパー部の曲げ剛性をより線形形状に近づけることができ、テーパー部12と細径部11との境界付近において曲げ剛性の剛性ギャップを生じにくくすることができる(図9)。よって、本実施形態の中空コイル1を用いた医療機器であれば、人体の血管や消化器官に挿入した際に、中空コイル1のテーパー部12付近に応力が集中しにくくなり、キンクの発生を抑制できる。
図14は、第2実施形態のダイレータ2の全体構成を例示した説明図である。ここでは、第1実施形態の中空コイル1(図1)を用いたダイレータについて説明する。第2実施形態のダイレータ2は、中空コイル20と、コネクタ200とを備えている。中空コイル20は、第1実施形態の中空コイル1(図1)と同様の構成を備えている。すなわち、中空コイル20は、先端側から基端側に向かって順に、細径部21と、テーパー部22と、太径部23とを有している。細径部21、テーパー部22、および、太径部23の各構成は、第1実施形態の中空コイル1(図1)の細径部11、テーパー部12、および、太径部13と同様であるため説明を省略する。
図15は、第3実施形態のダイレータ3の全体構成を例示した説明図である。第3実施形態のダイレータ3は、第2実施形態のダイレータ2(図14)と比較して、中空コイルの先端側の形状が異なる。第3実施形態のダイレータ3は、中空コイル30と、コネクタ300と、先端部材310とを備えている。中空コイル30は、第1実施形態の中空コイル1(図1)と同様に、テーパー部32と、太径部33とを有している。一方、中空コイル30は、第1実施形態の中空コイル1(図1)と異なり、細径部を有していない。テーパー部32、および、太径部23の各構成は、第1実施形態の中空コイル1(図1)のテーパー部12、および、太径部13と同様であるため説明を省略する。
図16は、第4実施形態のガイドワイヤ4の全体構成を例示した説明図である。ここでは、第1実施形態の中空コイル1(図1)を用いたガイドワイヤについて説明する。第4実施形態のガイドワイヤ4は、中空コイル40と、コアシャフト410とを備えている。
中空コイル40は、第1実施形態の中空コイル1(図1)と同様の構成を備えている。すなわち、中空コイル40は、基端側が太径で先端側が細径とされた先細りした長尺形状の外径を有しており、先端側から基端側に向かって順に、細径部41と、テーパー部42と、太径部43とを有している。細径部41、テーパー部42、および、太径部43の各構成は、第1実施形態の中空コイル1(図1)の細径部11、テーパー部12、および、太径部13と同様であるため説明を省略する。
図17は、第5実施形態のガイドワイヤ5の全体構成を例示した説明図である。第5実施形態のガイドワイヤ5は、第4実施形態のガイドワイヤ4(図16)と比較して、中空コイルの先端側および基端側の形状が異なる。第5実施形態のガイドワイヤ5は、中空コイル50と、コアシャフト510とを備えている。中空コイル50は、第1実施形態の中空コイル1(図1)と同様にテーパー部52を有している。一方、中空コイル50は、第1実施形態の中空コイル1(図1)と異なり、細径部および太径部を有していない。テーパー部42の構成は、第1実施形態の中空コイル1(図1)のテーパー部12と同様であるため説明を省略する。
図18は、第6実施形態のガイドワイヤ6の全体構成を例示した説明図である。第6実施形態のガイドワイヤ6は、第4実施形態のガイドワイヤ4(図16)と比較して、中空コイルの形状が異なり、中空コイルがコアシャフトの全体を覆っている。第6実施形態のガイドワイヤ6は、中空コイル60と、コアシャフト610とを備えている。中空コイル60は、第1実施形態の中空コイル1(図1)と同様の構成を備えている。すなわち、中空コイル60は、基端側が太径で先端側が細径とされた先細りした長尺形状の外径を有しており、先端側から基端側に向かって順に、細径部61と、テーパー部62と、太径部63とを有している。細径部61、テーパー部62、および、太径部63の各構成は、第1実施形態の中空コイル1(図1)の細径部11、テーパー部12、および、太径部13と同様であるため説明を省略する。
図19は、第7実施形態の中空コイル7の部分構成を例示した説明図である。図19では、中空コイル7の細径部71、テーパー部72、太径部73を含む一部分が拡大表示されている。第7実施形態の中空コイル7は、第1実施形態の中空コイル1(図1)と比較すると、テーパー部の形状が異なる。第7実施形態のテーパー部72は、基端側(太径部73側)から先端側(細径部71側)に向かってコイル外形が曲線状(放物線状)に減少しておらず、傾斜の異なる2種類の直線状に減少している。
図20は、第8実施形態の中空コイル8の部分構成を例示した説明図である。図20では、中空コイル8の細径部81、テーパー部82、太径部83を含む一部分が拡大表示されている。第8実施形態の中空コイル8は、第1実施形態の中空コイル1(図1)と比較すると、テーパー部の形状が異なる。第8実施形態のテーパー部82は、基端側(太径部83側)から先端側(細径部81側)に向かってコイル外形が曲線状(放物線状)に減少しておらず、段々状に減少している。
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
第1実施形態の中空コイル1は、テーパー部12の曲げ剛性が一方の端部側から他方の端部側に向かって線形変化するものとして説明した(図9)。しかし、テーパー部12の曲げ剛性は、必ずしも一方の端部側から他方の端部側に向かって全体が線形変化しなくてもよい。すなわち、テーパー部12は、基端側から先端側に向かうにつれてコイル外径の減少度が小さくなるように形成されていれば、曲げ剛性を線形に近づけることができ、曲げ剛性を線形に近づけることができれば、剛性ギャップの発生を抑制できる。ただし、テーパー部12は、曲げ剛性が線形変化するように形状が醸成されている方が、剛性ギャップの発生をより抑制することができるためより好ましい。
第1実施形態では、テーパー部12は、基端側から先端側に向かうにつれてコイル外径の減少度が順に必ず小さくなるように形成されているものとして説明した。しかし、テーパー部12は、基端側から先端側に向かうにつれてコイル外径の減少度が概ね順に小さくなるように形成されていればよく、基端側から先端側に向かってコイル外径の減少度が小さくなっていない部分を有していてもよい。
第1実施形態では、細径部11および太径部13のコイル外径は一定であると説明した。しかし、細径部11および太径部13のコイル外径は、一定ではなく一部においてコイル外径が変化していてもよい。また、細径部11は、中空コイル1においてコイル外径が最小となっていなくてもよい。また、太径部13は、中空コイル1においてコイル外径が最大となっていなくてもよい。また、中空コイル1は、細径部11および太径部13の少なくとも一方を備えていなくてもよい。
第1実施形態では、細径部11、テーパー部12、および、太径部13のそれぞれの素線径は、いずれも一定であり、互いに素線径が等しいるものとして説明した。しかし、テーパー部12、および、太径部13のそれぞれの素線径は、それぞれ一定でなくてもよいし、互いに素線形が異なっていてもよい。すなわち、素線15は、一部において素線径が変化していてもよい。また、素線15は、中空であってもよいし、円形以外の断面形状を有していてもよい。
第1実施形態では、テーパー部12は、基端側から先端側に向かうにつれてコイルピッチが大きくなるように形成されているものとした。しかし、テーパー部12のコイルピッチは全体にわたって一定であってもよい。また、テーパー部12のコイルピッチは、細径部11または太径部13のコイルピッチと等しくてもよい。また、太径部13のコイルピッチは、細径部11のコイルピッチよりも小さいものとした。しかし、太径部13のコイルピッチは、細径部11のコイルピッチと等しくてもよい。このような構成とした場合、コイルピッチの変化による剛性ギャップの発生を抑制できる。具体的には、上述の式(4)に示すように、テーパー部12の曲げ剛性EIは、コイルピッチに比例する。そのため、テーパー部12のコイルピッチに変化があるとテーパー部12の曲げ剛性も変化し剛性ギャップが生じやすくなる。よって、この構成によれば、コイル外径の変化以外の要素による曲げ剛性の変化をさらに抑制できる。
第1実施形態の中空コイル1は、10本の素線によって形成されるものとして説明した。しかし、中空コイル1は、2~9本の素線、または、10本よりも多い素線を撚り合わせた中空撚線コイルであってもよし、1本の素線を螺旋状に巻いて円筒形状に形成した単コイルであってもよい。
第1実施形態の素線15は、ステンレス合金以外の金属によって形成されていてもよい。例えば、素線15は、例えば、ニッケル-チタン合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等の放射線透過性合金、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)等の放射線不透過性合金で形成することができる。また、素線15は、上記以外の公知の材料によって形成されていてもよい。
第2~3実施形態のダイレータでは、テーパー部は、ダイレータの基端側から先端側に向かってコイル外形が小さくなる向きに形成されている。しかし、テーパー部は、ダイレータの先端側から基端側に向かってコイル外形が小さくなる向きに形成されていてもよい。第4~6実施形態ガイドワイヤにおいても同様に、テーパー部は、ガイドワイヤの先端側から基端側に向かってコイル外形が小さくなる向きに形成されていてもよい。
2、3…ダイレータ
4、5、6…ガイドワイヤ
11、21、41、61、71、81…細径部
12、22、32、42、52、62、72、82…テーパー部
13、23、33、43、63、73、83…太径部
15、25、35…素線
16…内腔
17、27、317、…先端側開口部
19、209、309…基端側開口部
200、300…コネクタ
310…先端部材
410、510、610…コアシャフト
421、521、621…先端接合部
425、525、625…基端接合部
Claims (6)
- 中空コイルを備える医療機器であって、
前記中空コイルは、
前記医療機器の基端側から前記医療機器の先端側に向かってコイル外径が小さくなるテーパー部と、
前記テーパー部と、前記中空コイルの前記先端側の端部との間に設けられ、コイル外径が一定の第1定径部と、を有しており、
前記テーパー部は、隣接する素線が互いに接触する程度に密に巻かれた密巻となっており(隣接する素線が互いに接触しない程度に疎に巻かれた疎巻のテーパー部が圧縮されて、前記密巻となった場合を除く)、前記基端側から前記先端側に向かうにつれてコイル外径の減少度が小さくなるように形成されている
ことを特徴とする医療機器。 - 請求項1に記載の医療機器において、
前記テーパー部における前記コイル外径の減少度は、前記テーパー部の少なくとも一部の区間において曲げ剛性が線形変化するように設定されている
ことを特徴とする医療機器。 - 請求項1または請求項2に記載の医療機器において、
前記中空コイルは、さらに、前記テーパー部と、前記中空コイルの前記基端側の端部との間に、コイル外径が一定の第2定径部を有している
ことを特徴とする医療機器。 - 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の医療機器において、
前記テーパー部は、外径が一定の素線によって形成されている
ことを特徴とする医療機器。 - 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の医療機器であって、
前記医療機器は、ダイレータであり、さらに、
前記中空コイルの基端に接続されるコネクタを備える
ことを特徴とする医療機器。 - 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の医療機器であって、
前記医療機器は、ガイドワイヤであり、さらに、
少なくとも一部が前記中空コイルの内側に配置されるコアシャフトと、
前記コアシャフトの先端と、前記中空コイルの先端とが接合される先端接合部と、
前記コアシャフトと、前記中空コイルの基端とが接合される基端接合部と、を備える
ことを特徴とする医療機器。
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