JP7049614B2 - 排気ガス浄化用触媒の設計方法及び排気ガス浄化用触媒 - Google Patents

排気ガス浄化用触媒の設計方法及び排気ガス浄化用触媒 Download PDF

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本発明は、排気ガス浄化用触媒の設計方法及び排気ガス浄化用触媒に関するものである。
従来より、内燃機関の排気ガス浄化用触媒として、Pt、Pd、Rh等の貴金属と、それらを支持する無機酸化物から構成される触媒が知られている(例えば特許文献1,2参照)。
特開2005-161143号公報 特開2017-006905号公報
ところで、世界的に環境問題への意識が高まる中、排ガス中の有害成分をより一層低減していく必要がある。また、希少資源である貴金属の使用量も低減する必要がある。最小限の貴金属量で最大限の浄化性能を発揮させるためには、貴金属上での反応を素反応レベルで詳しく理解し、触媒の設計を行うことが重要である。
そこで本発明では、最小限の貴金属量で最大限の浄化性能を発揮させることができる排気ガス浄化用触媒の設計方法及び排気ガス浄化用触媒を提供することを課題とする。
ここに開示する第1の技術に係る排気ガス浄化用触媒の設計方法は、触媒金属として複数のRh原子を有するRhナノ粒子を含有する排気ガス浄化用触媒の設計方法であって、密度汎関数理論を用いて前記Rhナノ粒子のモデルを作成し、構造最適化を行って前記Rhナノ粒子の構造安定化エネルギー(A)を算出するA算出ステップと、密度汎関数理論を用いて排気ガスに含まれる吸着成分のモデルを作成し、構造最適化を行って前記吸着成分の構造安定化エネルギー(B)を算出するB算出ステップと、密度汎関数理論を用いて前記Rhナノ粒子の所定のサイトに前記吸着成分を吸着させてなる複合体のモデルを作成し、構造最適化を行って前記複合体の構造安定化エネルギー(C)を算出するC算出ステップと、下記式(1)に従って、前記吸着成分の吸着エネルギー(D)を算出するD算出ステップと、前記吸着エネルギー(D)の算出結果に基づいて、前記Rhナノ粒子の反応活性点(RC)となる前記サイトを推定するRC推定ステップと、所定の原子数のRh原子を用いて1つ以上のRhナノ粒子を形成すると仮定した場合に、全Rhナノ粒子における前記反応活性点(RC)となる前記サイトの合計数が所定数以上形成されるように、前記Rhナノ粒子の構造を定める構造決定ステップとを備えたことを特徴とする。
D=C-(A+B) ・・・(1)
本技術によれば、密度汎関数理論を利用して反応活性点となるサイトを推定し、全Rhナノ粒子における当該サイトの合計数が所定数以上形成されるように1つのRhナノ粒子の構造を定めることで、触媒活性の優れた排気ガス浄化用触媒をもたらすことができる。
第2の技術は、第1の技術において、前記Rhナノ粒子は、表面に(111)面と(100)面とを有する単結晶であり、前記Rhナノ粒子の所定の前記サイトは、前記(111)面又は前記(100)面により形成された面サイト、互いに隣り合う前記(111)面及び前記(100)面の境界により形成された辺サイト、並びに複数の前記辺サイトの交点により形成された角サイトであることを特徴とする。
本技術によれば、面サイト、辺サイト、及び角サイトにおける吸着エネルギー(D)を比較することで、反応活性点となるサイトを推定し、当該推定結果に基づいて触媒活性の優れた排気ガス浄化用触媒を設計することができる。
第3の技術は、第2の技術において、前記反応活性点(RC)となる前記サイトは、前記角サイトであることを特徴とする。
本技術によれば、角サイトは、面サイト及び辺サイトと比較して、吸着エネルギー(D)が大きくなるから、角サイトが反応活性点となるサイトとすることができ、角サイトが最も多く形成されるように、Rhナノ粒子の構造を定めることで、触媒活性の優れた排気ガス浄化用触媒をもたらすことができる。
第4の技術は、第3の技術において、前記Rhナノ粒子の前記構造は、前記Rhナノ粒子の最大径及び前記角サイトの数であり、前記Rhナノ粒子の最大径は、1nm以上2.3nm以下であり、前記角サイトの数は、10個以上30個以下であることを特徴とする。
本技術によれば、Rhナノ粒子の最大径及び角サイトの数を上記範囲とすることで、Rhナノ粒子の反応活性点を最大限多くすることができ、触媒活性の優れた排気ガス浄化用触媒をもたらすことができる。
第5の技術は、第1乃至第4の技術のいずれか一において、前記吸着成分は、O原子、CO分子及びNO分子の群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。
Rhを触媒とするNOx浄化反応には、NO分子とCO分子との反応、特にNO分子の解離反応、CO分子とO原子によるCO生成反応、及びN原子同士によるN生成反応が素反応として関わっていると考えられる。本技術によれば、これらの反応に関わるO原子、CO分子及びNO分子のRhナノ粒子への吸着を評価することで、Rhを触媒とするNOx浄化反応における反応活性点を明らかとして、優れた触媒性能をもつ排気ガス浄化用触媒をもたらすことができる。
第6の技術は、第1乃至第の技術のいずれか一において、前記吸着成分は、複数の原子を備えた分子であり、前記構造最適化された前記複合体における前記吸着成分の前記分子内の原子間距離(T)を算出するT算出ステップをさらに備え、前記RC推定ステップで、前記吸着エネルギー(D)の算出結果と前記原子間距離(T)の算出結果とに基づいて、前記反応活性点(RC)となる前記サイトを推定することを特徴とする。
また、第7の技術は、第6の技術において、前記複数の原子を備えた分子は、CO分子及びNO分子の少なくとも一方であることを特徴とする。
本技術によれば、吸着成分の原子間距離を評価することで、Rhを触媒とするNOx浄化反応の反応機構の推測を行うことができ、当該推測に基づいて反応活性点に富む排気ガス浄化用触媒を設計することができる。
の技術は、第1乃至第の技術のいずれか一において、前記Rhナノ粒子は、サポート材に担持されていることを特徴とする。
本技術によれば、Rhナノ粒子がサポート材に担持されていることで、Rhナノ粒子の分散性を向上させるとともに、熱によるシンタリングを抑制して排気ガス浄化用触媒の耐久性を向上させることができる。
の技術は、第1乃至第の技術のいずれか一において、前記排気ガス浄化用触媒は、エンジンの排気ガスを浄化するためのものであることを特徴とする。
本技術によれば、エンジンの排気ガスを効果的に浄化することができる。
以上述べたように、本発明によると、密度汎関数理論を利用して反応活性点となるサイトを推定し、全Rhナノ粒子における当該サイトの合計数が所定数以上形成されるように1つのRhナノ粒子の構造を定めることで、触媒活性の優れた排気ガス浄化用触媒をもたらすことができる。
排気ガス浄化用触媒の一例を概略的に示す図である。 本発明の実施形態1に係る排気ガス浄化用触媒の設計方法を説明するためのフローチャートである。 Rhナノ粒子モデルの一例を示す図である。 図2のRhナノ粒子モデルの各サイトにおけるCO及びOの吸着エネルギーを示すグラフである。 図2のRhナノ粒子モデルの各サイトにおけるNOの吸着エネルギーを示すグラフである。 本発明の実施形態2に係る排気ガス浄化用触媒の設計方法を説明するためのフローチャートである。 吸着成分COについて、各サイトへの吸着エネルギーとC-O原子間距離との関係を示すグラフである。 吸着成分NOについて、各サイトへの吸着エネルギーとN-O原子間距離との関係を示すグラフである。 過渡NOx浄化性能試験に用いた評価ガスの時間毎の各成分濃度を示すグラフである。 実施例及び比較例の排気ガス浄化用触媒について、過渡NOx浄化性能を示すグラフである。 比較例の排気ガス浄化用触媒について、エージング前のRh含有CeZr系複合酸化物粒子のTEM像である。 比較例の排気ガス浄化用触媒について、エージング後のRh含有CeZr系複合酸化物粒子のTEM像である。 実施例の排気ガス浄化用触媒について、エージング前のRh含有CeZr系複合酸化物粒子のTEM像である。 実施例の排気ガス浄化用触媒について、エージング後のRh含有CeZr系複合酸化物粒子のTEM像である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
(実施形態1)
<排気ガス浄化用触媒>
実施形態1に係る排気ガス浄化用触媒は、自動車用エンジン等の内燃機関の排気ガス通路に配設され、排気ガスに含まれる浄化成分を浄化するための触媒である。具体的には、例えば、浄化成分として排気ガスに含まれるCO、HC及びNOxを同時に浄化する三元触媒等が挙げられる。
図1に、本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒100(以下、単に「触媒100」と称することがある。)の一例を示している。同図において、担体としての排気ガス通路壁99には、層構造の触媒100が形成されている。
図1に示すように、触媒100は、Rh含有CeZr系複合酸化物粒子101と、Rh含有Ce非含有Zr系複合酸化物粒子102と、活性アルミナ粒子103と、これらの粒子間に介在するバインダ粒子105とを備えている。
Rh含有CeZr系複合酸化物粒子101は、CeZr系複合酸化物粒子114(サポート材)の表面及び内部にRhナノ粒子11を含有する触媒材である。Rhナノ粒子11は、触媒金属としての複数のRh原子を有するナノ粒子である。CeZr系複合酸化物は、CeZr系複合酸化物は、酸素吸蔵放出材であり、Ceの価数変化を伴う反応が可逆的に進行することにより排気ガス中の酸素を吸蔵して活性酸素として放出する。このようなCeZr系複合酸化物に触媒金属としてのRhを含有させることにより、RhがHC、CO及びNOxの浄化に有効に働く空燃比ウインドウが拡大する。また、Rhナノ粒子11がCeZr系複合酸化物粒子114に担持されていることで、Rhナノ粒子11の分散性を向上させるとともに、熱によるシンタリングを抑制して触媒100の耐久性を向上させることができる。CeZr系複合酸化物は、Ceに加え、さらにCe以外の希土類金属を含有してもよい。Ce以外の希土類金属は、例えばNd,Y,La,Scなどであり、特に好ましくは、Nd,Yである。
Rh含有Ce非含有Zr系複合酸化物粒子102は、Ce非含有Zr系複合酸化物粒子115の表面及び内部に触媒金属としてのRh116を含有させた触媒材である。Ce非含有Zr系複合酸化物は、Ceを含有しないZr系複合酸化物である。Zr系複合酸化物は、Ce以外の希土類金属をさらに含むことにより、表面塩基性を有するようになり、NOxの吸着性が向上する。従って、このようなZr系複合酸化物に、触媒金属としてRh116を含有させることにより、NOxの浄化性能を向上させることができる。なお、Rh116はZr系複合酸化物粒子115に含浸担持させてもよいし、ドープさせてもよい。また、Ce以外の希土類金属は、例えばLa,Y,Nd,Scなどであり、特に、La,Yが好ましい。
活性アルミナ粒子103は、耐熱性・耐久性に優れ、CO,HCの浄化に寄与し得る。なお、活性アルミナ粒子103にPt、Pd、Rh等の触媒金属を含有させてもよい。活性アルミナ粒子は、比表面積が大きく触媒金属の分散性が高い。従って活性アルミナ粒子103に触媒金属を含有させることにより、触媒金属の分散性が向上し、排気ガスとの接触面積が増えて触媒性能が向上する。
バインダ粒子105としては、例えば酸素吸蔵放出材であるCeZr系複合酸化物に触媒金属としてのRhを担持又はドープさせたものを用いてもよい。これにより、バインダ粒子105にも触媒機能を持たせることができるとともに、バインダ粒子105は触媒層内に高分散できるため、排気ガスとの接触確率を高め、反応効率を向上させることができる。なお、CeZr系複合酸化物は、Ce及びRhに加え、さらにCe以外の希土類金属を含有してもよい。これにより、Rhがさらに適度な酸化状態或いは還元状態を維持することができ、触媒性能を効果的に向上させることができる。Ce以外の希土類金属は、例えばNd,Y,La,Scなどであり、特に好ましくは、Nd,Yである。
また、バインダ粒子105としては、例えばCeを含有しないZr系複合酸化物に触媒金属としてのRhを担持又はドープさせたものを用いてもよい。これにより、バインダ粒子105にも触媒機能を持たせることができるとともに、バインダ粒子105は触媒層内に高分散できるため、排気ガスとの接触確率を高め、反応効率を向上させることができる。なお、Zr系複合酸化物も、Ce以外の希土類金属を含有してもよい。Ce以外の希土類金属を含むことにより、Rhを酸素過剰雰囲気下でもメタル状態に維持することができ、且つNOxの吸着性が向上する。また、Rhを含有させ、ナノスケールまで微細化することで、反応サイトが増加し、反応温度をより低温化することができる。なお、Ce以外の希土類金属は、例えばLa,Y,Nd,Scなどであり、より好ましくは、La,Yである。
さらに、バインダ粒子105としては、例えば酸素イオン伝導性を有するZrYO等のZr系複合酸化物の微細粒子等を使用してもよい。これにより、排気ガス雰囲気がリーン及びリッチのいずれに傾いたときでも、酸素イオン伝導性を有するバインダ粒子105がまわりから酸素を取り込んで活性酸素を放出するから、該活性酸素によって排気ガスの浄化促進が図れる。
<排気ガス浄化用触媒の設計方法>
本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の設計方法は、触媒100に含有されるRhナノ粒子11について、最小限の含有量で最大限の触媒性能を発揮することができるように、当該Rhナノ粒子の構造を設計するためのものである。
図2に示すように、本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の設計方法は、A算出ステップと、B算出ステップと、C算出ステップと、D算出ステップと、RC推定ステップと、構造決定ステップとを備える。以下、各ステップについて説明する。
≪A算出ステップ≫
A算出ステップS1は、密度汎関数理論を用いてRhナノ粒子11のモデルを作成し、構造最適化を行ってRhナノ粒子の構造安定化エネルギー(A)を算出するステップである。
ここに、図3は、後述するC算出ステップS3で扱うRhナノ粒子11に吸着成分B1を吸着させてなる複合体U1について構造最適化を行ったモデルの一例を示している。
A算出ステップS1では、図3のRhナノ粒子11のみのモデルを作成し、構造最適化を行って、構造安定化エネルギー(A)を算出する。
なお、密度汎関数理論の計算条件は、表1に示す通りである。
Figure 0007049614000001
図3に示すRhナノ粒子11は、Rh原子55個からなるモデルであり、正14面体の単結晶である。Rhナノ粒子11は、表面に符号P2で示す(111)面と符号P1で示す(100)面とを有している。
排気ガス中の浄化成分は、Rhナノ粒子11を構成するRh原子のうち、表面に現れたRh原子に吸着すると考えられる。そうして、Rh原子の触媒作用により、吸着された浄化成分の化学反応が進行し、浄化されると考えられる。
本明細書において、上記のようなRhナノ粒子11の表面を構成するRh原子をサイトというものとする。サイトを構成するRh原子は、次の3種類に分けられる。すなわち、Rhナノ粒子11の(111)面P2又は(100)面P1上にあって、これらの面の辺上には存在しない面サイト、互いに隣り合う(111)面P2及び(100)面P1の境界に位置する辺サイト、並びに(111)面P2及び(100)面P1の複数の辺の交点により形成された角部サイトである。面サイトは、例えば符号1,7,9で示すRh原子である。辺サイトは、例えば符号3,5,6で示すRh原子である。角サイトは、例えば符号2,4,8で示すRh原子である。
なお、図2のRhナノ粒子11は、Rh原子55個からなる正14面体であるから、面サイトは、(100)面P1上にのみ存在しているが、Rhナノ粒子11を構成するRh原子数及びRhナノ粒子の形状により、(111)面P2上にも存在し得る。
≪B算出ステップ≫
B算出ステップS2は、上述の密度汎関数理論を用いて排気ガスに含まれる吸着成分のモデルを作成し、構造最適化を行って吸着成分の構造安定化エネルギー(B)を算出するステップである。
吸着成分は、排気ガスに含有される浄化成分、当該浄化成分の浄化反応に関与する活性種の原子、分子、ラジカル等が挙げられる。特に、Rhを触媒とするNOx浄化反応には、NO分子とCO分子との反応、特にNO分子の解離反応(NO→N+O)、CO分子とO原子によるCO生成反応(CO+O→CO)、及びN原子同士によるN生成反応(N+N→N)が素反応として関わっていると考えられる。従って、吸着成分は、O原子、CO分子及びNO分子の群から選ばれる少なくとも1つであることが望ましい。
≪C算出ステップ≫
C算出ステップS3は、上述の密度汎関数理論を用いてRhナノ粒子11の所定のサイトに吸着成分を吸着させてなる複合体のモデルを作成し、構造最適化を行って複合体U1の構造安定化エネルギー(C)を算出する工程である。
上述のごとく、図3は、Rhナノ粒子11に、吸着成分を吸着させた複合体U1のモデルである。なお、図3に示す複合体U1のモデルは、吸着成分の一例としてNO分子を辺サイトC5に吸着させたモデルである。
≪D算出ステップ≫
D算出ステップS4は、上述のA算出ステップS1、B算出ステップS2、及びC算出ステップS3において算出した構造安定化エネルギー(A),(B),(C)を用いて、下記式(1)に従って、吸着成分の吸着エネルギー(D)を算出するステップである。
D=C-(A+B) ・・・(1)
吸着成分として、O原子、CO分子、及びNO分子を吸着させた場合の吸着エネルギー(D)の算出結果を図4及び図5に示す。
≪RC推定ステップ≫
RC推定ステップS5は、図4及び図5に示す吸着エネルギー(D)の算出結果に基づいて、Rhナノ粒子11の反応活性点(RC)となるサイトを推定するステップである。
図4に示すように、吸着成分がO原子の場合、O原子の吸着エネルギー(D)は、角サイトC2,C4,C8において最も大きくなり、次いで辺サイトC3,C5,C6、さらに面サイトC1,C7,C9において最も小さくなることが判る。このことは、O原子は、全サイトのうち、角サイトC2,C4,C8において吸着安定性が最も大きくなり、言い換えると、角サイトC2,C4,C8において最も吸着されやすいということができる。
一方、吸着成分がCO分子の場合、CO分子の吸着エネルギー(D)は、面サイトC1,C7,C9及び辺サイトC3,C5,C6において大きくなり、角サイトC2,C4,C8において小さくなることが判る。なお、面サイトC1,C7,C9及び辺サイトC3,C5,C6において、吸着エネルギー(D)は同程度である。また、O原子に比べて、サイトの違いによる吸着エネルギー(D)の差は小さくなっていることが判る。これらのことは、CO分子は、サイトの違いに拘わらず全サイトに吸着される可能性がO原子よりも高いと考えられる。また、強いていえば、全サイトのうち、面サイトC1,C7,C9及び辺サイトC3,C5,C6において吸着安定性が大きいから、面サイトC1,C7,C9及び辺サイトC3,C5,C6において吸着されやすいということができる。
図5に示すように、吸着成分がNO分子の場合、NO分子の吸着エネルギー(D)は、O原子と同様に、角サイトC2,C4,C8において最も大きくなり、次いで辺サイトC3,C5,C6、さらに面サイトC1,C7,C9において最も小さくなることが判る。このことは、NO分子は、全サイトのうち、角サイトC2,C4,C8において吸着安定性が最も大きくなり、言い換えると、角サイトC2,C4,C8において最も吸着されやすいということができる。なお、いずれのサイトにおいてもNO分子の吸着エネルギー(D)は、O原子の吸着エネルギー(D)よりも大きく、NO分子はO原子よりも角サイトに吸着されやすいと考えられる。また、NO分子においては、角サイトと辺サイトとの吸着エネルギー(D)の差が、O原子の場合と比較すると、小さく、NO分子は角サイトに最も吸着されやすいが、辺サイトにも吸着されやすいと考えることができる。
図4及び図5の算出結果と上述のNOx浄化反応の素反応とを照らし合わせると、NOが角サイトに吸着される一方、COが面サイトや辺サイトに吸着された状態が形成されることが推測できる。その状態で、NO分子が、角サイトに吸着したNと、遊離状態のOとに解離し、そのOが面サイトや辺サイトに吸着したCOと反応してCOが生成され得る。そうして、角サイトに吸着されたNが、例えば他の角サイトで発生したNと反応してNが生成することが考えられる。そうすると、NOx浄化反応において、NOの吸着性が最も高い角サイトを反応活性点と考えることができる。
≪構造決定ステップ≫
構造決定ステップS6は、所定の原子数のRh原子を用いて1つ以上のRhナノ粒子を形成すると仮定した場合に、全Rhナノ粒子における前記反応活性点(RC)となる前記サイトの合計数が所定数以上形成されるように、前記Rhナノ粒子の構造を定めるステップである。
表2に、Rh原子数55個から711個までのRhナノ粒子11について、上述のA算出ステップで作成し、構造最適化を行って得られたモデルのRh原子数、Rhナノ粒子径、及び角サイト数を示している。
Figure 0007049614000002
表2の実験例1~4の結果から、角サイト数は、Rh原子数が201以上、すなわちRhナノ粒子径が1.8nm以上では、24個を超えないことが判る。
また、表3に、Rh原子数を800個としたときの、当該800個のRh原子を用いてRhナノ粒子を形成した場合のRhナノ粒子径、Rhナノ粒子数、角サイト数を示す。
Figure 0007049614000003
表3の実験例5~7の結果から、Rh原子数が同一の場合、反応活性点である角サイト数を多く形成するには、Rhナノ粒子径の小さいRhナノ粒子をできる限り多く形成することが効果的であることが判る。
そうすると、表2及び表3の結果から、反応活性点となる角サイトが最も多く形成されるには、1個のRhナノ粒子の最大径が1nm以上2.3nm以下となるように、Rhナノ粒子を作製することが考えられる。そうすると、1個のRhナノ粒子が有する角サイトの数が10個以上30個以下、好ましくは12個以上24個以下となる。
そして、所定の原子数として800個のRh原子を用いて1つ以上のRhナノ粒子を形成すると仮定した場合、Rhナノ粒子の最大径が1nm以上2.3nm以下となるようにRhナノ粒子を作製することで、全Rhナノ粒子における角サイトの合計数が48個(所定数)以上形成されることとなる。
このように、1つのRhナノ粒子の最大径及び角サイトの数を上記範囲となるようにRhナノ粒子の構造を定めることで、Rhナノ粒子の反応活性点を最大限多くすることができ、触媒活性の優れた排気ガス浄化用触媒をもたらすことができる。
-作用効果-
本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の設計方法によれば、触媒金属としてのRhナノ粒子について、密度汎関数理論を利用して反応活性点となるサイトを推定し、当該サイトが最も多く形成されるようにRhナノ粒子の構造を定めることで、触媒活性の優れた排気ガス浄化用触媒をもたらすことができる。
特に、Rhを触媒とするNOx浄化反応に関わるO原子、CO分子及びNO分子のRhナノ粒子への吸着を評価することが効果的である。具体的に、Rhナノ粒子の表面のサイトのうち、面サイト、辺サイト、及び角サイトにおけるこれらの原子及び/又は分子の吸着エネルギー(D)を比較することで反応活性点となるサイトを推定することができる。
本実施形態では、上述の吸着エネルギー(D)の算出結果から、角サイトは、面サイト及び辺サイトと比較して、NO分子及びO原子の吸着エネルギー(D)が大きくなるから、角サイトが反応活性点となると推定することができ、角サイトが最も多く形成されるように、Rhナノ粒子の構造を定めることができる。このようにして、Rhを触媒とするNOx浄化反応における反応活性点を明らかとして、優れた触媒性能をもつ排気ガス浄化用触媒をもたらすことができる。
<触媒の製造方法>
以下、上述のごとく設計されたRhナノ粒子11を含む触媒100の製造方法の一例を示す。
-触媒材及びバインダ材の調製-
触媒100に含有される触媒材は、共沈法を用いて調製することができる。共沈法は、複合酸化物に含有される金属塩、好ましくは硝酸塩の酸性溶液に、塩基性溶液を添加し、水酸化物の共沈物を得た後、当該水酸化物を乾燥、粉砕、焼成することにより所望の複合酸化物を調製する方法である。
なお、Rh含有CeZr系複合酸化物粒子101を調製する場合は、Rhナノ粒子11を形成するため、上記方法によりCeZr系複合酸化物粒子にRhをドープさせる。この場合、Rhの金属塩を上記酸性溶液に含有させて共沈させることによりRhを複合酸化物中にドープさせることができる。また、Rhがドープされているものは、CO還元熱処理を施してもよい。これにより、Rhの表面積が増大し、排気ガスとの接触面積が増大するから、反応活性点が増加し、効率良く排気ガスを浄化することが可能となり、触媒材の触媒性能を向上させることができる。Rhに限らず他の触媒金属を複合酸化物中にドープさせる場合もRhと同様の方法により行うことができる。
また、触媒金属を含浸担持させる場合は、上記共沈法により得られた複合酸化物に、蒸発乾固法などを用いて担持させることができる。
バインダ粒子105は、例えば、上述のRhを含有するCeZr系複合酸化物や、Rhを含有するZr系複合酸化物、ZrYO等のZr系複合酸化物等を湿式粉砕したものを用いることができる。なお、触媒材の平均粒径D50は、触媒性能向上の観点から、好ましくは100nm以上、より好ましくは120nm以上、特に好ましくは150nm以上である。また、バインダ粒子105は、平均粒径D50が例えば200nm以下、好ましくは150nm以下にまで粉砕したものを用いることが望ましい。この程度の粒径に粉砕されたRh含有CeZr系複合酸化物やRh含有Zr系複合酸化物の粉末は、粉砕前の粉末と比べるとその内部に固溶しているRhが表面に露出している割合が多くなり、しかも粉砕操作によって複合酸化物の粉末の表面積が大きくなるので、バインダ材でありながら触媒性能を大きく高めることができる。また、ZrYO等のZr系複合酸化物等を湿式粉砕したものを用いる場合も、上記平均粒径D50の範囲のものを用いることにより、触媒材の粒子間及び触媒材とハニカム担体の表面との間の結合力を向上させることができる。
-触媒の担体への担持-
上記触媒材及びバインダ粒子105を溶媒に懸濁させてスラリーを調製し、このスラリーに基材となるハニカム担体を浸漬した後に、このハニカム担体を乾燥させることにより、ハニカム担体の通路壁上に、触媒100の層を形成することができる。触媒100の層が形成されたハニカム担体は、排気ガス通路上に配設される。
(実施形態2)
以下、本発明に係る他の実施形態について詳述する。なお、これらの実施形態の説明において、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図6に示すように、実施形態2に係る排気ガス浄化用触媒の設計方法は、実施形態1のA算出ステップS1、B算出ステップS2、C算出ステップS3、D算出ステップS4、RC推定ステップS5、及び構造決定ステップS6に加え、T算出ステップS11を備えている。以下、実施形態2に係る排気ガス浄化用触媒の設計方法について説明する。
≪B算出ステップ≫
まず、B算出ステップS2において、吸着成分は、複数の原子を備えた分子(以下、「吸着分子」と称することがある。)である。特にNOx浄化反応におけるRhナノ粒子11の触媒活性を向上させる観点から、吸着分子は、CO分子及びNO分子であることが望ましい。
≪T算出ステップ≫
T算出ステップS11は、構造最適化された複合体U1における吸着分子の分子内の原子間距離(T)を算出するステップである。
具体的に、吸着分子がCO分子及びNO分子の場合におけるCO原子間距離及びNO原子間距離に関し、吸着エネルギー(D)との関係を、それぞれ図7及び図8に示している。
≪RC推定ステップ≫
そして、本実施形態に係るRC推定ステップS5では、D算出ステップS4で得られた吸着エネルギー(D)の算出結果と、T算出ステップS11で得られた吸着分子の原子間距離(T)の算出結果とに基づいて、反応活性点となるサイトを推定する。
具体的には例えば、図4及び図5に示す吸着エネルギー(D)の算出結果と、図7及び図8に示す原子間距離(T)の算出結果とに基づいて、反応活性点となるサイトを推定する。
上述のごとく、CO分子の吸着エネルギー(D)は、図4に示すように、角サイトにおいて最も小さく、辺サイト及び面サイトにおいて大きくなる結果であった。図7を参照すると、角サイトに吸着させたCO分子のCO原子間距離に対して、辺サイト及び面サイトに吸着させたCO分子のCO原子間距離は大きくなっていることが判る。このことは、CO分子が吸着されやすい辺サイト及び面サイトにおいて、吸着されたCO分子は原子間距離が長くなり、反応活性が高くなっていることを示唆している。
また、NO分子の吸着エネルギー(D)は、図5に示すように、面サイトにおいて最も小さく、角サイトにおいて最も大きくなり、辺サイトにおいても比較的大きくなる結果であった。図8を参照すると、面サイトに吸着させたNO分子のNO原子間距離に対して、角サイト及び辺サイトに吸着させたNO分子のNO原子間距離は大きくなっていることが判る。このことは、NO分子が吸着されやすい角サイト及び辺サイトにおいて、吸着されたNO分子は原子間距離が長くなり、反応活性が高くなっていることを示唆している。
図4、図5、図7及び図8の算出結果と上述のNOx浄化反応の素反応とを照らし合わせると、NOが角サイトに吸着されて反応活性が高くなる一方、COが面サイトや辺サイトに吸着されて反応活性が高くなることが推測できる。そうすると、NO分子が、角サイトに吸着した後、Nと遊離状態のOとに解離し、そのOが面サイトや辺サイトに吸着したCOと反応してCOが生成されることが考えられる。一方、角サイトに吸着されたまま残されたNは、例えば他の角サイトで発生したNと反応してNが生成することが考えられる。以上のように反応機構を推測すると、NOx浄化反応において、特にNO分子の吸着性が最も高く、解離反応が進行すると考えられる角サイトを反応活性点と考えることができる。
-作用効果-
以上述べたように、本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の設計方法によれば、吸着成分の吸着エネルギー(D)に加え、吸着成分の原子間距離(T)を評価することで、Rhを触媒とするNOx浄化反応の反応機構のより詳細な推測を行うことができ、当該推測に基づいて反応活性点に富む排気ガス浄化用触媒を設計することができる。
(実施形態3)
実施形態1,2では、図1に示すように、排気ガス通路壁99にRhを含有する触媒100の触媒層が形成されている構成であったが、排気ガス通路壁99と触媒100との間に他の構成の触媒層を形成した積層構造としてもよい。
具体的には、例えば特開2014-161747号公報に記載されているような、排気ガス通路壁にPd含有触媒層からなる下層と、当該下層の上側である排気ガス通路側に設けられたRh含有触媒層からなる上層とが形成された構成等が挙げられる。このような積層構造の触媒層において、上層のRh含有触媒層を実施形態1,2の触媒100と同様の構成とすることができる。
(その他の実施形態)
上記実施形態では、CeZr系複合酸化物粒子114にRhナノ粒子11を含有させる構成であったが、当該構成に限られるものではなく、サポート材としてCe非含有Zr系複合酸化物粒子や活性アルミナ粒子103等にRhナノ粒子11を含有させてもよい。また、この場合、CeZr系複合酸化物粒子に異なる例えばPtやPd等の触媒金属を含有させることもできる。さらに、触媒100は、実施形態1,2の構成に限られるものではなく、上述の触媒材以外の触媒材や上述のバインダ材以外のバインダ材を含んでもよいし、その他の構成の触媒層を積層させた多層構造としてもよい。また、実施形態1,2の触媒100として三元触媒を一例としてあげたが、触媒100は、三元触媒に限られるものではなく、例えばパティキュレートマターの浄化用触媒等であってもよい。
また、密度汎関数理論の計算条件は、表1の条件に限られるものではなく、一般的な密度汎関数理論の手法であればいかなるものも用いることができる。
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
<比較例1及び実施例1>
表4,表5に、比較例1及び実施例1に使用した排気ガス浄化用触媒の構成を示す。
Figure 0007049614000004
Figure 0007049614000005
なお、表4,表5中のRh含有CeZr系複合酸化物粒子101、Rh含有Ce非含有Zr系複合酸化物粒子102、活性アルミナ粒子103、及びバインダ粒子105は、図1に記載する構成である。
また、表4,表5に示す通り、実施例1及び比較例1の触媒は、Rhを含む触媒層を上層として、下層にPd触媒を含む層が積層された積層構造である。図1を参照すると、触媒100が上層であり、触媒100と排気ガス通路壁99との間に下層が形成された構成に相当する。
-比較例1-
[触媒材及びバインダ材の調製]
比較例1におけるRh含有CeZr系複合酸化物粒子101は、CeZrNdLaYOxにRhが担持されたものである。CeZrNdLaYOxは共沈法を用いて調製できる。具体的に、硝酸セリウム6水和物、オキシ硝酸ジルコニウム溶液、硝酸ネオジム6水和物、硝酸ランタン、硝酸イットリウム及びイオン交換水を混合してなる硝酸塩溶液に、28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和することにより共沈物を得た。この共沈物を含む溶液を上記と同様に、脱水及び水洗し、乾燥及び焼成する。これにより、CeZrNdLaYOxの粉末を得た。また、CeZrNdLaYOxの粉末に対して、硝酸ロジウム水溶液を用いた蒸発乾固法を行うことによってCeZrNdLaYOxにRhを担持した。
Rh含有Ce非含有Zr系複合酸化物粒子102のRh含浸担持ZrLaYOxは、次の手順で調製した。すなわち、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ランタン、硝酸イットリウムとをイオン交換水に溶かし、この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得た。この共沈物を遠心分離法で水洗した後、空気中において150℃の温度で一昼夜乾燥させ、粉砕した後、空気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なった。その後、得られた粉末に蒸発乾固法を用いてRhを含浸担持させた。次いで、CO雰囲気下、550℃以上800℃以下で加熱処理することにより、Rh含浸担持ZrLaYOxを得た。
活性アルミナ粒子103のLa-Alは、市販されている粉末を用いた。
バインダ粒子105のRhドープCeZrNdYOxは以下の通り調製した。まず、硝酸セリウム6水和物、オキシ硝酸ジルコニウム溶液、硝酸ネオジム6水和物、硝酸イットリウム、硝酸ロジウム及びイオン交換水を混合してなる硝酸塩溶液に、28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和することにより共沈物を得た。この共沈物を含む溶液を、脱水及び水洗し、乾燥及び焼成した。これにより、RhドープCeZrNdYOxの粉末を得た。その後、これにイオン交換水を添加してスラリー(固形分25質量%)とし、このスラリーをボールミルに投入して、0.5mmのジルコニアビーズで約3時間粉砕した。これにより、バインダ材として用いられ得る程度に粒径が小さくなったRhドープCeZrNdYOxの粉末が溶媒中に分散したゾルを得た。なお、この操作でRhドープCeZrNdYOxの粉末の粒径はメディアン径で200nm以下にできる。
なお、比較例1の下層の触媒材及びバインダ材は、特開2014-161747号公報に記載された方法により調製した。
[担体]
触媒層を形成するハニカム担体としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10-2mm)、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数600のセラミックス製ハニカム担体(容量約100mL)を用いた。
[触媒材及びバインダ材のハニカム担体への担持方法]
表4の下層の触媒材、バインダ材及びイオン交換水を混合してスラリーを調製し、これを上記ハニカム担体にコーティングし乾燥・焼成することによって、下層を形成した。その後、上層の触媒材、バインダ材及びイオン交換水を混合してスラリーを調製し、これを上記ハニカム担体にコーティングし乾燥・焼成することによって、上層を形成した。
-実施例1-
実施例1は、比較例1のRh含有CeZr系複合酸化物粒子101として、Rh含浸担持CeZrNdOxに代えて、RhドープCeZrNdLaYOxを使用したものであり、それ以外の構成は実施例1と同一である。
RhドープCeZrNdLaYOxは、次の手順で調製した。すなわち、硝酸セリウム6水和物、オキシ硝酸ジルコニウム溶液、硝酸ネオジム6水和物、硝酸ランタン、硝酸イットリウム、硝酸ロジウムとをイオン交換水に溶かし、この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得た。この共沈物を遠心分離法で水洗した後、空気中において150℃の温度で一昼夜乾燥させ、粉砕した後、空気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なった。次いで、CO雰囲気下、550℃以上800℃以下で加熱処理することにより、RhドープCeZrNdOxを得た。
<過渡評価試験>
実施例1及び比較例1の排気ガス浄化触媒について、実車モード走行データを模擬した燃焼モード条件でのNOx浄化性能を調べるため、模擬ガスによる過渡評価試験を行った。
-コアサンプル作製-
実施例1及び比較例1の触媒について、ベンチエージングを行なった。このベンチエージングは、エンジンの排気管に取り付け、触媒温度が900℃となるようにエンジン回転数・負荷を設定し、当該エンジンの排気ガスに触媒を100時間晒すというものである。
上記ベンチエージング後、実施例1及び比較例1の触媒から、それぞれ担体容量25mLのコアサンプルA,Bを各々切り出し、モデルガス流通反応装置に取り付けた。
-NOx濃度の経時変化-
ストイキ条件において、排気ガスの入口ガス温度を上昇させ、500℃で10分保持(前処理)した後、N中で温度を100度まで下げた。その後、ストイキ条件下で、500℃まで昇温した。
温度が一定になった後、減速燃料カット(Fuel-Cut)を模擬したガス条件(1)と、SIストイキ燃焼を模擬したガス条件(2)を、約30~40秒毎に繰り返し、その時のNOx濃度(ppm)の変化を測定した。表5にガス条件(1),(2)の構成を示す。
Figure 0007049614000006
なお、表6に示すように、減速燃料カット(Fuel-Cut)を模擬したガス条件(1)は、NOxを含有しない。また、SIストイキを模擬したガス条件(2)の組成は、NOxを1000ppm含有する。
-NOx浄化率について-
比較例1の測定結果を図9に示す。図9に示すように、模擬ガス条件を(1)減速燃料カット(Fuel-Cut)から、(2)SIストイキに切り替えた時点を0秒とすると、約6秒から次の切り替え時である約40秒まで、コアサンプルを通過した出口ガスのNOx濃度はほぼ0になっており、NOxが比較例1の触媒により浄化されたことが判る。しかし、0秒の切り替え直後から約6秒までは、比較例1の触媒を通過した模擬ガスのNOx濃度は0ではなく、比較例1の触媒のNOx浄化率が低いことが判る。図9の0秒~5秒までのNOx濃度の平均値を過渡NOx浄化性能(ppm)として算出した。
実施例1についても図9と同様にNOx濃度の経時変化を測定し、比較例1の場合と同様に、過渡NOx浄化性能を算出した。実施例1及び比較例1の過渡NOx浄化性能の算出結果を図10に示す。
図10に示すように、比較例1の触媒の過渡NOx浄化性能は、925ppmであったのに対し、実施例1の触媒の過渡NOx浄化性能は、740ppmであった。言い換えると、比較例1の触媒に対し、実施例1の触媒では、減速燃料カット(Fuel-Cut)からSI燃焼への燃焼モード切り替え直後から約5秒程度のNOx浄化性能が20%向上することが判った。
<TEM観察試験>
実施例1及び比較例1の触媒に含まれるRh含有CeZr系複合酸化物粒子101についてTEM観察試験を行った。
図11A及び図11Bに、比較例1の触媒に含まれるRh含有CeZr系複合酸化物粒子101としてのRh含浸担持CeZrNdOxのTEM像を示している。なお図11Aは製造直後のRh含浸担持CeZrNdOxのTEM像である。また、図11Bは、製造直後のRh含浸担持CeZrNdOxに対し、2%O、10%HO、残部Nからなるガス気流下、1000℃で24時間エージング処理を施した後のRh含浸担持CeZrNdOxのTEM像である。
比較例1のRh含浸担持CeZrNdOxは、製造直後は図11A中矢印で示すように、粒径1~2nm程度のRh粒子がサポート材の表面に付着しているのが判る。一方、エージング処理後は、図11Bの丸で囲った位置に示すように、Rh粒子の粒径が3~4nm程度に大きくなっていることが判る。このように、比較例1の触媒では、エージング処理により、Rh粒子が凝集して大きくなったものと考えられる。
一方、図12A及び図12Bに、実施例1の触媒に含まれるRh含有CeZr系複合酸化物粒子101としてのRhドープCeZrNdOxのTEM像を示している。なお図12Aは製造直後のRhドープCeZrNdOxのTEM像である。また、図12Bは、製造直後のRhドープCeZrNdOxに対し、比較例1と同一の上記エージング処理を施した後のRhドープCeZrNdOxのTEM像である。
実施例1のRhドープCeZrNdOxは、製造直後は図12A中矢印や丸で囲った位置で示すように、粒径1~2nm程度のRh粒子がサポート材の表面に付着しているのが判る。また、エージング処理後においても、図12Bの丸で囲った位置に示すように、Rh粒子の粒径が1~2nm程度に維持されていることが判る。このように、実施例1の触媒では、エージング処理を行っても、Rh粒子が凝集せず、比較例1の触媒と比べて耐久性が向上していると考えられる。
本発明は、最小限の貴金属量で最大限の浄化性能を発揮させることができる排気ガス浄化用触媒の設計方法及び排気ガス浄化用触媒を提供することができるので、極めて有用である。
11 Rhナノ粒子
99 排気ガス通路壁
100 排気ガス浄化用触媒、触媒
101 Rh含有CeZr系複合酸化物粒子
102 Rh含有Ce非含有Zr系複合酸化物粒子
103 活性アルミナ粒子
105 バインダ粒子105
114 CeZr系複合酸化物粒子(サポート材)
115 Ce非含有Zr系複合酸化物粒子
116 Rh
B1 吸着成分
C1,C7,C9 面サイト
C2,C4,C8 角サイト
C3,C5,C6 辺サイト
U1 複合体
P1 (100)面
P2 (111)面
S1 A算出ステップ
S2 B算出ステップ
S3 C算出ステップ
S4 D算出ステップ
S5 RC推定ステップ
S6 構造決定ステップ
S11 T算出ステップ

Claims (9)

  1. 触媒金属として複数のRh原子を有するRhナノ粒子を含有する排気ガス浄化用触媒の設計方法であって、
    密度汎関数理論を用いて前記Rhナノ粒子のモデルを作成し、構造最適化を行って前記Rhナノ粒子の構造安定化エネルギー(A)を算出するA算出ステップと、
    密度汎関数理論を用いて排気ガスに含まれる吸着成分のモデルを作成し、構造最適化を行って前記吸着成分の構造安定化エネルギー(B)を算出するB算出ステップと、
    密度汎関数理論を用いて前記Rhナノ粒子の所定のサイトに前記吸着成分を吸着させてなる複合体のモデルを作成し、構造最適化を行って前記複合体の構造安定化エネルギー(C)を算出するC算出ステップと、
    下記式(1)に従って、前記吸着成分の吸着エネルギー(D)を算出するD算出ステップと、
    前記吸着エネルギー(D)の算出結果に基づいて、前記Rhナノ粒子の反応活性点(RC)となる前記サイトを推定するRC推定ステップと、
    所定の原子数のRh原子を用いて1つ以上のRhナノ粒子を形成すると仮定した場合に、全Rhナノ粒子における前記反応活性点(RC)となる前記サイトの合計数が所定数以上形成されるように、前記Rhナノ粒子の構造を定める構造決定ステップとを備えた
    ことを特徴とする排気ガス浄化用触媒の設計方法。
    D=C-(A+B) ・・・(1)
  2. 請求項1において、
    前記Rhナノ粒子は、表面に(111)面と(100)面とを有する単結晶であり、
    前記Rhナノ粒子の所定の前記サイトは、前記(111)面又は前記(100)面により形成された面サイト、互いに隣り合う前記(111)面及び前記(100)面の境界により形成された辺サイト、並びに複数の前記辺サイトの交点により形成された角サイトである
    ことを特徴とする排気ガス浄化用触媒の設計方法。
  3. 請求項2において、
    前記反応活性点(RC)となる前記サイトは、前記角サイトである
    ことを特徴とする排気ガス浄化用触媒の設計方法。
  4. 請求項3において、
    前記Rhナノ粒子の前記構造は、前記Rhナノ粒子の最大径及び前記角サイトの数であり、
    前記Rhナノ粒子の最大径は、1nm以上2.3nm以下であり、
    前記角サイトの数は、10個以上30個以下である
    ことを特徴とする排気ガス浄化用触媒の設計方法。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
    前記吸着成分は、O原子、CO分子及びNO分子の群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする排気ガス浄化用触媒の設計方法。
  6. 請求項1乃至請求項のいずれか一において、
    前記吸着成分は、複数の原子を備えた分子であり、
    前記構造最適化された前記複合体における前記吸着成分の前記分子内の原子間距離(T)を算出するT算出ステップをさらに備え、
    前記RC推定ステップで、前記吸着エネルギー(D)の算出結果と前記原子間距離(T)の算出結果とに基づいて、前記反応活性点(RC)となる前記サイトを推定する
    ことを特徴とする排気ガス浄化用触媒の設計方法。
  7. 請求項6において、
    前記複数の原子を備えた分子は、CO分子及びNO分子の少なくとも一方である
    ことを特徴とする排気ガス浄化用触媒の設計方法。
  8. 請求項1乃至請求項のいずれか一において、
    前記Rhナノ粒子は、サポート材に担持されている
    ことを特徴とする排気ガス浄化用触媒の設計方法。
  9. 請求項1乃至請求項のいずれか一において、
    前記排気ガス浄化用触媒は、エンジンの排気ガスを浄化するためのものである
    ことを特徴とする排気ガス浄化用触媒の設計方法。
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