JP7047585B2 - ポリプロピレン樹脂組成物及びポリプロピレン繊維 - Google Patents
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Description
また、エレクトロスピニング法等によるナノ繊維が検討されているが、溶媒を使用すること、ライン速度を上げ難いこと、及び生産性が悪いなどの理由から、未だ工業化の目途が立っていない。
一方、ポリプロピレンの繊維は、密度が小さく、耐薬品性に優れるという特徴を有し、また、リサイクル性にも優れ、焼却時にも有毒ガスが発生しないなど、産業資材分野の材料としては非常に優れている。しかし、ナノサイズの繊維径を持ち、かつ、均一性の高いポリプロピレン繊維を工業的規模で生産性よく製造できるものは、未だ実現されていないのが実情である。
更に、それを用いたメルトブローン繊維では、ナノサイズの繊維径と高い均一性が得られることは言及されていない。
[1]下記(i)~(v)の特性を有し、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)5~100重量%と、MFRが10~1000g/10minであり、かつ、ポリプロピレン樹脂(X)を除くポリプロピレン樹脂(Y)95~0重量%とを含むポリプロピレン樹脂組成物(ポリプロピレン樹脂(X)及びポリプロピレン樹脂(Y)の含量の合計を100重量%とする)。
特性(i):MFRが10~1000g/10分である。
特性(ii):GPCによる分子量分布Mw/Mnが2.0~10.0であり、かつ、Mz/Mwが1.5~10.0である。
特性(iii):分岐指数g’が0.30以上0.95未満である。
特性(iv):13C-NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上である。
特性(v):示差走査熱量計(DSC)で求められる融点が150℃以上である。
[2]ポリプロピレン樹脂(Y)が、プロピレン単独重合体であることを特徴とする[1]に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
[3]繊維用に用いられる、[1]又は[2]に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物からなり、平均繊維径が1000nm未満(n=60)であるポリプロピレン繊維。
[5][1]~[3]のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物からなり、平均繊維径の標準偏差が0.1未満であるポリプロピレン繊維。
[6][4]又は[5]に記載のポリプロピレン繊維を用いたフィルター。
[7][4]又は[5]に記載のポリプロピレン繊維を用いたマスク。
[8][4]又は[5]に記載のポリプロピレン繊維を用いた織物。
を提供するものである。
本発明により得られるポリプロピレン繊維は、ナノサイズの繊維径と高い均一性を有するので、各種フィルターや、マスク等の用途に於いては、捕集性や集塵性が極めて好適なものとなる。
1.長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)
本発明のポリプロピレン樹脂組成物においては、以下の(i)~(v)の特性を有し、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)を使用することを特徴とする。
特性(i):MFRが10~1000g/10分である。
特性(ii):GPCによる分子量分布Mw/Mnが2.0~10.0であり、かつ、Mz/Mwが1.5~10.0である。
特性(iii):分岐指数g’が0.30以上0.95未満である。
特性(iv):13C-NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上である。
特性(v):示差走査熱量計(DSC)で求められる融点が150℃以上である。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)のメルトフローレート(MFR)は、10~1000g/10分、好ましくは20~1000g/10分、より好ましくは100~1000g/10分である。この下限値以上であると、良好な流動性となるため、出来上がる繊維径を細くすることができる。一方、上限値以下であると、繊維径の均一性が向上する。
なお、MFRは、ISO 1133:1997に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。単位はg/10分である。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布Mw/Mn(ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である。)は、2.0~10.0、好ましくは2.0~8.0、より好ましくは2.0~6.0である。
また、Mz/Mw(ここで、MzはZ平均分子量である。)は、1.5~10.0、より好ましくは1.5~8.0、さらに好ましくは1.5~5.0の範囲である。
分子量分布の広いものほど押出成形加工性が向上するが、Mw/MnおよびMz/Mwがこの範囲にあるものは、押出成形加工性に、特に優れるものである。
なお、Mn、Mw、Mzの定義は、「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人、1978)等に記載されており、GPCによる分子量分布曲線から計算可能である。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本直列)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10-4、α=0.7
PP:K=1.03×10-4、α=0.78
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が長鎖分岐構造を有することの直接的な指標として、分岐指数g’を挙げることができる。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)の光散乱によって求めた絶対分子量Mabsが100万の成分のg’は、0.30以上0.95未満、好ましくは0.55以上0.95未満、より好ましくは0.75以上0.95未満、さらに好ましくは0.78以上0.95未満である。g’が0.30以上であると、主鎖が少なく側鎖の割合が極めて多いということがなく、溶融張力が向上しなかったり、ゲルが生成したりするというおそれがないため溶融押出成形加工において好ましい。一方、g’が0.95未満である場合には、分岐が存在しないということがなく、溶融張力が不足しやすくなる傾向はなく、溶融押出成形加工に適する。
g’は、長鎖分岐構造を有するポリマーの固有粘度[η]brと同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度[η]linの比、すなわち、[η]br/[η]linによって与えられ、長鎖分岐構造が存在すると、1.0よりも小さな値をとる。
定義は、例えば「Developments in Polymer Characterization-4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に記載されており、当業者にとって公知の指標である。
g’は、例えば、下記に記すような光散乱計と粘度計を検出器に備えたGPCを使用することによって、絶対分子量Mabsの関数として得ることができる。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、櫛型鎖構造を有することが好ましい。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社製のAlliance GPCV2000を用いる。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN-Eを用いる。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼン(BASFジャパン社製酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。
流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社製GMHHR-H(S) HTを2本直列に連結して用いる。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)およびViscometerから得られる固有粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
・ 「Developments in Polymer Characterization-4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983. Chapter1.)
・ Polymer, 45, 6495-6505(2004)
・ Macromolecules, 33, 2424-2436(2000)
・ Macromolecules, 33, 6945-6952(2000)
ポリマー分子に長鎖分岐構造が導入されると、同じ分子量の線状ポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると、固有粘度が小さくなることから、長鎖分岐構造が導入されるに従い、同じ分子量の線状ポリマーの固有粘度([η]lin)に対する分岐状ポリマーの固有粘度([η]br)の比([η]br/[η]lin)は、小さくなっていく。
したがって、分岐指数g’([η]br/[η]lin)が1.0より小さい値になる場合には、長鎖分岐構造を有することを意味する。
ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標)グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は分子量の対数と線形の関係があることは、Mark-Houwink-Sakurada式として公知であるから、[η]linは、低分子量側や高分子量側に適宜外挿して数値を得ることができる。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)の13C-NMRによって得られるプロピレン単位3連鎖のmm分率は、95%以上、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上である。
mm分率は、ポリマー鎖中、頭-尾結合からなる任意のプロピレン単位3連鎖中、各プロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合であり、上限は100%である。mm分率は、ポリプロピレン分子鎖中のメチル基の立体構造がアイソタクチックに制御されていることの指標であり、高いほど、高度にアイソタクチックに制御されていることを意味する。mm分率がこの下限以上であると、機械的物性が高いレベルに保たれるので好ましい。
試料375mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃においてプロトン完全デカップリング法で測定する。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定する。他の炭素ピークのケミカルシフトはこれを基準とする。
・フリップ角:90度
・パルス間隔:10秒
・共鳴周波数:100MHz以上
・積算回数:10,000回以上
・観測域:-20ppmから179ppm
・データポイント数:32768
なお、mm分率決定のより具体的な方法は、特開2009-275207号公報の段落[0053]~[0065]に詳細に記載されており、本発明においても、この方法に従って行うものとする。
mm分率を上記範囲にするには、高結晶性の重合体を達成する重合触媒により可能であり、メタロセン触媒を使用して重合することが好ましい。
示差走査熱量計(DSC)で求められる融点が150℃以上であり、好ましくは155℃以上、更に好ましくは160℃以上である。
融点が150℃以上であると、紡糸時に繊維同士が融着する恐れがない。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、上述した特性を満足する限り、特に製造方法を限定するものではないが、好ましい製造方法は、メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いる方法である。メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法の例としては、例えば、特開2009-57542号公報に開示される方法が挙げられる。
この方法は、プロピレンマクロマーを生成する能力を有する特定の構造の触媒成分と、プロピレンマクロマーとプロピレンとを共重合する能力を有する特定の構造の触媒成分とを組み合わせた触媒を用いて、長鎖分岐構造を有する櫛形構造のポリプロピレン樹脂を製造することが可能な方法である。この方法によれば、バルク重合法や気相重合法といった工業的に有効な方法で、特に実用的な重合温度や重合圧力の条件下での単段重合で、しかも、分子量調整剤である水素を用いて、目的とする物性を有する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂の製造が可能である。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物においては、上記の長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)とともに、ポリプロピレン樹脂(Y)を使用することを特徴とする。
なお、MFRは、ISO 1133:1997に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。単位はg/10分である。
ポリプロピレン樹脂(Y)のMFRは、重合温度や重合圧力の条件を変えるか、または、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する方法により、容易に調整される。
チーグラー・ナッタ系触媒は、たとえば「ポリプロピレンハンドブック」エドワード・P・ムーアJr.編著、保田哲男・佐久間暢翻訳監修、工業調査会(1998)の2.3.1節(20~57ページ)に概説されているような触媒系のことであり、例えば、三塩化チタンとハロゲン化有機アルミニウムからなる三塩化チタニウム系触媒や、塩化マグネシウム、ハロゲン化チタン、電子供与性化合物を必須として含有する固体触媒成分と有機アルミニウムと有機珪素化合物からなるマグネシウム担持系触媒や、固体触媒成分を有機アルミニウム及び有機珪素化合物を接触させて形成した有機珪素処理固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物成分を組み合わせた触媒のことを指す。
本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物における上記ポリプロピレン樹脂(X)と上記ポリプロピレン樹脂(Y)との割合は、(X)と(Y)の合計100重量%基準で、ポリプロピレン樹脂(X)5~100重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)95~0重量%であり、好ましくはポリプロピレン樹脂(X)5~99重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)95~1重量%である。好ましい別の態様としてはポリプロピレン樹脂(X)20~100重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)80~0重量%であり、好ましくはポリプロピレン樹脂(X)20~99重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)80~1重量%である。より好ましい別の態様としてはポリプロピレン樹脂(X)50~100重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)50~0重量%であり、好ましくはポリプロピレン樹脂(X)50~99重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)50~1重量%である。
ポリプロピレン樹脂(X)と上記ポリプロピレン樹脂(Y)との割合を上記の範囲とすることで、繊維の糸切れや外観不良等発生することがなく、均一で細いナノサイズの繊維が得られる。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、必要に応じて、上記ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)以外の、下記各種添加剤を添加して用いることができる。
紫外線吸収剤として、トリアゾール系の化合物では、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ200、TinuvinP)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ340、Tinuvin399)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ320、Tinuvin320)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ350、Tinuvin328)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ300、Tinuvin326)を例示することができる。ベンゾフェノン系の化合物では、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ110)、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ130)を例示することができる。
サリシレート系の化合物では、4-t-ブチルフェニルサリシレート(商品名:シーソーブ202)を例示することができる。シアノアクリレート系の化合物では、エチル(3,3-ジフェニル)シアノアクリレート(商品名:シーソーブ501)を例示することができる。ニッケルキレート系の化合物では、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(商品名:アンチゲンNBC)を例示することができる。無機微粒子系の化合物では、TiO2、ZnO、Ce2Oを例示することができる。
HALSとして代表的な化合物として、セバケート型の化合物では、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名:アデカスタブLA-77、サノールLS-770)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名:サノールLS-765)を例示することができる。ブタンテトラカルボキシレート型の化合物では、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA-57)、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA-52)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA-67)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA-62)を例示することができる。
コハク酸ポリエステル型の化合物では、コハク酸と1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとの縮合重合体を例示することができる。トリアジン型の化合物では、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4-ビス{N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ}-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物(商品名:Chimasorb119)、ポリ{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimasorb944)、ポリ(6-モルホリノ-s-トリアジン-2,4-ジイル){(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimasorb3346)を例示することができる。
ポリプロピレン樹脂組成物の調製方法としては、パウダー状又はペレット状のポリプロピレン樹脂(X)、ポリプロピレン樹脂(Y)および必要に応じて添加する添加剤をドライブレンド、ヘンシェルミキサー(商品名)等で混合する方法やさらに単軸押出機、二軸押出機等で溶融混練する方法を挙げることができる。
本発明のもう1つの実施態様は、上記した本発明のポリプロピレン樹脂組成物からなるポリプロピレン繊維である。
(1)平均繊維径
本発明のポリプロピレン繊維は、平均繊維径が好ましくは1000nm未満である。この上限値未満であると、フィルターやマスク等の目開きが密になる為、捕集性や集塵性が向上する。
ここで、平均繊維径は、繊維不織布原反について、形状測定レーザーマイクロスコープを用いて撮影した画像からn(測定サンプル数)=60で単糸径を測定して得られる。
本発明のポリプロピレン繊維は、繊維径の標準偏差が好ましくは0.1未満である。繊維径の標準偏差は繊維の均一性を示す指標であり、上記の上限値未満であると、
フィルターやマスク等の目開きが密になる為、捕集性や集塵性が向上する。
繊維径の標準偏差は、上記した平均繊維径の測定値から標準偏差を算出して得られる。
ポリプロピレン繊維の製造は、マルチフィラメント成形法、スパンボンド成形法、メルトブローン成形法等によって製造され、実施例ではメルトブローン成形法によって、上記した樹脂組成物を、ノズルを用いて溶融紡糸し、繊維不織布原反を得た。
紡糸温度は、該樹脂組成物の融点より30~80℃高い温度に設定するのが好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維は、ナノサイズの繊維径と高い均一性を有するため、各種フィルターや、マスク等の用途に於いては、捕集性や集塵性が極めて好適なものとなる。また、本発明のポリプロピレン繊維は、織物の用途に用いることができる。
実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
(1)メルトフローレート(MFR)
ISO 1133:1997 Conditions Mに準拠し230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。単位はg/10分である。
前述した方法に従って、GPC測定により求めた。
前述した方法に従って、示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCによって求めた。
前述した方法に従って、日本電子社製、GSX-400、FT-NMRを用い、特開2009-275207号公報の段落[0053]~[0065]に記載の方法で測定した。単位は%である。
示差走査熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。単位は℃である。
(1)成形性
本発明のポリプロピレン繊維の繊維径はナノサイズであることから、糸切れ性はダイス直下での目視では糸が見えないため確認出来ない。但し、糸成形時に断糸が発生した場合、切れた糸が宙を舞う現象が発生するため、本現象発生の有無を目視で確認し、発生しない場合は断糸していないと判断した。
得られた繊維不織布原反を、キーエンス社製形状測定レーザーマイクロスコープ「VK-X200」を用いて撮影し、その画像からn=60で単糸径を測定した。
更に、得られた繊維径の標準偏差から、繊維径の均一性を導出した。
(1)長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X1)
ポリプロピレン樹脂(X)として、以下のポリプロピレン樹脂を用いた。
(X-1):マクロマー共重合法により製造された長鎖分岐を有するプロピレン単独重合体、日本ポリプロ(株)製、商品名「WAYMAX(登録商標)MFX6」に対し、PH25B(分子量降下剤、パーヘキサ25B:商品名、日油(株)製有機過酸化物、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン)を配合し、ヘンシェルミキサー(商品名)で、3分間攪拌混合した後、スクリュー口径25mmのテクノベル社製「KZW-25」二軸押出機を用い、スクリュー回転数300rpm、混練温度は、ホッパー下からC1/C2/C3~C7/ヘッド/ダイス=150℃/180℃/230℃/230℃/230℃にて、溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを切断しペレット化して、MFR約200g/10minとなるように調整した。
(X-2):マクロマー共重合法により製造された長鎖分岐を有するプロピレン単独重合体、日本ポリプロ(株)製、商品名「WAYMAX(登録商標)MFX6」に対し、(X-1)と同様の方法で分子量降下剤を配合して、MFR約500g/10minとなるように調整した。
(2)ポリプロピレン樹脂(Y)
ポリプロピレン樹脂(Y)として、以下のポリプロピレン樹脂を用いた。
(Y-1):長鎖分岐を有しないプロピレン単独重合体、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)PP SA06GA」、MFR=60g/10分、Tm=165℃、g’=1.00に対し、(X-1)と同様の方法で分子量降下剤を配合して、MFR約200g/10minとなるように調整した
[実施例1]
(X-1)を5重量%と(Y-1)を95重量%となる様に配合し、表2に記載の条件に設定したメルトブローン不織布成形機を用いて、不織布原反を得た。評価結果を表2に示す。いずれの評価結果も満足される結果であった。
(X-1)を30重量%と(Y-1)を70重量%となる様に配合した以外は、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表2に示す。いずれの評価結果も満足される結果であった。
(X-1)を70重量%と(Y-1)を30重量%となる様に配合した以外は、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表2に示す。いずれの評価結果も満足される結果であった。
(X-1)を99重量%と(Y-1)を1重量%となる様に配合した以外は、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表2に示す。いずれの評価結果も満足される結果であった。
(X-1)を100重量%と(Y-1)を0重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表2に示す。いずれの評価結果も満足される結果であった。
(X-2)を99重量%と(Y-1)を1重量%となる様に配合した以外は、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表2に示す。いずれの評価結果も満足される結果であった。
(X-2)を100重量%と(Y-1)を0重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表2に示す。いずれの評価結果も満足される結果であった。
(X-1)を0重量%と(Y-1)を100重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表2に示す。
成形性に関し、長鎖分岐を有しないプロピレン単独重合体では、表2の成形条件に耐えることが出来ず、切れた糸が宙を舞う現象が発生したため、糸切れしていると判断した。
これにより、繊維径にバラつきが発生し、繊維径平均値及び標準偏差は満足できない結果であった。
本発明のポリプロピレン繊維は、特定のMFRと長鎖分岐構造を有するプロピレン系樹脂(X)の単体又はプロピレン系樹脂(Y)に配合した樹脂組成物を使用することにより、得られたポリプロピレン繊維は延伸性に優れるため紡糸速度が向上し、繊維化の際にナノサイズの繊維が得られ、且つ高い均一性を有するので、各種フィルターやマスク等の産業上用途に極めて好適なものである。
Claims (7)
- 下記(i)~(v)の特性を有し、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)5~100重量%と、MFRが10~1000g/10minであり、かつ、ポリプロピレン樹脂(X)を除くポリプロピレン樹脂(Y)95~0重量%とを含む、繊維用に用いられるポリプロピレン樹脂組成物(ポリプロピレン樹脂(X)及びポリプロピレン樹脂(Y)の含量の合計を100重量%とする)。
特性(i):MFRが100~1000g/10分である。
特性(ii):GPCによる分子量分布Mw/Mnが2.0~10.0であり、かつ、Mz/Mwが1.5~10.0である。
特性(iii):分岐指数g’が0.30以上0.95未満である。
特性(iv):13C-NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上である。
特性(v):示差走査熱量計(DSC)で求められる融点が150℃以上である。 - ポリプロピレン樹脂(Y)が、プロピレン単独重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載のポリプロピレン樹脂組成物からなり、平均繊維径が1000nm未満(n=60)であるポリプロピレン繊維。
- 請求項1又は2に記載のポリプロピレン樹脂組成物からなり、平均繊維径の標準偏差が0.1未満であるポリプロピレン繊維。
- 請求項3又は4に記載のポリプロピレン繊維を用いたフィルター。
- 請求項3又は4に記載のポリプロピレン繊維を用いたマスク。
- 請求項3又は4に記載のポリプロピレン繊維を用いた織物。
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