以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[アプリケーション・キットの概要]
アプリケーション・キットは、少なくとも一方が任意の活性成分(例えば薬剤)を含む2種類のシート部材を皮膚に適用するための補助器具である。より具体的には、アプリケーション・キットは、まず第1シート部材を皮膚に適用して、その後に該皮膚に第2シート部材を適用するという一連の作業を連続的に行うために用いられる。ユーザはこのアプリケーション・キットを用いることで、2種類のシート部材を用いる活性成分の経皮投与を簡単に行うことができる。「シート部材が皮膚に適用される」という表現は、シート部材が皮膚に接することを少なくとも表す。第1シート部材および第2シート部材はいずれも、平面形状を呈し、折り返したり皮膚の表面形状に追従したりすることができるような柔軟性を有する。
本実施形態では、第1シート部材としてマイクロニードル・シートを例示し、第2シート部材として貼付剤を例示する。しかし、2種類のシート部材の組合せはこれに限定されない。例えば、第1および第2シート部材の双方が貼付剤であってもよいし、双方がマイクロニードル・シートであってもよい。あるいは、貼付剤でもマイクロニードル・シートでもないシート部材が第1シート部材および第2シート部材の少なくとも一方として用いられてもよい。活性成分は第1および第2シート部材の一方にのみ含まれてもよいし双方に含まれてもよい。2種類のシート部材の双方に活性成分が含まれる場合には、活性成分の種類は、第1および第2シート部材の間で、少なくとも一部が異なってもよいし全く同じであってもよい。
[マイクロニードル・シート]
図1を参照しながら、実施形態に係るアプリケーション・キットと共に用いられるマイクロニードル・シート80について説明する。図1はマイクロニードル・シート80の平面図である。この図に示すように、マイクロニードル・シート80は帯状(細長い矩形)を呈する。マイクロニードル・シート80は、シート本体81と、このシート本体81に形成された複数のマイクロニードル82とを有する。本実施形態では、長辺に沿った方向をマイクロニードル・シート80(またはシート本体81)の長手方向といい、短辺に沿った方向(長手方向と直交する方向)をマイクロニードル・シート80(またはシート本体81)の幅方向という。また、長手方向および幅方向の双方と直交する方向をマイクロニードル・シート80(またはシート本体81)の厚さ方向という。
各マイクロニードル82の厚さ(厚さ方向に沿った長さ)はシート本体81の厚さと同じである。複数のマイクロニードル82は、シート本体81の長手方向および幅方向のそれぞれにおいて2以上のマイクロニードル82が整列するように形成される。マイクロニードル・シート80が使用のために提供される時点では、各マイクロニードル82は、シート本体81の主面81aから立ち上がっておらず、主面81aに沿って寝た状態にある。言い換えると、複数のマイクロニードル82のそれぞれの先端は、長手方向におけるシート本体81の一端(図1では左方向)を向く。あるいは、各マイクロニードル82とシート本体81との成す角度が0°またはほぼ0°と言い換えることもできる。マイクロニードル82の先端の向きは、マイクロニードル・シート80が使用される際の該マイクロニードル・シート80の進行方向と一致する。なお、一部のマイクロニードル82の向きが他のマイクロニードル82の向きと異なってもよい。
マイクロニードル・シート80およびマイクロニードル82の材質は限定されない。例えば、ステンレス鋼、ポリエチレンテレフタレート(PET)、水溶性高分子、他の金属、他の樹脂、生分解性素材、セラミック、または生体吸収性素材のいずれかによりマイクロニードル・シート80およびマイクロニードル82を作製してもよい。あるいは、これらの材質を組み合わせてマイクロニードル・シート80およびマイクロニードル82を作製してもよい。
マイクロニードル82はエッチングにより形成することができる。シートが金属であれば薬液でそのシートを部分的に溶かすことでマイクロニードル82を形成することができるし、シートが非金属であればレーザーでそのシートを部分的に切ることでマイクロニードル82を形成することができる。これらの場合には、マイクロニードル82の周囲に空隙が生ずる。もちろん、レーザー加工およびエッチング以外の手法によりマイクロニードル82を形成してもよい。いずれにしても、マイクロニードル82を予めシートの主面81aから立ち上げておく必要がないので、マイクロニードル・シート80を容易かつ安価に製造することができる。
本実施形態ではマイクロニードル82は三角形状であるが、マイクロニードルの形状は何ら限定されない。図1の例では、マイクロニードル82の大きさおよび向きが均一であるが、その大きさおよび向きの少なくとも一方が均一でなくてもよい。マイクロニードル82が三角形である場合には、その先端部の角度の下限は例えば10°または20°でもよいし、その角度の上限は例えば150°または120°でもよい。マイクロニードル・シート80におけるマイクロニードル82の分布は均一でもよいし均一でなくてもよい。例えば、マイクロニードル・シート80を長手方向に沿って見た場合に、1以上のマイクロニードル82を含む領域(ニードル領域)と、マイクロニードル82を含まない領域(クリアランス領域)とが交互に存在するように、シート本体81に複数のマイクロニードル82が形成されてもよい。
マイクロニードル・シート80の寸法も限定されない。具体的には、厚みの下限は5μmでも20μmでもよく、厚みの上限は1000μmでも300μmでもよい。長さの下限は0.1cmでも1cmでもよく、長さの上限は50cmでも20cmでもよい。幅の下限は0.1cmでも1cmでもよく、幅の上限は60cmでも30cmでもよい。マイクロニードル・シート80の長さおよび幅の下限は活性成分の投与量を考慮して定められ、長さおよび幅の上限は生体の大きさを考慮して定められる。
マイクロニードル82に関するパラメータも限定されない。具体的には、針の高さの下限は10μmでも100μmでもよく、その高さの上限は10000μmでも1000μmでも500μmでもよい。針の密度の下限は0.05本/cm2でも1本/cm2でもよく、その密度の上限は10000本/cm2でも5000本/cm2でもよい。密度の下限は、1mgの活性成分を投与し得る針の本数および面積から換算した値であり、密度の上限は、針の形状を考慮した上での限界値である。
マイクロニードル・シート80に予め活性成分をコーティングするのであれば、所定の粘度のコーティング液をなるべく均一な厚みでシート全体に塗布するのが好ましい。マイクロニードル82の先端がシート本体81の一端を向いているので(マイクロニードル82が主面81aに沿って寝ているので)、その均一な塗布を容易に為し得る。コーティングはスクリーン印刷の原理を用いて実施してもよいし、他の方法により実施してもよい。生分解性のシートを用いる場合には、そのシート自体に活性成分を内包させることも可能である。
各マイクロニードル82は、アプリケーション・キットにより曲げられるまではシート本体81の主面81aに沿って寝た状態にある。したがって、アプリケーション・キットを用いない限り、マイクロニードル82が他の物(例えばユーザの皮膚や衣服など)に当たったり引っ掛かったりする心配がない。その結果、マイクロニードル82の取扱時の安全性を確保することができる。例えば、ユーザはマイクロニードル・シート80の保管や搬送、使用直前の準備などを安全に行うことができる。
[貼付剤]
図2を参照しながら、実施形態に係るアプリケーション・キットと共に用いられる貼付剤90について説明する。図2は貼付剤90の平面図である。貼付剤90は、パップ剤、テープ剤、含浸剤(例えば絆創膏)、フィルム製剤などとして用いられる製剤である。貼付剤90は、支持体91と、支持体91の一方の面の少なくとも一部または略全体に形成された粘着剤層92と、粘着剤層92の作用面に剥離可能に貼付された剥離ライナー93とを備える。粘着剤層92の作用面とは、貼付剤90の使用時にユーザの皮膚に接する面のことである。
貼付剤90の寸法は限定されない。例えば、貼付剤90(粘着剤層92)の面積は1~300cm2でもよいし、10~200cm2でもよい。貼付剤90(粘着剤層92)の長さおよび幅の下限は活性成分の投与量を考慮して定められ、長さおよび幅の上限は生体の大きさを考慮して定められる。
支持体91は、シート状の部材である。支持体91は伸縮性を有してもよい。織布、編布、不織布、不織紙、フィルムなどを支持体91として用いることができ、支持体91の物理的性質(厚さ、伸び、引張り強さ、貼付作業性など)、貼付時の感触、皮膚の密閉性、活性成分の支持体91への移行などを考慮して部材が選択される。
支持体91の具体的な材質は限定されない。支持体91の材質は合成樹脂でもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、セルロース誘導体、ポリウレタンなどでもよい。あるいは、支持体91の材質はアルミニウム等の金属であってもよい。支持体91の形態は、例えば、フィルム、シート、シート状多孔質体、シート状発砲体、布帛(たとえば織布、編布、不織布等)、箔、およびこれらの積層体などであってもよい。
支持体91の厚みは特に限定されないが、例えば5~1000μmの範囲で設定してもよい。支持体91の厚みを5μm以上とするのは、貼付剤90の取り扱いを容易にするためである。支持体91の厚みを1000μm以下とするのは、支持体91の硬さが付着性に及ぼす影響を防ぐためである。
粘着剤層92は、任意の活性成分を含んでもよい。ここで、「粘着剤層が活性成分を含む」とは、粘着剤層がその中に活性成分を含有する態様と、活性成分が粘着剤層の作用面に付着した態様との双方を含む概念である。粘着剤層92が活性成分を含まず、フィルム、ガーゼなどが活性成分を含み、粘着剤層92が該フィルム、ガーゼなどの周囲を覆う構造(例えば、絆創膏のような構造)が採用されてもよい。粘着剤層92の材料は、粘着性を有し皮膚に貼り付けることができれば特に限定されない。
テープ剤、含浸剤、フィルム製剤のための粘着基剤として、ゴム系粘着剤、アクリレート系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、およびこれらの組合せなどが用いられてもよい。
必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、経皮吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤、保存剤、紫外線吸収剤、充填剤、安定剤、香料などの添加剤を適宜配合してもよい。
本開示の貼付剤90に任意に備えられる剥離ライナー93は限定されず、公知のものを適宜採用することができる。剥離ライナー93の材質は合成樹脂でもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、セルロース誘導体、ポリウレタンなどでもよい。あるいは、剥離ライナー93の材質はアルミ箔、紙などでもよい。あるいは、剥離ライナー93の材質はこれらの積層体から成るフィルムであってもよい。剥離ライナー93を容易に剥離できるように、剥離ライナー93の表面にシリコーンコートなどの離型処理が施されてもよい。
[アプリケーション・キットの構成]
図3は実施形態に係るアプリケーション・キット1の上側からの斜視図である。図4はアプリケーション・キット1の下側からの斜視図である。図5はアプリケーション・キット1の六面図である。アプリケーション・キット1は、マイクロニードル・シート80(第1シート部材)を備えるアプリケータ2と、貼付剤90(第2シート部材)を備えるカートリッジ3とを備える。図3~図5では貼付剤90を省略している。アプリケータ2はカートリッジ3を着脱可能に保持することができる。ユーザがアプリケータ2の側部にカートリッジ3を取り付けることで、アプリケータ2およびカートリッジ3のセットがアプリケーション・キット1として機能する。
ユーザはこのアプリケーション・キット1を皮膚上で動かすことで、マイクロニードル・シート80で皮膚を穿刺した上で貼付剤90をその皮膚に適用する。貼付剤90の適用を終えた後は、ユーザはカートリッジ3をアプリケータ2から外して新しいカートリッジ3をアプリケータ2に取り付けることで、別の新たな貼付剤90を皮膚に適用することができる。マイクロニードル・シート80はアプリケータ2から連続的に供給され、皮膚に適用されたマイクロニードル・シート80はアプリケータ2内に回収されるので、マイクロニードル・シート80が適用されるのは一時的である。このように、アプリケータ2は繰り返し利用ができる器具であるのに対して、カートリッジ3は使い捨ての器具である。
本実施形態では、アプリケーション・キット1の使用時に皮膚に接する側をアプリケーション・キット1の下側と定義し、その反対側をアプリケーション・キット1の上側と定義する。また、カートリッジ3が取り付けられる側をアプリケーション・キット1の後ろ側または背面側と定義し、その反対側をアプリケーション・キット1の前側または正面側と定義する。また、アプリケーション・キット1の上下方向(高さ方向)および前後方向の双方と直交する方向をアプリケーション・キット1の幅方向と定義する。このように定義された方向を、アプリケータ2単体およびカートリッジ3単体の説明でも用いる。
[アプリケータの構成]
図6は実施形態に係るアプリケータ2の上側からの斜視図である。図7はアプリケータ2の下側からの斜視図である。図8はアプリケータ2の六面図である。図9および図10はアプリケータ2の内部構造を示す斜視図である。アプリケータ2は、マイクロニードル・シート80を収容するアプリケータ本体10と、そのアプリケータ本体10を上から覆うようにアプリケータ本体10に取り付けられたキャップ20とを備える。本実施形態では、アプリケータ本体10およびキャップ20のいずれも縦長の直方体状を呈し、この結果、アプリケータ2も全体として縦長の直方体状を呈する。アプリケータ本体10は、皮膚と向かい合う平面状の底板11と、底板11に設けられた曲げ部12とを備える。マイクロニードル・シート80はアプリケータ本体10内にセットされ、ユーザによるアプリケータ2の操作によりアプリケータ本体10内から曲げ部12へと進み、曲げ部12で曲げられてから皮膚に適用される。皮膚に適用されたマイクロニードル・シート80はアプリケータ本体10内へと戻る。
キャップ20は、アプリケータ本体10の高さ方向に沿って移動することができる。具体的には、キャップ20はその高さ方向に沿って、底板11に向かってまたは底板11から離れる方向に平行移動することができる。
アプリケータ本体10に対するキャップ20のこのような動きは、アプリケータ本体10とキャップ20との間で高さ方向に沿って延びる圧縮ばね21により制御される。圧縮ばね21は、底板11から離れる方向に働く弾性力をキャップ20に付与することでアプリケータ本体10に対するキャップ20の動きを制御する弾性部材の一例である。本実施形態では圧縮ばね21は線形のコイルばねであるが、圧縮ばねの種類は限定されず、例えば非線形のコイルばねであってもよい。圧縮ばね21の一端はアプリケータ本体10の上面に取り付けられ、他端はキャップ20の天井に取り付けられる。しかし、底板11から離れる方向に働く弾性力をキャップ20に付与することができるのであれば、圧縮ばね21(弾性部材)の具体的な取付位置は何ら限定されない。例えば、圧縮ばね21の一端がアプリケータ本体10の内部の任意の箇所に取り付けられてもよい。
圧縮ばね21の弾性力により、キャップ20が底板11に向けて一定以上の力で押されない限り、キャップ20は底板11から遠ざけられた状態にある。本実施形態では、キャップ20に外力が掛かってキャップ20が底板11に向かって移動した状態を「押下状態」といい、キャップ20が底板11に向かって移動していない状態を「非押下状態」という。非押下状態はアプリケータ2およびキャップ20の自然な状態であるともいえる。圧縮ばね21の構造または弾性力は、マイクロニードル・シート80(第1シート部材)が皮膚に適用された際にそのマイクロニードル・シート80に一定以上の押圧力が掛かるように設計されてもよい。
アプリケータ本体10の底板11の下面は平面である。底板11の下面に線状の突起または点在する突起が形成されてもよい。底板11の一部を皮膚に向かって隆起させることで、マイクロニードル・シート80(第1シート部材)がその突起により皮膚に向かって押さえつけられるので、マイクロニードル・シート80をより確実に皮膚に適用することができる。ただし、この突起は必須の要素ではない。
アプリケータ本体10は、皮膚に適用される前のマイクロニードル・シート80が巻かれた第1リール31と、皮膚に適用されたマイクロニードル・シート80を巻き取る第2リール32という二つのリールを備える。本実施形態では、底板11および曲げ部12に近い側に第1リール31が位置し、第1リール31の上に第2リール32が位置する。
マイクロニードル・シート80は、マイクロニードル82の先端の方向が、第1リール31から第2リール32へと向かう方向と一致するように、アプリケータ2に予めセットされる。マイクロニードル・シート80は皮膚に適用される前および後にはアプリケータ2内に収容され、底板11に沿った部分のみがアプリケータ2から露出するに過ぎない。マイクロニードル・シート80(第1シート部材)の露出を抑えることは、マイクロニードル・シート80の安全な取扱いに資する。アプリケータ2にセットされるマイクロニードル・シート80の主面81aの一部(例えば、幅方向における両端部)には、皮膚との摩擦を生み出してマイクロニードル・シート80を円滑に進めるための粘着層が設けられてもよい。
第1リール31から第2リール32へと続くマイクロニードル・シート80の進行路に沿ってアプリケータ本体10の構成要素を説明する。第1リール31から引き出されたマイクロニードル・シート80は、底板11の前側に設けられた曲げ部12で曲げられて、皮膚に適用される。皮膚に適用されている間、マイクロニードル・シート80はその皮膚と底板11とで挟まれた状態になる。皮膚に適用されたマイクロニードル・シート80は、底板11の後ろ側に設けられた引き込み部13が来た時に皮膚から離されてアプリケータ2の内部へと引き上げられる。引き込み部13を通ったマイクロニードル・シート80は、案内ローラ14を通って第2リール32へと至る。
曲げ部12は、押下状態の下で進行してきたマイクロニードル・シート80を曲げることで該マイクロニードル・シート80を皮膚に適用する直線状の機械要素である。曲げ部12は幅方向に沿って直線状に延び、幅方向に沿った曲げ部12の長さはマイクロニードル・シート80の幅に対応する。マイクロニードル・シート80を曲げてマイクロニードル82を主面81aから立ち上げることができるのであれば、曲げ部12の具体的な形状または構造は限定されない。例えば、曲げ部12は細長い円柱部材で構成されてもよく、この場合には、曲げ部12は、マイクロニードル・シート80の進行をより円滑にするために回転可能に設けられてもよいし、回転しなくてもよい。底板11の前端(前方の一辺)が曲げ部12として機能してもよい。「底板に設けられた曲げ部」とは、底板そのものにまたは底板の付近に曲げ部が設けられることを意味する。したがって、底板11の付近に設けた円柱部材も、底板11の端部も、底板11に設けられた曲げ部の一種である。
引き込み部13は、皮膚に適用されたマイクロニードル・シート80をその皮膚から離して第2リール32へと案内する機械要素である。マイクロニードル・シート80を第2リール32へと案内できるのであれば、引き込み部13の具体的な形状または構造は限定されない。例えば、引き込み部13は細長い円柱部材で構成されてもよく、この場合には、引き込み部13は、マイクロニードル・シート80の進行をより円滑にするために回転可能に設けられてもよいし、回転しなくてもよい。底板11の後端(後方の一辺)が引き込み部13として機能してもよい。「底板に設けられた引き込み部」とは、底板そのものにまたは底板の付近に引き込み部が設けられることを意味する。したがって、底板11の付近に設けた円柱部材も、底板11の端部も、底板11に設けられた引き込み部の一種である。
案内ローラ14は、引き込み部13から進んできたマイクロニードル・シート80を第2リール32へと進める、幅方向に延びる円柱部材である。案内ローラ14は回転可能であり、これによりマイクロニードル・シート80を円滑に送り出すことができる。案内ローラ14は回転しなくてもよい。この案内ローラ14は必須の構成要素ではなく、したがって省略されてもよい。
一例では、第1リール31と第2リール32との間に中間歯車33が設けられる。中間歯車33は、第1リール31の歯車と噛み合うと共に第2リール32の歯車とも噛み合う。この中間歯車33を介して、マイクロニードル・シート80を供給する第1リール31と該マイクロニードル・シート80を回収する第2リール32とが連動する。
アプリケータ本体10の一側部(より具体的には、後ろ側)には、カートリッジ3を着脱可能に保持するホルダ40が設けられる。このホルダ40は高さ方向に沿って移動することができ、この移動の少なくとも一部は、ホルダ40の内側に設けられた圧縮ばね22の弾性力によって制御される。圧縮ばね22は、キャップ20の天井に向けて働く弾性力をホルダ40に付与することでホルダ40の動きを制御する弾性部材の一例である。本実施形態では、ホルダ40がカートリッジ3を保持した状態を「保持状態」といい、ホルダ40がカートリッジ3を保持していない状態を「非保持状態」という。非保持状態はホルダ40の自然な状態であるともいえる。ホルダ40が非保持状態から保持状態に遷移する際には、ホルダ40はキャップ20の天井から離れるように、すなわち下方に移動する。ホルダ40が保持状態から非保持状態に遷移する際には、ホルダ40はキャップ20の天井に近づくように、すなわち上方に移動する。したがって、ホルダ40は、カートリッジ3を保持しない場合はアプリケータ本体10の高さ方向において第1位置に位置し、カートリッジ3を保持しているときは、該高さ方向において、該第1位置よりもアプリケータ本体10の底部に近い第2位置に位置する。
一例では、ホルダ40は、高さ方向に沿って延びる支持面41と、その支持面41から側方に延びる二つの支持爪42とを備える。より具体的には、二つの支持爪42は、支持面41の下端の両端部に設けられ、該下端から後方に向かってほぼ水平に延びる。支持面41はカートリッジ3を高さ方向に沿って保持する役割を担い、二つの支持爪42はカートリッジ3を下から支える役割を担う。一例では、ホルダ40は、幅方向に沿って延びる小さな制御ロッド43と、高さ方向に延びる鉛直ロッド44とをさらに備える。制御ロッド43は、高さ方向に沿ったホルダ40の動きを制御するための機械要素であり、支持面41の側部に設けられたアーム45の下端に設けられる。アーム45は弾性を有する。鉛直ロッド44は、後述するストッパ70を制御するために設けられる。鉛直ロッド44の上部は下部よりも太くなっており、上部および下部の境界には段44aが形成される。支持面41には、幅方向に沿って並ぶ二つの係合孔46が設けられる。この係合孔46は、ホルダ40と後述するラックギア60とを一体化させるために用いられる。
一例では、制御ロッド43は、ホルダ40の横に設けられる案内路50に嵌め込まれる。ホルダ40が高さ方向に沿って移動する際には、制御ロッド43が案内路50に沿って進むことで、ホルダ40のその動きが制御される。案内路50は、ホルダ40が非保持状態から保持状態に遷移する際に制御ロッド43が通る第1通路51と、ホルダ40が保持状態から非保持状態に遷移する際に制御ロッド43が通る第2通路52とを含む。第1通路51は、ホルダ40が第1位置から第2位置に移動する際に制御ロッド43が通る通路であり、第2通路は、ホルダ40が第2位置から第1位置に移動する際に制御ロッド43が通る通路である。
第1通路51と第2通路52とは、ホルダ40が非保持状態であるときに制御ロッド43が位置する第1端点53と、ホルダ40が保持状態であるときに制御ロッド43が位置する第2端点54との2ヵ所で合流する。第1端点53は、ホルダ40が第1位置にあるときに制御ロッド43が位置する場所であり、第2端点54は、ホルダ40が第2位置にあるときに制御ロッド43が位置する場所である。第1端点53は第2端点54よりも上に位置する。第1通路51は第1端点53から下方に延び、下端(第1折り返し点55)で上方に折り返して第2端点54に至る。第2通路52はその第2端点54から下方に延び、下端(第2折り返し点56)で上方に折り返して第1端点53に至る。第1通路51の下端と、第2端点54と、第2通路52の下端とを結ぶ線はV字状を呈する。高さ方向に沿って見た場合には、第2端点54は第1折り返し点55および第2折り返し点56の双方よりも第1端点53の近くに位置する。
一例では、ホルダ40はラックギア60と一体化される。ラックギア60は、マイクロニードル・シート80を予め定められた距離だけ第1リール31から第2リール32に進めるための機械要素である。一例では、ラックギア60は高さ方向に沿って延び、第2リール32のラチェットギアと噛み合う。一例では、ラックギア60とホルダ40とを接続する接続板61のうち、ホルダ40とほぼ並行する部分には、幅方向に沿って並ぶ二つの係合爪62が形成される。二つの係合爪62は二つの係合孔46に嵌め込まれ、これによりホルダ40とラックギア60とが一体化される。係合孔46には、高さ方向に沿った隙間が設けられる。ラックギア60は、ホルダ40と一体化することで、ホルダ40の動きに連動して高さ方向(言い換えると、ラックギア60の長手方向)に沿って移動する。ここで、ラックギア60の長手方向とは、ラックギア60の歯が並ぶ方向のことをいう。
一例では、アプリケータ本体10はストッパ70をさらに有する。ストッパ70は第1リール31および第2リール32の動きを制限するための機械要素である。一例では、ストッパ70は水平方向に沿って延びる棒状を呈し、第2リール32の上方に設けられる。ストッパ70の第1端71はホルダ40の鉛直ロッド44と近接するように位置し、ストッパ70の第2端72は第2リール32の歯車32aに嵌まるように形成される。ストッパ70が第2リール32の歯車32aに嵌まる構造は、ストッパが第1リールおよび第2リールの少なくとも一方のリールに接触することでこれら二つのリールの回転を妨げる一例である。
ストッパ70の中央には回転軸73が設けられ、ストッパ70はこの回転軸73を中心に、限られた角度の範囲内で回転することができる。ストッパ70は、第2端72の上方に設けられた圧縮ばね23の弾性力によって制御される。圧縮ばね23は、第2端72を第2リール32の歯車32aに押し付ける弾性力をストッパ70に付与することでストッパ70の動きを制御する弾性部材の一例である。第1端71付近には、上方に延びる突起74が設けられる。この突起74は、押下状態においてキャップ20の天井と接する。第1端71付近には、後方に向かってほぼ水平に延びる回転爪75がさらに設けられる。回転爪75は、自然状態ではほぼ水平に延びるように位置し、上方への力を受けると、第1端71の付近を中心に、限られた角度の範囲内で回転する。回転爪75のこのような動きはねじりばね(図示せず)により制御される。
ストッパ70が回転することで、第2端72が歯車32aに嵌まるか、または歯車32aから外れる。本実施形態では、第2端72が歯車32aに嵌まった状態を「ストッパが閉じる(または、閉じている)」ともいい、第2端72が歯車32aから外れた状態を「ストパが開く(または、開いている)」ともいう。
一例では、アプリケータ本体10は、ホルダ40よりも後方の底部に位置する、回転可能な押圧ローラ15をさらに備える。押圧ローラ15は幅方向に沿って延びるように設けられる。上下方向において、押圧ローラ15の最下点は底板11の位置とほぼ同じである。すなわち、押圧ローラ15の最下点は底板11の位置よりも上または下であってもよいし、底板11の位置と同じでもよい。押圧ローラ15は、カートリッジ3上の貼付剤90を皮膚へと案内し、皮膚上に貼られた貼付剤90に接することで、皮膚への貼付剤90の適用を支援する。
一例では、アプリケータ本体10は、曲げ部12の前方に位置する先行板16を備えてもよい。高さ方向における先行板16の位置は底板11とほぼ同じであり、したがって、先行板16はアプリケーション・キット1の使用時に皮膚に接する。先行板16は、マイクロニードル・シート80が皮膚に適用される前にその皮膚を伸ばす役割を担う。
キャップ20の後ろ側の上部には、ホルダ40に対応するスロット24が設けられる。スロット24は、カートリッジ3をアプリケータ2に取り付けるための挿入口であり、該挿入口は、幅方向に沿って延びる細長い形状を呈する。スロット24の内部空間は高さ方向に沿って延びる。スロット24と連通する内部空間はホルダ40とキャップ20の内壁とを用いて形成される。カートリッジ3はこの内部空間に収容されて、ホルダ40によって保持される。したがって、平板状のカートリッジ3は、アプリケータ本体10の高さ方向に沿って延びるように配された状態で、ホルダ40により保持される。
[カートリッジの構成]
図11はカートリッジ3の斜視図であり、図12はカートリッジ3の六面図である。図13は図11のXIII-XIII線断面図である。一例では、カートリッジ3は平板状を呈し、貼付剤90(第2シート部材)と、この貼付剤90を支持するカートリッジ本体100とを備える。貼付剤90がカートリッジ本体100に取り付けられることによりカートリッジ3が形成される。
カートリッジ本体100は平板状の部品である。カートリッジ本体100の下部の両端は切り欠き101が形成される。切り欠き101はホルダ40の支持爪42に対応し、それぞれの切り欠き101が支持爪42上に載ることでカートリッジ3がホルダ40によって保持される。カートリッジ3がアプリケータ2にセットされた際に、高さ方向においてカートリッジ3の下端が底板11とほぼ同じ位置になるように、切り欠き101が形成される。したがって、アプリケーション・キット1の使用時に、カートリッジ3の下端は、皮膚に接するように位置する。カートリッジ本体100の主面の少なくとも一部には、貼付剤90の粘着剤層92の作用面を保護するためのライナー102が設けられる。第2シート部材が貼付剤90である場合には、ライナー102は剥離ライナー93の変形であるということができる。ライナー102は第2シート部材の作用面を保護する。一例では、ライナー102はカートリッジ本体100の主面の全体(言い換えると、カートリッジ本体の全周)を覆うように設けられてもよい。ライナー102の少なくとも一部の上には貼付剤90が設けられる。本実施形態では、貼付剤90はカートリッジ本体100の背面(アプリケーション・キット1の使用時に後ろ側を向く面)に設けられる。貼付剤90の適用を考慮し、貼付剤90の一端はカートリッジ本体100の下端付近に位置してもよい。
アプリケータ2およびカートリッジ3を作製するための材料は限定されない。例えば、その材料はアクリル等のプラスチックでもよいし、金属でもよいし、他の種類の樹脂などでもよいし、これらの組合せでもよい。
アプリケーション・キット1の寸法(アプリケータ2およびカートリッジ3の寸法)は任意の基準で決めてよい。例えば、アプリケーション・キット1の幅はマイクロニードル・シート80および貼付剤90の幅に応じて決めてもよい。また、アプリケーション・キット1の高さおよび全長(前後方向に沿った長さ)はその操作性を考慮して決めてもよい。
[カートリッジの着脱に関する仕組み]
図14~図18はいずれも、カートリッジ3の着脱に関するアプリケータ2の内部構造の仕組みを示す斜視図である。これらの図を参照しながらその仕組みについて説明する。
図14は非保持状態を示す。この非保持状態では、ホルダ40は移動可能範囲での最高点に位置し、制御ロッド43は案内路50の第1端点53に位置する。接続板61の係合爪62はホルダ40の係合孔46の下端に位置する。ストッパ70の第2端72は第2リール32の歯車32aに嵌まっている(すなわち、ストッパ70は閉じている)。鉛直ロッド44の段44aはストッパ70の第1端71より上に位置する。
スロット24からアプリケータ2内に挿入されたカートリッジ3の切り欠き101はホルダ40の支持爪42に当たる。カートリッジ3がアプリケータ2の内部に向けてさらに押し込まれると、ホルダ40がカートリッジ3によって押されて下方に移動する。図15はこの移動の初期を示す。この段階では、鉛直ロッド44の段44aがストッパ70の回転爪75に当たる。回転爪75は下に向かって回転しないので、第1端71が圧縮ばね23の弾性力に抗して下がり、ストッパ70が回転軸73を中心として回転する。この回転により第2端72が歯車32aから離れる。すなわち、ストッパ70が開く。係合孔46の上端が係合爪62に当たるまでは、ラックギア60は移動しない。
カートリッジ3がアプリケータ2の内部に向けてさらに押し込まれると、図16に示すように、ホルダ40は、制御ロッド43が第1通路を経由して第1折り返し点55に位置するまで、下降し続ける。このとき、アーム45は若干しなる。この間は係合孔46の上端が係合爪62を下に押すので、ラックギア60がホルダ40と連動して長手方向に沿って下方に移動する。この間はストッパ70が開いているので、第2リール32のラチェットギアが少し回転する。したがって、第2リール32および第1リール31が少し回転し、マイクロニードル・シート80が第1リール31から第2リール32へと少し進む。マイクロニードル・シート80が、ニードル領域およびクリアランス領域が交互に並ぶように形成されている場合には、その少しの回転によりニードル領域の前端を曲げ部12の付近に位置させることができる。したがって、ユーザがアプリケーション・キット1を皮膚上で動かした場合に直ぐにそのニードル領域を皮膚に適用することができる。
ホルダ40が下がると、鉛直ロッド44の上端が回転爪75よりも下に位置するので、ストッパ70が鉛直ロッド44による制御から解放され、圧縮ばね23の弾性力により逆方向に回転する。この結果、ストッパ70の第2端72が再び歯車32aに嵌まる。すなわち、ストッパ70が閉じる。
その後にユーザがカートリッジ3の押し込みを止めると、ホルダ40が圧縮ばね22の弾性力により上方に移動する。この移動は、制御ロッド43が第2端点54に到達することで止まり、このとき、係合爪62は係合孔46の下端に位置する。図17はその段階を示す。係合孔46の下端は係合爪62を押し上げないので、ラックギア60は動かない。以上の一連の動作が終了すると、アプリケータ2は保持状態になり、カートリッジ3と一体化する。この結果、アプリケーション・キット1が得られる。
カートリッジ3をアプリケータ2から外すときは、ユーザはカートリッジ3をアプリケータ2の中に向けて押し込む。この操作に応じて、制御ロッド43が第2端点54から第2折り返し点56まで移動する。このとき、アーム45は若干しなる。図18はその状態を示す。ユーザがその押し込み操作を止めると、制御ロッド43が第2通路52を経由して第1端点53に到達するまで、ホルダ40が上方に移動する。このホルダ40の移動に連動してラックギア60も長手方向に沿って上方に移動する。ストッパ70の回転爪75は鉛直ロッド44に押されて上に向かって回転するので、鉛直ロッド44の上方への移動は妨げられない。また、回転爪75はそのように回転することで鉛直ロッド44から伝わる力をかわすので、その力はストッパ70には伝わらない。制御ロッド43が第1端点53に到達すると、アプリケータ2は、図14に示す非保持状態に戻る。
[アプリケーション・キットの使用方法]
図19~図21を参照しながら、アプリケーション・キット1の使用方法を説明する。図19および図20は、アプリケーション・キット1の使用方法を説明するための断面図であり、図20は図19の一部を拡大して示す。図21は穿刺の態様を模式的に示す図である。
まず、ユーザは、貼付剤90の下端が位置する面を後ろ側に向けた上で、カートリッジ3をスロット24からアプリケータ2の中に差し込んでカートリッジ3をアプリケータ2に取り付ける。この差し込み操作により、アプリケータ2およびカートリッジ3が一体化してアプリケーション・キット1が得られる。アプリケータ2に取り付けられたカートリッジ3の下端は押圧ローラ15最下点付近まで達する。貼付剤90の下端は押圧ローラ15に接する。貼付剤90と押圧ローラ15との間に働く摩擦力によって、カートリッジ3は確実にアプリケータ2内で保持される。
続いて、ユーザはアプリケーション・キット1を皮膚Sの上に(より具体的には、活性部分を適用しようとする部位に)置く。アプリケーション・キット1を皮膚Sの上に置いただけの状態では、アプリケーション・キット1は非押下状態(自然状態)にある。この非押下状態ではストッパ70が第2リール32の歯車に嵌まるので、第1リール31および第2リール32の回転が妨げられ、その結果、曲げ部12へのマイクロニードル・シート80の進行も妨げられる。ここで、「回転が妨げられる」とは、第1リール31または第2リール32を強引に回さない限り、第1リール31および第2リール32が回転しない状態を意味する。ストッパ70により、第1リール31および第2リール32の意図しない回転が防止され、したがって、マイクロニードル・シート80(第1シート部材)の意図しない進行を防止することができる。
図19に示すように、ユーザはキャップ20をアプリケータ本体10に向けて押しながら、曲げ部12が存在する側に向けてアプリケーション・キット1を動かす。言い換えると、ユーザはキャップ20を皮膚Sのほぼ真上から押しながら(矢印201を参照)アプリケータ2を前に動かす(矢印202を参照)。押下状態では、キャップ20の天井がストッパ70の突起74を押し下げ、これによりストッパ70が開く。この結果、第2リール32が回転可能になり、この第2リール32と連動する第1リール31も回転可能になる。すなわち、キャップ20は、ストッパ70と第2リール32との接触を解除することで、第1リール31および第2リール32を回転可能にする。
押下状態でアプリケーション・キット1が前に動かされると、マイクロニードル・シート80が第1リール31から第2リール32に向かって進む。曲げ部12に到達するまでは、マイクロニードル82は主面81aに沿って寝た状態にある。押下状態の下で進行してきたマイクロニードル・シート80は曲げ部12で曲げられ、底板11の下面に沿って進行する。すると、図21に示すように、曲がった部分に位置するマイクロニードル82が主面81aから立ち上がり、立ち上がったマイクロニードル82が皮膚Sに刺さる。曲げ部12で一度に立ち上がるマイクロニードル82は、マイクロニードル・シート80の幅方向に沿った一列分である。曲げ部12は、マイクロニードル82と主面81aとの成す角度を大きくし、その大きくなった角度は当然ながら0度より大きく且つ180度未満である。図21に示すように、主面81aから立ち上がったマイクロニードル82が皮膚Sに刺さる際の穿刺角度θ(マイクロニードル82と皮膚Sとが成す角度)も0度より大きく且つ180度未満である。穿刺角度の下限は20度、34度、または40度でもよく、その角度の上限は160度、140度、または100度でもよい。マイクロニードル82を皮膚Sに刺すことができるのであれば、マイクロニードル・シート80が曲げ部12で曲がる角度は例えば135~180度の範囲であってもよく、より具体的には135度、150度、165度、または175度でもよい。
アプリケーション・キット1が前に動かされると、先行板16が皮膚Sを前方に向けて伸ばすので、マイクロニードル・シート80がこれから適用されようとする部分の皮膚Sが伸びる。したがって、ここのマイクロニードル82をより確実に皮膚Sに指すことができる。
皮膚Sに刺さった(適用された)マイクロニードル・シート80は、少しの間アプリケーション・キット1により皮膚Sに向かって押された後、引き込み部13が来た時に皮膚Sから離されてアプリケータ2内に回収される。皮膚Sから離されたマイクロニードル・シート80は案内ローラ14を経由して第2リール32へと至り、第2リール32により巻き取られる。
アプリケータ2に取り付けられたカートリッジ3は、マイクロニードル・シート80が適用された皮膚S上を通る。貼付剤90と接している押圧ローラ15は、アプリケーション・キット1の前方への移動に応じて回転し、ライナー102から離れた貼付剤90の下端を皮膚Sへと誘導する。貼付剤90の下端がライナー102から離れると、貼付剤90の残りの箇所もライナー102から離れ、押圧ローラ15に誘導されて皮膚Sへと至る。この結果、図20に示すように、マイクロニードル・シート80が適用された皮膚Sに貼付剤90が適用される。皮膚Sに至った貼付剤90は押圧ローラ15によって上から圧力を受け、これにより貼付剤90がよりしっかりと皮膚Sに適用される。
本実施形態では、マイクロニードル・シート80および貼付剤90が押下状態の下で皮膚に適用される。この仕組みにより、誰がこのアプリケーション・キット1を用いても、マイクロニードル・シート80および貼付剤90が皮膚に適用された際には一定以上の押圧力がマイクロニードル・シート80および貼付剤90に掛かる。加えて、キャップ20および圧縮ばね21が、底板11とほぼ直交する方向(高さ方向)に沿って曲げ部12の上に位置するので、誰がキャップ20を押しても押圧力はその高さ方向(皮膚とほぼ直交する方向)に沿って働く。これらの仕組みにより押圧力の方向および大きさが所望の範囲内に保たれ易くなるので、マイクロニードル・シート80および貼付剤90の皮膚への適用におけるばらつきを低減することが可能になる。
ユーザがアプリケーション・キット1を所望の距離だけ動かすことで、その距離に対応する皮膚の部分に多数の微細な穴が開き、その部分に貼付剤90が適用される。ユーザはマイクロニードル・シート80および貼付剤90の適用面積を調整して所望の量の活性成分を投与することができる。貼付剤90を皮膚Sに適用し終えた後は、ユーザはカートリッジ3を上方に引くことで、カートリッジ3をアプリケータ2から簡単に外すことができる。
[効果]
本開示の一側面に係るアプリケータは、底部および側部を有するアプリケータ本体と、アプリケータ本体に収容され、第1シート部材が巻かれた第1リールと、アプリケータ本体の底部に設けられ、第1リールから引き出された第1シート部材を皮膚に適用するために第1シート部材を曲げる曲げ部と、アプリケータ本体に収容され、皮膚に適用された第1シート部材を巻き取る第2リールと、アプリケータ本体の側部に設けられるホルダであって、第1シート部材が適用された後に皮膚に適用される第2シート部材を備えるカートリッジを着脱可能に保持する該ホルダとを備える。
本開示の一側面に係るアプリケーション・キットは、第1シート部材を備えるアプリケータと、第1シート部材が適用された皮膚に適用される第2シート部材を備え、アプリケータによって保持されることが可能なカートリッジとを備え、アプリケータが、底部および側部を有するアプリケータ本体と、アプリケータ本体に収容され、第1シート部材が巻かれた第1リールと、アプリケータ本体の底部に設けられ、第1リールから引き出された第1シート部材を皮膚に適用するために第1シート部材を曲げる曲げ部と、アプリケータ本体に収容され、皮膚に適用された第1シート部材を巻き取る第2リールと、アプリケータ本体の側部に設けられ、カートリッジを着脱可能に保持するホルダとをさらに備える。
このような側面においては、ホルダがカートリッジを保持することで、第1シート部材を備えるアプリケータと第2シート部材を備えるカートリッジとが一体化される。したがって、この一体化された器具(アプリケーション・キット)により、2種類のシート部材を用いる活性成分の適用を簡単に行うことができる。
上記のアプリケータを用いることで、第1リールから供給されて皮膚に適用された第1シート部材が第2リールにより自動的に巻き取られるので、ユーザは手で第1シート部材を取り除くことなく、第1シート部材の後に第2シート部材を皮膚に適用することができる。
他の側面に係るアプリケータでは、皮膚と向かい合う底板をさらに備え、曲げ部と、曲げ部とは異なる位置に設けられた引き込み部とが、底板に設けられ、第1シート部材が曲げ部から引き込み部までの範囲にわたって皮膚に適用され、皮膚に適用されたシート部材が引き込み部から第2リールへと案内されてもよい。第1シート部材を皮膚に面で接触させることで、第1シート部材が皮膚に接触する面積が大きくなり、したがって、第1シート部材と皮膚との間に生ずる摩擦力も大きくなる。この摩擦力は第1シート部材の進行と第1リールおよび第2リールの回転とを円滑にする役割を果たす。したがって、第1シート部材を皮膚に面接触させるこの構成により、アプリケータの操作性を高めることができる。
他の側面に係るアプリケータでは、第1リールおよび第2リールの少なくとも一方のリールに接触することで第1リールおよび第2リールの回転を妨げるストッパと、曲げ部に向かって移動してストッパと少なくとも一方のリールとの接触を解除することで、第1リールおよび第2リールを回転可能にするキャップとをさらに備えてもよい。キャップを曲げ部に向けて動かさないと(すなわち、アプリケーション・キットを作動させないと)第1シート部材が進まない。この構成を採用することで、第1シート部材の意図しない進行を防止することができる。
他の側面に係るアプリケータでは、第1リールおよび第2リールのいずれか一方に設けられたラチェットギアと、ラチェットギアと噛み合い、ホルダがカートリッジを保持することに応じて長手方向に沿って動くことで、ラチェットギアを予め定められた角度だけ回転させるラックギアとをさらに備え、ラックギアがラチェットギアを回転させることで、第1シートが第1リールから第2リールに向けて移動してもよい。カートリッジとアプリケータとの一体化に応じて第1シート部材が自動的に所定量だけ動くので、アプリケーション・キットの利用に備えて第1シート部材の位置を事前に調整することができる。
他の側面に係るアプリケータでは、カートリッジが平板状を呈し、カートリッジが、アプリケータ本体の高さ方向に沿って延びるように配された状態で、ホルダにより保持されてもよい。平板状のカートリッジをアプリケータ本体の側部に沿って配することで、アプリケーション・キットの寸法が抑えられる。このことはアプリケーション・キットの小型化に貢献し得る。
他の側面に係るアプリケータでは、ホルダが、カートリッジを保持しないときはアプリケータ本体の高さ方向において第1位置に位置し、カートリッジを保持しているときは、該高さ方向において、第1位置よりも底部に近い第2位置に位置してもよい。カートリッジを保持する場合としない場合とでホルダの位置を変えることで、ユーザはカートリッジが保持されることを自身の操作を通じて直接にまたは間接的に知ることができる。このことは、アプリケータのユーザインタフェースの更なる向上であるということができる。
他の側面に係るアプリケータでは、高さ方向におけるホルダの移動を制御する制御ロッドと、制御ロッドが嵌め込まれる案内路とをさらに備え、案内路が、ホルダが第1位置に位置するときに制御ロッドが位置する第1端点と、ホルダが第2位置に位置するときに制御ロッドが位置する第2端点とを備えてもよい。この制御ロッドおよび案内路の組合せにより、ホルダの移動をより確実に制御することができる。
他の側面に係るアプリケータでは、案内路が、制御ロッドが第1端点から第2端点に移動する際に制御ロッドが通る第1通路と、制御ロッドが第2端点から第1端点に移動する際に制御ロッドが通る第2通路とを備えてもよい。制御ロッドが進む方向に応じて通路を分けることで、ホルダの移動をより確実に制御することができる。
他の側面に係るアプリケータでは、第1通路が第1折り返し点を含み、第2通路が第2折り返し点を含み、第1折り返し点と、第2端点と、第2折り返し点とを結ぶ経路がV字状を呈し、高さ方向において、第2端点が、第1折り返し点および第2折り返し点の双方よりも第1端点の近くに位置してもよい。このように案内路を形成することで、ホルダをより確実に移動および固定させることができる。
他の側面に係るアプリケータでは、ホルダが、アプリケータ本体の高さ方向に沿って延びる支持面と、該支持面から側方に延びる支持爪とを備えてもよい。この構成によりカートリッジをより確実に保持することができる。
他の側面に係るアプリケータでは、ホルダに対応するスロットをさらに備えてもよい。この構成によりカートリッジをより確実に保持することができる。
他の側面に係るアプリケータでは、スロットと連通する内部空間の少なくとも一部がホルダにより形成されてもよい。ホルダが内部空間の少なくとも一部を形成するので、その分だけ、内部空間を構成する部品を節約することができる。
他の側面に係るアプリケータでは、ホルダにより保持されたカートリッジの第2シート部材と接する押圧ローラをさらに備え、押圧ローラが、第2シート部材を皮膚へと案内し、皮膚上に適用された第2シート部材に接してもよい。押圧ローラが第2シート部材と接することでカートリッジの保持に直接にまたは間接的に寄与する。また、押圧ローラは皮膚に適用された第2シート部材に接するので、第2シート部材の確実な適用にも寄与する。
他の側面に係るアプリケーション・キットでは、第1シート部材が、シートの主面に沿って延びる複数のマイクロニードルを有するマイクロニードル・シートであり、第2シート部材が貼付剤であってもよい。この場合には、マイクロニードル・シートおよび貼付剤をほぼ同時に且つ簡単に適用することができる。
[変形例]
以上、本開示をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
上記実施形態では弾性部材としてばねを示したが、弾性部材はばねに限定されない。例えば、アプリケータの構成要素として採用される弾性部材の一部またはすべてがばね以外の弾性体(例えばゴム)であってもよい。
上記実施形態ではマイクロニードル・シート80(第1シート部材)が皮膚に対して面で接触するが、第1シート部材が曲げ部でのみ皮膚に接触するように、すなわち線で接触するようにアプリケータが構成されてもよい。この変形例では、曲げ部が上記の引き込み部13の機能も兼ね、皮膚に適用された第1シート部材は直ぐに皮膚から離されて第2リールへと向かう。このような変形に関連して、アプリケータは底板を備えなくてもよい。
上記実施形態ではストッパ70が第2リール32に接触することで第1リール31および第2リール32の回転を妨げたが、二つのリールに対するストッパの接触の態様はこれに限定されない。例えば、ストッパは第1リールに接触することで、または第1リールおよび第2リールの双方に接触することで、回転を妨げてもよい。
アプリケータ本体がカートリッジを保持できる限り、ホルダの構造は上記実施形態に限定されない。例えば、カートリッジを差し込むために設けられるスロットが省略され、カートリッジを横方向からアプリケータの側面に沿って取り付けるようにホルダが露出してもよい。あるいは、カートリッジを上からではなく横または下から差し込むことができるようにホルダおよびスロットが設けられてもよい。
上記実施形態では、カートリッジ3がアプリケータ2に取り付けられることに応じてマイクロニードル・シート80が第1リール31から第2リール32へと少し動くが、この仕組みは省略可能である。
上述したように、第1シート部材はマイクロニードル・シートに限定されず、第2シート部材は貼付剤に限定されない。本開示の一側面に係るアプリケーション・キットは、任意の種類の第1および第2シート部材のために用いることができる。
アプリケーション・キットを用いて皮膚に第1および第2シート部材を適用する前に、その皮膚(第1および第2シート部材がこれから適用される箇所)に予め活性成分が適用されてもよい。また、第1および第2シート部材が適用された皮膚(第2シート部材が剥がされた箇所)にさらに活性成分が適用されてもよい。
アプリケータ本体内での第1リールおよび第2リールの位置関係は限定されない。例えば、第2リールが曲げ部の近くに位置し、第2リールの上に第1リールが位置してもよい。あるいは、第1リールおよび第2リールが横方向に沿って並んでもよい。上記実施形態ではアプリケータ本体10が中間歯車33を備えるが、中間歯車33を用いることなく、第1リールおよび第2リールが直接に噛み合ってもよい。
上記実施形態では案内路50が第1通路51および第2通路52を備えるが、第1通路51および第2通路52の一方が省略されてもよい。この場合には、制御ロッドは一つの通路を往復する。
アプリケータ本体内の各構成要素の構造は上記実施形態のものに限定されない。アプリケータ本体内の構成要素の一部は省略されてもよい。ストッパを制御したり一定以上の押圧力をシート部材に掛けたりするためのキャップも省略可能である。
カートリッジの構造は上記実施形態のものに限定されない。第2のシート部材を皮膚に適用できる限り、カートリッジは任意の方針で設計されてよい。