JP7045137B2 - β-1,3-グルカンの水分散性を向上させる方法 - Google Patents

β-1,3-グルカンの水分散性を向上させる方法 Download PDF

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Description

本発明は、β-1,3-グルカンの水分散性を向上させる方法、および該方法により得られる水分散性の向上したβ-1,3-グルカンに関する。
カードランは、D-グルコースがβ-1,3結合した非イオン性の直鎖状の多糖類であって、増粘剤やゲル化剤として知られ、食品の物性改良などに広く利用されている。特に、アルカリゲネス属またはアグロバクテリウム属に属する微生物によって生産されるカードランは、その性能や入手が容易であること等から多用されている。
このような、D-グルコースがβ-1,3-グルコシド結合した多糖、すなわちβ-1,3-グルカンには、カードランの他、シゾフィラン、スクレログリカン等がある。
カードランは加熱のみでゲル(カードランゲル)を形成する点で他の多くのゲル化剤と異なり、さらに無味、無臭、無色であるという優れた性質も有する。
しかし、カードランをゲル化目的で使用する場合、均一なゲルを形成させるためには、まずカードランを均一に分散させる必要があり、カッターミキサー等の高速撹拌できる特殊な設備が必要となる。この分散液を加熱すると約50℃で膨潤し、粘度が上昇し、さらに加熱するとゲルが形成される。カードランはアルカリに溶解するため、リン酸三ナトリウムなどのアルカリに溶解してゲルを形成させることもできる(特許文献1~3参照)が、この場合、アルカリによる危険もある上、中和する工程も必要となり、操作が煩雑となる。
水への分散性が向上したカードラン含有組成物としてカードランと塩基性多糖類であるキトサンとを含有する組成物が報告されている(特許文献4)。しかし、カードラン/キトサン含有組成物は一時的に水に分散するものの、分散後、静置すると沈殿してしまう。そのため、より長時間静置しても均一な分散を保ち、工業的に使用しやすいカードランや、効果的な分散方法が求められていた。
特開平9-238653号公報 特開平9-266763号公報 特開平9-289878号公報 特開2002-306090号公報
本発明は、β-1,3-グルカンを、その優れた性質を保持したままで、水に易分散し、かつ長時間静置しても沈殿しにくくする方法、または該性質を有するβ-1,3-グルカンを提供することを目的とする。
本発明は、以下の(1)~(6)に関する。
(1)β-1,3-グルカンと酸性多糖類との複合体。
(2)複合体におけるβ-1,3-グルカンと酸性多糖類との重量比が、β-1,3-グルカン100重量部に対して酸性多糖類5~100重量部である、上記(1)の複合体。
(3)β-1,3-グルカンが、カードランである、上記(1)~(3)いずれか1つの複合体。
(4) 酸性多糖類が、キサンタンガムまたはカラギーナンである、上記(1)または(2)の複合体。
(5)以下の(a)~(c)記載の工程を有する、β-1,3-グルカンと酸性多糖類との複合体の製造方法。
(a)β-1,3-グルカン100重量部に対し、少なくとも10重量部の酸性多糖類を水性媒体中で共存させる工程、
(b)(a)工程で得られた水性媒体にアルコールを添加して沈殿を生成させる工程、
(c)(b)工程で得られた沈殿を回収する工程
(6)β-1,3-グルカン100重量部と少なくとも5重量部の酸性多糖類との複合体を形成させることを特徴とする、β-1,3-グルカンの水分散性を向上する方法。
本発明により、β-1,3-グルカンを、その優れた性質を保持したままで、水に易分散し、かつ長時間静置しても沈殿しにくくする方法、または該性質を有するβ-1,3-グルカンを提供することができる。
図1は、増粘多糖類を水に分散させた際、分散性が低く、時間経過とともに沈降した例を示す図である。
図2は、増粘多糖類を水分散させた際に、分散性が高く、時間経過しても沈降しにくかった例を示す図である。
図3は、増粘多糖類を水分散させてゲル形成させた際に、一部のみがゲル化した例を示す図である。
図4は、増粘多糖類を水分散させてゲル形成させた際に、ほぼ全体がゲル化した例を示す図である。
図5は、増粘多糖類を用いてほうれん草ゲルを調製した際に、ゲル形成が不完全であった例を示す図である。
図6は、増粘多糖類を用いてほうれん草ゲルを調製した際に、ゲル形成が良好であった例を示す図である。
本発明の複合体は、β-1,3-グルカンと酸性多糖類との複合体である。該複合体におけるβ-1,3-グルカンと酸性多糖類の含有量は、通常、β-1,3-グルカン100重量部に対して、酸性多糖類が5~100重量部、好ましくは10~100重量部、より好ましくは20~100重量部、さらに好ましくは25~100重量部である。
β-1,3-グルカンとしては、カードランが好ましくあげられるが、カードラン以外にも、D-グルコースを構成糖とし、該構成糖がβ-1,3-グルコシド結合してなり、カードラン様の性質を有する多糖類であれば、いずれでもよい。例えば、パラミロン、パキマン等[ニュー フード インダストリー(New Food Industry)、第2巻、第49~57頁]があげられる。β-1,3-グルカンは、微生物、動物あるいは植物等、いずれの起源のものであってもよい。入手方法としては、これらから常法により調製して得たものでもよく、市販品を用いてもよい。
カードランとしては、特にアルカリゲネス属またはアグロバクテリウム属に属する微生物によって生産されるカードランが、性能、入手し易さ等から好ましく用いられる。アルカリゲネス属またはアグロバクテリウム属に属する微生物としては、例えばアルカリゲネス フェカリス バール ミクソゲネス10C3K株[アグリカルチュラル バイオロジカル ケミストリー(Agricultural Biological Chemistry),Vol.30, page 196(1966)]、アルカリゲネス フェカリス バール ミクソゲネス10C3K株の変異株NTK-u(IFO 13140)(特公昭48-32673号)、アグロバクテリウム ラジオバクター(IFO 13127)およびその変異株U-19(IFO 13126)により生産される(特公昭48-32674号)ものがあげられる。カードランは、市販されており、容易に入手することができる(例えば、MCフードスペシャリティーズ社製)。
本発明における酸性多糖類とは、その分子構造中に酸性基を含有する多糖類をいう。酸性基としてはカルボキシル基、硫酸基、リン酸基があげられる。
例えば、キサンタンガム、カラギーナン、寒天、ファーセレラン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム、コンドロイチン硫酸、ヘパリン等のムコ多糖類があげられる。また、さらに化学的に酸性基が導入された多糖類、例えばカルボキシメチル化セルロース、カルボキシメチル化澱粉、カルボキシメチル化グア、硫酸化セルロース、硫酸化澱粉、硫酸化寒天、リン酸化セルロース、リン酸化澱粉をあげることができ、特にキサンタンガムおよびカラギーナンが好ましくあげられる。
キサンタンガムは、D-グルコース、D-マンノース、D-グルクロン酸を構成糖にもつ分岐多糖である。キサンタンガムは、微生物であるキサントモナス キャンペストリス(Xanthomonas campestris)を用いて発酵法により産生させ、該発酵液より常法に準じて調製することができるが、市販品(例えば、オルガノフードテック社製)を用いるのが簡便で、好ましい。
カラギーナンは、カラギナン、カラジナン、カラゲニンとも称される、D-ガラクトースと3,6一アンヒドロ-D-ガラクトースと硫酸基からなるガラクタンの硫酸エステルであり、カッパ(κ)、ラムダ(λ)、イオタ(ι)、ミュー(μ)、ニュー(ν)、シータ(θ)およびザイ(ξ)の7種類が見出されているが、現在市場で使用される物はカッパ(κ)、ラムダ(λ)、イオタ(ι)の3つの型に分類されており、本発明においてもカッパ(κ)、ラムダ(λ)、イオタ(ι)が好ましく用いられる。
κ(カッパ)-カラギーナン,λ(ラムダ)-カラギーナンおよびι(イオタ)-カラギーナンの3種は、硫酸根含有量或いはアンヒドロガラクトース単位の含有量により区別され、それぞれゲル化性、蛋白反応性、粘度等の基本的性質が異なる。
本発明に用いられるカラギーナンとしては、硫酸根の多いものが好ましい。したがって、カラギーナンとしては、硫酸根の多い順である、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、κ-カラギーナンの順に好ましい。
カラギーナンは、これを含有する紅藻から抽出、調製してもよいが、市販品(例えば、三菱商事フードテック社製)を用いると簡便で、好ましい。
本発明のβ-1,3-グルカンの水分散性を向上させる方法(以下、本発明の方法ともいう)としては、β-1,3-グルカンと酸性多糖類との複合体を形成させる方法があげられる。
β-1,3-グルカンと酸性多糖類との複合体を形成させる方法としては、β-1,3-グルカンおよび酸性多糖類を水性媒体中で共存させた後、アルコールにより沈殿させる方法、β-1,3-グルカンおよび酸性多糖類を水性媒体中で共存させた後、噴霧乾燥させる方法等があげられるが、β-1,3-グルカンおよび酸性多糖類を水性媒体中で共存させた後、アルコールにより沈殿させる方法が好ましい。
β-1,3-グルカンと酸性多糖類を水溶液中で共存させる方法としては、例えば、水性媒体、好ましくは水にβ-1,3-グルカンおよび酸性多糖類を溶解させる方法があげられる。
カードランのように水に不溶なβ-1,3グルカンは、必要に応じてアルカリ性に調整して溶解させる。
アルカリ性に調整するために使用するアルカリとしては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムおよびジメチルスルホキシド等が挙げられる。pHはβ-1,3-グルカンの種類および量により適宜調整すればよいが、β-1,3-グルカンがカードランである場合、pH11以上となるように調整することが好ましい。
水性媒体のアルカリ性への調整は、β-1,3-グルカンおよび酸性多糖類の水性媒体への添加の前後のいずれの段階に行ってもよい。
β-1,3-グルカンと酸性多糖類とは、水性媒体に溶解させることができれば別々に添加しても、あらかじめβ-1,3-グルカンと酸性多糖類との混合物として調製し、然る後に水性媒体に添加してもよい。
水性媒体への添加は、β-1,3-グルカンや酸性多糖類のままこ(だま)形成を防止するため、水性媒体を撹拌しながら行うことが好ましい。また、溶解させる際は、適度に加温しながら行うことが好ましいが、水性媒体の温度はβ-1,3-グルカンが熱不可逆性のゲルを形成する温度を超えないように注意する。例えば、β-1,3-グルカンがカードランである場合は80℃を超えないように、必要に応じて加温する。
水性媒体に添加するβ-1,3-グルカンの量は、水性媒体100重量部に対して、1~20重量部が好ましく、2~10重量部がより好ましい。
また、水性媒体中でβ-1,3-グルカンと共存させる酸性多糖類の量は、β-1,3-グルカン100重量部に対して、好ましくは10~200重量部、より好ましくは20~100、さらに好ましくは25~100重量部である。
β-1,3-グルカンおよび酸性多糖類を水性媒体中で共存させた後、該水性媒体にアルコールを加え、必要に応じて撹拌し、また、必要に応じて冷却すると沈殿を生成させることができる。
アルコールとしては、いずれのアルコールであってもよいが、、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1~4の1価のアルコールが好ましくあげられる。
添加するアルコールの量は水性媒体100重量部に対して、通常、50~200重量部である。アルコールの添加は、複数回に分けて行ってもよい。
アルコール添加後の冷却は、必要に応じて行えばよいが、30℃以下、好ましくは20℃以下となるように冷却することが好ましい。
生成した沈殿を、遠心分離やろ過等の方法でろ液と分離して、回収する。このようにして得られた沈殿は、β-1,3-グルカン100重量部に対し、酸性多糖類を通常5~100重量部、好ましくは10~100重量部、より好ましくは20~100重量部、さらに好ましくは25~100重量部含有するβ-1,3-グルカンと酸性多糖類との複合体を主成分とする組成物(以下、便宜上、該組成物も本発明の複合体ということもある)として扱うことができる。
該沈殿は、そのまま本発明に用いてもよいが、必要に応じて中和した後、再度アルコールに懸濁するなどして、洗浄して用いてもよい。また、必要に応じて、気流乾燥法(フラッシュドライ法)、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、ドラム乾燥法(ドラムドライ法)、真空乾燥法、凍結乾燥法(フリーズドライ法)等の各種乾燥方法により乾燥させて、固形化や粉末化して用いてもよい。
本発明の複合体は、必要に応じて他の飲食品添加剤を加えて、例えば粉末、顆粒、ペレット、錠剤等の形態に加工製造してもよい。造粒する際には、例えば流動層造粒、攪拌造粒、押し出し造粒、転動造粒、気流造粒、圧縮成形造粒、解砕造粒、噴霧造粒、噴射造粒等の造粒方法が用いられる。
本発明の複合体は、β-1,3-グルカンと酸性多糖類とを単なる物理的手段により混合して得られる混合物とは明らかに異なる。
例えば、混合物と複合体をアルコールに分散させ、β-1,3-グルカン様物質またはβ-1,4-グルカン様物質と錯体を形成する物質であるアニリンブルーで染色処理を行い、アルコールで洗浄を繰り返すと、混合物ではアニリンブルーで染色されない酸性多糖類部分が観察されるのに対し、複合体では一様に染色される。
本発明の複合体は、β-グルカナーゼ(例えば、フィルトラーゼ:ディー エス エム ジャパン社製)で処理することでカードランと酸性多糖類とに分離し得る。したがって、本発明の複合体をアルコール等、好ましくは含水アルコールで洗浄して複合体を形成していない酸性多糖類を除去した後、β-グルカナーゼで処理し、生成したD-グルコースの重量を差し引くことで、本発明の複合体中の酸性多糖類量を定量することができる。
本発明の複合体は、複合体を形成させる前のβ-1,3-グルカンの優れた性質、すなわち、加熱凝固性や耐熱性等を保持している上、水へ均一分散させる際に高速ミキサー、ホモジナイザー等の特別な懸濁機器を必要とせず、比較的低速の撹拌で均一な分散液を調製することができる。該分散液においては一定時間静置しても、沈殿しにくいという長所を有する。
本発明の複合体は、複合体を形成していない通常のβ-1,3-グルカンと同様に、ゲル化剤、増粘剤、品質改良剤として、そのまま、または必要に応じて他の成分とともに用いて飲食品(介護食含む)、化粧品、医薬部外品、飼料、水産養殖飼料、医薬品等に使用することができる。とくに、介護食は、介護の現場で調製するにあたって、特別な撹拌機器が不要であることは大きなメリットであり、本発明の複合体を用いるのに適している。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)複合体の調製
カードラン(MCフードスペシャリティーズ社製。平均粒子径100μm以上。以下、同じ。)87重量部およびキサンタンガム(オルガノフードテック社製。商品名:オルノーX1)13重量部を混合して混合物を得た。該混合物を、撹拌中の水に少しずつ添加して分散させた。得られたカードランの分散液に水酸化ナトリウムを少量ずつ撹拌しつつ添加し、カードランおよびキサンタンガムをそれぞれ完全に溶解させた。該溶液の入った容器を60℃の水層に入れ、溶液を20分間撹拌した。
次いで、該溶液にアルコールを少量ずつ添加し、撹拌しつつ16℃まで冷却して沈殿を生成させた。沈殿が新たに生成しなくなるまでアルコールを添加した後、塩酸で中和を行い、ろ過して残渣を回収した。回収した残渣を再度、前記アルコールに再懸濁し、ろ過により回収し、凍結乾燥した。この凍結乾燥物を粉砕し、得られた乾燥物をカードランとキサンタンガムとの複合体[以下、単にキサンタンガム複合体(87:13)という。]として、以下の試験に用いた。
また、上記キサンタンガム複合体の調製において、キサンタンガムの代わりにカッパ(κ)-カラギーナン(三菱商事フードテック社製。商品名:CAM-1000。以下、同じ。)を用いる以外は同様の操作を行って、カードランとカッパ(κ)-カラギーナンとの複合体[以下、単にκ-カラギーナン複合体(87:13)という。]を調製した。
また、上記キサンタンガム複合体の調製において、キサンタンガムの代わりにイオタ(ι)-カラギーナン(三菱商事フードテック社製。商品名:GJ-300。以下、同じ。)を用いる以外は同様の操作を行って、カードランとイオタ(ι)-カラギーナンとの複合体[以下、単にι-カラギーナン複合体(87:13)という。]を調製した。
また、上記キサンタンガム複合体の調製において、キサンタンガムの代わりに塩基性多糖類であるキトサン(キミカ社製)を用いる以外は同様の操作を行って、カードランとキトサンとの複合体[以下、単にキトサン複合体(87:13)という。]を調製した。
(2)分散性の確認
カードラン(上記で説明したもの。通常品ともいう。)、カードランの微粉砕品(MCフードスペシャリティーズ社製。商品名:カードランNS。平均粒子径30μm以下。以下、同じ。)、(1)で調製したキサンタンガム複合体(87:13)、(1)で調製したκ-カラギーナン複合体(87:13)、(1)で調製したι-カラギーナン複合体(87:13)、(1)で調製したキトサン複合体(87:13)、カードラン87重量部とキサンタンガム13重量部を混合して調製した混合物[以下、キサンタンガム混合体(87:13)という]、カードラン87重量部とκ-カラギーナン13重量部を混合して調製した混合物[以下、κ-カラギーナン混合体(87:13)という]およびカードラン87重量部とι-カラギーナン13重量部とを混合して調製した混合物[以下、ι-カラギーナン混合体(87:13)という]を、それぞれ水に2重量%となるように加え、スターラーで20分間撹拌して、各増粘多糖類を水に分散させた。
撹拌後、各分散液を、速やかに100mLメスシリンダーに移し、60分間静置させた後、メスシリンダー中の水層部分の上限値と下限値を読み取った。
該値を、以下の式にそれぞれ代入して、各増粘多糖類の分散性(便宜上、百分率で表示する)として算出した。たとえば、静置60分間後でも完全に分散していれば分散性の指標は100%であり、完全に沈降していれば、分散性の指標は約2%である。
分散性(%) =水層の下限値(mL)/水層の上限値(mL)×100
分散性の測定結果を、第1表に示す。
また、分散性の低いものの例を図1に、分散性の高いものの例を図2に示す。
Figure 0007045137000001
第1表に示すとおり、カードランを、酸性多糖類であるキサンタンガムまたはカラギーナンと複合体を形成させることで、カードランの水分散性が明らかに向上した。係る分散性の向上は、塩基性多糖類であるキトサンとの複合体[キトサン複合体(87:13)]と比べても顕著であった。
なお、カードランとキサンタンガムとを混合した場合[キサンタンガム混合体(87:13)]も、カードランの水分散性が向上したが、後述の試験(3)で示すとおり、キサンタンガム混合体(87:13)は、ゲル強度において、カードランとの複合体より劣っていた(表2参照)。
(3)ゲル化能の確認
カードラン、カードランの微粉砕品、(1)で調製したキサンタンガム複合体(87:13)、(1)で調製したκ-カラギーナン複合体(87:13)、(1)で調製したι-カラギーナン複合体(87:13)、(1)で調製したキトサン複合体(87:13)、(1)で調製したキサンタンガム混合体(87:13)、(1)で調製したκ-カラギーナン混合体(87:13)、(1)で調製したι-カラギーナン混合体(87:13)を、それぞれ、水に3重量%となるように加え、20分間スターラーで撹拌した。
脱気操作を3分間行った後、それぞれケーシングチューブ(直径30mm、長さ150mm)に充填し、試験管立てに立てて30分間静置させた。静置後、95℃で30分間加熱し、放冷後、25℃でさらに20時間静置した。
静置後、κ-カラギーナン複合体(87:13)とι-カラギーナン複合体(87:13)には十分なゲル形成が認められなかった。そこで、上記(1)記載の方法に準じてカードランとκ-カラギーナンとの複合体(複合体形成前の重量比で80:20)およびカードランとι-カラギーナンとの複合体(複合体形成前の重量比で50:50)を、それぞれκ-カラギーナン複合体(80:20)とι-カラギーナン複合体(50:50)として新たに調製した。また、各複合体における増粘多糖類の重量比に合わせて、それぞれの混合物である、κ-カラギーナン混合体(80:20)とι-カラギーナン混合体(50:50)をそれぞれ調製した。
新たに調製したκ-カラギーナン複合体(80:20)、ι-カラギーナン複合体(50:50)、κ-カラギーナン混合体(80:20)およびι-カラギーナン混合体(50:50)も用いて、再び同様な操作により試験を行ったところ、複合体では、いずれも均一なゲル化が認められた。そこで、内容物を含むケーシングチューブの重量(全体重量)、ケーシングチューブ中の固形物の重量(ゲル重量とみなす)およびケーシングチューブ自体の重量(風袋重量)を測定し、各数値を以下の式に代入して、各増粘多糖類の「ゲルを形成し、保水する能力」(以下、ゲル形成/保水性という。便宜上、百分率で表示する。)を算出した。ゲル形成/保水性の値が大きいほど、ゲルを形成しやすく、かつ形成したゲルの保水性が高いと判断する。
ゲル形成/保水性(%)=ゲル重量÷(全体重量-風袋重量)×100
また、各ケーシングチューブ中の固形物(ゲル)の均一性を、必要に応じてゲルを輪切りにして行った。観察の結果を、表2に示す。
また、一部でもゲル形成が認められたものについては、ゲル形成しているように見える部分のゲル強度をレオメーターで測定した。結果を、第2表に示す。ゲル強度はPa(パスカル)を単位として示す。
また、図3に一部がゲル形成しているものの例を示し、図4に全体的にゲル形成しているものの例を示す。
Figure 0007045137000002
第2表に示すとおり、カードランと酸性多糖類との複合体はいずれも均一なゲルを形成し、良好な保水性を示した。
なお、第1表において分散性良好であることが認められたキサンタンガム混合体(87:13)も均一なゲルを形成し、良好な保水性を示したが、ゲル強度については、他の複合体と比較して低かった。
(実施例2)食品への応用例
水および食塩に、実施例1で調製したカードラン、キサンタンガム複合体(87:13)、キサンタンガム混合体(87:13)、κ-カラギーナン複合体(87:13)、およびκ-カラギーナン混合体(87:13)を、それぞれ、最終濃度が2重量%となる量加え、低速(200rpm)で20分間撹拌した。さらに、ほうれん草ペースト(新進社製)を加え、200rpmで5分間撹拌して、3分間脱気した。
脱気処理後、ケーシングチューブ(直径30mm、長さ150mm)に充填し、試験管立てに30分間立てて静置した。静置後、スチーム温度98℃で15分間、スチームコンベクションオーブンに供し、放冷後、冷蔵庫で20時間静置して増粘多糖類濃度が2重量%であるほうれん草ゲルを調製した。
各ほうれん草ゲルの、ゲル形成/保水性、均一性およびゲル強度について、実施例1記載の方法に準じて調べた。また、調製したゲルの耐熱性を調べるため、各ゲルを98℃で15分間再加熱した後のゲルの外観を目視により評価した。
第3表に、加熱処理後もゲルが維持されているものを耐熱性「高」として示し、ゲルが維持されなかったものを耐熱性「低」で示した。
Figure 0007045137000003
第3表に示すとおり、カードランと酸性多糖類との複合体を用いて得られたほうれん草ゲルは、いずれも比較的低速での撹拌にもかかわらず均一なゲルが形成されており、加熱処理後もゲルを維持していた。
一方、カードランと酸性多糖類との混合体を用いて得られたほうれん草ゲルは、カードランとκ-カラギーナン混合体を用いたもののみ均一なゲルを形成し、かつゲル強度も高かった。しかし、該混合体を用いたほうれん草ゲルは、再加熱により、離水が認められ、κ-カラギーナンがゲルの外に溶出した。
ちなみに、κ-カラギーナンの複合体(87:13)は実施例1(3)の試験系においては十分なゲル化が認められなかったのに対し、ほうれん草ペーストを用いた系においては十分なゲル形成が認められた。これは、ほうれん草ペースト中の何らかの成分の作用により、ゲル形成能が強化されたためであると推定される。
(実施例3)複合体の分散性
カードラン80重量部およびι-カラギーナン20重量部を用い、実施例1記載の方法に準じてカードランとι-カラギーナンの複合体(80:20)を調製した。
カードラン、ι-カラギーナン複合体(80:20)および実施例1(3)で調製したι-カラギーナン複合体(50:50)を、それぞれ水に3重量%となる量加え、カードランについては家庭用ジューサーミキサーにて8分間高速撹拌し、脱気操作を3分間行い、複合体については、実施例1記載の方法に準じ、20分間スターラーにて撹拌(低速撹拌)し、脱気操作を3分間行った。
カードランおよび複合体の分散液を調製した後、それぞれケーシングチューブ(直径30mm、長さ150mm)に充填し、試験管立てに立てて30分間静置させた。静置後、95℃で30分間加熱し、放冷後、25℃でさらに20時間静置した。
静置後、各ケーシングチューブをフリーザーにて冷凍し、24時間、流水解凍した。静置後、実施例1記載の方法に準じて、各ゲルの形成/保水性について調べた。
結果を第4表に示す。
Figure 0007045137000004
第4表に示すとおり、カードランとι-カラギーナンとの複合体(2種類)はいずれも、カードランより低速で分散させたにもかかわらず、十分に分散し、良好なゲル生成性を示した。
また、解凍後のゲル形成/保水性についても、カードランとι-カラギーナンとの複合体を用いて得られたゲルは、いずれもカードランと同等以上のゲル形成/保水性を示した。
(実施例4)複合体の調製
実施例1記載のキサンタンガム複合体(87:13)の調製において、乾燥方法として凍結乾燥法を用いる代わりに80℃での熱風乾燥法を用いる以外は同様の操作を行って複合体を得た。該複合体の分散性およびゲル化能を実施例1記載の方法に準じて調べたところ、凍結乾燥法による複合体と同程度の分散性およびゲル化能を有していた。
(実施例5)食品への応用例
実施例2記載の方法において、カードランとしてカードラン微粉砕品を用い、増粘多糖類としてキサンタンガム混合体(87:13)およびキサンタンガム複合体(87:13)を用い、ほうれん草ペーストのかわりにニンジンペーストまたはカボチャペーストを用いる以外は同様の操作を行って、それぞれニンジンゲルおよびカボチャゲルを調製した。
いずれの場合も、ゲルが形成されたが、キサンタンガム複合体(87:13)を用いて得たゲルは離水が最も少なかった。
本発明により、β-1,3-グルカンを、その優れた性質を保持したままで、水に易分散し、長時間静置しても沈殿しにくくする方法、または該性質を有するカードラン組成物を提供することができる。

Claims (1)

  1. 以下の(a)~(c)記載の工程を有する、水分散性の向上したカードランの製造方法。
    (a)カードラン100重量部に対し、少なくとも10重量部のキサンタンガムまたはカラギーナンを水性媒体中で共存させる工程、
    (b)(a)工程で得られた水性媒体にアルコールを添加して沈殿を生成させる工程、
    (c)(b)工程で得られた沈殿を回収する工程
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