以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態のステアリングホイール用エアバッグ(以下、「エアバッグ」と省略する)は、図1,2に示すようなステアリングホイールWに搭載されるステアリングホイール用エアバッグ装置(以下、「エアバッグ装置」と省略する)Mに使用されている。ステアリングホイールWは、ステアリングホイール本体1と、ステアリングホイール本体1の中央のボス部Bの上部に配置されるエアバッグ装置Mと、を備えて構成される。ステアリングホイール本体1は、操舵時に把持する円環状のリング部Rと、リング部Rの略中央に配置されてステアリングシャフトSSに連結されるボス部Bと、ボス部Bとリング部Rとを連結する複数(実施形態の場合、4本)のスポーク部Sと、を備えて構成されている。
なお、実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両Vに搭載されたステアリングホイールWの直進操舵時を基準とするものであり、ステアリングホイールWを組み付けるステアリングシャフトSS(図2参照)の軸方向に沿った上下を上下方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両Vの前後を前後方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両Vの左右を左右方向として、前後・上下・左右の方向を示すものである。
ステアリングホイール本体1は、図1,2に示すように、リング部R、ボス部B、スポーク部Sの各部を連結するように配置されて、アルミニウム合金等の金属からなる芯金3を、備えている。芯金3におけるリング部Rの部位と、各スポーク部Sにおけるリング部R側の部位と、には、合成樹脂製の被覆層5が、被覆されている。また、芯金3におけるボス部Bの部位には、ステアリングシャフトSSを挿入させてナットN止めするための鋼製のボス4が、配設されている。また、ステアリングホイール本体1の下部には、ボス部Bの下方を覆う合成樹脂製のロアカバー6が、配設されている。
エアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、ステアリングホイールWの略中央のボス部Bに配置されるもので、折り畳まれて収納されるエアバッグ20と、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するインフレーター11と、エアバッグ20とインフレーター11とを収納して保持する収納部位としてのケース12と、折り畳まれたエアバッグ20を覆うエアバッグカバー14と、エアバッグ20とインフレーター11とをケース12に取り付けるためのリテーナ10と、を備えて構成されている。
インフレーター11は、図2に示すように、複数のガス吐出口11bを有した略円柱状の本体部11aと、インフレーター11をケース12に取り付けるためのフランジ部11cと、を備えて構成されている。フランジ部11cには、リテーナ10の図示しない各ボルトを貫通させるための図示しない貫通孔が、形成されている。
収納部位としてのケース12は、板金製として、図2に示すように、インフレーター11を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部12aと、底壁部12aの外周縁から上下に延びる周壁部12bと、を備えて構成されている。周壁部12bの上端には、外方へ延びる取付片12cが、形成され(図1参照)、この取付片12cには、図示しないホーンスイッチ機構の取付基板が取り付けられている。そして、この図示しない取付基板を利用して、ケース12がステアリングホイールWの芯金3に取付固定され、エアバッグ装置Mが、ステアリングシャフトSSに装着済みのステアリングホイール本体1のボス部Bの上部に搭載されることとなる。また、ケース12の周壁部12bには、リベット15等を利用して、エアバッグカバー14の側壁部14cが、取り付けられている(図2参照)。実施形態の場合、エアバッグ20とインフレーター11とは、エアバッグ20内に配置させたリテーナ10の図示しないボルトを取付手段として、この図示しないボルトを、エアバッグ20における流入用開口24の周縁(取付部25)の取付孔25a、ケース12の底壁部12a、及び、インフレーター11のフランジ部11cを、貫通させて、図示しないナット止めすることにより、ケース12の底壁部12aに取り付けられている。詳細には、エアバッグ20は、図1に示すように、取付中心C1(流入用開口24の中心)を、ステアリングホイールWにおけるリング部Rの中心C2(ステアリングホイールWの回転中心)よりもわずかに後方にずらした位置で、ケース12の底壁部12aに取り付けられている。この取付中心C1は、エアバッグカバー14の中心と略一致するものである。エアバッグカバー14は、運転時におけるメータ等の視認性を良好とするように、直進操舵時において、リング部Rの中心C2よりも後方にずらすように配置されており、エアバッグ20の取付中心C1も、エアバッグカバー14とともに、リング部Rの中心C2よりも後方にずれて、配置されている。
エアバッグカバー14は、合成樹脂製として、ケース12に収納されたエアバッグ20の上方を覆う天井壁部14aと、天井壁部14aの外周縁付近から下方に延びる略四角筒形状の側壁部14cと、を備えて構成されている。天井壁部14aには、膨張するエアバッグ20に押されて前後に開く2枚の扉部14b,14bが、形成されている。
エアバッグ20は、図3~6に示すように、バッグ本体21と、バッグ本体21内に配置される整流布37と、バッグ本体21の内部に配置されるテザー40と、を備えている。
バッグ本体21は、可撓性を有した袋状として、膨張完了形状を、図1,2の二点鎖線及び図4に示すように、膨張完了形状を、上方から見て円形として、側方から見て球状に近い略楕円球状とするように構成されている。このバッグ本体21は、上述したごとく、取付中心C1をステアリングホイールWの回転中心C2に対して僅かに後側にずらした状態で、ステアリングホイールWに取り付けられる構成であり、取付中心C1をずらした状態で、膨張完了時に、リング部Rの上面を略全面にわたって覆うように構成されている(図1,2の二点鎖線及び図4,9参照)。
バッグ本体21は、膨張完了時にステアリングホイールW側に配置される車体側壁部23と、運転者MD側に配置される運転者側壁部34と、を、有する構成とされるもので、実施形態の場合、外形形状を略一致させた略円形として構成される車体側壁部23と運転者側壁部34との外周縁相互を結合させることにより、袋状とされている。車体側壁部23における中央には、インフレーター11の本体部11aを下方から挿入させて、インフレーター11のガス吐出口11bから吐出される膨張用ガスを内部に流入させるための流入用開口24が、略円形に開口して形成されている。また、実施形態のバッグ本体21では、車体側壁部23における流入用開口24の周縁を取付部25として、この取付部25には、リテーナ10の図示しないボルトを挿通させるための取付孔25aが、4個形成されている。さらに、車体側壁部23の外周縁23a側において、前端近傍の領域には、バッグ本体21内に流入した余剰の膨張用ガスを排気するためのベントホール26が、左右対称となる2箇所に、形成されている。
また、バッグ本体21における車体側壁部23側には、図5,6に示すように、膨張完了時に運転者側壁部34側となる上方に凹む凹部28が、形成されている。この凹部28は、図9,10に示すように、膨張完了時のエアバッグ20による運転者MDの受止時に、後側部位28cにおいて、リング部Rの後部側の領域(後部側部位Rb)を内部に進入させるように構成されており、実施形態の場合、膨張完了時のエアバッグ20(バッグ本体21)を上下方向側から見た状態で、リング部Rに略沿った略円弧状とされている。詳細には、凹部28は、図4に示すように、膨張完了時のエアバッグ20(バッグ本体21)を上下方向側から見た状態で、流入用開口24とベントホール26との間の領域において、バッグ本体21の外周縁と略同心円状に形成される(流入用開口24の中心(取付中心C1)からの離隔距離を等距離とした)略円環状とされている。この凹部28は、バッグ本体21の膨張完了時に、図4,9に示すように、後側部位28cを、リング部Rの後部側部位Rbの近傍に配置させるように構成されるものであり、膨張完了時のエアバッグ20による運転者MDの受止時には、リング部Rの後部側部位Rbを内部に進入させることとなる。また、凹部28は、リング部Rの後部側部位Rbを内部に進入させた際に、運転者側壁部34を鉛直方向に略沿わせて配置させるように構成されている。すなわち、凹部28は、深さ(凹み量)T1(図5参照)を、後側部位28cにおいてリング部R(後部側部位Rb)を内部に進入させた際に、バッグ本体21全体を、図10に示すように、後端(後部側部位21b)を下方に向けるように、ステアリングホイールWのリング面RFに対して傾斜させて、運転者側壁部34を、リング面RFに対して傾斜させつつ、鉛直方向に略沿わせて配置可能な寸法に、設定されている。
具体的には、凹部28は、バッグ本体21内に配置されるテザー40により、凹みの先端28aを運転者側壁部34側と連結されて、凹みの形状を規制されている。実施形態の場合、凹部28は、中心側(流入用開口24側)に配置される内側壁部30と、外側(流入用開口24から離れた側)に配置される外側壁部29と、を有して、バッグ本体21の膨張完了時に、凹みの先端(底部)28a側を、流入用開口24の中心(取付中心C1)を通って上下方向に略沿う中心線CL1側(中央側)に向けるように、中心線CL1に対してわずかに傾斜して配置される構成である(図5,6,9参照)。また、凹部28は、膨張完了時のエアバッグ20(バッグ本体21)を上下方向側から見た状態での内径寸法d1(図4参照)を、ステアリングホイールWのリング径D1(図1参照)よりも小さく設定されており、バッグ本体21の膨張完了時に、後側部位28cを、リング部Rの後部側部位Rbの近傍に配置させるように、構成されている(図4,9参照)。実施形態では、エアバッグ20が、取付中心C1を、リング部Rの中心C2(ステアリングホイールWの回転中心)に対して後方にずらすようにして、ステアリングホイールWに取り付けられており、取付中心C1と中心を一致させるように配置されている凹部28も、中心を、リング部Rの中心C2に対して後方にずれた位置に配置されることとなる。すなわち、バッグ本体21の膨張完了時に、凹部28における前側部位28bは、図4,9に示すように、リング部Rから後方に離れた位置に配置されることとなる。そのため、膨張完了時のエアバッグ20による運転者MDの受止時に、リング部Rの前部側の領域が、凹部28における前側部位28b内に進入することを抑制できる。
バッグ本体21内に配置される整流布37は、図5,6に示すように、バッグ本体21の膨張完了時に、流入用開口24の上方を覆うように配設されるとともに、流入用開口24から流入した膨張用ガスGを、前後両側へ整流可能に、前後方向の両端を開口させた略筒形状とされている。実施形態の場合、この整流布37は、図8に示す整流布用素材60から、構成されることとなる。整流布用素材60は、中央側部位60aと、中央側部位60aから左右に張り出すように形成される略扇形状の左側部位60b,右側部位60cと、を備える構成とされており、この中央側部位60aを、流入用開口24の周縁(取付部25)に結合(縫着)させ、左側部位60bと右側部位60cとを、外周縁相互を縫着(結合)させることにより、前後方向側に開口37a,37bを有した整流布37を、構成している。
バッグ本体21内に配置されるテザー40は、凹部28の凹みの先端28aと、運転者側壁部34の中心付近の領域と、を連結するように、流入用開口24の周囲の複数箇所に配設されている。実施形態の場合、具体的には、テザー40は、膨張完了時のエアバッグ20を上下方向から見た状態で、流入用開口24の周囲において、整流布37の開口37a,37bを除いた領域、すなわち、整流布37の前方若しくは後方を除いた領域において、凹部28を全周にわたって略均等に上方(運転者側壁部34側)に向かって牽引するように、放射状に複数個(実施形態の場合、6個)配設されている(図5,6参照)。さらに換言すれば、各テザー40は、整流布37の開口37a,37bの配置される前後方向側を除いた領域(整流布37の開口37a,37bからそれぞれ前後方向に流出する膨張用ガスの干渉を回避可能な領域)において、略60°ずつずれた放射状に、配置されている(図8参照)。換言すれば、整流布37の開口37a,37bの中央付近から前後両側に略直線的に流れる膨張用ガスの主流と対向しない領域に、各テザー40は、配設されている。各テザー40は、運転者側壁部34側に配置される上側部位41と、車体側壁部23側(凹部28側)に配置される下側部位42と、を結合(縫着)させることにより、形成されている。実施形態の場合、テザー40は、図5,6に示すように、エアバッグ20の膨張完了時において、運転者側壁部34側に結合される上端40a側の上側結合部位45を、凹部28の凹みの先端28a側に結合される下端40b側の下側結合部位46よりも中央側に位置させ、下側(車体側壁部23側)に向かって拡開して配置される構成である。すなわち、実施形態では、テザー40の上端40a側を運転者側壁部34側に結合させる上側結合部位45は、エアバッグ20の膨張完了時に、流入用開口24の中心(取付中心C1)を通って上下方向に略沿う中心線CL1からの離隔距離T2を、テザー40の下端40b側を凹部28の先端28a側に結合させる下側結合部位46の中心線CL1からの離隔距離T3よりも、小さくするように構成され(図5参照)、各テザー40は、中心線CL1に対して傾斜して配置される。また、テザー40の長さ寸法(膨張完了時のエアバッグ20における下側結合部位46と上側結合部位45との離隔距離T4)は、エアバッグ20の円滑な展開膨張を妨げず、かつ、エアバッグ20(バッグ本体21)の膨張完了時に、凹部28の領域がたるまず、凹部28の先端28aを運転者側壁部34側に向かって牽引可能な長さ寸法に、設定されている。また、このテザー40の長さ寸法は、エアバッグ20の膨張完了時において、凹部28内にリング部Rを進入させつつ、後部側部位21bによって運転者MDの腹部を受け止めた際に、底付きを抑えて、運転者のMDの腹部を的確に保護可能な寸法に、設定されている。
実施形態の場合、テザー40は、図8に示すような2枚のテザー用基布63,68から、構成されている。車体側壁部23側(凹部28側)に配置されるテザー用基布63は、略円環状の取付基部64と、外形形状を略帯状として取付基部64の外周縁64aから外方に放射状に突出して形成されるとともに下側部位42を構成する6個の本体部65と、を備える構成とされている。このテザー用基布63は、取付基部64を、車体側壁部23を構成する後述する中央パネル部53に、全周にわたって、縫合糸を用いて縫着(結合)させることにより、凹部28の凹みの先端28a側に結合される構成である。運転者側壁部34側に配置されるテザー用基布68は、略円形状の取付基部69と、外形形状を略帯状として取付基部69の外周縁69aから放射状に外方に突出して形成されるとともに上側部位41を構成する6個の本体部70と、を備える構成とされている。このテザー用基布68は、取付基部69を、運転者側壁部34を構成する後述する運転者側パネル57に、外周縁69a近傍を全周にわたって、縫合糸を用いて結合(縫着)させることにより、運転者側壁部34に結合される構成である。テザー用基布63の取付基部64を中央パネル部53に結合させている下側結合部位46と、テザー用基布68の取付基部69を運転者側パネル57に結合させている上側結合部位45と、は、ともに、中心を、各中央パネル部53,運転者側パネル57の中心(取付中心C1)と一致させた略円形として、構成され、上側結合部位45は、内径寸法d2を、下側結合部位46の内径寸法d3よりも小さく設定されている(図8参照)。実施形態の場合、上側結合部位45の内径寸法d2は、下側結合部位46の内径寸法d3の4/9程度に設定されている。すなわち、実施形態では、ともに略円形として中心を取付中心C1と略一致させた上側結合部位45及び下側結合部位46の内径寸法d2,d3を異ならせることにより、各テザー40における上側結合部位45,下側結合部位46の中心線CL1からの離隔距離T2,T3を異ならせる構成とされている。そして、各テザー40を、下端40b側を拡開させるように中心線CL1に対して傾斜させて配置させることにより、テザー40によって牽引される凹部28が、凹みの先端28a側を中心線CL1側に向けるように、中心線CL1に対して傾斜して配置されることとなる。
実施形態のバッグ本体21は、運転者側壁部34を構成する運転者側パネル57と、車体側壁部23を構成する車体側パネル50と、から構成されている。運転者側パネル57は、略円板状とされている。
車体側パネル50は、外径寸法D2(図8参照)を運転者側パネル57と略同一とした略円環状の外パネル部51と、略円形の中央パネル部53と、外パネル部51と中央パネル部53との間に配置される略円環状の中間パネル部55と、を備える構成とされている。外パネル部51は、車体側壁部23における外周縁23a側の領域を構成するものであり、外周縁51aを、運転者側パネル57の外周縁57aと結合される構成である。また、実施形態では、外パネル部51の領域に、ベントホール26,26が、形成されている。中央パネル部53は、車体側壁部23の中央側の領域を構成するもので、流入用開口24を有して、外径寸法D3を、外パネル部51における開口部位の内径寸法d4より大きく設定されている(図8参照)。実施形態の場合、中央パネル部53の外径寸法D3は、外パネル部51の外径寸法D2の7/9程度であって、かつ、外パネル部51の内径寸法d4の7/4程度に設定されている。中央パネル部53には、テザー用基布63の取付基部64が、下側結合部位46の部位で結合される構成であり、下側結合部位46は、内径寸法d3を、中央パネル部53の外径寸法D3の5/7程度(外パネル部51の外径寸法D2の5/9程度)に設定されている。そして、この中央パネル部53において、下側結合部位46の周囲の領域(下側結合部位46の内周側の領域と外周側の領域)が、バッグ本体21の膨張完了時に、テザー40によって運転者側壁部34側となる上側に牽引されて、凹部28を形成することとなる。中間パネル部55は、外径寸法D4(図8参照)を中央パネル部53の外径寸法D3と略同一とし、かつ、開口部位の内径寸法d5を外パネル部51における開口部位の内径寸法d4と略同一として、外周縁55aを中央パネル部53の外周縁53aと結合され、内周縁55bを外パネル部51の内周縁51bと結合される構成である。実施形態の場合、バッグ本体21を平らに展開した状態では、この中間パネル部55は、図7に示すように、中央パネル部53と外パネル部51との間に折り込まれるようにして、配置されることとなる。バッグ本体21の膨張完了時には、中央パネル部53における下側結合部位46周囲の領域が、テザー40によって牽引されて凹部28を形成することにより、中間パネル部55は引き出されて、外パネル部51から連なるように配置されて、車体側壁部23を構成することとなる(図5,6,9参照)。また、実施形態では、車体側パネル50は、流入用開口24の周縁の取付部25を補強する略円形の補強布72も、備える構成とされている(図5,6,8参照)。
実施形態では、バッグ本体21を構成する運転者側パネル57,車体側パネル50(外パネル部51,中央パネル部53,中間パネル部55)、補強布72、整流布37を構成する整流布用素材60、テザー40を構成するテザー用基布63,68は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から、構成されている。具体的には、実施形態のエアバッグ20は、リング径D1を370mm程度に設定されるステアリングホイールWに搭載されるものであり、膨張完了時のバッグ本体21の外径寸法D5(図4参照)を、590mm程度に設定され、バッグ本体21における凹部28の内径寸法d1を、250mm程度に設定されている。また、膨張完了時のバッグ本体21において、凹部28の凹みの深さT1は、80mm程度に設定されている。
次に、実施形態のエアバッグ20の製造について述べる。中央パネル部53の内周面側に、補強布72と整流布用素材60とを重ね、流入用開口24の周縁となる部位で、縫合糸を用いて縫着させ、孔開け加工により、流入用開口24と取付孔25aとを形成する。また、中央パネル部53の内周面側に、テザー用基布63の取付基部64を重ね、下側結合部位46を形成するようにして、取付基部64を、縫合糸を用いて縫着させる。次いで、中央パネル部53と中間パネル部55とを、外周面相互を対向させつつ、外周縁53a,55aを一致させるようにして重ね、外周縁53a,55a相互を、縫合糸を用いて縫着させる。その後、中間パネル部55と外パネル部51とを、外周面相互を対向させるように重ね、内周縁51b,55b相互を、縫合糸を用いて縫着させて、車体側パネル50を形成する。このとき、凹部28を有した車体側壁部23が形成されることとなる。運転者側パネル57には、予め、内周面側にテザー用基布68の取付基部69を重ね、上側結合部位45を形成するようにして、取付基部69を縫合糸を用いて縫着させておく。次いで、運転者側パネル57と車体側パネル50とを、外周面相互を対向させつつ、外パネル部51の外周縁51aと運転者側パネル57の外周縁57aとを一致させるようにして重ね、外周縁51a,57a相互を、縫合糸を用いて縫着させて、バッグ本体21を形成する。その後、バッグ本体21を、縫代を外部に露出させないように、流入用開口24を利用して反転させた後、テザー用基布63,68の各本体部65,70相互を、それぞれ、縫合糸を用いて縫着させてテザー40を形成し、整流布用素材60における左側部位60b,右側部位60cの外周縁相互を縫着させて整流布37を形成すれば、エアバッグ20を製造することができる。
そして、エアバッグ20の製造後、各取付孔25aから図示しないボルトを突出させるようにして、内部にリテーナ10を配置させた状態で、エアバッグ20を、ケース12内に収納可能に折り畳む。その後、折り畳んだエアバッグ20をケース12に収納させ、インフレーター11の本体部11aを下方から挿入させて、底壁部12aから突出させた図示しないボルトとナットとを利用して、インフレーター11とエアバッグ20とをケース12に取り付ける。さらに、ケース12にエアバッグカバー14を被せて、リベット15等を利用して、ケース12にエアバッグカバー14を取り付け、その後、ケース12の取付片12cに、図示しないホーンスイッチ機構を組み付ければ、エアバッグ装置Mを組み立てることができる。このエアバッグ装置Mは、予めステアリングシャフトSSに締結しておいたステアリングホイール本体1に対して、ホーンスイッチ機構の図示しない取付基板を利用して、取り付ければ、車両Vに搭載することができる。
実施形態のエアバッグ装置Mでは、インフレーター11のガス吐出口11bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ20(バッグ本体21)が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー14の扉部14b,14bを押し開き、ケース12から突出して、図9に示すように、ステアリングホイールWの上面を略全面にわたって覆うように、膨張を完了させることとなる。
そして、エアバッグ装置Mに使用される第1実施形態のエアバッグ20では、膨張完了時にステアリングホイールWのリング部Rを進入可能な凹部28が、車体側壁部23において、運転者側壁部34側となる上方に凹むようにして、形成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ20では、凹部28は、従来のステアリングホイール用エアバッグのごとく部分的に突出した領域ではなく、エアバッグ20(バッグ本体21)自体を凹ませて形成されることから、容積の増大を抑えることができる。また、実施形態のエアバッグ20では、エアバッグ20の膨張完了時に、運転者MDが前方移動して、ステアリングホイールWを覆うように膨張しているエアバッグ20(バッグ本体21)の後部側の領域(後部側部位21b)と接触すると、エアバッグ20(バッグ本体21)の後部側の領域(後部側部位21b)が、図10に示すように、前方移動しつつ、リング部Rの後部側部位Rbを凹部28における後側部位28c内に進入させることから、ステアリングホイールW(リング部R)に対するエアバッグ20の配置位置を安定させることができ、前方移動する運転者MDを、リング部Rを覆うように配置されているエアバッグ20によって、安定して受け止めることができる。さらに、実施形態のエアバッグ20では、エアバッグ20(バッグ本体21)の後部側部位21bが、前方移動する運転者MDに押されて、リング部Rを凹部28内に進入させるようにして前方移動するような態様となることから、この後部側部位21bが、運転者MDの胸部BAを押圧することを、抑制できる。
したがって、第1実施形態のエアバッグ20では、簡便な構成として、運転者MDを円滑に保護することができる。
また、第1実施形態のエアバッグ20では、凹部28が、膨張完了時のエアバッグ20による運転者MDの受止時に、運転者側壁部34を鉛直方向に略沿わせて配置させる構成であり、換言すれば、実施形態のエアバッグでは、エアバッグ20(バッグ本体21)の後部側部位21bの前方移動に伴って、この後部側部位21bに対して流入用開口24を挟んで対向するように配置されるエアバッグ20(バッグ本体21)の前部側の領域(前部側部位21a)が、ステアリングホイールWから浮き上がるように配置されて、運転者側壁部34が、鉛直方向に略沿って配置されることとなる(図10参照)。そのため、実施形態のエアバッグ20では、膨張完了時において、運転者MDの前進移動時に、後部側部位21bにより運転者MDの胸部BAを押圧することを抑制して、運転者MDの上半身UBと略正対するように、略鉛直方向UDに沿って配置される運転者側壁部34により、運転者MDの上半身UBを、広く受け止めることができ、また、運転者MDの頭部Hも、リング部Rとの間に隙間を設けられるようにして相対的に厚く膨張するような態様となるバッグ本体21の前部側部位21aによって、ソフトに受け止めることができる。
さらに、第1実施形態のエアバッグ20では、凹部28が、膨張完了時のエアバッグ20を上下方向側から見た状態で、リング部Rに略沿った略円弧状とされていることから、円環状のリング部Rを凹部28内に円滑に進入させることができる。特に、第1実施形態のエアバッグ20では、凹部28が、膨張完了時のエアバッグ20を上下方向側から見た状態で、略円環状とされていることから、操舵時においてステアリングホイールWを回転させた状態での作動時においても、リング部Rを凹部28内に進入させやすい。なお、このような点を考慮しなければ、凹部を、円環状としなくとも略円弧状としてもよく、さらには、リング部を円滑に進入可能であれば、円弧状ではなく、膨張完了時のエアバッグを上下方向側から見た状態で直線状や曲線状に形成してもよい。凹部を円弧状とする場合、リング部を円滑に進入させるために、略1/3円弧以上の長さを有するように構成することが、望ましい。
さらにまた、実施形態では、エアバッグ20が、バッグ本体21の内部に配置されて凹部28の凹みの先端28a側を運転者側壁部34側と連結させるテザー40を備える構成とされ、このテザー40が、流入用開口24の周囲の複数箇所に配設されて、それぞれ、運転者側壁部34に結合される部位(上側結合部位45)の流入用開口24の中心(取付中心C1)を通って上下方向に略沿う中心線CL1からの離隔距離T2を、凹部28の凹みの先端28a側に結合される部位(下側結合部位46)の中心線CL1からの離隔距離T3よりも小さくするように、構成されている。そのため、実施形態のエアバッグ20では、内部にテザー40を配設させることにより、バッグ本体21の膨張完了時に、凹部28を確実に凹ませて配置させることができ、また、凹部28は、テザー40によって牽引されて、凹みの先端28a側を流入用開口24の中心(取付中心C1)を通る中心線CL1側(中央側)に向けるように傾斜して配置されることとなる(図9参照)。そのため、凹部28における流入用開口24から離れた外側に配置される外側壁部29が、ガイド面となって、リング部Rを進入させる際に、一層円滑にリング部Rを凹部28の内部に進入させることができる。換言すれば、外側壁部29にリング部Rを滑らせるようにして、エアバッグ20が、バッグ本体21の後部側部位21bを下方に移動させるように、リング部Rに対して移動しやすくなり、運転者側壁部34を円滑に鉛直方向に略沿わせて配置させることができる。また、実施形態のエアバッグ20では、凹部28を、先端28a側を中心線CL1側に向けるように、配置させることにより、運転者MDの受止時による凹部28内へのリング部Rの進入時において、リング部Rを凹部28の先端付近まで進入させた際に、運転者側壁部34が下方に引っ張られるような態様となり、凹部28を略円環状として配設させていても、リング部Rを進入させる後側部位28cと対向して配置される凹部28の前側部位28bに、リング部Rが進入することを、抑制できる。なお、このような点を考慮しなければ、バッグ本体内に、凹部の凹みの先端側を運転者側壁部側に連結させるテザーを配設させなくともよく、また、テザーを配設させる場合にも、上側結合部位と下側結合部位とのそれぞれの中心線からの離隔距離を略同一としたり、あるいは、逆に、上側結合部位の中心線からの離隔距離を、下側結合部位の中心線からの離隔距離よりも大きく設定して、テザーを配設させてもよい。
また、第1実施形態のエアバッグ20では、車体側壁部23を構成する車体側パネル50が、外パネル部51と中央パネル部53と中間パネル部55との3枚から構成されて、これらの対応する外周縁53a,55aや内周縁51b,55bを縫着させることにより、形成されている。具体的には、外パネル部51と中央パネル部53との間に配置される中間パネル部55が、略円環状として、外径寸法D4を、中央パネル部53の外径寸法D3と略一致させ、開口部分の内径寸法d5を、外パネル部51の開口部分の内径寸法d4と略一致させて、構成されている。そのため、バッグ本体21の製造時に、平らに展開した状態の中間パネル部55を、平らに展開した状態の外パネル部51若しくは中央パネル部53に重ねれば、対応する縁部相互を結合(縫着)させることができ、平面的な縫合作業によって、凹部28を備える車体側壁部23を形成することができることから、平面的な結合作業で、凹部28を備えるエアバッグ20を形成することができて、製造作業を簡便とすることができる。なお、このような点を考慮しなければ、後述する第2実施形態のエアバッグ80のように、立体的な縫製(結合)作業により製造するエアバッグ80を使用してもよい。
さらにまた、第1実施形態のエアバッグ20では、バッグ本体21内に、流入用開口24の上方を覆って、バッグ本体21内に流入した膨張用ガスを前後方向側に整流可能な整流布37が、配設されていることから、エアバッグ20の膨張初期に、バッグ本体21の内部に流入する膨張用ガスが、整流布37を経て、前後両側に向かって流れることとなり、バッグ本体21を、まず、前後方向側で広く展開させることができて、運転者MDの腹部(胸部BA)とリング部Rとの間の隙間が狭い場合にも、この狭い隙間に、バッグ本体21を迅速に進入させることができる。また、実施形態のエアバッグ20では、テザー40が、膨張完了時のエアバッグ20を上下方向から見た状態で、整流布37の開口37a,37bを除いた領域に、放射状に複数個配設される構成である。そのため、整流布37の開口部分から流れる膨張用ガスが、テザー40により影響を受けることを抑制できて、かつ、テザー40により、凹部28の凹み形状を、広い範囲で安定させることができる。特に、実施形態のエアバッグ20では、テザー40が、流入用開口24の中心(取付中心C1)を中心として放射状となる6箇所に、配設される構成であることから、膨張完了時のエアバッグ20を上下方向側から見た状態で略円環状に形成される凹部28を、略全周にわたって安定して凹ませることができる。なお、テザー40の配置数は、6個に限られるものではなく、6個未満としてもよい。略円環状の凹部の凹み形状を略全域にわたって安定させるためには、放射状に4箇所以上に配置させることが、好ましい。
次に、第2実施形態のエアバッグ80について、説明をする。エアバッグ80は、バッグ本体81において車体側壁部83側に配置される凹部85の形状や、車体側壁部83を構成する車体側パネル90の構成以外は、上述のエアバッグ20と同様の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。
エアバッグ80は、図11~14に示すように、前述のエアバッグ20と同様にバッグ本体81と、バッグ本体81内に配置される整流布37Aと、バッグ本体81の内部に配置されるテザー40Aと、を備えている。
バッグ本体81は、前述のバッグ本体21と同様に、取付中心C3を、ステアリングホイールWの回転中心C2に対して僅かに後側にずらした状態で、ステアリングホイールWに取り付けられる構成であり、取付中心C3をずらした状態で、膨張完了時に、リング部Rの上面を略全面にわたって覆うように構成されている(図12参照)。
第2実施形態のエアバッグ80においても、バッグ本体81における車体側壁部83側には、膨張完了時に運転者側壁部34A側となる上方に凹む凹部85が、形成されている。凹部85は、図16,17に示すように、膨張完了時のエアバッグ80による運転者MDの受止時に、後側部位85cにおいて、リング部Rの後部側部位Rbを内部に進入させるように構成されており、前述のエアバッグ20と同様に、膨張完了時のエアバッグ80(バッグ本体81)を上下方向側から見た状態で、バッグ本体81の外周縁と略同心円状に形成される(流入用開口24Aの中心(取付中心C3)からの離隔距離を等距離とした)略円環状とされている(図11,12参照)。すなわち、凹部85も、膨張完了時のエアバッグ80(バッグ本体81)を上下方向側から見た状態で、リング部Rに略沿った略円弧状とされている。この凹部85も、バッグ本体81の膨張完了時に、図12,16に示すように、後側部位85cをリング部Rの後部側部位Rbの近傍に配置させて、膨張完了時のエアバッグ80による運転者MDの受止時には、図17に示すように、リング部Rの後部側部位Rbを内部に進入させることとなる。また、凹部85は、リング部Rの後部側部位Rbを内部に進入させた際に、運転者側壁部34Aを鉛直方向に略沿わせて配置させるように構成されている。すなわち、このエアバッグ80においても、凹部85は、深さ(凹み量)T5(図13参照)を、後側部位85cにおいてリング部R(後部側部位Rb)を内部に進入させた際に、バッグ本体81全体を、後端(後部側部位81b)を下方に向けるように、ステアリングホイールWのリング面RFに対して傾斜させて、運転者側壁部34Aを、リング面RFに対して傾斜させつつ、鉛直方向に略沿わせて配置可能な寸法に、設定されている。
この凹部85は、具体的には、中心側(流入用開口24A側)に配置される内側壁部87と、外側(流入用開口24Aから離れた側)に配置される外側壁部86と、を有して、バッグ本体81の膨張完了時の断面形状を、先端側にかけて先細りとされる略V字形状とするように、構成されている。実施形態のエアバッグ80では、凹部85は、バッグ本体81内に配置されるテザー40Aにより、凹みの先端85aを運転者側壁部34A側と連結されて、凹みの形状を規制されるとともに、内側壁部87と外側壁部86との長さ寸法を異ならせるように、構成されている。具体的には、外側壁部86が、長さ寸法を、内側壁部87の長さ寸法よりも大きく設定されて、凹部85は、バッグ本体81の膨張完了時において、内側壁部87を、流入用開口24Aの中心(取付中心C3)を通って上下方向に略沿う中心線CL2に略沿わせ、外側壁部86を、上端86a側を内側壁部87側(中心線CL2側)に向けるようにして、この中心線CL2に対して傾斜させている構成である。この凹部85も、膨張完了時のエアバッグ80(バッグ本体81)を上下方向側から見た状態での内径寸法(内側壁部87の部位での内径寸法d6、図12参照)を、ステアリングホイールWのリング径D1よりも小さく設定されて、バッグ本体81の膨張完了時に、後側部位85cを、リング部Rの後部側部位Rbの近傍に配置させるように、構成されている(図12,16参照)。すなわち、このエアバッグ80においても、バッグ本体81の膨張完了時に、凹部85における前側部位85bは、リング部Rから後方に離れた位置に配置される構成であり(図12,16参照)、膨張完了時のエアバッグ80による運転者MDの受止時に、リング部Rの前部側の領域が、凹部85における前側部位85b内に進入することを抑制できる。
バッグ本体81内に配置されるテザー40Aは、凹部85の凹みの先端85aと、運転者側壁部34Aの中心付近の領域と、を連結するように、流入用開口24Aの周囲の複数箇所に配設されるもので、具体的には、前述のエアバッグ20におけるテザー40と同様に、膨張完了時のエアバッグ80を上下方向側から見た状態で、流入用開口24Aの周囲において、整流布37Aの開口を除いた領域である整流布37Aの前方若しくは後方を除いた領域において、凹部85を全周にわたって略均等に上方(運転者側壁部34A側)に向かって牽引するように、放射状に複数個(実施形態の場合、6個)配設されている(図13,14参照)。各テザー40Aは、前述のテザー40と同様に、運転者側壁部34A側に配置される上側部位41Aと、車体側壁部83側(凹部85側)に配置される下側部位42Aと、を結合(縫着)させることにより、形成されている。このエアバッグ80においても、テザー40Aは、エアバッグ80の膨張完了時において、運転者側壁部34A側に結合される上端40a側の上側結合部位45Aを、凹部85の凹みの先端85a側に結合される下端40b側の下側結合部位46Aよりも中央側に位置させるように、構成されている。すなわち、このエアバッグ80においても、テザー40Aの上端40a側を運転者側壁部34A側に結合させる上側結合部位45Aは、エアバッグ80の膨張完了時に、流入用開口24Aの中心(取付中心)を通って上下方向に略沿う中心線CL2からの離隔距離T6を、テザー40の下端40b側を凹部85の先端85a側に結合させる下側結合部位46Aの中心線CL2からの離隔距離T7よりも、小さくする構成とされて(図13参照)、各テザー40Aは、中心線CL2に対して傾斜して配置される。また、このテザー40Aの長さ寸法(膨張完了時のエアバッグ80における下側結合部位46Aと上側結合部位45Aとの離隔距離T8、図13参照)は、エアバッグ80の円滑な展開膨張を妨げず、かつ、エアバッグ80(バッグ本体81)の膨張完了時に、凹部85を構成する外側壁部86,内側壁部87がたるまず、凹部85の先端85aを運転者側壁部34A側に向かって牽引可能な長さ寸法に、設定されている。また、このテザー40Aの長さ寸法は、エアバッグ80の膨張完了時において、凹部85内にリング部Rを進入させつつ、後部側部位80bによって運転者MDの腹部を受け止めた際に、底付きを抑えて、運転者のMDの腹部を的確に保護可能な寸法に、設定されている。
この第2実施形態のエアバッグ80では、テザー40Aは、図15に示すように、テザー用基布68Aと、凹部85を構成する後述する凹部用パネル部95の内側部位97から延びるテザー構成部98と、から、構成されている。運転者側壁部34A側に配置されるテザー用基布68Aは、前述のエアバッグ20におけるテザー用基布68と同様の構成である。テザー構成部98は、テザー40Aの下側部位42Aを構成するもので、内側部位97の上縁97aから突出するような略帯状として、内側部位97と一体的に形成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ80では、このテザー構成部98と内側部位97との境界部位付近が、テザー40の下端40b側を凹部85の先端85a側に結合させる下側結合部位46Aを、構成している。実施形態では、内側部位97の上縁97aと外側部位96の内縁96bとを結合(縫着)させている部位が、下側結合部位46Aを構成するものとして、説明する。内側部位97は、バッグ本体81における凹部85の内側壁部87を構成する部位であり、エアバッグ80の膨張完了時には、上下方向に略沿って配置される構成である。すなわち、内側部位97は、バッグ本体81の膨張完了時に、略円筒状として配置されることとなり、この内側部位97は、後述するごとく、下縁97bを、車体側パネル90における後述する中央パネル部93の外周縁93aと結合されることから、膨張完了時に上縁97a側の部位の内径寸法を、中央パネル部93の外径寸法D7(図15参照)と略一致されることとなる。中央パネル部93の外径寸法D7は、図15に示すように、テザー用基布68Aの取付基部69Aの外周縁69a近傍を縫着させることにより形成されている上側結合部位45Aの内径寸法d7よりも大きく設定されており、実施形態のエアバッグ80では、これにより、各テザー40Aにおける上側結合部位45A,下側結合部位46Aの中心線CL2からの離隔距離T6,T7が、異なる構成とされている。そして、各テザー40Aを、下端40b側を拡開させるように中心線CL2に対して傾斜させて配置させることにより、テザー40Aによって牽引される凹部85が、凹みの先端85a側を中心線CL2側に向けるように、中心線CL2に対して傾斜して配置されることとなる。実施形態の場合、凹部85は、外側壁部86の長さ寸法を、内側壁部87の長さ寸法より大きくして、外側壁部86を、上端86aを中心線CL2側に向けるように中心線CL2に対して傾斜して配置される構成であり、テザー40Aにより、エアバッグ80の膨張完了時に、この外側壁部86の傾斜状態を安定させることができる。そのため、エアバッグ80の膨張完了時に、凹部85における流入用開口24Aから離れた外側に配置される外側壁部86が、ガイド面となって、リング部Rを進入させる際に、一層円滑にリング部Rを凹部85の内部に進入させることができる。
第2実施形態のエアバッグ80において、車体側壁部83を構成する車体側パネル90は、外径寸法D8(図15参照)を運転者側パネル57Aと略同一とした略円環状の外パネル部91と、略円形の中央パネル部93と、外パネル部91と中央パネル部93との間に配置されて凹部85を構成する凹部用パネル部95と、を備える構成とされている。外パネル部91は、車体側壁部83における外周縁83a側の領域を構成するものであり、外周縁91aを、運転者側パネル57Aの外周縁57aと結合される構成である。中央パネル部93は、車体側壁部83の中央側の領域を構成するもので、流入用開口24Aを有して、外径寸法D7を、外パネル部91における開口部位の内径寸法d8より若干小さく設定されている。
凹部用パネル部95は、外パネル部91側に配置される外側部位96と、中央パネル部93側に配置される内側部位97と、を備えている。外側部位96が、凹部85における外側壁部86を構成し、内側部位97が、凹部85における内側壁部87を構成している。外側部位96は、図15に示すように、略半円弧状に湾曲した帯状とされるもので、長手方向側の端縁96c,96d相互を結合させることにより、外側壁部86を構成することとなり、外縁96aを、外パネル部91の内周縁91bと結合され、内縁96bを、内側部位97の上縁97aと結合される構成である。実施形態の場合、外側部位96の外縁96aと内縁96bとは、複数の直線を連結させることにより、曲線に近似させた形状とされている。内側部位97は、対向する端縁(上縁97aと下縁97b)相互を略平行な直線状とした帯状とされるもので、長手方向側の端縁97c,97d相互を結合させることにより、内側壁部87を構成することとなり、下縁87bを、中央パネル部93の外周縁93aと結合され、上縁87aを、下側結合部位46Aを形成するようにして、外側部位96の内縁96bと結合される構成である。内側部位97の上縁97a側には、テザー40Aにおける下側部位42Aを構成するテザー構成部98が、上方に突出するように、6個形成されている。
第2実施形態のエアバッグ80においても、バッグ本体81を構成する運転者側パネル57A,車体側パネル90(外パネル部91,中央パネル部93,凹部用パネル部95)、補強布72A、整流布37Aを構成する整流布用素材60A、テザー40Aを構成するテザー用基布68Aは、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から、形成されている。具体的には、実施形態のエアバッグ80は、膨張完了時のバッグ本体81の外径寸法D9(図12参照)を、590mm程度に設定され、バッグ本体81における凹部85の内径寸法d6を、230mm程度に設定されている。また、膨張完了時のバッグ本体81において、凹部85の凹みの深さT5は、80mm程度に設定されている。
このエアバッグ80は、前述のエアバッグ20と同様にして製造することができ、前述のエアバッグ20と同様にして車両に搭載することができる。なお、このエアバッグ80では、外パネル部91の内周縁91bと凹部用パネル部95における外側部位96の外縁96aとを結合(縫着)させる際と、中央パネル部93の外周縁93aと凹部用パネル部95における内側部位97の下縁97bとを結合(縫着)させる際と、には、立体的な縫合(結合)作業を行うこととなる。
そして、このエアバッグ80においても、膨張完了時にステアリングホイールWのリング部Rを進入可能な凹部85が、車体側壁部83において、運転者側壁部34A側となる上方に凹むようにして、形成されている(図16参照)。すなわち、実施形態のエアバッグ80においても、凹部85は、エアバッグ80(バッグ本体81)自体を凹ませて形成されることから、容積の増大を抑えることができる。また、上記構成のエアバッグ80においても、エアバッグ80の膨張完了時に、運転者MDが前方移動して、ステアリングホイールWを覆うように膨張しているエアバッグ80(バッグ本体81)の後部側の領域(後部側部位81b)と接触すると、エアバッグ80(バッグ本体81)の後部側の領域(後部側部位81b)が、図17に示すように、前方移動しつつ、リング部Rの後部側部位Rbを凹部85における後側部位85c内に進入させることから、ステアリングホイールW(リング部R)に対するエアバッグ80の配置位置を安定させることができ、前方移動する運転者MDを、リング部Rを覆うように配置されているエアバッグ80によって、安定して受け止めることができる。さらに、上記構成のエアバッグ80においても、エアバッグ80(バッグ本体81)の後部側部位81bが、前方移動する運転者MDに押されて、リング部Rを凹部85内に進入させるようにして、前方移動するような態様となることから、この後部側部位81bが、運転者MDの胸部BAを押圧することを、抑制できる。
また、第2実施形態のエアバッグ80においても、運転者MDの受止時に、運転者側壁部34Aが、図17に示すように、鉛直方向UDに略沿うようにして、配置されることとなる。すなわち、実施形態のエアバッグ80においても、エアバッグ80(バッグ本体81)の後部側部位81bの前方移動に伴って、この後部側部位81bに対して流入用開口24Aを挟んで対向するように配置されるエアバッグ80(バッグ本体81)の前部側の領域(前部側部位81a)が、ステアリングホイールWから浮き上がるように配置されることとなる。そのため、実施形態のエアバッグ80においても、膨張完了時において、運転者MDの前進移動時に、後部側部位81bにより運転者MDの胸部BAを押圧することを抑制して、運転者MDの上半身UBと略正対するように、略鉛直方向UDに沿って配置される運転者側壁部34Aにより、運転者MDの上半身UBを、広く受け止めることができ、また、運転者MDの頭部Hも、リング部Rとの間に隙間を設けられるようにして相対的に厚く膨張するような態様となるバッグ本体81の前部側部位81aによって、ソフトに受け止めることができる。
また、このような構成のエアバッグ80では、凹部85において相互に対向する面(内側壁部87,外側壁部86)を構成する内側部位97と外側部位96とが、それぞれ、周方向に沿って連続的に配置されることから、凹部85の凹み形状を、略全周にわたって安定させることができる。
次に、本発明の第3実施形態のエアバッグ100について、説明をする。エアバッグ100は、前述のエアバッグ20と同様に、ステアリングホイール用のエアバッグ装置に使用されるもので、図18~21に示すように、バッグ本体101と、バッグ本体101内に配置される整流布37Bと、バッグ本体101の内部に配置されるテザー111,117と、を備えている。なお、このエアバッグ100は、バッグ本体101において車体側壁部105側に配置される凹部107の形状や、車体側壁部105を構成する車体側パネル120の構成、凹部107を形成するためのテザー111以外は、前述のエアバッグ20と同様の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「B」を付して、詳細な説明を省略する。
バッグ本体101は、前述のバッグ本体21,81と同様に、取付中心C4(流入用開口24Bの中心)を、ステアリングホイールWの回転中心C2に対して僅かに後側にずらした状態で、ステアリングホイールWに取り付けられる構成であり、取付中心C4をずらした状態で、膨張完了時に、リング部Rの上面を略全面にわたって覆うように構成されている(図23参照)。
バッグ本体101における車体側壁部105側には、膨張完了時に運転者側壁部34B側となる上方に凹む凹部107が、形成されている。この凹部107は、膨張完了時のエアバッグ100(バッグ本体101)を上下方向側から見た状態で、リング部Rに略沿った略円環状とされるもので、詳細には、図19に示すように、膨張完了時のバッグ本体101を上下方向側から見た状態で、流入用開口24Bとベントホール26Bとの間の領域において、バッグ本体101の外周縁に対して僅かに異形とした略円環状として、形成されている。凹部107は、具体的には、エアバッグ100の膨張完了時における外形形状を、バッグ本体101を上下方向側から見た状態で、前後方向側の幅寸法を左右方向側の幅寸法よりも僅かに小さく設定される略楕円環状として、中心C5(図19参照)を、ステアリングホイールWにおけるリング部Rの回転中心C2(図23参照)と略一致した位置に配置させるように構成されている。すなわち、凹部107は、中心C5を、バッグ本体101における流入用開口24Bの中心(取付中心C4)よりも前方にずらして、配設されている。詳細には、実施形態の場合、凹部107は、エアバッグ100の膨張完了時に、下端107b側を開口させるように構成されており(図20,21参照)、バッグ本体101を下方から見た状態では、凹部107を構成する内側壁部109,外側壁部108の下端108b、109bが、略二重円状に配置される構成とされている(図19参照)。
また、この凹部107は、図20,21に示すように、バッグ本体101内に配置されるテザー111により、凹みの先端(上端107a)を運転者側壁部34B側と連結されて、凹みの形状を規制されるもので、バッグ本体101(エアバッグ100)の膨張完了時に、リング部R側となる下端107b側を幅広に開口させ、凹みの先端(上端107a)にかけて収束されるように、構成されている。実施形態の場合、凹部107は、中心側(流入用開口24B側)に配置される内側壁部109と、外側(流入用開口24Bから離れた側)に配置される外側壁部108と、を有する構成とされている。内側壁部109は、エアバッグ100(バッグ本体101)の膨張完了時において、車体側壁部105側となる元部端(下端109b)を、リング部Rよりも流入用開口24B側となる内方の位置に、配置させている(図23参照)。また、内側壁部109において、凹みの先端側となる上端109aは、下端109bよりも外方に位置することとなり、内側壁部109は、エアバッグ100の膨張完了時に、上下方向に対して傾斜して配置されることとなる(図20,21参照)。外側壁部108は、エアバッグ100(バッグ本体101)の膨張完了時において、車体側壁部105側となる元部端(下端108b)を、リング部Rよりも流入用開口24Bから離れた側となる外方の位置に、配置させている(図23参照)。実施形態では、外側壁部108の下端108bは、凹みの先端側となる上端108aよりも外方に位置する構成とされている。すなわち、この外側壁部108は、エアバッグ100の膨張完了時に、上端108aを下端108bよりも内側に位置させるようにして、上下方向に対して傾斜して配置されることとなる(図20,21参照)。実際のエアバッグ100の膨張時には、バッグ本体101は内部に膨張用ガスを流入させて膨張することから、凹部107を構成する内側壁部109,外側壁部108も、この膨張に伴い、湾曲して配置されることとなる(図23参照)。そして、実施形態では、エアバッグ100の膨張完了時に、凹部107は、リング部Rを、外側壁部108と内側壁部109との間の領域に、配置させるように、構成されている。また、実施形態の凹部107では、内側壁部109が、上下方向側の幅寸法H4を、外側壁部108の上下方向側の幅寸法H3よりも、若干小さくするように、構成されている(図20,22参照)。
この凹部107は、バッグ本体101内において、凹部107の凹みの先端側(上端107a側)と、運転者側壁部34B側とを連結させているテザー111によって、バッグ本体101の膨張完了時における凹み形状を規制されている。テザー111は、凹部107を全周にわたって略均等に上方(運転者側壁部34B側)に向かって牽引するものであり、実施形態の場合、エアバッグ100の膨張完了時の外形形状を略円筒状として、凹部107の凹みの先端(上端107a)側と運転者側壁部34B側とを連続的に連結させるように、構成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ100では、バッグ本体101は、テザー111と凹部107とによって、凹部107よりも中央側(テザー111の内方)となる中央側領域102と、凹部107よりも外方(テザー111の外方)となる外側領域103と、の2つに区画される構成であり、テザー111には、この中央側領域102と外側領域103とを連通させるための連通孔112が、流入用開口24Bを中心として放射状となるように複数配設されている。実施形態の場合、各連通孔112は、円形に開口して、多数(20個)配設されている(図22参照)。テザー111は、エアバッグ100の膨張完了時に、運転者側壁部34Bに結合される上端111a側の上側結合部位114における流入用開口24Bの中心(取付中心C4)を通って上下方向に略沿う中心線CL3からの離隔距離T9を、凹部107の凹みの先端(上端107a)側に結合される下端111b側の下側結合部位115における中心線CL3からの離隔距離T10よりも、大きくするように、構成されている(図20参照)。すなわち、テザー111は、バッグ本体101の膨張完了時において、上側結合部位114を外方に位置させ、下側結合部位115を中央側に位置させるように、中心線CL3に対して傾斜して配置される構成である。このテザー111の長さ寸法(膨張完了時のエアバッグ100における下側結合部位115と上側結合部位114との離隔距離T11、図20参照)は、エアバッグ100の円滑な展開膨張を妨げず、かつ、エアバッグ100(バッグ本体101)の膨張完了時に、凹部107を構成する外側壁部108,内側壁部109がたるまず、凹部107の先端(上端107a)を運転者側壁部34B側に向かって牽引可能な長さ寸法に、設定されている。
また、実施形態では、テザー111を運転者側壁部34Bに結合させている上側結合部位114も、凹部107の外形形状に合わせて、バッグ本体101を上下方向側から見た状態(運転者側壁部34Bを平らに展開した状態)で、前後方向側の幅寸法を左右方向側の幅寸法よりも僅かに小さく設定される略楕円形状として、中心C6を、バッグ本体101における取付中心C4(運転者側壁部34Bの中心)よりも前方にずらすように、構成されている(図18参照)。この上側結合部位114の中心C6は、車両搭載時に、リング部Rの回転中心C2と略一致して配置されることとなる。さらに、実施形態では、テザー111を運転者側壁部34Bに結合させている上側結合部位114は、図18,23に示すように、エアバッグ100の膨張完了時に、リング部Rよりも外方となる位置に配置される構成である。すなわち、上側結合部位114は、前後方向側の幅寸法H8を、ステアリングホイールWのリング径D1よりも大きく設定されている(図18参照)。
第3実施形態のエアバッグ100では、テザー111は、図22に示すように、凹部107を構成する凹部用パネル部126の内側部位131に形成されるテザー構成部134,138から、形成されている。凹部用パネル部126の内側部位131は、略円弧状に湾曲した帯状とされて、実施形態の場合、曲率を異ならせた2枚の前構成部132と後構成部136とから構成されている。テザー構成部134,138は、各前構成部132,後構成部136における上縁132a,136a側の領域から、構成されている。このエアバッグ100では、各前構成部132,後構成部136において、テザー構成部134,138と内壁構成部133,137との境界を構成する境界縁132e,136eが、凹部用パネル部126における外側部位127(前構成部128,後構成部129)の上縁128a,129aと結合されて、下側結合部位115を構成することとなり、各前構成部132,後構成部136における上縁132a,136aが、運転者側壁部34Bを構成する運転者側パネル57Bと結合されて、上側結合部位114を、構成することとなる。このテザー構成部134,138では、平らに展開した状態において、上側結合部位114を構成する上縁132a,136aと、下側結合部位115を構成する境界縁132e,136eと、は、略平行に配置される構成であり(図22参照)、そして、この境界縁132e,136eは、周長を、上縁132a,136aよりも短く設定されることとなる。すなわち、このテザー構成部134,138から形成されるテザー111は、バッグ本体101の膨張完了時に、下側結合部位115によって囲まれる下端111b側の部位の内径寸法を、上側結合部位114によって囲まれる上端111a側の部位の内径寸法よりも小さく設定される略円筒状として配置されることとなり、実施形態のエアバッグ100では、これにより、テザー111における上側結合部位114,下側結合部位115の中心線CL3からの離隔距離T9,T10が、異なる構成とされている。
また、実施形態のエアバッグ100では、バッグ本体101内に、テザー111とは別に、膨張完了時の運転者側壁部34Bの中央付近と流入用開口24B付近とを連結するテザー117が、配設されている(図20,21参照)。このテザー117は、エアバッグ100の膨張完了時に、運転者側壁部34Bの車体側壁部105側からの離隔距離を規制するためのもので、図22に示すようなテザー用基布140U,140Dから、構成されている。さらに、このエアバッグ100にも、バッグ本体101内に、整流布37Bが、配置されている。
バッグ本体101は、運転者側壁部34Bを構成する運転者側パネル57Bと、車体側壁部105を構成する車体側パネル120と、から構成されている。運転者側パネル57Bは、略円板状とされている。
車体側パネル120は、外径寸法D10を運転者側パネル57Bと略同一とした略円環状の外パネル部121と、中央パネル部124と、外パネル部121と中央パネル部124との間に配置されて凹部を構成する凹部用パネル部126と、を備える構成とされている。外パネル部121は、車体側壁部105における外周縁105a側の領域を構成するもので、外周縁121aを、運転者側パネル57Bの外周縁57aと結合される構成である。この外パネル部121は、外周縁121aを、運転者側パネル57Bの外周縁57aと同一形状とした真円状として、中央に設けられる開口122の開口形状を、真円とわずかに異ならせた略楕円形状としている。詳細には、外パネル部121に形成される開口122は、前後方向側の幅寸法を左右方向側の幅寸法よりわずかに小さく設定される楕円形として、中心C7を、外パネル部121自体の中心C8(取付中心C4と一致)とずらして、この中心C8よりも前方に位置させるように、配設されている。具体的には、開口122は、前側の領域(前側の内周縁121b)と後側の領域(後側の内周縁121c)との曲率を異ならせることにより、楕円形状とされている。詳細には、実施形態では、開口122は、前側の内周縁121bを、後側の内周縁121cよりも曲率を大きく設定することにより、略楕円形状とされている。中央パネル部124は、車体側壁部105の中央側の領域を構成するもので、流入用開口24Bを有している。この中央パネル部124は、外形形状を、外パネル部121における開口122と略相似形とした略楕円形状として、外形形状を、開口122の開口形状よりも小さく設定されている。すなわち、中央パネル部124は、左右方向側の幅寸法H1を、開口122の左右方向側の幅寸法H2よりも小さく設定されている。そして、この中央パネル部124は、中心C9を、流入用開口24Bの中心(取付中心C4)とずらすように、構成されている。
凹部用パネル部126は、外パネル部121側に配置される外側部位127と、中央パネル部124側に配置される内側部位131と、を備えている。外側部位127は、凹部107における外側壁部108を構成するもので、内側部位131は、凹部107における内側壁部109とテザー111とを構成している。
外側部位127は、外側壁部108において前側の領域を構成する前構成部128と、後側の領域を構成する後構成部129と、の2枚から構成されている。前構成部128と後構成部129とは、それぞれ、長手方向側で僅かに湾曲させた帯状として、外パネル部121における内周縁121b,121cの曲率の違いに対応して、曲率を異ならせるように、構成されている。この前構成部128と後構成部129とは、長手方向側の端縁128c,128d,129c,129dを、相互に結合させることにより、外側壁部108を構成することとなり、前構成部128,後構成部129の下縁128b,129bは、外パネル部121の内周縁121b,121cと、それぞれ、結合され、上縁128a,129aは、内側部位131における前構成部132,後構成部136の境界縁132e,136eと、それぞれ、結合されて、下側結合部位115を形成することとなる。
内側部位131も、外側部位127と同様に、内側壁部109において前側の領域を構成する前構成部132と、後側の領域を構成する後構成部136と、の2枚から構成されている。前構成部132と後構成部136とは、それぞれ、略円弧状に湾曲した帯状として、中央パネル部124における外周縁124a,124bの曲率の違いに対応して、曲率を異ならせるように、構成されている。これらの前構成部132と後構成部136とは、それぞれ、内側壁部109を構成する内壁構成部133,137と、テザー111を構成するテザー構成部134,138と、を上下方向側で連ならせるように構成されている。具体的には、テザー構成部134,138は、各前構成部132,後構成部136における上縁132a,136a側の領域から、構成されている。そして、前構成部132と後構成部136とは、長手方向側の端縁132c,132d,136c,136dを、相互に結合させることにより、内側壁部109とテザー111とを構成することとなり、前構成部132,後構成部136の下縁132b,136bは、中央パネル部124の外周縁124a,124bと、それぞれ、結合され、上縁132a,136aは、運転者側パネル57Bに、結合されて、上側結合部位114を形成することとなる。前構成部132,後構成部136における上縁132a,136aと下縁132b,136bとは、それぞれ、複数の直線を連結させることにより、曲線に近似させた形状とされている。
この第3実施形態のエアバッグ100においても、バッグ本体101を構成する運転者側パネル57B,車体側パネル120(外パネル部121,中央パネル部124,凹部用パネル部126)、整流布37Bを構成する整流布素材60B、及び、テザー117を構成するテザー用基布140U,140Dは、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から、形成されている。具体的には、第3実施形態のエアバッグ100は、膨張完了時のバッグ本体101の外径寸法D11(図18参照)を、530mm程度に設定され、バッグ本体101における凹部107の外側壁部108の下端108bの領域の左右方向側の幅寸法H5(図19参照)を、450mm程度に設定されている。また、膨張完了時のバッグ本体101において、凹部107の下端107b側の開口幅寸法H6(図20参照)は、80mm程度に設定され、凹部107の凹みの深さH7は、130mm程度に設定されている(図20参照)。
このエアバッグ100は、前述のエアバッグ20,80と同様にして製造することができ、前述のエアバッグ20,80と同様にして車両に搭載することができる。なお、このエアバッグ100においても、エアバッグ80と同様に、外パネル部121の内周縁121b,121cと凹部用パネル部126における外側部位127の上縁128a,129aとを結合(縫着)させる際と、中央パネル部124の外周縁124a,124bと凹部用パネル部126における内側部位131の下縁132b,136bとを結合(縫着)させる際と、には、立体的な縫合(結合)作業を行うこととなる。
そして、この第3実施形態のエアバッグ100においても、膨張完了時にステアリングホイールWのリング部Rを進入可能な凹部107が、車体側壁部105において、運転者側壁部34B側となる上方に凹むようにして、形成されている(図23参照)。すなわち、この第3実施形態のエアバッグ100においても、凹部107は、エアバッグ100(バッグ本体101)自体を凹ませて形成されることから、容積の増大を抑えることができる。また、第3実施形態のエアバッグ100においても、エアバッグ100の膨張完了時に、運転者MDが前方移動して、ステアリングホイールWを覆うように膨張しているエアバッグ100(バッグ本体101)の後部側の領域(後部側部位101b)と接触すると、エアバッグ100(バッグ本体101)の後部側の領域(後部側部位101b)が、図24に示すように、前方移動しつつ、リング部Rの後部側部位Rbを凹部107における後側部位107d内に進入させることから、ステアリングホイールW(リング部R)に対するエアバッグ100の配置位置を安定させることができ、前方移動する運転者MDを、リング部Rを覆うように配置されているエアバッグ100によって、安定して受け止めることができる。さらに、第3実施形態のエアバッグ100においても、エアバッグ100(バッグ本体101)の後部側部位101bが、前方移動する運転者MDに押されて、リング部Rを凹部107内に進入させるようにして、前方移動するような態様となることから、この後部側部位101bが、運転者MDの胸部BAを押圧することを、抑制できる。
また、第3実施形態のエアバッグ100では、テザー111が、運転者側壁部34Bに結合される部位(上端111a、上側結合部位114)における流入用開口24Bの中心(取付中心C4)を通って上下方向に略沿う中心線CL3からの離隔距離を、凹部107の凹みの先端(上端107a)側に結合される部位(下端111b、下側結合部位115)における中心線CL3からの離隔距離よりも、大きくするように、構成されている。そのため、バッグ本体101の膨張完了時に、凹部107は、テザー111によって牽引されて、凹みの先端(上端107a)側を流入用開口24Bから離れた側(中心線CL3から離れるような外方)に向けるように、中心線CL3に対して、傾斜して配置されることとなり(図23参照)、換言すれば、後部側部位101bにおいては、凹部107は、後下がりに傾斜して配置されることから、エアバッグ100の膨張完了時において、運転者MDが前方移動してエアバッグ100の後部側の領域(後部側部位101b)と接触する際に、この後部側部位101bを、斜め前方に向かって押し上げるように接触しても、リング部Rを、後下がりに傾斜している凹部107の内部に円滑に進入させることができる。
具体的には、第3実施形態のエアバッグ100では、テザー111における運転者側壁部34Bに結合される部位(上端111a、上側結合部位114)が、エアバッグ100の膨張完了時に、リング部Rよりも外方となる位置に配置させるように構成されていることから、凹部107を、テザー111によって、中心線CL3に対して大きく傾斜させるように、配置させることができて、運転者MDの受止時に、一層的確に、リング部Rを凹部107の内部に進入させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、テザーの上端側(上側結合部位)を、エアバッグの膨張完了時に、リング部よりも内方となる位置に、配置させる構成としてもよい。
さらに、第3実施形態のエアバッグ100では、凹部107において、膨張完了時に流入用開口24B側に配置される内側壁部109が、車体側壁部105側となる元部端(下端109b)を、エアバッグ100の膨張完了時に、リング部Rよりも流入用開口24B側となる内方の位置に配置させる構成とされている。エアバッグ100の膨張完了時において、後部側部位101bによる胸部BAの受止後に、運転者MDの頭部Hが、エアバッグ100の前部側の領域(前部側部位101a)に接触すると、この前部側部位101aが、リング部Rを凹部107内に進入させるように前方移動することとなるが、このとき、第3実施形態のエアバッグ100では、凹部107における内側壁部109が、下端109bを、リング部Rよりも内方に配置させていることから、リング部Rと接触することとなって、リング部Rが、凹部107の凹みの先端(上端107a)まで進入することを、抑制できる(図25参照)。そのため、頭部Hを、凹部107の周囲の領域によって底付きを抑えた状態とした厚さ寸法を確保した膨張部位により、安定して保護することができる。なお、このような点を考慮しなければ、内側壁部の下端を、エアバッグの膨張完了時に、リング部よりも外方に位置させるように、構成してもよい。
さらにまた、第3実施形態のエアバッグ100では、凹部107において内側壁部109と対向して流入用開口24Bから離れた側に配置される外側壁部108が、車体側壁部105側となる元部端(下端109b)を、エアバッグ100の膨張完了時において、リング部Rよりも流入用開口24Bから離れた側となる外方の位置に配置される構成であることから、エアバッグ100の膨張完了時に、凹部107の元部(下端107b)側の領域を、広く開口させることができて、運転者MDが前方移動してエアバッグ100の後部側部位101bと接触する際に、リング部Rを、一層円滑に、後部側部位101bにおける凹部107内に進入させることができる。
さらにまた、第3実施形態のエアバッグ100では、凹部107が、エアバッグ100の膨張完了状態において、中心C5を、ステアリングホイールWにおけるリング部Rの回転中心C2と略一致した位置に配置されることから、ステアリングホイールWの回転操舵時においてエアバッグ100が膨張することとなっても、前方移動した運転者MDのエアバッグ100との接触時に、リング部Rを、安定して凹部107内に進入させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、第1実施形態,第2実施形態のエアバッグ20,80のごとく、凹部も、中心を、リング部の回転中心からずらして、バッグ本体における流入用開口の中心と略一致した位置に配置させる構成としてもよい。
さらにまた、第3実施形態のエアバッグ100では、テザー111が、エアバッグ100の膨張完了時に、略円筒状として、凹部107の凹みの先端(上端107a)側と運転者側壁部34B側とを連続的に連結させる構成とされるとともに、バッグ本体101におけるテザー111の内方の領域(中央側領域102)と、テザー111の外方の領域(外側領域103)とを連通させるような連通孔112を、流入用開口24Bを中心として放射状となるように複数配設させる構成とされている。すなわち、第3実施形態のエアバッグ100では、バッグ本体101が、テザーに111よって、凹部107よりも中央側となる中央側領域102と、凹部107よりも外方となる外側領域103と、に、区画されるような態様となることから、エアバッグ100の膨張初期に、中央側領域102を、迅速に膨張させることができて、テザー111の外方となる外側領域103より内圧の高い中央側領域102によって、運転者MDを的確に保護することができる。なお、このような点を考慮しなければ、テザーを、第2実施形態のエアバッグにおけるテザー構成部のように、放射状に部分的に配置させる構成としてもよい。