JP7042981B2 - 固体レーザ媒質、固体レーザ増幅器および固体レーザ発振器 - Google Patents

固体レーザ媒質、固体レーザ増幅器および固体レーザ発振器 Download PDF

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Description

本発明は、レーザ光の増幅に使用される固体レーザ媒質と、固体レーザ媒質を備える固体レーザ増幅器および固体レーザ発振器に関する。
従来、固体レーザ媒質の内部にて反射を繰り返しながらレーザ光が伝搬することによってレーザ光を増幅させる固体レーザ増幅器が知られている。特許文献1には、6つ以上の平面を有する多面体である固体レーザ媒質を有し、固体レーザ媒質の全ての平面に強反射膜が設けられている固体レーザ増幅器が開示されている。特許文献1の固体レーザ増幅器は、強反射膜が設けられた反射面での多重反射を繰り返しながらレーザ光が固体レーザ媒質の内部を伝搬することによって、レーザ光を増幅させる。
特開2007-227664号公報
上記特許文献1の固体レーザ増幅器では、強反射膜の製造時のばらつきに起因して、反射面における反射率にばらつきが生じることがある。反射率にばらつきが生じている反射面での多重反射が繰り返されることによって、上記特許文献1の固体レーザ増幅器では、固体レーザ媒質でのレーザ光の伝搬によって損失されるレーザ光のエネルギーに大幅なばらつきが生じる。このため、上記特許文献1の技術によると、固体レーザ媒質は、高効率かつ安定してレーザ光を増幅することが困難であるという問題があった。
固体レーザ媒質の内部には、励起に伴う発熱によって生じる屈折率分布、いわゆる熱レンズが形成される。上記特許文献1の固体レーザ増幅器では、熱レンズ効果の影響を補償することができず、レーザ光の指向性低下、あるいはレーザ光の集光性の低下といった品質低下が生じることがある。このため、上記特許文献1の技術によると、固体レーザ媒質は、レーザ光の品質低下を抑制することが困難であるという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高効率かつ安定したレーザ光の増幅を可能とし、かつレーザ光の品質低下を抑制可能とする固体レーザ媒質を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる固体レーザ媒質は、互いに平行な入射面および出射面と、入射面と出射面との間を伝搬する光が反射し、入射面の法線から傾いて形成され、互いに平行な第1の反射面および第2の反射面と、入射面と出射面との間を伝搬する光が反射し、入射面の法線から傾いて形成され、第1の反射面と直交しかつ互いに平行な第3の反射面および第4の反射面と、を備える。本発明にかかる固体レーザ媒質は、入射面の中心に光線束の中心を一致させかつ光線束の方向が第1の反射面および第3の反射面に平行となるように入射面へ入射した光を、第1の反射面、第2の反射面、第3の反射面および第4の反射面のいずれかで内部全反射させつつ伝搬させ、出射面の中心に光線束の中心を一致させて出射面から出射させるまでにおいて、第1の反射面における内部全反射の回数と第2の反射面における内部全反射の回数とが互いに同じであり、第3の反射面における内部全反射の回数と第4の反射面における内部全反射の回数とが互いに同じである。
本発明によれば、固体レーザ媒質は、高効率かつ安定したレーザ光の増幅を可能とし、かつレーザ光の品質低下を抑制することができるという効果を奏する。
本発明の実施の形態1にかかる固体レーザ媒質の平面図 実施の形態1にかかる固体レーザ媒質の正面図 実施の形態1にかかる固体レーザ媒質の左側面図 実施の形態1にかかる固体レーザ媒質における熱レンズ効果の影響に対する補償について説明するための図 実施の形態1にかかる固体レーザ媒質の屈折率分布を模式的に表した図 本発明の実施の形態2にかかる固体レーザ媒質の一部を示す斜視図 実施の形態2にかかる固体レーザ媒質における、入射面の法線の方向と、レーザ光の中心軸の方向と、偏光方向とについて説明するための図 本発明の実施の形態3にかかる固体レーザ媒質の一部を示す斜視図 実施の形態3にかかる固体レーザ媒質における、入射面の法線の方向と、レーザ光の中心軸の方向と、偏光方向とについて説明するための図 本発明の実施の形態4にかかる固体レーザ媒質の一部を示す斜視図 実施の形態4にかかる固体レーザ媒質における、入射面の法線の方向と、レーザ光の中心軸の方向と、偏光方向とについて説明するための図 本発明の実施の形態7にかかる固体レーザ増幅器の斜視図 本発明の実施の形態8にかかる固体レーザ発振器の斜視図
以下に、本発明の実施の形態にかかる固体レーザ媒質、固体レーザ増幅器および固体レーザ発振器を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる固体レーザ媒質の平面図である。図2は、実施の形態1にかかる固体レーザ媒質の正面図である。図3は、実施の形態1にかかる固体レーザ媒質の左側面図である。
実施の形態1にかかる固体レーザ媒質10は、活性媒質であるネオジウム(Neodymium:Nd)がドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(Yttrium Aluminum Garnet:YAG)結晶である。固体レーザ媒質10によって増幅されるレーザ光20の波長は、1.064μmである。1.064μmの波長に対する固体レーザ媒質10の屈折率は、1.82である。励起光源には、808nmの波長の半導体レーザが使用される。
固体レーザ媒質10は、レーザ光20が入射する入射面11と、レーザ光20が出射する出射面12と、互いに対向する第1の反射面13および第2の反射面14と、互いに対向する第3の反射面15および第4の反射面16とを有する。x軸とy軸とz軸とは、互いに垂直な3つの軸である。固体レーザ媒質10の中心軸、すなわち入射面11の中心111と出射面12の中心121とを通る軸線は、z軸と一致する。
入射面11の法線は、x軸、y軸およびz軸のいずれに対しても傾いている。入射面11と出射面12とは、互いに対向する。入射面11と出射面12とは、互いに平行である。第1の反射面13と第2の反射面14とは、xz平面に平行である。第1の反射面13と第2の反射面14とは、互いに平行である。第3の反射面15と第4の反射面16とは、yz平面に平行である。第3の反射面15と第4の反射面16とは、互いに平行である。第1の反射面13と第3の反射面15とは、互いに直交する。
固体レーザ媒質10の外から入射面11へ入射したレーザ光20は、第1の反射面13、第2の反射面14、第3の反射面15および第4の反射面16において内部全反射しながら、固体レーザ媒質10の内部を伝搬する。レーザ光20は、固体レーザ媒質10の内部において増幅される。固体レーザ媒質10の内部を伝搬したレーザ光20は、出射面12から固体レーザ媒質10の外へ出射する。
なお、図1では、レーザ光20の中心軸を一点鎖線によって表している。レーザ光20の中心軸とは、レーザ光20に含まれる光線束の中心を表す軸とする。レーザ光20は、中心軸を中心とする一定のビーム径範囲に存在している。図2以降においても、レーザ光20の表し方は図1と同様であるものとする。
入射面11へ入射するレーザ光20の中心軸は、z軸と平行である。また、入射面11へ入射するレーザ光20の中心軸は、入射面11の中心111を通る。すなわち、レーザ光20は、入射面11の中心111に光線束の中心を一致させて、入射面11へ入射する。入射面11の法線がx軸、y軸およびz軸のいずれに対しても傾いているため、レーザ光20の中心軸は、入射面11でのレーザ光20の屈折によって、x軸、y軸およびz軸のいずれに対しても傾いた方向へ折り曲げられる。
図2に示すように、yz面内では、入射面11において屈折したレーザ光20は、第2の反射面14に到達して、第2の反射面14にて内部全反射する。第2の反射面14にて内部全反射したレーザ光20は、第1の反射面13に到達して、第1の反射面13にて内部全反射する。yz面内において、第1の反射面13でのレーザ光20の内部全反射と、第2の反射面14でのレーザ光20の内部全反射とが交互に繰り返される。レーザ光20は、第1の反射面13における4回の内部全反射と、第2の反射面14における4回の内部全反射とを経て、出射面12に到達する。
また、図1に示すように、xz面内では、入射面11において屈折したレーザ光20は、第3の反射面15に到達して、第3の反射面15にて内部全反射する。第3の反射面15にて内部全反射したレーザ光20は、第4の反射面16に到達して、第4の反射面16にて内部全反射する。xz面内において、第3の反射面15でのレーザ光20の内部全反射と、第4の反射面16におけるレーザ光20の内部全反射とが交互に繰り返される。レーザ光20は、第3の反射面15における2回の内部全反射と、第4の反射面16における2回の内部全反射とを経て、出射面12に到達する。
固体レーザ媒質10を伝搬したレーザ光20の中心軸は、出射面12の中心121を通る。レーザ光20の中心軸は、出射面12でのレーザ光20の屈折によって、z軸に平行になるように折り曲げられる。固体レーザ媒質10は、図3に示すように、第3の反射面15にレーザ光20が入射したときにおけるレーザ光20の中心軸の位置が、第1の反射面13と第2の反射面14との間のy軸方向における中心に一致するように設計されている。また、固体レーザ媒質10は、図3に示すように、第4の反射面16にレーザ光20が入射したときにおけるレーザ光20の中心軸の位置が、第1の反射面13と第2の反射面14との間のy軸方向における中心に一致するように設計されている。
固体レーザ媒質10のz軸方向の長さと、固体レーザ媒質10のx軸方向の幅と、固体レーザ媒質10のy軸方向の厚さとがあらかじめ決定されている場合、第1の反射面13と第2の反射面14とにおいて所望されるレーザ光20の内部全反射の回数と、第3の反射面15と第4の反射面16とにおいて所望されるレーザ光20の内部全反射の回数とに基づいて、入射面11からレーザ光20を伝搬させる方向が決まる。固体レーザ媒質10の設計において、入射面11の法線の傾きは、入射面11で屈折したレーザ光20の中心線が当該方向と一致するように、スネルの法則に従って決定される。
また、第1の反射面13、第2の反射面14、第3の反射面15および第4の反射面16の各々におけるレーザ光20の入射角は、内部全反射の臨界角以上である必要がある。第1の反射面13と第2の反射面14とにおけるレーザ光20の入射角、または第3の反射面15と第4の反射面16とにおけるレーザ光20の入射角が臨界角未満となる場合、第1の反射面13、第2の反射面14、第3の反射面15および第4の反射面16の各々におけるレーザ光20の入射角が臨界角以上となるように、レーザ光20の内部全反射の回数が調整される。または、固体レーザ媒質10の長さ、幅および厚さの少なくとも1つが調整される。なお、固体レーザ媒質10の上記設計手順は一例であり、固体レーザ媒質10の設計手順は上記のものに限られない。
実施の形態1にかかる固体レーザ媒質10は、第1の反射面13、第2の反射面14、第3の反射面15および第4の反射面16における内部全反射によってレーザ光20を伝搬させる。固体レーザ媒質10は、固体レーザ媒質10の内部におけるレーザ光20の反射によるレーザ光20の損失を低減できる。また、固体レーザ媒質10は、第1の反射面13、第2の反射面14、第3の反射面15および第4の反射面16の各々に強反射膜が設けられなくても、固体レーザ媒質10の内部にてレーザ光20を低損失で伝搬させることができる。固体レーザ媒質10は、強反射膜が必要となる場合に比べて、コストを低減できる。さらに、固体レーザ媒質10は、強反射膜が設けられる場合よりも、反射面における反射率のばらつきを少なくできる。以上により、固体レーザ媒質10は、高効率かつ安定してレーザ光20を増幅することができる。
次に、固体レーザ媒質10における熱レンズ効果の影響に対する補償について説明する。図4は、実施の形態1にかかる固体レーザ媒質における熱レンズ効果の影響に対する補償について説明するための図である。図4では、第1の反射面13と第2の反射面14とにおける反射によって折り曲げられるレーザ光20の中心軸が1つの直線になるように、レーザ光20が伝搬する様子を展開図によって表している。図4に示すレーザ光20の光路は、図2に示すレーザ光20の光路と光学的に等価であるものとする。図4において、レーザ光20の中心軸は、入射面11と出射面12との間にて1つの直線となる。
図5は、実施の形態1にかかる固体レーザ媒質の屈折率分布を模式的に表した図である。一般に、固体レーザ媒質10の光励起において、励起光の波長は、励起状態からの状態遷移によって放出される光の波長よりも短い。励起光の波長と放出される光の波長との差に起因するエネルギー差は量子欠損と呼ばれる。量子欠損に相当するエネルギーは、熱として放出される。
実施の形態1では、励起光の波長が808nm、増幅されるレーザ光20の波長が1.064μmであるため、励起状態から消費されるエネルギーのうちの約24%が熱として放出される。固体レーザ媒質10は、固体レーザ媒質10の表面から熱を逃がすことによって冷却される。固体レーザ媒質10の内部での熱の発生と、固体レーザ媒質10の表面からの熱の放出とによって、固体レーザ媒質10の内部には温度分布が発生する。
固体レーザ媒質10の屈折率は、温度によって変化する。固体レーザ媒質10の中心に近いほど温度が高くなることから、温度の上昇に対して屈折率が大きくなるYAG結晶である固体レーザ媒質10では、図5に示すように、y軸方向における固体レーザ媒質10の中心y0に近いほど屈折率が高くなる。
光学距離は、屈折率に比例する。屈折率が高い領域と屈折率が低い領域とにおいて互いに同じ空間距離を光が通過した場合であっても、屈折率が高い領域を光が通過した場合の光学距離は、屈折率が低い領域を光が通過した場合の光学距離よりも長くなる。仮に、固体レーザ媒質10の内部においてz軸方向へレーザ光20が伝搬した場合、中心y0を光線が伝搬する場合における光学距離は、第1の反射面13に近い位置または第2の反射面14に近い位置を光線が伝搬する場合における光学距離よりも長くなる。この場合、中心y0を伝搬する光線の位相は、第1の反射面13に近い位置を伝搬する光線の位相および第2の反射面14に近い位置を伝搬する光線の位相よりも遅れる。その結果、固体レーザ媒質10においてz軸方向へ伝搬するレーザ光20の波面は、レーザ光20が伝搬する方向とは逆向きに凹んだ形になる。固体レーザ媒質10は、凸レンズと同様な光学作用を奏することになる。温度分布に起因するこのようなレンズ作用は熱レンズ効果と称される。固体レーザ媒質10では、熱レンズ効果の影響によって、レーザ光20の指向性低下、あるいはレーザ光20の集光性の低下といった品質低下が生じる場合がある。
実施の形態1によると、レーザ光20は、第1の反射面13と第2の反射面14とで互いに同じ回数の内部全反射を繰り返して固体レーザ媒質10の内部をジグザグ状に伝搬する。図4に示すように、レーザ光20は、入射面11と出射面12との間を伝搬する間に、屈折率が高い領域と屈折率が低い領域とを交互に通過する。
図4において、光線201は入射面11のうち第1の反射面13に近い位置を通る光線とする。また、光線202は、入射面11のうち第2の反射面14に近い位置を通る光線とする。入射面11の中心を通る光線、すなわちレーザ光20の中心軸に一致する光線と、光線201と、光線202とでは、いずれも、屈折率が高い領域を通過する回数が同じであり、かつ、屈折率が低い領域を通過する回数が同じである。中心軸に一致する光線と、光線201と、光線202とが、入射面11と出射面12との間において屈折率の高低による影響を同じように受けることによって、中心軸に一致する光線の光学距離と、光線201の光学距離と、光線202の光学距離とは概ね等しくなる。これにより、固体レーザ媒質10は、yz面内における光強度分布の対称性を低下させることなく、第1の反射面13と第2の反射面14との間における熱レンズ効果の影響を効果的に補償可能とし、レーザ光20の品質低下を抑制することができる。
さらに、実施の形態1によると、レーザ光20は、第3の反射面15と第4の反射面16とで互いに同じ回数の内部全反射を繰り返して固体レーザ媒質10の内部をジグザグ状に伝搬する。固体レーザ媒質10は、xz面内における光強度分布の対称性を低下させることなく、第3の反射面15と第4の反射面16との間における熱レンズ効果の影響を効果的に補償可能とし、レーザ光20の品質低下を抑制することができる。
固体レーザ媒質10では、レーザ光20と固体レーザ媒質10内の励起粒子との相互作用によって誘導放出が発生し、励起粒子に蓄積されたエネルギーが増幅光として取り出されることによってレーザ光20が増幅される。固体レーザ媒質10におけるレーザ光20の増幅効率は、固体レーザ媒質10の内部における励起領域とレーザ光20との重畳率に比例する。重畳率は、モードオーバラップ率と称されることがある。
実施の形態1では、第1の反射面13と第2の反射面14との間においてレーザ光20がジグザグ状に伝搬するとともに、第3の反射面15と第4の反射面16との間においてレーザ光20がジグザグ状に伝搬することによって、固体レーザ媒質10の内部においてレーザ光20が掃引する領域を広げることができる。この結果、固体レーザ媒質10は、重畳率を高めることができ、増幅効率を効果的に向上させることが可能となる。
固体レーザ媒質10のうちレーザ光20が伝搬する領域において、励起粒子の分布である励起密度分布が不均一であることによって、レーザ光20のビーム断面における増幅率が不均一になることがある。この場合、固体レーザ媒質10は、レーザ光20の強度分布が不均一になることによって、レーザ光20の品質を低下させることがあり得る。
実施の形態1では、第1の反射面13と第2の反射面14との間においてレーザ光20がジグザグ状に伝搬するとともに、第3の反射面15と第4の反射面16との間においてレーザ光20がジグザグ状に伝搬することによって、熱レンズ効果の補償の場合と同様に、固体レーザ媒質10の内部を伝搬することによってレーザ光20が受ける利得の総量を概ね同じとすることができる。これにより、固体レーザ媒質10は、励起密度分布が不均一であっても、レーザ光20の強度分布が不均一となることを抑制可能とし、レーザ光20の品質低下を効果的に抑制することができる。
なお、固体レーザ媒質10は、NdがドープされたYAG結晶に限られない。固体レーザ媒質10にドープされる活性媒質は、Ndに限られず、イッテルビウム(Ytterbium:Yb)、エルビウム(Erbium:Er)、ホルミウム(Holmium:Ho)またはツリウム(Thulium:Tm)であっても良い。固体レーザに使用され得るいずれの活性媒質が使用される場合であっても、固体レーザ媒質10は、高効率かつ安定したレーザ光20の増幅を可能とし、かつレーザ光20の品質低下を抑制することができる。
固体レーザ媒質10に用いられるホスト材料は、YAG結晶に限られず、イットリウムバナデート(Yttrium Orthovanadate:YVO)、サファイア(Sapphire:Al)またはリン酸ガラスといった材料であっても良い。固体レーザに使用され得るいずれの材料が使用される場合であっても、固体レーザ媒質10は、高効率かつ安定したレーザ光20の増幅を可能とし、かつレーザ光20の品質低下を抑制することができる。増幅されるレーザ光20の波長と固体レーザ媒質10の屈折率とに応じて固体レーザ媒質10の形状が適宜設計されることによって、固体レーザ媒質10は、高効率かつ安定したレーザ光20の増幅を可能とし、かつレーザ光20の品質低下を抑制することができる。
第1の反射面13と第3の反射面15とがなす角度は、直角に限られない。第1の反射面13と第3の反射面15とがなす角度は、0度より大きくかつ180度未満の範囲において適宜設定されても良い。この場合も、固体レーザ媒質10は、第1の反射面13と第2の反射面14とが互いに平行、第3の反射面15と第4の反射面16とが互いに平行であって、かつ入射面11の法線の傾きが適切に設定されることによって、上記の場合と同様にレーザ光20を内部全反射させることができる。固体レーザ媒質10は、第1の反射面13と第3の反射面15とがなす角度が適宜設定されることによって、高効率かつ安定したレーザ光20の増幅を可能とし、かつレーザ光20の品質低下を抑制することができる。
実施の形態1によると、固体レーザ媒質10は、第1の反射面13、第2の反射面14、第3の反射面15および第4の反射面16における内部全反射によってレーザ光20を伝搬させることで、高効率かつ安定したレーザ光20の増幅を可能とする。固体レーザ媒質10は、入射面11の中心111に光線束の中心を一致させて入射面11へ入射したレーザ光20を、第1の反射面13と第2の反射面14との各々における互いに同じ回数の内部全反射と、第3の反射面15と第4の反射面16との各々における互いに同じ回数の内部全反射とを経て、出射面12の中心121に光線束の中心を一致させて出射面12から出射させることで、レーザ光20の品質低下を抑制することができる。以上により、固体レーザ媒質10は、高効率かつ安定したレーザ光20の増幅を可能とし、かつレーザ光20の品質低下を抑制することができるという効果を奏する。
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2にかかる固体レーザ媒質の一部を示す斜視図である。図7は、実施の形態2にかかる固体レーザ媒質における、入射面の法線の方向と、レーザ光の中心軸の方向と、偏光方向とについて説明するための図である。図6では、実施の形態2にかかる固体レーザ媒質10のうち入射面11を含む一部を拡大して示している。実施の形態2では、上記の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1とは異なる構成について主に説明する。
実施の形態2において、固体レーザ媒質10には、実施の形態1と同様に、NdがドープされたYAG結晶が使用される。固体レーザ媒質10によって増幅されるレーザ光20の波長は、1.064μmである。1.064μmの波長に対する固体レーザ媒質10の屈折率は、1.82である。励起光源には、808nmの波長の半導体レーザが使用される。第1の反射面13と第2の反射面14とは、xz平面に平行である。第3の反射面15と第4の反射面16とは、yz平面に平行である。入射面11と出射面12とは、互いに平行である。
実施の形態2において、固体レーザ媒質10へ入射するレーザ光20は、図6に示す偏光方向21を備えた直線偏光である。レーザ光20は、入射面11の中心111へ入射する。実施の形態2において、第3の反射面15と第4の反射面16とには、光学薄膜が設けられている。光学薄膜は、偏光無依存の光学薄膜である。すなわち、光学薄膜でのP偏光とS偏光との反射によってP偏光とS偏光とに生じる位相差は、固体レーザ媒質10を伝搬する光の波長の10分の1以下である。
図7に示す仰角θは、入射面11の法線110とy軸とがなす角度である。方位角φは、xz面内における法線110の方向を表す角度である。方位角φの基準は、x軸とする。実施の形態2において、仰角θは28.8度、方位角φは240度と設定される。仰角θは、入射面11へ入射するレーザ光20の中心軸とy軸とがなす角度である。方位角φは、xz面内におけるレーザ光20の中心軸の方向を表す角度である。方位角φの基準は、x軸とする。実施の形態2において、仰角θは90度と設定される。すなわち、入射面11へ入射するレーザ光20の中心軸は、xz面内に含まれる。また、実施の形態2において、方位角φは60度と設定される。さらに、偏光方向21はy軸方向である。
これらの設定によって、入射面11には、直線偏光であるレーザ光20がブリュースター角である61.2度の入射角をもってP偏光で入射する。固体レーザ媒質10は、入射面11に反射防止膜等が設けられなくても、入射面11での反射によるレーザ光20の損失を効果的に抑制できる。固体レーザ媒質10は、固体レーザ媒質10の内部へ効率よくレーザ光20を入射させることができる。
固体レーザ媒質10へ入射したレーザ光20の仰角θは、入射面11にてレーザ光20が屈折することによって、固体レーザ媒質10への入射前における90度から122.4度へ変化する。固体レーザ媒質10へ入射したレーザ光20の方位角φは、固体レーザ媒質10への入射前と同じ60度となる。固体レーザ媒質10へ入射したレーザ光20の偏光方向22とy軸とがなす仰角θは、32.4度となる。xz面内における偏光方向22の方向を表す方位角φは、60度となる。なお、方位角φの基準は、x軸とする。
入射面11にて屈折したレーザ光20は、第2の反射面14の位置141へ入射する。第2の反射面14の法線はy軸と一致することから、偏光方向22は、第2の反射面14の法線とレーザ光20の中心軸とを含む平面に含まれる。したがって、レーザ光20は、第2の反射面14に対してもP偏光として入射する。
第2の反射面14で反射したレーザ光20の仰角θは、第2の反射面14での反射前における122.4度から57.6度へ変化する。第2の反射面14で反射したレーザ光20の方位角φは、第2の反射面14での反射前と同じ60度となる。第2の反射面14で反射したレーザ光20の偏光方向23とy軸とがなす仰角θは、偏光方向22の仰角θと同じ32.4度となる。xz面内における偏光方向23の方向を表す方位角φは、偏光方向22の方位角φである60度から変化して、240度となる。レーザ光20は、第2の反射面14での反射によって、第3の反射面15へ向かって伝搬する。
第2の反射面14で反射したレーザ光20は、第3の反射面15の位置151へ入射する。第3の反射面15で反射したレーザ光20の仰角θは、第3の反射面15での反射前と同じ57.6度となる。第3の反射面15で反射したレーザ光20の方位角φは、第3の反射面15での反射前における60度から120度へ変化する。レーザ光20は、第3の反射面15で反射によって、第1の反射面13へ向かって伝搬する。
第3の反射面15の法線は、x軸と一致する。レーザ光20は、第3の反射面15に対して、P偏光とS偏光とが混在した状態で入射する。第3の反射面15に上記の光学薄膜が設けられていることによって、第3の反射面15でのP偏光とS偏光との反射によってP偏光とS偏光とに生じる位相差は、レーザ光20の波長の10分の1以下に抑えられる。これにより、固体レーザ媒質10は、第3の反射面15でのレーザ光20の反射による直線偏光から楕円偏光への変化を効果的に抑制可能とし、レーザ光20の偏光状態を直線偏光のまま維持させることができる。
したがって、第3の反射面15で反射したレーザ光20の偏光方向24とy軸とがなす仰角θは、偏光方向23の仰角θと同じ32.4度となる。xz面内における偏光方向24の方向を表す方位角φは、偏光方向23の方位角φである240度から変化して、300度、すなわちマイナス60度となる。
直線偏光である偏光状態が維持されたレーザ光20は、第1の反射面13の位置131へ入射する。第1の反射面13の法線は、y軸と一致する。偏光方向24は、第1の反射面13の法線とレーザ光20の中心軸とを含む平面に含まれる。したがって、レーザ光20は、第1の反射面13に対してもP偏光として入射する。
実施の形態2にかかる固体レーザ媒質10が上記のように構成されていることにより、入射面11へ入射するレーザ光20のxz平面内における方向は、入射面11と第1の反射面13との間の稜線または入射面11と第2の反射面14との間の稜線に対して垂直な方向に設定される。また、偏光方向21がy軸方向と一致する。これにより、固体レーザ媒質10は、ブリュースター角である入射角で、直線偏光であるレーザ光20をP偏光で入射面11へ入射させることができる。固体レーザ媒質10は、実施の形態1の場合と同様の効果が得られるほか、入射面11に反射防止膜等が設けられなくても固体レーザ媒質10の内部へ効率良くレーザ光20を入射させることが可能となる。
また、固体レーザ媒質10へ入射したレーザ光20は、P偏光として第2の反射面14へ入射する。第3の反射面15と第4の反射面16とに上記の光学薄膜が設けられていることによって、固体レーザ媒質10は、レーザ光20が直線偏光から楕円偏光へ変化することを効果的に抑制できる。これにより、固体レーザ媒質10は、第1の反射面13と第2の反射面14とへP偏光でレーザ光20が入射するように、レーザ光20の偏光状態を維持させることができる。さらに、固体レーザ媒質10の内部において、偏光方向22,23,24,25の仰角θは32.4度に維持される。
第1の反射面13と第2の反射面14とは、固体レーザ媒質10を構成する他の面と比べて面積が大きい面である。固体レーザ媒質10の冷却は、第1の反射面13と第2の反射面14との両面の冷却によって行われる。そのため、固体レーザ媒質10の内部における温度分布は、第1の反射面13と第2の反射面14とが向かい合う方向であるy軸方向における温度分布が支配的となる。なお、固体レーザ媒質10の冷却は、第1の反射面13と第2の反射面14とのうちの一方の冷却によって行われても良い。
固体レーザ媒質10の内部おける温度分布によって、固体レーザ媒質10の内部において、熱応力に伴う光弾性効果に起因する熱複屈折が起きることがある。実施の形態2では、固体レーザ媒質10の内部にてy軸方向における温度分布が支配的となることによって、固体レーザ媒質10の熱複屈折は、y軸を光学軸とする一軸結晶における複屈折と同様となる。したがって、偏光方向がy軸に直交する方向である直線偏光、すなわち偏光方向がxz面内に含まれる直線偏光は常光となり、偏光方向がy軸に直交する方向以外の方向である直線偏光は異常光となる。異常光である直線偏光の屈折率は、y軸に対する直線偏光の仰角によって変化する。
媒質の内部において熱複屈折が生じた場合において、偏光方向に常光成分と異常光成分とが混在すると、常光の光路と異常光の光路とが分離するいわゆるウォークオフが発生する場合がある。固体レーザ媒質10の内部にてウォークオフが発生した場合、レーザ光20の集光性は劣化する。また、常光と異常光とに位相差が発生することによって、直線偏光の維持が困難となる場合がある。
実施の形態2では、偏光方向22,23,24,25は、いずれもレーザ光20の中心軸とy軸とによって形成される面内、すなわちxz平面に直交する面内に含まれる。このため、固体レーザ媒質10の内部において直線偏光は常に異常光となる。したがって、固体レーザ媒質10は、熱複屈折によるウォークオフの発生を効果的に抑制することができ、高い集光性を維持しながら効率良くレーザ光20を増幅することができる。
さらに、実施の形態2にかかる固体レーザ媒質10は、固体レーザ媒質10の内部において偏光方向22,23,24,25の仰角θが32.4度に維持されることによって、固体レーザ媒質10の内部における直線偏光が感受する屈折率を一定にすることができる。これにより、固体レーザ媒質10は、レーザ光20の増幅において高い安定性を維持することができる。
なお、実施の形態2にかかる固体レーザ媒質10の形状は、上記の形状に限られない。固体レーザ媒質10の形状は、固体レーザ媒質10の材料またはレーザ光20の波長に合わせて適宜設計可能である。第3の反射面15および第4の反射面16に設けられる光学薄膜は、固体レーザ媒質10の屈折率と、第3の反射面15または第4の反射面16におけるレーザ光20の入射角とに基づいて、多層膜構造等が適宜設計されたものであっても良い。固体レーザ媒質10の形状と光学薄膜とが適宜設計されることによって、固体レーザ媒質10は、高効率かつ安定したレーザ光20の増幅を可能とし、かつレーザ光20の品質低下を抑制することができる。
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3にかかる固体レーザ媒質の一部を示す斜視図である。図9は、実施の形態3にかかる固体レーザ媒質における、入射面の法線の方向と、レーザ光の中心軸の方向と、偏光方向とについて説明するための図である。図8では、実施の形態3にかかる固体レーザ媒質10のうち入射面11を含む一部を拡大して示している。実施の形態3では、上記の実施の形態1または2と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1または2とは異なる構成について主に説明する。
実施の形態3において、固体レーザ媒質10には、実施の形態1および2と同様に、NdがドープされたYAG結晶が使用される。固体レーザ媒質10によって増幅されるレーザ光20の波長は、1.064μmである。1.064μmの波長に対する固体レーザ媒質10の屈折率は、1.82である。励起光源には、808nmの波長の半導体レーザが使用される。第1の反射面13と第2の反射面14とは、xz平面に平行である。第3の反射面15と第4の反射面16とは、yz平面に平行である。入射面11と出射面12とは、互いに平行である。
実施の形態3において、固体レーザ媒質10へ入射するレーザ光20は、図8に示す偏光方向21を備えた直線偏光である。レーザ光20は、入射面11の中心111へ入射する。実施の形態3では、実施の形態2と同様に、第3の反射面15と第4の反射面16とに光学薄膜が設けられている。光学薄膜は、偏光無依存の光学薄膜である。すなわち、光学薄膜でのP偏光とS偏光との反射によってP偏光とS偏光とに生じる位相差は、固体レーザ媒質10を伝搬する光の波長の10分の1以下である。
図9に示す仰角θは、入射面11の法線110とy軸とがなす角度である。方位角φは、xz面内における法線110の方向を表す角度である。方位角φの基準は、x軸とする。実施の形態3において、仰角θは70度、方位角φは270度と設定される。仰角θは、入射面11へ入射するレーザ光20の中心軸とy軸とがなす角度である。方位角φは、xz面内におけるレーザ光20の中心軸の方向を表す角度である。方位角φの基準は、x軸とする。実施の形態3において、仰角θは109.2度と設定される。また、実施の形態3において、方位角φは24.6度と設定される。固体レーザ媒質10へ入射するレーザ光20の偏光方向21とy軸とがなす仰角θは、102.1度に調整される。xz面内における偏光方向21の方向を表す方位角φは、118.9度に調整される。なお、方位角φの基準は、x軸とする。
これらの設定および調整によって、入射面11には、直線偏光であるレーザ光20がブリュースター角である61.2度の入射角をもってP偏光で入射する。固体レーザ媒質10は、入射面11に反射防止膜等が設けられなくても、入射面11での反射によるレーザ光20の損失を効果的に抑制できる。固体レーザ媒質10は、固体レーザ媒質10の内部へ効率よくレーザ光20を入射させることができる。
固体レーザ媒質10へ入射したレーザ光20の仰角θは、入射面11にてレーザ光20が屈折することによって、固体レーザ媒質10への入射前における109.2度から113.0度へ変化する。固体レーザ媒質10へ入射したレーザ光20の方位角φは、固体レーザ媒質10への入射前における24.6度から59.2度へ変化する。固体レーザ媒質10へ入射したレーザ光20の偏光方向22とy軸とがなす仰角θは、偏光方向21の仰角θである102.1度から変化して、90度となる。xz面内における偏光方向22の方向を表す方位角φは、偏光方向21の方位角φである118.9度から変化して、149.2度となる。
入射面11にて屈折したレーザ光20は、第2の反射面14の位置141へ入射する。第2の反射面14の法線はy軸と一致することから、偏光方向22は、第2の反射面14の法線とレーザ光20の中心軸とを含む平面と直交する。したがって、レーザ光20は、第2の反射面14に対してS偏光として入射する。
第2の反射面14で反射したレーザ光20の仰角θは、第2の反射面14での反射前における113.0度から67.0度へ変化する。第2の反射面14で反射したレーザ光20の方位角φは、第2の反射面14での反射前と同じ59.2度となる。S偏光であるレーザ光20が第2の反射面14で反射することによって、第2の反射面14での反射後におけるレーザ光20の偏光方向23は、第2の反射面14での反射前におけるレーザ光20の偏光方向22と同じとなる。すなわち、偏光方向23とy軸とがなす仰角θは、偏光方向22の仰角θと同じ90度となる。xz面内における偏光方向23の方向を表す方位角φは、偏光方向22の方位角φと同じ149.2度となる。レーザ光20は、第2の反射面14での反射によって、第3の反射面15へ向かって伝搬する。
第2の反射面14で反射したレーザ光20は、第3の反射面15の位置151へ入射する。第3の反射面15で反射したレーザ光20の仰角θは、第3の反射面15での反射前と同じ67.0度となる。第3の反射面15で反射したレーザ光20の方位角φは、第3の反射面15での反射前における59.2度から120.8度へ変化する。レーザ光20は、第3の反射面15で反射によって、第1の反射面13へ向かって伝搬する。
第3の反射面15の法線は、x軸と一致する。レーザ光20は、第3の反射面15に対して、P偏光とS偏光とが混在した状態で入射する。第3の反射面15に上記の光学薄膜が設けられていることによって、第3の反射面15でのP偏光とS偏光との反射によってP偏光とS偏光とに生じる位相差は、レーザ光20の波長の10分の1以下に抑えられる。これにより、固体レーザ媒質10は、第3の反射面15でのレーザ光20の反射による直線偏光から楕円偏光への変化を効果的に抑制可能とし、レーザ光20の偏光状態を直線偏光のまま維持させることができる。
したがって、第3の反射面15で反射したレーザ光20の偏光方向24とy軸とがなす仰角θは、偏光方向23の仰角θと同じ90度となる。xz面内における偏光方向24の方向を表す方位角φは、偏光方向23の方位角φである149.2度から変化して、210.8度となる。
直線偏光である偏光状態が維持されたレーザ光20は、第1の反射面13の位置131へ入射する。第1の反射面13の法線は、y軸と一致する。偏光方向24は、第1の反射面13の法線とレーザ光20の中心軸とを含む平面と直交する。したがって、レーザ光20は、第1の反射面13に対してもS偏光として入射する。
実施の形態3にかかる固体レーザ媒質10が上記のように構成されていることにより、固体レーザ媒質10は、ブリュースター角である入射角で、直線偏光であるレーザ光20を入射面11へP偏光で入射させることができる。これにより、固体レーザ媒質10は、実施の形態1の場合と同様の効果が得られるほか、入射面11に反射防止膜等が設けられなくても、実施の形態2と同様に固体レーザ媒質10の内部へ効率良くレーザ光20を入射させることが可能となる。
また、固体レーザ媒質10へ入射したレーザ光20は、S偏光として第2の反射面14へ入射する。一方、第3の反射面15と第4の反射面16とには、S偏光とP偏光とが混在して入射する。第3の反射面15と第4の反射面16とに上記の光学薄膜が設けられていることによって、固体レーザ媒質10は、レーザ光20が直線偏光から楕円偏光へ変化することを効果的に抑制できる。これにより、固体レーザ媒質10は、第1の反射面13と第2の反射面14とへ、直線偏光であるレーザ光20が、常にS偏光で入射するように、レーザ光20の偏光状態を維持させることができる。さらに、固体レーザ媒質10の内部において、偏光方向22,23,24,25の仰角θは90度に維持される。すなわち、偏光方向22,23,24,25は、いずれもxz平面に平行である。
第1の反射面13と第2の反射面14とは、固体レーザ媒質10を構成する他の面と比べて面積が大きい面である。実施の形態3においても、固体レーザ媒質10の冷却は、実施の形態2と同様に、第1の反射面13と第2の反射面14との両面の冷却によって行われる。固体レーザ媒質10の熱複屈折は、y軸を光学軸とする一軸結晶における複屈折と同様となる。なお、固体レーザ媒質10の冷却は、第1の反射面13と第2の反射面14とのうちの一方の冷却によって行われても良い。
実施の形態3では、偏光方向22,23,24,25はいずれもxz平面に平行であるため、固体レーザ媒質10の内部では常光と異常光とが混在せず、直線偏光は常に常光となる。したがって、固体レーザ媒質10は、実施の形態2と同様に、熱複屈折によるウォークオフの発生を効果的に抑制することができ、高い集光性を維持しながら効率良くレーザ光20を増幅することができる。
さらに、実施の形態3では、固体レーザ媒質10の内部において偏光方向22,23,24,25がxz平面に平行に維持される。レーザ光20は、第1の反射面13と第2の反射面14とへ常にS偏光として入射する。S偏光の偏光方向は反射前と反射後とにおいて変化しないことから、固体レーザ媒質10の内部では常光の偏光方向が確実に維持される。これにより、固体レーザ媒質10は、レーザ光20の増幅においてさらに高い安定性を維持することができる。
なお、実施の形態3にかかる固体レーザ媒質10の形状は、上記の形状に限られない。固体レーザ媒質10の形状は、固体レーザ媒質10の材料またはレーザ光20の波長に合わせて適宜設計可能である。第3の反射面15および第4の反射面16に設けられる光学薄膜は、固体レーザ媒質10の屈折率と、第3の反射面15または第4の反射面16におけるレーザ光20の入射角とに基づいて、多層膜構造等が適宜設計されたものであっても良い。固体レーザ媒質10の形状と光学薄膜とが適宜設計されることによって、固体レーザ媒質10は、高効率かつ安定したレーザ光20の増幅を可能とし、かつレーザ光20の品質低下を抑制することができる。
実施の形態4.
図10は、本発明の実施の形態4にかかる固体レーザ媒質の一部を示す斜視図である。図11は、実施の形態4にかかる固体レーザ媒質における、入射面の法線の方向と、レーザ光の中心軸の方向と、偏光方向とについて説明するための図である。図10では、実施の形態4にかかる固体レーザ媒質10のうち入射面11を含む一部を拡大して示している。実施の形態4では、上記の実施の形態1から3と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から3とは異なる構成について主に説明する。
実施の形態4において、固体レーザ媒質10には、実施の形態1から3と同様に、NdがドープされたYAG結晶が使用される。固体レーザ媒質10によって増幅されるレーザ光20の波長は、1.064μmである。1.064μmの波長に対する固体レーザ媒質10の屈折率は、1.82である。励起光源には、808nmの波長の半導体レーザが使用される。第1の反射面13と第2の反射面14とは、xz平面に平行である。第3の反射面15と第4の反射面16とは、yz平面に平行である。入射面11と出射面12とは、互いに平行である。
実施の形態4では、入射面11と出射面12とに光学薄膜が設けられている。光学薄膜は、偏光無依存の光学薄膜である。すなわち、光学薄膜へのP偏光とS偏光との入射によってP偏光とS偏光とに生じる位相差は、固体レーザ媒質10を伝搬する光の波長の10分の1以下である。また、光学薄膜は、固体レーザ媒質10を伝搬する光の反射を低減する反射防止膜でもある。光学薄膜におけるレーザ光20の反射率は、5%以下である。さらに、実施の形態4では、実施の形態2および3と同様に、第3の反射面15と第4の反射面16とに偏光無依存の光学薄膜が設けられている。
実施の形態4において、固体レーザ媒質10へ入射するレーザ光20は、図10に示す偏光方向21を備えた直線偏光である。レーザ光20は、入射面11の中心111へ入射する。
図11に示す仰角θは、入射面11の法線110とy軸とがなす角度である。方位角φは、xz面内における法線110の方向を表す角度である。方位角φの基準は、x軸とする。実施の形態4において、仰角θは30度、方位角φは240度と設定される。仰角θは、入射面11へ入射するレーザ光20の中心軸とy軸とがなす角度である。方位角φは、xz面内におけるレーザ光20の中心軸の方向を表す角度である。方位角φの基準は、x軸とする。実施の形態4において、仰角θは90度と設定される。また、実施の形態4において、方位角φは90度と設定される。すなわち、入射面11へ入射するレーザ光20の中心軸は、z軸と一致する。固体レーザ媒質10へ入射するレーザ光20の偏光方向21とy軸とがなす仰角θは、109.1度に調整される。xz面内における偏光方向21の方向を表す方位角φは、0度に調整される。なお、方位角φの基準は、x軸とする。
偏光無依存の反射防止膜である上記の光学薄膜が入射面11に設けられていることによって、固体レーザ媒質10は、入射面11での反射によるレーザ光20の損失を抑制することができる。また、固体レーザ媒質10は、レーザ光20が直線偏光から楕円偏光へ変化することを効果的に抑制できる。これにより、固体レーザ媒質10は、直線偏光である偏光状態を維持しながら、固体レーザ媒質10の内部へ効率良くレーザ光20を入射させることができる。
固体レーザ媒質10へ入射したレーザ光20の仰角θは、入射面11にてレーザ光20が屈折することによって、固体レーザ媒質10への入射前における90度から123.1度へ変化する。固体レーザ媒質10へ入射したレーザ光20の方位角φは、固体レーザ媒質10への入射前における90度から79.2度へ変化する。固体レーザ媒質10へ入射したレーザ光20の偏光方向22とy軸とがなす仰角θは、偏光方向21の仰角θである109.1度から変化して、90度となる。xz面内における偏光方向22の方向を表す方位角φは、0度から変化して、349.2度、すなわちマイナス10.8度となる。
入射面11にて屈折したレーザ光20は、第2の反射面14の位置141へ入射する。第2の反射面14の法線はy軸と一致することから、偏光方向22は、第2の反射面14の法線とレーザ光20の中心軸とを含む平面と直交する。したがって、レーザ光20は、第2の反射面14に対してS偏光として入射する。
第2の反射面14で反射したレーザ光20の仰角θは、第2の反射面14での反射前における123.1度から56.9度へ変化する。第2の反射面14で反射したレーザ光20の方位角φは、第2の反射面14での反射前と同じ79.2度となる。S偏光であるレーザ光20が第2の反射面14で反射することによって、第2の反射面14での反射後におけるレーザ光20の偏光方向23は、第2の反射面14での反射前におけるレーザ光20の偏光方向22と同じとなる。すなわち、偏光方向23とy軸とがなす仰角θは、偏光方向22の仰角θと同じ90度となる。xz面内における偏光方向23の方向を表す方位角φは、偏光方向22の方位角φと同じ349.2度となる。レーザ光20は、第2の反射面14での反射によって、第3の反射面15へ向かって伝搬する。
第2の反射面14で反射したレーザ光20は、第3の反射面15の位置151へ入射する。第3の反射面15で反射したレーザ光20の仰角θは、第3の反射面15での反射前と同じ56.9度となる。第3の反射面15で反射したレーザ光20の方位角φは、第3の反射面15での反射前における79.2度から100.8度へ変化する。レーザ光20は、第3の反射面15での反射によって、第1の反射面13へ向かって伝搬する。
第3の反射面15の法線は、x軸と一致する。レーザ光20は、第3の反射面15に対して、P偏光とS偏光とが混在した状態で入射する。第3の反射面15に上記の光学薄膜が設けられていることによって、第3の反射面15でのP偏光とS偏光との反射によってP偏光とS偏光とに生じる位相差は、レーザ光20の波長の10分の1以下に抑えられる。これにより、固体レーザ媒質10は、第3の反射面15でのレーザ光20の反射による直線偏光から楕円偏光への変化を効果的に抑制可能とし、レーザ光20の偏光状態を直線偏光のまま維持させることができる。
したがって、第3の反射面15で反射したレーザ光20の偏光方向24とy軸とがなす仰角θは、偏光方向23の仰角θと同じ90度となる。xz面内における偏光方向24の方向を表す方位角φは、偏光方向23の方位角φである349.2度から変化して、10.8度となる。
直線偏光である偏光状態が維持されたレーザ光20は、第1の反射面13の位置131へ入射する。第1の反射面13の法線は、y軸と一致する。偏光方向24は、第1の反射面13の法線とレーザ光20の中心軸とを含む平面と直交する。したがって、レーザ光20は、第1の反射面13に対してもS偏光として入射する。
実施の形態4にかかる固体レーザ媒質10が上記のように構成されていることにより、固体レーザ媒質10の内部において、偏光方向22,23,24,25の仰角θは90度に維持される。すなわち、偏光方向22,23,24,25は、いずれもxz平面に平行である。また、実施の形態3と同様に、固体レーザ媒質10は、第1の反射面13と第2の反射面14とへS偏光であるレーザ光20が入射するように、レーザ光20の偏光状態を維持させることができる。
実施の形態4において、入射面11におけるレーザ光20の入射角は、ブリュースター角に限られない。偏光無依存の反射防止膜である上記の光学薄膜が、レーザ光20の入射角とレーザ光20の波長とに基づいて適宜設計され、かつ偏光方向21が適切に調整されることによって、固体レーザ媒質10は、実施の形態3と同様に固体レーザ媒質10の内部へ効率良くレーザ光20を入射させることが可能となる。また、このように固体レーザ媒質10が構成されることによって、固体レーザ媒質10の設計自由度は格段に高められる。
固体レーザ媒質10の形状は、適宜設計可能である。固体レーザ媒質10の形状は、レーザ光20の入射角、固体レーザ媒質10の大きさ、第1の反射面13および第2の反射面14における内部全反射の回数、第3の反射面15および第4の反射面16における内部全反射の回数に応じて設計可能である。固体レーザ媒質10の形状と、偏光無依存の反射防止膜である上記の光学薄膜とが適宜設計されることによって、固体レーザ媒質10は、実施の形態3と同様に、高効率かつ安定したレーザ光20の増幅を可能とし、かつレーザ光20の品質低下を抑制することができる。
実施の形態5.
実施の形態5にかかる固体レーザ媒質10は、固体レーザ媒質10へ入射するレーザ光20の偏光方向21が実施の形態4の場合とは異なる以外、実施の形態4にかかる固体レーザ媒質10と同様である。実施の形態5では、上記の実施の形態1から4と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から4とは異なる構成について主に説明する。
実施の形態5では、偏光方向21の仰角θは173.8度、かつ、偏光方向21の方位角φは0度に調整される。実施の形態5の場合も、固体レーザ媒質10は、S偏光であるレーザ光20を第2の反射面14へ入射させることができる。固体レーザ媒質10は、実施の形態4と同様に、固体レーザ媒質10の設計自由度を格段に高めることができる。また、固体レーザ媒質10は、実施の形態4と同様に、高効率かつ安定したレーザ光20の増幅を可能とし、かつレーザ光20の品質低下を抑制することができる。
実施の形態6.
実施の形態2から5にかかる固体レーザ媒質10では、第3の反射面15と第4の反射面16とに偏光無依存の光学薄膜が設けられている。実施の形態6にかかる固体レーザ媒質10は、第3の反射面15および第4の反射面16に加えて、第1の反射面13および第2の反射面14の各々にも偏光無依存の光学薄膜が設けられている。すなわち、第1の反射面13および第2の反射面14の各々には、光学薄膜でのP偏光とS偏光との反射によってP偏光とS偏光とに生じる位相差が、固体レーザ媒質10を伝搬する光の波長の10分の1以下である光学薄膜が設けられている。実施の形態6では、上記の実施の形態1から5と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から5とは異なる構成について主に説明する。
実施の形態6では、第1の反射面13と第2の反射面14とに上記の光学薄膜が設けられることによって、P偏光とS偏光とが混在した状態のレーザ光20が第2の反射面14または第3の反射面15へ入射しても、直線偏光から楕円偏光への変化が抑制される。これにより、固体レーザ媒質10は、直線偏光であるレーザ光20が入射面11へ入射されると、レーザ光20の偏光状態を直線偏光のまま維持させることができる。
実施の形態6においても、固体レーザ媒質10の冷却は、実施の形態2および3と同様に、第1の反射面13と第2の反射面14との両面の冷却によって行われる。固体レーザ媒質10の熱複屈折は、y軸を光学軸とする一軸結晶における複屈折と同様となる。ただし、固体レーザ媒質10の励起密度が不均一であることによって、あるいは固体レーザ媒質10の冷却が不均一であることによって、実際の熱複屈折にはばらつきが生じることがある。
実施の形態6では、第3の反射面15および第4の反射面16に加えて、第1の反射面13および第2の反射面14にも上記の光学薄膜が設けられていることによって、固体レーザ媒質10は、任意の偏光方向の直線偏光について、直線偏光である偏光状態を維持させることができる。固体レーザ媒質10へ入射されるレーザ光20の偏光方向として、熱複屈折の影響がより小さくなる偏光方向が選定されることによって、固体レーザ媒質10は、集光性の劣化を抑制することができ、さらに安定したレーザ光20の増幅が可能となる。
実施の形態7.
図12は、本発明の実施の形態7にかかる固体レーザ増幅器の斜視図である。実施の形態7にかかる固体レーザ増幅器2には、実施の形態4と同様の固体レーザ媒質10が設けられている。実施の形態7では、上記の実施の形態1から6と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から6とは異なる構成について主に説明する。
実施の形態4と同様に、固体レーザ媒質10へ入射されるレーザ光20の偏光方向21は、固体レーザ媒質10へ入射された波長1.064μmのレーザ光20が第2の反射面14へS偏光として入射するように調整される。また、実施の形態7では、第3の反射面15と第4の反射面16とに、偏光無依存の光学薄膜が設けられている。すなわち、光学薄膜でのP偏光とS偏光との反射によってP偏光とS偏光とに生じる位相差は、固体レーザ媒質10を伝搬する光の波長の10分の1以下である。また、光学薄膜は、励起光の反射を低減する反射防止膜でもある。光学薄膜において、808nmの波長の励起光の反射率は、5%以下である。
固体レーザ増幅器2は、励起光源である4つの半導体レーザ3と、水冷式の冷却器4と、各半導体レーザ3と冷却器4とを絶縁する絶縁板5とを有する。半導体レーザ3は、波長808nmの半導体レーザバーと、半導体レーザバーと一体とされたヒートシンクおよび給電電極とを有する。4つの半導体レーザ3のうちの2つは、固体レーザ媒質10のうち第3の反射面15に対向して配置されている。4つの半導体レーザ3のうちの他の2つは、固体レーザ媒質10のうち第4の反射面16に対向して配置されている。
冷却器4は、固体レーザ媒質10を冷却する機能と、各半導体レーザ3を冷却する機能とを兼ねる。冷却器4の材料には、銅が使用されている。冷却器4は、冷却器4へ供給される冷却水が通る給水口41と、冷却器4から排出される冷却水が通る排水口42とを有する。固体レーザ媒質10のうち第2の反射面14が冷却器4の表面に接合されている。第2の反射面14には、エバネッセント光が生じることによるレーザ光20の損失を抑制するために、厚さ5μmの二酸化ケイ素(SiO)がコーティングされている。各半導体レーザ3は、絶縁板5を介して冷却器4の表面に固定されている。絶縁板5が設けられることによって、各半導体レーザ3と冷却器4との短絡が回避される。
第3の反射面15に対向する2つの半導体レーザ3によって出射された励起光は、第3の反射面15へ入射する。第4の反射面16に対向する2つの半導体レーザ3によって出射された励起光は、第4の反射面16へ入射する。固体レーザ増幅器2は、固体レーザ媒質10へ励起光を照射することによって固体レーザ媒質10を励起させる。
偏光無依存の反射防止膜である上記の光学薄膜が第3の反射面15と第4の反射面16とに設けられていることによって、第3の反射面15と第4の反射面16とにおける励起光の反射が抑制される。これにより、固体レーザ増幅器2は、固体レーザ媒質10へ効率良く励起光を入射可能とし、固体レーザ媒質10を効率良く励起させることができる。固体レーザ増幅器2は、実施の形態4と同様の作用効果によって、集光性に優れた増幅光26を、高効率かつ安定して発生させることができる。
なお、固体レーザ増幅器2において、固体レーザ媒質10の冷却は、第1の反射面13と第2の反射面14とのうちの少なくとも一方の冷却によって行われても良い。固体レーザ媒質10の冷却は、第2の反射面14の冷却によって行われる以外に、第1の反射面13の冷却によって行われても良く、第1の反射面13と第2の反射面14との両面の冷却によって行われても良い。
固体レーザ増幅器2に設けられる固体レーザ媒質10は、実施の形態4と同様の固体レーザ媒質10に限られない。固体レーザ増幅器2に設けられる固体レーザ媒質10は、実施の形態1から3、実施の形態5および6のうちのいずれか1つと同様の固体レーザ媒質10であっても良い。この場合も、固体レーザ増幅器2は、集光性に優れた増幅光26を、高効率かつ安定して発生させることができる。
実施の形態8.
図13は、本発明の実施の形態8にかかる固体レーザ発振器の斜視図である。実施の形態8にかかる固体レーザ発振器1には、実施の形態7と同様の固体レーザ増幅器2が設けられている。実施の形態8では、上記の実施の形態1から7と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から7とは異なる構成について主に説明する。
固体レーザ発振器1は、安定型の光共振器を構成する部分反射鏡61および全反射鏡62を有する。部分反射鏡61と全反射鏡62とは、固体レーザ増幅器2の光軸上に配置されている。部分反射鏡61は、部分反射鏡61へ入射する波長1.064μmのレーザ光20である内部レーザ光27の一部を反射し、部分反射鏡61へ入射する波長1.064μmの内部レーザ光27の一部を透過させる。全反射鏡62は、全反射鏡62へ入射する波長1.064μmの内部レーザ光27の全体を反射する。
固体レーザ発振器1において、励起光によって励起された固体レーザ媒質10からは、自然放出光が発生する。自然放出光の一部は、光共振器に閉じ込められ、部分反射鏡61と全反射鏡62との間を往復する。固体レーザ増幅器2において固体レーザ媒質10の内部を自然放出光が伝搬する際に、自然放出光は増幅される。自然放出光が増幅されることによって、光強度が高い内部レーザ光27が光共振器内において形成される。部分反射鏡61へ入射した内部レーザ光27のうち、一定の割合の内部レーザ光27が、部分反射鏡61を透過することによって、部分反射鏡61へ入射した内部レーザ光27の一部は、外部レーザ光28として光共振器の外へ出射する。
光共振器内における内部レーザ光27の光路には、ブリュースター板7が配置されている。ブリュースター板7の向きは、入射面11へ入射する内部レーザ光27の偏光方向が、y軸に対する仰角θが109.0度、かつx軸を基準とする方位角φが0度である偏光方向である場合に反射損失が最小となるように設定される。固体レーザ発振器1は、ブリュースター板7が設けられることによって、所望の偏光方向の直線偏光を選択的に増幅させることができる。固体レーザ発振器1は、実施の形態4と同様の作用効果によって、集光性に優れた外部レーザ光28を高効率かつ安定して発生させることができる。
なお、固体レーザ発振器1に設けられる固体レーザ媒質10は、実施の形態4と同様の固体レーザ媒質10に限られない。固体レーザ発振器1に設けられる固体レーザ媒質10は、実施の形態1から3、実施の形態5および6のうちのいずれか1つと同様の固体レーザ媒質10であっても良い。この場合も、固体レーザ発振器1は、集光性に優れた外部レーザ光28を高効率かつ安定して発生させることができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1 固体レーザ発振器、2 固体レーザ増幅器、3 半導体レーザ、4 冷却器、5 絶縁板、7 ブリュースター板、10 固体レーザ媒質、11 入射面、12 出射面、13 第1の反射面、14 第2の反射面、15 第3の反射面、16 第4の反射面、20 レーザ光、21,22,23,24,25 偏光方向、26 増幅光、27 内部レーザ光、28 外部レーザ光、41 給水口、42 排水口、61 部分反射鏡、62 全反射鏡、110 法線、111,121 中心、131,141,151 位置、201,202 光線。

Claims (13)

  1. 互いに平行な入射面および出射面と、
    前記入射面と前記出射面との間を伝搬する光が反射し、前記入射面の法線から傾いて形成され、互いに平行な第1の反射面および第2の反射面と、
    前記入射面と前記出射面との間を伝搬する光が反射し、前記入射面の法線から傾いて形成され、前記第1の反射面と直交しかつ互いに平行な第3の反射面および第4の反射面と、を備え、
    前記入射面の中心に光線束の中心を一致させかつ光線束の方向が前記第1の反射面および前記第3の反射面に平行となるように前記入射面へ入射した光を、前記第1の反射面、前記第2の反射面、前記第3の反射面および前記第4の反射面のいずれかで内部全反射させつつ伝搬させ、前記出射面の中心に光線束の中心を一致させて前記出射面から出射させるまでにおいて、前記第1の反射面における内部全反射の回数と前記第2の反射面における内部全反射の回数とが互いに同じであり、前記第3の反射面における内部全反射の回数と前記第4の反射面における内部全反射の回数とが互いに同じであることを特徴とする固体レーザ媒質。
  2. 前記固体レーザ媒質のうち前記入射面の中心と前記出射面の中心とを通る軸線に対し前記入射面の法線が傾いていることを特徴とする請求項1に記載の固体レーザ媒質。
  3. 前記第1の反射面および前記第2の反射面の対と、前記第3の反射面および前記第4の反射面の対とのうちの少なくとも一方には、光学薄膜が設けられており、
    前記光学薄膜でのP偏光とS偏光との反射によってP偏光とS偏光とに生じる位相差は、前記固体レーザ媒質を伝搬する光の波長の10分の1以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の固体レーザ媒質。
  4. 前記光学薄膜は、前記固体レーザ媒質を励起するための励起光の反射を低減する反射防止膜を兼ねることを特徴とする請求項に記載の固体レーザ媒質。
  5. 前記入射面と前記出射面とに光学薄膜が設けられており、
    前記入射面と前記出射面とに設けられている前記光学薄膜へのP偏光とS偏光との入射によってP偏光とS偏光とに生じる位相差は、前記固体レーザ媒質を伝搬する光の波長の10分の1以下であることを特徴とする請求項1からのいずれか1つに記載の固体レーザ媒質。
  6. 前記入射面と前記出射面とに設けられている前記光学薄膜は、前記固体レーザ媒質へ入射する光の反射を低減する反射防止膜を兼ねることを特徴とする請求項に記載の固体レーザ媒質。
  7. 光を増幅する固体レーザ媒質を備え、
    前記固体レーザ媒質は、
    互いに平行な入射面および出射面と、
    前記入射面と前記出射面との間を伝搬する光が反射し、前記入射面の法線から傾いて形成され、互いに平行な第1の反射面および第2の反射面と、
    前記入射面と前記出射面との間を伝搬する光が反射し、前記入射面の法線から傾いて形成され、前記第1の反射面と直交しかつ互いに平行な第3の反射面および第4の反射面と、を備え、
    前記入射面の中心に光線束の中心を一致させかつ光線束の方向が前記第1の反射面および前記第3の反射面に平行となるように前記入射面へ入射した光を、前記第1の反射面、前記第2の反射面、前記第3の反射面および前記第4の反射面のいずれかで内部全反射させつつ伝搬させ、前記出射面の中心に光線束の中心を一致させて前記出射面から出射させるまでにおいて、前記第1の反射面における内部全反射の回数と前記第2の反射面における内部全反射の回数とが互いに同じであり、前記第3の反射面における内部全反射の回数と前記第4の反射面における内部全反射の回数とが互いに同じであることを特徴とする固体レーザ増幅器。
  8. 直線偏光であるレーザ光がブリュースター角である入射角をもってP偏光で前記入射面へ入射することを特徴とする請求項に記載の固体レーザ増幅器。
  9. 直線偏光であるレーザ光が前記入射面へ入射し、
    前記第1の反射面と前記第2の反射面とへ、P偏光とS偏光とのいずれか一方の直線偏光でレーザ光が入射することを特徴とする請求項またはに記載の固体レーザ増幅器。
  10. 前記第3の反射面と前記第4の反射面とに光学薄膜が設けられており、
    前記光学薄膜でのP偏光とS偏光との反射によってP偏光とS偏光とに生じる位相差は、前記固体レーザ媒質を伝搬する光の波長の10分の1以下であることを特徴とする請求項に記載の固体レーザ増幅器。
  11. 前記第3の反射面と前記第4の反射面とへ、前記固体レーザ媒質を励起するための励起光を照射し、
    前記光学薄膜は、前記固体レーザ媒質を励起するための励起光の反射を低減する反射防止膜を兼ねることを特徴とする請求項10に記載の固体レーザ増幅器。
  12. 前記第1の反射面と前記第2の反射面とのうちの少なくとも一方を冷却する冷却器を有することを特徴とする請求項から11のいずれか1つに記載の固体レーザ増幅器。
  13. 請求項から12のいずれか1つに記載の固体レーザ増幅器を備えることを特徴とする固体レーザ発振器。
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