JP7042532B1 - フィルタ膜のインピーダンス測定方法および装置 - Google Patents

フィルタ膜のインピーダンス測定方法および装置 Download PDF

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Abstract

【課題】フィルタ膜が加圧されて透水状態とされていても、分離機能層のインピーダンスを精度良く測定可能とする。【解決手段】分離機能層6aのインピーダンスを電気化学インピーダンス分光法によって測定する方法において、支持層6b側の電解液5として、分離機能層6a側の電解液4に含まれるイオンの価数よりも大きい価数のイオンを含む電解液を用い、RO膜6を透水状態にして分離機能層6aのインピーダンスを測定する。【選択図】図1

Description

本発明は、逆浸透膜等からなる水処理用フィルタ膜のインピーダンスを測定する方法および、その方法を実施するための装置に関するものである。
従来、例えば特許文献1や2に示されるように、被処理水に含まれる特定成分を除去する水処理装置の一つとして、逆浸透膜やナノろ過膜等のフィルタ膜(ろ過膜)を用いる膜ろ過装置が広く実用に供されている。逆浸透膜等のフィルタ膜は基本的に、支持層の一面側に分離機能層が担持されてなるものであり、被処理水としての電解液中の除去対象特定成分を分離機能層で透過を阻止して溶媒の水から分離させる機能を有する。
この種のフィルタ膜に対しては、電解液中の除去対象成分の阻止能力を把握しておく要望がある。すなわちこのフィルタ膜は、使用を続けるうちにファウリング(汚れ)によって透水性が劣化し、また除去対象成分の阻止能力が劣化することが避けられない。その劣化を抑制するため稼働時に原水に薬剤を微量に添加しファウリングの進行を抑制し、経時的に劣化が顕著になった場合には、一旦稼働を止めて洗浄薬剤による洗浄を行う。ただ、逆浸透膜の場合は、大変微細なナノ構造の膜であるため、条件によってはこうした薬剤自体によっても除去対象成分の阻止能力の劣化を引き起こすことがあり、フィルタ膜の除去成分の阻止能力を詳細に把握する要望がある。
すなわち、この種のフィルタ膜の使用にあたっては、除去成分の阻止能力を可能な限り透水稼働状態で、リアルタイムに、またオンラインあるいはオフラインで計測解析する技術が求められる。この計測解析技術を活用することで、フィルタ膜の稼働効率を向上させ、また洗浄薬剤の使用量やタイミングを最適化し、フィルタ膜の効率的な使いこなしが可能になる。
従来、フィルタ膜のファウリングの進行状況を評価する方法の一つとして、例えば特許文献2に示されているように、フィルタ膜が浸漬されている電解液に交流を印加し、その状態下でフィルタ膜の分離機能層と支持層との間のインピーダンスを測定し、この測定されたインピーダンスに基づいてファウリングの進行状況を評価する方法が知られている。上記フィルタ膜のインピーダンスを測定する方法は、電気化学インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy :以下、EISという)として知られている。
特開平1-228509号公報 特表2018-513383号公報
上記のEISによってフィルタ膜のインピーダンスを測定する方法では、フィルタ膜の分離機能層から支持層側に圧力を印加してフィルタ膜が透水状態とされてインピーダンスが測定されるが、圧力印加に伴なって支持層側に水が流入し支持層側のイオン濃度が低下する。すると、支持層に起因するインピーダンスが分離機能層に起因するインピーダンスと比べて2桁程度高くなって、分離機能層のインピーダンスを精度良く測定することが困難になるという問題が認められている。この問題は特に除去対象成分の阻止能力が高いフィルタ膜においては顕著である。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、フィルタ膜が加圧されて透水状態とされていても、分離機能層のインピーダンスを精度良く測定することができる方法を提供することを目的とする。また本発明は、そのようなフィルタ膜のインピーダンス測定方法を実施できる装置を提供することを目的とする。
本発明によるフィルタ膜のインピーダンス測定方法は、
支持層の上に分離機能層が担持されてなるフィルタ膜を電解液に浸漬して、分離機能層のインピーダンスを電気化学インピーダンス分光法によって測定するフィルタ膜のインピーダンス測定方法において、
支持層側の電解液として、分離機能層側の電解液に含まれるイオンの価数(イオン価)よりも大きい価数のイオンを含む電解液を用い、
フィルタ膜を透水状態にして分離機能層のインピーダンスを測定することを特徴とするものである。
なお、上記の「透水状態」とは、分離機能層側(電解液中に高濃度のイオンを含む1次側)の浸透圧をP1、支持層側(電解液中に低濃度のイオンを含む2次側)の浸透圧をP2とした場合に、分離機能層側(1次側)に浸透圧の差分(P1-P2)を超える圧力が印加されて、その結果、浸透圧に打ち勝って分離機能層側の電解液中の溶媒である水が分離機能層を通じて支持層に流れ込んでいる状態のことである。このときイオンも1次側と2次側の濃度差により、分離機能層を通じてわずかに支持層に流れ込む。その結果、透水状態下では極薄の分離機能層において、分離機能層側に配された電解液のイオン(例えばKやCl等)の濃度分布が生じる。
この本発明によるフィルタ膜のインピーダンス測定方法は、フィルタ膜が例えば逆浸透膜である場合に適用可能である。
また、本発明によるフィルタ膜のインピーダンス測定方法は、分離機能層側の電解液として、価数が1の単原子イオンを含む電解液を好適に用いて実施され得るものである。そのような単原子イオンとして具体的には例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン等が挙げられる。これらのイオンは、特にフィルタ膜が逆浸透膜である場合に好適である。
その場合、支持層側の電解液としては、2価以上のイオンを含む電解液が用いられることになるが、そのようなイオンとしては例えばMg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+等の2価の単原子イオンが挙げられる。また、2価以上のイオンとしてはそれらの他に、例えば3価の [Fe(CN)]3-(ヘキサシアニド鉄(III) 酸イオン)等も挙げられる。
他方、本発明によるフィルタ膜のインピーダンス測定装置は、
支持層の上に分離機能層が担持されてなるフィルタ膜を電解液に浸漬して、分離機能層のインピーダンスを電気化学インピーダンス分光法によって測定するフィルタ膜のインピーダンス測定装置において、
分離機能層側の電解液に含まれるイオンの価数よりも大きい価数のイオンを含む電解液を支持層側に注入する電解液注入系を有することを特徴とするものである。
本発明によるフィルタ膜のフィルタ膜のインピーダンス測定方法によれば、分離機能層側の電解液に含まれるイオンの価数よりも大きい価数のイオンを含む電解液を支持層側に注入するようにしたので、支持層に起因するインピーダンスが低く抑えられる。さらに、支持層側の電解液中のイオンが分離機能層内に拡散することはほとんどないため、分離機能層側の電解液中のイオンの分離機能層内の分布にほとんど影響を与えない。その結果、分離機能層のインピーダンスを精度良く測定可能となる。
本発明によるフィルタ膜のインピーダンス測定装置は、支持層の上に分離機能層が担持されてなるフィルタ膜を電解液に浸漬して、分離機能層のインピーダンスを電気化学インピーダンス分光法によって測定するフィルタ膜のインピーダンス測定装置において、分離機能層側の電解液に含まれるイオンの価数よりも大きい価数のイオンを含む電解液を支持層側に注入する電解液注入系を有するので、上に説明した効果を奏するフィルタ膜のインピーダンス測定方法を実施できるものとなる。
本発明の一実施形態によるフィルタ膜のインピーダンス測定装置を示す概略構成図 インピーダンスが測定されるフィルタ膜の等価回路を示す図 図2の等価回路のNyquist Plot図(概略図) 本発明の方法により測定したフィルタ膜のNyquist Plot図 図4のフィルタ膜のNyquist Plotを、このNyquist Plotを等価回路の特性にフィッティングさせる曲線と併せて示す図 NaClO水溶液に浸漬後測定したフィルタ膜のNyquist Plot図 図6のフィルタ膜のNyquist Plotを、このNyquist Plotを等価回路の特性にフィッティングさせる曲線と併せて示す図 本発明に対する比較例の方法によるインピーダンス測定結果を示すNyquist Plot図
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態によるフィルタ膜のインピーダンス測定装置の概略構成を示すものである。まず、この図1の装置について説明する。本装置は、電解液を貯える圧力容器1を有する。この圧力容器1は、例えばアクリル製または樹脂や鋼鈑製の容器であり、後述するフィルタ膜によって互いに仕切られることになる第1槽2と第2槽3とからなる。第1槽2と第2槽3にはそれぞれ、電解液4、電解液5が貯えられる。本実施形態では一例として、電解液4としてKCl(塩化カリウム)水溶液が用いられ、電解液5としてMgCl(塩化マグネシウム)水溶液が用いられる。
圧力容器1は、フィルタ膜のインピーダンス測定のために専用に形成されてもよいし、あるいは、実際にフィルタリング(ろ過)用に稼働しているろ過装置を構成する容器が用いられてもよい。圧力容器1において第1槽2と第2槽3との間には、インピーダンスを測定する対象としてのフィルタ膜6が保持される。本例のフィルタ膜6は逆浸透膜(Reverse Osmosis membrane、RO膜)である。そこで以下では、このフィルタ膜をRO膜6と称することとする。
RO膜6は、分離機能層6aと支持層6bと不織布基材とからなる複合膜構造であって、不織布基材上に支持層6bが形成され、さらに支持層6b上に分離機能層6aが形成されてなる。一例として支持層6bはポリスルホンまたは酢酸セルロース、分離機能層6aは架橋芳香族ポリアミドからなり、支持層6bの厚さは30~50μm程度、分離機能層6aの厚さは200nm程度である。また不織布基材はポリエステルからなり厚さは100μm程度である。なお図1では、不織布基材は図示を省いている。上述のように保持されたRO膜6は、インピーダンスの測定時には、電解液4および5の中に浸漬された状態となる。
第1槽2および第2槽3の中には、保持されたRO膜6を間に置いて互いに向い合う状態にして、それぞれ第1電極7、第2電極8が配設されている。第1電極7および第2電極8の電気的接続については後に詳述する。
第1槽2の中には、圧力を付加した状態で電解液4が貯留され、膜ろ過は、クロスフローろ過方式によって行われる。以下、そのための構成について説明する。第1槽2の中には原水配管12の一端が接続され、その他端は電解液4を貯留する原水タンク13に接続されている。原水配管12には、電解液4を圧送する高圧送水ポンプ14が介設されている。この高圧送水ポンプ14によって原水タンク13内の電解液4が第1槽2に圧送されると、分離機能層6a側(1次側)から支持層6b側(2次側)に圧力が印加されて、電解液4中の水が分離機能層6aを通して支持層6bに流れ込む透水状態になる。この透水状態下では分離機能層6aにおいて、電解液4中のイオンの濃度分布が生じる。
RO膜6を電解液4のフィルタリング(ろ過)に使用する場合、RO膜6を透過した電解液4中の水は透過水として第2槽3に流入し、透過水配管15を経て第2槽3から流出する。この透過水は通常は図示外の配管等を通して原液タンク13に戻されるが、後述するMgCl等が混入している場合は別のタンク(図示せず)に放出される。一方、第1槽2内でRO膜6を透過しなかった電解液4は、原水還流配管16を通して原液タンク13に戻される。
本装置においては第2槽3に、RO膜6のインピーダンス測定用の電解液を注入する電解液注入系が設けられている。この電解液注入系は、高圧ガスボンベ21と、一端が高圧ガスボンベ21に接続されたガス配管22と、ガス配管22の他端が接続された電解液貯留槽23と、ガス配管22に介設されたバルブ24と、電解液貯留槽23に貯留された電解液5を上記第2槽3内に導く電解液配管25と、この電解液配管25に介設されたバルブ26とから構成されている。
前述した第1槽2内の第1電極7、および第2槽3内の第2電極8は、それぞれ接続線31、32を介してインピーダンスメータ33に接続されている。電極7および電極8として、電極における有効面積を十分に確保するため、例えば白金黒電極(白金の上に白金微粒子を析出させたもの)を用いることができる。電極7および電極8として、例えば表面を白金黒化した白金電極を用いることができる。後述するようにインピーダンスメータ33は、第1電極7および第2電極8を介して電解液4、5に交流を印加する交流印加手段を構成している。それと共にインピーダンスメータ33は、第1電極7と第2電極8との間、つまりRO膜6の透水方向の一方側と他方側との間のインピーダンスを測定する。そしてこのインピーダンスメータ33には例えばコンピュータシステム等からなる解析部34が接続され、また解析部34には例えば液晶表示装置等からなる表示部35が接続されている。
なお図1に示す装置では、インピーダンスメータ33、解析部34および表示部35が互いに別個に示されているが、それらがまとめて設けられてなる1個の測定機器が用いられてもよい。
次に、この図1に示す装置を使用してなされる本実施形態によるインピーダンス測定方法について、一例を挙げて説明する。この例は、分離機能層6aのインピーダンスを測定する際に、RO膜6の分離機能層6a側(1次側)を浸漬する電解液4として例えば10mMol/LのKCl水溶液を、そして支持層6b側(2次側)を浸漬する電解液5として例えば5mMol/LのMgCl水溶液を適用するものである。
[手順1]
圧力容器1に、インピーダンスを測定する対象のRO膜6をセットした後、分離機能層6a側(1次側)および支持層6b側(2次側)の双方を共に電解液4、つまりKCl水溶液で満たす。圧力容器の内径は例えば20mmで、電極とRO膜の間隔は例えば8mmとする。
[手順2]
高圧送水ポンプ14を駆動させ、クロスフローろ過方式によって分離機能層6a側の電解液4を加圧してRO膜6を透水状態にする。ここで、上記加圧の圧力は例えば0.3~0.7MPa(メガ・パスカル)程度とし、透水速度は例えば200cm/分程度とする。
[手順3]
以上の透水状態下で、EISによる分離機能層6aのインピーダンス測定を、例えば30分~2時間程度の一定間隔で行う。このEISによるインピーダンス測定に当たっては、インピーダンスメータ33から第1電極7および第2電極8を介して電解液4に100mVの交流電圧が印加される。本例においてこの交流電圧は、例えば周波数を4.0Hz~4.0MHzの範囲内で掃引してなされる。こうして交流印加がなされているとき、インピーダンスメータ33は第1電極7と第2電極8との間、つまりRO膜6の透水方向一方側と他方側との間のインピーダンスを測定する。このインピーダンス測定結果は解析部34に入力される。
このインピーダンス測定は、測定されるインピーダンスのスペクトルが安定し、またRO膜6によるKCl水溶液の脱塩率が安定するまで上記透水状態を継続させ、例えば少なくとも10時間に亘って行う。また上記透水速度は2時間程度かけて測定し、安定していることを確認する。
[手順4]
上記スペクトルが安定したことを確認した後、ガス配管22のバルブ24を開き、高圧ガスボンベ21中の高圧ガスを電解液貯留槽23に送って加圧する。それにより、電解液貯留槽23に貯留されている電解液5、つまりMgCl水溶液を電解液配管25から第2槽3に注入する。その際、バルブ26の開度を調整しておくことにより、この電解液5がゆっくり注入されるようにする。一例として第2槽3の容積は約2.5cmであり、電解液5の注入量は15cm程度とする。
[手順5]
第2槽3に電解液5が十分注入されたことを確認する。この確認は、例えば第2槽3の中に配した図示外のイオン濃度計をモニタすることによって行う。
[手順6]
電解液5が十分注入されたことを確認後、手順4と同様にEISによるインピーダンス測定を行う。交流電圧は、例えば周波数を4.0Hz~4.0MHzの範囲内で掃引して印加する。得られたインピーダンス測定結果は解析部34に入力される。
この測定がなされるとき分離機能層6a側の電解液4は、価数が1の単原子イオンであるK、Clを含むものとなっている。それに対して支持層6b側の電解液5は、Clに加えて価数が2のイオンMg2+を含むものとなっている。この透水状態下では分離機能層6aにおいて、電解液4のイオン、つまりKおよびClの濃度分布が生じる。
次に、以上述べたインピーダンス測定がなされるとき、インピーダンスメータ33の出力を受ける解析部34によってなされる解析について説明する。なお、このインピーダンス測定は、支持層6bの抵抗の抵抗、容量をそれぞれR0、C0とし、分離機能層6aの一部の抵抗をR1、残余の部分の抵抗をR2とし、また分離機能層6aの一部の容量をC1、残余の部分の容量をC2として、図2に示す等価回路のインピーダンスを求めることと等価である。インピーダンスメータ33としては、一例としてKeysight Technologies社のE4980AプレシジョンLCRメータを用いることができる。
解析部34は、インピーダンスメータ33の出力を受けて、インピーダンスの実部を横軸に示し、虚部を縦軸に示すNyquist Plot(ナイキスト線図)を描く。それと共に解析部34は、前述した交流の周波数fを横軸に、インピーダンスZの絶対値|Z|および位相角θを横軸に示すBode Plot(ボード線図)を描く。これら2種のPlotは同じ事象を異なる形式で示すものであり、Bode Plotにおける周波数fの高周波端、低周波端がそれぞれ、Nyquist Plotにおける実部の最小値、最大値に対応する。求められたそれぞれのPlotは、図1に示す表示部35に表示される。本実施形態では、この表示部35の表示を観察して、分離機能層6a起因のスペクトルが測定できていることを確認可能である。解析部34では、解析する周波数領域を選択可能となっている。この周波数領域の例は後に図7を参照して説明する。なお、図2に示す等価回路についてNyquist Plotを描けば、概略、図3のようなものとなる。
図4には、本発明の一実施形態のNyquist Plotの例を示す。この図においては、インピーダンスの実部をZ’、虚部をZ”として示している(単位は共にΩ)。また図4には、インピーダンスの実部Z’に対応する周波数fを、横軸位置を示す矢印に付した数値で示している。SI単位系の接頭語M(メガ)、k(キロ)が付いている場合は、それを除いた数値が周波数fである(単位はHz)。
図5には、上記図4のNyquist Plotの一部を、このNyquist Plotの分離機能層6aに起因する部分を図2の等価回路の特性にフィッティングさせる曲線と併せて示している。このフィッティングによるインピーダンス測定の等価回路解析は、例えばZView等価回路解析ソフトウェア(AMETEK Scientific Instruments製)を用いて行うことができる。図中、複数のドットがインピーダンスの実測値であり、それらを結ぶ曲線とは別の単独の曲線がフィッティング用の曲線である。フィッティングは、図5に示すNyquist Plot とフィッティング用の曲線とが概ね誤差5%以内に収まるまで行っている。なお、この場合のフィッティングさせる周波数領域は6.16Hz~616Hzである。
そして、上記の誤差以内でフィッティングがなされたなら、そのときのフィッティング曲線に基づいて、抵抗R0~R2および容量C0~C2を求める。本例において、分離機能層6aの抵抗はR1+R2=312Ω+146Ω=458Ωと求められる。
ここで、上記実施形態と対比するための比較例について説明する。上記実施形態では、EISによるインピーダンス測定時に第2槽3に電解液5としてMgCl水溶液を注入しているのに対し、この比較例では上記インピーダンス測定時に第2槽3に第1槽2と同様に電解液4として例えば10mMol/LのKCl水溶液を注入する。その点以外は上記実施形態におけるのと同様にしてインピーダンス測定がなされるが、高圧送水ポンプ14による第1槽2への圧力印加の後、RO膜6における透水と共に徐々に2次側つまり支持層6b側のイオン濃度が低下する。それにより支持層6bのインピーダンスは、圧力印加前と比べて著しく上昇する。
図8は、このインピーダンスの変化の様子をNyquist Plotの変化で示すものである。ここでは、RO膜6への透水前から透水状態になるまでのNyquist Plotの変化を示しており、Nyquist Plotの曲線は透水量が増えるにつれて、曲線が次第に大きくなるように変化する。つまりNyquist Plotの実部は、具体的には約700Ωから約70000Ωまで2桁上昇し、透水状態でのNyquist Plot(曲線が最大のもの)はほぼ全部が支持層6bに起因するものとなる。より正確に説明すれば、透水状態でのNyquist Plotにおいて、分離機能層6aに起因するものは、上記曲線の低周波数側の端部(図8において三角形で囲まれている部分)に僅かに現れるに過ぎない。このようなNyquist Plotでは、分離機能層6aのインピーダンス(数100Ω程度)の測定は極めて困難である。
それに対して上記実施形態では、第2槽3に電解液5としてMgCl水溶液を注入したことにより、支持層6bのインピーダンスは約600Ωに低下するので、前述した通り分離機能層6aのインピーダンスを精度良く測定可能となっている。
さらに、図6は、図4で測定されたRO膜6と同じRO膜を、200ppmのNaClO(次亜塩素酸ナトリウム)水溶液に9時間浸漬して、分離機能層6aのインピーダンスを測定して求めたNyquist Plotである。NaClO水溶液に浸漬させたことにより、ポリアミドからなる分離機能層6aの表面はNaClOによって酸化され、アミド結合が分解されて高分子の架橋状態がルーズになる。図4と同様に、インピーダンスの実部Z’に対応する周波数fを、横軸位置を示す矢印に付した数値で示している。
図7には、上記図6のNyquist Plotの一部を、同じくフィッティング用の曲線と併せて示している。この図7の表示の仕方は、図5におけるものと同じである。フィッティングは、図7に示すNyquist Plot とフィッティング用の曲線とが概ね誤差5%以内に収まるまで行っている。なお、この場合のフィッティングさせる周波数領域は30.8Hz~632Hzである。このとき、分離機能層6aの抵抗はR1+R2=103.4Ω+29.4Ω=132.8Ωと求められる。この結果は、NaClOによってアミド結合が分解される前の図5で求めた分離機能層6aの抵抗(458Ω)に比べ、大きく減少していることを示している。これは、NaClOによって分離機能層6aのアミド結合が分解されて、高分子の架橋状態がルーズになったためと考えられる。
すなわち、上記実施形態では、NaClO水溶液による分離機能層6aの変化が有る場合と無い場合の分離機能層6aのインピーダンスを測定して、それら両場合における分離機能層6aの抵抗R1+R2を調べているので、この抵抗から分離機能層6aの劣化状態を評価できることを示している。
1 圧力容器
2 圧力容器の第1槽
3 圧力容器の第2槽
4 電解液
5 電解液
6 RO膜
6a RO膜の分離機能層
6b RO膜の支持層
7 第1電極
8 第2電極
12 原水配管
13 原水タンク
14 高圧送水ポンプ
15 透過水配管
16 原水還流配管
21 高圧ガスボンベ
22 ガス配管
23 電解液貯留槽
24、26 バルブ
25 電解液配管
31、32 接続線
33 インピーダンスメータ
34 解析部
35 表示部

Claims (4)

  1. 支持層の上に分離機能層が担持されてなるフィルタ膜を電解液に浸漬して、前記分離機能層のインピーダンスを電気化学インピーダンス分光法によって測定するフィルタ膜のインピーダンス測定方法において、
    前記分離機能層側の電解液として、価数が1の単原子イオンを含む電解液を用い、
    前記支持層側の電解液として、価数が2以上のイオンを含む電解液を用い、
    前記フィルタ膜を透水状態にして前記分離機能層のインピーダンスを測定することを特徴とするフィルタ膜のインピーダンス測定方法。
  2. 前記フィルタ膜が逆浸透膜である請求項1に記載のフィルタ膜のインピーダンス測定方法。
  3. 前記分離機能層側の電解液に含まれるイオンが、前記価数が1の単原子イオンである請求項1または2に記載のフィルタ膜のインピーダンス測定方法。
  4. 支持層の上に分離機能層が担持されてなるフィルタ膜を電解液に浸漬して、前記分離機能層のインピーダンスを電気化学インピーダンス分光法によって測定するフィルタ膜のインピーダンス測定装置において、
    前記フィルタ膜によって仕切られる容器であって、前記分離機能層側の電解液を貯留する第1槽、および前記支持層側の電解液を貯留する第2槽からなる容器と、
    価数が1の単原子イオンを含む電解液を前記第1槽に圧送する電解液圧送系と、
    価数が2以上のイオンを含む電解液を前記第2槽に注入する電解液注入系と、
    を有することを特徴とするフィルタ膜のインピーダンス測定装置。
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