JP2018513383A - 逆浸透システムの汚損状態を評価するための方法及び装置 - Google Patents

逆浸透システムの汚損状態を評価するための方法及び装置 Download PDF

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Abstract

逆浸透システムの汚損状態を評価するための方法が提供される。上記方法は、上記逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から複数のインピーダンスを導出すること、及び上記複数の導出インピーダンス値に基づいて、上記逆浸透システムの汚損状態を決定することを含む。逆浸透膜の汚損を原位置でモニタリングするための方法及び逆浸透システムの汚損状態を評価するための装置の使用も提供される。

Description

種々の実施形態は、逆浸透システムの汚損状態を評価するための方法に関する。
飲料水の必要性に迫られ、世界中で15,000棟を超える脱塩プラントが稼動中である。こうしたプラントの50%超は、「使用済みの」水又は海水を脱塩し、飲用品質の水を生産する逆浸透(RO)技術に依存している。逆浸透は、モジュール構造で設置面積が少ないこと、プロセスが安定していること、及び優れた水品質の透過水を生産することができること等の数多くの利点があるため、高品質の水を生産するための排水処理及び再生プラントで広く使用されている。
膜汚損は、膜表面に不要な物質が堆積することを指し、依然としてその応用範囲を限定する主な障害となっている。その理由は、膜汚損が以下をもたらす場合があるからである:(a)定圧ろ過での透過フラックスの低下又は定フラックスろ過での膜間圧力(TMP)の増加、(b)生産速度を維持するためのエネルギー及び運転コストの増加、(c)膜寿命の低下、(d)化学洗浄のため稼動停止時間並びに化学薬品及び化学薬品の処分に伴うコスト、及び(e)化学洗浄により不可逆的に汚損又は破損する膜の交換に伴うコスト。生産される水の品質も影響を受ける場合がある。
微生物細胞、コロイド、及び懸濁固形物による汚損を含む、幾つかの種類の微粒子汚損が存在する。生物汚損は、微生物細胞が関与する膜汚損の一種であり、逆浸透膜を使用するプロセスにおいて最も深刻な汚損形態である。
生物汚損は、一般的に、幾つかの段階が関与する生物膜現象であり、供給される海水又は廃水に見出される微生物、細菌、及び/又は他の有機物が膜表面に付着してコンディショニング層が形成されることから始まる。第2の段階では、細菌細胞が、成長及び増殖して、微小コロニーを形成し、細胞外高分子物質(EPS)の自己生成マトリックスに埋入し、成熟生物膜を形成する場合がある。最終的に、細菌細胞は膜表面から剥離する場合があり、この段階は、栄養素の濃度、増殖速度、分散シグナルの蓄積、生物膜の機械的安定性、及び更に供給水の有効剪断力により決定される場合がある。
生物汚損は、適切な洗浄プロトコールがありながらも膜表面で生じる不可避でコストがかさむ問題である。例えば、生物汚損は、カリフォルニア州オレンジ郡にあるWater Factory21の逆浸透プラントの運転コストのおよそ30%を占めており、このプラントで生物汚損の抑制に使われる額は、年間730,000ドルと推定された。別の研究では、海水逆浸透(SWRO)プラントの生物汚損を早期に警告することにより達成することができると考えられる節約額は、年間200万ドルにのぼると推定された。
膜表面に生物膜が形成されると、フラックスの著しい低下、又はフラックスを維持するのに必要な膜間圧力及び供給圧力の増加がもたらされる。これにより、エネルギー消費量がより大きくなり、また、システム性能及び水生産の悪化がもたらされる可能性がある。
微粒子及びコロイド物質による汚損も、フラックスの著しい低下、又はフラックスを維持するのに必要な膜間圧力の増加をもたらす場合がある。典型的には、汚損によるこのような性能変化は、水生産の維持に必要な入口圧力の増加により、又は透過液品質の低下によりモニターされる。経験則では、例えば、10%〜15%の圧力増加を契機として、洗浄対策の適用が開始される。しかしながら、圧力上昇手法では、初期汚損が感知されない。マルチモジュール圧力容器では、圧力は、圧力容器の汚損により引き起こされるグローバルパラメータである。汚損は、汚損クリープ(又は「フラックス平準化」)により、時間と共に入口から出口へと移行する。トリガー圧力に到達した時点では、システム全体が、既に広範に汚損されてしまっている場合がある。
上記に加えて、生物汚損は、海水逆浸透プラントの運転における最も重大な問題であることが特定されている。こうしたプラントの生物汚損を防止する1つの方法は、上流の原料海水供給液に連続的に塩素を投入し、逆浸透膜段階の直前で脱塩素プロセスを行うことである。別の方法は、低圧膜前処理の使用を含む。上記の方法にも関わらず、精密ろ過(MF)前処理ステップを用いた場合でさえ、逆浸透法での生物汚損を完全に排除することはできない。それは、少数の残留微生物が精密ろ過膜をすり抜けて、逆浸透膜上に堆積しただけで、結局のところ成熟生物膜が形成されてしまうからである。同様に、無機材料、例えばシリカ及びカルシウム塩に由来する無機汚損は、前処理により効果的に除去することができず、最終的には逆浸透膜上の汚損及び水垢が引き起こされる。
現在まで、汚損膜の分解検査を実施する以外は、生物汚損を検出する簡単な方法は存在しない。しかしながら、分解検査は、破壊的な方法である。供給水品質が膜生物汚損に重大な役割を果たすことを示す研究結果があるため、廃水処理プラントの運転に対する生物膜の影響を最小限に抑えるために、供給水の生物汚損可能性を評価する生物学的パラメータを使用することができる。アデノシン三リン酸(ATP)の定量化、及び蛍光顕微鏡法を使用した直接細胞計数は、存在する微生物の濃度に関するものであり、生物汚損の指標として使用することができる。同化有機炭素(AOC)量は、成長促進栄養素であり、生物膜形成速度(BFR)の代理指標であり、生物汚損可能性の指標であると見なされている。
上述のパラメータは、供給水の生物汚損可能性スクリーニングに適用可能であり得るが、試料採取を行わずに直接決定することができないため、原位置でのリアルタイムなモニタリング又は膜汚損の早期警報の提供には適していない。したがって、膜は、細菌計数又は他の生物学的パラメータの増加が観察された時には、既に著しく汚損されているであろう。更に、生物汚損対策に費やされる投資額が巨額であるにも関わらず、ほとんどの工業プラントには、生物活動又は生物膜発生の開始を評価するためのシステムが設置されていない。生物膜形成の開始を決定するための決定的手段がないため、ほとんどの処理プラントでは、事前に設定したスケジュールに基づいて、又は増殖の証拠が明らかになった際(圧力が閾値に達する等)に、洗浄が実施されている。これには、殺生物剤が不適切に投入される可能性があるか、又は洗浄スケジュールが最適でない可能性がある。
上記に加えて又は上記とは別に、膜汚損は、コロイド及び/又は懸濁固形物による微粒子汚損の結果として生じる場合がある。そのような汚損を緩和し、ろ過性能を向上させるための1つの方法は、逆浸透システムを、限界フラックス未満で運転することであってもよい。限界フラックスは、流体力学及び供給水品質等の変数に依存する場合がある。この概念は、精密ろ過から取入れたものであり、それ未満では、経時的なフラックスの低下が生じないか又は最小限であるが、この限界フラックスを超えると汚損が生じてしまうような開始時のフラックスが存在することが想定されている。
膜分離プロセス中、1つの成分、通常は水は、膜を通過するが、溶質及びコロイド粒子等の、供給液中にある他の成分は膜を通過しない。そのような分離プロセスでは、膜表面における塩等の溶質の濃度は、バルク供給溶液における溶質の濃度を超える場合がある。これは、濃度分極(CP)効果と呼ばれる場合がある。限界フラックスを超えた状態で稼動させると、コロイド層が膜表面に堆積する場合があり、コロイド層は、最終的に圧密して、「固塊」と呼ばれるものを形成する場合がある。固塊が形成されると、固塊抵抗と呼ばれる、透過流に対する追加の抵抗が存在し、それにより全体的な流体学的抵抗が増加する場合がある。
逆浸透膜の場合、膜表面の堆積層は、塩等の溶質の逆拡散を妨害する場合があるため、濃度分極により溶質濃度は増加する傾向がある。これは、固塊増強性濃度分極(CECP)現象と呼ばれるものに結び付く。更に、この「不撹拌」固塊層中の溶質は、クロスフローの剪断力に曝されず、膜表面での溶質の濃度及び浸透圧の更なる増強を引き起こす。その後、水生産を維持するのに必要な膜間圧力は、膜表面での浸透圧増強を克服するために更に増加することになる。したがって、全体的な逆浸透性能の喪失は、流体学的抵抗の増加及び固塊増強性浸透圧(CEOP)効果の両方に起因する場合がある。
限界フラックスを決定するための方法が3つ存在する。限界フラックスは、例えば、フラックスステップ法により決定することができ、この方法では、フラックスが漸進的な様式で調整され、膜間圧力(TMP)が記録される。しかしながら、TMP測定は、固塊増強性浸透圧(CEOP)効果として知られている、逆浸透プロセスで一般的に生じる現象に関する情報を提供することができない。限界フラックスを決定する別の方法は、出口流中の粒子濃度をモニタリングすること、及び粒子物質収支に基づいて限界フラックスを決定することを含む。限界フラックスは、粒子が膜に堆積する速度がゼロである最大フラックスである。しかしながら、この技法には、堆積量が少なく、バルク濃度の相対的変化が十分に大きくない場合、正確な限界フラックスを得ることができない場合があるという制限がある。また、限界フラックスは、顕微鏡を使用して膜上の粒子堆積を検出する直接膜観察(DOTM)法を使用して決定することができる。しかしながら、この方法は、膜が透明であり、モジュールの透過側が透明である場合にのみ使用することができる。
限界フラックスを決定するためのこうした方法は全て、実験室の平床式の膜システムの場合により好適である。こうした方法は、実際の膜分離システムで実施することが困難であり、特に工業プラントで使用される螺旋状に巻回された膜モジュールで実施することが困難である。
限界フラックスの概念は有用であるが、それだけでは、プラント操作者が、実際のシステムで性能を最適化するための指針を与えることはできない。例えば、多くの実際の廃水流の場合、限界フラックス未満での運転は、供給水の性質が複雑であることにより他の要因が作用し始める場合があるため、汚損速度ゼロを達成するには十分ではない場合がある。したがって、そのフラックス以下では汚損の発生速度が低くほぼ一定であるが、それを超えるフラックスでは汚損速度が著しく急速に増加するフラックスと定義される閾値フラックスと呼ばれる概念が開発されている。したがって、閾値フラックスは、少ない(無視できる)汚損と著しい汚損との間の過渡期である。
要約すると、前述の技法はいずれも、限界フラックス点又は閾値フラックス点での又はその付近での膜−溶液界面の特性を評価するために使用することができない。
上記に照らすと、前述の問題の1つ又は複数を克服するか又は少なくとも緩和する、逆浸透システムの汚損状態を評価するための改良方法の必要性が存在する。
第1の態様では、逆浸透システムの汚損状態を評価するための方法が提供される。上記方法は、
a)上記逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から複数のインピーダンス値を導出すること、及び
b)上記複数の導出インピーダンス値に基づいて、上記逆浸透システムの汚損状態を決定することを含む。
第2の態様では、逆浸透システムの汚損状態を評価するための装置が提供される。上記装置は、
a)逆浸透膜の両側に配置されるように構成されている2つ以上の電極、
b)上記2つ以上の電極間に種々の周波数の交流電流を生成するように構成されている交流発生器、
c)上記種々の周波数において、(i)上記膜の膜内外の電圧、(ii)上記膜を通過する電流、及び(iii)上記電圧と上記電流との位相差を測定するように構成されている検出器、及び
d)上記測定された電圧、電流、及び位相差を使用して、上記膜に隣接する拡散分極層のインピーダンス値を導出するように構成されているプロセッサを含む。
第3の態様では、逆浸透膜の汚損を原位置でモニタリングするための、第1の態様による方法又は第2の態様による装置の使用が提供される。
第4の態様では、逆浸透膜の洗浄作業中に、洗浄の有効性及び/又は洗浄の度合いを原位置でモニタリングするための、第1の態様による方法又は第2の態様による装置の使用が提供される。
本発明は、発明を実施するための形態を参照し、非限定的な実施例及び添付の図面と共に考慮すると、より良好に理解されるであろう。
低周波数の交流で電気的に駆動される拡散分極(DP)プロセスの模式図である。(a)に示されている濃度プロファイルは、電流が膜に向かって供給側から透過側へと流れる場合の交流(AC)サイクルの濃度プロファイルである。理論により束縛されることは望まず、例示の目的に過ぎないが、この膜の場合、Naの輸率(電流輸送の割合)は、Clの輸率よりも大きいことが、ここでは想定されている。AC電流の次の半サイクルでは、濃度プロファイルは、(b)に示されているように逆転する。なお、DP層は、膜の供給側及び透過側の両方に存在し、これらと関連するインピーダンスエレメントは、電気的に直列である。 インピーダンス測定に使用したステンレス鋼逆浸透電気インピーダンススペクトロスコピー(RO−EIS)クロスフローセルの断面図(下)及び拡大図(右上)の概略図である。(1及び8:金属プレート、2、4、及び7:絶縁プラスチックガスケット、3及び6:チャンバーを形成し、電流電極としても作用する金属プレート、5:RO膜)。電圧電極は、電流注入電極として作用するプレートから突出しており、それから絶縁されている。電圧電極の先端は、膜のいずれかの側(供給側又は透過側)の溶液と直接接触する。フローチャンバの部品を共に締め付けるボルトは、プラスチックスリーブにより電流注入電極から絶縁されている。 RO−EISクロスフローろ過システムの概略図である。 インピーダンスの負の虚数部分を縦軸にとり、実数のインピーダンスを横軸にとった代表的なプロットを示す図であり、これは、シリカ汚損ROシステムのナイキストプロットとして知られている。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmの塩化ナトリウム(NaCl);フラックス=30l/mh;クロスフロー速度=0.15m/s。図中に引かれている線は、1組の並列コンダクタンスエレメント及び直列に接続されているキャパシタンスエレメントで構成されている回路に、実験データをフィッティングすることにより得られる理論的な結果を示す。そのような回路モデルは、マクスウェル−ワーグナー(MW)モデルとして知られている。 負荷フラックスが段階的な様式で増加されるフラックスステップ実験での、(a)膜間圧力(TMP)、透過フラックス、脱塩率を時間に対してプロットした図であり、(b)時間に対するTMPの変化率d/dt[TMP]を透過フラックスに対してプロットした図である。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s。 フラックスステップ法でのEIS測定から得られたナイキストプロットである。プロットの点は、測定データを表し、実線は、マクスウェル−ワーグナーモデルを使用してフィッティングしたデータから得られたものである。エラーバーは、特定の負荷フラックスでの3回のEISスキャンから得たものである。なお、プロットのx軸及びy軸は、ナイキストプロットがシフトしてもより良好な図示が得られるように、異なるスケールで示されている。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s。 フラックスステップ法の実施中に種々のレベルのフラックスで得られた、拡散分極(DP)層GDPの、シリカ負荷供給液のろ過中の膜のフィッティングデータのMWモデルから導出されたコンダクタンスGを示す図である。時間は、フラックスが所望の値に調整された後の継続期間を示す。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s。 フラックスステップ法の実施中に種々のレベルのフラックスで得られた、膜スキンGskinの、シリカ負荷供給液のろ過中の膜のフィッティングデータのMWモデルから導出されたコンダクタンスGを示す図である。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s。 フラックスステップ法の実施中に種々のレベルのフラックスで得られた、膜の基層Gbaseの、シリカ負荷供給液のろ過中の膜のフィッティングデータのMWモデルから導出されたコンダクタンスGを示す図である。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s。 (a)25l/mh、(b)35l/mhで2時間汚損した後の膜表面、及び(c)きれいな膜の膜表面のシリカ粒子の×20,000倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)画像が示されている。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s。図中のスケールバーは、1μmを示す。 ここで使用したフラックスステップ法の異なるクロスフロー速度でのd/dt[TMP]対フラックスのプロットを比較するグラフである。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s及び0.30m/s。 フラックスステップ実験の異なるクロスフロー速度での拡散分極層(GDP)のコンダクタンスを比較するグラフである。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s及び0.30m/s。 25l/mhのフラックスでの長期汚損実験の、フィッティングしたシリカ汚損モデルから得られた、時間の関数としての膜のGDPを示す図である。 35l/mhのフラックスでの長期実験の、フィッティングしたシリカ汚損モデルから得られた、時間の関数としての膜のGDPを示す図である。 長期汚損実験での25l/mh及び35l/mhの負荷フラックスでのTMPを示す図である。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s。 供給チャネルにスペーサーを用いたフラックスステップ実験、及び供給チャネルにスペーサーを用いなかったフラックスステップ実験の、d/dt[TMP]対透過フラックスを示すグラフである。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s。 供給チャネルにスペーサーを用いなかったフラックスステップ実験での、及び供給チャネルにスペーサーを用いたフラックスステップ実験での、フィッティングしたシリカ汚損モデルから得られた膜のGDPを示すグラフである。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s。 一実施形態による、逆浸透セルとEIS分光計及び増幅器ユニットとの接続を示す概略図である。これを、EISを使用して生物汚損をモニタリングするために使用することができる。 フラックスステップ法を使用した場合のROシステムの限界フラックスを、EISを使用した場合のROシステムの限界フラックスと比較するためのフローチャートである。 1つの実施形態によるRO−EISクロスフローろ過システムの概略図である。 細菌(約10cfu mL−1の濃度)の存在下での、時間の関数としての正規化TMPプロファイルを示すグラフである。条件:透過フラックス=30L m−2−1、クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。 5日間の生物汚損実験での、時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。挿入図:5日間の実験が終了した時点でRO膜上にある生物膜の生/死染色の共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)画像である。なお、生細胞は緑色で示されているが、死細胞は赤色で示されている。条件:透過フラックス=30L m−2−1、クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。 5日間の生物汚損実験での、時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。挿入図:5日間の実験が終了した時点でRO膜上にある生物膜の生/死染色のCLSM画像である。なお、生細胞は緑色で示されているが、死細胞は赤色で示されている。条件:透過フラックス=30L m−2−1、クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。 3日間の生物汚損実験での、時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。挿入図:3日間の実験が終了した時点でRO膜上にある生物膜の生/死染色のCLSM画像である。なお、生細胞は緑色で示されているが、死細胞は赤色で示されている。条件:透過フラックス=30L m−2−1、クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。 細菌の非存在下で栄養素汚損した場合の、時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。条件:透過フラックス=30L m−2−1、クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。 栄養素汚損のCPプロファイルを示すグラフである。塩パルスを用いない場合の条件:透過フラックス=30L m−2−1、クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。塩パルスの条件:追加塩濃度:200mg L−1のNaCl、パルス長=10分。 死細菌(死細菌=80℃の水浴で加熱したストック溶液)で汚損中の、時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。条件:透過フラックス=30L m−2−1、クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。 100ppmアルギン酸塩と混合した死細菌で汚損した場合の、時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。条件:透過フラックス=30L m−2−1、クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB、100mg L−1又は16mg L−1のアルギン酸塩、及び2000mg L−1のNaCl。 16ppmアルギン酸塩と混合した死細菌で汚損した場合の、時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。条件:透過フラックス=30L m−2−1、クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB、100mg L−1又は16mg L−1のアルギン酸塩、及び2000mg L−1のNaCl。 RO膜上の生物膜の特徴付けを示すグラフである。EPS(タンパク質及びポリサッカライド)の濃度は、生物汚損の異なる継続期間毎に抽出法により決定した。バーは、標準誤差を示す。n=3。 RO膜上の生物膜の特徴付けを示すグラフである。IMARISソフトウェアを使用して算出した生細菌細胞及び死細菌細胞からなる平均生物体積。バーは、標準誤差を示す。n=3。 RO膜上の生物膜の特徴付けを示すグラフである。生物汚損の異なる継続期間毎の生細菌計数。バーは、標準誤差を示す。n=3。 (A)アジ化ナトリウムを2時間にわたってシステムに投入した場合の(濃度=0.05重量%)、生物汚損の時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。アジ化ナトリウムの投入を中止した後は、更なる細菌を導入せずにシステムを連続運転した。(B)アジ化ナトリウムを投入した場合又は投入しなかった場合の、生物汚損の時間の関数として正規化GDPを示すグラフである。アジ化ナトリウムは、各々1時間にわたってシステムに投与した。クロスフロー速度は0.15m/sであり、供給液は、24ppmの栄養素ブロス及び2000ppmの塩化ナトリウム水溶液を含み、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)PA01が注入されていた。アジ化ナトリウムの濃度は、第1の投入=0.03重量%であり、第2の投入=0.05重量%であった。アジ化ナトリウム投与を中止した後は、細菌注入を行ってシステムを連続運転した。 DPの初期上昇中の、生物汚損の時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。8L m−2−1。条件:クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。 DPの初期上昇中の、生物汚損の時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。15L m−2−1。条件:クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。 DPの初期上昇中の、生物汚損の時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。20L m−2−1。条件:クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。 DPの初期上昇中の、生物汚損の時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。30L m−2−1。条件:クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。 DPの初期上昇中の、生物汚損の時間の関数としての正規化GDPを示すグラフである。40L m−2−1。条件:クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。 EIS測定から得られた、生物汚損ROシステムの代表的なナイキストプロットを示す図である。条件:クロスフロー速度=0.15m s−1、RO供給液=24mg L−1のNB及び2000mg L−1のNaCl。実線は、膜のマクスウェル−ワーグナーモデルにデータをフィッティングして得られた理論的結果を示す。 DPプロットを示す図である。(A)に示されるプロファイルの場合、GDPの低下は、コロイド状の固塊及び有機物等の、膜に隣接した導電層の蓄積が少ないことを示す。(B)の場合、GDPの上昇は、膜に隣接する層の導電率の増加を示す。これは、塩等のイオン種の増加による場合がある。(C)の場合、GDPの低下及びその後の増加は、分極及び汚損の移行を示す。GDPの傾きが経時的に増加することは、固塊増強性濃度分極による固塊の形成又は存在を示す。
第1の態様の種々の実施形態は、逆浸透システムの汚損状態を評価するための方法に関する。上記方法は、例えば、逆浸透膜の限界フラックス及び/又は閾値フラックスを決定するために使用することができ、限界フラックス及び/又は閾値フラックスは、次いで膜汚損を最小限に抑えるための好適な運転条件を決定するために使用することができる。また、上記方法は、緩和対策が汚損を低減又は逆行させることができるように、シリカ等の物質が膜の濃度分極(CP)層等に蓄積しつつあるか否か、及びより圧密した固塊が表面に形成されつつあるか否かを決定するために使用することができる。また、上記方法は、膜表面で生物汚損が生じつつあるか否かを決定するために、及び汚損の緩和における殺生物剤又は抗菌剤の有効性を評価するために使用することができる。その結果、膜が著しく汚損される前に、汚損緩和対策を実施することができる。
用語「浸透」は、本明細書で使用される場合、膜内外の浸透圧差により駆動される選択的透過性膜を通過する溶媒の正味移動を指す。浸透圧(π)は、より高濃度の溶液に加えた場合に、膜を通過する溶媒の輸送を妨げる圧力である。通常の浸透プロセスでは、溶媒は、低溶質濃度の領域から高溶質濃度の領域へと膜を通過して自然に移動する。その一方、逆浸透は、外部圧力を加えて、溶媒の自然な流れを逆転させるという点で、通常の浸透プロセスとは異なる様式で作用する。
一般的に、逆浸透(RO)プロセスでは、典型的には、約0.5MPa(約5bar(約72psi))から約6MPa(約60bar(約870psi))の範囲の所定の圧力を加えて、供給水の浸透圧を克服し、供給溶液を流して選択的透過性膜を通過させる。加えた圧力は、膜を通過する物質移動の推進力として作用する。逆浸透システムの選択的透過性膜は、供給溶液から不純物をろ過して、膜の反対側(透過液側)に、透過溶媒とも呼ばれる精製溶媒を残すことができる。
逆浸透システムは、1つ又は複数の逆浸透膜を含む逆浸透膜構築体を含んでいてもよい。用語「膜」は、本明細書で使用される場合、ある種の膜を選択的に通過することを可能にしつつ、他のものを材料内又は材料上に残留させ、それにより、ろ過媒体のように機能し、成分が膜の一方の側から他方の側へと通過するのを選択的に制御することにより、成分分離を可能にする半透過性材料を指す。種々の実施形態では、選択的透過性膜は、水(HO)の通過を可能にするが、溶質分子及び/又はイオンを拒絶する。
膜構成の例としては、管状膜、中空糸膜、フラットシート膜、及び螺旋状に巻回された膜が挙げられる。管状膜及び中空糸膜は、断面が円形の中空管の形態をしており、この場合、管の壁面が膜として機能する。その一方、フラットシート膜は、互いに隣接して又は互いに接合して配置される膜材料の1つ又は複数のシートから形成される。2つ以上の逆浸透膜が存在する場合、膜は、膜を通過する流体の流れに対して直列に配置されていてもよい。
逆浸透膜は、典型的には、螺旋状に巻回された構成で充填される。螺旋状に巻回された要素の各々は、フラットシート膜、供給液セパレータ、中空コア周囲を取り囲む透過液スペーサーの層で製作されていてもよい。典型的には、供給液は、供給液セパレータ間のチャネルを軸方向に流れ、水は、膜を透過して、中央の生成物管に向かって流れる。膜システムでは、螺旋状の巻回された要素は、圧力容器の内部に直列に配置される。生産条件に応じて、複数の圧力容器が必要とされる場合があり、複数の圧力容器を並列に接続して、膜の集合体を形成してもよい。
供給ラインを逆浸透膜構築体に接続して、供給流を膜構築体に供給してもよく、膜構築体にて、供給流は、精製水流(透過液)と濃縮廃棄物流(濃縮液)とに分離され、それぞれ透過液ライン及び濃縮液ラインを介して、構築体から分流させることができる。逆浸透システムには、一般的に、供給源に圧力を加えて供給流を駆動し、逆浸透膜構築体を通過させるための、供給ポンプ等のポンプ機構が存在する。
上記方法は、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から複数のインピーダンス値を導出することを含む。
用語「複数の」は、参照されている種の1超、例えば、2、3、4、5、6、7、8、又は9以上を指す。原則として、拡散分極層の特徴周波数(時定数の逆数)が既知の場合、特定の周波数でのインピーダンス測定は1回だけでよい。しかしながら、拡散分極層の特徴周波数は、物質が拡散分極層に蓄積すると共に経時的変化を示すため、複数のインピーダンス値又は幾つかの周波数でのインピーダンス値の測定が必要である。
種々の実施形態では、5個を超える、10個を超える、20個を超える、30個を超える等の2個を超える数のインピーダンス値、又は約5〜約100個まで、若しくは約2〜約50個、若しくは約10〜20個の範囲の数のインピーダンス値が導出される。特定の実施形態では、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から10個を超えるインピーダンス値が導出される。
本明細書で使用される場合、用語「インピーダンス値」は、一般的に、部品を通過する電流に対する抵抗に関する測定値を指す。アドミタンス、インピーダンス、抵抗、及び/又はコンダクタンス等の値が、この範囲内に含まれていてもよい。
用語「アドミタンス」は、本明細書で使用される場合、電位を印加した際に電荷キャリアがシステムを移動する運動の容易さを記述する電気用語を指す。この用語は、数学的実数成分及び数学的虚数成分で構成される複素数の電気アドミタンスを指す場合がある。アドミタンスの数学的実数部分は、コンダクタンスとして知られており、シーメンス(S)という単位で表される。
インピーダンスは、アドミタンスの逆数であり、これも、数学的な実数成分及び虚数成分を有している場合があり、インピーダンスの実数部分は、抵抗と呼ばれる場合があり、虚数部分は、リアクタンス性インピーダンスと呼ばれる場合がある。
用語「抵抗」は、本明細書で使用される場合、物質を流れる電流を妨害する尺度を指す。コンダクタンスは、抵抗の逆数であり、物体又は物質が電気を伝導する能力の尺度である。
種々の実施形態では、インピーダンス値は、コンダクタンスである。例えば、複数のコンダクタンス値を、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から導出することができ、上記複数の導出コンダクタンス値に基づいて、逆浸透システムの汚損状態を決定することができる。
複数のインピーダンス値を導出することは、好適な膜フラックスで稼働している逆浸透膜を含む逆浸透システムに、種々の周波数の交流を流すことを含んでいてもよい。そうすることにより、上記周波数の各々にて、逆浸透膜の周波数依存性インピーダンス値を決定して、電気インピーダンススペクトルを形成することができる。
本明細書で使用される場合、用語「交流」は、周期的に方向が反転する電荷の流れを指す。逆浸透システムに種々の周波数の交流を流すことは、約0.01Hz〜約10Hz、約0.01Hz〜約10Hz、約0.01Hz〜約10Hz、又は約0.01Hz〜約10Hzの範囲等の、約0.01Hzから約10Hzまでの範囲の周波数の交流を、逆浸透システムに流すことを含んでいてもよい。特定の実施形態では、逆浸透システムに種々の周波数の交流を流すことは、約0.01Hzから約10Hzまでの範囲の周波数の交流を逆浸透システムに流すことを含む。
交流は、逆浸透膜の少なくとも一部を通って流れてもよい。これを容易にするために、逆浸透膜は、電気的に膜と接続されており、例えば供給溶液又は透過溶液内に位置しており、膜と接近しているか又は取り付けられている電極を含んでいてもよい。2つ又は4つの電極が、電気的に膜と接続されていてもよく、その場合、1つ又は2つの電極が、それぞれ膜の両側に配置されていてもよい。例えば、1つ又は2つの電極が、膜の供給液側及び透過液側の両方に位置決めされるように、2つの電極の各々又は4つの電極の各2つが、膜の両側に設置されていてもよい。
例えば、2つ以上の膜を含む膜構築体が使用される実施形態では、2つの電極の各々又は4つの電極の各2つが、膜構築体の両側に設置されていてもよい。
幾つかの実施形態では、4電極配置を使用して、4端子インピーダンス測定を実施する。インピーダンス測定のために4電極配置を使用すると、電圧電極−溶液界面での周波数依存性インピーダンスによる複雑な効果を排除することができるという利点がある。典型的には、膜の供給液側にある1対の電極を使用して、電流刺激シグナルを注入してもよく、反対側の透過液側にある他方の対の電極を使用して、応答シグナルを測定してもよい。インピーダンスの大きさ及び位相差は、刺激シグナル及び応答シグナルから決定することができる。
種々の実施形態では、モジュールの膜と電気的に接続されている電極は、逆浸透システムの運転を中断せずにインピーダンス測定を実施することができるように、逆浸透システムの外部に位置するセルの電極端子と電気的に接続されていてもよい。
特定の実施形態では、逆浸透膜は、膜システムの2つの側(供給液側及び透過液側)に2対の電極を含む電気インピーダンススペクトロスコピー(EIS)装備膜システムの一部を形成していてもよい。1対の電極を使用して膜システムに電流を注入してもよく、他方の対を使用して、膜試料内外の電圧を測定してもよい。
交流の周波数の各々にて逆浸透膜の周波数依存性インピーダンス値を決定して、電気インピーダンススペクトルを形成することができる。インピーダンス測定を行うために、電流の流れ、膜内外に生じる電位、及び入力交流シグナルと発生した電圧応答との位相差が測定される。測定を定期的に実施して、周波数依存性インピーダンス値を算出するための複数のデータ点を生成してもよく、周波数依存性インピーダンス値を、電気インピーダンススペクトルに変換してもよい。膜の汚損は、周波数に依存する膜インピーダンス値の大きさ及び相対的位相の変化をもたらす場合がある。当業者であれば理解するであろうが、電気インピーダンススペクトルは、ナイキストプロットの形態に変換してもよく、又はナイキストプロットの形態で提示してもよい。一般的に、ナイキストプロットの形態は、逆浸透システムで生じているプロセスだけでなく、逆浸透膜の層に関する直接的洞察を提供することができる。
逆浸透膜システムに種々の周波数の交流を流す前に又は流している間、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜を、好適な膜フラックスで運転してもよく、又は好適な膜フラックスに供してもよい。用語「膜フラックス」は、本明細書で使用される場合、膜の単位面積当たりの経時的な流量を指す。膜フラックスは、L m−2−1又はg cm−2hr−1の単位で表すことができる。
種々の実施形態では、逆浸透膜は、約8L m−2−1〜約100L m−2−1、約25L m−2−1〜約100L m−2−1、約50L m−2−1〜約100L m−2−1、約65L m−2−1〜約100L m−2−1、約75L m−2−1〜約100L m−2−1、約85L m−2−1〜約100L m−2−1、約8L m−2−1〜約85L m−2−1、約8L m−2−1〜約70L m−2−1、約8L m−2−1〜約50L m−2−1、約8L m−2−1〜約40L m−2−1、約8L m−2−1〜約25L m−2−1、約25L m−2−1〜約85L m−2−1、又は約35L m−2−1〜約65L m−2−1等の、約1L m−2−1から約100L m−2−1までの範囲の膜フラックスで運転される。
上述したように、上記周波数の各々にて逆浸透膜の周波数依存性インピーダンス値を決定して、実施例に記載されているもの等の電気インピーダンススペクトルを形成する。本明細書で使用される場合、用語「スペクトル」は、種々の周波数で測定した複数のインピーダンス測定値又はその分布を指す。電気インピーダンススペクトルの低周波領域は、逆浸透膜の拡散分極層に対応し、拡散分極層は、交流を使用したインピーダンス測定中の、膜−溶液界面におけるイオンの交互蓄積及び枯渇により引き起こされる現象上の事象に由来する場合がある。拡散分極層は、逆浸透膜の汚損挙動の観察及び研究のための主要な層を形成する場合がある。そのため、電気インピーダンススペクトルの低周波領域からインピーダンス値を得ることにより、膜−溶液界面での現象上の事象に関する研究が可能になり、濃度プロファイルが変化すると共に最も感度が高い応答が提供される。
膜に隣接する拡散分極(DP)層のインピーダンス値は、電気インピーダンススペクトルを、理論モデル又は数学モデル等のモデルにフィッティングすることにより、約0.01Hzから約10Hzまでの範囲等の、逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から決定することができる。
電気インピーダンススペクトルをモデルにフィッティングすることにより、得られた実験データに対する理論モデルのフィッティングに基づき、逆浸透システムの汚損状態を明らかにすることができる。例えば、理論的マクスウェル−ワーグナーモデルは、逆浸透システムで生じる種々のエレメント及びプロセスの存在に関する洞察を提供することができ、拡散分極(DP)層を特定し、この特定した層のインピーダンス値を抽出するために使用することができる。
種々の実施形態では、電気インピーダンススペクトルをモデルにフィッティングすることは、電気インピーダンススペクトルをマクスウェル−ワーグナーモデルにフィッティングすることを含む。当業者であれば、フィッティングをどのように行うかに関する詳細を理解しており、実施例においても例示及び考察されている。
インピーダンス値を決定する場合、上述したステップを、更なるサイクルで繰り返して、逆浸透膜の更なるインピーダンス値を生成してもよい。例えば、上述したステップは、5〜100回、5〜70回、25〜100回、又は20〜40回の更なるサイクル等の、5回以上、又は10回以上の更なるサイクルで繰り返して、逆浸透膜の更なるインピーダンス値を生成してもよい。
データのより正確でより意味のある分析及び比較をもたらすために、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から複数のインピーダンス値を導出することは、複数のインピーダンス値の各々を、初期条件での、例えば、時間=0での、又は逆浸透膜が供給溶液に供された直後のインピーダンス値で正規化することを更に含んでいてもよい。種々の実施形態では、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から複数のインピーダンス値を導出することは、複数のインピーダンス値の各々を、供給溶液のインピーダンス値で正規化することを更に含む。これを実施すると、膜の初期インピーダンス値が様々であるために生じ得る不正確を回避することができる。同様に、測定から得られるインピーダンス値、又はインピーダンススペクトルをマクスウェル−ワーグナーモデルにフィッティングすることにより得られるインピーダンス値は、インピーダンス値が、供給溶液のインピーダンス値で正規化されている場合、より意味のあるものになり得る。これにより、膜の汚損又は生物汚損と関連のない供給液の導電率の変化によるインピーダンス値の変動を補償することができる可能性がある。
複数のインピーダンス値の各々は、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜が同じ又は異なる膜フラックスで稼働している間に、導出することができる。同じ又は異なる膜フラックスが使用されているか否かに応じて、複数の導出インピーダンス値に基づいて導出される逆浸透システムの汚損状態に関する情報は、異なる場合がある。
上述したように、逆浸透膜は、約1L m−2−1から約100L m−2−1までの範囲の膜フラックスで稼動していてもよい。したがって、膜フラックスの各々は、8L m−2−1〜約100L m−2−1、約4L m−2−1〜約80L m−2−1、又は上述したような任意の好適な範囲等の、約1L m−2−1から約100L m−2−1までの範囲であってもよい。
種々の実施形態では、複数のインピーダンス値の各々は、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜が異なる膜フラックスで稼働している間に導出される。
上述したように、複数のインピーダンス値を導出することは、好適な膜フラックスで稼働している逆浸透膜を含む逆浸透システムに、種々の周波数の交流を流すこと;上記周波数の各々にて逆浸透膜の周波数依存性インピーダンス値を決定して、電気インピーダンススペクトルを形成すること;電気インピーダンススペクトルをモデルにフィッティングすることにより、インピーダンス値を決定すること;及び上記のステップを更なるサイクルで繰り返して、逆浸透膜の更なるインピーダンス値を生成することを含んでいてもよい。こうした実施形態では、上記ステップを更なるサイクルで繰り返して、逆浸透膜の更なるインピーダンス値を生成することは、異なる膜フラックスで各インピーダンス値を生成することを含む。そうすることにより、複数のインピーダンス値の各々は、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜が異なる膜フラックスで稼働している間に導出される。
膜フラックスは、「フラックスステップ法」を使用して変化させてもよい。例えば、インピーダンス値を導出する膜フラックスは、その次にインピーダンス値を導出する次の膜フラックスよりも小さくともよく又はより大きくともよい。有利なことに、これにより、フラックスの制御がより扱い易くなる場合があり、膜へと向かう汚損物質の一定の流れを測定中により容易に確立することができる。
種々の実施形態では、インピーダンス値を導出する膜フラックスは、その次にインピーダンス値を導出する次の膜フラックスよりも小さい。これは、例えば、最も低い所望の膜フラックスで最初のインピーダンス値を得ること、及び最後のインピーダンス値を得る最も高い所望のフラックスに到達するまで、膜フラックスを定期的に増加させて、更なるインピーダンス値を生成することを含んでいてもよい。言い換えれば、各更なるサイクルの膜フラックスは、その前のサイクルの膜フラックスよりも大きくともよい。
或いは、インピーダンス値を導出する膜フラックスは、その次にインピーダンス値を導出する次の膜フラックスよりも大きくともよい。これは、例えば、最も高い所望の膜フラックスで最初のインピーダンス値を得ること、及び最後のインピーダンス値を得る最も低い所望のフラックスに到達するまで、膜フラックスを定期的に低下させて、更なるインピーダンス値を生成することを含んでいてもよい。言い換えれば、各更なるサイクルの膜フラックスは、その前のサイクルの膜フラックスよりも小さくともよい。
逆浸透膜システムの汚損状態は、複数の導出インピーダンス値に基づいて決定される。上述したように、同じ又は異なる膜フラックスが使用されているか否かに応じて、複数の導出インピーダンス値に基づいて導出される逆浸透システムの汚損状態に関する情報は、異なる場合がある。
種々の実施形態では、逆浸透膜システムの汚損状態の決定は、逆浸透膜の限界フラックスを決定することを含む。異なる膜フラックスで各インピーダンス値を生成し、インピーダンス値を、インピーダンス値を生成するために使用した膜フラックスと関連させることにより、逆浸透膜の限界フラックスを決定することができる。
用語「限界フラックス」は、一般的に、それ未満では汚損が生じない膜の透過フラックスを指すために使用される。実際、限界フラックス未満での運転は不十分であり、ゼロ汚損速度を達成することができない場合があるため、用語「限界フラックス」は、本明細書で使用される場合、「閾値フラックス」が参照されるか又は決定される実施形態を含んでいてもよく、用語「閾値フラックス」は、それ以下では汚損速度が低いか又はほぼ一定であるが、それを超えると汚損速度が著しく上昇する膜の透過フラックスを指す。限界フラックスを考慮に入れることにより、これは、「汚損が最小限に抑えられ、頻繁な洗浄が回避されるフラックス」と言われる持続可能なフラックスを推定をもたらすことができる。それにより、運転を調整して、より経済的に持続可能な性能をもたらし、汚損を最小限に抑える機会を提供することができる。持続可能なフラックスの推定は、例えば、廃水産業において、運転開始段階のプラントプロセス最適化に有用であり得る。
上記を念頭におくと、限界フラックスを使用して、逆浸透膜の逆浸透膜を稼働させることができるか、又は稼働していてもよい初期膜フラックスを決定することができる。
逆浸透膜の限界フラックスの決定は、複数のインピーダンス値を、膜フラックスの関数としてプロットして曲線を生成すること、及び曲線の傾きが反転する時の膜フラックスを決定することを含んでいてもよい。
インピーダンス値がコンダクタンスである場合、曲線の傾きが反転する時の膜フラックスを決定することは、曲線の傾きが、負の傾きから正の傾きへと移行する時の膜フラックスを決定することを含んでいてもよい。
理論により束縛されることは望まないが、本発明者らは、フラックスが増加すると共にコンダクタンス値が初期低下を示すことは、固塊の形成ではなく、膜−溶液界面付近の懸濁シリカ粒子等の非導電性汚損物質の濃度増加による場合があると考える。これにより、フラックスが上昇すると共に、環境の導電性低下がもたらされる場合がある。この分極層は、低フラックスでは濃度がより低い場合があり、低フラックス条件での条件は、溶質間相互作用に起因する圧密をもたらさない場合があるため、流動性懸濁物として存在する可能性がより高い。
フラックスの更なる増加が限界フラックス領域未満であると、水フラックスがより高いため、透過液側における塩等のイオンの濃度は、減少する場合がある。これにより、より低いコンダクタンスがもたらされる場合がある。フラックスが限界点に上昇すると、供給液側の流動性懸濁物層は、最終的に、膜表面の粒子の最大体積分率に達する場合がある。この条件では、流動性懸濁物層の下に、滞留固塊層が生じる場合がある。この限界点でのフラックスを、限界フラックスと呼ぶ場合がある。
フラックスが、この限界点を超えて更に増加すると、コンダクタンスが、フラックス上昇と共に急激に上昇する場合があり、これは、膜表面の分極層からより構造化した固塊層が形成される前兆である場合がある。コンダクタンスの急上昇は、固塊増強性濃度分極効果による、膜−溶液界面での塩濃度増加に起因する場合がある。
更に、本明細書で開示されている方法は、逆浸透膜の汚損のモニタリングを原位置で実施して、例えばシリカ等の物質の蓄積度合いを、データにフィッティングしたマクスウェル−ワーグナーモデルから導出されるか又はナイキストプロットの低周波領域で特定される拡散分極層の低周波インピーダンス値の変化又はインピーダンス値から評価することを可能にする。
上述したように、逆浸透膜システムの運転中に、膜上の堆積物質の性質が、例えば不動性固塊の形成等の変化を起こす条件に到達する場合がある。拡散分極層中の物質が圧密して固塊になり始める際の固塊増強性濃度分極は、この層のインピーダンス値の経時的変化率の変曲点又は反転点の出現により評価することができる。その後、汚損、固塊増強性濃度分極効果、及び固塊増強性濃度浸透圧は、その時点以降、経時的により急速に増加することになる。これにより、フラックスが限界フラックス点にある閾値条件又は限界条件を規定することが可能になる。
限界フラックス点を使用して、逆浸透膜の固塊増強性濃度分極(CECP)及び/又は固塊増強性浸透圧(CEOP)の開始を決定することができることは有利である。言い換えれば、運転条件が、固塊増強性浸透圧に結び付く固塊増強性濃度分極効果の開始に結び付く場合がある限界フラックス点に接近しつつある場合、本明細書で開示されている方法は、初期汚損事象の定量的初期前兆を提供することができ、次いでそれにより、運転圧力及び流動速度の変更等の是正処置並びに膜性能を回復させるための最終的な特定の洗浄計画を、実際に汚損が生じる前に実施することが可能になるという利点がある。
したがって、こうした実施形態では、逆浸透膜システムの汚損状態の決定は、逆浸透膜の限界フラックス点を決定することを含む。複数のインピーダンス値の各々を、断続的な時間間隔で又は設定した時間間隔で導出して、拡散分極層をモニターしてもよく、それは、同じ又は異なる膜フラックスで行ってもよい。複数のインピーダンス値を時間の関数としてプロットして曲線を生成し、曲線の傾きが反転する時の時間を決定することにより、逆浸透膜の限界フラックス点を決定してもよい。
インピーダンス値がコンダクタンスである実施形態では、曲線の傾きが反転する時の時間を決定することは、曲線の傾きが、負の傾きから正の傾きへと移行する時の時間を決定することを含む。例えば、曲線は、曲線の傾きが負の傾きから正の傾きへと移行する「V」型曲線の形態であってもよい。
上記に加えて又は上記とは別に、本明細書で開示されている方法は、生物汚損が膜表面で生じつつあるか否かの徴候を提供することができる。
したがって、本明細書で開示されている方法は、逆浸透膜の生物汚損発生をモニターするために使用することができる。上記方法は、約0.01Hzから約10Hzまでの範囲等の、逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から、複数のコンダクタンスを導出することを含む。複数のコンダクタンス値を時間の関数としてプロットして、曲線を生成する。これは、曲線の傾きが正の傾きから負の傾きへと移行する時の存在を決定することにより、生物汚損が生じたことを示す徴候としての役割を果たす。
複数のインピーダンス値を導出すための上述の方法を、生物汚損の発生をモニタリングするために適用することができる。違いは、インピーダンス値ではなくコンダクタンスを測定することである。したがって、複数のコンダクタンス値を導出することは、好適な膜フラックスで稼働している逆浸透膜を含む逆浸透システムに、約0.01Hzから約10Hzまでの範囲等の種々の周波数の交流を流すこと;上記周波数の各々にて逆浸透膜の周波数依存性インピーダンス値を決定して、電気インピーダンススペクトルを形成すること;電気インピーダンススペクトルをモデルにフィッティングすることにより、コンダクタンス値を決定すること;及び上記ステップを更なるサイクルで繰り返して、逆浸透膜の更なるコンダクタンス値を生成することを含んでいてもよい。
幾つかの実施形態では、電気インピーダンススペクトルをモデルにフィッティングすることは、電気インピーダンススペクトルをマクスウェル−ワーグナーモデルにフィッティングすることを含む。
上述したように、データのより正確でより意味のある分析及び比較をもたらすために、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から複数のコンダクタンス値を導出することは、複数のコンダクタンス値の各々を、初期条件での、例えば、時間=0での、又は逆浸透膜が供給溶液に供された直後のコンダクタンス値で正規化することを更に含んでいてもよい。種々の実施形態では、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から複数のコンダクタンス値を導出することは、複数のコンダクタンス値の各々を、供給溶液のコンダクタンス値で正規化することを更に含む。これを実施すると、膜の初期コンダクタンス値が様々であるために生じ得る不正確を回避することができる。測定から得られるコンダクタンス値、又はインピーダンススペクトルをマクスウェル−ワーグナーモデルにフィッティングすることにより得られるコンダクタンス値は、コンダクタンス値が、供給溶液のコンダクタンス値で正規化されている場合、より意味のあるものになり得る。これにより、膜の生物汚損と関連のない供給液の導電率の変化によるコンダクタンス値の変動を補償することができる可能性がある。
種々の実施形態では、複数のコンダクタンス値の各々は、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜が同じ又は実質的に同じ膜フラックスで稼働している間に導出される。本明細書で使用される場合、用語「実質的に同じ」は、膜フラックスが、例えば、±5%、±3%、又は±1%以内の変動を示すことを指す。幾つかの実施形態では、複数のコンダクタンス値の各々は、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜が同じ膜フラックスで稼働している間に導出される。
膜フラックスは、例えば、8L m−2−1〜約80L m−2−1、約10L m−2−1〜約60L m−2−1、約15L m−2−1〜約50L m−2−1、約4L m−2−1〜約40L m−2−1、又は約15L m−2−1〜約30L m−2−1等の、約4L m−2−1〜約80L m−2−1までの範囲であってもよい。
複数のコンダクタンス値の各々は、断続的な時間間隔で、又は設定した時間間隔で導出してもよい。例えば、上述した実施形態にて上記ステップを更なるサイクルで繰り返して、逆浸透膜の更なるコンダクタンス値を生成することは、拡散分極層をモニターするために断続的に又は設定間隔で実施してもよい。幾つかの実施形態では、上記ステップを更なるサイクルで繰り返して、逆浸透膜の更なるインピーダンス値を生成することは、約1日〜約10日間、約1時間〜約5日間、約2時間〜約8日間、約3時間〜約9日間、又は約4日間〜約8日間等の、約1時間〜10時間、1日間〜約30日間の範囲の期間にわたって実施される。
上述したように、複数のコンダクタンス値を、時間の関数としてプロットして、曲線を生成してもよい。これは、曲線の傾きが正の傾きから負の傾きへと移行する時点の存在を決定することにより、生物汚損が生じたことを示す徴候としての役割を果たす。例えば、曲線は、曲線の傾きが負の傾きから正の傾きへと移行する逆「V」型曲線の形態であってもよい。
理論により束縛されることは望まないが、本発明者らは、細菌細胞及びそれらの呼吸産物の内部が非常に導電性であるため、膜表面での生細菌の蓄積は、DP層の正規化コンダクタンスの初期上昇に結び付く場合があると仮定した。これは、細菌が微小コロニーを形成する前に膜表面に結合し始める、生物膜発生の誘発期に相当する場合がある。また、正規化コンダクタンスは、濃度分極による、イオン等の溶質又は他の物質の蓄積により増強される場合がある。時間の経過と共に極大点に達すると、正規化コンダクタンスは、細胞外高分子物質(EPS)の著しい形成により低下し始める場合がある。細胞外高分子物質は、細菌細胞により継続的に生成され、生物膜により高い構造的完全性をもたらす場合がある。EPSマトリックスの蓄積は、拡散分極層の塩を置換するか又はイオン拡散を制限し、それによりこの層の正規化コンダクタンスをより低下させる場合がある。より堅固なEPSマトリックスの蓄積は、濃度分極効果にも関わらず、汚損層の導電率を低減し、正規化コンダクタンスをより低下させる場合がある。
これには、上記を考慮に入れることにより、逆浸透膜の生物汚損の原位置モニタリングの実施を可能にするという利点がある。本明細書で開示されている方法は、細菌を含む粒子が継続的に膜表面に堆積する膜−溶液界面のモニタリングを可能にする。本明細書で開示されている種々の実施形態は、生物汚損の存在及び生物汚損の程度の検出が、原位置でモニターされることを可能にする。これは、殺生物剤又は静菌剤(biostat)の投入等の予防策を講じて生物汚損を緩和する現行技術水準の方法よりも有利である。殺生物剤又は静菌剤を使用した場合でも生物汚損を最小限に抑えることができるが、こうした化学薬品の使用は、膜の実際の生物汚損のいかなる測定にも基づいていない。
本明細書で開示されている方法は、逆浸透膜表面の成熟生物膜の形成を検出し、その発生に関する洞察を提供することができる。また、本明細書で開示されている方法は、水処理プラントにおける生物汚損の制御戦略の洗浄効率又は有効性を評価するために使用することができる。
逆浸透膜システムの汚損状態を評価するための方法は、逆浸透システムの側流に設置するための汚損モニターにカナリアセルとして組み込むことができる。用語「カナリアセル」は、本明細書で使用される場合、何らかのタイプの警告を提供するデバイスを指す。
例えば、汚損モニターを、逆浸透システムの汚損挙動を模倣するように、原位置で逆浸透膜と並列に接続して、汚損状態若しくは生物汚損状態又は洗浄効率をリアルタイムで非侵略的にオンラインで評価することができる。これは、破壊的な方法であり、不可逆的な汚損が既に生じてしまった後でしか有用ではない膜分解、及び、汚損又は生物汚損が膜表面に生じつつあるか否かを実際には決定せず、試料収集のために時間のかかる場合がある供給水及び抗菌剤の分析等の、現行技術水準の方法よりも有利である。また、汚損モニターは、固塊形成の開始、膜表面の固塊増強性濃度分極(CECP)、又は限界フラックス点に到達したか又は超過した状態への到着の原位置での決定に使用することができる。
したがって、第2の態様の種々の実施形態は、逆浸透システムの汚損状態を評価するための装置に関する。上記装置は、逆浸透システムの汚損状態をオンラインで評価するように構成することができるという利点がある。
上記装置は、逆浸透膜の両側に配置されるように構成されている2つ以上の電極;上記2つ以上の電極間に種々の周波数の交流を生成するように構成されている交流発生器;(i)上記膜の膜内外の電圧、(ii)上記膜を通過する電流、及び(iii)上記電圧と上記電流との位相差を、上記種々の周波数で測定するように構成されている検出器;及び上記測定した電圧、電流、及び位相差を使用して、上記膜に隣接する拡散分極層のインピーダンス値を導出するように構成されているプロセッサを含む。
上述したように、逆浸透膜は、電気的に膜と接続されており、例えば、供給溶液又は透過溶液内に位置しており、膜に接近しているか又は取り付けられている2つの電極又は4つの電極等の複数の電極を含んでいてもよい。複数の電極は、電気的に膜と接続されていてもよく、その場合、1つ又は2つの電極が、それぞれ膜の両側に配置されていてもよい。使用される電極の数に応じて、1つ又は2つの電極が、膜の供給液側及び透過液側の両方に位置決めされるように、2つの電極の各々又は4つの電極の各2つが、膜の両側に配置されていてもよい。
1つの実施形態では、電極の数は4つであり、電極は、逆浸透膜の両側に対で配置されるように構成されている。
2つ以上の電極間に種々の周波数の交流電流を生成するように構成されている交流発生器は、複数の電極の各々と電気的に接続されている。種々の実施形態では、交流発生器は、約0.01Hzから約10Hzまでの周波数範囲の交流電流を生成するように構成されている。
膜内外の電圧、膜を通過する電流、及び上記電圧と上記電流との位相差は、装置に含まれている検出器により測定される。上述したように、膜の供給液側にある1つ又は1対の電極を使用して、電流刺激シグナルを注入してもよく、他方の又は他方の対の電極を反対側の透過液側で使用して、応答シグナルを測定してもよい。したがって、電流、膜内外の電圧、及び上記電圧と上記電流との位相差は、刺激シグナル及び応答シグナルから検出器により決定することができる。
測定した電圧、電流、及び位相差は、交流電流の種々の周波数にて測定した電圧、電流、及び位相差を使用して、膜に隣接する拡散分極層のインピーダンス値を導出するように構成されているプロセッサに提供される。例えば、プロセッサは、測定した電圧、電流、及び位相差を、マクスウェル−ワーグナーモデル等のモデルにフィッティングすることにより、膜に隣接する拡散分極層のインピーダンス値を導出又は決定するように構成されていてもよい。インピーダンス値をいかにして導出し得るかの例は、既に上記で考察した。
複数のインピーダンス値を、逆浸透システムから得ることができる。生成されたインピーダンス値は、膜フラックスの関数として、又は逆浸透システムの汚損状態を決定するまでの時間の関数として表してもよく又はプロットしてもよい。これは、作業者又はシステム操作者の手作業により、又はコンピュータ等のデバイスにより実施することができる。したがって、種々の実施形態では、装置は、複数のインピーダンス値を、膜フラックス及び/又は時間の関数として表すように構成されているデバイスを更に含む。上記デバイスは、記録デバイス及び/又はプロットデバイスであってもよい。
例えば、上記デバイスは、逆浸透システムの限界フラックスを決定することにより、逆浸透システムの汚損状態を決定するように構成されていてもよい。そのような実施形態では、デバイスは、複数のインピーダンス値を、膜フラックスの関数としてプロットして、曲線を生成するように構成されていてもよい。上記デバイスは、曲線の傾きが反転する時の膜フラックスを決定するように更に構成されていてもよい。この時点は、逆浸透膜の限界フラックスに対応する。
インピーダンス値がコンダクタンスである実施形態では、曲線の傾きが反転する時の膜フラックスを決定することは、曲線の傾きが、負の傾きから正の傾きへと移行する時の膜フラックスを決定することを含む。
別の例として、上記デバイスは、逆浸透システムの限界フラックスを決定することにより、逆浸透システムの汚損状態を決定するように構成されていてもよい。そのような実施形態では、上記デバイスは、複数のインピーダンス値を、時間の関数としてプロットして、曲線を生成するように構成されていてもよい。同時に、複数のインピーダンス値の各々が導出される膜フラックスを、上記デバイスにより記録してもよい。デバイスは、曲線の傾きが反転する時の時間を決定するように更に構成されていてもよい。そのような時点は、逆浸透膜の限界フラックスに対応する。
インピーダンス値がコンダクタンスである実施形態では、曲線の傾きが反転する時の時間を決定することは、曲線の傾きが、負の傾きから正の傾きへと移行するか又は正の傾きから負の傾きへと移行する時の時間を決定することを含む。前者は、無機汚損が限界フラックス点に到達したことを示している場合があるが、後者は、生物汚損のため限界フラックス点に到達したことを示している場合がある。
更なる例として、本明細書で開示されている方法は、生物汚損プロセスをモニタリングするために使用することができ、また、生物汚損を緩和するための最低フラックスレベルを特定するために使用することができる。また、本明細書で開示されている方法は、汚損を緩和するための殺生物剤又は抗菌剤の有効性をモニターするために使用することができる。
更なる態様の種々の実施形態は、逆浸透膜の汚損を原位置でモニタリングするための、第1の態様による方法又は第2の態様による装置の使用に関する。また、上記方法は、固塊形成の開始、膜表面の固塊増強性濃度分極(CECP)、又は限界フラックス点に到達したか又は超過した状態への到着の原位置での決定に使用することができる。本明細書で開示されている方法は、プロセスを最適化するために、既存の逆浸透水処理プラントのいずれにおいても実施することができる。
また、本明細書で開示されている方法は、汚損の制御戦略の洗浄効率又は有効性を評価するために、又は水処理プラントの洗浄作業中に膜洗浄の進行を決定するために使用してもよい。したがって、第4の態様の種々の実施形態は、逆浸透膜の洗浄作業中に洗浄の有効性及び/又は洗浄の度合いを原位置でモニタリングするための、第1の態様による方法又は第2の態様による装置の使用に関する。
本明細書にて例示的に説明されている発明は、本明細書に具体的に記載されていない任意の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の限定が存在しない場合でも好適に実施することができる。したがって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」等は、包含的及び非限定的に解釈されるものとする。加えて、本明細書で使用されている用語及び表現は、限定のためではなく、説明のための用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用には、記載及び表示されている特徴の任意の等価物又はそれらの部分を除外する意図はないが、特許請求されている本発明の範囲内で、種々の改変が可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び任意選択の特徴により具体的に開示されているが、当業者であれば、本明細書で具現化され、本明細書で開示されている本発明に改変及び変更をなすことができ、そのような改変及び変更は、本発明の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。
本発明は、本明細書では幅広く総称的に記載されている。総称的な開示内に入るより狭い種及び亜属分類の各々も、本発明の一部を形成する。これは、排除された物質が本明細書で具体的に記載されているか否かに関わらず、任意の主題を類概念から取り除く但し書き又は否定的限定を有する発明の総称的な記載を含む。
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲及び非限定的な実施例の範囲内にある。加えて、本発明の特徴又は態様が、マーカッシュ群の様式で記載されている場合、当業者であれば、本発明が、マーカッシュ群の任意の個々の構成要素又は構成要素の亜群の点でも記載されていることを認識するであろう。
実験内容
種々の実施形態によるROプロセスの限界フラックス未満、限界フラックス付近、及び限界フラックスを超えたところで生じる現象を説明するための、非侵襲性の技法である電気インピーダンススペクトロスコピー(EIS)が、本明細書で開示されている。上記技法は、ほぼリアルタイムであり、非侵襲性であり、原位置である。逆浸透(RO)でのコロイド懸濁液の限界フラックスを決定することができ、限界フラックス未満、限界フラックス付近、及び限界フラックスを超えたところで膜−溶液界面で生じる変化を、EISを使用して検出することができる。実験の設定では、EISシグナルの傾向により、フラックスを段階的に変化させた場合の膜間圧力(TMP)の変化により決定される限界フラックスを特定することができた。
限界フラックス付近にて膜−溶液界面で生じる現象、並びに固塊形成開始及びCEOP発生の前兆に関する価値のある情報を提供するEISの能力が、本明細書で実証されている。リアルタイムで導出したパラメータを用い、フラックスステップ法を使用して、異なる負荷フラックスでのろ過からTMPにより測定した限界フラックスを、原位置EIS測定を使用して裏付けた。
EISシグナルの低周波領域から導出した拡散分極(DP)層のインピーダンスを、固塊形成の開始及び濃度増強浸透圧(CEOP)効果の前兆を示す最も重要なEISパラメータであると特定した。本明細書に記載の種々の実施形態は、膜及び膜システムの電気インピーダンスの測定に依存する。
TMP測定は、こうした現象に関する情報をほとんど提供しない。限界フラックスは、クロスフロー速度により強く影響を受けた。これは、フラックスが増加すると共に、拡散分極層のインピーダンス値の変曲点が変化したことによっても示された。最長時定数(最低特性周波数)でのインピーダンスエレメントの実数インピーダンス(ZRe)を抽出することにより、限界フラックスを特定するためのより単純な方法を開発した。このパラメータは、ナイキストプロットの最低特性周波数での半円の半径から簡便に抽出することができる。本明細書で開示されている種々の実施形態により、側流(「カナリア」)セルを使用して「オンライン」でEISを使用してシステムを連続的にモニターし、汚損が生じる可能性の高い限界フラックス未満でシステムが稼働することを保証することができることが示された。
また、電気インピーダンススペクトロスコピー(EIS)を種々の実施形態で使用して、原位置で非侵襲的に膜表面の生物膜形成をモニターした。拡散分極(DP)層の電気的パラメータの特徴的変化は、生物汚損が生じつつあるか否かに関する直接的指標を提供する。EIS導出パラメータである、拡散分極(GDP)層の正規化コンダクタンスは、生物膜形成の2つの段階を示した。第1段階は、細菌細胞の蓄積及び細菌に由来する呼吸産物の形成に関連していた。第2段階は、生物膜マトリックス形成の主成分であった細胞外高分子物質(EPS)の蓄積に関連していた。静菌剤であるアジ化ナトリウムの効果も調査した。その存在は、細菌の増殖を遅延させ、膜表面からの細菌の部分的剥離を引き起こした。また、アジ化ナトリウムの効果は、正規化GDPプロットに反映されていた。汚損が最小限であった持続可能なフラックスは、フラックスに対する正規化GDPの初期上昇の変化率から推定することができた。膜間圧力(TMP)又は共焦点レーザ走査顕微鏡法(CLSM)による分解検査等の従来のモニタリング法は、それら自体では生物膜形成の機序に対する洞察をほとんどもたらさなかった。本研究は、水処理プラントの生物汚損をモニタリングするために及び洗浄効率を評価するために、高圧膜容器の側流に位置する「カナリア」セルにEISを組み込むことができることを実証した。
本発明をより良好に理解するために、EISの概要、並びにTMP法により測定した限界フラックスを裏付けるために及びROプロセスの生物汚損をモニタリングするためにEISを選択したことの論理的根拠を考察する。
実施例1:理論的な背景及び等価回路モデル(実施形態1)
インピーダンス測定は、一連の既知周波数ω及び振幅iの小正弦波交流電流i=isin(ωt)をシステムに注入し、試料前後の電圧v=vsin(ωt−θ)を測定することにより実施する。電圧振幅v、及び電圧と電流との位相差θを測定する。得られたインピーダンスを、一連の周波数にわたって決定した。
本研究で使用したシステムでは、電流は、膜と直列の既知インピーダンス前後での電圧低下を測定することにより決定する。この基準インピーダンスは、抵抗器、及び膜の周波数依存性インピーダンスとほぼ一致するコンデンサ(ランドール回路(Randall circuit))で構成されている。
インピーダンスの大きさは、以下の式により求められる。
インピーダンスは、実数成分及び虚数成分を有する複素数量である。インピーダンスは、下記式を使用して、これら成分に分解することができる。
式中、
及び∠Z(=−θ)は、それぞれインピーダンスの大きさ及び位相である。これにより、i、v、θ、及び虚数単位ベクトルj、但しj=−1等の測定可能なパラメータで表されるインピーダンスが求められる。
アドミタンスYは、インピーダンスZの逆数から求められる。この場合、アドミタンスYは、下記式によりコンダクタンス(G)及びキャパシタンス(C)で表される。
ここで、アドミタンスYは、それぞれ電荷を貯蔵及び伝導する能力を記述する、キャパシタンスエレメントCと並列のコンダクタンスエレメントGで表される。言い換えれば、Gは、システムが電荷(つまり、イオン)を伝導する能力を定量化し、Cは、電荷を貯蔵するシステムの容量を測定する。キャパシタンスと並列のこの単一のコンダクタンスは、マクスウェル−ワーグナーエレメントとして知られており、この場合、インピーダンス測定は、以下の測定を提供する。
式中、ω(2πf)は、角周波数である。周波数によるG及びCの分散の変動を使用して、システムに存在する異なる時定数を有する回路エレメント又は層の数を決定することができる。膜の状況では、そのようなエレメントは、システム内の層及び拡散分極層又はプロセスから生じる。これは、膜を汚損する可能性があり得る微粒子の蓄積をリアルタイムで原位置にてモニタリングする手段を提供する。式(3)を書き直すと、以下の式が得られる。
式(5)は、以下のように表すこともできる。
Zは複素数変数であるため、Z=ZRe+jZImであり、式中、ZReはZの実数部分であり、ZImはZの虚数成分を指す。したがって、以下の通りである。
インピーダンスデータは、負の虚数−ZImが実数インピーダンスZReに対してプロットされているナイキストプロットとして、デカルト座標上のグラフで示すことができる。ナイキストプロットは、幾つかの重複する半円で構成されており、半円プロットは、単一のマクスウェル−ワーグナーエレメントにより生成される。各半円は、単一の時定数エレメント、例えば溶液、膜層、又は拡散分極プロセスに対応する場合がある。半円の数及び重複の度合いは、時定数が異なるエレメントの数、及びそれら時定数がどの程度互いに接近しているかにより決定される。ほとんどの場合、ナイキストプロットは、システムで生じる層並びにプロセスに関する直接的洞察を提供する。
膜の周波数依存性複素数インピーダンスは、膜の内部層及び外部層等の、システムにある種々の層/エレメントを表す、幾つかの直列の回路エレメントを使用してモデル化することができる。これは、いわゆるマクスウェル−ワーグナーモデルである。等価マクスウェル−ワーグナー回路モデルに関する詳細な説明は、文献に記載されている。そのようなフィッティング手順の正確性は、非常に高精度な位相角及びインピーダンスの大きさの測定、並びに高い再現性を必要とする。本研究で使用されるシステムは、周波数範囲全体にわたって、0.001度の位相角解像度及び0.002%のインピーダンスの大きさの精度を有していた。また、そのようなフィッティングは、EISデータの再現性に由来する実験誤差を考慮に入れなければならない。本明細書で示されているGDP値の結果は、統計的に有意なパラメータの値のみを出力するこれら技法を使用して得た。
データのそのようなナイキストプロット、及びデータにフィッティングされた理論的マクスウェル−ワーグナー(MW)モデルのプロットの一例は、図4に示されている。なお、示されているデータのエラーバーは、プロットで使用される記号のサイズより概して小さい。その後、そのような結果に対してモデル化されたマクスウェル−ワーグナーにより、DP層の導電性エレメントの値GDPが算出される。システムに関して得られたMWモデルの他のパラメータは、この文書に記載されている生物汚損研究にとって重要ではなかった。
ナイキストプロットは、マクスウェル−ワーグナーモデルにフィッティングすると、高周波数(溶液層)、中周波数(膜層)、及び低周波数(拡散分極層)の範囲に分けることができる。これらの各々は、全体としてのシステムの異なる層に対応する。拡散分極(DP)層に対応する低周波数エレメントは、汚損プロセスの全体にわたって最も特徴的な傾向を示したことが判明した。したがって、本明細書の残りの考察は、主に汚損中にDP層に生じた変化に基づくことになる。
簡潔に述べると、拡散分極層(GDP)のコンダクタンスは、非常に低い周波数のインピーダンスエレメントから導出される。DP層は膜−溶液界面に存在するため、このエレメントの電気的特性は、特に興味深い。この拡散分極(DP)層は、AC電流を使用したインピーダンス測定中に、膜−溶液界面でのイオンの交互蓄積及び枯渇により引き起こされる現象上の事象に由来する。この層は、主に低周波数で観察される。低周波数では、ACシグナルの半周期が長いため、膜表面付近のイオン濃度に著しい変化が生じる時間、及び溶液−膜界面のAC濃度プロファイルが著しく増大する時間が十分にある。
ROのような脱塩膜の場合、Na及びCl等のイオンは、図1に示されているように、圧力駆動性フラックスの結果としてろ過中にRO膜表面に蓄積する傾向がある。これが、いわゆる濃度分極効果である。本明細書で定義されているDP層は、圧力駆動性濃度分極層と同一ではないが、膜の供給液側及び透過液側の両方の膜表面付近の、Na及びCl等のイオンの濃度プロファイルの変化に非常に敏感である(図1)。
一連のマクスウェル−ワーグナーエレメントを使用してナイキストプロットをモデル化することにより、ZDPと表示されているDP層のインピーダンス、又はGDPと表示されているこの層の関連コンダクタンスの決定が可能になる。この交流DP層のインピーダンスを決定することにより、生物汚損プロセスの全体にわたって膜−溶液界面で生じる事象に関する洞察を提供するために、並びに限界フラックス未満、限界フラックス付近、及び限界フラックスを超えたところで生じる事象に関するより明瞭な理解を提供するために、膜−溶液界面での変化を調査することが可能になる。
実施例2:EISを選択する論理的根拠(実施形態1)
EISは、合成膜及び生物学的膜を含む種々のタイプの膜の特徴付けでの使用が成功している。膜の多孔度は、誘電率が既知である場合にEISから決定されるキャパシタンス、及び膜ポリマーの厚さから推定することができる。また、この技法は、膜プロセスでの汚損又は水垢を検出すること、又はリアルタイムで非侵襲的な様式で汚損又は水垢をモニタリングすることが可能である。
本発明者らの知る限りでは、限界フラックス又は閾値フラックスに関するほとんどの研究は、TMP及びフラックス等のパラメータ間の関係性の調査に着目している。限界フラックス条件付近にて膜表面の原位置で生じる現象を理解することに着目した研究はほとんどない。膜ろ過プロセスの原位置モニタリング技法は、膜汚損を支配する基本プロセスに関する本発明者らの理解促進に非常に重要である。現在まで、EISは、限界フラックスに直接関連付けされてもおらず、また限界フラックス未満での、限界フラックスでの、及び限界フラックスを超えたところでの膜表面の変化を検出するために使用されてもいない。本研究は、EISが、コロイドシリカ懸濁液の逆浸透プロセス中の限界フラックス現象を特徴付けることが可能であることを実証するものである。
簡潔に述べると、EIS測定から得ることができた重要なシグナルとしては、(1)ナイキストプロット及びその経時的なシフト、及び(2)拡散分極層のインピーダンスが挙げられる。
実施例3:設計上の考慮(実施形態1)
実施例3.1 ろ過実験
限界フラックス未満及び限界フラックス超で運転したクロスフローROプロセスのEIS挙動を解明するために、フラックスステップ法を採用した。フラックスステップ法は、膜へと向かう溶質の対流がろ過プロセスの経過中は一定であり、膜表面に堆積することになる材料の流動がより良好に制御されるため、限界フラックスの決定に好ましい方法である。
実施例3.2 EIS装置
EIS装置の中心部品は、1対の電流注入電極、電圧を測定するための1対の電極、EIS分光計、及び増幅器ユニットが取り付けられたクロスフローインピーダンスセルである。電流電極は、システム内に電流を注入するために使用され、電圧電極は、膜内外に発生する電位差を測定するために使用される。電流と電圧との位相差は、指定範囲の周波数にて分光計により測定し、専用ソフトウェアを用いて記録する。その後、測定したパラメータから、各周波数での試料のインピーダンス又は関連キャパシタンス及びコンダクタンス(実施例1に詳述されている)を算出する。増幅器ユニットは、幅広い範囲の周波数の測定正確性を最適化することができるように、基準回路を含む。このシステムでは、4端子法を使用する。4端子法では、インピーダンス測定に4つの電極を使用して、電圧電極−溶液界面の周波数依存性インピーダンスの複雑な効果が排除される。
実施例4:モデル汚損物質、バックグラウンド電解質、及び膜(実施形態1)
本研究では、モデル無機汚損物質としてコロイドシリカを使用した。コロイドシリカは、pH7.0の脱イオン水中34重量%懸濁液の形態で供給された。シリカ粒子の公称サイズは、製造業者により提供されたデータシートに基づくと、20nmであった。バックグラウンド電解質として塩化ナトリウムを使用した。Milli−Q水を使用して、シリカ及び塩化ナトリウム溶液を調製した。0.45μmフィルターを使用して塩化ナトリウム溶液をろ過し、使用前に不要な不純物を除去した。
1.06×1014−1の膜流体学的抵抗を有する市販のRO膜(DOW FilmTec社、TW30)を使用した。膜の脱塩率は、2000ppmのNaCl水溶液を用いて、25l/mhの定フラックスで測定して約97%であることが観察された。RO膜をエタノールで2時間湿潤し、よくすすいでから、使用前に少なくとも24時間Milli−Q水で保管した。
実施例5:RO−EISクロスフローセル及び電気インピーダンス分光計(実施形態1)
RO実験を、ステンレス鋼RO−EISクロスフローセルを使用して実施した。このセルは、図2に示されるように、4枚のステンレス鋼プレート、及び絶縁プレートとして作用する3つのプラスチックガスケットで構成されている。供給液側空隙及び透過液側空隙を形成する2枚の内側プレートは、電流電極として作用する。
2つの電気的に絶縁された電圧電極を、プレートの上部及び底部に配置し、電気的に絶縁されたフィードスルーを介して、供給溶液及び透過溶液を接触させた。セルの寸法は、302mm×60mm×0.95mmであり、0.01812mの有効膜面積を有していた。電気的な短絡を防止するためにプラスチックガスケットにより隔てられている2つの電流注入ステンレス鋼プレート間に膜を配置した。
セルを電気インピーダンス分光計に接続し、10−1から10Hzまでの周波数範囲で膜の電気的特性を定期的に測定した。分光計は、0.001°の位相解像度を有しており、したがって、アドミタンスが(高い)電気コンダクタンスにより圧倒される低周波数でさえ、キャパシタンスを測定することができる。1走査当たり3重複のインピーダンススペクトルを得た。周波数範囲(10−1〜10Hz)にわたる1走査当たりに必要な時間は、およそ30分間であった。
実施例6:ROセットアップ(実施形態1)
ROセットアップの模式図は、図3に示されている。高圧ポンプを使用して、溶液を10L供給液タンクからRO−EISクロスフローセルへと送達した。供給液タンクにオーバーヘッドスターラーを設置して、実験全体にわたって溶液を確実によく混合した。供給液タンクの温度は、冷却器からの冷却水で23±1℃に維持した。ろ過の経過にわたって不透過物及び透過液を供給液タンクに戻して再利用し、透過フラックスを質量流量コントローラにより制御した。
背圧調整器によりシステム圧力を制御し、圧力トランスデューサを使用して、供給液及び透過液の圧力をモニターした。2つの流量計で供給流の流れを測定し、導電率計を設置して、供給液及び透過液の導電率を測定した。圧力、フラックス、及び導電率の測定値を、データ収集システムを用いて記録した。
実施例7:膜圧縮(実施形態1)
汚損実験の前に、少なくとも48時間40l/mhのフラックスで膜を圧縮した。これは、膜特性に著しい変化がないことを保証するためであった。著しい変化があると、EISシグナルが影響を受ける可能性がある。供給液タンク中のNaCl溶液の終濃度は、汽水条件を模擬するために2000ppmに調整した。
実施例8:シリカ汚損(実施形態1)
実施例8.1 フラックスステップ法
シリカを供給液タンクに加える前に、システムを、所望の(最低)フラックス及びクロスフロー速度に調整した。システムを安定させた後、濃縮シリカを供給液タンクに加えて、200ppmの目標シリカ濃度を達成した。特定のフラックスでの汚損段階を2時間維持し、1時間及び2時間の間隔でEIS測定を行った。
その後、フラックスを一定の継続期間後に漸増的に増加させ、最も高い所望のフラックスに到達するまで、この繰り返しを継続した。本研究でのフラックス範囲は、説明のための例に過ぎず、この範囲に限定されると解釈されるべきでない。
実施例8.2 種々の負荷フラックスでのろ過
システムを所望のフラックス及びクロスフロー速度に調整してから、濃縮シリカを供給液タンクを加えて200ppmの目標濃度を達成した。汚損実験を少なくとも3時間実施し、EIS測定値を定期的に記録して、実験全体にわたって膜応答をモニターした。
実施例9:結果表示の論理的根拠(実施形態1)
ナイキストプロット(図4)は、EISデータを表示する最も有用な方法の1つであり、ナイキストプロットの各データポイントは、特定の周波数から得られている。ナイキストプロットは、負の虚数インピーダンス(−ZIm)を実数インピーダンス(ZRe)に対してプロットしたものであり、プロットの形状及びプロットのシフトは、汚損プロセスの開始並びに汚損物質のタイプに関するリアルタイム情報を提供する。
ナイキストプロットは、各々が、特定の電気時定数を有する単一エレメント、例えば、溶液、膜層、又は拡散分極プロセスに対応する、幾つかの重複する半円の組み合わせで構成される。実験データをマクスウェル−ワーグナーモデルにフィッティングすることにより、システムでの生じている種々のエレメント及びプロセスの存在が明らかになった。
実施例1で説明されているように、低周波数(約0.1〜10Hz)のエレメントはDP層に対応し、そのコンダクタンスGは、インピーダンスデータを多層マクスウェル−ワーグナーモデルに対して数学的にフィッティングすることによりを得たフィッティング値から導出した。フィッティングの詳細な手順は、他所に記載されている。例えば、参考文献2を参照されたい。更に、ろ過プロセス中の種々のナイキストプロットの移動の観察を容易にするために、特定の層のZRe及び−ZImを、その層又はプロセスの電気時定数に対応する特定の特性周波数における半円の半径及び頂端の位置から直接推定することもできる。
この文書の残りの考察は、ナイキストプロット及びパラメータGDPについてであり、これらは、運転条件が、限界フラックスに近づき、CEOPに結び付く固塊増強性濃度分極(CECP)効果が開始した際の、膜表面の界面層に関する洞察を提供する。
実施例10:フラックスステップ法による限界フラックスの決定(実施形態1)
限界フラックスは、通常、フラックスステップ法により決定される。これは、フラックス及び膜に向かう汚損物質の一定の流動をより容易に制御することができるため、圧力ステップ法よりも好ましい。
実施例10.1 フラックスステップ法を使用したTMP及びEIS測定
フラックスステップ法のTMP及び脱塩率のプロファイルは、図5(A)に示されている。TMP値は、ろ過の経過全体にわたって、15l/mhから25l/mhまで、ほとんど一定のままであった。傾きの変化が、約30l/mhで生じ、着実な汚損物質蓄積及び膜汚損の開始が示唆された。図5(B)に示されているように、限界フラックスJcritは、d/dT[TMP]傾きの交点から、約28l/mhであることが見出された。
図6には、フラックスステップ法でのシリカ汚損のナイキストプロットが示されている。ナイキストプロットは、フラックスが15l/mhから30l/mhまで上昇すると共に右側にシフトした。Jcritを超えてシステムを運転すると、ナイキストプロットの移動方向が変わり、左側にシフトした。左側にシフトしたナイキストプロットは、全体的なZの低下(したがってGの増加)によるものであった。
実施例1に詳述されているようにインピーダンスの理論的フィッティングから導出されたコンダクタンスGDPは、図7(A)に示されている。GDPの傾向は、限界フラックス現象に関する本発明者らの理解と一致している。GDPは、フラックスが15l/mhから30l/mhまで上昇すると共に低下した。これは、固塊形成によるものではなく、膜−溶液界面付近の懸濁液中の非導電性シリカ粒子の濃度が増加したことによると考えられた。これは、フラックスがJcritに向かって上昇すると共に、環境の導電性低下をもたらした。この分極層は、低フラックスではより低濃度であり、こうした条件下では溶質間相互作用に起因する圧密が生じる可能性がほとんどないため、分極層は、流動性懸濁液として存在する可能性がより高い。
フラックス調整により引き起こされる、透過液側のDP層のイオン濃度の変化も、GDP値に影響を及ぼす場合があることは注目に値する。フラックスの上昇が、限界フラックス領域未満であった場合、水フラックスがより高いため、透過液側の塩濃度が低下し、したがってGDPの低下がもたらされた。フラックスが限界点に上昇すると、供給液側の流動性懸濁液層は、最終的に膜表面の体積の最大粒子分率に達した。この条件では、流動性層の下に滞留固塊層が生じ始めるであろう。
図7(A)で観察されているように、フラックスが増加すると共にGDPが急激に増加したJcritでの明確な変曲点が存在した。これは、膜表面の分極層からより構造化した固塊層が形成される前兆である。GDPの急激な上昇は、CECP効果による膜−溶液界面での塩濃度上昇に起因する。したがって、固塊層が形成されると共に、NaClの逆拡散が妨害され、膜表面の塩濃度及び局所的浸透圧が上昇した。これは、CECP効果をもたらした。研究によると、より高いフラックスでは固塊層がより厚くなるため、より深刻なCECPが観察されることが判明した。
critを超えると、膜表面(供給液側及び透過液側の両方)付近の塩濃度が上昇し、GDP(図7(A))並びにシステムの全体的コンダクタンスが上昇した。これにより、ナイキストプロットが左側にシフトした(図6)。この観察は、限界フラックスに達すると脱塩率が低下することにより(図5(A))更に確認される。更に、Jcrit未満では、形成された分極層は、図7(A)に示されているように、経時的に著しく成長するようには見えなかった。しかしながら、Jcritを超えたところでは、固塊層がより厚く成長したため、膜表面の濃度が高くなると共にCECPが増加するであろう。これは、汚損が進行すると共にGDPがより高くなることにより反映されている(図7(A)の、フラックスを調整した1時間及び2時間後のデータ)。
この場合も、GDPに対するこの効果への透過液側からの寄与が存在した。したがって当初は、供給液側で蓄積が始まると、供給液側のGDPは、フラックスの増加と共に低下する。透過液側のGDPも、水フラックスが増加するため低下する。Jcritを超えると、供給液側で固塊が形成された。供給液側の塩濃度は、フラックスの増加と共に上昇する。塩濃度の上昇は、透過液中の塩の増加に結び付き、これは、透過液側のGDP上昇に関連していた。
また、インピーダンスデータを多層マクスウェル−ワーグナーモデルに対して数学的にモデル化することにより、膜の表層のコンダクタンス(Gskin)及び基層のコンダクタンス(Gbase)を推定した。図7(B)は、フラックスの増加に伴うGskinの変化を示している。Gskinの変化は、30l/mh付近でわずかな極小値を示したが、Jcrit付近でのGDPほど明確ではなかった。Gbaseは、図7(C)に示されているように、Jcrit未満及びJcrit付近の場合とそれほど違いはない。こうした結果により、拡散分極層が、汚損挙動を観察及び研究することができる主な層であったことが確認される。したがって、この層のインピーダンスを、膜−溶液界面での現象上の事象を研究するための最も重要なEISパラメータとして選択した。それは、この層のインピーダンスが、濃度プロファイルの変化に最も敏感な応答を示すからである。
図8には、(a)25l/mh、(b)35l/mhで2時間汚損した後の、及び(c)きれいな膜の膜表面のシリカ粒子の×20,000倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)画像が示されている。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s。図中のスケールバーは、1μmを示す。
実施例10.2:クロスフロー速度の効果
理論的に考えると、限界フラックスも、クロスフロー速度に依存することが予想された。これを、別の一連の実験で調査した。図9に示されているd/dT[TMP]データ対フラックスは、2つのクロスフロー速度(0.15m/s及び0.30m/s)でのJcritを示している。本研究では、クロスフロー速度を増加させると(0.15m/sから0.30m/sまで)、Jcritは、より高い約37l/mhのJcritを示した(30l/mhから上昇した)。
図10からは、GDPの転換点も、TMPから導出したJcritに比較的近い約40l/mhというより高いフラックスにシフトしたことを観察することができる。これは、クロスフローの増加が、より大きな剪断率をもたらし、膜−溶液界面からの粒子の逆輸送の増加を引き起こし、Jcrit未満でのシリカの層がより薄くなったと考えると説明がつく。約40l/mhの限界フラックスを超えると、以前のように、表面で固塊が形成し始め、CECP及びGDPの上昇に結び付くであろう。
図11は、(a)25l/mhのフラックスでの長期汚損実験の、フィッティングしたシリカ汚損モデルから得られた、時間の関数としての膜のGDP;(b)35l/mhのフラックスでの長期実験の、フィッティングしたシリカ汚損モデルから得られた、時間の関数としての膜のGDP;(c)長期汚損実験での25l/mh及び35l/mhの負荷フラックスでのTMPが示されている。条件:RO供給液=200ppmのシリカ及び2000ppmのNaCl;クロスフロー速度=0.15m/s。
市販のROシステム及び側流(カナリア)セルには、スペーサー充填チャネルを使用する。限界フラックスの場合、幾つかの研究により、スペーサー充填チャネルでは、Jcritが増強される場合があることが示されている。これは、供給チャネルに菱形スペーサーを介在させることにより実施した。
スペーサー充填チャネルのd/dt[TMP]は、図12に示されており、推定限界フラックスJcritは、0.15m/sのクロスフロー速度で約33l/mhであった。スペーサーは、Jcritを約18%増強した。また、GDPプロットの転換点は、図13に示されているように、より高いフラックス側にシフトし、Jcritは、EISで決定したところ約38l/mhであった。この値は、より高かったが、d/dt[TMP]分析により得た値と比較的近かった。図7(a)により示唆されるように、フラックスステップ期間がより長期間であったため、2つの方法の結果がより近いものとなったと考えられる。
理論により束縛されることは望まないが、スペーサーが存在することにより、取り付けたフィラメントの上又は下を流動が流れる際に複雑な混合挙動が導入され、粒子堆積が斑状及び不均一となり、本研究では、Jcritの値がより高くなったと考えられる。スペーサーの存在に依存するJcritをEISで決定することができるという事実は、EISを組み込んだ側流「カナリアセル」をプラント性能を特徴付けるために使用することを更に支援した。プラントを模擬するために、カナリアセルは、フローチャネルにスペーサーを必要とし、非侵襲性の検出方法は、「膜平均」シグナルを提供する必要があり、EISは、この情報を提供する。
実施例11:EISを使用してROの限界フラックスを決定するためのステップ(実施形態1)
図15は、フラックスステップ法を使用して得たROシステムの限界フラックスを、EISを使用して得たROシステムの限界フラックスと比較するためのフローチャートである。電気インピーダンススペクトロスコピーを使用して逆浸透膜の限界フラックスを決定するための基本的な方法論は、以下の通りである。
1.EISを装備したROセル(図2)をROシステムに取り付けるか、又は水処理プラントでのROトレインの側流に接続する。
2.セルを、EIS分光計及び増幅器ユニットに接続する(図15)。
3.最も低いフラックスでろ過を開始する。
4.EIS分光計により提供されている制御ソフトウェアを使用して、EIS測定を開始する。
a.測定を開始したら、既知周波数ω及び振幅iの小正弦ACを、指定範囲の周波数(10−1Hz〜10Hz)の全体にわたって、電流電極からROセルに注入した。
b.電圧振幅v0、及び電圧と電流との位相差θを、上記周波数の全体にわたって測定した。
5.各周波数のコンダクタンス及びキャパシタンスを、以下の式により決定した。
したがって、周波数依存性複素数インピーダンスを決定することができる。
6.10−1Hz〜10Hzの周波数範囲における、こうした周波数依存性複素数インピーダンスは、膜の内部層及び外部層である直列の幾つかの回路エレメントを使用してモデル化することができる。これは、いわゆるマクスウェル−ワーグナーモデルであり、数学的フィッティング手順を用いて実施することができる。フィッティングすると、システムに存在するエレメントの数が、このモデルにより明らかにされることになる。目的のエレメントは、非常に低い周波数(10Hz未満)である。この層は、拡散分極層(DP)として知られている。したがって、DP層のインピーダンス及びしたがってコンダクタンス(GDP)は、フィッティングしたモデルから抽出される。
7.様々なフラックスについて同じ測定及びデータ分析を実施する。
8.GDPを種々のフラックスに対してプロットする。
9.最小GDPが観察される限界フラックスを特定する。
要約すると、EISを使用して、限界フラックス領域未満で、限界フラックス領域を超えて、及び限界フラックス領域付近でシステムを運転した場合に膜−溶液界面で生じる現象上の事象を検出した。一般的に、EISデータから導出したGDPの傾向は、様々な負荷フラックスでのろ過及びフラックスステップ法によるろ過の両方の場合で、TMP測定を良好に裏付けた。GDPは、シリカ濃度分極により、フラックスの増加と共に低下した。フラックスが限界フラックスに向かって上昇すると共に、GDPは、この層及び膜−溶液界面での滞留/固塊層の形成及び塩の蓄積のため上昇し、CECP効果及びしたがってGDPの上昇に結び付くことが見出された。この仮説は、フラックスステップ実験では、より高い濃度の塩を含んでいたより厚い滞留層が形成されたため、より長期の汚損時間でより高いGDPが得られたことにより更に確認された。
限界フラックスは、クロスフロー速度の増加と共に増加した。GDPの変曲点は、より高いフラックス側にシフトし、より高いフラックスで固塊層が形成されたことが示された。これは、粒子を膜表面上に沿って引きずる傾向がある剪断力に起因する。加えて、スペーサーを使用したことによりJcritが増強され、EIS測定から得られたGDPプロットの転換点がより高くなったことが観察された。
本研究は、EISが、限界フラックス領域未満で、限界フラックス領域付近で、及び限界フラックス領域を超えた場合に膜−溶液界面で起こる現象上の事象の原理を提供することができることを示している。固塊形成及びCECP効果の開始は、EIS測定により検出することができるが、TMPデータは、こうした事象に関する情報を提供しない。したがって、EISは、側流カナリアセルに組み込んで、高圧膜システムの汚損及び固塊形成をモニタリングするための非常に有望なツールである。
実施例12:EIS汚損モニター(実施形態2)
EIS汚損モニターの詳細な説明は、上記に記載されている。簡潔に述べると、システムは、1対の電流注入プレート及び1対の電圧電極が取り付けられているステンレス鋼クロスフローRO−EISセル、高解像度4端子EIS分光計、及び増幅器ユニットで構成される。RO−EISセルの寸法は、302mm×60mm×0.95mmであり、有効膜面積は、0.01812mである。
RO膜を、電気的な短絡を防止するためにプラスチックガスケットにより隔てられている2つの電流注入ステンレス鋼プレートの間に挟み込んだ。電流電極及び電圧電極は両方とも、ステンレス鋼製である。EIS測定中に、小さなACをシステムに注入し、電流と電圧との位相差、並びに電圧及び電流の振幅を、電気インピーダンス分光計を使用して測定した。システムの電気的特性を、10−1Hzから10Hzまで測定した。各走査毎に、3つの重複インピーダンス電気インピーダンススペクトルを得た。1走査当たりに必要な時間は、およそ30分間であった。
このシステムでは、4つの電極を使用して周波数依存性インピーダンスを測定する4端子法を使用するため、電圧電極−溶液界面での周波数依存性インピーダンスの複雑な効果が排除される。
実施例13:細菌ストック調製(実施形態2)
シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)PA01(ATCC、BAA−47)を、本研究のモデル細菌として使用した。凍結グリセロールストックから新たに培養した寒天プレートの単一コロニーを、栄養ブロス(NB)(Difco NB、BD diagnostics社)寒天プレートで継代培養した(NB、8g L−1、14g L−1の寒天で補完、Difco社製寒天、BD diagnostics社)。細菌ストック溶液は、培養を栄養ブロス(NB)(5g L−1のNB、2g L−1のNaCl)中、室温にて24時間150rpmで振とうすることにより調製した。その後、細菌細胞を、4℃にて30分間4000×gで遠心分離することにより回収した。その後、ペレットをNaCl溶液(2g L−1、実験条件と同じ濃度)で洗浄し、0.1の光学濃度(OD600)を達成するように懸濁した。
死細菌のストック溶液は、上記の手順を行った後、80℃で2時間加熱して、細菌を確実に死滅させることにより調製した。死細菌ストックの生細菌計数を実施したところ、37℃で36時間インキュベートしても、プレートにコロニーが形成されないことが判明した。
実施例14:RO生物汚損セットアップ(実施形態2)
ROセットアップの模式図は、図16に示されている。セットアップの改変は、バイパス流及び濃縮液流に注入ポンプ及びマイクロフィルターを設置することを含む。
高圧ポンプを使用して、供給溶液を10L供給液タンクからRO−EISクロスフローセルへと送液した。供給液タンク中の溶液を確実によく混合することができるように、オーバーヘッドスターラーを供給液タンクに設置した。供給液タンクの温度を、冷却器からの冷却水で23±1℃に維持した。システム圧力を、背圧調整器により制御し、圧力トランスデューサを使用して透過液及び供給液の圧力をモニターした。質量流量コントローラを透過液ラインに設置して、実験全体にわたって一定のフラックスを維持した。2つのロタメータを供給流に設置して、RO−EISセルの流量を表示した。
2つの導電率計を使用して、供給液及び透過液の導電率を測定した。圧力、透過フラックス、並びに供給液及び透過液の導電率を含む測定値は全て、データ収集システムにより記録した。生物汚損の研究中、細菌ストック溶液を、注入ポンプを使用して、RO−EISセル上流でシステムに注入した。
バイパス流、濃縮液流、及び透過液流が供給液タンクに戻される完全再循環モードでシステムを運転した。1組のマイクロフィルターを、供給液タンク上流のバイパス流及び濃縮液流(濃縮液は5μm及び0.2μm、バイパスは0.2μm)に設置して、供給液タンクが「活性バイオリアクター」になってしまうことを防止した。
実施例15:生物汚損の実験プロトコール(実施形態2)
各実験の前に、ROフラットシート膜(DOW FilmTec社、TW30)を切断し、無水エタノールで2時間滅菌した。その後、膜をよくすすぎ、使用前に少なくとも24時間Milli−Q水(Millipore社)で保管した。
実験手順は以下を含んでいていた:(i)バックグラウンドNaCl(2000ppm)を用いて50L m−2−1で一晩膜を圧縮すること、(ii)NBを添加すること(24mg L−1の終濃度を得るように)、(iii)細菌ストック溶液を連続的に注入すること、(iv)RO膜の生物汚損を行うこと、及び(v)実験終了時にROセットアップを洗浄すること。正規化GDPプロットの初期増加の標準偏差を使用して生物汚損実験の再現性を算出した。再現性は、±10%と推定された。
RO膜を、生物汚損実験前に24時間にわたって50L m−2−1のフラックスで圧縮した。これは、膜特性に著しい変化がないことを保証するためであった。そのような変化が少しでもあると、EISにより検出されるからである。
圧縮した後、フラックスを所望の値に調整し、新たに調製したNaCl溶液を供給液タンクに添加した。その後、システムを1時間安定化させた。NBを供給液タンクに添加して、24mg L−1又は7.8mg L−1の全有機炭素(TOC)を達成し、システムを、更に1時間安定化させた。
安定化させた後、生物汚損実験を開始し、ROクロスフロー速度に基づき1:1000の希釈率で、細菌ストック溶液を供給ラインに連続的に注入した。これは、システム内に10cfu mL−1の細菌を負荷することと等しかった。細菌ストック溶液は、48時間毎に交換した。生物膜を、1〜5日間の期間にわたって成長させた。実験は、一定フラックスモードで実施し(8L m−2−1から40L m−2−1までの範囲)、TMPの増加をモニターした。EIS測定を2.5時間毎に実施した(周波数範囲:10−1Hz〜10Hzにわたって)。供給液タンク中の溶液は、供給液の鮮度レベルを維持するために、同じ濃度のNaCl及びNBと1日2回交換した。
各実験の終了時に、ROシステムを、HNO溶液で洗浄し(pH2、1.5時間)、引き続きNaOHで洗浄し(pH11、1.5時間)、その後Milli−Q水でよくすすいだ。
実施例16:塩パルストレーサー試験(実施形態2)
塩化ナトリウム溶液200g L−1を、注入ポンプを使用して、RO−EISクロスフローの高圧供給ラインに注入した。高濃度塩溶液の流速を0.6mL分−1に維持し、各パルス長を10分間継続させた。トレーサー試験中は、濃縮液及び透過液を排出し、試験の前には供給溶液を20Lまで追加した。塩パルストレーサー試験の詳細な手順は、他所に記載されている(例えば、参考文献1を参照)。
実施例17:膜分解検査(実施形態2)
実験が終了したら、分解研究用に、RO−EISセルから汚損膜を取り外した。まず、膜を4つの区域に切断した。RO−EISセルの入口、中間部分、及び出口をカバーする3つの区域(3cm×4cm)を、生細菌数の計数、並びにEPSを構成するタンパク質及びポリサッカライドの定量化に使用した。示されている結果は、3つの試料の平均値に基づいている。他の区域(1cm×3cm)は、共焦点レーザ走査顕微鏡法(CLSM)観察用に、膜の中間部分から切断した。
切断した膜区域(3cm×4cm)を、別々の遠心分離チューブの25mL NaCl(2000ppm、実験条件と同じ)に浸漬した。プローブソニケータを使用してチューブを3分間超音波処理して、膜表面から生物膜を分離した。その後、チューブを10秒間ボルテックスし、10μLの溶液をチューブから取り出して生細菌数を計数した。1.0MのNaOH溶液をチューブの残りの溶液に添加し、混合し、4℃で24時間保管した後、EPS分析を実施した。
実施例17.1 EPS抽出
EPSのポリサッカライド含有量を比色法で測定した。1mLの5%(v/v)フェノール溶液及び5mlの濃HSOを、2mLの試料溶液に添加した。この溶液を混合し、15分間静置して室温に冷却してから、UV分光計を使用して、490nmでのUV吸光度(A490)を測定した。ポリサッカライド標準物質としてグルコースを使用して較正を行った。
EPSのタンパク質含有量は、ビシンコニン酸(BCA)アッセイキット(Pierce社、#23227)を使用して定量化した。2mLの作業溶液を1mLの試料溶液と混合し、室温暗所で2時間インキュベートした。その後、UV吸光度を562nmで測定した(A562)。ウシ血清アルブミンを使用して、標準検量線を生成した。
実施例17.2 生細菌計数
改良Miles及びMisra法を使用して生細菌計数を実施した。簡潔に述べると、10μLの10−1〜10−5稀釈液を、NB寒天プレートにピペットした。プレートを37℃で24時間インキュベートしてから、コロニーを計数した。生細胞数を、膜1cm当たりのコロニー形成単位(cfu)として表した。
実施例17.3 共焦点レーザ走査顕微鏡法(CLSM)
CLSM分析に使用した膜試料は、全ての実験で同じ部位から得たものであった。生物膜を、LIVE/DEAD BacLight細菌生存能キット(Molecular Probes社、L7012)を用いて、製造業者の仕様書に従って染色した。
簡潔に述べると、製造業者により供給された試薬を0.85%NaCl緩衝液中で使用して、染色用の作業溶液を得た。その後、膜試料を、室温暗所で45分間作業溶液に浸漬した。インキュベーション後、膜試料を、緩衝液で3回すすいでから、カバーガラス下のスライドガラスに配置した。CLSM(Zeiss社、LSM710型)を使用して顕微鏡観察及び画像取得を行った。IMARISソフトウェア(Bitplane社、バージョン7.1.3)を使用して生物体積を算出した。
実施例18:結果提示の論理的根拠(実施形態2)
実施例18.1 正規化GDP(GDP/GDP−0
EIS測定から得られた実験データを、マクスウェル−ワーグナーモデルにフィッティングした。これにより、システムで生じているエレメント及び/又はプロセスの数が明らかにされる。DP層に対応する低周波数(約0.01Hz〜10Hz)でのエレメントは、実施例1に詳述されているようにフィッティングから導出することができる。
DPは、膜表面の界面層の状態を明らかにするため、膜汚損と関連する主要EISパラメータであると特定した。各膜はGDPの初期値が異なる可能性があり得るため、ここに示されているGDP結果は、実験開始時(時間=0)のGDP値(GDP−0と記載する)で正規化されていたことに留意されたい。
実施例19:TMP及びEISの測定(実施形態2)
図17には、細菌をシステムに連続注入した際の、正規化TMPプロファイルが示されている。観察されたTMPプロファイルには2つの段階がある。第1段階では、0日目から1.7日目までわずかな変化しか見られない。本研究では、約1.8日でTMPの急上昇が観察され、正規化TMPは、5日目まで急速に増加した(47%)。
図18には、5日間の長期生物汚損実験のEIS測定から得られた正規化GDPが表示されている。正規化GDPは、1日目から1.5日目まで初期増加を示し、1.5日目に極大点を観察することができた。1.5日目以降、プロットは逆の傾向を示し、正規化GDPは、生物汚損の残り経過にわたって減少した。
EIS測定で得られた傾向を確認するために、異なる期間の生物汚損を実施して、EIS走査を原位置でリアルタイムに記録した。図19には、3日間の生物汚損の、時間の関数としての正規化GDPが示されている。5日間の生物汚損で得られた結果と同様に、1日間の生物汚損実験での正規化GDPは、1.5日付近に極大点があり、その後は徐々に減少した。正規化GDP(図20)はわずかな増加を示し、これは、5日間及び3日間の生物汚損実験で示された結果と一致している。
細菌ではなく、培地中の成分の濃度分極が、得られた結果の原因であったか否かを調査するために、細菌注入のない培地のみを使用して実験を実施した。
栄養素汚損(無細菌)の正規化GDPは、5日間の運転で増加傾向を示している(図21)。生物汚損の正規化GDPプロットとは対照的に、この場合では、極大点は観察されなかった。細菌が存在しない場合、正規化GDPの増加傾向は、栄養素の漸進的な蓄積及び濃度分極(CP)によるものである可能性が高い。バックグラウンド塩分の増強濃度分極CPも寄与したであろう。
また、濃度分極の役割を検証するため、塩パルストレーサー試験を実施して、濃度分極(CP)が生じたか否かを調査した。図22に示されている結果は、栄養素汚損の経過中にCPが増加したことを示しており、このタイプの汚損には濃度分極効果が存在することが確認された。このようなCPは、観察されたような正規化GDPの増加にも結び付くであろう(図21)。
実施例20:死細菌による汚損(実施形態2)
正規化GDP傾向の極大値が、膜表面における生細菌の存在及びコロニー化と関連しているか否かを調査するために、本発明者らは、死細菌を汚損実験に使用した実験を実施した。
図23には、死細菌による汚損の、時間の関数としての正規化GDPプロットが示されている。栄養培地のみで汚損した場合と同様に(図22)、死細菌を使用して汚損した場合の正規化GDPは、汚損が進行すると共に単調に増加し、極大値を確認することができなかった。
生細菌を使用した際に、EPSがGDP傾向と関連していたか否かを調査するために、正規化GDPに対するEPS様物質の効果を、死細菌と2つの異なる濃度のアルギン酸塩との混合物を使用して研究した。使用したアルギン酸塩の濃度は、1日間及び5日間の生物汚損に対応する全有機炭素TOC値と一致させた。
アルギン酸塩濃度(100ppm)が、5日後の生物膜で生成されるEPSと同様に高くなると、正規化GDPは減少した(図24(A))。しかしながら、アルギン酸塩濃度(16ppm)が低く、1日後の生物膜のTOCと同じ程度だと、正規化GDPは、死細菌のみでの汚損傾向と同様に、わずかに増加した(図24(B))。したがって、得られた結果は、生細菌での汚損により経時的に観察される極大値は、アルギン酸塩の蓄積が含まれている場合、死細菌での汚損により模擬することができることを示している。
実施例21:膜表面の生物膜の特徴付け(実施形態2)
1、3、及び5日間の生物汚損実験の終了時に、膜表面の画像を取得した。CLSM画像から、個々の浮遊細胞(図20の挿入図)から、わずかに分散した生物膜(図19の挿入図)へと、次いで5日目にはより完全な分布(図18の挿入図)へと、生物膜が発達したことが分かる。EPSの主成分を構成するタンパク質及びポリサッカライドの濃度は、抽出法を使用して決定した。結果は、図25(A)に示されている。総EPSは、1日目から3日目まで13%増加したが、3日目から5日目までは46%増加を示した。これは、5日目のEPS量が、生物汚損プロセスの初期段階と比較して著しく高かったことを明白に示している。
生細胞及び死細胞の生物体積を決定した。3日目の生細胞生物体積は、1日目と比較して4倍を超えていた(図25(B))。しかしながら、5日目の死細胞の量は、1日目で観察された量の2倍であった。生物体積の増加は、2.08×10(1日目)から2.78×10(3日目)へと、その後6.25×10cfu cm−2(5日目)へと増加した生細菌計数によっても検証された(図25(C))。
実施例22:アジ化ナトリウムの効果(実施形態2)
生物膜成長が妨害された際のEISスペクトルを評価するために、実験中にNaNを投与して生物汚損研究を実施した。図26(A)には、ピークの極大値が通常観察される1.5日目にNaNをシステムへ投入した場合の正規化GDPが示されている。図18及び図19に示されている正規化GDPプロットとは対照的に、NaNを導入した際に初期値へと低下した正規化GDPは、その後、システムを連続運転させると増加した。
アジ化ナトリウムの効果を更に検討するために、2サイクルの投入を実施し、静菌剤の導入後に細菌を供給した別の実験を行った。この場合(図26(B))、より低い濃度(0.03重量%)での第1の投入では、正規化GDPはほとんど変化を示さなかった。しかしながら、より高い濃度のNaN(0.05重量%)による第2の投入では、正規化GDPは、第1の投入と比較して大幅な低下を示した。興味深いことには、2サイクルのNaN投入後、細菌をシステムに連続注入した場合、妨害後の正規化GDPの傾向は、NaNを投入しない場合の生物汚損の正規化GDPの傾向(図18)と類似していた。
実施例23:フラックスの効果(実施形態2)
生物膜成長率は、負荷フラックスと共に増加することが報告されているため、正規化GDPの初期増加を異なるフラックスで比較することは興味深かった(図27(A)〜(E))。
正規化GDPの傾きは、8L m−2−1(図27(A))及び15L m−2−1(図27(B))の運転フラックスの場合と類似していたが、フラックスを15L m−2−1から20L m−2−1へと増加させた場合、3倍に増加した(図27(C))。20L m−2−1及び30L m−2−1の場合の傾きの増加((図27(D))は、フラックスを30L m−2−1から40L m−2−1へと増加させた場合の著しい増加(約1.4倍)と比較して(図27(E))、より小さかった。留意すべきことには、8L m−2−1及び15L m−2−1では、正規化GDPプロファイルは、より高いフラックスでの挙動(図18及び図19)とは異なり、それぞれ5日間又は3日間中には極大値を示さなかった。
正規化GDPの初期増加の大きさは、それ未満では成熟生物膜が形成しにくいフラックスを示すものである可能性がある。もしそうであるならば、プロセスは、こうしたより低いフラックスでは、より持続可能であり得る。
実施例24:生物膜形成の機序(実施形態2)
こうした研究は、EISが、RO膜表面への成熟生物膜の形成を検出することができ、その発生に関する洞察を提供することができることを明白に示している。正規化GDPプロット(図18及び図19)は、1.5日付近で極大点を示し、それは、TMP/TMPの急激な上昇と良好に相関している(図17)。そのようなTMP急騰は他の研究でも観察された。
図18及び図19の正規化GDP傾向は、以下のように説明することができる。細菌細胞及びそれらの呼吸産物は非常に導電性であるため、膜表面への生細菌の蓄積は、正規化GDPの初期増加に結び付いた。また、正規化GDPは、濃度分極による物質の蓄積により増強される。また、この期間は、微小コロニーを形成する前に、細菌が膜表面に付着し始める、生物膜発生の誘導期と一致する。これは、生物膜が膜表面でまだ生じていなかった1日間の生物汚損実験で得られた共焦点画像と一致していた(図20の挿入図)。
より長期の生物汚損実験では、正規化GDPは、極大点に到達すると、EPSの著しい形成のため低下し始めた。細菌が膜表面に付着すると、細胞は成長及び増殖し始めた。この段階中、EPSは、連続的に生成され、より高い構造的完全性を有する生物膜がもたらされた。これは、5日間の生物汚損の共焦点画像で明らかであった(図18の挿入図)。
より堅固なEPSマトリックスが蓄積することにより、濃度分極効果にも関わらず、汚損層の導電率が低減され、約1.5日後により低い正規化GDPがもたらされた。より長期の生物汚損期間でのEPS含有物(タンパク質及びポリサッカライド)の増加は、抽出法及び生細菌細胞計数により確認した。しかしながら、3日から5日までの死細胞生物体積の増加がわずかであったことは(図25(B))、マトリックス内へのEPS堆積が、死細胞の蓄積自体よりも、EISに対してより大きな影響を及ぼすことを示唆する。
EISシグナル応答から推定される提唱機序を検証にするために、幾つかの対照研究を実施した。つまり、(1)栄養素汚損、(2)死細菌汚損、及び(3)アルギン酸塩及び死細菌の混合物による汚損。
栄養ブロス(NB)もシステムに添加したため、EISシグナル応答に対するその効果を細菌の非存在下で調査することが適切であった。正規化GDP(図21)は、栄養ブロス(NB)物質が膜表面に蓄積すると共に、ろ過の経過の全体にわたって、CP効果により増加することが見出された。また、正規化GDPの増加は、増強性塩分極によるものであろう。CP効果(図22)は、塩パルストレーサー試験により確認された。塩パルストレーサー試験は、栄養素汚損中にCP効果が存在することを明白に示した。
80℃の水浴で加熱した細菌ストック溶液を、EISシグナルに対するその効果を解明するための研究に使用した。死細菌を注入しても、正規化GDPプロットに極大点は観察されなかった(図23)。生細菌の場合、NB、バックグラウンド塩分、及び細菌細胞の細胞内容物はいずれも、上記で説明したような初期コンダクタンス増加に寄与し、したがって、正規化GDPを増加させることができた。
また、EPSの代用物である、死細菌と混合したアルギン酸塩を、本研究で使用して、正規化GDPプロファイルの減少傾向が、EPSの蓄積に起因し得ることを更に検証した。死細菌及びアルギン酸塩とのその混合物のd/dt[GDP−正規化]の変化は、表1に要約されている。
5日間の生物汚損実験での全有機炭素(TOC)と等しいアルギン酸塩濃度での正規化GDPの減少(図24(A))は、EPS蓄積の効果の方が、死細胞の蓄積よりも重要であったという見解を支持する。しかしながら、より低い濃度のアルギン酸塩(1日後の生物膜と等しいTOC)を死細菌と共に使用した場合、膜表面への細菌細胞の蓄積は、正規化GDPのわずかな増加を引き起こした(図24(B))。
実施例25:生物膜成長に対するアジ化ナトリウムの効果(実施形態2)
アジ化ナトリウムは、細菌の触媒活性及び増殖を阻害することが知られている。本研究では、P.エルギノーサ生物膜を成長させ、1.5日目にアジ化ナトリウムをシステムに投入した。その効果は、正規化GDPプロットから明白に観察することができた。アジ化ナトリウムをシステムに投入すると、1)P.エルギノーサの増殖が阻害され、呼吸産物の産生低減に結び付き、2)幾つかの細菌の膜表面からの剥離が引き起こされ、注入後の正規化GDPの低下がもたらされると考えられた(図26(a))。(アジ化ナトリウム投入後に)システムを稼動させ続けると、細菌を新たに供給しない場合でも、正規化GDPは、5日間の生物汚損実験の傾向に従った。これは、その後膜表面に付着した残留細胞が増殖及び成長を継続して、最終的に生物膜物質のマトリックスを形成したことを示唆している。
より低い濃度のアジ化ナトリウムを使用した場合(図26(B))、アジ化ナトリウム投入直後の正規化GDPは、ほとんど変化せずそのままであった。その後、正規化GDPは、新たな細菌細胞供給の蓄積により再び増加した。しかしながら、より高い濃度のアジ化ナトリウムで第2の投入を行うと、正規化GDPは、図26(A)の場合と同様に、より低い値へと低下した。新たに調製した細菌溶液をシステムへ再導入すると、正規化GDPプロファイルは、NaNを投入しなかった5日間の生物汚損と同様の傾向を示した。したがって、正規化GDPの極大点を、正規化GDPがEPSの蓄積により減少する生物汚損の約1日後に観察することができた。この結果は、EISを使用して、水処理プラントでの生物汚損の制御戦略の洗浄効率又は有効性を評価することができたことを示している。
実施例26:EISパラメータから導出した持続可能フラックス(実施形態2)
正規化GDPの初期増加は、細菌細胞及びそれらの呼吸産物の堆積に起因するという仮説を立てたため、フラックスの初期増加率を調査することは有益であった。正規化GDPプロットの傾きは、フラックスと共に増加した。これは、生物膜の成長率もフラックスに応じて変化することを示唆している。これは、「汚損が最小限に抑えられ、頻繁な洗浄が回避されるフラックス」と言われる持続可能なフラックスの推定を可能にする。これにより、運転を調整して、汚損を最小限に抑えるより経済的で持続可能な性能をもたらす機会を提供することができた。持続可能なフラックスを推定するためのこのタイプのモニタリングツールは、廃水産業にとって有用であり、運転開始段階でのプラントプロセスを最適化することができる。
本明細書で示されているように、EISの非侵襲性リアルタイムモニタリングツールを使用すると、生物汚損を検出することができ、また、その発生機序を解明することができる。正規化GDPの時間プロファイルには2つの異なる段階があり、第1段階である初期増加は、膜表面への生細菌の蓄積及び呼吸産物の産生と関連していた。第2段階は、EPS及び生物膜マトリックスの形成に対応していた。
洗浄作業中に静菌剤(アジ化ナトリウム)を導入すると、細菌の増殖が遅延され、最終的に細菌の膜からの剥離に結び付くことになる。したがって、EIS変化の観察は、生物汚損の制御手段の洗浄効率及び有効性を評価するEISの能力が確立されたため、プラント操作者を支援することができる可能性がある。
また、正規化GDPプロットの初期増加は、汚損を最小限に抑えてより経済的に効率的な様式でろ過を実施することができる持続可能なフラックスの徴候を提供し得る。
EISをTMP及びCLSM分解検査と組み合わせると、膜表面での生物膜形成の機序に対する重要な洞察が提供されるが、TMP又はCLSMの測定だけでは、このプロセスに関する直接情報は得られない。したがって、EISは、高圧膜システムの側流「カナリアセル」内に原位置で組み込んで、生物汚損状態又は洗浄効率をリアルタイムで非侵襲的にオンラインで評価するための有望なツールである。
実施例27:生物汚損モニタリング及び検出の方法論(実施形態3)
好適な電極を、以下のもの等の膜モジュールに取り付ける:電気インピーダンス分光計システムに接続されている「カナリア」として作用するための、(1)フラットシートモジュール、(2)螺旋状巻回、及び(3)螺旋状に巻回されたモジュールと並列に接続されている小型フラットシートクロスフローモジュール。螺旋状に巻回されたモジュールと並列に接続されているクロスフローカナリアセルは、ROプラントの汚損挙動を模倣することが目的である。
10−1Hzから10Hzまでの広範な周波数にわたって、定期的にインピーダンス測定を行った。その後、インピーダンス測定結果を分析して、拡散分極層のコンダクタンス(GDP)を得た。GDPの詳細な説明は、下記に記載されている。その後、GDPを、生物汚損の時点0でのGDP(GDP−0)で正規化して、正規化GDPを得た。
インピーダンスを測定した後、負の虚数インピーダンス(−Z1m)を実数インピーダンス(ZRe)に対してプロットしたナイキストプロットを、図28に示されているように生成した。これは、各々が、単一の時定数エレメント、例えば、溶液、膜層、又は拡散分極プロセスに対応する、幾つかの重複する半円の組み合わせで構成されていた。ほとんどの場合、ナイキストプロットは、システムで生じている層及びプロセスに関する直接的洞察を提供した。
様々な電気定数を有する膜システムの幾つかの層で構成されるモデルシステムに、実験のナイキストプロットをフィッティングすることができる。こうした電気定数は、層又はイオン性電気拡散プロセスの誘電パラメータにより決定した。生物汚損がどこに生じていたかを決定するため、及び膜−溶液界面で生じている現象を理解するために、低周波数(約0.01〜10Hz)でのエレメントに対応する、拡散分極層のフィッティングしたコンダクタンス値(GDP)を推定した。
拡散分極(DP)は、AC電流を使用したインピーダンスの測定中に、膜−溶液界面でのイオンの交互蓄積及び枯渇により引き起こされる現象上の事象に由来していた。この層は、ACシグナルの半周期が長く、したがって溶液−膜界面のAC濃度プロファイルが著しく蓄積するための十分な時間があった低周波数で主に観察された。RO等の脱塩膜の場合、Na及びClのようなイオンは、図1に示されているように、圧力駆動性フラックスの結果として、ろ過中に表面で蓄積する傾向がある。これは、いわゆる濃度分極(CP)効果であった。本明細書で定義されているDP層は、圧力駆動性濃度分極層と同一でなかったが、供給液側及び透過液側の両方の膜表面付近のNa及びClの濃度プロファイルに非常に敏感であった。
時間に対する理論的フィッティングの結果から導出した正規化GDPの変化は、図18に示されている。正規化GDPが増加し、その後減少した場合、これは、生物汚損が膜表面で生じていたことを示していた。
正規化GDP増加は、膜−溶液界面に溶液からの生物学的細胞が蓄積し、より導電性の環境がもたらされたことによるものであった。フラックスが増加するか、又は時間が経過すると共に表面の生物量が蓄積すると、最終的に成熟生物膜が形成し始めるまで導電率が増加し続けた。コンダクタンスは、その時点で、細菌により生成された細胞外高分子物質(EPS)の濃度増加のため減少し始めた。
EPSマトリックスが蓄積することにより、DP層の塩が置換され、それにより、より低い正規化GDPがもたらされた。静菌剤(アジ化ナトリウム、NaN)を投入した場合の生物汚損の正規化GDPは、図26Bに示されている。静菌剤をシステムへ導入した場合、膜表面での生物膜成長が遅延された。これは、EISデータ(正規化GDPプロット)から明白に観察することができる。
参考文献
1. T.H.Chong、F.S.Wong、A.G.Fane:Journal of Membrane Science、314巻、101〜111頁、2008年
2 H.G.L.Coster、T.C.Chilcott、及びA.F.C.Coster:Bioelectrochemistry and Bioenergetics、40巻:79〜98頁、1996年
学術用語
i 交流
電流の振幅
v 電圧
電圧の振幅
Z インピーダンス(ohm m
j 虚数定数
Y アドミタンス(ohm−1−2
G コンダクタンス(S/m
C キャパシタンス(F/m
Re 実数インピーダンス(ohm m
Im 虚数インピーダンス(ohm m
DP 拡散分極層のコンダクタンス(S/m
skin 膜表層のコンダクタンス(S/m
base 膜支持層のコンダクタンス(S/m
crit 限界フラックス(l/mh)
略語
AC 交流
RO 逆浸透
TMP 膜間圧力
TOC 全有機炭素
CEOP 固塊増強性浸透圧
CECP 固塊増強性濃度分極
EIS 電気的インピーダンススペクトロスコピー
DP 拡散分極
EPS 細胞外高分子物質
MW マクスウェル−ワーグナー回路モデル
ギリシャ記号
θ 位相差
ω 角周波数(rad/s)
本発明は、その例示的な実施形態を参照して具体的に表示及び記載されているが、当業者であれば、以下の特許請求の範囲により規定されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、その形態及び詳細を種々に変更することができることを理解するであろう。

Claims (36)

  1. 逆浸透システムの汚損状態を評価するための方法であって、
    a)逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から複数のインピーダンス値を導出すること、及び
    b)複数の導出インピーダンス値に基づいて、逆浸透システムの汚損状態を決定することを含む方法。
  2. 前記電気インピーダンススペクトルの低周波領域が、約0.01Hzから約10Hzまでの範囲である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記複数のインピーダンス値を導出することが、
    a)好適な膜フラックスで稼動している逆浸透膜を含む逆浸透システムに種々の周波数の交流を流すこと、
    b)前記周波数の各々にて逆浸透膜の周波数依存性インピーダンス値を決定して、電気インピーダンススペクトルを形成すること、
    c)前記電気インピーダンススペクトルをモデルにフィッティングすることにより、インピーダンス値を決定すること;及び
    d)ステップa)〜c)を更なるサイクルで繰り返して、逆浸透膜の更なるインピーダンス値を生成することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記逆浸透システムに種々の周波数の交流を流すことが、前記逆浸透システムに約0.01Hzから約10Hzまでの範囲の周波数の交流を流すことを含む、請求項3に記載の方法。
  5. 前記電気インピーダンススペクトルをモデルにフィッティングすることが、前記電気インピーダンススペクトルをマクスウェル−ワーグナーモデルにフィッティングすることを含む、請求項3又は4に記載の方法。
  6. 前記逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から複数のインピーダンスを導出することが、前記複数のインピーダンス値の各々を、初期状態のインピーダンス値で正規化することを更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記逆浸透システムに含まれている逆浸透膜の電気インピーダンススペクトルの低周波領域から複数のインピーダンスを導出することが、前記複数のインピーダンス値の各々を、供給溶液のインピーダンス値で正規化することを更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記複数のインピーダンス値の各々が、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜が同じ又は異なる膜フラックスで稼動している間に導出される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記膜フラックスの各々が、約1L m−2−1から約100L m−2−1までの範囲にある、請求項8に記載の方法。
  10. 前記複数のインピーダンス値の各々が、逆浸透システムに含まれている逆浸透膜が異なる膜フラックスで稼動している間に導出される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. インピーダンス値が導出される膜フラックスが、その次にインピーダンス値が導出される次の膜フラックスよりも小さい、請求項10に記載の方法。
  12. 前記逆浸透システムの汚損状態を決定することが、前記逆浸透膜の限界フラックスを決定することを含む、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 前記逆浸透膜の限界フラックスを決定することが、
    a)前記複数のインピーダンス値を、膜フラックスの関数としてプロットして、曲線を生成すること、及び
    b)前記曲線の傾きが反転する時の膜フラックスを決定することを含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記インピーダンス値が、コンダクタンスであり、前記曲線の傾きが反転する時の膜フラックスを決定することが、前記曲線の傾きが、負の傾きから正の傾きへと移行する時の膜フラックスを決定することを含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記限界フラックスが、前記逆浸透膜システムの逆浸透膜が稼動される初期膜フラックスを決定するために使用される、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記逆浸透システムの汚損状態を決定することが、前記逆浸透膜の限界フラックス点を決定することを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記逆浸透膜の限界フラックス点を決定することが、前記複数のインピーダンス値の各々を、断続的な時間間隔又は設定した時間間隔で導出することを含む、請求項16に記載の方法。
  18. 前記逆浸透膜の限界フラックス点を決定することが、
    a)前記複数のインピーダンス値を時間の関数としてプロットして、曲線を生成すること、及び
    b)前記曲線の傾きが反転する時の時間を決定することを含む、請求項16又は17に記載の方法。
  19. 前記インピーダンス値がコンダクタンスであり、前記曲線の傾きが反転する時の時間を決定することが、前記曲線の傾きが、負の傾きから正の傾きへと移行する時の時間を決定することを含む、請求項18に記載の方法。
  20. 前記限界フラックス点が、前記逆浸透膜の固塊増強性濃度分極及び/又は固塊増強性浸透圧の開始を決定するために使用される、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 逆浸透システムの汚損状態を評価するための装置であって、
    a)逆浸透膜の両側に配置されるように構成されている2つ以上の電極、
    b)前記2つ以上の電極間に種々の周波数の交流電流を生成するように構成されている交流発生器、
    c)前記種々の周波数において、(i)前記膜の膜内外の電圧、(ii)前記膜を通過する電流、及び(iii)前記電圧と前記電流との位相差を測定するように構成されている検出器、及び
    d)測定された電圧、電流、及び位相差を使用して、前記膜に隣接する拡散分極層のインピーダンス値を導出するように構成されているプロセッサを含む装置。
  22. 電極の数が4であり、前記電極が、逆浸透膜の両側に対で配置されるように構成されている、請求項21に記載の装置。
  23. 前記交流発生器が、約0.01Hzから約10Hzまでの周波数範囲の交流電流を発生させるように構成されている、請求項21又は22に記載の装置。
  24. 前記プロセッサが、前記測定された電圧、電流、及び位相差をモデルにフィッティングすることにより、前記膜に隣接する拡散分極層のインピーダンス値を導出するように構成されている、請求項21〜23のいずれか一項に記載の装置。
  25. 前記モデルが、マクスウェル−ワーグナーモデルである、請求項24に記載の装置。
  26. 複数のインピーダンスを、膜フラックス及び/又は時間の関数として表すように構成されているデバイスを更に含む、請求項21〜25のいずれか一項に記載の装置。
  27. 前記デバイスが、記録デバイス及び/又はプロットデバイスである、請求項26に記載の装置。
  28. 前記デバイスが、前記逆浸透システムの限界フラックスを決定することにより、前記逆浸透システムの汚損状態を決定するように構成されている、請求項26又は27に記載の装置。
  29. 前記デバイスが、前記複数のインピーダンス値を膜フラックスの関数としてプロットして曲線を生成し、前記曲線の傾きが反転する時の膜フラックスを決定することにより、前記逆浸透システムの限界フラックスを決定するように構成されている、請求項28に記載の装置。
  30. 前記インピーダンス値がコンダクタンスであり、前記曲線の傾きが反転する時の膜フラックスを決定することが、前記曲線の傾きが、負の傾きから正の傾きへと移行する時の膜フラックスを決定することを含む、請求項29に記載の装置。
  31. 前記デバイスが、前記逆浸透システムの限界フラックス点を決定することにより、前記逆浸透システムの汚損状態を決定するように構成されている、請求項26又は27に記載の装置。
  32. 前記デバイスが、前記複数のインピーダンス値を時間の関数としてプロットして曲線を生成し、前記曲線の傾きが反転する時の時間を決定することにより、前記限界フラックス点を決定するように構成されている、請求項31に記載の装置。
  33. 前記インピーダンス値がコンダクタンスであり、前記曲線の傾きが反転する時の時間を決定することが、前記曲線の傾きが、負の傾きから正の傾きへと移行する時の時間を決定することを含む、請求項32に記載の装置。
  34. 逆浸透システムの汚損状態をオンラインで評価するように構成されている、請求項21〜33にいずれか一項に記載に装置。
  35. 逆浸透膜の汚損を原位置でモニタリングするための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法又は請求項21〜34のいずれか一項に記載の装置の使用。
  36. 逆浸透膜の洗浄作業中に、洗浄の有効性及び/又は洗浄の度合いを原位置でモニタリングするための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法又は請求項21〜34のいずれか一項に記載の装置の使用。
JP2017555456A 2015-04-24 2016-04-25 逆浸透システムの汚損状態を評価するための方法及び装置 Active JP6957021B2 (ja)

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