本発明の第一実施形態の縫製装置1を説明する。以下説明は、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
縫製装置1の概略構造を説明する。図1~図3に示す如く、縫製装置1は、土台部10、針棒機構2、釜機構4、X移動機構6、Y移動機構7、同期機構8、制御部9(図11参照)を備える。土台部10は、略矩形状に組み立てた構造体である。土台部10は、針棒機構2、釜機構4、X移動機構6、Y移動機構7、同期機構8を支持する。土台部10は、保持板90、左支持体98、右支持体97、一対の下レール125、一対の上レール128を備える。保持板90は平面視矩形状である。左支持体98と右支持体97は側面視矩形状の板状部材であり、保持板90を間にして左右方向に並ぶ。一対の下レール125は、保持板90下方で左右方向に延び、前後方向に間隔を空けて並ぶ。一対の上レール128は、保持板90上方で左右方向に延び、上下方向に間隔を空けて並ぶ。
針棒機構2は、一対の上レール128にて左右動可能に支持し、保持板90上方に位置する。針棒機構2は上基台37、針棒24等を備える。上基台37は正面視略矩形状を呈す。上基台37は、一対の上レール128にスライダ34を介して左右動可能に連結する。スライダ34は、上基台37の上下両端に夫々左右一対に設け、上側のスライダ34は上レール128に下側から係合し、下側のスライダ34は上レールに前方から係合する。上基台37は、上下方向略中央に左右方向に開口した挿通孔38を備える。針棒24は軸方向である上下方向に移動可能である。針棒24は下端に縫針39(図3参照)を装着する。針棒機構2の構成の詳細は後述する。
釜機構4は保持板90下方に位置する。釜機構4は下基台42、釜16、針板50、糸切機構を備える。下基台42は略直方体状の箱状である。下基台42は、一対の下レール125にスライダ54を介して左右動可能に連結する。スライダ54は下基台42の下端四隅に設ける。下基台42は挿通孔48、49を備える。挿通孔48は下基台42の左面に設け、挿通孔49は下基台42の右面に設ける。釜16は、下基台42の内側で左右方向に延びる後述の下軸44に設ける。釜16は、下糸を巻いたボビンを収容する。針板50は下基台42上部に固定する。針板50は針穴53を有する。針穴53は釜16の上方にある。糸切機構は針板50下方に設ける。糸切機構は固定刃、可動刃、糸切用パルスモータ57を備える。可動刃が、糸切用パルスモータ57から動力を得て固定刃に対して移動する。糸切機構は、可動刃と固定刃との協働で上糸と下糸を切断する。
X移動機構6は、針棒機構2と釜機構4を一体的に左右方向に移動する。X移動機構6はベルト121、122、X移動用パルスモータ82(図11参照)を備える。ベルト121、122は何れも平面視で左右方向に長い略長円状である。ベルト121の一端と他端は何れも上基台37の背面部に固定する。即ち、X移動機構6は上基台37と連結する。ベルト122の一端と他端は何れも下基台42の背面部に固定する。X移動用パルスモータ82はベルト121、122を同方向に同量移動する。故にX移動機構6は、針棒機構2を一対の上レール128に沿って移動し、釜機構4を一対の下レール125に沿って移動する。
Y移動機構7は縫製対象物である布を針棒機構2と釜機構4に対して相対的に前後方向に移動する。Y移動機構7は布保持体95、Y移動用パルスモータ83(図11参照)を備える。布保持体95は保持板90にて支持する。Y移動用パルスモータ83は、布保持体95と連結し、布保持体95を前後方向に移動する。布保持体95は上枠93、下枠92、左エアシリンダ239、右エアシリンダ219を有する。上枠93と下枠92は平面視矩形状の枠であり、間に布を挟持する。左エアシリンダ239、右エアシリンダ219は上枠93と連結する。上枠93は、左エアシリンダ239、右エアシリンダ219を駆動源として下枠92に対して上下に開閉する。
図1、図2、図4を参照し、同期機構8を説明する。同期機構8は、ミシンモータ81、第一駆動伝達部18、第二駆動伝達部19を備える。ミシンモータ81は、左支持体98右面に固定する。ミシンモータ81の出力軸81Aは、左支持体98から左方に突出する。ミシンモータ81は、出力軸81Aの先端部に連結プーリ133を固定する。
第一駆動伝達部18は、ミシンモータ81の駆動力を針棒24に伝達する。第一駆動伝達部18は、上側スプライン軸3等を備える。上側スプライン軸3は、左右方向に延び、左支持体98と右支持体97にて回転可能に支持する。上側スプライン軸3は、左右方向に延びる溝を外周面に有する。上側スプライン軸3は、上基台37の挿通孔38に挿通する。上側スプライン軸3は、挿通孔38にて支持したボールスプライン軸受を介して上基台37に連結する。故に、上基台37は上側スプライン軸3に対して左右動可能に連結する。挿通孔38にて支持したボールスプライン軸受は、上側スプライン軸3と一体的に回転する。上側スプライン軸3は、左支持体98から左方に突出する部位に上プーリ134を固定する。第一駆動伝達部18の構成の詳細は後述する。
第二駆動伝達部19は、下側スプライン軸5、第一プーリ45、中間軸51、第二プーリ46、タイミングベルト47、下軸44、揺動機構を備える。下側スプライン軸5は、左右方向に延び、左支持体98と右支持体97にて回転可能に支持する。下側スプライン軸5は、左右方向に延びる溝を外周面に有する。下側スプライン軸5は、下基台42の挿通孔48、49に挿通する。下側スプライン軸5は、挿通孔49にて支持したボールスプライン軸受を介して下基台42に連結する。故に下基台42は下側スプライン軸5に対して左右動可能に連結する。挿通孔49にて支持したボールスプライン軸受は、下側スプライン軸5と一体的に回転する。下側スプライン軸5は、左支持体98から左方に突出する下側スプライン軸5の部位に下プーリ135を固定する。下プーリ135は、上プーリ134と連結プーリ133とに対してベルト136を介して連結する。故にミシンモータ81は連結プーリ133を回転し、ベルト136を介して上プーリ134、下プーリ135を回転することで上側スプライン軸3と下側スプライン軸5を同期回転する。
第一プーリ45は、挿通孔49にて支持したボールスプライン軸受を内部に含む歯付のプーリである。中間軸51は、下側スプライン軸5の後上方で左右方向に延び、下基台42にて回転可能に支持する。中間軸51は下基台42から右方に突出する。第二プーリ46は中間軸51右端部に固定する。タイミングベルト47は、第一プーリ45と第二プーリ46に架け渡す。下軸44は、下基台42内側で左右方向に延び、往復回動可能である。下軸44は左端部に釜16を固定する。揺動機構は、中間軸51と下軸44とを連結する。揺動機構は中間軸51の一方向の回転を下軸44の往復回動に変換する。故に、下側スプライン軸5の回転に連動して、釜16は下軸44と共に往復揺動する。
図3、図5、図6を参照し、針棒機構2を説明する。針棒機構2は、上基台37と針棒24に加え、一対の案内レール61、四つのスライダ62、一対の連結体63、上支持体22、上軸25、天秤機構を備える。
一対の案内レール61は、上基台37の前面に固定した上下方向に延びるレールであり、左右方向に間隔を空けて並ぶ。四つのスライダ62のうち二つは左側の案内レール61に上下動可能に連結し、残る二つは右側の案内レール61に上下動可能に連結する。一対の連結体63の一方は、左側の案内レール61と連結する二つのスライダ62に固定し、一対の連結体63の他方は、右側の案内レール61と連結する二つのスライダ62に固定する。連結体63は側面視矩形状の支持壁部63Aを備える。支持壁部63Aは連結体63の前面から前方に突出し、上下方向に延びる。
上支持体22は左右方向に長い略箱状である。上支持体22は、一対の支持壁部63Aに後述の締結部材415(図8、図9参照)によって固定する。故に上支持体22は、上基台37にて上下動可能に支持する。上支持体22は、筒状部353と対向部355を備える(図6参照)。筒状部353は、前後方向に延びる円筒状である。筒状部353の円筒穴である嵌合穴354は、後方に向けて開口する。対向部355は、筒状部353から下方に延びる。天秤機構は上支持体22に設ける。天秤機構の天秤29は、針棒24の上下動と連動して上下動する。
図3、図5、図7を参照し、同期機構8の第一駆動伝達部18を説明する。第一駆動伝達部18は、上側スプライン軸3に加えて、上軸25、駆動プーリ71、従動プーリ72、歯付ベルト73、第一ベルト対向部材75、第二ベルト対向部材76を備える。
上軸25は、左右方向に延び、上支持体22にて回転可能に支持する。上軸25は、左端部にてクランク部17(図9参照)を介して針棒24と連結する。クランク部17は、上軸25の回転を針棒24の上下動に変換する。針棒24の下端に装着した縫針39(図3参照)は、針棒24の上下動に伴い、針板50の針穴53を通過可能である。尚、保持板90(図1参照)は針穴53に対応する位置に上下方向に貫通し且つ左右方向に延びる長孔を有する。縫針39は、該長孔と針穴53を通る。上軸25は天秤機構と連結する。天秤機構は天秤29を有する。天秤29は上軸25の回転で上下動する。
駆動プーリ71は、挿通孔38にて支持したボールスプライン軸受を内部に含む歯付のプーリである。駆動プーリ71は、上側スプライン軸3と一体的に回転する。駆動プーリ71は外周面に歯部を有する。従動プーリ72は、上軸25右端部に固定した歯付のプーリである。従動プーリ72は、外周面に歯部を有する。歯付ベルト73は、基部73Aと複数の歯部73Bを備える。基部73Aは側面視略環状の無端状であり、駆動プーリ71と従動プーリ72に架け渡す。複数の歯部73Bは、基部73Aの内表面に亘って設けられる。複数の歯部73Bは、駆動プーリ71の歯部と従動プーリ72の歯部と噛み合う。歯部73Bの基部73Aからの最大突出量(以下、歯部73Bの最大突出量と称す)は、図7の寸法Lに相当する。以下、歯付ベルト73のうちで駆動プーリ71と噛み合う部位を第一部位73Cと称し、従動プーリ72と噛み合う部位を第二部位73Dと称す。
第一ベルト対向部材75は、上基台37に上下一対に設け、夫々基部73Aに対して外側(歯部73Bと反対側)にある。第一ベルト対向部材75は第一部位73Cに対して隙間を空けて対向する。第二ベルト対向部材76は、上支持体22に設け、基部73Aに対して外側(歯部73Bと反対側)にある。第二ベルト対向部材76は第二部位73Dに対して隙間を空けて対向する。第一ベルト対向部材75と第一部位73Cの対向距離と、第二ベルト対向部材76と第二部位73Dの対向距離は、何れも、歯部73Bの最大突出量以下である。第一ベルト対向部材75は、上基台37に対し上下動可能であり、第一部位73Cとの対向距離を調整できる。第二ベルト対向部材76は、上支持体22に対し上下動可能であり、第二部位73Dとの対向距離を調整できる。
図5を参照し、上下駆動機構300を説明する。上下駆動機構300は、上下駆動部310、位置決め部320、上ダンパー330、下ダンパー340を備える。上下駆動部310は、上支持体22(図6参照)を上下動する機構である。上下駆動部310は、一対の支持壁部63Aの間となる左右方向位置にて、上基台37に固定する。上下駆動部310は一例としてエアシリンダである。上下駆動部310は、上下方向に延びる駆動軸311を備える。上下駆動部310が駆動することで、駆動軸311は上下動する。駆動軸311は上端に連結板312を固定する。連結板312は正面視矩形状の板状である。連結板312は上支持体22(図3参照)に固定する。故に、上下駆動部310の駆動により、上支持体22は、作動位置(図6参照)と退避位置(図14参照)との間を上下動する。作動位置は、縫針39が針穴53(図2参照)を通過可能となる上支持体22の上下方向位置である。退避位置は、作動位置から上方に退避した上支持体22の上下方向位置である。上支持体22が作動位置にある時、縫製装置1は布に縫製動作を実行する。上支持体22が退避位置にある時、針棒24は上下動しない。
位置決め部320は、上支持体22を作動位置にて位置決めする。位置決め部320は、設置部321、螺子孔322、ナット323を備える。設置部321は、連結板312から後方に突出する。螺子孔322は設置部321を上下方向に貫通する。ボルト329は一例として寸切ボルトであり、螺子孔322にねじ込む。ボルト329上端部は、上方に向けて開口する開口穴を有する。ナット323はボルト329に螺合する。ナット323は設置部321上面に押圧される。以下、設置部321、螺子孔322、ナット323を総称する時、固定部325と称す。固定部325はボルト329を固定し、ボルト329の固定位置を上下方向に調整可能である。固定部325による調整方法の詳細は後述する。
上ダンパー330と下ダンパー340は一例として公知の油圧式のダンパーである。上ダンパー330は上可動部331を備え、下ダンパー340は下可動部341を備える。上可動部331と下可動部341は上下方向を軸方向とする軸状部材である。上ダンパー330は左右一対に設け、上基台37に固定する。上可動部331は、上支持体22が退避位置に向けて上昇する時、接触部63Bに対して上方から接触可能である。接触部63Bは、連結体63の後面から後方に突出する矩形状である。下ダンパー340は、上基台37の設置部371に固定する。設置部371は、上基台37から前方に突出する矩形状である。下ダンパー340は、設置部371から上方に突出する。下ダンパー340は下可動部341を備える。下可動部341は、作動位置に向けて下降する上支持体22に対して下方から接触可能である。
図6を参照し、ロック機構350を説明する。ロック機構350は上基台37に設ける。ロック機構350は、作動位置にある上支持体22の上昇を規制し、且つ、退避位置にある上支持体22の下降を規制する。ロック機構350は、ロック駆動部352とロック部材351を備える。ロック駆動部352は上基台37に固定する。ロック駆動部352は一例としてエアシリンダである。ロック駆動部352は、前後方向に延びる駆動軸352Aを備える。ロック駆動部352が駆動すると、駆動軸352Aは前後動する。ロック部材351は、前後方向を軸方向として延びる円筒状の軸部材である。ロック部材351の外径は、嵌合穴354の内径よりも僅かに小さい。駆動軸352A前端部は、ロック部材351の内側に形成した穴に嵌りロック部材351に固定する。故にロック部材351は、ロック駆動部352の駆動に伴って、ロック解除位置とロック位置との間を前後方向に移動する。図6では、ロック解除位置にあるロック部材351を実線で図示し、ロック位置にあるロック部材351を二点鎖線で図示する。ロック解除位置は、上支持体22の可動範囲から後方に退出するロック部材351の前後方向位置である。ロック位置は、上支持体22の可動範囲に進入するロック部材351の前後方向位置である。ロック位置はロック解除位置よりも前方となる位置である。上支持体22が作動位置にある時、ロック解除位置からロック位置に移動したロック部材351は、嵌合穴354に嵌る。該場合、ロック機構350は、上支持体22の上方への移動を規制する。上支持体22が退避位置にある時、ロック解除位置からロック位置に移動したロック部材351は、対向部355下端に対して下方から対向する(図14参照)。該場合、ロック機構350は、退避位置にある上支持体22の下降を規制する。
図8~図10を参照し、調整機構400を説明する。調整機構400は、上基台37が上支持体22を支持する位置を前後方向に調整する機構である。作業者は、上支持体22の上基台37に対する支持位置を前後方向に調整する時、ボルト425(図15、図16参照)を使用する。以下、調整機構400の構成の説明では、上支持体22が作動位置(図5参照)にあることを前提として説明する。
図8、図9に示す如く、調整機構400は、締結穴413、長孔414、締結部材415を備える。本例の締結穴413、長孔414、締結部材415は何れも四つ設ける。締結穴413は、上支持体22の右壁部と左壁部の夫々に二つずつ設ける。締結穴413は、左右方向の外側に開口する。長孔414は、二つの支持壁部63Aの夫々に二つずつ設ける。各長孔414は各締結穴413に対向する。締結部材415は、長孔414に挿通し、且つ長孔414に対向する締結穴413に締結する。故に、上支持体22は、一対の支持壁部63Aに締結部材415によって固定する。
図10に示す如く、調整機構400は、第一壁部421と第二壁部422を備える。第一壁部421は、上支持体22下端部に設けた壁部である。第二壁部422は、上基台37下端部に設けた壁部である。第一壁部421と第二壁部422は前後方向に間隔を空けて互いに対向する。第一壁部421は対向穴424を備える。対向穴424は後方に向けて開口する螺子穴である。第二壁部422は貫通孔428と螺子孔423を備える。貫通孔428と螺子孔423は第二壁部422を前後方向に貫通する。螺子孔423は対向穴424と略同軸である。螺子孔423は貫通孔428左方にある。貫通孔428の内径は、ボルト425の軸部425A(図15参照)の外径よりも大きい。
図15で示すボルト425は、軸部425A、頭部425Bを備える。頭部425Bは、軸部425Aの軸方向一端部に設け、外径が軸部425Aの外径よりも大きい。頭部425Bの外径は、貫通孔428(図10参照)の内径よりも大きい。作業者は、ボルト425の軸部425Aを後方から貫通孔428に挿通して対向穴424に螺合し、且つ、ボルト425の頭部425Bを第二壁部422に対して後方から当接できる。図16に示す如く、作業者は、ボルト425の軸部425Aを後方から螺子孔423に螺合して第一壁部421に後方から当接できる。
図11を参照し、縫製装置1の電気的構成を説明する。縫製装置1の制御部9はマイコン、該マイコンにデータバス等を介して接続した入力インターフェース87と出力インターフェース88、駆動回路181~189等を有する。マイコンはCPU11、ROM12、RAM13、記憶機器14を含む。CPU11は縫製装置1の動作を統括制御する。ROM12は後述の縫製処理(図12参照)を実行する為のプログラム等を予め記憶する。RAM13は各種処理実行中に生じる各種情報を一時的に記憶する。RAM13は第一フラグを記憶する。第一フラグは、縫製装置1による縫製動作が終了したか否かを示す。第一フラグが0である時、縫製装置1は縫製動作を終了しておらず、第一フラグが1である時、縫製装置1は縫製動作を終了している。記憶機器14は不揮発性で、各種設定値を記憶する。
各駆動回路181~189は出力インターフェース88に接続する。駆動回路181はミシンモータ81と接続し、CPU11の制御指令に基づきミシンモータ81を駆動する。ミシンモータ81は特定励磁状態に遷移可能である。特定励磁状状態は、出力軸81A(図4参照)を所定の回転位置で保持するミシンモータ81の励磁状態である。ミシンモータ81が特定励磁状態である時、ミシンモータ81の出力軸81Aは回転困難となる。駆動回路182はX移動用パルスモータ82と接続し、CPU11の制御指令に基づきX移動用パルスモータ82を駆動する。駆動回路183はY移動用パルスモータ83と接続し、CPU11の制御指令に基づきY移動用パルスモータ83を駆動する。駆動回路184は糸切用パルスモータ57と接続し、CPU11の制御指令に基づき糸切用パルスモータ57を駆動する。駆動回路185は右エアシリンダ219と接続し、CPU11の制御指令に基づき右エアシリンダ219を駆動する。駆動回路186は左エアシリンダ239と接続し、CPU11の制御指令に基づき左エアシリンダ239を駆動する。駆動回路187は上下駆動部310と接続し、CPU11の制御指令に基づき上下駆動部310を駆動する。駆動回路188はロック駆動部352と接続し、CPU11の制御指令に基づきロック駆動部352を駆動する。駆動回路189は表示部198と接続し、CPU11の制御指令に基づき表示部198に各種情報を表示する。
電源SW15、エンコーダ191~194、操作部196等は入力インターフェース87に接続する。電源SW15は縫製装置1の電源の投入を行う。エンコーダ191はミシンモータ81に接続し、ミシンモータ81の出力軸81Aの回転位置、回転速度を検出する。CPU11はエンコーダ191の検出結果を入力インターフェース87に入力する。エンコーダ191の検出結果は、針棒24と縫針39の上下方向位置を示す。エンコーダ192はX移動用パルスモータ82に接続し、X移動用パルスモータ82の出力軸の回転方向、回転位置(即ち回転角位相)、回転速度を検出する。CPU11はエンコーダ192の検出結果を入力インターフェース87に入力する。X移動用パルスモータ82の出力軸の回転角位相は、針棒機構2と釜機構4の左右方向位置を示す。エンコーダ193はY移動用パルスモータ83に接続し、Y移動用パルスモータ83の出力軸の回転方向、回転位置(即ち回転角位相)、回転速度を検出する。CPU11はエンコーダ193の検出結果を入力インターフェース87に入力する。Y移動用パルスモータ83の出力軸の回転角位相は、布保持体95の前後方向位置を示す。エンコーダ194は糸切用パルスモータ57に接続し、糸切用パルスモータ57の出力軸の回転方向、回転位置、回転速度を検出する。CPU11はエンコーダ194の検出結果を入力インターフェース87に入力する。操作部196は各種指示を検出し、CPU11は操作部196の検出結果を入力インターフェース87に入力する。
図6、図12~図16を参照し、縫製処理を説明する。縫製処理の開始前、縫製装置1は初期状態である。縫製装置1が初期状態である時、上支持体22は作動位置にあり、ロック部材351はロック位置にあり嵌合穴354に嵌る(図6参照)。作業者が電源SW15を操作して縫製装置1の電源を投入すると、CPU11は縫製処理を開始する。
CPU11は、RAM13に記憶の第一フラグを0に上書きして記憶する(S11)。CPU11は、ミシンモータ81を特定励磁状態にする(S13)。ミシンモータ81の出力軸81A(図4参照)は回転困難な状態となる。
CPU11は、ロック駆動部352を駆動制御して、ロック部材351をロック位置からロック解除位置に移動する(S15)。ロック部材351が嵌合穴354から後方に外れ(図6の矢印P1)、上支持体22の可動範囲から後方に退出する。上支持体22は上方へ移動可能となる。CPU11は、上下駆動部310を駆動制御して、上支持体22を作動位置から退避位置に上昇させる(S17)。上支持体22の上昇時(図6矢印R1)、上側スプライン軸3の軸心に対する上軸25の軸心の離間距離は短くなり、歯付ベルト73は緩む(図13参照)。第一ベルト対向部材75と第二ベルト対向部材76は、歯付ベルト73の駆動プーリ71と従動プーリ72からの脱落を阻止する。作動位置に向けて上昇する上支持体22の右上部は、上ダンパー330の上可動部331(図5参照)に下側から当たる。上ダンパー330は上可動部331を介して上支持体22の上昇の勢いを吸収し、上支持体22は減速する。上支持体22は退避位置に到達し(図13、図14参照)、上下駆動部310は駆動停止する。
CPU11は、ロック駆動部352を駆動制御して、ロック部材351をロック解除位置からロック位置に移動する(S19)。ロック部材351は、対向部355の真下となる位置まで移動し(図14の矢印Q1)、上支持体22の可動範囲に進入する。ロック機構350は、退避位置にある上支持体22の下方への移動を規制する。
CPU11は、右エアシリンダ219と左エアシリンダ239を駆動制御して、上枠93を(図1参照)上方に移動する(S21)。上枠93は下枠92から上方に離間する。CPU11は、RAM13に記憶の第一フラグが1であるか否かを判断する(S23)。第一フラグが0である時(S23:NO)、CPU11は、上枠下降指示を検出したか否かを判断する(S25)。上枠下降指示は、下枠92から上方に離間した上枠93を下方に移動するための指示である。作業者が上枠下降指示を操作部196に入力するまで(S25:NO)、CPU11は待機する。作業者が、下枠92と上枠93の間に布を配置し、上枠下降指示を操作部196に入力すると(S25:YES)、CPU11は、左エアシリンダ239と右エアシリンダ219を駆動制御して、上枠93を下降する(S27)。布保持体95(図1参照)は上枠93と下枠92の間で布を挟む。
CPU11は、ロック駆動部352を駆動制御して、ロック部材351をロック位置からロック解除位置に移動する(S29)。ロック部材351は、上支持体22の可動範囲から後方に退出する(図14の矢印Q2)。退避位置にある上支持体22は下方に移動可能となる。CPU11は、上下駆動部310を駆動制御して、上支持体22を退避位置から作動位置に移動する(S31)。上支持体22は、駆動軸311と共に、自由落下よりも速い速度で下降する(図14の矢印R2)。上支持体22の下降時、設置部321の下面は、下ダンパー340(図5参照)の下可動部341に上方から接触する。下ダンパー340は下可動部341を介して上支持体22の下降の勢いを吸収し、上支持体22は減速する。ボルト329(図5参照)の下端部は、設置部371後部の上面372に接触する。ボルト329は上支持体22を作動位置にて停止する。上下駆動部310は駆動停止する(S31)。
CPU11は、ロック駆動部352を駆動制御して、ロック部材351をロック解除位置からロック位置に移動する(S33)。ロック部材351は、前方に移動し(図6の矢印P2)、嵌合穴354に嵌る。ロック機構350は、作動位置にある上支持体22の上方への移動を規制する。CPU11は、ミシンモータ81を駆動制御し、ミシンモータ81の特定励磁状態を解除する(S35)。
CPU11は、ミシンモータ81、X移動用パルスモータ82、Y移動用パルスモータ83を駆動制御して、縫製動作を実行する(S37)。ミシンモータ81が駆動することで、同期機構8は、釜機構4と針棒機構2を同期駆動する。針棒24と釜16は互いに同期して動作する。X移動用パルスモータ82が駆動することで、X移動機構6は、釜機構4と針棒機構2を一体的に左右方向に移動する。Y移動用パルスモータ83が駆動することで、Y移動機構7は、布を保持する布保持体95を前後方向に移動する。釜16は、針穴53下方にある縫針39が保持する上糸に、ボビンケースから引出した下糸を絡める。天秤29は、下糸に絡んだ上糸を針板50上に引き上げ、布に縫目を形成する。糸切用パルスモータ57が、縫目の形成後に駆動することで、糸切機構は上糸と下糸を切断する(S37)。
CPU11は、RAM13に記憶の第一フラグを1に上書きして記憶し(S39)、処理をS13に移行する。CPU11は、上述したS13~S21を実行する。上支持体22が作動位置から退避位置に移動した後、ロック部材351はロック位置に移動し、上枠93は布から上方に離間する。第一フラグが1であるので、(S23:NO)、S23を実行したCPU11は処理をS41に移行する。CPU11は、ミシンモータ81の特定励磁状態を解除し、縫製処理を終了する。縫製処理の終了時、上支持体22が退避位置にあるので、作業者は、縫製後の布を、縫針39に引っ掛けることなく取り出せる。
図8、図9、図15、図16を参照し、上支持体22の上基台37に対する支持位置を前後方向に調整する作業を説明する。作業者は、上支持体22の支持位置を前後方向に調整することで、縫針39が針穴53(図2参照)の真上に位置するように、針棒24の釜16に対する相対位置を適正化できる。作業開始時、上支持体22は作動位置にある。
図8、図9、図15を参照し、上支持体22の支持位置を後方に変位する調整作業を説明する。調整作業前、縫針39は、針穴53の中心よりも前側となる前後方向位置にある。作業者は、四つの締結部材415を、脱落しない程度に緩め、上支持体22を上基台37に対して前後動可能な状態にする。
作業者は、ボルト425の軸部425Aを第二壁部422の貫通孔428(図16参照)に後方から挿通し、第一壁部421の対向穴424に当てる。作業者は、頭部425Bが前方に変位する締結回転方向(矢印V)にボルト425を回転する。軸部425Aが対向穴424に螺合しはじめた後、頭部425Bは第二壁部422に後方から接触する。作業者は、ボルト425を更に締結回転方向に回転する。軸部425Aが対向穴424に更に螺合することに伴い、ボルト329は対向穴424を介して上支持体22を後方に付勢する。故に上支持体22は後方に移動する(矢印W)。該時、締結部材415が、長孔414に挿通し締結穴413に螺合した状態を維持しながら、一対の連結体63(図4参照)は上支持体22と共に後方に変位する。上支持体22と共に移動する縫針39が針穴53の真上に到達した時、作業者はボルト425の回転を止めて、四つの締結部材415を夫々締結穴413に締結する。上支持体22は上基台37に固定する。作業者は、ボルト425を締結回転方向とは反対方向に回転する。ボルト425は対向穴424と貫通孔428とから外れる。作業者は調整作業を終了する。
図8、図9、図16を参照し、上支持体22の支持位置を前方に変位する調整作業を説明する。調整作業前、縫針39は、針穴53の中心よりも後側となる前後方向位置にある。以下、上支持体22の支持位置を後方に変位する上述の調整作業と重複する説明は簡略化する。作業者は、四つの締結部材415を、脱落しない程度に緩める。
作業者は、ボルト425の軸部425Aを第二壁部422の螺子孔423に後方から螺合する。作業者は、螺子孔423に螺合したボルト425を更に締結回転方向(図16の矢印A)に回転する。ボルト425の回転に伴い、軸部425Aは前方に変位して第一壁部421に対して後方から接触する。該時、頭部425Bは第二壁部422に対して後方に離間している。作業者がボルト425を更に締結回転方向に回転することで、軸部425Aは第一壁部421を前方に付勢する。故に上支持体22は前方に移動する(矢印B)。上支持体22と共に移動する縫針39が針穴53の真上に到達した時、作業者はボルト425の回転を止めて、四つの締結部材415を夫々締結穴413に締結する。作業者は、ボルト425を締結回転方向とは反対方向に回転する。ボルト425は螺子孔423から外れる。作業者は調整作業を終了する。
図5を参照し、作業者が上支持体22の作動位置を上下方向に調整する作業を説明する。上支持体22は、作業開始時、例えば退避位置にある。作業者は、ナット323を回転してボルト329に沿って上方に移動する。ボルト329は下ダンパー340と共に上下動可能となる。作業者は、ボルト329を所望の上下方向位置まで移動した後、ナット323を回転して設置部321の上面に押圧する。固定部325はボルト329を固定する。故に、作業者は、上支持体22の作動位置を所望の上下方向位置に調整できる。
以上説明したように、調整機構400が、上基台37による上支持体22の支持位置を前後方向に調整することで、縫製装置1は、釜機構4と針棒機構2の互いの位置関係を前後方向に調整できる。故に縫針39が針穴53の真上に位置するように、作業者は針棒24の釜16に対する前後方向位置を適正化できる。故に、別体である針棒機構2と釜機構4において、針棒24と釜16の水平方向の位置関係を調整可能な縫製装置1は実現する。
作業者が、ボルト425を締結回転方向に回転して、上支持体22を前後方向に移動する時、長孔414は締結穴413と対向する状態を維持する。故に、上支持体22の前後方向位置の調整後、作業者は、締結部材415を締結穴413に締結し易い。故に縫製装置1は、上支持体22と上基台37の位置関係の調整を容易化できる。
作業者は、ボルト425の軸部425Aを螺子孔423に螺合して第一壁部421に対して後方から当てる。ボルト425が更に締結回転方向に回転すると、軸部425Aは第一壁部421を介して上支持体22を前方に付勢する。釜機構4と針棒機構2の位置関係は前後方向に変わる。釜機構4と針棒機構2の前後方向における位置関係の調整は、ボルト425の回転によって実現する。故に縫製装置1は、針棒24と釜16の水平方向の位置関係を高精度に調整できる。
軸部425Aを貫通孔428に挿通して対向穴424に螺合し、且つ、頭部425Bが第二壁部422に後方から接触した後、作業者はボルト425を更に締結回転方向に回転する。ボルト329は上支持体22を後方に付勢し、釜機構4と針棒機構2の位置関係は前後方向に変わる。釜機構4と針棒機構2の前後方向における位置関係の調整は、ボルト425の回転によって実現する。故に縫製装置1は、針棒24と釜16の水平方向の位置関係を高精度に調整できる。
針棒24と釜16の位置関係を前後方向に調整する機能を、例えば、釜16が下基台42に対して前後方向に移動可能となる構成によって実現する実施例が考えられる。該場合でも、上下動する上支持体22が上基台37とは別体になる構成は残存する。本実施形態では、縫製装置1は、上支持体22が上下動する機能と、針棒24と釜16の位置関係を前後方向に調整する機能との二つの機能を、上支持体22と上基台37が互いに別体になる単一の構成によって実現する。故に縫製装置1は構成を簡易化できる。
以上説明にて、下基台42は本発明の下支持体の一例である。X移動機構6は本発明の移動機構の一例である。長孔414は本発明の挿通孔の一例である。左右方向は本発明の第一方向の一例である。前後方向は本発明の第二方向の一例である。
本発明は上記実施例に限定しない。第一壁部421は、上基台37の例えば右端部に形成した壁部であり、第二壁部422は上支持体22の右端部に形成した壁部であってもよい。該場合でも、対向穴424は第一壁部に設け、貫通孔428と螺子孔423は第二壁部422に設ける。本変形例では、作業者は、貫通孔428又は螺子孔423に対してボルト425の軸部425Aを前方から挿通する。
図17を参照し、釜機構4の変形例である釜機構544を説明する。釜機構544は、下基台42の変形例である下基台542と、下支持体545を備える。下基台542は略直方体状の箱状である。下基台542は、ベルト122と一体的に左右方向に移動可能であり、右面に挿通孔49を有する。挿通孔49は、下側スプライン軸5(図2参照)を挿通する。下基台542は、右面上部に上下一対の締結穴を備える。締結穴は締結穴413(図8参照)と同じ内径を有し、右方に向けて開口する。
下支持体545は釜16を往復揺動可能に支持する。下支持体545は略直方体状の箱状であり、下基台542上端に嵌る。針板50は下支持体545上部に固定する。針板50は針穴を有し、針穴は釜16の上方にある。下支持体545は上下一対の長孔514を有する。長孔514は、長孔414(図8参照)と同様に短径と長径を有し、前後方向に長径を有する。長孔514は、右方から下基台542の締結穴と対向する。締結部材415は、長孔514に挿通し、締結穴に締結する。作業者が、締結部材415を締結穴から外れない程度に緩めれば、下支持体545は、前後方向に移動可能となる。故に、作業者は、釜16の針棒24(図2参照)に対する前後方向位置を調整できる。第一壁部421(図10参照)と第二壁部422(図10参照)に相当する壁部が、下基台542と下支持体545に設けられてもよい。例えば、釜機構4は、下基台542に第一壁部421を備え、下支持体545を第二壁部422に備えてもよい。
本変形例において、釜機構4は本発明の特定機構の一例である。下基台542は本発明の特定基台の一例である。下支持体545は本発明の特定支持体の一例である。