JP7039380B2 - バラスト軌道支持状態推定方法、そのプログラム及びシステム - Google Patents

バラスト軌道支持状態推定方法、そのプログラム及びシステム Download PDF

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Description

本発明は、バラスト軌道における軌道の支持状態を推定する方法、そのプログラム及びシステムに関し、特に、「浮きまくらぎ」の評価を含む軌道支持状態を推定する方法、そのプログラム及びシステムに関する。
バラスト軌道は、レールを含む軌きょうをバラスト道床上に支持する構造物である。すなわち、一対のレールに複数のまくらぎを格子状に与えて組み上げられた軌きょうは、路盤上の砕石や砂利等のバラストを敷き詰めた道床によってその荷重を分散させて支持されている。このレール上を鉄道車両が走行すると、これを支持する反力として、荷重はレールからまくらぎへと伝達し、更に、バラストから路盤へと荷重が分散されていくのである。
このようなバラスト軌道において、鉄道車両からの荷重がレールを含む軌きょうに負荷されるたびに、その下層にあるバラストは個々に移動し沈下していく。一方、軌きょうはレールの弾性復元力によって元の高さ位置を維持しようとするため、バラスト層の上面ほどは沈下しない。故に、バラスト層の上面がまくらぎの下面と非接触の状態となる、いわゆる「浮きまくらぎ」と呼ばれる状態が発生する。
上記したような「浮きまくらぎ」を生じた箇所では、鉄道車両の通過の度にバラスト層の上面にまくらぎの下面が繰り返し衝突し、バラストを粉砕、破砕させやすく、又、路盤からの噴泥を生じさせて、軌道状態を急速に悪化させてしまう原因となり得ることが知られている。また、まくらぎの下面を十分に支持できず、レールを座屈させ、又、レールの締結装置の固定状態を変化させてしまうなど、安定性を損なわしめることもあり得る。そこで、このような「浮きまくらぎ」を検出し評価する方法が求められる。
ところで、非特許文献1では、軌きょうの支持状態に関する軌道支持剛性の測定方法として、載荷板上に重錘を自由落下させて衝撃荷重を加える小型FWD(Falling Weight Deflectometer)と称される装置を用いた方法について述べている。小型FWDには荷重計及び加速度計が内蔵されており、これから得られる最大荷重と最大変位から軌道支持剛性を求めるのである。そして、特許文献1では、上記したような小型FWDを用いて軌道支持剛性を測定し、算出した軌道支持剛性の分布からバラツキの大きい箇所を不良箇所として特定して、「浮きまくらぎ」を検出し評価する方法を開示している。
特開2014-234693号公報
「バラスト軌道における軌道支持剛性評価方法の開発」、中村貴久ら、鉄道総研報告、2017年12月号、第31巻、第12号、第29~34頁
FWDを用いた軌道支持剛性の測定では、上記したように、まくらぎ毎に測定を行うため、長い試験区間となると、作業性が悪くなる。また、より精度の良い測定のためには、重錘として重く大きなものを使用することになり、測定装置自体が大型化し重量化するため、この重量がまくらぎに影響を与えて測定精度を却って低下させてしまう場合もあり得る。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、測定精度と作業性とを両立させたバラスト軌道の支持状態推定方法、そのプログラム及びシステムを提供することにある。
本発明者らは、従来のようなFWDを使用するのではなく、軌道検測車等によってレールに沿って下向きに荷重を付与しバラストに押し付けて測定される上下方向の動的変位の波形を用いての浮きまくらぎの推定を考慮した。その結果、該波形から高低変位の復元波形を算出し、この復元波形をバラスト道床上面の形状とみなし、その上に軌きょうが載っているものとして、軌道の構造解析に用いられる弾性支持上のバネモデルを応用した自重解析からレールのたわみ形状とまくらぎ下面圧力を求め、浮きまくらぎを推定することに想到した。
詳細には、本発明による方法は、一対のレールに沿ってまくらぎを所定間隔で与えた軌きょうをバラスト道床の上に支持させたバラスト軌道の支持状態の推定方法であって、前記レールの一方について長手方向及び鉛直方向に二次元断面モデルを設定した上で、軌道検測機構を有する車両を走行させることにより前記レールに沿って下向きに荷重を付与しながら測定された前記レールの上面の高低変位から得られる復元波形をバラストの表面形状として推定し、その上に支持された自重を有する梁とみなして前記レールのたわみ形状を数値計算して、前記復元波形及び前記たわみ形状から前記支持状態を推定する方法において、まくらぎの対応位置毎に、前記レール及び前記復元波形の間に鉛直に所定長の支持バネを前記復元波形に対応したクリアランスを設けて配置するとともに前記レールに下向きの所定荷重を与えたとしたときの前記たわみ形状が数値計算されることを特徴とする。
かかる発明によれば、軌道検測機構を有する車両を走行させて下向きの荷重を付与しながらレール上面の高低変位の測定を行うことにより、バラスト軌道の支持状態を示すパラメータを正確に得られ、測定精度と作業性とを両立させたバラスト軌道の支持状態推定方法を提供できるのである。
上記した発明において、前記支持ばねは、前記まくらぎの前記対応位置毎に、鉛直上向きに前記復元波形の上に与えられて、数値計算されることを特徴としてもよい。また、前記復元波形の最高位点を通る水平基準線を決定し、前記支持バネは、前記まくらぎの前記対応位置毎に、前記復元波形及び前記水平基準線の差分を算出し前記水平基準線の下に前記差分に対応した間隙を設けて前記支持バネを鉛直に配置してその下端を固定して、数値計算されることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、バラスト軌道の支持状態を示すパラメータをより簡便且つ正確に得られるのである。
上記した発明において、前記所定荷重は、前記軌きょうの質量に対応することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、レールの剛性を正確に計算できて、バラスト軌道の支持状態を示すパラメータをより簡便且つ正確に得られるのである。
上記した発明において、前記復元波形及び前記たわみ形状を重ね合わせ、その差分に基づいた前記支持バネの反力から前記まくらぎ毎の下面圧力を得ることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、浮きまくらぎを簡便且つ正確に推定できるのである。
本発明によるプログラムは、一対のレールに沿ってまくらぎを所定間隔で与えた軌きょうをバラスト道床の上に支持させたバラスト軌道において該レールの一方について長手方向及び鉛直方向の二次元断面モデルでの支持状態を推定するプログラムであって、軌道検測機構を有する車両を走行させることにより前記レールに沿って下向きに荷重を付与して測定された前記レールの上面の高低変位から復元波形を得る手段と、前記復元波形をバラストの表面形状として推定しその上に支持された自重を有する梁とみなして前記レールのたわみ形状を数値計算する計算手段と、を含み、前記計算手段は、前記まくらぎの対応位置毎に、前記レール及び前記復元波形の間に鉛直に所定長の支持バネを前記復元波形に対応したクリアランスを設けて配置するとともに前記レールに下向きの所定荷重を与えたときの前記たわみ形状を数値計算することを特徴とする。
かかる発明によれば、軌道検測機構を有する車両を走行させることにより下向きの荷重を付与しながら測定した高低変位のデータからバラスト軌道の支持状態を示すパラメータを正確に得られ、測定精度と作業性とを両立させたバラスト軌道の支持状態の推定を与え得るのである。
上記した発明において、前記支持ばねを前記まくらぎの前記対応位置毎に鉛直上向きに前記復元波形の上に与えて数値計算することを特徴としてもよい。また、前記復元波形の最高位点を通る水平基準線を決定し、前記まくらぎの前記対応位置毎に、前記復元波形及び前記水平基準線の差分を算出し、前記水平基準線の下に前記差分に対応した間隙を設けて前記支持バネを鉛直に配置してその下端を固定し、数値計算することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、バラスト軌道の支持状態を示すパラメータをより簡便且つ正確に得られるのである。
上記した発明において、前記復元波形及び前記たわみ形状を重ね合わせ、前記たわみ形状よりも前記復元波形が下側にある区間の前記まくらぎを特定することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、浮きまくらぎを簡便且つ正確に推定できるのである。
上記した発明において、前記復元波形及び前記たわみ形状を重ね合わせ、その差分に基づいた前記支持バネの反力から前記まくらぎ毎の下面圧力を得ること特徴としてもよい。かかる発明によれば、浮きまくらぎを簡便且つ正確に推定できるのである。
また、本発明によるシステムは、上記したプログラムを実行することを特徴とする。かかる発明によれば、軌道検測機構を有する車両を走行させて下向きの荷重を付与しながら動的な高低変位の測定を行って、それに基づいて復元波形を算出することにより、バラスト軌道の支持状態を示すパラメータを正確に得られ、測定精度と作業性とを両立させたバラスト軌道の支持状態推定方法を提供できるのである。
本発明による実施例におけるバラスト軌道の評価システムのブロック図である。 バラスト軌道の側面図である。 バラスト軌道の支持状態推定方法のフロー図である。 バラスト軌道の支持状態推定方法に用いる解析モデルを説明する図である。 バラスト軌道の支持状態推定方法で実際に得られた各種パラメータのグラフである。
以下、本発明によるバラスト軌道の支持状態推定方法、その方法を実施させるプログラム及びバラスト軌道の評価システムの具体的な実施態様である実施例について、図1及び図5を用いて説明する。
まず、バラスト軌道の評価システムについて図1を用いて説明する。
図1に示すように、バラスト軌道の評価システム60は、路盤10上に積層されたバラスト層20の上面に複数のまくらぎ30を介して載置された一対のレール40の上面を走行する軌道検測車によって構成される。なお、実際のバラスト層には、まくらぎ30の下面よりも高い位置まで積層されたバラスト部分もあるが、ここではバラスト層20をまくらぎ30を支持する層として考えるため、まくらぎ30の下面に当接する面をバラスト層20の上面とする。そして、バラスト軌道50は、路盤10、バラスト層20、まくらぎ30及びレール40を含み、まくらぎ30及びレール40による軌きょうをバラスト層20による道床(バラスト道床)及び路盤10で支持している。
評価システム60は、複数の台車64と、台車64に取り付けられた複数の車輪66とを備え、レール40の上面を走行する軌道検測車62と、軌道検測車62に設けられた計測ユニット70と、を含む。また、計測ユニット70は、レールの上面の高さ位置を非接触で計測する変位センサ72と、変位センサ72で計測された高さ位置のデータを受信するとともに、当該データを用いて演算処理を行うコンピュータ74と、変位センサ72及びコンピュータ74を電気的に接続する信号線76と、で構成される。
変位センサ72は、例えばレーザセンサや渦電流センサ等の対象物との間の距離を測定できる非接触センサである。例えば、レール上面40aに対向するように取り付けられたレーザ距離センサである場合、変位センサ72は、センシング面72aからレーザビームをレール上面40aに向けて投光し、その反射光を受光して、投光から受光までの時間に基づいてレール上面40aの高さ位置の変位データを出力する。また、変位センサ72は、高さ位置の計測結果から、レール上面40aの高低変位である復元波形を得ることができるように備えられる。例えば、偏心矢法を用いるのであれば、変位センサ72はレール40の延びる方向に不等間隔で離間させるようにして3つ以上備えられる。また、コンピュータ74は、後述するバラスト軌道の支持状態推定方法を実施するためのプログラムが内蔵されており、変位センサ72からの高さ位置の変位データを受けるとともに、上記プログラムに基づいて演算処理を実行することができる。
次に、バラスト軌道の支持状態推定方法について、図2乃至図5を用いて説明する。
まず、バラスト軌道の支持状態について図2を用いて説明する。
図2(a)に示すように、バラスト軌道50は、路盤10と、その上に砕石や砂利等の多数のバラスト22を敷き詰めて形成されたバラスト層20と、バラスト層20の上面に載置された複数のまくらぎ30と、まくらぎ30に固定されたレール40とを含む。ここで、バラスト層20の沈下が生じていない場合では、複数のまくらぎ30の下面はそれぞれバラスト層20の上面と接触し、バラスト層20に支持されている。
これに対して、図2(b)に示すように、個々のバラスト22は、車両の走行などによってまくらぎ30からの力を繰り返し受ける等して互いに変位し、バラスト層20の上面を沈下させることがある。このとき、複数のまくらぎ30とレール40とは通常、締結装置(図示せず)により固定されているため、まくらぎ30及びレール40の自重による撓みによってもなおまくらぎ30の下面とバラスト層20の上面との間に空隙Gを生じる、いわゆる「浮きまくらぎ」の状態となることがある。
図2(c)に示すように、このような浮きまくらぎの状態で車両等が走行すると、レール40の上面40aを走行する車輪66から車両の重量に相当する下向きの荷重Fを受けるため、レール40は空隙Gに相当する分だけたわむ(弾性変形する)ことができる。このとき、荷重Fによるたわみ量を空隙Gよりも大とする場合には、個々のまくらぎ30の下面はバラスト層20の上面と接触して反力Rを負荷される。なお、このような浮きまくらぎのある場合、車両の走行に伴ってレール40をたわみませてバラスト22にまくらぎ30を衝突させるなどして、バラスト22を破砕させ、バラスト軌道の支持状態をさらに悪化させてしまうことがある。そのため、バラスト軌道の支持状態において、特に、浮きまくらぎを推定できることが重要となる。
次に、このような、浮きまくらぎを含めたバラスト軌道の支持状態を、バラスト軌道の評価システム60によって推定する方法について図3に沿って図4及び図5を併せて参照しつつ説明する。
図3に示すように、まず、軌道検測車(バラスト軌道の評価システム60)を走行させながらレール40に沿って下向きの荷重を付与することによってレール上面40aの動的な高低変位を得て、これに基づいて復元波形を得る(S1)。高低変位は上記したように変位センサ72で計測された高さ位置から、例えば、水糸法によって求められる。水糸法としては、正矢法や偏心矢法を用い得る。この高低変位は軌道上のキロ程に対して位置合わせされる。さらにフィルタ処理によって、好ましくは波長3~50mで復元して、復元波形を得る。ここで、計測には軌道検測車を用いるので、レール40には走行する軌道検測車の重量が負荷される。よって、得られた復元波形は、バラスト層20に対するまくらぎ30の隙間に応じてたわんだレール40の形状になる(図2(c)参照)。そこで、この復元波形をバラスト層20の上面の形状としてみなすのである。なお、軌道検測車を用いずとも、同様にレール40に沿って下向きに車両相当の荷重を付与してレール40をバラスト層20に押し付けて高低変位を得ることができる軌道検測機構を有する車両であればよい。例えば、軌道検測装置を搭載した営業車両を用いることができる。
次いで、図4に示すような解析モデルによる自重解析によってレールのたわみ形状を数値計算する(S2)。
図4(a)に示すように、バラスト軌道の支持状態を推定するための解析モデルとして、レール40の長手方向及び鉛直方向の直線を含む平面による二次元断面モデルであるバラスト軌道モデル100を用いる。バラスト軌道モデル100は、レールを模擬したレール要素110と、複数のまくらぎを模擬したまくらぎ要素120A乃至120Dと、個々のまくらぎの下面とバラスト層との弾性的な接触を模擬したバネ要素130A乃至130Dと、により構成されている。
レール要素110はレール40を二次元梁としてモデル化したものであり、レール40と同等の質量及び弾性を有するものとして定義される。例えば、質量は1mあたり50kgとすることができる。同様に、複数のまくらぎ要素120A乃至120Dは、レール要素110に対して所定の間隔毎に固定配置された略矩形の剛体としてモデル化されたもので、個々のまくらぎ30及び締結装置の合計の半分(片側レール分)と同等の質量を有するものとして定義される。なお、まくらぎ要素120A乃至120Dは、まくらぎ30に対応する位置に配置されるため、使用目的に応じて、現地の間隔や、まくらぎ30の実際の配置を計測せずとも、例えば、まくらぎ30の設計上の間隔に対応する位置に配置すればよい。
複数のまくらぎ要素120A乃至120Dの下面には、上述のように、まくらぎ30の下面を支持するバラスト層20の上面を模擬した鉛直方向のバネ要素130A乃至130Dがそれぞれ配置される。ここで、上記したようにバラスト軌道50において軌道検測車62の走行時に、バラスト層20に対するまくらぎ30の隙間に応じてレール40がたわむ。
ここで、まくらぎ30とバラスト層20との間には隙間を有するので、かかる隙間に相当する変位に至るまでは圧縮方向の反力を負荷されない状態を維持する。一方、まくらぎ30をバラスト層20へ接触させてからさらに荷重を付与するとまくらぎ30から反力を受ける。そこで、バネ要素130A乃至130Dは、所定長を有するとともにバラスト層20の上面の形状に対応したクリアランスを設けて配置され、変位によってバラスト層20に接触し反力を受けたときに縮むものとしてバラスト層20との弾性的な接触を模擬する。上記したように、復元波形をバラスト層20の上面の形状としてみなした場合には、復元波形に対してクリアランスを設けることができる。このように、バネ要素130A乃至130Dは、クリアランスによって非線形特性を有するように設定される。なお、バラスト軌道モデル100においては、説明を単純化するためにまくらぎ要素及びバネ要素をそれぞれ4つずつ設けた場合を例示しているが、実際の要素数は必要に応じて適宜設定される。
例えば、得られた復元波形Wにおいて最も高さの高い点(高位点)を抽出し(例えば点PA)、この高位点PAを通る水平基準線Sを決定する。すると、各まくらぎ要素120A乃至120Dは、レール要素110のたわみによって水平基準線Sの高さから降下すると、水平基準線Sから復元波形Wまでの隙間Gの距離までは反力が負荷されず、隙間Gと同じ距離だけ降下してから反力を負荷されこれを上昇させることになる。
すなわち、図4(b)に示すように、たわみ(レール要素110のたわみによるまくらぎ要素120A乃至120Dの降下距離)を一定値(隙間Gに相当し、それぞれ0、DB、DC、DD)とするまで反力が負荷されず、その後たわみに伴って反力が上昇するのである。この隙間Gに相当する距離は復元波形W及び水平基準線Sの差分によって得ることができる。
このようなバラスト軌道モデル100を用い、レール要素110に下向きの所定荷重を負荷したときの釣り合いからレール要素110のたわみ形状を数値計算する。ここでは、所定荷重として軌きょうの質量を負荷する。つまり、軌道検測車のような重量物を支持しておらず、レール要素110及び複数のまくらぎ要素120A乃至120Dによる自重のみを負荷したときのレール要素110のたわみ形状をレール要素110の剛性に基づき釣り合いから計算する。これにより、鉛直方向のたわみ形状を推定でき、バラスト軌道の支持状態を推定できる。
続いて、浮きまくらぎを推定する場合、復元波形Wと得られたレール要素110のたわみ形状とを重ね合わせ、その差分に基づいて各バネ要素130A乃至130Dの反力を得ることで各まくらぎ要素120A乃至120Dの下面の圧力を得る。この圧力によってまくらぎ要素120B乃至120Dが浮きまくらぎの状態にあるか否かを推定できる。また、下面圧力は、レール高温時の軌きょう座屈に影響する道床横抵抗力の推定にも有用である。
次に、図5を用いて、上記したバラスト軌道の支持状態推定方法で実際に得られた各種パラメータについて説明する。
まず図5(a)に示すように、対象となる区間のバラスト軌道におけるキロ程に対するレール上面変位である復元波形Wが得られた。
続いて、図5(b)に示すように、復元波形に数値計算によって得られたたわみ形状Dを重ね合わせた。なお、レール40をほとんどたわませないような軽量な軌道検測装置を用いた現地での実際のレール高さの測定結果と数値計算によって得られたたわみ形状とを比較したところ、両者は概ね良好に一致しており、上記したバラスト軌道の支持状態推定方法によって得られたたわみ形状が妥当な結果であることが裏付けられた。
図5(c)に示すように、復元波形とたわみ形状との差分を算出するとキロ程に対応するまくらぎ毎の浮き量Flを示すグラフが得られた。これにより、対象となる区間での浮きまくらぎの位置を推定することができた。
次に、図5(d)に示すように、キロ程に対応するまくらぎ要素毎のバネ要素に負荷される圧縮方向の反力(圧縮反力)Cを演算した。これにより、軌きょうの自重が作用した際に、まくらぎ30の下面がバラスト層20の上面をどの程度押圧するかを推定することができた。例えば、この反力が0の箇所では、浮きまくらぎ状態となっているということもできる。
以上のように、上記したバラスト軌道の支持状態推定方法によれば、軌道検測車を走行させるなどして下向きの荷重を付与しながら得られるデータだけでバラスト軌道の支持状態を推定できるから、軌道についての実測を別途行う必要がなく、作業性が良い。また、数値計算によって得られたたわみ形状もレール40をほとんどたわませないような軽量な軌道検測装置を用いた現地での実際のレール高さの測定結果に概ね合致しており、高い測定精度を得られる。つまり、測定精度と作業性とを両立させてバラスト軌道の支持状態を推定することができる。
また、復元波形とたわみ形状とを重ね合わせてその差分に基づいたバネ要素の反力からまくらぎ毎の下面圧力を得ることで浮きまくらぎを推定でき、例えば軌道の座屈安定性について検討するための重要なデータとなる。
以上、本発明による代表的な実施例及びこれに伴う変形例について述べたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、適宜、当業者によって変更され得る。すなわち、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
例えば、上記実施例においては、演算処理を行うコンピュータ74を軌道検測車に搭載させた場合を例示したが、例えば軌道検測車で計測したデータを別の場所に配置したコンピュータで演算処理するように構成してもよい。
10 路盤
20 バラスト層
22 バラスト
30 まくらぎ
40 レール
50 バラスト軌道
60 評価システム
62 軌道検測車
64 台車
66 車輪
70 計測ユニット
72 変位センサ
74 コンピュータ
100 バラスト軌道モデル
110 レール要素
120A、120B、120C、120D まくらぎ要素
130A、130B、130D、130D バネ要素


Claims (11)

  1. 一対のレールに沿ってまくらぎを所定間隔で与えた軌きょうをバラスト道床の上に支持させたバラスト軌道の支持状態の推定方法であって、
    前記レールの一方について長手方向及び鉛直方向に二次元断面モデルを設定した上で、軌道検測機構を有する車両を走行させることにより前記レールに沿って下向きに荷重を付与しながら測定された前記レールの上面の高低変位から得られる復元波形をバラストの表面形状として推定し、推定された前記表面形状の上に支持された自重を有する梁と前記レールをみなして前記レールのたわみ形状を数値計算して、前記復元波形及び前記たわみ形状から前記支持状態を推定する方法において、
    まくらぎの対応位置毎に、前記レール及び前記復元波形の間に鉛直に所定長の支持バネを前記復元波形に対応したクリアランスを設けて配置するとともに前記レールに下向きの所定荷重を与えたとしたときの前記たわみ形状数値計算ることを特徴とするバラスト軌道の支持状態推定方法。
  2. 記まくらぎの前記対応位置毎に、前記支持バネを鉛直上向きに前記復元波形の上に与えたとしたときの前記たわみ形状を数値計算ることを特徴とする請求項1記載のバラスト軌道の支持状態推定方法。
  3. 前記復元波形の最高位点を通る水平基準線を決定し、
    記まくらぎの前記対応位置毎に、前記復元波形及び前記水平基準線の差分を算出し前記水平基準線の下に前記差分に対応した間隙を設けて前記支持バネを鉛直に配置してその下端を固定したとしたときの前記たわみ形状を数値計算ることを特徴とする請求項1記載のバラスト軌道の支持状態推定方法。
  4. 前記所定荷重は、前記軌きょうの質量に対応することを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載のバラスト軌道の支持状態推定方法。
  5. 前記復元波形及び前記たわみ形状を重ね合わせたときの差分に基づいた前記支持バネの反力から前記まくらぎ毎の下面圧力を得ることを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載のバラスト軌道の支持状態推定方法。
  6. 一対のレールに沿ってまくらぎを所定間隔で与えた軌きょうをバラスト道床の上に支持させたバラスト軌道において該レールの一方について長手方向及び鉛直方向の二次元断面モデルでの支持状態を推定するプログラムであって、
    軌道検測機構を有する車両を走行させることにより前記レールに沿って下向きに荷重を付与しながら測定された前記レールの上面の高低変位から復元波形を得る手段と、前記復元波形をバラストの表面形状として推定し、推定された前記表面形状の上に支持された自重を有する梁と前記レールをみなして前記レールのたわみ形状を数値計算する計算手段と、を含み、
    前記計算手段は、前記まくらぎの対応位置毎に、前記レール及び前記復元波形の間に鉛直に所定長の支持バネを前記復元波形に対応したクリアランスを設けて配置するとともに前記レールに下向きの所定荷重を与えたとしたときの前記たわみ形状を数値計算することを特徴とするバラスト軌道の支持状態推定プログラム。
  7. 前記支持バネを前記まくらぎの前記対応位置毎に鉛直上向きに前記復元波形の上に与えて前記たわみ形状を数値計算することを特徴とする請求項6記載のバラスト軌道の支持状態推定プログラム。
  8. 前記復元波形の最高位点を通る水平基準線を決定し、前記まくらぎの前記対応位置毎に、前記復元波形及び前記水平基準線の差分を算出し、前記水平基準線の下に前記差分に対応した間隙を設けて前記支持バネを鉛直に配置してその下端を固定し、前記たわみ形状を数値計算することを特徴とする請求項6記載のバラスト軌道の支持状態推定プログラム。
  9. 前記復元波形及び前記たわみ形状を重ね合わせ、前記たわみ形状よりも前記復元波形が下側にある区間の前記まくらぎを特定することを特徴とする請求項6乃至8のうちの1つに記載のバラスト軌道の支持状態推定プログラム。
  10. 前記復元波形及び前記たわみ形状を重ね合わせたときの差分に基づいた前記支持バネの反力から前記まくらぎ毎の下面圧力を得ることを特徴とする請求項6乃至9のうちの1つに記載のバラスト軌道の支持状態推定プログラム。
  11. 請求項6乃至10のうちの1つのプログラムを実行するコンピュータとこれを搭載した前記軌道検測機構を有する前記車両とからなることを特徴とするバラスト軌道の支持状態推定システム。
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