JP7000362B2 - 軌道支持状態の推定方法、そのプログラム及び推定システム - Google Patents

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Description

本発明は、軌きょうの道床上における軌道の支持状態を推定する方法、そのプログラム及び推定システムに関し、特に、軌道上を走行する鉄道車両の車上で測定されるデータのみで軌道支持状態を推定する方法、そのプログラム及び推定システムに関する。
一対のレールに沿って複数のまくらぎを所定間隔で格子状に組み上げて与えられる軌きょうは、路盤上の砕石や砂利等からなるバラストを敷き詰めた道床によってその荷重を分散させて支持されている。そして、軌道上を鉄道車両が走行すると、該車両を支持する反力としての荷重はレールからまくらぎへと伝達し、更に、バラスト層から路盤へと分散されていく。
このようなバラスト軌道において、鉄道車両からの荷重がレールを含む軌きょうに負荷されるたびに、その下側にあるバラストは個々に移動し、又、破砕されて沈下していく。一方、軌きょうはレールの弾性復元力によって元の高さ位置を維持しようとするため、バラストの沈下表面との間に空間が生じてしまう。このバラスト層の上面とまくらぎの下面との間の非接触の状態を、いわゆる「浮きまくらぎ」と称している。
例えば、特許文献1には、バラスト軌道の品質管理方法として、測定される軌道支持剛性の分布からバラツキの大きい箇所を不良箇所として特定して上記したような「浮きまくらぎ」を検出する方法が開示されている。軌道支持剛性の測定方法としては、載荷板上に重錘を自由落下させて衝撃荷重を加える小型FWD(Falling Weight Deflectometer)装置を用いて測定するとしている。
また、特許文献2には、列車荷重より小さな試験荷重をレールに載荷するFWDにおいて、載荷点の載荷荷重及びレールの変位を測定し、測定結果と推定式とに基づいて列車荷重が載荷されたときのレールの変位を推定し、列車通過時の軌道支持剛性を推定する方法を開示している。
更に、特許文献3では、線路脇に設けられて、軌道付近の磁界を検出し且つ該磁界を表すデータを生成するセンサによって軌道付近の磁界の変化を識別し、上記した「浮きまくらぎ」について、まくらぎが過度に上下動する軌道支持状態として検出する軌道変化測定システムを開示している。
特開2014-234693号公報 特開2018-66146号公報 特表2009-504501号公報
FWDを用いた軌道支持剛性の測定では、人手による煩雑な作業が必要となり、特に、長い測定区間では作業性が悪くなる。また、線路脇などの地上にセンサを設ける方法も、コスト面や測定区間を限定してしまうなどの問題がある。そこで、軌道上を走行する鉄道車両の車上で測定されるデータから軌道支持状態を測定できる方法が求められた。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、軌道変位を測定する検測機構を与えられた車両を用いて、車上で測定されるデータのみで軌道の支持状態の推定を与える方法、そのプログラム及びシステムを提供することにある。
本発明者らは、従来のようなFWDを使用せず、軌道検測車等の軌道変位を測定する検測機構を与えられた車両によってレールに沿った下向きの荷重を付与した状態での上下方向の動的変位の波形を測定することで、バラスト軌道を含むバラスト軌道の支持状体を推定することに想到した。ここでは、動的変位のデータから軌道の構造解析に用いられる弾性支持モデルを応用した自重解析を用いている。
詳細には、本発明による方法は、一対のレールに沿ってまくらぎを所定間隔で配置した軌きょうを道床の上に支持させた軌道支持状態の推定方法であって、前記レールに沿って下向きに荷重を付与しながら測定された前記レールの上面の高低変位から得られる復元波形に対して対象計算区間を設定し、前記対象計算区間において前記まくらぎの位置に対応させ且つ等間隔に前記レールの長手方向に沿って支持点を設定し、前記対象計算区間内のモデル計算区間を設定し、前記モデル計算区間にある前記レール及びまくらぎを対応する長さのはり部材とみなしてこの下面を対応する前記支持点でバネ要素にて支持する軌きょうモデルを定義して軌道支持状態を推定する方法において、前記モデル計算区間に対応する前記復元波形における範囲の最高位データの高さ位置を通る水平基準線の上に前記軌きょうモデルを配置し、前記はり部材にその自重が載荷されたときの前記バネ要素ごとの変位量を演算し、前記変位量に基づいて前記バネ要素と前記復元波形との間の隙間が略ゼロとなるように、前記バネ要素に対応する位置ごとに前記はり部材に下向きに載荷されるべき追加的な相当荷重をそれぞれ算出することにより、前記軌道支持状態を推定することを特徴とする。
かかる発明によれば、軌道変位を測定する検測機構を有する車両を走行させて下向きの荷重を付与しながらレール上面の高低変位の測定を行うことにより、軌道支持状態を示すパラメータの1つとしての相当荷重を得られるのである。
上記した発明において、前記バネ要素に対応する位置ごとに前記相当荷重を載荷したときに、その位置での前記バネ要素と前記復元波形との局所隙間を算出することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、軌道支持状態を示す1つとしてのパラメータとしての局所隙間を得られるのである。
上記した発明において、更に、前記局所隙間の総和が所定の判定閾値よりも大である場合に、全ての前記局所隙間を略ゼロとなるように更に個々の前記バネ要素に対応する位置ごとに相当荷重を算出し、これに基づいて局所隙間をさらに算出する計算ステップを、全ての前記局所隙間の総和を前記判定閾値よりも小さくなるまで繰り返すことを特徴としてもよい。ここで、前記中央位置における前記局所隙間である代表隙間について、前記モデル計算区間の位置を移動させて所定範囲の前記代表隙間の分布を求め、前記軌道支持状態を推定することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、軌道支持状態を示すパラメータをより正確に得られるのである。
また、本発明によるプログラムは、一対のレールに沿ってまくらぎを所定間隔で配置した軌きょうを道床の上に支持させた軌道支持状態を推定するプログラムであって、前記レールに沿って下向きに荷重を付与しながら測定された前記レールの上面の高低変位から得られる復元波形に対して対象計算区間を設定し、前記対象計算区間において前記まくらぎの位置に対応させ且つ等間隔に前記レールの長手方向に沿って支持点を設定し、前記対象計算区間内のモデル計算区間を設定し、前記モデル計算区間にある前記レール及びまくらぎを対応する長さのはり部材とみなしてこの下面を対応する前記支持点でバネ要素にて支持する軌きょうモデルを定義して軌道支持状態を推定するプログラムにおいて、前記モデル計算区間に対応する前記復元波形における範囲の最高位データの高さ位置を通る水平基準線の上に前記軌きょうモデルを配置し、前記はり部材にその自重が載荷されたときの前記バネ要素ごとの変位量を演算する手段と、前記変位量に基づいて前記バネ要素と前記復元波形との間の隙間が略ゼロとなるように、前記バネ要素に対応する位置ごとに前記はり部材に下向きに載荷されるべき追加的な相当荷重をそれぞれ算出する手段と、を含み、前記軌道支持状態の推定を与えることを特徴とする。
かかる発明によれば、軌道変位を測定する検測機構を有する車両を走行させて下向きの荷重を付与しながらレール上面の高低変位の測定を行うことにより、軌道支持状態を示すパラメータの1つとしての相当荷重を得られるのである。
上記した発明において、前記相当荷重を前記バネ要素に対応する位置ごとにそれぞれ載荷し、その位置での前記バネ要素と前記復元波形との局所隙間を算出する手段を更に含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、軌道支持状態を示す1つとしてのパラメータとしての局所隙間を得られるのである。
上記した発明において、前記局所隙間の総和が所定の判定閾値よりも大であるかどうかを判別し、大である場合に全ての前記局所隙間を略ゼロとなるように更に個々の前記バネ要素に対応する位置ごとに相当荷重を算出し、これに基づいて局所隙間をさらに算出する手段を含み、全ての前記局所隙間の総和が前記判定閾値より小さくなるまで計算を繰り返すことを特徴としてもよい。ここで、前記中央位置における前記局所隙間である代表隙間について、前記モデル計算区間の位置を移動させて所定範囲の前記代表隙間の分布を求める手段を含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、軌道支持状態を示すパラメータをより正確に得られるのである。
また、本発明による、軌道支持状態の推定システムは、上記したプログラムを実行することを特徴とする。かかる発明によれば、軌道変位を測定する検測機構を有する車両を走行させて下向きの荷重を付与しながらレール上面の高低変位の測定を行うことにより、軌道支持状態を示すパラメータを得られるのである。
本発明による軌道支持状態の推定システムのブロック図である。 バラスト軌道の側面図である。 軌道支持状態の推定方法のフロー図である。 軌道支持状態の推定方法に用いる解析モデルを説明する図である。 図4に示した解析モデルにおける力の釣り合いを説明する図である。 図3に示したフロー図の隙間演算(S2)の詳細説明のフロー図である。 図5のフロー図の第1の変形例である。 図5のフロー図の第2の変形例である。 軌道支持状態の推定方法で実際に得られた各種パラメータのグラフである。
本発明による軌道支持状態の推定方法、その方法を実施させるプログラム及び軌道支持状態の推定システムの具体的な実施態様について、図1乃至9を用いて説明する。なお、以下の実施例及び変形例においては、軌きょうを支持する道床としてバラスト道床を適用した場合を例示して説明する。
図1に示すように、軌道支持状態の推定システム60では、一対のレール40の上面を走行する軌道変位を測定する検測機構61を有する車両62、一般には、軌道検測車によって測定されたデータから、レール40の上面の高低変位である復元波形を求め、計算が行われる。推定システム60は、演算処理を行い得るコンピュータからなり、軌道の支持状態を推定するプログラムが内蔵されており、かかるプログラムに基づいて演算処理が実行される。プログラムでは、はり(梁)を等間隔に非線形バネで支持させた有限長さの等間隔弾性支持モデルを採用し、はりのたわみ(撓み)と設定された隙間との位置関係により、外力としてのはりの自重と反力の釣り合いを考慮して該たわみを補正し、軌道の支持状態を推定するものである。
ここで、バラスト軌道50の構造、及び軌道の支持状態の1つの状態例として「浮きまくらぎ」の形成について、概ね以下のように説明される。
図2(a)に示すように、バラスト軌道50は、路盤10と、その上に砕石や砂利等の多数のバラスト22を敷き詰めて形成されたバラスト層20と、バラスト層20の上面に載置された複数の所定間隔で配置されたまくらぎ30と、まくらぎ30に固定されたレール40とを含む。ここで、バラスト層20の沈下が生じていない場合では、複数のまくらぎ30の下面はそれぞれバラスト層20の上面と接触し、バラスト層20に支持されている。なお、実際のバラスト層20には、まくらぎ30の下面よりも高い位置まで積層されるが、後述するように、バラスト層20をまくらぎ30を支持する層としたモデルを考慮するため、まくらぎ30の下面に当接する面をバラスト層20の上面とする。
ここで、図2(b)に示すように、個々のバラスト22は、鉄道車両の走行などによってまくらぎ30からの力を繰り返し受けるなどして互いに変位し、バラスト層20の上面を沈下させることがある。このとき、複数のまくらぎ30とレール40とは通常、締結装置(図示せず)により固定されているため、まくらぎ30及びレール40の自重による撓みによってもなおまくらぎ30の下面とバラスト層20の上面との間に空隙Gを生じる、いわゆる「浮きまくらぎ」の状態となることがある。
図2(c)に示すように、このような浮きまくらぎの状態で車両等が走行すると、レール40の上面を走行する車輪66から鉄道車両の重量に相当する下向きの荷重Fを受けるため、レール40は空隙Gに相当する分だけたわむ(弾性変形する)ことができる。このとき、荷重Fによるたわみ量を空隙Gよりも大としようとする場合には、個々のまくらぎ30の下面はバラスト層20の上面と接触して反力Rを負荷される。
バラスト軌道50における軌道支持状態を推定するには、以下のような方法を考慮する。
図3に沿って説明すると、まず、軌道検測車62を走行させながらレール40に沿って下向きの荷重を付与することによってレール上面の動的な高低変位を得て、これに基づいて復元波形Wを得る(S1)。高低変位は軌道検測機構61によって軌道上のキロ程に対して位置合わせされ、適宜、フィルタ処理等が行われて、復元波形が得られる。
なお、軌道検測車62における高低変位の計測においては、レール40に軌道検測車62の重量が負荷されながら計測される。よって、得られた復元波形Wは、バラスト層20に対するまくらぎ30の隙間に応じてたわんだレール40の形状になる(図2(c)参照)。そこで、この復元波形Wをバラスト層20の上面の形状としてみなし得る。この復元波形Wに対して所定の対象計算区間を設定し、当該対象計算区間においてレール40のキロ程に対応させてまくらぎ30に相当する位置にS個の支持点P~P(但し、Sは自然数)を設定する。
次いで、図4に示すような軌きょうモデルを用いて、レール40が自重によってたわんだ際のレール形状及びまくらぎを含む軌道の支持状態を表す各種パラメータを演算する(S2)。
詳細には、図4(a)に示すように、レール40の長手方向及び鉛直方向の直線を含む平面による2次元断面モデルである軌きょうモデル100を用いる。軌きょうモデル100は、上記した対象計算区間よりも短い長さでレールを模擬したレール要素110と、複数のまくらぎを模擬したまくらぎ要素120A~Dと、個々のまくらぎの下面とバラスト層との弾性的な接触を模擬したバネ要素130A~Dと、により構成されている。
レール要素110は、レール40と同等の質量及び弾性を有するものとして定義されるものであり、例えば、質量は1mあたり50kgとすることができる。同様に、複数のまくらぎ要素120A~Dは、レール要素110に対して所定の間隔ごとに固定配置された略矩形の剛体としてモデル化されたもので、個々のまくらぎ30及び締結装置の合計の半分(片側レール分)と同等の質量を有するものとして定義される。
なお、まくらぎ要素120A~Dは、上記支持点と同様に、まくらぎ30に対応する位置に等間隔に配置される。このため、使用目的に応じて、現地の間隔や、まくらぎ30の実際の配置を計測せずとも、例えば、まくらぎ30の設計上の間隔に対応する位置に配置すればよい。また、後述するが、軌きょうモデル100を用いた実際の演算においては、レール要素110とまくらぎ要素120とは、一体の2次元はりとみなしてモデル化される。
複数のまくらぎ要素120A~Dの下面には、上述のように、まくらぎ30の下面を支持するバラスト層20の上面を鉛直方向に模擬した長さLのバネ要素130A~Dがそれぞれ配置される。ここで、上記したようにバラスト軌道50において軌道検測車62の走行時に、バラスト層20に対するまくらぎ30の隙間に応じてレール40がたわむ。
ここで、まくらぎ30とバラスト層20との間には隙間を有するので、かかる隙間に相当する変位に至るまでは圧縮方向の反力を負荷されない状態を維持する。一方、まくらぎ30をバラスト層20へ接触させてからさらに荷重を付与するとバラスト層20から反力を受ける。そこで、バネ要素130A~Dは、所定長Lを有するとともにバラスト層20の上面との間にその形状に対応したクリアランス(隙間ε)を設けて配置され、変位によってバラスト層20に接触し反力を受けたときに縮むものとしてバラスト層20との弾性的な接触を模擬する。
上記したように、復元波形Wをバラスト層20の上面の形状としてみなした場合には、バネ要素130A~Dの下端が復元波形Wと接触しない場合、両者の間にはクリアランスεが定義され、バネ要素130A~Dは当該クリアランスεによって非線形特性を有するように設定される。なお、図4に示した軌きょうモデル100においては、説明を単純化するためにまくらぎ要素及びバネ要素をそれぞれ4つずつ設けた場合を例示しているが、実際の要素数は必要に応じてPM-n~PMの2n+1箇所(但し、nはS/2より小さい自然数)の位置に適宜設定される。
例えば、得られた復元波形Wにおけるモデル計算区間に対応する所定範囲で最も高さの高い点(高位点)を抽出し(例えば点PA)、この高位点PAを通る水平基準線HLを決定する。すると、各まくらぎ要素120A~Dは、レール要素110のたわみによって水平基準線HLの高さから降下すると、水平基準線HLから復元波形Wまでの鉛直方向差分Gの距離までは反力が負荷されず、鉛直方向差分Gと同じ距離だけ降下してから反力を負荷されこれを上昇させることになる。
すなわち、図4(b)に示すように、たわみ(レール要素110のたわみによるまくらぎ要素120A~Dの降下距離)を一定値(鉛直方向差分Gに相当し、それぞれ0、DB、DC、DD)とするまで反力が負荷されず、その後たわみに伴って反力が上昇するのである。この鉛直方向差分Gに相当する距離は復元波形W及び水平基準線HLの差分によって得ることができる。
このような軌きょうモデル100を用い、レール要素110に下向きの所定荷重を負荷したときの釣り合いからレール要素110のたわみ量を演算する。ここでは、所定荷重としてレール要素110とまくらぎ要素120とを合算した質量を負荷する。つまり、軌道検測車のような重量物を支持しておらず、レール要素110及び複数のまくらぎ要素120A~Dを一体のはり部材とみなして、当該はり部材による自重のみが負荷されたときのたわみ量をレール要素110の剛性に基づき釣り合いから計算する。これにより、鉛直方向のたわみ形状を推定できるとともに、軌道支持状態をも推定できる。
具体的には、図5に示すように、有限長のはり部材110aを等間隔の(2n+1)本の接触を考慮した非線形バネ130aで支持した等間隔弾性支持モデルと仮定した場合に、いわゆる三連モーメントの公式を用いて、モデル中央の支持点PMの箇所に所定の荷重LDが載荷されたときの変位yと、荷重に対する各支持点でのバネ反力の割合である荷重分散率Fとを算出する。なお、ここでは、各支持点とバネとの間に隙間が存在しない条件を考える。
図5に示したモデルは支持点0を中心に左右対称となるため、三連モーメントの式は、以下の式1で表される。
Figure 0007000362000001
ここで、i=2~nの自然数を意味する。
なお、i=1の場合は、M=M-1であるから、以下の式2が得られる。
Figure 0007000362000002
となり、また、力の釣り合いの関係は、以下の式3で表される。
Figure 0007000362000003
ここで、Mは支持点番号iにおけるはりの曲げモーメント、kはバネ定数をそれぞれを意味する。また、式1及び式2におけるBは、以下の式4で表される。
Figure 0007000362000004
ここで、EIははりの曲げ剛性、aはバネの配置間隔をそれぞれ意味する。
そして、端部(n番目の支持点)の位置が載荷点より十分に遠いものとすると、M=0とみなすことができることから、各支持点における曲げモーメントと変位との関係は、以下の式5で表される。
Figure 0007000362000005
これらの式1乃至式5を変位yについて解くと、以下の式6が得られる。
Figure 0007000362000006
ここで、Y、A、Cはいずれも行列式として与えられる。そして、荷重分散率Fは、以下の式7で与えられる。
Figure 0007000362000007
ここで、FもYと同様に行列式として表される。これらの式を用いて、軌きょうモデル100におけるレール要素110の力の釣り合いとたわみを演算して推定することができる。
図3に示した、軌きょうモデルを用いたまくらぎ位置での各種パラメータの演算(S2)は、図6に示すとおり、復元波形Wに軌きょうモデル100を載置する軌きょうモデル配置工程(S21)と、軌きょうモデル100のバネ要素130ごとの復元波形Wとの隙間εを算出する隙間算出工程(S22)と、算出された隙間εに基づいてバネ要素130ごとに載荷されるべき相当荷重EFを算出する相当荷重算出工程(S23)を含む。
より詳細には、軌きょうモデル配置工程(S21)は、図4に示した軌きょうモデル100を設定し、これを対象計算区間におけるm番目の支持点P(但し、mは1≦m≦S-2nの自然数)に図4に示した軌きょうモデル100のPM-nのバネ要素130が位置し、かつ復元波形Wにおける上記モデル計算区間に対応する所定範囲での最高位データの高さ位置PAに配置する。次いで、隙間算出工程(S22)では、レール要素110及びまくらぎ要素120を併せたはり部材の自重を考慮することにより、軌きょうモデル100全体が水平基準線HLから自重でたわんだ場合の2n+1箇所のバネ要素130と復元波形Wとの隙間ε(S)を、複数のバネ要素130の位置ごとに算出する。すなわち、複数のバネ要素130の位置の各々において、隙間ε(S)は、所定位置のバネ要素130が自重で下がった変位量をΔ0(S)と、図4に示したバネ要素130の下端及び復元波形Wの鉛直方向差分Gと、バネ要素130の長さLとを用いて、以下の式8で表される。
Figure 0007000362000008
続いて、相当荷重算出工程(S23)では、S箇所のまくらぎ位置でそれぞれ算出された隙間ε(S)を0とするために、当該隙間ε(S)が形成された位置に追加的に載荷されるべき相当荷重EFを、まくらぎ位置のそれぞれで算出する。ここで、バネ要素130ごとの相当荷重EF(S)は、フックの法則にしたがって以下の式9で表される。
Figure 0007000362000009
これらの2n+1箇所におけるバネ要素130ごとの相当荷重により、軌道の支持状態が推定できる。例えば、ある位置での相当荷重が0の場合は、バネ要素130が復元波形Wに接しているものと考えられる。一方、別の位置での相当荷重が存在する場合は、バネ要素130が復元波形Wとの間に局所隙間を有することを意味する。したがって、「浮きまくらぎ」のおおよその位置が把握できるのである。
なお、図6に示すように、相当荷重算出工程(S23)の後に、算出されたS箇所のバネ要素130の相当荷重EFを載荷した際に、それぞれのバネ要素130が下方に変位したときの残留隙間(局所隙間)Δ1を算出する局所隙間算出工程(S24)をさらに実施してもよい。局所隙間算出工程(S24)では、2n+1箇所の支持点の個々の位置において、相当荷重算出工程(S23)で算出された対応する相当荷重EF(S)を載荷したと仮定した場合に、個々のバネ要素130と復元波形Wとの間でさらに残存する隙間を算出し、所定位置に相当荷重EF(S)を載荷したときのSの位置での局所隙間Δ1(S)を得る。このとき、局所隙間Δ1(S)が正の場合は、まくらぎがバラスト道床から浮いた状態であると考えることができる。これにより、軌道支持状態をさらに精度よく推定することができる。
さらに、軌きょうモデルを用いたまくらぎ位置での各種パラメータの演算(S2)は、図6に示したフローに代えて、図7に示すフローによって実施してもよい。すなわち、図7に示す第1の変形例においては、図6に示した局所隙間算出工程(S24a)の後に、算出された局所隙間Δ1(S)が略ゼロとなるよう、つまり、全て所定の判定閾値以下であるかどうかを判別する判別工程(S24b)を設ける。このとき、算出された局所隙間Δ1(S)の総和が判定閾値以下の場合はそのまま最終的な隙間の特定(S25)に進むが、算出された局所隙間Δ1(S)の総和が判定閾値より大となる場合には、再び隙間算出工程(S22)に戻って、隙間算出工程(S22)から局所隙間算出工程(S24a)までの計算ステップを繰り返し実行する(本明細書においては、この動作を「2次局所隙間算出工程」と称する。)。
ここで、上記した2次局所隙間算出工程においては、既にいったん算出した隙間εと局所隙間Δ1との関係により、以下のように場合分けして所定位置での2次相当荷重EF2を算出する。
(1)Δ1>Δ0>εの場合
バネ要素130と復元波形Wとの間に既に隙間εが存在しないため、EF2=0となる。
(2)Δ1>ε≧Δ0の場合
1次相当荷重として既にkΔ0が載荷されていることを考慮し、EF2=k(ε―Δ0)となる。
(3)ε≧Δ1>Δ0の場合
(2)の場合と同様に、1次相当荷重として既にkΔ0が載荷されていることを考慮し、EF2=k(Δ1-Δ0)となる。
(4)Δ0>Δ1>εの場合
バネ要素130と復元波形Wとの間に既に隙間εが存在しないため、EF2=0となる。
(5)Δ0>ε≧Δ1の場合
1次相当荷重として既にkεが載荷されていることを考慮し、EF2=k(Δ1-ε)となる。
(6)ε≧Δ0>Δ1の場合
(2)の場合と同様に、1次相当荷重として既にkΔ0が載荷されていることを考慮し、EF2=k(Δ1-Δ0)となる。
上記のように場合分けして検討された2次相当荷重EF2を用いて、2次局所隙間Δ2(S)を算出する。そして、算出された2次局所隙間Δ2(S)が全て上記した判定閾値以下となるかどうかを再度判別し(S24b)、No判定の場合には、さらにS22からS24までの工程を繰り返す。こうして個々のバネ要素130に載荷される相当荷重EFと局所隙間Δnとをフィードバックして算出し直すことにより、たわみの演算精度をより高めることが可能となる。
また、軌きょうモデルを用いたまくらぎ位置での各種パラメータの演算(S2)は、図6に示したフローに代えて、図8に示すフローによって実施してもよい。すなわち、図8に示す第2の変形例においては、所定位置に相当荷重EF(S)を載荷したときのSの位置での局所隙間Δ1(S)を得て、その中からモデルの代表隙間を算出する代表隙間算出工程(S24c)と、軌きょうモデルの位置をずらして移動させて代表隙間による隙間分布を得る工程(S25b)と、を含む。
第2の変形例においては、図5に示した局所隙間算出工程(S24)に代えて、代表隙間算出工程(S24c)では、軌きょうモデル100の中央位置PMにおけるバネ要素130と復元波形Wとの局所隙間Δ1を、この算出位置におけるモデルの代表隙間と定義する。算出する動作をS回繰り返す。続いて、モデルを載置する支持点Pの位置をずらすことにより軌きょうモデルの演算範囲を変化させて、上記代表隙間による隙間分布を得ることができる(S25b)。
次に、図9を用いて、上記したバラスト軌道支持状態の推定方法で実際に得られた各種パラメータについて説明する。
図9に示すように、上記した推定方法によれば、対象となる区間のバラスト軌道におけるキロ程に対するレール上面変位である復元波形Wと、レールに載荷した自重によるたわみ形状Dと、が得られた。なお、レール40をほとんどたわませないような軽量な軌道変位の検測装置を用いた現地での実際のレール高さの測定結果と本発明の演算によって得られたたわみ形状とを比較したところ、両者は概ね良好に一致しており、上記したバラスト軌道の支持状態推定方法によって得られたたわみ形状が妥当な結果であることが裏付けられた。
そして、図6に示したフローに従って演算を行うことにより、キロ程に対応するまくらぎごとの隙間Hを示すグラフが得られた。これにより、対象となる区間での浮きまくらぎの位置とおおよその隙間の量を推定することができる。
上記した軌道支持状態の推定方法によれば、軌道検測車を走行させるなどして下向きの荷重を付与しながら得られるデータを取得するだけで軌道支持状態を推定できる。軌道についての車上以外の実測を別途行う必要がないため、作業性が良い。また、演算によって得られたたわみ形状から、浮きまくらぎの位置やおおよその隙間の量も精度よく特定することができる。つまり、測定精度と作業性とを両立させて軌道支持状態を推定することができるのである。
以上、本発明による代表的な実施例及びこれに伴う変形例について述べたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、適宜、当業者によって変更され得る。すなわち、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
10 路盤
20 バラスト層
22 バラスト
30 まくらぎ
40 レール
50 バラスト軌道
60 推定システム
62 軌道検測車(車両)
64 台車
66 車輪
70 計測ユニット
72 変位センサ
74 コンピュータ
100 軌きょうモデル
110 レール要素
120A、120B、120C、120D まくらぎ要素
130A、130B、130D、130D バネ要素


Claims (9)

  1. 一対のレールに沿ってまくらぎを所定間隔で配置した軌きょうを道床の上に支持させた軌道支持状態の推定方法であって、
    前記レールに沿って下向きに荷重を付与しながら測定された前記レールの上面の高低変位から得られる復元波形に対して対象計算区間を設定し、
    前記対象計算区間において前記まくらぎの位置に対応させ且つ等間隔に前記レールの長手方向に沿って支持点を設定し、
    前記対象計算区間内のモデル計算区間を設定し、
    前記モデル計算区間にある前記レール及びまくらぎを対応する長さのはり部材とみなしてこの下面を対応する前記支持点でバネ要素にて支持する軌きょうモデルを定義して軌道支持状態を推定する方法において、
    前記モデル計算区間に対応する前記復元波形における範囲の最高位データの高さ位置を通る水平基準線の上に前記軌きょうモデルを配置し、前記はり部材にその自重が載荷されたときの前記バネ要素ごとの変位量を演算し、前記変位量に基づいて前記バネ要素と前記復元波形との間の隙間がゼロとなるように、前記バネ要素に対応する位置ごとに前記はり部材に下向きに載荷されるべき追加的な相当荷重をそれぞれ算出することにより、前記軌道支持状態を推定することを特徴とする軌道支持状態の推定方法。
  2. 前記バネ要素に対応する位置ごとに前記相当荷重を載荷したときに、その位置での前記バネ要素と前記復元波形との局所隙間を算出することを特徴とする請求項1記載の軌道支持状態の推定方法。
  3. 前記局所隙間の総和が所定の判定閾値よりも大である場合に、全ての前記局所隙間をゼロとなるように更に個々の前記バネ要素に対応する位置ごとに相当荷重を算出し、これに基づいて局所隙間をさらに算出する計算ステップを、全ての前記局所隙間の総和を前記判定閾値よりも小さくなるまで繰り返すことを特徴とする請求項2記載の軌道支持状態の推定方法。
  4. 前記中央位置における前記局所隙間である代表隙間について、前記モデル計算区間の位置を移動させて所定範囲の前記代表隙間の分布を求め、前記軌道支持状態を推定することを特徴とする請求項2又は3に記載の軌道支持状態の推定方法。
  5. 一対のレールに沿ってまくらぎを所定間隔で配置した軌きょうを道床の上に支持させた軌道支持状態を推定するプログラムであって、
    前記レールに沿って下向きに荷重を付与しながら測定された前記レールの上面の高低変位から得られる復元波形に対して対象計算区間を設定し、前記対象計算区間において前記まくらぎの位置に対応させ且つ等間隔に前記レールの長手方向に沿って支持点を設定し、前記対象計算区間内のモデル計算区間を設定し、前記モデル計算区間にある前記レール及びまくらぎを対応する長さのはり部材とみなしてこの下面を対応する前記支持点でバネ要素にて支持する軌きょうモデルを定義して軌道支持状態を推定するプログラムにおいて、
    前記モデル計算区間に対応する前記復元波形における範囲の最高位データの高さ位置を通る水平基準線の上に前記軌きょうモデルを配置し、前記はり部材にその自重が載荷されたときの前記バネ要素ごとの変位量を演算する手段と、
    前記変位量に基づいて前記バネ要素と前記復元波形との間の隙間が略ゼロとなるように、前記バネ要素に対応する位置ごとに前記はり部材に下向きに載荷されるべき追加的な相当荷重をそれぞれ算出する手段と、を含み、
    前記軌道支持状態の推定を与えることを特徴とするプログラム。
  6. 前記相当荷重を前記バネ要素に対応する位置ごとにそれぞれ載荷し、その位置での前記バネ要素と前記復元波形との局所隙間を算出する手段を更に含むことを特徴とする請求項5記載のプログラム。
  7. 前記局所隙間の総和が所定の判定閾値よりも大であるかどうかを判別し、大である場合に全ての前記局所隙間を略ゼロとなるように更に個々の前記バネ要素に対応する位置ごとに相当荷重を算出し、これに基づいて局所隙間をさらに算出する手段を含み、全ての前記局所隙間の総和が前記判定閾値より小さくなるまで計算を繰り返すことを特徴とする請求項6記載のプログラム。
  8. 前記中央位置における前記局所隙間である代表隙間について、前記モデル計算区間の位置を移動させて所定範囲の前記代表隙間の分布を求める手段を含むことを特徴とする請求項6又は7記載のプログラム。
  9. 請求項5乃至8のいずれか1項に記載のプログラムを実行することを特徴とする軌道支持状態の推定システム。
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