以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための形態について説明する。
本発明の一実施形態である光ファイバー切断装置は、コネクタが装着された光ファイバー芯線についてそのコネクタから突出した光ファイバーを切断するためのものである。この光ファイバー切断装置の詳しい説明を行う前に、光ファイバー芯線及びそれに装着するコネクタについて説明する。図1(a)は本実施形態の光ファイバー切断装置で切断対象となる光ファイバー芯線の概略断面図、図1(b)はその光ファイバー芯線に装着されたコネクタの概略側面図である。
光ファイバー芯線100は、図1(a)に示すように、光ファイバー110と、その光ファイバーを覆う被覆部120とを備えている。光ファイバー110は、中心部に位置するコア111と、その外側を覆うクラッド112とから構成される。本実施形態では、光ファイバー芯線100として、旭化成株式会社製の型番「TCU-1000」を使用している。また、この光ファイバー芯線100では、コア111及びクラッド112はプラスチックで作製されている。コア111の屈折率はクラッド112の屈折率よりも高くなっている。これにより、光ファイバー110内を伝送する光信号は、全反射や屈折によりコア111の部分だけを伝播することができる。
図1(b)に示すコネクタ200は、それが装着される光ファイバー芯線100を、所定の機器から引き出された光ファイバー芯線に取り付けられたアダプタに接続するためのものである。本実施形態では、コネクタ200として、アバゴテクノロジー製のHFBR-4532Zを用いている。このコネクタ200はプッシュプル型のものである。このため、コネクタ200をアダプタに嵌め込むだけで、両者をしっかりと固定することができる。尚、コネクタ200には、その先端から約16mm離れた部分に段差部250が形成されている。
具体的に、このコネクタ200は、筒状の先端部210と、段差部250から後方の部分である後部220とを有する。コネクタ200の後部は、扉のように開閉可能に構成されている。コネクタ200を光ファイバー芯線100の先端部に装着する場合、まず、光ファイバー芯線100の先端部における被覆部を剥がし、光ファイバー110を露出させる。ここで、例えば、剥がす被覆部の長さは約3.5mmである。次に、コネクタ200の後部220を開いて、その露出した光ファイバー110を含む光ファイバー芯線110の先端部をコネクタ200の先端部210に挿入した後、コネクタ200の後部220を閉じることにより、コネクタ200を光ファイバー芯線100の先端部に取り付ける。このとき、図1(b)に示すように、露出した光ファイバー110の少なくとも一部がコネクタ200の先端から外に突出するようにする。具体的に、コネクタ200を光ファイバー芯線100に装着する際、コネクタ200の先端から突出する光ファイバー110の長さLは、0.5mm~3.0mmとなるようにすることが望ましい。光ファイバー芯線100にコネクタ200を装着する時点で、光ファイバー110をコネクタ200の先端から3mmよりも長く突出させると、本実施形態の光ファイバー切断装置での切断作業時に光ファイバー110に欠けが生じるおそれがあり、一方、この時点で光ファイバー110をコネクタ200の先端から0.5mm未満しか突出させないと、切断作業時に光ファイバー110を切断するのではなくその端面を研磨するようになり、光ファイバー110の切断面が曇ってしまうおそれがあるからである。実際には、コネクタ200の装着時点でコネクタ200の先端から突出する光ファイバー110の長さLは約1.0mmとするのが最も好ましい。こうして、コネクタ200は光ファイバー芯線100の先端部に装着される。コネクタ200は光ファイバー芯線100をしっかりと保持しており、光ファイバー芯線100がコネクタ200から容易にずれたり、外れたりすることはない。
ところで、コネクタ200をアダプタに接続する際には、その接続箇所において、光信号の伝送損失が大幅に低下するのを防止するため、光ファイバー110をコネクタ200から一定の長さだけ突出させると共に、その光ファイバー110の端面をきれいな垂直面に形成することが要求される。本実施形態では、光ファイバーを切断することにより最終的にコネクタ200から突出している光ファイバー110の長さを50~100μmにしたい。本実施形態の光ファイバー切断装置は、上記コネクタ200が装着された光ファイバー芯線100について、そのコネクタ200から突出した光ファイバー110をその長さが一定となるように切断すると共に、その光ファイバー110の切断面をきれいな垂直面に仕上げるためのものである。すなわち、本実施形態の光ファイバー切断装置では、切断対象となるのは、コネクタ200がまだ装着されていない光ファイバー芯線100そのものではなく、コネクタ200が装着された光ファイバー芯線100である。これは、本実施形態の光ファイバー切断装置の一つの特徴点である。
次に、本実施形態の光ファイバー切断装置について詳しく説明する。図2は本実施形態の光ファイバー切断装置の概略正面図、図3はその光ファイバー切断装置の概略右側面図、図4はその光ファイバー切断装置の概略上面図、図5はその光ファイバー切断装置の概略左側面図である。また、図6はその光ファイバー切断装置の概略制御ブロック図である。
本実施形態の光ファイバー切断装置1は、図2乃至図6に示すように、基部10と、固定治具(固定手段)20と、切断刃回転装置30と、昇降装置(昇降手段)40と、ジェットクーラー(冷風発生装置)50と、切断刃回転コントロール部60と、制御盤70と、スタートボタン81と、非常停止ボタン82と、制御部(制御手段)90とを備える。基部10は他の各部を設置するための設置台であり、平板状に形成されている。この基部の横幅は約600mm、縦幅(奥行き)は約460mm、厚さは約10mmである。
図2及び図4に示すように、基板10の中央前側には固定治具20が設けられている。固定治具20は、光ファイバー芯線100に装着されたコネクタ200を、そのコネクタ200の中心軸が水平になるように固定するものである。この固定治具20はステンレス製のものであって板状に形成されている。固定治具20は、金具25を用いて基部10の所定位置に固定されている。固定治部20の高さは約150mm、その横幅は60mm、その厚さは約16mmである。
また、固定治具20にはその厚さ方向に沿って二つの挿入孔21a,21bが形成されている。一方の挿入孔(上側挿入孔)21aは、固定治具20の上端から約15mm下方の位置に形成され、もう一方の挿入孔(下側挿入孔)21bは、上側挿入孔21aからさらに60mm下方の位置に形成されている。これらの挿入孔21a,21bはコネクタ200を挿入するためのものである。各挿入孔21a,21bについては、コネクタ200と当接する部分が高精度で加工されている。このため、コネクタ200を挿入孔21a,21bに挿入すると、コネクタ200はその挿入孔21a,21bに嵌め込まれ、ガタつくことなく、水平状態のまましっかりと固定される。しかも、コネクタ200の先端から約16mm離れた部分には段差部210が形成されており、一方、固定治具20の厚さは約16mmであるので、コネクタ200を各挿入孔21a,21bに挿入すると、コネクタ200の段差部210が固定治具20に突き当たり、コネクタ200の先端が固定治具20の表面位置で止まるようになる。したがって、作業者がコネクタ200を各挿入孔21a,21bに押し入れると、そのコネクタ200はいつも同じ位置に配置される。
図7(a)は本実施形態の光ファイバー切断装置1で用いられる切断刃回転装置30の概略側面図、図7(b)はその切断刃回転装置30における切断具31の概略側面図、図7(c)はその切断具31の刃部312を、その中心軸を含む平面で切ったときの概略断面図である。切断刃回転装置30は、図3乃至図4、図7に示すように、着脱自在な切断具(切断手段)31と、本体部(回転駆動手段)32とを備える。切断具31は、図7(b)に示すように、棒状のシャフト部311と、そのシャフト部311の先端部に設けられた金属製の刃部312とを有する。例えば、切断具31の全長は約38mm、シャフト部311の直径は約3.0mmである。また、本体部32は、切断具31のシャフト部311が装着されると共にシャフト部311を回転軸として駆動することにより切断具31を回転させるものである。
切断具31の刃部312は略逆円錐台の形状に形成されている。例えば、刃部312の先端面の直径は約6.4mm、刃部31の長さは約6.4mmである。この刃部312の側面全体には切断刃が形成され、また、図7(c)に示すように、刃部312の先端面は凹状に形成されている。このように切断刃は刃部312の側面全体に作り込まれているが、本実施形態の光ファイバー切断装置1では、切断刃回転装置30を、シャフト部311の中心軸が水平になるように保持しておき、刃部312の先端だけを使って光ファイバー110を切断することになる。特に、本実施形態では、刃部312を略逆円錐台の形状に形成したことにより、切断時には刃部312の先端縁だけが光ファイバー110と接触するので、光ファイバー110を精度よく切断することができる。また、刃部312の先端面を凹状に形成したことにより、切断時に刃部312の先端面は光ファイバー110と接触しないので、光ファイバー110の切断面を傷付けることなく、きれいに仕上げることができる。この切断具31としては、例えば株式会社ムラキ製の先端工具「CB52B 009」を使用することができる。
尚、光ファイバー110の切断には刃部312の先端だけが使用され、刃部312のその他の部分は使用されないので、切断刃は刃部312の側面のうち少なくとも先端部に形成するようにすればよい。例えば、切断刃は刃部312の側面においてその先端から約1mmのところまでに形成するようにしてもよい。
また、切断刃312としては、ダイヤモンド等を埋め込んだ刃(ダイヤモンド刃)ではなく、金属製の刃を用いている。本実施形態では、切断対象の光ファイバー110としてプラスチック製のものを用いているが、このプラスチック製の光ファイバー110をダイヤモンド刃で切断すると、光ファイバーの切断面が研磨されて曇ってしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、切断具31の刃部312として、例えば研磨粒子等が付着されていない金属製のものを用いているので、プラスチック製の光ファイバー110を切断する場合であっても、その切断面に研磨による曇りを発生させることなく、光ファイバー110の切断面をきれいに鏡面状に仕上げることができる。
本体部32としては、例えば、ミニター株式会社製の切断工具「スタンダードロータリーM212」を用いることができる。この本体部32は、図7(a)に示すように、ヘッド部321と、モータ部322とを有している。切断具31のシャフト部311は、ヘッド部321に差し込んで固定される。ヘッド部321の後部にはモータ部322が取り付けられる。このモータ部322は、切断具31を1分間に最高15000回転駆動することができる性能を有している。
昇降装置40は、図4に示すように基部10のほぼ中央部に設けられている。昇降装置40は、切断刃回転装置30の本体部32を取り付け、その取り付けられた本体部32を上下方向に移動するものである。この昇降装置40は、図2乃至図6に示すように、軸部41と、ヘッド部42と、モータ部43と、変速機44と、案内部46とを備える。
軸部41は略角柱状に形成されており、その中心軸が鉛直方向を向くように配置されている。この軸部41の下端部にはヘッド部42が形成されている。ヘッド部42は、切断刃回転装置30の本体部32を取り付けるためのものである。具体的に、本体部32に装着された切断具31のシャフト部311の中心軸と固定治具20に固定されたコネクタ200の中心軸とが略平行になるように、且つ、本体部32に装着された切断具31の刃部312の先端と固定治具20に固定されたコネクタ200の先端との水平方向距離が所定の距離となるように、本体部32がヘッド部42に取り付けられる。
モータ部43は、変速機44を介して軸部41を上下方向に移動するための回転駆動力を発生するものである。ここで、変速機44は、モータ部43の回転駆動力をその回転数や回転方向を変えて軸部43に伝達する役割を果たす。こうして、モータ部43を駆動させると、軸部41が昇降動作を行い、これにより軸部41の下端部に形成されたヘッド部42及びそのヘッド部42に取り付けられた切断刃回転装置30も上下方向に移動する。本実施形態では、軸部42の下降速度を、例えば約5mm/秒に設定している。また、案内部46は、上下方向に移動するヘッド部42を案内するものである。本実施形態では、案内部46として、図2に示すようにヘッド部42の左側に設けられた鉛直壁面を用い、その鉛直壁面をヘッド部42の左側面と接する位置に配置している。案内部46を設けたことにより、ヘッド部42の昇降動作時には、ヘッド部42に取り付けられた切断刃回転装置30も一定の姿勢を保ったまま上下に移動する。
尚、本実施形態では、昇降装置40のヘッド部42の移動範囲は制限されている。すなわち、上側挿入孔21aから約30mm上方の高さ位置を原点とし、下側挿入孔21bから約20mm下方の高さ位置を最下点としたときに、ヘッド部42の中心は原点と最下点との間でのみ移動可能である。
また、切断刃回転装置30の本体部32をヘッド部42に取り付けたときには、その本体部32に装着される切断具31の位置(すなわち、本体部32から引き出される切断具31の長さ)を調整しなければならない。切断具31の位置調整を行うには、まず、軸部41を下降させて、ヘッド部42を最下点まで移動させる。次に、固定治具20の表面と切断具31の刃部312との間に隙間ゲージを入れる。そして、刃部312の先端面を隙間ゲージに当接させ、その状態を維持したままシャフト部311を切断刃回転装置30のヘッド部321に固定する。例えば、本実施形態では、固定治具20の表面と刃部312の先端面との水平方向距離が0.05mmとなるように切断具31の位置を調整している。
ジェットクーラー50は、切断刃回転装置30の刃部312を冷却するために冷風を発生させるものである。このジェットクーラー50では、例えば-40℃~-50℃の風を発生させることができる。また、ジェットクーラー50には、冷風が発生する部分にノズル51が取り付けられており、そのノズル51の先端は刃部312の近傍に配置される。刃部312が何度も光ファイバー110を切断すると、熱で刃部312の温度が上昇することがあるので、ノズル51から冷風を刃部312に送り込むことにより、刃部312の温度を下げることができる。尚、レギュレータ55は、ジェットクーラー50に送る空気の圧力や量を調整するものである。このレギュレータ55で空気の圧力や量を適切に調整しておくと、ジェットクーラー50で発生させた空気で光ファイバー110の切断カスを吹き飛ばすことができる。
切断刃回転コントロール部60、制御盤70、スタートボタン81、非常停止ボタン82、及び制御部90は、図2及び図4に示すように、基部10の右側に配置されている。
切断刃回転コントロール部60は、切断刃回転装置30の駆動を制御するものである。切断刃回転装置30と切断刃回転コントロール部60とはコード(不図示)で接続されている。この切断刃回転コントロール部60は、図2、図3及び図4に示すように、刃部312の回転速度(単位時間当たりの回転数)を表示する回転速度表示部61と、刃部312の回転方向を切り替える回転方向切替えスイッチ62と、ツマミを回すことによりモータ部322の駆動力を調整するパワー調整部63とを有する。
制御盤70には、本実施形態の光ファイバー切断装置1の動作を制御・操作するための各種の電子部品が納められている。例えば、制御部90はこの制御盤70の中に設けられている。また、制御盤70の正面には各種のボタンが設けられている。図8は本実施形態の光ファイバー切断装置1における制御盤70に設けられた各種ボタンを説明するための図である。制御盤70の正面に設けられた各種ボタンとしては、図6及び図8に示すように、電源ボタン71と、原点復帰ボタン72と、切断モード選択スイッチ73と、ヘッド部上昇ボタン74aと、ヘッド部下降ボタン74bと、切断刃回転ONボタン75aと、切断刃回転OFFボタン75bと、クーラーONボタン76aと、クーラーOFFボタン76bとがある。制御部90は、制御盤70の各種ボタンからの指令信号、スタートボタン81又は非常停止ボタン82からの指令信号を受けたときに、その指令信号に応じた内容の制御を行う。
電源ボタン71は、本実施形態の光ファイバー切断装置1の電源のON/OFFを切り替えるものである。原点復帰ボタン72は、昇降装置40のヘッド部42を原点に復帰させることを指示するものである。また、ヘッド部上昇ボタン74aは、昇降装置40のヘッド部42を上昇させることを指示するものであり、ヘッド部下降ボタン74bは、昇降装置40のヘッド部42を下降させることを指示するものである。切断刃回転ONボタン75aは、切断刃回転装置30の刃部312を回転させることを指示するものであり、切断刃回転OFFボタン75bは、切断刃回転装置30の刃部312の回転動作を停止させることを指示するものである。そして、クーラーONボタン76aは、ジェットクーラー50から冷風を発生させることを指示するものであり、クーラーOFFボタン76bは、ジェットクーラーからの冷風発生を停止させることを指示するものである。
本実施形態の光ファイバー切断装置1では、切断モードとして、手動モード、自動モード1、自動モード2が選択可能である。この選択は切断モード選択スイッチ73を操作することにより行われる。自動モード1及び自動モード2は、制御部90が切断刃回転装置30、昇降装置40、及びジェットクーラー50の動作を自動制御するモードである。自動モード1又は自動モード2が選択された場合には、スタートボタン81、非常停止ボタン82の操作が有効になる。スタートボタン81は、自動モード1又は自動モード2が選択されている場合に、その自動制御の開始を指示するものであり、非常停止ボタン82は、自動制御の実行中に、その自動制御の停止を指示するものである。
具体的に、自動モード1は、スタートボタン81が押されたときに、昇降装置40のヘッド部42を原点から中間点まで下降させ、その後、原点に復帰させるという自動切断動作を行うモードである。自動モード2は、スタートボタン81が押されたときに、昇降装置40のヘッド部42を原点から最下点まで下降させ、その後、原点に復帰させるという自動切断動作を行うモードである。ここで、中間点は、上側挿入孔21aと下側挿入孔21bとの中間の高さ位置である。このため、自動モード1では、上側挿入孔21aに挿入されたコネクタ200から突出した光ファイバー110だけが切断されるが、自動モード2では、上側挿入孔21aに挿入されたコネクタ200から突出した光ファイバー110だけでなく、下側挿入孔21bに挿入されたコネクタ200から突出した光ファイバー110も切断することができる。
手動モードは、切断刃回転装置30、昇降装置40、及びジェットクーラー50を作業者が手動で操作するモードである。この手動モードを選択した場合、作業者は、切断刃回転コントロール部60を用いて刃部312の回転速度等を設定すると共に、切断刃回転ONボタン75a及び切断刃回転OFFボタン75bを用いて切断刃回転装置30の回転動作のON/OFFを制御部90に指示する。また、作業者は、ヘッド部上昇ボタン74a及びヘッド部下降ボタン74bを用いて昇降装置40のヘッド部42の昇降動作を制御部90に指示する。ここで、制御部90は、作業者がヘッド部上昇ボタン74aを押している間だけ、ヘッド部42が上昇するように昇降装置40のモータ部43を制御する。そして、制御部90は、作業者がヘッド部下降ボタン74bを押している間だけ、ヘッド部42が下降するように昇降装置40のモータ部43を制御する。但し、当然のことであるが、ヘッド部42は原点と最下点との間でしか上下方向に移動することができない。さらに、作業者は、クーラーONボタン76a及びクーラーOFFボタン76bを用いてジェットクーラー50からの冷風発生動作のON/OFFを制御部90に指示する。
次に、本実施形態の光ファイバー切断装置1の操作手順について説明する。ここでは、作業者が自動モードを選択して、本実施形態の光ファイバー切断装置1を自動制御する場合を説明する。
まず、作業者は、二つの光ファイバー芯線100を用意し、それら二つの光ファイバー芯線100のコネクタ200をそれぞれ、固定治具20の上側挿入孔21aと下側挿入孔21bに押し入れる。このとき、各コネクタ200の段差部210が固定治具20に突き当たり、各コネクタ200の先端面は固定治具20の表面と一致するようになる。本実施形態では、各挿入孔21a,21bについては、コネクタ200と当接する部分を高精度で加工しているので、各コネクタ200は挿入孔21a,21bに嵌め込まれ、しっかりと固定される。また、本実施形態では、コネクタ200の先端から突出する光ファイバー110の長さが約1.0mmであるような光ファイバー芯線100を用いているので、光ファイバー110は固定治具20の表面から約1.0mm程度突出している。
次に、作業者は、制御盤70に設けられた切断モード選択スイッチ73を操作して、切断モードを選択する。ここでは、作業者が自動モード2を選択したものとする。その後、作業者は、スタートボタン81を押す。すると、スタートボタン81から自動制御を開始する旨の指令信号が制御部90に送られる。制御部90はその指令信号を受け取ると、切断モード選択スイッチ73が自動モード1又は自動モード2に設定されているかどうかを判断する。制御部90は、自動モード2が設定されていることを確認すると、切断刃回転コントロール部60に対して刃部312を回転駆動させる旨の指令信号を送信する。そして、切断刃回転コントロール部60は、制御部90からの指令信号を受け取ると、本体部32のモータ部322を駆動し、刃部312を所定の回転速度で回転駆動する。この回転速度は、10000回転/分である。また、制御部90はジェットクーラー50に対して冷風を発生させる旨の指令信号を送信する。ジェットクーラー50は、制御部90からの指令信号を受け取ると、冷風を発生させる。
制御部90は、スタートボタン81からの指令信号を受け取ってから一定時間が経過すると、刃部312が所定の回転速度で安定して回転し、ジェットクーラー50から一定温度の冷風が安定して送出されていると判断する。その後、制御部90は、昇降装置40のモータ部43を制御して、切断刃回転装置30が取り付けられているヘッド部42を原点から最下点に向けて下方に一定速度で移動させる。この下降速度は、例えば約5mm/秒である。そして、ヘッド部42が上側挿入孔21aに対応する高さを通過するときに、刃部312が上側挿入孔21aに嵌め込まれたコネクタ200から突出した光ファイバー110を切断する。その後、ヘッド部42が下側挿入孔21bに対応する高さを通過するときに、刃部312が下側挿入孔21bに嵌め込まれたコネクタ200から突出した光ファイバー110を切断する。
ここで、本実施形態の光ファイバー切断装置1を用いて光ファイバー110を刃部312で切断するときの様子を説明する。図9は本実施形態の光ファイバー切断装置1を用いて光ファイバー110を刃部312で切断するときの様子を示す概略図である。本実施形態では、切断刃回転装置30の切断具31として、刃部312が略逆円錐台の形状に形成され且つ刃部312の側面に切断刃が形成されているものを用い、そして、刃部312の先端面を凹状に形成している。これにより、図9に示すように、切断時には刃部312の先端、すなわち周端縁だけが光ファイバー110に接触するようになり、しかも、刃部312の先端面は光ファイバー110に接触することはない。このため、光ファイバー110の切断面にバリや欠けが発生するのを抑えることができると共に、光ファイバー110の切断面を傷付けることなくきれいな鏡面状態に仕上げることができる。したがって、本実施形態の光ファイバー切断装置1を用いて切断作業を行うと、光ファイバー110がコネクタ200から約0.05mmの長さだけ突出しており、しかもその切断面がきれいな垂直面となっている光ファイバー芯線100を得ることができる。
こうして、ヘッド部42が最下点に達すると、制御部90は、昇降装置40のモータ部43を制御して、ヘッド部42を最下点から原点に向けて上方に移動させる。その後、制御部90は、ヘッド部42が原点に戻ると、昇降装置40のモータ部43の駆動を停止させる。また、制御部90は、切断刃回転コントロール部60に対して刃部312の回転駆動を停止する旨の信号を送る。切断刃回転コントロール部60は、制御部90からの指令信号を受け取ると、本体部32のモータ部322の駆動を停止し、これにより、刃部312の回転動作が停止する。更に、制御部90はジェットクーラー50に対して冷風の発生を停止する旨の指令信号を送信する。ジェットクーラー50は、制御部90からの指令信号を受け取ると、冷風の発生を停止する。こうして各部の動作が停止すると、自動モード2による自動切断動作が終了する。その後、作業者は、二つのコネクタ200,200を上側挿入孔21a、下側挿入孔21bから引き抜く。
尚、作業者が自動モード1を選択した場合には、制御部90が昇降装置40のヘッド部42を原点から中間点まで下降させた後、原点に戻すように昇降装置40を制御する点を除き、本実施形態の光ファイバー切断装置の動作は作業者が自動モード2を選択した場合と同様である。
また、本発明者等は、本実施形態の光ファイバー切断装置1における切断具31の好ましい回転速度を調べる試験を行った。この実験では、切断具31の回転速度を変更して、光ファイバー110の切断を行った。ここで、切断具31の回転速度以外の条件は、上記操作手順の説明で示した条件と同じである。この実験によれば、切断具31を10000回転/分よりも遅い回転速度で回転させた場合に、光ファイバー110に欠けが生じたり、その切断面にバリが生じたりすることがしばしば確認された。一方、切断具31を10000回転/分以上の回転速度で回転させた場合には、光ファイバー110の切断面にはバリがほとんど見られず、きれいな状態に仕上げることができた。したがって、切断具は1分間に少なくとも10000回転させることが望ましいと考えられる。
本実施形態の光ファイバー切断装置では、光ファイバー芯線に装着されたコネクタを、そのコネクタの中心軸が水平になるように固定治具に固定した後、切断具として、刃部が略逆円錐台の形状に形成され且つ刃部の側面に切断刃が形成されているものを用い、切断具を高速で回転させながら、その回転する切断具の刃部の先端で光ファイバーを切断することにより、光ファイバーの切断面にバリや欠けが発生するのを効果的に抑えることができると共に、切断面を鏡面状に仕上げることができる。特に、本実施形態の光ファイバー切断装置では、切断刃回転装置の本体部が、切断具が1分間に少なくとも10000回転するように切断具を高速で回転駆動することにより、光ファイバーの切断面にバリや欠けが発生するのを確実に抑えることができる。
また、本実施形態の光ファイバー切断装置では、略逆円錐台の形状に形成された刃部の先端面を凹状に形成することにより、切断時には刃部の先端すなわち周端縁だけが光ファイバーに接触し、刃部の先端面は光ファイバーに接触しないので、光ファイバーの切断面を傷付けることなくとてもきれいに仕上げることができる。しかも、切断具の刃部として、例えば研磨粒子等が付着されていない金属製のものを用いることにより、プラスチック製の光ファイバーを切断する場合であっても、その切断面に研磨による曇りを発生させることなく、光ファイバーの切断面をきれいに鏡面状に仕上げることができる。
また、本実施形態の光ファイバー切断装置では、固定治具にコネクタを挿入するための挿入孔を形成し、光ファイバー芯線に装着されたコネクタをその挿入孔に嵌め込んで固定することにより、コネクタを固定治具に固定する作業がとても容易である。
更に、本実施形態の光ファイバー切断装置では、制御部が、所定の指令信号を受けたときに、切断刃回転装置の本体部を制御して刃部を回転駆動すると共に昇降装置を制御して刃部を上下方向に移動させることにより、作業者は、光ファイバー芯線のコネクタを固定治具に固定した後に、例えばボタン等を押して制御部に指令信号を送るだけで、本実施形態の光ファイバー切断装置は光ファイバーの切断作業を自動的に実行することができるので、作業者の操作がとても簡単である。
尚、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
例えば、上記の実施形態では、昇降装置が切断具を上下に移動することにより、切断具の刃部の先端でコネクタの先端から突出した光ファイバーを切断する場合について説明したが、昇降装置の代わりに、切断具を水平方向に移動することにより切断具の刃部の先端でコネクタの先端から突出した光ファイバーを切断するような移動装置を用いるようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、切断刃回転装置の本体部が切断作業時に切断具を1分間に10000回転させる場合について説明したが、切断具の回転速度はこれに限定されず、10000回転/分以上であってもよい。
更に、上記の実施形態では、固定治具に二つの挿入孔を設けておき、二つのコネクタを各挿入孔に挿入して固定し、一回の切断動作でそれら二つのコネクタから突出した光ファイバーを切断する場合について説明したが、固定治具に三つ以上の挿入孔を形成し、一回の切断動作でそれら三つ以上の挿入孔に挿入されたコネクタから突出した光ファイバーを切断するようにしてもよい。また、当然のことであるが、固定治具には一つのコネクタだけを固定しておき、一回の切断動作でそのコネクタから突出した光ファイバーを切断するようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、光ファイバー芯線の先端部にコネクタを装着し、そのコネクタを機器側の光ファイバー芯線に取り付けられたアダプタと接続する場合について説明したが、光ファイバー芯線の先端部にオス(又はメス)型のコネクタを装着し、そのコネクタをもう一方の光ファイバー芯線に取り付けられたメス(又はオス)型のコネクタと接続する場合にも、本発明の光ファイバー切断装置を用いて、そのコネクタに装着された光ファイバーを切断することができる。
また、上記の実施形態では、刃部の先端面を凹面状に形成した場合について説明したが、刃部の先端面は鏡面加工された平面状に形成するようにしてもよい。この場合であっても、光ファイバーの切断面を傷付けることなくとてもきれいに仕上げることができる。
また、上記の実施形態では、本発明の光ファイバー切断装置を単一コアの光ファイバーを切断するために用いる場合について説明したが、本発明の光ファイバー切断装置はマルチコアの光ファイバーを切断するためにも使用することができる。ここで、マルチコアの光ファイバーとは、一つのクラッドの中に複数のコアを配置した光ファイバーのことである。マルチコアの光ファイバーでは、単一コアよりも1本の光ファイバーで伝送する光信号の情報量を増やすことができる。