本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図面における上側を「上」とし、図面における下側を「下」として説明する。
本実施形態の緩衝器1は、図1に示すように、いわゆる複筒型の油圧緩衝器であり、作動流体としての油液(図示略)が封入されるシリンダ2を備えている。シリンダ2は、円筒状の内筒3と、この内筒3よりも大径で内筒3を覆うように同心状に設けられた有底円筒状の外筒4と、を有しており、内筒3と外筒4との間にリザーバ室6が形成されている。緩衝器1は、外筒4の上部開口側を覆うカバー7と、いずれも外筒4の外周側に固定されるメインブラケット8およびスプリングシート9と、を有している。
外筒4は、円筒状の胴部11と、胴部11の下部側に一体に成形されて胴部11の下部を閉塞するシリンダ底部12とからなっている。
緩衝器1は、シリンダ2の内筒3内に摺動可能に嵌装されるピストン18を備えている。このピストン18は、内筒3内を一方の上室19(シリンダ室,一方のシリンダ室)と他方の下室20(他方のシリンダ室,シリンダ室)との2つの室に区画している。内筒3内の上室19および下室20内には作動流体としての油液が封入され、内筒3と外筒4との間のリザーバ室6内には作動流体としての油液とガスとが封入されている。
緩衝器1は、一端側がシリンダ2の内筒3内に配置されてピストン18に連結されると共に他端側がシリンダ2の外部に延出されるピストンロッド21を備えている。ピストン18およびピストンロッド21は一体に移動する。ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を増やす伸び行程において、ピストン18は上室19側へ移動することになり、ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を減らす縮み行程において、ピストン18は下室20側へ移動することになる。
内筒3および外筒4の上端開口側には、ロッドガイド22が嵌合されており、外筒4にはロッドガイド22よりもシリンダ2の外部側である上側にシール部材23が装着されている。ロッドガイド22とシール部材23との間には摩擦部材24が設けられている。ロッドガイド22、シール部材23および摩擦部材24は、いずれも環状をなしており、ピストンロッド21は、これらロッドガイド22、摩擦部材24およびシール部材23のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されてシリンダ2の内部から外部に延出されている。
ロッドガイド22は、ピストンロッド21を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド21の移動を案内する。シール部材23は、その外周部で外筒4に密着し、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド21の外周部に摺接して、内筒3内の油液と、外筒4内のリザーバ室6の高圧ガスおよび油液とが外部に漏洩するのを防止する。摩擦部材24は、その内周部でピストンロッド21の外周部に摺接して、ピストンロッド21に摩擦抵抗を発生させる。なお、摩擦部材24は、シールを目的とするものではない。
ロッドガイド22は、その外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状をなしており、小径の下部において内筒3の上端の内周部に嵌合し大径の上部において外筒4の上部の内周部に嵌合する。外筒4のシリンダ底部12上には、下室20とリザーバ室6とを画成するベースバルブ25が設置されており、このベースバルブ25に内筒3の下端の内周部が嵌合されている。外筒4の上端部は、径方向内方に加締められており、この加締め部分とロッドガイド22とがシール部材23を挟持している。
ピストンロッド21は、主軸部27と、これより小径の取付軸部28(軸部)とを有している。取付軸部28はシリンダ2内に配置されてピストン18等が取り付けられている。主軸部27の取付軸部28側の端部は、軸直交方向に広がる軸段部29となっている。取付軸部28の外周部には、軸方向の中間位置に軸方向に切り欠いて延在する通路溝30が形成されており、軸方向の主軸部27とは反対側にオネジ31が形成されている。通路溝30は、ピストンロッド21の中心軸線に直交する面での断面の形状が長方形、正方形、D字状のいずれかをなすように形成されている。
ピストンロッド21には、主軸部27のピストン18とロッドガイド22との間の部分に、いずれも円環状のストッパ部材32、一対の緩衝体33およびコイルスプリング34が設けられている。ストッパ部材32は、内周側にピストンロッド21を挿通させており、加締められて主軸部27に固定されている。ストッパ部材32側から順に、一方の緩衝体33、コイルスプリング34および他方の緩衝体33が配置されている。これら一対の緩衝体33およびコイルスプリング34は、内側にピストンロッド21が挿通されており、ストッパ部材32とロッドガイド22との間に配置されている。
緩衝器1は、例えばピストンロッド21のシリンダ2からの突出部分が上部に配置されて車体により支持され、シリンダ2側のメインブラケット8が下部に配置されて車輪側に連結される。これとは逆に、シリンダ2側が車体により支持され、ピストンロッド21が車輪側に連結されるようにしても良い。車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ2とピストンロッド21との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン18およびピストンロッド21の少なくともいずれか一方に形成された流路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン18およびピストンロッド21の少なくともいずれか一方に形成された流路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ2とピストンロッド21との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力が上記シリンダ2とピストンロッド21との間に作用する。以下で説明するとおり、緩衝器1は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
図2に示すように、ピストン18は、ピストンロッド21の取付軸部28に支持される金属製のピストン本体35と、ピストン本体35の外周面に一体に装着されて内筒3内を摺動する円環状の合成樹脂製の摺動部材36とによって構成されている。
ピストン本体35には、上室19と下室20とを連通させる複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴37と、上室19と下室20とを連通させる複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴39とが設けられている。複数の通路穴37は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴39を挟んで等ピッチで形成されており、通路穴37,39のうちの半数を構成する。複数の通路穴37は、ピストン18の軸方向一側(図2の上側)が径方向外側に軸方向他側(図2の下側)が径方向内側に開口している。
これら通路穴37に、これら通路穴37内の通路部を開閉して減衰力を発生させる減衰力発生機構41が設けられている。減衰力発生機構41は、ピストン18の軸方向の一端側である軸線方向の下室20側に配置されて、ピストンロッド21に取り付けられている。減衰力発生機構41が下室20側に配置されることで、複数の通路穴37のそれぞれの内側に形成された通路部は、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において一方の上室19から他方の下室20に向けて作動流体としての油液が流れ出す通路となる。これら通路穴37内の通路部に対して設けられた減衰力発生機構41は、伸び側の通路穴37内の通路部の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。
通路穴37,39のうちの残りの半数を構成する通路穴39は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴37を挟んで等ピッチで形成されており、ピストン18の軸線方向他側(図2の下側)が径方向外側に軸線方向一側(図2の上側)が径方向内側に開口している。
そして、これら通路穴39に、これら通路穴39内の通路部を開閉して減衰力を発生させる減衰力発生機構42が設けられている。減衰力発生機構42は、ピストン18の軸方向の他端側である軸線方向の上室19側に配置されて、ピストンロッド21に取り付けられている。減衰力発生機構42が上室19側に配置されることで、複数の通路穴39のそれぞれの内側に形成された通路部は、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において下室20から上室19に向けて油液が流れ出す通路となる。これらの通路穴39内の通路部に対して設けられた減衰力発生機構42は、縮み側の通路穴39内の通路部の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構となっている。
以上により、複数の通路穴37内の通路部と複数の通路穴39内の通路部とが、ピストン18の移動により上室19と下室20との間を作動流体である油液が流れるように連通することになり、通路穴37内の通路部は、ピストンロッド21およびピストン18が伸び側(図2の上側)に移動するときに油液が通過し、通路穴39内の通路部は、ピストンロッド21およびピストン18が縮み側(図2の下側)に移動するときに油液が通過する。
ピストン本体35は、略円板形状をなしており、その径方向の中央には、軸方向に貫通して、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させるための嵌合穴45が形成されている。ピストン本体35の軸方向の下室20側の端部は、その嵌合穴45と通路穴37との間の部分が減衰力発生機構41のメインバルブ231の内周側を支持しており、ピストン本体35の軸方向の上室19側の端部は、その嵌合穴45と通路穴39との間の部分が減衰力発生機構42のディスクバルブ129の内周側を支持している。
ピストン本体35の軸方向の下室20側の端部には、通路穴37の下室20側の開口よりも径方向外側に、減衰力発生機構41の一部である環状のバルブシート部47が形成されている。また、ピストン本体35の軸方向の上室19側の端部には、通路穴39の上室19側の開口よりも径方向外側に、減衰力発生機構42の一部である環状のバルブシート部49が形成されている。ピストン本体35の嵌合穴45は、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる軸方向のバルブシート部49側の小径穴部201と、小径穴部201よりも大径で小径穴部201よりも軸方向のバルブシート部47側に形成された大径穴部202とを有している。
ピストン本体35において、バルブシート部47の嵌合穴45とは反対側に、縮み側の通路穴39内の下室20側の開口が配置されており、バルブシート部49の嵌合穴45とは反対側に伸び側の通路穴37の上室19側の開口が配置されている。
図3に示すように、ピストン18の下室20側には、軸方向のピストン18側から順に、一枚のディスク51と、一枚のディスク210と、一枚のディスク211と、一枚のディスク212と、一枚のディスク213と、一枚のディスク214と、一枚のディスク215と、一枚のディスク216と、一枚のパイロットバルブ52と、一枚のディスク53と、一つのパイロットケース部材55(第2ケース部材)と、が重ねられている。
図4に示すように、パイロットケース部材55には、軸方向のパイロットケース部材55側から順に、一枚のディスク56と、複数枚(具体的には五枚)のディスク57と、複数枚(具体的には二枚)のディスク58と、複数枚(具体的には二枚)のディスク59と、複数枚(具体的には二枚)のディスク60と、一枚のディスク61と、一枚のディスク62とが重ねられている。
ディスク51,53,56~62,210~216およびパイロットケース部材55は、金属製である。ディスク51,53,56~62,210~216は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔平板状をなしている。ディスク51,56~60,62,211~216は、撓み可能に設けられている。パイロットバルブ52およびパイロットケース部材55は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な円環状をなしている。ディスク215は帯板状であり、それ以外のディスク51,53,56~62,210~214,216は、円板状をなしている。
図3に示すように、パイロットケース部材55は、有孔円板状の底部71と、底部71の内周側から底部71の軸方向に沿って一側に突出する円筒状の内側筒部72と、底部71の外周側から底部71の軸方向に沿って内側筒部72と同側に突出する円筒状の外側筒部73(筒部)とを有する有底筒状である。底部71には、内側筒部72と外側筒部73との間の範囲に、軸方向に貫通する貫通穴74が形成されている。パイロットケース部材55の内周には、軸方向の内側筒部72側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる小径穴部75が形成されており、軸方向の内側筒部72側とは反対側に小径穴部75よりも大径の大径穴部76が形成されている。外側筒部73の底部71とは反対側は開口部77となっている。パイロットケース部材55は、一端に開口部77を有する外側筒部73と、内側筒部72と、底部71とからなっている。
パイロットケース部材55の底部71は、有孔円板状の底部本体部70と、底部本体部70の内周側から底部本体部70よりも内側筒部72とは反対側に突出する円環状の突出部78と、底部本体部70の外周側から底部本体部70よりも外側筒部73とは反対側に突出する円環状のバルブシート部79(シート部)と、を有している。言い換えれば、底部71には、内周側に底部本体部70よりも内側筒部72とは反対側に突出する突出部78が、外周側に底部本体部70よりも外側筒部73とは反対側に突出するバルブシート部79が、それぞれ形成されている。貫通穴74は、底部本体部70の突出部78とバルブシート部79との間の部分に形成されている。突出部78には、これを径方向に横断する流路溝81が周方向に部分的に形成されている。流路溝81は、大径穴部76に開口している。
パイロットケース部材55の内側筒部72の軸方向の突出部78とは反対側の端部は、ディスク53に当接しており、突出部78の軸方向の内側筒部72とは反対側の端部は、ディスク56の内周側に当接している。流路溝81は、突出部78のディスク56への接触部分を径方向に横断している。パイロットケース部材55の開口部77側にパイロットバルブ52が配置されている。パイロットケース部材55の内側筒部72と外側筒部73との間は、パイロットバルブ52にピストン18の方向に圧力を加える背圧室80となっている。パイロットケース部材55の突出部78とバルブシート部79との間は、貫通穴74内の通路部を介して背圧室80に常時連通する受圧室82となっている。
ディスク51は、バルブシート部47の内径よりも小径の外径となっている。ディスク51には、ピストンロッド21の取付軸部28に嵌合する内周縁部から径方向外側に延在する切欠87が形成されている。切欠87内の通路部は、ピストン18の通路穴37内の通路部に常時連通しており、通路穴37内の通路部は、この切欠87内の通路部を介して、ピストン18の大径穴部202と取付軸部28との間の通路部とピストンロッド21の通路溝30内の通路部とに常時連通している。
ディスク210は、ディスク51の外径よりも小径の外径となっている。ディスク211は、ピストン18のバルブシート部47の外径と同等の外径となっている。ディスク211は、バルブシート部47に当接しており、バルブシート部47に対し離間および当接することでピストン18に形成された通路穴37内の通路部の開口を開閉する。ディスク211には、図5に示すように、円弧状の通路穴221が複数(具体的には2カ所)、ディスク211の周方向に間隔をあけて形成されている。これら通路穴221は、同形状であって、ディスク211の中心を中心とする同径の円弧状であり、ディスク211を軸方向に貫通している。これら通路穴221のディスク211の中心からの最大半径は、図3に示すディスク51の外周面の半径と同径であり、これら通路穴221のディスク211の中心からの最小半径は、ディスク210の外周面の半径よりも大きい。
ディスク212は、ディスク211と外径が同径となっている。ディスク212には、図6に示すように、外周側に切欠224が複数(具体的には5カ所)、ディスク212の周方向に等間隔で形成されている。これらの切欠224は、同形状であり、ディスク212の径方向における外側の外側切欠部225と、ディスク212の径方向における内側の内側切欠部226とからなっている。外側切欠部225はディスク212の周方向における幅が一定であり、内側切欠部226は外側切欠部225よりもディスク212の周方向における幅が広い。内側切欠部226のディスク212の周方向における長さは、通路穴221のディスク211の周方向における長さよりも短い。ディスク211とディスク212とが中心を一致させて重ねられると、通路穴221と内側切欠部226とがディスク211,212の径方向の位置を重ね合わせて連通する。このとき、ディスク211は、ディスク212の外側切欠部225のディスク213とは反対側を閉塞する。
ディスク211の通路穴221内の通路部と、ディスク212の切欠224内の通路部とは、図3に示す通路穴37内の通路部を下室20に常時連通させる固定オリフィス227(オリフィス)となっている。すなわち、この固定オリフィス227においては、上室19から通路穴37内に導入された油液が、通路穴221内の通路部から切欠224の内側切欠部226内の通路部および外側切欠部225内の通路部を経て下室20に流れることになり、内側切欠部226内の通路部から外側切欠部225の通路部で流路面積が絞られ、同一流路面積の外側切欠部225の通路部から下室20に流れる。固定オリフィス227は、チョーク通路228を含んでいる。チョーク通路228は、具体的には、ディスク213とディスク211とディスク212の外側切欠部225とで形成される流路の部分である。ディスク211,212とが、チョークバルブを構成している。
ディスク213は、ディスク212と外径が同径となっている。ディスク213は、ディスク212に中心を合わせて重なることで、複数の切欠224のディスク211とは反対側を全面的に閉塞する。ディスク214は、ディスク213と外径が同径となっている。
ディスク211は、外周部が全周にわたって連続する円形であり、ディスク211がピストン18のバルブシート部47に当接し、バルブシート部47に対し離間および当接することでピストン18に形成された通路穴37内の通路部の開口を開閉する。
ディスク215は、一方向に長い帯板状をなしており、ディスク211~214と最大外径が同径である。ディスク216は、ディスク214と外径が同径となっている。
パイロットバルブ52は、金属製のディスク85と、ディスク85に固着されるゴム製のシール部材86とからなっている。ディスク85は、内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなし、撓み可能であって、ディスク211~214,216の外径よりも若干大径の外径となっている。シール部材86は、ディスク85のピストン18とは反対の外周側に固着されており、円環状をなしている。言い換えれば、パイロットバルブ52は、その外周部に環状のシール部材86を有している。
シール部材86は、パイロットケース部材55の外側筒部73の内周面に全周にわたり摺動可能かつ液密的に嵌合しており、パイロットバルブ52と外側筒部73との隙間を常時シールする。言い換えれば、パイロットバルブ52は、シール部材86をパイロットケース部材55の外側筒部73に摺動可能かつ密に嵌合させている。その結果、パイロットバルブ52とパイロットケース部材55とが、互いの間に背圧室80を形成する。
ディスク211は、上述したように、ピストン18のバルブシート部47に着座可能である。ディスク51,210~216およびパイロットバルブ52が、ピストン18に形成された通路穴37内の通路部に設けられてピストン18の伸び側(図3の上側)への摺動によって生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる伸び側のメインバルブ231を構成している。よって、メインバルブ231は、パイロットケース部材55の開口部77に配置されて、パイロットケース部材55の内部に背圧室80を形成している。パイロットバルブ52とパイロットケース部材55との間の背圧室80は、このメインバルブ231に、ピストン18の方向、つまりディスク211をバルブシート部47に着座させる閉弁方向に内圧を作用させる。
メインバルブ231は、背圧室80を有するパイロットタイプの減衰バルブであり、これらメインバルブ231および背圧室80は、減衰力発生機構41の一部を構成している。言い換えれば、減衰力発生機構41は、メインバルブ231および背圧室80を備えており、圧力制御型のバルブ機構となっている。メインバルブ231には、通路穴37内の通路部を下室20を常時連通する、言い換えれば、2つの上室19および下室20を常時連通する固定オリフィス227が形成されている。
ディスク53は、パイロットケース部材55の内側筒部72のディスク53側の端部の外径と略同径の外径となっている。パイロットケース部材55の外側筒部73は、パイロットバルブ52のディスク85に当接して、メインバルブ231の開方向への規定以上の変形を抑制する。
パイロットケース部材55の底部71に形成された流路溝81内の通路部は、受圧室82および貫通穴74内の通路部を介して背圧室80に常時連通している。背圧室80は、貫通穴74内の通路部、受圧室82および流路溝81内の通路部を介して、パイロットケース部材55の大径穴部76と取付軸部28との間の通路部と、ピストンロッド21の通路溝30内の通路部とに常時連通している。
ディスク51の切欠87内の通路部と、ピストン18の大径穴部202と取付軸部28との間の通路部と、ピストンロッド21の通路溝30内の通路部と、パイロットケース部材55の大径穴部76と取付軸部28との間の通路部と、パイロットケース部材55の底部71に形成された流路溝81内の通路部と、受圧室82と、貫通穴74内の通路部とが、ピストン18の通路穴37内の通路部と背圧室80とを常時連通させて、上室19から通路穴37内の通路部を介して背圧室80に油液を導入する背圧導入通路235となっている。よって、背圧導入通路235は、パイロットケース部材55の底部71に形成された流路溝81内の通路部および貫通穴74内の通路部を含んでいる。言い換えれば、背圧導入通路235は、一部がパイロットケース部材55の底部71に設けられている。
メインバルブ231は、そのディスク211がピストン18のバルブシート部47から離座して開くと、通路穴37内の通路部からの油液をピストン18とパイロットケース部材55の外側筒部73との間で径方向に広がる通路部88を介して下室20に流す。複数の通路穴37のそれぞれの内側に形成された通路部と、メインバルブ231とバルブシート部47との間と、ピストン18とパイロットケース部材55の外側筒部73との間の通路部88とが、通路101(第1通路)を構成している。この通路101は、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において一方の上室19から他方の下室20に向けて作動流体としての油液が流れ出す伸び側の通路となる。バルブシート部47とメインバルブ231とを含む伸び側の減衰力発生機構41は、この通路101に設けられており、メインバルブ231でこの通路101を開閉して油液の流動を抑制することにより減衰力を発生させる。そして、伸び側の減衰力発生機構41は、通路101の油液の流れの一部を背圧導入通路235を介して背圧室80に導入し、背圧室80の圧力によってメインバルブ231の開弁を制御する。
ディスク56は、パイロットケース部材55のバルブシート部79の内径よりも小径であって突出部78の外径よりも大径の外径となっている。ディスク56内には、流路を形成するための溝等は形成されていない。複数枚のディスク57は、バルブシート部79の外径よりも若干大径の外径となっており、バルブシート部79に着座可能となっている。
図4に示すように、ディスク58は、ディスク57の外径よりも小径の外径となっている。ディスク59は、ディスク58の外径よりも小径の外径となっている。ディスク60は、ディスク59の外径よりも小径の外径となっている。ディスク61は、ディスク60の外径よりも小径の外径となっている。ディスク62は、ディスク59の外径と同等の外径となっている。
ディスク56~60が、バルブシート部79に離着座可能なサブバルブ99を構成している。サブバルブ99は、ディスク57においてバルブシート部79に着座してバルブシート部79の内側に受圧室82を区画する。サブバルブ99は、バルブシート部79から離座することで、受圧室82および貫通穴74内の通路部を介して図3に示す背圧室80と下室20とを連通させるとともにこれらの間の油液の流れを抑制する。パイロットケース部材55の突出部78とバルブシート部79との間の受圧室82は、バルブシート部79に当接するサブバルブ99にバルブシート部79から離れる方向に圧力を加える。複数の通路穴37のそれぞれの内側に形成された通路部と、背圧導入通路235と、受圧室82と、サブバルブ99とバルブシート部79との間とが、通路101と一部並列に設けられて上室19と下室20とを連通させる通路103を構成している。
サブバルブ99は、背圧室80内の圧力が所定圧力に達した時にバルブシート部79から離座して通路103を開く。サブバルブ99は、バルブシート部79と共に、背圧室80内の圧力が所定圧力に達した時に開弁し、通路103を開いて減衰力を発生させる減衰力発生機構105を構成している。サブバルブ99は、背圧室80の圧力によって開弁して、通路103から下室20に油液を流し、その際に油液の流れに抵抗力を与える。
図4に示すディスク62は、サブバルブ99の開方向への変形時にサブバルブ99に当接してサブバルブ99の規定以上の変形を、後述するケース部材131とで抑制する。
図2に示すように、ピストン18の上室19側には、軸方向のピストン18側から順に、一枚のディスク110と、一枚のディスク111と、一枚のディスク112と、一枚のディスク113と、一枚のディスク114と、複数枚(具体的には二枚)のディスク115と、一枚のディスク116と、複数枚(具体的には二枚)のディスク117と、一枚のディスク118と、一枚のディスク119と、一枚の環状部材120とが重ねられている。ディスク110~119および環状部材120は、金属製であり、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。ディスク111~117,119は撓み可能に設けられている。
ディスク110は、ピストン18のバルブシート部49の内径よりも小径の外径となっている。ディスク111は、ピストン18のバルブシート部49の外径と同等の外径となっている。ディスク111は、バルブシート部49に当接しており、バルブシート部49に対し離間および当接することでピストン18に形成された通路穴39内の通路部の開口を開閉する。ディスク111は、ディスク211と共通部品であり、ディスク211の通路穴221と同様の通路穴121が複数形成されている。ディスク112は、ディスク111と外径が同径となっている。ディスク112は、ディスク212と共通部品であり、ディスク212の切欠224と同様の切欠124が複数形成されている。
ディスク111の通路穴121内の通路部と、ディスク112の切欠124内の通路部とは、固定オリフィス227と同様の固定オリフィス127となっている。固定オリフィス127は、チョーク通路228と同様のチョーク通路128を含んでいる。固定オリフィス127は、通路穴39内の通路部を上室19に常時連通させる。すなわち、この固定オリフィス127においては、下室20から通路穴39内に導入された油液が、チョーク通路128を経て上室19に流れることになる。
ディスク113は、ディスク112と外径が同径となっている。ディスク113は、ディスク112に重なることで、複数の切欠124のディスク111とは反対側全体を閉塞する。ディスク114は、ディスク113と外径が同径となっている。
ディスク111は、外周部が全周にわたって連続する円形であり、ディスク111がピストン18のバルブシート部49に当接し、バルブシート部49に対し離間および当接することでピストン18に形成された通路穴39内の通路部の開口を開閉する。
複数枚のディスク115は、ディスク114の外径よりも小径の外径となっている。ディスク116は、ディスク115の外径よりも小径の外径となっている。複数枚のディスク117は、ディスク116の外径よりも小径の外径となっている。ディスク118は、ディスク117の外径よりも小径の外径となっている。ディスク119は、ディスク116の外径と同等の外径となっている。環状部材120は、ディスク119の外径よりも小径の外径となっており、ディスク110~119よりも厚く高剛性となっている。この環状部材120は、ピストンロッド21の軸段部29に当接している。
ディスク110~117が、バルブシート部49に離着座可能であり、バルブシート部49から離座することで通路穴39内の通路部を上室19に開放可能であって、上室19と下室20との間の油液の流れを抑制するディスクバルブ129を構成している。ディスクバルブ129とバルブシート部49とが縮み側の減衰力発生機構42を構成している。ディスクバルブ129には、バルブシート部49に当接状態にあっても上室19と下室20とを常時連通する、チョーク通路128を含む固定オリフィス127が形成されている。ディスク119および環状部材120はディスクバルブ129の開方向への規定以上の変形をディスクバルブ129に当接して抑制する。
本実施形態では、図2に示す縮み側のディスクバルブ129および図4に示す伸び側のサブバルブ99を、いずれも内周クランプのディスクバルブの例を示したが、これに限らず、減衰力を発生する機構であればよく、例えば、ディスクバルブをコイルバネで付勢するリフトタイプのバルブとしてもよく、また、ポペット弁であってもよい。
ピストンロッド21の取付軸部28には、減衰力発生機構105のパイロットケース部材55とは反対側に、ピストン18の往復動の周波数(以下、ピストン周波数と称す)に感応して減衰力を可変とする周波数感応部43が取り付けられている。周波数感応部43は、軸方向の減衰力発生機構105側から順に、ディスク62に当接する一つのケース部材131(第1ケース部材)と、複数枚(具体的には二枚)のディスク133および一枚の区画ディスク134と、一枚のディスク135と、一枚のディスク136と、蓋部材139と、を有している。ケース部材131、ディスク133,135,136および蓋部材139は、金属製である。ディスク133,135,136は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。ケース部材131および蓋部材139は、内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な円環状をなしている。ケース部材131は、蓋部材139とで箱状の周波数感応部ケース140を構成する。ケース部材131には、内部にピストンロッド21の取付軸部28が一部配置されている。
ケース部材131は、有孔円板状の底部141と、底部141の外周側から底部141の軸方向に沿って一側に突出する円筒状の外側筒部144(筒部)とを有する有底筒状である。底部141は、有孔円板状の底部本体部147と、底部本体部147の内周側から底部本体部147よりも軸方向の外側筒部144側に突出する円環状の突出部142と、底部本体部147における突出部142と外側筒部144との間から底部本体部147よりも軸方向の外側筒部144側に突出する円環状の支持部143と、を有している。言い換えれば、底部141には、内周側に底部本体部147よりも外側筒部144と同側に突出する突出部142が、径方向中間位置に底部本体部147よりも外側筒部144と同側に突出する支持部143が、それぞれ形成されている。
突出部142には、これを径方向に横断する流路溝148が周方向に部分的に形成されている。支持部143には、これを径方向に横断する流路溝203が周方向に部分的に形成されている。底部141の内周側には、軸方向の突出部142とは反対側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる小径穴部145が形成されており、軸方向の突出部142側に小径穴部145より大径の大径穴部146が形成されている。流路溝148は、大径穴部146に開口している。外側筒部144の底部141とは反対側は開口部149となっている。よって、ケース部材131は、一端に開口部149を有する外側筒部144と、底部141とからなっている。蓋部材139は、ケース部材131の外側筒部144の開口部149に設けられて箱状の周波数感応部ケース140を筒状のケース部材131とで構成する。
ケース部材131の径方向中央を軸方向に取付軸部28が貫通しており、ケース部材131内に、複数枚のディスク133、区画ディスク134、ディスク135およびディスク136が、取付軸部28をそれぞれの内側に貫通させて配置されている。
ケース部材131の底部141は、その軸方向の小径穴部145側の外端部でディスク62の内周側を支持しており、その軸方向の大径穴部146側の内端部でディスク133の外周側を支持している。ケース部材131の支持部143は、その突出先端側の端部で、環状の区画ディスク134の径方向中間位置を支持する。支持部143は、流路溝203によって、ケース部材131における支持部143の径方向内側と径方向外側とを常時連通する。
複数枚のディスク133は、ケース部材131の突出部142の外径よりも小径の外径となっている。流路溝148は、突出部142のディスク133への接触部分を径方向に横断している。
区画ディスク134は、金属材料からなる一定厚さの有孔円形平板状の撓み可能なディスク155と、ディスク155の外周側に固着されるゴム材料からなる弾性シール部材156とからなっている。区画ディスク134は、全体として円状で、弾性変形可能つまり撓み可能となっている。環状のディスク155は、内径がディスク133の外径よりも大径であり、その内側にディスク133を径方向に隙間をもって配置可能な内径となっている。ディスク155は、ディスク133の枚数分(二枚分)の厚さよりも厚さが薄くなっている。ディスク155は、ケース部材131の支持部143の外径よりも大径かつ外側筒部144の内径よりも小径の外径となっている。ディスク155は、取付軸部28を内側に貫通させてケース部材131内に配置されている。ディスク155は、ケース部材131内で、底部141に設けられている。
弾性シール部材156は、ディスク155の外周側に円環状をなして固着されている。弾性シール部材156は、ディスク155と対向する面の全面がディスク155に固着されている。弾性シール部材156は、ディスク155から軸方向の蓋部材139とは反対側に突出するシール部158と、ディスク155から軸方向の蓋部材139側に突出するストッパ部159とを有している。言い換えれば、弾性シール部材156は、ディスク155の軸方向(厚さ方向)の一方の面181の外周側にシール部158が、ディスク155の軸方向(厚さ方向)の他方の面182の外周側にストッパ部159が、それぞれ設けられている。
面181の外周側に設けられたシール部158は、ディスク155の全周にわたって連続する円環筒状に形成されており、全周にわたってディスク155の面181に固着されている。シール部158は、ケース部材131の外側筒部144の内周面に全周にわたり摺動可能かつ液密的に嵌合しており、外側筒部144との間を常時シールする。よって、ディスク155の面181には、全周にわたって連続的に弾性シール部材156が固着されている。
面182の外周側に設けられたストッパ部159は、ディスク155の周方向に断続的に形成されている。ストッパ部159は、ディスク155の外周縁部に沿う形状の複数の円弧状のストッパ構成部160で構成されており、これらストッパ構成部160がディスク155の周方向に間隔をあけてディスク155の面182に固着されている。その結果、ディスク155のストッパ部159が設けられた面182の外周側には、ディスク155の周方向に隣り合うストッパ構成部160とストッパ構成部160との間にディスク155が露出するディスク露出部161が設けられている。ディスク露出部161も複数がディスク155の周方向に間隔をあけて設けられている。ディスク露出部161は、ストッパ部159を径方向に横断している。よって、ディスク155の面182には、周方向に部分的に弾性シール部材156が固着されている。ストッパ部159は、区画ディスク134の蓋部材139側への変形時に蓋部材139に当接して弾性変形し、その結果、区画ディスク134はそれ以上の変形が抑制される。
ディスク155と、ケース部材131の外側筒部144との間には、環状の隙間が設けられ、弾性シール部材156は、シール部158とストッパ部159とが、この隙間を介してディスク155の両面181,182に固着されている。言い換えれば、弾性シール部材156は、ディスク155と外側筒部144との隙間を介して、ディスク155の両面に固着されて設けられている。よって、弾性シール部材156は、ディスク155の外周面183を覆ってシール部158と複数のストッパ構成部160とを連結する円環状の連結部162を有している。ディスク155の外周面183は全周にわたって連続する円形となっており、全周にわたって外周面183に固着されている。この連結部162が、ディスク155と外側筒部144との間に配置されている。
弾性シール部材156は、シール部158とストッパ部159と連結部162とがディスク155に加硫接着されている。この加硫接着の際に用いられる金型は、シール部158を形成しつつこれをディスク155の面181に固着させるシール部形成キャビティと、連結部162を形成しつつこれをディスク155の外周面183に固着させる連結部形成キャビティと、複数のストッパ構成部160を形成しつつこれをディスク155の面182に固着させる複数のストッパ構成部形成キャビティとを有している。そして、金型は、隣り合うストッパ構成部形成キャビティとストッパ構成部形成キャビティとの間の部分がディスク露出部161を形成するためにディスク155に当接するディスク当接部となる。よって、金型は、ディスク155への弾性シール部材156の形成時に、複数の等間隔に配置されたディスク当接部においてディスク155の外周側の周方向の複数の等間隔位置を支持することになる。
ゴム材料は、溶融状態で、金型内に配置されたディスク155に対し、シール部158を形成するシール部形成キャビティから、連結部162を形成する連結部形成キャビティを通過して、ストッパ部159を形成するストッパ構成部形成キャビティに流れるように金型に導入されることになる。このとき、連結部形成キャビティで流路が絞られるため、ディスク155には、シール部形成キャビティ側とストッパ構成部形成キャビティ側とに差圧が生じる。しかしながら、金型は、ディスク155の低圧側であるストッパ構成部形成キャビティ側の面を複数のディスク当接部で支持しているため、上記のような差圧が発生しても、ディスク155は変形が抑制される。したがって、弾性シール部材156をディスク155に高精度に成形できる。
区画ディスク134は、弾性シール部材156がケース部材131の外側筒部144に接触してケース部材131に対し芯出しされる。また、区画ディスク134は、そのディスク155がケース部材131の支持部143に当接して支持される。
ケース部材131の突出部142およびディスク135は、区画ディスク134のディスク155の内径よりも大径の外径となっている。これにより、区画ディスク134は、ディスク155の内周側が、ケース部材131の突出部142とディスク135との間に配置されている。区画ディスク134は、その表側と裏側とに圧力差がない状態では、ディスク155が、支持部143およびディスク135に当接して支持されている。ディスク135は、区画ディスク134を着座させるシート部である。
区画ディスク134は、ディスク155の内周側が、ケース部材131の突出部142とディスク135との間にて、複数枚のディスク133の軸方向長の範囲で移動可能となっている。また、区画ディスク134は、ディスク155のディスク135による支持とは反対の非支持側である外周側にケース部材131との間をシールする環状の弾性シール部材156が設けられている。区画ディスク134は、その内周側が、両面側からクランプされずに片面側のみディスク135に支持される単純支持構造となっている。ディスク136は、ディスク135の外径よりも大径の外径となっている。
ここで、ストッパ部159は周方向に間隔をあけて配置された複数のストッパ構成部160で構成されており、支持部143には流路溝203が設けられている。よって、区画ディスク134がストッパ部159において蓋部材139に当接しても、ディスク155においてケース部材131の支持部143に当接しても、ディスク155のシール部158が設けられる側の受圧面積と、ストッパ部159が設けられる側の受圧面積とは同程度となる。
蓋部材139は、円筒状の筒状部261と、筒状部261の外周部の軸方向の中央位置から径方向外方に広がる円板状のフランジ部262とを有している。筒状部261は、フランジ部262よりも軸方向に厚い厚肉である。蓋部材139は、筒状部261の内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる。蓋部材139は、フランジ部262の外周部において、ケース部材131の外側筒部144内に嵌合されて周波数感応部ケース140を構成する。
蓋部材139には、フランジ部262の外周部に、円筒面である外周面よりも径方向内方に凹む溝264が、フランジ部262を軸方向に横断して形成されている。図7に示すように、溝264は、円弧状であり、複数(具体的には6カ所)が、蓋部材139の周方向に等間隔に配置されている。図4に示すように、ケース部材131の外側筒部144にフランジ部262において嵌合された状態の蓋部材139は、溝264が外側筒部144との間に、周波数感応部ケース140内を下室20に連通させる連通路265を形成する。
ここで、蓋部材139は、軸方向の中央位置を通り軸方向に直交する面を基準とする鏡面対称形状である。言い換えれば、蓋部材139には、表裏の区別がなく、表裏の間違いによる誤組み付けを生じない形状となっている。また、連通路265を形成するための溝264を蓋部材139の外周部に配置することにより、蓋部材139は、溝264を含めて焼結により形成することが可能となり、焼結化されている。
区画ディスク134のシール部158は、上述したように、ケース部材131の外側筒部144の内周面に全周にわたり接触して、区画ディスク134と外側筒部144との隙間をシールする。つまり、区画ディスク134はパッキンバルブである。シール部158は、区画ディスク134が周波数感応部ケース140内で許容される範囲で変位および変形しても、区画ディスク134と外側筒部144との隙間を常時シールする。区画ディスク134は、そのシール部158が外側筒部144に全周にわたり接触することで上記のように周波数感応部ケース140に対し芯出しされる。区画ディスク134は、このように芯出しされた状態で、ディスク155が内周部をディスク135に全周に渡って接触させることにより、ディスク135との隙間をシールする。
区画ディスク134は、周波数感応部ケース140内を、底部141側の容量可変なケース室171と、蓋部材139側の容量可変なケース室172との2つの室に区画する。言い換えれば、2つのケース室171,172は、ディスク155および弾性シール部材156からなる区画ディスク134により画成されて周波数感応部ケース140のケース部材131内に設けられている。ケース室171は、ケース部材131の流路溝148内の通路部を介してケース部材131の大径穴部146と取付軸部28との間の通路部に常時連通し、ケース室172は蓋部材139の溝264内の連通路265を介して下室20に常時連通している。
ピストンロッド21の通路溝30は、図2に示すピストン18の大径穴部202、ディスク51の切欠87、図3に示すパイロットケース部材55の大径穴部76、パイロットケース部材55の流路溝81、図4に示すケース部材131の大径穴部146およびケース部材131の流路溝148に、ピストンロッド21の軸方向の位置を重ね合わせてピストンロッド21の径方向に対向する。よって、図3に示すディスク51の切欠87内の通路部と、ピストン18の大径穴部202と取付軸部28との間の通路部と、ピストンロッド21の通路溝30内の通路部と、伸び側の減衰力発生機構41のパイロットケース部材55の大径穴部76と取付軸部28との間の通路部と、パイロットケース部材55の流路溝81内の通路部と、図4に示す周波数感応部43のケース部材131の大径穴部146と取付軸部28との間の通路部と、ケース部材131の流路溝148内の通路部とを介して、ピストン18の通路穴37内の通路部と、受圧室82および背圧室80と、ケース室171とが常時連通することになる。蓋部材139とケース部材131の外側筒部144との間に形成された連通路265は、ケース室172と常時連通し、下室20にも常時連通する。すなわち連通路265は、ケース室172と下室20とを常時連通させる。
図2に示すピストン18の通路穴37内の通路部と、ディスク51の切欠87内の通路部と、ピストン18の大径穴部202と取付軸部28との間の通路部と、ピストンロッド21の通路溝30内の通路部と、図4に示すケース部材131の大径穴部146と取付軸部28との間の通路部と、ケース部材131の流路溝148内の通路部と、ケース部材131内のケース室171,172と、蓋部材139の溝264内の連通路265とが、上室19と下室20とを結んで延在する通路107(第2通路)を構成している。よって、ケース室171,172を内部に有する筒状のケース部材131には、通路107の少なくとも一部であるケース室171,172が内部に形成されている。通路107は、通路101,103とは一部異なるルートで上室19と下室20とを結んでいる。
通路107は、図2に示す上室19側の通路穴37内の通路部が通路101と共通であり、通路穴37内の通路部よりも下室20側が通路101と並列に設けられている。すなわち、通路107において、ディスク51の切欠87内の通路部と、ピストン18の大径穴部202と取付軸部28との間の通路部と、ピストンロッド21の通路溝30内の通路部と、図4に示すケース部材131の大径穴部146と取付軸部28との間の通路部と、ケース部材131の流路溝148内の通路部と、ケース部材131内のケース室171,172と、蓋部材139の溝264内の連通路265とが、通路101のうちのバルブシート部47とメインバルブ231との間と通路部88とを結ぶ通路に並列する並列通路109となっている。
周波数感応部43は、その周波数感応部ケース140が、通路107の並列通路109に設けられている。よって、周波数感応部ケース140には、その内部に、並列通路109の一部である2つのケース室171,172が区画ディスク134により画成されて設けられている。
区画ディスク134は、内周側がケース部材131の突出部142とディスク135との間で移動し外周側が支持部143と蓋部材139のフランジ部262との間で移動する範囲で変位および変形可能となっている。ここで、区画ディスク134のディスク155の軸方向中間部を軸方向一側から支持する支持部143とディスク155の内周側を軸方向他側から支持するディスク135との間の軸方向の最短距離は、ディスク155の軸方向の厚さよりも小さくなっている。よって、ケース室171,172が同圧のとき、ディスク155は、若干変形した状態で支持部143とディスク135とに自身の弾性力で圧接する。
区画ディスク134は、そのディスク155の内周側が全周にわたってディスク135に接触する状態では、並列通路109のケース室171,172間の油液の流通を遮断する。また、区画ディスク134は、そのディスク155の内周側がディスク135から離間する状態では、ケース室171とケース室172つまり下室20との間の油液の流通を許容する。よって、区画ディスク134のディスク155の内周側とシート部としてのディスク135とは、並列通路109において、ケース室171からケース室172および下室20への油液の流れを規制する一方、下室20およびケース室172からケース室171への油液の流れを許容するチェック弁245を構成している。
チェック弁245は、上室19側の圧力が下室20の圧力より高くなる伸び行程では、ピストン18の通路穴37内の通路部を介して上室19と下室20とを連通可能な並列通路109の連通を遮断する一方、上室19側の圧力が下室20の圧力より低くなる縮み行程では、並列通路109を連通状態とする。
チェック弁245は、その弁体である区画ディスク134の全体が軸方向に移動可能なフリーバルブである。なお、区画ディスク134が、ケース室171,172の圧力状態にかかわらず、そのディスク155の内周の全周を常にディスク135に接触させるように設定する等して、並列通路109のケース室171,172間の流通を常時遮断するようにしても良い。つまり、区画ディスク134のディスク155は、通路107のケース室171およびケース室172間の両方向の流通を含む、少なくとも一方向への油液の流通を遮断すれば良い。
ピストンロッド21には、図2に示す軸段部29に、取付軸部28をそれぞれの内側に挿通させた状態で、環状部材120、ディスク119、ディスク118、複数枚のディスク117、ディスク116、複数枚のディスク115、ディスク114、ディスク113、ディスク112、ディスク111、ディスク110、ピストン18、図3に示すディスク51、ディスク210、ディスク211、ディスク212、ディスク213、ディスク214、ディスク215、ディスク216、パイロットバルブ52、ディスク53、パイロットケース部材55、図4に示すディスク56、複数枚のディスク57、複数枚のディスク58、複数枚のディスク59、複数枚のディスク60、ディスク61、ディスク62、ケース部材131、複数枚のディスク133が、この順に重ねられている。このとき、図3に示すパイロットケース部材55は、パイロットバルブ52のシール部材86を外側筒部73に嵌合させている。
また、図4に示すディスク133を内側に挿通させた状態で、区画ディスク134がケース部材131の支持部143に重ねられている。このとき、区画ディスク134の弾性シール部材156は、ケース部材131の外側筒部144に嵌合されている。さらに、取付軸部28をそれぞれの内側に挿通させた状態で、ディスク135が、ディスク133および区画ディスク134のディスク155に重ねられている。さらに、取付軸部28を内側に挿通させた状態で、ディスク136がディスク135に重ねられ、蓋部材139がディスク136に重ねられている。このとき、蓋部材139は、ケース部材131の外側筒部144内に挿入されている。
このように部品が配置された状態で、蓋部材139よりも突出する取付軸部28のオネジ31にナット176が螺合されている。これにより、図2に示す環状部材120、ディスク119、ディスク118、複数枚のディスク117、ディスク116、複数枚のディスク115、ディスク114、ディスク113、ディスク112、ディスク111、ディスク110、ピストン18、図3に示すディスク51、ディスク210、ディスク211、ディスク212、ディスク213、ディスク214、ディスク215、ディスク216、パイロットバルブ52、ディスク53、パイロットケース部材55、図4に示すディスク56、複数枚のディスク57、複数枚のディスク58、複数枚のディスク59、複数枚のディスク60、ディスク61、ディスク62、ケース部材131、複数枚のディスク133、ディスク135、ディスク136、蓋部材139は、それぞれ内周側または全部がピストンロッド21の軸段部29とナット176とに挟持されて軸方向にクランプされている。その際に、区画ディスク134は、内周側が軸方向にクランプされることはなく、支持部143とディスク135とで支持されている。ナット176は、汎用の六角加締めナットであり、ピストンロッド21に対し既定のトルクで締め付けられた後に加締められて回り止めされている。
以上により、図2に示す縮み側の減衰力発生機構42と、ピストン18と、図3に示す伸び側の減衰力発生機構41と、図4に示す伸び側の減衰力発生機構105と、伸び側の周波数感応部43とが、それぞれの内周側にピストンロッド21が挿通された状態で、ピストンロッド21にナット176により締結されている。また、周波数感応部43は、これを構成するケース部材131、複数枚のディスク133、ディスク135、ディスク136および蓋部材139が、内周側にピストンロッド21が挿通された状態で、ピストンロッド21にナット176により締結されている。
なお、周波数感応部43を予め組み立てた状態で、ピストンロッド21に組み付けることも可能である。その場合、ピストンロッド21のかわりにダミーのロッドを挿通させておき、このロッドを抜きつつピストンロッド21の取付軸部28を周波数感応部43の内周側に挿通させることになる。周波数感応部43を予め組み立てた状態とする場合、ケース部材131の外側筒部144に蓋部材139を圧入して固定することが可能になる。
また、パイロットバルブ52、ディスク53およびパイロットケース部材55を予め組み立てた状態で、ピストンロッド21に組み付けることも可能である。その場合も、ピストンロッド21のかわりにダミーのロッドを挿通させておき、このロッドを抜きつつピストンロッド21の取付軸部28をこれらの内周側に挿通させることになる。
図1に示すように、外筒4のシリンダ底部12と内筒3との間には、上記したベースバルブ25が設けられている。このベースバルブ25は、下室20とリザーバ室6とを仕切るベースバルブ部材191と、このベースバルブ部材191の下側つまりリザーバ室6側に設けられるディスク192と、ベースバルブ部材191の上側つまり下室20側に設けられるディスク193と、ベースバルブ部材191にディスク192およびディスク193を取り付ける取付ピン194とを有している。
ベースバルブ部材191は、径方向の中央に取付ピン194が挿通される円環状をなしている。ベースバルブ部材191には、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通させる複数の通路穴195と、これら通路穴195の径方向の外側にて、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通させる複数の通路穴196とが形成されている。リザーバ室6側のディスク192は、下室20から通路穴195を介するリザーバ室6への油液の流れを許容する一方でリザーバ室6から下室20への通路穴195を介する油液の流れを抑制する。ディスク193は、リザーバ室6から通路穴196を介する下室20への油液の流れを許容する一方で下室20からリザーバ室6への通路穴196を介する油液の流れを抑制する。
ディスク192は、ベースバルブ部材191とによって、緩衝器1の縮み行程において開弁して下室20からリザーバ室6に油液を流すとともに減衰力を発生する縮み側の減衰バルブ197を構成している。ディスク193は、ベースバルブ部材191とによって、緩衝器1の伸び行程において開弁してリザーバ室6から下室20内に油液を流すサクションバルブ198を構成している。なお、サクションバルブ198は、主としてピストンロッド21のシリンダ2からの伸び出しにより生じる液の不足分を補うようにリザーバ室6から下室20に実質的に減衰力を発生させることなく液を流す機能を果たす。
ピストンロッド21が伸び側に移動する伸び行程で、周波数感応部43がないと仮定すると、ピストン18の移動速度(以下、ピストン速度と称す)が、図8に0~v1で示すように遅い微低速域では、上室19からの油液は、図3に示す通路穴37内の通路部から、減衰力発生機構41のチョーク通路228を含む固定オリフィス227と、ピストン18とパイロットケース部材55の外側筒部73との間の通路部88とを介して下室20に流れ、図8に実線X1で示すようにチョーク特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このとき、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
ここで、固定オリフィス227がチョーク通路228を含まない場合は、図8に破線X2で示すように、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生することになる。これに対し、本実施形態では、チョーク通路228を含む固定オリフィス227で油液を流すため、図8に実線X1で示すように減衰力がピストン速度にほぼ比例するリニアな特性となる。
ピストン速度が速くなって低速域(v1~)になると、上室19からの油液は、通路穴37内の通路部から、図3に示す減衰力発生機構41のメインバルブ231を開きながら、メインバルブ231とピストン18のバルブシート部47との隙間と、通路部88とを含む通路101を介して下室20に流れることになり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このとき、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図9に実線X3で示すように、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率が微低速域(0~v1)よりも下がることになる。
ピストン速度がさらに速くなると、上室19からの油液は、減衰力発生機構41の離間するメインバルブ231とバルブシート部47と隙間を含む通路101を介する下室20への流れに加えて、図4に示す背圧導入通路235から、ハードバルブである減衰力発生機構105のサブバルブ99を開きながら、サブバルブ99とバルブシート部79との隙間を含む通路103を通って、下室20に流れることになり、減衰力の上昇をさらに抑えることになる。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率がさらに下がることになる。
ピストン速度がさらに速くなると、図3に示すパイロットバルブ52に作用する力(油圧)の関係は、通路穴37内の通路部から加わる開方向の力が背圧室80から加わる閉方向の力よりも大きくなる。よって、この領域では、ピストン速度の増加に伴い、減衰力発生機構41のメインバルブ231が、ピストン18のバルブシート部47から上記よりも離れて開くことになり、通路穴37内の通路部と、背圧導入通路235と、減衰力発生機構105のサブバルブ99およびバルブシート部79の隙間とを含む通路103を通る下室20への流れに加え、通路部88を含む通路101を介して下室20に油液をより多く流すため、減衰力の上昇を一層抑えることになる。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率がさらに下がることになる。
ピストンロッド21が縮み側に移動する縮み行程では、ピストン速度が遅い時、下室20からの油液は、図2に示す縮み側の通路穴39内の通路部と、減衰力発生機構42のディスクバルブ129のチョーク通路128を含む固定オリフィス127とを介して上室19に流れチョーク特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生することになる。このとき、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。また、ピストン速度が速くなると、下室20から縮み側の通路穴39内の通路部に導入された油液が、基本的に減衰力発生機構42のディスクバルブ129を開きながらディスクバルブ129とバルブシート部49との間を通って上室19に流れることになり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性はピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率は下がることになる。
以上が、周波数感応部43がないと仮定した場合の作動であるが、本実施形態では、周波数感応部43が、ピストン速度が同じ場合でも、ピストン周波数に応じて減衰力を可変とする。
つまり、ピストン周波数が高いとき、ピストン18の振幅は小さく、このようにピストン周波数が高いときの伸び行程では、上室19の圧力が高くなって、図2に示す通路107の通路穴37内の通路部と、ディスク51の切欠87内の通路部と、ピストン18の大径穴部202と取付軸部28との間の通路部と、ピストンロッド21の通路溝30内の通路部と、図4に示すケース部材131の大径穴部146と取付軸部28との間の通路部と、ケース部材131の流路溝148内の通路部とを介して、周波数感応部ケース140内のケース室171に上室19から油液を導入させる。すると、これに応じて、それまで支持部143とディスク135とにディスク155において当接していた区画ディスク134が、ストッパ部159を蓋部材139のフランジ部262に近づける方向に変形してケース室171の容積を拡大しつつ、通路107の下室20側の部分であるケース室172から、蓋部材139の溝264内の連通路265を介して下室20に油液を排出させる。
伸び行程の都度、このように区画ディスク134が変形することにより、ケース室171に上室19から油液を導入することになり、その結果、上室19から、減衰力発生機構41を開きながら、通路101を介して下室20に流れる油液の流量が減ることになる。加えて、ケース室171に上室19から油液を導入することによって、ケース室171がない場合と比べて背圧室80の圧力上昇が抑えられ、減衰力発生機構41のメインバルブ231が開弁しやすくなる。これらによって伸び側の減衰力がソフトになる。このとき、ハードバルブである減衰力発生機構105は開弁しない。ここで、区画ディスク134の内周側は、ケース部材131の突出部142から離間してディスク135に片面側からのみ支持されているため、内周端が突出部142に近づくように変形し易く、よって、外周側のストッパ部159が蓋部材139に近づくように容易に変形する。
他方で、ピストン周波数が低いとき、ピストン18の振幅は大きく、このようにピストン周波数が低いときの伸び行程では、区画ディスク134の変形の周波数も追従して低くなるため、伸び行程の初期に、上記と同様に、通路107を介して上室19からケース室171に油液が流れるものの、その後は区画ディスク134がストッパ部159で蓋部材139に当接して停止し、上室19からケース室171に油液が流れなくなる。ケース室171に上室19から油液が流れなくなることから、ケース室171の圧力が上昇し、ケース室171に常時連通する背圧室80の圧力も上昇して、減衰力発生機構41のメインバルブ231の開弁を抑制する状態となる。すなわち、減衰力発生機構41は、メインバルブ231が開弁せず、固定オリフィス227を介して、上室19から下室20に油液を流す状態となり、伸び側の減衰力がハードになる。
さらに背圧室80の圧力が上昇すると、油液は、ハードバルブである減衰力発生機構105のサブバルブ99を開き、サブバルブ99とバルブシート部79との隙間を含む通路103を通って下室20に流れることになる。さらに背圧室80の圧力が上昇すると、油液は、通路103を通る流れに加えて、減衰力発生機構41のメインバルブ231を開弁させて通路101から下室20に流れることになる。
以上により、ピストン周波数が低いときの伸び側の減衰力がハードになる。
ここで、周波数感応部43は、縮み行程のときは、下室20の圧力が高くなって、ケース室172の圧力の方がケース室171の圧力よりも高くなる。その結果、チェック弁245の弁体としての区画ディスク134のディスク155が、ケース部材131の支持部143を支点として変形して、チェック弁245の弁座としてのディスク135から離座する。これにより、チェック弁245が溝264内の連通路265を含む通路107を開き、下室20から上室19に向けて油液を流す。その際に、ディスク155は、ディスク135から離れることで差圧がなくなり、それ以上の移動が抑制される。
上記した特許文献1の緩衝器には、周波数に感応して減衰力を可変とする周波数感応部が設けられている。緩衝器は、減衰力特性をより細かく制御するために構造が複雑化しており、それによりコストが増大している。このような緩衝器において、コストを低減することが求められている。
本実施形態の緩衝器1は、伸び側の減衰力発生機構41,105が、ピストン18の摺動によって生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させるメインバルブ231と、メインバルブ231の開弁方向に内圧を作用させる背圧室80と、一端に開口部77を有する外側筒部73と底部71とを有し、開口部77にメインバルブ231が配置され、内部に背圧室80を形成する有底筒状のパイロットケース部材55と、背圧室80に一方の上室19から油液を導入する背圧導入通路235と、パイロットケース部材55の底部71の外周側に形成される環状のバルブシート部79に着座してバルブシート部79の内周側に背圧室80と連通する受圧室82を区画し、背圧室80の圧力によって開弁して、他方の下室20への油液の流れに抵抗力を与えるサブバルブ99と、を備えている。そして、このような構造において、背圧導入通路235が、パイロットケース部材55の底部71に設けられている。
このように、背圧導入通路235をパイロットケース部材55の底部71に設けることで、メインバルブ231とパイロットケース部材55との間に背圧導入通路235を構成するディスクを設けなくても済むことになり、メインバルブ231とパイロットケース部材55との間に配置される部品の点数を低減することができる。したがって、メインバルブ231のパイロットケース部材55への組み付け性を向上することができる。その結果、生産性を向上させることができ、コストを低減することができる。
具体的には、メインバルブ231のパイロットバルブ52と一枚のディスク53とパイロットケース部材55とを予め組み立ててサブ組立体の状態にすることができ、この場合、パイロットバルブ52とパイロットケース部材55との間に一枚のディスク53のみを配置すれば良いため、部品点数が少なく、作業が容易となる。また、このサブ組立体を、ピストンロッド21に組み付ける場合であっても、一枚のディスク53の位置ずれのみを注意しながらピストンロッド21に組み付ければ良いため、組み付け作業が容易となる。
また、背圧導入通路235をパイロットケース部材55の底部71に設けることで、背圧導入通路235を構成するディスクを減らすことができる。これにより、部品点数を低減でき、さらにコストを低減することができる。また、ディスクを減らす分、ピストンロッド21の軸方向長さを短くすることができ、軸方向の小型化が図れる。
また、背圧導入通路235をパイロットケース部材55の底部71に流路溝81として設けることで、油液を受圧室82から貫通穴74内の通路部を介して背圧室80に導入することになるため、メインバルブ231のバルブ挙動の安定化を図ることができる。
また、一端に開口部149を有する外側筒部144および底部141を有するケース部材131の開口部149に設けられる蓋部材139が、筒状部261と、筒状部261の外周部から径方向外方に広がる、筒状部261よりも軸方向に薄いフランジ部262とを有する。これにより、筒状部261がフランジ部262をケース部材131の底部141から離して配置することになるため、そのために必要であったワシャ等の別部品が不要になる。
なお、本実施形態では、メインバルブ231のパイロットバルブ52とパイロットケース部材55との間に、一枚のディスク53のみが設けられることになるが、ディスク53をなくして、パイロットバルブ52のディスク85をパイロットケース部材55に当接させても良い。
周波数感応部ケース140が、一端に開口部149を有する外側筒部144と、区画ディスク134が設けられる底部141とを有するケース部材131と、ケース部材131の開口部149に設けられる蓋部材139とを有している。そして、蓋部材139とケース部材131の外側筒部144との間に、ケース室172と常時連通する連通路265が形成されているため、連通路265の形成が容易となる。これにより、さらにコストを低減することができる。具体的には、連通路265を形成するための溝264を蓋部材139の外周部に配置することにより、蓋部材139は、溝264を含めて焼結により形成することが可能となる。よって、蓋部材139を焼結化することで、さらにコストを低減することができる。
また、蓋部材139が、径方向内側の筒状部261と、径方向外側のフランジ部262とを有しており、フランジ部262よりも筒状部261の方が軸方向に長くなっている。よって、ケース室172の容積を確保するために、ディスクを重ねる等して、ケース部材131の底部141とフランジ部262との間の距離を確保する必要がなくなる。これにより、部品点数を低減でき、組み付け作業も容易となって、さらにコストを低減することができる。
また、上室19とケース室171とを結ぶ通路107をケース部材131の底部141に流路溝148として設けることで、区画ディスク134とケース部材131との間に通路107を構成するディスクを設けなくても済むことになる。よって、通路107を構成するディスクを減らすことができ、これにより、部品点数を低減でき、さらにコストを低減することができる。また、ディスクを減らす分、ピストンロッド21の軸方向長さを短くすることができ、軸方向の小型化が図れる。
また、メインバルブ231には、2つの上室19および下室20を常時連通する固定オリフィス227が形成されており、この固定オリフィス227がチョーク通路228を含むため、チョーク特性を得るための構成をメインバルブ231に設けることができる。よって、部品点数を低減でき、さらにコストを低減することができる。
固定オリフィス227がチョーク通路228を含むため、チョーク通路228の形状変更が容易となる。チョーク通路228の形状変更で、ピストン速度が低速~高速域での特性を損なわずに、微低速域での減衰力特性の安定化を図ることができ、微低速域での減衰力特性のチューニングの自由度を高めることができる。具体的には、搭載車両の高応答化、滑らかな乗り心地、異音抑制の効果が得られる。
上記実施形態において、図9に示すように、パイロットケース部材55に対し、底部71に流路溝81が形成されていない点が異なるパイロットケース部材55Aと、サブバルブ99に対し、ディスク56にかえて内周側に切欠300を有するディスク56Aを有する点が異なるサブバルブ99Aとを用いても良い。この場合、背圧導入通路235が、ディスク56Aの切欠300内の通路部を含むようになる。すなわち、背圧導入通路235をサブバルブ99Aに設けても良い。
このように、背圧導入通路235をサブバルブ99Aに設けることでも、メインバルブ231側に背圧導入通路235を構成するディスクを設けなくて済むことになり、メインバルブ231側の部品点数を低減することができる。したがって、メインバルブ231のパイロットケース部材55への組み付け性を向上することができる。その結果、生産性を向上させることができ、コストを低減することができる。
また、上記実施形態において、周波数感応部43にかえて、図10に示す周波数感応部43Bを用いても良い。この周波数感応部43Bは、ケース部材131の外側筒部144および突出部142をなくした形状の蓋部材131Bを有している。蓋部材131Bは、支持部143、小径穴部145、大径穴部146および流路溝203を有している。また、この周波数感応部43Bは、ケース部材139B(第1ケース部材)を有している。ケース部材139Bは、貫通穴400を有する平板状の底部401と、底部401の外周縁部から軸方向に延出する円筒状の円筒状部402とを有する有底筒状である。貫通穴400内の通路部は、上記した通路107の一部を構成する。蓋部材131Bが、ケース部材139Bの円筒状部402に嵌合され、これにより、周波数感応部ケース140Bを形成する。周波数感応部ケース140Bにピストンロッド21の取付軸部28が挿通される。その結果、取付軸部28はケース部材139B内に配置される。
ケース部材139Bの円筒状部402の内周側には、底部401とは反対側に大径部405が、底部401側に、大径部405よりも内径が小径の小径部406が、それぞれ設けられ、これら大径部405および小径部406の間に軸直交方向に広がる段部407が形成されている。
周波数感応部43Bは、区画ディスク134Bも周波数感応部43とは一部異なっている。区画ディスク134Bは、ケース部材139B内に配置されている。区画ディスク134Bは、有孔円板状の撓み可能なディスク155Bの内周側に環状の弾性シール部材156Bが固着されている。区画ディスク134Bは、そのディスク155Bの外周側が、ケース部材139Bのシート部としての段部407に支持され、そのディスク155Bの径方向中間位置が蓋部材131Bの支持部143に支持される。なお、段部407と支持部143との間の軸方向の寸法はディスク155Bの厚さよりも小さくなっている。これにより、区画ディスク134Bにセット荷重を与えている。
区画ディスク134Bは、弾性シール部材156Bが、ディスク155Bの内周側に固着されており、ディスク155の一方の面181Bの内周側に円環状のシール部158Bが、ディスク155Bの他方の面182Bの内周側にストッパ部159Bが、それぞれ固着されている。また、ディスク155Bの内周面185Bに、シール部158Bおよびストッパ部159Bを連結させる円環状の連結部162Bが固着されている。
区画ディスク134Bも、そのディスク155Bが、取付軸部28を内側に貫通させることになり、取付軸部28との間に隙間を有している。そして、弾性シール部材156Bは、ディスク155Bのピストンロッド21との隙間側である非支持側に設けられて、取付軸部28との間をシール部158Bでシールする。弾性シール部材156Bは、ディスク155Bと取付軸部28との間の環状の隙間を介して、シール部158Bとストッパ部159Bとがディスク155Bの両面に固着されている。言い換えれば、弾性シール部材156Bは、ディスク155Bと取付軸部28との隙間を介して、ディスク155Bの両面に固着されて設けられている。
区画ディスク134Bは、ストッパ部159Bが、ディスク155Bの内周縁部に沿う形状の複数の円弧状のストッパ構成部160Bで構成されており、ディスク155Bの周方向で隣り合うストッパ構成部160Bとストッパ構成部160Bとの間が、ディスク155Bが露出するディスク露出部161Bとなっている。ディスク露出部161Bは、ストッパ部159Bを径方向に横断している。
ケース部材139B内には、ディスク155Bおよび弾性シール部材156Bにより画成されて2つのケース室171B,172Bが設けられている。ケース室171B,172Bも通路107の一部を構成する。区画ディスク134Bは、区画ディスク134Bのディスク155Bの外周側と周波数感応部ケース140Bの段部407とが、通路107の並列通路109において、ケース室171Bからケース室172Bおよび下室20への油液の流れを規制する一方、下室20およびケース室172Bからケース室171Bへの油液の流れを許容するチェック弁245Bを構成する。
このような構成の周波数感応部43Bも、周波数感応部43と同様に作動して、ピストン周波数に感応して減衰力を可変とする。すなわち、ピストン周波数が高いとき、伸び行程の都度、区画ディスク134Bが変形して、ケース室171Bに上室19から油液を導入することになる。また、ピストン周波数が低いときは、伸び行程の初期に、上室19からケース室171Bに油液が流れるものの、その後は区画ディスク134Bがケース部材139Bに当接して停止し、上室19からケース室171Bに油液が流れなくなる。
以上の実施形態は、複筒式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、外筒をなくしシリンダ2内の下室20の上室19とは反対側に摺動可能な区画体でガス室を形成するモノチューブ式の油圧緩衝器に用いてもよく、ディスクにシール部材を設けた構造のパッキンバルブを使用した圧力制御バルブを含むあらゆる緩衝器に用いることができる。勿論、上記した縮み側の減衰力発生機構42に本発明を適用したり、上記したベースバルブ25に本発明を適用することも可能である。また、シリンダ2の外部にシリンダ2内と連通する油通路を設け、この油通路に減衰力発生機構を設ける場合にも適用可能である。また、上記実施形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。
以上に述べた実施形態の第1の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を2つのシリンダ室に区画するピストンと、一端側が前記ピストンに連結されると共に他端側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により一方の前記シリンダ室から作動流体が流れ出す第1通路と、前記第1通路と並列に設けられる第2通路と、前記第1通路に設けられて減衰力を発生させる減衰力発生機構と、前記第2通路に設けられる周波数感応部と、を有し、前記周波数感応部は、内部に前記第2通路の少なくとも一部が形成される筒状の第1ケース部材と、前記第1ケース部材内に配置される軸部と、前記軸部を内側に貫通させて前記第1ケース部材内に配置され、内周側または外周側が支持され、非支持側に前記第1ケース部材との間または前記軸部との間をシールする環状の弾性シール部材が設けられた撓み可能な環状のディスクと、前記ディスクおよび前記弾性シール部材により画成されて設けられた前記第1ケース部材内の2つのケース室と、を備え、前記減衰力発生機構は、前記ピストンの摺動によって生じる作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させるメインバルブと、前記メインバルブの開弁方向に内圧を作用させる背圧室と、一端に開口部を有する筒部および底部を有し、前記開口部に前記メインバルブが配置され、内部に前記背圧室を形成する有底筒状の第2ケース部材と、前記背圧室に一方のシリンダ室から作動流体を導入する背圧導入通路と、前記第2ケース部材の前記底部の外周側に形成される環状のシート部に着座して前記シート部の内周側に前記背圧室と連通する受圧室を区画し、前記背圧室の圧力によって開弁して、他方のシリンダ室への作動流体の流れに抵抗力を与えるサブバルブと、を備え、前記背圧導入通路が、前記第2ケース部材の前記底部または前記サブバルブに設けられている。これにより、コストを低減することができる。
また、第2の態様は、第1の態様において、前記第1ケース部材は、一端に開口部を有する筒部および底部を有し、前記第1ケース部材の前記底部に前記ディスクが設けられ、前記第1ケース部材の前記開口部に蓋部材が設けられ、前記蓋部材と前記第1ケース部材の筒部との間に、前記ケース室と常時連通する連通路が形成されている。これにより、コストをさらに低減することができる。
また、第3の態様は、第1または第2の態様において、前記メインバルブには、前記2つのシリンダ室を常時連通するオリフィスが形成されており、該オリフィスは、チョーク通路を含む。これにより、コストをさらに低減することができる。
また、第4の態様は、第1乃至第3のいずれか一態様において、前記第1ケース部材は、一端に開口部を有する筒部および底部を有し、前記第1ケース部材の前記底部に前記ディスクが設けられ、前記第1ケース部材の前記開口部に蓋部材が設けられ、前記蓋部材が、筒状部と、筒状部の外周部から径方向外方に広がるフランジ部とを有する。これにより、筒状部がフランジ部を第1ケース部材の底部から離して配置するため、そのために必要であったワシャ等の別部品が不要になる。