以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る燃料電池スタック10は、単位燃料電池である発電セル12を複数備える。複数の発電セル12は、水平方向(矢印A方向)に積層された積層体14に構成されている。燃料電池スタック10は、例えば図示しない燃料電池自動車に、積層体14の積層方向と車幅方向が一致するように搭載される。なお、積層体14は、燃料電池自動車の搭載状態で、複数の発電セル12を重力方向(矢印C方向)に積層していてもよい。
燃料電池スタック10は、燃料電池自動車に積層体14を搭載するために、積層体14を収容可能なスタックケース16を備える。また、スタックケース16の一端側には、燃料電池スタック10を含む図示しない燃料電池システムの配管、補機(デバイス)等が連結される。
スタックケース16は、収容空間20aを有する筒状のケース本体20と、ケース本体20の両端を閉じる一対のエンドプレート24a、24bとを備える。ケース本体20は、押出成形、鋳造等により、天板、一対の側板及び底板が連なる一体構造物として構成される。なお、ケース本体20は、別体に構成された天板、一対の側板及び底板を接合した構成でもよい。
ケース本体20の長手方向(矢印A方向)両端部には、収容空間20aに連通する開放部20bが設けられている。開放部20bを囲うケース本体20の両端面には、本体側ネジ穴20cが複数形成されている。
収容空間20aにおいて、複数の発電セル12の積層方向(矢印A方向)一端側には、ターミナルプレート22a、インシュレータ23aが外方に向かって順に配置される。また複数の発電セル12の積層方向他端側には、ターミナルプレート22b、インシュレータ23bが外方に向かって順に配置される。そして、ターミナルプレート22a、インシュレータ23aを含む積層体14の積層方向一端部には、エンドプレート24aが配置される。ターミナルプレート22b、インシュレータ23bを含む積層体14の積層方向他端部には、エンドプレート24bが配置される。
一対のエンドプレート24a、24bの各々には、複数の締結孔25が設けられている。複数の締結孔25は、ケース本体20の複数の本体側ネジ穴20cに対向している。エンドプレート24a、24bは、燃料電池スタック10の組立時に、ボルト26が各締結孔25を通して本体側ネジ穴20cに螺合されることで、ケース本体20に固定される。ケース本体20とエンドプレート24a、24bの間には、燃料電池スタック10の組立時に、ガスの漏出を遮断するシール部材27(図5参照)が配置される。
このように構成された燃料電池スタック10は、一対のエンドプレート24a、24b間にて積層体14を挟持し、一対のエンドプレート24a、24bを介してケース本体20から積層方向(矢印A方向)の締付荷重を積層体14に付与する。締付荷重の調整は、インシュレータ23a、23bの厚さの調整又は厚さを調整したシム(不図示)の配置等により行う。この締付荷重によって、積層体14を構成する複数の発電セル12は、発電時における反応ガスの漏出等が抑制されると共に、発電面に適切な面圧が付与される。
図2に示すように、燃料電池スタック10の発電セル12は、樹脂枠付きMEA28と、樹脂枠付きMEA28を挟持する一対のセパレータ32、34とを備える(以下、2つのセパレータ32、34をまとめてセパレータ30ともいう)。具体的には、樹脂枠付きMEA28の一方面側に配置された第1セパレータ32と、樹脂枠付きMEA28の他方面側に配置された第2セパレータ34とを有する。
発電セル12の樹脂枠付きMEA28は、電解質膜・電極構造体28a(以下、「MEA28a」という)と、MEA28aの外周部に接合され当該外周部を周回する樹脂枠部材36とを備える。さらに、MEA28aは、電解質膜38と、電解質膜38の一方の面に設けられたカソード電極40と、電解質膜38の他方の面に設けられたアノード電極42とを有する。なお、MEA28aは、樹脂枠部材36を用いることなく、電解質膜38を外方に突出させてもよい。樹脂枠部材36には枠状のフィルム部材を用いてもよい。
電解質膜38は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)が適用される。なお、電解質膜38は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。また図示は省略するが、アノード電極42及びカソード電極40は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子とイオン交換成分を含むペーストをガス拡散層の表面に一様に塗布して形成され、電解質膜38に接合される電極触媒層とを有する。
樹脂枠部材36は、MEA28aの周囲に設けられることで、電解質膜38のコストの低減を促すと共に、MEA28aと第1及び第2セパレータ32、34との接触圧を適切に調整しシール性を確保する。この樹脂枠部材36は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、又はm-PPE(変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)又は変性ポリオレフィンで構成される。
第1セパレータ32は、一方の反応ガスである酸化剤ガス(例えば、酸素含有ガス)を流動させる酸化剤ガス流路44を、樹脂枠付きMEA28のカソード電極40に対向する面32aに備える。酸化剤ガス流路44は、第1セパレータ32の矢印B方向に延在する複数本の突条部44a間に形成された直線状流路溝又は波状流路溝によって構成される。
第2セパレータ34は、他方の反応ガスである燃料ガス(例えば、水素含有ガス)を流動させる燃料ガス流路46を、樹脂枠付きMEA28のアノード電極42に対向する面34aに備える(図2中では、便宜的に、MEA28aのアノード電極42上に燃料ガスの流動方向を示す)。燃料ガス流路46は、第2セパレータ34の矢印B方向に延在する複数本の突条部46a間に形成された直線状流路溝又は波状流路溝によって構成される。
また、互いに積層される第1セパレータ32の面32bと第2セパレータ34の面34bとの間には、冷媒(例えば、水)を流動させる冷媒流路48が設けられる。冷媒流路48は、第1セパレータ32の酸化剤ガス流路44の裏面形状と、第2セパレータ34の燃料ガス流路46の裏面形状とが重なり合って形成される。
第1及び第2セパレータ32、34、樹脂枠部材36の長手方向(矢印B方向)の一端部には、積層方向(矢印A方向)に連通する酸化剤ガス入口連通孔50a、冷媒入口連通孔52a及び燃料ガス出口連通孔54bがそれぞれ設けられる。酸化剤ガス入口連通孔50a、冷媒入口連通孔52a及び燃料ガス出口連通孔54bは、短手方向(矢印C方向)に配列されている。酸化剤ガス入口連通孔50aは酸化剤ガスを酸化剤ガス流路44に供給する。冷媒入口連通孔52aは冷媒を冷媒流路48に供給する。燃料ガス出口連通孔54bは燃料ガスを燃料ガス流路46から排出する。
第1及び第2セパレータ32、34、樹脂枠部材36の長手方向(矢印B方向)の他端部には、積層方向に連通する燃料ガス入口連通孔54a、冷媒出口連通孔52b及び酸化剤ガス出口連通孔50bがそれぞれ設けられる。燃料ガス入口連通孔54a、冷媒出口連通孔52b及び酸化剤ガス出口連通孔50bは、短手方向(矢印C方向)に配列されている。燃料ガス入口連通孔54aは燃料ガス流路46に燃料ガスを供給する。冷媒出口連通孔52bは冷媒流路48から冷媒を排出する。酸化剤ガス出口連通孔50bは酸化剤ガス流路44から酸化剤ガスを排出する。
酸化剤ガス入口連通孔50a、酸化剤ガス出口連通孔50b、燃料ガス入口連通孔54a、燃料ガス出口連通孔54b、冷媒入口連通孔52a及び冷媒出口連通孔52bは、積層体14の積層方向一端側の構造部(ターミナルプレート22a、インシュレータ23a及びエンドプレート24a)を貫通し、エンドプレート24aに接続される図示しない配管に連通する。なお酸化剤ガス入口連通孔50a、酸化剤ガス出口連通孔50b、燃料ガス入口連通孔54a、燃料ガス出口連通孔54b、冷媒入口連通孔52a、冷媒出口連通孔52bの配置や形状は、図示例に限定されず、燃料電池スタック10の仕様に応じて適宜設計し得る。
また、第1セパレータ32の面32aには、樹脂枠付きMEA28に向かって突出し、樹脂枠部材36に接触してシール(ビードシール)を形成する第1ビード部56がプレス成形されている。第1ビード部56は、酸化剤ガス流路44の外周側を周回すると共に、燃料ガス入口連通孔54a、燃料ガス出口連通孔54b、冷媒入口連通孔52a及び冷媒出口連通孔52bの周囲をそれぞれ囲み、酸化剤ガス流路44への燃料ガスや冷媒の流入を防止する。
第2セパレータ34の面34aには、樹脂枠付きMEA28に向かって突出し、樹脂枠部材36に接触してシール(ビードシール)を形成する第2ビード部58がプレス成形されている。第2ビード部58は、燃料ガス流路46の外周側を周回すると共に、酸化剤ガス入口連通孔50a、酸化剤ガス出口連通孔50b、冷媒入口連通孔52a及び冷媒出口連通孔52bの周囲をそれぞれ囲み、燃料ガス流路46への酸化剤ガスや冷媒の流入を防止する。
セパレータ30(第1及び第2セパレータ32、34)は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、或いは金属表面に防食用の表面処理を施した金属薄板の断面を波形にプレス成形することで導電性を有する金属セパレータに構成される。なお、セパレータ30は、カーボン材料又はカーボンと樹脂の混合材料により構成されたカーボンセパレータを適用してもよい。また、第1及び第2セパレータ32、34の外周33、35には、絶縁性樹脂材料が設けられていてもよい。さらに、第1及び第2セパレータ32、34は、ビードシールの代わりに弾性を有するゴムシールを用いてもよい。
第1セパレータ32と第2セパレータ34は、溶接、ろう付け、かしめ等の接合方法により、相互に接合されて接合セパレータに構成される。複数の発電セル12は、製造時に接合セパレータと樹脂枠付きMEA28を交互に積層することで積層体14に形成される。これにより積層体14は、第1セパレータ32と樹脂枠付きMEA28間の酸化剤ガス流路44、樹脂枠付きMEA28と第2セパレータ34間の燃料ガス流路46、及び第1セパレータ32と第2セパレータ34間の冷媒流路48を順に繰り返した構造を呈する。
また図1~図3に示すように、発電セル12のセパレータ30(第1及び第2セパレータ32、34)の各外周33、35には、複数のタブ(突出片)60(例えば、一対のタブ60)がそれぞれ設けられている。複数のタブ60は、第1及び第2セパレータ32、34の長辺である上辺と下辺に設けられる。上辺側のタブ60は、矢印B方向中央部に対して他端側に寄った位置にあり、下辺側のタブ60は、矢印B方向中央部に対し一端側に寄った位置にある。なお、各外周33、35上におけるタブ60の位置は特に限定されるものではない。また、一方のセパレータ30のみにタブ60を設け、他方のセパレータ30にタブ60を設けなくてもよい。
各タブ60は、支持部62、荷重受け部64及びリブ65を有する。支持部62は、台形状を呈し、プレス成形によりセパレータ30の外周33、35から外方(矢印C方向)に向かって突出するように一体成形される。リブ65は、支持部62に形成され、積層方向に突出すると共に支持部62の幅方向(矢印B方向)に沿って延在している。
荷重受け部64は、ろう付け、溶接等の接合部63を介して支持部62に接合される。荷重受け部64は、その幅方向両側の各々が略三角形状に形成され、幅方向(矢印B方向)中心線を基準に対称形状を呈している。荷重受け部64の中央部には、位置決め孔66が形成されている。位置決め孔66には、燃料電池スタック10の製造時に複数の発電セル12を位置決めするためのロッド67(図5参照)が挿通される。ロッド67の矢印A方向両端部は、一対のエンドプレート24a、24bに固定される。一対のエンドプレート24a、24bの各々には、ロッド67を通す孔部24a1、24b1が複数設けられている。各孔部24a1、24b1には第1固定部材69a及び第2固定部材69b(図5参照)が設けられ、第1固定部材69aはロッド67を貫通支持し、第2固定部材69bはロッド67の端部を覆うように支持する。
荷重受け部64は、金属薄板により構成され、外周及び位置決め孔66の内周が絶縁性樹脂材料により構成される。荷重受け部64を構成する樹脂材料は、電気的な絶縁性能を備えていれば特に限定されず、例えば、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルフォン、フッ素樹脂等、又はインシュレータ23a、23bと同様の材料を適用することができる。なお、タブ60の構成は、特に限定されず、例えば、支持部62と荷重受け部64が一体成形されていてもよい。荷重受け部64の形状も、矩形状、台形状等に形成されていてもよい。
以上のタブ60は、図1に示すように、複数の発電セル12(セパレータ30)の積層状態で、矢印A方向に沿って一列に並ぶタブ列68を構成する。本実施形態においてタブ列68は、積層体14の外周である上面と下面の各々に形成される。燃料電池スタック10は、このタブ列68(複数のタブ60)を収容する凹部72を有し、セパレータ30の外周33、35に係合可能なサポートバー70を備える。
図1及び図3に示すように、サポートバー70は、各タブ列68(タブ60)に対応して、矩形状のセパレータ30の4辺のうち一対の長辺(矢印C方向に位置する上辺と下辺)に1つずつ配置される。以下、セパレータ30の上辺に位置するものをサポートバー70Aともいい、セパレータ30の下辺に位置するものをサポートバー70Bともいう。すなわち、サポートバー70Aは、一対のエンドプレート24a、24bの上辺に跨って設けられる一方で、サポートバー70Bは、一対のエンドプレート24a、24bの底辺に跨って設けられる。
なお、タブ60及びサポートバー70の設置位置は、燃料電池自動車が受ける荷重の方向に応じて任意に設計してよい。例えば、サポートバー70は、セパレータ30の一対の長辺のうちいずれか1つに設けられるだけでもよい。或いは、セパレータ30の上辺や下辺が短辺に構成されている場合はこの短辺に設けられてもよい。またサポートバー70は、セパレータ30の4辺全てに設けられてもよい。さらにまた、サポートバー70は、セパレータ30の一辺に対し複数設けられてもよい。
サポートバー70は、ケース本体20の矢印A方向(発電セル12の積層方向)の長さに略一致する全長に設定されている。図3及び図4に示すように、サポートバー70の凹部72は、タブ列68(セパレータ30のタブ60)を収容するために積層体14と対向する面に形成されている。凹部72は、断面視で、底の角部77がR形状を有する横長の溝であり、サポートバー70の底部74と一対の側部76とに囲われている。この凹部72は、サポートバー70の延在方向(矢印A方向)の全長にわたって形成される。
サポートバー70は、タブ60の幅方向(矢印B方向)の荷重を受けることが可能な適宜の剛性を有していれば、構成材料については特に限定されない。例えば、サポートバー70の構成材料としては、アルミニウム、鉄、チタン等の金属材料を適用し得る。なお、サポートバー70は、絶縁性樹脂材料により構成してもよく、又は金属製の本体に絶縁性樹脂部材を被覆して構成してもよい。この場合、タブ60の外周を樹脂材料で覆うことなく金属材料だけで構成することも可能となる。
また、本実施形態において、サポートバー70の矢印A方向の一端部71aは、エンドプレート24aに接合される。その一方で、サポートバー70の矢印A方向の他端部71bは、締付荷重を付与しないようにエンドプレート24bに支持される。
具体的には図1に示すように、サポートバー70の一端部71aには、一対の接合用穴部78が形成される一方で、エンドプレート24aには、各接合用穴部78に対応して一対の孔部80が形成される。そして、一対の接合用穴部78及び一対の孔部80を跨いで一対の中空ノックピン82及び一対の締結ボルト84が挿入される。この際、締結ボルト84は、中空ノックピン82の中央部を通り、その挿入方向先端の雄ネジ部が接合用穴部78の雌ネジ部に螺合される。これによりサポートバー70の一端部71aとエンドプレート24aとが強固に締結される。なお、サポートバー70の一端部70aに設けられる締結ボルト84(及び接合用穴部78)の数は、2つに限定されるものではない。
また、サポートバー70の他端部71bには、一対の第1穴86が形成される一方で、エンドプレート24bには、各第1穴86に対応して一対の第2穴88が形成される。第1穴86と第2穴88は、相互に対向し合うことで袋形状の空間を形成する。そして、一対の第1穴86及び一対の第2穴88を跨いで一対の中実ピン90(又は中空のピン)が挿入される。これによりサポートバー70の他端部71bは、サポートバー70に対し締付荷重を付与せずに、エンドプレート24bに支持される。中実ピン90に支持されたサポートバー70の他端部70bの他端面70b1とエンドプレート24bとの間には、微小な隙間がある。つまり、本明細書における「支持」とは、サポートバー70が中実ピン90の軸方向に移動可能、且つ半径方向に移動不能であることを言う。
ここで既述したように、積層体14(発電セル12)の下辺側に設けられるサポートバー70Bは、上方に向かって開放する凹部72を有することで、スタックケース16内に生じた水蒸気が結露して凹部72に液水が滞留する可能性がある。或いは、発電セル12の発電時に生じた生成水(液水)が積層体14から凹部72に落下して凹部72に滞留する可能性がある。以下、凹部72に滞留する液水を滞留水ともいう。
このため図1及び図4に示すように、サポートバー70Bは、滞留水を流出可能な開口部92を底部74に備える。なお、積層体14(発電セル12)の上辺側に設けられるサポートバー70Aには、開口部92が設けられていない。
本実施形態において、開口部92は、サポートバー70Bの一端部71a及び他端部71bにそれぞれ設けられた一対の切り欠き94として構成されている。この切り欠き94は、サポートバー70Bの長手方向(矢印A方向)の一端面71a1及び他端面71b1から長手方向内側に向かって底部74を短く切り欠くことで形成される。切り欠き94は、底部74を厚さ方向に貫通しており、凹部72の底面(サポートバー70Bの内面)と、底部74の下面(サポートバー70Bの外面)を連通させている。
切り欠き94は、平面視で、矩形状に形成されている。切り欠き94は、滞留水が円滑に排出される程度の切り欠き面積を有していればよい。なお、切り欠き94の平面形状は、特に限定されず、半円形状や他の多角形状に形成されてもよい。また、本実施形態に係る切り欠き94は、底部74の厚さ方向に同形状に形成されているが、開口部92は、底部74の厚さ方向に向かってテーパ状等に形成されることで、面積や形状が変化していてもよい。
切り欠き94は、サポートバー70Bの底部74と側部76が連結する一対のR形状の角部77よりも内側の平坦部分に設けられる。具体的には、切り欠き94は、サポートバー70Bの幅方向(矢印B方向)中心位置にあり、例えば、サポートバー70の幅寸法の1/5以下の幅寸法に設定されている。なお、切り欠き94は、図示例において一端面71a1と他端面71b1に1つずつ形成されているが、2つ以上形成されてもよい。
図1及び図5に示すように、燃料電池スタック10の組付状態において、上記のサポートバー70Bは、一対のエンドプレート24a、24bとの各境界に切り欠き94(開口部92)をそれぞれ位置させる。この状態において、切り欠き94の下方の開口側は、ケース本体20の底板に対向する。従って、サポートバー70Bの凹部72に留まる滞留水は切り欠き94に流動し、切り欠き94を通して底板に落下する。
ケース本体20は、エンドプレート24a、24bにより閉塞されていることで、セパレータ30の外周33、35から離間した底板上の空間にて滞留水を貯めることができる。なお、スタックケース16は、当該スタックケース16の外部に滞留水を排出可能なドレン孔91(図5中の破線参照)を、切り欠き94の近くのケース本体20又はエンドプレート24a、24bに備えているのが好ましい。
本実施形態に係る燃料電池スタック10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その動作について説明する。
図1及び図2に示すように、燃料電池スタック10は、エンドプレート24aに連結された配管(不図示)を介して、酸化剤ガス入口連通孔50aに酸化剤ガスが供給され、燃料ガス入口連通孔54aに燃料ガスが供給され、冷媒入口連通孔52aに冷媒が供給され、発電が行われる。
酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔50aから第1セパレータ32の酸化剤ガス流路44に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路44に沿って矢印B方向に移動し、MEA28aのカソード電極40に供給される。
一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔54aから第2セパレータ34の燃料ガス流路46に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路46に沿って矢印B方向に移動し、MEA28aのアノード電極42に供給される。
各MEA28aは、カソード電極40に供給される酸化剤ガスと、アノード電極42に供給される燃料ガスとの電気化学反応により発電が行われる。カソード電極40に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路44から酸化剤ガス出口連通孔50bへと流動し、酸化剤ガス出口連通孔50bに沿って排出される。同様に、アノード電極42に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス流路46から燃料ガス出口連通孔54bへと流動し、燃料ガス出口連通孔54bに沿って排出される。
また、冷媒入口連通孔52aに供給された冷媒は、第1セパレータ32と第2セパレータ34との間に形成された冷媒流路48に導入された後、矢印B方向に流通する。この冷媒は、MEA28aを冷却した後、冷媒出口連通孔52bから排出される。
そして、燃料電池スタック10は、図3に示すように、各発電セル12のタブ60がサポートバー70の凹部72に配置されている。これにより例えば、燃料電池自動車が前方(矢印B方向)から衝撃を受けて燃料電池スタック10に衝撃荷重がかかった場合でも、サポートバー70の凹部72にタブ60が係合することで、各発電セル12の横ずれが防止される。
また、燃料電池スタック10のスタックケース16内には、大気中の水蒸気及び発電時の生成水による水蒸気が含まれる。図5に示すように、この水蒸気は、特に燃料電池スタック10の温度が低下した際に、サポートバー70Bの凹部72において結露する、又は積層体14やロッド67の表面において結露してこの結露水が凹部72に落下する等により、凹部72において滞留水となる。
この滞留水は、凹部72に沿って矢印A方向に流動し、切り欠き94(開口部92)に移動すると、切り欠き94を通してサポートバー70Bの下方に落下する。これにより、凹部72に滞留水が留まることなく、セパレータ30のタブ60が滞留水により電気的に導通することが抑制される。
また、スタックケース16の底板に落下した滞留水は、積層体14から離間したスタックケース16の底に溜まる。この滞留水は、燃料電池スタック10の温度が上昇すると、時間経過に伴い自然気化する。
なお、本発明に係る燃料電池スタック10は、上述の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、一対のエンドプレート24a、24bの各々にサポートバー70を連結する(つまりサポートバー70の他端部71bを支持構造とせずに締結構造とする)ことで、サポートバー70を用いて積層体14に締付荷重を付与する構成でもよい。
また、サポートバー70Bは、矢印A方向の両端部(一端部71a、他端部71b)の各々に開口部92を備えることに限定されず、少なくとも一方の端部(端面)に開口部92(切り欠き94)を備えていればよい。例えば、燃料電池スタック10は、矢印A方向の両端部の高さが異なる(矢印C方向に傾く)ように燃料電池自動車に設置された場合、開口部92は、矢印A方向の両端部のうち低いほうの端部に設けられればよい。
さらに、サポートバー70Bの開口部92は、切り欠き94として構成されることに限定されない。例えば、図6に示す変形例に係るサポートバー96のように、開口部92は、サポートバー96の底部74を貫通する貫通孔98でもよい。この貫通孔98は、平面視で正円形状を呈し、底部74の幅方向中心位置に形成されている。なお、貫通孔98の平面形状は、サポートバー96の強度への影響が少ない正円形状が好ましいものの、これに限定されず、楕円形状、多角形状等に形成されてもよい。
また、貫通孔98は、底部74の延在方向(矢印A方向)に沿って複数設けられてもよい。複数の貫通孔98は、相互に等間隔に設けられるとよい。貫通孔98の設置数は、サポートバー96の強度への影響を勘案して適切に(例えば、一端部、他端部、中央部に各1つずつ等)設計されればよい。
さらに、サポートバー70B、96は、滞留水を流出可能な開口部92として、切り欠き94及び貫通孔98の両方を備えた構成でもよい。またさらに、開口部92(切り欠き94又は貫通孔98)は、サポートバー96の底部74に設けられるだけでなく、側部76に設けられていてもよい。例えば、側部76において底部74の上面に連なる位置に開口部92を備えていれば、側部76の幅方向外側に向けて液水を良好に排出することができる。
上述の実施形態から把握し得る技術的思想及び効果について、以下に記載する。
燃料電池スタック10は、サポートバー70の凹部72を構成する底部74に開口部92を有するという簡単な構成によって、凹部72に溜まる液水(滞留水)を開口部92から排出することができる。従って、燃料電池スタック10内の水蒸気がサポートバー70の凹部72において結露しても、凹部72での滞留水の滞留が抑制される。その結果、サポートバー70及び滞留水を介した発電セル12の地絡が生じ難くなり、燃料電池スタック10は安定的に発電を行うことができる。
また、開口部92は、少なくともサポートバー70の長手方向の一端面71a1に形成された切り欠き94である。これにより、燃料電池スタック10は、燃料電池自動車が傾いたとしても切り欠き94を介して凹部72から滞留水を良好に排出することができ、特にサポートバー70の長手方向の端部側に滞留水が溜まることを防止することが可能となる。
また、開口部92は、底部74を貫通する貫通孔98である。このように、貫通孔98が底部74に設けられていても、燃料電池スタック10は、貫通孔98を介して凹部72から滞留水を良好に排出することができる。