略語及び定義
本開示に関連して使用される科学的用語及び技術的用語は、本明細書に含まれるあらゆる定義に加えて、通常の意味(例えば、当業者に一般的に理解されているような)を有するものとする。更に、文脈上他に要求されない限り、単数形用語は複数を含み、複数形用語は単数を含むものとする。マグローヒル社(McGraw-Hill)化学用語辞典(Parker, S., Ed., McGraw-Hill, San Francisco (1985))及びFerrohydro-Dynamics (R.E. Rosensweig, Dover Publications, New York, (1985))における開示は本明細書の一部を構成するものとして特にその内容を援用する。
「患者」には、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、人間及び獣医学的な被験者が含まれるものとする。
「血栓溶解剤」には、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、凝血または動脈硬化血小板を劣化させることができる薬剤を含むものとする。例えば、血栓溶解剤は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、スタチン及びその他の薬剤を含み、更に単独投与される各薬剤、又はワルファリン及び/又はヘパリンと同時投与される各薬剤を含むことができる。
「磁気ナノ粒子」には、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、被覆金属又は非被覆金属の粒子を含むものであって、約1nm(ナノメータ)以上の直径及び/又は約1000nm以下の直径、約10nm以上の直径及び/又は約200nm以下の直径、約15nm以上の直径及び/又は約150nm以下の直径、約20nm以上の直径及び/又は約60,80,100nm以下の直径、また1nmと1000nmのあいだの整数値、例えば、1、2、3、4、5、...997、998、999及び1000等の全ての正数値の直径を有する被覆金属又は非被覆金属の粒子を含むものとする。磁気ナノ粒子の適切な粒子径は、系の治療目標部位に依存する(例えば、非常に小さな血管はより小さいナノ粒子を受容し、循環系のより大きな部位はより大きなナノ粒子を受容することができる)。そのような磁気ナノ粒子の各例として、超常磁性酸化鉄ナノ粒子が含まれる。ナノ粒子は、マグネタイト又はその他の強磁性ミネラル又は酸化鉄から作製されてよく、また幾つかの実施の形態では、以下の材料のいずれか一つ若しくはそれらの組み合わせを被覆することができるもので、すなわち、それら被覆剤とは、(1)血中のナノ粒子を、親水性又は疎水性のいずれかにすることで、その挙動を高める被覆剤、(2)ナノ粒子を緩衝する被覆剤及び磁気ナノ粒子の磁性相互作用とその挙動を最適化する被覆剤、磁気共鳴画像診断、X線診断、陽電子射出断層撮影法(PET)、(3)超音波診断又はその他の画像診断技術による可視化を可能とする単一の又は複数の造影剤、(4)循環系の妨害物の破壊を加速させる各治療剤、(5)幹細胞、(6)各血栓溶解剤、等の各被覆剤である。被覆及び非被覆磁気ナノ粒子の双方の例及びそのような磁気ナノ粒子の作製法の例として、例えば米国特許第5543158号、5665277号、7052777号、7329638号、7459145号及び7524630号に記載のものであって、それぞれの全開示は本明細書の一部を構成するものとして特にその内容を援用する。著者グプタ(Gupta)等、2005年6月発行の「医用材料」、26巻、18号、ページ3995-4021(Gupta et al., Biomaterials, Volume 26, Issue 18, June 2005, Pages 3995-4021)を参照し、当該著作物における開示を本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する。
「流体障害物」には、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、静脈系、動脈系、中枢神経系及びリンパ系を含む循環系を介する流体の正常な流れを阻害する、部分的又は完全な障害物を含むものとする。「血管閉塞」とは流体障害物であって、限定されるわけではないが、アテローム硬化性血小板(溶血班)、 脂肪積体、動脈狭窄症, 再狭窄症, アテローム性動脈硬化症、動脈血栓症、静脈血栓症、脳血栓症、塞栓症(例えば、肺塞栓症)、動脈静脈奇形、出血、その他の凝血、及び極小血管等を含む流体障害物である。時として、流体障害物は、本明細書において、全体として、「凝血塊」と称する。
「実質的にクリアーする(障害物を除去する)」とは、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、循環系を介する流体の流れの上昇を結果的に発生させる、全て又は一部の流体障害物の除去を含むものとする。例えば、静脈を実質的にクリアー(静脈の障害物を除去する)するとは、血液が血栓を通過して又は其の周囲に流れるように、血管を塞いでいるその血栓を通過する経路又は其の周囲に経路を作ることを含む。
「極小血管」には、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、約1μm(ミクロメータ)から約10μmの直径を有する、循環系流体の経路を含むものとする。
「流体の流れの上昇」とは、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、閉塞循環系の流量をゼロからゼロを超過するレベルの流量まで上昇させることを含むものとする。例えば流動循環系では、用語「流体の流れの上昇」とは、患者内での一つ又は複数の磁性ナノ粒子の投与に先立つレベルから、元々の流体の流量レベルを超えるレベルまで、流量を上昇させることの意味を含むことができる。
「凝集物」には、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、磁性ナノ粒子から「各ロッド」へ展開させるような手法で(例えば、図17について本明細書で記載されるように)、個々の磁性ロータ群を回転させて塊を形成し連鎖させる事を含むものとする。そのような回転ロータ群は、個々のロータが全体的に同時回転し、群として同一方向に移動する集団を形成する。結合磁界及び勾配の経時的な適用とは、各ロッドを組み上げる手法である。そのようなロータ群は、単独で作用する個別ロータに期待される特質より異なる可能性がある特質であり、かつ流体の流れ又はまだ流体自体における乱流を形成するため、あるいは流体の流れ又はまだ流体自体における組成物質あるいは液体の拡散を高めるために、流体の流れ又はまだ流体自体における、液体力学的な力を作りだすことができる特質を備える。
「処置(治療)」には、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、利益的な又は所望の臨床上の結果を得るアプローチ(手法)を含むものとする。本明細書の開示の各目的として、利益的な又は所望の臨床上の結果とは、限定されるわけではないが、一つのあるいは複数の下記の要素を含むものとする;すなわち、限定されるわけではないが、流体障害物(例えば、脳卒中、重大な静脈血栓症)、冠動脈疾患、頭蓋内動脈狭窄症、乏血性心臓疾患、アテローム性動脈硬化症、心臓血管性疾患及び高血圧を含む、循環系での流体障害物のいずれの様相についての改善又は軽減を含むものとする。
「薬剤、配合剤、又は医薬品組成剤」には、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、例えば、血栓又はアテローム硬化性血小板の酵素分解について、患者に対して適切に投与されるとき、医療上の所望の効果を誘発する能力をもつ化学配合剤又は組成剤を含むものとする。
「実効量」には、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、循環系の流体障害物の軽減又は減少などの臨床上の結果を含む、利益的な又は所望の結果をもたらすのに充分な治療剤(例えば、薬剤、化学添加剤、配合剤、又は医薬品組成剤)の量を含むものとする。実効量は、一回または複数回の投与において、投与可能な量である。例えば、薬剤、配合剤、又は医薬品組成剤の実効量は、頭部及び四肢での血管閉塞を含む循環系の流体障害の処置(流体障害の改善とその発生率の減少、流体障害の遅延及び/又は防止を含む処置)に充分な量であるとすることができる。治療剤の実効量は、患者に投与されるように配合される、被覆又は非被覆の磁性ナノ粒子を含むことができる。実効量は、一の又は複数の治療剤を投与する文脈で思料されてよく、単一の薬は、一の又は複数の他の薬と共同して、所望の結果が達成されてよい若しくは達成される場合には、実効量に示されるものとして思料されてよい。
「発生率を減少させる」には、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、重症度の低減(薬剤の必要性の低減及び/又は薬剤の量(例えば、薬剤被曝量)及び/又は、例えば、tPAを含むこれら状態のために一般的に利用される各治療の低減を含むことができる)、持続時間の低減及び/又は頻度(例えば、循環系閉塞の症候の表示時間を遅延させるまたは増加させることを含む)の低減の、いずれも含むものとする。例えば、各個体は、其の処置の反応という観点から変化してよく、そして、そのようなことから、例えば、患者内の流体障害の発生率を低減する方法は、治療剤と共同するか否かに係らず、其のような投与が特定な個体での発生率の減少を引き起こすであろうといった妥当な期待に基づいて、当該低減方法は磁性ナノ粒子の実効量の投与を反映する。
循環系の閉塞の一の又は複数の症候を「回復」させるとは、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、治療剤と共同するか否かに係らず、磁性ナノ粒子を投与しない場合と比較して、本明細書に記載にシステムを用いて、循環系の閉塞の一の又は複数の症候を軽減又は改善することを含むものとする。回復はまた、症候を、継続時間の観点から、短くする又は減少させることを含むことができる。
循環系の閉塞に関連する症候の進行を「遅延させる」とは、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、関連する各症候の進行を遅らせる、阻止する、遅速させる、遅滞させる、安定させる、及び/又は延期させることを含むものとする。この遅延は、疾患の履歴及び/又は処置を受けている各個体に依存して、時間の変化長とすることができる。例えば、充分な又は有意な遅延は、実際には、個体が循環系の閉塞に関連する各症候を進行させないという意味において、予防を包含する。症候の進行を遅延させる方法は、其の方法を利用しない場合と比較して、所与の時間枠での症候が進行する可能性を減少させる方法及び/又は所与の時間枠での症候の程度を減少させる方法である。その様な比較は、統計的に有意な数の被検者を用いる、臨床学的な研究に基づいてよい。
「医薬剤許容可能な担体」とは、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、磁性ナノ粒子及び/又は活性成分と組み合わせられたとき、被検者の免疫系に対して反応しない物質、かつ活性成分が生体活動の保持を可能とする物質を含むものとする。例えば、各医薬剤許容可能な担体は、リン酸緩衝塩水、水、油/水乳濁液のような乳濁液、及び各種の湿潤剤などの各医薬剤担体を含む。非経口投与用の希釈液の各例は、リン酸緩衝塩水又は通常の塩水(0.9%)である。
「医薬剤許容可能」とは、一般的な意味が付与されるものとし、無制限に、動物使用上、またより詳細には、人間及び/又は人間以外の哺乳類での使用上安全である製剤に加えて、中央政府又は州政府の監督機関に承認されていること、又は米国薬局方にリストされていること、その他の一般的に認知されている薬局方にリストされていることを含むものとする。
起磁ステータシステム及び磁性ロータの無線制御方法の概要
幾つかの実施の形態に係る、遠位設置の磁界生成ステータを用いる、自由磁性ロータの物理的処置における各システム及び各方法を説明する。本発明の幾つかの実施の形態は、循環系での流体の流れの上昇と循環系の障害物の実質的な除去を結果的にもたらことが可能な治療剤(例えば、医薬配合剤、血栓溶解剤)により、循環系における治療目標部位への接触を増加させるための、磁性ナノ粒子の制御に関する。幾つかの実施の形態では、当該システムは、治療剤の拡散を高め、かつ永久磁石ベースの又は電磁界生成のステータ電源を用いる。患者の血管閉塞を含む循環系の障害物を減少させる、磁性ナノ粒子凝集物(ナノ粒子ロッド、ナノ粒子球体、ナノ粒子ロータ)及び/又は磁性血栓摘出装置に作用させるために、磁界及び勾配を用いることができる。
各種の実施の形態では、腕部及び脚部の脈管構造のような、頭部(例えば、脳)及び身体の四肢における循環系の流体障害物を治療するために、本明細書に記載の各システムと各方法とを用いることができる。神経系(例えば、脳脊髄液内に達する)及びリンパ系(例えば、リンパ節)での、治療目標部位の治療を容易するために、本明細書の各システムと各方法とを用いることができる。幾つかの実施の形態では、治療剤(例えば、薬剤、 抗体又はその他の分子)を、血液脳関門を横切って移送するために、本明細書に記載の各システムと各方法とを用いることができる。幾つかの実施の形態では、遺伝子又は基幹細胞を搬送するために、本明細書の各システムと各方法とを用いることができる。幾つかの実施の形態では、各種の腫瘍学的処理での腫瘤組織又は癌性組織の治療を容易にするために、本明細書の各システムと各方法とを用いることができる。良性集団もまた治療することができる。一の実施の形態では、本明細書に開示の磁性粒子を介する組織集団への溶解剤への搬送の容易化が成される。
本発明の幾つかの実施の形態は、使用される治療剤(例えば、血栓溶解剤)の機械的に強化される分解又は溶解プロセスとの組み合わせにより、流体障害物に作用する、磁性ナノ粒子及び/又は磁気使用可能な血栓摘出装置によって生成される、磁性生成精練プロセスを提供する。幾つかの実施の形態に従って、磁性作用は、非回転の引張り磁性勾配を与える外部磁性源からの回転磁界に由来する。この外部制御は、利点的に、一般的には、部位への機械的な侵入をすることなく、循環系の障害物に対する力及び作用を与えてよい。幾つかの実施の形態に従って、本明細書に記載の各システム及び各方法は、目標循環系の障害物と治療剤との相互作用を大きく増加することができる。相互作用により、処理中において静脈壁又は弁膜を無損傷のままとなるよう、磁気的に収集できる残渣を取り残してよい。本明細書に記載の各システムと各方法のその他の特徴は、幾つかの実施の形態では、除去されるべき実質的に全ての残渣が、案内ワイヤの先端上の極小マグネットにより捕捉出来得る磁性ナノ粒子で、小さな軟性集塊を形成するように、薬剤及び撹拌状態を利用する能力である。一の実施の形態では、これらの特徴を達成するため、にシステムは、磁性ナノ粒子又は磁気使用可能な流体障害物除去装置に作用する、有向性磁性勾配と共同して、回転磁界を利用することができる。
幾つかの実施の形態では、回転磁界は、目標部位での磁界を回転させる配向性を有する強永久磁石を機械的に回転させることで生成され、同時に回転磁界は、所望の方向に定常磁性勾配を呈する。幾つかの実施の形態では、2個以上の磁性コイルは、ある勾配を有する回転磁界を与えるように、適切な位相同期をもって、使用可能である。3個以上のコイルが使用されるときには、少なくとも2個のコイルは、追加的な磁性空間的な特徴及びタイミング上の特徴を与えるために、何らかの垂直要素を相互に有する軸を持つことができる。例えば、2個のコイルはそれぞれ垂直軸を有することができ、一方のコイルは、目標位置で回転磁界を生成するように、他方のコイルを90度分位相遅れさせるような流れを利用することができる。第3のコイルは、目標部位で適切な勾配を与えるように、同じく、モジュレーションのような独立関数を与えるように、位置決めかつ配向することができる。
流れの電子制御により、広範囲な磁界配列及び各勾配が、多数の時間関連イベントと共に、適用され得る。一の実施の形態では、磁性ナノ粒子のスラリーに対する勾配を持つ回転磁界の適用により、確定タイプのグループ化配置を与えることができる、すなわち、長さ約2ミリ以下の整列(斜交)ロッドを形成させる磁性ナノ粒子の「集塊」を与えることができる。
例えば、目標部位での約0.02Tesla(テスラ)の磁界は、約0.4Tesla/meter(テスラ/メートル)の勾配との組み合わせで、磁性ナノ粒子(例えば、長さ約1mm(ミリメートル)から2mmまで変化する長さの分離ナノ粒子ロッド)の集塊の生成が可能である。これら凝集物は生体外及び生体内でほとんどそのまま残存可能であるが、回転されるときには「軟性ブラッシング」を与えるほど充分に柔軟性を有することができる。ナノ粒子ロッドは、回転の際には、血管内の表面に沿って「移動」可能であり、凝血のような流体障害物との接触時には、血栓溶解剤の補助により、凝血塊要素の微細粒子を除去可能であることが観察された。ナノ粒子ロッドは、場合によっては、有意な粒径の残渣要素を残すことなく、継続的に凝血塊要素の破片をソフトに「こすり」落とすことができる。その他の場合では、障害物の種類や位置に依存して、残渣が最終的に、磁気力で捕捉および除去可能となる、柔軟で極小の磁性球体になるように、治療剤(例えば、血栓溶解剤)の搬送の時間間隔を決定できる。幾つかの実施の形態では、血液の凝血塊又はその他の流体障害物が付着したナノ粒子ロッドの接触は、偶発的なものであって、凝血塊又は凝血塊流体障害物の除去、若しくは分解を容易化するために必要となるものではない。
超音波画像診断及びその他の画像診断技術(例えば、X線撮影、磁気共鳴、核医学、光音響、温度記録法、断層撮影)は治療の進行を可視化するために利用できる。例えば、経頭蓋の超音波画像診断は、頭蓋塞栓症又は脳卒中での、凝血塊の破壊を視覚的に確認するために利用可能であろう。磁性ナノ粒子の可視化を高める造影剤およびその他の薬剤(例えば、ヨード、バリウム、ガドリニウム)もまた利用することができる。画像診断技術では、オペレータが磁性ナノ粒子を操縦又は他の方法で当該磁性ナノ粒子の動きを制御するように、リタルタイムのフィードバックを提供するために、各画像を表示装置に送信できる。
幾つかの実施の形態では、目標部位での0.4Tesla/meterの勾配を有する0.02Teslaの磁界により、回転磁界勾配装置を用いて、直径約1.5mmの極小磁性球体の回転をより精確に制御することが容易となる。一の実施の形態では、磁性勾配の適切な整列をもって、球体状構造体を血管内で操縦させて障害物位置で薬剤混合を加速させることができる。同様な手法で、血栓溶解剤及び/又は表面形質を備える被覆物を、障害物の破壊を高めるために、付加することができる。
使用される各数値パラメータは、循環系の障害物の特殊な性質、血栓溶解剤及び/又は磁気使用可能な血栓摘出装置若しくはナノ粒子ロッドの設計に依存して、変化することができる。回転周波数(例えば、0.1Hz以上及び/又は100Hz以下であって、限定されるものではないが、約1Hzから約30Hz、約3Hzから約10Hz、約0.5Hzから約50Hz、約1Hzから約6Hz、約0.1Hzから約10Hz、約5Hzから約20Hz、約10Hzから約30Hz、約20Hzから約50Hz、約40Hzから約70Hz、約50Hzから約100Hz、それら周波数が重複する各範囲、5Hz未満、10Hz未満、20Hz未満、30Hz未満、40Hz未満、50Hz未満を含む)は、各マグネット(例えば、0.01Tesla以上及び/又は1Tesla未満であって、限定されるものではないが、約0.01Teslaから約0.1Tesla、約0.05Teslaから約0.5Tesla、約0.1Teslaから約0.6Tesla、約0.3Teslaから約0.9Tesla、約0.5Teslaから約1Tesla、それら磁束密度が重複する各範囲、1Tesla未満、0.5Tesla未満、0.25Tesla未満、0.1Tesla未満を含む)により、約1立方フィートの体積ですべて、又は幾分より大きな体積での各コイルで、生成できる磁界の大きさの範囲で効果的とすることができる。勾配強度は、0.01Tesla/m以上及び/又は10Tesla/m以下とすることができるものであって、限定されるものではないが、約0.01Tesla/mから約1Tesla/m、約0.01Tesla/mから約3Tesla/m、約0.05Tesla/mから約5Tesla/m、約1Tesla/mから約4Tesla/m、それら密度の重複する各範囲、5Tesla/m未満、3Tesla/m未満、2Tesla/m未満、1Tesla/m未満を含むものとすることができる。勾配方向は、一般的に永久磁石に対して質量の中心に集中し、電磁石を使用すれば、各コイルのうちの1個のコイルに集中でき、また其の組み合わせでは、1個あるいは複数のコイルの間に集中できる。
循環系の流体障害物
循環系の流体障害物が発生する身体の部位は、脚部及び脳に関連する血管を含む。そのような障害物の2つの主要な液体力学的な特徴は、脈管構造で観察されるものである、すなわち、低血流(例えば、1センチ/秒未満(< 1cm/sec))又は総体的な障害物が観察される。何れの場合も、表面閉塞を溶解する薬剤を搬送する現行の方式、又は、例えば、血栓物質の機械的除去では、基層との新たな薬剤の相互作用を許容するために除去されるべき凝血塊の表面上の分解(劣化)層及び阻害層を、効果的に除去することはできない。これは、下流に移動する危険要素に帰着することがあり得るものであって、この危険要素は、より危険な障害物又は壊死に帰着することがあり得る。典型的な流れの状態では、流れが意図する部位を効果的に貫流しない、又は流れの目標をその部位に効果的に設定されない各箇所が存在する。その他の状態では、閉塞血管の3次元形状の微細さ(例えば、極めて微細な血管)又は複雑性に起因して、血栓摘出装置を目標部位まで操縦することが不可能である。
血栓溶解処理では、異なる血栓溶解剤が使用できる。例えば、心筋梗塞症及び肺塞栓症の一部の例では、ストレプトキナーゼが使用できる。ウロキナーゼ又はアルテプラーゼは、重症な又は重度で重大な静脈血栓症、肺性塞栓症, 心筋梗塞症及び静脈内閉塞症の治療に使用できる、又は透析カニューレと連係して使用できる。組織プラスミノーゲン活性化因子(“tPA”又は“PLAT”)は、脳卒中の治療に対して臨床的に使用できる。レテプラーゼは、心臓発作の原因である閉塞を破壊することで、心臓発作の治療に使用できる。各凝固防止剤(例えば、ヘパリン、フォンダパリヌクス、デキストラン、アルデパリン、ダナパロイド)は、肺塞栓症、重大な静脈血栓症又はその他の流体障害の治療に使用されてよい。
脳卒中(例えば、心臓塞栓性脳卒中又は急性の乏血性脳卒中)の場合、tPAは、多くの場合成功裏に使用されるが、薬剤の作用として多くの場合、更なる閉塞、時として、壊死を招くほど大きな凝集塊の下流残渣を残すことになる。加えて、患者に投与される正常な血栓溶解剤投与量は、脳内出血の増加に関連している。多くの場合、閉塞に対する血栓溶解剤の化学的相互作用の効果は、閉塞除去が不十分のまま、遅く不十分である(又は、血栓溶解剤又はその他の薬剤は、遅速又は無流に起因して、閉塞部位に到達することさえできない)。四肢での閉塞部位では、薬剤を撹拌して案内する機械的手段は限定的であり、しばしば困難なものであり、また危険的なものとなり得る。多くの場合、処置部位での各静脈弁膜は、現在用いられている処置において、損傷を受けるか或いは閉塞から解放されるわけではない。本明細書に記載の幾つかの実施の形態は、利点的には、血流の閉塞部位の治療において、これら主要な障害物を取り扱う上で、有意な改善に関して、新規な各システムと各方法を提供する。
本明細書に記載の磁性ナノ粒子と起磁システムを用いる脳卒中治療は、利点的には、非常に効果的な各血栓摘出装置と比較され得る再開通の効能に帰着し得るものであるが、本明細書に記載のシステムは、早期にかつ脈管構造に対する身体的外傷を引き起こすことなく展開できる。早期の展開は、脳の早期の再灌流などの好ましい結果に帰着し得るものであって、IV-tPAと介入装置又はそれら2種の装置の組み合わせを用いる治療と比較して、結果的には更に良好な結果に帰着し得るものである。幾つかの実施の形態では、脳卒中の発症後の処方時間内(脳卒中の発症後2-4時間以内)に処置が施される。幾つかの実施の形態では、処置は、目標部位の外部であっても又は脳卒中の発症後の臨界期間(例えば、3時間治療開始始動期間外)外においても効果的である。早期の再開通で、神経学的な改善結果を高く予測可能である。
幾つかの実施の形態では、本明細書に記載の各システム、磁性ナノ粒子及び各方法を用いることは、処置開始後10分以内(10分未満、20分未満、30分未満、45分未満、50分未満)ほどに早期に明らかになる再開通又は再灌流の兆候、症候若しくは形跡を伴い、処置開始後1時間未満での完全な再開通(例えば、凝血塊の完全溶解)に帰着することができる。再開通の形跡は、国家健康機関脳卒中評価スケール(NIH Stroke Scale (NIHSS:National Institute of Health Stroke Scale))の評点の減少により決定できる。例えば、処置開始の10分後の、NIHSS評点の改善は、血栓溶解剤を用いる処置(例えば、IV-tPA)単独についての典型的な評点の倍であってよい(例えば、平均4点の改善に代わる8-10点の改善)。NIHSS評点により、脳卒中関連の神経学上の欠乏についての定量的測定値が提供され、当該NIHSS評点は、意識レベル、言語レベル、忘却レベル、視界損失レベル、眼外運動レベル、運動力レベル、運動失調レベル、構音障害レベル及び感覚喪失レベルについての、急性脳梗塞の影響を評価するために利用される。幾つかの実施の形態に従い、本明細書に記載の各システムと各方法を用いる処置は、処置後1時間での及び/又は処置後24時間での、NIHSS評点での8点から15点の間の改善に帰着している。
起磁ステータシステム
幾つかの実施の形態に従い、循環系の脈管構造での各磁性ロータ(例えば、磁性ナノ粒子の凝集物、球体又はロッド)の運動を制御するための磁界及び勾配を有するマグネットと、凝集物に対して磁界及び勾配を位置決めして回転させる、及び/又は循環系での治療目標部位(例えば、凝血塊又はその他の流体障害物)に対して磁性ロータを横断させるための制御器とを備える治療システムが提供される。この治療システムを使用して、循環系での薬剤組成と治療目標部位との接触範囲を拡大できる。各種の実施の形態では、薬剤組成は、磁性ロータに添加又は結合され、そしてその他の実施の形態では、各磁性ロータから離れて、薬剤組成が循環系に対して投与される。特定の実施の形態では、薬剤組成とは、血栓溶解剤(例えば、tPA、アルテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、レテプラーゼ又はそれらの組み合わせ)である。
システムの治療目標部位は、限定されるわけではないが、アテローム硬化性血小板、線維性被膜、脂肪積体、冠動脈閉塞、動脈狭窄症、動脈再狭窄症、静脈血栓症(例えば、重大な静脈血栓症)、動脈血栓症、脳血栓症、塞栓症(例えば、肺塞栓症)、出血、極微細血管、眼の凝血、血管腫瘤(例えば、血管腫、リンパ管腫、血管内皮腫、カポジ肉腫、血管肉腫、血管芽細胞腫)、脳又はその他の器官の動脈又は静脈の動静脈奇形(例えば、真正動静脈奇形、潜在的又は陰性若しくは空洞性奇形、静脈奇形、血管腫、硬膜瘻孔)、その他の流体障害物、又はこれらのいずれかの組み合わせのような流体障害物を含むことができる。システムの各治療又は診断目標部位はまた、身体のいずれかの器官又は組織(例えば、心臓、脳、脚部、腕部、肺、前庭系、腫瘤又は癌性組織)若しくは器官又は組織に関連する血管を含むことができる。例えば、各治療又は診断目標部位は、基幹細胞又は遺伝子治療(例えば、遺伝子搬送)について識別される目標部位とすることができる。幾つかの実施の形態では、各磁性ロータを、脊髄液(例えば、脳脊髄液)内部の治療薬又は診断薬と結合して搬送することができる。各種の実施の形態では、循環系とは被検者の脈管構造である(例えば、人間患者又は獣医学的な患者の動脈又は静脈)。
各種の実施の形態では、治療システムは、モータと結合した永久磁石、及び、治療目標部位についての実効距離と実効平面とにマグネットを位置決めするようにモータを制御し、且つ治療目標部位についての実効周波数でマグネットを回転させる制御器を備える。各種の実施の形態では、治療システムは、磁界強度と磁界分極を有する電流駆動の電磁石、及び、治療目標部位についての実効距離と実効平面とにマグネットを位置決めし、電気を調整して電磁石の磁界を回転させる制御器を備える。
治療システムは、磁性ロータと治療目標部位を目視するためのディスプレイ、及び、ユーザが、治療目標部位についての回転磁界周波数と回転磁界平面とを、及び/又は治療目標部位についての回転磁界距離を調節することで、少なくとも部分的に治療目標部位を明瞭にするように、磁性ロータを制御するためのユーザインタフェースを更に含むことができる。各種の実施の形態では、治療目標部位とは、人間の血管の血栓症部位とすることができる。各種の実施の形態では、磁性ロータは、循環系に注入される磁性ナノ粒子とすることができる。
各種の実施の形態では、当該システムを用いて処置される障害物とは、人間の血管での血栓症部位であり、各磁性ロータは、循環系に注入される磁性ナノ粒子により形成される。一の実施の形態に係るシステムでは、各磁性ロータは、(a)各ロータの回転と磁界の引力に応じて、磁界から遠ざかる方向に血管に沿って回転しながら繰り返し移動することで、また(b)各ロータの回転と磁界の引力に応じて、磁界に向かって、流体を介して、繰り返し逆流動することで、一般的には循環運動により流体を介して横断する。
幾つかの実施の形態では、システムは、循環系での流体の流れを増加させるために提供されるものであって、流体中で各磁性ロータを制御する磁界を有するマグネットと、流体中での各磁性ロータ及び治療目標部位をユーザに対して表示するための表示装置と、ユーザからの指示に応答して、(a)磁性ロータを治療目標部位に隣接するように位置決めするように、(b)治療目標部位について磁性ロータの角度配向性を調節するように、及び/又は(c)流体を混合し、また治療目標部位を実質的に明瞭にさせるために、循環運動により流体を介して、各磁性ロータを回転及び横断させるように、磁界を制御する制御器と、を備える。
各種の実施の形態では、表示装置は、磁性ロータ及び治療目標部位のビデオをリアルタイムに表示することができ、当該表示装置は、磁界の回転平面のグラフィック表示を、磁界の引力のグラフィック表示に、リアルタイムのビデオ上で重畳させることができる。幾つかの実施の形態では、マグネットは、モータ及び可動アームに連結される永久磁石とすることができ、また制御器は、ユーザが、治療目標部位に対して磁界の位置、回転平面及び/又は回転周波数を操作するための遠隔制御装置を含むことができる。
幾つかの実施の形態では、表示装置は、遠隔制御装置を介してユーザから受け取った指示に応答して、グラフィックを調整することができる。各種の実施の形態では、マグネットは、モータ及び可動アームに連結される電磁石とすることができ、また制御器は、治療目標部位の位置、形状、厚み及び/又は密度を識別するために、画像処理を行うことができ、また制御器は、治療目標部位を明瞭にさせるために、磁界の位置、回転平面及び/又は回転周波数を制御するように、可動アームを自動的に操作することができる。
幾つかの実施の形態では、各磁性ロータは、回転磁界の存在下で結合される磁性ナノ粒子により形成される。幾つかの実施の形態では、流体は、血液と治療剤(例えば、血栓溶解剤)の混合液であって、治療目標部位を除去して実質的に明瞭にするための、全体的循環運動で混合される血液と治療剤の混合液とすることができる。幾つかの実施の形態では、各磁性ロータの全体的循環運動で、高流量血管から治療目標部位を含む低流量血管へと治療剤を再指向させることができる。幾つかの実施の形態では、磁界を変化させることで、各磁性ロータに対して、閉塞した血管の枝管のような治療目標部位に向かう血流を確立させ又は血流を増加させている、この結果、治療剤の拡散と効能(例えば、tPA拡散の上昇及び凝血塊の破壊の加速)が上昇することになる。幾つかの実施の形態では、拡散及び効能の上昇は、ナノ粒子ロッドを形成するためにナノ粒子を結合することで達成されるもであって、ナノ粒子ロッドは、0.01Teslaと0.1Teslaの間大きさを有する回転する時間変化型磁界に露出される時に0.1mmから2mmの間の長さを有し、0.01Tesla/meterと5Tesla/meterの間の磁性勾配強度とを有するナノ粒子ロッドであって、磁界の回転周波数は1Hzと10Hzの間である(例えば、1Hzと10Hzの間、2Hzと5Hzの間、3Hzと7Hzの間、1Hzと3Hzの間、4Hzと8Hzの間、5Hzと10Hzの間、又はそれら周波数の重複範囲)ナノ粒子ロッドのナノ粒子を結合することで、上記の拡散と効能の上昇が達成される。
起磁ステータシステムの実施例を、図1A(等角図)と図1B(横断面図)に示す。単軸132回りの回転を伴う本システムに対する構成要素の作用を示す。永久磁石キューブ102は、N極104及びS極106を有する。一の実施の形態では、永久磁石102はそれぞれの側で3.5インチの寸法を取る。永久磁石102は、ネオジムーホウ素―鉄の磁性材料と、サマリウムーコバルトの磁性材料とを含む多数の永久磁石材料を備えてよく、更に大きく又はさらに小さく作製してよい。例えば、永久磁石102は、其々の側で1インチ以上、及び/又は其々の側で10インチ未満とすることができるものであって、限定されるわけではないが、約1インチと約5インチの間、約2インチと約6インチの間、約3インチと約8インチの間、約3インチと約4インチの間、約4インチと約10インチの間、それらの寸法が重複する各範囲、6インチ未満、5インチ未満、4インチ未満を含む寸法とすることができる。永久磁石102の形状は、立方体以外の形状、例えば、球体、筒体、直方体、楕円体のような形状又はその他の形状とすることができる。永久磁石材料の他の各構成で、磁界及び勾配の側面が、強度及び方向の観点から改善又は最適化されるように、磁界形成の性能を向上させてよい。幾つかの実施の形態では、永久磁石材料は、システムをよりコンパクトにするように構成されてよい。永久磁石材料により構成される筒体は、そのような例の一つである。筒状の各マグネットは、マグネットの質量を減少させ、かつマグネットの質量を患者の近傍に位置決めされるようにすることができる。幾つかの実施の形態では、単純な矩形及び立方形などの幾何学形状は、購入または製造コスト面からより実効性があるであろう。
N極104及びS極106が存在する永久磁石102の面は、載置プレート108に、膠着、取着、接着、添着、溶着又はその他の方法で固着若しくは結合される。載置プレート108は、磁性材料又は非磁性材料で構成することができる。選択的には、磁性材料は、永久磁石材料の何らかの構成のために、磁界を強化するために使用することができる。幾つかの実施の形態では、より容易に永久磁石102に添着又は結合されてよいことから、非磁性の各載置プレートが望まれ得る。
一の実施の形態では、載置プレート108は、軸受載置構造体116で共に支持される第1の軸受112及び第2の軸受114を通過するフランジ110に取着されている。多数の標準的な軸受は、少なくとも部分的に磁性を有する。従って、幾つかの実施の形態では、フランジ110は、磁界が効率的にフランジ110から各軸受112、114内部に移動しない構成を確保するために、非磁性材料から構成されている。この磁界移動が起きた場合には、各軸受は、フランジ110の各軸受112、114への磁気引力に起因する更なる摩擦に遭遇することとなろう。
一の実施の形態では、フランジ110の端部は、駆動モータ120に接続するカップリング118に結合される。駆動モータ120は、DC(直流)モータ又はAC(交流)モータでよい。高精度はサーボモータで可能となる。幾つかの実施の形態では、ステップダウンギアボックス(降圧変速機)は、ここに記載のように、多数のモータが典型的に磁性ロータの無線制御用に所望される速度よりも早くスピン回転する場合に、所望の回転周波数で永久磁石102をスピン回転させるために、利点的に用いられてよい。
駆動モータ120は、一の実施の形態に従い、当該駆動モータ120をプラットホーム124に添着するモータ支持構造体122に取着される。サスペンションアーム128に接続されるサスペンション載置ブラケット126(位置決めされているが、図1Bには図示せず)がプラットホーム124に取着される。サスペンションアーム128はアタッチメントジョイント130を有する。サスペンションアーム128は、起磁ステータシステムの所望の配置に依存して、側部から、底部から又はその他の位置から懸架されてよい。
起磁ステータシステムの作用
起磁ステータシステム(例えば、図7Aの起磁ステータシステム602)は、図2に示すように、可搬型支持ベース202を使用して位置決めできる。ひとたび適所に配置されると、図7Aに示すように、ディスプレイ(例えば、コンピュータディスプレイ)606を備えるコンピュータコントロールパネル604と各ユーザコントロールボタン608とは、一の実施の形態では、空間610でのユーザが確定したポイントにおいて、磁性回転平面616の配向性を特定するために用いられる。幾つかの実施の形態では、ディスプレイ606はタッチスクリーンディスプレイである。磁界と勾配とは、物理空間610で操作される。回転平面の法線ベクトル614は、空間610でのポイントにおいて、グローバル座標系612にて、コントロールボタン608又はとハンドヘルド(手持ちタイプ)コントローラ622を使用することで、ユーザによって特定することができる。コンピュータにより自動的に又はユーザもしくはオペレータにより手動で設定されてよいこの磁界618の初期配向は、磁性回転平面616内に存在している。ユーザは磁性回転平面616での磁界回転620の方向を特定できる。
図8に制御処理の実施の形態を示す。制御処理における一の、一以上の又はすべてのステップは、計算装置によって自動的に実施できる。一以上のステップは、オペレータによって実施できる。ブロック702では、3次元制御用の空間でのポイントが識別される。ブロック704では、磁界に対して垂直な磁界スピン回転軸の配向が設定される。このステップには、回転平面の法線ベクトル614に指定が含まれる。右手座標系を使用すると、磁界は法線ベクトル614回りの時計方向に回転できることになる。ブロック706では、磁界618の初期方向が設定される。幾つかの実施の形態では、コンピュータ(例えば、コントローラ604)は、磁界618の初期方向を自動的に設定できる。ブロック708では、磁性回転平面616内の磁界回転周波数が、ユーザによって設定されるか又はコンピュータにより自動的に設定される。磁性勾配の強度は、ブロック710で算出され、磁界強度は、ブロック712で算出される。ブロック714では、各制御パラメータが、起磁システム用に算出される。制御パラメータは、所望の回転磁界及び磁性勾配を決定することができる。永久磁石システムに対して、各制御パラメータは(各)駆動モータ120の回転速度に対応し得るものである。電磁石システムに対して、各制御パラメータは、時間上の電流変化を記述することができる。各制御パラメータが一度算出されると、起磁ステータシステムはブロック716にて作動することができ、磁界及び勾配が目標領域に加えられる。もし、磁性回転平面616をブロック718で変化させるべきことが望まれる又は見込まれるのであれば、制御プロセスはブロック704にループバックする。
起磁ステータシステムが可搬型支持ベース202に取着されると想定すると、プラットホーム124は、サスペションアーム取付けジョイント130にそれ自体は取着されたサスペションアーム128に取着されたサスペション載置ブラケット126を介して、ユーザによって配向されてよい。サスペションアーム取付けジョイント130は、可搬型支持ベース202に接続されたアーム位置決め器212に連結する。サスペションアーム取付けジョイント130は、アーム位置決め器212周りの起磁システムの回転を許容する。サスペションアーム取付けジョイント130はまた、サスペションアーム取付けジョイント130が受け入れる平面に対して垂直な平面で、プラットホーム124が回転できるようにしている。モータ支持構造体122を介してプラットホーム124に取着されるモータ120は、所望の回転周波数でスピン回転する。このスピン運動又は回転運動は、駆動カップリング118を介して載置フランジ110に連結される。第1の軸受112及び第2の軸受114により、載置フランジ110が平滑に回転できるようになっている。これら軸受は、軸受載置構造体116を介してプラットホーム124に添着される。スピン回転又は回転するフランジ110は、永久磁石102に取着されたマグネット載置プレート108に固着される。そのため、モータ120のスピン回転は永久磁石102に伝達される。永久磁石106の両端部のN極104及びS極106の位置は、所望の磁界回転平面616をもたらす。この磁界回転平面616では、磁界は、中央駆動軸132上に位置する全てのポイントについて、マグネットの前面に対して平行に回転する。
例として、身体内の磁性ナノ粒子の操作について、空間610でのユーザが確定したのポイントは、凝血塊を迅速かつ安全に破壊するように磁性ナノ粒子を操作するような乏血性脳卒中治療のために、頭部624内部に存してよい。同様に、空間610でのユーザが確定したのポイントは、凝血塊を迅速かつ安全に破壊するように磁性ナノ粒子を操作するような重大な静脈血栓症治療のために、脚部626内部に存してよい。
幾つかの実施の形態に係る磁性ナノ粒子の操作の例として、粒子参照座標系808に相対して、起磁発生磁界812を時計方向に回転させることで回転する、粒子のN極804と粒子のS極806とを保有する磁性ナノ粒子802を図9Bに示す。回転磁界812は、磁性ナノ粒子を、時計方向回転角度810の方向にスピン回転させる。磁性勾配814が加えられて、面816が発現(例えば、血管壁)すると、図9Aに示すように、時計方向に回転する起磁発生磁界812は結果として、面に対して平行な並進818(例えば、図9Aに示すように右側)を結果的に起こすような、面816に対する牽引力を発生させることとなる。
密閉領域822内部に含まれる流体820が存在する場合、図9Cに示すように、幾つかの実施の形態では、磁性勾配814と結合したときの磁性ナノ粒子の操作は、結果として流体運動824の循環を引き起こすこととなる。図9Dに示すように、血液826を含む血管828内の血管障害物830を破壊するために使用されるとき、起磁発生混合により、結果的に血液826内の凝血塊-破壊剤(血栓溶解剤)の混合が改善することとなる。改善された混合は、流体が停留し混合されないときに起きるであろう場合に比べて、治療剤と血管障害物830との接触の増加と相互作用の上昇を容易にするものであって、当該改善化混合は、利点的には、血栓溶解剤のより高い投与量に関連する出血を低減させることで、血栓溶解剤の投与量を標準の処方の投与量よりも低下させることが可能となり、その結果、より安全な処置をもたらすこととなる。それはまた、血栓溶解処理を促進する。例えば、磁性ナノ粒子は、血栓溶解剤がより良好に混合されて、より効率的な化学相互作用が結果的に発現するために、停滞流の領域で渦(例えば、予測可能に循環する)を形成するように操作可能である。渦の生成により、乱流領域近傍に血栓溶解剤をより多く引き込むことが可能となる。
診断画像処理又は検出によるリアルタイム制御
幾つかの実施の形態では、システムは、磁性ナノ粒子の制御を改善するためのリアルタイム情報を提供する。磁性ナノ粒子は、画像診断法により検出可能なように、構成できる。例えば、磁性ナノ粒子は、X線型システム又はPETスキャナをそれぞれ用いて、可視化できるように造影剤又は核薬剤(核共鳴画像診断薬剤)に添着されてよい。その他の画像診断法には、核磁気共鳴分光法、磁気共鳴撮像法、コンピュータ断層撮影法及び/又は磁性ナノ粒子が生成する流体の流れを検出するドップラー法(例えば、経頭蓋ドップラー法)を含むことができる。超音波型診断法及び/又は画像診断法もまた使用してもよい。例えば、幾つかの実施の形態では、外部超音波型診断システム(例えば、ドップラー超音波システム)を、ナノ粒子ロータ又はロッドの位置を識別又は検出するために、磁性ナノ粒子(例えば、3Hz)で形成した回転ナノ粒子ロータ又はロッドの回転周波数に合わせてもよく、これによりその他の治療目標部位の流体障害物の位置の表示及び/又は再開通もしくはその他の治療の進行の表示が提示される。回転ナノ粒子ロータ又はロッドの位置検出で、CT血管造影又はMRIを必要とすことなく、循環が発生しているかどうか(又は再開通が達成されたかどうか)に関しての有益な表示を与えることができる。幾つかの実施の形態では、超音波型診断システムにより、血流の継続的かつリアルタイムの監視が提供される。回転周波数に調整することができるその他の技術またはモダリティもまた使用してよい。
制御システムと光学的診断(例えば、撮像又は検出)システムとを組み合わせることで、利点的には、幾つかの実施の形態では、指示される治療の改善能力が提供される。幾つかの実施において、診断システムは、治療目標部位(例えば、一以上の部分的又は完全障害物若しくは閉塞部位を有する低血流管腔)に向かう治療剤(例えば、化学添加剤)の注入についてのリアルタイムの追跡に好適な情報を提供できる。例えば、磁性ナノ粒子を、一以上の薬剤又は治療剤と関連付けする各施用では、当該磁性ナノ粒子を造影剤として作用するように構成することができる。そのような施用に磁性ナノ粒子を使用することで、当該磁性ナノ粒子を薬剤拡散の指標として利用し得るものとなる。撮像データ又はその他の診断データに基づいて、制御システムは、造影剤の濃度とある位置での磁性ナノ粒子量とを相互に関連付けすることができる。結果として、治療の各パラメータを、薬剤又は治療剤の拡散を変更するように(例えば、磁気ベースの制御システムの各制御パラメータを調整することで磁性ナノ粒子の操作を変更することにより)調整することができる。
特定の実施の形態では、診断システムは、システムについての各動作モード間での切り換えに好適なシステム及び/又はユーザに情報を提供することができる。例えば、撮像システムは、被験者内部の磁性ナノ粒子の位置及び濃度を表示する制御システムに対して、各画像及びその他のインプットを提供する。この情報に基づいて、システム又はユーザは、磁気システムに対して、確定位置で磁性ナノ粒子を収集するように構成された磁界を提供させる、又は磁気システムに対して、ある位置で磁性ナノ粒子を混合又は渦動させるように構成された磁界を提供させることができる。受信した画像情報に従って磁気システムを操作することで、制御システムは、被験者内及び1次元、2次元又は3次元での状態に応じて、磁性ナノ粒子の注入を制御することができる、これにより治療管理能力が改善される。
画像診断法は、磁性ナノ粒子が生成した流体の流れに影響される装置剤又は化学剤を分解する能力のあるものであれば、いかなる画像診断法とすることができる。この診断法は、関心領域を撮像すること、及び計量情報を提供することが可能であろう。システムは、例えば、表示装置及び/又は記憶装置などの外部装置に撮像データを伝達するための通信モジュールを含むことができる。システムは、画像の参照フレームを磁気システムの参照フレームに登録するための、登録モジュールを含むことができる。システムは、そして画像を受信しかつ登録でき、磁性ナノ粒子を追跡できるものであって、また所望の経路に沿って、オペレータによって又はコンピュータ制御器で自動的に行うかのどちらかにより、磁性ナノ粒子を操縦指示する手段を提供できる。撮像データは2次元又は3次元データとすることができる。3次元情報は、操縦が3次元的に行われる点で利点があろう。幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子の制御は、ここで記載の各システムを用いて、遠隔的に実施できる。
図10に、磁性ナノ粒子を制御するためのプロセス1000の実施の形態のフローチャートを示す。ブロック1020では、システムは、撮像システムから撮像データを受け付ける。撮像データを受け付けは、撮像システムからの情報の受信を含むことができる。幾つかの実施の形態では、システムは、画像を要求できる及び/又は撮像システムに確定した時間及び/又は場所に画像を提供するように指示できる。
ブロック1025では、システムは、参照フレームを撮像システムの参照フレームに登録する。撮像システムは、各参照フレームの登録の補助をするように、システムの位置及び配向に関する情報を提供することができる。参照フレームの登録は、画像での各特徴を識別すること又は検出すること、及び適切に各参照フレームを整列させるために以前の各画像とそれら特徴を比較することを含むことができる。
ブロック1030では、システムは磁性ナノ粒子を追跡する。上述のように、磁性ナノ粒子は、所与の画像診断法に対して、当該磁性ナノ粒子を検出可能とする被覆剤又は化学剤を含むことができる。撮像システムから受信した各画像を使用することで、制御システムは、磁性ナノ粒子の位置を識別できる。磁性ナノ粒子の現在位置は、以前の磁性ナノ粒子と比較でき、磁性ナノ粒子の位置は経時的に追跡できる。
ブロック1035では、システムは、操縦経路を策定又は決定する。操縦経路を策定は、自動的に及び/又はユーザから受信した情報に基づいて行う。操縦経路は、少なくとも部分的に、撮像システムから受信した撮像データ、患者の特徴、磁性ナノ粒子の特徴、治療目標部位の位置、治療目標部位の特徴、注入部位又はそれら要因のいずれの組み合わせにも、基づくことができる。各種の実施の形態では、注入部位はいずれかの動脈又は静脈(例えば、手部、腕部又は脚部の動脈又は静脈、首領域又は肩領域の動脈又は静脈)に存在する。注入は皮下で又は筋肉内で実施されてもよい。
ブロック1040では、システムは、回転磁界が走行方向について適切に配向され、かつ治療目標部位に対して配向されるように回転マグネットを位置決めすることで、操縦計画に従い磁性ナノ粒子を操縦する。上述のように、回転マグネットの位置決めは、コンピュータ制御器により自動位置決め又はオペレータによる手動位置決めを含むことができる。マグネット及び/又は電磁石の位置は、1次元、2次元又は3次元で制御でき、各マグネットの配向は、1軸、2軸又は3軸に沿って同じく制御できる。加えて、システムは、磁性ナノ粒子の運動及び挙動を指示するために、磁界及び/又は磁性勾配の強度と磁界及び/又は勾配の変化を変更できる。
起磁ステータシステムの追加的実施の形態
図3に、図1に示す平面と垂直な平面で、マグネットをスピン回転させる実施の形態を示す。ここで、N極304及びS極306を有する永久磁石302は、2個の支持フランジを備える。第1の磁性フランジ308は第1の軸受312を通過し、第2の磁性フランジ310は第2の軸受314を通過している。各軸受は、マグネット支持構造体316で支持されている。マグネット支持構造体は、中央シャフト用支持体320に支持される中央シャフト318に接続される。中央シャフト318は、駆動モータ324が取着されるモータ載置プレート322に取着されている。この実施の形態では、マグネット駆動モータシーブ326は、駆動ベルト328に接続される。駆動ベルト328は、マグネットシーブ330に接続される。中央シャフト用支持体320は、マグネットアセンブリ支持構造体332に取着される。
幾つかの実施の形態では、永久磁石302は、N極304及びS極306が同一平面で回転するように、前面に対して垂直な平面でスピン回転させられる。駆動モータ324は、駆動ベルト328を旋回させるモータシーブ326を旋回させる。そして、駆動ベルト328は、第2の磁性フランジ310に取着されたマグネットシーブ330を旋回させる。第1の磁性フランジ308と第2の磁性フランジ310とは、第1の軸受312と第2の軸受314とをそれぞれ通過する。幾つかの実施の形態では、磁性フランジ308及び310は共に、永久磁石302に取着され、このように駆動モータ324に対して永久磁石302をスピン回転できるようにさせている。
図4A及び図4Bでは、2モータシステムを用いて、いずれの平面でも回転されることができる永久磁石436の実施の形態が示される。マグネットは、N極438及びS極440を有する。第1のモータ402は、第1のモータフランジ404を介して、中央支持体406に取着される。第1のモータ402には、第1のモータプーリ408が取着される。第1のモータプーリ408は、第1のモータベルト412を介して、第1の回転軸プーリ410に接続することができる。第1の回転軸プーリ410は、各第1の回転軸軸受416を通過する第1の回転軸414に取着される。第1の回転軸414の端部には、第1のマイタギヤ418が在る。一の実施の形態では、第1のマイタギヤ418は第2のマイタギヤ420に係合する。第2のマイタギヤ42は、第2のマイタギヤ軸受424を通過する各第2のマイタギヤ回転軸422に取着できる。各第2のマイタギヤ軸受424は、マグネット支持ヨーク426に取着される。第2のマイタギヤプーリ428は、第2のマイタギヤ回転軸422に接続される。第2のマイタギヤ回転軸422は、マグネットベルト433によりマグネットプーリ430に接続される。マグネットプーリ430は、2個の磁性フランジ432の一方に取着できる。各磁性フランジ432は各マグネット軸受434を通過する。第2のモータフランジ444により中央支持体406に取着される第2のモータ442は、第2のモータプーリ446を備える。第2のモータプーリ446は、第2のモータベルト450により、第2の回転軸プーリ448に接続される。第2の回転軸プーリ448は、各第2の回転軸軸受454を通過する第2回転軸452に接続される。
この実施の形態では、第1のモータ402は、第1のモータプーリ410を旋回し、この第1のモータプーリ410の回転は、第1のモータベルト412を介して第1の回転軸プーリ410に伝達される。第1の回転軸プーリ410は、第1の回転軸軸受416を用いて自由に第1の回転軸414を旋回することができる。第1の回転軸414を旋回させることは、第1の回転軸414に接続される第1のマイタギヤ418の旋回を結果的に引き起こすことができる。第1のマイタギヤ418は、第2のマイタギヤ回転軸422を旋回する第2のマイタギヤ420にその回転を伝達する。一の実施の形態では、第2のマイタギヤ回転軸422の旋回を、各第2のマイタギヤ軸受424を用いて可能とさせる。第2のマイタギヤ回転軸422の旋回は、マグネットベルト433を介してマグネットプーリ430を旋回する第2のマイタギヤプーリ428の旋回を結果的に引き起こす。マグネットプーリ430は、第1の軸437周りのマグネット436の旋回を結果的に引き起こす、磁性フランジ432を旋回する。
一の実施の形態では、第2のモータ442は、第2のモータベルト450を介して第2の回転軸プーリ448を旋回させる第2のモータプーリ446を旋回する。第2の回転軸プーリ448の旋回は、各第2の回転軸軸受454を用いて自由回転させる第2の回転軸452の旋回を結果的に引き起こし、これにより、マグネット436を第2の軸456周りに回転可能とさせている。
図4Cに、永久磁石ステータシステム460の実施の形態を示す。一の実施の形態では、システム460は、マグネットの角度方向を制御可能とする。使用に際し、永久磁石ステータシステム460を、患者の頭部半球の近傍又は隣接、若しくは患者の頭頂部の近傍に位置決めできる。例えば、患者が横たえているときには、永久磁石ステータシステム460を、患者の頭部後方に直接載置することができる(例えば、患者の頭部から患者の足に向かって延伸する軸に対して実質的に直列)。幾つかの実施の形態では、永久磁石ステータシステム460は、本記載の目的上シーター(θ)及びファイ(Φ)で指定する2本の軸に沿って、永久磁石の角度方向の制御を可能としている。患者頭部から約1mmから約20cmまで、約0.1cmから約10cmまで、約0.2cmから約5cmまで、約0.5cmから約2cmまで、約1cmから約1.5cmまで、それら距離が重複する各範囲、又は各引用した範囲からいずれかの距離にマグネット462のコーナが位置決めされるように、当該磁界システム460を載置することができる。
一の実施の形態では、永久磁石ステータシステム460は、シリンダーの半径に対して実質的に平行である又は回転軸(例えば、ファイ軸)に対して実質的に垂直である、ノース・サウス磁界心合せ部を有するマグネット462(例えば、筒状又は8角筒状マグネット)を備える。マグネット462は、2個の旋回軸受の間に搭載できる。一の実施の形態では、第1の旋回軸受468は、第1の角度(例えば、シーター角度)を制御するために用いられ、また第2の旋回軸受470は、第2の角度(例えば、ファイ角度)を制御するために用いられる。各旋回軸受468,470は、各内輪(図示せず)を含むことができる。幾つかの実施の形態では、各旋回軸受468,470の各内輪は、各ウオームギヤに取着され、かつステッパーモータ464,466が制御するウオームで連結される。その他のギア又は各制御運動機構もまた使用でき、またサーボモータのようなその他のモータも同様に使用可能である。一の実施の形態では、第1のステッパーモータ464は、マグネットの回転軸又はシーター角度を制御するシーターウオームギヤアセンブリを作動するように構成される。第2のステッパーモータ466は、マグネット462をその軸周りにファイ角度分回転させるために、1組のべベルギア472に搭載されるファイウオームギヤアセンブリを作動するように構成される。
幾つかの実施の形態では、ウオームギヤは、ステッパーモータの負荷を軽減する(例えば、ウオームギヤは、負荷が極わずかになる又は間欠負荷が無くなるようにする)。幾つかの実施の形態では、永久磁石ステータシステム460は、シーター角度とファイ角度又は双方を同時に変化させるように動作できる。例えば、旋回ベアリング468、470を、当該ベアリングが同一方向かつ同一回転速度で回転するように作動させることで、マグネット462をシーター軸周りに回転させることができる。第1の軸受468が回転することにより、シーター角度が変化する。一組のべベルギア472が、旋回軸受468、470間に相対運動があるとき、またこの例では、そのような相対運動が無いときに、回転するように構成されることから、ファイ角度は変化しない。第1の旋回軸受468を固定したまま、第2の旋回軸受470を作動させることで、同様の理由から、マグネット462をファイ軸周りに回転させるようにできる。旋回軸受468、470を、異なる回転速度及び/又は異なる回転方向となるように作動させることで、マグネット462を、シーター軸及びファイ軸の双方の周りに回転させるようにできる。幾つかの実施の形態では、永久磁石ステータシステム460は、ステータシステム460を線形に並進させるように構成された(例えば、脳の左半球又は右半球のいずれかの処置のために磁石ステータシステム460を位置決めするように構成された)線形並進機構を含むことができる。線形並進機構は、スクリュー又は、ネジ式シリンダーに相補的にネジ形成された中空腔を有するネジ式搭載ブラケット付きのネジ式シリンダーを備えることができるが、その他の並進機構もまた使用できる。ネジ式搭載ブラケットは、ネジ式シリンダー又はネジ式搭載ブラケットの回転により、システムがネジ式シリンダーの長手軸に沿って並進することが可能となるように、システム460に搭載することができる。システム460は、少なくとも約1インチ及び約24インチ以下、少なくとも約2インチ及び約12インチ以下、少なくとも約3インチ及び約10インチ以下、少なくとも約4インチ及び約8インチ以下、少なくとも約1インチ及び約5インチ以下だけ並進するように構成できる。
図5は、各電磁コイル502を備える起磁システムの実施の形態である。各電磁コイル502は、支持構造体504に取着される。各電磁コイル502は、各電源ケーブル508及び各電源帰線ケーブル510を介して、各電源506に接続することができる。支持構造体は、2-セグメントアーム位置決め器512に接続される。図示の実施の形態では、各電源506は、各電源ケーブル508及び各電源帰線ケーブル510を介して、各電磁コイル502に電力を送出する。2-セグメントアーム位置決め器512は、支持構造体504を空間で位置決めできるようにする。幾つかの実施の形態では、各電源506は、各電磁コイル502内で発生される電流量を制御する。
ロボットアーム
幾つかの実施の形態では、アーム位置決め器(例えば、アーム位置決め器212と2-セグメントアーム位置決め器512)は、マグネットシステムをベース(例えば、可搬型ベース202)に結合することができる。アーム位置決め器は、1軸又は2軸に沿う移動により制約されることなく、起磁システムを位置決めかつ配向する能力のあるロボットアームとすることができる。アーム位置決め器は、自在な移動を提供することができる。アーム位置決め器は、アームを電気システム又は遠隔制御により制御可能とする各モータ又はその他の機械的アクチュエータを含むことができる。例えば、機械制御システムは、オペレータが、遠隔制御、コンピュータ、電気制御等を介して、1次元、2次元又は3次元での磁気システムの位置を制御できるようにしている。このように、オペレータは、磁界強度及び/又は磁界変化を操作することに加えて、(各)マグネットの位置及び配向を操作できる。幾つかの実施の形態では、アーム位置決め器は、図1、3及び4に示される各起磁システムと連係して、使用することができる。幾つかの実施の形態では、(各)マグネットの位置は、アーム位置決め器に加えて又は其の代替手段として、ケーブル、レール、モータ、アーム若しくはこれらの組み合わせなどを利用するような、その他電気手段を介して、制御される。幾つかの実施の形態では、各マグネットの位置と配向は、少なくとも部分的に5軸ロボットアームを介して、制御される。幾つかの実施の形態では、アーム位置決め器は、自由度6段階の移動を与える。特定の実施の形態では、患者の表示と撮像とに応答して、リアルタイムに磁性ナノ粒子の注入と操縦とをオペレータが制御できるように、各マグネットの位置の電気的制御を、画像診断法とコンピュータ制御とに連動したディスプレイを有するシステムに含めることができる。
幾つかの実施の形態では、ロボットアームは、起磁システムにより自動的に操作可能である。自動操作により、起磁システムは、実質的に遮蔽筐体に磁気システムを収容できる、これによってシステムの1個あるいは複数のマグネットの磁界がシステム外の人員又は被検品目に対して影響するのを軽減又は防止している。例えば、システムは、好適な遮蔽材料(例えば、鉄)から作製される筐体を含むことができる。制御器が供する自動操作で、システムの1個あるいは複数のマグネットを、不使用時には遮蔽筐体内に移すことができる。
レールアタッチメント付可搬型マグネットポッド
図6に、ベッドレールアタッチメント652付きの可搬型マグネットポッドシステム650の実施の形態の概略図を示す。携帯型マグネットポッドシステム650は、例えば、病院、緊急療養施設、個体住居、救急車、ヘリコプター又は他の緊急車両内での患者のベッド又は運搬装置で搬送されるように及びこれらに定着(取り外し可能に又は固定的に)するように設計できる。携帯型マグネットポッドシステム650は、起磁システム及び磁気システムを参照して、ここに記載の方法と類似の手法で、患者内において各磁性ロータを制御するように使用できる。携帯型マグネットポッドシステム650は、患者の上、下又は近傍に載置できる。
幾つかの実施の形態では、可搬型マグネットポッドシステム650は、各永久磁石及び/又は電磁石と、所望の磁界を発生させるための関連する各電気的及び/又は機械的支持制御要素と、を収納するように構成されるマグネットポッド654を含む。各電気的及び/又は機的構成要素は、各種の起磁ステータシステムを参照して、ここに記載の構成要素と類似するものとすることができる。可搬型マグネットポッドシステム650は、例えば、オペレータが、患者内部に注入された磁性ナノ粒子を制御するための所望の磁界を操作できるように、当該可搬型マグネットポッドシステム650を作動するように構成される各制御部660を含むことができる。
可搬型マグネットポッドシステム650は、安定性を提供するマグネットポッド654に取着(取り外し可能に又は固定的に)されるレールアタッチメント652を含むことができる。幾つかの実施の形態では、レールアタッチメント652により、患者の仰臥位の設定、又は患者頭部の高さと角度設定の必要がなくなる。レールアタッチメント652は、ベッド、ガーニー(車輪付き担架)、ストレッチャー又はその他の患者運搬装置のレールに、ポッドを実質的に固着することができる。可搬型マグネットポッドが、脳卒中を発症した患者又は脳に至る血管内に凝血塊若しくは障害物を有する患者のために使用される状況において、可搬型マグネットポッド650のレールへの取着により、起磁システムの適切な頭部の中央軸に対する芯合わせ、及び患部である脳半球の横側への適切な位置決めが確保される。可搬型マグネットポッド650は、ユーザが当該可搬型マグネットポッド650を所望に場所に搬送できるように構成されたハンドル662を含むことができる。
可搬型マグネットポッド650は、マグネットポッド654に枢着される一体式折り畳みヘッドレスト656を含むことができる。ヘッドレスト656は、患者に対して使用されるとき、旋回して拡開できる(線658にて表示)。開放位置では、ヘッドレストは、オペレータが患者と各マグネットに対して適切に整列関係にするのを補助できる。この整列関係により、患者の頭部が、(各)回転マグネットに対して確定距離及び確定姿勢(傾き)になっていることを確保することで、磁気制御システムの運用及び/又は制御を単純化することができる。ヘッドレストは、運搬中には、便宣性及び容易性のために閉鎖することができる。幾つかの実施の形態では、可搬型マグネットポッドは、衛生上の目的からなくてもよいカバーを含む。適切な整列関係を容易にすることに加え、ヘッドレストは、患者が偶発的にマグネットポッド654に衝突してしまうのを防止することができ、これによって外傷の蓋然性を軽減する、又はマグネットポッド654の偶発的な動きを軽減している。ヘッドレストはまた、患者の座標系へのマグネットポッド654の関連付けと治療の適切な目標化を確保しつつ、マグネットポッド654から患者を(音響的に、機械的に、電気的に)隔離してもよい。
磁性ツールロータ
幾つかの実施の形態では、治療システムは循環系の流体流量を増加させる溜めに提供されるものであって、当該治療システムは、流体での磁性ツールを制御するための磁界を有するマグネットと、磁性ツールの研磨面を回転させるため、回転する研磨面を接触部位へ操作するため、及び治療目標部位を通る又は其の周囲の流体流量を増加させるために、治療目標部位についての磁界の位置決め及び/又は磁界を回転させる制御器と、を備える。各種の実施の形態では、循環系は、患者、特に人間の患者の脈管構造とすることができる。幾つかの実施の形態では、磁性ツールは安定化ロッドと結合できるもので、この場合磁性ツールは、回転磁界に応じて、安定化ロッドの周りを回転する。幾つかの実施の形態では、磁性ツールは、治療目標部位と係合して当該部位を切除する研磨キャップであって、マグネットに添着する研磨キャップを含むことができる。幾つかの実施の形態では、制御器は、治療目標部位上の目標ポイントで磁性ツールを位置決めし、治療目標部位を切除するに充分な周波数で磁性ツールを回転させる。マグネットは、一の実施の形態では、マグネットの両極が定期的に、回転中において、磁性ツールの各対向極を引き付けるように、また磁性ツールが治療目標部位に向かって押されると、直ちに磁性ツールが回転するように、当該マグネットを位置決めすることができる。一の実施の形態では、マグネットは、マグネットの両極が、回転中に、磁性ツールの各対向極を継続的に引き付けるように、また磁性ツールがマグネットの引力によって治療目標部位に向かって引きつけられるように、当該マグネットを位置決めすることができる。
図11に、機械的な血栓摘出装置(上記の「磁性ツール」とも称される)を無線操作する起磁ステータシステムの使用例を示す。この例では、軸908に対して横断する各方向にN極904とS極906とを有する回転マグネット902によって、血管828内の血管障害物830が取り除かれる。マグネット902は、起磁ステータシステムが無線で生成する外部磁界ベクトル812に追随する。外部磁界ベクトル812は、磁界回転角度810の方向に時間変動する。マグネット902の回転は、マグネット902の孔を介して安定化ロッド908を通過させることで、安定化される。マグネット902は安定化ロッド908の周りを自由回転する。一の実施の形態では、研磨キャップ910は、血管障害物830と係合するマグネット902に添着される。研磨キャップ910は、健全組織に対する最小損傷及び血管障害物830に対する最大損傷を確保する被覆剤又は表面処置を利用してよい。
幾つかの実施の形態に従い、時間変化的であって良い磁性勾配の使用、及び時間的に変化する磁界により、遠位端で回転する能力があるマグネットを有する各装置が構築できることになる。ここに記載の各起磁装置は、医薬品の影響を増幅する又は脈管構造内の障害物を突き通すために使用される現行の各医療装置よりも更に小型で安価に作製できる。更には、血管内又は房内で回転機構を使用する市販の技術では、近位端から遠位端に至る機械的又は電気的伝達システムを必要とするものであって、当該市販技術は、装置を複雑にまたより高価にさせ及び/又は全体のサイズを大きくさせてしまう伝達システムを必要とするものである。ここに記載の各システム及び各装置は、機械的又は電気的伝達システムを必要とすることなく、先端部で機械的作用を無線で発生させることができる、これにより装置がより小型で、より簡易に及び/又はより安価に製造できるものとなる。
例えば、磁気ベースのシステムは、静脈内に注入される治療剤、例えばtPAのような治療剤の実効性を高めるための医療設定に使用されてよい。磁性粒子(例えば、磁性ナノ粒子)を、脈管構造内へのtPAの導入前又は導入後のいずれにおいても注入できるものであり、又は血栓溶解剤(例えば、tPA)と同時投与(例えば、添付)することができる。患者の近傍に(例えば、患者から2フィート以内、1フィート以内、10インチ以内、9インチ以内、8インチ以内、7インチ以内、6インチ以内、4インチ以内、3インチ以内、2インチ以内、1インチ以内)及び治療目標部位(例えば、障害物、凝血塊)の位置の近傍に載置又は位置決めされる磁気ベースシステムはこのように起動できる。幾つかの実施の形態では、磁気ベースシステムは、勾配が治療目標部位(例えば、障害物、凝血塊)で粒子を収集するのに充分であることから、このときには、変動(例えば、回転)磁界を生成する必要はないであろう。脈管構造内の流体の磁気ベースの混合が望まれるときには、時間的に変化してもよく或いはしなくてもよい磁性勾配と組み合わせる場合に、治療剤(例えば、tPAのような血栓溶解性)の作用を高めさせる磁界であって、この磁界を(1個あるいは複数の永久磁石が回をさせることで、又は電磁石の各コイルを介して流れを制御することで)を時間的に交代させることができる。幾つかの実施の形態に従い、凝血塊又はその他の流体障害物若しくは閉塞を、現行の各手法と比較して、より速くより良好に破壊できるであろう。例えば、治療剤(例えば、tPA)が良好に混合され、結果的により効率的な薬剤の相互作用が発現できるように、滞留領域で渦(予測可能に循環させる)を形成するように、当該磁性ナノ粒子を操作できる。一の実施の形態では、渦を発生することで、乱流領域の近傍に治療剤をより多く引きこませることができる。
図12A及び図12Bに、本発明の実施の形態に従う、脳1004での血管閉塞の処置のための、起磁ステータシステム(例えば、図4A-4C)と磁性ナノ粒子との使用方法を示す。図12Bに、患者の腕部1012の注入位置1010で挿入される導管又は管材に結合される、ドリップバッグ1006又はその他の流体供給ユニット及び注射針1008を示す。各種の実施の形態では、注入位置は、各手部、各腕部又は脚部の動脈若しくは静脈、あるいは脳に近傍の首部又は肩部の動脈若しくは静脈とすることができるが、この注入位置は、(例えば、目標部位又は患者の特徴に依存して)身体のいかなる位置としてもよい。各種の実施の形態では、磁性ナノ粒子がドリップバッグ1006から導入され、治療剤が注射針1008を介して導入される、あるいはその逆でもよい。図12Aは、血流1002が妨げられていない血管828と、血管閉塞820(例えば、血栓又は凝血塊)とを含む脳1004の脈管構造の一部の近接概略図である。図12Aはまた、血管閉塞830近傍の回転磁性ナノ粒子(例えば、図9B)を示す。多数の回転磁性ナノ粒子は、治療剤を介して、血管閉塞の除去、分解、崩壊、破壊、侵食、溶解等を容易になし得る。幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子は、血管閉塞部位とは接触しない、又は接触は凝血塊の溶解作用若しくは除去作用の主要原因ではない。幾つかの実施の形態では、回転磁性ナノ粒子(のみ、又は治療剤との組み合わせ)は、凝血塊の断片化又は塞栓形成を引き起こすことはない。
幾つかの実施の形態では、システムが閉塞血管で治療剤を選択的にまた迅速に集中させることから、磁性ナノ粒子及び起磁システムは、治療剤(例えば、tPA)に対する付属体である。幾つかの実施の形態では、ひとたび、凝血塊のフィブリノーゲン網が断片化し始め、かつ血液が閉塞血管分節内を流通し始めると、血液プールの治療剤の濃度に整合するように、血行動態力が、凝血塊内を移動する治療剤の濃度を均一にする。強化された再開通の形跡は、NIHSS評点の減少によって決定できる。例えば、処置開始の10分後でのNIHSS評点の改善は、血栓溶解剤処置(例えば、IV-tPA)単独についての典型的な評点の倍であってよい(例えば、平均4点の改善に代わる8-10点の改善)。
磁気的強化の薬剤の拡散
図13は、移動する流体システム(例えば、循環系)に注入される治療剤(例えば、化学薬品又は添加剤)の拡散の制御を磁気的に可能とする方法の幾つかの例を示す。図示のモデルでは、流体Aは移動して流体システムに広がる(図13Aの白領域として示される)。しばらく経って、流体Bが注入される(陰影領域として示される)。図13Bは、磁性ナノ粒子を導入することも操作もすることもしない場合の流体Bの単独注入に関連する問題点を示すもので、ここで流体Bは、その流速が脚部又は分枝内の遠位まで伝わることがないことから、治療目標部位に到達するために、「脚部」又は分枝に広がる能力は限定的である。そして、現行の各システムは、流体Aを流体Bで希釈するためには、拡散に依存しなければならない。この処理には長時間をかけることができる。
幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子が流体B内に載置され、ナノ粒子の幾分量を血流から脚部内又は分枝内に引き込むために、磁界と勾配が加えられる(例えば、強制付加される)ときには、ナノ粒子はそれらと共にある程度量の流体Bを捕える(図13Cに示すように)。拡散容易化作用を増幅するために、時間変化の状況を変更又は変化させることができる。例えば、磁界回転の比率、磁性勾配の強度、源磁界の配向、磁性ナノ粒子の粒径と強度、又はこれら要素のいずれの組み合わせも、作用を増幅するため変更することができる。時間内に、より多くのナノ粒子は、脚部または分枝の底部で凝集することができ、また、拡散のみを介するよりも早く流体A内に流体Bを分配する循環パターン(例えば、渦パターン)を形成し始める。プロセスの実行が長くなればなるほど、より多くのナノ粒子が凝集され、そして、治療目標部位の領域で流体Aが実質的に流体Bと入れ替わるまでには、混合の影響がより強くなる。
凝血塊の破壊の場合、脚部又は分枝は、閉塞した(例えば、部分的に又は完全に阻害された若しくは閉塞された)静脈又は動脈を表している。幾つかの実施の形態では、治療目標部位は、脳(例えば、神経の脈管構造又は脳の脈管構造)に関連する血管内の凝血塊である。血管は、例えば、限定されるわけではないが、前位の脳動脈、中位の脳動脈、内位の頚動脈、後位の脳動脈、椎骨動脈又は脳底動脈である。図13に示されるように、治療目標部位(例えば、閉塞血管の表面)への治療剤(例えば、血栓溶解剤)の接触を容易にするために、障害物が主流から充分に遠い場合には、主に拡散力が必要とされる。従って、循環系から流体障害物を実質的に取り除く際に効果的な治療剤(例えば、血栓溶解剤、化学薬剤、添加剤、医薬調合物)は、その実効性の観点から限定されるもので、生体内の拡散のみに依存することは、臨床上の結果としてはマイナスの結果となる。これは、循環系から流体障害物を実質的に取り除く際に効果的な治療剤は、比較的短い半減期を有しているからであり、ここに記載の磁性ナノ粒子と共同しての起磁ステータシステムの使用は、治療剤による流体障害物の除去処理を促進させることができる。目的が、主流濃度のほんの一部である脚部又は分枝の端部での流体Bの治療濃度を搬送することである場合には、ここに記載の各システム及び各方法の使用により、当初注入された流体Bのより少ない投与量(図38を参照)に対して、流体Bの同様な治療濃度に帰着させることができる。このように、幾つかの実施の形態では、ここに記載の磁気ベースの制御システムが制御する磁性ナノ粒子を導入することなく通常使用されるだろうより少ない投与量の治療剤の使用を許容することで、質を高めた治療上の利益が提供される、これにより過度な投与量に起因する出血の発生又は壊死の発生さえも減少させている。例えば、ここに記載の磁性ナノ粒子と各磁気ベースの制御システムと連動して使用する治療剤の投与量は、標準の処方投与量の約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下とすることができる。
図48A及び図48Bに、ここに記載の磁性ナノ粒子と各磁気ベースの制御システムを用いたときの利益的な効果の実施の形態を概略的に示す。図48A及び図48Bは、親血管4810の二分枝の近傍での、血管分枝4805内部の凝血塊4830を示す。凝血塊4830は、血管分枝4805への流れを完全に阻止している。図48Aは、ここに記載の各磁気ベースの制御システムを用いて、磁性ナノ粒子の導入と制御をしない場合における、治療剤4815(例えば、tPA)の注入の結果を示す。図48Aに示すように、血流は、治療剤4815を凝血塊4830まで搬送することができない。図48Bは、磁性粒子の集塊で形成され、磁気制御される各ロッド又はロータ4820が、血管分枝4805内において凝血塊4830に治療剤4815を搬送する人工流(電流)を発生させる様子を示す。人工流は、ここに記載の各磁気制御システムの各実施の形態による各ロッド又はロータ4820の制御された回転によって、発生させられる。図48A及び図48Bに概略的に示すように、幾つかの実施の形態では、磁気制御された各ロッド又はロータ4820は、実質的に楕円状とすることができる。
幾つかの実施の形態に従い、ここに記載の各システムと各方法とを、磁性ナノ粒子の流れを閉塞分枝内に移動させるために、磁性ナノ粒子の集合体を操作する集合モードで利用することができる。一の実施の形態では、集合モードでは、目標体に対して所望の治療剤を蓄積する。結果として、流体の流れは、二分枝近傍の親血管の乱流領域から発生することができる。この流れは、治療剤(例えば、化学添加剤)を、閉塞分枝の末端部に向かって、拡散単独よりも良好に、血流内に引き込むことができる。
他の例として、ここに記載の各磁気ベースシステム及び各制御方法を、滞流の領域で渦を形成するために、治療剤(例えば、化学添加剤)が血流内で良好に混合されて、結果的に流体障害物とのより効率的な化学反応(例えば、流体障害物と接触している治療剤の一部又は分子の継続的なリフレッシュに起因する)を起こすように渦を形成する渦モードで使用することができる。幾つかの実施の形態では、渦モードで使用されるときには、凝血塊の崩壊時間を3倍あるいはそれ以上に増加させることができる。このような操作は、特定な周波数で異なる方向(例えば、時計方向、反時計方向)に磁界を振動させることで達成できる。例えば、周波数は、約0.25Hz以上及び/又は約3Hz未満とすることができ、限定されるわけではないが、約0.25Hzと約1Hzの間、約0.5Hzと約2Hzの間、約1Hzと約3Hzの間、約0.75Hzと約2.5Hzの間、それら周波数が重複する各範囲、3Hz未満、2Hz未満、1Hz未満などの各周波数を含む。制御された渦モードは、より多くの治療剤(例えば、化学添加剤)を乱流領域の近傍に引き込ませることができる。幾つかの実施の形態では、振動は、脈管構造及び/又は磁性ナノ粒子の可視化画像に基づいて発生することができる。各種の実施の形態では、振動は定期的なもの又は非定期的なものである。
幾つかの実施の形態に従い、集合モードと渦モードとを交互に切り換えることで、結果的に、治療剤(例えば、化学添加剤)を乱流領域の近傍に引き込ませる能力の向上をもたらし、かつ、治療剤を閉塞分枝により効率的に移動させる能力の向上をもたらすことができる。幾つかの実施の形態では、集合モードと渦モードとの交互切り換えは、充分な投与量の治療剤を搬送するポイントで、実施される。一の実施の形態では、同時投与の治療剤が血液プールで希釈されるとき(例えば、半減期又は濾過機構を介する)、又は治療剤の追加量がもはや利益とならない飽和点に治療剤が達するときに、充分な投与量が生じ得る。幾つかの実施の形態では、目標部位で充分な投与量の治療剤に到達するとき(例えば、飽和点)、渦モードは作用として最高のモードとなる。
集合モードと渦モードとの交互切り換えは、磁性ナノ粒子の異なる挙動を引き起こすために、磁性勾配及び/又は時間変化型磁界を交互に切り換えることを含むことができる。例えば、集合モードでは、結果的に磁性ナノ粒子を所望の位置に実質的に蓄積させる正味の力を磁性ナノ粒子が受けるように、磁性勾配を増加させることができ、かつ時間変化型磁界を減少させることができる。他の例として、渦モードでは、結果的に所望の領域内で循環運動及び/又は角速度を引き起こす時間変化型の正味の力を磁性ナノ粒子が受けるように、磁性勾配及び/又は時間変化型磁界を調節することができる。このように、時間関数として、磁界の各性質(例えば、磁性勾配、磁界強度、磁界の配向、磁界の方向等)を変更させることで、各磁気ベースシステムと各制御方法を、集合モード、渦モード、操縦モード、又はこれらモードに組み合わせで使用でき、且つこれらモード間で切り換えることができる。幾つかの実施の形態では、マイクロカテーテルを介する凝血塊の目標部位へのtPAの局所搬送に類似して、臨床医によってある投与量の治療剤を目標部位に局所的に搬送するものであって、ここで唯一必要なモードは渦モードとなる。
磁気ツールの場合、システムは、利点的には、アテローム硬化性血小板物質のような大容積の血栓物質又はその他の閉塞物質を、迅速にかつ極めて正確に粉砕する能力がある。幾つかの実施の形態に従い、無線起磁ステータシステムの実施の形態を活用して、疑似アテローム硬化性凝血塊に、2フレンチホール(2/3mm)を切削により形成し得る。磁性ナノ粒子の使用に関して、ここに記載の各システムの各実施の形態により、静脈内の葉弁を無傷でかつ不損傷のままにすることができる比較的「緩い」洗浄作用を生成するための、磁性ナノ粒子のより正確な制御を可能とすることができる。磁気ツールに関して、幾つかの実施の形態では、この作用を、閉塞動脈又は静脈内の凝血塊要素を取り除くための血栓溶解剤と共同して利用することができる。凝血を処置するために血栓溶解剤と共に利用する場合、機械的作用を最小化するつもりであるときには、血栓溶解剤は有用であろう。磁性ナノ粒子を使用して、閉塞静脈から取り除かれた物質を案内ワイヤ上の極小マグネットで捕捉することができる。運用モードに依存して、除去物質は、極小物質(粒径1mm未満の凝血塊の粒子)として、又は凝血塊要素の球体混合物質、薬剤物質及び磁性ナノ粒子として観察された。磁性ナノ粒子集合体及び磁気ツール双方の対象物の可視化は、コンピュータ再構築経路手順計画を実現する標準的な画像診断技術によって、可能となる。
更に、画像診断技術及び/又はその他の診断技術は、オペレータが磁性ナノ粒子の位置についてのリアルタイムのフィードバックを保持でき、これにより動的性制御と動的操作が可能となるように、これら技術を磁性制御システム(例えば、通信可能に結合される)に組み込むことができる。画像診断技術及び/又はその他の診断技術が提供するリアルタイムのフィードバックは、プロセスの実効性を上昇させることができるものであって、例えば、回転磁界(例えば、配向、位置、回転周波数)及び/又は磁界勾配の各パラメータの調整量を提供することにより、またより多くの磁性ナノ粒子を導入することにより、及び/又は増加させた量の治療剤を導入することにより、上記実効性を上昇させることができる。
リアルタイムのフィードバックは、特定の位置での治療剤の濃度、流体障害物の各画像、閉塞血管を通る流体の流れに関連する情報及び/又はその他の情報などと相関関係にあってよい情報又はこれらの要素を示す情報、すなわち、ある特定の位置(例えば、閉塞血管の流体障害物と隣接した位置)に関連する情報、ある特定の位置(例えば、閉塞血管の流体障害物と隣接した位置)での磁性ナノ粒子又は磁性ナノロッドの密集度に関連する情報を含むことができる。画像診断技術を介して受信した情報は、いつ集合モードと渦モードを相互に切り換えるかを決定する、また、どちらのモードをオペレータが手動で又はコンピュータ制御器が自動的に実施するかを決定するために、利用することができる。例えば、治療剤の濃度又は磁性ナノ粒子若しくは磁性ナノロッドの密集度が治療目標部位に隣接する位置で低いと判断される場合には、磁性制御システムを、濃度レベル(密集度レベル)を上昇させるために、集合モードに切り換えるか又は集合モードのままにしておくことができる。治療剤の濃度又は磁性ナノ粒子若しくは磁性ナノロッドの密集度が充分であると判断される場合には、磁性制御システムを渦モードに切り換えるか又は渦モードのままにしておくことができる。一の実施の形態では、リアルタイムのフィードバックは、外部ドップラー超音波システムを磁性ナノ粒子の回転周波数に合わせることで、提供される。
図14は、磁界発生器の実施の形態を示す。図示の図面では、発生器1200は、2分離した回転、すなわち、軸1210周りの回転と軸1215周りの回転とがそれぞれ可能なように装着された、N極1206及びS極1207を有する永久磁石源1205を備える。軸1210周りのスピン回転について、ギア付シャフト1226により駆動されるプーリベルト1225によってマグネット源1205が回転され、プーリベルト1225は、翻って、駆動ギア1230により駆動される。ギア1230は、スラスト軸受1235上に装着され、かつ、モータ1245を用いてスピン軸1210周りの回転を可能とする各ロータシステム1225、1226、1230上に装着されるモータ1240によって駆動される。分離駆動システムは、各構成部品1220、スラスト軸受1235及びモータ1240を用いて、第2の軸1215周りの回転を可能とする。発生器は、ジョイントアーム1250で位置決めされる。
幾つかの実施の形態では、ジョイントアーム1250はロボットアームであって、発生器1200を1次元、2次元又は3次元に並進移動させ、及び/又は発生器を1軸、2軸又は3軸に沿って回転させるように構成されたロボットアームである。ジョイントアーム1250は、発生器1200の位置決め及び並進運動を容易にする1個又は複数のジョイントを含むことができる。幾つかの実施の形態では、ジョイントアーム1250は、各固定軸に周り沿う又はそれら軸周りの移動に依存しない非制限自由運動を可能としている。ジョイントアーム1250は、自動的に及び/又はオペレータの遠隔制御を介して移動するように構成することができる。幾つかの実施の形態に従い、発生器1200は、利点的には、簡潔性、小型化及び低コスト化を提供する。
幾つかの実施の形態では、発生器1200は、発生器1200のデザインの簡潔性が望まれないところにおいて追加的な特徴を有する。図15に図示する発生器1300は、そのような実施の形態の例を表示している。図15は、磁界・勾配発生装置の実施の形態の概略図である。図15は、障害物1350の存在する血管1355を有する人間の脚部1360を取り巻いている磁界発生器1300のブロック図である。3個のコイル1301、1302及び1303には、各接続部1321、1322及び1323を介して、各ドライバ1311、1312及び1313からそれぞれ電流が供給される。各ドライバ1311、1312及び1313は、計算装置1335から情報を受け取る分配回路1330により、個別に制御される電流源である。電流源1311、1312及び1313は、所望のピーク磁界を与えるに充分な正弦波電流を発生させることができる。幾つかの実施の形態では、ピーク磁界は約0.3Tesla以下である。各個別の症例で、異なる磁界の特徴が望まれる場合には、電流は、正弦波よりもさらに複雑な一時的変化を有してもよい。オペレータ入力1341に応じて、計算装置1335が判断するとき、計算装置1335は、各コイルへの電流の分配と各種類及び順序を算出することができる。コンピュータ1335に通信可能に結合されるメモリに格納された各プログラムからの特定の各操作指示は、オペレータ(例えば、医師)による処置入力に従って操作するために与えられる各特定指示を含む特別な操作の知識に基づいている。発生器1300は、利点的には、より複雑な各磁界源及びコンピュータ入力から発生する磁界タイプ上の付加柔軟性と、新たな各処置に対する追加改良と、を提供する。
ここに記載の各方法で処置される各治療症例での閉塞についての2種類の主要分類とは、部分閉塞及び全閉塞である。部分閉塞は、一般的に、低血流をもたらし、他方、全閉塞は結果的に無血流をもたらす。双方の症例において、従来の手段で凝血塊を取り除くために、搬送される薬剤の実効性については、一般的には困難でありかつ非能率的である。閉塞を取り除く従来の各方法についての主たる限界点は、閉塞に対する効果的な薬剤作用の困難性、取り除き物質の不完全な除去、血管への損傷と除去物質の下流要素の悪影響などを含む。図16A及び図16Bは、従来の凝血処置についての困難性及び非効率性に対して根本的な物理学上の理由と、本開示が主要な改善点を提供する物理学上の理由とを示す。例えば、幾つかの実施の形態に従い、ここに記載の各システムは、磁性粒子が「撹拌ロッド」として作用し、閉塞血管分枝に向かって血流を確立するように、より大きい構造体を形成するために、当該磁性粒子を磁気で操作する、これにより治療剤の拡散を大きく増幅し、かつ凝血塊の破壊を加速させている。ここに記載の各システムと各方法は、幾つかの実施の形態において、処置領域(部位)へ薬剤を搬送するため、また薬剤処置のみを用いる各限界点及び各制約点(上記に記載したような限界点と制約点)を解決するために、血流不足に起因して、薬剤のみを搬送する従来方法では、他の状態においてアクセス不能又は到達不能な各領域に到達することができる。
図16Aは、無血流の血管1440の断面のおける、屈曲部位での閉塞物質の典型的な蓄積の横断面図で、閉塞物質を溶解する薬剤(例えば、血栓溶解剤)を用いた場合の通常の困難性を示す図である。血管壁1405には、蓄積した閉塞物質1410、すなわち、内部境界縁1415を含む「凝血塊」の目標領域が隣接している。図示の例では、医師又は他の医療専門家が、凝血塊の近傍に薬剤1425を導入した。図16Aは、部分的相互作用物質の滞留作用層1430と、より濃度が高いが効力が少ない薬剤の層1435との、典型的な状態を示す。各層1430及び1435は、目標領域の全体で、血管1400内に注入したより濃度の高い血栓溶解剤1425から凝血塊を分離させる。薬剤の動き及び分配は、熱撹拌から生ずることができ、また、凝血塊と注入薬剤との接触をリフレッシュさせる手段であって、更に作用を極度に遅くかつ非効率にさせる手段として、分散を遅延させることができる。一部の開業医は、金属スターラー(撹拌子)技術、ベンチュリ流ベースの噴流技術、及び音響ベースの撹拌技術を導入したが、これら方法の困難性と限界点が文書化された。
図16Bは、凝固した弁尖1470を有する、血管1465の血管壁1460に寄着して形成された目標閉塞物質1455の横断面図であって、加えて領域1480での低血流及び凝血塊面1457での比較的低い流体(血液と薬剤の混合)の流れを示す。結果として、凝血塊と、上流で領域1480内に注入された薬剤1475との間の相互作用は、比較的小さい。一つの手法は、上流で注入された薬剤1475の量を増加させることであろう、しかし、この手法は、増加した薬剤投与量及び/又は増加したコストが引き起こす潜在的な悪影響から望まれることのない手法であるかもしれない。その他の手法は、凝血塊の遅速で非効率的な溶解と多量の血栓溶解剤の注入とを伴いながら、血管内の流れを止めてゆっくりと血栓溶解剤を注入することを含むものであり、このように閉塞血管(例えば、静脈)の症例と概ね同様の困難性を示している。一部の処置では、凝血塊面1485での相互作用の効率を高める試みにおいて、人工的かつ機械的なベンチュリ流ベース及び音響ベースの撹拌を領域1480内で与えている。噴射部を含む各カテーテルは、凝血塊のより効率的な崩壊を得る試みにおいて、血栓溶解剤を噴霧してよい。閉塞物質の除去は、相当な困難と弁膜の危険とを伴って、各機械的装置を挿入することで、しばしば実施されている。これら全ての方法は、一部の症例では有用であるかもしれないが、全般的には実効性は限定的なものである。
図17Aから図17Cは、幾つかの実施の形態に従う、磁性ナノ粒子の連鎖体からナノ粒子ロッドへの展開における基調プロセスを示す。図17A―17Cに、増強される磁界によって、被覆又は非被覆の磁性ナノ粒子を構築する順序の横断面を示す。サイクルの上昇局面中での磁界の増強により、漸次その量を多くしていくことでナノ粒子をより長尺のナノ粒子ロッドに整列させてよい。
これらの磁性ナノ粒子は、粒子1505の無作為な配置でのナノ粒子として、また、空間上ほぼ均等に配分されるように配列され、そして位置上のある統計的な変動を有するナノ粒子として、図17Aにゼロ磁界と共に示されている。図17Bでは、極小の外部磁界1510が同一グループのナノ粒子に加えられると、これらナノ粒子は短配向の磁性「ロッド」の遊離配列1515に形成される。ある大きめの磁界1520では、図17Cに示すように、ナノ粒子の粒径と被覆剤とに依存して、磁性ロッド1525として整列した同一のナノ粒子がより長尺となった。この図では、厳密には当てはまることもなく、また必ずということもないが、各ロッドは寸法上均一に描かれている。磁界プロセスは2通りに考察することができる、すなわち、a)図17Aから図17Bへの磁界の増強は、磁界交代の単一(遅速)サイクルでの増強であるという観点、又はb)発生磁界のピーク対ピーク値が上昇するときのサイクル数以上の増強であるという観点から考察することができる。絶対尺度及び振動周波数に依存して、振動の所与のサイクル中では、各作用が逆になることはない。
一般的に、上記方法により、約0、01Tesla以上及び/又は約1Tesla以下の磁界、限定されるわけではないが、約0.01Teslaから約0.1Teslaまで、約0.05Teslaから約0.5Teslaまで、約0.1Teslaから約0.6Teslaまで、約0.3Teslaから約0.9Teslaまで、約0.5Teslaから約1Teslaまで、それら磁束密度が重複する各範囲、1Tesla未満、0.5Tesla未満、0.25Tesla未満、0.1Tesla未満を含む磁界が加えられる。勾配強度は、0.01Tesla/m以上及び/又は10Tesla/m以下、限定されるわけではないが、約0.01Tesla/mから約1Tesla/mまで、約0.01Tesla/mから約3Tesla/mまで、約0.05Tesla/mから約5Tesla/mまで、約1Tesla/mから約4Tesla/mまで、それらの重複する各範囲、5Tesla/m未満、3Tesla/m未満、2Tesla/m未満1Tesla/m未満を含む強度とすることができる。一般的に、ロッドは、約0.05mm以上及び/又は約3mmの長さ、限定されるわけではないが、約0.05mmから約2mmまで、約0.1mmから約2mmまで、約0.2mmから約1.5mmまで、約0.2mmから約1mmまで、約0.3mmから約0.9mmまで、約0.4mmから約0.8mmまで、それらが重複する各範囲、3mm未満、2mm未満、1.5mm未満、1mm未満を含む長さを有することができる。
ある回転磁界強度及び磁界回転周波数では、ナノ粒子の粒径及び被覆剤に依存して、図18Aのグラフに示されるように成長することによって、各ロッドは、飽和磁界に到達して、最大長さを達成するであろう。ロッドの成長は必ずしも正確ではなく、またグラフ曲線は、成長の一般的な性質を示している。完全に成長したロッドは、その粒径及び回転磁界の大きさに依存して、10又ははるかにそれ以上の数のナノ粒子を含んでよい。各ロッドは、磁界及び勾配に依存して、また、それぞれのナノ粒子のマグネタイトの量とナノ粒子の粒径にも同じく依存して、剛性ロッドとはならない。化学的、磁性的及び撮像上の理由から、その他の物質もナノ粒子に取着させてよい。その化学剤は血栓溶解剤とすることができる。血栓溶解剤はまた、独立して注入することができる。
磁性ナノ粒子の集合体に磁界が加えられるとき、磁性ナノ粒子はより大きな構造体と成るように結合できる。これら構築構造体のサイズは、加わった磁界の強度、磁性ナノ粒子の粒径及び/又は磁性ナノ粒子上の被膜剤の厚みに関連付けすることができる。図18Bは、磁界が加わった結果として、構築構造体(例えば、撹拌ロッド)になった磁性ナノ粒子の集塊を示す。磁性ナノ粒子は、部分的に加わった磁界に起因して、磁化整列される。加わる磁界の強度が上昇するにつれて、磁性ナノ粒子は、自身の磁化整列を継続でき、図18Bに示されるロッドのような、より大きな構造体に構築される。磁性ナノ粒子は、自身の磁化整列が実質的に一定に維持される磁界強度上の飽和状態になることができる。一の実施の形態では、非被膜のマグネタイトナノ粒子については、加わった磁界が概ね0.2Tに達するとき、粒子は飽和点に近くなる。幾つかの実施の形態では、ナノ粒子の粒径は、構築構造体の強度及び/又は剛性に影響を及ぼすことができる。例えば、構築構造体が角運動量を有するとき、構築構造体(例えば、ロッド)がバラバラに分解する尤度は、構築構造体を構成した磁性ナノ粒子の粒径と反比例する。幾つかの実施の形態では、1Hzと10Hzの間の回転周波数(例えば、1Hzと5Hzの間、2Hzと4Hzの間、及び、1Hz、2Hz、3Hz、4Hz、5Hz、6Hz、7Hz、8Hz、9Hz、10Hzの各周波数)は、各ナノ粒子ロータ又はロッドが過度に大きくなることなく、血管内に充分な人口流を発生させるのに適当なサイズの各ナノ粒子ロータ又はロッドが形成されるのを容易にする。
図18Cは、時間変化する磁界の結果として、回転しかつ並進するロッドのような構築構造体を示す。幾つかの実施の形態では、時間変化の磁界は回転し、かつ磁界勾配を持つことができる。この組み合わせは、ロッド上にトルクと正味の力とをもたらすことができる。部分的には、トルクに起因して、ロッドは回転できる。回転と正味の力とにより、結果として、図示のような、前方向の並進(横移動)を発生させることができる。
図18Dは、時間変化の磁界の結果として、表面を横切って回転しかつ並進するロッドを示す。ロッドが表面と接触する場合、トルク、磁性勾配からの力及びロッドと表面間との摩擦が結合して、結果的に前方向に並進(横移動)を発生させることができる。ロッドの運動は、表面に沿って横転する楕円体と類似して、前方横転とすることができる。
図18Eは、1個又は複数のロッドの回転と並進から発生するフローパターンを示す。図18C及び図18Dについて記載したように、勾配を持つ時間変化の磁界の結果として、ロッドは回転及び並進が可能である。図18Eにおいて、右側に向かって、ロッドは、表面に接触するとき、前方向に回転及び並進をすることができる。各ロッドの回転及び並進に部分的に起因して、周囲の流体で流れが発生できる。ロッドが前に向かって並進すると、ロッドは磁界の変動を受けることができる。幾つかの実施の形態では、磁界は、並進距離と共に小さくなることができる。勾配が減少するに従って、ロッドに作用する下方の力が減少することができる。力が閾値を超えて減少する場合、ロッドは表面との接触を停止することができ、結果的に、表面とロッドとの間の摩擦がなくなる。そして、ロッドは、ロッド周囲の流体媒質の流れから発現する圧力を受けることができる。この流れは、結果的に、概略後方又は図18Eでの左側に向かう並進を、発生させることになる。ロッドが後方に移動すると、ロッドが受ける磁界勾配は増加することができ、そしてロッドを表面に対して引き戻すことができる。ひとたび表面に引き戻されると、ロッドは、上記に説明したように、前方に横転するように移動することができる。ロッドの総体的運動は、現実には、全体的に円運動又は楕円運動とすることができる。このプロセスに間、ロッドは、部分的には、時間変化の磁界に起因して、回転することができる。ロッドの回転及びロッドの全体円運動の組み合わせは、結果的に、概略円状又は楕円状のフローパターンを発生させることができる。幾つかの実施の形態では、このフローパターンは、治療剤の混合を増進する又は治療目標部位(例えば、凝血塊)の治療剤(例えば、血栓溶解剤)に対する薬剤暴露を増加させることができる。
図19は、空間内の固定発生源から放射する回転磁界が加わることで作用する、単一の回転ロッドの前方横転移動の幾何学的な各特徴を示す。図では、磁界の各方向及び勾配の引張り力を示すように、単一の回転ロッドが回転し移動するときのロッドの一連の8位置が示される。磁界及びロッドが回転しながら、すなわち、磁界に対するロッドの整列を維持しながら、ロッドとその磁性モーメントとを保持するための相互作用を各ナノ粒子が維持するように、個々のナノ粒子の実効磁性モーメントが実質的に連続的に局所磁界に対して整列されることが理解されるはずである。
特定の理論により制限されることなく、また、下記の等式[1]、[2]の節で論じられるように、磁界Bはトルクを確定するが、引張り力をロッドモーメントに及ぼすことはない、他方、勾配Gは引張り力をモーメントに及ぼすが、旋回トルクをモーメントに及ぼすことはない。従って、回転マグネット源は、図19に示す各ステージでの下方矢印で示されるように、それに向かう引張り勾配を有するであろう。一般的に直径が約150nm未満のより極小の磁性ナノ粒子は、空間では個別に回転することなく、実質的に局所磁界に整列する磁気透過性物質として、主に作用する。いずれの場合にも、磁性ナノ粒子は、上記に説明したように、ナノスケールではそれ自体は中位の剛性有するが、各処置でのミリメータスケールでは極めて柔らかいロッドを形成するであろう。図19では、三角法の標識化により、回転磁界に応じて、右側に向かうロッドの移動に関連させて、ナノ粒子上の力とトルク構成要素とを変化させる幾何学的(角度)様相を示している。言い換えれば、複数のロッドは概ね固定磁性ロッドとして作用する。図19では、磁界が時計方向に回転するとき、8つの位置のそれぞれでの磁界方向は矢印1701、1711、1721、1731、1741、1751、1761、1771により示される。ロッドの各磁性モーメント1702、1712、1722、1732、1742、1752、1762、1772はそれらの方向に倣う。しかしながら、図19に示される各ステージでは、矢印1703、1713、1723、1733、1743、1753、1763、1773は、下記の等式[2]に従って磁性勾配を表現するように、回転磁界源の中心に向かって下方に指向している。約2mmのロッド長さのスケールでは、右側への移動は、ソースマグネット間での距離と相対して小さい。
図20は、ソース磁界がソースマグネットの固定位置周りに回転しているときの、磁性ロッドの集中に対する限界点の展開を示す。勾配は、磁界とは異なり、発生源の磁気中心に向かって引いてよい。磁界Bは、それ自体、磁性双極子モーメントμ上の整列のトルクτを生成する。
τ=μBsinφ [1]
ここで、φは、磁性モーメントμの方向と磁界Bとの間の角度である。勾配のない均一な磁界は、磁性モーメントμ上で正味の力を生成しないであろう。しかし、勾配Gは、下記の等式[2]に従って、磁性モーメントμ上の力Fを生成するであろう。
F=μGcosφ [2]
ここで、φは、磁性モーメントμの方向と勾配Gとの間の角度である。
図20は、各ロッドに対する解放位置でのシステムの空間「分解能」の性質を示す。回転マグネット源の固定位置に対して、勾配からその固定位置に向かう引張りは、各ロッド1805、1806及び1807の右側への移動のように方向を変える。それらの移動は発生源からの距離を増大させて、結果的に、磁界強度の損失を招く。図20では、回転外部磁界源が、矢印1810が示す左側に留まったことから、各ロッド位置は、固定回転マグネットの右側に移動した(図20のスクリーンから下方に離れる方向)。ここに示すステージでは、3つのロッド1805、1806及び1807を描く矢印は、回転発生源マグネットシステムの中心から右側に遠く移動した。ロッドのサイズ及びマグネット源間でのロッドの距離に相対して、右側までのこの距離は、磁界源と勾配が傾斜し、かつその大きさが減少するように、増加した。大きい矢印1810が示す方向の勾配は、等式[2]の力に従ってそれらの位置で与えられる牽引力で駆動されるナノ粒子及びロッドを引いている。勾配Bは、典型的には、距離の逆3乗と距離の逆4乗との間の因数により、発生源からの距離をもって減少できる、他方、磁界Bは、概ね発生源中心からの距離の逆3乗として、発生源からの距離をもって減少している。この移動では、ナノ粒子とロッドとを移動表面上に引き落とすために利用される力であって、磁性勾配が引き起こすこの力は減少している。この結果、ナノ粒子及びロッドは、結局のところ牽引力を解放することができる。マグネット源の固定位置について、粒子の分散が、ガウス分布に近似し始める。この粒子分散は、システムの空間分解能を説明するために用いることができる。
勾配Gの存在下での磁性ナノ粒子の結果的運動は、当該勾配Gが、移動運動の方向(例えば、図20での下方)に対して垂直な成分指向と移動運動の方向(例えば、図20での左方)に対して平行な成分指向とを有するベクトルとして表現される場合には、より容易に説明できる。磁性勾配Gの垂直成分が、表面に対する牽引力を維持する充分な力をもはや与えないように、ひとたび磁性ナノ粒子が表面に沿って充分な距離を移動すると、磁性ナノ粒子は、牽引力を解放することができ、そして方向を変えることができる。幾つかの実施の形態では、移動方向とは反対でかつ磁気源に向かう磁性ナノ粒子上の力を与えるように作用する勾配Gの平行成分に起因して、方向の変化が起きる。図20に示すように、勾配1810は、右方への移動するための表面に対する充分な牽引力を磁性ナノ粒子がもはや持たないことから、結果的に左方運動を生じさせるだろう力、すなわち磁性ナノ粒子上での左方の力を引き起こすであろう。幾つかの実施の形態では、図19に示すように、前記表面に沿って移動するための表面に対する充分な牽引力を磁性ナノ粒子がもはや持たないときに、方向の変化が起き、そして、領域の流体の流れで、磁性ナノ粒子は反対方向に移動させられる。幾つかの実施の形態では、方向の変化は、磁性勾配及び領域の流れの双方によって、引き起こされる。磁性ナノ粒子がひとたび反対方向に充分な距離だけ移動した場合、また、磁性勾配Gが充分な大きさと方向を有する場合、磁性ナノ粒子は、表面に対する牽引力を再び獲得でき、また表面に沿って本来の方向(例えば、図20での右方)に移動できる。このシーケンスを繰り返すことで、磁性ナノ粒子は循環運動又は渦運動をしながら移動することができる。
図20の作用の結果は、矢印1810が単にマグネットに最も近接する位置で最大密度の領域を指し示し、また、矢印1810が、各ロッドの磁気源に最も近接するときに最大強度を有するロッド移動の位置的依存性を表すようなロッド活動のガウス状分布であって、回転マグネット源の固定位置に対して各ロッドの移動する距離につれて起こる力の減少が前記ガウス状分布をもたらすことができるそのような前記作用結果である。
単一回転ロッドの磁性力学により、下記の計算式に従って、「軟性ブラッシング」量が与えられる。比較的低密度で凝血塊物質に取着したロッド束について、これらの状態が直接的に適用されることが理解されるはずである。安定的で磁性的に除去可能な柔軟な凝集塊に至る各ロッドであって、凝血塊物質がそれらロッドと結合可能となるような回転磁界での各ロッド、を操作する有用なモードを以下に論じる。そのようなモードでは、この節の各計算式に従うことはないであろう。にもかかわらず、この節の各計算式は、軽荷重のときの回転洗浄ロッドの基調挙動と、少量の閉塞物質の各症例において、又は処置の精巧さ、又は静脈若しくは動脈のサイズが、物質の凝集塊を持続不能とさせるかもしれない各症例において利用してもよいモードとを示す。そのような各症例は、なんらかの脳閉塞において生じるかもしれない。
ここで、単純化するために、各ロッドは剛性ロッドとして扱われる。図21Aは、薬剤混合と凝血塊の面との相互作用とを高めるために外乱を発生させる回転ロッド上の回転力及び回転エネルギーの発生の三角法の詳細を示す図である。磁性回転磁界Bの作用の各要素は、ロッドの磁性モーメントの各方向と磁界Bがx軸から角度βで指向される瞬間における磁界Bの方向とで画定される平面での磁性モーメントμを持つ単一ロッド上の所与のモーメントで示される。この瞬間では、(一定)モーメントμはx軸から角度θで指向される。従って、この瞬間では、外部ソースマグネットによるモーメントμ上で発生するトルクτの大きさは、下記のように与えられる:
τ=μBsin(β-θ) [3]
図21Bは、対称ロッドの中央に中心の配置された座標において対称的であると仮定されるロッドに及ぶ角度力F(θ)を示す。この仮定は、マグネット源までの距離と比較して、ロッドのサイズが小さいときに、実用性を帯びる。結果としての力は下記のように与えられ:
Fθ=2μ(Β/L)sin(β-θ) [4]
ここで、力は長さLを持つロッドの両端での磁界Bによって生成される。
標準力学から、角速度の依存度(dθ/dt)2で近似されるだろう牽引力は、下記のように与えられる:
Fdrag=-C(dθ/dt)2 [5]
ここで、Cは比例定数である。その仮定下では、対称ロッドについての運動の確定等式は以下のようになる:
(mL/4)(d2θ/dt2)=2μΒ/L[sin(β-θ)]-C(dθ/dt)2 [6]
更に、角度αをα=β―θのように定義し、βをβ=ωtとし、ここでωは磁界Bの角回転周波数、そして、αをα=β―θとする、従ってd2α/dt2=-d2θ/dt2となる。等式[3]は下記のようになる:
(mL/4)(d2θ/dt2)=2μΒ/Lsinα-C(ω-dα/dt)2 [7]
定リード角αについて、これを下記のように単純化する:
sinα=CLω2/2μB [8]
定リード角αを保つ最大周波数ω0は下記のように与えられる:
ω0
2=2μB/CL [9]
ここで、α=π/2である、すなわち定リード角αは90度である。
最大周波数ω0より大きいなんらかの角周波数では、モーメントμは磁界回転に従うことができず、システムは不安定化する。更に高い周波数では、運動は実質的に停止し、時間の前半から磁界はπ/2未満の角度で進み、時間の後半では、π/2を超過する角度で進む。このように、2つのトルクは効果的に相殺される。この理由づけから、運動エネルギーは、図21Cに示すように、周波数依存性を示すであろう。詳細には、運動エネルギーTは下記のように与えられる:
T=2x(1/2)(m/2)(L/2)2(dθ/dt)2 [10]
図21Cは、最大エネルギーT0がT0=(ml2/8)ω0
2のように与えられ、ここで、ω0=dθ/dtである回転周波数に関するロッド上の運動エネルギーの依存性を表すグラフである。つまり、単一ロッドに利用できるピーク回転運動エネルギーは、ロッドの質量及び長さに依存し、ロッドが磁界回転に従うことができないポイントまでは、その角速度の観点からは2次的である。
磁性ナノ粒子のロッドの形成及び力学的挙動に関する上述の見解により、治療上の施用に適用するときのシステムと各方法の効用とを示すことができる。ナノ粒子のシステムは、血管での閉塞部位に作用する柔軟な磁性ロッド群として振る舞うことが発見された。第1に、上記の図16A及び図16Bで論じた2つの特徴的な問題症例の処置が、各回転ロッドの導入と共に示されよう。
図22Aは、スピン回転する各ロッドで外乱を導入する実用上の利益を示す。図22Aは、図16Aに示す従来の処置と対比して、本明細書に記載の各方法を用いて処置している完全な間隙閉塞を有する血管部分を示す。図22Aは、凝血塊2005を有する無血流の管腔2000であって、閉塞部位の近傍に注入されている血栓溶解剤が新たに供給されている管腔2000の横断面図である。3個のスピン回転する磁性ロッド2030(縮尺せず)が、新薬剤2010と同時に注入されているところが示されており、それらロッドは、回転マグネット源(ここでは、図示せず)の方向2025に引っ張られると、局所外乱を発生させる。時計周りのスピン回転により、各ロッドが新薬剤と混合されているところが示され、更に、外部回転磁界源が移動すると、各ロッドはゆっくりと左方に移動しながら凝血塊2005の表面をブラッシングしているところが示される。凝血塊2005の微細粒子は右部2035に蓄積して、図23Aに示すように、回転が継続されると、これら微細粒子は球体を形成するであろう。
幾つかの実施の形態では、凝血塊2005は、凝血塊物質の機械的洗浄をすることなく、除去(例えば、溶解、破壊、裂壊、崩壊、浸軟)される。幾つかの実施の形態では、凝血塊2005の除去のための主要機構は、凝血塊2005の断片を擦り取る各磁性ロッド2030の研磨ではない。幾つかの実施の形態では、凝血塊2005の除去のための主要機構は、交互磁界から生じる各磁性ロッド2030の誘導性加熱により生起される温熱療法に起因するものではない。幾つかの実施の形態では、各磁性ロッド2030は研磨被膜を持たない。幾つかの実施の形態では、各磁性ロッド2030は、非研磨被膜を持つ。この状態は、極めて僅かな混合作用を有し、かつ凝血塊の除去に対する長めの時間に依存しなければならない薬剤の静的施用において、図16Aのものと比較されるはずである。幾つかの実施の形態では、添加剤の混合を改善するために滞留領域で渦(例えば、予測可能に循環又は振動させる)を形成するように、当該磁性ナノ粒子を操作でき、結果的により効率的な化学的相互作用を引き起こすこととなる。渦を形成することはまた、乱流領域の近傍でより多くの添加剤を引き込ませることが可能である。循環は、約0.1Hz以上及び/又は約5Hz以下の周波数、若しくは約0.25Hz以上及び/又は約3.5Hz以下の周波数、それら周波数の重複する各範囲、1Hz、2Hz、3Hz、4Hzあるいは5Hzの各周波数で発生することができる。
図22Bは、図16Bに示す症例において、標準の各方法による凝血塊の不充分な除去に係る問題を解決するために各方法及び各装置の実例的な各実施の形態を示すものであって、管腔2050の上方部位の横断面図である。この症例では、脚部の動脈又は心房室での部分的な閉塞を示すであろう。幾つかの実施の形態では、図16Bに示されたように、部分的に閉塞された管腔2050には、ゆっくりと流れる血液2090が存在する。凝血塊物質2058及び2062は、弁尖2060周囲に密集し、弁尖2060を凝固させて、総体的ではないが有意な血流の減少を引き起こしている。この症例では、血管2050の全体が閉塞しているわけではなく、また、減少した血流は、部分的な閉塞と堅い弁膜2060の剛性とに起因している。図16Bに関連して説明したように、血流は、遅速ではあるが、閉塞物質との不充分な接触で注入された薬剤を運び流す。方法の幾つかの実施の形態では、凝血塊物質2058及び2062に作用する各回転洗浄ロッド2055のアクションは、薬剤との接触を大きく増加させ、また同じく小規模での穏やかな擦り動作を与えるように示すことができる。領域2080及び2085での乱流は、血管壁2070又は弁葉2060を実質的に又は有意に損傷させることなく、それらの比較的に極小で柔軟な構造がそのような領域で機能できる各回転ロッド2055により、発生させられる。幾つかの症例では、取り除かれた磁性注入物質は、磁性手段により下流で収集されるであろう。
幾つかの実施の形態では、凝血塊物質2058及び2062の除去のための主要機構は、凝血塊物質2058及び2062の断片を擦り取る各回転ロッド2055の研磨ではない。幾つかの実施の形態では、凝血塊物質2058及び2062の除去のための主要機構は、時間変化の磁界から生じる各回転ロッド2030の誘導性加熱により生起される温熱療法に起因するものではない。幾つかの実施の形態では、各磁性ロッド2030は研磨被膜を持たない。幾つかの実施の形態では、各回転ロッド2030は、非研磨被膜を持つ。
特定条件(特に、低血流)下で回転が継続されると、下記の図23Bで説明されるように、凝血塊物質と磁性ナノ粒子とで磁性球体が形成できる。再び、特定な理論で制限されることなく、磁性ナノ粒子が循環するとき、当該磁性ナノ粒子は血栓部位の表面に係合してよいと考えられている。血栓が微細な断片に裂壊されると、磁性ナノ粒子は被包粒子に成り、又は他の形態で、マグネタイトと血栓物質とを含む結合構造体を形成する。この結合構造体は、本発明の幾つかの実施の形態に従って、一つ又は複数の利点的な性質を持つ。例えば、(i)結合構造体は、相互作用の生じる表面領域を増加させて、また血栓溶解剤のより効率的な循環を生じさせることで、血栓の破壊を加速することができる;(ii)同構造体は、より極小な栓状核を球体構造体に収納しながら、これら栓状核を捕捉することができ、これにより栓状核の脱出を防止する;(iii)同構造体は、血栓溶解剤により構造体が崩壊するに従い、ゆっくりと裂壊し続けることができる;及び(iv)同構造体は、先端にマグネットが付いた装置で再収集できる、これにより、より大きな栓状核と磁性ナノ粒子とを捕捉する等の性質である。
幾つかの実施の形態では、薬剤を適切な比率で送出することで、凝血塊及び磁性ロッドの相互作用の性質と経時性とに依存して、磁性ロッドの洗浄プロセスを、上述のように、磁性ロッドと結合した極小で概ね球体の凝血塊物質を形成するように凝血塊物質と各ロッドを混合するために、順序立てて設定することができる。それらの条件は、磁気処置中で、血栓溶解剤の施用及び濃度の比率で決定できる。一の実施の形態では、除去を完了するために所望の又は最適な各特質(剛性及びサイズ)を持つ結合構造体(例えば、球体)を形成するように、薬剤の送出の比率を変化させる。
以下に、この技術の実例的な適用を説明する。図23Aは、凝血塊2130で完全に閉塞した無血流の血管2120の横断面図である。ここで、各磁性ロッド2122は、循環パターン2135を生成しながら磁界を時計回りに回転させることで、凝血塊2130に直近位の領域を撹拌している。撹拌領域2125は、凝血塊物質と血栓溶解剤と少量の磁性ロッド材料との混合体を含む。
図23Bの横断面図では、血管2120でのこの回転相互作用が継続して、構造体(例えば、球体)2140は、捕捉した栓状核と少量の磁性ロッド材料とを用いて凝血塊2130から剥ぎ取った物質を形成し始める。
図23Cでは、回転球体2140は拡大して治療を加速させる。回転球体は、閉塞物質の微量の残渣2150をそのままに、血管2120内の閉塞経路を開成した。球体2140は依然として回転して、回転磁性源(例えば、マグネット)の勾配から与えられる力で適切な位置に保持される。
図23Dは、完全凝血塊球体2140の捕捉除去手段を示す。適当な時間で、回復した血流が血栓球体2140を下流側に押し出す前に、マグネットが先端に付いたプローブ2145が挿入され、そして、マグネットが先端に付いたプローブ2145をけん引することで、球体構造体1040をその除去のために捕捉する。
図24は、各弁尖2260を含む血管2255の横断面図であって、各弁尖2260の内のひとつの弁尖2262が当該弁2262を凝固させた閉塞物質2263を有して非機能となった状態を示す横断面図である。血液は、矢印2270の方向にゆっくりと流れている。外部磁界発生器は、(図14又は図15に示すように)、回転ナノ粒子2275が、例えば、上記図22Bに示す手法で、凝血塊の蓄積物2263に作用している領域において回転磁界を発生させる。ここに示される磁性ナノ粒子ロッド2275は、実際には、凝血塊の蓄積物2263に隣接する空間では、そのような多数のロッド部材であってよい。各ロッド2275は、一の実施の形態では、柔軟なロッドで、上記で説明した通り、凝血塊の蓄積物2263の狭いコーナで機能するために、約1ミリメータから2ミリメータまでの長さより短い長さまでブラッシングを受けることができる。幾つかの実施の形態では、各ロッド2275は、幅が約2センチで深さが約3ミリメータのモデル空間で物質を除去するように機能し、約100立方ミリメータの血栓物質を除去した。幾つかの実施の形態では、各ロッドは、血栓部位に直接接触して、又は直接接触をすることなく、血栓物質の少なくとも25%、50%、60%、75%、85%、90%又は95%を除去もしくは緩和するように構成される。
図25は、太めの血管2305から分岐する細めの血管2300の横断面図である。細めの血管2300は、図示のように蛇行してもよいが、脳又は他の場所での凝血塊、すなわち凝血塊2315に近接するのが示されている磁性ロッド2310のような移動走行を妨げるものではない。従って、ここに記載の各システム及び各方法は、利点的には、蛇行した又は湾曲した脈管構造(神経脈管構造のような)内での、磁性ナノ粒子の移動を容易にし、また流体障害物の処置も容易にする。そのような極小の凝血塊2315は、他で説明されるように、上記の図24における血管2555のような一般的に太めの血管において、擦り落とすことができる。擦り落とし作用は、閉塞物質の断片を除去するために適切な磁界及び勾配を選択することで、発生させることができる。これら除去粒子は、その粒径が数ミクロンまでなってもよく、さらなる下流での損傷を引き起こすことはないであろう。幾つかの実施の形態に従い、凝血塊2315のような凝血塊を除去するこの方法の利点は、閉塞部位が全体に渡っており、従来の現行の各方法では到達するのが困難であるが、ここに記載の各システムと各方法が与える外部回転磁界では、各ロッドを閉塞ポイントまで移動させることができることである。そして、血栓溶解剤を、可能であれば、凝血塊2315の部位に導入してよい。そのポイントで、磁性ロッド2310の撹拌活動により、静的な搬送より更に迅速に凝血塊2315に薬剤を相互作用させることができる。
磁性ナノ粒子は、繊細な構造体を穏やかに除去するには充分であるが、脳が部分的に血液不足となっている乏血性脳卒中の場合のように、該当物質を迅速に素早く除去することが、時として望まれるであろう。磁性ナノ粒子について利用される同様の原理は、機械的な研磨と同時に閉塞部位への血栓溶解剤の流れを上昇させて、迅速に閉塞を除去するように特に設計されたより大きな磁性構造体をに対しても、採用してもよい。これら大きな磁性構造体は、ここでは血栓摘出装置と称し、表面上に接着した研磨材料を持つ球体であってよい。幾つかの実施の形態では、特定処置後の除去が望ましいと考慮するのであれば、これら球体をミリメータ以下のサイズからミリメータを超過するサイズとすることができる。このテクニックは、従来の各テクニックで典型的に見受けられるものより、結果的に小さい残留栓状核をもたらすことができる。現行の各処置と比較して、この方法のさらなる利点は、除去物質の磁性特徴をコントロール可能とすることである。ここでは、磁界モーメント(例えば、「磁性球体」)を持つ球体として示される血栓摘出装置は、装置の回収を単純化するために係留されよい。幾つかの実施の形態では、血栓摘出装置は、磁性ナノ粒子に対して提案された手法と類似する方法、すなわち、先端にマグネットが付いた案内ワイヤを用いて回収することができる。球体の表面は、下記の要素、すなわち;(i)造影剤、又は、磁気共鳴画像診断、X線診断、陽電子射出断層撮影法(PET)、超音波診断技術又はその他の画像診断法による可視化を可能とする薬剤;(ii)閉塞部位の破壊を加速させる薬剤;(iii)すり潰し動作を加速させるように設計及び/又は最適化された表面形状;及び(iv)すり潰し動作を加速させる研磨面のいずれか一つ又はそれらの組み合わせを含む。
図26Aは、一の実施の形態の従い、球体2430として表記される磁気有効血栓摘出装置の基本操作の各要素を示す。球体2430は、S極2410及びN極2420の端部を持つ永久磁石のモーメントを有する。反時計方向2440に進行する外的に加えられた磁界2450により、球体は回転する。図26Aのように、磁性勾配が存在しない場合、表面2460に対して、牽引力は発生しないことから、球体は並進しない。
図26Bは、血管壁2460に対して磁性球体2430を押し付けるように当該磁性球体2430に作用する力を方向2480に発生させる磁性勾配2480が、実質的に固定された方向2480に発現することを除いて、図26Aと同じ場合を示している。結果として、牽引力が生じて、磁界の反時計方向の回転2440と共に、並進運動が方向2470で発生する。
このテクニックの実例的な適用を下記のように説明する。図27Aは、無血流で全面閉塞となっている血管2510の横断面図である。図示のように、磁性球体2530は、機械的に閉塞表面2522をすり潰しながら、閉塞部位2515に直近傍の領域を撹拌することができる。表面2522に対する接触は、結果的に方向2520への並進力を引き起こす方向2520の勾配によって発生する。磁性球体2530の時計方向運動により、血栓溶解剤の作用を加速する循環パターン2525が形成される。
図27Bの横断面図では、血管2510での回転相互作用が継続し、球体2530が、並進方向2520で閉塞部位2515内に深く貫通している。
図27Cでは、磁気有効回転球体2530が、微量の閉塞物質を残して、血管2510内の閉塞経路2535を開放している。幾つかの実施の形態では、閉塞部位2515の除去のための主要機構は、閉塞部位2515に接触する磁性球体2530の研磨機構ではなく、閉塞部位に対する治療剤(例えば、血栓溶解剤)の薬剤曝露量を増加させる機構である。幾つかの実施の形態では、閉塞部位2515の除去のための主要機構は、時間変化の磁界から生じる磁性球体2530の誘導性加熱により生起される温熱療法に起因するものではない。幾つかの実施の形態では、磁性球体2530は、研磨被膜を持たない。
図27Dは、血管2510から、磁気有効球体2530を捕捉して取り除く手段を示す。外部磁界2520はもはや回転されない又は取り除かれており、球体2530を右方へと並進させることはもはやなくなる。適切な時間において、回復した血流が磁気有効球体2530を下流に押し込む前に、先端にマグネットが付いたプローブ2540が挿入されて、この先端マグネット付着プローブ2540をけん引することで、これを取り除くために球体2530を捕捉する。
図28Aの横断面図は、血管2605内で鎖留めした磁気使用可能球体2610を示す。テザー2630は、図28B又は図28Cに示される留め具を用いて、球体2610を磁界と共に回転可能としている。マグネットのN極2640及びS極2645の両端部は、黒矢印の両端部で描写される。磁界2640-2645の自由回転は、血管2605の内側の血栓又は血小板物質2620を擦り落とすことを可能にする。テザー2630は、マグネット2610が、図27Dに示される先端にマグネットの付いたワイヤ2540を必要とすることなく、手動で回収可能であることを保証する。幾つかの実施の形態に従い、テザー2630は、回転中の球体2610に(例えば、図28B及び図28Cの各方法及び各装置に従って設計されるとき)巻きつくことはないであろう。
図28Bは、磁性球体を2610の回転軸2650周り回転を許容するテザー2660の第1の実施の形態を示す。図28Bに示すように、テザー端部2665は、回転軸2650周りの自由回転を確保するために、回転軸2650内に緩く挿入される。N極2640及びS極2645の矢印は、球体2610の磁化方向を示す。
図28Cは、テザーの第2の実施の形態を示す。テザー2670は、磁性球体2610(ループ2675に対して垂直)の回転軸2650周り回転を許容する。図28Cに示すように、テザーは、回転軸2650周りの自由回転を確保するために、磁性球体の回転軸2650を緩く取り巻くループ2675を備える。矢印2680で示すN極2640及びS極2645の両端部は、球体2610の磁化方向を表す。
ここに記載の各技術は、例えば、図29に示すように、血管2705上の脆弱性血小板2715を除去する際に利用されてもよい。図29では、血管2705の横断面図は、血管2705の頂部及び底部上の脆弱性血小板2715について示している。回転磁性球体2710は、図27Cに示す閉塞部位2515上で利用される手法と類似の方法で及び図28Aでの繋ぎ留めの実施の形態と類似する方法で、血小板2715を擦り落としているところを示す。これは、作用を血小板2715方向の上方に向けるために、外側に発生した磁性勾配2720を用いることで可能となっている。幾つかの実施の形態では、除去した(例えば、排出した)血小板物質を実質的に溶解するために、治療剤(例えば、血栓溶解剤)が存在してもよい。
磁性ナノ粒子と磁気有効血栓摘出装置とを現在の画像技術で撮像するために、これら粒子は、この画像技術に対して実質的に不透明とする被覆剤を有することができる。実例的な造影被覆剤には、X線診断、陽電子射出断層撮影法(PET)、磁気共鳴法(MR)及び超音波画像診断技術で検出可能な各造影被覆剤が含まれる。そのような被覆剤は、利点的には、その領域での血流不足に起因して、通常は不可視である血管を再現する能力を提供することができる。同様に、磁性ナノ粒子を制御して再収集する能力は、従来の造影剤の使用に起因しているかもしれない有毒な副作用を結果的に減少させることができる。例えば、X線造影剤は典型的には、血流と共に押し流されることから、また低血流の血管(例えば、1cm/sec未満の流量)の高濃度では移動することは不可能なことから、これらX線造影剤は多種多様な注射剤を必要とする。
図30Aは、太めの血管2810から分岐する細めの血管2820の横断面図である。細めの血管2820は、図示のように蛇行してもよいが、磁気有効球体の磁性ロッド収集運動及び/又は横転運動を妨げるものではない。双方の技術は、細血管2825の右側から開始し、閉塞部位2815に近づいていく様子として、概略的に描写されている。時間的に続く各ポイントで、磁性球体集合体又は磁性ロッド集合体2825の位置が、2826、2827、2828及び2829で示される各ポイントで識別される。磁性ロッド集合体又は磁気有効球体の並進方向は、本体から延伸する矢印2830によって示される。
図30Bは、図30Aに示すものと同じ横断面図である。この図では、磁性ロッド集合体又は磁気有効球体の各撮像位置が連結され、これにより、コンピュータによって移動した経路2835を再現することができる。この経路は、解剖位置の確認及び経路2835に沿う操縦を利用する処置の策定を行うために、手術前の各画像に対して参照することができる。
システムで利用するための組成剤
医薬品組成剤と組み合わせて配合するかどうかに関して、各種配合の磁性ナノ粒子は、患者に投与する際に利用してよい。当業者は、個々での磁性ナノ粒子との同時投与又はナノ粒子とは分離した投与を行うに際しての、各種治療剤(例えば、医薬品組成剤、薬剤及び配合剤)の配合の仕方を認識しているであろう。幾つかの実施の形態では、その各種配合の磁性ナノ粒子を、簡明に(例えば、純粋に、無混合で又は無希釈で)投与してよい。幾つかの実施の形態では、各種配合物と医薬剤許容可能な担体とを投与でき、また各種配合形態のものであってよい。例えば、医薬剤許容可能な担体は、形態又は調和性を与えることが出来る、又は希釈液として作用することができる。適切な添加剤は、安定剤、保湿剤及び乳化剤に限定されるわけではないが、浸透圧を変化させる塩類、封入剤、緩衝剤及び皮膚浸透促進剤を含む。実例的な添加剤は、非経口的な薬剤搬送及び非経口的ではない薬剤搬送のための配合物も同様に、レミントン(Remington)のマック出版社、「薬学の科学と実務」20版(2000年)([The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing (2000)]に説明されており、この開示は本明細書の一部を構成するものとして特にその内容を援用する。
幾つかの実施の形態に係る磁性ナノ粒子は、いずれの特定治療剤(例えば、化学組成剤又は医薬品組成)に対して非特殊化されている被覆剤と配合できる。幾つかの実施の形態では、被覆剤は、多種多様な治療剤を吸収できるであろう。被覆剤は、その上、実質的に磁性ナノ粒子の相互作用に干渉しないように薄く配合される。この結果、投与量、コスト及び投与量依存性の副作用を減少させつつ、化学剤をより効率的に搬送できる。
被検者内への注入に先立って、非特殊化被覆剤を含む磁性ナノ粒子が獲得され、オペレータが選択した薬剤と混合することができるであろう。このように、オペレータは特定のアプリケーションについて、適切な薬剤を選択することができる。治療剤(例えば、化学剤、血栓溶解剤)を磁性ナノ粒子へ取着するために使用される各装置は、従来型渦ミキサー、超音波ミキサー、結果的に粒子を拡散させて選択治療剤と拡散粒子とを混合させるように磁界を操作する装置、又はその他の適切な混合装置を含むことができる。オペレータ選択の薬剤は、例えば、ナノ粒子に親水性かあるいは疎水性を持たせることで血液中のナノ粒子の挙動を高める被覆剤;ナノ粒子を緩衝し、磁性ナノ粒子の磁性相互作用及びその挙動を最適化する被覆剤;磁気共鳴画像診断、X線診断、陽電子射出断層撮影法(PET)又は超音波診断技術(例えば、磁気デンドリマー)による可視化を可能とする造影剤又は薬剤;循環系の閉塞の破壊を加速させる薬剤;組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、その他の薬剤、若しくはこれら薬剤のいずれの組み合わせ、を含むことができる。非特殊化被覆剤を含む被覆磁性ナノ粒子は各利点を持つ。例えば、磁性ナノ粒子は、tPA又はそのような他の添加薬剤なしで注入できるが、これらナノ粒子は、流体の流れを利用して別途導入される薬剤を集中させるために用いることができる。このように、薬剤は、目標位置又治療目標部位での投与を高めるナノ粒子の能力のおかげでより効果的となることができる。幾つかの実施の形態では、その様なプロセスで、2桁又は3桁の大きさで必要とされる効果的な投与量を、コストを削減しながら、軽減させることができ、また薬剤の起こりうる有害性の副作用も低減することができる。幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子は、特定の治療剤の結合又は添加を容易にするために特化された被覆剤を含むことができる。幾つかの実施の形態では、被覆剤は、(例えば、共有結合性の連鎖によって、又は非共有結合性の結合によって、若しくは物理的相互作用によって)特定治療剤を引き付けるようにコード化されたDNA被覆剤を含む。DNA被覆剤は、結合又は添加を容易にする1個又は多数のチオール基若しくは他の構造体で改変させてよい。
幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子の被覆剤(例えば、ポリエチレングリコール被覆剤)の表面には、各治療剤又は各診断マーカが共有結合的に連鎖される又は共役化されるアミノ官能基又はヒドロキシル官能基が含まれる。幾つかの実施の形態では、ヨードアセチル、マレイミド又はピリジルジスルフィドなどの各連鎖基によって、添加を容易にしてもよい。物理的相互作用(例えば、静電気相互作用、疎水性/親水性の相互作用、及び親和性の相互作用)は、治療剤又は診断マーカの磁性ナノ粒子への添加を容易にするために用いてもよい。幾つかの実施の形態では、治療剤には、被覆剤物質(例えば、磁気リポソーム)内の酸化鉄ナノ粒子が装填される。
幾つかの実施の形態では、被覆剤はリポソーム被覆剤を含み、そして、1つ又は複数の治療剤又は診断剤は、被覆剤内部又は被覆剤上に与えられてもよい。リポソーム被覆剤は、ある期間後に溶解するように構成されてよく、これにより目標部位に到達するまで薬剤の放出が防止される。幾つかの実施の形態では、治療剤は、目標部位への到達する前に開放されるのを防ぐために、不活性物質で覆ってよい。
磁性ナノ粒子は生態学的には不活性とすることができるが、代謝能力はない。幾つかの実施の形態では、被覆剤は、ポリエチレングリコール(PEG)被覆剤、ポリ乳酸(PLA)被覆剤、ポリアセテート共グリコール酸(PLGA)被覆剤、ポリ酢酸ビニル(PVA)被覆剤、デキストラン被覆剤、及び/又はオレイン酸被覆剤を含む。被覆剤は、利点的には、磁性ナノ粒子の帯電を取り除き、溶血現象を防止する又は溶血現象の尤度を減少させることができる。被覆剤は、治療剤を添加するためのプラットホーム又は足場として役立つことができる。幾つかの実施の形態では、被覆剤は、治療剤の添加を容易にする中間被覆剤(例えば、酸性被覆剤)を含む。幾つかの実施の形態では、被覆剤は、治療剤の被覆剤への共役又は結合を容易にするための酸性層を含んで、改変することができる。幾つかの実施の形態では、被覆剤は層状にしてよく、また任意選択的に薬剤の制御持続放出を提供する。
幾つかの実施の形態では、ここに記載の磁性ナノ粒子は、磁気バイオ分離を介して、生体分子の純化に利用することができる。例えば、磁界を振動させることで、磁性ナノ粒子は、生体分子の純化プロセスを増進させることができる。幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子の表面を所望の分子を取着するように機能化させることができる。例えば、癌などの各種の疾病用の診断マーカを、腫瘍診断及び/又は処置適用のために、磁性ナノ粒子に取着させることができる。幾つかの実施の形態では、治療剤の損傷部位への搬送を容易にするために、タンパク質を被覆させたナノ粒子を動脈の損傷部位に付着できる。磁性ナノ粒子は、磁気共鳴画像診断結果又はその他の画像診断結果を改善するために、磁気共鳴画像処理又はその他の造影剤を増進させるように利用することができる。幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子は、粒子表面に薬剤を付着させ、その薬剤付着の粒子を部位(例えば、炎症領域、特定器官又は特定細胞)に向けさせることで、薬剤搬送の各ベクトルとして利用することができる。幾つかの実施の形態に従い、磁性ナノ粒子は、ナノ粒子に付着した治療剤を含み、臨界濃度の物質を部位に搬送するように当該部位に指向させることができる。幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子は、ワクチンの搬送を容易にするように利用することができる。
各種の実施の形態では、腫瘤又はその他の癌性組織若しくは癌性領域への薬剤搬送を、薬剤(例えば、ドキソルビシン、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロランブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロフォスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、エトポプシド、マイトマイシン、ミトタン、マイトキサントロン、パクリタキセル、ペンタスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、プレドニソン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシデ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、化学療法薬剤又は遺伝子治療剤のような抗がん剤又は抗悪性腫瘍薬)をここに記載の磁性ナノ粒子に付着することで又は付着することなく、容易にすることができる。異なるタイプの分子を、同一の磁性ナノ粒子に又は異型の磁性ナノ粒子に付着させることができる(例えば、癌認識剤及び癌処置剤)。幾つかの実施の形態では、脳腫瘤又は血液脳関門に影響を与えるその他の疾病(例えば、髄膜炎、脳膿瘍、癲癇、多発性硬化症、視神経脊髄炎、神経トリパノソーマ症、進行性多巣性白質脳症、De Vivo(デ・ビボ)病、アルツハイマー病、脳炎、狂犬病)及びその他の疾病又は中枢神経系の神経変性障害(例えば、痴呆症、パーキンソン病、及び筋萎縮性側索硬化症)の処置のために、血液脳関門を横切る搬送を容易にするように、治療剤を磁性ナノ粒子に付着させることができる。治療剤は、バクテリア、ウイルス、病原体又はその他の微生物を対象としてよい。幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子は、多数の異なるタスクを特定の順序で実施するように利用できる。
血液脳関門を横切って搬送される磁性ナノ粒子と共同で脳腫瘤の治療に使用される治療剤は、例えば、ベバシズマブ又はエベロリムス、プロカルバジン、カルムスチン、ロムスチン、イリノテカン、テモゾロミド、シスプラチン、メトトレキサート、エトポシド、シクロフォスファミド、イホスファミド及び/又はビンクリスチンを含んでよい。温熱療法は、磁性ナノ粒子を交番磁界に曝すことにより、これら磁性ナノ粒子を用いて供給されてよく、これによって熱を発生させている。磁性ナノ粒子と共同でアルツハイマー病を治療するための治療剤は、例えば、コリンエステラーゼ抑制因子及び/又はメマンチンを含んでよい。磁性ナノ粒子と共同で髄膜炎を治療するための治療剤は、例えば、メトロニダゾルを含んでよい。磁性ナノ粒子と共同で癲癇を治療するための治療剤は、例えば、アミタール、アモバルビタール、フォスフェニトイン、及び/又はレベテラシタムを含んでよい。遺伝子治療は、例えば、白血病、骨髄腫、パーキンソン病及び他の疾患又は障害を治療するために、磁性ナノ粒子と共同して利用してもよい。ウイルス性又は非ウイルス性の方法では、遺伝子治療におけるベクトルとして使用してよい。
磁性ナノ粒子と共同で動静脈の奇形又は出血を処置するための若しくは腫瘤の塞栓形成を容易にするための治療剤は、血栓又は塞栓物質の形成を誘導するための抗血管形成誘導を促進する薬剤を含んでよい。温熱療法はまた、磁性ナノ粒子を用いて供給されてよい(例えば、磁性ナノ粒子を交番磁界に曝すことにより、結果的に熱を発生させている)。
磁性ナノ粒子の合成化
幾つかの実施の形態では、コロイド及び界面科学ジャーナル、74巻、第1号、1980年3月の「水酸化第1鉄ゲルからの結晶化による均一球形マグネタイト粒子の形成」(“Formation of Uniform Spherical Magnetite Particles by Crystallization from 水酸化第1鉄 Gels,” Journal of Colloid and Interface Science, Vol. 74, No. 1 , March 1980)の全開示は本明細書の一部を構成するものとして特にその内容を援用するものであって、ここにおいて杉本とマチジェビック(Matijevic)とが記述しているように、磁性ナノ粒子(例えば、酸化鉄ナノ粒子)を合成する方法は、上昇温度で水酸化第1鉄ゲルを経年変化させることを含む。幾つかの実施の形態では、酸化鉄ナノ粒子を合成する方法は、前駆体水酸化第1鉄(Fe(OH)2)の沈殿析出を行うこと、過剰硫酸鉄(FeS04)で前駆体を経年変化させること、及び最終生成物を収集することを含む。幾つかの実施の形態では、プロセスは結晶成長プロセスを含む。
幾つかの実施の形態では、前記方法は、水酸化カリウム及び硝酸カリウムと反応するFeS04(水性)溶液から鉄(含水)酸化前駆体の沈殿析出を含む。鉄源、水酸化カリウム及び硝酸カリウムは、室温などの第1の温度で容器に添加でき、次いで、反応を起こすために加熱することができ、又は成分を熱湯などの上昇温度にある液体の入った容器に添加することができる。沸騰した湯は、沸騰後に添加された各成分の攪拌器構として作用することができる。これは、反応の良好な制御を提供し、より均一で微細な粒径分布を与えることができる。この方法は、成分を攪拌する又は攪拌することなく実施することができる。この方法における反応は、85℃、90℃、95℃、100℃、又は反応を引き起こすのに充分なその他の温度で発現できる。この方法は、水酸化カリウム(KOH)を含む硫酸鉄水溶液の沈殿析出を含むことができる。前駆体酸化鉄(含水)は、実質的に相純粋な磁鉄鉱粒子を生成するために、FeS04(水溶液)を過剰混合することができる。幾つかの実施の形態では、ポリマー又はその他の被覆剤物質は、ナノ粒子を被覆するために用いられる。ポリマーは、ナノ粒子の形成が開始する前に、あるいは鉄源を添加した後に、ポリマーが完全に又は部分的に溶液中に溶解するように、鉄源の添加に先立って溶液に添加することができる。ポリマーは、ポリエチレングリコール1450(例えば、PEG-6又はPEG-32)とすることができる。この方法は、上澄みでの実質的に一定の比導電率が達成されるまで、脱イオン水で粒子を洗浄することを含むことができる。洗浄工程の後に、1つ、2つ、3つ、4つ以上の追加的な洗浄サイクルを続けることができる。幾つかの実施の形態では、ナノ粒子の粒径分布の制御を維持しながら、ここに記載の方法により、比較的多数の磁性ナノ粒子を生成することができる。
幾つかの実施の形態では、約20nm以上及び/又は約250nm以下、約50nm以上及び/又は約150nm以下、もしくは約75nm以上及び/又は約125nm以下の直径を有する酸化鉄(例えば、磁鉄鉱)粉末が生成される。酸化鉄粉末は、物質の磁化率が粉末の約10emu(エミュー)/g以上、粉末の約20emu/g以上、粉末の約30emu/g以上、粉末の約40emu/g以上、粉末の約50emu/g以上、粉末の約60emu/g以上、粉末の約75emu/g以上、粉末の約100emu/g以上、粉末の約150emu/g以上、及び/又は粉末の約200emu/g以上となるように、生成することができる。幾つかの実施の形態では、酸化鉄物質は、約15mg/mL及び/又は約45mg/mL以下、約20mg/mL及び/又は約40mg/mL以下、約25mg/mL及び/又は約35mg/mL以下、若しくは約28mg/mL及び/又は約31mg/mL以下の固形分でのリン酸緩衝塩水懸濁液中において、与えることができる。幾つかの実施の形態では、酸化鉄粉末は、約1300Da以上及び/又は約1600Da以下、約1350Da以上及び/又は約1550Da以下、約1400Da以上及び/又は約1500Da以下、若しくは約1420Da以上及び/又は約1480Da以下の分子量でのポリエチレングリコールのある濃度を含むリン酸緩衝塩水懸濁液中において、与えることができる。
幾つかの実施の形態では、被覆剤を除く合成粒子の組成は、酸化鉄が約85%以上、酸化鉄が約90%以上、酸化鉄が約95%以上、酸化鉄が約99%以上、酸化鉄が約99.5%以上、若しくは酸化鉄が約99.8%以上である。酸化鉄は、混合相を含むことができ、Fe304及び/又はFe2O3とすることができる。幾つかの実施の形態では、重金属(例えば、ヒ素、水銀、鉛、カドミウム、ビスマス、等)からの不純物は、約300ppm以下、約250ppm以下、約200ppm以下、約150ppm以下、約100ppm以下、約75ppm以下、又は約50ppm以下である。不純物は、誘導結合プラズマ又は他の類似の分析手法を用いて決定することができる。一の実施の形態では、磁性ナノ粒子は、デキストラン被覆剤、例えばデキストランT1、デキストランT5、デキストランT10、デキストランT25、又はデキストランT40を含むことができる。幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子物質における微生物の総生菌数は、約200コロニー形成単位(cfu)/g以下、約150cfu/g以下、約125cfu/g以下、約100cfu/g以下である。幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子中の酵母及び/又はカビの含有数は、約200cfu/g以下、約150cfu/g以下、約125cfu/g以下、又は約100cfu/g以下である。
幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子を製造するために使用される各材料は、約90%以上、約95%以上、約98%以上、又は約99%以上の純度を有する硫酸鉄(II)七水和物を含む。各材料は、約95%以上、約98%以上、約99%以上、又は約99.8%以上の純度を有する微結晶の形態での硝酸カリウムを含むことができる。各材料は、約75%以上、約80%以上、約85%以上、又は約87.9%以上の純度の水酸化カリウムを含むことができ。各材料は、前純化窒素を含むことができる。各材料は、約2%以下、約1%以下、約0.5%以下、又は約0.1%以下のLOI残渣を有するポリエチレングリコール1450(例えば、PEG-6又はPEG-32)を含むことができる。ポリエチレングリコールは、不純物が約100ppm以下、約50ppm以下、約10ppm以下、又は約5ppm以下の割合を占める重金属からの不純物を含むことができる。各材料は、ナノレベルの純粋逆浸透水を含むことができる。
結果として、各磁性ナノ粒子は、約20nm以上及び/又は約200nm以下の直径、約50nm以上及び/又は約100nm以下の直径、または約60nm以上及び/又は約80nm以下の直径、それらの重複する範囲、170nm未満の直径、若しくは約20nmと約200nm間のいずれの整数値の直径を有する単結晶コアを持つように形成することができる。単結晶コアは、多結晶コアを有する類似のサイズの磁性粒子と比較するときに構造がより強い磁気相互作用を可能にするために、有利であり得る。磁気による影響を減少させたようなナノ粒子は、MRIでの造影剤としてナノ粒子を利用するような撮像アプリケーションでの使用に対しては、有利であり得る。ここに記載の単結晶磁性ナノ粒子はまた、その他の薬剤を付着するためのプラットホームとして役立つことができるポリエチレングリコール(PEG)の被覆剤を含むことができる。
磁性ナノ粒子の投与
循環系閉塞又は処置されるその他の治療目標部位に依存して他の投与形態(例えば、経口、粘膜など)も利用可能であるが、幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子は、注射による投与(例えば、腹腔内、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内等)のために配合される。従って、配合剤は、塩水、リンゲル液、デキストロース溶液等の薬学的に許容される媒体と結合させることができる。特定の投与計画(例えば、投与量、タイミング及び反復)は、特定の個体とその個体の医療履歴と処置すべき循環系閉塞とに依存してよい。一般的に次の投与量が使用されてよい;すなわち、体重換算で約1mg/kgの投与量;少なくとも体重換算で約750pg/kg;少なくとも体重換算で約500pg/kg;少なくとも体重換算で約250pg/kg;少なくとも体重換算で約100pg/kg;少なくとも体重換算で約50pg/kg;少なくとも体重換算で約10pg/kg;少なくとも体重換算で約1pg/kg、又はそれ未満の投与量で投与される。血栓溶解剤の半減期又は主要動脈血流から目標位置までの距離などの経験的考察は、一般的に投与量の決定に寄与するであろう。
幾つかの実施の形態に従い、各システム及び各方法は、非分散性の薬剤又は分散が困難な薬剤(ここに記載の磁性ナノ粒子の各実施の形態のような)を搬送するために提供される。注射による磁性ナノ粒子の投与は、実質的に一定の注入質量が時間関数として所望される課題を提示できることとなる。注入機構は、各注入器、各点滴バッグ、各リザーバ、チューブ、各点滴チャンバ、他の機構、又はこれら任意の組合せを含むことができる。磁性粒子は、例えば、塩水、リンゲル液、デキストロース溶液等の溶液中に分散させることができる。そのような溶液中での特定量の時間経過後において、磁性粒子は、恐らくは一定しない注入質量に帰着する粒子上への重力に主に起因して、溶液の底部近傍に沈殿することができる。
例えば、特定の施用では、磁性ナノ粒子は、約17mLのリン酸緩衝塩水(PBS)中に分散した約500mgの磁性ナノ粒子を含有する単一投与のバイアル中に供給され、約1時間にわたって注入されるように設計されている。これらの磁性ナノ粒子は、約5から10分で分散を経てから沈殿することができる。このように、磁性ナノ粒子は、これら粒子を投与する際の時間よりも早く沈殿するであろう、これにより注入質量が不一定となる。
ここに記載の磁性ナノ粒子の幾つかの実施の形態は、流体中では非分散性又は分散が困難なものである。ここに記載の磁性ナノ粒子の幾つかの実施の形態は、約50nm以上及び/又は約200nm以下の直径を有し、磁気的に強く、比較的大きい単結晶コアを含む。磁性ナノ粒子は、粒子に関連する電荷を減少させるために、比較的薄いポリエチレングリコール被覆剤(例えば、約5nm、約10nm、約20nm等の値以下)で被覆することもできる。例えば、塩水のような流体中にそのようなナノ粒子を分散させるために、ナノ粒子被覆剤の厚さを実質的に増大させることができ、及び/又は分散媒体の粘度を増加させることができる。幾つかの実施の形態では、各システム及び各方法は、ナノ粒子被覆剤の厚さ又は分散媒体の粘度を改変することなく、実質的に一定した注入質量を維持するために提供される。
幾つかの実施形態では、磁性粒子は、その粒子を比較的に厚い被覆剤で被覆することによって、より分散しやすいように形成される。例えば、比較的微細な多結晶性磁性コア(例えば、磁性コアは、約20nm以下の直径を有する)を取り囲むようにデキストラン又はポリエチレングリコールで被覆された、マグネタイト粒子又はヘマタイト粒子のようなナノ粒子について、それら粒子の立体反発状態を確保するため、比較的厚い被覆剤をこれら磁性ナノ粒子に施すことができる。幾つかの実施の形態では、一定注入質量を維持するための各システム及び各方法により、比較的厚い被覆剤を使用することない磁気の強い粒子、例えば、約20nm以上及び/又は約200nm以下の直径を有する単結晶コアを持つ磁性ナノ粒子を注入することができる。
典型的には、磁性ナノ粒子は、注入プロセス全体を通して実質的に分散状態のままであるように、比較的厚い被覆剤を有することから立体反発を受ける。幾つかの施用では、磁性ナノ粒子が磁気共鳴画像診断での使用のために造影剤として利用されるときにように、当該磁性ナノ粒子は、粒子の磁化率を低減するために被覆剤で被覆される。幾つかの施用では、磁性ナノ粒子は、生分解性物質、疎水性薬剤、又は他のこのような被覆剤で被覆される。そのような被覆剤は、溶液中の粒子の分散を増加させるのに有効であることができる。幾つかの実施の形態では、ここに記載の磁性ナノ粒子、及びここに記載の各注入方法と各注入システムとは、利点的には、立体反発を受けることなく、及び/又は比較的厚い被覆剤を必要としないで、注入プロセス全体を通じて磁性ナノ粒子を実質的に分散状態に維持できる。
幾つかの実施の形態に従い、磁性ナノ粒子の分散は、少なくとも部分的にマイクロボアチューブの使用によって維持されている。マイクロボアチューブは、注入プロセス中で、粒子を注入剤中に混入させるための注入機構において提供することができる。典型的な注入セットには、約4mmの内径を有するチューブを含む。チューブの直径を減少させることによって、注入速度は所与の注入率で増加される。この速度の増加は、注入プロセス全体を通して、注入質量が実質的に一定のままとなるように、注入機構のチューブに沈殿する粒子の量を減少させるのに十分であることができる。例えば、マイクロボアチューブは、約0.05インチ以下の内径、約0.048インチ以下の内径、約0.034インチ以下の内径、及び/又は約0.023インチ以下の内径を有することができる。内径は、チューブ内を通る所望の流体速度、注入すべき粒子の粒径、所望のチューブの長さ、又はこれらの任意の組み合わせに依存することができる。
マイクロボアチューブは、所望の長さの物質及び/又は所望の体積の物質を保持することができる。例えば、マイクロボアチューブは、少なくとも約40インチの長さ及び/又は約180インチ以下の長さとすることができ、更に少なくとも約50インチの長さ及び/又は約100インチ以下の長さとすることができ、若しくは少なくとも約57インチの長さ及び/又は約61インチ以下の長さとすることができる。マイクロボアチューブは、少なくとも約0.3mL及び/又は約2.0mL以下、少なくとも約0.4mL及び/又は約1.8mL以下、若しくは少なくとも約0.5mL及び/又は約1.7mL以下の体積を有することができる。マイクロボアチューブは、所望の時間で所望量の溶液を搬送するように設定された長さ及び内径を有するように構成することができる。例えば、マイクロボアチューブは約60分で約68mLの量を搬送するように構成することができる。幾つかの実施の形態では、約0.031インチの内径と約160インチの長さとを有するマイクロボアチューブは、磁性ナノ粒子の混入を持続しながら、約57分の間に68mLの溶液を搬送する。図31は、注入器ポンプ3106から滅菌塩水3104を患者に投与する(例えば、注入器を押圧して)粒子の投与量が少なくとも部分的に予め充填されたマイクロボアチューブ3102を有する注入システム3100の実施形態を示す。
幾つかの実施の形態では、粒子の分散は、超音波エネルギーを加えることで少なくとも部分的に維持される。図32Aは、そのようなシステム3200の実例を示す。実例的なシステム3200は、部分的に貯留槽3204内に含まれる粒子体積3202と、注入器ポンプからの入口管3206と、患者に至る出口管3208と、貯留槽3204に接触する超音波トランスジューサ3210と、を含む。超音波トランスジューサ3210は、貯留槽3204内での分散を維持するように時間設定された(例えば、周期的に設定された)超音波パルスを生成することができる。磁性ナノ粒子の注入は、注入器及び注入器ポンプ(図示せず)を介して塩水注入によって実施することができる。幾つかの実施の形態では、超音波トランスジューサ3210は、貯留槽3204に実質的に連続した超音波エネルギーを送達する。特定の実施の形態では、貯留槽3204は、チューブに超音波エネルギーを送信するように構成された媒体(例えば、液体又はゲル)中のコイル状の注入管(不図示)を含む。超音波エネルギーを送達するシステム3200は、例えば、各超音波トランスジューサ、各超音波パッド、各超音波振動子、各超音波攪拌器(撹拌子)、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。幾つかの実施の形態では、出口管3208又は出口管3208の一部分は、患者への搬送の際に粒子の分散を維持するように構成されたマイクロボアチューブとすることができる。幾つかの実施の形態では、図32Bに示すように、貯留槽3204は、注入器/注入器ポンプによる注入の容積を増加させることに対応して、粒子分散剤3202の内部容積を減少させるダイヤフラム3212を含むことができる。
幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子の分散は、少なくとも部分的に磁場を加えることで維持される。図33は、粒子体積3302を含む貯留槽3304と、注入器からの入口管3306と、患者へ至る出口管3308と、時間変化する磁場を生成するように構成された少なくとも一つのマグネット3310と、を有するシステム3300の実例を示す。磁性ナノ粒子は、実質的に一定な注入質量を維持するために分散剤3302内で移動することにより、時間変化する磁場に応答することができる。一つ又は複数のマグネット3310は、時間変化する磁場を生成するために回転するように構成された永久磁石とすることができる。一つ又は複数のマグネット3310は、時間変化する磁界を生成するために、それらを介して誘導される変化電流を持つ電磁石とすることができる。一つ又は複数のマグネット3310は、永久磁石及び電磁石の任意の組み合わせとすることができる。幾つかの実施の形態では、一つ又は複数の回転マグネット3310は、同じ又は異なる平面で回転するように、貯蔵槽3304の周りに間隔をあけて配置されている。磁界は、約1Hz以上及び/又は約100Hz以下、約5Hz以上及び/又は約50Hz以下、約10Hz以上及び/又は約30Hz以下、約1Hz以上及び/又は約10Hz以下、若しくはそれらが重複する各範囲、100Hz未満、50Hz未満、30Hz未満、10Hz未満の周波数で変化することができる。幾つかの実施の形態では、出口チューブ3308又は其の一部は、図31を参照してここで記載したようにマイクロボアチューブを含む。特定の各実施の形態において、図32Bに示す超音波システム3200と同様に、貯蔵槽3304は、注入器/注入器ポンプ注入部からの容量を増加させることに対応して、粒子分散剤3302の内部容積を減少させるダイヤフラム(図示せず)を含む。
幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子の分散は、少なくとも部分的には、機械的撹拌を行って維持される。図34は、点滴バッグ3402と、点滴バッグ3402を支持する支持構造体3404と、患者に至る出口チューブ3406と、ドリップバッグ3402及び/又は支持構造体3404に結合された機械攪拌器3408と、を有するシステム3400の実例を示す。幾つかの実施の形態では、システムは、ドリップバッグ3402と出口チューブ3406内への流れをユーザが目視可能及び/又は制御可能とする出口チューブ3406とに結合した、円錐形の底部(図示せず)を有するドリップチャンバを含む。分散は、ドリップバッグ3402を繰返し圧搾するIV注入ドリップバッグ3402における継続的な又は時間設定された撹拌によって維持することができる。特定の実施の形態では、攪拌器3408は、バッグ3402の一部を、時間設定をした、継続的な、定期的な及び/又は律動的な手法で絞る、機械的に操作されるバーを含む。機械的攪拌器3408は、約0.1Hz以上及び/又は約5Hz以下の周波数、又は約0.25Hz以上及び/又は約3Hz以下の周波数、若しくはそれらが重複する各範囲の周波数で、繰り返し動作させることができる。幾つかの実施の形態では、攪拌器3408は、浮袋からドリップバッグ3402内に空気を流れ込ませるように浮袋への空気を脈動させ休止するこの動作を繰り返す圧縮器に連結された浮袋又はバルーンとすることができる。幾つかの実施の形態では、攪拌器3408は、粒子容器を機械的に撹拌するように構成された機械的渦生成器とすることができる。幾つかの実施の形態では、ドリップバッグ3402内の分散は、機械的攪拌、超音波エネルギー、及びここに記載の磁気エネルギーの任意の組み合わせによって維持することができる。幾つかの実施の形態では、図31を参照してここに説明されるように、出口チューブ3406又はその一部は、マイクロボアチューブを含む。
幾つかの実施の形態では、注入質量は、一定の時間設定された(例えば、周期的またはランダムに設定された)間隔で、多数のボーラスカートリッジを用いて搬送される。図35は、そのような注入システム3500の実例的な実施の形態を示す。注入システム3500は、注入ポンプ3502、多数の注入器3504又はその他の搬送機構を含み、注入器は、出口チューブ3508に連結したマルチコネクタ又はマニホールド3506に結合する。多数の注入器3504には、個々の投与量を事前に装填することができ、そして出口チューブ3508に各投与量を注入するため及び/又は各投与量を注入ラインに流入させるために、塩水3510を含有する少なくとも一つの注入器を含めさせることができる。幾つかの実施の形態では、一つ又は複数の注入器3504での分散を維持するために、超音波及び/又は磁気エネルギー3512を注入ポンプ3502に加えることができる。幾つかの実施の形態では、出口チューブ3508又はその一部は、図31を参照してここに説明するように、マイクロボアチューブを含む。
幾つかの実施の形態では、粒子の分散は、流体の動的混合を利用して、少なくとも部分的に維持される。図36Aは、このような流体動的混合システム3600の実例を示す。この実例では、流体動的混合システム3600は複数の継続混合注入器3602を含み、この複数の継続混合注入器3602では、第1の注入器3602bが分散剤3604を含み、第2の注入器3602aは空であり、第3の注入器3602cが塩水3606を含有する。各注入器3602は、マニホールド3608により、流体的にそれぞれ結合する。システム3600は、出口チューブ3612への流れを制御する弁3610を含む。流体動的混合システム3600は、マニホールド3602及び/又は出口チューブ3612内への塩水3606の導入を制御する一の又は複数の塩水弁3614を持つことができる。流体動的混合システム3600は、実質的に同時に及び/又は分散注入器3602bが搬送する速度で、空の注入器3602aを引き出させるように機能することができる、これにより、図36Bに示すように、実質的に継続的なやり方で、分散剤3604を1個の注入器から他の注入器へ転送している。この流体の実質的に継続的な運動は、分散剤を維持するうえで充分なものとすることができる。確定した時間間隔で、弁3610は、適切量の溶液を被検者に搬送できるように開弁し、その後弁3610は混合が継続できるように閉弁できる。塩水注入器3602cは、分散剤3604をチューブ3612から被検者内に流入させるために組込まれかつ利用することができる。幾つかの実施の形態では、出口チューブ3612又はその一部は、図31を参照してここに説明するように、マイクロボアチューブを含む。
操作の実例的方法
操作の実例的方法を例示するために、実例的な起磁システム及びユーザインタフェースを、発明の各実施の形態に従い、図46A-図46G、図47A及び図47Bを参照して説明する。起磁システム及び関連する磁性ロータは、動脈血管又は静脈血管内に位置する低血流の血管(例えば、約1cm/s以下の流量)へ同時投与する静脈内剤の注入を高めるように構成することができる。図46A-図46Bは、患者の頭部(例えば、血流を脳に送り込む血管)内の治療目標部位(例えば、血栓又は凝血塊)へ治療剤(例えば、tPA又は他の血栓溶解剤)を搬送するために、磁性ロータ(例えば、磁性ナノ粒子)を制御するように、起磁システム4715を操作する際に使用されるユーザインタフェースモジュール4600の実施の形態を示す。ユーザインタフェースモジュール4600は、同じく患者のその他の血管又は肉体構造部位の処置で使用するように構成できる。
起磁システムは、ここに記載の各システム(図1-5のシステムのような)のいずれか又はその構成要素を含むことができる。例えば、起磁システム4715は、図47に示すように、可搬型指示ベース4702とアーム位置決め器4712とを含むことができる。図1、図4及び図5を参照してここに説明されるように、起磁システム4715は、所望の磁界を生成するように構成された磁性ステータシステムを含むことができる。例えば、磁性ステータシステムは、シャフト・ヨークアセンブリに接続されたネオジウム-鉄-ボロンの永久磁石ブロックを含むことができる。幾つかの実施の形態では、ヨークアセンブリは、重量を低減し、性能を向上させるために、炭素繊維板を用いて加工される。
永久磁石ブロックは、単一の永久磁石又は多数のマグネットとすることができる。例えば、永久磁石ブロックは、2個、3個、4個、6個、8個、又はその他の数のNdBFe50の中温度2インチ立方体を備えることができる。機械式の駆動列は、角度を変化させ、磁性ブロックによって生成される磁界を時間変化させるように構成された1対の電動モータにこれらのアセンブリを接続することができる。幾つかの実施の形態では、磁性ブロックは、所望の変化磁界を生成するために、少なくとも約1、2又は3Hz及び/又は約10Hz以下(例えば、2-4Hz、1-5Hz等)の回転周波数を持つことができる。幾つかの実施の形態では、磁性ブロックは、当該磁性ブロックの表面から少なくとも約6インチの位置で、所望の磁界を生成するように構成されている。幾つかの実施の形態では、磁性ブロックは、当該磁性ブロックから約54.6cmの位置で約5ガウス以下の磁界、及び/又は当該ブロックから約94cmの位置で約1ガウス以下の磁界を生成するように構成される。幾つかの実施の形態では、これらの機構は、機械的な危険からオペレータ及び患者を保護するだけでなく、筐体の外部の危険から筐体内に含まれる要素及びアセンブリを保護する保護カバー内に収容されている。
アーム位置決め器4712は、処置中に患者の頭部に隣接するように所望の位置又は使用中でないときには収納位置に、磁気ステータシステム4715を位置決め及び/又は配向するように構成することができる。システム4715は、固定機構又は摩擦機構のように、実質的に所望の位置で磁気ステータシステムを固定するための各機構を含むことができる。システム4715は、利点的には、オペレータに情報を表示し、システムを制御する際に使用するために、またオペレータからの入力を受け取るように構成されたタッチスクリーンインターフェースモジュール4600を含むことができる。
より大きな構造体を形成するために、磁性ナノ粒子が磁界で操作されるときに、各磁性ロータを形成することができる。磁性ナノ粒子は、熱及び圧力下での塩化第一鉄の化学的沈殿析出によって、医薬品等級の試薬を使用して、マグネタイト(Fe3O4)から作製できる。マグネタイトコアが約100nmまで結晶化した後に、PEG1450の薄い被覆剤(例えば、約10nm)を、コアの表面に吸着させることができる。幾つかの実施の形態では、マグネタイト粒子を、ガンマ放射線又は他の滅菌技術を使用して、滅菌している。一の実施の形態では、磁性ナノ粒子は、治療剤(例えば、tPA又はその他の血栓溶解剤として)と同時に静脈内に投与されるように、滅菌塩水中で懸濁されている(例えば、非発熱性緩衝塩水(USP))。幾つかの実施の形態では、2つのIV部位が確定されており、一つの部位は治療薬の投与のためであり、他の一つは磁性ナノ粒子の注入のために確定されている。一の実施の形態では、投与は、約50nmから約150nmの範囲の粒径を有する約17mLの塩水の中の約500mgの粒子を含むことができる。一の実施の形態では、磁性ナノ粒子の最終濃度は、約29.4mg/mLである。磁性ナノ粒子の注入速度は、約0.33mL/min以下(例えば、約0.30mL/min以下、約0.25mL/min以下、約0.20mL/min以下、又は約0.15mL/min以下)とすることができる。磁性ナノ粒子は、約10mg/kg以下(例えば、約9mg/kg以下、約8mg/kg以下、約7mg/kg以下、約6mg/kg以下、約5mg/kg以下)の注入質量で投与することができる。
一の実施の形態では、タッチスクリーンインターフェースモジュール4600は、図46A-46Gに示すユーザインタフェース4601を表示する。ユーザインタフェースモジュール4600は、オペレータが適切な情報を入力できるように、処置の進行を表示できるように、ユーザがシステムを操作できるように、ユーザが操作を一時停止できるように、ユーザが操作パラメータを変更できるようにするなどして、システムの適切な操作を補助する。例えば、ユーザインタフェース4601は、治療目標部位又は頭蓋半球分の領域及び主要動脈血管(又は血管分枝)を選定する能力をオペレータに対して提供することができる。ユーザインタフェース4601は、オペレータが治療目標部位、磁気固定子システムの状態、及び治療剤の搬送のための残り時間を確認できるように、オペレータに情報を表示することができる。幾つかの実施の形態では、治療目標部位又は目標位置は、治療目標部位の撮像又は可視化を必要とすることなく(例えば、凝血塊の撮像をすることなく)識別される。例えば、治療目標部位は、測定血流又は流体障害物の表示に基づいて、識別してよい。
システム及びユーザインタフェースを使用する実例として、患者の頭部における治療目標部位の処置について、図46A-46G、図47A及び図47Bを参照して説明する。磁気制御又はステータシステムの一の実施の形態は、本明細書で参照されているが、本明細書に記載の他の磁気制御又はステータシステムを使用してもよい。例えば、図47Bに示されているように、頭部支え4705のような固定システムを使用して患者の頭部を位置決めして、患者を仰臥位に配置することができる。患者が、治療機関の基準の手順に従って処置を受けられる準備させることができる。磁気制御システム4715のマグネットポッド4710(ここに記載しているように、永久磁石の回転をもたらすために、回転可能な永久磁石及び機械的機構を含んでいてもよい)を、患部の半球に近傍の患者の頭部の片側に隣接して位置決めすることができる、若しくは、マグネットポッド4710を、(例えば、図47Bに示すように)患者頭部の頭蓋又は頭頂に近接して位置決めすることができる。幾つかの実施の形態では、頭部の最上部又は頭頂に隣接する磁気制御システム4715のマグネットポッド4710を位置決めすることで、脳への血流及び/又は脳からの血流に関連した血管と利点的に位置合わせを実施し、及び/又は潜在的で電磁的な各干渉問題を最小限に抑えられる。
磁気制御システム又は磁気ステータシステム4715のマグネットポッド又はブロック4710を位置決めすることは、磁気ステータシステム4715を患者に相対する所望の位置に位置決め及び/又は配向させるために、1つまたは複数の機械的機構、例えば、位置決めアセンブリ4712(多数の独立した制御可能なリンク機構又は単一の単体部材で構成してもよい)及び可搬型支持ベース4702を使用することを含むことができる。位置決めアセンブリ2712は、それぞれが個別に又は組み合わせて調整することができるような多数のピボット、ジョイント及び/又は油圧機構を含んでよい。位置決めアセンブリ4712は、患者の頭部角度に対する正確な位置決めを行うために、多数の軸に沿って又は制限することなく(例えば、自由度6)、磁石ポッド4710を調整することができる。位置決めアセンブリ4712は、ひとたび所望の方向及び位置が得られると、その移動を防止するロック機構を含んでよい。幾つかの実施の形態では、磁気ステータシステム4715は、患者の頭部から2cmと20cmの間(例えば、2cmと6cmの間、4cm10cmの間、6cmと12cmの間、8cmと20cmの間、それらの重複する各範囲、8cm、引用した範囲内のいずれの距離)の距離で、患者の頭部に対して垂直かつ患者の耳に対して水平に位置決めできる。他の実例として、図47Bに実例として示すように、磁気ステータシステム4715は、患者の頭部と平行にかつ患者の頭部の頭頂と隣接して位置決めできる。磁気固定子システム4715は、実質的に、使用中に適所に固定されるように構成することも、若しくは手動操作、自動操作、又はこれらの組み合わせを介して、使用中に移動するように構成することができる。幾つかの実施の形態では、ヘッドレスト4705は、固定位置及び/又は固定配向に患者の頭部を位置決めして、実質的に固定するように利用することができる。ヘッドレスト4705は使い捨てとすることができる。一の実施の形態では、ヘッドレスト4705は、患者及び磁気ステータシステム4715の位置合わせを容易にするために、他方側より短い片側切り落とし部を有している。
オペレータは、頭部の患部である半球又は治療目標部位(例えば、凝血塊又は他の流体障害物)を含む脳を選択することができる。図46Aでは、オペレータは、治療剤の搬送される頭部の片側に対応している患部の半球を選択するための半球選択部4603を介して、病気に冒された半球を選択するのにインターフェース4601を使用することができる。幾つかの実施の形態では、ユーザインタフェース4601は、半球選択部4603において、2つの選択肢を提示する、すなわち、関連画像4605aを含む選択肢「LEFT」と関連画像4605bを含む選択肢「RIGHT」である。オペレータの選択に応じて、ヘッド角画像4607は、選択を反映するように変更することができる。
幾つかの実施の形態では、オペレータは、対象とする特定の動脈の分枝を選択する。図46Bでは、オペレータは、動脈選択部4609を介して目標の動脈を選択するのにインターフェース4601を使用することができる。動脈選択部4609は動脈分枝のリストを含むことができ、そして、オペレータは、目標とする特定の動脈の分枝を選択することができる。動脈選択部4609をタッチすることで、有効な選択項目4611のリストを表示させることができる。例えば、図示の有効な選択項目4611のリストは、ACA(前大脳動脈)、MCA(中大脳動脈)、MCA前位、MCA後位、MCA近位、ICA(近位MCA/内頸動脈)、PCA/遠位脳底(後位大脳動脈/遠位脳底)の項目を含む。選択時に、頭部角度4607に関連する画像は、治療剤の注入方向を予測する(図46Eに示す)の矢印4629を表示することができる。
幾つかの実施の形態では、オペレータは、頭部角度が水平線に相対して患者頭部の角度となるような、患者の頭部角度を設定又は入力する。患者の頭部角度は、ユーザインタフェース4601を用いる処置中に、変化させることができる。図46C及び図46Dでは、オペレータは、図46Cに示すようにバースライダー4613を使用して、又は、図46Dに示すように頭部角度画像4607を操作することで、患者の頭部角度を設定するのにインターフェース4601を使用することができる。スライダー4614をドラッグすると、患者の頭部角度が0度から90度に変化する、ここで90度は患者が座っているときに対応している角度である。スライダー4614の現在位置の上又は下をタップすることで、確定量(例えば、5度、10度、20度)だけ頭部角度の値を増加又は減少できる。上下のボックス4615a及び4615bをタップすることで、頭部角度を1度だけ増加又は減少させることができる。図46Dに示すように、オペレータは、頭部角度を調整するために、インターフェース4601上で、頭部角度画像4607の周りに指又は入力デバイスをドラッグすることができる。
幾つかの実施の形態に従い、ひとたび患部の部位(例えば、目標部位、頭部の半球、目標動脈)及び頭部角度が設定されると、オペレータは手順を開始することができる。図46Eは、「処置開始」ボタン4617を示している。患部の半球、目標動脈及び頭部角度が設定される前に、ボタン4617を無効にして、色設定、文章又は他のインジケータを使用することにより無効になっていることを示すことができる。幾つかの実施の形態では、パラメータ入力が入力されるまで、ボタン4617は表示されない。例えば、上記の選択が行われ、その後緑色になる前に、ボタン4617を灰色に設定することができる。「処置開始」ボタン4617を押すことで、磁気ステータシステムを、粒子の注入を開始すべきポイントで、起動させることができる。
一の実施の形態では、注入の持続時間は約60分である。各種の実施の形態では、注入の持続時間は5分と120分の間(例えば、5分と20分の間、10分と30分の間、15分と45分の間、30分と60分の間、45分と90分の間、60分と120分の間、それらが重複する各範囲、又は引用範囲内のいずれの持続時間)である。幾つかの実施の形態では、システムは、カウントダウンタイマー4619が示すように、所定時間(例えば、90分)の経過後に起動状態の磁気ステータシステムと共に自動的に一時停止する。幾つかの実施の形態に従い、磁気ステータシステムは、注入が完了した後、特定に期間(例えば、約30分)の間、操作を継続する。図46Fに示すように、オペレータが「処置開始」ボタン4617を押圧すると、「マグネット停止」ボタン4621に変化させる又は入れ替えることができる。「マグネット停止」ボタン4621を押圧することで、磁気ステータシステムの起動を停止させることができ、カウントダウンタイマー4619を休止させることができ、そして、図46Gに示すように、「マグネット停止」ボタン4621を「再開」ボタン4623に変化させる又は入れ替えることができる。マグネットが停止すると、オペレータは患者の頭部角度を調整でき、そしてリセットボタン4625を押すことでシステムをリセットすることができる、及び/又は終了ボタン4627をタッチして、システムを終了することができる。一の実施の形態では、「再開」ボタン4623を押圧することで、「マグネット停止」ボタン4621に戻すことができる。
磁性ステータシステム及び磁性ローターを使用して凝血塊を処置する方法の実例として、磁性ステータシステムを、患部の半球の片側の患者頭部に隣接して位置決め、又は頭部頭頂の最上部に位置決めできる。磁性ナノ粒子及びtPAは、IV又はここに記載の他の方法(例えば、マイクロボア注入チューブを介して)を介して、同時に注入することができる。ここに記載の各制御システムのような制御システムを使用して、オペレータは、tPAを凝血塊に導く血流の流れを作る又は増強するように作用する磁性ロータ磁性ロータを形成するために、磁性ナノ粒子を磁気的に操作する目的で、オペレーは磁性ステータシステムを使用することができる。このようにして、磁性ロータは、tPAの拡散を増加させ、凝血塊の破壊を加速させることができる。オペレータは、所望の変化する磁界を生成する磁性ステータシステムを制御することができる。
磁性ステータシステムの回転方向を交互に替えることによって、オペレータは、血管内の磁性ロータの方向設定が可能となる。例えば、血管内の血液の速度は、速度が概ねゼロである血管壁からの距離につれて増加する。凝血塊を含む血管の分枝は、流体の流れ阻害し、結果的に流体速度は開口部でゼロまで落下することになる。そのような低速度領域内では、磁性ナノ粒子は、一般的に、磁性ステータシステムによって制御されるように結合する。結合したとき、磁性ステータシステムは、より大きな構造体(例えば、楕円形状を呈する磁性ロータ)に磁性ナノ粒子を凝集することができる。変化する磁界により、磁性ロータは回転できるようになり、結果的に前方への横転運動が生成されて、さらに磁性ローターは閉塞分枝内に又は閉塞分枝の近傍に移動することとなる。磁性ローターの結果として生じる回転運動は、新しい流れつくることができる、又は低速流を増強することができる。結果的に生成された流れは、他の方法では接近ができない又は接近が困難な領域で、治療薬を集中させることができる。磁性ステータシステムの回転を変化することで、追加の分枝に注入を行うことができる。例えば、異なる回転方向に設定することで、結果的に磁性ロータは異なる分枝に移動することになる。回転方向は、磁性ロータが多数の分枝に向くように、交互に変更することができる。幾つかの実施の形態に従い、磁性ロータは、目標部位を処置するために(例えば、傷害排除、浸食削除、崩壊、分解、除去又はその他の方法による処置)、治療目標部位に接触する必要はない。例えば、磁性ロータは、凝血塊を掻取る又は接触することなく、若しくは作用の主要原因箇所と接触せずに、血栓又は凝血塊の処置(例えば、除去、溶解又は浸食削除)を容易にすることができる。
起磁ステータシステム及び磁性ナノ粒子とその他の磁性ロッド(例えば、磁性ツール)を制御する各方法の各実施の形態を説明したことから、現在市場に出回っている各装置及び医薬組成物と比較した場合に、幾つかの利点を認めることができる。第1の利点は、患者への意図しない損傷を引き起こすかもしれないカテーテルとカニューレとは対照的に、磁性ロータをある距離から制御できる有利な手法で、磁界を含む磁場勾配を結合させる能力である。第2の利点は、制御が無線ローターに対して有効となるように、磁界を簡単かつ正確な方法で時間的に変化させることを可能とする、同じく磁界を場合により最適化することを可能とする、コンパクトな機構を構築する能力であって、通常の投与量で、生体内での精確な制御が困難な医薬組成物の観点から、有意な強化となる能力である。
加えて、一の実施の形態では、磁性ロータが、マグネタイト又は別の強磁性鉱物若しくは酸化鉄などの磁性ナノ粒子を備えるとき、磁性ナノ粒子の近傍にある化学剤又は医薬剤の混合を向上させる手法で、各ロータを操作することができる。時間変化する磁界と組み合わせた磁界勾配を利用することで、化学剤又は医薬剤との相互作用を増幅させるフローパターンを生成することができる。この機構は、血栓溶解剤としてtPAを用いる血管内システム内の凝血塊の破壊のための動物モデルにおいて、観察されている。医薬組成物はまた、同じ機能を実行するために、磁性ナノ粒子に付着させることができる。その結果、ナノ粒子が、システムの磁界勾配と時間変化する磁界を用いて操縦可能であるなら、また所望の目標部位に相互作用をすることができるなら、これらの薬剤をより少ない量で、患者の処置のために使用することができる。
各種の実施の形態では、薬物治療(例えば、IV-tPA)単独によって効果的に処置され得るより大きなサイズの凝血塊又は血栓は、ここに記載の各方法及び各システムで、より効率的に(例えば、より速く、及び/又は改善された溶解で)処置することができる。例えば、8mm、9mm、10mm又は10mmを超える(例えば、8mmから20mmの間)横断面の寸法を持つ凝血塊又は血栓を、効果的に処置できる(例えば、崩壊、溶解、除去)。各種の実施の形態では、ここに記載の各方法及び各システムを利用することで、8mmを超える長さの凝血塊又は血栓のような凝血塊であって、IV-tPA又は他の血栓溶解剤のみを用いて崩壊する(例えば、閉塞血管を再開通する)尤度がほぼゼロ又は極僅かである凝血塊を、処置することができる。
ここに記載の各処置は、tPA又は他の血栓溶解剤が単独で投与される場合、CMR又はNIHSS評点に基づく再開通の尤度が全くないとみなされる患者に対してでさえ、若しくは高いNIHSS評点(例えば、5点を超える)で示される重篤な脳卒中を患っている患者に対してでさえ、当該各処置は効力を持つことができる。幾つかの実施の形態によれば、磁性ナノ粒子は、tPAに誘導される出血を悪化させることはない。
一の実施の形態では、起磁システムは、目下のところ見出されていない手法で、ユーザが磁界の回転平面を制御することができる理解しやすいユーザインタフェースを利用させることができる。幾つかの実施の形態では、ユーザインタフェースは、タッチスクリーンディスプレイを備えている。更に、ここに記載するような画像診断技術又は他の診断技術は、オペレータが、動的制御及び操縦を可能にするような、磁性ナノ粒子の位置のリアルタイムのフィードバックを持つことができるように、これら技術をユーザインタフェースに組み込む又はユーザインタフェースと組み合わせて使用することができる。これは、例えば、より多くのナノ粒子又はより多くの化学剤を導入することによって、プロセスの有効性を高めるための各ステップを行うように、オペレータを支援することができる。患者及び/又は関心領域の画像は、磁性ナノ粒子の操縦経路を策定するために、操作者、医師、技術者等を支援するように、ユーザインタフェースに組み込むことができる。操縦経路のを策定は、凝血塊のような治療目標部位を識別すること、ナノ粒子の実際の注入部位を選択すること、及び目標とする対象に到達するために患者の脈管構造を通る経路を策定すること、を含むことができる。各種の実施の形態では、注入部位は、任意の動脈又は静脈内にある(例えば、手、腕又は脚の動脈若しくは静脈、首や肩の領域における動脈又は静脈)。注入はまた、皮下又は筋肉内に実施されてもよい。磁性ナノ粒子の実際の操縦中に、オペレータは、操縦計画に利用する元画像を使用することができる、又は、ユーザインタフェースは、オペレータに表示するために更新画像を受信することができる、このようにして、オペレータにリアルタイムの画像処理及びフィードバックを提供している。リアルタイムのユーザインタフェースは、実質的に連続的にリアルタイムで、オペレータがナノ粒子の注入の方向を制御できるように、単軸又は多軸ロボットアームと通信することができる。幾つかの実施の形態では、処置は、目標の対象(例えば、凝血塊)の実際の画像化又は可視化を必要とせずに行うことができる。
実例として、リアルタイムのユーザインタフェースは、撮像システムからの画像情報を組み込むことができる。撮像システムは、起磁システムに撮像データを提供するように構成された一つ又は複数の画像診断法を、組み込んだシステムとすることができる。撮像データは、X線データ、PETデータ、MRデータ、CTスキャンデータ、超音波画像データ、または他の画像診断法データから導き出することができる。幾つかの実施の形態では、磁性ナノ粒子は、磁性ナノ粒子の位置識別を容易にするために及び/又は再開通の形跡を提供するために、画像診断法と共同して、当該磁性ナノ粒子は造影剤として作用する。
一の実施の形態では、起磁システムは、撮像システムからの撮像データを受信する。幾つかの実施の形態では、撮像データは、使用時に、被験者の脈管構造、磁性ナノ粒子の相対的な位置、流体の流れ、流体の障害物、又はこれらの任意の組み合わせに関する情報を提供する、画像診断法に由来する情報を含む。例えば、撮像システムは、超音波ベースの画像処理に基づく画像データを生成することができる。撮像システムは、関心領域に目標設定した音波を送信し、画像を生成するエコー波を読み取ることができる。超音波ベースの撮像システムは、リアルタイムに撮像データを提供するように構成することができ、流体の流れ、組織、液体、磁性ナノ粒子等を識別するように構成することができる。幾つかの実施の形態では、超音波ベースの診断画像処理又は検出は、流体の流れに関する情報を提供するドップラー画像処理又は検出に基づいている。例えば、上述したように、診断超音波(例えば、ドップラー超音波)は、回転する磁気ナノ粒子ロッド又はロータ(例えば、3Hz)の回転周波数に同調させることができる。フィードバックは、磁性ナノ粒子の位置を確認するために又は再開通が発生したことを確認するために、使用することができる。超音波撮像システムは、1MHzと18MHzの周波数を使用して撮像することができる。超音波ベースの撮像システムによって生成された超音波画像は、2次元、3次元、又は4次元の画像とすることができる。
一の実施の形態では、起磁システムは、このような撮像システムからの撮像データを起磁システムの相対的な位置にマッピングされるように、起磁システムの参照フレームを撮像システムの参照フレームに登録する。幾つかの実施の形態では、参照フレームを登録することは、受信した画像の要素を識別することと、被検者内の位置にそれらの要素をマッピングすることと、を含む。幾つかの実施の形態では、各参照フレームを登録することは、起磁システムが、磁性システムの座標系に相対する受信画像をマッピングするように、被検者に相対する撮像装置の物理的な配向、走査又は画像の深さ、視野等の画像システム自体に関する情報を受信することを含む。例えば、超音波撮像システムは、目標領域に送信された各周波数関する情報、被検者に相対する撮像システムの配向関する情報、患者に相対する撮像システムの位置関する情報、又はこれらの任意の組み合わせ等に関する情報を起磁システムに送信することができる。別の実例として、CTシステムは、走査又は画像の深さ、視野、患者に相対するシステムの配向等に関する情報を含むことができる。
一の実施の形態では、起磁システムは、粒子を追跡するために、粒子を操縦するために、制御モードを切り替えるために(例えば、収集モード、渦モード、操縦モード等)、薬剤の拡散を監視するために、又はこれらの任意の組み合わせを行うために、撮像システムから受信した撮像データ内の磁性ナノ粒子を識別する。磁性ナノ粒子の識別することは、磁性ナノ粒子に関連した各信号についての撮像データを分析することを含むことができる。例えば、超音波画像処理では、磁性ナノ粒子は、それらの運動、組成、位置、挙動、配向、又はこれらの任意の組み合わせに起因して、画像内で特徴的な信号を有することができる。別の実例として、PETシステムでは、磁性ナノ粒子は、添加した造影剤、ナノ粒子の組成物質の密度、ナノ粒子の位置等に基づく画像内の特徴的及び/又は識別可能な信号を有することができる。
起磁システムは、各参照フレームの登録に基づいて、起磁システムに相対する磁性ナノ粒子の位置を決定することができる。起磁システムは、撮像システムからの撮像データに基づいて、磁性ナノ粒子の特定位置から被検体内の所望の位置への操縦経路を策定することができる。例えば、操縦経路は、磁性ナノ粒子の現在位置から閉塞部位のような目標構造体への被写体の脈管構造を通る許容可能な経路を含むことができる。幾つかの実施の形態では、操縦経路を策定することは、凝血塊のような治療目標部位を識別すること、ナノ粒子に対して実際の注入部位を選択すること、及び治療目標部位に到達するために患者の脈管構造を通る経路を策定することを含む。
起磁システムは、操縦経路に応じた磁性ナノ粒子を操縦するために、磁気システムによって生成される磁界を操作することができる。幾つかの実施の形態では、磁界の操作によって複数の磁性ナノ粒子ロッドに凝集するように、脈管構造内に磁性ナノ粒子を発現させ、磁性ナノ粒子の回転及び磁性勾配の回転に応じて、磁界から離れて前方へ横転移動を繰り返し行うことで、磁性ナノ粒子を脈管構造内の流体を通過して移動させる、また(b)磁性ナノ粒子の回転及び磁性勾配の回転に応じて、磁界に向かって流体を通過して、磁性ナノ粒子を流れ戻させている。特定の各実施の形態では、磁性ナノ粒子の循環運動又は振動運動は、血管内に発現する治療剤(例えば、血栓溶解剤)に対する脈管構造の血管内の目標構造体(例えば、流体障害物)の薬剤曝露の度合いを増加させ、更に治療剤(例えば、流体障害物上の血栓溶解剤)の作用を加速させている。幾つかの実施の形態では、前方横転運動は、磁性ナノ粒子列を生成し、翻ってこの磁性ナノ粒子列は、新たな流体の流れを形成する。新たな流体の流れは、治療剤及び/又は新鮮な肉体流体を引き込むことができる。
起磁システムは、非変化の磁界を使用して達成した手法よりも優れた方法で、微細な通路内のナノ粒子を移動させるように使用することができる。時間変化する磁界及び磁界勾配を併用することで、ポイント療法の指示され得る微細血管内へナノ粒子を移動させることができる。
幾つかの実施の形態では、攪拌作用又は混合作用を改善するための渦運動を生じさせるために、磁性ステータシステムは、時計回りの回転と反時計回りの回転との間で、マグネットの回転を交互に切り換える。加えて、時計回りの回転と反時計回りの回転との間の交互切り替えは、利点的には、血流の欠如又は減少に起因して閉塞した若しくは到達不能の追加分枝への注入又は再開通を容易にしている。例えば、時計回りの運動単独では、磁性ナノ粒子(例えば、磁性ローター)は、各特定分枝への前方横転運動で移動することを許容されない。定期的に、又は可視化若しくは事前取得した画像に基づいて制御された手法で、回転運動を交互に切り替えることは、結果的には、前方への横転運動を利用する反対方向への移動を引き起こすことになり、これにより時計方向又は反時計方向の回転単独では到達できない追加の各閉塞分枝に接近している。各種の実施の形態では、回転運動は、固定周波数(例えば、5秒毎、10秒毎、15秒毎、20秒毎、30秒毎、毎分、2分毎、5分毎、10分毎、または他の頻度)で周期的に交互に切り替わる。幾つかの実施の形態では、回転運動は、脈管構造の生体構造に依存して、磁性ナノ粒子を操縦可能とする又は磁性ナノ粒子を血管の一つの閉塞分枝から他の閉塞分枝へ脈管構造に沿って移動させ得るように、交互に切り替えられる。
本開示の各実施の形態は、いかなる意味においても開示又は特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、各方法及び各システムの例証的な実施の形態の以下の各実施例に照らして更に理解されてよい。更に、下記の実施例に記載の及び上記開示に記載の各方法及び各処置は、以下の実施例に記載し、上記の開示において提示の順序で実行される必要はない。
実施例1-ウサギへの磁性ナノ粒子の投与
麻酔したウサギは、血液凝固を生じさせる天然物、トロンビンを使用して、頸静脈を使用し、この位置で凝血塊を生成することによって血管内障害モデルを作成するために麻酔ウサギが使用された。ひとたび安定した凝血塊が確立されると、tPA(一般に血管内障害を持つ患者における凝血塊を溶解するために使用される酵素)及び磁性ナノ粒子は、凝血塊の位置に向けられ、そして凝血塊を溶解するための時間の長さが記録された(図38を参照)。各時間ポイントを変化させた後に、動物を安楽死させ、残留凝血塊を秤量しかつ分析し、更に血管自体に損傷がないことを確認するために組織を収集した。
血管内障害モデルにより、起磁ステータシステムが、tPA単独によるものよりも早く、静脈又は動脈を再開成することができるどうかについての判定、及び、tPAの投与量を静脈への損傷を引き起こすことなく低減することができるかどうかについての判定を可能としている。血管内障害の調査から集められたデータは、起磁ステータシステムが大幅にtPAの「凝血塊-粉砕(溶解)」の活量(活性化の度合い)を有意に促進していることを明確に示している。
詳細手続
概要:深部静脈血栓症は、一般的なもので、潜在的には致命的な条件にあり、現在の処置の選択肢は、良好処置というより、場合によっては、より悪影響をあたえる処置となり得る。一の実施の形態では、本研究の目的は、我々が、一般的に使用されるMRI造影剤を磁気的に操作することによって、現在の薬物治療の効率を高めることができるかどうかを決定するために、静脈血栓症の非生存麻酔ウサギモデルを使用することである(画像診断に於ける磁性ナノ粒子:D.Pouliquen及びその他、MRI造影剤として使用する酸化鉄ナノ粒子:薬物動態及び代謝;磁気共鳴画像診断、9巻、275-283頁、1991年、これにより当該著作物における開示を本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する)。
磁気学:上記に説明した鉄ナノ粒子は、現在ではヒトに使用して安全であると考えられている。
序論:深部静脈血栓症(DVT)は、無症候性とすることができるが、多くの場合、患部領域は、痛み、腫れ、赤色に成り、そして表在静脈において充血でする。左側の未処置の合併症は、患肢における組織壊死及び機能喪失を含むことができる。重篤な合併症とは、凝血塊が取り除かれて肺まで移動すると、結果的に肺塞栓症(PE)を引き起こし死に至ることである。DVTの現在の処置は、時として機械的な抽出(アンギオジェット、トレリス輸液システム:Angiojet,Trellis Infusion System)で増強される、ストレプトキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)等のような高投与量の溶菌酵素が含まれる。そのような投与量の溶菌酵素は、多くの患者(特に高齢者)では、出血のリスクが高く、共通して予後不良を招く(抗血栓薬の再考察:Leadley RJ Jr, Chi L, Rebello SS, Gagnon A.J、薬理学的・毒物学的方法;新規の抗血栓剤の発見と発展についての血栓症生体内モデルに関する寄稿、2000 ManApr;43(2):101-16;潜在的なtPAの合併症の再考察;急性心筋梗塞の処置における静脈内組織プラスミノーゲン活性化因子の使用に関連する出血性合併症;アメリカ医薬ジャーナル、85巻、第3号、ページ353-359、R. Califf, E. Topol, B. George, J. Boswick, C. Abbottsmith, K. Sigmon, R. Candela, R. Masek, D. Kereiakes, W. O■Neill,及びその他、これにより当該著作物における開示を本明細書の一部を
構成するものとしてその内容を援用する)。幾つかの実施の形態に従い、DVTモデルにより、大幅に出血の危険性を低減するために、有意に低い投与量のtPAを使用することができるように、起磁ステータシステムが血栓の部位でのtPAの活量を増強するか否かの決定を可能にしている。更に、現在の機械的な血栓溶解剤は、内皮を損傷することが知られている。各実験に続いて、血管分節は、内皮の完全性について組織学的に評価される。
手順の実施の形態:これは非生存動物試験法である。ニュージーランドの白ウサギ(1.5―2.5キロ)に対して、ケタミンを35mg/kg、キシラジンを5mg/kgのIMを使用して、剃毛し手術の準備をした頸部腹側に麻酔をかけた。イソフルランガスを用いたマスク誘導を、経口気管内挿管を可能にするよう麻酔面を深くするために、利用されてもよい。一の実施の形態では、ひとたび挿管されると、動物は手術室に移動され、処置の持続時間中にイソフルランガス麻酔(外科的な効果に対しては、1-5%)を投与した。動物が麻酔下にある間に、心拍数、呼吸数、体温及び呼気終末のCO2が監視される。動物の数を減少させ、研究間の変動性を減少させる目的で、左右対称に10―12cmの傍正中切開を気管に作り、鋭く且つ鈍い切開を、頸静脈を単離するために利用している。有意な合併症が発生しない場合には、動物の総数は、それに応じて減少させることができる。
単離された血管の遠位部位上に超音波流量プローブを載置し、基準となる血液の流量データを30分間収集する。静脈流の安定化に続いて、シルクの(又はその他の編組の、非被覆の)縫合糸(テーパー針で5又は6-0)を、閉塞される領域の遠位面における血管腔の中心を通って横方向に通過させて、緩い結び目で固定することができる。この縫合糸の機能は、凝血塊の定着装置として作用し、塞栓症を防止することにある。その後、結紮糸を、流れを閉塞している血管の近位及び遠位部分上に(流量プローブに関して近位)載置する。最終的に、血管の2cm又は3cmの分節を結紮糸により単離する。100―200Uのウシトロンビンを、約1ミリメートルの第1の結紮糸の約1mmの近傍の空隙に、静脈内(27―30g針)投与する。近位結紮糸を、トロンビン針を抜いた直後にに載置する。針の進入部位は、溶解処置中での出血を防止する薬剤Vetbond(Rマーク)の小滴を使用して閉成する。凝血塊は、結紮糸が除去されて、tPA又は磁性ナノ粒子とtPAの組み合わせ(上述)が、静脈の順行面で注入される(27-30gの針、入口穴を再びVetbond(Rマーク)で密封した)時間である、30分で成熟し安定が可能となる。動的磁場は該当位置に加えられ、そして、凝血塊の崩壊は、超音波流量計を介して最大3時間の間、継続的に監視される。流れの再確立に続いて、ペントバルビタール(150mpk)のIV過剰投与で麻酔状態にしたまま、動物を安楽死させる。実験での血管分節及び残留凝血塊は、更なる分析のために、その後収集されかつ秤量されてから固着される。血管内障害モデルで使用されるtPAの投与量は、約312.5Uから約5000Uの範囲である。
グループ:研究は2局面、すなわち、パイロット及び概念実証で達成される。両局面は、ここで概説する処置が含まれるが、パイロット局面は、他のまだ投薬を受けていない組織学的なコンパレータを残し、左頸静のみを利用する。
パイロットグループ
1.トロンビンのみ、tPAは無し。このグループでは、我々の血栓の基準質量を確立するであろうし、また血栓の安定性の評価が可能になる。
n=30。
2.tPAのみ、完全に有効な投与量(100%の再開通)を確立する投与範囲n=6×3投与=18
3.tPAのみ、準最適投与量を確立する(被験者の25―50%に対して100%有効、すべての被検者であるが流量の25-50%について再開通)投与範囲。tPAは悪い意味での変数であるため、検出困難な準最適投与量n=3×4投与=12
4.装置のみで確立する最適粒子濃度n=3×3濃度=9
概念グループの証明
注:各“n”数は、初期データの品質に依存し、さらに動物の要件を低減するように、パイロットデータと組み合わせてよい。
1.最適tPA。n=6
2.準最適tPA。n=6
3.装置のみ。n=6
4.装置+最適tPA。n=6
5.装置+準最適tPA。n=6
微細血管:頸静脈内血栓手順の完了に続いて、麻酔の外科手術面を維持し、手術を施行した。腸の一部を露出させ、乾燥を防ぐために塩水に浸す。腸間膜の大きな静脈の一つを縛り、PE10でカニューレを挿入する。鉄粒子及びフルオレセインの混合物(100μl中で12.5mg/ml)を注入し、ブラックライトの下で撮影した。これにより、フルオレセインが腸を取り囲む超微細静脈内に拡散するか否かの決定を可能にし、起磁ステータシステムが脈管構造へ磁性ナノ粒子を導いていることを説明できる。
安全性:起磁ステータシステムを使用することで、内膜が損傷しないか。そのことで溶血が発生しないか。幾つかの実施の形態では、血管内障害モデルにより、大静脈の再調査を介して決定することができる。頸静脈内の血栓症処置の完了に続いて、麻酔の外科的平面を維持し、開腹を実施した。大静脈の5-6cmの分節を単離し、すべての分枝を縛った。血管を縛り、PE10でカニューレを挿入する。鉄ナノ粒子(100pi中で12.5mg/ml)又は塩水(100pi)を血管内に注入し、磁気的に3時間のあいだ制御した。3時間経過後に、血液を、静脈穿刺を介して血管分節から除去され、溶血の評価のために送り出し、安楽死に続いて、血管分節を、内皮の組織学的評価のために外植された。上記3件の実験は、外部で粒子と上記3を用いて実施される。
動脈への近接
上述のDVTモデルを使用して、起磁ステータシステムは、このウサギモデルにおいて有意にtPAの有効性を増強していることが実証された(図37A及び37Bを参照)。組織が収集されて組織学的に評価された。組織学的に検査をすると、組織上には何らの損傷も観察されなかった。
実施例2-生体内で結紮したラビット大腿動脈内にIV投与のナノ粒子を収集できる
大腿動脈を用いた以外は、実施例1のように、ニュージーランド白ウサギを使用した。下腹部3-4cmの切開を通して、左大腿動脈を腹壁に腸骨分枝部から単離し、すべての分岐を縛った。動脈内の血液流と腹部大動脈を、トランソニックT206メータに結合したトランソニックドップラー流量プローブを用いて、連続的に監視した。
この実施例では、閉塞性血栓を疑似し、静的な血液プールを形成するために、右大腿動脈を単離して結紮させた動脈閉塞の急性麻酔化ウサギモデルを用いた。磁性ナノ粒子(200mg/kg)を静脈内に15分の間注入し、マグネットシステムで収集した。結紮部位で、ナノ粒子の有意量の存在が、各動物について確認された。
実施例3-IV投与のナノ粒子を流体の流れからの引出し作用で、拡散単独よりも早く薬を集中することができる
エバンスブルー色素(50mg)を15分の間単独で注入し、そして実施例2のウサギモデルを使用して、マグネットシステムの存在下で、磁性ナノ粒子と共注入した。閉塞動脈における染料の進捗が捕捉されて、画像分析により定量化された。それら結果から、拡散は単独で減少し、投与後1時間で、結紮した血管の35%の浸透が達成されたことが、証明された。完全拡散が、磁性ナノ粒子を用いて、14分、17分及び25分のそれぞれで、3匹のウサギにおいて達成されたが、染料単独では、完全拡散は不可能であった。図38のグラフに示すように、毎分4%の体積浸透率で、磁性ナノ粒子に対して、拡散速度は強い線形のままであった。図38は、磁性ナノ粒子を使用して、完全拡散に対するエバンスブルー色素単独の枯渇拡散のグラフを示す。
実施例4-凝血塊表面でのtPA及び磁性ナノ粒子の磁性混合でtPA単独より高速に血栓溶解がもたらされる
この実施例では、頚静脈にトロンビン誘導閉塞血栓を有する、急性麻酔を施したウサギモデルを用いた。実施例では、tPA単独及び磁性ナノ粒子(1.2mg)との同時投与のtPAとを局所注射し、そして血管を再開通する時間を、ドップラー流量計を用いて測定し、確認した。tPAの投与量は、公開情報源から取得され、標準投与量の2500Uに対して、312Uから5000Uの範囲であった。図39に示すように、tPA単独に対して、マグネットシステムで再開通する時間は3倍早いことが、結果から実証された。同様の溶解率は、0.25倍のtPA投与量についても証明された。このように、0.25倍のtPA投与量は、磁性粒子の存在下での溶解速度を達成するために充分とすることができる、これによりtPA単独の投与と比較して、tPA投与量を減少させている。幾つかの実施の形態において、磁性粒子は、所望の位置でのtPAを指向させる及び/又は濃縮する混合機構を介して、より少ないtPA濃度の効果を増幅させている。
同様に、磁性ナノ粒子の効果を測定するために、上記のように、ゼロ投与量から5000Uまで変化するtPAと共に、ナノ粒子を投与した。このモデルの要件は、tPA及び粒子の双方を、正確に投与量を制御するために、凝血塊の近傍のマイクロカテーテルを介して搬送することにあった。磁性ナノ粒子の操作における摩耗作用の欠如を確認することから、磁性ナノ粒子単独の存在下では溶解が起こらなかったことが、結果から実証された。
実施例5-血栓溶解剤単独に対して、磁性ナノ粒子を血栓溶解剤と静脈内で同時投与するときの、高速な血栓溶解結果
動脈内の凝血塊を形成するための一般的な技術が実施された。初めに、流量が基準流速(管腔領域で約90%の減少)の約25%まで減少するように、動脈壁からコラーゲン、組織要素及び血栓形成促進性物質を曝している内膜(動脈の2-3mmの分節)を破壊するために、保護止血剤で閉塞される領域を粉砕する、そして、去勢ノットで結ばれた5-0絹縫合糸を用いて粉砕した領域に対して、臨界的な狭窄を施すことで、凝血塊を腹壁(腸骨分岐から約3cm)近傍に形成した。3-5閉鎖/再開成サイクルに続いて、閉塞性凝血塊が、30―60分で形成された。凝血塊は、30分の間測定可能な血流の欠如による閉塞と考えられた。
凝血塊上にマグネットを載置して300rpmで回転させて、20mlの塩水中に、15分の間、マグネタイトナノ粒子(600mg)をストレプトキナーゼ(30000U)と共注入し(2000U/min、80ml/hr)、続いてストレプトキナーゼを単独で575U/min(7.3ml/hr)注入した。コントロール動物は、マグネットの載置をせずに又は磁性ナノ粒子なしで、同様のストレプトキナーゼ注入を受けた。
流量が閉塞前狭窄値(2―2.5ml/min)の50%に達したときに、血管の開成と考えられた。多くの場合、マグネットを作動してのナノ粒子処置の間、0.3-0.5までの小さな偏位が見受けられたが、ストレプトキナーゼ単独での処置中には見受けることはなかった。処置開始に続いて、29.5分、13.4分、32分及び28分で、4本の動脈が開成した。コントロールでは、それぞれ測定可能な流れの回復はないまま2時間及び1時間経過した。興味深いことに、1時間のストレプトキナーゼのコントロールスタディ後、ナノ粒子及びストレプトキナーゼを同時投与し、マグネットを作動させたところ、29分後に血管の開成が起きた。ストレプトキナーゼとナノ粒子の同時投与に対して、7.4分の標準偏差で、また3.3分の標準誤差で、凝血塊の溶解の平均時間は26.4分であった。ドップラー流量プローブから得た実施例データは、磁性ナノ粒子で加速した凝血塊溶解を示す図40に例示される。
実施例6-生体内凝血塊溶解超音波可視性の確認
ドップラー超音波画像診断の下で、ナノ粒子を可視化する能力は、脳卒中の治療のために、限定的な価値を提供する。しかしながら、深部静脈血栓症の施用のために、そのような機能が処置室での処置を可能とし、このようにX線設備一式に関連する費用の負担をなくしている。磁性ナノ粒子が血液中でフローパターンを形成するために、ナノ粒子自体が観察できない場合でさえ、ドップラー超音波画像診断を利用して、血流の可視化が可能となっている。調査から、ドップラー超音波画像診断下での、生体内の完全凝血塊溶解の高可視化が達成できたことが立証された。
ウサギを用いて、大静脈の正中切開(15cm)が、腸骨分枝への右腎静脈から単離され、全ての分枝が結紮された。フレームフレアチップを備えたPE10カテーテルを、左大腿静脈を介して導入し、二分枝を通過して前進させた。結紮糸(4-0絹糸)を、二分枝部で大静脈の周囲に載置し、結紮糸がフレアチップを捕捉するまで、カテーテルを後退させた。大静脈の近位面は、その後、約8―9cmの長さの血液が満たされた単離分節を形成するように、右腎静脈から直近の遠位部位に結紮された。1.5cm離して近位結紮部位を締め付けて(非外傷性血管締め付け)、また静脈穿刺(30g)を介して50U(30μΙ)のトロンビンのを注入することにより、血栓を分節の近位端で形成した。針をゆっくりと引き抜いた後に、穿刺部位を組織接着剤の液滴で密閉した。凝血塊を、締め付け除去に先立って、30分の間で熟成させた。12mgのナノ粒子及び5000UのtPAをその後、大腿カテーテルを介してを注入(200μΙ)し、マグネットを起動した。血栓溶解は、ドップラー超音波(SonoSite M-Turbo system)で記録した。完全な血栓溶解は、11分以内で発現し、ドップラー超音波画像診断で高可視化された。
実施例7-体外調査:2次元磁性ナノ粒子操作の確認
先の各実施例の拡張として、2次元のナノ粒子の方向を操作する能力を調べるために、二分枝のガラス製の模型(ファントム)を得た。親血管は、0.5mmの二分枝を有する1mm幅の血管である。ナノ粒子の操作は、図41に示される。(a)-(b)では、ナノ粒子の集合体は、二分枝の間で分割される。分節(c)では、ナノ粒子が引き込まれる。分節(d)では、ナノ粒子は、(e)で再び引き込まれる前に、下側分枝側下方に指向される。ナノ粒子は、(f)で、上向き分枝に沿って指向される。
調査は、溶解剤の投与量及び溶解率との関係を定量化するために行った。二つの溶解剤、すなわち、ストレプトキナーゼ及びtPAを、これらの調査において使用した。凝血塊の処方箋を以下にまとめた。
ストレプトキナーゼ凝血塊の処方箋
ストレプトキナーゼ崩壊試験に使用される凝血塊モデルは、ヒトトロンビンで凝血が開始される、ウシフィブリノーゲン/ヒトプラスミノーゲンの混成物であった。シグマ(F8630)からのウシフィブリノーゲンを、シグマ成分(B0252、B9876、S9625)で作製した197mMのホウ酸緩衝液内に溶解させた。この溶液の比率は、10mlの緩衝液に対して、0.9gのフィブリノーゲンであった。凍結乾燥されたプラスミノーゲン及びトロンビン粉末を、緩衝液を用いて溶解させた。EMDケミカルズ(528175-120単位)からのヒトプラスミノーゲンを、0.2単位/μΙの溶液を作成するために、600μΙの緩衝液に溶解させた。シグマ(T6884-1K単位)からのヒトトロンビンを、200単位/mlの溶液を作成するために、5mlの緩衝液に溶解させた。加えて、ゼラチン溶液を、シグマ(P5379)及び脱イオン水を用いて、100mMのリン酸カリウム溶液100mlを使用して作成した。この溶液に0.5gのブタゼラチン(シグマG2500)、0.1gの塩化ナトリウム(シグマS9625)、及び0.01gのチメロサール(シグマT5125)を添加した。凝血塊のサンプルを作成するために、608μΙのフィブリノーゲン溶液、252μΙのホウ酸緩衝液、81μΙのゼラチン溶液及び10.2μΙのプラスミノーゲン溶液を、混合バイアル中で化合させ、緩やかに15秒間旋回させた。各バッチには5μΙのトロンビン溶液が添加されるものであって、次いでこの混合液を、230μΙの4バッチに分離した。化合液を、再び緩やかに旋回させて、100μΙの溶液と混合させ、凝血を促進するために、4分間37℃で培養管内に傾瀉させて培養した。溶解溶液は、ホウ酸緩衝液中でレッド#40染料で増加されていたリン酸緩衝塩水での投与量を含んでいた(1mlのホウ酸緩衝液に溶解したCK生成物からの0.02gのレッド#40。)。プラスミノーゲンの標準投与量は、8μΙの溶液であり、磁性ナノ粒子の標準投与量は、6μΙのFe3O4(キャセイ顔料1106)であり、またストレプトキナーゼの標準投与量は、12μΙの溶液(10単位/μΙのリン酸緩衝塩水のシグマS8026)であった。分別投与量(投与率)の容積均衡は、ホウ酸緩衝液で成された。
実例的なtPA凝血塊の処方箋
tPAの溶解試験に使用される凝血塊モデルは、ウシトロンビンで凝固が開始されたヒトフィブリノーゲン及びヒトプラスミノーゲンから構成された。EMD化学剤(341576)からのヒトフィブリノーゲンを、シグマ成分(B0252、B9876、S9625)で作製した197mMのホウ酸緩衝液に溶解させた。この溶液の比率は、11.1mlの緩衝溶液に対する1gのフィブリノーゲンであった。凍結乾燥されたプラスミノーゲン及びトロンビン粉末を、緩衝液を用いて溶解した。EMD化学剤(528175-120単位)からのヒトプラスミノーゲンを、1単位/μΙの溶液を作製するために、120μΙの緩衝液に溶解させた。シグマ(T6200-1K単位)からのウシトロンビンを、10単位/μΙの溶液を作製するために、100μΙの緩衝液に溶解させた。ゼラチン溶液は、シグマ(P5379)及び脱イオン水を使用して、100mMのリン酸カリウム溶液の100mlを使用して作製された。この溶液に、0.5gのブタゼラチン(シグマG2500)と0.1グラムの塩化ナトリウム(シグマS9625)、及び0.01gのチメロサール(シグマT5125)を添加した。凝血塊に対して視覚的なコントラストを加えるために、タンタル粒子を含む溶液を作製した。この溶液は、1mlの脱イオン水中の0.0231gのTa粉末(AP材料010111)から構成された。凝血塊のサンプルを作成するために、フィ100μΙのブリノゲン溶液、125μΙのホウ酸緩衝液、32μΙのゼラチン溶液、25μΙのタンタルナノ粒子溶液及び3μΙのプラスミノーゲン溶液を、混合バイアル中で化合し、緩やかに15秒間旋回させた。混合液に、5μΙのトロンビン溶液を加え、化合液を混合するために、緩やかに旋回させた。100μΙの溶液を、2本の培養管の各々に傾瀉させ、凝血塊を促進するために4分間37℃で培養した。溶解溶液は、リン酸緩衝塩水での投与量を含んでいた。プラスミノーゲンの標準投与量は、3μΙの溶液であり、磁性ナノ粒子の標準投与量は、12μΙのFe3O4(キャセイ顔料1106)であり、またtPAの標準投与量は、32μΙの溶液(78.125単位/μΙのリン酸緩衝塩水のEMD化学剤612200)であった。分別投与量の容積均衡は、ホウ酸緩衝液で成された。
図42は、ストレプトキナーゼ及びtPAの双方を使用して、溶解速度を定量化するために使用される試験管モデルを示している。図において、METサンプルは黒色で示された磁性ナノ粒子と共に左側に在る。コントロールサンプルは、半月板を示す矢印と共に右側にある。両サンプルはストレプトキナーゼの全投与量を使用する。試験管は、測定値で幅約5mmの管であり、定規は、0.5mm刻みの目盛りに細分される。人工的な血栓を、溶解速度を意図的に遅くするため、密集するように作成された。これらの比較的遅いモデルでは、METとコントロールサンプルの双方に対しては、半月板の降下をより簡易に追跡し、結果としてより良好な血管壁への密着性がもたらされた。ストレプトキナーゼについては、ストレプトキナーゼを使用する典型的な総METの溶解時間、は約7時間未満であった。tPAについては、METの溶解率は、約4時間未満であった。溶解が1時間未満で発生した各モデルは、結果的に問題となる溶解速度を定量化した凝血塊の断片化をもたらした。図43は、ストレプトキナーゼ及びtPAを使用するMETにより可能となる、相対的な投与量反応の改善をそれぞれ示している。相対的溶解剤投与量=1のとき、ストレプトキナーゼについては約11.5倍早い、tPAについては約3倍の早い溶解をもたらした(コントロールに対して)。METで溶解剤が使用されないとき、溶解は発生しないという結果は、プロットでは獲得されない。これは、ストレプトキナーゼについては約1/8少未満、またtPAについては約1/32未満の、相対的溶解投与量での急速降下があることを示唆している。各線形一致は、ストレプトキナーゼについては約1/80の等価溶解率、またtPAについては約1/60の等価溶解率を示唆している。上記の作業は、約5Hzの周波数で約0.01Tの磁界をもちいて実施され、また約0.01-0.03Tの磁界と約1-10Hzの周波数を用いた試験的作業では、これら結果に対してほぼ影響はなかった。
実施例8-溶解率とナノ粒子投与量の比較
体外の試験管試験調査を、共通のtPAの投与量と共に、磁性ナノ粒子の投与量の効果を測定するために、実施した。実施例7に詳述した凝血塊の処方箋を、モデルで使用した。図44は、試験管の設定を捕えた画像である。図では、tPAの投与量は全てのサンプルで共通であり、各乗数は、磁性ナノ粒子の投与量を引用している。この調査では、磁性ナノ粒子の投与量は、0.28mgの開始(1X)投与量から、指数関数的に減少した。625UのtPAは、全てのサンプルに共通している。
tPAが存在しないときの、1Xナノ粒子投与量の効果は示されておらず、測定可能な溶解は見当たらない結果となった。このことから、幾つかの実施の形態に従い、ここに記載の技術は、本質的に薬力学的であること、またナノ粒子自体が血栓に対して測定可能な力を発生しないであろうことが、確認された。
図45は、1Xナノ粒子投与量が基準となる変化であって、相対的ナノ粒子投与量の変化に対する、相対的溶解率の変化を示す。明らかなように、大きいナノ粒子投与量は、中庸の利得をもたらしている(0.1X投与量は、1X投与量と比較して8%未満の溶解率の減少をもたらしている)。この関係を説明する幾つかの仮説がある。これは、ナノ粒子投与量の有効性は、凝血塊の曝露表面積に関係していると考えられる。ひとたび表面が飽和されると、ナノ粒子投与量の増加は、何の利点も与えない。別の仮説として、ひとたび巨視的な流れパターンを作成するために充分なナノ粒子が存在する場合には、より多くのナノ粒子は、強い流体の流れを形成するには有効でないかもしれない。
上記に記載の詳細な説明は、ここに記載の各システム及び各方法を実施する際に、当業者を補助するために提供される。しかしながら、各実施の形態は、各システム及び各方法の実施の形態の例示として意図されているため、本明細書及び特許請求項に記載の各システム及び各方法は、ここに記載の特定な各実施の形態によって、其の範囲を限定されるものではない。しかし、各実施の形態は、開示の特定の各形態又は各方法に限定されるのではなく、記載された各種の実施の形態及び添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に入る全ての修正、等価物及び代替物を包含することが理解されるべきである。
本明細書に開示した各範囲は、任意及び全ての重複、各準範囲、及びそれらの組み合わせを包含する。「まで」、「少なくとも」、「超過する」、「未満」、「間」等の言葉使いは、引用された数字を含む。各数字に先立つ「約」又は「概ね」などの用語は、引用数字を含む。例えば、「約3mm」は「3mm」を含む。本開示は用語「ナノ粒子」を使用しているが、この用語は、多数の実施の形態において用語「粒子」と代替可能である。言い換えれば、ナノ粒子に関連する記載と開示が、ナノ粒子(約1.1μmと約2μmの間、約2μmと約5μmの間、約5μmと約10μmの間、約10μmと約100μmの間、約100μmと約1000μmの間、及びそれ以上)より大きい粒子に適用可能であることを意図している。多数の粒子(例えば、ナノ粒子)から形成され得るロッドは、粒子単体の寸法より2-50000倍大きい、少なくとも一つの寸法(例えば、長さ、高さ、厚み)を有することができる。