以下、添付図面を参照して、本願の開示する気体噴射装置および気体噴射システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
また、以下では、実施形態に係る気体噴射システムが、車両に搭載され、車両の周辺を撮像するカメラのレンズに圧縮空気を噴射してレンズに付着した雨滴や雪片、埃、泥などの付着物を除去するシステムである場合を例に挙げて説明する。
なお、実施形態に係る気体噴射システムの搭載対象は、車両に限定されるものではない。また、実施形態に係る気体噴射システムが車両に搭載される場合、気体の噴射対象は、車載カメラのレンズに限定されるものではなく、例えば、フロントガラス、リアガラス、ヘッドライト、およびサイドミラーなどであってもよい。また、気体の噴射対象は、車両周辺の物標を検出するレーダ装置など種々の光学センサであってもよい。
また、以下では、本実施形態に係る気体噴射システム1の構成の概要について図1A~図1Cを用いて説明した後に、本実施形態に係る気体噴射システム1のより具体的な構成について、図2A以降を用いて説明する。
図1Aは、本実施形態に係る気体噴射システム1の斜視透視図である。また、図1Bは、空気圧縮部10の構成を示す斜視透視図である。また、図1Cは、空気圧縮部10の動作説明図である。
図1Aに示すように、気体噴射システム1は、気体噴射装置1aと、ホース1bと、噴射ノズル1cと、カメラ50とを備える。気体噴射装置1aは、空気圧縮部10を備え、空気圧縮部10によって圧縮した圧縮空気を送出する装置である。なお、図1Aには、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸による直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、以下の説明に用いる他の図面においても示す場合がある。
ホース1bは、一端が気体噴射装置1aにおける圧縮空気の送出部1dに連結され、他端が噴射ノズル1cに連結される。噴射ノズル1cは、気体の噴射口が噴射対象であるカメラ50のレンズ50aへ向けてカメラ50に取り付けられる。カメラ50は、車両の周辺を撮像する。
噴射ノズル1cは、ホース1bを介して気体噴射装置1aから送出される圧縮空気を噴射口から噴射することで、カメラ50のレンズ50aに付着した雨滴等の付着物を除去する。これにより、気体噴射システム1は、運転者の視界補助や接近物のセンシングなどの精度を確保することができる。
かかる噴射ノズル1cは、屋外に設置された場合、空気の噴射口周辺に雨滴が付着すると、毛細管現象によって噴射口から内部へ水を吸い上げることがある。気体噴射装置1aは、噴射ノズル1cの内部に水が吸い上げられた状態でカメラ50のレンズ50aへ空気を噴射すると、レンズ50aに水滴を付着させてしまう。
このため、噴射ノズル1cは、噴射口の周辺および空気の流路表面を水との接触角が90度以上となるような撥水加工が施される。これにより、噴射ノズル1cは、噴射口周辺に水滴が付着しても、噴射口から内部へ水が浸入することを防止することができる。
空気圧縮部10は、回転式の空気圧縮機構である。具体的には、空気圧縮部10は、図1Bに示すように、シリンダ11と、回転体12とを備える。シリンダ11は、シリンダ壁11aと、送出口11bと、流路11cと、吸気口11dとを備える。なお、車両に搭載される場合、小型、軽量かつ安価であることが求められることから、シリンダ11および回転体12は、樹脂等で形成されることが好ましい。
シリンダ11は、例えば円筒状に形成され、内部にシリンダ室CCが形成されている。シリンダ壁11aは、例えば平板状に形成され、回転軸axRを中心に点対称となる位置で、円筒状のシリンダ室CCをほぼ径方向に沿って仕切るように設けられる。したがって、シリンダ室CCは、シリンダ壁11aによって2つに区画されることとなる。
送出口11bは、排気口の一例であって、2つのシリンダ壁11a付近のシリンダ室CCの天井部に、2つに区画されたシリンダ室CCのそれぞれとシリンダ11の外部とが連通するように、回転軸axRを中心に点対称となる位置に開口されている。後述する回転体12の回転に基づいて生成された圧縮空気は、かかる送出口11bを介してシリンダ室CCの各区画から排気される。
流路11cは、送出口11bのそれぞれに接続され、回転軸axRを中心に点対称となるような形状に形成されている。また、流路11cは、回転軸axRの軸線上において送出部1dに接続されている。送出口11bを介してシリンダ室CCから送出される圧縮空気は、かかる流路11cを通過して送出部1dへ誘導され(図中の矢印101参照)、ホース1bを通って噴射ノズル1cの噴射口からカメラ50のレンズ50aへ噴射されることとなる。
吸気口11dは、2つの送出口11bのほぼ下方のシリンダ11の外壁に、シリンダ11の外部とシリンダ室CCとが連通するように開口されている。後述する回転体12の回転に基づいて吸気される空気は、かかる吸気口11dを介してシリンダ室CCへ吸気される。
回転体12は、羽根部12aと、回転ベース12bと、シャフト部12cとを備える。回転ベース12bは、円形の平板状に形成され、回転軸axRまわりに回転可能に設けられている(図中の矢印102参照)。
具体的には、回転ベース12bは、シリンダ11側とは反対側の面に、従動ギア12dを有しており、かかる従動ギア12dが、例えば、モータに連結された駆動側ギアに噛み合うことによってモータの駆動力を受け、回転軸axRまわりに所定方向に回転する。
また、回転ベース12bは、モータの駆動力を受けない自由状態においては、モータによる回転の所定方向とは逆方向にばね部材によって付勢されている。羽根部12aは、平板状に形成され、従動ギア12dが設けられている面とは反対側の面で、回転ベース12bを径方向に沿って仕切るように立設される。また、羽根部12aは、その壁面に、吸気弁14を有する。
シャフト部12cは、回転軸axRまわりの回転におけるシャフト部分であり、2つの羽根部12aの間に設けられ、2つの羽根部12aを連接する。このように構成された回転体12の回転ベース12bが回転可能にシリンダ11に嵌合されて、シリンダ室CC内で回転することによって、吸気および排気を含む一連のサイクルが実行され、圧縮空気が生成される。
具体的には、図1Cに示すように、空気圧縮部10では、まず「吸気前」の状態においては、回転体12は前述のモータによって駆動されない自由状態であり、羽根部12aがばね部材の「ばね力」によって付勢されて、シリンダ壁11aに押し付けられた状態となっている。
かかる状態から「モータによる駆動力」によって羽根部12aがシリンダ壁11aから離間する方向へ回転すると、羽根部12aとシリンダ壁11aとの間の空間SPが膨張して空間SPには負圧が生じ、空気が「吸気」される。
そして、羽根部12aが所定位置まで回転すると、モータの駆動力は解除される。すると、モータの駆動力から解放された羽根部12aは、ばね部材の「ばね力」によってシリンダ壁11aと当接した状態へ勢いよく戻る。このとき、空間SPが圧縮され、すなわち空間SPに「吸気」されていた空気から圧縮空気が生成され、送出口11bから高圧状態で「排気」される。
以下、かかる回転機構を含む、本実施形態に係る気体噴射装置1aのさらなる具体的な構成について、図2A以降を用いて順次説明する。図2Aは、気体噴射装置1aの内部構造を示す斜視図である。
まず、既に述べたが、図2Aに示すように、気体噴射装置1aは、空気圧縮部10を備え、空気圧縮部10は、シリンダ11と、回転体12とを備える。回転体12は、従動ギア12dを有する。従動ギア12dは、回転軸axRに同軸配置される。このように空気圧縮部10は、回転式であるので、ピストン式に比べてスペースをとらないコンパクトな構成とすることができる。
また、回転体12は、前述の「ばね部材」に対応する付勢ばね12eを有する。付勢ばね12eは、回転体12がモータによって回転する所定方向とは逆方向に回転体12を付勢するように設けられている。また、空気圧縮部10は、駆動部13をさらに備える。駆動部13は、モータ13aと、第1ギア13bと、第2ギア13cと、第3ギア13dと、前段ギア13eとを有する。
モータ13aは、回転駆動源の一例であって、例えば電動モータである。なお、油圧モータなどであってもよい。本実施形態では、モータ13aは、基本的に同一方向へ回転する。また、モータ13aの出力軸には、例えば図示略のウォームギアが形成され、かかるウォームギアを介してモータ13aの出力軸は第1ギア13bに連結される。
また、第1ギア13bは、第2ギア13cに連結される。第2ギア13cは、第3ギア13dに連結される。第3ギア13dには、前段ギア13eが同軸配置され、回転体12の従動ギア12dと噛み合うように設けられる。
モータ13aからの回転駆動力は、このように連結された第1ギア13b、第2ギア13c、第3ギア13dを介して前段ギア13eまで伝達される。なお、モータ13aから前段ギア13eまでのギアの個数や噛み合わせ方は図示した場合に限られるものではない。
次に、図2Bは、従動ギア12dおよび前段ギア13eの構成を示す平面模式図である。なお、図2Bでは、従動ギア12dおよび前段ギア13eのみをZ軸の正方向から視た場合を模式的に示している。
図2Bに示すように、従動ギア12dは、連続した歯の一部が切り欠かれた欠歯ギアとして形成されており、少なくとも、第1歯12daと、第2歯12dbと、最終歯12dcと、欠歯部12ddとを有する。
第1歯12daは、吸排気の1サイクルにおいて前段ギア13eと最初に噛み合う歯であり、最終歯12dcは最後に噛み合う歯である。なお、以下では、従動ギア12dは、Z軸の正方向から視た場合に、前段ギア13eから伝達されるモータ13aの回転駆動力によって回転軸axRまわりに左回り(反時計回り)するものとする。したがって、これに伴い、付勢ばね12eは、従動ギア12dを右回り(時計回り)に付勢しているものとする。
前段ギア13eもまた、連続した歯の一部が切り欠かれた欠歯ギアとして形成されており、少なくとも、第1歯13eaと、最終歯13ebと、欠歯部13ecとを有する。
第1歯13eaは、吸排気の1サイクルにおいて従動ギア12dと最初に噛み合う歯であり、最終歯13ebは最後に噛み合う歯である。なお、以下では、前段ギア13eは、Z軸の正方向から視た場合に、モータ13aの回転駆動力によって回転軸axRまわりに右回り(時計回り)するものとする。
次に、かかる従動ギア12dおよび前段ギア13eの噛み合いによる空気圧縮部10のより具体的な動作について図3を用いて説明する。図3は、空気圧縮部10のより具体的な動作説明図である。
なお、従動ギア12dおよび前段ギア13eは、前述のように欠歯ギアとして形成されているので、欠歯により互いに噛み合わない状態が存在する構成となっている。本実施形態は、かかる互いに噛み合わない状態をあえて利用するものである。
図3の(a)に示すように、モータ13aが駆動され、前段ギア13eが図中の矢印301に示すように回転するものの、まだ従動ギア12dと噛み合っていない状態であるものとする。かかる状態は、図中に示すように、空気圧縮部10の「吸気前」の状態に対応する。
かかる「吸気前」の状態では、空気圧縮部10の羽根部12aは、付勢ばね12eのばね力によってシリンダ壁11aへ押し付けられた状態となっている。
そして、かかる状態から、図3の(b)に示すように、前段ギア13eがさらに同一方向へ回転すると(図中の矢印302参照)、従動ギア12dと前段ギア13eとが噛み合い始める(図中のM1部参照)。かかる状態は、空気圧縮部10において吸気が開始された状態に対応する。
そして、図3の(c)に示すように、前段ギア13eの同一方向へのさらなる回転は(図中の矢印303参照)、噛み合った従動ギア12dを付勢ばね12eの付勢力に抗して左回りに回転させる(図中の矢印304参照)。かかる状態は、空気圧縮部10において吸気中の状態に対応する。
すなわち、従動ギア12dは、前段ギア13eと噛み合った場合に、前段ギア13eに連結されたモータ13aの駆動によって所定方向(左回り)へ回転する力が、付勢ばね12eによる付勢で逆方向(右回り)へ回転する力よりも強いため、左回りに回転する。
言い換えれば、付勢ばね12eによる付勢で逆方向(右回り)へ従動ギア12dを回転させる力は、モータ13aの駆動によって従動ギア12dが所定方向(左回り)へ回転する力よりも弱い。
一方で、従動ギア12dと前段ギア13eとが噛み合っていない場合、つまり、前述の欠歯により従動ギア12dと前段ギア13eとの噛み合いが外れ、従動ギア12dが自由状態となる場合、従動ギア12dには、付勢ばね12eによる付勢力のみが作用するため、従動ギア12dは逆方向(右回り)へ回転することとなる。
すなわち、付勢ばね12eは、付勢によって従動ギア12dを逆方向(右回り)へ回転させる力が、モータ13aにより従動ギア12dを所定方向(左回り)へ回転させる力よりも弱い付勢力を有する。
具体的には、図3の(d)に示すように、前段ギア13eおよび従動ギア12dの図3の(c)からのさらなる回転により(図中の矢印305,306参照)、従動ギア12dと前段ギア13eとの噛み合いが外れる瞬間が到来する(図中のM2部参照)。かかる瞬間の状態は、図中に示すように、空気圧縮部10の「排気開始」の状態に対応する。
そして、図3の(e)に示すように、前段ギア13eとの噛み合いから外れた従動ギア12dは、付勢ばね12eのばね力によって右回りに勢いよく戻り(図中の矢印307参照)、空間SPに吸気された空気を圧縮しつつ排気することとなる。また、前段ギア13eは、同一方向へ回転し(図中の矢印308参照)、次なる吸排気の1サイクルを実行するに際しては図3の(a)からの工程が繰り返される。
このように、本実施形態では、前段ギア13eおよび従動ギア12dが噛み合わないタイミングを欠歯部分により発生させ、かかるタイミングにおいて従動ギア12dを付勢ばね12eにより逆方向へ戻す構成としたので、モータ13aの回転を同一方向のみで済ますことができる。したがって、シンプルな構成で圧縮空気を生成することができる。
また、本実施形態では、空気圧縮部10を、回転式の空気圧縮機構として構成することとしたので、例えばシリンダ内をピストンが往復するピストン構造の空気圧縮機構などに比してスペースをとらないコンパクトな構成とすることができる。すなわち、本実施形態によれば、シンプルかつコンパクトな構成で圧縮空気を生成することができる。
かかる空気圧縮部10は、部品の形状にバラツキがあると、例えば、シリンダ11と回転体12との間に僅かな隙間が生じ、かかる隙間から気体の圧縮動作中に気体漏れが発生して圧縮する気体の気圧を高めることが困難になる。そして、気体噴射装置1aは、空気圧縮部10による圧縮空気の気圧が低下すると、気体の噴射対象に付着した水滴などの付着物の除去能力が劣化する。
そこで、空気圧縮部10は、シリンダ11の内面に、回転体12との隙間を埋めるスペーサを備える。これにより、気体噴射装置1aは、気体の圧縮動作中に気体漏れの発生を抑制することで圧縮する気体の気圧を高めることができる。
ここで、図4A~図4Cを参照し、シリンダ11の内面に設けられるスペーサ20について具体的に説明する。図4Aおよび図4Bは、実施形態に係るシリンダ11に設けられるスペーサ20配設位置を示す説明図である。図4Cは、実施形態に係るシリンダ11に設けられるスペーサ20の断面を示す説明図である。
図4Aには、羽根部12aの厚さが2分の1になるように空気圧縮部10を切断した場合の模式的な断面を示しており、図4Aの左図には、スペーサ20が設けられていない場合を示し、図4Aの右図には、スペーサ20が設けられている場合を示している。
なお、ここでは、従動ギア12dおよび付勢ばね12eの図示を省略している。また、図4Bには、図4Aの右図に示すA-A’線による空気圧縮部10の模式的な断面を示している。
図4Aおよび図4Bに示すように、シリンダ11は、一方の端面(下面)が開放され他方の端面(上面)が空気の送出口11bを除き閉塞された略円筒状に形成されている。また、回転体12は、シリンダ11の開放された一方の端面に回転自在に嵌合される回転ベース12bと、回転ベース12bからシリンダ11の内部へ向けて立設され、シリンダ11の内部を径方向に分割可能な平板状の羽根部12aとを備える。
かかる空気圧縮部10では、図4Aの左図に示すように、羽根部12aの縁部(上端部および側端部)および回転ベース12bの周面と、シリンダ11の内周面との間に隙間が生じる場合がある。なお、図4Aの左図では、隙間の生じる箇所が分かりやすいように、実際よりも大きな隙間を図示している。かかる隙間は、前述したように、空気圧縮部10による気体の圧縮動作中に気体漏れの原因となる。
そこで、空気圧縮部10は、図4Aの右図に示すように、シリンダ11の内面のうち回転する羽根部12aの縁部および回転ベース12bの周面に面する領域に隙間を埋めるスペーサ20が設けられる。これにより、空気圧縮部10は、気体の圧縮動作中に気体漏れの発生を抑制することができるので、圧縮する気体の気圧を高めることができる。
また、空気圧縮部10は、図4Bに示すように、シリンダ11の内周面全体ではなく、気体の圧縮動作中に羽根部12aの縁部がなぞるように通過する領域にスペーサ20が設けられる。これにより、空気圧縮部10は、シリンダ11の内周面全体にスペーサ20が設けられる場合に比べて、スペーサ20の材料費を削減することができるため、製造コストを低減することができる。
かかるスペーサ20は、図4Cに示すように、シリンダ11側から順にクッション層20a、表面層20b、および潤滑剤20cが積層された3層構造である。クッション層20aは、例えば、スポンジ、ゴム、シリコン等の弾力性を有する層である。
表面層20bは、クッション層20aを被覆しクッション層20aよりも摩擦係数が小さな、例えば、可撓性を有する樹脂製のフィルムなどの層である。潤滑剤20cは、表面層20bの表面に塗布されるグリス等の層である。
スペーサ20は、これらクッション層20a、表面層20b、および潤滑剤20cの厚さの総和が、予め想定された隙間の幅よりも若干厚く形成され、回転体12との接触部分に圧接する。このように、スペーサ20は、回転体12における接触部分に圧接することで、シリンダ11と回転体12との隙間をより確実に埋めることができる。
しかも、スペーサ20は、弾力性を有するクッション層20aを備え、表面層20bの表面に潤滑剤20cが塗布されるので、回転体12と接触する部分のクッション層20aが収縮し、潤滑剤20cが回転体12の回転の滑りを良くする。
これにより、空気圧縮部10は、スペーサ20によってシリンダ11と回転体12との隙間を埋めつつ、スペーサ20が回転体12の回転の妨げになることを防止し、回転体12の十分な回転速度を確保することで、圧縮空気の気圧を高めることができる。
また、空気圧縮部10では、部品の形状にバラツキがあると、例えば、シリンダ11内部のシリンダ壁11aと回転体12との間に僅かな隙間が生じ、かかる隙間から気体の圧縮動作中に気体漏れが発生して圧縮する気体の気圧を高めることが困難になる。
そこで、空気圧縮部10は、回転体12側にもシリンダ壁11aとの隙間を埋めるスペーサを備える。これにより、気体噴射装置1aは、気体の圧縮動作中に気体漏れの発生を抑制することで圧縮する気体の気圧を高めることができる。
ここで、図5Aおよび図5Bを参照し、回転体12側に設けられるスペーサ21について具体的に説明する。図5Aおよび図5Bは、実施形態に係る回転体12に設けられるスペーサ21配設位置を示す説明図である。
図5Aには、シリンダ壁11aの厚さが2分の1になるように空気圧縮部10を切断した場合の模式的な断面を示しており、図5Aの左図には、スペーサ21が設けられていない場合を示し、図5Aの右図には、スペーサ21が設けられている場合を示している。
なお、ここでは、従動ギア12dおよび付勢ばね12eの図示を省略している。また、図5Bには、図5Aの右図に示すB-B’線による空気圧縮部10の模式的な断面を示している。
図5Aおよび図5Bに示すように、回転体12は、回転ベース12bの中心からシリンダ11の内部へ向けて立設される中空状のシャフト部12cを備える。また、略円筒状のシリンダ11は、内部を径方向に分割すると共に、シャフト部12cが挿入される挿入部が設けられたシリンダ壁11aを備える。
かかる空気圧縮部10では、図5Aの左図に示すように、シャフト部12cの先端とシリンダ11との隙間、および回転ベース12bの周面とシリンダ11との隙間は前述したシリンダ11側に設けられるスペーサ20によって埋められる。
しかしながら、空気圧縮部10では、回転ベース12bにおけるシリンダ11の内部側の表面およびシャフト部12cの周面と、シリンダ壁11aの縁部との間に隙間が生じる場合がある。なお、図5Aの左図では、隙間の生じる箇所が分かりやすいように、実際よりも大きな隙間を図示している。かかる隙間は、前述したように、空気圧縮部10による気体の圧縮動作中に気体漏れの原因となる。
そこで、空気圧縮部10は、図5Aの右図に示すように、回転ベース12bにおけるシリンダ11の内部側の表面およびシャフト部12cの周面に、シリンダ壁11aの縁部との隙間を埋めるスペーサ21が設けられる。これにより、空気圧縮部10は、気体の圧縮動作中に気体漏れの発生を抑制することができるので、圧縮する気体の気圧を高めることができる。
また、空気圧縮部10は、図5Bに示すように、回転ベース12bにおけるシリンダ11の内部側の表面およびシャフト部12cの周面全体ではなく、気体の圧縮動作中にシリンダ壁11aの縁部がなぞるように通過する領域にスペーサ21が設けられる。
これにより、空気圧縮部10は、回転ベース12bにおけるシリンダ11の内部側の表面およびシャフト部12cの周面全体にスペーサ21が設けられる場合に比べて、スペーサ21の材料費を削減することができるため、製造コストを低減することができる。
スペーサ21は、図4Cに示すシリンダ11側に設けられるスペーサ20と同じく、回転体12側から順にクッション層20a、表面層20b、および潤滑剤20cが積層された3層構造である。
そして、スペーサ21は、シリンダ11との接触部分に圧接する。これにより、スペーサ21は、シリンダ11と回転体12との隙間を埋めつつ、スペーサ21が回転体12の回転の妨げになることを防止し、回転体12の十分な回転速度を確保することで、圧縮空気の気圧を高めることができる。
また、空気圧縮部10は、前述したスペーサ20,21に加え、シリンダ11および回転体12の少なくともいずれかに、シリンダ11および回転体12が互いに接触する部位の方向に対し、同時に2方向へ向けて付勢されるシール部材を備えることもできる。
次に、図6および図7を参照し、かかるシール部材22,23について説明する。図6は、実施形態に係る回転体12側に設けられるシール部材22の説明図である。図7は、実施形態に係るシリンダ11側に設けられるシール部材23の説明図である。
図6には、回転体12の羽根部12aにシール部材22が設けられた空気圧縮部10を羽根部12aの厚さが2分の1になるように切断した場合の模式的な断面を示している。また、図7には、シリンダ11のシリンダ壁11aにシール部材23が空気圧縮部10をシリンダ壁11aの厚さが2分の1になるように切断した場合の模式的な断面を示している。
図6に示すように、回転体12は、シール部材22が設けられる場合、羽根部12aに、羽根部12aの面方向と平行なスリットが形成される。かかるスリットは、図6に示す羽根部12aの上端および側端から羽根部12aの内部における所定の中途位置まで形成される。
これにより、羽根部12aには、図6に示すような断面視略L字状のスリットが形成されるとともに、スリットの内部に断面視矩形状の係止部12fが形成される。そして、シール部材22は、かかるスリットに挿入される。
シール部材22は、弾力性を有し厚さがスリットの幅よりも若干薄い平板状をした略L字形状の部材である。かかるシール部材22には、L字の内側の角部からV字状に延伸する2本の細長な付勢部22aが一体形成される。
かかる付勢部22aは、シール部材22が羽根部12aのスリットへ挿入された場合に、先端部分がスリット内の係止部12fにそれぞれ当接する。これにより、シール部材22は、図6に黒塗矢印で示すように、シリンダ11の内部でシリンダ11および回転体12が互いに接触する部位の方向に対し、同時に2方向へ向けて付勢される。
具体的には、シール部材22は、羽根部12aの外部からスリットの内部へ向かう方向へ押圧力が加わると、付勢部22aが樹脂ばねとして機能し、付勢部22aの弾性力によってスリットの内部から羽根部12aの外部へ向かう方向へ反発力が作用する。
その結果、空気圧縮部10では、スペーサ20(図4A右図参照)およびシール部材22が双方に対して互いに圧接されるので、シリンダ11と羽根部12aとの間の隙間をより確実に埋めることにより、圧縮空気の気圧をより一層高めることが可能となる。
また、図7に示すように、シリンダ11は、シール部材23が設けられる場合、シリンダ壁11aに、シリンダ壁11aの面方向と平行なスリットが形成される。かかるスリットは、図7に示すシリンダ壁11aの下端および側端からシリンダ壁11aの内部における所定の中途位置まで形成される。
これにより、シリンダ壁11aには、断面視略L字状のスリットが形成されるとともに、スリットの内部に断面視矩形状の係止部11eが形成される。そして、シール部材23は、かかるスリットに挿入される。
シール部材23は、弾力性を有し厚さがスリットの幅よりも若干薄い平板状をした略L字形状の部材である。かかるシール部材23には、L字の内側の角部からV字状に延伸する2本の細長な付勢部23aが一体形成される。
かかる付勢部23aは、シール部材23がシリンダ壁11aのスリットへ挿入された場合に、先端部分がスリット内の係止部11eにそれぞれ当接する。これにより、シール部材23は、図7に黒塗矢印で示すように、シリンダ11の内部でシリンダ11および回転体12が互いに接触する部位の方向に対し、同時に2方向へ向けて付勢される。
具体的には、シール部材23は、シリンダ壁11aの外部からスリットの内部へ向かう方向へ押圧力が加わると、付勢部23aが樹脂ばねとして機能し、付勢部23aの弾性力によってスリットの内部からシリンダ壁11aの外部へ向かう方向へ反発力が作用する。
その結果、空気圧縮部10では、スペーサ21(図5A右図参照)およびシール部材23が双方に対して互いに圧接されるので、シリンダ壁11aと回転体12との間の隙間をより確実に埋めることにより、圧縮空気の気圧をより一層高めることが可能となる。
上述したように、実施形態に係る気体噴射装置1aは、シリンダ11の内面に回転体12との隙間を埋めるスペーサ20を備える。これにより、気体噴射装置1aは、気体の圧縮動作中に気体漏れの発生を抑制することで圧縮する気体の気圧を高めることができる。
なお、上述した実施形態では、スペーサ20,21がクッション層20a、表面層20b、および潤滑剤20cが積層された3層構造である場合を例に挙げて説明したが、スペーサ20,21は、クッション層20aおよび表面層20bの2層構造であってもよい。
かかる構成であっても、スペーサ20,21は、表面層20bの摩擦係数がクッション層20aの摩擦係数よりも小さいので、シリンダ11と回転体12との隙間を埋めつつ、回転体12の回転の妨げになることを防止することができる。また、気体噴射装置1aは、潤滑剤20cを省くことで製造コストの低減が可能となる。
また、上述した実施形態では、スペーサ20,21の表面層20bが可撓性を有する樹脂製のフィルムなどの層である場合について説明したが、表面層20bは、上述した表面層20bと同一の形状に成形された樹脂板であってもよい。これにより、表面層20bの強度が増すため、表面層20bの破損を防止することができる。
また、表面層20bは、シリンダ11内の気密性を十分に確保できるのであれば、表面に微細な凹凸やスリットが形成されてもよい。これにより、表面層20bは、圧接対象との摩擦力を低減することにより回転体12の回転速度を高めることによって、圧縮空気の気圧をさらに高めることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。