以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
<実施形態1>
図1は、触覚提示装置の外観の例を示す模式的斜視図である。触覚提示装置は、スマートフォン又はタブレット型コンピュータ等のコンピュータである。触覚提示装置は、使用者が指で接触するための面状の接触面11を有している。接触面11には画像が表示され、使用者が指で接触面11に接触した場合に触覚が提示され、更に、接触面11上の接触位置が検出される。
図2は、触覚提示装置の内部の機能構成例を示すブロック図である。触覚提示装置は、演算を行う演算部31、一時的なデータを記憶するRAM(Random Access Memory)32、不揮発性の記憶部33、及びデータの入出力を行う入出力部34を備えている。記憶部33は、例えば、ハードディスク又は不揮発性半導体メモリである。入出力部34は、例えば、触覚提示装置の外部の機器と有線又は無線で通信を行う通信部である。また、触覚提示装置は、液晶ディスプレイパネル又はEL(Electro Luminescence)ディスプレイパネル等の画像を表示する表示パネル36を備えている。表示パネル36には、画像を表示させるべく表示パネル36を駆動させる表示パネル駆動部35が接続されている。表示パネル駆動部35は演算部31に接続されている。表示パネル駆動部35は、演算部31から画像データを入力され、画像データに基づいて表示パネル36に画像を表示させる。
更に、触覚提示装置は、触覚の提示と共に接触面11上の接触位置の検出を行うための触覚パネル1を備えている。触覚パネル1は、表示パネル36に重なっている。触覚パネル1には、触覚パネル1を駆動させる触覚パネル駆動部2が接続されている。触覚パネル駆動部2は、演算部31に接続されている。
図3は、実施形態1に係る触覚パネル1及び触覚パネル駆動部2の内部構成を示すブロック図である。触覚パネル1は、ガラス基板等の透明な基板12を有している。基板12上には、複数の線状のX電極(第1線状電極)13が並列に配置されている。図3中には、X電極13を破線で示している。また、基板12上に、複数の線状のY電極(第2線状電極)14が並列に配置されている。複数のX電極13と複数のY電極14とは絶縁されている。また、複数のX電極13と複数のY電極14とは互いに交差している。線状のX電極13に沿った方向をX方向とし、線状のY電極14に沿った方向をY方向とする。基板12には、X電極13及びY電極14を間に挟んで絶縁性のカバー層15が重ねられている。カバー層15の表面が接触面11となっている。
触覚パネル駆動部2は、接触面11への物体の接触を検出すべくX電極13及びY電極14の動作を制御するためのタッチパネル駆動回路(第1制御部)22を有している。タッチパネル駆動回路22は、X電極13及びY電極14を利用して接触面11への物体の接触を検出するタッチパネルの機能を実現するための回路である。触覚パネル駆動部2は、接触面11上に触覚を提示させるべくX電極13の動作を制御するためのX電極駆動回路23と、接触面11上に触覚を提示させるべくY電極14の動作を制御するためのY電極駆動回路24とを有している。X電極駆動回路23及びY電極駆動回路24は、X電極13及びY電極14を利用して接触面11上に触覚を提示するための回路であり、第2制御部に対応する。また、触覚パネル駆動部2は、複数のX電極13に接続された第1切り替え部25と、複数のY電極14に接続された第2切り替え部26とを有している。第1切り替え部25は、一部のX電極13をタッチパネル駆動回路22へ接続し、他のX電極13をX電極駆動回路23へ接続し、各X電極13の接続を一方から他方へ切り替えることができるようになっている。第2切り替え部26は、一部のY電極14をタッチパネル駆動回路22へ接続し、他のY電極14をY電極駆動回路24へ接続し、各Y電極14の接続を一方から他方へ切り替えることができるようになっている。
更に、触覚パネル駆動部2は、制御回路21を有している。制御回路21は、タッチパネル駆動回路22、X電極駆動回路23、Y電極駆動回路24、第1切り替え部25及び第2切り替え部26に接続されている。また、制御回路21は、演算部31に接続されている。制御回路21は、演算部31から制御信号を入力され、タッチパネル駆動回路22、X電極駆動回路23、Y電極駆動回路24、第1切り替え部25及び第2切り替え部26の動作を制御する。制御回路21、第1切り替え部25及び第2切り替え部26は、第3制御部に対応する。
図4は、実施形態1に係るX電極駆動回路23の内部の構成を示す模式的回路図である。X電極駆動回路23は、複数の単極双投形スイッチ231と、所定の第1周波数f1の交流電圧を発生する第1交流電圧源232とを有している。X電極駆動回路23の内部の回路は、第1切り替え部25を介して接続された各X電極13を各単極双投形スイッチ231により第1交流電圧源232及びグラウンドのいずれか一方に接続するように構成されている。各単極双投形スイッチ231は、制御回路21に制御されて、各X電極13と第1交流電圧源232又はグラウンドとの接続を切り替える。図4に示したX電極駆動回路23の内部の回路は、第1信号印加回路に対応する。
図5は、実施形態1に係るY電極駆動回路24の内部の構成を示す模式的回路図である。Y電極駆動回路24は、複数の単極双投形スイッチ241と、所定の第2周波数f2の交流電圧を発生する第2交流電圧源242とを有している。Y電極駆動回路24の内部の回路は、第2切り替え部26を介して接続された各Y電極14を各単極双投形スイッチ241により第2交流電圧源242及びグラウンドのいずれか一方に接続するように構成されている。各単極双投形スイッチ241は、制御回路21に制御されて、各Y電極14と第2交流電圧源242又はグラウンドとの接続を切り替える。図5に示したY電極駆動回路24の内部の回路は、第2信号印加回路に対応する。
触覚提示装置は、X電極駆動回路23及びY電極駆動回路24の動作により、接触面11に触覚を提示する。使用者が接触面11に指を接触させた場合、この指は、絶縁体を挟んでX電極13又はY電極14と対向して、所定のインピーダンスを介してグラウンドに接続された電極と等価である。X電極13又はY電極14に電圧が印加された場合は、X電極13又はY電極14と指との間に静電気による引力(静電気力)が発生する。交流電圧が印加された場合は、静電気力が周期的に変化する。静電気力が変化することにより、接触面11と指との間の摩擦力が周期的に変化する。使用者が指で接触面11をなぞったとき、指で感じられる摩擦力が周期的に変化し、使用者は触覚を知覚する。従来の研究により、交流電圧の周波数が5Hzを超過し500Hz未満である場合に、触覚が知覚され、周波数がこの範囲内にない場合には触覚が知覚されないことが明らかになっている。
また、X電極13に第1周波数f1の交流電圧が印加され、Y電極14に第2周波数f2の交流電圧が印加された場合は、静電気力は第1周波数f1及び第2周波数f2で変化する。更に、第1周波数f1と第2周波数f2との差の周波数で静電気力が変化するうなりが発生する。従来の研究により、うなりの周波数が10Hzを超過し1000Hz未満である場合にうなりによる触覚が知覚され、うなりの周波数がこの範囲内にない場合にはうなりによる触覚が知覚されないことが明らかになっている。
本実施形態では、第1周波数f1及び第2周波数f2が共に500Hz以上であり、第1周波数f1と第2周波数f2との差の絶対値が10Hzを超過し1000Hz未満となるように、第1周波数f1及び第2周波数f2が定められている。例えば、第1周波数f1=1000Hz、第2周波数f2=1240Hzである。X電極駆動回路23は、制御回路21の制御により、X電極駆動回路23に接続されたX電極13の内、一部のX電極13を第1交流電圧源232に接続し、他のX電極13をグラウンドに接続する。Y電極駆動回路24は、Y電極駆動回路24に接続されたY電極14の内、制御回路21の制御により、一部のY電極14を第2交流電圧源242に接続し、他のY電極14をグラウンドに接続する。例えば、触覚パネル1が5本のX電極X0 ~X4 及び6本のY電極Y0 ~Y5 を備え、X電極X1 が第1交流電圧源232に接続され、Y電極Y1 が第2交流電圧源242に接続され、X電極X0 、X2 ~X4 及びY電極Y0 、Y2 ~Y5 がグラウンドに接続されるとする。このとき、接触面11のX電極X1 及びY電極Y1 が交差している部分では、240Hzのうなりが発生し、使用者は指で触覚を知覚することができる。X電極X1 及びY電極Y0 、Y2 ~Y5 が交差している部分では、1000Hzで静電気力が変化するものの、触覚は知覚されない。Y電極Y1 及びX電極X0 、X2 ~X4 が交差している部分では、1240Hzで静電気力が変化するものの、触覚は知覚されない。他の部分では、静電気力は変化せず、触覚は知覚されない。このようにして、触覚提示装置は、接触面11の任意の位置に触覚を提示することができる。なお、X電極駆動回路23及びY電極駆動回路24は、X電極13及びY電極14をグラウンドではなく所定の直流電源に接続する形態であってもよい。
図6は、実施形態1に係るタッチパネル駆動回路22の内部の構成を示す模式的回路図である。タッチパネル駆動回路22は、複数の信号入力部221及び複数の電流検出部222を有している。各信号入力部221は、第1切り替え部25に接続された信号線の夫々に接続されている。各電流検出部222は、第2切り替え部26に接続された信号線の夫々に接続されている。信号入力部221は、第1切り替え部25を介して接続されたX電極13に接続され、電流検出部222は、第2切り替え部26を介して接続されたY電極14に接続される。信号入力部221は、交流信号をX電極13へ入力する。電流検出部222は、Y電極14に流れる電流信号を検出する。図6に示したタッチパネル駆動回路22の内部の回路は、検出回路に対応する。
X電極13及びY電極14が交差している部分では、X電極13及びY電極14の間に静電容量が発生する。信号入力部221がX電極13へ交流信号を入力した場合、X電極13と電流検出部222が接続されたY電極14との間に交流電流が流れ、電流検出部222は交流電流を検出する。接触面11上で、X電極13及びY電極14が交差している部分に対向する部分に、使用者の指が接触した場合、X電極13又はY電極14と指との間に静電容量が発生し、X電極13及びY電極14の間の静電容量が変化する。X電極13及びY電極14の間の静電容量が変化した場合、電流検出部222が検出する交流電流が変化する。第1切り替え部25及び第2切り替え部26の動作は制御回路21に制御され、タッチパネル駆動回路22に接続されるX電極13及びY電極14は制御回路21の制御により特定される。制御回路21は、電流検出部222が検出する交流電流と所定の閾値とを比較して、タッチパネル駆動回路22に接続しているX電極13及びY電極14の間の静電容量が変化したことを検出する。また制御回路21は、静電容量が変化した場合にタッチパネル駆動回路22に接続しているX電極13及びY電極14を特定することにより、使用者の指が接触している位置を検出する。接触位置は、接触面11上で、タッチパネル駆動回路22に接続されているX電極13及びY電極14が交差している部分に対向する位置である。制御回路21は、接触位置を示すデータを演算部31へ出力する。このように、触覚提示装置は、相互容量方式により、接触面11上の接触位置の検出を行う。
なお、触覚提示装置は、接触面11上の接触位置だけでなく、接触面11に対して指等の導電性の物体が所定距離以内に接近した場合に物体が接近した位置を検出する形態であってもよい。この形態では、物体が接触面11に対して所定距離以内に接近した場合、X電極13と物体との間に静電容量が発生し、同様にして、接触面11上で物体が接近した位置が検出される。また、タッチパネル駆動回路22は、X電極13に電流検出部222を接続し、Y電極14に信号入力部221を接続する形態であってもよい。
次に、触覚提示装置が接触位置の検出と触覚の提示とを両立させる処理を説明する。制御回路21は、第1切り替え部25が各X電極13をタッチパネル駆動回路22及びX電極駆動回路23のどちらへ接続するのかを制御する。同様に、制御回路21は、第2切り替え部26が各Y電極14をタッチパネル駆動回路22及びY電極駆動回路24のどちらへ接続するのかを制御する。
制御回路21は、第1切り替え部25に、一部のX電極13をタッチパネル駆動回路22へ接続させ、他のX電極13をX電極駆動回路23へ接続させる。また、制御回路21は、第1切り替え部25に、タッチパネル駆動回路22へ接続するX電極13を順次的に変更させる。タッチパネル駆動回路22へ接続するX電極13を変更する際には、第1切り替え部25は、これまでタッチパネル駆動回路22へ接続していたX電極13をX電極駆動回路23へ接続し、これまでX電極駆動回路23へ接続していた複数のX電極13の内の一部のX電極13をタッチパネル駆動回路22へ接続する。例えば、X電極X0 ~X4 の内、X電極X0がタッチパネル駆動回路22へ接続され、X電極X1 ~X4 がX電極駆動回路23へ接続された状態から、X電極X1 がタッチパネル駆動回路22へ接続され、X電極X0 ,X2 ~X4 がX電極駆動回路23へ接続された状態へ変更され、同様に、タッチパネル駆動回路22へ接続されるX電極13が順次的に変更される。
同様に、制御回路21は、第2切り替え部26に、一部のY電極14をタッチパネル駆動回路22へ接続させ、他のY電極14をY電極駆動回路24へ接続させ、タッチパネル駆動回路22へ接続するY電極14を順次的に変更させる。タッチパネル駆動回路22へ接続するY電極14を変更する際には、第2切り替え部26は、これまでタッチパネル駆動回路22へ接続していたY電極14をY電極駆動回路24へ接続し、これまでY電極駆動回路24へ接続していた複数のY電極14の内の一部のY電極14をタッチパネル駆動回路22へ接続する。例えば、Y電極Y0 ~Y5 の内、Y電極Y0 がタッチパネル駆動回路22へ接続され、Y電極Y1 ~Y5 がY電極駆動回路24へ接続された状態から、Y電極Y1 がタッチパネル駆動回路22へ接続され、Y電極Y0 ,Y2 ~Y5 がY電極駆動回路24へ接続された状態へ変更され、同様に、タッチパネル駆動回路22へ接続されるY電極14が順次的に変更される。
また、制御回路21は、X電極駆動回路23の単極双投形スイッチ231を制御して、触覚を提示させるべき領域に対応するX電極13を第1交流電圧源232へ接続させ、他のX電極13をグラウンドへ接続させる。同様に、制御回路21は、Y電極駆動回路24の単極双投形スイッチ241を制御して、触覚を提示させるべき領域に対応するY電極14を第2交流電圧源242へ接続させ、他のY電極14をグラウンドへ接続させる。例えば、図3中の二点鎖線で囲んだ領域を、接触面11で触覚を提示すべき対象領域16とし、対象領域16はX電極X1 及びX2 とY電極Y1 及びY2 との交点に対向する部分であるとする。この場合、X電極駆動回路23は、X電極X1 及びX2 を第1交流電圧源232へ接続して他のX電極13をグラウンドへ接続し、Y電極駆動回路24は、Y電極Y1 及びY2 を第2交流電圧源242へ接続して他のY電極14をグラウンドへ接続する。
図7は、実施形態1における各電極の動作の例を示すタイミングチャートである。図7では、左から右へかけて時間の経過を示し、t0 ~t13は夫々の時点を示す。図7には、X電極X0 ~X4 及びY電極Y0 ~Y5 の夫々が夫々の時点でどのような状態になっているのかを示している。X電極13又はY電極14がグラウンドに接続されている状態をTG で示し、X電極13が第1交流電圧源232に接続されている状態をTA で示し、Y電極14が第2交流電圧源242に接続されている状態をTB で示している。また、X電極13がタッチパネル駆動回路22に接続されている状態をST で示し、Y電極14がタッチパネル駆動回路22に接続されている状態をSR で示している。
図7に示すように、t0 ~t6 の期間、X電極X0 がタッチパネル駆動回路22に接続されている。また、t0 ~t1 の期間はY電極Y0 がタッチパネル駆動回路22に接続され、t1 ~t2 の期間はY電極Y1 がタッチパネル駆動回路22に接続される等、Y電極Y0 ~Y5 の夫々が順次的にタッチパネル駆動回路22に接続される。これにより、t0 ~t6 の期間は、X電極X0 とY電極Y0 ~Y5 の夫々との交点に対応する接触面11上の位置での接触の検出が順次的に行われる。同様に、t6 ~t12の期間、X電極X1 がタッチパネル駆動回路22に接続され、Y電極Y0 ~Y5 の夫々が順次的にタッチパネル駆動回路22に接続され、X電極X1 とY電極Y0 ~Y5 の夫々との交点に対応する接触面11上の位置での接触の検出が順次的に行われる。タッチパネル駆動回路22に接続されるX電極13を変更しながら同様に処理が繰り返され、接触面11上の各位置での接触の検出が順次的に行われる。このようにして、夫々のX電極13及びY電極14は、順次的にタッチパネル駆動回路22に接続されることにより、接触面11への接触を検出するために順次的に制御される。即ち、接触位置の検出のために接触面11の走査が行われる。接触面11全体の走査が終了した後は、制御回路21は、夫々のX電極13及びY電極14を順次的にタッチパネル駆動回路22へ接続させる処理を繰り返す。これにより、走査が繰り返され、使用者が接触面11の任意の位置に接触した場合に接触位置が検出される。接触面11全体の走査は、1秒当たり10~1000回のいずれかの値で繰り返される。例えば、接触面11全体の走査は、1秒当たり60回繰り返される。
図7に示すように、タッチパネル駆動回路22に接続されている期間以外の期間では、X電極X1 及びX2 は第1交流電圧源232に接続され、Y電極Y1 及びY2 は第2交流電圧源242に接続され、他のX電極13及びY電極14はグラウンドに接続されている。この結果、接触面11内の対象領域16に触覚が提示される。このように、X電極13及びY電極14は、接触面11上に触覚を提示するために制御される。以上のようにX電極13及びY電極14が制御される結果、接触面11は、一部分が接触の検出のために用いられ、他の部分は触覚を提示させるために用いられ、接触の検出のために用いられる部分の位置が順次変更される。接触面11上の各部分は、特定のタイミングで接触の検出のために用いられ、他のタイミングで触覚の提示のために用いられる。
以上のように、本実施形態では、一部のX電極13及びY電極14が接触面11への接触を検出するために制御されている期間の間でも、他のX電極13及びY電極14は、接触面11上に触覚を提示するために制御されている。このため、触覚提示装置は、触覚の提示と接触位置の検出とを同時に実行することが可能であり、触覚提示装置の使用中に使用者が感じていた触覚が途切れることは無い。また、接触面11への接触を検出するために制御されるX電極13及びY電極14は順次的に変更され、夫々のX電極13及びY電極14は、接触を検出するために制御されるタイミング以外のタイミングでは、接触面11上に触覚を提示するために制御される。このため、接触面11上のいずれの位置でも接触の検出が可能であり、いずれの位置でも触覚の提示が可能である。接触面11上で接触の検出が行われる位置では、触覚の提示は行われないものの、接触の検出が行われる位置は順次移動していくので、接触面11全体では触覚の提示が途切れることは無い。
また、図7に示すように、制御回路21は、X電極13の内、タッチパネル駆動回路22に接続しているX電極13に隣り合っているX電極13を、第1切り替え部25を介して、X電極駆動回路23へ接続させる。同様に、制御回路21は、Y電極14の内、タッチパネル駆動回路22に接続しているY電極14に隣り合っているY電極14を、第2切り替え部26を介して、Y電極駆動回路24へ接続させる。このように、接触面11への接触を検出するために制御されるX電極13に隣り合うX電極13、及び接触を検出するために制御されるY電極14に隣り合うY電極14は、触覚を提示するために制御される。接触面11への接触を検出するために制御されている複数の電極が隣り合った場合は、触覚の提示に用いられない部分が大きくなるという問題がある。本実施形態では、接触面11への接触を検出するために制御されている電極に隣り合う電極は触覚を提示するために制御されるので、接触面11上の触覚の提示に用いられない部分の大きさが最小限となる。
本実施形態では、隣り合うX電極13の中心間の距離及び隣り合うY電極14の中心間の距離を、人間の指が接触面11に接触する面積に対して十分小さくしてある。このため、接触面11上の触覚の提示に用いられない部分の大きさは、使用者の指の大きさに比べて十分小さい。使用者の指が接触面11に接触している部分の内、一部で触覚の提示が行われずとも、他の部分には触覚が提示され、指全体で平均された触覚が知覚される。従って、接触位置の検出のために触覚の提示が部分的に途切れることを使用者が知覚することは無い。
また、従来、人間の触覚の時間分解能は、10msであると言われている。本実施形態では、接触面11への接触を検出するために制御されるX電極13を変更する時間間隔を10msに比べて短くしてある。図7に示した例では、t0 ~t6 の期間の長さ及びt6 ~t12の期間の長さは、10ms未満である。例えば、各X電極13が連続してタッチパネル駆動回路22に接続されている期間の長さは、1.6msである。接触面11への接触を検出するために制御されるY電極14を変更する時間間隔は、更に短い。図7に示した例では、各Y電極14が連続してタッチパネル駆動回路22に接続されている期間の長さは、各X電極13が連続してタッチパネル駆動回路22に接続されている期間の長さの六分の一である。接触面11上の一部で触覚が提示されない期間の長さは、人間の触覚の時間分解能よりも十分短くなるので、使用者は、触覚の消失を感じることができない。従って、接触位置の検出のために触覚の提示が部分的に途切れることを使用者が知覚することは無い。
図8は、実施形態1における各電極の動作の他の例を示すタイミングチャートである。図8に示すように、触覚提示装置は、複数のY電極14が同時にタッチパネル駆動回路22に接続される形態であってもよい。このとき、制御回路21は、第2切り替え部26に、隣り合っていない複数のY電極14をタッチパネル駆動回路22へ接続させる。具体的には、t0 ~t1 の期間にY電極Y0 及びY4 がタッチパネル駆動回路22に接続され、t1 ~t2 の期間はY電極Y1 及びY5 がタッチパネル駆動回路22に接続される。即ち、隣り合っていない複数のY電極14が同時に接触面11への接触を検出するために制御される。
複数のY電極14を同時に接触面11への接触の検出のために制御することによって、全てのY電極14を接触の検出のために順次的に制御するために必要な時間を短縮することができる。これに伴って、各X電極13を接触の検出のために制御するのに必要な時間を短縮することができる。このため、接触面11上の全ての部分で接触を検出するために必要な時間を短縮することができる。また、接触面11上の複数の位置で同時に接触の検出が行われる。従って、触覚提示装置は、使用者が接触面11の任意の位置に接触した場合に接触位置の検出を迅速に行うことが可能となる。また、接触の検出のために制御される複数のY電極14が隣り合っていないので、接触面11上の触覚の提示に用いられない部分の大きさは最小限となる。なお、触覚提示装置は、隣り合っていない複数のX電極13が同時に接触面11への接触を検出するために制御される形態であってもよい。
次に、隣り合う電極の中心間の距離と、接触面11への接触を検出するために制御される電極を変更する時間間隔とについて更に説明する。図9は、説明のための触覚パネル1のモデルを示す模式的平面図である。基板12上に複数のX電極13が配置され、Y電極14が配置されていないモデルを考える。X電極13の数を32本とし、隣り合うX電極13の中心間の距離を5mmとする。接触面11のY方向の大きさは160mmである。全てのX電極13を走査する時間を16.6msとする。個々のX電極13が接触の検出のために制御される時間は0.519msである。使用者の指と接触面11との接触部分を、一辺10mmの正方形とする。接触面11に接触しながら指が移動する速度を300mm/sとする。触覚の提示のためにX電極13に印加される交流電圧を、100Hzで150Vの電圧とする。
図10は、使用者の指と接触面11との接触部分及びX電極13の位置関係を示す模式図である。図中には複数のX電極13を縦に並べて示し、図中の131は接触の検出のために制御されるX電極13である。X電極131以外のX電極13は、触覚の提示のために制御される。また、図中の41は、指と接触面11との接触部分である。図中の下向きがY方向である。図10Aに示す状態から所定時間が順次経過した状態を、図10B、図10C及び図10Dに夫々示す。図中の矢印は、指が移動する向きを示す。使用者がこの向きに指で接触面11をなぞることにより、指と接触面11との間に摩擦力が生じ、使用者は静電気力による触覚を得る。図10A~Dに順に示すように、時間経過に従って、指と接触面11との接触部分41は移動する。同様に、走査により、X電極13の内で接触の検出のために制御されるX電極131の位置が変化する。接触部分41の移動速度よりもX電極13の走査速度の方が極めて早い。図10に示すようにX電極131と接触部分41とが平面視で重なる場合に、指の接触が検出されるとともに、触覚を提示するために指に働く静電気力が低下する。
図11は、接触部分41及びX電極131の位置と時刻との関係を示す模式図である。図中の縦軸は時刻を示し、上から下へ向けて時間が経過している。横軸は、端からの距離でY方向の位置を示している。図中にハッチングで示した部分は、その部分に対応する時刻にその部分に対応する位置にあるX電極13が、接触の検出のために制御されるX電極131であることを示す。その他の部分は、X電極13が触覚の提示のために制御されていることを示している。例えば、1行目のX電極13、即ちY方向の0~5mmの位置にあるX電極13は、0~0.519msの期間に接触の検出のために制御され、他の期間は触覚の提示のために制御される。2行目のX電極13、即ちY方向の5~10mmの位置にあるX電極13は、0.519~1.038msの期間は接触の検出のために制御され、他の期間は触覚の提示のために制御される。このように、接触の検出のために制御されるX電極131は順次的に変更される。
図11中には、接触部分41の中心の軌跡を実線で示し、接触部分41の上端及び下端の軌跡を破線で示している。時刻ゼロの時、接触部分41の中心は17.5mmの位置にある。この位置は4行目のX電極13のY方向の中心に一致する。使用者は、Y方向の位置の数値が増す向きにY方向に指を300mm/sの速度で接触面11を滑らせる。時刻5.19msの時に、接触部分41の中心の位置は19.057mmとなる。図11に示すように、例えば、時刻が0.77msの時、接触部分41の上端から下端までの範囲と対向する位置にあるX電極13、即ち接触部分41の全ての領域に対応するX電極13は全て触覚の提示のために制御されている。時刻が1.8msecの時には、接触部分41の半分の面積の領域に対応するX電極13が接触の検出のために制御され、他のX電極13が触覚の提示のために制御されている。このとき触覚を提示するために指に生じる静電気力は、この面積に応じて通常の半分となる。
図12は、指に生じる静電気力の変化を示す特性図である。横軸は時刻を示し、縦軸は静電気力の相対値を示す。時刻が0~1.038msの期間は、静電気力の相対値は1である。時刻が1.038msを超えたとき、静電気力の相対値は0.775まで低下し、時刻1.557msにかけて0.794までやや上昇する。時刻1.557msを過ぎると静電気力の相対値は0.5へ低下し、時刻2.076msまで0.5である。時刻2.076msを過ぎると静電気力の相対値は0.6935へ上昇し、時刻2.595msにかけて0.678まで低下する。時刻2.595ms以降は、静電気力の相対値は1となる。静電気力の低下が生じた期間は時刻1.038~2.595msの間の僅か1.557msである。この期間は触覚の時間分解能10msよりも十分に短い。更に、静電気力の相対値の最小値は0.5である。この結果、使用者は触覚の途切れを知覚することがないという効果が得られる。
また、使用者が触覚の途切れを知覚することがない理由には、他の理由も考えられる。図9に示した触覚パネル1のモデルにおいて触覚の提示のためにX電極13へ印加する交流電圧の周波数は100Hzであり、静電気力の周波数はその2倍の200Hzである。この周波数は人間の機械受容器のうちパチニ小体を主に刺激する。パチニ小体の受容野は広く、エッジは不鮮明に検出されるか、又は検出されない。このため、接触部分41の半分の領域で静電気力が発生しない場合であっても、使用者には、接触部分41全体に触覚が提示されていると知覚される。接触部分41の全体に静電気力が発生した場合と半分しか静電気力が発生しない場合とで仮に差が知覚できたとしても、その差は刺激の強さの差として知覚され、エッジの有無の差は知覚されない。触覚の変化を知覚する手がかりとなりうるエッジを検出することができないため、使用者は触覚の変化を知覚できず、触覚の途切れを知覚することがないとも考えられる。このように、主としてパチニ小体を刺激する周波数の静電気力を用いることは、使用者が触覚の途切れを知覚することがないという効果を生む要因の一つとも考えられる。
以上の見地を踏まえ、本実施形態では、隣り合うX電極13の中心間距離及び隣り合うY電極14の中心間距離を5mm以下としている。接触面11と指との接触部分の内、X方向の半分以上及びY方向の半分以上が触覚を提示するために制御されているX電極13及びY電極14と対向することになる。また、本実施形態では、図12に示すような接触部分41内での静電気力の相対的な減少量の時間変化の関数を時間で積分した値が10msより小さくなるようにしてある。ここで、静電気力の相対的な減少量の時間変化の関数を時間で積分した値の概念について補足する。図12の縦軸は静電気力、すなわち力であり、横軸は時間である。このことから、静電気力の相対的な減少量の時間変化の関数を時間で積分した値は力学で言う力積の類比と考えることができる。静電気力の減少によって知覚される触覚の途切れの大きさは、静電気力の減少の大きさと静電気力が減少する時間との関数である。そして、一定の範囲において知覚される触覚の途切れの大きさは、静電気力の減少の大きさと静電気力が減少する時間との積である力積の単調増加関数である。してみれば、静電気力の相対的な減少量の時間変化の関数を時間で積分した値を人間の触覚の時間分解能10msより小さくすることで、触覚の提示が途切れることを使用者が知覚することは無くなる。図12の例では、触覚の時間分解能である10msよりも短い期間内に静電気力の低下が生じ、更に、静電気力が低下する場合であっても知覚される静電気力は指の全体で平均されてゼロにはならないので、触覚の提示が途切れることを使用者が知覚することは無い。また、指全体での静電気力の平均値がゼロとなる場合であっても,静電気力がゼロとなる時間を10msより小さくすることで触覚の提示が途切れることを使用者が知覚することは無い。
なお、以上の本実施形態の説明では、接触面11への接触を検出するために制御されている電極に隣り合う電極が次に接触の検出のために制御される電極となる形態を示したが、触覚提示装置は、接触の検出のために制御されている電極に隣り合っていない電極が次に接触の検出のために制御される電極となる形態であってもよい。図13は、図9に示した触覚パネル1のモデルにおいて接触の検出のために制御されるX電極131の位置を離散的に変化させた場合に、接触部分41及びX電極131の位置と時刻との関係を示す模式図である。図中の縦軸は時刻を示し、上から下へ向けて時間が経過している。図中のTs は、Ts =0.519msである。横軸は、端からの距離でY方向の位置を示している。図中にハッチングで示した部分は、その部分に対応する時刻にその部分に対応する位置にあるX電極13が、接触の検出のために制御されるX電極131であることを示す。その他の部分は、X電極13が触覚の提示のために制御されていることを示している。
図13に示した例では、時刻が0~Ts の期間は、Y方向の位置が0~5mmのX電極13、即ち1行目のX電極13が接触の検出のために制御される。時刻がTs ~2Ts の期間は、Y方向の位置が75~80mmのX電極13、即ち16行目のX電極13が接触の検出のために制御される。続いて、時刻が2Ts ~3Ts の期間は、Y方向の位置が10~15mmのX電極13、即ち3行目のX電極13が接触の検出のために制御される。このように、接触の検出のために制御されるX電極131の位置は、1行目の次に16行目となり、以降、3行目、18行目、5行目、20行目、7行目…と、離散的に変更されている。
X電極131の位置を離散的に変更することにより、接触部分41内に含まれる複数の領域で静電気力が低下するタイミングが離散化される。このため、接触部分41内で提示される触覚が途切れる期間が更に短くなる。従って、使用者が触覚の途切れを知覚することがないという効果がより向上する。
図13には、接触部分41の軌跡の例を二通り示している。接触部分41の中心の軌跡を実線で示し、接触部分41の上端及び下端の軌跡を破線で示している。図13の左部に記載した軌跡は、時刻ゼロの時に17.5mmの位置にあって300mm/sの速度でY方向の位置の数値が増す向きへ移動する接触部分41の軌跡である。この軌跡によれば、時刻が2Ts~3Tsの期間に、接触部分41内の静電気力が通常の78%となり、時刻が4Ts~5Tsの期間に70%となる。その一方、両期間に挟まれた期間は静電気力の低下がない。静電気力の低下が発生する期間の長さは最大でTsであり、極めて短い。この期間の長さは、図12に示した1.557msよりも短く、触覚の時間分解能である10msよりも十分短い。このため、使用者は触覚の途切れを知覚することが無い。また、図13の右部に記載した軌跡は、時刻ゼロの時に120mmの位置にあって600mm/sの速度でY方向の位置の数値が減少する向きへ移動する接触部分41の軌跡である。この軌跡を辿った場合であっても、静電気の低下が発生する期間は最大でTsであって極めて短く、使用者は触覚の途切れを知覚することが無い。
図13に示した例のように、触覚提示装置は、X電極13及びY電極14の内で接触面11への接触を検出するために制御するX電極13及びY電極14の位置を離散的に変更する形態であってもよい。接触の検出のために制御するX電極13及びY電極14の位置を離散的に変更することにより、接触面11と使用者の指との接触部分に含まれる複数の領域で静電気力が低下するタイミングが離散化される。これにより、図13に示した例と同様に、接触部分内で静電気が低下する期間が更に短くなり、従って、使用者が触覚の途切れを知覚することがないという効果がより向上する。
<実施形態2>
実施形態2に係る触覚提示装置は、実施形態1と異なる方法で接触面11への接触位置の検出を行う。触覚提示装置の構成は、タッチパネル駆動回路22の内部以外は図1~図3に示した実施形態1の場合と同様である。
図14は、実施形態2に係るタッチパネル駆動回路22の内部の構成を示す模式的回路図である。タッチパネル駆動回路22は、複数の電流検出部223及び複数の交流電圧源224を有している。各電流検出部223は、第1切り替え部25に接続された信号線の夫々に接続され、第2切り替え部26に接続された信号線の夫々に接続されている。電流検出部223には、夫々に交流電圧源224が接続されている。交流電圧源224はグラウンドに接続されている。第1切り替え部25により、電流検出部223はX電極13に接続され、交流電圧源224はX電極13へ電圧を印加し、電流検出部223はX電極13に流れる電流を検出する。同様に、第2切り替え部26により、電流検出部223はY電極14に接続され、交流電圧源224はY電極14へ電圧を印加し、電流検出部223はY電極14に流れる電流を検出する。図14に示したタッチパネル駆動回路22の内部の回路は、検出回路に対応する。
接触面11に使用者の指が接触していない状態では、交流電圧源224からX電極13又はY電極14へ電圧を印加しても、電流はほとんど流れず、電流検出部223が検出する電流はほぼゼロである。より詳細には、夫々のX電極13の寄生容量及び夫々のY電極14の寄生容量にわずかな電流が流れる。寄生容量に流れるこの電流を寄生電流という。電流検出部223は寄生電流を検出する。接触面11上で、タッチパネル駆動回路22に接続されたX電極13に対向する部分に使用者の指が接触した場合、X電極13と指との間に静電容量が発生する。交流電圧源224から交流電圧が印加され、静電容量に応じた電流がX電極13に流れ、電流検出部223は電流を検出する。同様に、接触面11に接触した使用者の指とタッチパネル駆動回路22に接続されたY電極14との間に静電容量が発生し、静電容量に応じた電流がY電極14に流れ、電流検出部223は電流を検出する。電流検出部223が検出した電流のノルムは、発生した静電容量に比例する。より詳細には、電流検出部223が検出した電流のノルムの寄生電流からの増加分が、発生した静電容量に比例する。
第1切り替え部25及び第2切り替え部26の動作は制御回路21に制御され、タッチパネル駆動回路22に接続されるX電極13及びY電極14は制御回路21の制御により特定される。制御回路21は、タッチパネル駆動回路22に接続したX電極13及びY電極14の夫々について、電流検出部223が検出する電流のノルムが所定値以上であることに応じて、静電容量が発生したことを検出する。また制御回路21は、静電容量が発生したX電極13及びY電極14、即ち静電容量が発生したときにタッチパネル駆動回路22に接続しているX電極13及びY電極14を特定することにより、使用者の指が接触している位置を検出する。接触位置は、接触面11上で、静電容量が発生したX電極13及びY電極14が交差している部分に対向する位置である。制御回路21は、接触位置を示すデータを演算部31へ出力する。このように、触覚提示装置は、自己容量方式により、接触面11上の接触位置の検出を行う。
なお、触覚提示装置は、接触面11上の接触位置だけでなく、接触面11に対して指等の導電性の物体が所定距離以内に接近した場合に物体が接近した位置を検出する形態であってもよい。この形態では、物体が接触面11に対して所定距離以内に接近した場合、X電極13及びY電極14と物体との間に静電容量が発生し、同様にして、接触面11上で物体が接近した位置が検出される。
制御回路21は、実施形態1と同様に第1切り替え部25及び第2切り替え部26を制御して、一部のX電極13及びY電極14をタッチパネル駆動回路22に接続し、タッチパネル駆動回路22に接続するX電極13及びY電極14を順次変更する。また、実施形態1と同様に、制御回路21は、タッチパネル駆動回路22に接続しないX電極13をX電極駆動回路23へ接続し、タッチパネル駆動回路22に接続しないY電極14をY電極駆動回路24へ接続する。即ち、本実施形態においても、一部のX電極13及びY電極14は接触面11への接触を検出するために制御され、接触の検出のために制御されるX電極13及びY電極14は順次的に変更され、夫々のX電極13及びY電極14は、接触の検出のために制御されるタイミング以外のタイミングでは、接触面11上に触覚を提示するために制御される。このため、本実施形態においても、触覚提示装置は、触覚の提示と接触位置の検出とを同時に実行することが可能であり、触覚提示装置の使用中に使用者が感じていた触覚が途切れることは無い。
なお、以上の実施形態1及び2においては、タッチパネル駆動回路22、X電極駆動回路23、Y電極駆動回路24、第1切り替え部25及び第2切り替え部26の他に制御回路21を備える形態を示したが、触覚提示装置は制御回路21を備えていない形態であってもよい。例えば、触覚提示装置は、制御回路21と同等の機能をタッチパネル駆動回路22が兼ね備えている形態であってもよい。また、触覚提示装置は、制御回路21と同等の機能を、タッチパネル駆動回路22、X電極駆動回路23、Y電極駆動回路24、第1切り替え部25及び第2切り替え部26の夫々で分散して備えている形態であってもよい。また、触覚提示装置は、タッチパネル駆動回路22、X電極駆動回路23、Y電極駆動回路24、第1切り替え部25及び第2切り替え部26の動作を演算部31が直接に制御する形態であってもよい。
また、実施形態1及び2においては、特定のX電極13及びY電極14に印加される交流電圧の間のうなりを利用して触覚を提示する形態を示したが、触覚提示装置は、従来知られているその他の方法で触覚を提示する形態であってもよい。例えば、触覚提示装置は、特定のX電極13及びY電極14に同じ交流電圧を印加することによって触覚を提示する形態であってもよく、全てのX電極13及びY電極14に同じ交流電圧を印加することによって触覚を提示する形態であってもよい。また,触覚提示装置は、隣り合うX電極13又は隣り合うY電極14に互いに逆極性の電圧を印加することによって触覚を提示する形態であってもよい。
また、触覚提示装置は、以上の実施形態1及び2において説明した方法以外の従来知られている方法で、接触面11へ物体が接触又は接近した位置を検出する形態であってもよい。例えば、触覚提示装置は、触覚を提示するためにX電極13及びY電極14へ印加する電圧信号の電流値を測定し、測定した電流値の変化に応じて物体の接触又は接近を検出する形態であってもよい。
また、実施形態1及び2においては、X電極13及びY電極14の交点がマトリクス状に配置されるようにX電極13及びY電極14を配置した形態を示したが、触覚提示装置は、その他の態様でX電極13及びY電極14が配置された形態であってもよい。例えば、触覚提示装置は、触覚により表現すべき形状にX電極13及びY電極14の交点が配置されるようにX電極13及びY電極14を配置した形態であってもよい。
<実施形態3>
実施形態3においては、実施形態1及び2と異なった態様で電極が配置された形態を示す。触覚提示装置の構成は、触覚パネル1及び触覚パネル駆動部2の内部以外は図1及び図2に示した実施形態1の場合と同様である。
図15は、実施形態3に係る触覚パネル1及び触覚パネル駆動部2の内部構成を示すブロック図である。触覚パネル1は、ガラス基板等の透明な基板12を有し、基板12上には、複数の電極17が配置されている。各電極17の形状は矩形であり、マトリクス状に配置されている。図15には、電極17が6行9列に配置されている例を示している。各電極17には配線18が接続されている。図15では一つの電極に17を付し一つの配線に18を付しているが、図15に示す矩形の電極は全て電極17であり、電極17に接続された配線は全て配線18である。図15に示した一行に沿った方向をX方向とし、一列に沿った方向をY方向とする。複数の電極17は互いに絶縁されている。基板12には、電極17を間に挟んで絶縁性のカバー層15が重ねられている。カバー層15の表面が接触面11となっている。
触覚パネル駆動部2は、接触面11への接触を検出すべく電極17の動作を制御するためのタッチパネル駆動回路(第1制御部)22を有している。触覚パネル駆動部2は、接触面11上に触覚を提示させるべく電極17の動作を制御するための電極駆動回路27を有している。電極駆動回路27は、第2制御部に対応する。また、触覚パネル駆動部2は、複数の配線18が接続された切り替え部28を有している。切り替え部28には、各配線18を通じて電極17が接続されている。切り替え部28は、一部の電極17をタッチパネル駆動回路22へ接続し、他の電極17を電極駆動回路27へ接続し、各電極17の接続を一方から他方へ切り替えることができるようになっている。
更に、触覚パネル駆動部2は、制御回路21を有している。制御回路21は、タッチパネル駆動回路22、電極駆動回路27及び切り替え部28に接続されている。また、制御回路21は、演算部31に接続されている。制御回路21は、演算部31から制御信号を入力され、タッチパネル駆動回路22、電極駆動回路27及び切り替え部28の動作を制御する。制御回路21及び切り替え部28は第3制御部に対応する。
図16は、実施形態3に係る電極駆動回路27の内部の構成を示す模式的回路図である。電極駆動回路27は、複数の単極双投形スイッチ271と、所定周波数の交流電圧を発生する交流電圧源272とを有している。電極駆動回路27の内部の回路は、切り替え部28を介して接続された各配線18を各単極双投形スイッチ271により交流電圧源272及びグラウンドのいずれか一方に接続するように構成されている。各単極双投形スイッチ271は、制御回路21に制御されて、各配線18と交流電圧源272又はグラウンドとの接続を切り替える。即ち、電極駆動回路27は、切り替え部28及び配線18を介して接続された電極17を交流電圧源272及びグラウンドのいずれか一方に接続し、制御回路21の制御によって接続を切り替える。図16に示した電極駆動回路27の内部の回路は、信号印加回路に対応する。
触覚提示装置は、電極駆動回路27の動作により、接触面11に触覚を提示する。接触面11に接触した使用者の指に対向する電極17に交流電圧が印加された場合、電極17と指との間に周期的に変化する静電気力が発生する。使用者が指で接触面11をなぞったとき、指で感じられる摩擦力が周期的に変化し、触覚が提示される。交流電圧源272が印加する交流電圧の周波数は、5Hzを超過し1000Hz未満である。例えば、周波数は120Hzである。このため、使用者は、接触面11上で触覚を知覚することができる。
電極駆動回路27は、制御回路21の制御により、電極駆動回路27に接続された電極17の内、一部の電極17を交流電圧源272に接続し、他の電極17をグラウンドに接続する。接触面11上で交流電圧源272に接続された電極17に対向する部分には、周期的な静電気力が発生し、使用者は指で触覚を知覚することができる。他の部分では、静電気力は発生せず。触覚は知覚されない。このようにして、触覚提示装置は、接触面11の任意の位置に触覚を提示することができる。なお、電極駆動回路27は、電極17をグラウンドではなく所定の直流電源に接続する形態であってもよい。
図17は、実施形態3に係るタッチパネル駆動回路22の内部の構成を示す模式的回路図である。タッチパネル駆動回路22は、複数の電流検出部223及び複数の交流電圧源224を有している。各電流検出部223は、切り替え部28に接続された信号線の夫々に接続されている。電流検出部223には、夫々に交流電圧源224が接続されている。交流電圧源224はグラウンドに接続されている。切り替え部28により、電流検出部223は配線18を通じて電極17に接続され、交流電圧源224は電極17へ電圧を印加し、電流検出部223は電極17に流れる電流を検出する。図17に示したタッチパネル駆動回路22の内部の回路は、検出回路に対応する。
接触面11に使用者の指が接触していない状態では、交流電圧源224から電極17へ電圧を印加しても、電流はほとんど流れず、電流検出部223が検出する電流はほぼゼロである。より詳細には、実施形態2と同様に、電流検出部223は寄生電流を検出する。接触面11上で、タッチパネル駆動回路22に接続された電極17に対向する部分に使用者の指が接触した場合、電極17と指との間に静電容量が発生する。交流電圧源224から交流電圧が印加され、静電容量に応じて増加した電流が電極17に流れ、電流検出部223はこの電流を検出する。電流検出部223が検出した電流のノルムの増加分は、発生した静電容量に比例する。
切り替え部28の動作は制御回路21に制御され、タッチパネル駆動回路22に接続される電極17は制御回路21の制御により特定される。制御回路21は、タッチパネル駆動回路22に接続した電極17の夫々について、電流検出部223が検出する電流のノルムが所定値以上であることに応じて、静電容量が発生したことを検出する。また制御回路21は、静電容量が発生した電極17、即ち静電容量が発生したときにタッチパネル駆動回路22に接続している電極17を特定することにより、使用者の指が接触している位置を検出する。接触位置は、接触面11上で、静電容量が発生した電極17に対向する位置である。制御回路21は、接触位置を示すデータを演算部31へ出力する。このように、触覚提示装置は、自己容量方式により、接触面11上の接触位置の検出を行う。
なお、触覚提示装置は、接触面11上の接触位置だけでなく、接触面11に対して指等の導電性の物体が所定距離以内に接近した場合に物体が接近した位置を検出する形態であってもよい。この形態では、物体が接触面11に対して所定距離以内に接近した場合、電極17と物体との間に静電容量が発生し、同様にして、接触面11上で物体が接近した位置が検出される。
制御回路21は、切り替え部28が各電極17をタッチパネル駆動回路22及び電極駆動回路27のどちらへ接続するのかを制御する。制御回路21は、切り替え部28に、一部の電極17をタッチパネル駆動回路22へ接続させ、他の電極17を電極駆動回路27へ接続させる。また、制御回路21は、切り替え部28に、タッチパネル駆動回路22へ接続する電極17を順次的に変更させる。タッチパネル駆動回路22へ接続する電極17を変更する際には、切り替え部28は、これまでタッチパネル駆動回路22へ接続していた電極17を電極駆動回路27へ接続し、これまで電極駆動回路27へ接続していた複数の電極17の一部をタッチパネル駆動回路22へ接続する。また、制御回路21は、電極駆動回路27の単極双投形スイッチ271を制御して、電極駆動回路27に接続した電極17の内、触覚を提示させるべき領域に対応する電極17を交流電圧源272へ接続させ、他の電極17をグラウンドへ接続させる。
このような制御回路21の制御により、複数の電極17の夫々が順次的にタッチパネル駆動回路22に接続され、接触面11上の各電極17に対向する位置での接触の検出が順次的に行われる。各電極17は、順次的にタッチパネル駆動回路22に接続されることにより、接触面11への接触を検出するために順次的に制御される。即ち、接触位置の検出のために接触面11の走査が行われる。接触面11全体の走査が終了した後は、制御回路21は、夫々の電極17を順次的にタッチパネル駆動回路22へ接続させる処理を繰り返す。これにより、走査が繰り返され、使用者が接触面11の任意の位置に接触した場合に接触位置が検出される。接触面11全体の走査は、1秒当たり10~1000回のいずれかの値で繰り返される。例えば、接触面11全体の走査は、1秒当たり120回繰り返される。タッチパネル駆動回路22に接続されている期間以外の期間では、電極17は、制御回路21の制御により、電極駆動回路27に接続される。一部の電極17は交流電圧源272に接続され、他の電極17はグラウンドに接続されている。この結果、接触面11上に触覚が提示される。このように、電極17は、接触面11上に触覚を提示するために制御される。
図18は、実施形態3における各電極17の状態の時間変化の例を示すタイミングチャートである。縦軸は、各電極17の位置を示している。X方向に沿った各電極17に0~8の番号を振り、Y方向に沿った各電極17に0~5の番号を振り、X方向及びY方向の番号の組み合わせで各電極17の位置を表している。横軸は時間の経過を示し、時間を分割した各期間に1~9の番号を付すことで時間経過を示している。各期間の長さは0.925msである。図中にハッチングで示した部分は、その部分に対応する期間にその部分に対応する位置にある電極17が、接触の検出のために制御されことを示す。その他の部分は、電極17が触覚の提示のために制御されていることを示している。番号1を付した期間の列は、時刻0~0.925msの期間の各電極17の状態を示し、番号2を付した期間の列は次の0.925ms間の各電極17の状態を示す。番号1を付した期間では、接触の検出のために制御される電極17は、(X、Y)で示す位置が(0,0)、(0,3)、(3,0)、(3,3)、(6,0)、(6,3)の6個の電極17である。その他の電極17は触覚の提示のために制御される。番号2を付した期間では、接触の検出のために制御される電極17は、(0,1)、(0,4)、(3,1)、(3,4)、(6,1)、(6,4)の6個の電極である。図18に示すように、番号1~9を付した期間に、全ての電極17が順次的に触覚の提示のために制御され、接触面11全体の走査が8.3msの時間で完了する。
以上のように、本実施形態では、一部の電極17が接触面11への接触を検出するために制御されている期間の間でも、他の電極17は接触面11上に触覚を提示するために制御されている。このため、触覚提示装置は、触覚の提示と接触位置の検出とを同時に実行することができる。また、接触面11への接触を検出するために制御される電極17は順次的に変更され、夫々の電極17は、接触を検出するために制御されるタイミング以外のタイミングでは、接触面11上に触覚を提示するために制御される。接触面11上で接触の検出が行われる位置では、触覚の提示は行われないものの、接触の検出が行われる位置は順次移動していくので、接触面11全体では触覚の提示が途切れることは無い。本実施形態においても、触覚提示装置は、触覚の提示と接触位置の検出とを同時に実行することが可能であり、触覚提示装置の使用中に使用者が感じていた触覚が途切れることは無い。
また、本実施形態では、制御回路21は、タッチパネル駆動回路22に接続している電極17に隣り合っている電極17を、切り替え部28に、電極駆動回路27へ接続させる。このように、接触面11への接触を検出するために制御される電極17に隣り合う電極17は、触覚を提示するために制御される。このため、接触面11上の触覚の提示に用いられない部分の大きさが最小限となる。
また、図18に示す例では、隣り合っていない複数の電極17が同時に接触面11への接触を検出するために制御される。これにより、全ての電極17を接触の検出のために順次的に制御するために必要な時間を短縮することができ、接触面11全体の走査に必要な時間を短縮することができる。また、接触面11上の複数の位置で同時に接触の検出が行われるので、触覚提示装置は、接触位置の検出を迅速に行うことが可能となる。
また、本実施形態では、隣り合う電極17の中心間の距離を、人間の指が接触面11に接触する面積に対して十分小さくしてある。例えば、X方向及びY方向共に、隣り合う電極17の中心間の距離を5mmとしてある。接触面11上の触覚の提示に用いられない部分の大きさは、使用者の指の大きさに比べて十分小さい。使用者の指が接触面11に接触している部分の内、一部で触覚の提示が行われずとも、他の部分には触覚が提示され、指全体で平均された触覚が知覚される。
また、本実施形態では、接触面11への接触を検出するために制御される電極17を変更する時間間隔を、触覚の時間分解能10msに比べて短くしてある。より詳しくは、使用者の指が接触面11に接触する部分での静電気力の相対的な減少量の時間変化の関数を時間で積分した値が10msより小さくなるようにしてある。例えば、制御回路21は、接触の検出のために制御される電極17を変更する時間間隔を10ms未満に制御する。図18に示す例では、接触の検出のために制御される電極17を変更する時間間隔は、0.925msである。触覚の時間分解能よりも短い期間内に静電気力の低下が生じ、更に、静電気力が低下する場合であっても知覚される静電気力は指の全体で平均されてゼロにはならないので、触覚の提示が途切れることを使用者が知覚することは無い。
なお、図18には、接触面11への接触を検出するために制御されている電極17に隣り合う電極17が次に接触の検出のために制御される電極17となる例を示したが、触覚提示装置は、接触の検出のために制御される電極17の位置を離散的に変更する形態であってもよい。接触の検出のために制御される電極17の位置を離散的に変更することにより、使用者の指と接触面11との接触部分に含まれる複数の領域で静電気力が低下するタイミングが離散化される。このため、提示される触覚が途切れる期間が更に短くなり、使用者が触覚の途切れを知覚することがないという効果がより向上する。
<実施形態4>
実施形態4に係る触覚提示装置は、相互容量方式で接触面11への接触位置の検出を行う。触覚提示装置の構成は、触覚パネル1及び触覚パネル駆動部2の内部以外は図1及び図2に示した実施形態1の場合と同様である。図15に示した実施形態3の場合と同様に、触覚パネル1は、基板12と、基板12上にマトリクス状に配置された複数の矩形の電極17と、カバー層15とを有している。同様に、触覚パネル駆動部2は、図15に示すように、タッチパネル駆動回路22と、電極駆動回路27と、切り替え部28と、制御回路21とを有している。
図19は、実施形態4に係るタッチパネル駆動回路22及び切り替え部28の内部の構成を示す模式的回路図である。触覚パネル1に含まれる複数の電極17は、隣り合う一対の電極17からなる電極ペアが複数組み合わさって構成されている。切り替え部28には、各配線18を通じて各電極17が接続されている。切り替え部28は、一部の電極17をタッチパネル駆動回路22へ接続し、他の電極17を電極駆動回路27へ接続し、各電極17の接続を一方から他方へ切り替えることができるようになっている。また、切り替え部28は、電極ペア単位で接続を切り替える。即ち、電極ペアに含まれる二つの電極17は、同時に接続が切り替わり、タッチパネル駆動回路22及び電極駆動回路27の内の同じ回路に接続される。タッチパネル駆動回路22は、複数の信号入力部221及び複数の電流検出部222を有している。タッチパネル駆動回路22及び切り替え部28は、電極ペアがタッチパネル駆動回路22に接続されたときに一方の電極17は信号入力部221へ接続され他方の電極17は電流検出部222へ接続されるように構成されている。信号入力部221は、交流信号を一方の電極17へ入力し、電流検出部222は、他方の電極17を流れる電流信号を検出する。図19に示したタッチパネル駆動回路22の内部の回路は、検出回路に対応する。
電極ペアに含まれる隣り合う二つの電極17の間には、静電容量が発生する。信号入力部221が一方の電極17へ交流信号を入力した場合、二つの電極17の間に交流電流が流れ、電流検出部222は交流電流を検出する。接触面11上で、電極ペアに対向する部分に使用者の指が接触した場合、電極ペアと指との間に静電容量が発生し、二つの電極17の間の静電容量が変化する。二つの電極17の間の静電容量が変化した場合、電流検出部222が検出する交流電流が変化する。切り替え部28の動作は制御回路21に制御され、タッチパネル駆動回路22に接続される電極ペアは制御回路21の制御により特定される。制御回路21は、電流検出部222が検出する交流電流と所定の閾値とを比較して、タッチパネル駆動回路22に接続している電極ペアの間の静電容量が変化したことを検出する。また制御回路21は、静電容量が変化した場合にタッチパネル駆動回路22に接続している電極ペアを特定することにより、使用者の指が接触している位置を検出する。接触位置は、接触面11上で、タッチパネル駆動回路22に接続されている電極ペアに対向する位置である。制御回路21は、接触位置を示すデータを演算部31へ出力する。このように、触覚提示装置は、相互容量方式により、接触面11上の接触位置の検出を行う。
なお、触覚提示装置は、接触面11上の接触位置だけでなく、接触面11に対して指等の導電性の物体が所定距離以内に接近した場合に物体が接近した位置を検出する形態であってもよい。この形態では、物体が接触面11に対して所定距離以内に接近した場合、電極ペアと物体との間に静電容量が発生し、同様にして、接触面11上で物体が接近した位置が検出される。
電極駆動回路27の構成は図16に示す実施形態3と同様である。制御回路21は、切り替え部28が各電極ペアをタッチパネル駆動回路22及び電極駆動回路27のどちらへ接続するのかを制御する。制御回路21は、切り替え部28に、一部の電極ペアをタッチパネル駆動回路22へ接続させ、他の電極ペアを電極駆動回路27へ接続させる。また、制御回路21は、切り替え部28に、タッチパネル駆動回路22へ接続する電極ペアを順次的に変更させる。タッチパネル駆動回路22へ接続する電極ペアを変更する際には、切り替え部28は、これまでタッチパネル駆動回路22へ接続していた電極ペアを電極駆動回路27へ接続し、これまで電極駆動回路27へ接続していた複数の電極ペアの一部をタッチパネル駆動回路22へ接続する。また、制御回路21は、電極駆動回路27の単極双投形スイッチ271を制御して、電極駆動回路27に接続した電極17の内、触覚を提示させるべき領域に対応する電極17を交流電圧源272へ接続させ、他の電極17をグラウンドへ接続させる。
このような制御回路21の制御により、複数の電極ペアの夫々が順次的にタッチパネル駆動回路22に接続され、接触面11上の各電極ペアに対向する位置での接触の検出が順次的に行われる。各電極ペアは、順次的にタッチパネル駆動回路22に接続されることにより、接触面11への接触を検出するために順次的に制御される。即ち、接触位置の検出のために接触面11の走査が行われる。接触面11全体の走査が終了した後は、制御回路21は、夫々の電極ペアを順次的にタッチパネル駆動回路22へ接続させる処理を繰り返す。これにより、走査が繰り返され、使用者が接触面11の任意の位置に接触した場合に接触位置が検出される。タッチパネル駆動回路22に接続されている期間以外の期間では、電極17は、制御回路21の制御により、電極駆動回路27に接続される。一部の電極17は交流電圧源272に接続され、他の電極17はグラウンドに接続されている。この結果、接触面11上に触覚が提示される。このように、電極17は、接触面11上に触覚を提示するために制御される。
図20は、実施形態4に係る触覚パネル1の例を示す模式図である。図20には、電極17が4行6列に配置されている例を示している。図20では一つの電極に17を付しているが、図20に示す矩形の電極は全て電極17である。X方向に沿った各電極17に0~5の番号を振り、Y方向に沿った各電極17に0~3の番号を振り、X方向及びY方向の番号の組み合わせで各電極17の位置を表している。図20に示した例では、偶数列目に配置された電極17と、次の列に配置された電極17とが電極ペアを構成しているとする。例えば、(0,0)及び(1,0)の位置にある電極17が電極ペアを構成している。また、(1,1)、(1,2)、(2,1)及び(2,2)の位置にある電極17に対応する領域が、触覚が提示される対象領域16であるとする。
図21は、実施形態4における各電極17の動作の例を示すタイミングチャートである。図21では、左から右へかけて時間の経過を示し、t0 ~t12は夫々の時点を示す。図21には、(X,Y)で位置を示す各電極17が夫々の時点でどのような状態になっているのかを示している。図22は、実施形態4における特定のタイミングでの触覚パネル1の状態を示す模式図である。図22A、図22B及び図22Cは、夫々、t1 ~t2 、t2 ~t3 及びt3 ~t4 の期間の状態を示す。電極17がグラウンドに接続されている状態をTG で示し、電極17が交流電圧源272に接続されている状態をTD で示し、電極17が信号入力部221に接続されている状態をST で示し、電極17が電流検出部222に接続されている状態をSR で示している。
図21及び図22に示すように、t1 ~t2 の期間では(2,0)及び(3,0)の位置にある電極ペア並びに(4,2)及び(5,2)の位置にある電極ペアが接触の検出のために制御される。t2 ~t3 の期間では(4,0)及び(5,0)の位置にある電極ペア並びに(0,3)及び(1,3)の位置にある電極ペアが接触の検出のために制御される。t3 ~t4 の期間では(0,1)及び(1,1)の位置にある電極ペア並びに(2,3)及び(3,3)の位置にある電極ペアが接触の検出のために制御される。このように、夫々の電極ペアが順次的に接触の検出のために制御され、接触面11上の各位置での接触の検出が順次的に行われる。また、接触の検出のために制御されている期間以外の期間では、(1,1)、(1,2)、(2,1)及び(2,2)の位置にある電極17は交流電圧源272に接続され、他の電極17はグラウンドに接続されている。この結果、接触面11内の対象領域16に触覚が提示される。
以上のように、本実施形態においても、一部の電極17が接触面11への接触を検出するために制御されている期間の間に、他の電極17は接触面11上に触覚を提示するために制御されている。このため、触覚提示装置は、触覚の提示と接触位置の検出とを同時に実行することができる。また、接触面11への接触を検出するために制御される電極17は順次的に変更され、夫々の電極17は、接触を検出するために制御されるタイミング以外のタイミングでは、接触面11上に触覚を提示するために制御される。接触面11上で接触の検出が行われる位置では、触覚の提示は行われないものの、接触の検出が行われる位置は順次移動していくので、接触面11全体では触覚の提示が途切れることは無い。実施形態3と同様に、触覚の時間分解能よりも短い期間内に静電気力の低下が生じ、更に、静電気力が低下する場合であっても知覚される静電気力は指の全体で平均されてゼロにはならないので、触覚の提示が途切れることを使用者が知覚することは無い。従って、本実施形態においても、触覚提示装置は、触覚の提示と接触位置の検出とを同時に実行することが可能であり、触覚提示装置の使用中に使用者が感じていた触覚が途切れることは無い。
なお、以上の実施形態3及び4においては、タッチパネル駆動回路22、電極駆動回路27及び切り替え部28の他に制御回路21を備える形態を示したが、触覚提示装置は、制御回路21を備えていない形態であってもよい。例えば、触覚提示装置は、制御回路21と同等の機能をタッチパネル駆動回路22が兼ね備えている形態であってもよく、制御回路21と同等の機能を、タッチパネル駆動回路22、電極駆動回路27及び切り替え部28の夫々で分散して備えている形態であってもよい。また、触覚提示装置は、タッチパネル駆動回路22、電極駆動回路27及び切り替え部28の動作を演算部31が直接に制御する形態であってもよい。
また、実施形態3及び4においては、特定の電極17に対して交流電圧を印加することによって触覚を提示する形態を示したが、触覚提示装置は、従来知られているその他の方法で触覚を提示する形態であってもよい。例えば、触覚提示装置は、全ての電極17に同じ交流電圧を印加することによって触覚を提示する形態であってもよい。また、触覚提示装置は、隣り合う電極17に互いに逆極性の電圧を印加することによって触覚を提示する形態であってもよい。
また、触覚提示装置は、実施形態3及び4において説明した方法以外の従来知られている方法で、接触面11へ物体が接触又は接近した位置を検出する形態であってもよい。例えば、触覚提示装置は、触覚を提示するために電極17へ印加する電圧信号の電流値を測定し、測定した電流値の変化に応じて物体の接触又は接近を検出する形態であってもよい。また、実施形態3及び4においては、電極17がマトリクス状に配置された形態を示したが、触覚提示装置は、その他の態様で電極17が配置された形態であってもよい。例えば、触覚提示装置は、触覚により表現すべき形状に電極17が配置された形態であってもよい。
<実施形態5>
図23は、実施形態5に係る触覚パネル1の内部構成を示すブロック図である。実施形態5に係る触覚提示装置の構成は、触覚パネル1以外は実施形態1又は2と同様である。X電極13は複数のサブX電極132からなり、Y電極14は複数のサブY電極142からなる。X電極13を構成する複数のサブX電極133は、並列に隣り合って配置され、共通に接続されている。同様に、Y電極14を構成する複数のサブY電極142は、並列に隣り合って配置され、互いに接続されている。図中にはX電極13が三本のサブX電極132からなる例を示しているが、X電極13は、二本のサブX電極132から構成されていてもよく、四本以上のサブX電極132から構成されていてもよい。同様に、Y電極14は、二本のサブY電極142から構成されていてもよく、四本以上のサブY電極142から構成されていてもよい。触覚パネル1のその他の構成は、実施形態1又は2と同様である。
本実施形態に係る触覚提示装置の動作は、実施形態1又は2と同様である。即ち、一部のX電極13及びY電極14は、接触面11へ物体が接触又は接近した位置を検出するために制御され、物体が接触又は接近した位置の検出のために制御されるX電極13及びY電極14は順次的に変更される。夫々のX電極13及びY電極14は、接触の検出のために制御されるタイミング以外のタイミングでは、接触面11上に触覚を提示するために制御される。これにより、一のX電極13を構成する隣り合う複数のサブX電極132と一のY電極14を構成する隣り合う複数のサブY電極142とが位置検出に用いられ、他のサブX電極132及びサブY電極142が触覚の提示に用いられる。実施形態1及び2と同様に、本実施形態においても、触覚提示装置は、触覚の提示と接触位置の検出とを同時に実行することが可能であり、触覚提示装置の使用中に使用者が感じていた触覚が途切れることは無い。
使用者の指と接触面11との接触部分の内部に位置検出に用いられるサブX電極132と触覚の提示用いられるサブX電極132とが含まれるように、隣り合うX電極13間で各X電極13を構成する複数のサブX電極132のY方向の中心間距離は10mmより小さいことが望ましい。この距離は、6mmより小さいことが更に望ましい。同様に、隣り合うY電極14間で各Y電極14を構成する複数のサブY電極142のX方向の中心間距離は、10mmより小さいことが望ましく、6mmより小さいことが更に望ましい。
<実施形態6>
実施形態6は実施形態2の変形である。実施形態2では、接触面11に使用者の指が接触していない状態で交流電圧源224からX電極13又はY電極14へ電圧を印加した場合、夫々のX電極13の寄生容量及び夫々のY電極14の寄生容量に寄生電流が流れ、電流検出部223はこの寄生電流を検出する。X電極13の寄生容量は、X電極13と交差する複数のY電極14との間、及び当該X電極13と隣り合うX電極13との間に形成される。Y電極14の寄生容量は、Y電極14と交差する複数のX電極13との間、及び当該Y電極14と隣り合うY電極14との間に形成される。触覚パネル1の設計によっては、これらの寄生容量の値が大きくなり、寄生容量に流れる寄生電流が問題となる虞がある。寄生電流は、電流検出部が検出可能な電流値のダイナミックレンジの大部分を占めることがあるので、寄生電流を低減することが望ましい。実施形態6は、寄生電流を低減するための形態である。
図24は、実施形態6に係る触覚パネル1及び触覚パネル駆動部2の内部構成を示すブロック図である。X電極駆動回路23はタッチパネル駆動回路22に接続されている。また、Y電極駆動回路24はタッチパネル駆動回路22に接続されている。後述するように、タッチパネル駆動回路22、X電極駆動回路23及びY電極駆動回路24は、内部構成が実施形態1及び2と異なっている。タッチパネル駆動回路22は、内部の交流電圧源が生成する電圧をX電極駆動回路23及びY電極駆動回路24へ供給可能となっている。触覚提示装置のその他の部分は、実施形態1と同様である。
図25は、実施形態6に係るタッチパネル駆動回路22の内部の構成を示す模式的回路図である。タッチパネル駆動回路22は、交流電圧源225を有している。交流電圧源225は複数の電流検出部223に接続されている。また、交流電圧源225はX電極駆動回路23及びY電極駆動回路24に接続されている。電流検出部223と第1切り替え部25との間には、ハイパスフィルタ(HPF)226が設けられている。また、電流検出部223と第2切り替え部26との間には、ハイパスフィルタ226が設けられている。交流電圧源225は、X電極駆動回路23が有する第1交流電圧源232、及びY電極駆動回路24が有する第2交流電圧源242に比べて、高い周波数の交流電圧を生成する。ハイパスフィルタ226は、交流電圧源225が生成する交流電圧と同じ周波数(例えば、100kHz)を有する電流を通過させ、第1交流電圧源232及び第2交流電圧源242が生成する交流電圧と同じ周波数(例えば、1000Hz及び1240Hz)を有する電流を阻止する特性を有する。タッチパネル駆動回路22のその他の部分は、実施形態1と同様である。
図26は、実施形態6に係るX電極駆動回路23の内部の構成を示す模式的回路図である。前述したように、X電極駆動回路23には、タッチパネル駆動回路22が有する交流電圧源225が接続されている。X電極駆動回路23は、第1交流電圧源232が生成する電圧に交流電圧源225が生成する電圧を重畳する電圧重畳部233を有する。また、X電極駆動回路23は、グラウンド電圧に交流電圧源225が生成する電圧を重畳する電圧重畳部234を有する。各単極双投形スイッチ231は、各X電極13と電圧重畳部233の出力ノードN1又は電圧重畳部234の出力ノードN2との接続を切り替える。X電極駆動回路23のその他の部分は、実施形態1と同様である。
電圧重畳部233及び電圧重畳部234の動作を説明する。図27は、実施形態6に係るX電極駆動回路23において得られる電圧の波形を模式的に示すグラフである。図中の横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。第1交流電圧源232が生成する交流電圧の振幅を100Vとし、第1周波数f1を1000Hzとする。タッチパネル駆動回路22の交流電圧源225が生成する交流電圧の振幅を1Vとし、周波数を100kHzとする。図27Aは、第1交流電圧源232が生成する交流電圧の波形を模式的に示し、図27Bは、交流電圧源225が生成する交流電圧の波形を模式的に示す。図27Cは、電圧重畳部233の出力ノードN1が出力する電圧の波形を模式的に示す。出力ノードN1から出力される電圧は、第1交流電圧源232が生成する交流電圧と交流電圧源225が生成する交流電圧とを加算した電圧である。図27Dは、電圧重畳部234の出力ノードN2が出力する電圧の波形を模式的に示す。出力ノードN2から出力される電圧は、グラウンドの電圧、即ち0Vの電圧と交流電圧源225が生成する交流電圧とを加算した電圧である。このように、電圧重畳部233及び電圧重畳部234は、与えられた二つの電圧を加算し出力する機能を有する。
図28は、実施形態6に係るY電極駆動回路24の内部の構成を示す模式的回路図である。前述したように、Y電極駆動回路24には、タッチパネル駆動回路22が有する交流電圧源225が接続されている。Y電極駆動回路24は、第2交流電圧源242が生成する電圧に交流電圧源225が生成する電圧を重畳する電圧重畳部243を有する。また、Y電極駆動回路24は、グラウンド電圧に交流電圧源225が生成する電圧を重畳する電圧重畳部244を有する。各単極双投形スイッチ241は、各Y電極14と電圧重畳部243の出力ノードN3又は電圧重畳部244の出力ノードN4との接続を切り替える。Y電極駆動回路24のその他の部分は、実施形態1と同様である。
電圧重畳部243及び電圧重畳部244の動作を説明する。図29は、実施形態6に係るY電極駆動回路24において得られる電圧の波形を模式的に示すグラフである。図中の横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。第2交流電圧源242が生成する交流電圧の振幅を100Vとし、第2周波数f2を1240Hzとする。タッチパネル駆動回路22の交流電圧源225が生成する交流電圧の振幅を1Vとし、周波数を100kHzとする。図29Aは、第2交流電圧源242が生成する交流電圧の波形を模式的に示し、図29Bは、交流電圧源225が生成する交流電圧の波形を模式的に示す。図29Cは、電圧重畳部243の出力ノードN3が出力する電圧の波形を模式的に示す。出力ノードN3から出力される電圧は、第2交流電圧源242が生成する交流電圧と交流電圧源225が生成する交流電圧とを加算した電圧である。図29Dは、電圧重畳部244の出力ノードN4が出力する電圧の波形を模式的に示す。出力ノードN4から出力される電圧は、グラウンドの電圧、即ち0Vの電圧と交流電圧源225が生成する交流電圧とを加算した電圧である。このように、電圧重畳部243及び電圧重畳部244は、与えられた二つの電圧を加算し出力する機能を有する。
実施形態2では、X電極13は第1交流電圧源232、グラウンド、及びタッチパネル駆動回路22のうちいずれかに接続される。これに対し、実施形態6では、X電極13は、電圧重畳部233の出力ノードN1、電圧重畳部234の出力ノードN2、及びタッチパネル駆動回路22のうちいずれかに接続される。X電極13がタッチパネル駆動回路22に接続された状態では、図27Bに示す如き、交流電圧源225が生成する交流電圧がX電極13に印加される。X電極13が出力ノードN1に接続された状態では、図27Cに示す如き、第1交流電圧源232が生成する交流電圧と交流電圧源225が生成する交流電圧とを加算した電圧がX電極13に印加される。X電極13が出力ノードN2に接続された状態では、図27Dに示す如き、グラウンドの電圧の電圧と交流電圧源225が生成する交流電圧とを加算した電圧がX電極13に印加される。
また、実施形態2では、Y電極14は第2交流電圧源242、グラウンド、タッチパネル駆動回路22のうちいずれかに接続される。これに対し、実施形態6では、Y電極14は、電圧重畳部243の出力ノードN3、電圧重畳部244の出力ノードN4、及びタッチパネル駆動回路22のうちいずれかに接続される。Y電極14がタッチパネル駆動回路22に接続された状態では、図29Bに示す如き、交流電圧源225が生成する交流電圧がY電極14に印加される。Y電極14が出力ノードN3に接続された状態では、図29Cに示す如き、第2交流電圧源242が生成する交流電圧と交流電圧源225が生成する交流電圧とを加算した電圧がY電極14に印加される。Y電極14が出力ノードN4に接続された状態では、図29Dに示す如き、グラウンドの電圧の電圧と交流電圧源225が生成する交流電圧とを加算した電圧がY電極14に印加される。
電圧重畳部233、234、243及び244は、X電極13及びY電極14に印加される電圧のうち、タッチパネル駆動回路22の交流電圧源225が生成する電圧の周波数(本実施形態では100kHz)の成分の振幅が同一になるように構成されている。即ち、出力ノードN1に接続されたX電極13、出力ノードN2に接続されたX電極13、出力ノードN3に接続されたY電極14、及び出力ノードN4に接続されたY電極14は、タッチパネル駆動回路22に接続されたX電極13及びY電極14に印加される電圧と同じ周波数及び振幅を有する成分を含む電圧が印加される。X電極13及びY電極14に印加される電圧のうち、タッチパネル駆動回路22の交流電圧源225が生成する電圧の周波数成分に着目すると、全てのX電極13及びY電極14は同じ振幅、同じ位相で駆動される。このため、接触面11に使用者の指が接触していない状態で、交流電圧源225からX電極13又はY電極14へ電圧を印加した場合、寄生容量を構成する電極間の電圧が一定となり、寄生容量には電流が流れない。
ここで、触覚パネル1は、図24に示すように、5本のX電極X0 ~X4 及び6本のY電極Y0 ~Y5 を備えているとし、X電極X1 がタッチパネル駆動回路22に接続されている状態を考える。このとき、X電極X1 には、X電極X1 とY電極Y0 ~Y5 の夫々との交差部分、X電極X1 とX電極X0 との隣接部分、及びX電極X1 とX電極X2 との隣接部分に寄生容量が形成される。また、X電極X1 は電流検出部223を介して交流電圧源225に接続され、他の全ての電極には交流電圧源225が生成する電圧が重畳される。
図30は、X電極X1 が電流検出部223を介して交流電圧源225に接続され、他の全ての電極に交流電圧源225が生成する電圧が重畳される状態をモデル化した回路図である。X電極X1 が図中のP1に対応し、他の全ての電極が図中のP2に対応する。電極P1とP2との間には、寄生容量Cpが存在する。しかし、寄生容量Cpを構成する電極P1と電極P2との間の電位差が変化しないので、寄生容量Cpには、交流電圧源225が生成する電圧の周波数の成分の電流が流れない。このため、電流検出部223は電流を検出しない。
図31は、実施形態2での電極の状態をモデル化した回路図である。実施形態2では、X電極X1 は電流検出部223を介して周波数が100kHzの交流電圧源224に接続され、他の電極の多くは、グラウンド、周波数が1000Hzの第1交流電圧源232、又は周波数が1240Hzの第2交流電圧源242に接続される。交流電圧源224が生成する電圧の周波数である100kHzの成分に着目すると、X電極X1 以外の電極の多くは、グラウンドに接続されているとされるモデルで表すことができる。図31に示す電極P1はX電極X1 に対応し、電極P2は他の電極の多くをまとめた電極に対応する。寄生容量Cpを構成する電極P1と電極P2との間の電位差が変化するので、寄生容量Cpには電流が流れる。この電流は、実施形態2において接触面11に使用者の指が接触していない状態で流れる寄生電流である。
実際に作成した実施形態6に係る触覚パネル1において寄生容量を測定したところ、一本のX電極13の寄生容量は240pFであり、一本のY電極14の寄生容量は170pFであった。また、接触面11に使用者の指が接触した場合は、電極と指との間に生じる静電容量は5pFであった。実施形態2では、電流検出部223が検出可能な電流値のダイナミックレンジの内、240/245が本来不要な寄生電流で占有される。これに対し、実施形態6では、寄生電流がほぼゼロに低減され、電流検出部223が検出する電流のSN比が向上する。
図32は、実施形態6に係る電圧重畳部233及び234の構成例を示す回路図である。電圧重畳部233はキャパシタC1で構成されている。キャパシタC1の一端は出力ノードN1に接続され、他端はタッチパネル駆動回路22の交流電圧源225に接続されている。キャパシタC1の一端及び出力ノードN1には、第1交流電圧源232が接続されている。第1交流電圧源232の内部に記された抵抗R1は、第1交流電圧源232の出力インピーダンスを表す。電圧重畳部234は、出力ノードN2とグラウンドとの間に接続された抵抗R3、及び出力ノードN2と交流電圧源225との間に接続された抵抗R2を含んで構成されている。出力ノードN1及び出力ノードN2から出力される電圧の内、交流電圧源225が生成する電圧の周波数の成分の振幅が等しくなるように、抵抗R2と抵抗R3との比が定められている。電圧重畳部243及び244も、同様に構成されている。
以上の実施形態6で説明した寄生電流を低減するための触覚提示装置の構成は、マトリクス状に配置された複数の電極を備えた実施形態3に適用することも可能である。寄生電流を低減するための構成を実施形態3に適用した形態においても、実施形態6と同様の効果が得られる。また、実施形態6で説明した寄生電流を低減するための構成は、第3制御部を備えていない触覚提示装置に適用することも可能である。即ち、触覚を提示させるための電極と、物体の接触又は接近を検出するための電極とが接触面に沿って別々に配置されている触覚提示装置においても、寄生電流を低減するための構成を適用することが可能であり、実施形態6と同様の効果が得られる。
なお、以上の実施形態1~6においては、接触面11が平面である形態を示したが、触覚提示装置は、接触面11が曲面である形態であってもよい。また、実施形態1~6においては、触覚提示装置がスマートフォン等のコンピュータである形態を示したが、触覚提示装置は、現金自動預け払い機に組み込まれた形態等、種々の形態をとることができる。また、実施形態1~6においては、触覚提示装置が表示パネル36を備える形態を示したが、触覚提示装置は、表示パネル36を備えていない形態であってもよい。