本開示に係る眼科装置の一実施形態としての実施例1の眼科装置10を、図1から図3を用いて説明する。先ず、実施例1の眼科装置10の全体構成を説明する。
眼科装置10は、ベース11と駆動部12と架台13とヘッド部14と額当部15と顎受部16と操作部17と操作レバー18と表示部19とを有する。眼科装置10では、ベース11に駆動部12を介して架台13が設けられ、駆動部12によりベース11に対して架台13が前後左右上下に移動可能とされる。架台13には、後述する制御部31や眼情報取得部33を収容するヘッド部14が設けられる。ベース11には、測定時にヘッド部14に対して被検者(患者)の顔、すなわち被検眼Eの位置を固定する額当部15および顎受部16が設けられる。その額当部15は、被検者が額を宛がう箇所となり、顎受部16は、被検者が顎を載せる箇所となる。この眼科装置10では、被検者が額当部15に額を当接させつつ顎受部16に顎を載せてヘッド部14に対峙した状態で、被検眼Eの検査、観察、撮影等を行うものとされている。
操作部17は、顎受部16や後述する眼情報取得部33の動作や設定等を操作するもので、架台13に設けられる。操作部17は、実施例1では、図2に示すように、操作レバー18の左側に設けられた顎受移動ボタン21、内部固視標移動ボタン22、小瞳孔絞りボタン23、スプリットボタン24および外部固視標切換ボタン25と、操作レバー18の右側に設けられた架台固定ノブ26と、を有する。顎受移動ボタン21は、顎受部16を上下に移動させるもので、上移動ボタン21aと下移動ボタン21bとを有する。内部固視標移動ボタン22は、眼情報取得部33に設けられた固視標の位置を上下左右に移動させるものである。内部固視標移動ボタン22は、固視標を初期位置に戻すリセットボタン22aと、それを囲むように四方に設けられた上移動ボタン22bと右移動ボタン22cと下移動ボタン22dと左移動ボタン22eと、を有する。
小瞳孔絞りボタン23は、後述する眼情報取得部33に設けられる小瞳孔絞りのONまたはOFF、すなわち小瞳孔絞りを光路上に位置させるか否かの操作のために設けられている。スプリットボタン24は、眼情報取得部33において合焦を容易にするためのスプリット指標を被検眼Eの眼底に投影するか否かの操作のために設けられている。外部固視標切換ボタン25は、眼情報取得部33とは別の外部に設けられた外部固視標のONまたはOFF、すなわち外部固視標を利用するか否かの操作のために設けられている。架台固定ノブ26は、架台13をベース11に固定するか否か、すなわちベース11に対する架台13の移動を可能な状態とする否かの操作のために設けられている。なお、操作部17に設けられる各種のボタンおよび操作の内容は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
操作レバー18は、架台13に設けられ、実施例1では操作部17の中央に設けられている。操作レバー18は、架台13から立ち上がりつつ傾倒操作が可能とされている。操作レバー18は、傾倒されるとヘッド部14の前後左右方向への移動操作となり、軸線を回転中心として回転されるとヘッド部14の上下方向への移動操作となる。このため、操作レバー18を傾倒操作および回転操作することにより、後述する眼情報取得部33を用いて被検眼Eの測定を行うべく、額当部15および顎受部16に保持された被検者の被検眼Eに適合する位置へとヘッド部14(眼情報取得部33)をベース11に対して三次元方向に移動させることができる。操作レバー18では、頂部にボタンスイッチ18aが設けられ、ボタンスイッチ18aを押すことで眼情報や測定画像の取得が開始される。
表示部19は、ヘッド部14に設けられ、一例として液晶表示装置(LCDモニタ)で構成してタッチパネル式の表示画面とされている。表示部19は、後述する制御部31の制御下で、眼情報取得部33からの画像データに基づく被検眼Eの前眼部像等の画像や、眼情報取得部33からの各種検査情報等(検者情報、検査条件、検査結果、測定画像等)が表示される。また、表示部19は、制御部31の制御下で、眼科装置10における各種動作のためのソフトウェアキーが表示され、そのソフトウェアキーの操作により被検眼Eに対するアライメント、各種検査条件の設定、および表示部19の調整等の各種動作の実行操作が可能とされている。なお、操作部17や操作レバー18による操作は、表示部19のタッチパネルで同様に行えるものとしてもよい。眼科装置10では、上記した構成の他に、測定完了信号や測定者からの指示に応じて測定結果を印字するプリンタや、測定結果を外部メモリやサーバーに出力する出力部が設けられる。
ヘッド部14には、眼科装置10の各部を統括的に制御する制御部31が設けられる。制御部31は、図3に示すように、接続された記憶部32または内蔵する内部メモリ31aに記憶したプログラムを例えばRAM(Random Access Memory)上に展開することにより、適宜操作部17や操作レバー18や表示部19に対する操作に応じて、眼科装置10の動作を統括的に制御する。実施例1では、内部メモリ31aは、RAM等で構成され、記憶部32は、ROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等で構成される。制御部31は、後述する眼情報取得部33における測定用の光学系の光源やアライメント用の光学系の光源およびセンサ類が接続され、適宜それらを制御する。制御部31は、眼情報取得部33における測定に必要な光学系の動作部が接続され、適宜それらを駆動(移動も含む)させる。制御部31は、駆動部12、操作部17、操作レバー18および表示部19に接続され、操作部17や操作レバー18や表示部19(そのタッチパネル)に為された操作や上記のプログラムに従い、眼情報取得部33で取得した画像や眼特性等の眼情報を表示部19に適宜表示させる。眼科装置10では、商用電源から制御部31に電力が供給され、制御部31が駆動部12および眼情報取得部33に電力を供給する。制御部31は、駆動部12や上記した各光源や各動作部を適宜制御する。
ヘッド部14には、被検眼Eの眼情報を取得する眼情報取得部33が設けられる。その眼情報は、被検眼Eの画像(測定画像)や、被検眼Eの眼底の画像(測定画像)や、被検眼Eの網膜の断層画像(測定画像)や、被検眼Eの角膜内皮画像(測定画像)や、被検眼Eの屈折力や、被検眼Eの角膜形状や、被検眼Eの眼圧等をいう。眼情報取得部33は、眼底の画像を撮影する眼底カメラ、網膜の断層画像を撮影する断層撮影装置(OCT)、角膜内皮画像を撮影するスペキュラマイクロスコープ、屈折力を測定するレフラクトメータや波面センサ、角膜形状を測定するケラトメータ、眼圧を測定するトノメータ等が、単独でまたは複数組み合わされて構成される。実施例1の眼情報取得部33は、少なくとも眼底カメラと断層撮影装置(OCT)とを有している。
眼情報取得部33は、被検眼Eの正面画像を取得する眼底カメラユニット40と、OCTを実行するためのOCTユニット50と、を有する。眼底カメラユニット40は、被検眼Eに照明光を照射する照明光学系と、被検眼Eからの照明光の戻り光を検出して被検眼Eの眼底の2次元画像(眼底像)を撮影する撮影光学系と、を有する。その2次元画像は、観察画像、撮影画像等の正面画像である。観察画像は、近赤外光を用いた動画撮影により得られる動画像である。撮影画像は、フラッシュ光を用いた静止画像である。眼底カメラユニット40は、撮影合焦駆動部41と、観察用撮像素子42と、撮影用撮像素子43と、OCT合焦駆動部44と、光路長変更部45と、光スキャナ46と、アライメント光学部47と、フォーカス光学部48と、を有する。
撮影合焦駆動部41は、眼底カメラユニット40における撮影光学系の撮影合焦レンズを移動することで、眼底カメラユニット40における撮影光学系の焦点位置を変更させる。撮影合焦駆動部41は、撮影光学系の焦点位置を被検眼Eの前眼部または眼底に合わせることができる。
観察用撮像素子42は、眼底カメラユニット40における撮影光学系を経て被検眼Eから戻る撮影照明光の光が受光面に結像されて、その戻り光を検出する。制御部31は、観察用撮像素子42が検出した戻り光に基づく画像(観察画像)を表示部19に表示させる。
撮影用撮像素子43は、眼底カメラユニット40における撮影光学系を経て被検眼Eから戻る撮影照明光の光が受光面に結像されて、その戻り光を検出する。制御部31は、撮影用撮像素子43が検出した戻り光に基づく画像(撮影画像)を表示部19に表示させる。
OCT合焦駆動部44は、眼底カメラユニット40において撮影光学系に合流されるOCT用の光路のOCT合焦レンズを移動することで、後述する測定光の焦点位置(ビームウェストの位置)を変更させる。光路長変更部45は、眼底カメラユニット40のOCT用の光路の長さ(光路長)を変更する。光路長変更部45は、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整等のために光路長を調整する。光スキャナ46は、眼底カメラユニット40のOCT用の光路を通過する測定光の進行方向を変更するもので、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ46は、2次元走査が可能な部材で形成され、例えばガルバノスキャナが用いられる。
アライメント光学部47は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うためのアライメント指標を生成する。アライメント指標(その光)は、被検眼Eの角膜で反射されて観察照明光の戻り光と同じ経路を通り観察用撮像素子42で検出される。その受光像(アライメント指標像)を用いることで、マニュアルアライメントやオートアライメントが実行される。
フォーカス光学部48は、被検眼Eの眼底に対してフォーカスを合わせるためのスプリット指標を生成する。スプリット指標(その光)は、眼底で反射されて観察照明光の戻り光と同じ経路を通り観察用撮像素子42で検出される。その受光像(スプリット指標像)を用いることで、マニュアルフォーカシングやオートフォーカシングが実行される。
OCTユニット50は、眼底のOCT画像を取得するためのOCT画像光学系が設けられている。OCT画像光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を分光器によって検出するように構成されている。OCTユニット50からの測定光は、眼底カメラユニット40内の光路を通じて被検眼Eに導かれ、その戻り光は、同じ光路を通じてOCTユニット50に導かれる。OCTユニット50は、光源ユニット51と、光減衰器(アッテネータ)52と、偏波調整器(偏波コントローラ)53と、干渉光撮像素子54と、を有する。
光源ユニット51は、出射光の波長を高速で変化させる近赤外波長可変レーザを有する。光源ユニット51から出力された光は、測定光と参照光とに分割される。光減衰器52は、参照光の光量を自動で調整する。偏波調整器53は、光量が調整された参照光の偏光状態を調整する。この偏光状態が調整された参照光は、ファイバカプラに到達する。
測定光は、被検眼Eに入射され、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。その被検眼Eからの測定光の戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラに到達する。測定光と参照光とは、ファイバカプラで合成されて(干渉されて)干渉光とされる。この干渉光は、干渉光撮像素子54に導かれる。
干渉光撮像素子54は、一対の干渉光をそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出結果の差分を出力する。干渉光撮像素子54は、各干渉光の各スペクトル成分を検出して電荷に変換し、この電荷を蓄積して検出信号(検出結果)を生成して、制御部31に接続された画像形成部61に送る。
画像形成部61は、干渉光撮像素子54から入力される検出信号に基づいて、眼底の断層像の画像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、分散補償、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。画像形成部61は、測定光の各照射位置におけるAライン(z方向(眼底深度方向)に延びるライン)に沿った1次元画像(Aライン像)を形成する。さらに、画像形成部61は、直線的または曲線的に配列された複数の照射位置に対応する複数のAライン像をその配列に応じて並べた2次元断層像(Bスキャン像)を形成してもよい。他のタイプのOCT装置の場合、画像形成部61は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。画像形成部61は、形成した画像(そのデータ)を制御部31に接続された画像処理部62に送る。
画像処理部62は、画像形成部61で形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。例えば、画像処理部62は、画像の輝度補正等の各種補正処理を実行する。また、画像処理部62は、眼底カメラユニット40により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。これにより、眼底の3次元画像データを形成でき、その3次元画像データに基づいて断層像(測定画像)を形成する。
眼情報取得部33では、測定光の走査態様(スキャンパターン)として、例えば、横スキャン、縦スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋(渦巻)スキャン等が用いられる。これらの走査態様は、眼底の観察部位(視神経乳頭、黄斑、病変部など)、解析対象(網膜厚など)、走査に要する時間、走査の精密さなどを考慮して選択的に使用される。この走査態様は、2次元走査が可能とされた光スキャナ46により実行される。このような測定光の走査により、走査線(走査軌跡)に沿う方向と眼底深度方向(z方向)とにより張られる面における断層像(測定画像)を取得することができる。また、走査線の間隔を狭くすることで、前述の3次元画像を取得できる(3次元スキャン)。これらの動作が、OCTの測定画像を取得するスキャン工程となる。
ここで、眼情報取得部33は、スキャン位置の補正いわゆるトラッキングすることができる。トラッキングは、被検眼Eの眼球運動に合わせて光学系を移動させる制御である。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとフォーカシングが実行される。トラッキングは、例えば観察画像によって被検眼Eの動きをリアルタイムで検出し、その検出結果に基づいて装置光学系を移動させることにより、装置光学系の位置を眼球運動に追従させる制御となる。このため、眼情報取得部33は、被検眼Eが眼球運動した場合でも、光学系に対してアライメントおよびフォーカスが合った好適な位置関係を維持できる。
この眼科装置10では、図2に示すように、操作レバー18を傾倒操作する手における操作可能範囲71に付加操作ボタン72が設けられている。操作可能範囲71は、操作レバー18を傾倒操作する手において傾倒操作に用いない指で操作することが可能な範囲である。実施例1では、検者は、親指と中指とで操作レバー18を挟みつつ人差し指を頂部のボタンスイッチ18aに掛けた状態で操作レバー18を傾倒操作することが一般的であるので、その状態の手における薬指および小指で操作可能な範囲を操作可能範囲71としている。
また、実施例1では、操作レバー18を右手で傾倒操作する場合と左手で傾倒操作する場合との双方に対応するために、操作レバー18の右側および左側のそれぞれに操作可能範囲71を設定し、それぞれに付加操作ボタン72を設けている。なお、図2では、斜線を付した範囲として両操作可能範囲71を示しているが、操作部17や操作レバー18の形状に応じて適宜変化するものであり、図2に示す例に限定されない。この両付加操作ボタン72は、いずれか一方のみを有効な状態とするように表示部19等で設定可能なものとしてもよく、双方を常に有効な状態としていてもよい。
両付加操作ボタン72は、両手に対応して設けたものであって、それぞれの役割は同じものとする。このため、以下では単に付加操作ボタン72と記載する場合もある。付加操作ボタン72は、実施例1では押し下げ操作が可能とされた単一のボタンとされている。なお、付加操作ボタン72は、左右の各々の操作可能範囲71において、押し下げ操作が可能とされた複数のボタンが設けられて構成されていてもよい。付加操作ボタン72は、複数の断層像(測定画像)の取得の動作を行っている際、各々を取得した状況の入力が可能とされている。この取得した状況とは、OCTの測定画像の取得に適した状態であったか否かを示すものである。
実施例1の付加操作ボタン72は、一回押し下げ操作されることが、OCTの測定画像の取得に適切な状態であることの入力となる。また、付加操作ボタン72は、比較的長い時間押し下げた状態を維持する押し下げ操作(所謂長押し)されることが、OCTの測定画像の取得に不適切な状態であることの入力となる。さらに、付加操作ボタン72は、短時間に二回連続で押し下げ操作されることが、OCTの測定画像の取得に最適でも不適切でもない等により保留の状態であることの入力となる。この保留の状態は、例えば、理想的ではない測定画像ではあるがこれよりも良い測定画像が取得できるかわからない場合や、測定に理想的な状況とするのが困難な被検者に対して最善と思われる状況で取得したものである場合等のように、同じ測定画像であっても意味合いが異なる場合等に適用することが考えられる。この長押しの時間や二回連続の判断のための時間は、適宜設定できる。なお、付加操作ボタン72は、単一のボタンの押し下げ操作であっても態様を異なるものとすることで操作が区別できるものであれば、他のやり方としてもよく、実施例1の構成に限定されない。このとき、操作されている時間と、先の操作と後の操作との間隔と、を適宜組み合わせることで、単一のボタンの押し下げ操作であっても、容易にかつ簡易な操作で区別可能にできる。
付加操作ボタン72は、入力された操作情報を制御部31に出力する。制御部31は、付加操作ボタン72で入力された操作情報を、その入力されていた時に取得していたOCTの測定画像に関連付けて、記憶部32に記憶させる。このため、付加操作ボタン72は、検者が測定画像を取得した際の印象に基づく状況の記録を入力することが可能とされている。なお、付加操作ボタン72は、入力可能な印象の内容や種類は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
制御部31は、長押しされて不適切な状態との入力が為されると、その入力されていた時に取得していたOCTの測定画像を削除する。なお、制御部31は、不適切な状態との入力が為された場合、その入力されていた時に取得していたOCTの測定画像に不適切な状態との情報を関連付けて記憶部32に記憶させてもよく、実施例1の構成に限定されない。
また、実施例1の付加操作ボタン72は、スキャン工程を開始する前のアライメント工程において、最適化の開始のための操作(開始操作)を行うことができる。この最適化は、OCTを実行するために眼科装置10(制御部31)が各種設定を最適化するものである。付加操作ボタン72は、後述するようにアライメント工程において操作レバー18の傾倒操作により後眼部アライメントを行っている際に押し下げ操作されることで、最適化を開始させる開始操作となる。
さらに、実施例1の付加操作ボタン72は、スキャン工程を実行している時点において、スキャン工程を中断させる操作(中断操作)を行うことができる。これは、スキャン工程を実行している際に、OCTの測定画像を適切に取得する観点から、スキャン工程を中止する必要が生じることがあることによる。このような場面としては、例えば、被検者の状況、眼疾患の内容、眼以外の疾患等により、顔が大きくずれたり固視が外れたり瞬きが行われたりすることが考えられる。すると、最後までスキャン工程を実行しても適切なOCTの測定画像が取得できない(品質が低下する)ため、時間を節約するためにスキャン工程を中断して遣り直すことが望ましい。このため、付加操作ボタン72は、中断操作した時点でスキャン工程を中断させることが可能とされている。この中断操作は、例えば、上記した不適切な状態の入力となる長押し操作よりも長い時間押し下げた状態を維持する押し下げ操作(所謂超長押し)とすることで、上記した3つの印象の入力を可能としつつ区別することができる。なお、中断操作は、上記した3つの印象の入力と区別可能なものであれば、他の操作としてもよく、操作可能範囲71内に第2の付加操作ボタンを設けるものとしてもよく、実施例1の構成に限定されない。
制御部31は、付加操作ボタン72により中断操作が為されると、実行しているスキャン工程を中断して、アライメント工程のうちの後述するXYZの調整、前眼部アライメントおよび後眼部アライメントのうちのいずれかのステップまで戻ってやり直すように制御する。このXYZの調整、前眼部アライメントおよび後眼部アライメントのいずれに戻るのかは、表示部19等で選択するものとしてもよく、表示部19等により予め設定していてもよい。実施例1では、後眼部アライメントからやり直すように設定されている。
次に、眼科装置10の動作について説明する。まず、撮影の準備が行われる。検者は、眼科装置10を起動し、表示部19で上記の3次元スキャンを実行する操作すると、制御部31は、ライブOCT画像で眼底を観察するための画面を表示部19に表示させる。検者は、操作レバー18を用いてヘッド部14(眼底カメラユニット40等)を額当部15および顎受部16から離れる方向に移動する(XYZの調整)。それにより、前眼部の観察が可能となる。
椅子に座らせた被検者の顎を顎受部16に載せるとともに額を額当部15に宛がわせる。その後の所定の操作により、制御部31は、眼底カメラユニット40の観察光源を点灯させ、観察用撮像素子42からの出力に基づく観察画像(前眼部観察画像)を表示部19に表示させる。検者は、観察画像のフレームの中心に瞳孔が描出されるように操作レバー18を傾倒操作してヘッド部14の位置を調整する(前眼部アライメント)。この位置調整が完了したら、検者は、ヘッド部14を被検眼Eに近接させていく。それにより、観察対象が前眼部から眼底に切り替えられ、眼底の観察画像が表示部19に表示される。この位置調整および観察画像の取得の動作は、眼科装置10(制御部31)が自動でおこなってもよい。
このとき、制御部31は、アライメント光学部47を制御してアライメント指標(2つのアライメント輝点)の投影を開始する。観察画像には、2つのアライメント輝点像が描出される。検者は、フレームの中心に提示されたターゲット(括弧マーク等)内に2つのアライメント輝点像が重なって描出されるように、操作レバー18を傾倒操作してヘッド部14の位置を調整する(後眼部アライメント)。この位置調整が完了すると、制御部31によるOCTを実行するための各種設定の最適化が実行可能となる。制御部31は、操作レバー18が傾倒操作されている際に付加操作ボタン72が操作されると、位置調整(後眼部アライメント)が完了して最適化を開始する開始操作が為されたものと判断して、光路長の調整、偏光状態の調整、光量の調整、フォーカスの調整等をして最適化を実行する。このため、上記したXYZの調整、前眼部アライメントおよび後眼部アライメントは、OCTの測定画像を適切に取得するためのアライメント工程となる。また、開始操作は、被検眼Eの後眼部へのピント合わせの開始の操作となる。
最適化の完了後、検者は、フレア混入等の問題が観察画像に発生していないか確認する。問題が発生していないことが確認されたら、検者は、操作レバー18のボタンスイッチ18aを用いて、撮影を開始するための操作を行う。撮影の開始の操作がされると、制御部31は、OCTによる現在のスキャン位置を表す画像(測定画像)を観察画像に重畳させる。このとき、制御部31は、被検眼Eの眼底(後眼部)の予備的なOCT計測により正面断層像を取得し、その正面断層像に基づいて本計測の対象となる断面位置を指定させることもできる。これにより、眼科装置10では、複数のOCTの測定画像を取得することができる。
このとき、検者は、付加操作ボタン72を適宜操作することで、測定画像を取得した際の印象を入力することができ、各測定画像に印象を関連付けることができる。また、検者は、被検者が瞬きをする等を確認すると、付加操作ボタン72で中断操作することで、スキャン工程を中断させることができる。すると、制御部31は、上記した後眼部アライメントからやり直し、最適化したのちに再びスキャン工程を開始する。これにより、眼科装置10は、適切な複数の測定画像を取得することができ、眼底の3次元画像データを適宜形成できる。
ここで、検者は、一方の手で被検者を開瞼させつつ他方の手で操作レバー18を傾倒操作して、上記のように眼科装置10にOCTの測定画像を取得させることが珍しくない。すると、検者は、両手を使用しており、測定画像を取得した際の印象の入力等の他の操作をすることが困難となる。
しかしながら、眼科装置10は、操作レバー18の近傍に設けた付加操作ボタン72を操作することで印象の入力等をすることができる。その付加操作ボタン72は、操作レバー18を傾倒操作する他方の手における操作可能範囲71に設けられているので、操作レバー18を傾倒操作したまま他方の手で操作することができる。このため、眼科装置10は、一方の手で被検者を開瞼させつつ他方の手で操作レバー18を傾倒操作している場合であっても、測定画像を取得した際の印象の入力等を行うことができる。
本開示に係る眼科装置の実施例1の眼科装置10は、以下の各作用効果を得ることができる。
眼科装置10は、操作レバー18を傾倒操作する手における操作可能範囲71に付加操作ボタン72が設けられている。このため、眼科装置10は、一方の手で被検者を開瞼させつつ他方の手で操作レバー18を傾倒操作している場合であっても、付加操作ボタン72を用いることで開瞼および傾倒操作とは異なる操作を行うことができる。これにより、眼科装置10は、付加操作ボタン72の操作により測定画像を取得した際の印象の入力を可能とすることで、測定画像に印象を関連付けることができる。
眼科装置10は、操作レバー18が傾倒可能に設けられた架台13における操作レバー18が設けられた周辺に付加操作ボタン72が設けられている。このため、眼科装置10は、簡易な構成で、操作レバー18を傾倒操作している手で操作できる付加操作ボタン72を設けることができる。
眼科装置10は、操作レバー18を中心として左右対称となるように対を為して付加操作ボタン72が架台13に設けられている。このため、眼科装置10は、操作レバー18の傾倒操作を右手でする検者であっても左手でする検者であっても、双方に対応することができる。
眼科装置10は、付加操作ボタン72への操作により測定画像を取得した際の印象を測定画像に関連付けて入力することができる。このため、眼科装置10は、簡易に取得した際の印象を測定画像に関連付けることができる。このため、後に測定画像を確認する場合であっても、どのような状況で取得された測定画像であるのかを把握することができ、測定画像を用いた診察等を適切に効率良く行うことができる。このことは、測定を行った検者とは異なる検者が測定画像を見た場合であっても、どのような状況で取得された測定画像であるのかを容易に把握できるので、同一の被検者に対して検者が変わる場合等でも有効である。
眼科装置10は、付加操作ボタン72を操作している時間と、付加操作ボタン72への先の操作と後の操作との間隔と、の組み合わせにより、入力する印象の選択が可能である。このため、眼科装置10は、簡易に様々な印象を入力できる。
眼科装置10は、眼情報取得部33が測定画像の取得(スキャン工程)を開始する前までは、付加操作ボタン72により被検眼Eの後眼部へのピント合わせ(最適化)の開始の操作が可能である。このため、眼科装置10は、付加操作ボタン72で様々な操作を行うことができ、利便性が向上されている。
眼科装置10は、眼情報取得部33が測定画像の取得を行っている間は、付加操作ボタン72により測定画像の取得を中断する操作が可能である。このため、眼科装置10は、付加操作ボタン72でさらに様々な操作を行うことができるとともに、直ちに測定画像の取得動作を中断することができ、利便性がさらに向上されている。
眼科装置10は、付加操作ボタン72により測定画像の取得が中断されると、被検眼Eに対する眼情報取得部33の位置を調整するアライメント工程における予め定められたステップ(実施例1ではXYZの調整、前眼部アライメントおよび後眼部アライメントのうちのいずれか)を行ってから、再び眼情報取得部33が取得を行う。このため、眼科装置10は、簡易にかつ総合的に短い時間で、複数のOCTの測定画像を適切に取得することができる。
したがって、本開示に係る眼科装置の一実施例としての眼科装置10では、操作レバー18を傾倒操作しつつ傾倒操作している手で他の操作することができる。
なお、付加操作ボタン72は、実施例1では操作部17の中央の操作レバー18の近傍に設けていたが、操作レバー18を傾倒操作している手で操作可能となる操作可能範囲(71)に設けるものであれば、他の位置でもよく、実施例1の構成に限定されない。
また、付加操作ボタン72は、操作レバー18の左右のそれぞれに設けられているが、いずれか一方のみに設けてもよく、実施例1の構成に限定されない。
次に、本開示の一実施形態である実施例5の眼科装置10Dについて、図7を用いて説明する。眼科装置10Dは、実施例1の眼科装置10から構成の一部を変更したものである。眼科装置10Dは、基本的な概念および構成が実施例1の眼科装置10と同様であるので、等しい構成の個所には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
実施例5の眼科装置10Dは、図7に示すように、新たに画像取得部65と読唇解析部66とが設けられている。画像取得部65は、検者の口元(口唇)の映像(そのデータ)を取得する。この取得したい映像は、測定画像を取得した際の印象を検者が呟いたものである。この呟きは、音声を伴う必要はなく、あくまで口元の動きがあればよい。
読唇解析部66は、画像取得部65から入力された検者の口元の映像データを読唇画像認識により解析して、検者の口元の動きの解析結果から操作指示の内容を判別する。例えば、読唇解析部66は、検者の口元の撮影画像データから検出(判別)した検者の口元の動きパターンと、予め記憶されている検者の使用言語に対応した口元の動きパターンとのパターンマッチング処理を行うことにより、画像取得部65で撮影された検者の口元の動きパターンに対応する文字を認識する。これにより、読唇解析部66は、検者の口から無声で発せられた操作指示の内容を判別し、この操作指示のテキストデータを制御部31Dに出力する。そして、制御部31Dは、取得したテキストデータを、その元となる口元の映像を取得していた際に取得したOCTの測定画像に関連付けて、記憶部32に記憶させる。
付加操作ボタン72Dは、画像取得部65による音声の取得開始と取得終了との操作が可能とされている。このため、眼科装置10Dの制御部31Dは、付加操作ボタン72Dに取得開始の操作が為されると画像取得部65での映像の取得を開始し、付加操作ボタン72Dに取得終了の操作が為されると画像取得部65での映像の取得を終了する。そして、制御部31Cは、取得した映像(その映像データ)を、それを取得していた際に取得したOCTの測定画像に関連付けて、記憶部32に記憶させる。このため、付加操作ボタン72Dは、検者が測定画像を取得した際の印象を口元の動きで入力することが可能とされている。
実施例5の付加操作ボタン72Dは、押し下げ操作している間、すなわち押し下げた状態を維持している間が、画像取得部65による映像の取得の取得操作としている。このため、付加操作ボタン72Dは、長押しのための押し下げ操作が取得開始の操作となり、その押し下げ操作の解除が取得終了の操作となる。なお、付加操作ボタン72Dにおける映像の取得の取得操作は、適宜設定すればよく、実施例5の例に限定されない。
これに伴い、実施例5の付加操作ボタン72Dは、実施例1の3つの印象の入力の操作を無くすとともに、スキャン工程を実行している時点におけるスキャン工程を中断させる中断操作を実施例1とは異なるものとする。この中断操作は、上記した取得操作と区別できるものであればよく、実施例5では短時間に二回連続で押し下げ操作することを中断操作としている。
実施例5の眼科装置10Dは、基本的に実施例1の眼科装置10と同様の構成であるので、実施例1と同様の効果を得られる。
それに加えて、眼科装置10Dは、検者の口元の画像を取得する画像取得部65と、画像取得部65が取得した口元の画像から検者の口元の動きを解析する読唇解析部66と、を備え、付加操作ボタン72Dで画像取得部65による画像取得の開始と終了との操作が可能である。このため、眼科装置10Dは、一方の手で被検者を開瞼させつつ他方の手で操作レバー18を傾倒操作している場合であっても、簡易な操作により無声で呟いた内容を取得させることができる。これにより、付加操作ボタン72Dの操作により測定画像を取得した際の印象を無声で呟くことで、測定画像の印象を呟いた内容を残すことができる。また、検者は、無声で呟くだけで良いので、被検者に呟きが聞こえることを防止でき、被検者が不審に感じることを防止できる。
したがって、本開示に係る眼科装置としての実施例5の眼科装置10Dは、操作レバー18を傾倒操作しつつ傾倒操作している手で他の操作をすることができる。
以上、本開示の眼科装置を各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については各実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、各実施例では、眼底カメラと断層撮影装置(OCT)とを有する眼科装置を記載している。しかしながら、複数の測定画像を短時間で連続して取得するものであれば、被検眼Eにおける他の眼情報を取得するものでもよく、各実施例の構成に限定されない。
また、各実施例では、ベース11に対して移動可能とされた架台13に操作レバー18、18Bを設けている。しかしながら、ベース11に対してヘッド部14のみが移動可能とされて、ベース11に対して移動しない架台(13)に操作レバーが設けられていてもよく、各実施例の構成に限定されない。