以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の乾燥装置10の概要を模式的に示した図である。
図1に示すように、乾燥装置10は、燃焼室20と、燃焼室20から排出された乾燥用ガスによって被乾燥物Wを乾燥させる乾燥室60とを備える。この乾燥装置10は、燃焼室20で生成した燃焼ガスを乾燥室60に導入し、乾燥室60に導入した燃焼ガスの一部を燃焼室20に戻す循環式の乾燥装置である。
燃焼室20は、内部空間を有する筐体である。燃焼室20の一端20aには、バーナ30が備えられている。バーナ30は、燃料を供給する燃料供給系統31、空気を供給する空気供給系統32を備える。なお、ここでは、空気供給系統32に吸気ファン32aが備えられた一例を示している。
バーナ30において、燃料供給系統31から供給された燃料と空気供給系統32から供給された空気を燃焼させることで生成した燃焼ガスが、燃焼室20の内部に広がる。この燃焼ガスは、被乾燥物Wを乾燥させる乾燥用ガスとして機能する。
燃焼室20の他端20bには、内部の燃焼ガスを排出するための出口開口(図示しない)を有する。また、燃焼室20内の他端20b側には、例えば、図1に示すように、断面に亘ってフィルタ21が設けられている。このフィルタ21は、出口開口に向かって流れる燃焼ガス中の異物を除去する。
乾燥室60は、燃焼室20から排出された乾燥用ガスによって被乾燥物Wを乾燥させる。乾燥室60は、例えば、図1に示すように、被乾燥物Wの搬送方向に延設されている。なお、図1は、乾燥室60の水平断面を上方から見たときの図である。
乾燥室60は、ケーシング61と、搬送装置62と、ガス噴出部70とを備える。
ケーシング61は、乾燥室60の外郭を構成する。乾燥室60が図1に示すように被乾燥物Wの搬送方向に延設される場合、ケーシング61は、筒状形状を有する。
搬送装置62は、乾燥処理される被乾燥物Wを乾燥室60内で移動する。この搬送装置62は、例えば、乾燥室60の幅方向の中央に、乾燥室60の延設方向に亘って備えられている。搬送装置62は、例えば、コンベアチェーンなどで構成される。搬送装置62上には、被乾燥物Wが配置される。
ガス噴出部70は、被乾燥物Wに乾燥用ガスを噴出する。ガス噴出部70は、図1に示すように、被乾燥物Wの搬送方向に沿って設けられている。
ガス噴出部70は、例えば、搬送装置62を挟むように、乾燥室60内の両側に乾燥室60の延設方向に亘って備えられている。なお、ここでは、2つのガス噴出部70を対向配置した一例を示したが、ガス噴出部70は、いずれか一方のみでもよい。
また、ガス噴出部70として、乾燥室60のケーシング61の側壁に沿って設けられた一例が示されているが、この配置構成に限られない。例えば、ガス噴出部70は、搬送される被乾燥物Wの上方または下方に設けられてもよい。なお、ガス噴出部70の構造については、後に詳しく説明する。
ガス噴出部70は、導入配管80を介して燃焼室20に連通している。導入配管80の一端は、燃焼室20の出口開口(図示しない)に連結され、導入配管80の他端は、ガス噴出部70に連結されている。図1に示すように2つのガス噴出部70を備える場合、導入配管80は、それぞれのガス噴出部70に連結するように二股に分岐している。
また、導入配管80のガス噴出部70との連結部は、一箇所に限らず、複数あってもよい。連結部が複数ある場合、導入配管80の他端側は、複数に分岐される。
なお、二股に分岐する導入配管80のそれぞれに、例えば、ガス噴出部70に導入する乾燥用ガスの流量を調整するための流量調整弁を備えてもよい。
導入配管80には、導入配管80を介して燃焼室20からガス噴出部70に乾燥用ガスを導入し、かつ後述する戻り配管85を介して乾燥室60から燃焼室20に乾燥用ガスを戻すために、循環ファン81が介在している。
循環ファン81においては、例えば、ファンモータ82を制御してファン回転数を調整することで、ガス噴出部70に供給される乾燥用ガスの流量が調整される。これによって、乾燥用ガス噴出ノズル140から噴出される乾燥用ガスの速度(流量)が調整される。循環ファン81は、例えば、シロッコファンやターボファンなどで構成される。
ここで、図1に示すように、導入配管80が二股に分岐する分岐部80aと循環ファン81との間の導入配管80から分岐管100が分岐している。この分岐管100は、導入配管80を流れる乾燥用ガスの一部を大気中に排出する。
分岐管100には、排気する乾燥用ガスの流量を調整するための流量調整部101が備えられている。この流量調整部101は、例えば、ダンパなどで構成される。なお、ダンパの開度は、例えば、一定の流量の乾燥用ガスが大気中に排出されるように調整されている。
乾燥室60の乾燥空間63は、戻り配管85を介して燃焼室20に連通している。戻り配管85の一端は、乾燥室60の乾燥空間63と連通するようにケーシング61に連結されている。戻り配管85の一端は、例えば、乾燥室60の乾燥空間63と連通するようにケーシング61の上部に連結される。
ここで、乾燥空間63は、搬送装置62によって移動される被乾燥物Wを乾燥する領域である。図1に示された乾燥室60では、乾燥空間63は、対向配置されたガス噴出部70間に形成される。
なお、戻り配管85は、ガス噴出部70内を貫通しないように配管される。すなわち、戻り配管85は、ガス噴出部70内を流れる乾燥用ガスに接触しないように配管される。ここで、戻り配管85の一端を複数に分岐して、乾燥空間63の複数の位置から乾燥用ガスを吸引するようにしてもよい。
戻り配管85の他端側には、戻り配管85から分岐する分岐管86を有する。分岐管86の一方の端部は、例えば、大気開放されている。この分岐管86は、戻り配管85を介して乾燥室60から燃焼室20に戻る乾燥用ガスに、大気(空気)を導入するための配管である。すなわち、分岐管86の大気開放側の端部から大気を吸い込み、戻り配管85に導入する。
分岐管86には、戻り配管85に導入する空気の流量を調整するための流量調整部87が備えられている。この流量調整部87は、例えば、ダンパなどで構成される。なお、ダンパの開度は、例えば、一定の流量の空気が戻り配管85に導入されるように調整されている。
戻り配管85の他端は、燃焼室20の側壁に連結されている。戻り配管85の他端が連結される側壁位置は、例えば、図1に示すように、燃焼室20の一端20a側から他端20b側へ向かう方向において、フィルタ21とバーナ30との間となるように設定される。これによって、戻り配管85を通って燃焼室20内に循環された乾燥用ガスは、再び燃焼室20から導入配管80に導入される際、フィルタ21を通り異物が除去される。
次に、ガス噴出部70の構成について説明する。
図2は、ガス噴出部70の斜視図である。図3は、ガス噴出部70の縦断面をガス噴出部70の長手方向(延設方向)から見たときの図である。図4は、ガス噴出部70の水平断面を上方から見たときの図である。なお、図3は、図2の二点鎖線A-Aで示した部分を鉛直方向に切ったときの断面である。図4は、図2の二点鎖線B-Bで示した部分を水平方向に切ったときの断面である。
ガス噴出部70は、図2~図4に示すように、ガス噴出部本体110と、内壁120と、区画壁130と、乾燥用ガス噴出ノズル140と、開度調整部150とを備える。
ガス噴出部本体110は、被乾燥物Wの搬送方向に沿って延設された箱状ケーシングである。すなわち、ガス噴出部本体110は、被乾燥物Wの搬送方向に亘って連続して延び、例えば、直方体形状を有する。例えば、図1に示すように、搬送装置62を挟むようにガス噴出部70を備えることで、ガス噴出部70による壁が搬送装置62の両側部に搬送方向に沿って連続的に形成される。
ガス噴出部本体110には、前述したように導入配管80が接続されている。この導入配管80は、後述する第2の空間113内に乾燥用ガスを導入するように、ガス噴出部本体110に接続されている。
なお、導入配管80のガス噴出部本体110との連結部は、一箇所に限らず、複数あってもよい。導入配管80のガス噴出部本体110との連結部は、ガス噴出部本体110の第2の空間113内に導入された乾燥用ガスの圧力分布が均一になるように設定されることが好ましい。
内壁120は、平板状部材で構成される。内壁120は、図3および図4に示すように、ガス噴出部本体110の搬送路側(搬送装置62側)の側壁111に平行に、ガス噴出部本体110の内部に被乾燥物Wの搬送方向に沿って設けられている。換言すると、内壁120は、第1の空間112側の表面120aが側壁111に平行になるように、ガス噴出部本体110内にガス噴出部本体110の長手方向(被乾燥物Wの搬送方向)に亘って設けられている。
そして、内壁120は、ガス噴出部本体110の内部空間を被乾燥物Wの搬送路側(搬送装置62側)の第1の空間112と搬送路側とは異なる側の第2の空間113とに区画している。
なお、側壁111と内壁120との間の間隔、および内壁120とガス噴出部本体110の搬送路側とは異なる側の側壁115との間の間隔は、例えば、第2の空間113と後述する個別空間114の空間体積などに基づいて適宜設定される。例えば、内壁120は、側壁111と側壁115との間の中央に設けられる。
内壁120には、第1の空間112と第2の空間113とを連通させる複数の開口121が形成されている。第2の空間113に導入された乾燥用ガスは、開口121を介して第1の空間112に流出する。
区画壁130は、平板状部材で構成される。区画壁130は、図2~図4に示すように、第1の空間112を複数の小空間である個別空間114に区画している。区画壁130は、例えば、縦方向を区画する縦方向区画壁131と、横方向を区画する横方向区画壁132を備える。ここで、縦方向区画壁131は、水平に設置され、横方向区画壁132は、鉛直に設置される。
すなわち、個別空間114は、内壁120、区画壁130(縦方向区画壁131および横方向区画壁132)およびガス噴出部本体110によって囲まれた立方体状または直方体状の空間である。
内壁120に形成された開口121のそれぞれに対して個別空間114が構成されている。換言すると、一つの開口121に対して一つの個別空間114が構成されている。開口121を通過した乾燥用ガスを個別空間114内に均一に拡張するために、開口121は、例えば、個別空間114を囲う内壁120の中央に形成されることが好ましい。
開度調整部150は、内壁120の開口121の開度を調整し、第2の空間113から個別空間114に流入する乾燥用ガスの流量を調整する。開度調整部150は、例えば、図3および図4に示すように、スライド部材151と、支持部材152とを備える。
スライド部材151は、例えば、板状部材で構成される。このスライド部材151は、開口121よりも大きな寸法に構成されている。そのため、スライド部材151は、開口121を閉鎖することも可能である。
支持部材152は、スライド部材151を摺動可能に支持する。支持部材152は、例えば、内壁120の第2の空間113側の表面120bに設けられる。支持部材152は、スライド部材151を上方および下方から支持するレール状の部材で構成される。
すなわち、支持部材152は、開口121の上方位置および下方位置に一組の棒状部材を備えることで構成される。なお、ここで、上方とは、鉛直上方向であり、下方とは、鉛直下方向である。
具体的には、支持部材152は、例えば、ガス噴出部70の長手方向に垂直な断面がL字状の棒状部材で構成される。この支持部材152は、例えば、内壁120の表面120bにおける開口121の上部位置および下部位置に、ガス噴出部70の長手方向に固定される。この際、例えば、L字状の短辺部152aの端面152bが表面120bに接続される。
図3に示す断面において、L字状の支持部材152と内壁120によって形成されるコ字状の係合溝153に、スライド部材151の上方端部および下方端部が摺動可能に係合している。これによって、スライド部材151をスライドさせて、開口121の開度を調整することができる。
なお、図示しないが、ガス噴出部本体110の側壁115には、開度調整部150を調整するための点検口およびこの点検口を封鎖するための開閉可能な蓋部が備えられている。
ここで、各開口121の開度は、各個別空間114に流入する乾燥用ガスの流量が均一になるように調整される。具体的には、開口121の開度は、例えば、スライド部材151によって閉鎖されていない部分の開口121の開口面積およびその開口部を通過する乾燥用ガスの平均流速から算出された乾燥用ガスの流量に基づいて調整される。
すなわち、開口121の開度は、上記算出された乾燥用ガスの流量に基づいて、開口部を通過して各個別空間114に流入する乾燥用ガスの流量が均一になるように調整される。
各開口121の開度は、乾燥装置10において実際の乾燥処理運転を行う前に予め調整される。この際、実際の乾燥処理時においてガス噴出部本体110の第2の空間113に導入される乾燥用ガスの流量を想定した条件で、各開口121の開度が調整される。
なお、平均流速は、例えば、開口部における複数個所の流速を計測し、その計測された流速を算術平均することで得られる。また、乾燥用ガスの流速は、例えば、熱線風速計などによって計測される。
乾燥用ガス噴出ノズル140は、ガス噴出部本体110の側壁111から搬送路側に突出して設けられている。乾燥用ガス噴出ノズル140は、個別空間114に連通し、個別空間114内の乾燥用ガスを乾燥空間63(搬送路側)に噴出する。
乾燥用ガス噴出ノズル140は、開口121が形成された内壁120に対向するガス噴出部本体110の側壁111に配置されている。ここでは、内壁120と側壁111は、個別空間114を挟んで平行に対向配置されている。
ここで、乾燥用ガス噴出ノズル140から噴出された乾燥用ガスと、被乾燥物Wとの熱伝達を向上させるために、例えば、乾燥用ガス噴出ノズル140は、被乾燥物Wが搬送される方向に対して垂直となるように配置されることが好ましい。すなわち、乾燥用ガス噴出ノズル140は、噴出する乾燥用ガスが搬送される被乾燥物Wに対して垂直に衝突するように配置されることが好ましい。
また、上記した熱伝達を向上させるために、例えば、乾燥用ガス噴出ノズル140から噴出される乾燥用ガスの流速は、高いほど好ましい。
乾燥用ガス噴出ノズル140は、例えば、一つの個別空間114に対して複数配置されている。複数の乾燥用ガス噴出ノズル140を備える場合、配置位置は特に限定されるものではないが、個別空間114内に導入された乾燥用ガスを均一な速度(流量)で噴出できる位置に配置される。
ここで、乾燥用ガス噴出ノズル140から噴出される乾燥用ガスの流れは、熱伝達率を向上させるために、噴出後外側に広がりにくく高速で被乾燥物Wに衝突する噴流であることが好ましい。そこで、乾燥用ガス噴出ノズル140は、このような噴流を形成しやすい、例えば、筒状管などで構成される。筒状管としては、例えば、円管などが使用される。
次に、乾燥装置10の作用について説明する。
乾燥装置10の運転開始時において、吸気ファン32a、循環ファン81が駆動される。
バーナ30における燃焼が開始すると、循環ファン81の吸引によって、バーナ30内の乾燥用ガス(燃焼ガス)が導入配管80内に吸引される。導入配管80内に吸引された乾燥用ガスは、乾燥室60のガス噴出部70に導入される。
具体的には、導入配管80内に吸引された乾燥用ガスは、ガス噴出部70におけるガス噴出部本体110内の第2の空間113に導入される。この際、分岐管100を介して、導入配管80を流れる乾燥用ガスのうちの所定量が大気中に排出される。
第2の空間113に導入された乾燥用ガスは、第2の空間113内に広がる。そして、第2の空間113内に広がった乾燥用ガスは、内壁120の開口121から各個別空間114内に流入する。この際、各個別空間114内に流入する乾燥用ガスの流量は、開度調整部150によって均一になるように調整されている。
個別空間114内に流入した乾燥用ガスは、個別空間114内に均一に広がる。ここで、個別空間114は、小空間であるため、流入した乾燥用ガスは、均一に広がりやすい。そして、個別空間114内に広がった乾燥用ガスは、乾燥用ガス噴出ノズル140から乾燥空間63に噴出される。
この際、開口121を通過した乾燥用ガスは、四方八方に均一に広がる。そのため、個別空間114内における乾燥用ガスの圧力分布は小さく、ほぼ均一になる。例えば、開口121が個別空間114を囲う内壁120の中央に形成されているときには、開口121を通過した乾燥用ガスが、個別空間114内に均一に広がりやすい。
また、乾燥用ガス噴出ノズル140は、開口121が形成された内壁120に対向するガス噴出部本体110の側壁111に配置されている。そのため、各乾燥用ガス噴出ノズル140には、内壁120の中央の開口121から側壁111側に向かって四方八方に均一に広がりながら流れる乾燥用ガスの流れの動圧分も均一に作用する。
これによって、個別空間114における各乾燥用ガス噴出ノズル140との連通部の圧力と、乾燥空間63内の圧力との差圧は、ほぼ同程度となる。そのため、個別空間114から各乾燥用ガス噴出ノズル140に流れ込む乾燥用ガスの流量は、ほぼ等しくなる。また、一つの個別空間114に対して設けられた各乾燥用ガス噴出ノズル140から噴出される乾燥用ガスの流速は、ほぼ等しくなる。なお、各乾燥用ガス噴出ノズル140の流路径などの寸法は同じである。
また、各個別空間114に流入する乾燥用ガスの流量は均一になるように設定されている。そのため、異なる個別空間114に対して設けられた乾燥用ガス噴出ノズル140から噴出される乾燥用ガスの流量(流速)であっても、それぞれがほぼ等しくなる。
乾燥空間63に噴出された乾燥用ガスは、搬送装置62によって移動される被乾燥物Wに衝突する。各乾燥用ガス噴出ノズル140から噴出された乾燥用ガスの流速は、ほぼ均一であるため、被乾燥物Wを均等に加熱することができる。
また、各乾燥用ガス噴出ノズル140から噴出された乾燥用ガスの流れは、噴出方向に対して垂直な方向への広がりが抑制されるとともに高速であるため、熱伝達が向上する。そのため、乾燥用ガスの熱量を効率的に被乾燥物Wに伝達することができる。
ここで、ガス噴出部本体110は、被乾燥物Wの搬送方向に亘って連続して延びているため、例えば、各乾燥用ガス噴出ノズル140から噴出された乾燥用ガスが、ガス噴出部本体110の後方などに流れ込むことはない。すなわち、各乾燥用ガス噴出ノズル140から噴出された乾燥用ガスは、被乾燥物Wとの衝突後も乾燥空間63内に存在し、被乾燥物Wの加熱に寄与する。
燃焼室20内の乾燥用ガスが循環ファン81によって吸引されるため、燃焼室20内の圧力は、乾燥室60の乾燥空間63の圧力よりも低くなる。そのため、乾燥空間63の乾燥用ガスは、戻り配管85を通り燃焼室20に導かれる。
この際、前述したように、分岐管86の大気開放側の端部からも空気が吸引される。そして、分岐管86を介して、所定量の空気が戻り配管85に導入され、燃焼室20に導かれる。
戻り配管85を介して燃焼室20に導入された乾燥用ガスおよび空気は、バーナ30における燃焼によって生成した燃焼ガスと混合し、導入配管80内に吸引され、乾燥室60のガス噴出部70に導入される。
このように、燃焼室20において生成された乾燥用ガスの一部は、乾燥室60を経て燃焼室20に循環される。
ここで、分岐管86を介して導入される空気の流量は、分岐管100を介して大気中に排出される燃焼ガスの流量と同じである。
このように分岐管86から大気を導入し、分岐管100から乾燥用ガスの一部を排出するのは、乾燥用ガスの循環系統内における揮発性有機化合物(VOC)の濃度の増加を抑制するためである。これによって、爆発などの事故を防止できる。なお、揮発性有機化合物は、例えば、塗料などに含まれる。
上記したように、第1の実施の形態の乾燥装置10では、ガス噴出部本体110の内部空間を被乾燥物Wの搬送路側の第1の空間112と搬送路側とは異なる側の第2の空間113とに区画する内壁120が、被乾燥物Wの搬送方向に沿って設けられている。そして、この内壁120には、第1の空間112と第2の空間113とを連通させる複数の開口121が形成されている。また、第1の空間112は、それぞれの開口に対して区画壁130(縦方向区画壁131および横方向区画壁132)によって複数の個別空間114に区画されている。
このような構成を備えるガス噴出部本体110において、開度調整部150を備えることで、各個別空間114内に均一な流量の乾燥用ガスを第2の空間113から導入することができる。
また、開口121を介して小空間に区画された個別空間114に乾燥用ガスを導入することで、乾燥用ガスの流れが、個別空間114内全体に行き渡る。これによって、個別空間114内における乾燥用ガスの圧力分布を小さくでき、ほぼ均一な圧力分布が得られる。また、開口121を個別空間114を囲う内壁120の中央に備えることで、個別空間114内においてより均一な圧力分布が得られる。
さらに、乾燥用ガス噴出ノズル140が設けられたガス噴出部本体110の側壁111が、開口121が形成された内壁120に対向している。そのため、各乾燥用ガス噴出ノズル140には、内壁120の中央の開口121から側壁111側に向かって広がりながら流れる乾燥用ガスの流れの動圧分も均一に作用する。
このようなことから、個別空間114から各乾燥用ガス噴出ノズル140に流れ込む乾燥用ガスの流量はほぼ等しくなり、各乾燥用ガス噴出ノズル140から噴出される乾燥用ガスの流速はほぼ等しくなる。
これによって、搬送装置62によって移動される被乾燥物Wを均等に加熱することができる。
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態の乾燥装置11の概要を模式的に示した図である。図6は、図5のC-C断面を示す図である。なお、第1の実施の形態の乾燥装置10の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
第2の実施の形態の乾燥装置11では、乾燥室160の構成が第1の実施の形態の乾燥室60の構成と異なる。そのため、ここでは、第2の実施の形態における乾燥室160の構成について主に説明する。
第2の実施の形態の乾燥装置11における乾燥室160では、被乾燥物Wを回転搬送させて乾燥させる。
図5に示すように、乾燥装置11は、燃焼室20と、燃焼室20から排出された乾燥用ガスによって被乾燥物Wを乾燥させる乾燥室160とを備える。この乾燥装置11は、燃焼室20で生成した燃焼ガスを乾燥室160に導入し、乾燥室160に導入した燃焼ガスの一部を燃焼室20に戻す循環式の乾燥装置である。
乾燥室160は、筒状のケーシング161を備え、図6に示すように、上下方向に複数段設置されている。ケーシング161は、乾燥室160の外郭を構成する。このケーシング161は、鉛直方向に延設される。各乾燥室160において、ケーシング161内に乾燥空間63を備える。
ケーシング161は、図5に示すように、ケーシング161の軸方向に垂直な断面(以下、水平断面という)が、例えば、円形に形成される。なお、ケーシング161の水平断面の形状は、円形に限らず、多角形であってもよい。また、ケーシング161の軸方向とは、鉛直方向である。
ケーシング161の側壁162には、図5に示すように、被乾燥物Wを乾燥室160内の所定の位置に配置したり、被乾燥物Wを乾燥室160内から取り出したりするための搬出搬入口163が形成されている。また、ケーシング161の側壁162には、搬出搬入口163を開閉するためのスライド扉164が設けられている。
スライド扉164は、水平方向にスライド可能に構成されている。このスライド扉164を開いて、搬出搬入口163を介して、乾燥後の被乾燥物Wを乾燥室160内から取り出したり、乾燥すべく被乾燥物Wを乾燥室160内に配置する。
なお、搬出搬入口163およびスライド扉164は、各段の乾燥室160ごとに設けられている。
乾燥室60は、さらに、搬送装置170と、ガス噴出部180とを備える。
搬送装置170は、乾燥処理される被乾燥物Wをガス噴出部180の周囲を回転搬送する。搬送装置170は、被乾燥物Wが配置される回転板171、この回転板171を回転駆動する駆動機構(図示しない)を備える。
各段の回転板171は、上下方向に一定の間隔をあけて互いに平行に固定されている。なお、上下の回転板171は、図示しない支持部材によって互いに平行に固定されている。そして、最下段の回転板171が、例えば、駆動機構である駆動モータ(図示しない)などの動力によって回転されると、それに伴って、各段の回転板171も同時に回転する。
回転板171は、ガス噴出部180とケーシング161の側壁162との間をガス噴出部180の周方向に、例えば、時計回りに回転可能に構成されている。これによって、回転板171上に配置された被乾燥物Wは、ガス噴出部180の周囲を回転搬送される。
なお、上下方向に配置された回転板171間、およびケーシング161とガス噴出部180との間によって囲まれた環状の空間は、搬送路を構成する空間であり、乾燥空間63として機能する。
ガス噴出部180は、図5および図6に示すように、ガス噴出部本体190と、内壁200と、区画壁210と、乾燥用ガス噴出ノズル220と、開度調整部230とを備える。
ガス噴出部本体190は、被乾燥物Wの搬送方向に沿う外周面を有する円筒状ケーシングである。ガス噴出部本体190は、ケーシング161の側壁162の内側にケーシング161の軸方向に沿って延設されている。ケーシング161とガス噴出部本体190とによって二重管構造が形成される。
なお、ケーシング161の側壁162とガス噴出部本体190との間の間隙は、周方向に均一である。また、ケーシング161とガス噴出部本体190は、同心上に中心軸を有する。
ガス噴出部本体190には、導入配管80が接続されている。この導入配管80は、後述する第2の空間192内に乾燥用ガスを導入するように、ガス噴出部本体190に接続されている。
内壁200は、円筒体で構成され、ガス噴出部本体190の内側にケーシング161の軸方向に沿って延設されている。ガス噴出部本体190と内壁200とによって二重管構造が形成される。
なお、内壁200とガス噴出部本体190との間の間隙は、周方向に均一である。また、内壁200とガス噴出部本体190は、同心上に中心軸を有する。
すなわち、ケーシング161と、ガス噴出部本体190と、内壁200とによって、三重管構造が形成される。また、ケーシング161、ガス噴出部本体190、内壁200は、同心上に中心軸を有する。そのため、以下において、これらの中心軸方向を単に軸方向という。
内壁200は、ガス噴出部本体190の内部空間を被乾燥物Wの搬送路側(回転板171側)の第1の空間191と搬送路側とは異なる側の第2の空間192とに区画している。すなわち、第1の空間191は、ガス噴出部本体190と内壁200との間に形成される環状の空間である。第2の空間192は、内壁200内の空間である。
内壁200には、第1の空間191と第2の空間192とを連通させる複数の開口201が形成されている。この開口201は、軸方向に複数形成されている。なお、開口201は、上下方向に複数段設置された乾燥室160に応じて形成されている。すなわち、一つの乾燥室160に対して、一つの開口201が形成される。
第2の空間192に導入された乾燥用ガスは、この開口201を介して第1の空間191に流入する。
区画壁210は、環状の平板状部材で構成される。区画壁210は、図6に示すように、ガス噴出部本体190と内壁200との間の第1の空間191を軸方向に区画する。例えば、区画壁210は、ガス噴出部本体190の側壁190aと内壁200の側面200aに水平に接続される。そして、区画壁210によって区画された第1の空間191は、個別空間193を構成する。
すなわち、個別空間193は、内壁200、区画壁210およびガス噴出部本体190によって囲まれた環状の空間である。
内壁200に形成された開口201のそれぞれに対して個別空間193が構成されている。換言すると、一つの開口201に対して一つの個別空間193が構成されている。開口201を通過した乾燥用ガスを個別空間193内に均一に拡張するために、開口201は、例えば、個別空間193を囲う内壁200の軸方向中央に形成されることが好ましい。
開度調整部230は、内壁200の開口201の開度を調整し、第2の空間192から個別空間193に流入する乾燥用ガスの流量を調整する。開度調整部230は、例えば、図5および図6に示すように、スライド部材231と、支持部材232とを備える。
スライド部材231は、例えば、内壁200の側面200aに沿って湾曲した板状部材で構成される。このスライド部材231は、開口201よりも大きな寸法に構成されている。そのため、スライド部材231は、開口201を閉鎖することも可能である。
支持部材232は、スライド部材231を摺動可能に支持する。支持部材232は、例えば、内壁200の第1の空間191側の側面200aに沿って設けられる。すなわち、支持部材232は、側面200aに沿って湾曲して設けられる。
支持部材232は、スライド部材231を上方および下方から支持するレール状の部材で構成される。
すなわち、支持部材232は、開口201の上方位置および下方位置に一組の湾曲した棒状湾曲部材を備えることで構成される。
具体的には、支持部材232は、例えば、内壁200の側面200aの周方向に垂直な断面がL字状の棒状湾曲部材で構成される。この支持部材232は、例えば、内壁200の側面200aにおける開口201の上部位置および下部位置に、側面200aの周方向に沿って固定される。この際、例えば、L字状の短辺部232aの端面232bが側面200aに接続される。
図6に示す断面において、L字状の支持部材232と内壁200によって形成されるコ字状の係合溝233に、スライド部材231の上方端部および下方端部が摺動可能に係合している。これによって、スライド部材231をスライドさせて、開口201の開度を調整することができる。
ここで、各開口201の開度は、各個別空間193に流入する乾燥用ガスの流量が均一になるように調整される。なお、開口201の開度の調整方法は、第1の実施の形態における開口121の開度の調整方法と同様である。
なお、図示しないが、ケーシング161の側壁162とガス噴出部本体190には、開度調整部230を調整するための点検口およびこの点検口を封鎖するための開閉可能な蓋部が備えられている。
乾燥用ガス噴出ノズル220は、ガス噴出部本体190の側壁190aから搬送路側に突出して設けられている。乾燥用ガス噴出ノズル220は、個別空間193に連通し、個別空間193内の乾燥用ガスを乾燥空間63(搬送路側)に噴出する。
乾燥用ガス噴出ノズル220は、開口201が形成された内壁200に対向するガス噴出部本体190の側壁190aに配置されている。また、乾燥用ガス噴出ノズル220は、ガス噴出部本体190の側壁190aの周方向に所定の間隔をあけて配置されている。
ここで、乾燥用ガス噴出ノズル220は、図5に示すように、ガス噴出部本体190の所定の周方向範囲内に配置されている。乾燥用ガス噴出ノズル220は、例えば、搬出搬入口163に対向する位置よりも搬送回転方向(図5の実線矢印)の下流側から配置される。
例えば、図5に示すように、搬送回転方向の最も上流側に配置される乾燥用ガス噴出ノズル220の上流側の端部と搬送回転軸中心Oとを結ぶ仮想直線Lと、搬送回転方向の最も下流側に配置される乾燥用ガス噴出ノズル220の下流側の端部と搬送回転軸中心Oとを結ぶ仮想直線Mとがなす角度θは、135~270度である。この角度θの範囲内に、例えば、乾燥用ガス噴出ノズル220が配置される。
この範囲に乾燥用ガス噴出ノズル220を配置することで、スライド扉164が開かれても、乾燥用ガス噴出ノズル220から噴出された乾燥用ガスが搬出搬入口163から直接外部に流出することはない。
ここで、前述した内壁200の開口201は、乾燥用ガス噴出ノズル220が配置される所定の周方向範囲を除いた範囲のガス噴出部本体190の内周面に対向する位置に形成される。
図5に示す乾燥室160の断面において、内壁200の開口201は、例えば、仮想直線Lと仮想直線Mとがなす角において、角度θとは異なる側の角度αの範囲内の内壁200に形成される。すなわち、角度αの範囲は、搬送回転方向の最も上流側に配置される乾燥用ガス噴出ノズル220の上流側の端部と、搬送回転方向の最も下流側に配置される乾燥用ガス噴出ノズル220の下流側の端部との間における乾燥用ガス噴出ノズル220が配置されていない側の周方向範囲である。
内壁200の開口201において、搬送回転方向の上流側の端部および搬送回転方向の下流側の端部が、上記した角度αの範囲内に位置する。
例えば、内壁200の開口201は、周方向に配置された乾燥用ガス噴出ノズル220のうち、中央に位置する乾燥用ガス噴出ノズル220の中心軸から搬送回転軸中心Oを中心に搬送回転方向に180度ずれたガス噴出部本体190の内周面に対向する位置に形成されることが好ましい。この場合、例えば、開口201の周方向長さの中心が上記した180度ずれた内周面に対向する位置となるように、開口201が形成される。
これによって、第2の空間192から開口201を介して個別空間193に流入した乾燥用ガスは、直接、乾燥用ガス噴出ノズル220に流入することはない。
すなわち、開口201を介して個別空間193に流入した乾燥用ガスは、ガス噴出部本体190の内周面に衝突して周方向に広がる。この際、ガス噴出部本体190の内周面に衝突した乾燥用ガスは、図5の破線矢印で示すように、搬送回転方向および搬送回転方向の逆方向へ広がる。
これによって、個別空間193内全体に広がる乾燥用ガスの流れが形成され、個別空間193内に乾燥用ガスが均一に広がる。
また、図6に示すように、乾燥用ガス噴出ノズル220は、例えば、軸方向に上下二段に配置されている。それぞれの段の乾燥用ガス噴出ノズル220は、上記したように、ガス噴出部本体190の側壁190aの周方向に所定の間隔をあけて配置されている。
なお、乾燥用ガス噴出ノズル220を備える軸方向の段数は、特に限定されるものではなく、一段であっても、3段以上であってもよい。
ここで、乾燥用ガス噴出ノズル220から噴出された乾燥用ガスと、被乾燥物Wとの熱伝達を向上させるために、例えば、乾燥用ガス噴出ノズル220は、被乾燥物Wが搬送される方向に対して垂直となるように配置されることが好ましい。すなわち、乾燥用ガス噴出ノズル220は、噴出する乾燥用ガスが搬送される被乾燥物Wに対して垂直に衝突するように配置されることが好ましい。
そのため、例えば、図5に示す乾燥室160の断面において、乾燥用ガス噴出ノズル220は、その中心軸が搬送回転軸中心Oから放射状に延びる線上に位置するように配置される。
なお、乾燥用ガス噴出ノズル220の構造は、第1の実施の形態における乾燥用ガス噴出ノズル140の構造と同様である。
次に、乾燥装置11の作用について説明する。
乾燥装置11の運転開始時において、吸気ファン32a、循環ファン81が駆動される。
バーナ30における燃焼が開始すると、循環ファン81の吸引によって、バーナ30内の乾燥用ガス(燃焼ガス)が導入配管80内に吸引される。導入配管80内に吸引された乾燥用ガスは、乾燥室160のガス噴出部180に導入される。
具体的には、導入配管80内に吸引された乾燥用ガスは、ガス噴出部180におけるガス噴出部本体190内の第2の空間192に導入される。この際、分岐管100を介して、導入配管80を流れる乾燥用ガスのうちの所定量が大気中に排出される。
第2の空間192に導入された乾燥用ガスは、第2の空間192内に広がる。そして、第2の空間192内に広がった乾燥用ガスは、内壁200の開口201から各個別空間193内に流入する。この際、各個別空間193内に流入する乾燥用ガスの流量は、開度調整部230によって均一になるように調整されている。
個別空間193内に流入した乾燥用ガスは、図5の破線矢印で示すように、ガス噴出部本体190の内周面に衝突して、搬送回転方向および搬送回転方向の逆方向へ均一に広がる。そして、個別空間193内に広がった乾燥用ガスは、乾燥用ガス噴出ノズル220から乾燥空間63に噴出される。
この際、個別空間193内における乾燥用ガスの圧力は、ほぼ均一になる。また、開口201を通過した乾燥用ガスは、ガス噴出部本体190の内周面に衝突して周方向に広がるため、各乾燥用ガス噴出ノズル220には、乾燥用ガスの流れの動圧分も均一に作用する。
これによって、個別空間193における各乾燥用ガス噴出ノズル220との連通部の圧力と、乾燥空間63内の圧力との差圧は、ほぼ同程度となる。そのため、個別空間193から各乾燥用ガス噴出ノズル220に流れ込む乾燥用ガスの流量は、ほぼ等しくなる。これによって、一つの個別空間193に対して設けられた各乾燥用ガス噴出ノズル220から噴出される乾燥用ガスの流速は、ほぼ等しくなる。
また、各個別空間193に流入する乾燥用ガスの流量は均一になるように設定されている。そのため、異なる個別空間193に対して設けられた乾燥用ガス噴出ノズル220から噴出される乾燥用ガスの流量(流速)であっても、それぞれがほぼ等しくなる。
乾燥空間63に噴出された乾燥用ガスは、回転板171上に配置され回転搬送される被乾燥物Wに衝突する。各乾燥用ガス噴出ノズル220から噴出された乾燥用ガスの流速は、ほぼ均一であるため、被乾燥物Wを均等に加熱することができる。
ここで、各乾燥用ガス噴出ノズル220から噴出された乾燥用ガスは、環状の乾燥空間63に広がる。そのため、被乾燥物Wが乾燥空間63内を一周する間、乾燥空間63の温度をほぼ一定に維持することができる。
なお、乾燥空間63の乾燥用ガスが戻り配管85を通り燃焼室20に導かれる作用は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
上記したように、第2の実施の形態の乾燥装置11では、ガス噴出部本体190の内部空間を被乾燥物Wの搬送路側の第1の空間191と搬送路側とは異なる側の第2の空間192とに区画する内壁200が、被乾燥物Wの搬送方向に沿って設けられている。そして、この内壁200には、第1の空間191と第2の空間192とを連通させる複数の開口201が形成されている。また、第1の空間191は、それぞれの開口に対して区画壁210によって複数の個別空間193に区画されている。
このような構成を備えるガス噴出部本体190において、開度調整部230を備えることで、各個別空間193内に均一な流量の乾燥用ガスを第2の空間192から導入することができる。
また、内壁200の開口201は、乾燥用ガス噴出ノズル220が配置される所定の周方向範囲を除いた範囲のガス噴出部本体190の内周面に対向する位置に形成される。そして、開口201を通過した乾燥用ガスは、ガス噴出部本体190の内周面に衝突して周方向に広がるため、乾燥用ガスの流れが、個別空間193内全体に行き渡る。
これによって、個別空間193内における乾燥用ガスの圧力分布を小さくでき、ほぼ均一な圧力分布が得られる。また、各乾燥用ガス噴出ノズル220には、乾燥用ガスの流れの動圧分も均一に作用する。
このようなことから、個別空間193から各乾燥用ガス噴出ノズル220に流れ込む乾燥用ガスの流量はほぼ等しくなり、各乾燥用ガス噴出ノズル220から噴出される乾燥用ガスの流速はほぼ等しくなる。
これによって、搬送装置170によって移動される被乾燥物Wを均等に加熱することができる。
(第3の実施の形態)
ここでは、乾燥用ガス噴出ノズルの他の形態について説明する。上記した実施の形態では、筒状の乾燥用ガス噴出ノズル140、220を例示して説明したが、乾燥用ガス噴出ノズルの形状は、この形状に限られない。
ここでは、第1の実施の形態のガス噴出部70に他の形状の乾燥用ガス噴出ノズルを備えた構成について説明する。なお、第2の実施の形態のガス噴出部180においても、この他の形状の乾燥用ガス噴出ノズルを使用することができる。
図7は、第3の実施の形態の乾燥装置12のガス噴出部250の斜視図である。図8は、乾燥空間63側から乾燥用ガス噴出ノズル260を見たときの、乾燥用ガス噴出ノズル260の一部を拡大した平面図である。なお、第1の実施の形態の乾燥装置10のガス噴出部70の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
図7に示すように、ガス噴出部250には、スリット状の乾燥用ガス噴出ノズル260が設けられている。そして、乾燥用ガス噴出ノズル260は、開口121が形成された内壁120に対向するガス噴出部本体110の側壁111に配置されている。乾燥用ガス噴出ノズル260は、ガス噴出部本体110の側壁111から搬送路側に突出して設けられている。
また、乾燥用ガス噴出ノズル260は、ガス噴出部本体110の長手方向(被乾燥物Wの搬送方向)に亘って設けられている。乾燥用ガス噴出ノズル260は、個別空間114に連通し、個別空間114内の乾燥用ガスを乾燥空間63(搬送路側)に噴出する。
ここでは、一つの個別空間114に対して上下方向に2段の乾燥用ガス噴出ノズル260を備えた一例を示している。なお、乾燥用ガス噴出ノズル260は、1段設けられても、3段以上設けられてもよい。
乾燥用ガス噴出ノズル260は、ガス噴出部本体110の長手方向に垂直な断面がL字状棒状部材261を2つ組み合わせることで構成される。すなわち、乾燥用ガス噴出ノズル260は、一対のL字状棒状部材261によって構成される。
L字状棒状部材261は、長辺部262および短辺部263を有する。長辺部262には、図8に示すように、L字状棒状部材261をガス噴出部本体110の側壁111にボルト264などで取付けるための長穴262aが形成されている。
長穴262aは、L字状棒状部材261を上下方向に位置調整できるように、上下方向(鉛直方向)に延びる穴で構成される。なお、ガス噴出部本体110の側壁111には、ボルト264と螺合するネジ穴が形成されている。
ガス噴出部本体110の長手方向に垂直な断面において、短辺部263は、例えば、長辺部262に対して直角に交わる。これによって、乾燥用ガス噴出ノズル260から噴出される乾燥用ガスは、搬送される被乾燥物Wに対して垂直に衝突する。
ここで、ガス噴出部本体110の側壁111には、乾燥用ガス噴出ノズル260の配置位置に合わせて、ガス噴出部本体110の長手方向にスリット状の開口(図示しない)が形成されている。一対のL字状棒状部材261は、この開口の上部位置および下部位置に、ガス噴出部本体110の長手方向に固定される。
そして、一対のL字状棒状部材261の短辺部263どうしが対向することで、搬送路側に突出する突出部が形成される。この短辺部263間に形成されるスリット265を通り、乾燥用ガスが乾燥空間63に噴出される。
ここで、一方または双方のL字状棒状部材261の上下方向の取り付け位置を調整することで、スリット265の幅(短辺部263間の距離)を適宜調整することができる。これによって、例えば、乾燥用ガス噴出ノズル260から噴出される乾燥用ガスの流速を調整することができる。
なお、ガス噴出部本体110の長手方向におけるL字状棒状部材261の短辺部263間の両端部には、乾燥用ガスの長手方向への噴出を防ぐために、止め板266が挟持されている。
上記したように、第3の実施の形態の乾燥装置12によれば、ガス噴出部250における乾燥用ガス噴出ノズル260をL字状棒状部材261で構成することで、スリット状の乾燥用ガス噴出部を構成することができる。
これによって、短辺部263間に形成されるスリット265の幅を適宜調整することができるため、乾燥用ガス噴出ノズル260から噴出される乾燥用ガスの流速の調整を容易に行うことができる。
なお、第3の実施の形態の乾燥装置12においても、第1の実施の形態と同様に、個別空間114から各乾燥用ガス噴出ノズル260に流れ込む乾燥用ガスの流量はほぼ等しくなり、各乾燥用ガス噴出ノズル260から噴出される乾燥用ガスの流速はほぼ等しくなる。
ここで、上述したように、上記したスリット状の乾燥用ガス噴出ノズルの構成は、第2の実施の形態のガス噴出部180に適用することができる。第2の実施の形態のガス噴出部180に、スリット状の乾燥用ガス噴出ノズルの構成を備えた場合、乾燥用ガス噴出ノズルは、一対のL字状棒状湾曲部材によって構成される。このL字状棒状湾曲部材は、ガス噴出部本体190の側壁190aの外周に周方向に設けられる。
側壁190aには、乾燥用ガス噴出ノズルの配置位置に合わせて、周方向にスリット状の開口が形成される。一対のL字状棒状湾曲部材は、この開口の上部位置および下部位置に、側壁190aの周方向に固定される。
L字状棒状湾曲部材の長辺部には、L字状棒状部材261と同様に、L字状棒状湾曲部材を側壁190aにボルトなどで取付けるための長穴が形成される。この長穴は、L字状棒状湾曲部材を上下方向に位置調整できるように、上下方向(鉛直方向)に延びる穴で構成される。
なお、乾燥用ガス噴出ノズルは、第2の実施の形態と同様に、角度θの範囲内に配置される。
上記したスリット状の乾燥用ガス噴出ノズルの構成を第2の実施の形態のガス噴出部180に適用した場合においても、L字状棒状湾曲部材の短辺部間に形成されるスリットの幅を適宜調整することができる。そのため、乾燥用ガス噴出ノズルから噴出される乾燥用ガスの流速の調整を容易に行うことができる。
さらに、第2の実施の形態と同様に、個別空間193から各乾燥用ガス噴出ノズルに流れ込む乾燥用ガスの流量はほぼ等しくなり、各乾燥用ガス噴出ノズルから噴出される乾燥用ガスの流速はほぼ等しくなる。
なお、上記した実施の形態では、循環式の乾燥装置を例示して説明したが、これに限られるものではない。非循環式の乾燥装置においても、本実施の形態の構成を適用することができる。
なお、上記した実施の形態では、バーナ30において発生した燃焼ガスを乾燥用ガスとして使用した一例を示したが、乾燥用ガスは他の手段で発生させてもよい。例えば、乾燥用ガスとして、電気炉などで加熱された空気を使用してもよい。
また、ここでは、被乾燥物Wを加熱して乾燥させる乾燥装置の一例を示したがこれに限られるものではない。被乾燥物Wを冷却して乾燥させる乾燥装置においても、本実施の形態における乾燥室60、160、特にガス噴出部70、180の構成を適用できる。被乾燥物Wを冷却して乾燥させる乾燥装置では、バーナ30の代わりに、例えば、空気を冷却する冷却装置が使用される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。