JP7033039B2 - ジベンゾピロメテンホウ素キレート化合物およびその利用 - Google Patents

ジベンゾピロメテンホウ素キレート化合物およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、新規なジベンゾピロメテンホウ素キレート化合物及びそれを含む材料の応用に関する。本発明は、特に近赤外光領域に吸収帯を有する新規なジベンゾピロメテンホウ素キレート化合物、並びに上記化合物を含む近赤外光吸収材料、有機薄膜及び有機エレクトロニクスデバイスへの応用に関する。
700乃至2500nmの波長領域に吸収帯を有する近赤外光吸収材料は、例えばCD-R(Compact Disk-Recordable)等の光情報記録媒体;サーマルCTP(Computer To Plate)、フラッシュトナー定着、レーザー感熱記録等の印刷用途;熱遮断フィルム等の様々な用途で使用されており、また、選択的に特定波長域の光を吸収するという特性を用いて、PDP(Plasma Display Panel)フィルター等に用いられる近赤外光カットフィルターや、植物成長調整用フィルム等にも使用されている。更には、近赤外光吸収色素を溶媒に溶解又は分散させた近赤外光吸収インクを用いた印字物は、目視での認識は困難であって、かつ近赤外光検出器等でのみ読み取りが可能であることから、例えば偽造防止等を目的とした印字物等に使用される。
このような不可視画像形成用の赤外光吸収材料としては、無機系の赤外光吸収材料と、有機系の赤外光吸収材料とが知られている。無機系の赤外光吸収材料としては、例えばイッテルビウム等の希土類金属や銅リン酸結晶化ガラス等挙げられるが、無機系の赤外光吸収材料は一般的に近赤外領域の光吸収能が低く、不可視画像を形成する際に単位面積あたりに多量の赤外光吸収材料が必要となる。そのため、無機系の赤外光吸収材料を用いて形成した不可視画像の上にさらに可視画像を形成する場合には、不可視画像表面の凹凸が可視画像の表面形状に影響を与えてしまうことが問題であった。
これに対して、有機系の赤外光吸収材料は近赤外領域の光の吸収能が高く、単位面積あたりの赤外線吸収材料が少量で不可視画像を形成することができるため、無機系の赤外光吸収材料を使用した場合のような不都合は生じない。そのため、現在に至るまで多くの有機系近赤外光吸収材料の検討が行われてきた。
しかしながら、近赤外領域に吸収帯を示すシアニン色素、スクアリリウム色素及びジインモニウム色素等は何れも堅牢性に乏しく、その用途は限られている。
この様な状況において、近年では赤色光から近赤外光の波長領域に吸収帯や蛍光帯を示すボロンジピロメテン色素(boron-dipyrromethene、以下「BODIPY」と称す。)の研究が盛んになされている(非特許文献1参照)。単純な構造のBODIPY色素は500nm付近に強い吸収帯を示すが、π共役系を拡張したり、電子供与性置換基を導入した芳香族基を導入したりすることで、近赤外光領域まで吸収波長を伸ばすことが可能である(非特許文献2)。
非特許文献1及び2には、BODIPY骨格のピロール環が縮環したジベンゾピロメテンホウ素キレート化合物は、非縮環型のBODIPYよりも長波長シフトした吸収帯を示すことが記載されており、特許文献1には、該化合物を近赤外光吸収材料として光記録媒体に利用できることが記載されている。
また、非特許文献1及び2には、B-Oキレート化による縮環構造とすることにより更に長波長シフトを達成できることが記載されており、特許文献2乃至4には、該縮環構造を有する化合物を用いた有機薄膜についても報告されている。
更に、特許文献4には、BODIPYの3,5位にヘテロ環を連結し、B-Oキレート化したジピロメテンホウ素キレート化合物が記載されているが、それらの化合物の実施例は記載されていない。
特開1999-255774号公報 特開2012-199541号公報 特開2016-166284号公報 国際公開第2013/035303号
Chem.Soc.Rev.,2014,43,4778-4823 Chem.Rev.,2007,107,4891-4932
現在主流の近赤外光吸収色素は耐熱性や耐光性に劣るという問題を抱えており、工業的な利用可能性が高く、且つ光耐久性の高い材料の開発が望まれている。特に、有機光電変換素子をはじめとする種々の有機エレクトロニクスデバイス用途に用いられる材料には、電子輸送性、正孔輸送性、プロセス温度に対する耐熱性等の要求特性を満たす材料が求められている。
比較的耐熱性に優れたBODIPYは、上記要求を満たす可能性のある有望な材料であるが、近赤外光領域に吸収帯を有する材料は僅かであり、近赤外光領域に吸収帯を有する一部の材料も、主な吸収波長を可視光領域に有するものや合成が困難なものが殆どである。例えば、特許文献2に示されたB-Oキレート型ジベンゾピロメテンホウ素キレート化合物は、有機薄膜太陽電池素子への応用が検討されているが、光電変換波長の末端が800nmに達する程度であり、近赤外光領域を主たる吸収帯とするような近赤外光吸収色素ではない。
本発明の目的は、光耐久性が高く、有機エレクトロニクスデバイス等に容易に用い得る加工性を有し、かつ近赤外光領域に主たる吸収帯をもつ色素(以下、「近赤外光吸収色素」又は「近赤外光吸収材料」という。)を提供することにある。
本発明者らは前記諸課題を解決するべく考究した結果、BODIPYの3,5位に置換した5員環を以てB-Oキレート化による縮環構造を形成する新規のジベンゾピロメテンホウ素キレート化合物を用いることにより上記の課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の通りである。
[1]下記式(1a)又は(1b)
Figure 0007033039000001
(式(1a)及び(1b)中のR乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、アシル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルバモイル基、又はアルキルカルバモイル基を表す。n及びmはそれぞれ独立に1乃至4の整数を表す。)で表される化合物、
[2]下記式(2)
Figure 0007033039000002
(上記式(2)中のR乃至Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、アシル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルバモイル基、又はアルキルカルバモイル基を表す。)で表される化合物、
[3]R及びRがそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、芳香族基又はハロゲン原子であり、R及びRがそれぞれ独立に水素原子又は芳香族基である前項[2]又は[2]に記載の化合物、
[4]前項[1]及至[3]のいずれか一項に記載の化合物を含む近赤外光吸収材料、
[5]前項[1]及至[3]のいずれか一項に記載の化合物を含む有機薄膜、
[6]前項[1]及至[3]のいずれか一項に記載の化合物を含む有機エレクトロニクスデバイス。
[7]前項[1]に記載の式(1a)又は(1b)で表される化合物の製造方法であって、下記式(a)又は(b)
Figure 0007033039000003
(式(a)及び(b)中のR乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、アシル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルバモイル基、又はアルキルカルバモイル基を表す。Rは水素原子又はアルキル基を表す。n及びmはそれぞれ独立に1乃至4の整数を表す。)で表される化合物に三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体又は三臭化ホウ素を反応させる製造方法、及び
[8]下記式(a)又は(b)
Figure 0007033039000004
(式(a)及び(b)中のR乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、アシル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルバモイル基、又はアルキルカルバモイル基を表す。Rは水素原子又はアルキル基を表す。n及びmはそれぞれ独立に1乃至4の整数を表す。)で表される化合物。
本発明の式(1a)又は(1b)で表されるジベンゾピロメテンホウ素キレート化合物を用いることにより、近赤外光領域に主たる吸収帯を有し、かつ近赤外光電変換素子に用い得る有機薄膜を形成することが出来るため、該化合物及び/又は該有機薄膜は、各種有機エレクトロニクスデバイスへの利用が可能である。
図1は、本発明の光電変換素子の実施態様を例示した断面図を示す。 図2は、有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。 図3は、実施例2及び比較例1で得られた化合物のクロロホルム溶液の吸収スペクトルの測定結果である。 図4は、実施例3及び比較例2で得られた有機薄膜の吸収スペクトルの測定結果である。 図5は、実施例1及び比較例1で得られた化合物のクロロホルム溶液の吸収スペクトルの測定結果である。 図6は、実施例4及び比較例2で得られた有機薄膜の吸収スペクトルの測定結果である。
以下、本発明について詳細に説明する。ここに記載する構成要件の説明については、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づくものである一方、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されない。尚、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明において近赤外領域とは、700nm以上2500nm以下の範囲内にある波長領域をいい、近赤外光吸収材料(色素)とは近赤外光領域に主たる吸収波長をもつ材料をいい、近赤外発光材料(色素)とは近赤外光領域において発光する材料をいう。
本発明の化合物は、下記式(1a)又は(1b)で表される。
Figure 0007033039000005
式(1a)及び(1b)中のR乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、アシル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルバモイル基、又はアルキルカルバモイル基を表す。
尚、前記式(1a)又は(1b)で表される化合物は共鳴構造の一つを示したものにすぎず、図示した共鳴構造に限定されるものではない。
上記式(1a)及び(1b)中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基及びドデシル基等の炭素数1乃至12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の炭素数3乃至6の環状アルキル基が挙げられる。
上記式(1a)及び(1b)中のアルコキシ基としては、酸素原子にアルキル基が結合したものが挙げられるが、アルコキシ基中の酸素原子の数、位置及び分岐数は問わない。アルコキシ基の有するアルキル基としては、前記した炭素数1乃至12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、及び炭素数3乃至6の環状アルキル基と同じものが挙げられる。
上記式(1a)及び(1b)中のアルキルチオ基としては、硫黄原子にアルキル基が結合したものが挙げられるが、アルキルチオ基中の硫黄原子の数、位置及び分岐数は問わない。アルキルチオ基の有するアルキル基としては、前記した炭素数1乃至12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、及び炭素数3乃至6の環状アルキル基と同じものが挙げられる。
上記式(1a)及び(1b)中の芳香族基としては、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基及びピレニル基等の芳香族炭化水素基;フラニル基、チエニル基、チエノチエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、N-メチルイミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、ピラジル基及びピリミジル基等の芳香族複素環基;キノリル基、インドリル基、ベンゾピラジル基、ベンゾピリミジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、ピリジノチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリジノイミダゾリル基、N-メチルベンゾイミダゾリル基、ピリジノ-N-メチルイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリジノオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ピリジノチアジアゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ピリジノオキサジアゾリル基、カルバゾリル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、N-メチルフタルイミド基及びN-メチル-1,8-ナフタルイミド基等の縮合多環芳香族複素環基等が挙げられ、芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基がより好ましい。また、これらの芳香族基に各種の置換基を導入してもよく、該導入してもよい置換基としては、式(1a)及び(1b)中のR乃至Rが表す水素原子以外の置換基と同じものが挙げられる。
上記式(1a)及び(1b)中のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
上記式(1a)及び(1b)中の置換アミノ基としては、非置換アミノ基(-NH基)の水素原子に置換基が導入されたものが挙げられ、このうち上記芳香族基で置換されたものが好ましい。
上記式(1a)及び(1b)中のアシル基とは、カルボニル基に芳香族基又はアルキル基が結合したものであり、該アシル基中の芳香族基及びアシル基中のアルキル基としては、上記した式(1a)及び(1b)中のR乃至Rが表すアルキル基及びアシル基と同じものが挙げられる。
上記式(1a)及び(1b)中のアルキルスルファモイル基とは、スルファモイル基の水素原子がアルキル基で置換されたものであり、該アルキルスルファモイル基中のアルキル基としては、上記した式(1a)及び(1b)中のR乃至Rが表すアルキル基と同じものが挙げられる。
上記式(1a)及び(1b)中のアルキルカルバモイル基とは、カルバモイル基の水素原子がアルキル基で置換されたものであり、該アルキルカルバモイル基中のアルキル基としては、上記した式(1a)及び(1b)中のR乃至Rが表すアルキル基と同じものが挙げられる。
上記式(1a)及び(1b)中のR及びRとしては、水素原子、アルキル基、芳香族基又はハロゲン原子であることが好ましく、水素原子又はハロゲン原子であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
上記式(1a)及び(1b)中のR及びRとしては、芳香族基又は置換基を有する芳香族基が好ましく、芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。式(1a)及び(1b)中のR及びRを芳香族基又は置換基を有する芳香族基とすることにより、式(1a)又は(1b)で表される化合物の吸収波長を長波長化することが出来る。
また、化合物の合成が容易であるとの観点から、左右の置換基が同一で対称となる構造であることが好ましい。即ち、前記式(1a)及び(1b)におけるRとRが同一であり、RとRが同一であり、かつ後述するnとmが同一であることが好ましく、例えばR=R=R=Rであってもよい。
式(1a)及び(1b)中のn及びmはそれぞれ独立に1乃至4の整数を表し、1乃至2の整数であることが好ましい。
式(1a)及び(1b)中のn及びmは1であることがより好ましく、かつ式(1b)で表される化合物よりも式(1a)で表される化合物が好ましい。即ち、本発明の好ましい実施形態の一つである化合物は下記式(2)で表される。
Figure 0007033039000006
上記式(2)中のR乃至Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、アシル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルバモイル基、又はアルキルカルバモイル基を表す。
前記式(2)中のR乃至Rが表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、置換アミノ基、アシル基、アルキルスルファモイル基及びアルキルカルバモイル基の具体例は、前記式(1a)及び(1b)中のR乃至Rが表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、置換アミノ基、アシル基、アルキルスルファモイル基及びアルキルカルバモイル基と同様であり、これらの置換基やR乃至Rの好ましい態様も、前記式(1a)及び(1b)における好ましい態様と同様である。
次に、本発明の化合物の合成方法について説明する。
下記の反応工程は本発明の好ましい実施形態の一つである一般式(1a)で表され、RとRが同一であり、RとRが同一である化合物の合成方法の一例を記載したものである。
Figure 0007033039000007
また、下記の反応工程は本発明の一般式(1b)で表され、RとRが同一であり、RとRが同一である化合物の合成方法の一例を記載したものである。
Figure 0007033039000008
上記反応工程において、化合物1は、公知の方法(J.Med.Chem.,2014,57,970-986)と同様に、Diethyl bromomalonateとThioamide基を有する化合物をトルエン中で反応させることで得られる。
化合物2は、公知の方法(WO2007/089031 Al)を参考に、N,N-ジメチルホルムアミド中で炭酸カリウムとヨードメタンを反応させることで得られる。
化合物7は、公知の方法(Tetrahedron Letters,2008,49,3716-3721)を参考に、化合物2を原料として合成することが出来る。具体的には、先ず化合物2又は12をヒドラジン一水和物とアルコール中で反応させて化合物3又は13を得る。次に、化合物3又は13を2-Acetophenol又はその誘導体とアルコール中で反応させて化合物4又は14を得た後、該化合物4又は14中のヒドラゾンを四酢酸鉛でジケトンに変換することにより化合物5又は15が得られる。更に、溶媒中で化合物5又は15に酢酸アンモニウムの様なアンモニウム塩を加えることにより化合物6又は16を得た後、N,N-ジイソプロピルエチルアミンの様な第三級アミン存在下、前記で得られた化合物6又は16に三フッ化ホウ素類(例えば三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体など)を反応させることにより化合物7又は17が得られる。最後に、溶媒中で化合物7又は17を三臭化ホウ素の様な脱メチル剤で処理することにより、目的物である本発明の化合物が得られる。
合成で得られたこれらの化合物の精製方法は特に限定されず、例えば洗浄、再結晶、カラムクロマトグラフィー又は真空昇華等の公知の方法を採用すればよく、必要に応じてこれらの方法を組み合わせることができる。
尚、上記反応工程における中間体化合物7及び17は、上記式(1a)又は(1b)で表される化合物と同様の効果、即ち、近赤外光領域に主たる吸収帯を有し、かつ近赤外光電変換素子に用い得る有機薄膜を形成することが出来るため、該化合物も赤外線吸収材料、有機薄膜及び有機エレクトロニクスデバイスに利用可能である。よって、下記式(a)又は(b)で表される化合物(上記反応工程における化合物7又は17)も本発明の化合物の範疇に含まれる。
Figure 0007033039000009
式(a)及び(b)中、R乃至Rは式(1a)及び(1b)中のR乃至Rと同じ意味を表し、好ましいものも式(1a)及び(1b)中のR乃至Rと同じである。
式(a)及び(b)中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。式(a)及び(b)のRが表すアルキル基の具体例としては、上記した式(1a)及び(1b)中のアルキル基と同じものが挙げられ、直鎖のアルキル基が好ましく、炭素数1乃至6の直鎖のアルキル基がより好ましく、炭素数1乃至4の直鎖のアルキル基が更に好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
式(a)及び(b)中、m及びnは式(1a)及び(1b)中のm及びnと同じ意味を表し、好ましいものも式(1a)及び(1b)中のm及びnと同じである。
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物の具体例として、式(1-1)乃至(1-317)で表される化合物を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
尚、具体例として示した構造式は共鳴構造の一つを表したものにすぎず、図示した共鳴構造に限定されない。
Figure 0007033039000010
Figure 0007033039000011
Figure 0007033039000012
Figure 0007033039000013
Figure 0007033039000014
Figure 0007033039000015
Figure 0007033039000016
Figure 0007033039000017
Figure 0007033039000018
Figure 0007033039000019
Figure 0007033039000020
Figure 0007033039000021
Figure 0007033039000022
Figure 0007033039000023
Figure 0007033039000024
Figure 0007033039000025
Figure 0007033039000026
Figure 0007033039000027
Figure 0007033039000028
Figure 0007033039000029
Figure 0007033039000030
Figure 0007033039000031
Figure 0007033039000032
Figure 0007033039000033
Figure 0007033039000034
Figure 0007033039000035
Figure 0007033039000036
Figure 0007033039000037
Figure 0007033039000038
Figure 0007033039000039
Figure 0007033039000040
Figure 0007033039000041
Figure 0007033039000042
Figure 0007033039000043
Figure 0007033039000044
Figure 0007033039000045
前記式(a)又は(b)で表される化合物の具体例としては、式(a)又は(b)中のR乃至R、m及びnが上記した式(1a)又は(1b)で表される化合物の具体例におけるR乃至R、m及びnと同じであって、かつRが水素原子又はアルキル基の化合物が挙げられる。
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物の分子量は、例えば式(1a)又は(1b)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることが特に好ましい。分子量の下限値は、式(1a)又は(1b)で表される化合物がとりうる分子量の最小値である。尚、式(1a)又は(1b)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。尚、式(a)又は(b)で表される化合物の分子量も同様である。
本発明の近赤外光吸収材料は、本発明の式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物を含有する。近赤外光吸収材料中の式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物の含有量は特に限定されないが、近赤外光吸収材料中に通常は50乃至100質量%、好ましくは70乃至100質量%、より好ましくは90乃至100質量%である、近赤外光吸収材料は式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物の何れか複数を含有してもよく、複数を含有する場合はそれらの含有量の合計が前記の範囲であればよい。
近赤外光吸収材料は近赤外線の吸収特性の要求される様々な分野や用途に用いることができる材料である。近赤外光吸収材料を用いる際の形態はそれぞれの分野や用途に応じて選択すればよい。
本発明の化合物を用いて、有機薄膜を作製することができる。当該有機薄膜は本発明の化合物のみで構成されていてもよいが、別途公知の近赤外光吸収色素を含んでいてもよい。該有機薄膜は、近赤外光を吸収するという目的から、750nm以上の波長の光を吸収することが好ましく、800nm以上の波長の光を吸収することがより好ましく、850nm以上の波長の光を吸収することが更に好ましい。即ち、本発明の化合物の好ましい吸収波長も前記有機薄膜の好ましい吸収波長と同じである。従って、本発明の化合物の吸収スペクトルは、500nm以上の長波長側のλmax(極大吸収波長)が800nm以上であることが好ましく、850nm以上であることがより好ましい。
尚、本明細書における吸収スペクトルは、本発明の化合物のクロロホルム溶液を、又は本発明の化合物をガラス基板上に成膜した有機薄膜を、紫外可視分光光度計UV-1700(株式会社島津製作所)で測定した結果を意味する。
本発明の有機薄膜の形成方法としては、一般的な乾式成膜法や湿式成膜法が挙げられる。具体的には真空プロセスである抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング及び分子積層法や、溶液プロセスであるキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング及びスプレーコーティング等のコーティング法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷及び凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィー法等の手法が挙げられる。
一般的に近赤外光吸収色素には、加工の容易性という観点から化合物を溶液状態で塗布するプロセス(溶液プロセス)で用い得ることが望まれているが、複数の有機薄膜(有機層)が積層して用いられる有機エレクトロニクスデバイス用途の場合、塗布溶液が下層の有機薄膜を侵す恐れがあることから、必ずしも溶液プロセスで用い得るものである必要はなく、むしろ乾式成膜法、例えば抵抗加熱蒸着等で用いることが適切である。したがって、近赤外領域に主たる吸収波長を有し、且つ乾式製膜法で用い得る近赤外光吸収色素が近赤外光電変換材料としては好ましい。
各層の成膜には上記の手法を複数組み合わせた方法を採用してもよい。各層の厚みは、それぞれの物質の抵抗値・電荷移動度にもよるので限定することはできないが、通常は0.5~5000nmの範囲であり、好ましくは1~1000nmの範囲、より好ましくは5~500nmの範囲である。
〔有機エレクトロニクスデバイス〕
本発明の化合物或いは近赤外光吸収材料又はこれらを用いた有機薄膜を含む有機エレクトロニクスデバイスを作製することができる。有機エレクトロニクスデバイスとしては、例えば、薄膜トランジスタ、有機光電変換素子、有機太陽電池素子、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」又は「有機発光素子」と表す。)、有機発光トランジスタ素子、有機半導体レーザー素子などが挙げられる。本発明では、特に近赤外用途の展開が期待される有機光電変換素子、有機EL素子に着目する。ここでは本発明の実施形態の一つである近赤外光吸収材料として用いた近赤外有機光電変換素子、近赤外発光特性を利用した有機EL素子、有機半導体レーザー素子について説明する。尚、ここでは詳細に説明しないが、700nmを超える近赤外光は、生体組織に対する透過性が高い。従って、生体内組織の観測のため利用も可能であるため、近赤外蛍光プローブ等、医療分野での病理解明、診断等において、その目的に応じて、いろいろな態様での適用が可能である。
〔有機光電変換素子〕
上記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物は近赤外光吸収特性を有する化合物であることから、近赤外有機光電変換素子としての利用が期待される。特に、本発明の有機光電変換素子に於ける光電変換層に用いることができる。当該素子に於いては、光に対する応答波長光の吸収帯の極大吸収が700nm以上2500nm以下であることが好ましい。ここで、近赤外有機光電変換素子としては近赤外光センサ、有機撮像素子、近赤外光イメージセンサ等が挙げられる。
有機光電変換素子は、対向する一対の電極膜間に光電変換部(膜)を配置した素子であって、電極膜の上方から光が光電変換部に入射されるものである。光電変換部は前記の入射光に応じて電子と正孔を発生するものであり、半導体により前記電荷に応じた信号が読み出され、光電変換膜部の吸収波長に応じた入射光量を示す素子である。光が入射しない側の電極膜には読み出しのためのトランジスタが接続される場合もある。光電変換素子は、アレイ状に多数配置されている場合、入射光量に加え入射位置情報をも示すため、撮像素子となる。又、より光源近くに配置された光電変換素子が、光源側から見てその背後に配置された光電変換素子の吸収波長を遮蔽しない(透過する)場合は、複数の光電変換素子を積層して用いてもよい。
本発明の有機光電変換素子は、前記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物を上記光電変換部の構成材料として用いることができる。
光電変換部は、光電変換層と、電子輸送層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、結晶化防止層及び層間接触改良層等から成る群より選択される一種又は複数種の光電変換層以外の有機薄膜層とから成ることが多い。本発明の化合物は光電変換層以外にも用いることもできるが、光電変換層の有機薄膜層として用いることが好ましい。光電変換層は前記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物のみで構成されていてもよいが、前記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物以外に、公知の近赤外光吸収材料やその他を含んでいてもよい。
本発明の有機光電変換素子で用いられる電極膜は、後述する光電変換部に含まれる光電変換層が、正孔輸送性を有する場合や光電変換層以外の有機薄膜層が正孔輸送性を有する正孔輸送層である場合は、該光電変換層やその他の有機薄膜層から正孔を取り出してこれを捕集する役割を果たし、又光電変換部に含まれる光電変換層が電子輸送性を有する場合や、有機薄膜層が電子輸送性を有する電子輸送層である場合は、該光電変換層やその他の有機薄膜層から電子を取り出して、これを吐出する役割を果たすものである。よって、電極膜として用い得る材料は、ある程度の導電性を有するものであれば特に限定されないが、隣接する光電変換層やその他の有機薄膜層との密着性や電子親和力、イオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選択することが好ましい。電極膜として用い得る材料としては、例えば、酸化錫(NESA)、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)及び酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、白金、クロム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル及びタングステン等の金属:ヨウ化銅及び硫化銅等の無機導電性物質:ポリチオフェン、ポリピロール及びポリアニリン等の導電性ポリマー:炭素等が挙げられる。これらの材料は、必要により複数を混合して用いてもよいし、複数を2層以上に積層して用いてもよい。電極膜に用いる材料の導電性も、光電変換素子の受光を必要以上に妨げなければ特に限定されないが、光電変換素子の信号強度や、消費電力の観点から出来るだけ高いことが好ましい。例えばシート抵抗値が300Ω/□以下の導電性を有するITO膜であれば、電極膜として充分機能するが、数Ω/□程度の導電性を有するITO膜を備えた基板の市販品も入手可能となっていることから、この様な高い導電性を有する基板を使用することが望ましい。ITO膜(電極膜)の厚さは導電性を考慮して任意に選択することができるが、通常5乃至500nm、好ましくは10乃至300nm程度である。ITOなどの膜を形成する方法としては、従来公知の蒸着法、電子線ビーム法、スパッタリング法、化学反応法及び塗布法等が挙げられる。基板上に設けられたITO膜には必要に応じUV-オゾン処理やプラズマ処理等を施してもよい。
電極膜のうち、少なくとも光が入射する側の何れか一方に用いられる透明電極膜の材料としては、ITO、IZO、SnO、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(Alドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)等が挙げられる。光電変換層の吸収ピーク波長における透明電極膜を介して入射した光の透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
又、検出する波長の異なる光電変換層を複数積層する場合、それぞれの光電変換層の間に用いられる電極膜(これは上記記載の一対の電極膜以外の電極膜である)は、それぞれの光電変換層が検出する光以外の波長の光を透過させる必要があり、該電極膜には入射光の90%以上を透過する材料を用いることが好ましく、95%以上の光を透過する材料を用いることがより好ましい。
電極膜はプラズマフリーで作製することが好ましい。プラズマフリーでこれらの電極膜を作成することにより、電極膜が設けられる基板にプラズマが与える影響が低減され、光電変換素子の光電変換特性を良好にすることができる。ここで、プラズマフリーとは、電極膜の成膜時にプラズマが発生しないか、又はプラズマ発生源から基板までの距離が2cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上であり、基板に到達するプラズマが減ぜられるような状態を意味する。
電極膜の成膜時にプラズマが発生しない装置としては、例えば、電子線蒸着装置(EB蒸着装置)やパルスレーザー蒸着装置等が挙げられる。EB蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をEB蒸着法と称し、パルスレーザー蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をパルスレーザー蒸着法と称する。
成膜中プラズマを減ずることが出来るような状態を実現できる装置(以下、プラズマフリーである成膜装置という)としては、例えば、対向ターゲット式スパッタ装置やアークプラズマ蒸着装置等が考えられる。
透明導電膜を電極膜(例えば第一の導電膜)とした場合、DCショート、あるいはリーク電流の増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換層に発生する微細なクラックがTCO(Transparent Conductive Oxide)などの緻密な膜によって被覆され、透明導電膜とは反対側の電極膜との間の導通が増すためと考えられる。そのため、Alなど膜質が比較して劣る材料を電極に用いた場合、リーク電流の増大は生じにくい。電極膜の膜厚を、光電変換層の膜厚(クラックの深さ)に応じて制御することにより、リーク電流の増大を抑制することができる。
通常、導電膜を所定の値より薄くすると、急激な抵抗値の増加が起こる。本実施形態の光センサ用光電変換素子における導電膜のシート抵抗は、通常100乃至10000Ω/□であり、膜厚の自由度が大きい。又、透明導電膜が薄いほど吸収する光の量が少なくなり、一般に光透過率が高くなる。光透過率が高くなると、光電変換層で吸収される光が増加して光電変換能が向上するため非常に好ましい。
本発明の有機光電変換素子が有する光電変換部は、光電変換層及び光電変換層以外の有機薄膜層を含む場合もある。光電変換部を構成する光電変換層には一般的に有機半導体膜が用いられるが、その有機半導体膜は一層若しくは複数の層であってもよく、一層の場合は、p型有機半導体膜、n型有機半導体膜、又はそれらの混合膜(バルクヘテロ構造)が用いられる。一方、複数の層である場合は、2~10層程度であり、p型有機半導体膜、n型有機半導体膜、又はそれらの混合膜(バルクヘテロ構造)の何れかを積層した構造であり、層間にバッファ層が挿入されていてもよい。尚、上記の混合膜により光電変換層を形成する場合、本発明の式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物をp型半導体材料として用い、n型半導体材料としては一般的なフラーレンや、その誘導体を用いることが好ましい。
本発明の有機光電変換素子において、光電変換部を構成する光電変換層以外の有機薄膜層は、光電変換層以外の層、例えば、電子輸送層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、結晶化防止層又は層間接触改良層等としても用いられる。特に電子輸送層、正孔輸送層、電子ブロック層及び正孔ブロック層(以下「キャリアブロック層」とも表す。)から成る群より選択される一種以上の薄膜層として用いることにより、弱い光エネルギーでも効率よく電気信号に変換する素子が得られるため好ましい。
加えて、例えば有機撮像素子は、一般的には高コントラスト化や省電力化を目的として、暗電流の低減により性能向上を目指すと考えられため、層構造内にキャリアブロック層を挿入する手法が好ましい。これらのキャリアブロック層は、有機エレクトロニクスデバイス分野では一般に用いられており、其々デバイスの構成膜中において正孔若しくは電子の逆移動を制御する機能を有する。
電子輸送層は、光電変換層で発生した電子を電極膜へ輸送する役割と、電子輸送先の電極膜から光電変換層に正孔が移動するのをブロックする役割とを果たす。正孔輸送層は、発生した正孔を光電変換層から電極膜へ輸送する役割と、正孔輸送先の電極膜から光電変換層に電子が移動するのをブロックする役割とを果たす。電子ブロック層は、電極膜から光電変換層への電子の移動を妨げ、光電変換層内での再結合を防ぎ、暗電流を低減する役割を果たす。正孔ブロック層は、電極膜から光電変換層への正孔の移動を妨げ、光電変換層内での再結合を防ぎ、暗電流を低減する機能を有する。
図1に本発明の有機光電変換素子の代表的な素子構造を示すが、本発明はこの構造に限定されるものではない。図1の態様例においては、1が絶縁部、2が一方の電極膜、3が電子ブロック層、4が光電変換層、5が正孔ブロック層、6が他方の電極膜、7が絶縁基材又は他の有機光電変換素子をそれぞれ表す。図中には読み出し用のトランジスタを記載していないが、2又は6の電極膜と接続されていればよく、更には光電変換層4が透明であれば、光が入射する側とは反対側の電極膜の外側に成膜されていてもよい。有機光電変換素子への光の入射は、光電変換層4を除く構成要素が、光電変換層の主たる吸収波長の光を入射することを極度に阻害することがなければ、上部若しくは下部からの何れからでもよい。
〔有機EL素子〕
次に有機EL素子について説明する。
本発明の式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物は近赤外発光特性を有する化合物であることから、有機EL素子としての利用が期待される。
有機EL素子は固体で自己発光型の大面積カラー表示や照明などの用途に利用できることが注目され、数多くの開発がなされている。その構成は、陰極と陽極からなる対向電極の間に、発光層及び電荷輸送層の2層を有する構造のもの;対向電極の間に積層された電子輸送層、発光層及び正孔輸送層の3層を有する構造のもの;及び3層以上の層を有するもの;等が知られており、また発光層が単層であるもの等が知られている。
ここで正孔輸送層は、正孔を陽極から注入させ、発光層への正孔を輸送し、発光層へ正孔の注入を容易にする機能と電子をブロックする機能とを有する。また、電子輸送層は、電子を陰極から注入させ発光層へ電子を輸送し、発光層へ電子の注入を容易にする機能と正孔をブロックする機能を有する。さらに発光層においてはそれぞれ注入された電子と正孔が再結合することにより励起子が生じ、その励起子が放射失活する過程で放射されるエネルギーが発光として検出される。以下に有機EL素子の好ましい態様を記載する。
有機EL素子は、陽極と陰極との電極間に1層又は複数層の有機薄膜が形成された素子で、電気エネルギーにより発光する素子である。
有機EL素子において使用されうる陽極は、正孔を、正孔注入層、正孔輸送層、発光層に注入する機能を有する電極である。一般的に仕事関数が4.5eV以上の金属酸化物や金属、合金、導電性材料などが適している。具体的には、特に限定されるものでないが、酸化錫(NESA)、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)などの導電性金属酸化物、金、銀、白金、クロム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステンなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーや炭素が挙げられる。それらの中でも、ITOやNESAを用いることが好ましい。
陽極は、必要であれば複数の材料を用いても、また2層以上で構成されていてもよい。陽極の抵抗は素子の発光に十分な電流が供給できるものであれば限定されないが、素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが好ましい。例えばシート抵抗値が300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、数Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、低抵抗品を使用することが望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常5~500nm、好ましくは10~300nmの間で用いられる。ITOなどの膜形成方法としては、蒸着法、電子線ビーム法、スパッタリング法、化学反応法、塗布法などが挙げられる。
有機EL素子において使用されうる陰極は、電子を電子注入層、電子輸送層、発光層に注入する機能を有する電極である。一般的に仕事関数の小さい(おおよそ4eV以下である)金属や合金が適している。具体的には、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムが挙げられるが、電子注入効率を上げて素子特性を向上させるためにはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムが好ましい。合金としては、これら低仕事関数の金属を含むアルミニウムもしくは銀等の金属との合金、又はこれらを積層した構造の電極等が使用できる。積層構造の電極にはフッ化リチウムのような無機塩の使用も可能である。また、陽極側でなく陰極側へ発光を取り出す場合は、低温で製膜可能な透明電極としてもよい。膜形成方法としては、蒸着法、電子線ビーム法、スパッタリング法、化学反応法、塗布法などが挙げられるが、特に制限されるものではない。陰極の抵抗は素子の発光に十分な電流が供給できるものであれば限定されないが、素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが好ましく、数100~数Ω/□程度が好ましい。膜厚は通常5~500nm、好ましくは10~300nmの範囲で用いられる。
更に封止、保護のために、酸化チタン、窒化ケイ素、酸化珪素、窒化酸化ケイ素、酸化ゲルマニウムなどの酸化物、窒化物、又はそれらの混合物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子、フッ素系高分子などで陰極を保護し、酸化バリウム、五酸化リン、酸化カルシウム等の脱水剤と共に封止することができる。
また発光を取り出すために、一般的には素子の発光波長領域で十分に透明性を有する基板上に電極を作製することが好ましい。透明の基板としてはガラス基板やポリマー基板が挙げられる。ガラス基板はソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英などが用いられ、機械的・熱的強度を保つのに十分な厚みがあればよく、0.5mm以上の厚みが好ましい。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよく、無アルカリガラスの方が好ましい。このようなものとして、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスが市販されているのでこれを使用することもできる。またガラス以外のポリマーでできた基板としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル基板などが挙げられる。
有機EL素子の有機薄膜は、陽極と陰極の電極間に、1層又は複数の層で形成されている。その有機薄膜に上記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物を含有させることにより、電気エネルギーにより発光する素子が得られる。
有機薄膜を形成する1層又は複数の層の「層」とは、正孔輸送層、電子輸送層、正孔輸送性発光層、電子輸送性発光層、正孔阻止層、電子阻止層、正孔注入層、電子注入層、発光層、又は下記構成例9)に示すように、これらの層が有する機能を併せ持つ単一の層を意味する。本発明における有機薄膜を形成する層の構成としては、以下の構成例1)から9)が挙げられ、いずれの構成であってもよい。
構成例
1)正孔輸送層/電子輸送性発光層。
2)正孔輸送層/発光層/電子輸送層。
3)正孔輸送性発光層/電子輸送層。
4)正孔輸送層/発光層/正孔阻止層。
5)正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層。
6)正孔輸送性発光層/正孔阻止層/電子輸送層。
7)前記1)から6)の組み合わせのそれぞれにおいて、正孔輸送層もしくは正孔輸送性発光層の前に正孔注入層を更にもう一層付与した構成。
8)前記1)から7)の組み合わせのそれぞれにおいて、電子輸送層もしくは電子輸送性発光層の前に電子注入層を更にもう一層付与した構成。
9)前記1)から8)の組み合わせにおいて使用する材料をそれぞれ混合し、この混合した材料を含有する一層のみを有する構成。
尚、前記9)は、一般にバイポーラー性の発光材料と言われる材料で形成される単一の層;又は、発光材料と正孔輸送材料又は電子輸送材料を含む層を一層設けるだけでもよい。一般的に多層構造とすることで、効率良く電荷、すなわち正孔及び/又は電子を輸送し、これらの電荷を再結合させることができる。また電荷のクエンチングなどが抑えられることにより、素子の安定性の低下を防ぎ、発光の効率を向上させることができる。
正孔注入層及び正孔輸送層は、正孔輸送材料を単独で、又は二種類以上の該材料の混合物を積層することにより形成される。正孔輸送材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’’-ジフェニル-1,1’-ジアミン、N,N’-ジナフチル-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミンなどのトリフェニルアミン類、ビス(N-アリルカルバゾール)又はビス(N-アルキルカルバゾール)類、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体やポルフィリン誘導体に代表される複素環化合物、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどが好ましく使用できる。素子作製に必要な薄膜を形成し、電極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる物質であれば特に限定されるものではない。正孔注入性を向上するための、正孔輸送層と陽極の間に設ける正孔注入層としては、フタロシアニン誘導体、m-MTDATA(4,4’,4’’-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン)等のスターバーストアミン類、高分子系ではPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))等のポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール誘導体等で作成されたものが挙げられる。
電子輸送層は、電子輸送材料を単独で、又は二種類以上の該材料の混合物を積層することにより形成される。電子輸送材料としては、電界を与えられた電極間において負極からの電子を効率良く輸送することが必要である。電子輸送材料は、電子注入効率が高く、注入された電子を効率良く輸送することが好ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時及び使用時に発生しにくい物質であることが要求される。このような条件を満たす物質として、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム錯体に代表されるキノリノール誘導体金属錯体、トロポロン金属錯体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、ナフタルイミド誘導体、ナフタル酸誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、キノキサリン誘導体などが挙げられるが特に限定されるものではない。これらの電子輸送材料は単独でも用いられるが、異なる電子輸送材料と積層又は混合して使用しても構わない。電子注入性を向上するための、電子輸送層と陰極の間に設ける電子注入層としては、セシウム、リチウム、ストロンチウムなどの金属やフッ化リチウムなどが挙げられる。
正孔阻止層は、正孔阻止性物質単独又は二種類以上の物質を積層、混合することにより形成される。正孔阻止性物質としては、バソフェナントロリン、バソキュプロイン等のフェナントロリン誘導体、シロール誘導体、キノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体などが好ましい。正孔阻止性物質は、正孔が陰極側から素子外部に流れ出てしまい発光効率が低下するのを阻止することができる化合物であれば特に限定されるものではない。
発光層とは、発光する有機薄膜の意味であり、例えば強い発光性を有する正孔輸送層、電子輸送層又はバイポーラー輸送層であると言うことができる。発光層は、発光材料(ホスト材料、ドーパント材料など)により形成されていればよく、これはホスト材料とドーパント材料との混合物であっても、ホスト材料単独であっても、いずれでもよい。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の材料の組み合わせであってもよい。
ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーパント材料は積層されていても、分散されていても、いずれであってもよい。発光層として例えば前述の正孔輸送層や電子輸送層が挙げられる。発光層に使用される材料としては、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体、ナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体、フェニルブタジエン誘導体、スチリル誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、テトラセン誘導体、ペリレン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、ポルフィリン誘導体や燐光性金属錯体(Ir錯体、Pt錯体、Eu錯体など)などが挙げられる。
有機EL素子の有機薄膜の形成方法は、一般的に、真空プロセスである抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、溶液プロセスであるキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等、さらにはこれらの手法を複数組み合わせた方法を採用しうる。各層の厚みは、それぞれの物質の抵抗値・電荷移動度にもよるので限定することはできないが、0.5~5000nmの間から選ばれる。好ましくは1~1000nm、より好ましくは5~500nmである。
有機EL素子を構成する有機薄膜のうち、陽極と陰極の電極間に存在する、発光層、正孔輸送層、電子輸送層などの薄膜の1層又は複数層に上記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物を含有させることにより、低電気エネルギーでも効率良く発光する素子が得られる。
上記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物は正孔輸送層や発光層、電子輸送層として好適に用いることができる。例えば前述した電子輸送材料又は正孔輸送材料、発光材料などと組み合わせて使用することや混合して使用することができる。
上記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物をドーパント材料と組み合わせたホスト材料として用いるときの、ドーパント材料の具体例としてはビス(ジイソプロピルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸イミドなどのペリレン誘導体、ペリノン誘導体、4-(ジシアノメチレン)-2メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4Hピラン(DCM)やその類縁体、マグネシウムフタロシアニン、アルミニウムクロロフタロシアニンなどの金属フタロシアニン誘導体、ローダミン化合物、デアザフラビン誘導体、クマリン誘導体、オキサジン化合物、スクアリリウム化合物、ビオラントロン化合物、ナイルレッド、5-シアノピロメテン-BF錯体等のピロメテン誘導体、さらに燐光材料としてアセチルアセトンやベンゾイルアセトンとフェナントロリンなどを配位子とするEu錯体や、Ir錯体、Ru錯体、Pt錯体、Os錯体などのポルフィリン、オルトメタル金属錯体などを用いることができるが特にこれらに限定されるものではない。また2種類のドーパント材料を混合する場合は、ルブレンのようなアシストドーパントを用いてホスト色素からのエネルギーを効率良く移動して色純度の向上した発光を得ることも可能である。いずれの場合も高輝度特性を得るためには、蛍光量子収率が高いものをドーピングすることが好ましい。
用いるドーパント材料の量は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、通常ホスト材料に対して30質量%以下で用いる。好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下である。発光層におけるドーパント材料をホスト材料にドーピングする方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。また、ホスト材料にサンドイッチ状に挟んで使用することも可能である。この場合、一層又は二層以上のドーパント層として、ホスト材料と積層してもよい。
これらのドーパント層は単独で各層を形成することもできるし、それらを混合して使用してもよい。また、ドーパント材料を、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリ(メチル)(メタ)アクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリサルフォン、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂に溶解又は分散させて用いることも可能である。
有機EL素子はフラットパネルディスプレイとして好適に使用することができる。またフラットバックライトとしても用いることができ、この場合、有色光を発するものでも白色光を発するものでもいずれでも使用できる。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ機器、自動車パネル、表示板、標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっている、パソコン用途のための従来のバックライトは、蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であったが、本発明の発光素子を用いたバックライトは、薄型、軽量が特徴であるため上記問題点は解消される。同様に照明にも有用に用いることができる。
本発明の上記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物を用いると、発光効率が高く、寿命が長い有機EL表示装置を得る事が出来る。さらに薄膜トランジスタ素子を組み合わせることで印加電圧のオンオフ現象を電気的に高精度に制御した有機EL表示装置を低コストで供給することが可能となる。
[有機半導体レーザー素子について]
上記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物は近赤外発光特性を有する化合物であることから、有機半導体レーザー素子としての利用が期待される。すなわち、上記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物を含有する有機半導体レーザー素子に共振器構造を組み込み、効率的にキャリアを注入して励起状態の密度を十分に高めることが出来れば、光が増幅されレーザー発振に至る事が期待される。従来、光励起によるレーザー発振が観測されるのみで、電気励起によるレーザー発振に必要とされる、高密度のキャリアを有機半導体素子に注入し、高密度の励起状態を発生させるのは非常に困難と提唱されているが、上記式(a)、(b)、(1a)又は(1b)で表される化合物を含有する有機半導体素子を用いることで、高効率な発光(電界発光)が起こる可能性が期待される。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。合成例に記載の化合物は、必要に応じて質量分析スペクトル、核磁気共鳴スペクトル(NMR)により構造を決定した。
[実施例1]本発明の化合物A6の合成
Figure 0007033039000046
化合物A1は、WO2007/089031 Alに記載の方法を参照して合成した。化合物A5は、化合物A1を原料としてTetrahedron Letters,2008,49,3716-3721と同様の方法によって合成した。
フラスコに化合物A5(1.7mmol)、ジクロロメタン(40mL)及びジイソプロピルアミン(2mL)を加えて攪拌した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(2mL)をゆっくり加えて、40℃で1時間加熱攪拌した。得られた反応溶液に飽和重曹水を加えて暫く攪拌した後、ジクロロメタンを加えて分液し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)により精製して緑色粉末の化合物A6を得た。(1.0mmol、収率:58%)。
化合物A6の核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定結果は以下の通りであった。
H NMR(400MHz,CDCl) δ(ppm)=8.02-7.99(m,4H),7.89(d,2H),7.75(d,2H),7.73(s,1H),7.47(t,2H),7.44-7.41(m,6H),7.30(t,2H),4.15(s,6H)
化合物A6の質量分析スペクトルの測定結果は以下の通りであった。
EI-MS(m/z):670[M]
[実施例2]上記具体例の式(1-6)で表される化合物の合成
フラスコに化合物A6(1.5mmol)及びジクロロエタン(120mL)を加えて攪拌した後、三臭化ホウ素(18mL)を滴下して、80℃で6時間加熱攪拌した。得られた反応溶液を室温まで冷却した後、飽和重曹水に反応溶液を入れて沈殿をろ過し、ろ塊を水、メタノール及びクロロホルムで順次洗浄することにより濃緑色の式(1-6)で表される化合物を得た。(1.4mmol、収率:92%)。
式(1-6)で表される化合物の質量分析スペクトルの測定結果は以下の通りであった。
EI-MS(m/z):602[M]
[比較例1]下記式(2-1)で表される比較用化合物の合成
BODIPYの3,5位に置換したベンゼン環を以てB-Oキレート化した下記式(2-1)で表される比較化合物を、実施例1と同様の方法で合成した。
得られた式(2-1)で表される化合物の核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定結果は以下の通りであった。
H NMR(400MHz,CDCl) δ(ppm)=8.25(d,4H),7.99(d,2H),7.76(s,1H),7.53(t,2H),7.43-7.36(m,4H),7.17(t,2H),6.98(d,2H)
式(2-1)で表される化合物の質量分析スペクトルの測定結果は以下の通りであった。
EI-MS(m/z):436[M]
Figure 0007033039000047
[式(1-6)で表される化合物溶液の吸収スペクトル測定]
式(1-6)で表される本発明の化合物に昇華精製を施した後、クロロホルムに溶解させた溶液を調製して吸収スペクトルを測定した結果、本発明の化合物溶液の吸収スペクトルのλmaxは831nmであった。結果を図3に示した。
[式(2-1)で表される化合物溶液の吸収スペクトル測定]
式(1-6)で表される化合物の代りに式(2-1)で表される化合物を用いた以外は上記[式(1-6)で表される化合物溶液の吸収スペクトル測定]の方法に準じて、式(2-1)で表される化合物の吸収スペクトルを測定した結果、吸収スペクトルのλmaxは721nmであった。結果を図3及び5に示した。
[実施例3]式(1-6)で表される本発明の化合物を含む有機薄膜の作製及び吸収スペクトル測定
式(1-6)で表される本発明の化合物に昇華生成を施した後、クロロホルムに溶解させて濃度1mg/mLのクロロホルム溶液を調製した。前記で得られたクロロホルム溶液をスピンコート法(1000rpm、30秒間)によりガラス基板上に塗布した後、基板を120℃で30分間加熱乾燥してガラス基板上に製膜された本発明の有機薄膜を得た。得られたガラス基板上の有機薄膜の吸収スペクトルを測定した結果、吸収スペクトルのλmaxは922nmであった。また、λmaxにおける吸光度は0.022であった。結果を図4に示した。
[比較例2]式(2-1)で表される比較用の化合物を含む有機薄膜の作製及び吸収スペクトル測定
式(1-6)で表される本発明の化合物に代わりに式(2-1)で表される比較用の化合物を用いたこと以外は実施例2に準じて、ガラス基板上に製膜された比較用の有機薄膜を調製してその吸収スペクトルを測定した結果、吸収スペクトルのλmaxは670nmであった。また、λmaxにおける吸光度は0.009であった。結果を図4及び6に示した。尚、式(2-1)で表される化合物は吸光度の値が低く、実施例化合物(式(2-1)で表される化合物及び化合物A6)と同じ縮尺のチャートではピーク位置の判別が困難であったため、式(2-1)で表される化合物のピーク部分の吸光度を3倍にして表記したチャートを図4及び6中に点線で付記した。
[化合物A6溶液の吸収スペクトル測定]
式(1-6)で表される本発明の化合物の代りに本発明の化合物A6を用いた以外は上記[式(1-6)で表される化合物溶液の吸収スペクトル測定]の方法に準じて、化合物A6の吸収スペクトルを測定した結果、吸収スペクトルのλmaxは719nmであった。結果を図5に示した。
[実施例4]化合物A6を含む有機薄膜の作製及び吸収スペクトル測定
式(1-6)で表される本発明の化合物に代わりに本発明の化合物A6を用いたこと以外は実施例3に準じて、ガラス基板上に製膜された有機薄膜を調製してその吸収スペクトルを測定した結果、吸収スペクトルのλmaxは766nmであった。また、λmaxにおける吸光度は0.04であった。結果を図6に示した。
式(2-1)で表される比較用の化合物を含む有機薄膜の吸収スペクトルのλmaxが800nm以下であったのに対して、BODIPY骨格の3,5位に置換したチアゾール環を以てB-Oキレート化させた本発明の化合物は吸収波長の長波長シフトを達成しており、クロロホルム溶液の吸収スペクトルのλmaxは800nm以上であり、本発明の化合物を含む有機薄膜の吸収スペクトルのλmaxは900nm以上であった。即ち、既存の化合物では長波長領域の近赤外光の吸収能が不充分であるが、本発明の化合物は長波長領域の近赤外光の吸収能に優れる。加えて、本発明の化合物A6を含む有機薄膜についても、吸収スペクトルのλmaxは766nmであり、式(2-1)で表される比較用の化合物を用いた有機薄膜に比べ、100nm程度長波長化を達成している。
本発明の化合物は、合成上の簡便さと、近赤外領域における吸収特性と蒸着可能な特性を全て兼ね備えており、近赤外領域において動作する有機エレクトロニクスデバイス材料として非常に有用である。
(図1)
1 絶縁部
2 上部電極
3 電子ブロック層
4 光電変換層
5 正孔ブロック層
6 下部電極
7 絶縁基材若しくは他光電変換素子

(図2)
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極


Claims (8)

  1. 下記式(1a)又は(1b)
    Figure 0007033039000048
    (式(1a)及び(1b)中のR乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、アシル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルバモイル基、又はアルキルカルバモイル基を表す。n及びmはそれぞれ独立に1乃至4の整数を表す。)で表される化合物。
  2. 下記式(2)
    Figure 0007033039000049
    (上記式(2)中のR乃至Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、アシル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルバモイル基、又はアルキルカルバモイル基を表す。)で表される化合物。
  3. 及びRがそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、芳香族基又はハロゲン原子であり、R及びRがそれぞれ独立に水素原子又は芳香族基である請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 請求項1及至請求項3のいずれか一項に記載の化合物を含む近赤外光吸収材料。
  5. 請求項1及至請求項3のいずれか一項に記載の化合物を含む有機薄膜。
  6. 請求項1及至請求項3のいずれか一項に記載の化合物を含む有機エレクトロニクスデバイス。
  7. 請求項1に記載の式(1a)又は(1b)で表される化合物の製造方法であって、
    下記式(a)又は(b)
    Figure 0007033039000050
    (式(a)及び(b)中のR乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、アシル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルバモイル基、又はアルキルカルバモイル基を表す。Rは水素原子又はアルキル基を表す。n及びmはそれぞれ独立に1乃至4の整数を表す。)
    で表される化合物に三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体又は三臭化ホウ素を反応させる製造方法。
  8. 下記式(a)又は(b)
    Figure 0007033039000051
    (式(a)及び(b)中のR乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、置換アミノ基、非置換アミノ基、シアノ基、スルホ基、アシル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルバモイル基、又はアルキルカルバモイル基を表す。Rは水素原子又はアルキル基を表す。n及びmはそれぞれ独立に1乃至4の整数を表す。)で表される化合物。


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