図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
第1実施形態
図1において、電動車両1は、車両本体2に搭載されるバッテリである自走式電池10から給電された電力を用いてモータを駆動して走行する車両である。電動車両1は、モータのみを駆動源に用いる電気自動車に限られない。例えば、内燃機関とモータとを組み合わせて走行駆動源とするハイブリッド自動車を電動車両1としてもよい。
電動車両1は、座席の下方に自走式電池10を収納するための電池収納部50を備えている。電池収納部50には、自走式電池10が収納されている。ただし、電池収納部50の位置は座席の下に限られず、車両前方のエンジンルームの下や車両後方のトランクルームの下などに設けるようにしてもよい。
自走式電池10は、繰り返し充放電が可能な二次電池に自走機能を備えた電池である。自走式電池10は、電池収納部50への収納に際して、適切な位置に自ら移動することができる電池である。二次電池としてはニッケル水素電池やリチウムイオン電池や有機ラジカル電池など様々な二次電池を採用可能である。自走式電池10の構成については、後に詳述する。
電池収納部50は、天井面と底面と側面とで囲まれた電池収納空間を構成している。電池収納部50は、後席の後方下部に位置して後方膨出部53を備えている。電池収納部50は、略直方体形状の空間に後方膨出部53を加えた形状である。ただし、電池収納部50の形状は上述した形状に限られない。例えば、後方膨出部53を備えない略直方体形状であってもよい。
電池収納部50に隣接して、車両側給電部61が設けられている。車両側給電部61は、電池収納部50の前方に位置している。車両側給電部61は、電池収納部50に収納した自走式電池10と電気的に接続して給電を行う装置である。車両側給電部61は、自走式電池10と非接触状態で電力のやり取りを行う無線給電装置である。
車両本体2の底面をなす電池収納部50の底面には昇降機70が設けられている。昇降機70は、電池収納部50の略中央に位置している。昇降機70は、電池収納部50から地面に対して上下動する装置である。昇降機70は、底板部71を備えている。底板部71は、昇降機70が上昇しきった状態で電池収納部50の底面の一部をなしている。すなわち、電池収納部50の底面は、底板部71と電池収納部50の床面とにより構成されている。底板部71は、四角形状の板部材である。昇降機70は、アクチュエータ72を備えている。アクチュエータ72は、底板部71を昇降させるための装置であって、電気で駆動して底板部71の位置を上下に変位させる。アクチュエータ72は、底板部71の4つの角部のそれぞれに設けられている。昇降機70が昇降する際には、4つのアクチュエータ72が同時に駆動されて、底板部71を上下に変位させる。
昇降機70は、開状態と閉状態との2つの状態を備えている。昇降機70の開状態においては、底板部71が地面と接触しており、電池収納部50に自走式電池10が出入り可能な状態である。昇降機70の閉状態においては、底板部71が地面と接触しておらず、電池収納部50に自走式電池10が出入りできない状態である。昇降機70は、自走式電池10を電池収納部50に搬入する搬入部としても、自走式電池10を電池収納部50から搬出する搬出部としても機能する。すなわち、昇降機70は搬入出部を提供している。ここで、搬入出部とは搬入部としての機能と搬出部としての機能を兼ね備えた部分である。
電池収納部50の天井面には、少なくとも昇降機70の上方投影領域を含むように昇降用磁石80が設けられている。昇降用磁石80は、電池収納部50の天井面全体に設けられている。昇降用磁石80は、電池収納部50の底面と平行な面を有する平板状の磁石である。昇降用磁石80は、車両側磁石を提供する。
後方膨出部53の天井面には、膨出部用磁石83が設けられている。膨出部用磁石83は、自走式電池10の上面と略等しい大きさである。膨出部用磁石83は、車両側磁石を提供する。
電池収納部50の内部には、複数の自走式電池10が収納されている。すなわち、電池収納部50の底面に複数の自走式電池10が整列した状態で載置されている。さらに、後方膨出部53に自走式電池10が配置されている。すなわち、自走式電池10が上下方向に重なった状態で収納されている。複数の自走式電池10は互いに接続されて、全体で1つのバッテリとして電動車両1に電力を供給する。
図2において、自走式電池10は自走式電池10同士を上下に重ねて配置しやすいように、高さ方向の厚さが小さく薄型に構成されている。自走式電池10は、上から順番に上面磁石15、二次電池20、姿勢制御部18、下面磁石16で構成されている。送受信部32と緩衝材19とは、二次電池20の側面に設けられている。言い換えると、送受信部32と緩衝材19とは、上面磁石15と下面磁石16との間の高さに位置している。二次電池20は、繰り返し充放電が可能な電池であって、電動車両1に供給する電力を蓄える部品である。上面磁石15は、電池側磁石を提供する。
自走式電池10は、二次電池20を移動させる機能を有する移動部を備えている。電池側タイヤ12と上面磁石15と姿勢制御部18とは移動部を提供している。電池側タイヤ12は、自走式電池10の下面をなす下面磁石16よりも下方に突出している。電池側タイヤ12は、回転駆動されることで電池収納部50の底面や地面などの走行面を走行して二次電池20を移動させる。言い換えると、電池側タイヤ12は、二次電池20を地面などの走行面と平行な方向に移動させる装置である。
姿勢制御部18は、二次電池20を昇降させる機能を有する。姿勢制御部18は、二次電池20を下側から支持して、二次電池20の位置を上下方向に変位させる。姿勢制御部18は、伸縮性のある伸縮部品を二次電池20の四隅に対応して有している。伸縮部品としては、例えばソレノイド内に可動鉄心を備えたソレノイドアクチュエータや、サーボモータを用いた電動アクチュエータなどが利用可能である。姿勢制御部18は、伸縮部品を上下方向に伸縮させることで二次電池20の上下方向の位置を制御する。また、姿勢制御部18は、場所によって伸縮部品の伸縮の大きさを変えることで二次電池20の上面を地面に対して傾いた姿勢に制御することが可能である。言い換えると、姿勢制御部18は、二次電池20を地面などの走行面と交差する方向に移動させる装置である。ただし、姿勢制御部18に傾斜させる傾斜機能を持たせず、地面に対して平行に上下動する機能のみを持たせてもよい。
自走式電池10は、上面磁石15と下面磁石16とを備えている。上面磁石15は、二次電池20の上面を上側から覆うように設けられている。下面磁石16は、二次電池20の下側に配された姿勢制御部18の下面を下側から覆うように設けられている。したがって、自走式電池10は、表面の大部分が上面磁石15または下面磁石16によって覆われて構成されている。したがって、姿勢制御部18によって二次電池20の位置が上下方向に変位した場合、上面磁石15は二次電池20と一体に上下方向に変位する。一方、下面磁石16は、二次電池20の上下方向の変位に関わらず、同じ高さを維持し続ける。
自走式電池10は、送受信部32を備えている。送受信部32は、自走式電池10の移動制御と給電制御とに関する制御内容を送信および受信する装置である。送受信部32は、二次電池20に溜めた電力を電動車両1に送って給電する電池側給電部としても機能する。送受信部32は、車両側給電部61との間で無線給電により電力のやり取りを行う装置である。
電池側給電部として機能する送受信部32は、二次電池20に蓄えた電力を電磁波の形で外部に出力する装置である。例えば周波数の低い電磁界による電力伝送を行う場合には、送受信部32はコイルを有し、コイルを流れる電流に基づいて電磁界を生じさせるようにしている。車両側給電部61は、送受信部32から出力された電磁界などのエネルギーを受信して電気エネルギーに変換している。例えば車両側給電部61は、送受信部32と同様にコイルを有し、送受信部32の近傍に生じている電磁界を電気エネルギーに変換している。
自走式電池10は、壁面などとの接触に伴う衝撃を吸収するための緩衝材19を備えている。緩衝材19は、ゴムやバネなどの弾性部材である。緩衝材19は、自走式電池10の角部から側方に突出して設けられている。緩衝材19は、上面磁石15と姿勢制御部18との間の高さに設けられている。緩衝材19は、上面磁石15や下面磁石16や姿勢制御部18や二次電池20よりも外側に突出して設けられている。言い換えると、電池側タイヤ12による走行中であって、周囲の壁面などと自走式電池10とが接触する場合に、最初に緩衝材19と接触しやすくなるように構成されている。
図3において、二次電池20は断面が四角形状である。言い換えると、二次電池20は薄型の直方体形状である。自走式電池10は、送受信部32を二次電池20の各側面に備えている。言い換えると、送受信部32は、二次電池20の4箇所の各側面に対応して、二次電池20の表面に接触した状態で設けられている。二次電池20の形状は直方体形状に限らない。例えば、円盤状でもよい。この場合、曲面形状をなす側面に沿った円弧状の送受信部32が側面の複数箇所に設けられることとなる。
図4において、自走式電池10の上面をなす上面磁石15は、中央部分に正方形の孔を有する環状に設けられている。上面磁石15は、N極とS極とを反転可能な電磁石によってN極のみが並ぶ列とN極とS極とが交互に並ぶ列とが設けられている。ただし、N極とS極とのパターンは、上面磁石15と磁力によって吸着する相手側の磁石のパターンによって変更可能である。したがって、S極のみが並ぶ列やN極とS極とがランダムに並ぶ列など様々な列を組み合わせたパターンで上面磁石15を構成できる。
自走式電池10の上面には、正方形状の上面送受信部32aが設けられている。上面送受信部32aは、上面磁石15の設けられていない自走式電池10の中央部分に位置している。言い換えると、上面送受信部32aと上面送受信部32aの周りに配した上面磁石15とによって、自走式電池10の上面が構成されている。上面送受信部32aは、正方形状に限られない。例えば、円形や長方形でもよい。また、自走式電池10の上面に複数の上面送受信部32aを備えてもよい。上面送受信部32aは、送受信部を提供する。
図5において、自走式電池10の下面をなす下面磁石16は、中央部分に正方形の孔を有する環状に設けられている。下面磁石16は、N極とS極とが固定された永久磁石で構成されている。下面磁石16は、S極のみが並ぶ列とN極とS極とが交互に並ぶ列とが交互に設けられている。
自走式電池10の下面には、正方形状の下面送受信部32bが設けられている。下面送受信部32bは、下面磁石16の設けられていない自走式電池10の中央部分に位置している。言い換えると、下面送受信部32bと下面送受信部32bの周りに配した下面磁石16とによって、自走式電池10の下面が構成されている。下面送受信部32bは、正方形状に限られず、円形や長方形でもよい。また、自走式電池10の下面に複数の下面送受信部32bを備えてもよい。下面送受信部32bは、送受信部を提供する。
自走式電池10の上面に配した上面送受信部32aと下面に配した下面送受信部32bとは、垂直方向に重なる位置に設けられている。言い換えると、自走式電池10同士が上下に重なった場合に、自走式電池10同士において、下面送受信部32bと上面送受信部32aとが上下方向に重なるように構成されている。
自走式電池10の下面には、電池側タイヤ12が4箇所に設けられている。電池側タイヤ12は、自走式電池10の四隅に対応して正方形をなすように位置している。より具体的には、下面送受信部32bの外周角部と下面磁石16の外周角部との略中間位置に設けられている。電池側タイヤ12は、角度を変えることで自走式電池10の進行方向を変更可能である。したがって、自走式電池10は、直進だけでなく回転移動なども可能である。下面磁石16は、電池側タイヤ12が設けられている部分に対応して円形に孔が設けられている。電池側タイヤ12は、下面磁石16の4箇所の孔から下方に突出している。ただし、電池側タイヤ12の数は4つに限られない。例えば、三角形をなすように3つの電池側タイヤ12を備えてもよい。あるいは、5つ以上の電池側タイヤ12を備えるようにしてもよい。
図6において、電池側制御部31は、距離センサ33とモータ回転数センサ34と姿勢検知センサ35と残電力センサ41と温度センサ42とに接続されている。電池側制御部31は、距離センサ33から進行方向に位置する障害物までの距離に関する情報を取得する。この時、進行方向に障害物がなければ、距離センサ33で検知している所定距離の範囲内に障害物が無いという情報を取得する。距離センサ33は、例えば赤外線センサである。
電池側制御部31は、モータ回転数センサ34から電池側タイヤ12を駆動する電池側モータ13の回転数の情報を取得する。電池側制御部31は、姿勢検知センサ35から姿勢制御部18による二次電池20の傾きの大きさや上下位置の情報を取得する。ここで、電池側モータ13は、回転数を任意に変更できるとともに、正回転と逆回転とを変更可能なモータである。
電池側制御部31は、残電力センサ41から二次電池20に残されている電力量の情報を取得する。電池側制御部31は、温度センサ42から二次電池20の温度の情報を取得する。電池側制御部31は、電池収納部50内に収納されている複数の自走式電池10について、その残電力の情報と温度の情報とを自走式電池10ごとに取得する。
電池側制御部31は、電池側モータ13と電池側ブレーキ14と上面磁石15と姿勢制御部18とスイッチング素子21とに接続されている。電池側ブレーキ14は、回生エネルギーを回収する回生ブレーキと、ブリッジ回路を用いたブレーキと、機械式ブレーキとを備えている。電池側制御部31は、送受信部32と距離センサ33とモータ回転数センサ34とから取得した移動制御の情報に基づいて、電池側モータ13と電池側ブレーキ14とを制御する。例えば、距離センサ33の情報から壁などの障害物までの距離が下限距離未満となったと判断した場合には、障害物から離れる方向に走行するなどして障害物から下限距離以上に離れた位置まで移動する。
電池側制御部31は、電池側モータ13の回転数の情報から自走式電池10の速度や移動距離などを算出し、速度が高すぎると判断した場合などには電池側モータ13の回転数を低下させるなどの制御を行う。また、電池側制御部31は、上面磁石15による磁力の大きさの制御や極性の反転の制御などにより、磁力を用いた移動を行う。これらの移動制御により、電池側モータ13を駆動して自走式電池10を目的の位置まで移動させ、電池側ブレーキ14を用いて自走式電池10を目的の位置において停止させる。
電池側制御部31は、姿勢検知センサ35から取得した移動制御の情報に基づいて、姿勢制御部18を制御する。例えば、姿勢制御部18を伸ばして自走式電池10の上面を上昇させる必要がある場合に、姿勢検知センサ35によって現在の姿勢を検知しながら目標となる高さまで上昇させる。
電池側制御部31は、温度センサ42から取得した二次電池20の温度の情報に基づいて、スイッチング素子21によるオンオフ制御を行う。スイッチング素子21は、二次電池20を構成する電池セルごとに設けられている。例えば、温度センサ42で検知した温度が上限温度以上である場合に、異常発熱状態であると判断して、スイッチング素子21を切り替えて充電および放電が不可能な状態とする。
電池側制御部31は、送受信部32に接続されている。電池側制御部31は、送受信部32が受信した移動制御や給電制御などに関する信号に基づき自走式電池10の制御を行う。受信する移動制御の情報とは、例えば目的の位置に関する情報や目的の位置に到達するための経路などの情報が含まれる。受信する給電制御の情報とは、例えば電動車両1に対して自走式電池10が供給する電力量などの情報が含まれる。
さらに、電池側制御部31は、送受信部32が送信する移動制御や給電制御などに関する情報を送受信部32に送る。送信する移動制御の情報とは、例えば目的の位置に向かって近づいた距離などの現在位置に関する情報が含まれる。送信する給電制御の情報とは、例えば車両に対して現在どれだけの電気を給電しており、電力がどの程度残っているかなどの残電力に関する情報が含まれる。
電池側制御部31は、送受信部32と残電力センサ41とから取得した給電制御の情報に基づいて、電池側給電部として機能する送受信部32を制御する。これにより、自走式電池10を交換する必要があるか否かを判断する。この時、自走式電池10を交換するにあたって、自走式電池10が電池収納部50から外に出る際に移動するための電力を含めて残電力が電池交換の必要な量か否かを判断する。
自走式電池10の交換時における電動車両1および自走式電池10の制御を以下に説明する。図7において、自走式電池10の交換を開始するにあたり、最初に充電済みの自走式電池10を電池設置ステーションから昇降機70の周辺まで移動させる。ここで、電池設置ステーションとは、電池交換用の自走式電池10と自走式電池10を充電するための充電器とを複数保有する施設である。充電済みの自走式電池10が昇降機70の周辺まで到着していない段階では、自走式電池10の交換を開始せず、昇降機70を閉状態として自走式電池10を搬出できない状態とする。これにより、搬出が完了してから搬入すべき自走式電池10を昇降機70の周辺まで移動させる場合に比べて、自走式電池10の搬出完了から搬入開始までの時間を短縮することができる。ただし、充電済みの自走式電池10が昇降機70の周辺までは到着していないが、電池設置ステーションからの移動を開始した状態から自走式電池10の交換を開始するなどしてもよい。
図8において、昇降機70を開状態とする。その後、昇降機70を地面に降ろして交換対象である残電力の少ない自走式電池10を搬出させる。すなわち、充電が必要な自走式電池10は、昇降機70が降りたことで生じる搬入出口を通じて電池収納部50から外に出る。この時、後に詳述する昇降用磁石80と上面磁石15との間で発生する磁力を用いて昇降用磁石80に吸着した状態から姿勢制御部18を伸ばして地面に降りている。ただし、自走式電池10は、電池収納部50から地面に向かって搬入出口を通じて落ちることで降下させるようにしてもよい。この時、底板部71の上面に衝撃吸収材などを設けることで、自走式電池10を降下の衝撃から保護することができる。その後、充電が必要な自走式電池10は、蓄えられている残りの電力を使って自走して充電器を備えた電池設置ステーションまで移動して充電を行う。
自走式電池10の搬出に際して、昇降機70は常に開状態を維持している。すなわち、自走式電池10を搬出する目的で昇降機70の昇降を繰り返していない。ただし、昇降機70を上昇させて自走式電池10を昇降機70に載置させてから、地面と同じ高さまで昇降機70を下降させて自走式電池10を搬出させてもよい。この場合、1つ1つの自走式電池10を搬出させる際に昇降機70の昇降動作を繰り返すこととなる。
図9において、交換対象である自走式電池10が電池収納部50から全て搬出された状態である。ただし、残電力の十分ある電池は交換対象でない自走式電池10として、電池収納部50に収納した状態を維持するようにしてもよい。すなわち、自走式電池10の交換において、必ずしも全ての自走式電池10を搬出させなくてもよい。自走式電池10の搬出から搬入にかけて、昇降機70は、自走式電池10を収納するために地面に降りた状態を維持している。搬入される充電済みの自走式電池10は、搬入目標位置に向けて移動を開始している。ここで、搬入目標位置は、電池収納部50内において搬入出口から最も離れた位置である後方膨出部53の上部に設定されている。
図10において、自走式電池10は、昇降機70における底板部71の中央の位置まで移動が完了している。この状態において、自走式電池10は、電池側ブレーキ14によって移動を制限している。このため、仮に自走式電池10を動かそうとする外力が加えられたとしても、底板部71の中央の位置から自走式電池10が移動しない状態である。あるいは、地面が傾斜した坂道において電池交換が行われている場合であっても、自走式電池10が停止した底板部71の中央の位置から移動しない状態である。
図11において、底板部71の中央に位置している自走式電池10は、その場で上方に向かって自走式電池10の上面を上昇させて、電池収納部50に進入している。すなわち、姿勢制御部18を用いて、電池収納部50の天井面に配した昇降用磁石80の磁力が作用する位置まで自走式電池10の上面を上昇させている。この時、上面磁石15と二次電池20は上方に移動している。一方、下面磁石16は姿勢制御部18が伸びる前後で高さが変わらない。自走式電池10の上面をなす上面磁石15は、昇降用磁石80との間で発生する磁力によって電池収納部50の天井面に吸着した状態である。この状態においては、自走式電池10が地面から浮くことができる。
昇降用磁石80と上面磁石15との磁力による吸着について以下に詳細に説明する。図12において、自走式電池10は、昇降用磁石80と上面磁石15との間で生じる磁力を用いて天井面に吸着されている。この磁力による吸着状態において、姿勢制御部18による上面の上昇を解除する。言い換えると、姿勢制御部18を縮めることで自走式電池10の下面を上方に引き上げている。この状態においては、自走式電池10が地面から浮いている。ただし、電池側タイヤ12が地面から浮き始める直前に電池側タイヤ12により搬入目標位置に近づくように車両後方に向かって移動を行う。これにより、自走式電池10は、昇降用磁石80に吸着されて浮いた時点で、車両後方に向かう初速を有している状態である。ただし、電池側タイヤ12による走行で初速を得るのではなく、上面磁石15の極性の切り替えにより、始動の初速を得るようにしてもよい。
自走式電池10と昇降用磁石80との間には、複数のローラー部85が設けられている。ローラー部85は、円柱状であって、長手方向を回転軸として回転可能な部品である。ここで、回転軸は紙面に対して垂直方向である。ローラー部85が回転することで、自走式電池10が車両の前後方向に対してスムーズに移動可能となる。自走式電池10が昇降用磁石80に吸着された状態において、ローラー部85は、上面磁石15と昇降用磁石80との距離を一定に保っている。ローラー部85にモータなどの駆動部を備えて、自発的に回転可能な構成としてもよい。この場合、ローラー部85の回転を利用して、自走式電池10を移動させることができる。
昇降用磁石80は、N極とS極とが交互に繰り返されて構成されている。昇降用磁石80は、N極とS極とが固定された永久磁石で構成されている。昇降用磁石80と上面磁石15とは、異極同士が引き合い、同極同士が反発し合う。上面磁石15は、昇降用磁石80から自走式電池10の進行方向である車両後方に向かって吸着する力と進行方向とは逆方向から反発する力とを同時に受けている。言い換えると、自走式電池10は、上面磁石15と昇降用磁石80との間に生じる磁力により、搬入目標位置に向かって前進する推進力を得ている状態である。
図13において、自走式電池10が初速を与えられた方向にわずかに進んだ位置で、上面磁石15の極性を反転させている。具体的には、昇降用磁石80のS極と上面磁石15のS極とが対向する位置関係となる際に上面磁石15のS極とN極とを反転させている。これにより、極性の反転前は後退する方向に力が加えられる状態であった上面磁石15を前進する方向に力が加えられる状態に変化させている。このように、自走式電池10がわずかに前進する度に上面磁石15の極性を反転させる制御を繰り返すことで磁力により前進する力を継続的に受けることができる。すなわち、リニアモータの原理によって自走式電池10を移動させることができる。
図14において、昇降用磁石80と上面磁石15との磁力の作用により、自走式電池10は、電池収納部50において昇降機70から遠ざかる方向に移動している。自走式電池10の電池側タイヤ12が電池収納部50の底面に接触するまでは磁力の作用により自走式電池10を移動させる。その後は電池側モータ13を駆動して、電池収納部50の底面を電池側タイヤ12で走行して移動する。この時、電池側タイヤ12による走行を昇降用磁石80と上面磁石15との間での磁力によってサポートするようにしてもよい。すなわち、電池側タイヤ12による推進力と磁力による推進力の両方の力を自走式電池10が受けるようにしてもよい。
また、1台目の自走式電池10の電池収納部50内における移動と並行して、2台目の自走式電池10を電池収納部50に収納するための準備が進められている。具体的には、2台目の自走式電池10が底板部71の中央まで移動が完了した状態で、中央の位置を維持して停止している。2台目の自走式電池10の搬入目標位置は、1台目の搬入目標位置に隣接する位置に設定されている。
図15において、電池収納部50の最奥部である後方膨出部53まで移動を完了した自走式電池10は、後方膨出部53の天井面に設けられた膨出部用磁石83に向かって上昇を開始する。言い換えると、姿勢制御部18を用いて、後方膨出部53の天井面に配した膨出部用磁石83の磁力が作用する位置まで自走式電池10の上面を上昇させる。自走式電池10の上面をなす上面磁石15は、膨出部用磁石83との間で発生する磁力によって電池収納部50の天井面に吸着した状態である。
図16において、膨出部用磁石83と吸着している上面磁石15に電流を流し続けて、磁力により膨出部用磁石83に吸着した状態を維持している。また、膨出部用磁石83と吸着した状態の自走式電池10に対して、下方に別の自走式電池10が配置された状態である。言い換えると、自走式電池10が上下に重なった状態である。この状態においては、上方に位置している自走式電池10の下面磁石16と下方に位置している自走式電池10の上面磁石15とが吸着するように構成されている。言い換えると、下面磁石16を備えた自走式電池10を介して膨出部用磁石83に別の自走式電池10が吸着されている状態である。
膨出部用磁石83と上面磁石15との吸着状態における距離と、上方に位置している自走式電池10の下面磁石16と下方に位置している上面磁石15との吸着状態における距離とを略等しくするとよい。これによると、上下に配置した自走式電池10同士の距離が離れすぎることによって、下方に位置している自走式電池10と上方に位置している自走式電池10との間で作用する磁力が足りず、吸着できなくなることを防止できる。
図17において、後方膨出部53では3つの自走式電池10が上下に重なった状態である。これ以上は自走式電池10の下方に別の自走式電池10を配置する必要がないため、膨出部用磁石83と吸着していた上面磁石15に流していた電流を止めている。これにより、上面磁石15では磁力が発生していない状態となる。磁力による吸着を失った自走式電池10は重力に引かれることで、上方に位置している自走式電池10が下方に位置している自走式電池10の上面に載置された状態となる。また、電池収納部50における後方だけでなく前方にも搬入目標位置が設定されて自走式電池10が搬入されている。
図18において、電池収納部50に収納すべき自走式電池10がそろった状態である。言い換えると、搬入済みの自走式電池10が新たに搬入されてくる自走式電池10の移動を妨げない位置である搬入目標位置に移動してその位置を維持している状態である。特に昇降機70の近傍においては、上昇する昇降機70と接触しないように昇降機70から離れた位置で自走式電池10が待機している。
図19において、自走式電池10は、全ての自走式電池10が目標搬入位置に移動が完了している状態である。アクチュエータ72を駆動して昇降機70を上昇させることで、自走式電池10の収納を完了させている。この動作により、昇降機70に載置された自走式電池10が電池収納部50内に収納されるとともに、昇降機70が地面に降りていたことで生じていた搬入出口が閉じられる。言い換えると、自走式電池10が電池収納部50に出入りできない状態である。
自走式電池10が目標搬入位置に配置されている状態では、自走式電池10同士が離れており、自走式電池10同士での電力のやり取りが行えない、あるいは、無線給電での伝送効率が低い状態である。すなわち、車両側給電部61に対して複数の自走式電池10を一体に接続して、電動車両1に対して適切な電力の供給ができない状態である。
図1において、自走式電池10は給電位置に移動が完了している状態である。ここで、給電位置とは、車両側給電部61と自走式電池10とが接続されて適切に給電可能な位置である。より具体的には、車両側給電部61に最も近い位置に配置されている自走式電池10においては、車両側給電部61と送受信部32とを対向させた状態であって、送受信部32が車両側給電部61に最も接近した位置である。一方、他の自走式電池10においては、自走式電池10同士の送受信部32が互いに対向した状態で最も接近した位置である。自走式電池10が給電位置に移動が完了した状態において、自走式電池10同士は互いに給電可能な状態であるとともに、車両側給電部61と対向する自走式電池10が電動車両1に対して適切に給電可能な状態である。自走式電池10は、給電位置への移動が完了した時点で電池側ブレーキ14を用いて給電位置を維持している。ただし、給電位置とは、給電における伝送効率が最大となる位置を含み、電動車両1に対して給電が可能な位置である。言い換えると、車両側給電部61と送受信部32との距離が最も接近した位置からずれていても、給電が可能な位置であれば給電位置に含まれる。
自走式電池10が給電位置に移動を完了した状態における構成を以下に詳細に説明する。図20において、自走式電池10は、車両側給電部61に給電可能な給電位置に配置されている。給電位置において、車両側給電部61と隣接している自走式電池10は、送受信部32と車両側給電部61とは対向した状態である。また、給電位置において、自走式電池10同士は、送受信部32が対向した状態である。この状態においては、緩衝材19同士が接触している。
図21において、車両側給電部61と送受信部32とは隙間をあけた状態で対向している。ここで、車両側給電部61と送受信部32との隙間は、緩衝材19によって形成されている。緩衝材19が車両側給電部61を備えている壁面と接触していることで、緩衝材19よりも内側に位置している送受信部32と壁面との間に隙間が生じている。送受信部32に対する緩衝材19の突出量を小さくすることで、車両側給電部61と送受信部32との間に生じる隙間の大きさを小さくすることができる。
送受信部32同士は、隙間をあけた状態で対向している。ここで、送受信部32同士の隙間は、互いの緩衝材19によって形成されている。緩衝材19同士が接触することで自走式電池10同士の距離を一定に保ち、送受信部32同士の間に隙間が生じている。送受信部32に対する緩衝材19の突出量を小さくすることで、送受信部32同士の間に生じる隙間の大きさを小さくすることができる。
送受信部32が出力する電力に対する車両側給電部61が受電する電力である伝送効率は、送受信部32と車両側給電部61との相対的な位置関係に依存する。すなわち、送受信部32と車両側給電部61との相対的な距離が離れると伝送効率が悪化する。言い換えると、送受信部32と車両側給電部61との距離を近づけることで伝送効率を向上させることができる。したがって、位置の固定された車両側給電部61に対して移動可能な送受信部32ができるだけ近づくように移動制御をすることで、伝送効率を向上させることができる。さらに、給電中に車両側給電部61と送受信部32との適切な位置関係を維持することで伝送効率の悪化を防ぐことができる。
また、送受信部32同士の無線給電に関しても同様に、送受信部32同士ができるだけ近づくように移動制御をすることで、自走式電池10同士での電力のやり取りにおける伝送効率を向上させることができる。さらに、給電中に送受信部32同士の適切な位置関係を維持することで伝送効率の悪化を防ぐことができる。
電動車両1に電力を供給する場合には、複数の自走式電池10同士で互いに無線給電し合うことで、大きな1つの電池として電動車両1に複数の自走式電池10を足し合わせた合計の電力を供給する。すなわち、車両側給電部61に対向する位置に配置された自走式電池10の送受信部32を介して、互いに無線接続された複数の自走式電池10に蓄えられた電力を電動車両1に対して給電する。電動車両1の減速などに伴う回生エネルギーの回収による充電についても同様である。すなわち、車両側給電部61に対向する位置に配置された自走式電池10の送受信部32を介して、互いに無線接続された複数の自走式電池10において回生エネルギーを充電する。
自走式電池10の電池交換方法について以下に説明する。自走式電池10の残電力が閾値以下となった場合に、充電された状態の自走式電池10を準備している電池設置ステーションに対して電池交換の予約を行う。その後、予約した電池設置ステーションにおいて、所定の電池交換位置に電動車両1を駐車する。ここで、安全に電池交換を行うための所定の条件が満たされた場合に、電池交換が開始される。所定の条件としては、例えば、電動車両1が所定の電池交換位置内に位置していること、イグニッションスイッチが切られていること、シフトレバーがパーキングの状態になっていることなどがあげられる。また、搬入出部である昇降機70の下方に位置する地面に異物があるなど、正常に昇降機70の昇降動作ができない場合にも電池交換が開始されない。
図22において、電池交換を開始する場合、ステップS110で、搬出すべき自走式電池10に関する準備である電池搬出準備を行う。ステップS110の電池搬出準備における詳細については後述する。電池搬出準備の終了後、ステップS118に進む。
ステップS118では、搬入出部である昇降機70を地面に降ろす。すなわち、搬入出部を開いて自走式電池10の搬出が可能な状態とする。この時、最初から昇降機70の直上に位置していた自走式電池10は、昇降機70が地面に降りることで自動的に電池収納部50から搬出されることとなる。搬入出部を開いた後、ステップS119に進む。
ステップS119では、搬出すべき自走式電池10を搬出する。最初に、昇降機70に載置されていた自走式電池10を充電器が設けられている電池設置ステーションに向けて自走させる。その後、搬入出部の近くに位置している搬出すべき自走式電池10から順番に電池収納部50内を自走させて、搬入出部から地面に降ろして搬出させる。電池収納部50の外に搬出が完了した自走式電池10は、電池設置ステーションに向けて自走する。交換対象である自走式電池10の搬出が完了した後、ステップS121に進む。
ステップS121では、搬入すべき自走式電池10の搬入目標位置の特定を行う。搬入目標位置とは、電池収納部50内において搬入すべき自走式電池10を配置する目標となる位置である。搬入される自走式電池10は、搬入目標位置の情報に基づいて電池収納部50内を移動することとなる。搬入目標位置は、電池収納部50にすでに自走式電池10が収納されている場合には、収納済みの自走式電池10に隣接する位置に設定される。一方、電池収納部50に自走式電池10が収納されていない状態では、搬入出部からの距離が最も遠い位置が設定される。搬入目標位置は、自走式電池10の搬入をスムーズに行うための位置である。したがって、搬入済みの自走式電池10が他の自走式電池10の搬入を妨げない位置に搬入目標位置が設定される。搬入目標位置を特定した後、ステップS128に進む。
ステップS128では、自走式電池10の搬入を行う。上面磁石15と昇降用磁石80とを用いて自走式電池10を磁力によって吸着した後、搬入目標位置の情報に基づいて自走式電池10の移動方向を制御する。言い換えると、車両前方に向かって自走式電池10を移動させるか、車両後方に向かって自走式電池10を移動させるかによって、初速を与える方向や上面磁石15の極性を反転させるタイミングを変更する。自走式電池10は、磁力を用いた移動が完了した後、電池側タイヤ12を用いて搬入目標位置に向かって移動する。
1つの自走式電池10の搬入が完了する度に適切に搬入目標位置まで移動が完了し、その位置を維持しているかを確認する。搬入可能な全ての自走式電池10の搬入が完了して搬入目標位置まで移動が完了した後、ステップS129に進む。
ステップS129では、搬入出部である昇降機70を地面から上げる。すなわち、搬入出部を閉じて自走式電池10の搬入や搬出が不可能な状態とする。この時、底板部71の直上に位置していた自走式電池10は、昇降機70が上昇することで自動的に電池収納部50に搬入されることとなる。全ての自走式電池10の搬入が完了して、搬入出部が閉じられた後、ステップS131に進む。
ステップS131では、自走式電池10を搬入目標位置から給電位置に移動させる。給電位置とは、車両側給電部61に対して適切に給電が可能な位置である。すなわち、給電位置とは、車両側給電部61と隣接している自走式電池10においては、車両側給電部61と送受信部32とが給電可能となる位置である。一方、車両側給電部61と隣接していない自走式電池10においては、車両側給電部61と隣接している自走式電池10の送受信部32に対して直接的あるいは間接的に給電可能となる位置である。ただし、車両側給電部61が複数箇所に設けられている場合などは、複数設けられている車両側給電部61ごとに複数の自走式電池10が集まるように給電位置を設定してもよい。また、搬入目標位置と給電位置とを一致させてもよい。この場合、搬入目標位置から給電位置までの自走式電池10の移動に要する時間を短縮できる。自走式電池10の給電位置への移動が完了した後、ステップS132に進む。
ステップS132では、電池側ブレーキ14を有効にして、自走式電池10が給電位置から動かないようにすることで電池位置を維持する。この時、自走式電池10同士の接触などにより、自走式電池10が給電位置から移動してしまった場合には、電池側ブレーキ14を解除して、再び適切な給電位置まで移動する。その後、給電位置を維持するように電池側ブレーキ14を有効にする。電池側ブレーキ14は、電池交換の終了から次に電池交換を開始するまでの間有効とする。すなわち、電池側ブレーキ14を有効とすることで、自走式電池10が電動車両1の走行中の振動などにより給電位置から移動しないように電池側タイヤ12による移動を制限した状態とする。電動車両1の発進時や停車時などの大きな加速度変化による慣性力や、右左折による遠心力など電動車両1の走行に伴い、自走式電池10には様々な力が加えられる。さらに、送受信部32を用いた無線接続においては、送受信部32同士の距離によって伝送効率が大きく変化する。このため、電池側ブレーキ14を用いて自走式電池10の給電位置を維持する制御を行うことは非常に有用である。給電位置に電池位置を維持した状態で、ステップS133に進む。
ステップS133では、自走式電池10の通電に問題がないかを確認する。言い換えると、電動車両1に対して自走式電池10からの給電が適切に行われるかを確認する。通電に問題があると判断された場合には、問題のある自走式電池10を搬出して新たな自走式電池10を搬入すべく、一連の電池交換をやり直す。通電チェックにおいては、電圧値が正常であるかだけでなく、二次電池20の温度が正常であるかなどについても確認を行う。電池側制御部31によるエラー検知結果を取得して、エラーの有無を確認する。この時、エラーが生じている自走式電池10については交換の対象とする。通電に問題がないと判断された場合には、電池交換を終了する。
次に、ステップS110である自走式電池10の搬出準備における制御処理について説明する。図23において、自走式電池10の搬出準備を開始する場合、まず、ステップS111で電池収納部50に収納されている自走式電池10の残電力の判定を行う。送受信部32を用いて、それぞれの自走式電池10にどの程度電力が残っているかを把握する。残電力の判定後、ステップS112に進む。
ステップS112では、把握した残電力に応じて自走式電池10同士で給電を行う。例えば、電池設置ステーションまで自走可能な電力が二次電池20に蓄えられていない自走式電池10に対して、他の自走式電池10から電力を供給して、自走式電池10の搬出に必要な電力をまかなう。あるいは、搬出に必要な電力を残して余剰分の電力を他の自走式電池10に集めることで、電池交換が必要な自走式電池10の数を減らすようにするなどしてもよい。この時、搬出すべき自走式電池10が搬入出部である昇降機70の近くに位置しているほど、電池収納部50から出る際に移動する距離を短くすることができる。このため、余剰分の電力が存在する場合には、昇降機70から遠い位置に配置された自走式電池10に給電するとよい。自走式電池10間での給電が完了した後、ステップS113に進む。
ステップS113では、搬出すべき自走式電池10を特定する。言い換えると、電池設置ステーションに戻るための自走に必要な残電力程度しか残っていない電池を搬出すべき自走式電池10として判定する。ただし、残電力が十分にある場合であっても、異常な高温であるなど自走式電池10としての適切な機能を果たせない状態にある自走式電池10については、搬出すべき自走式電池10であると判定する。搬出すべき自走式電池10を特定した状態で、自走式電池10の搬出準備を終了する。
上述した実施形態によると、自走式電池10は、移動部による移動制御と送受信部32による給電制御とを行う電池側制御部31を備えている。このため、電池交換に際して、移動部を用いて自走式電池10を電池収納部50に出入りさせたり、給電位置まで移動させたりすることができる。したがって、電池交換時に自走式電池10を交換作業者が1つ1つ適切な位置まで移動させる作業を省略できる。さらに、電池交換時に交換作業者が直接触れることのできない場所に車両側給電部61などの装置を設定することができ、電動車両1における各装置のレイアウトの自由度を高く確保することができる。
また、自走式電池10が電池収納部50内を移動するため、電動車両1の走行による振動などにより自走式電池10が給電位置から離れてしまった場合であっても、自走式電池10が自ら適切な給電位置まで移動可能である。したがって、給電位置から離れるなどして給電効率が低下した場合や給電が不可能となった場合であっても、適切な給電位置まで移動することで適切な給電状態に復帰できる。
電池側制御部31は、車両側給電部61に対して給電可能な給電位置まで移動する制御を行う。このため、自走式電池10が電池収納部50において給電位置から離れた位置に入った場合であっても、電池収納部50の内部において適切な給電位置まで自走式電池10が移動してから、電動車両1に対して給電を行うことができる。したがって、自走式電池10を交換作業者が1つ1つ適切な給電位置まで移動させる作業を省略できる。
自走式電池10は、二次電池20を電池収納部50の底面に対して平行な方向に移動させる移動部としての電池側タイヤ12を備えている。このため、電池収納部50の底面に対して平行な方向の任意の位置に二次電池20を移動させることができる。したがって、自走式電池10は、搬入目標位置や給電位置への移動を自在に行うことができる。言い換えると、給電位置までの移動経路上に障害物がある場合などにおいて、障害物を迂回して給電位置に向かうことができる。よって、搬入目標位置や給電位置への移動をスムーズに行うことができる。
自走式電池10は、電池側タイヤ12の回転を減速および停止させる電池側ブレーキ14を備えている。このため、自走式電池10を減速させて移動速度を調整しやすい。したがって、搬入目標位置や給電位置など任意の場所に自走式電池10を移動させやすい。また、移動が完了した自走式電池10が所定の位置から意図せず動いてしまうことを防止しやすい。また、移動速度を低くすることで、移動時に壁などと接触した場合に加えられる衝撃を低減させやすい。
電池側制御部31は、給電位置において電池側ブレーキ14を用いて電池側タイヤ12による移動を停止させている。このため、給電位置から自走式電池10が離れてしまうことで電動車両1に対して給電できなくなることを防止できる。また、給電位置において伝送効率が高い位置を維持することで、高効率な給電を安定して維持しやすい。
自走式電池10は、昇降用磁石80や膨出部用磁石83による磁力を用いて二次電池20を移動させる移動部としての上面磁石15を備えている。このため、磁力を用いて自走式電池10を吸着することで、自走式電池10が地面から浮いた状態を維持することができる。したがって、自走式電池10が地面から浮いた状態を維持して移動させることで、電池収納部50における段差を乗り越えたりすることができる。また、浮いた状態の自走式電池10の下方に別の自走式電池10を配置して、自走式電池10を上下に重ねることができる。したがって、限られた空間内に多くの自走式電池10を収納しやすい。
上面磁石15は、電流を流す向きを変えることで極性を反転させることのできる電磁石である。このため、自走式電池10において、磁力を用いて浮いた状態と磁力が消滅して重力に引かれて落ちる状態とを切り替えることができる。また、適切なタイミングで極性を反転させることでリニアモータの原理を用いて自走式電池10を移動させることができる。
自走式電池10は、二次電池20を電池収納部50の底面に対して交差する方向に移動させる移動部としての姿勢制御部18を備えている。このため、二次電池20の位置を上下方向に移動させて電池収納部50の天井面に対する距離を変更させることができる。したがって、昇降用磁石80などの磁力が作用する位置まで上面磁石15を移動させることができる。また、車両側給電部61が自走式電池10の上方向に配置されている場合には、車両側給電部61と上面送受信部32aとの上下方向の距離を近づけることができる。
姿勢制御部18は、二次電池20を電池収納部50の底面に対して傾斜させる傾斜機能を備えている。このため、二次電池20に対して昇降用磁石80や膨出部用磁石83が傾いた状態であっても、上面磁石15を昇降用磁石80や膨出部用磁石83と平行にして、磁力が適切に作用する状態とすることができる。
二次電池20は、外周における角部に緩衝材19を備えている。このため、自走式電池10の移動によって壁面と自走式電池10とが接触した場合などであっても、緩衝材19が最初に壁面などと接触して衝撃を吸収しやすい。また、緩衝材19によって壁面と二次電池20の間や二次電池20同士の間に隙間を形成することができるため、発熱部品である二次電池20を冷却する冷却風を効率的に流しやすい。
残電力の減少した自走式電池10が電池収納部50から出て、充電済みの自走式電池10が電池収納部50に入り、電池収納部50に入った自走式電池10が電池側タイヤ12などの移動部を用いて給電位置に移動することで電池交換を行っている。このため、自走式電池10が給電位置から離れた位置に入った場合であっても、自走式電池10が電池収納部50の内部において適切な給電位置まで移動してから、電動車両1に対して給電することができる。したがって、自走式電池10を交換作業者によって1つ1つ適切な給電位置まで移動させる作業や電池収納部50から搬入出する作業を省略できる。
搬入出部を提供する昇降機70は、電池収納部50の略中央に位置している。このため、昇降機70よりも車両前方と車両後方とに分けて自走式電池10を搬入出できる。したがって、昇降機70から最も離れた最奥部の自走式電池10に異常が発生して搬出する場合であっても、全ての自走式電池10を搬出する必要がない。すなわち、搬出する自走式電池10と昇降機70との間に位置する自走式電池10のみを搬出すればよく、電池交換に要する時間を短縮しやすい。
上面磁石15を電流の流れる向きでS極とN極とを反転させる電磁石とする場合に限られない。例えば、車両側磁石である昇降用磁石80と膨出部用磁石83とをそれぞれ電磁石として、上面磁石15を永久磁石で構成してもよい。あるいは、上面磁石15と車両側磁石の両方とも電磁石で構成してもよい。
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、電池側タイヤ212が二次電池20の下面を避けた位置に突出して設けられている。
図24において、電池側タイヤ212は、自走式電池10の下面をなす下面磁石16を避けた位置であって、自走式電池10の側方に突出している。電池側タイヤ212は、地面などの走行面と接触する下側だけでなく上側を含めた全体が外に露出して設けられている。電池側タイヤ212の直径Ltは、自走式電池10の上面から下面までの長さLbよりも小さい。電池側タイヤ212は、移動部を提供する。
図25において、自走式電池10の側面には、電池側タイヤ212が4箇所に設けられている。4箇所全ての電池側タイヤ212は、自走式電池10の下面を構成する下面磁石16の下方投影領域を避けた位置に設けられている。電池側タイヤ212は、4箇所に設けられた電池側タイヤ212同士が長方形をなすように配されている。
上述した実施形態によると、自走式電池10を上下に重ねた場合に、電池側タイヤ212が自走式電池10同士の間に位置しない。このため、自走式電池10の下面に突出して電池側タイヤ12を設けた場合に比べて、一方の自走式電池10の下面と他方の自走式電池10の上面との間に生じる隙間を低減できる。
電池側タイヤ212の直径Ltは、自走式電池10の上面から下面までの長さLbよりも小さい。このため、自走式電池10が上下に重なった場合であっても電池側タイヤ12同士が上下に接触しあって、自走式電池10同士に上下方向の隙間が生じることがない。したがって、自走式電池10同士を上下方向に隙間なく配置することができる。よって、電池収納部50の限られた空間内により多くの自走式電池10を収納しやすい。さらに、上下方向に隣接する下面送受信部32bと上面送受信部32aとの距離を近づけることができる。このため、上下方向に隙間がある場合に比べて、自走式電池10間での電力の伝送効率を高めることができる。
他の実施形態
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。