JP7029780B2 - 世代促進可能なテンサイの選抜方法 - Google Patents

世代促進可能なテンサイの選抜方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7029780B2
JP7029780B2 JP2017159684A JP2017159684A JP7029780B2 JP 7029780 B2 JP7029780 B2 JP 7029780B2 JP 2017159684 A JP2017159684 A JP 2017159684A JP 2017159684 A JP2017159684 A JP 2017159684A JP 7029780 B2 JP7029780 B2 JP 7029780B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sugar beet
flowering
day length
conditions
day
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017159684A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019037150A (ja
Inventor
洋輔 黒田
和憲 田口
和之 岡崎
宙之 高橋
利和 藏之内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Agriculture and Food Research Organization
Original Assignee
National Agriculture and Food Research Organization
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Agriculture and Food Research Organization filed Critical National Agriculture and Food Research Organization
Priority to JP2017159684A priority Critical patent/JP7029780B2/ja
Priority to PCT/JP2018/030250 priority patent/WO2019039349A1/ja
Priority to EP18847565.1A priority patent/EP3673729A4/en
Publication of JP2019037150A publication Critical patent/JP2019037150A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7029780B2 publication Critical patent/JP7029780B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01HNEW PLANTS OR NON-TRANSGENIC PROCESSES FOR OBTAINING THEM; PLANT REPRODUCTION BY TISSUE CULTURE TECHNIQUES
    • A01H3/00Processes for modifying phenotypes, e.g. symbiosis with bacteria
    • A01H3/02Processes for modifying phenotypes, e.g. symbiosis with bacteria by controlling duration, wavelength, intensity, or periodicity of illumination
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01GHORTICULTURE; CULTIVATION OF VEGETABLES, FLOWERS, RICE, FRUIT, VINES, HOPS OR SEAWEED; FORESTRY; WATERING
    • A01G22/00Cultivation of specific crops or plants not otherwise provided for
    • A01G22/25Root crops, e.g. potatoes, yams, beet or wasabi
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01HNEW PLANTS OR NON-TRANSGENIC PROCESSES FOR OBTAINING THEM; PLANT REPRODUCTION BY TISSUE CULTURE TECHNIQUES
    • A01H1/00Processes for modifying genotypes ; Plants characterised by associated natural traits
    • A01H1/04Processes of selection involving genotypic or phenotypic markers; Methods of using phenotypic markers for selection
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01HNEW PLANTS OR NON-TRANSGENIC PROCESSES FOR OBTAINING THEM; PLANT REPRODUCTION BY TISSUE CULTURE TECHNIQUES
    • A01H6/00Angiosperms, i.e. flowering plants, characterised by their botanic taxonomy
    • A01H6/02Amaranthaceae or Chenopodiaceae, e.g. beet or spinach
    • A01H6/024Beta vulgaris [beet]

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • Developmental Biology & Embryology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Natural Medicines & Medicinal Plants (AREA)
  • Physiology (AREA)
  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Cultivation Of Plants (AREA)

Description

本発明は、世代促進可能なテンサイの選抜方法に関する。
作物品種の多くは少なくとも10年以上もの長い年月をかけて育成・開発される。それは何度も世代を重ねて遺伝的に固定化し、品種に求められる「均質性」を確保するためである。テンサイなどの二年生の作物は、冬のようなある一定期間の低温を経なければ開花しない低温(春化)要求性をもち、イネ、ムギ類、ダイズなどの一年生の作物に比べて、品種育成にはより長い年月が必要である。
テンサイ(学名Beta vulgaris)は砂糖の主たる原料であり、農業上重要な作物である。テンサイの通常の栽培法では、1年目の春にテンサイ種子を播種して生育させ、その年の秋にかけて一定の大きさになるまで根部(母根)を肥大させる。この時期は専ら栄養成長期となる。栄養成長したテンサイを、冬の間、10℃以下の低温で貯蔵することにより春化処理する。春化処理後のテンサイを翌春に定植すると、抽苔が生じ、すなわち茎が伸び花芽が形成されて生殖成長期に移行し、開花を経て秋までに種子を収穫できる。この通常の栽培法では採種までに播種から約1年半を要する(図1A)。テンサイの品種開発を高速化するために、テンサイにおける新たな世代促進技術を創出することが求められている。
採種までの期間を短縮化するためのテンサイの世代促進技術が知られている。この方法では、秋にテンサイを播種して幼苗を生育し、それを冬の間に、10℃以下の低温でおよそ150日間管理することにより春化処理する(非特許文献1、特許文献1)。その幼苗を翌春に定植すると、抽苔及び開花を経て、秋までに登熟した種子が収穫できる。この世代促進方法では播種から採種までの期間が約1年に短縮される(図1B)。しかしこの方法でもなお1回の採種に長い期間を要する。
テンサイは基本的に二年生であるが、低温要求性を有しない一年生系統も存在する(非特許文献2)。テンサイ一年生系統では、低温処理を施さなくとも16時間程度の日長条件で開花が誘導される(図1C)。そのためテンサイ一年生系統を、北海道(日本)の一般的な栽培期間である春(4月下旬)から屋外栽培すると、6月の自然日長条件(日長およそ15時間)で抽苔が生じ、開花が誘導され、秋までに登熟した種子が収穫できる。テンサイ一年生系統を用いたこの方法では、1回の採種が播種から約4ヶ月で完了する。
一方で、砂糖原料となるテンサイの栽培には高い収量も期待されている。しかし抽苔はテンサイの収量及び糖含量を著しく減少させる。テンサイ一年生系統は、屋外栽培(自然日長条件)で抽苔・開花するため、高い収量を得ることは困難であり、砂糖原料栽培に用いるには向いていない。
特開2010-88364号公報
田口和憲、大潟直樹、中司啓二 (2004) 「人為春化処理による小規模世代促進法の開発」てん菜研究会報 Vol.46, p.23-30 Abegg FA (1936) J. Agric. Res., Vol.53, no.7, p.493-511
本発明は、原料栽培に利用可能なテンサイの世代促進技術を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、原料栽培のために抽苔・開花を抑制できる性質と、採種栽培のためにできるだけ短期間で開花を誘導でき世代促進を可能にする性質の両方を有するテンサイが存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 低温要求性を有するテンサイ系統を、春化処理せずに、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件下で栽培して、開花が誘導された系統を選抜することを含む、テンサイの選抜方法。
[2] a)前記テンサイ系統を、春化処理せずに、自然日長の長日条件下で栽培し、開花誘導の有無を調べること、
b)前記テンサイ系統を、春化処理せずに、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件下で栽培し、開花誘導の有無を調べること、及び
c)前記工程a)で開花が誘導されず、かつ前記工程b)で開花が誘導されたテンサイ系統を選抜すること
を含む、上記[1]に記載のテンサイの選抜方法。
[3] 連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件が、全日長条件である、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 自然日長の長日条件が、14~17時間の自然日長を有する自然日長条件である、上記[2]に記載の方法。
[5] 開花誘導の有無を抽苔率に基づいて判定する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件下での前記栽培を、15~30℃の温度条件で行う、上記[1]~[5]のいずれかに記載のテンサイの選抜方法。
[7] 上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法により選抜されたテンサイ系統を育種親として他のテンサイ系統と交配し、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件下で春化処理せずに開花誘導可能なテンサイ子孫植物を、取得することを含む、テンサイの育種方法。
本発明によれば、採種栽培のために短期間で開花を誘導でき、かつ原料栽培では開花を抑制できるという有利な特性を有するテンサイを、効率良く選抜することができる。
図1は、従来の栽培方法によるテンサイの生活環を示す模式図である。Aは通常の栽培、Bは従来の世代促進方法、Cは一年生系統の栽培を示す。 図2は、本発明の方法で選抜されるテンサイ系統の典型的な栽培及び開花特性を示す模式図である。Aは自然日長条件での原料栽培、Bは全日長条件での採種栽培(世代促進)を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、テンサイの新たな世代促進技術の開発を進める中で、できるだけ短期間で開花することが求められる「採種栽培」と、通常は屋外で行われる栽培中に開花しないことが求められる「原料栽培」の両方に適したテンサイ系統を得ることができれば、非常に有用であろうと考えた。
さらに本発明者らは、低温要求性を有するテンサイ系統であっても、無春化のまま開花を誘導できる栽培条件や、栽培条件次第で無春化のまま開花を誘導できるテンサイ系統が存在するのではないかと考えた。そして本発明者らは、屋外で行われる通常の原料栽培(自然日長条件)では無春化では開花に至らないが、自然日長よりも人工的に長日条件にすることにより無春化のまま速やかに開花が誘導されるテンサイ系統がもし存在すれば、抽苔による収量減少を抑制した「原料栽培」と短期間で採種を完了する「採種栽培」(世代促進)を両立させることができるのではないかと考えた。そこで、実証試験を行った結果、後述の実施例に記載されるように、自然日長条件では無春化では開花が誘導されないが、全日長条件では無春化でも開花が誘導されるテンサイ系統が存在することが明らかになった。さらに、そのようにして見出されたテンサイ系統の一部では、全日長条件よりも日長が少し短い光条件下でも抽苔が生じることが示された。なお、本発明において「テンサイ系統」とは、遺伝的に均一又はほぼ均一なテンサイ個体の集団を指す。
本発明は、低温要求性を有するテンサイ系統を、春化処理せずに、自然日長の長日条件(特に、テンサイの屋外栽培が可能な土地の自然日長の長日条件)よりも日長が長い(すなわち暗期が短い)光条件下で栽培して、開花が誘導された系統を選抜することを含む、テンサイの選抜方法に関する。
本発明は、特に、低温要求性を有するテンサイ系統を、春化処理せずに、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件下で栽培して、開花が誘導された系統を選抜することを含む、テンサイの選抜方法に関する。
好ましい実施形態では、本発明は、低温要求性を有するテンサイ系統を、春化処理せずに、全日長条件下で栽培して、開花が誘導された系統を選抜することを含む、テンサイの選抜方法に関する。
テンサイ(学名Beta vulgaris)は、根部にショ糖を貯蔵することから、サトウキビとともに砂糖原料として利用されている植物である。テンサイは寒冷地作物であり、温帯から亜寒帯を中心として栽培されている。テンサイは基本的には二年生である。二年生植物は開花能力の誘導のために一定期間の低温への曝露が必要であり、すなわち低温要求性を有する。本発明において、テンサイが「低温要求性を有する」とは、テンサイの屋外栽培が可能な土地での自然日長下での開花誘導のために、10℃以下(好ましくは0℃~10℃、人為的処理の場合などには好ましくは4~7℃)の低温に一定期間(品種により異なるが典型的には40~150日)曝露することを必要とすることを意味する。このような低温での処理を一般に春化処理(vernalization)と呼ぶ。
本発明において、「無春化で」、「春化処理せずに」又は「春化処理なしで」とは、テンサイに対する春化処理がされないこと、具体的には、春化を生じる温度及び期間にテンサイを曝露しないことを意味し、典型的にはテンサイを10℃以下の低温に40日以上曝露しないことを指す。この「10℃以下の低温」とは、日平均気温が10℃以下であることを意味する。日平均気温とは、1日のうち1~24時までの毎正時の気温の24個の観測値の平均である。本発明では春化処理されていない状態を「無春化」と称する。
本発明において、「連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件」とは、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる明暗サイクル条件を意味する。植物では、実際には、日長そのもの(明期)よりも、連続した暗期の長さが、開花誘導に影響を及ぼすことが知られている。暗期は基本的に中断されることなく連続している必要があるとされている。通常は「連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件」は、明期(日長)が1日当たり18時間以上となる光条件に相当する。連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件は、例えば、連続した暗期が1日当たり5時間半以下、5時間以下、4時間半以下、4時間以下、3時間半以下、3時間以下、2時間半以下、2時間以下、1時間半以下、1時間以下、又は全日長条件であってよい。1日当たりの明期と暗期の時間は、毎日同じでもよいし、日毎に異なっていてもよい。本発明において暗期とは、暗黒下、又は、開花が誘導されない程度のわずかな光(典型的には照度2ルクス未満)のみを有する光条件下に置かれた期間を指す。
本発明において、「全日長条件」とは、1日当たり約24時間(23時間30分~まる1日)の日長(明期)を有する栽培条件を意味する。「全日長条件」は、1日当たり、暗期をほぼ有しない(暗期30分以下)か、又は暗期を全く有しない(暗期0分、すなわち24時間日長)。ここで日長又は明期とは、開花を誘導可能なレベルの光がテンサイに当たっている期間を指す。
本発明において全日長条件などの光条件を構成する光の種類は、特に限定されない。光は太陽光、人工照明、又は太陽光と人工照明の組み合わせであってよい。テンサイ系統の、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件下での栽培は、自然日長に加えて、人工照明による夜間補光を用いて行ってもよい。人工照明は白熱灯、蛍光灯、LED等の任意の照明であってよい。本発明において人工照明によりテンサイが受ける照度は、好ましくは10ルクス以上、より好ましくはおよそ50~1,000ルクスであってよく、白熱灯を用いる場合は例えば100~500ルクスであってよいが、これらに限定されない。なお全日長条件の場合、人工照明(最大およそ1,000ルクス)のみを終日用いる場合よりも、日中の太陽光(最大およそ100,000ルクス)と夜間の人工照明を組み合わせて使用する場合の方が、開花率が高くなり、開花誘導までの期間が短くなる傾向にある。
テンサイ系統の、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件下での栽培は、通常は10℃超~40℃、好ましくは15~30℃の温度条件(気温又は室温)で行うことが好ましいが、春化処理されない限り、これらに限定されない。
連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件(長日条件に属する)下、例えば全日長条件での栽培は、テンサイの花芽形成・開花誘導に必要な期間及び時期に行えばよい。その栽培期間は、光の強さなどの環境要因に応じて変動し、限定するものではないが、およそ40日又はそれ以上(少なくとも35日、例えば、35日~80日)であることが好ましい。テンサイは、種子を播種した段階又は発芽直後からそのような光条件に供してもよいが、テンサイがある程度生育した後にそのような光条件に供してもよい。そのような光条件下に典型的には40日程度置いた後に花芽形成が開始され、抽苔する。その後2~3週間で開花が始まり、種子が最初に収穫できる頃(播種の約4ヶ月後)まで開花が続く。
低温要求性を有するテンサイ系統を、上記のようにして、春化処理せずに、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件(より好ましくは、全日長条件)下で栽培することにより、特定のテンサイ系統では開花の誘導を観察することができる。そのような特定のテンサイ系統では、播種からおよそ1~3ヶ月程度で抽苔が生じ、その後、開花する。抽苔とは、花茎が伸び、花芽が形成されることを指す。所定のテンサイ系統について個体毎に抽苔の有無を確認し、以下の式に従ってテンサイ系統毎に抽苔率を算出することができる。
抽苔率(%)= 抽苔が発生した個体数/全個体数 × 100
抽苔率に基づいて、特定のテンサイ系統における開花誘導の有無を判定することができる。本発明では、テンサイ系統の抽苔率が80%以上(理想的には100%)の場合、用いた栽培条件においてそのテンサイ系統で開花が誘導されると判定することができる。また抽苔率が20%以下(理想的には0%)の場合、用いた栽培条件においてそのテンサイ系統では開花が誘導されないと判定することができる。抽苔率が20%超~80%未満の場合には、当該系統が遺伝的均一性を欠くか、又は用いた暗期の長さが限界暗期付近にあって個体間の揺らぎが存在することが考えられる。
開花誘導の有無の判定は、上述のように抽苔率に基づいて行うことができるが、他の基準に基づいて行ってもよい。例えば、抽苔率の代わりに、全個体数に対する開花した個体数の割合に基づいて、抽苔率と同様の基準で判定してもよい。
以上のようにして、低温要求性を有するテンサイ系統から、上記の栽培条件で開花が誘導されたテンサイ系統を選抜することができる。選抜されたテンサイ系統は、自然日長条件(特に、テンサイの屋外栽培が可能な土地の自然日長条件)では春化処理なしでは開花しないが、暗期がより短い光条件下、例えば連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件(より好ましくは、全日長条件)では春化処理なしで開花が誘導されるという有利な特性を有する。
本発明の方法では、試験するテンサイ系統を、春化処理せずに、自然日長の長日条件で栽培して、開花誘導の有無を調べることも好ましい。特に、そのテンサイ系統の栽培を意図する土地の自然日長の長日条件で栽培して、開花誘導の有無を調べることがより好ましい。それにより、試験するテンサイ系統が、その土地の自然日長条件で春化処理せずに開花誘導されるかどうかを確認することができ、すなわち、自然日長条件で低温要求性を有するかどうかを判断若しくは確認することができる。
一実施形態では、本発明のテンサイの選抜方法は、
a)テンサイ系統を、春化処理せずに、自然日長の長日条件下で栽培し、開花誘導の有無を調べること、
b)テンサイ系統を、春化処理せずに、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件(より好ましくは、全日長条件)下で栽培し、開花誘導の有無を調べること、及び
c)上記工程a)で開花が誘導されず、かつ上記工程b)で開花が誘導されたテンサイ系統を選抜すること
を含む。この方法により、原料栽培と採種栽培の両方に適したテンサイを効率よく取得することができる。
「自然日長の長日条件」とは、自然日長、すなわち日の出時刻から日の入り時刻までの時間(昼の長さ)が、日の入り時刻から日の出時刻までの時間(夜の長さ)よりも長い自然日長条件(自然光周期条件)を意味する。「自然日長の長日条件」は、テンサイの屋外栽培が可能な土地(典型的には温帯~亜寒帯、又は緯度30~60°)の夏季の自然日長条件であることが好ましい。自然日長の長日条件は、以下に限定するものではないが、1日当たり、典型的には14~17時間、好ましくは15~17時間、より好ましくは15~16時間の自然日長(日長)を有する自然日長条件である。自然日長の長日条件における夜の長さ(日没時刻から日の出時刻までの時間)は、1日当たり、典型的には7~10時間、好ましくは7~9時間、より好ましくは8~9時間である。なお文脈上明らかな場合、自然日長条件下での自然日長を単に「日長」と呼ぶことがある。自然日長の長日条件下でのテンサイの栽培は、典型的には緯度30~60°、好ましくは緯度35~55°、35~50°又は30~50°、例えば北海道(日本)を含む緯度40~45°の土地で行うことができる。
自然日長の長日条件(自然日長条件)での栽培は、テンサイの花芽形成・開花誘導に必要な期間及び時期に行えばよい。その栽培期間は、光の強さなどの環境要因に応じて変動し、限定するものではないが、典型的にはおよそ40日又はそれ以上(例えば、35日~80日)であることが好ましい。自然日長の長日条件での栽培期間は、自然日長が最長となる日(夏至)を含み得る。テンサイは、種子を播種した段階又は発芽直後からそのような条件に供してもよいが、テンサイがある程度生育した後にそのような条件に供してもよい。自然日長の長日条件での栽培は、通常は10℃超~40℃、好ましくは15~30℃の温度条件(気温又は室温)で行うことが好ましいが、春化処理されない限り、これらに限定されない。
上記の自然日長の長日条件においては、テンサイ一年生系統は、一般的に、春化処理なしで開花するが、本発明の方法で選抜されるテンサイ系統は春化処理なしでは開花しない。開花誘導の判定は、上記と同様の基準に従って行うことができる。
上記の自然日長の長日条件で栽培したのと同じテンサイ系統を、春化処理せずに、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件(より好ましくは、全日長条件)下で栽培し、開花誘導の有無を調べることが好ましい。そのような光条件下での栽培及び開花誘導の判定については上述したとおりである。連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件は、その連続した暗期が、被験テンサイ系統の栽培を意図している土地の夏至の夜の長さよりも2時間以上短いことが好ましく、3時間以上短いことがさらに好ましく、4時間以上短いことが特に好ましい。
本発明において、テンサイの栽培は、屋外で行ってもよいし、屋内で行ってもよい。屋外栽培は、例えば圃場で行うことができる。屋内栽培は、例えば、ガラス温室やビニールハウスなどの温室、植物工場、クリーンルーム、実験室、インキュベーター、人工気象器などで行うことができる。自然日長の長日条件下での栽培は、屋外で行うことが好ましいが、太陽光を透過するガラス温室やビニールハウスなどの自然日長条件で栽培できる施設内で行ってもよい。連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件下での栽培は、屋内で行うことが好ましいが、照明設備を設置した屋外で行ってもよい。テンサイの播種後の育苗管理は屋内で行ってもよいし、屋外で行ってもよい。例えば、播種後の育苗管理を屋内で行い、その後、苗を屋外圃場に移植して栽培してもよい。また播種後の育苗管理を屋外で行い、その後、苗を温室などの屋内施設に移植して栽培してもよい。播種後の育苗管理の段階から屋外又は屋外のいずれかのみで栽培してもよい。
本発明の方法を用いることにより、テンサイの屋外栽培が可能な土地の自然日長条件、特に上記工程a)で試験した自然日長の長日条件と同等又は類似の自然日長条件では春化処理なしでは開花しないが、暗期がより短い光条件下、例えば連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件(例えば工程b)で試験した光条件、より好ましくは、全日長条件)では無春化のまま開花が誘導される日長感受性のテンサイ系統(例えば図2)を、効率よく選抜することができる。そのようなテンサイ系統は、自然日長条件では、春化処理をしない場合、抽苔することなく栽培することができるため、原料栽培において抽苔による収量減少や糖含量減少を抑制することができる。一方、このテンサイ系統は、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件(より好ましくは全日長条件)では無春化のまま開花を誘導することができ、4ヶ月程度で採種することができるため、採種栽培において世代を促進することができ、例えば1年で三世代を得ることができる。この選抜により得られるテンサイ系統(日長感受性テンサイ系統)を、本発明ではBLOND系統とも称する。
本発明の方法により選抜されるテンサイ系統は、その独特の開花特性を優性形質として有することが好ましい。本発明の方法により選抜されるテンサイ系統は、その開花特性を他のテンサイ植物に導入するための育種親として使用することもできる。
具体的には、本発明は、本発明の選抜方法により得られたテンサイ系統を育種親として用いて、他のテンサイ系統と交配し、テンサイの子孫植物を取得することを含む、テンサイの育種方法を提供する。この方法で取得される好ましいテンサイ子孫植物は、例えば連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件(より好ましくは全日長条件)下での栽培により、春化処理せずに開花誘導可能である。
交配相手となる他のテンサイ系統は、一年生系統であってもよいし、二年生系統であってもよい。交配により得られた子孫植物には、本発明の選抜方法により得られたテンサイ系統の上記の開花特性(春化処理なし、かつ短い暗期又は全日長条件で、開花誘導可能)が遺伝し、好ましくは優性形質として遺伝し得る。交配を繰り返し行い、F1種子、F2種子、及びF3種子等の後続の世代を子孫植物としてさらに取得してもよい。子孫植物は上記開花特性の原因遺伝子についてホモ接合体又はヘテロ接合体であってよい。交配により得られた子孫植物について、春化処理せずに、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件(より好ましくは、全日長条件)下で開花が誘導されることを、上述した方法により確認することも好ましい。さらに、交配により得られた子孫植物を、テンサイ一年生系統で一般的に開花が誘導される、自然日長の長日条件下で栽培し、開花が誘導されないことを確認することも好ましい。このような確認に基づき、春化処理せずに、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件(より好ましくは、全日長条件)下で開花が誘導されるテンサイ子孫植物を選抜し取得することができる。この育種方法により、テンサイの屋外栽培が可能な土地の自然日長条件では春化処理なしでは開花しないが、暗期がより短い、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件(より好ましくは、全日長条件)では春化処理なしで開花が誘導されるという日長感受性の開花特性を、様々なテンサイ系統に導入することができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
1.夏季栽培試験(1年目)
農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター(日本)が保有する様々なテンサイ遺伝資源系統を、試験圃場(北海道河西群芽室町、日本)で4月から10月にかけて屋外及び温室でそれぞれ栽培した。各系統について、開花誘導が開始される際に見られる形態的変化である「抽苔」の出現率と開花特性を調査した。比較のため、テンサイの一年生系統TK 76-49/2mm-O及び二年生系統TA-33BB-Oも基準株として同様に栽培し、調査を行った。
a)屋外圃場栽培
テンサイのペーパーポットへの播種は4月18日に行った。播種後の育苗管理は屋外で行い、苗が2~4枚の葉を有するまで生育した段階で圃場に移植した。圃場への移植日は5月18日であった。移植後のテンサイは屋外環境で自然日長条件下で生育させた。その後、9月1日までに抽苔が発生した個体数をカウントし、以下のとおり抽苔率を算出した。
抽苔率(%)= 抽苔が発生した個体数/全個体数 × 100
b)ガラス温室栽培
テンサイの播種は4月18日に行った。播種後の育苗管理は、ガラス温室内で、全日長条件(自然日長+夜間照明栽培;夜間照明条件:白熱電球200W、18:00から翌朝5:00まで)、及び平均温度24℃(18℃~30℃)の温度条件で行った。苗が2~4枚の葉を有するまで生育した段階で、直径10cm×高さ20cmのポットへ移植した。移植日は5月18日であった。その後は上記と同じ全日長条件及び温度条件でガラス温室内で苗を生育させた。6月17日までに抽苔が発生した個体数をカウントし、上記a)に記載した式のとおり抽苔率を算出した。なお芽室町での4月18日の日の出時刻は4時42分、日の入り時刻は18時13分、6月17日の日の出時刻は3時48分、日の入り時刻は19時09分であった。芽室町のこの年の夏至(6月23日)の自然日長は15時間22分であった。
上記の栽培試験の結果、屋外圃場栽培では開花がほとんど誘導されないが、ガラス温室で全日長条件で栽培すると春化期間を経ずとも開花が誘導される2つのテンサイ系統NK-420及びNK-422が見出された。これらの系統をBLOND(Bolting by longer than natural daylength)系統と名付けた。
具体的には、屋外圃場栽培(4月~10月の夏季栽培、自然日長)では、一年生系統TK 76-49/2mm-Oと二年生系統TA-33BB-Oの抽苔率は、それぞれ100%、0%であった。一方、BLOND系統は、ほとんど開花が誘導されずに栄養成長を続け(抽苔率0%又は11%)、開花誘導は二年生系統TA-33BB-Oと同様に非常に低頻度であった(表1)。BLOND系統の開花特性は、一年生系統TK 76-49/2mm-Oとは明らかに異なっていた。
ガラス温室内の全日長(24時間日長)条件では、一年生系統TK 76-49/2mm-Oと二年生系統TA-33BB-Oの抽苔率は、屋外圃場栽培と同様にそれぞれ100%、0%であった。一方、BLOND系統は抽苔率100%を示し、一年生系統TK 76-49/2mm-Oと同様であった。すなわちBLOND系統では、全日長条件下で、春化処理なしでも開花が誘導されることが示された(表1)。
このBLOND系統(NK-420又はNK-422)をテンサイ二年生系統NK-377(農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター)と交配し、雑種第一代(F1系統;NK-377 x NK-420、NK-377 x NK-422)を得た。
2.夏季栽培試験(2年目)
BLOND系統について、翌年も、以下のように栽培試験を行い、開花特性を調査した。さらに、F1系統(NK-377 x NK-420、NK-377 x NK-422)、F1基準系統(NK-377mm-CMS(二年生系統) x TA-33BB-O(一年生系統))、並びに基準株としての一年生系統TA-33BB-O及び二年生系統Monohikariを用いて、同様に栽培試験を行った。
c)屋外圃場栽培
テンサイの播種は4月9日に行った。播種後の育苗管理はガラス温室内で行い、自然日長条件下で、徒長を防止するため室内温度(最低温度)を約20℃から10℃へ徐々に低下させる温度条件とした。苗が2~4枚の葉を有するまで生育した段階で圃場に移植した。圃場への移植日は5月9日であった。移植後のテンサイは屋外環境で自然日長の下で生育させた。その後、8月21日までに抽苔が発生した個体数をカウントし、上記1.a)と同様に抽苔率を算出した。
d)ガラス温室栽培
テンサイの播種は4月9日に行った。播種後の育苗管理は、ガラス温室内で、全日長条件(自然日長+夜間照明栽培;夜間照明条件:白熱電球200W、18:00から翌朝5:00まで)、及び平均温度24℃(18℃~30℃)の温度条件で行った。苗が2~4枚の葉を有するまで生育した段階で、直径10cm×高さ20cmのポットへ移植した。移植日は5月8日であった。その後は上記と同じ全日長条件及び温度条件でガラス温室内で苗を生育させた。6月11日までに抽苔が発生した個体数をカウントし、上記1.a)と同様に抽苔率を算出した。
BLOND系統(NK-420、NK-422)の抽苔率は1年目と同様の結果を示し、自然日長条件下では両系統とも0%、全日長条件下ではNK-420系統が100%、NK-422系統では84%であった。F1系統(NK-377 x NK-420、及びNK-377 x NK-422)の抽苔率は、自然日長条件下では両系統とも0%、全日長条件下ではそれぞれ100%、87%であり、BLOND系統と同様であった(表1)。一年生系統TA-33BB-O、及びF1基準系統はいずれも、自然日長条件及び全日長条件の両方で抽苔率100%を示した。これに対し、二年生系統Monohikariは、自然日長条件及び全日長条件の両方で抽苔率0%を示した。一年生系統(優性形質)と二年生系統(劣性形質)の交配により得られたF1基準系統は、自然日長条件及び全日長条件の両方で抽苔率100%を示し、BLOND系統はF1基準系統とは開花特性の点で明らかに異なっていた。
このことから、自然日長条件下では開花しないが、全日長条件下では開花が誘導されるという独特の開花特性を有するテンサイ系統が存在することが示された。BLOND系統と二年生系統NK-377の交配によって得られたF1系統の開花特性はBLOND系統と同様であったことから、BLOND系統の開花特性は、一年生系統TA-33BB-Oと同様に、優性遺伝すると考えられる。
なお夏季栽培試験におけるガラス温室での抽苔までの日数を表3に示した。BLOND系統及びF1系統の抽苔までの日数は一年生系統と同様であった。
抽苔までの日数=抽苔が発生した株の播種から抽苔開始までの日数の総和/全抽苔株数
F1系統(NK-377 x NK-420、及びNK-377 x NK-422)に、二年生系統NK-310を反復親として交配し、戻し交配第一代(BC1系統;NK-377 x NK-420 x NK-310、NK-377 x NK-422 x NK-310)を得た。
また、BLOND系統(NK-420又はNK-422)を、テンサイ二年生系統NK-310(農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター)と交配し、雑種第二代(F2系統;NK-310 x NK-420、NK-310 x NK-422)を得た。
3.夏季栽培試験(3年目)
BLOND系統について、3年目も同様に栽培試験を行い、開花特性を調査した。またF2系統(NK-310 x NK-420、NK-310 x NK-422)、F2系統(NK-310 x NK-420、NK-310 x NK-422)、BC1系統(NK-377 x NK-420 x NK-310、NK-377 x NK-422 x NK-310)、F1基準系統(NK-377mm-CMS(二年生系統) x TA-33BB-O(一年生系統))、基準株としての一年生系統TA-33BB-O及び二年生系統NK-377mm-O、並びに、基準株としての戻し交配第一代(BC1基準系統;NK-377mm-CMS x TA-33BB-O x NK-310mm-O)を用いて、同様に栽培試験を行った。なおNK-310mmとNK-377mmはほぼ同質の系統であり、NK-310mmとの交配も戻し交配として扱うことができる。
1)屋外圃場栽培(3年目)
テンサイの播種は4月9日に行った。播種後の育苗管理はガラス温室内で行い、自然日長条件下で、室内温度(最低温度)を約20℃から10℃へ徐々に低下させる温度条件とした。苗が2~4枚の葉を有するまで生育した段階で圃場に移植した。圃場への移植日は5月13日であった。移植後のテンサイは屋外環境で自然日長条件下で生育させた。その後、8月26日までに抽苔が発生した個体数をカウントし、上記1.a)と同様に抽苔率を算出した。
2)ガラス温室栽培(3年目)
テンサイの播種は4月21日に行った。播種後の育苗管理は、ガラス温室内で、全日長条件(自然日長+夜間照明栽培;夜間照明条件:白熱電球200W、18:00から翌朝5:00まで)、及び平均温度24℃(18℃~30℃)の温度条件で行った。苗が2~4枚の葉を有するまで生育した段階で、直径10cm×高さ20cmのポットへ移植した。移植日は5月15日であった。その後は上記と同じ全日長条件及び温度条件でガラス温室内で苗を生育させた。6月30日までに抽苔が発生した個体数をカウントし、上記1.a)と同様に抽苔率を算出した。
BLOND系統(NK-420、NK-422)、一年生系統、及び二年生系統の抽苔率は1年目及び2年目と同様の結果を示した。BLOND系統と二年生系統の交配によって得たF2系統(NK-310 x NK-420、NK-310 x NK-422)の抽苔率は、自然日長条件でいずれも0%、全日長条件でそれぞれ83%及び98%であった(表1)。またBLOND系統に二年生系統を反復親として交配して得たBC1系統(NK-377 x NK-420 x NK-310、NK-377 x NK-422 x NK-310)の抽苔率は、自然日長条件でいずれも0%、全日長条件でそれぞれ55%、48%であった(表1)。なおBC1基準系統(NK-377mm-CMS x TA-33BB-O x NK-310mm-O)の抽苔率は44%であった(表1)。
F2系統の開花特性と、2年目の栽培試験で示されたF1系統の開花特性から、BLOND系統の開花特性が、少数の強い効果を有する遺伝子によってもたらされることが示された。
Figure 0007029780000001
[実施例2]
冬季栽培試験(11月~2月)
実施例1の夏季栽培試験で用いたのと同様のテンサイ系統を、農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センターのガラス温室内で栽培した。1年目と2年目の冬季栽培試験は、実施例1の1年目と2年目の夏季栽培試験とそれぞれ同じ年に開始した。
1年目の試験では、テンサイの播種は11月5日に行った。播種後の育苗管理は、ガラス温室内で、全日長条件(自然日長+夜間照明栽培;夜間照明条件:白熱電球200W、16:00から翌朝7:00まで)、及び平均温度20℃(15℃~25℃)の温度条件で行った。苗が2~4枚の葉を有するまで生育した段階で、直径10cm×高さ20cmのポットへ移植した。移植日は12月11日であった。その後は上記と同じ全日長条件及び温度条件でガラス温室内で苗を生育させた。その後、1月6日までに抽苔が発生した個体数をカウントし、実施例1の上記a)に記載した式のとおり抽苔率を算出した。
同様に2年目の試験では、テンサイの播種は11月4日に行った。播種後の育苗管理は、ガラス温室内で、全日長条件(自然日長+夜間照明栽培;夜間照明条件:白熱電球200W、16:00から翌朝7:00まで)、及び平均温度20℃(15℃~25℃)の温度条件で行った。苗が2~4枚の葉を有するまで生育した段階で、直径10cm×高さ20cmのポットへ移植した。移植日は12月22日であった。その後は上記と同じ全日長条件及び温度条件でガラス温室内で苗を生育させた。その後、1月19日までに抽苔が発生した個体数をカウントし、実施例1の上記a)に記載した式のとおり抽苔率を算出した。
その結果を表2に示す。冬季栽培試験の結果、一年生系統TA-33BB-O及び二年生系統(1年目:NK-280mm-O、2年目:NK-377mm-O)の抽苔率は、それぞれ100%、0%~7%であった。一方、BLOND系統(NK-420又はNK-422)の抽苔率は、95%~100%であり、概ね一年生系統と同様の結果であった。BLOND系統は、一年生系統と同様に、全日長条件では栽培時期によらず、春化処理なしで開花が誘導されることが示された。
Figure 0007029780000002
なお夏季栽培試験及び冬季栽培試験におけるガラス温室での抽苔までの日数を表3に示した。BLOND系統及びF1系統の抽苔までの日数は一年生系統と同様であった。
抽苔までの日数=抽苔が発生した株の播種から抽苔開始までの日数の総和/全抽苔株数
BLOND系統は、全日長条件では栽培時期によらず、一年生系統と同程度の日数で開花が誘導されることが示された。
Figure 0007029780000003
実施例1及び2の結果から、BLOND系統は、屋外の自然日長条件では抽苔(開花誘導)しにくいが、全日長条件の温室内では春化処理(低温処理)を施さなくても開花する特性を持つことが示された。すなわちBLOND系統は、自然日長条件と全日長条件における開花特性が、従来の一年生系統や二年生系統のテンサイとは明らかに異なり、日長感受性であった(表4)。本発明のBLOND系統は、テンサイを屋外栽培可能な場所の自然日長条件では開花させることなく栽培できる一方、全日長条件で栽培すれば春化処理なしで開花誘導することができ、一年生系統と同様に、1回の採種までに要する期間を、従来の約1年から1/3の約4ヶ月に短縮することができる。
Figure 0007029780000004
なお試験圃場のある芽室町で測定された日長時間(1年目)及び月別の平均気温は以下のとおりであった。
Figure 0007029780000005
[実施例3]
日長がBLOND系統の開花に及ぼす影響をさらに調査した。BLOND系統のNK-420とNK-422、及び基準株(コントロール)として一年生系統のTA-33BB-Oと二年生系統のNK-310mm-Oを調査対象とした。3年目の12月21日にテンサイをペーパーポットへ播種して、約20℃に設定された自然日長条件下の温室で育苗した。翌年の1月21日に、苗が2~4枚の葉を有するまで生育した段階で、苗を直径10cmのジフィーポットへ3個体ずつ定植した。定植後の苗は、20℃に設定した人工気象器を用い、24時間、18時間及び14時間の3種類の日長条件で栽培して、3月5日に抽苔率を調査した。光源は、100Wの白熱灯であり、ポットより約50cm上方に設置した。
調査結果を表6に記す。二年生系統の抽苔率は、いずれの日長でも0%であった。一年生の抽苔率は、14時間日長では0%であったが、18時間日長及び24時間日長では100%となった。BLOND系統に関して、NK-422の抽苔率は二年生系統と同様に0%であった。一方、NK-420の抽苔率は一年生系統と同様に14時間日長では0%であったが、18時間日長及び24時間日長では100%となった。但し、18時間日長では、NK-420の平均抽苔茎長が13mmであり、一年生系統よりも抽苔が遅延・抑制される傾向が見られた。
このため、少なくとも一部のBLOND系統は、24時間(全日長条件)より短い日長でも開花が誘導されると考えられた。
Figure 0007029780000006
本発明の方法では、砂糖原料としての栽培に利用できるだけでなく、暗期を短縮することにより春化処理なしで短期間で採種可能なテンサイを選抜することができる。本発明によれば、テンサイの世代促進が可能になり、品種開発を高速化することもできる。

Claims (6)

  1. 低温要求性を有するテンサイ系統を、春化処理せずに、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件下で栽培して、開花が誘導された系統を選抜することを含む、テンサイの選抜方法であって、連続した暗期が1日当たり6時間以下となる光条件が、全日長条件である、方法
  2. a)前記テンサイ系統を、春化処理せずに、自然日長の長日条件下で栽培し、開花誘導の有無を調べること、
    b)前記テンサイ系統を、春化処理せずに、全日長条件下で栽培し、開花誘導の有無を調べること、及び
    c)前記工程a)で開花が誘導されず、かつ前記工程b)で開花が誘導されたテンサイ系統を選抜すること
    を含む、請求項1に記載のテンサイの選抜方法。
  3. 自然日長の長日条件が、14~17時間の自然日長を有する自然日長条件である、請求項2に記載の方法。
  4. 開花誘導の有無を抽苔率に基づいて判定する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  5. 全日長条件下での前記栽培を、15~30℃の温度条件で行う、請求項1~のいずれか1項に記載のテンサイの選抜方法。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載の方法により選抜されたテンサイ系統を育種親として他のテンサイ系統と交配し、全日長条件下で春化処理せずに開花誘導可能なテンサイ子孫植物を、取得することを含む、テンサイの育種方法。
JP2017159684A 2017-08-22 2017-08-22 世代促進可能なテンサイの選抜方法 Active JP7029780B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017159684A JP7029780B2 (ja) 2017-08-22 2017-08-22 世代促進可能なテンサイの選抜方法
PCT/JP2018/030250 WO2019039349A1 (ja) 2017-08-22 2018-08-14 世代促進可能なテンサイの選抜方法
EP18847565.1A EP3673729A4 (en) 2017-08-22 2018-08-14 BEET SELECTION PROCESS ALLOWING GENERATION ACCELERATION

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017159684A JP7029780B2 (ja) 2017-08-22 2017-08-22 世代促進可能なテンサイの選抜方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019037150A JP2019037150A (ja) 2019-03-14
JP7029780B2 true JP7029780B2 (ja) 2022-03-04

Family

ID=65438750

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017159684A Active JP7029780B2 (ja) 2017-08-22 2017-08-22 世代促進可能なテンサイの選抜方法

Country Status (3)

Country Link
EP (1) EP3673729A4 (ja)
JP (1) JP7029780B2 (ja)
WO (1) WO2019039349A1 (ja)

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7365182B2 (en) * 2002-05-01 2008-04-29 Michigan State University Plant vernalization independence (VIP) genes, proteins, and methods of use
JP5252705B2 (ja) 2008-10-09 2013-07-31 ホクレン農業協同組合連合会 種子の生産方法
JP2017159684A (ja) 2016-03-07 2017-09-14 いすゞ自動車株式会社 作業台

Non-Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
AoB PLANTS (2010) Vol.2010, No.plq012, pp.1-13
Current Biology (2012) Vol.22, pp.1095-1101
Euphytica (1997) Vol.94, pp.129-135
Journal of Experimental Botany (2009) Vol.60, No.11, pp.3143-3155
田口和憲, 他2名,人為春化処理による小規模世代促進方法の開発,てん菜研究会報 (2004) Vol.46, pp.23-30
阿部純, 他2名,テンサイの抽苔に関与する遺伝子モデル,てん菜研究会報 (1994) Vol.36, pp.152-157

Also Published As

Publication number Publication date
WO2019039349A1 (ja) 2019-02-28
JP2019037150A (ja) 2019-03-14
EP3673729A4 (en) 2021-03-31
EP3673729A1 (en) 2020-07-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Vara Prasad et al. Effects of short episodes of heat stress on flower production and fruit‐set of groundnut (Arachis hypogaea L.)
Guilioni et al. Heat stress-induced abortion of buds and flowers in pea: is sensitivity linked to organ age or to relations between reproductive organs?
Olmsted Growth and development in range grasses. IV. Photoperiodic responses in twelve geographic strains of side-oats grama
CN110100723B (zh) 一种快周期甘蓝型油菜的杂交选育方法及其应用
CN108925423B (zh) 一种水稻孕穗期耐热种质选育方法
Mihovilovich et al. Protocol for tuber bulking maturity assessment of elite and advanced potato clones
CN104641908A (zh) 一种向日葵自交系一年三代的繁育方法
Zilio et al. Cycle, canopy architecture and yield of common bean genotypes (Phaseolus vulgaris) in Santa Catarina State
Abo-Elwafa et al. Effect of root age and day-length extension on sugar beet floral induction and fertility
Zhang et al. Annual growth cycle observation, hybridization and forcing culture for improving the ornamental application of Paeonia lactiflora Pall. in the low-latitude regions
JP5102914B2 (ja) タマネギの栽培方法及びタマネギ
JP7029780B2 (ja) 世代促進可能なテンサイの選抜方法
WO1996025030A1 (fr) Procede de production de tubercules de pommes de terre par greffage
CN104255258B (zh) 春季耐抽薹白萝卜侧枝扦插繁种方法
US11963494B2 (en) Scabiosa atropurpurea plants and methods of producing same
JP5252705B2 (ja) 種子の生産方法
JP2002262657A (ja) トウガラシ属(Capsicum)植物の増殖方法
Mochizuki et al. ‘Yotsuboshi’, a new F1 hybrid strawberry of seed propagation type for year-round production
Samarakoon et al. Crown buds in gentians: Appearance, shoot emergence and development
Mathew et al. Formulation of flowering index, morphological relationships, and yield prediction system in true garlic aerial seed bulbil production
JP2745026B2 (ja) 葉菜類の巨大種子産出方法
Yosuke et al. Biennial sugar beets capable of flowering without vernalization treatment
CN107278874B (zh) 一种苎麻杂交方法
Trecker Quantifying the effects of daily light integral or photoperiod on maize tassel morphology across developmental stages
Mizunoe et al. Seasonal variation of sepal-petaloidy in F1 progenies of double-flowered cyclamen

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200713

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210720

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210921

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220125

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220214

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7029780

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150