JP7029749B2 - 真菌を原因とする皮膚疾患に対する予防・改善剤 - Google Patents
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Description
(A)陽イオン
(B)陰イオン
(C)メタケイ酸
(D)メタホウ酸
を含有する液状体であって、
成分(A)としてナトリウムイオン及びカルシウムイオンを含有し、
該液状体1kg当たり、ナトリウムイオンの含有量は下限値1g、上限値10gであり、
カルシウムイオンの含有量は下限値1g、上限値10gであり、
成分(B)として塩素イオンを含有し、
該液状体1kg当たり、塩素イオンの含有量は下限値2g、上限値25gであり、
成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)との合計含有量が、該液状体1kg当たり、下限値5g、上限値120gである。
マラセチア属真菌による皮膚炎を発症しているイヌに、本発明の予防・改善剤を使用することにより、皮膚炎が改善し、マラセチア属真菌数が減少することを確認する試験をおこなった。
静岡県静岡市焼津市栄町3-36から湧出する鉱泉に含まれる成分につき、一般財団法人静岡県生活科学検査センターに依頼して鉱泉分析法指針(平成26年改訂)(環境省自然環境局)に基づいて成分(A)ないし成分(D)を測定した結果、該鉱泉は各成分及び各成分の含有量が本発明の予防・改善剤に含まれるものであり、本発明の予防・改善剤として使用できるものであることが分かった。そのため、該鉱泉を121℃、1気圧、15分間行う高圧蒸気滅菌処理し、試料1とした。表1に試料1の各成分の含有量を示す。
マラセチア属真菌による皮膚炎により、脱毛、紅斑、丘疹、苔癬化、表皮肥厚、色素沈着、脂漏、鱗屑等の皮膚症状のあるイヌ5頭(症例1~症例5)に、1日1~2回、皮膚炎を発症している箇所と皮膚炎を発症しやすい箇所(外耳、四肢端、腋窩等)に試料1をスプレーした。試料1をスプレーした期間は、2週間以上とし、症状が改善して安定的に維持されたことを確認した時点で終了とした。試料1の使用量は体表面の1か所1回当たり0.2ml~0.5ml程度とした。尚、試験例1においては、各イヌの飼い主は、試料1を使用していることを認識している。
大学付属動物病院において皮膚科を主たる診療科目としている学識のある獣医師が、試験開始時と試験終了時におけるイヌの皮膚炎の状態を目視にて確認した。表2に症例1~5のイヌの疾患名、皮膚症状の箇所、使用期間、改善した症状などを示す。試験開始時と試験終了時における症例4の皮膚炎の状態を図1に、症例5の皮膚炎の状態を図2に示す。
痒みの程度の指標として、飼い主による11段階の痒みスコアを用いた。0を一般的な犬が掻くレベルとし、おおよそ3から5点を注意すると犬が掻くことを止めるレベル、おおよそ6から8点を注意しても犬が掻くことを止められないレベルとし、10点を夜も眠れずに掻く動作を行っているレベルとした。試験1の実施期間中の痒みのレベルが何点であるか飼い主が評価した結果を図3に示す。図3から、いずれのイヌにおいても痒みは維持又は減少したことが分かる。痒みが増悪することにより、皮膚炎は悪化し、又は改善が困難になることから、痒みが維持又は減少することは皮膚炎の予防・改善に効果があると判断できる。
マラセチア属真菌の菌数の変化を確認するために、皮膚炎を発症している皮膚表面の中央部の菌数を測定した。菌数は皮膚表面の迅速細胞診の検査法として一般的なテープ法を用いて測定した。具体的には、市販の18mm幅の粘着性のある透明テープ(Scotch(登録商標))を5cmほど切りとり、皮膚炎発症している皮膚の中央部に該テープが約1~2cm貼付するようにくっつけた後、剥がしたテープをスライドグラスに軽く貼り付け、スライドグラスとテープの間に25G針のついた1mlシリンジを用いて染色液(ディフ・クイック染色液(登録商標)の第3液)を流し込んだ。余分な染色液を紙で吸い取った後、顕微鏡を用いて、テープに付着した菌数を、600倍視野で5視野測定した。マラセチア属真菌は、球形から卵形の菌体がひとつあるいはダルマ状に分芽した特徴的な形態をもつため、容易に菌数を確認することができる。5視野に認める菌数が、おおよそ1視野あたりに認める最小から最大幅として、0~2個を1点、3~5個を2点、6~10個を3点、11~30個を4点、31個以上を5点の5段階に分けて評価した。例えば、1視野の菌数が0個、2個、0個、1個、0個の場合0~2個とし、1視野の菌数が3個、2個、5個、3個、3個の場合2~5個になるところ3~5個に含まれる範囲が多いことから3~5個とする。当該評価の結果を図4に示す。
(1)試験例2の実施方法
マラセチア属真菌による皮膚炎により、脱毛、紅斑、苔癬化、色素沈着、鱗屑等の皮膚症状のあるイヌ3頭(症例6~症例8)に、試料1を1日1~2回、皮膚炎を発症している箇所と皮膚炎を発症しやすい箇所(外耳、四肢端、腋窩等)に体表面の1か所1回当たり1ml~2ml程度スプレーした。1週間から1ヶ月程度休薬した後、蒸留水を1日1~2回、皮膚炎を発症している箇所を含めて全身の数か所に、3週間、体表面の1か所1回当たり1ml~2ml程度スプレーした。試験例2は、評価者と飼い主に使用する薬液の順序は伝えない二重盲検試験とした。評価者は、獣医皮膚科学会の認定医の資格をもっている皮膚科に秀でた獣医師とした。
試料1を使用開始時と3週間後におけるイヌの皮膚炎の状態を目視にて確認した。表3に症例6~8のイヌの疾患名、皮膚症状の箇所、改善した症状などを示す。
皮膚炎の5種の症状(紅斑、苔癬化・色素沈着、鱗屑、脱毛、脂漏)について、飼い主又は評価者による4段階の評価(0点、1点、2点、3点)行い、その結果を臨床スコアとして表4に示す。臨床スコアの合計は最大15点(5種×3点)である。
試験例1と同様にテープ法にてマラセチア属真菌数を確認した。試験例2では、1000倍視野で10視野において菌数を測定した。10視野の合計菌数を表5に示す。
上記臨床スコア及びマラセチア属真菌数の両データについて重複測定分散分析による統計解析を行った結果、それぞれ交互作用のP値が0.007211と0.000195になった。交互作用のP値が0.01未満であることから、症例と測定時期に交互作用があり、試料1は皮膚炎の改善に効果があると判断できる。
≪試験例3.マラセチア属真菌に及ぼす作用試験≫
予防・改善剤がマラセチア属真菌に及ぼす作用について試験を行った。
静岡県静岡市焼津市栄町3-36から湧出する鉱泉を、0.22μmのフィルターを用いて無菌チューブ内に濾過滅菌し、4℃の冷蔵庫内で保管したもの試料2とした。
比較品1は滅菌した蒸留水を用い、比較品2~9は各採取地から採取した鉱泉を用いた。いずれも0.22μmのフィルターを用いて無菌チューブ内に濾過滅菌し、4℃の冷蔵庫内で保管したものを使用した。比較品2~9の成分(A)~成分(D)の含有量は、各鉱泉の温泉分析結果を参考とした成分(A)~成分(D)の合計含有量は、各鉱泉の温泉結果の溶存物質(ガス性のものを除く)の値を参考にした。
マラセチア属真菌による皮膚炎に罹患した3頭のイヌの皮膚炎から単離したマラセチア属真菌(菌株イ、菌株ロ、菌株ハ)及び健康なヒトの皮膚から単離したマラセチア属真菌(菌株ニ)を用いた。
皮膚炎や脱毛などの皮膚症状を発症し、押捺標本検査にて患部からマラセチア属真菌が検出された3頭のイヌの病変部皮膚及び耳垢、そして健康なヒトの耳垢から医科用捲綿子を用いて、菌を採取した。採取した菌株を、クロラムフェニコールを25g/ml添加した低pHマイコフィル寒天培地(和光純薬株式会社製)に播種し、ディクソン寒天培地にて3日間培養を行い、酵母様真菌からなるコロニーを単離した。ディクソン寒天培地は、酵母エキス3.6質量%、ペプトン0.6質量%、オキシビル2.0質量%、ポリエチレン(20)ソルビタンモノパルミタート(Tween(登録商標)40)1.0質量%、グリセロール0.2質量%、オレイン酸0.2%質量、寒天1.5質量%であり、いずれも和光純薬工業株式会社製を用いた。
単離した菌株イ~ニのコロニーをとり、蒸留水に混ぜ、スライドガラスに塗抹しグラム染色を行い、顕微鏡で菌の形態を確認したところ、マラセチア属真菌に特異的なダルマ状の形態が確認できたことから、菌株イ~ニはマラセチア属真菌属(Malassezia sp.)であることを確認した。
クロラムフェニコール0.05質量%とシクロヘキシミド0.05質量%を添加した約120℃15分間、1気圧のオートクレーブにて滅菌したサブロー寒天培地(関東化学株式会社製)にクロラムフェニコール0.05質量%及びシクロヘキシミド0.05質量%も添加した培地16mlを約60℃まで冷却した後、105cfu/mlに調節した菌株イ~ハの菌液2mlを混合し、シャーレに注入した。菌液を混合しサブロー寒天培地が固化した後、培地に直径約2mmの穴を4ヶ所空け、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20、和光純薬株式会社製)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミタート(Tween40、和光純薬株式会社製)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween60、和光純薬株式会社製)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween80、和光純薬株式会社製)を5μlずつ注入し、32℃で7日間培養したところ、培地全体に一様にコロニーが出現した。以上より、単離した菌株イ~ハは生理学的にマラセチア パチデルマチス(Malassezia pachydermatis)であることが判明した。
遺伝子学的に菌種とその型を明らかにするために、酵母菌ゲノムのIGS(Intergenic spacer 1)領域を、PCR法を用いて遺伝子増幅した。シークエンス解析結果をSugita Tらの報告(DNA sequence diversity of intergenic spacer 1 region in the non-lipid-dependent species Malassezia pachydermatis isolated from animals. Med Mycol. 43(1):21-6.2005)に合わせて比較した結果、菌株イ~ハはいずれも配列において、430―449bpの領域に(CAGCA)の繰り返し配列が4回以上認められず、602bp-623bpの領域に(CAGCATAACATAACACACAACA)の配列があったことからグループ3であるとし、配列の相当性から3D型であるとした。3D型はイヌアトピー性皮膚炎の症例に由来が多い型として報告されている(Kobayashi Tら、Genotyping of Malassezia pachydermatis isolated from canine health skin and atopic dermatitis by internal spacer 1 (IGS1) region analysis. Veterinary Dermatology. 22(5):401-5. 2011)。
約115℃ 15分間、1気圧のオートクレーブにて滅菌したディクソン寒天培地を約60℃まで冷却した後、培地16mlと105cfu/mlに調節した菌株イ~ハの菌液2mlを混合して、シャーレに注入した。ディクソン寒天培地が固化した後、培地の中央部に直径約2mmの穴を1ヶ所空け、滅菌蒸留水で100倍に希釈したミコナゾール硝酸塩 0.02g/mlとクロルヘキシジングルコン酸塩0.02g/mlを含む抗真菌薬剤シャンプー溶液(マラセブ(登録商標)、キリカン洋行)を5μl注入し、32℃で7日間培養したところ、菌株イ、ハは、抗真菌薬剤溶液を注入した穴の周囲は菌が生育せず阻止円が確認できたが、菌株ロは阻止円が確認できなかったことから、菌株イ、ハは抗真菌薬剤耐性がなく、菌株ロは抗真菌薬剤耐性を有することが確認できた。
菌株イ~ニを、ディクソン寒天培地で1週間、37℃で培養し、直径2mmのコロニー1つを生理食塩水で洗浄した後、遠心分離を行い、上清を捨てた。残った菌株イ~ニにそれぞれ試料2を加えて懸濁し、37℃で24時間静置培養した後、培養液をディクソン寒天培地に播種し、37℃で1週間培養した。
試料2がマラセチア属真菌に与える影響を遺伝子レベルで確認するために、マラセチア属真菌の全RNAシークエンス解析を行った。
ディクソン寒天培地で1週間、37℃で培養した菌株ロの直径2mmのコロニーを1つ、白金耳で釣菌して1mlの生理食塩水に混濁させた。マッシャーでやさしくすりつぶして1菌となるように菌を分離した後、遠心分離を行い、上清を捨てた。残った菌株ロに試料2を加えて懸濁し、37℃で24時間静置培養した。培養液をディクソン寒天培地に播種し、37℃で1週間培養して得られた直径2mmのコロニーを形成する菌を試験菌とした。尚、試験菌をディクソン寒天培地で培養すると、試験例3と同様に菌コロニーの周囲の培地が透明化した。
比較品1(蒸留水)を用い、それ以外は試験菌と同様の方法で比較菌を得た。尚、比較菌をディクソン寒天培地で培養すると、試験例3と同様に菌コロニーの周囲の培地に変化はなかった。
試験菌及び比較菌について、市販のRNA抽出キットであるヌクレオスピン(登録商標)RNAプラス(タカラバイオ株式会社製)及びイーストプロセッシングリージェント(タカラバイオ株式会社製)を用いてRNAを抽出した。RNAの抽出方法はRNA抽出キットの使用方法に従って行った。抽出したRNAを株式会社アプロサイエンス(徳島県)に依頼してRNA解析を行った。
Claims (5)
- 次の成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)及び水
(A)陽イオン
(B)陰イオン
(C)メタケイ酸
(D)メタホウ酸
を含有する液状体であって、
成分(A)としてナトリウムイオン及びカルシウムイオンを含有し、
該液状体1kg当たり、ナトリウムイオンの含有量は下限値1g、上限値10gであり、
カルシウムイオンの含有量は下限値1g、上限値10gであり、
成分(B)として塩素イオンを含有し、
該液状体1kg当たり、塩素イオンの含有量は下限値2g、上限値25gであり、
成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)との合計含有量が、該液状体1kg当たり、下限値5g、上限値120gであることを特徴とする、
マラセチア属真菌数を減少させることによりマラセチア属真菌を原因とするヒト以外のほ乳動物の皮膚疾患の予防・改善剤。 - 前記液状体1kg当たり、ナトリウムイオンの含有量は下限値1.5g、上限値9g、カルシウムイオンの含有量は下限値1.5g、上限値9g、塩素イオンの含有量は下限値4g、上限値20gであることを特徴とする請求項1記載の予防・改善剤。
- 前記液状体1kg当たり、成分(C)の含有量は下限値0.01g、上限値2gであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の予防・改善剤。
- 前記液状体1kg当たり、成分(D)の含有量は下限値0.01g、上限値2gであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の予防・改善剤
- 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の皮膚疾患の予防・改善剤を皮膚に接触させることを特徴とするヒト以外のほ乳動物のマラセチア属真菌を原因とする皮膚疾患の予防・改善方法。
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