第1の発明は、圧電素子と、前記圧電素子と積層された厚さ適正化部材とからなり、前記厚さ適正化部材の音響インピーダンスは、前記圧電素子の1/20倍以上、2.5倍以下であり、前記圧電素子と前記厚さ適正化部材の厚さの合計が、圧電素子の振動数と音速から計算される波長の略1/2である超音波センサーである。
以下に示す通り、厚さ適正化部材を用いることにより、高効率で超音波の送受信が可能となる。
まず、超音波センサーが高効率で作用する場合は、圧電素子が高効率で振動する場合である。
一般に、圧電素子の振動は、弦の定常波のように、スケール(例えば、棒状物質の場合は長さ、板状物質の場合は厚さである)が波長の1/2の整数倍の場合に最も高効率となる。
物質の音速は、振動数(周波数)と波長の積であることから、これらの3つの値のうち、2つが定まれば、他の1つが定まる。ここで、物質の音速はぞれぞれ固有の値であることから、振動数と波長のいずれか一方が定まれば、他の一方は自ずと定まることになり、超音波センサーの送受信の振動数を規定して用いる場合、振動数を定めることに相当する。従って、この場合、音速と振動数のいずれもが定まることになり、自ずと波長(従って波長の1/2)の値が決定する。
従って、圧電素子を高効率で振動させるためには、そのスケールを上記にて決定する値とすればよい。しかし、圧電素子は大型化が困難であることや、高価であることを考慮すると、圧電素子のスケールを波長の1/2とすることは必ずしも容易ではない。
そこで、圧電素子の音響インピーダンスの1/20以上、2.5倍以下である厚さ適正化部材を用いることによりこれらのスケールの合計が波長の1/2となるように圧電素子を作製することにより、高効率で送受信可能な超音波センサーを得ることができる。
第2の発明は、第1の発明において、更に超音波の放射面側に音響整合層が積層されている超音波センサーである。
以下に示す通り、圧電素子或いは厚さ適正化部材の少なくとも一方に、音響整合層が積層されていることにより、高効率で送受信が可能な超音波センサーを得ることができる。圧電素子から気体へ高効率で超音波を伝播するため、音響インピーダンスが圧電素子の音響インピーダンスより小さく、気体の音響インピーダンスより大きい音響整合層が用いられている。
しかし、最も効率よく超音波が伝播するためには、音響整合層の音響インピーダンスは圧電素子の音響インピーダンスの2.5桁程度小さくする必要がある。
しかし、音速と密度の積である音響インピーダンスを小さくするためには、音速は物質固有の値であるため小さくすることは困難であることを考慮すると、密度を小さくする必要がある。この場合、音響整合層は99%以上空隙となることにより、強度が確保できないとう問題がある。
従って、音響整合層の強度を確保するため、最も効率よく超音波が伝播する音響インピーダンスより伝播効率は劣るものの、強度を確保するため、より密度が大きい音響整合層
を用いることができれば、超音波センサーの信頼性確保に有効である。
ここで、圧電素子は、厚さ適正化部材により、高効率で振動するため、音響整合層を経て気体へ伝播する効率が低下しても充分な送受信特性を有するセンサーを得ることができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記厚さ適正化部材の音響インピーダンスは、前記圧電素子の音響インピーダンスより小さい超音波センサーである。
以下に示す通り、音響整合層を用いずとも、高効率で送受信を行うことが可能な超音波センサーを得ることができる。
圧電素子と気体間の超音波の伝達効率は、それらの音響インピーダンスが近い程向上する。ここで、厚さ適正化部材の音響インピーダンスが圧電素子の音響インピーダンスより小さいことから、厚さ適正化部材を気体へ超音波を伝達させる面とすることで、あたかも圧電素子の音響インピーダンスが厚さ適正化部材の音響インピーダンスであるかのような特性を有する超音波センサーを得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における超音波センサーの断面を示す模式図、図2は圧電素子と厚さ適正化部材を接合した部材及び、波長との相関を示す模式図である。
図1において、超音波センサー1は、圧電素子2、厚さ適正化部材3、ケース4、音響整合層5からなる。
以下、実施の形態1における超音波センサーの動作を説明する。
圧電素子2はセラミックスからなる板状の部材であり、対向する面(図における上下)に電極6a,6bが形成されている。厚さ適正化部材3は金属からなる板状の部材であり、導電性接着剤(図示せず)により一方の面が圧電素子の電極6a、他方の面がケース4に接合されている。
ケース4は底板4bを有する金属製の容器であり、上板4aの一方の面(内側の面)が厚さ適正化部材3、他方の面(外側の面)がエポキシ系接着剤(図示せず)により音響整合層5に接合されている。従って、ケース4は電極6aと導通している。
更に、底板4bには電極ピン7a、電極6bには電極ピン7bが接続されている。
そして、電極ピン7a,7bより交流電圧を印加すると、圧電素子2は交流の周波数と同一の周波数で伸張と短縮を繰り返すことにより超音波が発生する。超音波は、音響インピーダンスの違いが大きい物質間では反射し、音響インピーダンスの違いが小さい物質間で透過する性質を有している。従って、圧電素子2にて発生した超音波は、厚さ適正化部材3を接合していない面で反射し、厚さ適正化部材3へ伝播し、更に、ケース4を透過し、ケース4と気体の間で反射する。
従って、超音波は圧電素子2、厚さ適正化部材3、ケース4間のそれぞれを透過し、圧電素子と気体の界面、ケース4と気体の界面で反射するのであるから、図2に示す通り、
あたかも同一の部材であるかのように扱うことができる。
ここで、物質に生じた振動が維持されるためには、振動が定常波であることが必要であり、定常波が存在する物質のスケールは、波長の1/2の整数倍である必要があることから、圧電素子2と厚さ適正化部材3の厚さの合計が、波長の1/2倍となるように設計した。
なお、ケース4の厚みが厚さ適正化部材3の厚みに比べて極薄い場合(例えば、後述する圧電素子の厚み3.8mmに対して、ケースの厚みが0.1~0.2mm程度の場合)には、ケース4の厚みは無視して扱うことができる。また、ケース4の厚みが厚さ適正化部材3の厚みに比べて無視できない程大きい場合は、圧電素子2とケース4と厚さ適正化部材3のそれぞれの厚みの合計が波長の1/2となるように設定することで同様の効果を得ることができる。
また、圧電素子2と厚さ適正化部材3の厚さの合計が2/2倍、3/2倍等の場合であっても高効率の超音波センサーを得ることができるが、高弾性の材料であるセラミックスからなる圧電素子や、同様に高弾性の材料である金属からなる厚さ適正化部材であっても僅かに超音波減衰することから、上記の通り、1/2倍において最大の効率を有する超音波センサーを得ることができる。
ここで、スケールとは超音波が伝播する物質の大きさを特徴づける大きさであり、例えば板状物質であれば、その厚さを示し、棒状材料であればその長さを示す。板状材料とは、3次元方向の内、一次元方向のスケールが他の2次元方向のスケールに比較して著しく小さいという特徴を有する材料であり、棒状材料とは、3次元方向の内、一次元方向のスケールが他の2次元方向のスケールに比較して著しく小さいという特徴を有する材料である。また、定常波とは、一定の位置で振動しているようにみえる波を示す。
本実施の形態では、圧電素子としてセラミックスを用いたが、セラミックに限定するものではなく、金属等であってもよい。
そして、厚さ適正化部材3を用いることにより、圧電素子の厚さが波長の1/2より小さい場合であっても、高効率で超音波を発生させることができる。これにより、波長の1/2と同一の厚さの圧電素子の作製が困難な場合であっても、高効率で超音波の送受信が可能なセンサーを得ることが可能になる。
更に、高価な材料である圧電素子の使用量を低減させることにより、超音波センサーを安価に得ることも可能になる。
また、図3に示す超音波センサー10のように、圧電素子2の一方の電極6aをケース4の内側の面に接合し、他方の電極6bに厚さ適正化部材3を接合しても、同様の効果を得ることができる。
(実施の形態2)
図4は実施の形態2における超音波センサー20の模式図である。
実施の形態1では圧電素子2、厚さ適正化部材3、ケース4の順に配置した。この順序において圧電素子2に電圧を印加するために、厚さ適正化部材3として金属を用いたが、本実施の形態では、図4に示すように、圧電素子2、ケース4、厚さ適正化部材3の順に配置している。この場合、圧電素子2の電極6aとケース4とが導電性接着剤(図示せず)により接合されて電気回路が形成される。
従って、厚さ適正化部材3は導電体である金属に限定するものではなく、セラミックスや樹脂を用いることも可能である。樹脂の場合、金属に比較して超音波が伝播し難い特性を有するため、高弾性のものが望ましい。高弾性の樹脂としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂等が望ましい。更に、弾性率を向上するため、ガラス繊維や炭素繊維等により強化したものであってもよい。
以下、実施の形態2における超音波センサー20の動作を説明する。
圧電素子2はセラミックスからなる板状の部材であり、対向する面(図における上下)に電極6a,6bが形成されており、電極6aが導電性接着剤(図示せず)により、ケース4の内側の面に接合されている。
厚さ適正化部材3は樹脂からなる板状の部材であり、エポキシ系の接着剤(図示せず)によりケース4の外側の面に接合されている。
ケース4は底板4bを有する金属製の容器である。更に、底板4bには電極ピン7a、電極6bには電極ピン7bが接続されている。
そして、電極ピン7a,7bより交流電圧を印加すると、圧電素子2は交流の周波数と同一の周波数で伸張と短縮を繰り返すことにより超音波が発生する。超音波は、音響インピーダンスの違いが大きい物質間では反射し、音響インピーダンスの違いが小さい物質間で透過する性質を有している。従って、圧電素子2にて発生した超音波は、厚さ適正化部材3を接合していない面で反射し、厚さ適正化部材3へ伝播し、更に、ケース4を透過し、ケース4と気体の間で反射する。
ここで、物質に生じた振動が維持されるためには、振動が定常波であることが必要であり、定常波が存在する物質のスケールは、波長の1/2の整数倍である必要があることから、圧電素子2と厚さ適正化部材3の厚さの合計が、波長の1/2倍となるように設計した。
実施の形態2において、厚さ適正化部材3は樹脂であるため、圧電素子に比較して音響インピーダンスが小さく、弾性率が高いエンジニアリングプラスチックにおいて1/8から1/10程度である。従って、金属やセラミックスに比較して圧電素子との音響インピーダンスの違いが大きく、圧電素子2と厚さ適正化部材3の界面での超音波の反射が生じ、幾分効率が低下する。
一方、樹脂は音響インピーダンスが小さいため、気体との界面での反射が少なくなる。圧電素子2の音響インピーダンスに比較して厚さ適正化部材3の音響インピーダンスが1/20以上であれば、前者に比較して後者の効果が大きいため、圧電素子2で発生した超音波の気体への伝達効率が向上する。
以上の通り、実施の形態2では圧電素子2に対して、厚さ適正化部材の3の音響インピーダンスが小さいことにより、空気へ振動を効率的に伝播することが可能となるため、金属性であるために厚さ適正化部材より音響インピーダンスが大きいケース4は、圧電素子2と厚さ適正化部材3の間にあることが望ましい。
一方、ケース4として、導電性樹脂等を用いた場合は、圧電素子2、厚さ適正化部材3、ケース4の順に配置しても、効率的に超音波を伝播することができる。
そして、厚さ適正化部材を用いることにより、圧電素子の厚さが波長の1/2より小さい場合であっても、高効率で超音波を発生させることができる。これにより、波長の1/2と同一の厚さの圧電素子の作製が困難な場合であっても、高効率で超音波の送受信が可能なセンサーを得ることが可能になる。
更に、高価な材料である圧電素子の使用量を低減させることにより、超音波センサーを安価に得ることも可能になる。
更に、実施の形態2では音響整合層を用いないため、より安価に超音波センサーを得ることができる。
以下、実施例により、本発明を更に詳しく説明する。実施例では超音波センサーの特性の評価指標として、超音波センサーを対にして大気中で100mm離して設置し、一方の超音波センサーから発した超音波(発振周波数は500kHz)が、他方の超音波センサーに伝播して起電力が発生するようにする。更に、オシロスコープによりこの起電力を測定することにより、超音波センサーの特性が明らかとなる。
(実施例1)
実施の形態1において、下記の通り評価を行った。
圧電素子として、厚さ3mm、直径10mmの円板状のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。チタン酸ジルコン酸鉛の音速は3800mmであることから、厚さ方向が波長の1/2となる厚さは3.8mmである。従って、厚さ適正化部材は厚さ0.8mmのものが必要であることから、厚さ0.8mm、直径10mmの円板状のアルミニウムを用いた。
圧電素子の密度は、7.7g/cm3であることから、音響インピーダンスは29.2×105g/(cm2・s)、アルミニウムの密度は2.7g/cm3、音速は6420m/sであることから、音響インピーダンスは17.3×105g/(cm2・s)である。従って、音響インピーダンスの比は0.59である。
音響整合層としてポリメタクリルイミド樹脂の独立気泡発泡させたものを厚さ適正化部材に積層して作製した。密度を測定したところ0.07g/cm3であった。音響整合層の音速を測定したところ、1600m/sであった。音響整合層の厚さが波長の1/4倍の場合に最も伝播効率が高くなることから、厚さは0.8mmとした。
上記の通り作製した超音波センサーの特性を評価した結果、起電力は150mVであった。
(実施例2)
実施の形態1において、下記の通り評価を行った。
圧電素子として、厚さ3mm、直径10mmの円板状のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。チタン酸ジルコン酸鉛の音速は3800mmであることから、厚さ方向が波長の1/2となる厚さは3.8mmである。従って、厚さ適正化部材は厚さ0.8mmのものが必要であることから、厚さ0.8mm、直径10mmの円板状のチタンを用いた。
圧電素子の密度は、7.7g/cm3であることから、音響インピーダンスは29.2×105g/(cm2・s)、チタンの密度は4.5g/cm3、音速は6000m/s
であることから、音響インピーダンスは27.0×105g/(cm2・s)である。従って、音響インピーダンスの比は0.91である。
音響整合層としてポリメタクリルイミド樹脂の独立気泡発泡させたものを厚さ適正化部材に積層して作製した。密度を測定したところ0.07g/cm3であった。音響整合層の音速を測定したところ、1600m/sであった。音響整合層の厚さが波長の1/4倍の場合に最も伝播効率が高くなることから、厚さは0.8mmとした。
上記の通り作製した超音波センサーの特性を評価した結果、起電力は180mVであった。
(実施例3)
実施の形態1において、下記の通り評価を行った。
圧電素子として、厚さ3mm、直径10mmの円板状のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。チタン酸ジルコン酸鉛の音速は3800mmであることから、厚さ方向が波長の1/2となる厚さは3.8mmである。従って、厚さ適正化部材は厚さ0.8mmのものが必要であることから、厚さ0.8mm、直径10mmの円板状のステンレスを用いた。
圧電素子の密度は、7.7g/cm3であることから、音響インピーダンスは29.2×105g/(cm2・s)、ステンレスの密度は7.8g/cm3、音速は6000m/sであることから、音響インピーダンスは27.0×105g/(cm2・s)である。従って、音響インピーダンスの比は1.58である。
音響整合層としてポリメタクリルイミド樹脂の独立気泡発泡させたものを厚さ適正化部材に積層して作製した。密度を測定したところ0.07g/cm3であった。音響整合層の音速を測定したところ、1600m/sであった。音響整合層の厚さが波長の1/4倍の場合に最も伝播効率が高くなることから、厚さは0.8mmとした。
上記の通り作製した超音波センサーの特性を評価した結果、起電力は200mVであった。
(実施例4)
実施の形態2において、下記の通り評価を行った。
圧電素子として、厚さ3mm、直径10mmの円板状のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。チタン酸ジルコン酸鉛の音速は3800mmであることから、厚さ方向が波長の1/2となる厚さは3.8mmである。従って、厚さ適正化部材は厚さ0.8mmのものが必要であることから、厚さ0.8mm、直径10mmの円板状のPEEK樹脂を用いた。
圧電素子の密度は、7.7g/cm3であることから、音響インピーダンスは29.2×105g/(cm2・s)、PEEK樹脂の密度は1.3g/cm3、音速は2500m/sであることから、音響インピーダンスは3.25×105g/(cm2・s)である。従って、音響インピーダンスの比は0.11である。
上記の通り作製した超音波センサーの特性を評価した結果、起電力は43mVであった。
音響整合層を用いていないにも関わらず、比較的高い起電力が得られた要因は、次の通りである。圧電素子と厚さ適正化部材の音響インピーダンスの比は0.11であり比較的
大きいため、これらの界面では幾分の超音波の反射がある一方、厚さ適正化部材の音響インピーダンスは、金属やセラミックスの音響インピーダンスに比較して小さい。このため、音響インピーダンスが非常に小さい空気との界面での超音波の反射が小さく押さえられたためである。即ち、厚さ適正化部材の音響インピーダンスが圧電素子の音響インピーダンスよりも小さい場合、圧電素子による伝播効率の低減を厚さ適正化部材により補うことができたためであり、言うなれば、厚さ適正化部材が音響整合層としての機能も発現したためである。
(実施例5)
実施の形態2において、下記の通り評価を行った。
圧電素子として、厚さ3mm、直径10mmの円板状のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。チタン酸ジルコン酸鉛の音速は3800mmであることから、厚さ方向が波長の1/2となる厚さは3.8mmである。従って、厚さ適正化部材は厚さ0.8mmのものが必要であることから、厚さ0.8mm、直径10mmの円板状のPEEK樹脂にフィラーとしてガラス繊維を添加したものを用いた。
圧電素子の密度は、7.7g/cm3であることから、音響インピーダンスは29.2×105g/(cm2・s)、PEEK樹脂の密度は1.5g/cm3、音速は2500m/sであることから、音響インピーダンスは3.75×105g/(cm2・s)である。従って、音響インピーダンスの比は0.13である。
上記の通り作製した超音波センサーの特性を評価した結果、起電力は45mVであった。
音響整合層を用いていないにも関わらず、比較的高い起電力が得られた要因は、実施例4と同様である。実施例5と比較すると僅かな起電力の差があるが、この差は特に有意なものではないと考える。
(実施例6)
実施の形態2において、下記の通り評価を行った。
圧電素子として、厚さ3mm、直径10mmの円板状のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。チタン酸ジルコン酸鉛の音速は3800mmであることから、厚さ方向が波長の1/2となる厚さは3.8mmである。従って、厚さ適正化部材は厚さ0.8mmのものが必要であることから、厚さ0.8mm、直径10mmの円板状のPEEK樹脂を用いた。
圧電素子の密度は、7.7g/cm3であることから、音響インピーダンスは29.2×105g/(cm2・s)、PEEK樹脂の密度は1.3g/cm3、音速は2500m/sであることから、音響インピーダンスは3.25×105g/(cm2・s)である。従って、音響インピーダンスの比は0.11である。
更に、音響整合層としてポリメタクリルイミド樹脂の独立気泡発泡させたものを厚さ適正化部材に積層して作成した。音速を測定したところ、1600m/sであった。密度を測定したところ0.1g/cm3であった。音響整合層の厚さが波長の1/4倍の場合に最も伝播効率が高くなることから、厚さは0.8mmとした。これらから計算される音響インピーダンスは、0.16×105g/(cm2・s)である。
上記の通り作製した超音波センサーの特性を評価した結果、起電力は120mVであった。
実施例4と比較すると起電力が大幅に大きくなっていることが判る。これは、音響整合層の音響インピーダンスが厚さ適正化部材の1/20程度と小さいため、厚さ適正化部材と空気のインピーダンスの違いによる反射を更に低減されたためである。
(実施例7)
実施の形態2において、下記の通り評価を行った。
圧電素子として、厚さ3mm、直径10mmの円板状のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。チタン酸ジルコン酸鉛の音速は3800mmであることから、厚さ方向が波長の1/2となる厚さは3.8mmである。従って、厚さ適正化部材は厚さ0.8mmのものが必要であることから、厚さ0.8mm、直径10mmの円板状のPEEK樹脂を用いた。
圧電素子の密度は、7.7g/cm3であることから、音響インピーダンスは29.2×105g/(cm2・s)、PEEK樹脂の密度は1.3g/cm3、音速は2500m/sであることから、音響インピーダンスは3.25×105g/(cm2・s)である。従って、音響インピーダンスの比は0.11である。
更に、音響整合層としてポリメタクリルイミド樹脂の独立気泡発泡させたものを厚さ適正化部材に積層して作成した。音速を測定したところ、1600m/sであった。密度を測定したところ0.07g/cm3であった。音響整合層の厚さが波長の1/4倍の場合に最も伝播効率が高くなることから、厚さは0.8mmとした。密度と音速から計算される音響インピーダンスは、0.11×105g/(cm2・s)である。
上記の通り作製した超音波センサーの特性を評価した結果、起電力は150mVであった。
実施例6と比較すると起電力が大きくなっていることが判る。これは、音響整合層の音響インピーダンスが厚さ適正化部材の1/30程度と小さいため、厚さ適正化部材と空気のインピーダンスの違いによる反射の低減高価が高まったためである。
(実施例8)
実施の形態2において、下記の通り評価を行った。
圧電素子として、厚さ3mm、直径10mmの円板状のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。チタン酸ジルコン酸鉛の音速は3800mmであることから、厚さ方向が波長の1/2となる厚さは3.8mmである。従って、厚さ適正化部材は厚さ0.8mmのものが必要であることから、厚さ0.8mm、直径10mmの円板状のPEEK樹脂を用いた。
圧電素子の密度は、7.7g/cm3であることから、音響インピーダンスは29.2×105g/(cm2・s)、PEEK樹脂の密度は1.3g/cm3、音速は2500m/sであることから、音響インピーダンスは3.25×105g/(cm2・s)である。従って、音響インピーダンスの比は0.11である。
更に、音響整合層としてポリメタクリルイミド樹脂の独立気泡発泡させたものを厚さ適正化部材に積層して作成した。音速を測定したところ、1600m/sであった。密度を測定したところ0.05g/cm3であった。音響整合層の厚さが波長の1/4倍の場合に最も伝播効率が高くなることから、厚さは0.8mmとした。これらから計算される音響インピーダンスは、0.08×105g/(cm2・s)である。
上記の通り作製した超音波センサーの特性を評価した結果、起電力は200mVであった。
実施例7と比較すると起電力が大きくなっていることが判る。これは、音響整合層の音響インピーダンスが厚さ適正化部材の1/40程度と小さいため、厚さ適正化部材と空気のインピーダンスの違いによる反射の低減高価が高まったためである。
更に、実施例1と実施例7を比較すると、厚さ適正化部材の音響インピーダンスが5倍程度と大きく異なるのに対し、起電力が同一になっており、この要因は以下の通り考えられる。
即ち、超音波を発振する強度は、圧電素子と厚さ適正化部材の音響インピーダンスが近いこと、厚さ適正化部材と音響整合層間での超音波の反射が少ないことが必要である。
実施例1では前者の寄与度が大きく、実施例7では後者の寄与度が大きく、それぞれの複合効果においては同一となるためである。
(比較例1)
実施の形態1において、下記の通り評価を行った。
圧電素子として、厚さ3mm、直径10mmの円板状のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。チタン酸ジルコン酸鉛の音速は3800mmであることから、厚さ方向が波長の1/2となる厚さは3.8mmである。従って、厚さ適正化部材は厚さ0.8mmのものが必要であることから、厚さ0.8mm、直径10mmの円板状のタングステンを含む合金を用いた。
圧電素子の密度は、7.7g/cm3であることから、音響インピーダンスは29.2×105g/(cm2・s)、タングステンを含む合金の密度を測定した結果、14.0g/cm3、音速測定した結果、6000m/sであった。従って、音響インピーダンスは84.0×105g/(cm2・s)である。従って、音響インピーダンスの比は2.83である。
音響整合層としてポリメタクリルイミド樹脂の独立気泡発泡させたものを厚さ適正化部材に積層して作製した。密度を測定したところ0.07g/cm3であった。音速を測定したところ、1600m/sであった。音響整合層の厚さが波長の1/4倍の場合に最も伝播効率が高くなることから、厚さは0.8mmとした。
上記の通り作製した超音波センサーの特性を評価した結果、起電力は110mVであった。
実施例1~3、比較例1から次のことが判る。厚さ適正化部材の音響インピーダンスが、圧電素子の音響インピーダンスに近い(比が1程度)か僅かに大きい場合に最も起電力が大きくなる。
この理由は必ずしも明らかではないが、次の通り考えられる。即ち、圧電素子と厚さ適正化部材の音響インピーダンスが同一(比が1)の場合に最も効率よく超音波が発信される。超音波センサーが自由に振動しうる状態(圧電素子と厚さ適正化部材に何も接合されていない状態)とは異なり、厚さ適正化部材には音響整合層が接合されているため、厚さ適正化部材は、圧電素子に比較して振動が抑えられる状態になっている。
ここで、厚さ適正化部材の音響インピーダンスが圧電素子より僅かに大きい場合、音響整合層により振動を抑えられ難くなる(従って、接合されている音響整合層の振動が大きくなり、気体へ伝播する超音波も強くなる)ことにより、最も大きな起電力が得られる。厚さ適正化部材の音響インピーダンスが、最適値を超えて大きくなるため、音響整合層を振動させる効果に比較して、圧電素子の振動を抑える効果が大きくなってしまうことにより、起電力が低減するものと考えられる。
以上から、厚さ適正化部材の音響インピーダンスは、圧電素子の2.5倍以下であることが好ましいと判断できる。
(比較例2)
実施の形態1において、下記の通り評価を行った。
圧電素子として、厚さ3mm、直径10mmの円板状のチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。チタン酸ジルコン酸鉛の音速は3800mmであることから、厚さ方向が波長の1/2となる厚さは3.8mmである。従って、厚さ適正化部材は厚さ0.8mmのものが必要であることから、厚さ0.8mm、直径10mmの円板状のポリアミドを用いた。
圧電素子の密度は、7.7g/cm3であることから、音響インピーダンスは29.2×105g/(cm2・s)、ポリアミドの密度は0.87g/cm3、音速は2200m/sであることから、音響インピーダンスは1.9×105g/(cm2・s)である。従って、音響インピーダンスの比は0.066である。
音響整合層として、ガラスバルーン冶具にガラスバルーンを充填した後にエポキシ溶液を含浸させて120℃で熱硬化させたものを切削して作製したものを用いた。その密度は0.52g/cm3であった。音速は2500m/sであったことから、その厚さを波長の1/4になるよう、1.25mmとした。
上記の通り作製した超音波センサーの特性を評価した結果、起電力は30mVであった。
実施例1と比較して起電力が低減しているが、これは厚適正化部材の音響インピーダンスが小さいため、圧電素子と厚さ適正化部材の界面で超音波の反射が著しくなるためである。
以上から、厚さ適正化部材の音響インピーダンスは、少なくとも圧電素子の1/20倍以上であることが必要であり、本実験において150mV以上の電力が得られた0.59、即ち、約1/2以上であることがより好ましいと判断できる。