上記特許文献1の電動切断工具によれば、パイプを内側から切断することができ、二重パイプの内パイプを切断する場合や切断箇所が埋設されている場合などでも対応することができる。
しかしながら、電動で回転する回転刃が勢い余って切断対象のパイプを突き抜けて当該パイプの外方(例えば二重パイプの外パイプ、埋設モルタル等)を傷付けてしまうおそれがある。
また、回転軸に目盛を付与して回転刃の挿入深さを調整できるとはいえ、回転刃を一定の挿入深さに保持する手段を有していない。よって所望の箇所で切断できないおそれがある。
本発明は、手動によりパイプを内側から切断可能であって、操作性に優れた手動式パイプカッターを提供することを課題としている。
本発明の手動式パイプカッターは、パイプの内周面に対し全体を回転させながら切り込んで、パイプを切断する手動式パイプカッターであって、パイプを内側から切断する切断刃を有する一対の刃部と、一対の刃部を支持すると共に、開閉脚動作により一対の刃部をパイプの径方向に同時に切込み移動させる開閉部と、開閉部を開閉脚動作させるための一対のハンドル部を有する手動操作部と、を備え、一対のハンドル部を握り込むことで、開閉部を介して一対の刃部が切込み移動することを特徴とする。
この構成によれば、手動操作部により開閉部を開閉脚動作させると共に回転操作させると、開閉部を介して、一対の刃部が回転しながらパイプの径方向に切込み移動する。これにより、切断刃がパイプに切り込んでゆき、パイプは内側から切断される。この場合、手動操作部は、パイプカッターの手持ち部分として機能し、また手動操作部により切込み移動と回転操作とが行われる。このため、ハンドリング性が良好なものとなると共に操作性も良好なものとなり、手動により、パイプを内側から簡単に切断することができる。
この場合、開閉部は、先端側で一対の刃部に連なると共に基端側で一対のハンドル部に連なり、相互の係合部において係合する一対の開閉片部と、一対の開閉片部を、相互の係合部において回動自在に軸支する単一の支軸と、を有していることが好ましい。
この構成によれば、単一の支軸を中心に開閉脚動作する一対の開閉片部により、一対の刃部を切込み移動させるようにしているため、パイプに対し、一対の刃部(一対の切断刃)を精度良く切り込ませることができる。また、一対の開閉片部を介して、一対の刃部(切断刃)に均一に開脚力(切込み力)を加えることができる。しかも、単純な構造で、開脚力を効率良く伝達することができる。
この場合、各刃部の基端部および各開閉片部の先端部のいずれか一方には、一対の刃部および一対の開閉片部の中心線に直交し、パイプの管端に突き当てられる突当て面を有する突当て部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、突当て面を基準として、パイプの内周面に対し、一対の刃部を管端と平行に切り込ませることができ、パイプを精度良く直角に切断することができる。また、切断刃と突当て面との間の距離が、パイプの管端からの切断位置までの距離なるため、切断刃と突当て面との間の距離を所望の値に設計しておけば、パイプを管端から所望の位置で精度良く切断することができる。なお、突当て部を、刃部または開閉片部に対し着脱可能とすると共に、厚み(軸方向寸法)の異なる複数種の突当て部を用意しておいて、上記の所望の位置を調整可能としてもよい。同様に、突当て部を軸方向に移動可能に構成し、上記の所望の位置を調整可能としてもよい。
また、開閉部は、先端側で一対の刃部に連なると共に基端側で一対のハンドル部に連なり、背中合せの状態で配設された一対の開閉片部と、一対の開閉片部を、それぞれ回動自在に軸支する一対の支軸と、一対の支軸を介して、一対の開閉片部を保持する開閉片保持部と、を有していることが好ましい。
この構成によれば、開閉片保持部により一対の支軸が位置規制(軸支)され、それぞれの支軸により回動する一対の開閉片部を介して、一対の刃部が切込み移動する。このため、一対の刃部の開き角度を極端に大きくすることなく、パイプに切り込ませることができる。したがって、切断刃と支軸との間の距離が、単一の支軸のものと同等であっても、比較的太径のパイプを適切に切断することができる。
同様に、開閉部は、先端側で一対の刃部に連なると共に基端側で一対のハンドル部に連なり、背中合せの状態で配設された一対の開閉片部と、一対の開閉片部を、それぞれ回動可能に掛け止めする一対の掛止め部と、一対の掛止め部を介して、一対の開閉片部を保持する開閉片保持部と、を有していることが好ましい。
この構成によれば、一対の掛止め部により、一対の開閉片部を介して一対の刃部を切込み移動させるようにしているため、支軸による場合に比して、回動部分をコンパクトで単純な構造とすることができる。また、一対の掛止め部の離間距離を小さくすれば、比較的細径のパイプに対応させることができ、大きくすれば、比較的太径のパイプに対応させることができる。
これらの場合、パイプの外側に間隙を存して配設した外管を更に有し、パイプである内管と外管とを管端を切り揃えた二重管の状態で、パイプの切断が行われ、開閉片保持部は、一対の刃部および一対の開閉片部の中心線に直交し、外管の管端に突き当てられる突当て面と、二重管の間隙に嵌合し、全体の回転をガイドする複数のガイド突起と、を有していることが好ましい。
この構成によれば、開閉片保持部に設けた複数のガイド突起および突当て面により、切り揃えた二重管の管端と平行に一対の刃部(切断刃)を切込み動作させることができ、パイプを精度良く直角に切断することができる。また、切断刃と突当て面との間の距離を所望の値に設計しておけば、パイプを外管の管端から所望の位置で精度良く切断することができる。すなわち、外管の管端を基準として、内管(パイプ)を外管の奥まった所望の位置で精度良く切断することができる。さらに、複数のガイド突起が、管端側から二重管の間隙に嵌合するため、内管と外管とが同軸上に位置した状態(間隙が維持された状態)で内管(パイプ)を切断することができる。このため、内管が完全に切断されたときに、切断刃の刃先が外管の内周面に接触し難く、内管の切断動作において外管を傷つけてしまうのを抑制することができる。
また、一対の開閉片部は、非交差状態となるように配設され、手動操作部は、一対の開閉片部の基端側に連なる一対のハンドル部を有していることが好ましい。
この構成によれば、一対のハンドル部を握ることで、一対の開閉片部を介して一対の刃部を切込み移動させることができ、且つこの状態で、一対のハンドル部を回転操作させることで、切込み移動した一対の刃部をパイプの内周面に切り込ませることができる。したがって、単純な構造で、パイプを無理なく簡単に切断することができる。
この場合、開閉部は、一対の刃部における切込み移動の終端を規制する開脚規制部を有していることが好ましい。
この構成によれば、パイプの切断完了時における一対の刃部(切断刃)の切込み端位置を規制することができる。このため、パイプの切断完了直前において、一対のハンドル部の握り加減を調整する必要がなく、一対のハンドル部を強く握ったままパイプの切断を行うことができる。
また、手動操作部は、グリップ部と、グリップ部と一対の開閉片部との間に介設され、グリップ部の押圧動作を一対の開閉片部の開脚動作に変換する動作変換部と、を有していることが好ましい。
この構成によれば、動作変換部により、グリップ部を押し込むことで、一対の開閉片部が開脚動作し、一対の刃部を切込み移動させることができる。且つこの状態で、グリップ部を回転操作させることで、切込み移動した一対の刃部(切断刃)をパイプの内周面に切り込ませることができる。したがって、操作性が向上し、パイプを無理なく簡単に切断することができる。なお、グリップ部は、円筒状や半球状等の握り易い(操作し易い)形状とすること、および表面に滑止めを設けることが好ましい。
この場合、動作変換部は、一対の刃部における切込み移動の終端を規制する開脚規制部を有していることが好ましい。
この構成によれば、パイプの切断完了時における一対の刃部の切込み位置を規制することができるため、パイプの切断完了直前において、グリップ部に加える押圧力を手加減する必要がない。
一方、各刃部は、切断刃と、先端部で切断刃を径方向外向きに突設すると共に、基端部で開閉片部に連なる刃部本体と、を有していることが好ましい。
この構成によれば、切断刃を超硬合金等のチップ構成とし、これを刃部本体の先端部にろう付け等で溶着すれば、刃部を安価に構成することができる。一方、超硬合金等により切断刃および刃部本体を一体に形成することで、切断刃の強度アップを図ることができる。
この場合、刃部本体は、開閉片部に着脱可能に取り付けられていることが好ましい。
この構成によれば、切断刃が磨滅或いは刃こぼれしたときに、刃部を開閉片部に対し着脱することで、刃部のみを簡単に交換することができる。
また、切断刃は、径方向先端となる切っ先を頂点とした角錐状に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、パイプに対する切断刃の喰い込みが良好となり、パイプを切れ味良く切断することができる。
この場合、切断刃は、開閉片部側および開閉片部側と逆側のいずれか一方を刃表とする片刃で構成されていることが好ましい。
加えて、切断刃は、前記刃表にすくい面および逃げ面を有することが好ましい。
これらの構成によれば、パイプに対し、回転力と切込み力とを効率良く作用させることができ、パイプを簡単に切断することができる。特に、開閉片部側と逆側を刃表とする片刃では、パイプの切断面(切り残される側のパイプの切断面)に生ずるバリ等を抑制することができる。
また、切断刃は、開閉片部側および開閉片部側と逆側をそれぞれ刃面とする両刃で構成されていることが好ましい。
加えて、切断刃は、前記各刃面にすくい面および逃げ面を有することが好ましい。
これらの構成によれば、パイプに対し、回転力と切込み力とを効率良く作用させることができ、パイプを簡単に切断することができる。また、パイプの切断面(切り残される側のパイプの切断面)に生ずるバリ等を抑制することができる。
一方、一対の刃部を着脱自在に覆う円筒状の保護カバーを、更に備え、且つパイプの外側に間隙を存して配設した外管を更に有し、パイプである内管と外管とを管端を切り揃えた二重管の状態で、パイプの切断が行われ、保護カバーは、パイプの切断に際し、二重管の間隙に嵌合装着されるスペーサーを兼ねていることが好ましい。
この構成によれば、非使用時に手荒に扱うことがあっても、保護カバーにより切断刃の損傷等を防止することができる。また、使用時において、内管が完全に切断されたときに、切断刃の刃先が外管の内周面に接触し難く、内管の切断動作において外管を傷つけてしまうのを抑制することができる。
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る手動式パイプカッターの最良の形態について説明する。本実施形態に係る手動式パイプカッターは、先端部に一対の切断刃を有するペンチ様の形態を有しており、樹脂製のパイプの開口端(管端)から先端側を挿し入れ、基端側を強く握って一対の切断刃をパイプの内周面に食い込ませつつ、全体を回動させてパイプを切断するものである。
<パイプ>
対象となるパイプは、内管と内管の外側に間隙を存して配設した外管とから成るポリブテン等の樹脂製の二重管であり、内管の内部を往流路とし、内管と外管との間隙を返流路とするリバースリターン方式の給湯配管等として用いられる。二重管は、通常の単管と同様に、継手(二重管継手)と継手(二重管継手)とを繋ぐように配管される。本実施形態の手動式パイプカッターは、二重管の一方の端部を一方の二重管継手に接続した後、二重管の他方の端部を他方の二重管継手に接続するときに、二重管継手の接合形態を考慮し、現場合せ的に内管を外管の管端から所定の奥まった位置で切断するものである。
この場合の二重管は、それまでの施工手順の関係で、管端において、内管と外管とが切り揃えられている場合と、内管が外管の奥に没入している(短い)場合とがある。本実施形態の手動式パイプカッターは、いずれの場合でも、内管を外管の管端から所定の奥まった位置で切断することが可能であり、また上記した従来技術のように、コンクリート等に埋設されたパイプの切断にも適用可能である。以降の説明では、内管と外管とが切り揃えられている場合を例に説明を進める。なお、以降の説明において、「パイプ」の語は、断りの無い限り「内管」のことである。
<第1実施形態の基本構成>
図1および図2に示すように、本実施形態に係る手動式パイプカッター10Aは、パイプPaを内側から切断する切断刃12を有する一対の刃部11と、一対の刃部11を、開閉脚動作によりパイプPaの径方向に切込み移動(食い込ませる)させる開閉部13と、開閉部13を開閉脚動作させると共に回転操作するための手動操作部14と、を備えている。詳細は後述するが、開閉部13は、一対の刃部11に連なる一対の開閉片部21を有し、手動操作部14は、一対の開閉片部21に連なる一対のハンドル部36を有している。
一対のハンドル部36を持って、一対の刃部11を管端からパイプPaに挿入した後、一対のハンドル部36を強く握り、一対の開閉片部21を介して一対の刃部11を開くように移動させて一対の切断刃12をパイプPaに食い込ませると共に、全体を回転させることで、パイプPaが内側から切断される。
開閉部13は、先端側で一対の刃部11に連なると共に基端側で手動操作部14(一対のハンドル部36)に連なり、相互の係合部22において係合する一対の開閉片部21と、一対の開閉片部21を、相互の係合部22において回動自在に軸支する単一の支軸23と、を有している。この場合、一方の刃部11は一方の開閉片部21に取り付けられ、先方に延在している。同様に、他方の刃部11は他方の開閉片部21に取り付けられ、先方に延在している。そして、相互の係合部22は、支軸23の軸受け部として機能している。
一対の開閉片部21は、スチールやステンレススチール等の金属で構成され、相互の係合部22において、非交差状態となるように配設されている。すなわち、一対の開閉片部21は、従来のペンチやニッパーのように開閉部分が互いに交差して軸支されているのではなく、交差せずに軸支されている。
具体的には、図3に示すように、一方の開閉片部21の係合部22には、厚み方向の一方の半部に半円状の凸部22aが形成され、他方の半部に半円状の凹部22bが形成されている。これに対応して、他方の開閉片部21の係合部22には、厚み方向の一方の半部に半円状の凹部22bが形成され、他方の半部に半円状の凸部22aが形成されている。この半円状の凹部22bと半円状の凸部22aとは相補的な形状を為し、支軸23の取付け部位を構成すると共に支軸23を中心とする一対の開閉片部21の回動(開閉脚動作)を許容する。
また、2つの係合部22の凹部22bおよび凸部22aと同軸上において、厚み方向に貫通するように軸受孔22cが形成され、この軸受け孔22cに支軸23が装着されている。支軸23は、例えば六角穴付きのボルト25と、角穴付きのボルト25に螺合したダブルナット26(止めナット)と、で構成されている。一対の開閉片部21が、この支軸23を中心に相互に正逆回動(開閉脚動作)することにより、一対の開閉片部21から延びる一対の刃部11も開閉動作する。
また、図1(A)および図2に示すように、開閉部13の基端側には、一対の刃部11(一対の切断刃12)における切込み移動の終端を規制する開脚規制部27を有している。一対の開閉片部21の両内面は、支軸23を中心から所定の拡開角度でハンドル部36に向かう一対の斜面27aとなっており、この両斜面27aの部分に開脚規制部27が構成されている。すなわち、支軸23を境に各開閉片部21の先端部側の内面と基端部側の内面(斜面27a)との交差角度が鈍角となるように形成されており、この鈍角の角度によって一対の開閉片部21及び一対の刃部11の開き角度θが規制されている(図2参照)。
これにより、一対の刃部11における切込み移動の終端、具体的には両切断刃12の切っ先の外側への移動端位置が規制される。したがって、パイプPa(内管Pa)を切り終えたときに、切断刃12の切っ先が過剰に切り込まれて、外管Pbの内周面に接触するのを防止することができる。また、パイプPaを切り終えたときの切断刃12は、切り離された内管Pa(パイプPa)を外管Pbから引き出すための引っ掛かり部位としても機能する。
一方、図4に示すように、各開閉片部21の先端部の内側には、各刃部11をねじ止めするための、長溝状の抱持部31が形成されている。抱持部31は、断面「U」字状に形成され、開閉片部21の先端から係合部22の手前近傍まで延びている。すなわち、一対の開閉片部21の抱持部31は、その開口部分が対面するように設けられ且つ前後方向に延在している。そして、刃部11の基端部は、その内側の面が開閉片部21の内面と面一となるように抱持部31に嵌合し、この状態で開閉片部21の外側からねじ込んだ2本の固定ボルト32により、開閉片部21に固定されている。
すなわち、刃部11は、開閉片部21に対し着脱可能に取り付けられている。これにより、刃部11は、開閉片部21の外側からの固定ボルト32の操作により、容易に脱着することができる。よって、切断刃12が摩耗或いは刃こぼれしたときには、刃部11ごと交換することができる。なお、抱持部31は、刃部11と開閉片部21との接合強度を高めるべく、その断面をあり溝形状としてもよい。
図1および図2に示すように、開閉部13(一対の開閉片部21)の先端は、開閉部13の中心線に直交し且つパイプPaの直径より長い寸法の突当て面34を構成している。すなわち、各開閉片部21の先端部には、一対の刃部11および一対の開閉片部21の中心線に直交し、パイプPaの管端に突き当てられる突当て面34を有する突当て部33が設けられている。
この場合、一対の刃部11をパイプPaに挿入すると、この突当て面34がパイプPaの管端に当接する(図7参照)。これにより、パイプPaの管端から切断刃12までの距離、すなわちパイプPaの管端からの切断位置が規制される。さらに、この状態で手動式パイプカッター10Aを回転させることにより、パイプPaが管端と平行(軸線に直交)に切断される。なお、突当て面34は、外管Pbに優先的に突き当たるように形成することが好ましい。
手動操作部14は、一対の開閉片部21の基端側に連なる一対のハンドル部36を有している。一方のハンドル部36と一方の開閉片部21とは、スチールやステンレススチール等の金属で一体に形成されている。同様に、他方のハンドル部36と他方の開閉片部21とは、スチールやステンレススチール等の金属で一体に形成されている。各ハンドル部36は、基端側において外側にわずかに湾曲しており、一対のハンドル部36は、握りを考慮した離間寸法を存して対峙している。そして、手動操作部14は、てこの原理を応用すべく、支軸23と一対のハンドル部36の握り部分との間の距離に比して、支軸23と一対の切断刃12との間の距離を短く形成されている。
上述のように、一対の開閉片部21は、非交差状態となるように配設されている。このため、一対のハンドル部36を握ると、一対の開閉片部21を介して一対の刃部11が開くように動作し、一対の切断刃12が支軸23を中心に外方に移動する(切込み動作)。この状態から、一対のハンドル部36を開くようにすると、一対の刃部11が閉じるように動作し、一対の切断刃12が元の位置に戻る。なお、一対のハンドル部36間に圧縮バネを介設し、一対のハンドル部36が常に開くように付勢してもよい。
<刃部及び切断刃の構成>
各刃部11は、基端部で開閉片部21に取り付けられた刃部本体38と、刃部本体38の先端部に径方向外向きに突設された切断刃12と、を有している。上述のように、刃部本体38は、その基端部において、開閉片部21に着脱可能に取り付けられている。本実施形態の切断刃12と刃部本体38とは、切断刃12の取付け強度等を考慮し、超硬合金等により一体に形成されている。もっとも、刃部本体38をスチール等で形成し、これに超硬合金等で形成したチップ状の切断刃12をろう付け等により固着した構成としてもよい。
刃部本体38は、長板状を呈し、基端部から先端部に近づくにしたがって内面(対向する刃部11との対向面)と外面間の厚みが薄くなる構成となっている。また、切断刃12は、径方向先端となる切っ先(後述する頭頂点45)を頂点とした角錐状(実施形態のものは、四角錐状)に形成され、且つ開閉片部21側を刃表とする片刃で構成されている。この場合、切断刃12が片刃であるため、パイプPaの切断面(切り離されて残った方の切断面)にバリ等が発生するのを抑制することができる。
すなわち、切断刃12の切込み動作は、支軸23を中心とする円運動となるが、切断刃12の切っ先の軌跡に対し、切断刃12の基部の軌跡はその内側となる。このため、切っ先が切り開いた切断面に基部が接触することが無く、切断面にバリ等が発生することが無い。バリは、継手との接続作業に障害となるため、一般的にはバリ取り作業を必要とする。外管Pbの奥に内管Paが位置する本実施形態の場合、バリ取りは不可能に近い。よって、バリ取りを省略することができる切断刃12(片刃)は、極めて有用である。
図5(A)乃至(C)に示すように、切断刃12は、四角錐状(厳密には、変形四角錐)に形成されており、片刃の刃裏側となる刃裏(面)41は、刃部本体38の先端面と面一に且つパイプPaの軸線に直交するように形成されている。一方、切断刃12の刃表側には、回転方向Xに沿って第1角錐面42、第2角錐面43および第3角錐面44を有している。回転方向前方の第1角錐面42は、パイプPaの内周面に対し所定の切込み角となる傾斜面で形成されている。回転方向後方の第3角錐面44は、逃げ角とすべく刃部11の先端部外面に対して垂直面に形成されている。第2角錐面43は、刃裏41に対峙し、傾斜面で形成されている。これにより、切断刃12がパイプPaの内周面に食い込んだ後もスムーズに回転(切込む)できるようにすることが望ましい。
換言すれば、特に図5(C)に示すように、頭頂点45(切っ先)を回転方向後方に設けて、回転方向後方の第3角錐面44を垂直面とし、パイプPaの内周面を切り裂く回転方向前方の第1角錐面42を傾斜面としてスムーズな回転を保障する。なお、第1角錐面42が傾斜面であれば、第3角錐面44が必ずしも垂直面でなくてもよい。
また、切断刃12は、図5(C)に示すように、刃部本位38の先端部外面における回転方向Xの前方側の端部に寄せて設けられている。一対の刃部本位38に同様に切断刃12を設けることにより、一対の刃部本位38の内面同士を対向させた状態では、図5(B)に示すように、二つの切断刃12が回転中心Oを中心としてそれぞれ点対称に配されることとなり、一対の切断刃12を対向しながらバランスよく回転させる(喰い込ませる)ことができる。
また、切断刃12の頭頂点45、すなわちパイプPaの内周面に食い込む切っ先の位置については、切断対象とするパイプPaの内周面に対して略直角に食い込むように、開閉部13及び刃部11の開き角度θや開閉中心(支軸23の中心)からの長さを考慮しながら適宜調整することが望ましい。
<切断刃の変形例>
次に、図6を参照して、切断刃12の変形例について説明する。
図6(A)は、切断刃12の第1変形例であり、この切断刃12では、刃部本体38の先端部において、幅方向に全域に渡って配設されている。また、この切断刃12は、上記の切断刃12と同様に、径方向先端となる頭頂点45(切っ先)を頂点とした角錐状に形成され、且つ開閉片部21側を刃表とする片刃で構成されている。但し、この場合の切断刃12は、全体として三角錐状(厳密には、変形三角錐)に形成されている。具体的には、切断刃12は、刃表側にすくい面47および逃げ面48を有する三角錐状に形成されている
この構成では、すくい面47および逃げ面48により、切断刃12がパイプPaの内周面に円滑に切り込まれてゆく。したがって、パイプPaを、切れ味良く簡単に切断することができる。また、切断刃12が、開閉片部21側を刃表とする片刃で構成されているため、パイプPaの切断面にバリ等が発生するのを抑制することができる。
次に、図6(B)を参照して、切断刃12の第2変形例につき、主に第1変形例と異なる部分について説明する。この切断刃12は、開閉片部21側と逆側を刃表とする片刃で構成され、且つ径方向先端となる頭頂点45(切っ先)を頂点とした三角錐状(厳密には、変形三角錐)に形成されている。すなわち、この切断刃12は、開閉片部21側を刃裏41、開閉片部21側と逆側を刃表とし、その刃表にすくい面47および逃げ面48を有する三角錐状に形成されている。
この構成でも、すくい面47および逃げ面48により、切断刃12がパイプPaの内周面に円滑に切り込まれてゆく。したがって、パイプPaを、切れ味良く簡単に切断することができる。また、切断刃12が、開閉片部21側と逆を刃表とする片刃で構成されているため、パイプPaの切断面にバリ等が発生するのを抑制することができる。
次に、図6(C)を参照して、切断刃12の第3変形例につき、主に第1変形例と異なる部分について説明する。この切断刃12は、開閉片部21側および開閉片部21側と逆側を刃面とする両刃で構成され、且つ径方向先端となる頭頂点45(切っ先)を頂点とした四角錐状(厳密には、変形四角錐)に形成されている。すなわち、この切断刃12は、両刃面にそれぞれすくい面47および逃げ面48を有する四角錐状に形成されている。
この構成でも、各刃面のすくい面47および逃げ面48により、切断刃12がパイプPaの内周面に円滑に切り込まれてゆく。したがって、パイプPaを、切れ味良く簡単に切断することができる。また、切断刃12が、両刃で構成されているため、その強度アップを図ることができると共に、パイプPaの切断面にバリ等が発生するのを抑制することができる。
<切断作業工程>
次に、手動式パイプカッター10AによるパイプPaの切断作業工程について、図7および図8に基づき説明する。なお、図7・図8においては、上述した内管Pa(パイプPa)と外管Pbとを切り揃えた二重管Pにおいて、その内管Paを切断する工程を示しているが、上述の内管Paが外管Pbより短い二重管Pにおいても適用可能である。もっとも、本実施形態にあっては、パイプPaの開口端から内部へ刃部11を挿し入れることができれば、如何ようなパイプPaをも切断できることは言うまでもない。
まず、図7(A)・図8(A)に示すように、切断対象たる二重管Pの内管Pa(パイプPa)の開口端から一対の刃部11を挿し入れる。この際には、図示の如く、突当て部33(突当て面34)が内管Paおよび外管Pbの管端に突き当てられるまで刃部11を挿し入れる。これにより、安定して切断作業を行うことができると共に、突当て部33(突当て面34)がデプスゲージの役割をも果たす。
次いで、図7(B)・図8(B)に示すように、一対のハンドル部36を閉動作(握る)して、一対の開閉片部21および一対の刃部11を開脚動作させる。この状態で、一対のハンドル部36を回転させて、一対の開閉片部21および一対の刃部11を回転操作する(手動式パイプカッター10A全体を、中心線を中心に回転させる)。これにより各切断刃12が、切断対象の内管Paの内周面に回転しながら食い込んでゆく。この際に作業者は、片手で一対のハンドル部36を把持し握力によりハンドル部36を閉動作し、そのように握力を発揮した体勢のままハンドル部36を適宜握り直しながら一方向(回転方向X)に回転させる。
このようにして、内管Pa(パイプPa)の周壁を内周面側から少しずつ切り進めてゆき、最終的には、図7(C)・図8(C)に示すように、両方の切断刃12の頭頂点45(切っ先)が内管Paの外方に突き抜けるようにし、内管Paの周壁を完全に切断する。内管Paを完全に切断した状態では、一対の開閉片部21の開脚規制部27が相互に密接し、一対の刃部11の開脚動作は規制される。このため、一対の切断刃12の外側への移動が規制され、外管Pbとの接触が阻止される。また、この状態で作業者は、一対の刃部11を引き抜くが、この引き抜きに伴って切り離されたパイプPaも外管Pbから引き抜かれる。
なお、図7および図8においては、内管Paと外管Pbとが同心となって描かれているが、実際のものは、それぞれの端部が自由状態であるため、同心となることは稀である。そこで、内管Paと外管Pbとが強制的に同心となるように、内管Paと外管Pbとの間隙にスペーサーを設けることが好ましい。この場合、スペーサーは、例えば手動式パイプカッター10Aの付属部品として用意され、切断作業に先行して二重管Pの管端に装着される。
特に図示しないが、スペーサーは、例えば円筒状のスペーサー本体と、スペーサー本体の一方の端部に設けたフランジ部と、を有することが好ましい。スペーサー本体は、内管Paと外管Pbとの間隙に挿入される部分であり、刃部11の1/2程度の長さとする。フランジ部は、二重管Pに対しスペーサー本体を着脱するための手がかりとなる部分であり、外管Pbの管端に突き当てられる。なお、この場合には、開閉部13の突当て部33は、このフランジ部に突き当てられることとなる。また、スペーサー本体は、円筒状ではなく、フランジ部から延びる複数(3つ以上)の脚片を有する形態であってもよい。
以上のように、第1実施形態の手動式パイプカッター10Aによれば、一対のハンドル部36を強く握り回転操作するだけで、パイプPaは内側から簡単に切断することができる。これにより、二重管Pの内管Paを外管Pbの管端から所定の奥まった位置で適切に切断することができる。しかも、手動式のカッターとして、そのハンドリング性および操作性を良好なものとすることができる。
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態に係る手動式パイプカッター10Bを示している。本実施形態に係る手動式パイプカッター10Bは、「基本構成」については第1実施形態と同様であるので、第1実施形態における説明を援用する。
本実施形態においては、刃部11の構成が第1実施形態とは異なる。すなわち、本実施形態における各刃部11には、図9(A)に示すように、基端部寄りに突片状の突当て突片16が設けられている。一対の突当て突片16は、刃部11から外側に突出しており、パイプPaを切断するときに二重管Pの管端に突き当てられる。また、第1実施形態の刃部11よりも内面(対向する刃部11との対向面)と外面間の厚みが厚くなる構成となっている。切断刃12をより外方で突出させて、太径のパイプPaに対応させるためである。
また、刃部11の開閉部13への延設構成は脱着可能であることも含めて第1実施形態と同様であるので、ここでは説明を割愛する。加えて切断刃12の形状や配置に関する構成についても第1実施形態と同様であるので、ここでは説明を割愛する。
上記のとおり、本実施例に係る手動式パイプカッター10Bは刃部11の構成および突当て突片16(突当て部)の構成が第1実施形態と異なるだけで、基本構成、刃部11の開閉部13への延設構成、切断刃12の構成については第1実施形態と同様である。したがって、切断作業工程については、刃部11に設けられた突当て突片16を切断対象のパイプPaの開口端(管端)に係合させて(突き当てて)作業を行う点が第1実施形態と異なるだけで、あとは図7・図8に基づき説明したように一対の刃部11を挿し入れ、各刃部11を開いて各切断刃12をパイプPaの内周面に食い込ませつつ回転させれば、パイプPaを切断することができる。
<第3実施形態>
図10(A)および(B)は、第3実施形態に係る手動式パイプカッター10Cを示している。この手動式パイプカッター10Cは、「基本構成」について第1実施形態と同様であるため、ここでは主に第1実施形態と異なる部分について説明する。この手動式パイプカッター10Cでは、手動操作部14Aが、第1実施形態とは異なる構造を有している。
具体的には、手動操作部14Aは、握り部分となるグリップ部51と、グリップ部51と一対の開閉片部21との間に介設され、グリップ部51の押圧動作を一対の開閉片部21の開脚動作に変換する動作変換部52と、を有している。グリップ部51は、半割り(2分割)の円柱状、すなわち半円柱状の一対のグリップ片54を突き合わせて構成されている。各グリップ片54の突合せ面54aには広く浅溝55aが形成されており、一対のグリップ片54の両浅溝55aにより、グリップ部51の突合せ部分に、動作変換部52の一部が挿入されるポケット55が構成されている(図10(B)参照)。なお、グリップ部51の表面には、握りを考慮しローレット加工等の滑止めが施されていることが好ましい。
動作変換部52は、一対の開閉片部21に連なる一対のアーム部57と、各アーム部57の基端部に設けた一対の係合突起58と、各グリップ片54の浅溝55aに形成した一対のハ字状溝59と、を有している。各アーム部57は、開閉片部21と一体に形成されている。各アーム部57の基端部には、これを表裏方向に貫通するように係合突起58が取り付けられている。そして、この係合突起58の両突出部位が一対のハ字状溝59にスライド自在に係合している。
ハ字状溝59は、アーム部57側から見て「ハ」の字を為すように、各浅溝55aの溝底に形成されている。すなわち、グリップ部51のポケット55には、対向するように一対のハ字状溝59が形成され、このハ字状溝59に一対の係合突起58の両突出部位が係合している。一対の刃部11および一対の開閉片部21が閉脚位置にある状態で、一対のアーム部57は開脚位置にあり、一対の係合突起58はハ字状溝59のアーム部57側端に係合している。この状態から、グリップ部51をアーム部57側に押し込むと、一対の係合突起58はハ字状溝59のもう一方の端に向かって相対的に移動する。これにより、一対のアーム部57は閉脚動作し、一対の刃部11および一対の開閉片部21は開脚動作する。
また、一対の係合突起58が、ハ字状溝59のアーム部57とは逆側の側端に相対移動した状態では、一対のアーム部57および一対の開閉片部21を介して、一対の刃部11(一対の切断刃12)の移動端位置が規制される。すなわち、この部分により、請求項に言う「動作変換部が有する開脚規制部」が構成されている。
以上のように、第3実施形態の手動式パイプカッター10Cによれば、グリップ部51を押し込んで一対の切断刃12を切込み移動させつつ、グリップ部51を適宜回転させることで、パイプPaを内側から切断することができる。この場合、グリップ部51による押圧と回転とは、自然な力加減で行うことができるため、操作性やハンドリングを向上させることができる。なお、動作変換部52は、グリップ部51側を係合突起58とし、アーム部57側をハ字状溝59とする構成であってもよい。また、一対のアーム部57間に圧縮バネを介設し、一対のアーム部57が常に開くように付勢してもよい。さらに、この実施形態の手動操作部14Aは、以降で説明する実施形態にも適用可能である。
<第4実施形態>
図11(A)、(B)および(C)は、第4実施形態に係る手動式パイプカッター10Dを示している。ここでも、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。この手動式パイプカッター10Dでは、開閉部13Aが、第1実施形態とは異なる構造を有している。
本実施形態の開閉部13Aは、先端側で一対の刃部11に連なると共に基端側で手動操作部14に連なり、背中合せの状態で配設された一対の開閉片部21と、一対の開閉片部21を、それぞれ回動自在に軸支する一対の支軸61と、一対の支軸61を介して、一対の開閉片部21を保持する開閉片保持部62と、を有している。すなわち、この実施形態の開閉部13Aでは、一対の開閉片部21がそれぞれの支軸61を中心に回動(開閉脚動作)することで、一対の刃部11が切込み移動するようになっている。
各支軸61は、第1実施形態と同様に、六角穴付きのボルト64と、六角穴付きのボルト64に螺合したダブルナット65(止めナット)と、で構成されている。そして、この一対の支軸61の軸受け部として、開閉片保持部62が一対の支軸61を両持ちで支持している。開閉片保持部62は、一対の支軸61の軸受け部として機能する保持部本体67と、保持部本体67の両外端部から刃部11側に突出した一対の管突当て片部68と、を有している。
保持部本体67は、開閉片部21を挟んで表裏に位置する一対の表裏板71と、一対の表裏板71の両外端部に設けた一対の側板72とで、構成されている。各側板72は、管突当て片部68と一体に形成されており、管突当て片部68は、側板72から軸線方向に逆「L」字状に延びている。そした、中心線に直交する各管突当て片部68の先端部には、二重管Pの外管Pbに突き当てられる突当て面74が形成されると共に、二重管Pの間隙に嵌合する半球状のガイド突起75が形成されている。
すなわち、中心線を中心に対称となる位置に配設された一対の管突当て片部68において、それぞれの突当て面74が外管Pbの管端に突き当てられ、且つそれぞれガイド突起75が外管Pbと内管Paとの間隙に嵌合するようになっている。これにより、突当て面74が、外管Pbの管端を基準とする内管Paの切断位置を規制する一方、ガイド突起75が、外管Pbと内管Paとを同心状に位置させるスペーサーとして機能すると同時に切断の際の回転を案内する。
このように、第4実施形態の手動式パイプカッター10Dによれば、一対の開閉片部21(一対の刃部11)の開閉脚動作において、各切断刃12の切込み移動は、対応する支軸61を中心とする円運動となる。このため、一対の支軸61の離間寸法をパイプPaの径に対応させておけば、パイプPaに対し切断刃12を略直角に切り込ませることができる。したがって、第1実施形態の手動式パイプカッター10Aに比して、太径のパイプPaでも適切に切断することができる。
また、一対の開閉片保持部62における突当て面74およびガイド突起75により、外管Pbと内管Paとを同心上に位置させた状態で、内管Paを外管Pbの管端から所定の深さ位置で確実に切断することができる。また、内管Paの切断完了後に、切断刃12の切っ先が外管Pbの内周面に接触する(外管Pbを傷つける)のを、有効に防止することができる。
<第5実施形態>
図12は、第5実施形態に係る手動式パイプカッター10Eを示している。ここでも、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。この手動式パイプカッター10Eでは、開閉片部21が対応する刃部11と一体に形成され、この一体に形成された刃部11と開閉片部21とが、ハンドル部36に対し着脱可能に取り付けられている。また、開閉部13Bが、第4実施形態の開閉脚構造と類似する構造を有している。
本実施形態の開閉部13Bは、先端側で一対の刃部11に連なると共に基端側で一対のハンドル部36(手動操作部14)に連なり、背中合せの状態で配設された一対の開閉片部21と、一対の開閉片部21を、それぞれ回動可能に掛け止めする一対の掛止め部81と、一対の掛止め部81を介して、一対の開閉片部21を保持する開閉片保持部82と、を有している。
すなわち、この実施形態の開閉部13Bでは、一対の開閉片部21が、それぞれの掛止め部81を中心に回動(開閉脚動作)することで、一対の刃部11が切込み移動するようになっている。また、一対の開閉片部21の両内面は、掛止め部81の位置から所定の拡開角度でハンドル部36に向かう斜面83aとなっており、この両斜面83aの部分に開脚規制部83が構成されている。
各開閉片部21には、外側に突出する突出部21aが形成され、背中合せに配設した一対の開閉片部21の一対の突出部21aを囲むように開閉片保持部82が設けられている。開閉片保持部82は、一対の表裏板86と一対の側板87とを矩形に組んだ本体保持部85と、本体保持部85のハンドル部36側の端部にネジ止めした蓋板88と、を有している。なお、蓋板88を外すことで、一対の開閉片部21および一対の刃部11と、開閉片保持部82とを容易に分解することができる。
各側板87は、逆「L」字状に屈曲しており、この屈曲した刃部11側の端面に、第4実施形態と同様に、突当て面91およびガイド突起92が形成されている。また、各側板87の先端部内側には、鋭角となる先端部をR形状に面取りした掛止め部81が形成されている。掛止め部81は、開閉片部21の突出部21aにより構成される刃部11側の段部21aaに接触し、開閉片部21を回動可能に掛け止めしている。
すなわち、この実施形態の開閉部13Bでは、一対の開閉片部21(段部21aa)が一対の掛止め部81を中心に回動することで、一対の刃部11が開閉するようになっている。また、蓋板88は、開閉片部21の突出部21aにより構成されるハンドル部36側の段部21abに遊びを持って接触し、一対の開閉片部21の開閉脚動作を許容する。
このように、第5実施形態の手動式パイプカッター10Eによれば、第4実施形態と同様に、一対の開閉片部21(一対の刃部11)の開閉脚動作において、各切断刃12の切込み移動は、対応する掛止め部81を中心とする円運動となる。このため、一対の掛止め部81の離間寸法をパイプPaの径に対応させておけば、パイプPaに対し切断刃12を略直角に切り込ませることができる。したがって、第1実施形態の手動式パイプカッター10Aに比して、太径のパイプPaでも適切に切断することができる。
また、一対の開閉片保持部82における突当て面91およびガイド突起92により、内管Paを外管Pbの管端から所定の深さ位置で適切に切断することができる。しかも、内管Paの切断時に、誤って外管Pbを傷つけることがない。
<第6実施形態>
図13は、第6実施形態に係る手動式パイプカッター10Fを示している。この手動式パイプカッター10Fは、第1実施形態の手動式パイプカッター10Aに、一対の刃部11を保護する保護カバー95を設けたものである。この場合の保護カバー95は、円筒状のカバー本体95aと、カバー本体95aの基部に設けた鍔部95bと、で一体に形成されている。この保護カバー95は、例えば切断刃12より軟質なアルミニウム等の金属や合成樹脂で形成され、一対の刃部11を保護すべく一対の刃部11より長く形成されている。そして、保護カバー95は、ワイヤー等の紐状体96を介して、ハンドル部36或いは開閉部13に取り付けられている。
本実施形態の保護カバー95は、その内径(カバー本体95aの内径)が内管Paの外径と略同径(厳密には、わずかに太径)に形成されており、二重管P(内管Pa)の切断に際し、外管Pbと内管Paの間隙に嵌合装着されるスペーサーを兼ねている。作業者は、二重管Pの切断に際し、外管Pbと内管Paの間隙に保護カバー95を装着し、内管Paの切断作業を行う。これにより、一対の刃部11(切断刃12)が内管Paを切断した直後に外管Pbの内面に直接接触することが無く、切断刃12による外管Pbの損傷を確実に防止することができる。
したがって、本実施形態の手動式パイプカッター10Fでは、非使用時に手荒に扱うことがあっても、保護カバー95により切断刃12の損傷等を防止することができる。また、手動式パイプカッター10Fの使用時において、内管Paが完全に切断されたときに、切断刃12の外管Pbへの接触が阻止され、外管Pbの損傷を確実に防止することができる。さらに、保護カバー95は、紐状体96を介してハンドル部36等に取り付けられているため、これを紛失することが無い。