以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、本実施形態に係る複製検知装置の構成について図面を参照しつつ説明する。
複製検知装置は、例えば汎用のスマートフォン又はタブレットコンピュータ等から構成される。本実施形態では、アップルインコーポレイテッド社製のiPhone(登録商標)6sに、本実施形態に係る印刷物が原物であるか複製物であるかを検知するための複製検知アプリケーションプログラムをインストールして複製検知装置を構成している。なお、複製検知装置は、Android(登録商標)のスマートフォン又はタブレットコンピュータ等であってもよいし、汎用の携帯電話又はパーソナルコンピュータ等から構成されるものであってもよい。
図1は、本実施形態に係る印刷物を例示する図である。
図1に示すように、印刷物1は、白地の印刷用紙等の印刷媒体に、視認可能なロゴ画像にQRコード(登録商標)等の二次元コードを重ね合わせたロゴ付き二次元コード11と、ロゴ付き二次元コード11の外周を取り囲む略正方形の枠状の黄色のグラデーション12と、を印刷して形成される。ここで、グラデーション12が黄色いのは、様々な色の中で黄色が最も複製による影響を受けやすいからである。このため、印刷物1には、原物であるか複製物であるかを検知するために、黄色のグラデーション12が印刷されている。
ロゴ付き二次元コード11は、ロゴ画像のうち、汎用の二次元コードリーダによって黒色と認識される第1明度未満の部分(図1に示す例では背景部分や鍵穴部分等)には、汎用の二次元コードリーダによって白色と認識される第1種類の明度のセル(図1に示す例では白色のセル)のみが重ね合わされている。一方、ロゴ画像のうち、第1明度以上の部分(図1に示す例では鍵本体部分等)には、第1種類の明度のセル(図1に示す例では白色のセル)と、汎用の二次元コードリーダによって黒色と認識される第2種類の明度のセル(図1に示す例では黒色のセル)と、の双方が重ね合わされている。
ロゴ付き二次元コード11は、汎用の二次元コードリーダによって白色と認識される第1種類の明度のセル(図1に示す例では白色のセル)と、汎用の二次元コードリーダによって黒色と認識される第2種類の明度のセル(図1に示す例では黒色のセル)及びロゴ画像のうちの第1明度未満の部分(図1に示す例では背景部分や鍵穴部分等)と、の分布パターンによって、URL(Uniform Resource Locator)等の所定の情報を表現する。
グラデーション12は、白地の印刷用紙等の印刷媒体に、CMYK色域の四色のインクのうち、Y(イエロー)のインクのみを利用して、一辺の長さが略23mmの略正方形の各頂点から各辺の中心にかけて徐々に黄色が薄くなるように印刷して、形成される。
図2(a)は、印刷物の原物における黄色のグラデーションを示す図である。図2(b)は、印刷物の複製物における黄色のグラデーションを示す図である。
本発明者は、印刷物1の原物と複製物とにおける黄色のグラデーション12の長さをそれぞれ求めた。ここで、グラデーション12の長さとは、グラデーション12の各辺のうち、目視でY(イエロー)のインクの付着が確認できる部分の長さをいう。原物における黄色のグラデーション12の長さは、図2(a)に示すように、略21.5mm~略23mmであった。これに対して、複製物における黄色のグラデーション12の長さは、図2(b)に示すように、原物よりも短く、略14mm~略19.5mmであった。
このように、黄色のグラデーション12は、複製によって減衰し、複製物における黄色のグラデーション12の長さは、原物よりも短くなる。その理由は、印刷時に利用されるCMYK色域と複製時に利用されるRGB色域とで、色域(カラースペース)や再現方法等がそれぞれで異なっているからである。具体的に、CMYK色域は、色を減らすと白色になる(足すと黒色になる)減法混色で色を表現し、RGB色域は、色を足していくと白色になる(減らすと黒色になる)加法混色で色を表現する。
黄色のグラデーション12は、スキャン時にRGB色域の混色に変換され、印刷時には、再度CMYK色域が利用される。このとき、グラデーション12は、CMYK色域の混色で印刷され、濃度が低い(薄い)部分は、さらに淡くなる。その理由は、印刷で色を表現する仕組みにある。すなわち、印刷では、インクのドット(点)を紙等の印刷媒体の上に乗せるか乗せないか、つまりドットのオンオフの二値で色が表現され、ドットの形状(例えばドットの大小)やドット分散の仕方で色の濃淡が表現される。淡色は、当然、ドット形状がより小さくなる。このような小さなドットをスキャンした際に撮像素子が取得するには、十分な解像力が必要であるが、汎用の複写機の解像度は。400ppi程度しかない。このため、淡色は、どうしても欠損しやすくなり、結果、淡色は、さらに淡くなる傾向にある。特に、黄色のグラデーション12は、スキャナやカメラ等を利用した複製によって、淡色がさらに淡く変化しやすい。
本実施形態に係る複製検知装置は、このような黄色のグラデーション12の性質を用いて、印刷物1が原物であるか複製物であるかを検知するものである。
図3は、本実施形態に係る複製検知装置の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、複製検知装置2は、タッチパネル21と、撮像部22と、記憶部23と、制御部24と、を備え、これらはバス等を介して接続されている。
タッチパネル21は、例えば液晶表示装置とポインティングデバイスとを組み合わせた汎用のタッチパネル等から構成されている。タッチパネル21は、各種画面を表示するとともに、ユーザによる各種操作を受け付ける。本実施形態において、タッチパネル21には、ロゴ付き二次元コード11の読取を指示するための読取アイコン等が表示される。
撮像部22は、例えばCCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子等から構成される。撮像部22は、印刷物1を撮像して、RGB色域で表される撮像画像を生成する。
記憶部23は、例えば汎用のフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ等から構成される。記憶部23は、印刷物1が原物であるか複製物であるかを検知するための複製検知アプリケーションプログラム等が記憶されている。
制御部24は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等から構成されている。CPUは、RAMをワークメモリとして用い、ROM及び記憶部23等に記憶されているプログラムを適宜実行することによって、複製検知装置2の各種動作を制御する。
本実施形態において、制御部24は、ユーザがタッチパネル21を操作して、記憶部23に記憶されている複製検知アプリケーションプログラムを起動したことに応答して、読取アイコンをタッチパネル21に表示する。制御部24は、ユーザが印刷物1に撮像部22を向けて読取アイコンをタップしたことに応答して、印刷物1を撮像部22で撮像して、RGB色域で表される撮像画像を生成する。なお、制御部24は、撮像画像の傾きが所定角度(例えば2°)以上である場合や、撮像画像のサイズが所定サイズ(例えば幅が300ピクセル)未満である場合、印刷物1の撮像を再度行うようにしてもよい。
制御部24は、撮像部22で生成したRGB色域で表される撮像画像を、CIE L*a*b*(以下、「Lab」という。)表色系で表される撮像画像に変換する。
図4は、Lab表色系の色空間を示す説明図である。
図4に示すように、Lab表色系の色空間は、明度を示すL値、並びに色度(色相及び彩度)を示すa値及びb値といった三つの値で色を表現する補色空間である。L値は、“0”~“100”の範囲の値をとり、大きくなる程、明度が高くなる。L値が“0”の場合には、黒色となり、“100”の場合には、白色となる。a値は、赤色と緑色との間の色度を示す値であり、本実施形態では、“-255”~“255”の範囲の値をとる。a値が正の値の場合には、赤色となり、正の値が大きくなる程、赤色の濃度の高くなる。これに対して、a値が負の値の場合には、緑色となり、負の値が小さくなる程、緑色の濃度が高くなる。b値は、黄色と青色との間の色度を示す値であり、本実施形態では、“-255”~“255”の範囲の値をとる。b値が正の値の場合には、黄色となり、正の値が大きくなる程、黄色の濃度が高くなる。これに対して、b値が負の値の場合には、青色となり、負の値が小さくなる程、青色の濃度が高くなる。そして、a値及びb値がともに“0”の場合には、無彩色となる。
図3に示す制御部24は、Lab表色系の色空間で表される撮像画像から、撮像画像の各画素のb値を表すbチャンネルを抽出する。そして、制御部24は、bチャンネルの各画素のb値を所定の閾値(本実施形態では“123”)と比較して、閾値未満のb値を“0”、閾値以上のb値を“1”となるように二値化して二値化画像を生成する。
図5(a)は、印刷物の原物を撮像した場合の二値化画像を示す図である。図5(b)は、印刷物の複製物を撮像した場合の二値化画像を示す図である。
図5(a)及び(b)に示す二値化画像において、“0”とされた画素は黒色で、“1”とされた画素は白色で示されている。印刷物の原物を撮像した場合の二値化画像では、図5(a)に示すように、黄色のグラデーション12に対応する部分がほぼ繋がっているのに対し、印刷物の複製物を撮像した場合の二値化画像では、図5(b)に示すように、グラデーション12の四隅の部分しか残っていない。
図3に示す制御部24は、二値化画像の黄色のグラデーション12に対応する部分において所定長以上の線分を検出する。制御部24は、黄色のグラデーション12に対応する部分において所定長以上の線分を検出できなかった場合、印刷物1が複製物であると判別して、その判別結果とともに、読取アイコンをタッチパネル21を表示する。
制御部24は、黄色のグラデーション12に対応する部分において所定長以上の線分を検出できた場合でも、黄色のグラデーション12に対応する部分の四つの辺のいずれかにおいて所定長以上の線分を検出できなかったときには、印刷物1が複製物の可能性があると判別して、その判別結果とともに、読取アイコンをタッチパネル21を表示する。
制御部24は、黄色のグラデーション12に対応する部分の四つの辺のいずれにおいても所定長以上の線分を検出できたときには、印刷物1が原物であると判別して、その判別結果をタッチパネル21に表示する。そして、制御部24は、撮像画像に含まれるロゴ付き二次元コード11から所定の情報を読み取る。
次に、上記構成を備える複製検知装置が実行する複製検知処理について図面を参照して説明する。
複製検知装置2の制御部24は、複製検知アプリケーションプログラムの起動後、ユーザが印刷物1に撮像部22を向けて読取アイコンをタップしたことに応答して、複製検知処理を開始する。
図6は、複製検知処理の詳細を示すフローチャートである。
図6に示すように、商品注文処理において、まず、制御部24は、ロゴ付き二次元コード11を含む印刷物1を撮像部22で撮像して、RGB色域で表される撮像画像を生成する(ステップS1)。
次に、制御部24は、ステップS1で生成したRGB色域で表される撮像画像を、Lab表色系で表される撮像画像に変換する(ステップS2)。
続いて、制御部24は、ステップS2で変換したLab表色系で表される撮像画像から、撮像画像の各画素のb値を表すbチャンネルを抽出する(ステップS3)。
そして、制御部24は、ステップS3で抽出したbチャンネルの各画素のb値を所定の閾値と比較して、閾値未満のb値を“0”、閾値以上のb値を“1”となるように二値化して二値化画像を生成する(ステップS4)。
続いて、制御部24は、ステップS4で生成した二値化画像の黄色のグラデーション12に対応する部分において所定長以上の線分を検出する(ステップS5)。
制御部24は、黄色のグラデーション12に対応する部分において所定長以上の線分を検出できなかった場合(ステップS6;No)、印刷物1が複製物であると判別して、その判別結果とともに、読取アイコンをタッチパネル21に表示してから(ステップS7)、複製検知処理を終了する。
これに対して、制御部24は、黄色のグラデーション12に対応する部分において所定長以上の線分を検出できた場合でも(ステップS6;Yes)、黄色のグラデーション12に対応する部分の四つの辺のいずれかにおいて所定長以上の線分を検出できなかったときには(ステップS8;No)、印刷物1が複製物の可能性があると判別して、その判別結果とともに、読取アイコンをタッチパネル21に表示してから(ステップS9)、複製検知処理を終了する。
一方、制御部24は、黄色のグラデーション12に対応する部分の四つの辺のいずれにおいても所定長以上の線分を検出できたときには(ステップS8;Yes)、印刷物1が原物であると判別して、その判別結果をタッチパネル21に表示する(ステップS10)。
そして、制御部24は、撮像画像に含まれるロゴ付き二次元コード11から所定の情報を読み取ってから(ステップS11)、複製検知処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態に係る複製検知装置2は、所定の模様が印刷された印刷物1を撮像して撮像画像を生成する撮像部22と、撮像画像から各画素の色度を表す色度チャンネルを抽出し、色度チャンネルにおいて所定の模様に対応する部分が、第1条件を満たしていない場合、印刷物1を複製物と判別する制御部24と、を備える。
本実施形態において、印刷物1には、所定の模様として黄色のグラデーションが印刷されている。また、撮像部22は、RGB色域で表される撮像画像を生成する。制御部24は、RGB色域で表される撮像画像をLab表色系で表される撮像画像に変換する。次に、制御部24は、Lab表色系で表される撮像画像から色度チャンネルとして各画素のb値を表すbチャンネルを抽出する。続いて、制御部24は、bチャンネルの各画素のb値を二値化して二値化画像を生成する。
そして、制御部24は、二値化画像において黄色のグラデーションに対応する部分が、所定の形状を有していない場合、すなわち、黄色のグラデーションに対応する部分に所定長以上の線分がない場合、第1条件を満たしていないとして、印刷物1を複製物と判別する。
他方、制御部24は、黄色のグラデーションに対応する部分の四つの辺のいずれにおいても所定長以上の線分がある場合には、第1条件及び第2条件を満たしているとして、印刷物1を原物と判別する。これに対して、制御部24は、黄色のグラデーションに対応する部分に所定長以上の線分はあるが、四つの辺のいずれかにおいて所定長以上の線分がない場合には、第1条件を満たしている一方で第2条件を満たしていないとして、印刷物1が複製物の可能性があると判別する。
そして、制御部24は、印刷物1を複製物と判別した場合等には、読取アイコンをタッチパネル21に表示して、印刷物1の再度の撮像を指示する。
このように、制御部24は、RGB色域で表される撮像画像を、明度を示すL値並びに色度を示す二つの値(a値及びb値)を有し、且つデバイス依存しないカラーモデルであるLab表色系で表される撮像画像に変換する。そして、制御部24は、Lab表色系で表される撮像画像から、複製による影響を受けやすいbチャンネルのみを抽出して、環境光による影響を受けやすいL値を表すLチャンネル、及び複製による影響を受けにくいa値を表すaチャンネルを取り除いてから、撮像画像を二値化する。これにより、制御部24は、環境光による影響を受けにくく、複製の検出に必要な黄色成分が際だった二値化画像を生成することができる。このようにして生成した二値化画像では、印刷物1が原物か複製物かによって、黄色のグラデーション12に対応する部分の減衰量が明確になるため、制御部24は、印刷物1が原物であるか複製物であるかを、簡易且つ確実に判別することができる
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施形態の変形態様について、説明する。
上記の実施形態において、撮像画像の各画素のb値と比較される所定の閾値は、“123”であるものとして説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、所定の閾値は、複製検知装置2を構成するスマートフォン又はタブレットコンピュータの機種、及び印刷物1の照度等に応じて、異ならせてもよい。
本発明者は、上記の実施形態に係るアップルインコーポレイテッド社製のiPhone(登録商標)6sから構成される複製検知装置2と、変形例に係るファーウェイ社製のP9 liteから構成される複製検知装置20(図8)と、のそれぞれにおける照度毎の最適な閾値を求めた。具体的に、本発明者は、一般的な生活空間での照度(300lx~1000lx)毎に、種々の閾値で、印刷物1の原物及び複製物をそれぞれを撮像して図6に示す複製検知処理を実行した。そして、複製検知処理において、一回も印刷物1が複製物であると判別されることなく、且つ二回連続で複製の可能性があると判別されることもなく、50回連続で正しく判別された閾値を、最適な閾値として求めた。
図7(a)は、本実施形態に係る複製検知装置における照度毎の最適な閾値を示す表である。図7(b)は、変形例に係る複製検知装置における照度毎の最適な閾値を示す表である。
図7(a)及び(b)において、「○」は、各照度での最適な閾値を示す。図7(a)に示すように、本実施形態に係る複製検知装置2では、いずれの照度においても、最適な閾値に“123”が含まれていた。そこで、本実施形態では、撮像画像の各画素のb値と比較される所定の閾値として、“123”を設定した。これに対して、図7(b)に示すように、変形例に係る複製検知装置20(図8)では、印刷物1の照度に応じて、最適な閾値が異なる。
図8は、変形例に係る複製検知装置の構成例を示すブロック図である。
図8に示すように、複製検知装置20は、複製検知装置2が備えるタッチパネル21、撮像部22、記憶部23、及び制御部24に加え、印刷物1の照度を検知する照度センサ25をさらに備え、これらはバス等を介して接続されている。
複製検知装置20の制御部24は、照度センサ25で検知した照度に応じて、撮像画像の各画素のb値と比較される所定の閾値を設定すればよい。図7(b)に示す例では、制御部24は、照度センサ25で検知した照度が300lx~499lxである場合、撮像画像の各画素のb値と比較される所定の閾値を“139”に設定し、照度が500lx~699lxである場合、所定の閾値を“135”に設定し、照度が700lx~899lxである場合、所定の閾値を“132”に設定し、照度が900lx~1000lxである場合、所定の閾値を“128”に設定すればよい。
上記実施の形態において、複製検知装置2の制御部24は、黄色のグラデーション12に対応する部分の四つの辺のいずれにおいても所定長以上の線分を検出できたことを条件に、印刷物1が原物であると判別するものとして説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、印刷物1が原物であると判別するための条件は、複製検知装置2を構成するスマートフォン又はタブレットコンピュータの機種、及び撮像時の照度等に応じて、適宜変更可能である。
例えば、複製検知装置2の制御部24は、黄色のグラデーション12に対応する部分の四つの辺のいずれにおいても所定長以上の線分を検出できたことに加え、所定長以上の線分が所定本数(例えば5本等)以上検出できたことを条件に、印刷物1が原物であると判別してもよい。さらに、これらの条件に加えて、複製検知装置2の制御部24は、ロゴ付き二次元コード11の外周の白色の画素数を求めてノイズ判定を行い、ノイズが10%以上である場合には印刷物1が複製物であると判別し、ノイズが0.8%以上、10%未満である場合には印刷物1が複製物の可能性があると判別し、ノイズが0.8%未満である場合には印刷物1が原物であると判別するようにしてもよい。
また、複製検知装置2の制御部24は、黄色のグラデーション12に対応する部分の四つの辺のうち、少なくとも所定数の辺(例えば二辺等)において所定長以上の線分を検出できたことを条件に、印刷物1が原物であると判別してもよい。さらに、複製検知装置2の制御部24は、黄色のグラデーション12に対応する部分の四つの辺のうち、少なくとも所定数の辺(例えば二辺等)において所定長以上の線分を検出できたことに加え、所定長以上の線分が所定本数(例えば5本等)以上検出できたことを条件に、印刷物1が原物であると判別してもよい。
上記の実施形態において、グラデーション12は、略正方形の枠状であるものとして説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、グラデーション12の形状は、任意であり、例えば線状であってもよい。この場合、複製検知装置2の制御部24は、二値化画像において黄色のグラデーション12に対応する部分の長さを求め、黄色のグラデーション12に対応する部分の長さが、所定の長さよりも短い場合、所定の形状を有していないとして、印刷物1を複製物と判別してもよい。
上記の実施形態において、制御部24は、RGB色域で表される撮像画像を、Lab表色系で表される撮像画像に変換するものとして説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、明度と色度とに切分可能な表色系であれば任意である。例えば、制御部24は、RGB色域で表される撮像画像を、YUV表色系、YCbCr表色系、及びYPbPr表色系等で表される撮像画像に変換するものであってもよい。
また、制御部24は、RGB色域で表される撮像画像を、CMYK色域で表される撮像画像に変換してもよい。制御部24は、CMYK色域で表される撮像画像から、撮像画像の各画素のY(イエロー)値を表すYチャンネルを抽出し、Yチャンネルの各画素のY値を所定の閾値と比較して、閾値未満のY値を“0”、閾値以上のY値を“1”となるように二値化して二値化画像を生成する。そして、制御部24は、二値化画像の黄色のグラデーション12に対応する部分において所定長以上の線分を検出して、印刷物1が原物であるか複製物であるかを判別するようにしてもよい。
もっとも、CMYK色域で表される撮像画像に変換する場合、撮像時の光源の質(白色光に近いか、及び明度が高いか等)、印刷物1の紙質(コート紙であるかマット紙であるか、及び紙厚等)、並びに撮像時の印刷物1と複製検知装置2との距離及び角度等によって、撮像時に微妙な光の明暗等が印刷物1に発生する。このため、印刷物1が安定した平滑度を有する紙で構成され、且つ光源状態、並びに撮像時の印刷物1と複製検知装置2との距離及び角度等が安定しているという環境下でなければ、二値化の際、撮像時に発生する微妙な光の明暗等の影響で、黄色のグラデーション12に対応する部分だけを検知することは困難である。したがって、余計な明度に関する情報を切り捨て、且つ黄色成分からなる黄色のグラデーション12に対応する部分だけを抜き取るべく、CMYK色域で表される撮像画像に変換するよりも、Lab表色系で表される撮像画像に変換する方が好ましい。
上記の実施形態において、グラデーションは、黄色であるものとして説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。グラデーションは、黄色以外の色であってもよい。黄色以外の色のグラデーションであっても、黄色のグラデーション程ではないが、複製によって淡色が減衰して白色(紙色)へと変色し、グラデーションの長さが原物よりも短くなる。そして、グラデーションが赤色や緑色である場合、制御部24は、Lab表色系で表される撮像画像から、撮像画像の各画素のa値を表すaチャンネルを抽出して、印刷物1が原物であるか複製物であるかを判別すればよい。
上記の実施形態において、印刷物1に印刷される模様は、グラデーションであるものとして説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。印刷物1に印刷される模様は、複製によって形状が変化するものであれば、任意であり、例えば、CMYK色域のうちのK(黒色)のインクのみを利用して20%~30%の濃度で印刷物1に印刷された灰色(黒色の一次元)の模様であってもよい。
このような灰色(黒色の一次元)の模様は、スキャン時にRGB色域の混色(赤色、緑色、及び青色の三次元)に変換され、印刷時には、再度CMYK色域が利用される。このとき、模様は、混色(シアン、マゼンタ、イエロー、黒色の四次元)で印刷され、濁って青味がかった灰色に変色する。混色で印刷されるのは、RGB色域では、純度100%の黒色を表現できるが、CMYK色域のうちのCMYのインクのみでは、純度100%の黒色を物理的に作成できず、K(黒色)のインクを利用せざるを得ないからである。
そこで、制御部24は、Lab表色系で表される撮像画像から、aチャンネル及び/又はbチャンネルを抽出し、模様に対応する部分のa値及び/又はb値に基づいて、模様に黒色以外の色が所定の基準値以上に混じっているか否かを判別する。そして、制御部24は、模様に黒色以外の色が所定の基準値以上に混じっていると判別した場合、第1条件を満たしていないとして、印刷物1を複製物であると判別すればよい。
上記の実施形態において、印刷物1には、ロゴ付き二次元コード11が含まれるものとして説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。印刷物1には、バーコードや文書等、ロゴ付き二次元コード11以外のものが含まれてもよいし、グラデーション12以外何も含まれないものであってもよい。
上記の実施形態において、印刷物1には、視認可能なロゴ画像に二次元コードを重ね合わせたロゴ付き二次元コード11を例示に説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、白色のセルと黒色のセルとの分布パターンによって所定の情報を表現する汎用の二次元コードであってもよい。
上記の実施形態において、ロゴ付き二次元コード11は、ロゴ画像のうちの第1明度未満の部分には、第1種類の明度のセルのみが重ね合わされる一方で、ロゴ画像のうちの第1明度以上の部分には、第1種類の明度のセルと第2種類の明度のセルとの双方が重ね合わされているものとして説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものでhない。
例えば、ロゴ付き二次元コード11は、ロゴ画像のうち、第1明度未満の部分には、第1種類の明度のセルのみが重ね合わされ、第1明度以上の部分で第2明度未満の部分には、第1種類の明度のセルと第2種類の明度のセルとの双方が重ね合わされ、汎用の二次元コードリーダによって白色と認識される第2明度以上の部分には、第2種類の明度のセルのみが重ね合わされたものであってもよい。この場合、ロゴ付き二次元コード11は、汎用の二次元コードリーダによって白色と認識される第1種類の明度のセル及びロゴ画像うちの第2明度以上の部分と、汎用の二次元コードリーダによって黒色と認識される第2種類の明度のセル及びロゴ画像のうちの第1明度未満の部分と、の分布パターンによって、所定の情報を表現する(例えばWO2011/118540号公報参照)。
また、ロゴ付き二次元コード11は、汎用の二次元コードリーダによって黒色と認識される所定明度未満のロゴ画像に、汎用の二次元コードリーダによって白色と認識される所定明度以上のセルが重ね合わされたものであってもよい。この場合、ロゴ付き二次元コード11は、汎用の二次元コードリーダによって白色と認識される所定明度以上のセルと、汎用の二次元コードリーダによって黒色と認識される所定明度未満のロゴ画像と、の分布パターンによって、所定の情報を表現する(例えば特開2007-287004号公報参照)。
さらに、ロゴ付き二次元コード11は、ロゴ画像のうち、汎用の二次元コードリーダによって黒色と認識される所定明度未満の部分には、汎用の二次元コードリーダによって白色と認識される所定明度以上のセルが重ね合わされ、汎用の二次元コードリーダによって白色と認識される所定明度以上の部分には、汎用の二次元コードリーダによって黒色と認識される所定明度未満のセルが重ね合わされたものであってもよい(例えば特開2008-15642号公報参照)。
なお、本明細書中に特開2007-287004号公報、特開2008-15642号公報、及びWO2011/118540号公報の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参考として取り込むものとする。
上記の実施形態において、二次元コードは、QRコード(登録商標)であるものとして説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。二次元コードは、例えば、データマトリクス、アズテックコード、コードワン、アレイタグ、ボックス図形コード、マキシコード、ペリコード、ソフトストリップ、CPコード、カルラコード、及びウルトラコード等といった他のマトリクス式の二次元コードであってもよい。あるいは、PDF417、コード49、コード16k、コーダブロック等といった一次元バーコードを縦に積み重ねたスタック式の二次元コードであっても構わない。
また、上記の実施形態において、制御部24のCPUが実行するプログラムは、予めROM,記憶部23等に記憶されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上述の処理を実行させるためのプログラムを、既存の汎用コンピュータに適用することで、上記の実施形態に係る複製検知装置2として機能させてもよい。
このようなプログラムの提供方法は任意であり、例えばコンピュータが読取可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等)に格納して配布してもよいし、インターネット等のネットワーク上のストレージにプログラムを格納しておき、これをダウンロードさせることにより提供してもよい。
さらに、上記の処理をOS(Operating System)とアプリケーションプログラムとの分担、又はOSとアプリケーションプログラムとの協働によって実行する場合には、アプリケーションプログラムのみを記録媒体やストレージに格納してもよい。また、搬送波にプログラムを重畳し、ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)に上記プログラムを掲示し、ネットワークを介してプログラムを配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
なお、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明の一実施例を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。