次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は,オフィス用に多用されている回転椅子に適用している。以下の説明で、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、これは、椅子に普通に腰掛けた人から見た状態として定義している。正面視は、椅子の着座者と対向した姿勢である。
(1).椅子の概略
まず、図1~4に基づいて椅子の概要を説明する。椅子の基本構成は従来と同様であり、図1,2に示すように、主要構成要素として脚装置1、座2、背もたれ3を備えている。なお、図示は省略するが、この実施形態の椅子には、オプション品として、肘掛け装置やハンガー、ヘッドレスト等を装着可能である。
脚装置1はガスシリンダより成る脚支柱7を有している。脚支柱7は、放射状に広がる複数本の枝アーム8で支持されている。各枝アーム8の先端にはキャスタが設けられている。図4に示すように、脚支柱7の上端部には固定ベース9が取り付けられており、固定ベース9のうち脚支柱7よりも手前側の部位に、傾動ベース10が左右横長の支軸11によって連結されている。これら固定ベース9と傾動ベース10とを主要部材として、座2と背もたれ3が取りつくベース部を構成している。
図3に示すように、固定ベース9と傾動ベース10とにより、座2が取り付く座受け部材12が支持されている。また、傾動ベース10に、背もたれ3が取り付く背支持フレーム13が固定されている。従って、背もたれ3は、傾動ベース10と一緒にロッキングする。また、座受け部材12は、傾動ベース10の後傾動に連動して後退及び後傾する。従って、座2は、背もたれ3の後傾動に連動して後退及び後傾する(シンクロする。)。
図示していないが、固定ベース9の内部には、ロッキングに対して抵抗を付与するロッキングばねが配置されている。ロッキングばねの硬さは、例えば図2に示す弾力調節ハンドル14の回転操作によって調節できる。弾力調節ハンドル14は着座者から見て右側に配置しており、支軸11と同軸に配置されている。弾力調節ハンドル14と反対側には、背もたれ3のロッキングをフリー状態とロック状態とに切り換える背もたれ角度固定ハンドル15が配置されている。背もたれ角度固定ハンドル15も、支軸11と同軸に配置されている。なお、支軸11は、左右に分割されて、弾力調節ハンドル14と背もたれ角度固定ハンドル15とにそれぞれ設けられている。
図3に示すように、座2は、合成樹脂製の座インナーシェル17に座クッション材18を張った構造である。座クッション材18の上面は、布地や合成皮革等の表皮材で覆われている。図3では、座インナーシェル17と座クッション材18とを分離して表示しているが、本実施形態では、両者はインサート成形によって一体化されている。
座2は、その下方に配置した座アウターシェル19に取り付けられている。座アウターシェル19は、座受け部材12に固定された座メインアウターシェル20と、座メインアウターシェル20に前後スライド自在に装着された座フロントアウターシェル21と、座メインアウターシェル20の後ろに配置された座リアアウターシェル22とで構成されている。従って、座2も、メイン部はフロント部とリア部との3つのパートが一体化した構造として観念できる。座リアアウターシェル22は、左右横長のピンにより、座メインアウターシェル20に上下回動自在に連結されている。
他方、座インナーシェル17は、座メインアウターシェル20に固定された座メインインナーシェル17aと、座メインインナーシェル17aの前端に一体に連続した座フロントインナーシェル17bと、座メインインナーシェル17aの後端に一体に連続した座リアインナーシェル17cとで構成されている。座フロントインナーシェル17bは左右横長のスリットを有していて、下向きに巻き込み変形可能であり、座フロントアウターシェル21が後退すると下向きに巻き込まれ、これにより、座2の前後長さ(奥行き)が小さくなる。
座インナーシェル17の座リアインナーシェル17cは、その前端を中心にして上下回動するように座メインインナーシェル17aに連続している。そして、座リアインナーシェル17cの後端は、背もたれ3の下端に左右横長のピンによって連結されている。このため、背もたれ3がロッキングすると、座2は全体的に後退及び後傾しつつ、座リアインナーシェル17cは、座メインインナーシェル17aに対して、相対的に後傾する。
背もたれ3は、樹脂製の背アウターシェル23の前面に背クッション材24を配置した構造であり、背クッション材24の前面は表皮材で負われている。本実施形態では、背アウターシェル23と背クッション材24とは複数のエレメントに区分されていて、隣り合ったエレメントが相対回動し得るが、本願発明とは直接的には関係しないので説明は省略する。
背支持フレーム13には、背もたれ3の後ろにおいて上向きに延びる背支柱13aが一体に設けられており、背支柱13aの上端部が、背アウターシェル23の上下中途部に左右横長のピンで連結されている。従って、背もたれ3と背支柱13aとは相対回動する。また、背アウターシェル23の下端は、座リアアウターシェル22の後端に左右横長のピンで連結されている。
(2).座及び背もたれ支持機構
次に、図5以下の図面も参照して、座及び背もたれ支持機構を説明する。脚支柱7の上端部に固着された固定ベース9は、図4(B)から理解できるように、ダイキャスト品又は鋳造品であり、左右の側板9aと底部とを有する上向き開口の浅い箱状に形成されている。後部に設けた上下開口の筒状ボス部27に、脚支柱7の上端が下方から嵌着している。固定ベース9の前部は、手前に向けて高くなるように側面視で傾斜している。
他方、図4(B)に示すように、傾動ベース10は、左右の側板10aと後面板10bとを有して上下に開口している。後面板10bには、上向きに開口した背支持部28が固定されている。背支持部28は左右の側板を有する上向き開口の樋状に形成されており、その内部に背支持フレーム13の前端部が嵌め入れられている。図4(A)のとおり、背支持フレーム13は、背支持部28に複数本のボルト29で固定されている。
傾動ベース10は金属板製であり、その側板10aが固定ベース9の側板9aの外側に位置するようにして配置されている。すなわち、傾動ベース10は、固定ベース9に外側から被さっている。そして、図4に示すように、傾動ベース10の側板10aの前端寄り部位が、支軸11によって固定ベース9に連結されている。
図4に示すように、傾動ベース10の左右側板10aの前部上端は、左右横長のフロントジョイント30によって連結されている。フロントジョイント30の下方には、支軸支持部材31が配置されている。支軸支持部材31は、傾動ベース10及びフロントジョイント30に固着されており、支軸11によって固定ベース9に連結されている。また、支軸支持部材31は、ロッキングばねの硬さを調節するためのギヤや送りねじ等を支持するが、ロッキングばねの調節機構は本願発明とは直接の関連がないので、省略する。
例えば図4,5に示すように、固定ベース9の前端部には、固定ベース9の上方に延びるフロントリンク32が、左右横長の第1軸33によって連結されている。従って、フロントリンク32は、その下端部を中心にして前後方向に回動し得る。そして、フロントリンク32の上端に、座受け部材12の前部が左右横長の第2軸34によって連結されている。
図3,5に示すように、座受け部材12は、前後長手の左右一対の縦長フレーム35を有している。縦長フレーム35は、上端に上フランジ35aを形成した逆L形の板金加工品であり、左右の上フランジ35aに、左右横長のフロントステー36とリアステー37とを溶接で固着している。従って、座受け部材12は上下に開口した枠構造になっている。フロントステー36及びリアステー37は、縦長フレーム35の左右外側にはみ出ている。
そして、左右縦長フレーム35の前部がフロントリンク32の上端に第2軸34で連結されて、左右縦長フレーム35の後部が、傾動ベース10の後端部に左右横長の第3軸38で連結されている。従って、傾動ベース10が後傾すると、座受け部材12は後退しつつ後傾する。但し、座受け部材12の後傾角度は、傾動ベース10の後傾角度よりは小さい。また、上述のように、座受け部材12には座2が取り付けられているので、座受け部材12が変位すると、図6に示すように、座2も変位する。
(3).昇降機構
図1,2,6,7に示すように、座2の座メインアウターシェル20の右側部に操作レバー39が装着されている。操作レバー39は、脚支柱7を構成する昇降用ガスシリンダのオン・オフを操作するためのものであり、座メインアウターシェル20に回動自在に支持されている。操作レバー39は、ワイヤー40がチューブ状のケーシング41内に摺動自在に挿通されてなるコントロールケーブル42を介して、ガスシリンダ操作ユニット43に連結されている。
ガスシリンダ操作ユニット43は、座支持部材の一例としての固定ベース9の内部に配置されている。コントロールケーブル42のケーシング41は、その一端部が保持されるガスシリンダ操作ユニット43から前向きに延設され、座メインアウターシェル20の中央部に設けられたケーブル挿通穴20aを介して、座メインアウターシェル20の上方へ引き出されている。そして、ケーシング41は、ケーブル挿通穴20aの付近で操作レバー39に向かって湾曲している。ケーシング41の他端部は、座メインアウターシェル20の操作レバー支持部44に保持されている。操作レバー支持部44は操作レバー39を回動自在に支持している。この実施形態では、座メインアウターシェル20が操作レバー支持部材を構成している。
図8~10に示すように、脚支柱7を構成する昇降用ガスシリンダは、例えば市販品であり、筒体45とこれにスライド自在に嵌まったロッド46とを有している。ロッド46は上向きに突出している。ロッド46の先端面に、被作用部材の一例としての開閉用ボタン47が設けられている。開閉用ボタン47は、ガスシリンダ内のバルブを開閉するためのものであり、上下方向に摺動可能に設けられている。開閉用ボタン47が下向きに押し込まれることで、ガスシリンダは伸縮自在なフリー状態になる。座支持部材の一例としての固定ベース9の後部に設けた筒状ボス部27に、ロッド46の上端部が下方から嵌め込まれて固着されている。
(4).ガスシリンダ操作ユニット
筒状ボス部27の上面に、ガスシリンダ操作ユニット43が着脱可能に取り付けられている。ガスシリンダ操作ユニット43は、コントロールケーブル42のワイヤー40の一端部が連結される被操作部材の一例としてのレバー片48と、レバー片48を回動自在に支持する保持部材49と、保持部材49を回動自在に支持するベース部材50とを備えている。
図9~11に示すように、レバー片48は、例えば樹脂製であり、側方視で略L字形の形態を有し、上下方向に延びるワイヤー保持部51と、ワイヤー保持部51の下端部から前向きに突出する作用部52とを備えている。ワイヤー保持部51の下端部の左右両側面には、回動中心となる略円柱形の軸部53が左右外向きにそれぞれ突設されている。
また、ワイヤー保持部51の上端部には、ワイヤー40の一端部に設けられた球状の一端部側エンド部材40aを保持するエンド保持穴54と、エンド保持穴54につながってワイヤー保持部51の上端に形成された前後長手の係止溝55が形成されている。エンド保持穴54は、ワイヤー保持部51の後面に開口している。例えば、係止溝55にワイヤー40を差し入れながら一端部側エンド部材40aをエンド保持穴54に後ろ側から嵌め込み、ワイヤー40を前向きの姿勢に変えるという手順を取ることで、ワイヤー40の一端部がレバー片48に抜け不能に保持される。
図9~11に示すように、保持部材49は、例えば樹脂製であり、レバー片48を回動自在に支持する一方、コントロールケーブル42のケーシング41の一端部を保持するものである。保持部材49は、レバー片48を挟んで配置される一対のレバー片保持部56と、一対のレバー片保持部56の上端部前部位同士を連結するケーシング保持部57と、レバー片保持部56の下端部に外向きに突設された円弧状のフランジ部58とを備えている。
各レバー片保持部56には、レバー片48に対峙する内壁面56aに直交する方向に貫通する軸受け穴59がそれぞれ形成されている。また、一対のレバー片保持部56の上端部同士を連結するケーシング保持部57は、レバー片保持部56の前面上部から前向きに突設されており、薄肉で上向き凸状に湾曲している。このため、図11(A),(B)に二点鎖線で示すように、保持部材49は、一対のレバー片保持部56の下端部同士の間隔が変化するように姿勢変更可能である。レバー片48を保持部材49に取り付ける際には、一対のレバー片保持部56の下端部同士の間隔を押し広げながら、一対のレバー片保持部56の間にレバー片48を差し入れ、軸受け穴59にレバー片48の軸部53を嵌め込む。これにより、レバー片48は保持部材49に回動自在に軸支される。
また、ケーシング保持部57は、ケーシング41の一端部を軸方向に抜け不能に保持するものであり、下向きに開口したケーシング保持溝60を備えている。一方、ケーシング41の一端部には、環状溝61aを有する一端部側ホルダー61が固定されている。ケーシング保持溝60には、一端部側ホルダー61の環状溝61aに噛み合う凸条60aが形成されている。凸条60aは、一部分が環状溝61aの外径よりも幅狭に形成されており、環状溝61aが凸条60aに嵌め込まれることで、ケーシング41の一端部側ホルダー61が抜け不能かつ軸方向に移動不能に保持される。
図9~11に示すように、ベース部材50は、例えば樹脂製であり、略C字形の形態を有するベース本体部62を備えている。ベース本体部62のベース内壁62aは略円筒形に形成されている。また、ベース本体部62には、ベース内壁62aの径方向で内部空間と外部とをつなぐケーシング保持部挿通溝62bが設けられている。ケーシング保持部挿通溝62bは、保持部材49のケーシング保持部57の幅よりもわずかに幅広に形成されている。
ベース内壁62aの下部には、ベース内壁62aの中心軸62cと同心のフランジ部保持溝63と傾斜面部64が形成されている。フランジ部保持溝63は、保持部材49のフランジ部58が嵌り込む溝であり、ベース内壁62aの下端部とは間隔を空けて設けられている。傾斜面部64は、フランジ部保持溝63とベース内壁62aの下端部との間に設けられており、フランジ部保持溝63側(上方側)ほど径が小さくなるように、中心軸62cに対して傾斜している。
また、ベース本体部62の外周部には、外向きに突設された一対の係止突起部65と1つの取付け部66とが設けられている。一対の係止突起部65は、ケーシング保持部挿通溝62bを挟んで設けられている。取付け部66は、ケーシング保持部挿通溝62bとは反対側に設けられており、上下方向に貫通するビス挿通穴66aを有している。
ベース部材50には、レバー片48が取り付けられた保持部材49が中心軸62cを中心として回動自在に保持されている。ベース部材50への保持部材49の取付け工程について説明する。上述のように、保持部材49は、図11(B)に二点鎖線で示すように、一対のレバー片保持部56の下端部同士の間隔が狭まるようにも姿勢変更可能である。保持部材49をベース部材50に取り付ける際には、フランジ部58を下側にするとともにケーシング保持部57をケーシング保持部挿通溝62bに位置合わせしながら、ベース部材50内部に下側から保持部材49を上向きに押し込む。その過程で、保持部材49のフランジ部58は、ベース部材50の傾斜面部64に沿って内側へ変位しながら上向きに移動し、最終的にフランジ部保持溝63に嵌り込む。これにより、保持部材49は、ベース部材50に、中心軸62cを中心として回動自在かつ抜け不能に保持される。なお、保持部材49をベース部材50への取付け後におおよそ180°回転させると、保持部材49とベース部材50との位置関係が図7等に示す状態になる。
レバー片48、保持部材49及びベース部材50からなるガスシリンダ操作ユニット43は、コントロールケーブル42の一端部が取り付けられた後、固定ベース9の筒状ボス部27の上に配置される。図9(A)に示すように、レバー片48の作用部52は、ガスシリンダの開閉用ボタン47の直上に配置される。この実施形態では、保持部材49の回動中心となる中心軸62cは、ガスシリンダの筒体45及びロッド46の軸方向(開閉用ボタン47の摺動方向)に沿って設けられている。つまり、ベース部材50は、レバー片48の作用部52が開閉用ボタン47に対向配置される状態を維持しながら保持部材49を回動自在に支持するように設定されている。
また、ガスシリンダ操作ユニット43の後側には、左右横長のばね支持棒部材69が配置されている。ばね支持棒部材69は、ガスシリンダ操作ユニット43を挟んで配置される左右一対のロッキングばね(図示は省略)の後部を支持するものである。ばね支持棒部材69の左右両端部は、固定ベース9の後部左右角部位の近傍に設けられた左右一対の受け座70と、左右一対の押さえ部材取付け座71にねじ72にて取り付けられる左右一対の押さえ部材73にて、上下移動不能に保持される。なお、ばね支持棒部材69の左右両端部は、ロッキングばねのばね力により、受け座70及び押さえ部材73側へ後向きに付勢される。
ベース部材50の一対の突起部65は、その先端部がばね支持棒部材69の直下に位置するようにして、ばね支持棒部材69に当接又は近接して配置されている。これにより、ベース部材50の後部の浮き上がり(上向き移動)が防止されるとともに、ビス67を中心とするベース部材50の回動が防止されている。
(5).操作レバー及びコントロールケーブル
図6,7,12に示すように、座メインアウターシェル20の操作レバー支持部44に取り付けられる操作レバー39は、基本的には板状になっており、その基端部には、回動中心となる前後一対の軸部74が前後外向きに突設されている。また、操作レバー39の基端部には下向きに突出したワイヤー保持部75が一体に設けられている。ワイヤー保持部75に、ケーシング41に摺動自在に挿通したワイヤー40の他端部が係止されている。具体的には、ワイヤー40の他端部には球状の他端部側エンド部材40bが固定されており、ワイヤー保持部75に設けられたエンド保持穴76、他端部側エンド部材40bが抜け不能に保持されている。
操作レバー支持部44は、座メインアウターシェル20の右側面に設けられたレバー挿通穴77と、操作レバー39の軸部74を係止する前後一対の軸受け部78と、レバー挿通穴77を左側で囲うように座メインアウターシェル20に設けられたストッパー保持部79とを有する。操作レバー39の装着工程では、ワイヤー40の他端部側エンド部材40bを保持した操作レバー39の先端部を座メインアウターシェル20の内側からレバー挿通穴77を介して外向きに突出させ、軸部74を軸受け部78に配置する。そして、下向き略U字形のレバーストッパー部材80を上方からストッパー保持部79を差し入れることで、操作レバー39は、操作レバー支持部44に、軸部74を中心として回動可能かつ抜け不能に配置される。
また、操作レバー支持部44には、ストッパー保持部79の左側に、ケーシング41の他端部を軸方向に抜け不能に保持するケーシング保持部81が設けられている。ケーシング保持部81は上向きに開口している。一方、ケーシング41の他端部には、環状溝82aを有する他端部側ホルダー82が固定されている。ケーシング保持部81には、他端部側ホルダー82の環状溝82aに噛み合う前後一対の凸条83が形成されている。凸条83,83の上端部同士の間隔は、環状溝82aの外径よりも幅狭に形成されており、環状溝82aが凸条83,83の間に上方から下向きに嵌め込まれることで、他端部側ホルダー82が抜け不能かつ軸方向に移動不能に保持される。他端部側ホルダー82から操作レバー39に向かって延びるワイヤー40は、ストッパー保持部79の左側壁部に設けられたワイヤー挿通溝79aを介して操作レバー39に連結されている。
図7や図12(A)に示すように、コントロールケーブル42は、操作レバー支持部44からケーブル挿通穴20aへ向けて左向きに導かれている。座メインアウターシェル20に上向きに突設された複数のリブのうち、ケーブル挿通穴20aと操作レバー支持部44との間に位置する2本の前後長手リブ84の上部に、上向き開口のケーブル案内凹部84aがそれぞれ設けられている。ケーブル案内凹部84a内にはコントロールケーブル42の中途部が配置される。そして、ケーブル案内凹部84aの上向き開口部の直上に、座インナーシェル17(図3参照)が配置される。また、座メインアウターシェル20には、操作レバー支持部44と右側の前後長手リブ84との間に、前後に間隔を空けて上向きに突設されたケーブル保持突起部85,86が設けられている。ケーブル保持突起部85,86の間にコントロールケーブル42の中途部が配置された状態で、一方のケーブル保持突起部86にプッシュナット等の係止具87が取り付けられる。このようにして、コントロールケーブル42のうち座メインアウターシェル20上に配置されている部分の上下方向及び前後方向への移動が規制される。
(6).上下昇降操作
図9(A)及び図12(B)に二点鎖線で示すように、操作レバー39が操作されて上向き回動されると、ワイヤー40が操作レバー39側へ引っ張られる。ガスシリンダ操作ユニット43のレバー片48のワイヤー保持部51が軸部53を中心として前向き回動する一方、作用部52が軸部53を中心として下向き回動する。これにより、ガスシリンダの開閉用ボタン47が下向きに押し込まれ、ガスシリンダが伸縮自在なフリー状態(ロッド46が上下に移動可能な状態)になる。
操作レバー39の操作が解除されると、開閉用ボタン47が上向きに移動して元の位置に復帰し、ガスシリンダは伸縮不能なロック状態になる。なお、開閉用ボタン47が元の位置に復帰することで、レバー片48の作用部52が上向き回動する一方、ワイヤー保持部51が後向き回動する。これにより、ワイヤー40がガスシリンダ操作ユニット43側へ引っ張られ、操作レバー39が下向き回動して操作前の状態に戻る。このように、操作レバー39を操作前の状態に戻すためのばね等が不要になっている。
(7).ガスシリンダ操作ユニットの回動
次に、背もたれ3が傾動したときのガスシリンダ操作ユニット43の動作について説明する。図6を参照しながら説明すると、上述のように、背もたれ3が後傾していない状態(実線参照)から後傾動すると、座2は、背もたれ3の後傾動に連動して後退及び後傾する(二点鎖線参照)。そうすると、座2の座メインアウターシェル20に取り付く操作レバー39及びコントロールケーブル42のケーシング41の他端部側が後斜め下向きに変位する。つまり、操作レバー39及びケーシング41の他端部側は、固定ベース9に取り付くガスシリンダ操作ユニット43及びケーシング41の一端部側に対して変位し、ケーシング41の両端部間の距離が短くなる(変化する)。
図6,7や図13(A)に示すように、背もたれ3がニュートラル状態(後傾していない状態)のときは、ガスシリンダ操作ユニット43においてケーシング41の一端部を保持するケーシング保持部57は前向きに配置されている。そして、ケーシング41の一端部側は、平面視でおおむね前後方向に沿って配置されている。背もたれ3が後傾動にともなってケーシング41の両端部間の距離が短くなると、ケーシング41が変形する。このとき、ガスシリンダ操作ユニット43において、ベース部材50に回動自在に支持されている保持部材49のケーシング保持部57は、コントロールケーブル42の余長を逃がすように、左向き回動する。
他方、背もたれ3が後傾している状態から前傾動するとき(例えば背もたれ3がニュートラル状態にもどるとき)には、操作レバー39及びケーシング41の他端部側が前斜め上向きに変位して、ケーシング41の両端部間の距離が長くなる。このとき、ガスシリンダ操作ユニット43において、保持部材49のケーシング保持部57は、ケーシング41の一端部とケーシング保持部57との間にかかる力が低減されるように、右向き回動する。
このように、この実施形態は、ケーシング41の両端部間の距離の変化に応じて、コントロールケーブル42のルートを自動的に最適化できるとともに、ケーシング41の一端部とケーシング保持部57との間にかかる力を低減でき、ケーシング41の外れや脱落を防止できる。
また、背もたれ3の傾斜角度にかかわらず、操作レバー39が操作されてワイヤー40が引っ張られたときには、湾曲しているワイヤー40が直線状になろうとする力がケーシング41に働き、ケーシング41がわずかに変形する。このとき、この実施形態では、ケーシング41の一端部側ホルダー61と保持部材49との間にかかる力が低減するように保持部材49が回動する。したがって、この実施形態の椅子は、操作レバー39の操作時のワイヤー40の摺動抵抗を低減でき、操作感が向上する。
また、この実施形態では、被操作部材の一例としてのレバー片48は保持部材49と一緒に回動する。つまり、レバー片48の回動軸(軸部53)とケーシング41の一端部側ホルダー61との位置関係(厳密にはレバー片48の回動軸(軸部53)と一端部側ホルダー61との位置関係)は、保持部材49の向きに関わらず常に一定である。したがって、操作レバー39の操作感が安定する。
なお、この実施形態では、上述のように、コントロールケーブル42のうち、操作レバー39と左側のケーブル案内凹部84aとの間に位置する部分は、前後方向及び上下方向への移動が規制される。したがって、コントロールケーブル42のうち、背もたれ3のロッキングによって形状(ルート)が大きく変化する部分は、左側のケーブル案内凹部84aとガスシリンダ操作ユニット43との間の部分になる。
また、この実施形態では、背もたれ3がニュートラル状態のときに、ガスシリンダ操作ユニット43においてケーシング保持部57が少し左前向きに配置され、平面視でケーシング41の一端部の軸が前方向に対して左向きに少し傾斜するように設定されている。これにより、背もたれ3が後傾動したときには、ケーシング保持部57は確実に左向き回動するので、ケーシング41の外れや脱落を確実に防止できる。
以上説明したように、この実施形態の椅子では、ケーシング41に摺動自在に挿通されたワイヤー40のエンド部材40a(ワイヤーの一端部の一例)がレバー片48(被操作部材の一例)に連結され、レバー片48の作用部52がガスシリンダの開閉用ボタン47(被作用部材の一例)に対向配置される。また、ワイヤー40のエンド部材40b(ワイヤーの他端部の一例)が操作レバー39に連結されて、操作レバー39の操作により開閉用ボタン47が操作される。そして、この実施形態の椅子は、レバー片48を回動自在に支持する一方でケーシング41の一端部側ホルダー61(ケーシング一端部の一例)を保持する保持部材49と、レバー片48の作用部52が開閉用ボタン47に対向配置される状態を維持しながら保持部材49を回動自在に支持するベース部材50とを備えている。そして、ケーシング41の一端部側ホルダー61を保持する保持部材49は、ベース部材50に回動自在に支持されているので、ケーシング41の一端部側ホルダー61と保持部材49との間にかかる力が低減するように回動する。これにより、この実施形態の椅子は、ケーシング41の一端部側ホルダー61と保持部材49との間にかかる力を低減でき、ケーシング41の脱落を抑制できる。
また、この実施形態の椅子では、操作レバー39が操作されてワイヤー40が引っ張られたときにケーシング41の一端部側ホルダー61と保持部材49との間にかかる力が低減するように保持部材49が回動する。したがって、この実施形態の椅子は、操作レバー39の操作時のワイヤー40の摺動抵抗を低減でき、操作感が向上する。
また、この実施形態の椅子では、操作レバー39を支持する一方でケーシング41の他端部側ホルダー82(ケーシング他端部の一例)を保持する座メインアウターシェル20(操作レバー支持部材の一例)が、開閉用ボタン47に対して変位可能に構成されおり、座メインアウターシェル20の変位に伴ってケーシング41が変形して保持部材49が回動する。したがって、ケーシング41の一端部側ホルダー61と保持部材49との間にかかる力が低減され、ケーシング41の脱落が抑制される。
また、この実施形態の椅子は、保持部材49が回動することで、ケーシング41の一端部側ホルダー61と保持部材49との間にかかる力を低減できるので、ケーシング41及びワイヤー40を必要以上に長くしなくてもよく、低コストかつコンパクトにケーシング41及びワイヤー40を装着できる。
また、この実施形態の椅子において、上下方向に延びる脚支柱7を構成する上下昇降用のガスシリンダの上端部に固定ベース9(座支持部材の一例)が固着されており、レバー片48の作用部52は、ガスシリンダの上端面に上向きに突出する開閉用ボタン47の直上に配置され、ベース部材50は、例えば1本のビス67(固着具の一例)にて固定ベース9に着脱可能に取り付けられる。したがって、レバー片48及び保持部材49を組み付けたベース部材50をビス67によって固定ベース9に簡単に取り付けることができ、組立性やメンテナンス性が向上される。
また、この実施形態の椅子において、ベース部材50は、保持部材49を360°回動自在に支持しているので、ベース部材50に対するケーシング41の一端部側ホルダー61の向きを任意な向きに変更可能である。したがって、例えば仕様変更等によってベース部材50の取付け位置や操作レバー39の取付け位置、コントロールケーブル42の長さ等が変更される場合に、レバー片48、保持部材49及びベース部材50をそのまま流用でき、設計コストや製造コストの低減を図れる。
以上、本願発明の具体例を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、上記実施形態では、操作レバーの操作により操作される被作用部材は、上下昇降用のガスシリンダの開閉用ボタン47であるが、被作用部材はこれに限定されず、操作レバーにワイヤー連結されるものであれば、本願発明を適用可能である。例えば、特開2013-103067号公報に開示されているようなロッキング操作用のガスシリンダの操作などに本願発明を適用できる。
また、上記実施形態では、保持部材49の回動軸(中心軸62c)は、被作用部材の一例としての開閉用ボタン47の摺動方向と一致しているが、本願発明における保持部材の回動軸は、被作用部材の摺動方向に対して傾斜していてもよい。また、保持部材の回動軸が延びる方向は、特に限定されず、例えば左右方向や前後方向などであってもよい。
また、上記実施形態では、ベース部材50は保持部材49を360°回動自在に支持しているが、本願発明において保持部材の回動可能範囲は360°未満の範囲であってもよい。