本発明は、折り畳まれた吸収性物品に関するものであり、詳細には、テープタイプの使い捨ておむつや尿パッドなど、装着する際に平面状に広げて用いられるいわゆる展開型(オープンタイプ)の吸収性物品であって、当該吸収性物品が折り返されることにより形成された折り畳まれた吸収性物品に関するものである。
まず、本発明で用いられる吸収性物品の基本構成について、図面を参照して説明する。図面では、吸収性物品の一例として尿パッドが示されている。なお本発明は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。
図1は、吸収性物品をトップシート側から見た平面図を表し、図2は、図1に示した吸収性物品のII-II断面図を表す。本願の図では、矢印xが幅方向、矢印yが前後方向を表し、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が厚み方向zを表す。図1では、図面の上側が吸収性物品の前側に相当し、図面の下側が吸収性物品の後側に相当する。
吸収性物品1(1A)は、トップシート2とバックシート3とこれらの間に設けられた吸収性コア4とを有する。トップシート2は吸収性コア4の肌面側に配され、吸収性物品を着用した際に着用者側に位置するシートである。バックシート3は吸収性コア4の外面側に配され、吸収性物品を着用した際に着用者とは反対側、すなわち外側に位置するシートである。着用者から排泄された尿等は、トップシート2を透過して吸収性コア4により収容される。バックシート3は、排泄物が外部へ漏れるのを防いでいる。
吸収性物品1は、前後方向yと幅方向xを有する。前後方向yとは、吸収性物品を着用した際に着用者の股間の前後方向に延びる方向に相当する。幅方向xとは、吸収性物品と同一面上にあり前後方向yと直交する方向を意味し、吸収性物品を着用した際の着用者の左右方向に相当する。また、吸収性物品の肌面側とは、吸収性物品を着用した際の着用者の肌に向く側を意味し、吸収性物品の外面側とは、吸収性物品を着用した際の着用者とは反対に向く側を意味する。
トップシート2は液透過性であることが好ましい。トップシート2としては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。また、トップシート2として、織布、編布、有孔プラスチックフィルム等を用いてもよい。
バックシート3は液不透過性であることが好ましい。バックシート3としては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等を用いることができる。
吸収性コア4は、尿等の排泄物を吸収できる吸収性材料を含むものであれば特に限定されない。吸収性コア4としては、例えば、吸収性材料を所定形状に成形した成形体を用いることができる。吸収性コア4は、紙シート(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)や液透過性不織布等の被覆シートで覆われてもよい。吸収性材料としては、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維や、ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂等が挙げられる。また、吸水性材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、PET等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の熱融着性繊維が含まれてもよい。これらの熱融着性繊維は、尿等との親和性を高めるために、界面活性剤等により親水化処理がされていてもよい。
吸収性材料は、尿等の吸収速度を高める点から、親水性繊維を含むことが好ましい。また、吸収容量を高める点からは、吸収性材料は吸水性樹脂を含むことが好ましい。従って、吸収性コアは親水性繊維(特にパルプ繊維)と吸水性樹脂を含むことが好ましい。この場合、例えば、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂を混合または散布したものを用いることが好ましい。
吸収性コア4の形状(平面形状)は特に限定されず、例えば、長方形、砂時計形、羽子板形等が挙げられる。なお、吸収性コア4は、着用者の大腿部に挟まれて幅方向xに圧迫されても歪みにくくする点から、砂時計形に形成されることが好ましい。すなわち、吸収性コア4が前後方向yに前側部と後側部とこれらの間の中間部を有し、中間部が前側部と後側部よりも幅狭に形成されていることが好ましい。
吸収性コア4とバックシート3の間には補強シート5が設けられている。補強シート5の詳細は後述する。
吸収性物品1は、肌面側の幅方向xの両側に立ち上がりフラップ6が設けられることが好ましい。立ち上がりフラップ6を設けることにより、尿等の横漏れが防止される。立ち上がりフラップ6は、例えば、トップシート2の幅方向xの両側に、前後方向yに延在するサイドシート7を接合し、サイドシート7の幅方向xの内方部分(立ち上がりフラップ6が立ち上がったときの上端近傍)に弾性部材8を設けることにより形成される。このようにサイドシート7と弾性部材8とを設けることにより、弾性部材8の収縮力によりサイドシート7の幅方向xの内方部分が着用者の肌に向かって立ち上がり、立ち上がりフラップ6が形成される。立ち上がりフラップ6またはサイドシート7は、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成されることが好ましい。
上記に説明した各シートを構成する不織布としては、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、トウ開繊不織布、SMS不織布等を用いることができる。これらの各シートの単位面積あたりの質量は、8g/m2以上が好ましく、10g/m2以上がより好ましく、また40g/m2以下が好ましく、30g/m2以下がより好ましい。
吸収性物品1Aは、図3に示すように平面状に広げた状態で肌面側を内側にして、幅方向xの両側部10がそれらの間の中央部11と重なるように折り返され、これにより図4に示すように幅方向xに3つ折りされる。具体的には、吸収性物品1Aを幅方向xに3分割し幅方向xの両側部10とその間の中央部11とに区分したときに、吸収性物品1Aをトップシート2を上面にして広げた状態で、吸収性物品1Aの幅方向xの両側部10が肌面側を内側にして折り返され、中央部11と重ねられる。このとき、吸収性物品1Aは、幅方向xの両側部10の一方が第1折り曲げ線F1に沿って折り返され、幅方向xの両側部10の他方が第2折り曲げ線F2に沿って折り返される。吸収性物品1Aは、第1折り曲げ線F1または第2折り曲げ線F2よりも幅方向xの外方の部分が両側部10となり、第1折り曲げ線F1と第2折り曲げ線F2の間の部分が中央部11となる。
第1折り曲げ線F1と第2折り曲げ線F2は少なくとも一部が吸収性コア4の存在部分に形成される。従って、吸収性物品1Aは吸収性コア4の存在部分に形成された第1折り曲げ線F1と第2折り曲げ線F2で幅方向xに折り返され、吸収性コア4は幅方向xの中央部11と両側部10に存在することとなる。これにより、折り畳まれた吸収性物品の保形性が高まり、折り畳んだ状態での吸収性物品の取り扱い性が向上する。第1折り曲げ線F1と第2折り曲げ線F2は吸収性コア4の全体を前後方向yに横切るように設けられてもよく、あるいは、第1折り曲げ線F1と第2折り曲げ線F2の一部が吸収性コア4の幅方向xの外方に位置するように形成されてもよい。
第1折り曲げ線F1と第2折り曲げ線F2は略前後方向yに延びるように形成されていればよく、このとき、第1折り曲げ線F1と第2折り曲げ線F2は前後方向yに対して±10°以内の角度で延在していることが好ましく、±5°以内がより好ましい。このように第1折り曲げ線F1と第2折り曲げ線F2が形成されていれば、吸収性物品が略矩形状に折り畳まれやすくなり、折り畳まれた吸収性物品の取り扱い性が向上する。
折り畳まれた吸収性物品1Aは、幅方向xに対しては、第1折り曲げ線F1と第2折り曲げ線F2のみで折り返されていることが好ましい。折り畳まれた吸収性物品1Aの幅方向xの長さは、折り畳む前の吸収性物品1Aの幅方向xの長さの30%以上であることが好ましく、35%以上がより好ましく、また60%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、45%以下がさらに好ましい。
吸収性物品1Aは、このように幅方向xに3つ折りされた状態から、折り返された幅方向xの両側部10を内側にして、さらに前後方向yに折り返されていてもよい。この際、幅方向xに3つ折りされた吸収性物品1Aは、前後方向yに2つ折りまたは3つ折りされることが好ましく、前後方向yに3つ折りされることがより好ましい。これにより、折り畳まれた吸収性物品をよりコンパクトに形成することができる。
吸収性物品1Aは、図4に示すように、幅方向xに3つ折りされた状態で、折り返された幅方向xの両側部10に存在する吸収性コア4が、前後方向yの少なくとも一部で互いに離間している。これにより、折り畳まれた吸収性物品が過度に厚く形成されず、折り畳まれた吸収性物品を積み重ねて束にした際に、安定して束に形成することができる。また、この束を包装容器に収容した際に、折り畳まれた吸収性物品をより密に包装容器に収容することが可能となる。
以下において、折り返された幅方向xの両側部10の吸収性コア4が離間した部分を「コア離間部」と称し、図面では符号「9」を付して表す。図3では、吸収性物品を幅方向xに3つ折りした際にコア離間部9が形成される領域を、クロスハッチングで示している。コア離間部9は、折り返された幅方向xの両側部10が存在する厚み方向zの範囲において、両側部10に設けられた吸収性コア4に挟まれた部分に相当し、コア離間部9の下側には中央部11の吸収性コア4が存在しうる。図3および図4では、コア離間部9が吸収性コア4の前後方向yの一部のみに形成されているが、コア離間部9は吸収性コア4の前後方向yの全体にわたって形成されていてもよい。すなわち、吸収性物品1Aが折り畳まれた状態で、折り返された幅方向xの両側部10の吸収性コア4が前後方向yの全体にわたって互いに離間していてもよい。
コア離間部9が形成されるように折り畳まれた吸収性物品1Aは、折り畳まれた状態で、コア離間部9と重なる部分の剛性が相対的に低くなる。そのため、これを包装容器に収容すると、折り畳まれた吸収性物品が包装容器内で圧迫を受け、剛性が相対的に低下した部分で歪みが生じやすくなる。具体的には、コア離間部9と重なった部分で中央部11に位置する吸収性コア4が歪んだり、皺が生じたりしやすくなる。特に折り畳まれた吸収性物品に対して幅方向xへの圧迫がかかると、このような歪みや皺が生じやすくなる。その結果、吸収性物品を包装容器から取り出して着用する際に、吸収性物品の一部に歪んだ跡が残り、着用者の肌へのフィット性が低下したり、着用感が低下するおそれが出てくる。
そこで本発明では、吸収性コア4とバックシート3の間に補強シート5を設けている。吸収性コア4が被覆シートで覆われている場合は、補強シート5は、吸収性コア4と被覆シートの間に設けられてもよく、この場合も吸収性コア4とバックシート3の間に補強シート5が設けられることとなる。もちろん、吸収性コア4の被覆シートとバックシート3の間に補強シート5が設けられるものであってもよい。
補強シート5は、コア離間部9が形成された吸収性物品1Aの前後方向yの範囲の少なくとも一部であって、吸収性物品1Aの幅方向xの中央部11に配される。図3および図4では、コア離間部9が形成された吸収性物品1Aの前後方向yの範囲が矢印Sで示され、補強シート5は、中央部11の矢印Sで示された前後方向yの範囲の少なくとも一部に配される。このように補強シート5を配することにより、折り畳まれた吸収性物品1Aのコア離間部9と重なる部分の剛性の低下が抑えられ、当該部分で歪みや皺が生じにくくなる。補強シート5は、中央部11であれば、矢印Sで示された前後方向yの範囲以外の部分に配されてもよく、例えば、吸収性物品1Aの中央部11の全体あるいは中央部11の吸収性コア4の存在部分の全体に補強シート5が設けられてもよい。ただし補強シート5は、吸収性物品1Aの幅方向xの両側部10には配されない。これにより、吸収性物品を折り畳む際に、第1折り曲げ線F1と第2折り曲げ線F2で折り返すことが容易になり、また、折り返された幅方向xの両側部10が嵩張りにくくなる。
補強シート5は、吸収性物品1Aの幅方向xの中心線(前後方向yに延びる中心線)を含んで配置されることが好ましい。具体的には、補強シート5は、コア離間部9が形成された吸収性物品1Aの前後方向yの範囲の少なくとも一部において、吸収性物品1Aの幅方向xの中心線を含んで配置されることが好ましい。
補強シート5は、コア離間部9を幅方向xに横断するように配されることが好ましい。具体的には、補強シート5は、コア離間部9が形成された吸収性物品1Aの前後方向yの範囲の少なくとも一部で、コア離間部9を幅方向xに横断するように(すなわち、幅方向xの一方側の両側部10と他方側の両側部10に跨がって)配されることが好ましい。これにより、吸収性物品1Aの中央部11のコア離間部9と重なる部分が歪みにくくなる。
補強シート5は、吸収性コア4よりも前後方向yの外方に延在していないことが好ましい。すなわち、吸収性コア4よりも前後方向yの前方および後方に延在していないことが好ましい。これにより、吸収性物品1Aの前後端部の吸収性コア4が存在しない部分で、吸収性物品1Aが必要以上に硬くなって肌触りが低下することを防止することができる。補強シート5は、より好ましくは、吸収性コア4の外縁よりも外方に延在しないように設けられる。
補強シート5は、幅方向xと前後方向yにある程度の長さを有していることが好ましい。具体的には、補強シート5は、幅方向xの長さが30mm以上であることが好ましく、50mm以上がより好ましく、70mm以上がさらに好ましく、前後方向yの長さが30mm以上であることが好ましく、50mm以上がより好ましく、70mm以上がさらに好ましい。
補強シート5としては、不織布、織布、編布、プラスチック板等を用いることができる。補強シート5の形状は特に限定されないが、略矩形状であることが好ましい。補強シート5の構成の詳細は後述する。
吸収性物品1Aは、上記のように幅方向xに3つ折りされた状態から、折り返された幅方向xの両側部10を内側にして、さらに前後方向yに折り返されることが好ましい。これにより、折り畳まれた吸収性物品をよりコンパクトに形成することができる。この場合、吸収性物品1Aは略幅方向xに延びる折り曲げ線に沿って折り返されることとなるが、補強シート5はこの折り曲げ線が形成される箇所には配置されないことが好ましい。これにより、吸収性物品を折り畳む際に当該折り曲げ線で折り返すことが容易になる。
吸収性物品1Aがさらに前後方向yに折り返される場合、折り畳まれた吸収性物品の厚みが過度に厚くならないようにする点から、吸収性物品1Aは、前後方向yに2つ折り、3つ折りまたは4つ折りされることが好ましい。なかでも、吸収性物品1Aは前後方向yに3つ折りされることが好ましく、これにより折り畳まれた吸収性物品を平面方向にも厚み方向にも適度にコンパクトに形成できる。
図5~図7には、吸収性物品を幅方向に3つ折りして、折り返された幅方向の両側部を内側にしながらさらに前後方向yに3つ折りすることにより、折り畳まれた吸収性物品を形成する方法を示した。図5には、吸収性物品として尿パッドをトップシート側から見た平面図を示し、図6には、図5に示した吸収性物品を幅方向xに3つ折りした状態の平面図を示し、図7は、図6に示した吸収性物品をさらに前後方向yに3つ折りした状態の斜視図を示している。
図5~図7に示した吸収性物品1(1B)は、図1~図4に示した吸収性物品1Aと補強シート5の配置態様が異なるが、それ以外は吸収性物品の基本構成は同じである。従って、吸収性物品1Bの基本構成や吸収性物品1Bの幅方向xへの折り返しに関する説明は、上記の吸収性物品1Aにおける説明が参照される。
吸収性物品1Bは、図5に示すように平面状に広げた状態から、肌面側を内側にして幅方向xに3つ折りされ、さらに図6に示すように幅方向xに3つ折りされた状態から、折り返された幅方向xの両側部10を内側にして、図7に示すように、前後方向yの前側部12と後側部13がそれらの間の中間部14と重なるように折り返されて前後方向yに3つ折りされている。吸収性物品1Bは、第3折り曲げ線F3に沿って前後方向yの前側部12が折り返され、第4折り曲げ線F4に沿って前後方向yの後側部13が折り返されている。吸収性物品1Bは、第3折り曲げ線F3よりも前後方向yの前方部分が前側部12となり、第4折り曲げ線F4よりも前後方向yの後方部分が後側部13となり、第3折り曲げ線F3と第4折り曲げ線F4の間の部分が中間部14となる。
第3折り曲げ線F3と第4折り曲げ線F4は吸収性コア4の存在部分に形成される。従って、前側部12と後側部13と中間部14にはそれぞれ吸収性コア4が存在することとなり、これにより、折り畳まれた吸収性物品をコンパクトに形成することができる。
第3折り曲げ線F3は、吸収性物品1Bの前後方向yの相対位置として前側端を0%とし後側端を100%としたときに、25%~40%の位置にあることが好ましく、30%~37%の位置にあることがより好ましい。第4折り曲げ線F4は、吸収性物品1Bの前後方向yの相対位置として前側端を0%とし後側端を100%としたときに、60%~75%の位置にあることが好ましく、63%~70%の位置にあることがより好ましい。
第3折り曲げ線F3と第4折り曲げ線F4は略幅方向xに延びるように形成されていればよく、このとき、第3折り曲げ線F3と第4折り曲げ線F4は幅方向xに対して±10°以内の角度で延在していることが好ましく、±5°以内がより好ましい。このように第3折り曲げ線F3と第4折り曲げ線F4が形成されていれば、吸収性物品が略矩形状に折り畳まれやすくなり、折り畳まれた吸収性物品の取り扱い性が向上する。
吸収性物品1Bは、図7に示すように、前側部12と後側部13と中間部14が互いに重なるように折り畳まれることが好ましい。図7に示した吸収性物品1Bは、第3折り曲げ線F3に沿って折り返された後、第4折り曲げ線F4に沿って折り返され、これにより、吸収性物品1Bは、後側部13と中間部14の間に前側部12が挟まれるように折り畳まれている。なお、吸収性物品1Bは、前側部12と中間部14の間に後側部13が挟まれるように折り畳まれてもよい。
吸収性物品1Bでは、補強シート5は前側部12および/または後側部13に配されることが好ましい(図5および図6を参照)。吸収性物品1Bが前後方向yに3つ折りされた状態で幅方向xの力が加わった場合、折り畳まれた吸収性物品は中間部14よりも前側部12や後側部13の方が歪みやすくなる。そのため、補強シート5は、少なくとも吸収性物品1Bの前側部12および/または後側部13に配されることが好ましい。
一方、補強シート5は、吸収性物品1Bの中間部14には配されないことが好ましい。中間部14は、吸収性物品を着用した際に着用者の股間部に当てられる部分であり、尿等の漏れを防止する観点からは、吸収性物品は中間部14において股間部へのフィット性ができるだけ確保されることが好ましい。しかし、中間部14に補強シート5を配した場合、補強シート5によって中間部14の剛性が高まり、股間部へのフィット性が低下するおそれがある。従って、補強シート5は中間部14には配されないことが好ましい。なお、前後方向yに3つ折りされた吸収性物品1Bでは、中間部14は第3折り曲げ線F3と第4折り曲げ線F4に挟まれることによって、幅方向xの力が加わっても歪みが生じにくく、補強シート5が配されなくても保形性を確保しやすくなる。
補強シート5は、吸収性物品1Bを前後方向yに3つ折りしたときに、前側部12と後側部13のうち内側に位置する一方に補強シート5が配されることが好ましい。具体的には、前側部12と中間部14の間に後側部13が挟まれるように前後方向yに3つ折りされる場合は、後側部13に補強シート5が配されることが好ましく、一方図7に示すように、後側部13と中間部14の間に前側部12が挟まれるように前後方向yに3つ折りされる場合は、前側部12に補強シート5が配されることが好ましい。このように補強シート5が配されていれば、補強シート5が折り畳まれた吸収性物品の内部奥深くに位置して、補強シート5が芯材のように機能し、より少ない数の補強シート5の設置によって折り畳まれた吸収性物品全体の保形性を高めることができる。
補強シート5の構成について詳しく説明する。補強シートとしては、不織布、織布、編布、プラスチック板等を用いることができる。なお、補強シートはある程度の剛性を有していることが好ましく、そのようなシート材料としては、比較的目付が大きい不織布やプラスチック板を用いることが好ましい。
補強シートが不織布から構成される場合、当該不織布の目付(単位面積当たりの質量)は、45g/m2以上が好ましく、55g/m2以上がより好ましく、65g/m2以上がさらに好ましい。当該不織布の目付の上限としては、補強シートの嵩が増えすぎないようにする点から、500g/m2以下が好ましく、300g/m2以下がより好ましく、150g/m2以下がさらに好ましい。補強シートに好適に用いられる不織布の種類としては、比較的嵩高く形成することができる点から、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布等が好適に挙げられる。
補強シートがプラスチック板から構成される場合、プラスチック板はある程度の厚みを有していることが好ましい。プラスチック板の厚みは、例えば、150μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましい。これにより、補強シートにある程度の剛性を付与することが容易になる。当該プラスチック板の厚みの上限は特に限定されないが、例えば1.5mm以下が好ましく、1.2mm以下がより好ましく、1.0mm未満がさらに好ましい。プラスチック板の厚みは、シックネスゲージを(厚さ測定機)を用いて測定することができる。例えば、株式会社テクロック社製のシックネスゲージを用いて、プラスチック板をシックネスゲージのアンビルと測定子の間に挟んで、終圧が2.2N以下となるように測定する。なお、アンビルと測定子は、測定対象との接触面が直径10mmの円形であり、接触面が平らなものを用いる。
プラスチック板は、硬く形成され、折り曲げたりすることができないものであってもよく、ある程度軟らかく形成され、折り曲げたりすることができるものであってもよい。なお、プラスチック板が硬すぎると、吸収性物品の破損(例えば、バックシートの破断)の原因になったり、補強シートが配置された部分で吸収性物品の着用者の肌へのフィット性が低下するおそれがあることから、プラスチック板はある程度軟らかく形成され、曲げたりすることができるものが好ましい。
補強シートは、プラスチック板から構成されていることが好ましい。補強シートがプラスチック板から構成されていれば、不織布から構成される場合と比べて、ある程度の剛性を確保しつつ、補強シートの厚みを薄く形成することが可能となる。そのため、吸収性物品の厚みを全体的に薄く形成することができ、また補助シートによって着用者が違和感を覚えることも起こりにくくなる。
なおプラスチック板は、スポンジなどの発泡体から構成されるのではなく、ソリッドな材料から構成されているものである。従って、プラスチック板は非吸液性であることが好ましく、また液不透過性であることが好ましい。プラスチック板は、親水性であってもよく、疎水性や撥水性であってもよい。いずれの場合も、プラスチック板の表面を液体が流れたり移動可能であることが好ましい。
補強シートは、JIS L 1096に準拠したカンチレバー法による剛軟度が50mm~200mmであることが好ましい。補強シートがこのような剛軟度を有していれば、折り畳まれた吸収性物品の保形性が確保されやすくなるとともに、吸収性物品を着用した際に補強シートが設けられた部分で過度に剛性が高まらず、着用者が違和感を覚えにくくなる。補強シートの剛軟度は75mm以上がより好ましく、100mm以上がさらに好ましく、また175mm以下がより好ましく、150mm以下がさらに好ましい。補強シートは、幅方向と前後方向の両方の剛軟度がこのように形成されていることが好ましい。なお、JIS L 1096(2010)の8.21.1のA法のカンチレバー法によれば、試験片は長さ約150mmのものを用いると規定されているが、試験に供する補強シートの長さは適宜調整すればよい。カンチレバー法による剛軟度は、試験片の長さが150mmを超えるものであっても剛軟度の値は基本的に変わらないため、必要に応じて、長さが150mmを超える補強シートを試験片に用いることができる。
補強シートは、吸収性物品の前後方向yよりも幅方向xに曲がりやすいことが好ましい。具体的には、補強シートは、前後方向yのJIS L 1096に準拠したカンチレバー法による剛軟度の値が、幅方向xの同法による剛軟度の値よりも大きいことが好ましい。これにより、吸収性物品の装着が容易になる。本発明のような展開型の吸収性物品は、介護者等が着用者の股間に装着する際、吸収性物品を幅方向xに折り曲げて(すなわち前後方向yに長く折り曲げて)着用者の股間に通すことが便利であるところ、補強シートの幅方向xの剛軟度が低く形成されていれば、吸収性物品を幅方向xに折り曲げて着用者の股間に装着することが容易になる。補強シートは、例えば、前後方向yの剛軟度の値が幅方向xの剛軟度の値よりも3mm以上大きいことが好ましく、5mm以上大きいことがより好ましい。補強シートを前後方向yよりも幅方向xに曲がりやすく形成する方法としては、例えば、補強シートに前後方向yに延びる溝や凸条を設けたり、補強シートに前後方向yに延びる切れ目を設ける方法が挙げられる。
補強シートがプラスチック板から構成される場合、プラスチック板の吸収性コア側には繊維シートが配されていることが好ましい。吸収性コアとバックシートの間に補強シートとしてプラスチック板を設け、その吸収性コア側に繊維シートを配することにより、補強シート上での尿等の拡散性を高めることができる。これについて説明すると、吸収性物品が着用者から排泄された尿等を受けると、尿等は吸収性コアを透過してその一部がプラスチック板に到達する。このとき、吸収性コアの下側にプラスチック板が直接設けられる場合は、プラスチック板に到達した尿等は、プラスチック板上で平面方向に広がるより先に、再び吸収性コアに吸収されやすくなる。これに対してプラスチック板の吸収性コア側に繊維シートを設けた場合は、プラスチック板と繊維シートの間の隙間で尿等が広がりやすくなり、尿等の拡散性が高まる。なお、プラスチック板上での尿等の拡散性を高める点から、プラスチック板は吸収性コア側の面の少なくとも一部が繊維シートと接合されていないことが好ましい。また、繊維シートはプラスチック板のいずれかの部分に接合され、プラスチック板と一体的に取り扱えるように構成されていることが好ましい。
図8および図9には、プラスチック板の吸収性コア側に繊維シートを配した積層体の構成例を示した。図8および図9では、厚み方向zに対して、z1が吸収性コア側を表し、z2がバックシート側を表す。図8および図9のいずれにおいても、プラスチック板21の吸収性コア側に繊維シート22が配されている。図8では、繊維シート22がプラスチック板21の吸収性コア側のみに設けられ、図9では、繊維シート22がプラスチック板21の吸収性コア側に設けられるとともに、繊維シート22の幅方向xの両端部がプラスチック板21のバックシート側に折り返されている。
繊維シート22は、プラスチック板21の吸収性コア側の面の前後方向yの中央50%かつ幅方向xの中央50%の領域24を覆い、かつこの領域24に少なくとも接合されておらず、それ以外の部分でプラスチック板21に接合されていることが好ましい。これにより、プラスチック板21の前後方向yの中央50%かつ幅方向xの中央50%の領域24で、プラスチック板21と繊維シート22の間に隙間が形成され、当該領域24での尿等の拡散性を高めることができる。プラスチック板21の前後方向yの中央50%の領域とは、プラスチック板21の前後方向yの相対位置として前側端を0%とし後側端を100%としたときに、25%~75%の範囲にある領域を意味する。プラスチック板21の幅方向xの中央50%の領域とは、プラスチック板21の幅方向xの相対位置として一方端を0%とし他方端を100%としたときに、25%~75%の範囲にある領域を意味する。
上記の場合、繊維シート22は、プラスチック板21の吸収性コア側の面の前後方向yの中央50%かつ幅方向xの中央50%の領域24を取り囲む周縁部の少なくとも一部に接合されるか、プラスチック板21のバックシート側の面に接合されればよい。図8(b)では、繊維シート22が、プラスチック板21の吸収性コア側の面の接合部23で接合されており、図9(b)では、繊維シート22が、プラスチック板21のバックシート側の面の接合部23で接合されている。繊維シート22のプラスチック板21への接合は、例えば接着剤の塗布や熱溶着により行うことができる。
尿等はプラスチック板21上で前後方向yへの拡散性が高められることが好ましく、このような観点から、繊維シート22がプラスチック板21の吸収性コア側の面を非接合状態で覆う領域の前後方向yの範囲は、プラスチック板21の前後方向yの中央60%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。繊維シート22は、プラスチック板21の吸収性コア側の面の幅方向xの中央50%の領域を前後方向yの略全体にわたって覆い、かつ当該領域に接合されておらず、それ以外の部分でプラスチック板21に接合されていてもよい。
図8では、繊維シート22が、プラスチック板21の吸収性コア側の面において、前後方向yの全体にわたってプラスチック板21の幅方向xの中央50%の領域に接合されず、プラスチック板21の幅方向xの両側50%の領域(すなわち幅方向xの一方端を含む一方側25%と他方端を含む他方側25%の領域)の一部または全部に接合されている。図9では、繊維シート22が、プラスチック板21の吸収性コア側の面に接合されず、プラスチック板21のバックシート側の面の一部(または全部)に接合されている。繊維シート22は、幅方向xの両端部がプラスチック板21に直接接合されていることが好ましく、特に図9では、繊維シート22の幅方向xの両端部がプラスチック板21のバックシート側の面に直接接合され、かつプラスチック板21のバックシート側の面で繊維シート22の幅方向xの両端部が離間していることが好ましい。
繊維シート22としては、織布、編布、不織布等を用いることができる。なお、尿等の前後方向yへの拡散性を高める観点からは、繊維シート22は不織布から構成され、当該不織布の構成繊維が前後方向yに配向していることが好ましい。これにより、尿等が繊維シート内で前後方向yに拡散しやすくなり、またプラスチック板21上の尿等が繊維シート22に接触した際に、繊維シート22の繊維配向方向に沿って尿等が前後方向yに拡散しやすくなる。なお繊維シート22は、液透過性であることが好ましい。
構成繊維が一方向に配向した不織布としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布等が挙げられる。不織布の構成繊維の配向方向は、不織布の表面を顕微鏡等で観察することにより確認できる。例えばスパンボンド不織布では、構成繊維の配向方向について次のように説明される。スパンボンド不織布は、例えば、ポリマー原料を溶融し、紡糸口金から押し出して延伸し、これをコンベアベルト等の上に集積して、ウェブ状に形成することにより得られるが、この際、コンベアベルト上に集積されたウェブ(繊維)はコンベアベルトの進行方向に沿って配列されることとなる。従って、この場合、ウェブ(繊維)はコンベアベルトの進行方向(MD方向)に沿って配向することとなる。エアスルー不織布では、不織布を製造するに当たり、繊維塊形成の際の原料短繊維の集積方法やウェブ形成の際の開繊方法を適宜設定することにより、構成繊維の配向方向を揃えることができる。スパンレース不織布では、不織布を形成する際に、短繊維が分散した水流の流れを制御して繊維を堆積させることで、構成繊維の配向方向を揃えることができる。
繊維シート22はスパンレース不織布またはエアスルー不織布から構成されていることが好ましい。スパンレース不織布やエアスルー不織布は比較的嵩密度を低く形成することができるため、尿等の透過性に優れるものとなる。そのため、吸収性コアを透過した尿等が繊維シートを透過しやすくなり、プラスチック板による尿等の拡散作用をより高めることができる。スパンレース不織布とエアスルー不織布は、当該不織布の構成繊維が前後方向yに配向していることが好ましい。
本発明はまた、上記のように折り畳まれた吸収性物品が複数、包装容器内に収容されている吸収性物品包装体も提供する。本発明の吸収性物品包装体は、吸収性コアとバックシートの間に上記に説明したように補強シートが設けられているため、包装容器内に収容される吸収性物品の保形性が高まり、吸収性物品の中央部のコア離間部と重なった部分で吸収性コアが歪んだり皺が生じにくくなる。そのため、包装容器から吸収性物品を取り出して着用する際に、吸収性物品の一部に歪んだ跡が残りにくくなり、吸収性物品の着用者の肌へのフィット性や着用感を高めることができる。
包装容器は、吸収性物品を収容できるものであれば特に限定されず、例えば、プラスチックフィルム製の袋、紙製の袋、プラスチック製の硬質容器、段ボール等が挙げられる。なかでも、包装容器が軟質材料(例えば、プラスチックフィルムや紙など)から構成されている場合は、包装容器内に吸収性物品がより圧迫された状態で収容されうるが、本発明によれば、このような場合でも、折り畳まれた吸収性物品の一部が歪んだりすることが起こりにくくなる。
包装容器内には、折り畳まれた吸収性物品が複数積み重ねられて束となった状態で収容されていることが好ましい。当該束においては、複数の折り畳まれた吸収性物品が全て同じ方向を向くように(例えば、第1折り曲げ線F1や第3折り曲げ線F3が同じ側に位置するように)積み重ねられてもよく、互い違いに積み重ねられてもよい。
包装容器に収容される吸収性物品の束は1つのみでも、2つ以上でもよい。後者の場合、折り畳まれた吸収性物品の束は、包装容器内で上下に複数段積まれてもよく、左右に並んで配置されてもよく、またこれらの組み合わせでもよい。
包装容器は、開封可能部を有することが好ましい、包装容器の開封可能部を開けることで、包装容器内に収容された吸収性物品を取り出すことができる。開封可能部としては、例えば、ミシン目、蓋、包装容器の取り出し口を塞ぐ粘着テープ等が挙げられる。