本発明は、水草の根がソイル粒に絡み合うよう生育することを助長でき、定植後における安定した生育を確保可能な水草植栽床土を提供するものである。
特に本実施形態に係る水草植栽床土では、増粘剤液とゲル化剤液とを含浸するソイルの成型体よりなるソイル塊と、同ソイル塊に根部が植栽された水草と、を備える点に特徴を有している。
以下、本実施形態に係る水草植栽床土Aの具体的な構成について図2~図5を参照しながら説明する。
まず、図2に水草植栽床土Aの外観を示し、図3に水草植栽床土Aの断面構造を示す。図2に示すように、本実施形態に係る水草植栽床土Aは、水草10と、水草10の根部近傍に配置される略直方体形状に成型されたソイル塊20とで構成している。
図3(a)は、図2のa-a’線における断面を示している。図3(a)に示すように、水草10はソイル塊20に植栽されている。
ソイル塊20は、ソイル粒22と、ゲル部50とで構成している。また、水草10の根部12を構成する主根12aや側根12bは、ゲル部50を巡ってソイル粒22に対し複雑に張り巡らされている。
ソイル粒22は、ソイル塊20の基材(骨材)となるものである。なお、以下の説明において、砂粒と砂の関係の如く、ソイル粒22を多数集合させたものをソイル21と称する。
ソイル粒22は特に限定されるものではないが、その粒径としては、約1mm~5mmとすることができる。
またソイル粒22は、例えば、赤土、黒土を混合した原土を約100℃~500℃、より好ましくは約300℃~400℃で焼成造粒したもの(以下、原土焼成ソイル粒と称する。)とすることができる。
原土焼成ソイル粒は、炭素分、窒素分、硫黄分、リン、カリウム、鉄分等の植物体必須元素の他に、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム等、2価の陽イオンを溶出させる化合物を含んでいる。従って、後に詳述するが、原土焼成ソイル粒をソイル粒22として用いた場合には、原土焼成ソイル粒中に含まれるこれらの化合物は、増粘剤を半凝固状態とする役割を果たす。
またソイル粒22は、火山灰土を主成分とした植栽土壌として機能する粒状の焼成土(以下、焼成火山灰ソイル粒という。)としたり、植栽土壌として火山灰を焼成したシラスバルーンの凝集粒(以下、シラスバルーンソイル粒という。)とすることができる。
焼成火山灰ソイル粒は、火山灰、黒土、赤土を混合して約100℃~500℃で焼成造粒したもので、基本的には原土焼成ソイル粒と同様の化合物を含んでいる。特に火山灰成分に由来する2価の陽イオン化合物を多く含むことで上述の増粘剤を半凝固状態とする役割をより堅実とすることができる。
シラスバルーンソイル粒は、粒径約1mm~5mmに形成したシラスバルーンの凝集粒である。
シラスバルーンは、シラスを高温加熱して発泡して生成したものであり、粒径が約2μm~数百μmの微細な中空球体であって肉眼では粉状である。なお、シラスバルーンは、発泡生成工程において急加熱による爆発的な膨張により破裂したものやクラックを生じたものも含まれる。
このシラスバルーンの粉体で粒径約1mm~5mmの粒状に造粒し、かかる大粒のシラスバルーンとすることにより多孔質状の造粒物であるシラスバルーンソイル粒が形成される。
従って、シラスバルーンソイル粒は、シラスバルーン自体の中空内部空間と、シラスバルーン同士の間に形成される隙間空間との両空間による多孔質状となっている。このため、シラスバルーンソイル粒に、少量の水又は後述する増粘剤液やゲル化剤液に含まれる水分を上述の多数の孔を介して含浸させることで一定の湿潤性を付与することができる。
また、一般的なシラスバルーンの組成は、主成分を二酸化ケイ素とし、他の成分として酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化カルシウム等の2価の陽イオンを溶出させる化合物を含んでいる。従って、原土焼成ソイルと同様、シラスバルーンソイル粒も増粘剤を半凝固状態とする役割を有している。
なお、シラスバルーンソイル粒の他の例として、砂又は黒ぼく土を一部混入させても良い。この場合は砂を例えば鉄系、アルミ系、高分子系の凝集剤で薬品処理し、或いは焼結処理することでシラスバルーンと共に混合して凝集粒に形成することができる。黒ぼく土等は山から採取した土壌を用いるのが望ましい。
また、ソイル21は、ソイル粒22として上述した原土焼成ソイル粒や、焼成火山灰ソイル粒、シラスバルーンソイル粒をそれぞれ単独で用いて構成しても良く、また、これらを適宜混合したり、これらとは別の粒をソイル粒22として構成しても良い。また、通常の植物栽培に用いる植栽用の土壌にシラスバルーン粒を含有率40~70重量%となるように添加してソイル21を構成することも可能である。
図3の説明に戻り、ゲル部50は、ソイル粒22を保持しつつソイル塊20自体を保形する役割を有するものであり、増粘剤液が凝固又は半凝固状態に変化した部位である。
ゲル部50は、本実施形態に係る水草植栽床土Aの特徴的な構成の一つであると言える。すなわち図3(b)において網掛けの濃淡で示すように、ゲル部50は、ソイル塊20の外表面から内方にかけて徐々に軟化する硬度勾配構造(以下、ゲル部硬度勾配構造とも言う。)を備えている。
このゲル部硬度勾配構造は、増粘剤液とソイル21とを混合し保形可能程度の半凝固状態とした集合成型体に対し、外方よりゲル化剤液を含浸させることで形成している。
これにより、ソイル塊20内部には、外方より浸透したゲル化剤液の濃度分布に従い、ソイル塊20の外面近傍から深部中心へかけて、高硬度ゲル部、中硬度ゲル部、低硬度ゲル部のおよそ3段階の連続的な硬度勾配を備えたゲル部硬度勾配構造を有するゲル部50が形成される。
そして、このようなゲル部硬度勾配構造を備えることにより、ソイル塊20の外面近傍領域の高硬度ゲル部は、穿刺立設した水草10をしっかりと支持しつつ、水草10がソイル塊20から不意に外れてしまうことを防止する水草固定領域51として機能させることができる。
一方、ソイル塊20の内方に位置する中硬度ゲル部や低硬度ゲル部は、高硬度ゲル部に比して硬度が低いため、ソイル塊20に植栽されたばかりで生育環境の違いによるストレスが高まった状態の水草10に対し、水草10の発根率を向上させたり、水草10の根部12からの根の伸長成長を助長する生育環境を提供する根部生育領域52として機能させることができる。付言するならば、中硬度ゲル部や低硬度ゲル部は、根の密度の高い領域とすることができ、ソイル粒22との接触機会を高めてしっかりと絡み合わせることができる。
ところで、このようなゲルの硬度勾配という概念から着目すると、各々のソイル粒22とその周囲に存在するゲル部50との関係においても、更にミクロな硬度勾配構造(以下、ソイル粒硬度勾配構造という。)を有していると言える。このソイル粒硬度勾配構造は、本実施形態に係る水草植栽床土Aにおいての更なる特徴的な構造である。
図4は根部12の近傍に存在するソイル粒22の状態を模式的に示した説明図である。図4において各ソイル粒22は、白抜きで示すゲル部50中にそれぞれ保持された状態で存在しており、上述したソイル粒硬度勾配構造は、ソイル粒22の表面から白抜きで示したゲル部50に掛けて漸次淡くなる網掛けで示している。なお、ソイル粒22とその周りに存在するゲル部50であってソイル粒硬度勾配構造が及んでいる範囲(以下、ゲル層53という。)とにより構成された、あたかも一粒のカエルの卵状の粒を包粒体32と称する。
包粒体32は、ゲル層53に包被されたソイル粒22である。包粒体32が備えるゲル層53は、水草植栽床土Aの製造時においてソイル21と増粘剤液とを混ぜ合わせた際に、ソイル粒22の外表面から溶出した2価の陽イオンがその周囲に存在する増粘剤液30中に拡散し、その濃度分布に応じた硬度でゲル化することにより形成されたものであり、その硬度はソイル粒22を中心に外方へ漸次軟化する。
より具体的には、ソイル粒22の外表面近傍には中程度の硬さを有する中硬度ゲル層53aが、また、同中硬度ゲル層53aの外方には中硬度ゲル層53aよりも軟らかい低硬度ゲル層53bが、ソイル粒22を中心とする2価の陽イオンの濃度勾配に応じて連続的に形成される。なお、このソイル粒硬度勾配構造は、上述した原土焼成ソイル粒や焼成火山灰ソイル粒、シラスバルーンソイル粒においても形成されることは勿論である。
特に、ソイル粒22としてシラスバルーンソイル粒22aを用いた場合に形成される包粒体32は、図5(b)の網掛けの濃淡で示すように、シラスバルーンソイル粒22a内部においてシラスバルーンソイル粒22aの多孔質状の隙間空間に存在する増粘剤液のゲルに対し、ゲル化剤液40が漸次内方に向かって低硬度化して充填される。
従って、シラスバルーンソイル粒22a内部においてソイル粒22の外表面から中心部に向って漸次軟質とする隙間空間ゲル層が形成される。
また、シラスバルーンソイル粒22aは、同ソイル粒内部に散在するクラック部分を介してその内部に充填ゲル層を備えたゲル充填シラスバルーン23を有している。
このように、本実施形態に係る水草植栽床土Aのソイル塊20のゲルは、全体的且つ局所的な多段階硬度差を形成している。すなわち、ソイル塊20のゲルは、ソイル塊20全体について着目すれば、そのゲル部50にソイル塊20の外表面から漸次内方に向って軟質とするゲル硬度勾配構造を有し、また、個々の包粒体32について着目すれば、そのゲル層53にソイル粒22の外表面から漸次外方に向って軟質とするゲル層硬度勾配構造を備えている。
付言すれば、ソイル塊20は、ソイル粒22と同ソイル粒22を中心に外方へ漸次軟化しつつ包被するゲル層53とにより構成される包粒体32の集合成型体であって、その集合成型体の内方を構成する包粒体32のゲル層53を同集合体の外部近傍を構成する包粒体32のゲル層53に比して軟質として形成したものと言える。
そして、このような構成とすることにより、ソイル塊20の表面近傍の高硬度ゲル部でソイル塊20のゲルの保形時間を引き延ばすと共に穿刺立設した水草10をしっかりと支持し、水草10がソイル塊20から不意に外れてしまうことを防止することができる。一方で、ソイル塊20の内方側の中硬度ゲル部や低硬度ゲル部、及び包粒体32の低硬度ゲル層や中硬度ゲル層で水草10の根の伸長を促進させてソイル粒22との接触機会を高めてしっかりと絡み合わせ、根の密度の高い水草植栽床土Aを形成することができる。
次に、本実施形態に係る水草植栽床土Aの製造方法について図6及び図7を参照しながら説明する。図6は水草植栽床土Aの製造方法のフローであり、図7(a)は収容ケース内で増粘剤液とソイルとを混合した状態を示した説明図であり、図7(b)は集合成型体をゲル化剤液に浸漬した状態を示した説明図である。
本実施形態に係る水草植栽床土の製造方法は、このソイル充填型枠内に水草を植栽し、その後型枠から抜去してゲル化剤液中に浸漬して保形処理を行うことにより製造する。
まず、図6に示すように、所定の型枠内にソイルと増粘剤液とを混和した混和物(以下、ソイルスラリーという。)が収容されたソイル充填型枠を形成するソイル充填型枠形成工程(ステップS11)を行う。
増粘剤液は、増粘剤を主成分として含有する水溶液である。増粘剤は、ソイル塊として保形可能な程度に2価の陽イオンでゲル化(固化)するものであればよく、例えば、増粘性多糖類としてアルギン酸塩、アルギン酸エステル、カラギーナン、ペクチン等のからなる群から選択されるいずれか又は2以上の混合物を採用することができる。
増粘剤液は、1重量部の水に対して増粘剤0.003~0.03重量部、好ましくは0.005~0.02重量部として調製するのが望ましい。
増粘剤を1重量部の水に対して0.03重量部以上含有することとすると、粘稠性や硬度が高くなりすぎてしまい、ソイルに増粘剤液を添加した際に、ソイルを構成するソイル粒同士の隙間に増粘剤液が浸透しにくくなり、ソイル全体に増粘剤液が行き渡らず、ソイルの増粘剤の含浸箇所にムラができてしまう。
一方、増粘剤を1重量部の水に対して0.003重量部以下とすると粘稠度や硬度が低くなりすぎて水草の植栽が困難となり、また、集合成型体や完成品である水草植栽床土の保形性が低下するため好ましくない。
従って、増粘剤液は、1重量部の水に対して増粘剤0.003~0.03重量部、好ましくは0.005~0.02重量部に調製することで、集合成型体やソイル塊に良好な保形性を付与することができる。また、後述する包粒体の形成を堅実なものとすることができる。
また、水と増粘剤とを増粘剤液中に多数の気泡を含ませるように撹拌することで気泡含有の増粘剤液として調製してもよい。
一方、ゲル化剤液は、ゲル化剤を含有する水溶液である。ゲル化剤は、2価の陽イオンを溶出させる化合物であって前述した増粘剤(増粘剤液)をゲル化(固化)できるものであればよく、例えば、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、などのマグネシウム塩、酸化カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、などのカルシウム塩、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、塩化ストロンチウム、塩化バリウムからなる群から選択されるいずれか又は2以上の混合物を採用することができる。
ゲル化剤液は、1重量部の水に対して0.001乃至0.03重量部のゲル化剤が含まれるようにするのが好ましい。
1重量部の水に対してゲル化剤を0.03重量部以上含有することとすると、水溶液のpHが強酸や強アルカリに偏重してしまい、植栽した水草10の成長を阻害するばかりか水槽内の環境を悪化させてしまう。
一方、1重量部の水に対して0.001重量部以下含有することとすると、ゲル化に要する時間が長くなるばかりか、ソイル塊に水草固定領域51や根部生育領域52が形成されなくなる。
従って、1重量部の水に対し、0.001乃至0.03重量部のゲル化剤、好ましくは0.002乃至0.01重量部のゲル化剤を添加してゲル化剤液を調製することで、増粘剤液とのゲル化処理を容易とし、水草固定領域51や根部生育領域52を正しく形成することができる。
収容ケース60は、図7(a)に示すように、水草10の根部12が植栽可能な程度の高さを有するソイル塊20を形成できる容器であればよく、所望するソイル塊20の形状や大きさに合わせて適宜選択することができる。
また収容ケース60の素材は特に限定されることはないが、可撓性素材、例えば樹脂性のものを採用することができる。収容ケース60として可撓性素材を採用した場合には、後述する収容ケース60内で形成した保形可能程度の半凝固状態とした集合成型体を収容ケース60から抜去する作業が容易となる。
また、収容ケース60は、後述するゲル化剤液が流入可能で且つ収容したソイル21のソイル粒22や上述したシラスバルーンの粒径よりも小さい径の孔を有するものを採用してもよい。
例えば、ソイル粒22の粒径よりも小さい径の孔を外周面全域に複数穿設した収容ケース60を用いた場合には、上述の集合成型体31の抜去作業を要することなく、後述するゲル化剤液浸漬工程において収容ケース60ごと集合成型体をゲル化剤液中に浸漬することができる。
また、ソイル粒22としてシラスバルーンソイル粒22aを用いた場合には、増粘剤液が、シラスバルーン粒や、シラスバルーン粒を構成するシラスバルーンの多孔質状に由来する隙間空間を介してシラスバルーン粒やシラスバルーンの内部に進入して充填される。
そして本工程では、予め調製したソイルスラリーを所定の型枠に分注することでソイル充填型枠を形成しても良く、また、所定の型枠内にソイルを収容し、更に増粘剤液を投入してソイルと和えることでソイル充填型枠を形成しても良く、更には、所定の型枠内に増粘剤液を注入し、そこにソイルを投入して和えることでソイル充填型枠を形成しても良い。
なお、本実施形態におけるソイル充填型枠形成工程について理解に供すべく敢えて例示するならば、例えば、約40~60cc、より好ましくは約45~55ccのソイル21と、約20~40cc、より好ましくは約25~35ccの増粘剤液とよりなるソイルスラリーが、100cc容量の略直方体形状で可撓性の透明プラスチック素材の収容ケース60内に配されたソイル充填型枠とすることができる。
すなわち、増粘剤液30の添加量は、収容ケース60中に収容したソイル21を構成するソイル粒22の全表面を増粘剤液30で覆う程度であればよい。
収容ケース60内においてソイル21の上面より増粘剤液30の液面が上方位置にある場合必要に応じて、ソイル追加充填工程として、ソイル21の上面(最上部に位置する複数のソイル粒22外表面の最頂部同士により形成される面)位置と増粘剤液30の液面位置が略同じ位置となるように、すなわち増粘剤液30の液面が見えなくなるまでソイル21を追加充填することとしてもよい。
また、充填ソイル均一化工程として、収容ケース60内のソイル21を上方より押圧することでソイル粒22を増粘剤液30に強制的に沈降させ、収容ケース60の隅々までソイル粒22を行渡らせると共に、増粘剤液30をソイル粒22全体に馴染ませて、増粘剤液30中のソイル粒22の分布をより均一にする。
このようなソイル追加充填工程や充填ソイル均一化工程を行うことで、後に形成されるソイル塊20中のソイル粒分布の均一化を図る。
なお、ソイル追加充填工程や充填ソイル均一化工程は、後述する水草植栽工程と第2静置工程の間にすることこととしてもよい。本実施形態においては、増粘剤液約1容量に対しソイル約1容量を添加し、充填ソイル均一化工程を経て増粘剤液30をソイル粒22全体に馴染ませている。
次いで、必要に応じ、ソイル充填型枠を所定時間静置する第1静置工程を行う(ステップS12)。本工程は、ソイル粒22から2価の陽イオンが溶出して包粒体32が形成され、更にこの包粒体32同士が互いに連結して集合成形体が形成されるのを待機する工程である。
静置工程の静置時間は特に限定されるものではないが、例えば第1静置工程の静置時間であれば約0.1~15分、好ましくは約0.1~5分とすることができ、後述する第2静置工程の静置時間は約30分~120分、好ましくは約50~70分とすることができる。
次に、ソイル充填型枠内に水草を植栽する水草植栽工程を行う(ステップS13)。本工程では、先の第1静置工程を実施した場合には、水草は集合成型体に植栽されることとなり、実施しない場合には水草はソイルスラリーに植栽されることとなる。
水草10は、水中で生育可能であり床土中に根を伸長できる植物であれば良く、幾つか例示するならば、有茎水草の仲間、アヌビアスの仲間、クリプトコリネの仲間、サトイモの仲間、エキノドルスの仲間、サジタリアの仲間、ニムファの仲間、アポノゲトンの仲間、シダの仲間、バリスネリアの仲間、クリヌムの仲間、コケの仲間、等の水草を挙げることができる。
次に、水草が植栽されたソイル充填型枠を所定時間静置する第2静置工程を行う(ステップS14)。本工程は、第1静置工程を実施していない場合は必須であるが、第1静置工程が既に実施されている場合は、必要に応じて実施すれば良い。
第2静置工程は、第1静置工程を実施していない場合は、ソイル粒22から2価の陽イオンが溶出するのを待機してソイルスラリーを半凝固状態の集合成型体にする工程であり、第1静置工程を既に実施している場合は、集合成型体の保形性をより向上させるための工程となる。
次に、水草10が植栽された集合成型体31を収容ケース60から抜去し、ゲル化剤液に浸漬するゲル化剤液浸漬工程を行う(ステップS15)。
本工程では、集合成型体31の外方よりゲル化剤液40を含浸させることで、ゲル部50にゲル部硬度勾配構造を形成する。
ゲル化剤液のゲル化剤液浸漬ケース61内への添加量は、集合成型体31の全外周をゲル化剤液で浸漬できる程度であればよい。すなわち、図7(b)に示すように、ゲル化剤液40を収容したゲル化剤液浸漬ケース61内に集合成型体31を載置した際に、ゲル化剤液浸漬ケース61において集合成型体31の上面よりもゲル化剤液40の液面が上方位置になるように添加されていればよい。
また、集合成型体31のゲル化剤液40への浸漬時間は、形成するソイル塊20の大きさ、増粘剤液30の増粘剤の濃度に応じて適宜調節することができ、本実施形態において約10時間~30時間、より好ましくは約14時間~26時間としている。
ここで、基本的には集合成型体31をゲル化剤液40中に浸漬した直後に集合成型体31の外周面近傍にはゲル部50が形成されるが、浸漬時間が不足することによりソイル塊20を保形保持を可能とするゲル部50がソイル塊20内部程正しく形成されないこととなる。
例えば、浸漬時間が約14時間を下回ると集合成型体31内方へのゲル化剤液含浸量が少なくなり、ソイル塊20内部の根部生育領域52に相当する中心部のゲル部50が形成されにくくなる。
一方で、約30時間を上回るとゲル部50全体が均一硬度となり硬度勾配構造が生起しない。
従って、ゲル化剤液40への浸漬時間を約10時間~30時間、より好ましくは約14時間~26時間とすることで、ソイル塊20としての保形保持時間を引き延ばし可能とし、水草固定領域51や根部生育領域52といったゲル部50の硬度勾配構造を有したソイル塊20を形成できる。
このように本工程を実施することで、集合成型体31の深部においては包粒体32間のゲル部50を低硬度の根部生育領域52として水草の根の伸延が阻害されることが防止でき、集合成型体31の表層においては高硬度の水草固定領域51として水草をしっかりと保持可能とし、更にその中間部分では中硬度として集合成型体31全体の保形が堅実なソイル塊20が形成される。
なお、上述してきたステップS11~S15により、基本的な水草植栽床土Aは形成されるのであるが、必要に応じて植栽した水草を育成させる水草育成工程(ステップS16)を実施するようにしても良い。
この水草育成工程は、ソイル塊20内において水草の根を伸長させる工程であり、例えば、水草植栽床土Aを静置することで行っても良いのは勿論のこと、流通段階や店頭での陳列状態を水草育成工程とみなすこともできる。
そして、上記方法により形成した前述の構成を備える水草植栽床土Aは、以下のような作用・効果を発揮することとなる。
すなわち、植栽された水草10の根部12において主根12aや側根12b、根毛12cは、ソイル塊20単体でみれば、隣接するソイル粒22の間に形成されたゲル部50は粗で軟らかいため同ゲル部50内を容易に伸長することが可能であり、特にこの理は根部生育領域52に存在するゲル部50において顕著となる。
更に、包粒体32単体でみれば、図5(a)に示すように、水草10の主根12aや側根12bは、隣接するソイル粒22の間の低硬度ゲル層53bを伸長することで、主根12aや側根12bの表面の根毛12cがソイル粒22内に侵入して主根12aや側根12bがソイル粒22をより複雑に抱込むことを可能とする。
特に、側根12bや主根12aは、同ソイル粒22中に含まれる水分や栄養分である必須元素を求めて根毛12cをソイル粒22内部へ伸長させると共に湾曲伸長することでソイル粒22と確実に係合し、水草10のソイル21への定植率の向上を可能としている。
さらに、気泡含有の増粘剤を用いた場合には、水中では滞留しにくい気泡をゲル部50に多数散在させて、ゲル部50を伸張成長する根がこれらの気泡に接触することで根の成長に伴うガス交換に気泡空気を使用する機会を付与し、根の発育をより促進させることができる。
また、ソイル粒22としてシラスバルーンソイル粒22aを用いた場合、根毛12cはシラスバルーンソイル粒22aの隙間空間から内部の充填ゲル層に侵入し、根毛12cと充填ゲル層に含有された水分との接触が恒常的にかつ確実に行われる。
しかも、シラスバルーンソイル粒22aの内部のゲル層ほど低硬度となっているため、ゲル層53が根毛12cの脆弱な成長を阻害することなく根毛12cの拡散成長が活発となる。そして、根毛12cはシラスバルーンの粒殻のクラック部分から外部に脱け出て突出しシラスバルーンの粒殻を抱込む状態を現出する。
そして、水草10の根がソイル塊20の根部生育領域52のソイル粒22の周囲に張り巡らされ、やがて水草固定領域51に伸長定着すれば、その分水草10の根部12はソイル塊20への定着度を向上して水草10の成長繁殖を促すことを可能としている。
このように、本実施形態に係るソイル塊20は、水草10の根の伸長段階に合わせて根の伸長方向をソイル21に係合する方向、すなわちソイル粒22に確実に絡ませる方向へ誘導するゲルの硬度勾配構造を全体的且つ局所的に備え、生育過程における植物体に対して負荷をかけることを可及的抑制している。
次に、本実施形態に係る水草植栽床土Aの使用方法の一例について、図面を参照しながら説明する。図1は水草植栽床土Aを観賞用の水槽Bに配置しようとしている状態を示した説明図である。
上述のように構成した水草植栽床土Aは、図1に示すように、水槽Bの上方で水草植栽床土Aの水草10の茎部11を人手Hで把持して水槽B底部の床土Sの水草を植栽したい所望の位置に位置づけ、水草10の根部が植栽されたソイル塊20を床土Sの所望の位置にそのまま又は床土Sに予めソイル塊20の大きさと略同じ大きさに形成した溝部に載置することで使用する。
そして、ソイル塊20が自己崩壊するころには、水草の根がソイル塊のソイル粒と一体となった床土Sに対しても絡み合うように張り巡らし、水草10の略直立を維持した状態での床土Sに対する定着を容易とする。
すなわち、本発明は、水草10を水槽Bの底部に敷き詰めた床土Sに定植するための植え込み作業について管理者等の経験多寡や巧拙によらず水槽Bの床土Sの所望の位置にソイル塊20に予め植栽された水草10をソイル塊20ごと沈降して配置するだけで水草10を水槽Bの床土Sに容易に定植可能とし、観者に癒しの効果を与える水草10の水槽B内でのレイアウトを容易とし、より自然に近い水槽内環境を再現することが可能な水草植栽床土Aを提供するものであるともいえる。
このように本発明に係る水草植栽床土によれば、従来のように水草の植栽をソイルから調達して水槽等で成長繁殖させていた手間を省き、常時取引マーケットで容易に流通可能なポット付きの観葉植物と同様の取引形態となるように予め収納ケース中のソイルに増粘剤液とゲル化剤液を介して水草を植栽しておけば、収納ケースそのままの状態で水槽内や飾り棚などの所定の個所で常に成長繁殖する水草の観賞が可能となる。
同時に、水草植栽床土を収納ケースに収容した状態で常時取引マーケットにおいて容易に流通可能となり市場での流通効果も向上できる。
また、ソイル塊の表面近傍の高硬度ゲル部によりゲル崩壊までの保形時間を水草の根部の生育時間としてしっかりと確保することができると共に、取引マーケットでの流通状態における見栄えを保持することができる。
また、ゲル状態が崩壊した後であっても、水草の根部からの根がソイル粒にしっかりと根付いた状態となっているため、水草の根部が茎部や葉部を充分に支持することができ、流通状態においても見栄えの良い植栽姿勢を保持して長期間流通と観賞に耐え得るという効果がある。
また、輸送や陳列にのみ必要であって植栽に不要な資材、例えば、ロックウール、プラスチックポットや鉛等を低減化して環境に配慮した商品形態とすることができる。
特に、本発明に係る水草植栽床土によれば、水草の根の伸長段階に合わせて植物体に負荷をかけることなく根の伸長方向をソイル粒に確実に絡ませて根をソイルに係合する方向へ誘導するゲルの硬度勾配構造を全体的且つ局所的に備えていることで、ゲル崩壊前であっても水草の根部が伸長することによりソイルに水草の根を確実に絡ませることができる。
さらに、水槽の床土に植栽床土を配置した後は、水槽環境に存在する微生物の分解作用も相俟って、ソイル塊の内部側ほど軟質ゲルとしているためゲル崩壊速度を徐々に加速させて水槽の床土ソイルに水草植栽床土ソイルをなじませ、植物体に余計な負荷をかけることなく水草を植栽状態とすることができ、しかも観者に癒しの効果を与える水草の容易なレイアウトを可能とする。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。