JP7016654B2 - フィルムの搬送装置及び搬送方法、ならびに処理フィルムの製造装置及び製造方法 - Google Patents

フィルムの搬送装置及び搬送方法、ならびに処理フィルムの製造装置及び製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フィルムの搬送装置及び搬送方法、ならびに処理フィルムの製造装置及び製造方法に関する。
フィルムを連続的に供給しつつ、所定の搬送経路に通し、複数のロールに接触させながらフィルムを連続的に搬送する搬送装置は、フィルムの搬送装置として一般的である。上記搬送装置で使用される各種ロールには、フィルムの片側のみ支持するガイドロールや、フィルムの両側に配置され、フィルムを両側から支持するニップロールなどがある。このうち、ニップロールは、フィルムの張力調整、フィルムの搬送、フィルムへの押圧力付加等の目的で用いられる。
例えば、特開2017-76107号公報(特許文献1)には、ニップロールを含む光学フィルムの搬送装置が開示されている。
特開2017-76107号公報
従来、フィルムの搬送装置において、一対のロール間にフィルムを通過させると、フィルムの表面が削れる不具合が生じることがあった。搬送するフィルムの種類、厚さ、水分量、搬送速度等によって、フィルムの表面が削れる不具合が生じる程度は異なるものの、このような不具合は製品の収率を低下させるとともに、装置内の汚染の原因にもなっていた。特に、フィルムが光学用途に用いられる光学フィルムである場合には高い品質のフィルムが求められるので、このような不具合への対処が課題であった。
本発明者らは、一対のロール間にフィルムを通過させたときにフィルムの表面が削れる不具合の原因の一つに、一対のロール間の回転速度がずれることがあることを突き止めた。本発明は、一対のロール間での回転速度のずれが低減された一対のロールを備える又は用いる、フィルムの搬送装置及び搬送方法、ならびに処理フィルムの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下に示すフィルムの搬送装置及び搬送方法、ならびに処理フィルムの製造装置及び製造方法を提供する。
〔1〕 互いに対向する一対のロールを備えるニップロールを有し、
前記一対のロールの少なくとも一方は、ロールの外周面に特定領域を有し、
前記特定領域は、ロールの外周面の隣接領域よりも摩擦力が高い領域であり、
前記一対のロールは、フィルムを搬送する際に、前記特定領域の少なくとも一部が、前記フィルムに接触せずに対向するロールの外周面に直接接触する、フィルムの搬送装置。
〔2〕 互いに対向する一対のロールを備えるニップロールを有し、
前記一対のロールの少なくとも一方は、ロールの外周面に特定領域を有し、
前記特定領域は、溝切加工が施された領域であり、
前記一対のロールは、フィルムを搬送する際に、前記特定領域の少なくとも一部が、前記フィルムに接触せずに対向するロールの外周面に直接接触する、フィルムの搬送装置。
〔3〕 前記特定領域は、ロールの外周面を周回するように設けられている、〔1〕又は〔2〕に記載のフィルムの搬送装置。
〔4〕 前記特定領域は、ロールの外周面の幅方向の端部を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のフィルムの搬送装置。
〔5〕 駆動源をさらに有し、
前記ニップロールは、互いに対向する第1ロールと第2ロールを備え、
第1ロールは、前記駆動源により回転力が付与され、
第2ロールは、第1ロールの回転により回転力が付与される、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のフィルムの搬送装置。
〔6〕 第1ロールは、ロールの外周面に前記特定領域を有する、〔5〕に記載のフィルムの搬送装置。
〔7〕 前記フィルムは、光学フィルム又はその原料フィルムである、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のフィルムの搬送装置。
〔8〕 互いに対向する一対のロールを備えるニップロールによってフィルムを搬送するニップロール搬送工程を有し、
前記一対のロールの少なくとも一方は、ロールの外周面に特定領域を有し、
前記特定領域は、ロールの外周面の隣接領域よりも摩擦力が高い領域であり、
前記一対のロールは、フィルムを搬送する際に、前記特定領域の少なくとも一部が、前記フィルムに接触せずに対向するロールの外周面に直接接触する、フィルムの搬送方法。
〔9〕 互いに対向する一対のロールを備えるニップロールによってフィルムを搬送するニップロール搬送工程を有し、
前記ニップロールの少なくとも一方は、ロールの外周面に特定領域を有し、
前記特定領域は、溝切加工が施された領域であり、
前記一対のロールは、フィルムを搬送する際に、前記特定領域の少なくとも一部が、前記フィルムに接触せずに対向するロールの外周面に直接接触する、フィルムの搬送方法。
〔10〕 前記フィルムは、光学フィルム又はその原料フィルムである、〔8〕又は〔9〕に記載のフィルムの搬送方法。
〔11〕 原料フィルムに処理を施して処理フィルムを得る処理部と、
前記原料フィルム又は前記処理フィルムを、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のフィルムの搬送装置により搬送する搬送部と、を備える、処理フィルムの製造装置。
〔12〕 前記処理フィルムは、光学フィルムである、〔11〕に記載の処理フィルムの製造装置。
〔13〕 原料フィルムに処理を施して処理フィルムを得る処理工程と、
前記原料フィルム又は前記処理フィルムを、〔8〕又は〔9〕に記載のフィルムの搬送方法により搬送する工程と、を備える、処理フィルムの製造方法。
〔14〕 前記処理フィルムは、光学フィルムである、〔13〕に記載の処理フィルムの製造方法。
本発明のフィルムの搬送装置によれば、一対のロール間での回転速度のずれを低減させることができる。
本発明に係る光学フィルムの搬送装置の一例を示す模式的に示す断面図である。 図1に示す搬送装置におけるニップロール部分の斜視図である。 図2のX-X断面図である。 本発明に係る処理フィルムの製造装置の一例を模式的に示す断面図である。
[フィルムの搬送装置]
本発明のフィルムの搬送装置は、互いに対向する一対のロールを備えるニップロールを有する。一対のロールの少なくとも一方は、ロールの外周面に特定領域を有する。特定領域は、以下の条件i),ii):
i)ロールの外周面の隣接領域よりも摩擦力が高い領域である、
ii)溝切加工が施された領域である、
の少なくとも一方を満たす。なお、条件ii)を満たす特定領域は、通常条件i)を満たす。上記において「隣接領域よりも摩擦力が高い特定領域」とは、一対のロール間において、ロールの特定領域とこれに対向するロールの表面(特定領域以外の領域)との接触面における静摩擦力が、ロールの隣接領域とこれに対向するロールの表面(特定領域以外の領域)との接触面における静摩擦力より大きいことを意味する。
ニップロールは、搬送されるフィルムの両面にそれぞれ配置される一対のロールからなる。ニップロールは、回転によりフィルムを搬送する役割を担い、かかる役割の他に、フィルムの張力調整、フィルムへの押圧力付加、フィルムの搬送速度の制御、フィルムの搬送方向の制御等の役割を担い得る。
ニップロールにおいて、一対のロールは、フィルムを搬送する際に、特定領域の少なくとも一部が、フィルムに接触せずに対向するロールの外周面に直接接触する。本発明のフィルム搬送装置によると、ニップロールを構成する一対のロールの少なくとも一方が、ロールの外周面に特定領域を有することにより、一対のロール間で生じる回転速度のずれを低減させることができる。そして、ニップロールにおける回転速度のずれに起因して生じるフィルム表面の削れ等の不具合の発生を低減させることができる。以下では、一対のロールの一方を「第1ロール」、他方を「第2ロール」ということがある。また、一対のロールの特定領域に含まれる、フィルムを搬送する際に、フィルムに接触せずに対向するロールの外周面に直接接触する領域を「ずれ低減領域」ということがある。
一対のロールにおいて、第1ロールの回転速度をV1、第2ロールの回転速度をV2とすると、以下の式:
R(%)=[(V1-V2)/V1]×100
で算出される回転速度差割合Rの値は、小さい程一対のロール間で生じる回転速度のずれが小さいので好ましい。Rの値は、1%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることがさらに好ましい。本発明においては、一対のロールの少なくとも一方が、ロールの外周面に特定領域を有することにより、Rを小さい値にすることができる。
本発明のフィルムの搬送装置は、ニップロールに回転力を付与する、不図示の駆動源をさらに備える。ここでいう駆動源とは、モータ等の電力駆動源を意味し、電気エネルギーから回転力を形成する駆動源を意味する。第1ロールと第2ロールは、例えば、以下の方法により回転される。
a)駆動源により、直接、第1ロールに回転力が付与されて第1ロールが回転する。そして、第1ロールの回転により第2ロールに回転力が付与される。すなわち、第2ロールは、第1ロールの回転に従動して回転する。
b)駆動源により、直接、第1ロールに回転力が付与されて第1ロールが回転する。そして、第1ロールの回転により第2ロールに回転力が付与される。すなわち、第2ロールは、第1ロールの回転に従動して回転する。第2ロールにおける回転力が不足している場合は、駆動源より、直接、第2ロールに回転力が付与される。
c)駆動源により、直接、第1ロールと第2ロールに回転力が付与されて第1ロールと第2ロールが回転する。
上記a)の場合は、上記b),c)の場合と比較して、第1ロールと第2ロールの間で生じる回転速度のずれが大きくなりやすくなる傾向にあるが、本発明によると、上記a)の場合であっても、第1ロールと第2ロールの間で生じる回転速度のずれを低減させることができる。
上記a),b),c)において、一対のロールの一方が「第1ロール」であり、他方が「第2ロール」であれば「第1ロール」及び「第2ロール」の位置関係は限定されないが、二つのロールが鉛直方向の異なる位置に配置されている場合には、鉛直方向下方側に位置するロールを「第1ロール」とすることが好ましい場合がある。上記a),b),c)では、第1ロールには必ず駆動源により、直接回転力が付与されるように制御されている。駆動源は、ロール内に設けてもよいし、ロールの外部にロールに接触させて設けてもよいが、駆動源の重さ及び大きさの観点からより下方の方が配置しやすい場合があるからである。
本発明のフィルムの搬送方法は、上記した特定領域を有するニップロールによってフィルムを搬送するニップロール搬送工程を有する。
以下、図1~図3を参照しながら、本発明に係るフィルムの搬送装置及びそれを用いたフィルムの搬送方法の一例を詳細に説明する。図1は、本発明に係るフィルムの搬送装置の一例を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示す搬送装置Aにおけるニップロール7部分の斜視図であり、図3は、図2のX-X断面図である。
図1は、長尺のフィルム1が搬送装置Aの搬送経路に沿って連続的に搬送されている様子を示している。図1に示される搬送装置Aは、フィルムをその回転によって連続的に繰り出す繰り出し装置5;走行するフィルムを支持するガイドロール6;互いに対向する第1ロール71と第2ロール72を備えるニップロール7を有する。図示されていないが、搬送経路の下流末端には通常、フィルムを巻き取るための巻き取り装置が備えられており、搬送経路を通過し終えたフィルムは順次巻き取られ、フィルムロールとされる。図1において実線矢印は、フィルムの搬送方向又は繰り出し装置の回転方向を示す。
搬送装置Aにおけるフィルムの搬送は、例えば次のようにして行うことができる。まず、長尺のフィルム1を搬送経路に通して連続搬送を開始する。長尺のフィルム1は通常、ロール状に巻回されたフィルムロールとして用意される。このフィルムロールを繰り出し装置(繰り出し装置5又はこれとは別の繰り出し装置)にセットし、当該繰り出し装置からフィルム1を連続的に繰り出しつつ、図1の実線矢印方向に連続搬送を行う。
図2,図3に示すように、ニップロール7を構成する第1ロール71と第2ロール72は、ロールの外周面の幅方向の両端側に、端部を含み外周面を周回するように設けられた特定領域71a,72aをそれぞれ有する。
第1ロール71と第2ロール72における特定領域71a,72aは、全領域が、搬送するフィルム1に接触せず、かつ、第1ロール71と第2ロール72の回転時に、対向するロールの外周面に直接接触する領域となっている。すなわち、特定領域71a,72aの全領域が、ずれ低減領域となっている。なお、特定領域71a,72aは、対向するロールの外周面に直接接触する領域を有するものであれば、その一部の領域がフィルム10に接触するものであってもよい。
図2,図3には、ニップロール7を構成する第1ロール71と第2ロール72において、ロールの外周面の幅方向の両端側に、端部を含み外周面を周回するように設けられている特定領域71a,72aを有する形態を示したがこれに限定されることはない。特定領域は、一対のロールの少なくとも一方に設けられていればよく、また幅方向の端部を含まない形態であってもよく、周回せずに全周のうちの一部のみを含む形態であってもよい。特定領域に含まれるずれ低減領域の面積が広いほど、一対のロール間で生じる回転速度のずれを低減させる効果を向上させることができるので、図2,図3に示すように、第1ロール71と第2ロール72ともに、ロールの外周面の幅方向の両端側に、端部を含み外周面を周回する特定領域を有する形態は、回転速度のずれを低減させる観点から好ましい形態である。また、フィルムを介さずに互いに直接接触する領域がともにずれ低減領域であると、一対のロール間で生じる回転速度のずれを低減させる効果を向上させることができるので、図3に示すように、第1ロール71と第2ロール72の対向する領域がともに特定領域である形態は、回転速度のずれを低減させる観点から好ましい形態である。
第1ロール71及び第2ロール72の表面材質は限定されることはなく、金属、ゴム等が例示される。第1ロール71及び第2ロール72の表面材質は、互いに同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。溝切加工が施された特定領域を有する第1ロール71又は第2ロール72は、溝切加工を施しやすい観点から、好ましくは、その表面材質がゴムであるゴムロールである。
第1ロール71及び第2ロール72の表面材質がゴムである場合に、ゴムとしては、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Si)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FPM)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)等が例示される。ゴムロールの表面硬度は、好ましくは20~95度であり、より好ましくは7~90度である。
第1ロール71及び第2ロール72の直径は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよく、例えば、10mm~800mmであり、30mm~500mmであることが好ましい。また、第1ロール71及び第2ロール72の幅は限定されないが、搬送するフィルムの幅方向の中心が第1ロール71及び第2ロール72の幅方向の中心と一致するようにした場合に、フィルムの端部から第1ロール71及び第2ロール72の端部までの長さが、50mm~800mmであることが好ましく、100mm~600mmであることがより好ましい。第1ロール71及び第2ロール72の幅は、例えば、400mm~2500mmであり、600mm~2000mmであることが好ましい。
ロールの外周面に、隣接領域よりも摩擦力が高い上記条件i)を満たす特定領域71a,72aを形成する表面加工としては、例えば、表面に滑り防止作用を有する材料を塗布、貼付、吹付等する加工;表面を粗面化する加工;表面に滑り防止作用を有する突起又は溝を形成する加工;等が挙げられる。これらの加工は、1種を単独でまたは複数種を組み合わせて用いることができる。より具体的な表面加工としては、滑り防止作用を有するテープを貼付する加工、ロール表面を研磨器で研磨して粗面化する加工、ロール表面を薬剤で処理して粗面化する加工等が挙げられる。なお、図3において、特定領域71a,72aの隣接領域はロールの中心を含む領域71b,72bである。
上記条件ii)を満たす特定領域71a,72aは、ロールの外周面に溝切加工を施して形成する。溝切加工は、鋸刃状や丸刃状の刃物を回転させながら、ロールの外周面に溝を切る加工を意味する。溝の断面形状は限定されることはなく、V字状、U字状、上広がりの矩形状等が挙げられる。溝切加工により形成される溝の深さは、例えば、0.1μm~10μmであり、0.1μm~1μmであることが好ましい。ロールの表面に形成される溝は規則的な模様をなすものであっても、不規則的な模様をなすものであってもよい。溝の形状は直線状であっても、曲線状であってもよい。溝の幅は、例えば、0.1mm~100mmであり、0.1mm~10mmであることが好ましい。溝と溝の間の間隔は、例えば、0.1mm~100mmであり、0.1mm~10mmであることが好ましい。溝切加工を施された特定領域は、ロールの外周面の隣接領域よりも摩擦力が高い領域であることが好ましい。
フィルムの搬送装置において、フィルムを連続的に搬送するときのフィルム搬送速度は、例えば2~120m/minの範囲であり、好ましくは10~50m/minの範囲である。
フィルムの搬送装置は、2以上の搬送用のニップロールを含んでいてもよい。2以上の搬送用のニップロールを含む場合は、少なくとも一つの搬送用のニップロールが上記のように特定領域を含むものであればよく、全ての搬送用のニップロールが上記のように特定領域を含むものであってもよい。
<搬送対象のフィルム>
本発明のフィルムの搬送装置は、高い品質のフィルムが求められる光学フィルム又はその原料フィルムの搬送装置として好適に用いられる。ここでいう原料フィルムは、光学フィルムを製造するために用いられる原料フィルムと、光学フィルムを製造するために用いられる原料フィルムを加工したあらゆる中間フィルムとを含む。
光学フィルムとしては、偏光フィルム;保護フィルム;位相差フィルム;基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルム;ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム;表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム;表面反射防止機能付きフィルム;表面に反射機能を有する反射フィルム;反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム;視野角補償フィルムなどが挙げられる。
偏光フィルムとしては、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素が吸着配向しているものが挙げられる。かかる偏光フィルムの原料フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムである。偏光フィルムの製造工程で搬送される水分率の高いポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、一対のロール間を通過させる際に、一対のロール間に回転速度のずれが生じていると、一方のロールがスリップしやすくなり、フィルムの表面が削れる不具合が生じやすい。本発明のフィルムの搬送装置を用いて、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの搬送を行なうことにより、このような不具合の発生を抑制することができる。
保護フィルムとしては、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等からなるフィルムが挙げられる。
環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムに相当する市販品としては、「アートンフィルム」(JSR(株)製)、「エスシーナ」(積水化学工業(株)製)、「ゼオノアフィルム」(日本ゼオン(株)製)などが挙げられる。
光学補償フィルムに相当する市販品としては、「WVフィルム」(富士フィルム(株)製)、「NHフィルム」(新日本石油(株)製)、「NRフィルム」(新日本石油(株)製)などが挙げられる。
反射型偏光フィルムに相当する市販品としては、たとえば、「DBEF」(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)、「APF」(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)が挙げられる。
視野角補償フィルムとしては、基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなる位相差フィルム、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムが挙げられる。
光学フィルムは、上記のいずれかの光学フィルムのみからなる単層光学フィルムであってもよいし、2層、3層又はそれ以上の多層構造からなる積層光学フィルムであってもよい。積層光学フィルムは、一対のロール間を通過させる際に、一対のロール間で回転速度にずれが生じていると、積層されているフィルム間でずれが生じやすい。本発明の搬送装置を用いた場合には、積層されているフィルム間でのずれの発生をも抑制することができる。
積層光学フィルムとしては、例えば、偏光フィルムに水系接着剤を介して保護フィルムを貼合したものが挙げられる。積層されているフィルム間でのずれは、特に偏光フィルムの両面に、それぞれ異なる保護フィルム(例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムと環状ポリオレフィン系樹脂(COP)フィルム)を水系接着剤を介して貼合した場合に生じやすい。本発明は、このような不具合の生じやすい光学フィルムに好適に適用される。
また、積層光学フィルムとして、接着剤や粘着剤を介して複数のフィルムを貼合したものを用いる場合においても、本発明の光学フィルムの搬送方法を好適に用いることができる。
[処理フィルムの製造装置]
本発明の処理フィルムの製造装置は、原料フィルムに処理を施して処理フィルムを得る処理部と、上記したフィルムの搬送装置により、原料フィルム又は処理フィルムを連続的に搬送する搬送部と、を備える。ここでいう原料フィルムは、処理部で行われる処理完了前のあらゆるフィルムを含み、また処理フィルムは、処理部での処理後のフィルムを意味する。
本発明の製造装置の処理部にて、光学フィルムを得る処理が行われる場合は、処理フィルムは光学フィルムである。本発明の製造装置の処理部にて、光学フィルムの中間フィルムを得る処理が行われる場合は、処理フィルムは中間フィルムである。光学フィルムについては、上記で説明した通りである。
本発明の処理フィルムの製造装置は、上記のように特定領域を有するニップロールを有する搬送装置を備えることにより、ニップロールにおける一対のロール間で生じる回転速度のずれを低減させることができる。そして、ニップロールにおける回転速度のずれに起因して生じるフィルム表面の削れ等の不具合の発生を低減させることができる。
本発明の処理フィルムの製造方法は、原料フィルムに処理を施して処理フィルムを得る処理工程と、上記したフィルムの搬送方法により、原料フィルム又は処理フィルムを連続的に搬送する搬送工程と、を備える。以下、図4を参照しながら、本発明に係る処理フィルムの製造装置及びそれを用いた処理フィルムの製造方法の一例を詳細に説明する。
<偏光フィルムの製造装置>
図4は、本発明に係る処理フィルムの製造装置の一例を模式的に示す断面図である。図4に示す処理フィルムの製造装置は、具体的には偏光フィルムの製造装置である。すなわち、図4に示す処理フィルムの製造装置において、処理フィルムは偏光フィルムであり、処理部にて、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを得るための処理がなされる。
図4に示される偏光フィルムの製造装置は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原料フィルム10(未延伸)を、原反ロール11より連続的に巻出しながらフィルム搬送経路に沿って搬送させることにより、フィルム搬送経路上に設けられる膨潤浴(膨潤槽内に収容された膨潤液)13、染色浴(染色槽内に収容された染色液)15、第1架橋浴(架橋槽内に収容された第1架橋液)17a、第2架橋浴(架橋槽内に収容された第2架橋液)17b、及び洗浄浴(洗浄槽内に収容された洗浄液)19を順次通過させ、最後に乾燥炉21を通過させるように構成されている。得られた偏光フィルム23は、例えば、そのまま次の偏光板作製工程(偏光フィルム23の片面又は両面に保護フィルムを貼合する工程)に搬送することができる。
以下の説明において、「処理槽」は、膨潤槽、染色槽、架橋槽及び洗浄槽を含む総称であり、「処理液」は、膨潤液、染色液、架橋液及び洗浄液を含む総称であり、「処理浴」は、膨潤浴、染色浴、架橋浴及び洗浄浴を含む総称である。本発明に係る処理フィルムの製造装置に当てはめて考えた場合、処理部は、膨潤浴、染色浴、架橋浴、洗浄浴、及び乾燥炉から構成される。そして、偏光フィルムの製造装置における処理部での処理が完了した乾燥炉を通過した後のフィルムである偏光フィルム23が処理フィルムに相当し、それ以外の処理途中のフィルムはいずれも原料フィルムに相当する。
偏光フィルムは、上記の長尺の原料フィルムを原反ロールから巻出しつつ、偏光フィルム製造装置のフィルム搬送経路に沿って連続的に搬送させて、処理槽に収容された処理液に浸漬させた後に引き出す所定の処理液に接触させる処理液接触工程を実施した後に乾燥工程を実施することにより長尺の偏光フィルムとして連続製造することができる。なお、処理液接触工程では、フィルムに処理液を接触させて処理を行うことができればフィルムを処理浴に浸漬させる方法に限定されることはなく、噴霧、流下、滴下等により処理液をフィルム表面に付着させてフィルムを処理する方法であってもよい。フィルムを処理浴に浸漬させる方法によって処理液接触工程がなされる場合、一つの処理液接触工程を行う処理浴は一つに限定されることはなく、二つ以上の処理浴にフィルムを順次浸漬させて一つの処理液接触工程を行ってもよい。
偏光フィルムの製造装置のフィルム搬送経路は、上記処理浴の他、搬送されるフィルムを支持する、あるいはさらにフィルム搬送方向を変更することができるガイドロール30~48,60,61や、搬送されるフィルムを押圧・挟持し、その回転によってフィルムに搬送力を与える、あるいはさらにフィルム搬送方向を変更することができるニップロール50~55を適宜の位置に配置することによって構築することができる。
ガイドロールやニップロールは、各処理浴の前後や処理浴中に配置することができ、これにより処理浴へのフィルムの導入・浸漬及び処理浴からの引き出しを行うことができる〔図4参照〕。例えば、各処理浴中に1以上のガイドロールを設け、これらのガイドロールに沿ってフィルムを搬送させることにより、各処理浴にフィルムを浸漬させることができる。
ニップロール50,51,52,53a,53b,54,55の少なくとも一つは、上記のフィルムの搬送装置で説明したような特定領域を有するニップロールである。フィルムの水分量が高い程、一対のロール間の回転速度のずれに起因して、フィルムの表面が削れる不具合が生じやすい。したがって、膨潤槽13に浸漬させて、乾燥装置21に導入されるまでにフィルムが通過するニップロール51,52,53a,53b,54は、上記のフィルムの搬送装置で説明したような特定領域を有するニップロールであることが、フィルムの表面が削れる不具合の発生を低減できる観点から好ましい。また、架橋処理が施された後のフィルムの表面は脆くなっているため、フィルムの表面が削れる不具合が生じやすい。したがって、ニップロール53a,53b,54は、上記のフィルムの搬送装置で説明したような特定領域を有するニップロールであることが、フィルムの表面が削れる不具合の発生を低減できる観点から好ましい。
図4に示される偏光フィルム製造装置は、各処理浴の前後にニップロールが配置されており(ニップロール50~54)、これにより、いずれか1以上の処理浴中で、その前後に配置されるニップロール間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸を実施することが可能になっている。以下、各工程について説明する。
(膨潤工程)
膨潤工程は、原料フィルム10表面の異物除去、原料フィルム10中の可塑剤除去、易染色性の付与、原料フィルム10の可塑化等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつ原料フィルム10の極端な溶解や失透等の不具合を生じない範囲で決定される。
図4を参照して、膨潤工程は、原料フィルム10を原反ロール11より連続的に巻出しながら、フィルム搬送経路に沿って搬送させ、原料フィルム10を膨潤浴13に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。図4の例において、原料フィルム10を巻き出してから膨潤浴13に浸漬させるまでの間、原料フィルム10は、ガイドロール60,61及びニップロール50によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。膨潤処理においては、ガイドロール30~32及びニップロール51によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。
膨潤浴13の膨潤液としては、純水のほか、ホウ酸(特開平10-153709号公報)、塩化物(特開平06-281816号公報)、無機酸、無機塩、水溶性有機溶媒、アルコール類等を約0.01~10重量%の範囲で添加した水溶液を使用することも可能である。
膨潤浴13の温度は、例えば10~50℃程度、好ましくは10~40℃程度、より好ましくは15~30℃程度である。原料フィルム10の浸漬時間は、好ましくは10~300秒程度、より好ましくは20~200秒程度である。また、原料フィルム10が予め気体中で延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムである場合、膨潤浴13の温度は、例えば20~70℃程度、好ましくは30~60℃程度である。原料フィルム10の浸漬時間は、好ましくは30~300秒程度、より好ましくは60~250秒程度である。
膨潤処理では、原料フィルム10が幅方向に膨潤してフィルムにシワが入るといった問題が生じやすい。このシワを取りつつフィルムを搬送するための1つの手段として、ガイドロール30,31及び/又は32にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることが挙げられる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は延伸処理を施すことである。例えば、ニップロール50とニップロール51との周速差を利用して膨潤浴13中で一軸延伸処理を施すことができる。
膨潤処理では、フィルムの搬送方向にもフィルムが膨潤拡大するので、フィルムに積極的な延伸を行わない場合は、搬送方向のフィルムのたるみを無くすために、例えば、膨潤浴13の前後に配置するニップロール50,51の速度をコントロールする等の手段を講ずることが好ましい。また、膨潤浴13中のフィルム搬送を安定化させる目的で、膨潤浴13中での水流を水中シャワーで制御したり、EPC装置(Edge Position Control装置:フィルムの端部を検出し、フィルムの蛇行を防止する装置)等を併用したりすることも有用である。
図4に示される例において、膨潤浴13から引き出されたフィルムは、ガイドロール32、ニップロール51、ガイドロール33を順に通過して染色浴15へ導入される。
(染色工程)
染色工程は、膨潤処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着、配向させる等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつフィルムの極端な溶解や失透等の不具合が生じない範囲で決定される。図4を参照して、染色工程は、ニップロール51、ガイドロール33~36及びニップロール52によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、膨潤処理後のフィルムを染色浴15(染色槽に収容された処理液)に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。二色性色素の染色性を高めるために、染色工程に供されるフィルムは、少なくともある程度の一軸延伸処理を施したフィルムであることが好ましく、又は染色処理前の一軸延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に一軸延伸処理を行うことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色浴15の染色液には、例えば、濃度が重量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水=約0.003~0.3/約0.1~10/100である水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルト等を共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合は、ヨウ素を含む点で後述する架橋処理と区別され、水溶液が水100重量部に対し、ヨウ素を約0.003重量部以上含んでいるものであれば、染色浴15とみなすことができる。フィルムを浸漬するときの染色浴15の温度は、通常10~45℃程度、好ましくは10~40℃であり、より好ましくは20~35℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常30~600秒程度、好ましくは60~300秒である。
二色性色素として水溶性二色性染料を用いる場合、染色浴15の染色液には、例えば、濃度が重量比で二色性染料/水=約0.001~0.1/100である水溶液を用いることができる。この染色浴15には、染色助剤等を共存させてもよく、例えば、硫酸ナトリウム等の無機塩や界面活性剤などを含有していてもよい。二色性染料は1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上の二色性染料を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの染色浴15の温度は、例えば20~80℃程度、好ましくは30~70℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常30~600秒程度、好ましくは60~300秒程度である。
上述のように染色工程では、染色浴15でフィルムの一軸延伸を行うことができる。フィルムの一軸延伸は、染色浴15の前後に配置したニップロール51とニップロール52との間に周速差をつけるなどの方法によって行うことができる。
染色処理においても、膨潤処理と同様にフィルムのシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するために、ガイドロール33,34,35及び/又は36にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は、膨潤処理と同様、延伸処理を施すことである。
図4に示される例において、染色浴15から引き出されたフィルムは、ガイドロール36、ニップロール52、及びガイドロール37を順に通過して第1架橋浴17aへ導入される。
(架橋工程)
架橋工程は、架橋による耐水化や色相調整(フィルムが青味がかるのを防止する等)などの目的で行う処理である。図4に示す例においては、架橋工程を行う架橋浴として二つの架橋浴が配置され、耐水化を目的として行う第1架橋工程を第1架橋浴17aで行い、色相調整を目的として行う第2架橋工程を第2架橋浴17bで行う。図4を参照して、第1架橋工程は、ニップロール52,ガイドロール37~40及びニップロール53aによって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、第1架橋浴17a(架橋槽に収容された第1架橋液)に染色処理後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。第2架橋工程は、ニップロール53a,ガイドロール41~44及びニップロール53bによって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、第2架橋浴17b(架橋槽に収容された第2架橋液)に第1架橋工程後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。以下、架橋浴という場合には第1架橋浴17a及び第2架橋浴17bいずれをも含み、架橋液という場合には第1架橋液及び第2架橋液いずれをも含む。
架橋液としては、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用しても良い。溶媒としては、例えば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。架橋溶液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1~20重量%の範囲にあることが好ましく、6~15重量%であることがより好ましい。
架橋液としては、水100重量部に対してホウ酸を例えば約1~10重量部含有する水溶液であることができる。架橋液は、染色処理で使用した二色性色素がヨウ素の場合、ホウ酸に加えてヨウ化物を含有することが好ましく、その量は、水100重量部に対して、例えば1~30重量部とすることができる。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等を共存させてもよい。
架橋処理においては、その目的によって、ホウ酸及びヨウ化物の濃度、並びに架橋浴の温度を適宜変更することができる。例えば、架橋処理の目的が架橋による耐水化である第1架橋液の場合、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=3~10/1~20/100の水溶液であることができる。必要に応じ、ホウ酸に代えて他の架橋剤を用いてもよく、ホウ酸と他の架橋剤を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの第1架橋浴17aの温度は、通常50~70℃程度、好ましくは53~65℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常10~600秒程度、好ましくは20~300秒、より好ましくは20~200秒である。また、膨潤処理前に予め延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して染色処理及び第1架橋処理をこの順に施す場合、第1架橋浴17aの温度は、通常50~85℃程度、好ましくは55~80℃である。
色相調整を目的とする第2架橋液においては、例えば、二色性色素としてヨウ素を用いた場合、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=1~5/3~30/100を使用することができる。フィルムを浸漬するときの第2架橋浴17bの温度は、通常10~45℃程度であり、フィルムの浸漬時間は、通常1~300秒程度、好ましくは2~100秒である。
架橋処理は複数回行ってもよく、通常2~5回行われる。この場合、使用する各架橋浴の組成及び温度は、上記の範囲内であれば同じであってもよく、異なっていてもよい。架橋による耐水化のための架橋処理及び色相調整のための架橋処理は、それぞれ複数の工程で行ってもよい。
ニップロール52とニップロール53aとの周速差を利用して第1架橋浴17a中で一軸延伸処理を施すこともできる。また、ニップロール53aとニップロール53bとの周速差を利用して第2架橋浴17b中で一軸延伸処理を施すこともできる。
架橋処理においても、膨潤処理と同様にフィルムのシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するために、ガイドロール38~44にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は、膨潤処理と同様、延伸処理を施すことである。
図4に示される例において、第2架橋浴17bから引き出されたフィルムは、ガイドロール44、ニップロール53bを順に通過して洗浄浴19へ導入される。
(洗浄工程)
図4に示される例においては、架橋工程後の洗浄工程を含む。洗浄処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した余分なホウ酸やヨウ素等の薬剤を除去する目的で行われる。洗浄工程は、例えば、架橋処理したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴19に浸漬することによって行われる。なお、洗浄工程は、洗浄浴19にフィルムを浸漬させる工程に代えて、フィルムに対して洗浄液をシャワーとして噴霧することにより、若しくは洗浄浴19への浸漬と洗浄液の噴霧とを併用することによって行うこともできる。
図4には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴19に浸漬して洗浄処理を行う場合の例を示している。洗浄処理における洗浄浴19の温度は、通常2~7℃程度であり、フィルムの浸漬時間は、通常2~120秒程度である。
なお、洗浄処理においても、シワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送する目的で、ガイドロール45,46,47及び/又は48にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。また、フィルム洗浄処理において、シワの発生を抑制するために延伸処理を施してもよい。
(延伸工程)
上述のように原料フィルム10は、上記一連の処理液接触工程の間(すなわち、いずれか1以上の処理液接触工程の前後及び/又はいずれか1以上の処理液接触工程中)に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理される。一軸延伸処理の具体的方法は、例えば、フィルム搬送経路を構成する2つのニップロール(例えば、処理浴の前後に配置される2つのニップロール)間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸、特許第2731813号公報に記載されるような熱ロール延伸、テンター延伸等であることができ、好ましくはロール間延伸である。一軸延伸工程は、原料フィルム10を原反ロール11から巻き出してから偏光フィルム23を得るまでの間に複数回にわたって実施することができる。上述のように延伸処理は、フィルムのシワの発生の抑制にも有利である。
原反ロール11から巻き出した直後の原料フィルム10を基準とする、偏光フィルム23の最終的な累積延伸倍率は通常、4.5~7倍程度であり、好ましくは5~6.5倍である。延伸工程はいずれの処理液接触工程で行ってもよく、2以上の処理液接触工程で延伸処理を行う場合においても延伸処理はいずれの処理液接触工程で行ってもよい。
(偏光フィルム)
本発明において偏光フィルムは、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素(ヨウ素や二色性染料)が吸着配向しているものである。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。そのケン化度は、通常約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%以上である。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体等であることができる。共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等を挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常約1000~10000、好ましくは約1500~5000程度である。
これらのポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等も使用し得る。
本発明では、偏光フィルム製造の開始材料(原料フィルム10)として、厚みが65μm以下(例えば60μm以下)、好ましくは50μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下の未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(原料フィルム10)を用いることができる。これにより市場要求が益々高まっている薄膜の偏光フィルムを得ることができる。開始材料(原料フィルム10)の幅は特に制限されず、例えば70~6000mm程度であることができる。開始材料(原料フィルム10)は、例えば、上述のように、長尺の未延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのロール(原反ロール)として用意される。
また本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、これを支持する基材フィルムに積層されたものであってもよく、すなわち、当該ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、基材フィルムとその上に積層されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムとの積層フィルムとして用意されてもよい。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、例えば、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工した後、乾燥させることによって製造することができる。
基材フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。具体例としては、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成されるフィルムであり、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等であることができる。
A 搬送装置、1 フィルム、5 繰り出し装置、6 ガイドロール、7 ニップロール、10 原料フィルム、11 原反ロール、13 膨潤浴、15 染色浴、17a 第1架橋浴、17b 第2架橋浴、30~48,60,61 ガイドロール、50~55 ニップロール、71 第1ロール、72 第2ロール、71a,72a 特定領域。

Claims (7)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂フィルムである原料フィルムに架橋処理を施して偏光フィルムを得る処理部と、
    前記原料フィルム又は前記偏光フィルムを搬送する搬送部と、を備える、偏光フィルムの製造装置であって、
    前記搬送部は、
    互いに対向する一対のロールを備えるニップロールを有し、
    前記一対のロールの少なくとも一方は、ロールの外周面に特定領域を有し、
    前記特定領域は、溝切加工が施された領域であり、
    前記溝切加工により形成される溝の深さが0.1μm~1μmであり、
    前記一対のロールは、フィルムを搬送する際に、前記特定領域の少なくとも一部が、前記フィルムに接触せずに対向するロールの外周面に直接接触する
    偏光フィルムの製造装置
  2. 前記特定領域は、ロールの外周面を周回するように設けられている、請求項1に記載の偏光フィルムの製造装置
  3. 前記特定領域は、ロールの外周面の幅方向の端部を含む、請求項1又は2に記載の偏光フィルムの製造装置
  4. 前記搬送部は、駆動源をさらに有し、
    前記ニップロールは、互いに対向する第1ロールと第2ロールを備え、
    第1ロールは、前記駆動源により回転力が付与され、
    第2ロールは、第1ロールの回転により回転力が付与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造装置
  5. 第1ロールは、ロールの外周面に前記特定領域を有する、請求項4に記載の偏光フィルムの製造装置
  6. 互いに対向する一対のロールを備えるニップロールによってフィルムを搬送するニップロール搬送工程を有し、
    前記ニップロールの少なくとも一方は、ロールの外周面に特定領域を有し、
    前記特定領域は、溝切加工が施された領域であり、
    前記溝切加工により形成される溝の深さが0.1μm~1μmであり、
    前記一対のロールは、フィルムを搬送する際に、前記特定領域の少なくとも一部が、前記フィルムに接触せずに対向するロールの外周面に直接接触し、
    前記フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムである原料フィルム又は前記原料フィルムから得られた偏光フィルムであ、フィルムの搬送方法。
  7. ポリビニルアルコール系樹脂フィルムである原料フィルムに架橋処理を施して偏光フィルムを得る処理工程と、
    前記原料フィルム又は前記偏光フィルムを、請求項6に記載のフィルムの搬送方法により搬送する工程と、を備える、偏光フィルムの製造方法。
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