JP7016317B2 - アジュバント組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、安全性が高く、ワクチンによって誘導される防御免疫を効果的に向上できるアジュバント組成物に関する。更に、本発明は、当該アジュバント組成物を使用したワクチン製剤に関する。
現在のワクチン開発は、安全性を重視して、弱毒株等の生ワクチンから病原体由来のタンパク質やペプチドを抗原として使用する開発に移行しつつある。しかしながら、タンパク質やペプチドを抗原として使用する場合、生体内での安定性が乏しく、更に免疫誘導の場であるリンパ節に移行し難く、樹状細胞への抗原移行率が極めて低くなるという欠点がある。また、病原体を効率的に排除するには、病原体に対する抗体応答だけでなく、抗原を樹状細胞の細胞内に送達させた上で細胞傷害性T細胞を誘導することが不可欠になるが、タンパク質やペプチドを抗原として単独で免疫誘導を行うと、抗原が細胞内エンドソームで分解され、細胞質まで誘導できず、効果的に防御免疫を誘導できないという欠点もある。
そこで、タンパク質やペプチドを抗原として使用するワクチンの場合には、防御免疫の誘導効率を高めるためにアジュバント(免疫賦活化剤)が使用されている。また、アジュバントは、生ワクチンの場合でも防御免疫を効率的に誘導するために使用されることがある。しかしながら、従来のアジュバントでは、抗原として使用されるタンパク質やペプチドと同様に、体内動態を制御できず、リンパ節に移行し難いため、防御免疫の誘導を効果的に高めることができないという欠点がある。更に、従来のアジュバントでは、リンパ節以外の標的としない組織に移行することによって予期しない副作用を招く懸念もある。このような従来技術を背景として、安全性が高く、ワクチンによって誘導される防御免疫を効果的に向上できるアジュバント組成物の開発が望まれている。
一方、特許文献1には、炭酸アパタイトのナノ粒子は、核酸や低分子化合物等の薬剤を細胞内に効率的に送達できることが開示されている。また、特許文献1には、炭酸アパタイトのナノ粒子が、腫瘍組織に効率的に浸して集積する特性があることも開示されている。更に、非特許文献1には、siRNAを封入した炭酸アパタイトが固形癌の治療に有効であることも開示されている。しかしながら、従来、炭酸アパタイトのナノ粒子とアジュバントを併用した製剤については報告されていない。
Xin Wu, et al. Innovative delivery of siRNA to solid tumors by super carbonate apatite, PLOS ONE(Published:March 4, 2015)
日本国特開2014-105197号公報
本発明の目的は、安全性が高く、ワクチンによって誘導される防御免疫を効果的に向上できるアジュバント組成物、及び当該アジュバント組成物を利用したワクチン製剤を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、アジュバントの中からCpGオリゴデオキシヌクレオチドを選択し、これを炭酸アパタイトと併用することによって、安全性が高く、しかもワクチンによって誘導される防御免疫を効果的に向上させ得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. CpGオリゴデオキシヌクレオチド、及び炭酸アパタイト粒子を含有することを特徴とする、アジュバント組成物。
項2. 前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドがKタイプである、項1に記載のアジュバント組成物。
項3. 前記炭酸アパタイト粒子が、平均粒子径200nm以下のナノ粒子である、項1又は2に記載のアジュバント組成物。
項4. 前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドが前記炭酸アパタイト粒子に複合化されている、項1~3のいずれかに記載のアジュバント組成物。
項5. 抗原、及び項1~4のいずれかに記載のアジュバント組成物を含む、ワクチン製剤。
項6. 前記抗原がタンパク質又はペプチドである、項5に記載のワクチン製剤。
項7. 前記抗原が、インフルエンザウイルス由来のタンパク質又はペプチドである、項5又は6に記載のワクチン製剤。
本発明によれば、高い安全性を確保しつつ、ワクチンによって誘導される防御免疫を効果的に向上させることができるので、ウイルス、細菌、寄生虫等の感染症に対してより有効な予防又は治療方策の提供が可能となる。
実施例1において、CpG ODNを複合化させていない炭酸アパタイト(AP)粒子、及び表1に示す条件4で得られたAp-CpG粒子をゼータサイザーにて測定した結果である。 実施例1において、CpG ODNを複合化させていない炭酸アパタイト(AP)粒子、及び表1に示す条件4で得られたAp-CpG粒子を原子間力顕微鏡にて観察した結果である。 実施例2において、AP-CpGナノ粒子を含む培地で樹状細胞を培養した後に、上清中のサイトカイン(IFN-α、IL-12、及びIFN-γ)量を測定した結果である。 実施例3において、AP-CpGナノ粒子を含む培地でヒト末梢血単核球を培養した後に、上清中のサイトカイン(IFN-α及びIFN-γ)量を測定した結果である。 aは、実施例4において、FACS分析によってFSC-AとCpG ODNの蛍光強度をプロットした図である。bは、実施例4において、樹状細胞によるAp-CpGナノ粒子の取り込み量を測定した結果である。 実施例5において、スカベンジャーレセプター阻害剤又はエンドサイトーシス阻害剤の存在下で、樹状細胞によるAp-CpGナノ粒子の取り込み量を測定した結果である。 実施例6において、Ap-CpGナノ粒子をマウスに投与、及び所属リンパ節細胞を培養した後に、上清中のサイトカイン(IL-12、IFN-γ及びIL-6)量を測定した結果である。 実施例7において、Ap-CpGナノ粒子と卵白アルブミンを投与したマウスにおいて、血漿中の卵白アルブミン特異的抗体を測定した結果である。 aは、実施例8において、Ap-CpGナノ粒子とA型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニンを投与したマウスにおいて、血漿中のA型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニン特異的抗体を測定した結果である。bは、実施例8において、Ap-CpGナノ粒子とA型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニンを投与したマウスに、インフルエンザウイルスを経鼻投与して、生存率及び体重推移を測定した結果である。 aは、実施例9において、Ap-CpGナノ粒子を投与したマウスにおいて、血中の白血球数及びリンパ球数を計測した結果である。bは、実施例9において、Ap-CpGナノ粒子を投与したマウスにおいて、脾臓、リンパ節、及び肝臓の重量を測定した結果である。 実施例10において、APナノ粒子とCpG ODNとを含む培地で樹状細胞を培養した後に、上清中のサイトカイン(IL-6、IL-12、及びIFN-γ)量を測定した結果である。 実施例11において、Ap-CpGナノ粒子、又はAPナノ粒子とCpG ODNを、卵白アルブミンと共に投与したマウスにおいて、血漿中の卵白アルブミン特異的IgG1及びIgG2cを測定した結果である。 実施例12において、Ap-CpGナノ粒子、又はAPナノ粒子とCpG ODNを、A型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニンと共に投与したマウスにおいて、血漿中のインフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニン特異的IgGを測定した結果である。 実施例12において、Ap-CpGナノ粒子、又はAPナノ粒子とCpG ODNを、A型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニンと共に投与したマウスにおいて、血漿中のインフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニン特異的IgG2cを測定した結果である。 aは、実施例13において、APナノ粒子とCpG ODNとA型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニンを投与したマウスにおいて、血漿中のA型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニン特異的抗体を測定した結果である。bは、実施例13において、APナノ粒子とCpG ODNとA型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニンを投与したマウスに、インフルエンザウイルスを経鼻投与して、生存率及び体重推移を測定した結果である。 参考試験例1において、AP-Poly(I;C)ナノ粒子及び卵白アルブミンを投与したマウスにおいて、血漿中の卵白アルブミン特異的IgG1及びIgG2cを測定した結果である。
1.アジュバント組成物
本発明のアジュバント組成物は、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、及び炭酸アパタイト粒子を含有することを特徴とする。以下、本発明のアジュバント組成物について詳述する。
[CpGオリゴデオキシヌクレオチド]
本発明のアジュバント組成物では、アジュバントとして、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する。このようにCpGオリゴデオキシヌクレオチドをアジュバントとして選択し、これを炭酸アパタイト粒子と併用することによって、高い安全性を確保しつつ、ワクチンによる防御免疫を効率的に惹起させることが可能になる。
CpGオリゴデオキシヌクレオチドとは、メチル化されていないシトシン-グアニン配列を含むCpGモチーフを有するオリゴヌクレオチドである。本明細書において、CpGオリゴデオキシヌクレオチドについては、CPG又はCPG ODNと略記することもある。CpGオリゴデオキシヌクレオチドにおいて、含まれているCpGモチーフの数は、特に制限されず、1又は複数のいずであってもよい。
CpGオリゴデオキシヌクレオチドの塩基数については、アジュバントとして機能し得ることを限度として特に制限されないが、例えば上限として200個以下、好ましくは100個以下、より好ましくは50個以下、更に好ましくは40個以下、最も好ましくは30個以下が挙げられる。下限として5個以上、好ましくは8個以上、より好ましくは10個以上、更に好ましくは15個以上が挙げられる。CpGオリゴデオキシヌクレオチドの塩基数として、より具体的には、5~200個、好ましくは8~50個、より好ましくは10~50個、更に好ましくは10~40個、最も好ましくは10~30個が挙げられる。
また、本発明で使用されるCpGオリゴデオキシヌクレオチドのホスホジエステル結合は、必要に応じて、少なくとも一部がホスホロチオエート結合に置換されてもよい。ホスホロチオエート結合とは、ホスホジエステル結合部分のリン酸残基の酸素原子の一つが硫黄原子に置換されている結合構造を示す。CpGオリゴデオキシヌクレオチドにおけるホスホロチオエート結合の形成は、従来公知の方法に従って行うことができる
また、CpGオリゴデオキシヌクレオチドには、塩基配列に応じて、Kタイプ、Dタイプ、Cタイプ、及びPタイプが知られているが、本発明では、これらのいずれのタイプのCpGオリゴデオキシヌクレオチドを使用してもよい。より一層効果的に、安全性を確保しつつワクチンによる防御免疫を誘導させるという観点から、好ましくはKタイプ又はDタイプ、より好ましくはKタイプ、特に好ましくはK3型のCpGオリゴデオキシヌクレオチドが挙げられる。
CpGオリゴデオキシヌクレオチドの具体的塩基配列については、投与対象となる動物の種類に応じて適宜設定すればよい。例えば、ヒトに適用されるKタイプのCpGオリゴデオキシヌクレオチドとしては、atcgactctcgagcgttctc(配列番号1、K3型)、tcgtcgttttgtcgttttgtcgtt(配列番号2);齧歯類(マウス、ラット)に適用されるKタイプのCpGオリゴデオキシヌクレオチドとしてはatcgactctcgagcgttctc(配列番号1、K3型)、tccatgacgttcctgatgct(配列番号3)、tccatgacgttcctgacgtt(配列番号4);ヒトに適用されるDタイプのCpGオリゴデオキシヌクレオチドとしてはggtgcatcgatgcagggggg(配列番号5、D35型)、gggggacgatcgtcgggggg(配列番号6)、ggggacgtcgtggggggg(配列番号7);齧歯類(マウス、ラット)に適用されるDタイプのCpGオリゴデオキシヌクレオチドとしてはggggtcaacgttgagggggg(配列番号7)等が挙げられる。
CpGオリゴデオキシヌクレオチドは、ジーンデザイン社、InvivoGen社等によって市販されており、本発明では市販品のCpGオリゴデオキシヌクレオチドを使用してもよい。
[炭酸アパタイト粒子]
炭酸アパタイトは、水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)の水酸基の一部をCO3で置換した構造を有し、一般式Ca10-mXm(PO4)6(CO3)1-nYnで表される化合物である。ここで、Xは、炭酸アパタイトにおけるCaを部分的に置換し得る元素であり、例えば、Sr、Mn、希土類元素等が挙げられる。mは、通常0以上1以下の正数であり、好ましくは0以上0.1以下であり、より好ましくは0以上0.01以下であり、更に好ましくは0以上0.001以下である。Yは、炭酸アパタイトにおけるCO3を部分的に置換しうる基又は元素であり、OH、F、Cl等が挙げられる。nは、通常0以上0.1以下の正数であり、好ましくは0以上0.01以下であり、より好ましくは0以上0.001以下であり、更に好ましくは0以上0.0001以下である。
本発明で使用される炭酸アパタイト粒子の平均粒子径については、生体内に投与されて、標的細胞となる樹状細胞内へ移行できる程度の大きさである限り、特に制限されないが、樹状細胞内への移行を効率的に行うという観点から、ナノ粒子であることが好ましく、より具体的には、通常200nm以下、好ましくは50nm以下、更に好ましくは1~40nm、より好ましくは1~20nm、特に好ましくは5~10nmが挙げられる。なお、当該炭酸アパタイトの平均粒子径は、100nm以上の場合はゼータサイザーを用いて測定される体積平均粒子径を意味し、100nm未満の場合は原子間力顕微鏡(AFM)にて50個の粒子の粒子径を計測して求められる平均値を意味する。
前述する平均粒子径の炭酸アパタイトの製造方法については、特に制限されないが、具体的には、炭酸アパタイト粒子が、薬学的に許容される溶媒に分散された分散液を調製する工程、及び当該分散液に対して超音波振動処理する工程を経る方法が挙げられる。
炭酸アパタイト粒子は、公知の手法に従って得ることができる。例えば、水溶液中で、カルシウムイオン、リン酸イオン及び炭酸水素イオンを共存させることによって調製することにより得ることができる。水溶液中の各イオン濃度は、炭酸アパタイト粒子が形成される限り特に制限されず、下記を参考に適宜設定することができる。
水溶液中のカルシウムイオン濃度は、通常0.1~1000mM、好ましくは0.5~100mM、更に好ましくは1~10mMが挙げられる。
水溶液中のリン酸イオン濃度は、通常0.1~1000mM、好ましくは0.5~100mM、更に好ましくは1~10mMが挙げられる。
水溶液中の炭酸水素イオン濃度は、通常1.0~10000mM、好ましくは5~1000mM、更に好ましくは10~100mMが挙げられる。
カルシウムイオン、リン酸イオン及び炭酸水素イオンの供給源としては、水溶液中にこれらのイオンを供給可能である限り特に制限されないが、例えば、これらのイオンの水溶性塩が挙げられる。具体的には、カルシウムイオン源としてCaCl2を用いることができ、リン酸イオン源としてNaH2PO4・2H2Oを用いることができ、炭酸イオン源としてNaHCO3を用いることができる。
各イオン供給源の混合順序は特に限定されず、炭酸アパタイト粒子が得られる限り、いかなる混合順序で水溶液を調製してもよい。例えば、カルシウムイオンを含有する第1の溶液を調製するとともに、別途、リン酸イオン及び炭酸水素イオンを含有する第2の溶液を調製し、第1の溶液と第2の溶液とを混合して水溶液を調製することができる。
炭酸アパタイト粒子を調製するための水溶液は、炭酸アパタイト粒子が形成される限り、上述する各イオン供給源及び他の物質以外の成分を含んでも良い。例えば、水溶液中に上記組成物中に、フッ素イオン、塩素イオン、Sr、Mn等を添加することにより、炭酸アパタイトにおけるCa又はCO3を部分的に置換してもよい。但し、フッ素イオン、塩素イオン、Sr、Mnの添加量は、形成される炭酸アパタイト粒子の粒径範囲に著しい影響を与えない範囲内とすることが好ましい。また、炭酸アパタイト粒子を調製するための水溶液は、基剤として水を使用すればよいが、細胞培養用の各種培地やバッファー等を使用してもよい。
炭酸アパタイト粒子は、上記の各イオンを含有する水溶液のpHを6.0~9.0の範囲に調整し、一定時間放置(インキュベート)することによって得ることができる。炭酸アパタイト粒子を形成する際の当該水溶液のpHとしては、例えば7.0~8.5、好ましくは7.1~8.5、より好ましくは7.2~8.5、更に好ましくは7.3~8.5、特に好ましくは7.4~8.5、最も好ましくは7.5~8.0が挙げられる。
炭酸アパタイト粒子を形成する際の当該水溶液の温度条件は、炭酸アパタイト粒子が形成される限り特に制限されないが、通常10℃以上であり、好ましくは25~80℃、更に好ましくは37~70℃が挙げられる。
炭酸アパタイト粒子を形成するための当該水溶液のインキュベート時間は、炭酸アパタイト粒子が形成される限り特に制限されないが、通常1分~24時間、好ましくは10分~1時間が挙げられる。粒子形成の有無は、例えば、顕微鏡下で観察することによって確認することができる。
斯して炭酸アパタイト粒子を含む分散液が形成されるが、当該炭酸アパタイト粒子は平均粒子径が200nm超であることが多い。そこで、当該炭酸アパタイト粒子を微細化処理して平均粒子径を200nm以下(特に50nm以下)にすることができる。
炭酸アパタイト粒子の平均粒子径を200nm以下(特に50nm以下)に微細化するには、超音波振動処理を行えばよい。ここで、超音波振動処理とは、いわゆる菌体破砕等に用いられる超音波破砕機やホモジナイザー等の超音波振動子を直接試料に接触させて超音波をかける処理ではなく、一般に精密機器や試験管等の洗浄に用いられる超音波振動子と洗浄槽とが一体となった超音波洗浄器を用いた処理である。超音波洗浄器の洗浄槽(水槽)に液体(例えば、水)を入れ、そこに、炭酸アパタイト粒子を薬学的に許容される溶媒中に分散させた分散液を収容した容器(例えば、プラスチック製のチューブ)を浮かべ、精密機器を洗浄する要領で液体を介して当該分散液に超音波をかける処理を意味する。これによって、簡便且つ効率的に炭酸アパタイト粒子を微細化することができる。
超音波振動処理に使用可能な装置は、上記超音波洗浄器のように、水などの溶媒を介して間接的に炭酸アパタイト粒子を収容した容器に超音波振動を与えることが可能であるものであれば特に制限されない。汎用性及び取り扱い性の良さという観点から、超音波振動子及び恒温槽を備えた超音波洗浄器を用いることが好ましい。
上記の超音波振動処理の条件は、粒子径を所定範囲に制御可能である限り特に制限されない。例えば、水槽の温度としては、5~45℃の温度から適宜選択することができ、好ましくは10~35℃、更に好ましくは20~30℃が挙げられる。超音波振動処理の高周波出力としては、例えば、10~500Wの範囲で適宜設定することができ、好ましくは20~400W、より好ましくは30~300Wであり、更に好ましくは40~100Wが挙げられる。発振周波数としては、通常10~60Hz、好ましくは20~50Hz、更に好ましくは30~40Hzである。また、超音波振動処理時間としては、例えば、30秒~30分、好ましくは1~20分、更に好ましくは3~10分が挙げられる。
超音波振動処理を行う際に用いる、炭酸アパタイト粒子を包含する容器の種類は、粒子を所定の粒子径範囲に微細化することが可能である限り制限されず、水溶液の容量や使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、1~1000ml容量のプラスチック製チューブを用いることができる。
また、超音波振動処理は、アルブミンの存在下(即ち、アルブミンを、炭酸アパタイト粒子を含む水溶液に添加した状態)で行ってもよい。アルブミンと炭酸アパタイト粒子とが共存する環境で超音波振動処理を行うことにより、より微細な粒子径を有する炭酸アパタイト粒子が得られ、粒子の再凝集を抑制することも可能となる。炭酸アパタイト粒子を含む水溶液中でのアルブミンの濃度としては、微細化及び/又は再凝集抑制の効果が得られる限り特に制限されないが、例えば、0.1~500mg/ml、好ましくは1~100mg/ml、更に好ましくは1~10mg/ml程度添加することができる。このように、炭酸アパタイト粒子を微細化するために添加されたアルブミンは、炭酸アパタイト粒子と共に、本発明のアジュバント組成物に含有させた状態で生体内に投与できる。
[CpGオリゴデオキシヌクレオチドと炭酸アパタイト粒子の共存態様]
本発明のアジュバント組成物において、CpGオリゴデオキシヌクレオチドは炭酸アパタイト粒子に複合化(内包)された状態で存在してもよく、また、CpGオリゴデオキシヌクレオチドと炭酸アパタイト粒子がそれぞれ別個に分散した状態であってもよい。
より一層効果的に、安全性を確保しつつワクチンによる防御免疫を誘導させるという観点から、CpGオリゴデオキシヌクレオチドが炭酸アパタイト粒子に複合化された複合粒子であることが好ましい。本発明において、「CpGオリゴデオキシヌクレオチドが炭酸アパタイト粒子に複合化された複合粒子」とは、CpGオリゴデオキシヌクレオチドが炭酸アパタイト粒子に対してイオン結合、水素結合等によって吸着して担持された状態を指す。
このような複合粒子の形成方法については、特に制限されないが、例えば、炭酸アパタイト粒子を調製する水溶液中で、カルシウムイオン、リン酸イオン及び炭酸水素イオンと共に、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを共存させることにより、炭酸アパタイト粒子の形成工程とCpGオリゴデオキシヌクレオチドと炭酸アパタイト粒子の複合化工程を同時に行う方法等が挙げられる。当該複合粒子の形成方法は、具体的には、前述する炭酸アパタイト粒子の製造方法において、炭酸アパタイト粒子を形成するための水溶液に、CpGオリゴデオキシヌクレオチドを0.1~1000nM、好ましくは0.5~600nM、更に好ましくは1~400nM添加して、前述する製造方法に従って炭酸アパタイト粒子を形成させることによって行うことができる。
本発明のアジュバント組成物において、CpGオリゴデオキシヌクレオチドと炭酸アパタイト粒子の比率については、特に制限されないが、例えば、炭酸アパタイト粒子に含まれるカルシウム1μg当たり、CpGオリゴデオキシヌクレオチドが0.0001~10μg、好ましくは0.001~1μg、更に好ましくは0.01~1μgとなる比率が挙げられる。
[アジュバント組成物の形態]
本発明のアジュバント組成物の形態については、特に制限されないが、炭酸アパタイト粒子の再凝集を抑制して前記平均粒子径の状態を維持させつつ、効率的に防御免疫を誘導させるという観点から、分散液状であることが好ましい。
本発明のアジュバント組成物において、CpGオリゴデオキシヌクレオチド及び炭酸アパタイトの濃度については、投与方法等を勘案して後述する投与量を充足できるように適宜設定すればよい。例えば、本発明のアジュバント組成物が分散液の場合であれば、CpGオリゴデオキシヌクレオチドの濃度として0.2~20000μg/ml、好ましくは0.2~10000μg/ml、更に好ましくは0.2~1000μg/mlが挙げられる。
前述するように、炭酸アパタイト粒子は、各種のイオン供給源となる物質を水、培地、又はバッファー等の溶媒に溶解させることによって得られるが、そのようにして得られる炭酸アパタイト粒子分散溶液は、浸透圧、緩衝能、無菌性等の観点から必ずしも生体への投与(血管内投与)に適していない。そのため、炭酸アパタイト粒子を製造した後、炭酸アパタイト粒子を生体への投与に適した溶媒中に分散させて使用される。炭酸アパタイト粒子が分散した溶媒を生体への投与に適した溶媒(例えば、生理食塩水等)に置換するためには、通常、遠沈によって炭酸アパタイト粒子を溶媒から分離し、回収して溶媒を置き換える操作が必要である。しかしながら、このような操作を行うと炭酸アパタイト粒子同士が凝集し、粒子が巨大化するため、却って生体への投与には適さない状態へと変化してしまう。そこで、凝集した炭酸アパタイト粒子を生体への投与に適した溶媒に添加した上で、前述する超音波振動処理を行うことにより、CpGオリゴデオキシヌクレオチドと炭酸アパタイト粒子の複合粒子を、生体への投与に適した溶媒中で適度な粒子径(例えば平均粒子径が200nm以下、特に50nm以下)で分散させることができる。
また、本発明のアジュバント組成物は、炭酸アパタイト粒子を超音波振動処理によって微小な粒子の状態で分散させた後に、当該粒子が凝集する前に速やかに投与することが望ましい。例えば、超音波振動処理後1分以内、好ましくは30秒以内の投与が好適である。但し、前述するように、アルブミンを添加することによって炭酸アパタイト粒子の凝集を抑制する場合は、超音波振動処理後、数分~数十分経過後に投与することも可能である。
[アジュバント組成物の用法・用量]
本発明のアジュバント組成物は、ワクチン投与による防御免疫を効率的に誘導するために使用される。
当該ワクチンの免疫原の種類については、生体内で免疫応答を誘導し得るものであれることを限度として特に制限されないが、例えば、インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、SARSウイルス、AIDSウイルス、サイトメガロウイルス、肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、ポリオウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、コレラウイルス、狂犬病ウイルス、エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱等のウイルス性出血熱の原因となるウイルス等の抗原タンパク質、抗原ペプチド若しくはこれらのウイルスの病原性を弱めた弱毒化ウイルス;ジフテリア、破傷風、結核菌、肺炎球菌、髄膜炎菌、ブドウ球菌、緑膿菌、百日咳菌、炭疽菌、リッケチア、サルモネラ等の細菌の抗原タンパク質、抗原ペプチド、若しくはこれらの細菌の病原性を弱めた弱毒化細菌;クリプトコッカス・アスペルギルス等の真菌の抗原タンパク質、抗原ペプチド、若しくはこれらの真菌の病原性を弱めた弱毒化真菌;マラリア原虫等の病原性生物の抗原タンパク質、抗原ペプチド若しくはこれらの病原性を弱めた弱毒化病原性生物;悪性黒色腫、乳癌、大腸癌、白血病癌等の癌抗原等が挙げられる。また、当該ワクチンには、弱毒化生ワクチン、不活化ワクチン、コンポーネントワクチン等も包含される。更に、当該ワクチンは、単味ワクチン及び混合ワクチンのいずれであってもよい。
また、ワクチンの免疫原として、抗原タンパク質又は抗原ペプチドを使用する場合であれば、遺伝子組み換え技術により製造したものであってもよく、化学合成により製造したものであってもよい。例えば、インフルエンザワクチンは、発育鶏卵、又はベロ細胞等の細胞培養技術により増殖させたウイルスをエーテル、界面活性化剤で分解精製する;或いは赤血球凝集素、ノイラミニダーゼ、核タンパク質、マトリックスタンパク質又はその一部等を含むスプリットワクチンを遺伝子組み換え技術又は化学合成により製造することができる。
本発明のアジュバント組成物により防御免疫を誘導させるワクチンの好適な一例として、好ましくはインフルエンザワクチン、更に好ましくはインフルエンザの抗原タンパク質又は抗原ペプチドを免疫源として含むインフルエンザワクチンが挙げられる。
本発明のアジュバント組成物の投与対象については、前記ワクチンが投与される動物である限り、特に制限されず、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ等の哺乳動物;ニワトリ、ダチョウ等の鳥類が挙げられる。
本発明のアジュバント組成物は、免疫原の投与と同時に、又は免疫原投与の前又は後に投与することにより、防御免疫を効率的に誘導させることが可能になる。
本発明のアジュバント組成物は、前記免疫原と混合された同一製剤(即ち、ワクチン製剤)として製剤化された状態で投与してもよい。また、前記免疫原と本発明のアジュバント組成物をそれぞれ別々に調製して製剤化しておき、用時に混合してから投与する、又はこれらを別々に順次投与してもよい。
投与される本発明のアジュバント組成物と免疫原の比率については、使用する免疫原の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、免疫原1μg当たり、本発明のアジュバント組成物が、CpGオリゴデオキシヌクレオチド量換算で0.0001~1μg、好ましくは0.001~0.6μg、より好ましくは0.01~0.3μg、更に好ましくは0.01~0.2μgとなる比率が挙げられる。
本発明のアジュバント組成物の投与形態については、非経口投与、経口投与のいずれであってもよいが、免疫原と同じ投与形態であることが望ましい。非経口投与としては、具体的には、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮内投与、皮下投与、経鼻投与、関節内投与、粘膜投与等が挙げられる。上記投与形態の中でも、免疫応答の増強及び持続性を一層向上させるという観点から、好ましくは非経口投与、更に好ましくは皮内投与、皮下投与、又は経鼻投与が挙げられる。
本発明のアジュバント組成物の投与量については、使用するワクチンの種類、投与対象の年齢や体重、期待する作用等に応じて適宜設定されるが、投与対象動物がヒトである場合、通常、1日1回~数回、好ましくは1日1回、0.4~40000μg/kgに相当する量のCpGオリゴデオキシヌクレオチドを投与すればよい(初回免疫)。また、本発明のアジュバント組成物と共に使用されるワクチンの投与量についても、免疫原の種類、投与対象の年齢や体重等に応じて適宜設定されるが、投与対象動物がヒトである場合、通常、1日1回~数回、好ましくは1日1回、0.4~40000μg/kgに相当する量の免疫原を投与すればよい(初回免疫)。また、本発明のアジュバント組成物とワクチンは、初回免疫から通常2~6週間後に初回免疫と同様条件で再投与してもよい(追加免疫)。
2.ワクチン製剤
本発明は、更に、上記アジュバント組成物と免疫原とを含むワクチン製剤を提供する。
本発明のワクチン製剤は、前記アジュバント組成物と免疫原が同一製剤として含まれるものであってもよい。また、上記アジュバント組成物と免疫原がそれぞれ別々に製剤化されており、用時に混合してから投与するか、又はこれらを別々に順次投与されるように設計されていてもよい。使用簡便性の観点から、好ましくは、前記アジュバント組成物と免疫原が同一製剤として含まれるものが挙げられる。
本発明のワクチン製剤に使用される免疫原の種類、免疫原とアジュバント組成物の投与量や投与比率、ワクチンの剤型や投与方法等は、上記「1.アジュバント組成物」の場合と同様である。
また、本発明のワクチン製剤における前記アジュバント組成物と免疫原の含有量、これらの比率等については、前記する免疫原とアジュバント組成物の投与量や投与比率に応じて適宜設定される。
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されて解釈されるものではない。なお、以下の実施例の記載及び結果を示す図において、「OVA」とはニワトリ卵白アルブミンを示し、「AP」とは炭酸アパタイトを示し、「OVA + AP-CpG」とは、OVAとCpGオリゴデオキシヌクレオチドが複合化している炭酸アパタイト粒子との組み合わせを指し、「OVA + AP + CpG」とは、OVAとCpGオリゴデオキシヌクレオチドと、CpGオリゴデオキシヌクレオチドが複合化していない炭酸アパタイト粒子との組み合わせを指す。また、これに類する他の表記(例えば、「HA + AP-CpG」、「HA + AP + CpG」等)も、同様の意味である。
実施例1:CpGオリゴデオキシヌクレオチドを複合化させた炭酸アパタイト粒子の製造
100mlの蒸留水に、0.37gのNaHCO3、90μlのNaH2PO4・2H2O(1M)、及び180μlのCaCl2(1M)をこの順で添加して溶解させ、1NのHClでpHを7.5に調整した。これを直径0.2μmのフィルターでろ過した。斯して得られた溶液を、以下「バッファーA」と表記する。得られたバッファーA1ml当たりに4μlのCaCl2(1M)、及び所定量のCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)を混合し、37℃の水浴中で30分間インキュベートした。なお、この際の溶液中のCpG ODNの濃度は、表1に示す各条件となるように設定した。インキュベート後、12000rpm×3分で遠沈し、得られたペレットを、蒸留水、生理食塩水に分散させ、CpG ODNを複合化させた炭酸アパタイト粒子の分散液を得て、これを10分間超音波振動処理にかけることにより、CpG ODNを複合化させた炭酸アパタイト(以下、「Ap-CpG」と表記することもある)ナノ粒子を得た。超音波振動処理は、超音波振動機能を有するウォーターバスを用いて、20℃に設定した水に、プラスチック容器に収容した、炭酸アパタイト粒子分散液を浮かべ、高周波出力55W、発振周波数38kHzの条件で10分間行った。
得られたAp-CpGナノ粒子の粒子径をゼータサイザー(ゼータサイザーナノZS90, Malvern Instruments製)にて測定した。図1に、CpG ODNを複合化させていない炭酸アパタイト(AP)粒子、及び表1に示す条件4で得られたAp-CpGナノ粒子をゼータサイザーにて測定した結果を示す。測定には、超純水(MilliQ)にて100倍希釈(dilution rate:100)したサンプルを用いた。
また、得られたAp-CpG粒子(超純水(MilliQ)にて100倍稀釈したもの)を原子間力顕微鏡(AFM)(SPM-9500、島津製作所製)にて測定した。図2に、CpG ODNを複合化させていない炭酸アパタイト(AP)粒子、及び表1に示す条件4で得られたAp-CpG粒子をAFMで観察した結果を示す。
更に、Ap-CpG粒子について、(Qubit ssDNA Assay Kit、Thermo製)を用いてCpG ODN量を測定し、製造に供したCpG ODN全量に対する炭酸アパタイト粒子に内包されたCpG ODN量の割合(CpG ODNの内包率;%)を求めた。得られたCpG ODNの内包率の結果を表1に示す。
Figure 0007016317000001
以上の結果から、CpG ODNを複合化(内包)させた炭酸アパタイト粒子をナノスケールの粒子径で効率的に製造できることが確認された。
実施例2:樹状細胞のサイトカイン産生能に対してAp-CpGナノ粒子が与える影響の解析
C57BL/6JJmsSlcマウス(以下、C57BL/6マウスと略すこともある)の大腿骨から単離した骨髄細胞を、Flt3L(100 ng/mL)を含む10%FCS及び1%抗生物質含有RPMI1640培地を用いて37℃で1週間培養することにより、樹状細胞を誘導した。得られた樹状細胞を、5×105 cells/mlで播種し、24時間後、実施例1の条件4又は5で得られたAP-CpGナノ粒子をCpG ODN量換算で0.14~3.75μg/ml含むPRMI1640培地を添加して、37℃で24時間培養した。24時間培養後の上清を回収し、ELISA法によって上清中のサイトカイン(IFN-α、IL-12、及びIFN-γ)量を測定した。また、比較のために、AP-CpGナノ粒子の代わりにCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)を使用した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図3に示す。この結果、AP-CpG処理群において、CpG ODN添加群よりもサイトカイン産生が促進されることが明らかとなった。
実施例3:ヒト末梢血単核球のサイトカイン産生能に対してAp-CpGナノ粒子が与える影響の解析
2名の健常者(Donor 1及びDonor 2)から得られたヒト末梢血単核球を、1×107 cells/mlで播種し、24時間後、実施例1の条件4又は5で得られたAP-CpGナノ粒子をCpG ODN量換算で0.14~3.75μg/ml含むRPMI1640培地を添加して、37℃で24時間培養した。24時間培養後の上清を回収し、ELISA法によって上清中のサイトカイン(IFN-α及びIFN-γ)量を測定した。また、比較のために、AP-CpGナノ粒子の代わりにCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)を使用した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図4に示す。この結果から、ヒト末梢血単核球に対しても、AP-CpGナノ粒子はCpG ODN単独処理時よりもサイトカイン産生を促進することが明らかとなった。
実施例4:マウス骨髄由来樹状細胞によるAp-CpGナノ粒子の取り込みの検証
Alexa 488で蛍光標識したCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)を使用すること以外は、前記実施例1の条件4と同条件でAP-CpGナノ粒子を得た。また、実施例2に示す条件でマウス骨髄細胞から樹状細胞を誘導した。得られた樹状細胞を、1×107 cells/mlで播種し、24時間後、蛍光標識したAP-CpGナノ粒子をCpG ODN量換算で1.25 μg/ml含むRPMI1640培地を添加して、37℃で180分間培養した。培養中、経時的に樹状細胞を回収し、FACS分析により、樹状細胞の蛍光強度を測定し、CpG ODNが取り込まれた樹状細胞(K3陽性の樹状細胞)の割合を求めた。また、K3陽性の樹状細胞の内、蛍光強度が1×104程度であるものをK3 low positive、K3の蛍光強度が3×104程度超であるものをK3 high positiveに分類した。また、比較のために、AP-CpGナノ粒子の代わりにAlexa 488で蛍光標識したCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)を使用した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図5に示す。図5のaにFACS分析によってFSC-AとCpG ODNの蛍光強度をプロットした図を示す。図5のbに、AP-CpGナノ粒子及びCpG ODNを添加した際のCpG ODNが取り込まれた樹状細胞(K3陽性の樹状細胞)の割合を求めた結果を示す。この結果から、AP-CpGナノ粒子は、CpG ODN単独の場合に比して、効率的に樹状細胞に取り込まれることが確認された。
実施例5:マウス骨髄由来樹状細胞によるAp-CpGナノ粒子の取り込みメカニズムの解析
前記実施例4に示す条件で、蛍光標識したAP-CpGナノ粒子、及びマウス樹状細胞を準備した。マウス樹状細胞を、5×106 cells/mlで播種し、24時間後、スカベンジャーレセプター阻害剤であるpoly Iを0、4、又は20μg/ml、或はエンドサイトーシス阻害剤であるcytochalasin Dを0、0.8、4、又は20μM含むRPMI1640培地を添加して、37℃で60分間培養した。培養上清を除いたのち、蛍光標識したAP-CpGナノ粒子をCpG ODN量換算で1.25μg/ml、スカベンジャーレセプター阻害剤であるpoly Iを0、4、又は20μg/ml、或はエンドサイトーシス阻害剤であるcytochalasin Dを0、0.8、4、又は20μM含むRPMI1640培地を添加して、37℃で60分間培養した。培養後に樹状細胞を回収し、FACS分析により、樹状細胞の蛍光強度を測定し、CpG ODNが取り込まれた樹状細胞(K3陽性の樹状細胞)の割合を求めた。poly I又はcytochalasin Dが未添加の培地で培養した場合のK3陽性の樹状細胞の割合を100%として、各条件でのK3陽性の樹状細胞の比率(coefficient of fluctuation)を算出した。
得られた結果を図6に示す。この結果、スカベンジャーレセプター阻害剤を添加した場合にはK3陽性の樹状細胞の比率は低下していなかったが、エンドサイトーシス阻害剤を添加した場合にはK3陽性の樹状細胞の比率が著しく低下していた。即ち、本結果から、AP-CpGナノ粒子は、樹状細胞においてエンドサイトーシスにより取り込まれていることが確認された。
実施例6:マウスの所属リンパ節細胞のin vivo サイトカイン産生能に対してAp-CpGナノ粒子が与える影響の解析
6~8週齢のC57BL/6マウスに、実施例1の条件4で得られたAP-CpGナノ粒子(CpG ODN量換算で8μg/mouse)を耳部に投与し、その24時間後に所属リンパ節を回収した。リンパ節中の細胞を回収し、PRMI1640培地を添加して37℃で8時間培養した。8時間培養後の上清を回収し、ELISA法によって上清中のサイトカイン(IL-12、IFN-γ及びIL-6)量を測定した。また、比較のために、生理食塩水のみを投与した場合、AP-CpGナノ粒子の代わりにCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)を40又は8μg/mouseとなるように投与した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図7に示す。この結果、AP-CpG処理群において、CpG ODN添加群よりもin vivoサイトカイン産生が促進されることが明らかとなった。
実施例7: Ap-CpGナノ粒子の防御免疫の誘導効果の検証
6~8週齢のC57BL/6マウスに、実施例1の条件4で得られたAP-CpGナノ粒子(CpG ODN量換算で10μg/mouse)及びOVA(100μg/mouse)の混合液を、尾根部に投与し(day0)、更にその14日後に再度同量のAP-CpGナノ粒子及びOVAを尾根部に投与した(day14)。最終投与から1週間後に採血して、血漿中のOVA特異的IgG、IgG1、及びIgG2cをELISA法によって測定した。更に所属リンパ節中の抗原特異的細胞傷害性T細胞(CD8+ CD44+ Tetramer+ cells)の割合をFACSによって測定した。また、最終投与から1週間後にマウスから所属リンパ節を回収し、OVA由来ペプチド5μg/ml含むRPMI1640培地で24時間培養した後に、培養上清中のIFN-γ濃度をELISA法によって測定した。また、比較のために、OVAのみを投与した場合、AP-CpGナノ粒子の代わりにCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)を10又は50μg/mouseとなるように投与した場合、及び水酸化アルミニウム(Alum)(アルミニウム量換算で500μg/mouse)となるよう投与した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図8に示す。図8のaには、10万倍に希釈した血漿中のOVA特異的抗体を測定した結果を示す。図8のbには、血漿の希釈倍率を代えた場合の各抗体の測定結果を示す。また、図8のcには、所属リンパ節中の抗原特異的細胞傷害性T細胞(CD8+ CD44+ Tetramer+ cells)の割合、及びリンパ節から単離したリンパ細胞の、抗原による再刺激時に産生されたIFN-γ濃度の測定結果を示す。これらの結果から、AP-CpGはCpG ODNよりも獲得免疫応答の誘導を促進することが明らかとなった。
実施例8: Ap-CpGナノ粒子の防御免疫の誘導効果の検証
6~8週齢のC57BL/6マウスに、実施例1の条件4で得られたAP-CpGナノ粒子(CpG ODN量換算で10μg/mouse)及びA型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニン(HA)(0.5μg/mouse)の混合液を尾根部に投与し(day0)、更にその14日後に再度同量のAP-CpGナノ粒子及びHAの混合液を尾根部に投与した(day14)。最終投与から1週間後に採血して、血漿中のHA特異的IgG、IgG1、及びIgG2cをELISA法によって測定した。また、AP-CpGナノ粒子及びHAの最初の投与から21日後に、A型インフルエンザH1N1株を経鼻投与し、マウスの生存率及び体重推移を評価した。比較のために、HAのみを投与した場合、AP-CpGナノ粒子の代わりにCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)を10又は50μg/mouseとなるように投与した場合、及びAlum(アルミニウム量換算で500μg/mouse)となるよう投与した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図9に示す。図9のaには、血漿中のHA特異的抗体を測定した結果を示す。図9のbには、マウスの生存率及び体重推移の測定結果を示す。これらの結果から、AP-CpGナノ粒子は5倍量のCpG ODNと同程度のインフルエンザ感染防御能を誘導することが明らかとなった。
実施例9: Ap-CpGナノ粒子の安全性の検証
7週齢のC57BL/6マウスに、実施例1の条件4で得られたAP-CpGナノ粒子(CpG ODN量換算で10μg/mouse)を尾根部に投与し、その24時間後に採血し、血中の白血球数及びリンパ球数を計測した。また、7週齢のC57BL/6マウスに、実施例1の条件4で得られたAP-CpGナノ粒子(CpG ODN量換算で10μg/mouse/回)を1日おきに3回、尾根部に投与し、最終投与から24時間後にマウスの脾臓、リンパ節、及び肝臓の各重量を測定した。比較のために、AP-CpGナノ粒子の代わりに、生理食塩水、CpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)(10又は50μg/mouse/回)、及びCpG ODNを複合化させていない炭酸アパタイト(AP)粒子を投与した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図10に示す。図10のaには、血中の白血球数及びリンパ球数を計測した結果を示し、図10のbには、脾臓、リンパ節、及び肝臓の各重量の測定結果を示す。これらの結果から、CpG ODNは炭酸アパタイトに封入されることで、安全性が向上することが明らかとなった。
実施例10:炭酸アパタイト粒子とCpGオリゴデオキシヌクレオチドを複合化しない状態でのサイトカイン産生誘導能の評価
C57BL/6Jマウスの大腿骨から単離した骨髄細胞をFlt3L(100 ng/mL)を含む10%FCS、及び1%抗生物質含有RPMI1640培地を用いて37℃で1週間時間培養することにより、樹状細胞を誘導した。得られた樹状細胞を、5×105 cells/mlで播種し、24時間後、実施例1の条件0で得られた炭酸アパタイト(AP)ナノ粒子(カルシウム量換算で約1.25μg/ml)とCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)(3.75μg/ml、11.25μg/ml、33.75μg/ml)とを含むPRMI1640培地を添加して、37℃で24時間培養した。24時間培養後の上清を回収し、ELISA法によって上清中のサイトカイン(IL-6、IL-12、及びIFN-γ)量を測定した。また、比較のために、APナノ粒子及びCpGの組み合わせの代わりにAPを単独で使用した場合、及びCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)を単独で使用した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図11に示す。この結果、AP単独処理群ではサイトカイン産生の上昇が認められない一方で、AP+CpG処理群では、CpG単独処理群よりも強いサイトカイン産生が認められた。
実施例11:炭酸アパタイト粒子とCpGオリゴデオキシヌクレオチドを複合化しない状態での投与による防御免疫の誘導効果の検証
6-8週齢のC57BL/6マウスに、実施例1の条件0で得られた炭酸アパタイト(AP)ナノ粒子(カルシウム量換算で約125μg/mouse)、CpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)(10μg/mouse)、及びOVA(100μg/mouse)の混合液を尾根部に投与し(day0)、更にその14日後に再度同量のAPナノ粒子、CpG ODN及びOVAの混合液を尾根部に投与した(day14)。また、6~8週齢のC57BL/6マウスに、実施例1の条件4で得られたAP-CpGナノ粒子(CpG ODN量換算で10μg/mouse)及びOVA(100μg/mouse)の混合液を尾根部に投与し(day0)、更にその14日後に再度同量のAP-CpGナノ粒子及びOVAを尾根部に投与した(day14)。最終投与から1週間後に採血して、血漿中のOVA特異的IgG1及びIgG2cをELISA法によって測定した。また、比較のために、OVA(100μg/mouse)のみを投与した場合、OVA(100μg/mouse)とCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)10又は50μg/mouseを投与した場合、OVA(100μg/mouse)とAlum(アルミニウム量換算で500μg/mouse)を投与した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図12に示す。図12中、2×104、10×104、及び50×104は、抗体測定時の血漿の希釈倍率を示す。この結果から、炭酸アパタイトはCpG ODNと混合するだけで、抗原特異的な抗体産生の誘導を促進することが明らかとなった。
実施例12:炭酸アパタイト粒子とCpGオリゴデオキシヌクレオチドを複合化しない状態での投与による防御免疫の誘導効果の検証
6~8週齢のC57BL/6マウスに、実施例1の条件0で得られた炭酸アパタイト(AP)ナノ粒子(カルシウム量換算で約125μg/mouse)、CpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)(10μg/mouse)、及びA型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニン(HA)(0.5μg/mouse)の混合液を尾根部に投与し(day0)、更にその14日後に再度同量のAPナノ粒子、CpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)及びHAの混合液を尾根部に投与した(day14)。また、6~8週齢のC57BL/6マウスに、実施例1の条件4で得られたAP-CpGナノ粒子(CpG ODN量換算で10μg/mouse)及びA型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニン(HA)(0.5μg/mouse)の混合液を尾根部に投与し(day0)、更にその14日後に再度同量のAP-CpGナノ粒子及びHAの混合液を尾根部に投与した(day14)。最終投与から1週間後に採血して、血漿中のHA特異的IgG及びIgG2cをELISA法によって測定した。また、比較のために、生理食塩水のみを投与した場合、HA(0.5μg/mouse)のみを投与した場合、HA(0.5μg/mouse)とCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)10又は50μg/mouseを投与した場合、HA(0.5μg/mouse)とAlum(アルミニウム量換算で500μg/mouse)を投与した場合、HA(0.5μg/mouse)とCpGオリゴデオキシヌクレオチド(D35型、配列番号5に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「D35 Et-Free」、製品番号「CN-65001」、ジーンデザイン社製 )(50μg/mouse)を投与した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図13及び12に示す。図13には血漿中のHA特異的IgGを測定した結果を示し、図14には血漿中のHA特異的IgG2cを測定した結果を示す。図13及び12中の希釈倍率は、抗体測定時の血漿の希釈倍率である。この結果から、APはCpGと混合するだけで、抗原特異的な抗体産生の誘導を促進することが明らかとなった。
実施例13:炭酸アパタイト粒子とCpGオリゴデオキシヌクレオチドを複合化しない状態での投与による防御免疫の誘導効果の検証
6~8週齢のC57BL/6マウスに、実施例1の条件0で得られた炭酸アパタイト(AP)ナノ粒子(カルシウム量換算で約125μg/mouse)、CpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)(10μg/mouse)、及びA型インフルエンザH1N1株由来ヘマグルチニン(HA)(0.5μg/mouse)の混合液を耳部に投与し(day0)、更にその14日後に再度同量のAPナノ粒子、CpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)及びHAの混合液を耳部に投与した(day14)。最終投与から1週間後に採血して、血漿中のHA特異的IgG、IgG1、及びIgG2cをELISA法によって測定した。また、AP-CpGナノ粒子及びHAの最初の投与から21日後に、A型インフルエンザH1N1株を経鼻投与し、マウスの生存率及び体重推移を評価した。比較のために、HA(0.5μg/mouse)のみを投与した場合、HA(0.5μg/mouse)とAP(カルシウム量換算で約100μg/mouse)とを投与した場合、HA(0.5μg/mouse)とCpG ODN(K3型、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド、製品名「K3 Et-Free」、製品番号「CN-65003」、ジーンデザイン社製)40又は8μg/mouseを投与した場合、HA(0.5μg/mouse)とAlum(アルミニウム量換算で500μg/mouse)を投与した場合を投与した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図15に示す。図15のaには血漿中のHA特異的IgGを測定した結果を示す。図15のbには、マウスの生存率及び体重推移の測定結果を示す。この結果から、APとCpGとHAとを混合するだけで、抗原特異的な抗体産生の誘導を強く促進することが明らかとなった。また、APとCpGとHAとの混合群において、インフルエンザ感染防御能を強く誘導することが明らかとなった。
参考試験例1:アジュバントとしてPoly(I;C)を複合化させた炭酸アパタイト粒子の防御免疫の誘導効果の検証
CpG ODNを使用する代わりに、Poly(I;C)を使用したこと以外は、前記実施例1の条件5と同条件でPoly(I;C)が複合化された炭酸アパタイト(AP-Poly(I;C))ナノ粒子を得た。6~8週齢のC57BL/6マウスに、前記で得られたAP-Poly(I;C)ナノ粒子(Poly(I;C)量換算で0.1又は1μg/mouse)及びOVA(100μg/mouse)を尾根部に投与し(day0)、更にその14日後に再度同量のAP-Poly(I;C)ナノ粒子及びOVAを尾根部に投与した(day14)。最終投与から1週間後に採血して、血漿中のOVA特異的IgG1及びIgG2cをELISA法によって測定した。また、比較のために、OVA(100μg/mouse)のみを投与した場合、OVA(100μg/mouse)とPoly(I;C)(0.1又は1μg/mouse)を投与した場合についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図16に示す。図16中の希釈倍率は、抗体測定時の血漿の希釈倍率である。この結果から、アジュバントとしてAP-Poly(I;C)を使用して炭酸アパタイト粒子と併用しても、効果的な防御免疫の誘導は認められないことが分かった。

Claims (7)

  1. CpGオリゴデオキシヌクレオチド、及び炭酸アパタイト粒子を含有することを特徴とする、アジュバント組成物(但し、炭酸アパタイト粒子の内部に抗原を含む場合を除く)
  2. 前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドがKタイプである、請求項1に記載のアジュバント組成物。
  3. 前記炭酸アパタイト粒子が、平均粒子径200nm以下である、請求項1又は2に記載のアジュバント組成物。
  4. 前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドが前記炭酸アパタイト粒子に複合化されている、請求項1~3のいずれかに記載のアジュバント組成物。
  5. 抗原、及び請求項1~4のいずれかに記載のアジュバント組成物を含む、ワクチン製剤。
  6. 前記抗原がタンパク質又はペプチドである、請求項5に記載のワクチン製剤。
  7. 前記抗原が、インフルエンザウイルス由来のタンパク質又はペプチドである、請求項5又は6に記載のワクチン製剤。

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